JP3896079B2 - 累進屈折力レンズ及び同レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は老視補正用の眼鏡に使用される累進屈折力レンズ及び同レンズの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高齢により眼の水晶体による調節機能が低下し近方視が困難な状態が老視である。この老視に対する矯正用の眼鏡に累進屈折力レンズが使用されている。
一般的に累進屈折力レンズは屈折力のそれぞれ異なる2つの領域と、それら両領域の間で屈折力(度数)が累進的に変わる領域とを備えた非球面レンズとされており、境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができるものである。ここに2つの領域とは一般的には遠距離の物体を目視するためにレンズの上方位置に設定された遠用部領域と、近距離の物体を目視するためにレンズの下方位置に設定された近用部領域の2つの領域のことである。遠用部領域と近用部領域との移行帯である累進帯は滑らかかつ連続的に連結されている。
このような累進屈折力レンズとして従来では例えば特許文献1にあるような表面(つまり物体側)に累進面を形成したいわゆる外面累進レンズと例えば特許文献2にあるような裏面(つまり眼球側)に累進面を形成したいわゆる内面累進レンズとがある。
特許文献2は特許文献1のような表面に累進面を形成したものを改良したという位置づけの技術であって、累進屈折面を裏面に持ってくることによって遠用部と近用部における倍率の差を縮小でき、これに起因する像の揺れや歪み(特に非点収差)を低減するようにしたとされるレンズが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−234146号公報(段落番号0003、0018、図1及び図8)
【特許文献2】
国際公開第97/19382号パンフレット(実施例1、図4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際には内面累進レンズのように裏面に累進面を形成する場合には次のような不利な点が存した。
図15(a)に示すように、外面累進レンズのベースカーブBCはレンズ上方位置では浅くレンズ下方位置では深く形成されている。これは累進面が基本的に上方位置にある遠用部領域に対して下方位置にある近用部領域は相対的にプラス度数となるため光学的には理にかなった構成とされている。一方、図15(b)に示すような内面累進レンズのベースカーブBCでは光学的にこれとは逆にレンズ上方位置では深くレンズ下方位置では浅く形成される必要がある。
ところが、このような構成とした場合では、例えば図16のように外面累進レンズのある近用領域のa点について内面累進レンズと比較した場合、外面累進レンズにおいては累進レンズとしてこのa点と同じのパワーが発揮される位置はb点、すなわちa点よりも高さtだけ遠用部領域に近い位置とされる。すなわち、内面累進レンズでは外面累進レンズと同じパワーを得ようとする場合ではより短い距離で外面累進レンズと同等の加入をしなければならないこととなる。
更に、図16に示すように眼球から各レンズまでの距離L1,L2を比較するとは内面累進レンズの距離L2では外面累進レンズの距離L1に比べてカーブが浅い分だけ遠くなってしまうこととなっている。これらのような内面累進レンズの特徴が歪曲収差として顕著に現れてしまうこととなるわけである。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、内面累進レンズの不利な点を有さず、かつ従来の外面累進レンズの特徴を生かし加工しやすい累進屈折力レンズ及び同レンズの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折力レンズにおいて、前記レンズの表裏いずれか一方の面側には前記第1の領域、第2の領域及び累進帯からなる所定の累進面が形成されるとともに、いずれか他方の面側には同累進面の累進特性を補正した補正面が形成されるようにし、同補正面には前記累進面に設定された加入度を減算させる逆加入補 正が施され、前記レンズ表裏両面の加入度に基づいてトータルの累進特性が設定されるようにしたことをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1の発明の構成に加え、前記いずれか一方の面側とは前記レンズの表面側であり、いずれか他方の面側とは同レンズの裏面側であることをその要旨とする。
また請求項3の発明では、請求項1又は2の発明の構成に加え、前記累進特性が補正された補正面とは前記累進面が略対称の累進特性を有している場合における耳側から鼻側への収差分布を非対称とする補正量が含まれている補正面であることをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1〜3のいずれか発明の構成に加え、前記累進特性が補正された補正面とは前記累進面の加入量を補正する補正量が含まれている補正面であることをその要旨とする。
また請求項5の発明では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折力レンズの製造方法であって、前記第1の領域、第2の領域及び累進帯からなる所定の累進面をレンズ前駆体のいずれか一方の面側に形成する第1の加工工程と、前記累進面の累進特性を補正する補正面を前記レンズ前駆体のいずれか他方の面側に形成する第2の加工工程とを有し、
前記第1の加工工程によって所定の累進面が形成された前記レンズ前駆体は累進特性の異なる複数種類が用意され、同複数種類のレンズ前駆体から選択された所定のレンズ前駆体に対して前記第2の加工工程による加工が施され、同第2の加工工程では前記第1の加工工程において前記累進面に設定された加入量を補正するために前記補正面に補正量を与えてトータルして累進特性を付与するようにするとともに、少なくとも同第2の加工工程は同補正面に累進面側の加入度を減算させるような逆加入補正パターンを有していることをその要旨とする。
【0006】
また請求項6の発明では請求項5の発明の構成に加え、前記第1の加工工程によって前記レンズ前駆体の表面に略対称の累進特性を有する累進面を形成するとともに、前記第2の加工工程によって形成する補正面にて耳側から鼻側への収差分布を非対称に補正するようにしたことをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項5又は6の発明の構成に加え、前記第2の加工工程によって形成する補正面の補正量に遠視、近視又は乱視の少なくとも1つの視力異常のための矯正補正量が含まれるようにしたことをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成では前記レンズの表裏いずれか一方の面側に第1の領域、第2の領域及び累進帯からなる所定の累進面が形成され、いずれか他方の面側には同累進面の累進特性を補正した補正面が形成されたレンズを得ることができる。 第1の領域とは例えば遠用部領域や遠用部領域に比べて比較的近い遠方(5m〜1m)距離を見るための中用部領域が相当する。第2の領域とは例えば近用部領域が相当する。また、いずれか一方の面とは好ましくはレンズの表面(対物あるいは外面)側であり、いずれか他方の面とはレンズの裏面(眼球あるいは内面)側である。
すなわち、基本構成としては累進面をレンズの表面(対物あるいは外面)側に形成した外面累進レンズとし、そのための累進特性の補正処理を内面側で行うようにすることが好ましい。これによって、上記内面累進レンズに比べて歪曲収差を低く抑えることが可能となる。
ここに、補正処理として例えば累進面が略対称の累進特性を有している場合における累進特性が補正された補正面とは耳側から鼻側への収差分布を非対称に補正することが挙げられる。これによって左右レンズの累進特性を同じにしたままで内面側の補正処理だけで左右レンズを作り分けることが可能となる。また、補正処理として例えば累進面の加入量を補正することも可能である。これによって、外面側で設定した加入量を内面側で微調整することが可能となる。
また、補正面の補正量には所望により遠視・近視又は乱視の少なくとも1つを矯正するための補正量を含めることが可能である。
【0008】
上記所定の累進面は第1の加工工程によって形成され、累進特性を補正する補正面は第2の加工工程によって形成される。前記第1の加工工程によって所定の累進面が形成された前記レンズ前駆体は累進特性の異なる複数種類が用意されることが好ましく、このように用意された複数種類のレンズ前駆体から選択された所定のレンズ前駆体に対して前記第2の加工工程による加工が施されることが好ましい。
【0009】
【発明の効果】
上記請求項1〜7の発明では、補正面の補正処理を累進面とは別の面で行うことで加工コストを軽減することができるとともに内面累進レンズの不利な点を有さない累進屈折力レンズを提供することが可能となった。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的ないくつかの実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においてレンズの表面側を場合によっては外面といい、レンズの裏面側を場合によっては内面という。また、以下の各レンズは説明上一方のレンズのみを図示するが対になる他方のレンズは対称形状に形成されるものとする。
【0011】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態の累進屈折力レンズ1はレンズ表面に累進面が形成されたいわゆる外面累進レンズである。図2及び図3は比較のためにそれぞれ図示された従来の外面累進レンズP及びレンズ裏面に累進面が形成されたいわゆる内面累進レンズQである。
これらの累進屈折力レンズ1,P,Qにおける主要条件は次の通りである。(レンズ径70mm、レンズ中心部厚み3mm、素材屈折率1.70,遠用度数S0.00D、C0.00Dで、加入度数2.00D)。
以下、本実施の形態1の累進屈折力レンズ1の構成について従来の外面累進レンズP及び内面累進レンズQとの比較の上で説明する。
【0012】
図4に示すように、本実施の形態1の累進屈折力レンズ1は上方位置に遠距離の物体を目視するための遠用部領域11が設定されている。下方位置には近距離の物体を目視するための近用部領域12が設定されており、遠用部領域11と近用部領域12の間には両領域11,12を滑らかかつ連続的に連結する累進帯13が設定されている。図示はしないが従来の外面累進レンズP及び内面累進レンズQにおいてもこのような設定の累進帯とされている。
累進屈折力レンズ1の表面にはこのような累進特性を発揮させるための非球面の累進面15が形成されている。累進屈折力レンズ1の裏面には補正面16が形成されている。本実施の形態1では補正面16には収差分布を鼻側へ集中させるような補正面16が形成されている。累進屈折力レンズ1の表面は図5に示すような略対称の非点収差分布(いわゆるアス分布)を示している。図5は非点収差分布における任意の点を局部的に評価した場合の主曲率の差を表したいわゆる面アスの分布を示したものである。このような分布特性に加えて裏面の補正面16の補正量によってトータルで累進屈折力レンズ1は図6に示すような非点収差分布となる光学特性を示す。尚、図6におけるフレームFは非点収差分布における鼻と耳の方向を分かりやすくするために配置したものである。
一方、従来の外面累進レンズPではこのような補正面16は有しておらず図6に示すような収差分布とするための加工はすべて表面側で行われている。内面累進レンズQでもこの図6に示すような収差分布とする加工はすべて裏面側で行われている。
【0013】
また、本実施の形態1の累進屈折力レンズ1では所定の視力補正(つまり近視や遠視の補正)及び乱視矯正のための補正・矯正特性が補正面16の累進特性の補正量に加味されている。
一方、従来の外面累進レンズPや内面累進レンズQでも視力補正や乱視矯正は裏面側で行われている。
【0014】
次に上記実施の形態1の累進屈折力レンズ1の製造工程について説明する。
図7に示すように、製造工程は第1の加工工程とそれに続く第2の加工工程からなる2つの工程から成り立っている。第1の加工工程では主としてレンズ表面に所定の非球面の累進面15を形成することが目的であり、第2の加工工程では主としてレンズ裏面に所定の補正面16を形成することが目的である。
まず第1の加工工程について説明する。
第1の加工工程では図8に示すようないわゆる「セミフィニッシュ」と呼ばれる十分な厚みを有するレンズ前駆体としての材料ブロック10を製造する。材料ブロック10の表面(凸面側)には上記累進面15が形成され、裏面(凹面側)には単純な球面が形成されている。
【0015】
本実施の形態1では材料ブロック10は図8に示すように上下に分割されたモールド21,22中に調整された液状の熱硬化性プラスチック樹脂Rを充填し、モールド21,22を加熱炉にて加熱し、固化させて得られる。本実施の形態1では上モールド21のキャビティ内上面部23はレンズ表面の所定の累進面15に対応した凹形状とされている。下モールド22のキャビティ内下面部24はレンズ裏面に対応した凸形状の球面とされている。本実施の形態1ではベースカーブ(表面側のカーブ)の違いに応じて多種類(例えば5種類)の材料ブロック10を製造する必要から上モールド21はこのベースカーブの違いに応じた数だけ用意される。
また、本実施の形態1における累進面15の加入度は1.00〜3.50Dの範囲で0.25D間隔で製造するものとする。つまり11種類の加入度のバリエーションを用意するものとする。これによれば、例えば上記のように5種類のベースカーブに対してそれぞれ11種類の加入度のバリエーションが用意されることとなるため、合計で55種類の材料ブロック10が用意されることとなる。
【0016】
次に第2の加工工程について説明する。
上記第1の加工工程において得られたベースカーブのそれぞれ異なる材料ブロック10からユーザーに好適のベースカーブの材料ブロック10を選び、裏面に補正面16を形成する。本実施の形態1ではこの段階で図示しないCAM(computer aided manufacturing)装置を使用して切削加工及び研削加工を施す。
ここで、CAM装置は上記図6に示すような収差分布となるように、与えられた収差分布データに基づいて収差分布を鼻側へ集中させるような補正面16を加工する。併せて、本実施の形態1ではCAM装置は遠視・近視・乱視の矯正データに基づいて加工する。すなわち、CAM装置は収差分布データ、遠視・近視・乱視の矯正データを合成したデータに基づいて材料ブロック10の裏面を加工することとなる。このような加工によって本実施の形態1の累進屈折力レンズ1を得ることができる。
【0017】
このように構成することによって、本実施の形態1では次のような効果を奏する。
(1)CAM装置による旋盤加工ではなくモールド21,22によって材料ブロック10の成形と同時に累進面15を形成させることができることなっている。これによってCAM装置による旋盤加工は裏面の補正面16を加工するだけでよくなる。従って、旋盤加工の手間が大幅に軽減されることとなる。
(2)補正面16の加工は累進面全部を一方の面で加工するという発想の従来の外面累進レンズPや内面累進レンズQに比べて加工量が極めて少なくてすむ。
これに起因して加工工具(例えば切削刃)の動きが小さく抑えられることとなり、加工精度が向上し、更に加工速度も早くできるため加工時間も短縮化される。また、加工工具の摩耗も従来に比べて抑制される。
(3)補正面16の加工は基準となる球面からわずかに加工するだけであるため、加工後の形状測定の精度が向上する。測定精度は接触式の測定であっても干渉を利用した光学的な測定であってもいずれにも有利である。
(4)補正面16を加工することで耳側と鼻側の収差分布を調整するようにしているため、モールド21,22によって材料ブロック10に累進面15を形成させた段階では左右のレンズを区別して製造する必要はない。従って、材料ブロック10の種類が半分で済み、コストの削減に寄与することとなる。
(5)基本的に累進面15を表面側に設定することで内面累進レンズQに比べて歪曲収差が少ない。
【0018】
(実施の形態2)
実施の形態2の累進屈折力レンズ1も実施の形態1と同様な工程で製造される。上記実施の形態1とのレンズ構成の違いは補正面16に以下のような累進特性を加味したものである。
本実施の形態1の累進屈折力レンズ1では裏面は累進させない均一な非球面とされていたが、実施の形態2では累進されることとなる。
例えば、上記実施の形態1の材料ブロック10では累進面15の加入度は1.00〜3.50Dの範囲で0.25D間隔で製造するもの(11種類の加入度のバリエーション)であったが、これを例えば1.25D、2.00D、2.75Dの3種類のみを用意するようにする。
そして、補正面16において加入量を例えば0.00〜0.50Dの範囲で調整するようにするものである。より具体的には例えば累進面15の加入度を2.00Dとし、裏面側で−0.25Dの逆加入を施すことでトータルとして1.75Dの累進特性を得るようにするわけである。
このようにすれば、更に作り置きする材料ブロック10の種類を減らすことが可能となる。
【0019】
(実施の形態3)
実施の形態3の累進屈折力レンズ1も実施の形態1と同様な工程で製造される。上記実施の形態1とのレンズ構成の違いは実施の形態1の補正面16に以下のような主注視線Sについての累進特性が加味されていることである。
初期の累進屈折力レンズでは主注視線Sにおける累進面形状はへそ線として構成されていた。ここに、へそ線Aとは局所的に球面(すべての方向の曲率半径が一定)になっているいわゆるへそ点の連続した線であって、図9に示すように累進帯を通る上下方向に設定されるものである。へそ線A上では面アスがないためかつては主注視線Sはこのへそ線Aと一致させることがよいとされてきたわけである。しかし、物体を見るための光線は必ずしもレンズを垂直に透過するわけではなく、むしろ所定角度をもって入射することのほうが多いということから、現在では透過時に生じる非点収差を打ち消すために主注視線上の面形状をへそ線にしないほうが良いとする理論が大勢を占めている。
本実施の形態3の累進屈折力レンズ1では図9に示すようなレンズ表面に形成された累進面15のへそ線Aに基づいて図10に示すような裏面側でへそ線Aと一致しない所定の主注視線Sにおける透過光の非点収差を小さく抑えるような補正を補正面16に施している。
具体的には図9に示すように左右略対称の累進面15が形成された材料ブロック10を第1の加工工程に従って形成し、これを図11に示すように、回転させて下方側を鼻側に変位させるものとする。このように変位させた状態で実施の形態1の第2の加工工程に従って補正面16を形成する。この時、図11に示すように鼻側に偏倚させることに伴って鼻側と耳側の収差分布を調整する補正が加味され、更に設定されたへそ線Aに基づいて主注視線Sを設定する補正が加味される。
【0020】
このように裏面側で主注視線Sを設定することによって上記実施の形態1の効果に加えて次のような効果が奏される。
(1)表面側に設定されたへそ線Aはそのままで単に図11に示すように回転させるだけであって、このへそ線Aに基づいて裏面側で主注視線Sを設定するようになっているため主注視線Sの設定が容易である。
(2)もし材料ブロック10を回転させないでへそ線Aを垂直方向のままで裏面側で主注視線Sを設定するようなケースでは図12のように主注視線Sのへそ線Aからの変位量が大きいため設計が難しくなってしまう。
(3)累進面15ではへそ線Aのみを設定するためシンプルな面とされていることも光学的には収差の減少に寄与し、面の形成上も複雑化せず精度が出やすい。この効果は特に累進帯で顕著に発揮される。
【0021】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記補正面16において上記以外の累進帯の特性を補正するようにしてもよい。例えば累進帯の長さを調整するようにしてもよい。例えば基準としての累進帯の長さ(例えば13mm)を累進面15で設定し、裏面の補正面16を形成する際に例えば12mmと短く補正したり逆に14mmと長く補正したりする如くである。
・上記補正面16において上記以外の累進帯の特性を補正するようにしてもよい。例えば上記図5のような表面側における非点収差分布の分布を1裏面側の補正面16で例えば図13に示すような耳側及び鼻側に収差を集中させて上下の明視域領域を大きくするような設定としたり、逆に図14に示すような収差を分散させてレンズ全体の歪みを極力抑制するような設定とすることが可能である。また、同様に図5のような表面側における非点収差分布の分布を基準として遠用部を重視(つまり上部の明視域領域を大きくする)したり、近用部を重視(つまり下部の明視域領域を大きくする)したりするような設定も可能である。
・物体を発してレンズを透過し、さらに眼球光学系によって網膜に結像する光線に関する非点収差を抑えるような補正を裏面側で調整してもよい。
【0022】
・上記各実施の形態では工程2はCAM装置11によって実行されたが、この工程を他の装置によって実行し、そのデータをCAM装置に入力することで材料ブロック10を加工するようにしてもよい。他の装置を含めて以下CAM装置等とする。
・上記各実施の形態ではモールド21,22によって材料ブロック10の成形と同時に表面に累進面15を形成するようにしていたが、累進面15が形成されていない材料ブロック10の表面にCAM装置等で累進面15を加工するようにしてもよい。
・上記各実施の形態においてモールド21,22によって材料ブロック10の表面に累進面15を形成した後に、更にこの累進面15をCAM装置等で加工するようにしてもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【0023】
上記実施の形態から把握できる本発明のその他の技術的思想について下記に付記として説明する。
(1)前記第1の加工工程によって前記レンズ前駆体の表面に形成する累進面の主注視線とへそ線を一致させるとともに、前記第2の加工工程によって形成する補正面にて同へそ線が主注視線と一致しないように補正するようにしたことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(2)前記いずれか一方の面側とは前記レンズの表面側であり、いずれか他方の面側とは同レンズの裏面側であることを特徴とする請求項6〜10若しくは付記1のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(3)前記第2の加工工程は前記第1の加工工程の後に行われることを特徴とする請求項6〜10若しくは付記1又は2のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(4)前記第1の加工工程における所定の累進面は同所定の累進面に対応して形成されたレンズ用モールド内にレンズ用樹脂を充填し、外部エネルギーを加えて固化させることで形成するようにしたことを特徴とする請求項6〜10若しくは付記1〜3のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(5)前記第1の領域とは遠用部領域であって、前記第2の領域とは近用部領域であることを特徴とする請求項6〜10若しくは付記1又は2のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(6)前記第1の領域とは5m〜1mの距離を見るための中用部領域であって、前記第2の領域とは近用部領域であることを特徴とする請求項6〜10若しくは付記1又は2のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(7)前記第1の領域とは遠用部領域であって、前記第2の領域とは近用部領域であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(8)前記第1の領域とは5m〜1mの距離を見るための中用部領域であって、前記第2の領域とは近用部領域であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(9)前記いずれか他方の面側の補正面には同累進面の累進特性に加えて遠視、近視又は乱視の少なくとも1つの視力異常の補正が加味されていることを特徴とする請求項1〜5若しくは付記7又は8のいずれかに累進屈折力レンズ。
(10)前記累進特性が補正された補正面とは前記累進帯の長さを変更する補正量が含まれている補正面であることを特徴とする請求項1〜5若しくは付記7又は8のいずれかに記載の累進屈折力レンズ。
(11)前記累進特性が補正された補正面とは非点収差分布を変更する補正量が含まれている補正面であることを特徴とする請求項1〜5若しくは付記7又は8のいずれかに記載の累進屈折力レンズ。
非点収差分布を変更するとは例えば上記実施の形態における耳側及び鼻側に収差を集中させて上下の明視域領域を大きくするような設定としたり、逆に図14に示すような収差を分散させてレンズ全体の歪みを極力抑制するような設定とすることが挙げられる。また、遠用部や近用部のいずれかを重視するような傾向とすることが挙げられる。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1及び2における累進屈折力レンズの側面図。
【図2】 従来の外面累進レンズの側面図。
【図3】 従来の内面累進レンズの側面図。
【図4】 実施の形態1及び2における累進屈折力レンズの正面図。
【図5】 実施の形態1及び2における材料ブロック表面の面アスの分布を説明する説明図。
【図6】 図5の累進屈折力レンズの累進特性を補正した後の非点収差分布を説明する説明図。
【図7】 実施の形態1の及び2における累進屈折力レンズの加工工程を説明するフローチャート。
【図8】 第1の加工工程における材料ブロックの製造の流れを説明する説明図。
【図9】 実施の形態3における材料ブロック表面の面アスの分布を説明する説明図。
【図10】 実施の形態3における累進特性を補正した後のへそ線と主注視線の関係を説明する説明図。
【図11】 図9の材料ブロックを鼻側に回転させた状態の面アスの分布を説明する説明図。
【図12】 図10とは異なる方法で累進特性を補正した後のへそ線と主注視線の関係を説明する説明図。
【図13】 他の実施の形態の累進屈折力レンズの累進特性を補正した後の非点収差分布を説明する説明図。
【図14】 他の実施の形態の累進屈折力レンズの累進特性を補正した後の非点収差分布を説明する説明図。
【図15】 (a)は外面累進レンズの概念を説明する側面図、(b)は内面累進レンズの概念を説明する側面図。
【図16】 外面累進レンズと内面累進レンズの光学的性質の違いを説明する説明図。
【符号の説明】
1…累進屈折力レンズ、10…レンズ前駆体としての材料ブロック、15…累進面、16…補正面。
Claims (7)
- レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折力レンズにおいて、
前記レンズの表裏いずれか一方の面側には前記第1の領域、第2の領域及び累進帯からなる所定の累進面が形成されるとともに、いずれか他方の面側には同累進面の累進特性を補正した補正面が形成されるようにし、
同補正面には前記累進面に設定された加入度を減算させる逆加入補正が施され、前記レンズ表裏両面の加入度に基づいてトータルの累進特性が設定されていることを特徴とする累進屈折力レンズ。 - 前記いずれか一方の面側とは前記レンズの表面側であり、いずれか他方の面側とは同レンズの裏面側であることを特徴とする請求項1に記載の累進屈折力レンズ。
- 前記累進特性が補正された補正面とは前記累進面が略対称の累進特性を有している場合における耳側から鼻側への収差分布を非対称とする補正量が含まれている補正面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズ。
- 前記いずれか他方の面側の補正面には同累進面の累進特性に加えて遠視、近視又は乱視の少なくとも1つの視力異常の補正が加味されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の累進屈折力レンズ。
- レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折力レンズの製造方法であって、
前記第1の領域、第2の領域及び累進帯からなる所定の累進面をレンズ前駆体のいずれか一方の面側に形成する第1の加工工程と、
前記累進面の累進特性を補正する補正面を前記レンズ前駆体のいずれか他方の面側に形成する第2の加工工程とを有し、
前記第1の加工工程によって所定の累進面が形成された前記レンズ前駆体は累進特性の異なる複数種類が用意され、同複数種類のレンズ前駆体から選択された所定のレンズ前駆体に対して前記第2の加工工程による加工が施され、
同第2の加工工程では前記第1の加工工程において前記累進面に設定された加入量を補正するために前記補正面に補正量を与えてトータルして累進特性を付与するようにするとともに、少なくとも同第2の加工工程は同補正面に累進面側の加入度を減算させるような逆加入補正パターンを有していることを特徴とする累進屈折力レンズの製造方法。 - 前記第1の加工工程によって前記レンズ前駆体の表面に略対称の累進特性を有する累進面を形成するとともに、前記第2の加工工程によって形成する補正面にて耳側から鼻側への収差分布を非対称に補正するようにしたことを特徴とする請求項6又は5に記載の累進屈折力レンズの製造方法。
- 前記第2の加工工程によって形成する補正面の補正量に遠視、近視又は乱視の少なくとも1つの視力異常のための矯正補正量が含まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の累進屈折力レンズの製造方法。
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