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JP3888625B2 - 磁気ディスクおよびその製造方法 - Google Patents

磁気ディスクおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスクおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば12nm以下の極狭浮上量においても障害なく安定して動作することができると共に、例えば5400rpm以上の高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えた、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気ディスク装置においては、停止時には磁気ディスク面の内周領域に設けられた接触摺動用領域(CSS領域)に磁気ヘッドを接触させておき、起動動作時には磁気ヘッドをこのCSS領域で接触摺動させながら僅かに浮上させた後、CSS領域の外側に設けられた記録再生用のディスク領域面で記録再生を行なう、CSS(Contact Start and Stop)方式が採用されてきた。終了動作時には、記録再生用領域からCSS領域に磁気ヘッドを退避させた後に、CSS領域で接触摺動させながら着地させ、停止させる。このCSS方式において接触摺動の発生する起動動作及び終了動作をCSS動作と呼称する。
【0003】
このようなCSS方式用磁気ディスクにおいては、ディスク面上にCSS領域と記録再生領域の両方を設ける必要がある。また、磁気ヘッドと磁気ディスクの接触時に両者が吸着してしまわないように、磁気ディスク面上にテクスチャと呼ばれる一定の表面粗さを備える凸凹形状を設ける必要がある。また、CSS動作時に起る磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触摺動による損傷を緩和するために、例えば、HOCH−CFO−(CO)−(CFO)−CHOHの構造をもつパーフルオロアルキルポリエーテルの潤滑剤を塗布した磁気記録媒体(例えば、特許文献1参照)や、特定のホスファゼン化合物を主成分とするハード磁気ディスク用潤滑剤(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
最近、前記CSS方式に代わってLUL(Load Unload)方式の磁気ディスク装置が導入されつつある。LUL方式では、停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドを該ランプから磁気ディスク上に滑動させてから記録再生を行なう。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。LUL方式はCSS方式に比べて、磁気ディスク面上の記録再生用領域を広く確保できるので高情報容量化にとって好ましい。また、磁気ディスク面上にはCSSのためのテクスチャを設ける必要がないので、磁気ディスク面を極めて平滑化でき、このため磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ好適である。
【0005】
このようなLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、12nm以下の極狭な浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。しかしながら、このような極狭浮上量で磁気ディスク面上に磁気ヘッドを浮上飛行させると、フライスティクション障害とヘッド腐食障害が頻発するという問題が発生した。
【0006】
フライスティクション障害とは、磁気ヘッドが浮上飛行時に浮上姿勢や浮上量に変調をきたす障害であり、不規則な再生出力変動を伴い、場合によっては浮上飛行中に磁気ディスクと磁気ヘッドが接触し、ヘッドクラッシュ障害を起こして磁気ディスクを破壊することがある。
【0007】
一方、腐食障害とは、磁気ヘッドの素子部が腐食して記録再生に支障をきたす障害であり、場合によっては記録再生が不可能となったり、腐食素子が膨大して、浮上飛行中に磁気ディスク表面に損傷を与えることがある。
【0008】
また、最近では磁気ディスク装置の応答速度を敏速化するために、磁気ディスクの回転速度を高めることが行なわれている。モバイル用途に好適な小径の2.5インチ型磁気ディスク装置の回転数は従来4200rpm程度であったが、最近では、5400rpm以上の高速で回転させることで応答特性を高めることが行なわれている。このような高速で磁気ディスクを回転させると、回転に伴う遠心力により潤滑層が移動(マイグレーション)して、磁気ディスク面内で潤滑層膜厚が不均一となる現象が顕在化してきた。ディスク外周側で潤滑層膜厚が肥厚すると、LUL時にフライスティクション障害やヘッドクラッシュ障害が発生し易くなり、また内周側で潤滑層膜厚が減少すると、潤滑性能の低下により、ヘッドクラッシュ障害が発生しやすくなる。
【0009】
従来用いられて来た、前記特許文献1に記載の潤滑剤や、特許文献2に記載の潤滑剤は、これらの障害発生頻度が高く、最早、最近の磁気ディスクに求められる信頼性を満足させることが困難となっていた。このため、磁気ディスクの高容量化、高S/N化、高応答性の阻害要因となっていた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭62−66417号公報
【特許文献2】
特開平11−224419号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、例えば12nm以下の極狭浮上量においても障害なく安定して動作することができると共に、例えば5400rpm以上の高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えた磁気ディスクおよびその製造方法、特にLUL方式用に好適な磁気ディスクおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、最近の磁気ディスクで顕在化してきた、前述の障害について研究を行なったところ、以下のメカニズムが発生した結果であるという知見を得た。
【0013】
磁気ヘッドの浮上量が12nm以下の極狭浮上量となると、磁気ヘッドは浮上飛行中に空気分子を介して磁気ディスク面上の潤滑層に断熱圧縮及び断熱膨張を繰り返し作用させるようになり、この熱作用により潤滑層は繰り返し加熱冷却を受けるようになることに着目し、さらに研究を重ね、この熱作用により潤滑層を構成する潤滑剤の熱分解が促進され、低分子化され易くなっていることを発見した。潤滑剤が熱分解により低分子化すると、分子量が小さくなるので流動性が高まり保護層との密着度が低下し、その結果、流動度の高まった潤滑剤は、極狭な位置関係にある磁気ヘッドに移着、堆積し、浮上姿勢が不安定となりフライスティクション障害を発生させるものと考察された。
【0014】
特に、最近導入されてきたNPAB(負圧)スライダーを備える磁気ヘッドは、磁気ヘッド下面に発生する強い負圧により、潤滑剤の分解生成物を磁気ディスク表面上から吸引するので、この移着堆積現象を促進していることが分かった。熱分解した潤滑剤は、熱分解の結果フッ酸を生成する場合があり、磁気ヘッドに移着堆積した結果、磁気ヘッドの素子部を腐食させ易いことも分かった。
【0015】
最近、高記録密度化に好適として磁気ヘッドに採用されている磁気抵抗効果型再生素子(MR、GMR、TMR素子等)は腐食されやすく、また、磁気抵抗効果型再生素子を搭載した磁気ヘッドのシールド部には高Bsの得られるFeNi系パーマロイ合金等のシールド材が用いられるが、これも腐食され易いことが分かった。
特に、前記特開昭62−66417号公報記載の潤滑剤は耐熱性が低く、熱分解し易い傾向にあるので、これらの現象による障害が発生し易いことが分かった。
【0016】
更に、潤滑剤の熱分解により発生したフッ酸は、磁気ディスク装置内雰囲気に存在するシロキサンを化学変化させてシリコンオキサイドを生成させる傾向があり、生成したシリコンオキサイドは、磁気ヘッドへ移着してフライスティクション障害を引き起こしやすいことも突き止めた。
【0017】
本発明者らは、更に、LUL方式が、これら障害を助長していることも発見した。LUL方式の場合ではCSS方式の場合と異なり、磁気ヘッドは磁気ディスク面上を接触摺動することがないので、一度磁気ヘッドに移着堆積した潤滑剤の分解生成物は、磁気ディスク側へ転写除去されないことが判った。CSS方式の場合にあっては、磁気ヘッドに付着した分解生成物はCSS動作時に磁気ディスクのCSS領域によってクリーニングされる作用が備わっているので、これら障害が顕在化していなかったものと考察される。
【0018】
本発明者らは、これらの研究成果に基づき、さらに研究を進めた結果、磁気ディスク上の潤滑層を、その保護層側は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含み、一方表面側は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含むものとすることにより、前記障害の発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、
(1)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層の保護層側は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含み、かつ前記潤滑層の表面側は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含むことを特徴とする磁気ディスク、
【0020】
(2)潤滑層が、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第1の潤滑層の上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第2の潤滑層を設けた構造のものである上記(1)項に記載の磁気ディスク、
(3)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、末端基の全水酸基数3個以上のものである上記(1)または(2)項に記載の磁気ディスク、
(4)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、一般式(I)
【0021】
【化3】
Figure 0003888625
【0022】
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数である。)
で表される構造を有する化合物である上記(3)項に記載の磁気ディスク、
(5)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.2以下のものである上記(4)項に記載の磁気ディスク、
【0023】
(6)末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、一般式(II)
−OCHCF(OCFCF)(OCF)OCFCHO−R
…(II)
[式中、Rは式(A)
【0024】
【化4】
Figure 0003888625
【0025】
で表される基、Rは水素原子または前記式(A)で表される基、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。]
で表される構造を有する化合物である上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
【0026】
(7)末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.1以下のものである上記(6)項に記載の磁気ディスク、
(8)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜した後で、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜して形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法、および
【0027】
(9)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物A)を分散溶解するフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Aを含む溶液で第1の潤滑層を形成し、その上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物B)は分散溶解するが、前記化合物Aを実質上分散溶解しないフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Bを含む溶液で第2の潤滑層を形成する上記(8)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
を提供するものである。
【0028】
また、前記磁気ディスクの製造方法の好ましい態様は、
(10)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、末端基の全水酸基数3個以上のものである上記(8)または(9)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(11)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、前記一般式(I)で表される構造を有する化合物である上記(10)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(12)末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.2以下のものである上記(11)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
【0029】
(13)末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、前記一般式(II)で表される構造を有する化合物である上記(8)ないし(12)項のいずれか1項に記載の磁気ディスクの製造方法、および
(14)末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.1以下のものである上記(13)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
である。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気ディスクは、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた構成を有しており、そして、前記潤滑層として、その保護層側、特に保護層と潤滑層との境界部分は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含み、一方表面側、すなわち磁気ディスクの最表面部分(磁気ヘッド側の磁気ディスク最表面部分)は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層を設けたものである。
【0031】
末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物からなる潤滑剤は、パーフルオロポリエーテル主鎖の柔軟な潤滑性能と、ホスファゼン環を有する末端官能基が備える高い耐熱性を兼ね備えており好適であるが、ホスファゼン環の保護層への付着性能が弱いため、磁気ヘッドに吸引されやすく、フライスティクション障害やマイグレーション障害が発生し易い。したがって、単独では好適に用いることが難しく、この点が本発明者らの検討課題であった。
【0032】
一方、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、パーフルオロポリエーテル主鎖の柔軟な潤滑性能と、水酸基を有する末端官能基の保護膜に対する高い付着性能を兼ね備えているので好適であるが、耐熱性が低いという点が本発明者らの検討課題であった。また、例えば、末端官能基の水酸基の数が多すぎると、保護膜に対する付着性能が強すぎる結果として、潤滑性能が損なわれ、ヘッドクラッシュ障害を起こしやすく、また、末端官能基の水酸基の数が少なすぎると、保護膜に対する付着性能が低下し過ぎ、フライスティクション障害や、マイグレーション障害を起こしやすく、好適に制御することが困難であった。したがって、単独では好適に用いることが難しく、この点が本発明者らの検討課題であった。
【0033】
ところが、本発明者らが、潤滑層の保護層側、特に保護層と潤滑層との境界部分を、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層とし、潤滑層の表面側、すなわち磁気ディスクの最表面部分(磁気ヘッド側の磁気ディスク最表面部分)は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層とする磁気ディスクを製造し、試験したところ、意外にも特異的に両者の好適な特性が相乗され、かつ、両者の欠点を抑制し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0034】
これは、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、主に潤滑層全体の保護層への付着力を高める付着促進層としての機能を働き、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、主に、潤滑層の熱分解に対して耐性を与える、耐熱層としての機能を働く結果によるものと考えられる。
【0035】
本発明においては、該潤滑層は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第1の潤滑層の上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第2の潤滑層を設けてなる構造の潤滑層であることが好ましい。前記第1の潤滑層と前記第2の潤滑層との間には、本発明の作用を損なわない範囲であれば、その他の潤滑層を設けてもよい。前記第1の潤滑層と前記第2の潤滑層が接してなる潤滑層が特に好適である。
【0036】
本発明においては、前記第1の潤滑層の膜厚は0.5〜1.2nmであることが好ましい。この膜厚が0.5nm未満では、保護層との付着性能が低下する場合がある。また、前記第2の潤滑層の膜厚は0.1〜0.6nmであることが好ましい。この膜厚が0.1nm未満では、耐熱性能を得るのに十分でなく、0.6nmを超えると、磁気ヘッド側への移着堆積が発生する場合があるので好ましくない。
【0037】
なお、本発明においては、前記第1の潤滑層と第2の潤滑層を含む、潤滑層全体の膜厚は0.6〜1.8nmであることが好ましい。この膜厚が0.6nm未満では、潤滑層の潤滑性能が十分でなく、ヘッドクラッシュ障害が発生する場合があり、また1.8nmを超えると、フライスティクション障害や腐食障害の原因となる場合があるので好ましくない。また、上記膜厚の範囲内で、前記第1の潤滑層の膜厚を、前記第2の潤滑層の膜厚に比べて同じか、それよりも厚くすると更に好適である。
【0038】
本発明において、前記潤滑層の保護層側に含有させる末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物としては、末端基の全水酸基数3個以上のものが好ましく用いられる。該全水酸基数が3個未満のものでは保護膜に対する付着性能が不十分であって、フライスティクション障害やマイグレーション障害を起こしやすい。また、該末端基の全水酸基数が多すぎると、保護膜に対する付着性能が強すぎ、その結果潤滑性能が損なわれ、ヘッドクラッシュ障害を起こしやすくなる。
【0039】
このような末端基に水酸基を有し、末端基の全水酸基数が好ましくは3個以上のパーフルオロポリエーテル化合物としては、特に制限はなく、磁気ディスクの潤滑層に使用し得る従来公知の化合物の中から、適宜選択して用いることができるが、中でも一般式(I)
【0040】
【化5】
Figure 0003888625
【0041】
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される構造を有する化合物を好ましく挙げることができる。
前記一般式(I)において、パーフルオロポリエーテル主鎖は、
−CF−(OC)−(OCF)−OCF
で表され、また末端基は、
【0042】
【化6】
Figure 0003888625
【0043】
で表される。
前記一般式(I)で表される化合物は、パーフルオロポリエーテル主鎖の両側の末端官能基に各々2つの水酸基を具備しており、保護層との親和性が適度に高く、潤滑層を好適に付着させることができる。
【0044】
この一般式(I)で表される化合物は、重量平均分子量が2000〜7000であって、分子量分散度が1.2以下であることが好ましい。このような分子量分布にすることで、磁気ディスク用として好適な潤滑性能を具備するパーフルオロポリエーテルの主鎖長(主鎖の長さ)を備える化合物からなる潤滑剤とすることができる。
【0045】
一般式(I)の化合物を含む潤滑剤にあっては、低分子量側に、一般式(I)の化合物に比べて、末端官能基が備える水酸基の数が少ない化合物を含有し易く、また、不純物も含有しやすいが、本発明のような分子量分布とすることで、これらの化合物及び異物を排除でき、本発明の作用を好適に発揮させることができる。特に、重量平均分子量を3000〜6000、分子量分散度が1.1以下のものが好適である。重量平均分子量が2000未満の場合は不純物が多く含まれる場合があるので好ましくなく、また、7000を超えると粘性が高くなりフライスティクションの原因となる場合があるので好ましくない。また、分子量分散度が1.2を超えると、分子量分布が広くなりすぎ、低分子量成分及び高分子量成分が含まれてしまうので好ましくない。
【0046】
前記一般式(I)で表される化合物において、pおよびqは、それぞれ1以上の整数であるが、該化合物の重量平均分子量が、好ましくは2000〜7000の範囲になるように適宜設定される。なお前記分子量分散度は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で表される。また、本発明においては、前記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、それぞれ分子量の異なるポリメチルメタクリレートを標準物質として測定された値である(以下、同様)。
【0047】
本発明において、潤滑層の表面側に含有させる末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物としては、特に制限はなく、磁気ディスクの潤滑層に使用し得る従来公知の化合物の中から、適宜選択して用いることができるが、中でも、一般式(II)
−OCHCF(OCFCF)(OCF)OCFCHO−R
…(II)
[式中、Rは式(A)
【0048】
【化7】
Figure 0003888625
【0049】
で表される基、Rは水素原子または前記式(A)で表される基、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。]
で表される構造を有する化合物を好ましく挙げることができる。
【0050】
前記一般式(II)において、パーフルオロポリエーテル主鎖は、
−CF(OCFCF)(OCF)OCF
で表され、また末端基は、
−OCH−、R−OCH
で表される。
【0051】
前記一般式(II)で表される化合物において、Rは前記式(A)で表される基である。この式(A)で表される基において、ホスファゼン環における3個のリン原子には、それぞれ2つの置換基、すなわち合計6つの置換基が導入され、その内の5つがトリフルオロメチルフェノキシ基であり、残りの1つがパーフルオロポリエーテルを主鎖とする基である。また、前記トリフルオロメチルフェノキシ基におけるCF基の位置については、特に制限はなく、o−、m−、p−位のいずれであってもよいが、性能の点からm−位が好ましい。
【0052】
前記一般式(II)で表される化合物において、Rが水素原子である場合には、パーフルオロポリエーテル主鎖の一方の側の末端基がホスファゼン環を有し、他方の側の末端基が水酸基を有する化合物(以下、化合物II−aと称す。)となる。また、Rが式(A)で表される基である場合には、パーフルオロポリエーテル主鎖の両側の末端基がホスファゼン環を有する化合物(以下、化合物II−bと称す。)となる。
【0053】
本発明においては、前記化合物II−aおよび化合物II−bのいずれも用いることができ、また、それぞれ単独で用いてもよいし、両者の混合物を用いてもよいが、保護層との付着性能の点から、化合物II−aが好ましい。また、化合物II−aと化合物II−bの混合物を用いる場合には、化合物II−aを主体とするものが好適である。
【0054】
前記一般式(II)で表される末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であって、分子量分散度は1.1以下であることが好ましい。このような分子量分布にすることで、磁気ディスク用として好適な潤滑性能を具備するパーフルオロポリエーテルの主鎖長(主鎖の長さ)を備える化合物からなる潤滑剤とすることができる。
【0055】
重量平均分子量が2000未満の場合は不純物が多く含まれる場合があるので好ましくなく、また、7000を超えると粘性が高くなりフライスティクションの原因となる場合があるので好ましくない。また、分子量分散度が1.1を超えると、分子量分布が広くなりすぎ、低分子量成分及び高分子量成分が含まれてしまうので好ましくない。
【0056】
前記一般式(II)で表される化合物において、mおよびnは、それぞれ1以上の整数であるが、該化合物の重量平均分子量が、好ましくは2000〜7000の範囲になるように適宜選定される。
【0057】
本発明において、前記一般式(I)で表される化合物および前記一般式(II)で表される化合物の分子量分布(重量平均分子量や分子量分散度)を調整する方法としては、分子量分画できる分子量精製方法であれば特に限定する必要はないが、超臨界抽出法で精製した化合物からなる潤滑剤であることが好ましい。超臨界抽出法で分子量分画すると、好適に前述の分子量分布を備える化合物からなる潤滑剤を得ることができる。
【0058】
本発明においては、潤滑層に、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来磁気ディスクの潤滑層用添加剤として知られている各種添加剤、例えばパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の劣化抑制剤などを、必要に応じ適宜含有させることができる。
【0059】
本発明はまた、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜した後で、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜して形成する磁気ディスクの製造方法をも提供する。
【0060】
このようにして潤滑層を形成することにより、該潤滑層の保護層側は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含み、かつ前記潤滑層の表面側は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む本発明の磁気ディスクを、好適に製造することができる。
【0061】
本発明の製造方法においては、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物A)を分散溶解するフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Aを含む溶液で第1の潤滑層を形成し、その上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物B)は分散溶解するが、前記化合物Aを実質上分散溶解しないフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Bを含む溶液で第2の潤滑層を形成することが好ましい。
このように成膜することで、前記第1の潤滑層に変化を与えることなく、前記第2の潤滑層を成膜できるので、潤滑層の性能や膜厚を好適に制御することができる。
【0062】
前記一般式(I)で表される化合物を分散溶解するフッ素系溶媒としては、例えば三井デュポンフロロケミカル社製バートレル(Vertrel)XFや、3M社製HFE7100などを挙げることができる。また、一般式(II)で表される化合物は分散溶解するが、一般式(I)で表される化合物を実質上分散溶解さないフッ素系溶媒としては、例えば3M社製PF5060やPF5080などを挙げることができる。なお、バートレル(Vertrel)XFは、一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物のいずれも分散溶解する。
本発明において、潤滑層の成膜方法は特に限定されず、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレイ法、ベーパーコート法などの成膜方法を用いることができる。
【0063】
本発明においては、潤滑層の成膜後に、磁気ディスクに熱処理を施すことが好ましい。この熱処理を施すことにより、潤滑層と保護層との密着性を向上させ、付着力を向上させることができるので、本発明にとって好適である。熱処理温度としては100〜180℃とすることが好ましい。この温度が100℃未満では、密着作用が十分ではなく、一方、180℃を超えると、潤滑剤が熱分解する場合があるので好ましくない。また、熱処理時間は30〜120分とすると好適である。この熱処理は、前記第1の潤滑層の成膜後と前記第2の潤滑層成膜前に施すと、前記第1の潤滑層の保護層への付着性能を更に高めることができ好適である。
【0064】
本発明においては、保護層は炭素系保護層であることが好ましい。炭素系保護層は、水酸基を有する末端官能基やホスファゼン環を有する末端官能基との親和性が高く、保護膜に対する潤滑層の付着性能を高めることができるので好適である。この炭素系保護層としては、水素化炭素保護層の他、窒化炭素保護層や、水素化窒化炭素保護層などが好ましい。この保護層の膜厚は3〜8nmであることが好ましい。この膜厚が3nm未満では保護層としての機能が十分でなくヘッドクラッシュ障害を起こす場合がある。また8nmを超えると、磁性層と磁気ヘッドとの距離が離れ過ぎるので、高S/N化にとって好ましくない。
【0065】
本発明においては、基板はガラス基板であることが好ましい。このガラス基板は平滑性に優れ、高記録密度化に好適である。ガラス基板としては、化学強化されたアルミノシリケートガラス基板が好適である。
本発明においては、基板の主表面粗さはRmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下であることが好ましい。このような平滑な基板にあっては、磁気ヘッドの浮上量を12nm以下とすることができる一方で、表面が平滑な故に潤滑層が移動し易いという問題があるが、本発明では、潤滑層の移動が抑制できるので特に好適である。なお、ここでいうRmax及びRaはJIS B0601の規定に基づくものである。
【0066】
本発明においては、磁性層は特に制限はなく、面内記録方式用磁性層であってもよいし、垂直記録方式用磁性層であってもよい。CoPt系磁性層であれば、高保磁力と高再生出力を得ることができるので好適である。
本発明の磁気ディスクにおいては、基板と磁性層との間に、必要により下地層を設けることができ、また、該下地層と基板との間にシード層を設けることもできる。前記下地層としては、Cr層、あるいはCrMo、CrW、CrV、CrTi合金層などが挙げられ、シード層としては、NiAlやAlRu合金層などが挙げられる。
【0067】
本発明は、LUL方式用磁気ディスクに適用するのが好適であるが、これに限らず、CSS方式用磁気ディスクや、接触記録方式用磁気ディスクに用いることができる。
【0068】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、磁気ディスクの性能は、以下に示す方法にしたがって評価した。
【0069】
(1)潤滑層付着性試験
保護層に対する潤滑層の付着性能を評価するために行なった。まず、磁気ディスクの潤滑層膜厚をFTIR(フーリエ変換型赤外分光光度計)法で測定する。次に磁気ディスクをフッ素系溶媒バートレル(Vertrel)XFに1分間浸漬させる。溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分は溶媒に分散溶解してしまうが、付着力の強い部分は保護層上に残留することができる。次に、磁気ディスクを溶媒から引き上げ、再び、FTIR法で潤滑層膜厚を測定する。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する、溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデッド(bonded)率)と呼称する。ボンデッド率が高ければ高いほど、保護層に対する潤滑層の付着性能が高いと言える。このボンデッド率は70%以上であることが好ましいとされる。
【0070】
(2)潤滑層被覆率
米国特許第6099981号明細書により知られているX線光電子分光分析法により、潤滑層被覆率を測定する。
潤滑層被覆率が高ければ高いほど、磁気ディスク表面が潤滑層によって一様に被覆されていることを示し、ヘッドクラッシュ障害や腐食障害を抑制することができる。すなわち、潤滑層被覆率が高いほど、磁気ディスク表面は防護されており、保護層表面の露出度が小さいので、磁気ディスク表面の潤滑性能が高いと共に、磁気ディスク装置内雰囲気に存在する、酸性系コンタミや、シロキサン系コンタミ等、腐食障害やフライスティクション障害の原因となり易い物質から磁気ディスク表面を防護することができる。
【0071】
(3)LUL耐久性試験
LUL試験は、5400rpmで回転する2.5インチ型(65mm型)磁気ディスク装置と、浮上量が12nmの磁気ヘッドにより行う。磁気ヘッドのスライダーはNPABスライダーであり、再生素子はGMR型磁気抵抗効果素子である。シールド部はNiFe合金からなる。磁気ディスクをこの磁気ディスク装置に搭載し、前述の磁気ヘッドによりLUL動作を連続して行い、LULの耐久回数を測定する。
【0072】
LUL耐久性試験後に、磁気ディスク表面および磁気ヘッド表面の観察を肉眼および光学顕微鏡で行い、傷や汚れなどの異常の有無を確認する。このLUL耐久性試験は40万回以上のLUL回数に故障無く耐久することが求められ、特に、60万回以上耐久すれば好適である。なお、通常に使用されるHDD(ハードディスクドライブ)の使用環境では、LUL回数が60万回を超えるには、概ね10年程度の使用が必要であると云われている。
【0073】
(4)フライスティクション試験
磁気ディスク100枚について、浮上量6nmのグライドヘッドでグライド試験を行うことで、フライスティクション現象が発生するかどうかを試験する。フライスティクション現象が発生すると、グライドヘッドの浮上姿勢が突然異常になるので、グライドヘッドに接着された圧電素子の信号をモニタすることで、フライスティクションの発生を感知することができる。
【0074】
実施例1
図1は、本発明の実施の一形態による磁気ディスクの層構造を模式的に示す断面図である。この磁気ディスク10は、基板1上にシード層2、下地層3、磁性層4、保護層5、潤滑層6が順次成膜されてなる。潤滑層6は第1の潤滑層6aと第2の潤滑層6bを備えている。
【0075】
基板1は、化学強化されたアルミノシリケートガラス基板であり、その主表面はRmaxが4.8nm、Raが0.43nmに鏡面研磨されている。また、基板直径は65mm、厚さは0.635mmの2.5インチ磁気ディスク用ガラス基板である。
【0076】
シード層2は、Ni:50モル%,Al:50モル%からなるNiAl合金であり、その膜厚は30nmである。
下地層3は、Cr:80モル%,Mo:20モル%からなるCrMo合金であり、その膜厚は8nmである。
【0077】
磁性層4は、Co:62モル%,Cr:20モル%, Pt:12モル%,B:6モル%からなるCoPt系合金であり、その膜厚は15nmである。
保護層5は、水素化炭素からなり、その膜厚は5nmである。
【0078】
潤滑層6aは、一般式(I)で表される末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有する潤滑層であり、その膜厚は0.8nmである。
潤滑層6bは、一般式(II)で表される末端基にホスァゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有する潤滑層であり、その膜厚は0.2nmである。
潤滑層6の膜厚は1nmである。
【0079】
次に、本実施例の磁気ディスク10の製造方法について説明する。
まず、基板1上にDCマグネトロンスパッタリング法により、Arガス雰囲気中で、順次、シード層2、下地層3、磁性層4を成膜した。引き続き、同様にDCマグネトロンスパッタリング法によりArガスと水素ガスの混合ガス(水素ガス含有量30体積%)雰囲気中で、炭素ターゲットによりスパッタリングを行い、保護層5を成膜した。
【0080】
次に、超臨界抽出法により、重量平均分子量が4000、分子量分散度が1.06に分子量精製した、一般式(I)で示される、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、フッ素系溶媒である、三井デュポンフロロケミカル社製バートレル(Vertrel)XFに0.02wt%の濃度で分散溶解させた溶液を調製した。
【0081】
この溶液を塗布液とし、保護層5まで成膜された磁気ディスク10を浸漬させ、ディップ法により潤滑層6aを塗布して成膜した。次いで、磁気ディスク10を真空焼成炉内で130℃で90分間熱処理を行った。FTIR法により、潤滑層6aの膜厚を測定したところ、0.8nmであった。
【0082】
次に、超臨界抽出法により、重量平均分子量が3000、分子量分散度は1.05に分子量精製した、一般式(II)で示される、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物(フェノキシ基に導入されているCF基はm−位であり、かつ片末端が水酸基を有する化合物と、両末端基にホスファゼン環を有する化合物との混合物)を、フッ素系溶媒である、3M社製PF5060に0.005wt%の濃度で分散溶解させた溶液を調整した。
【0083】
この溶液を塗布液とし、潤滑層6aまで成膜された磁気ディスク10を浸漬させ、ディップ法により潤滑層6bを塗布して成膜した。FTIR法により、潤滑層6の膜厚を測定したところ、1nmであった。
潤滑層6の膜厚と潤滑層6aの膜厚との差分は0.2nmであるので、潤滑層6bの膜厚は0.2nmということになる。
【0084】
なお、潤滑層6aまで成膜した磁気ディスクを、フッ素系溶媒3M社製PF5060に浸漬させて、潤滑層6aがPF5060に分散溶解するかどうかを試験したところ、浸漬前後共に、潤滑層6aの膜厚は0.8nmであったので、潤滑層6aは、PF5060に分散溶解しないことが確認された。
以上の製造方法により、本実施例の2.5インチ型磁気ディスク10を作製した。この磁気ディスクについて性能評価試験を行った。結果を表1、表2に示す。
【0085】
実施例2〜4および比較例1、2
実施例1において、潤滑層6における第1の潤滑層6aと第2の潤滑層6bの膜厚を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを製造した。
各磁気ディスクについて性能評価試験を行った。結果を表1、表2に示す。
【0086】
比較例3
実施例1において、潤滑層6として、HOCH−CFO−(CO)−(CFO)−CHOHの構造をもつ末端基に水酸基を有するパーフルオロアルキルポリエーテル化合物のみを用い、膜厚1nmのものを形成した以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。
この磁気ディスクについて性能評価試験を行った。結果を表1、表2に示す。
【0087】
【表1】
Figure 0003888625
【0088】
【表2】
Figure 0003888625
【0089】
表1、表2から分かるように、本発明の磁気ディスク(実施例1〜4)は、いずれもボンデッド率が70%以上であり、潤滑層被覆率が90%以上と高い。また、LUL耐久性試験において、いずれも耐久回数が60万回以上で、かつ耐久性試験後のディスク表面およびヘッド表面には、傷や汚れなどの異常は観察されなかった。さらに、いずれもフライスティクション現象は発生せず、試験通過率は100%であった。
【0090】
これに対し、一般式(I)の化合物のみ、あるいは一般式(II)の化合物のみを用いた単層の潤滑層を設けた磁気ディスク(比較例1、比較例2)、および従来の技術を用いた潤滑層を有する磁気ディスク(比較例3)では、潤滑層被覆率が低く、LUL耐久性試験において不良であり、かつフライスティクション現象も発生する。また、比較例2および比較例3では、ボンデッド率も低い。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、好適な潤滑性能や付着性能や耐熱性能や被覆性能を備える磁気ディスクが得られるので、フライスティクション障害や腐食障害やヘッドクラッシュ障害やマイグレーション障害などを抑制することができ、磁気ディスクの高容量化に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気ディスクの一実施形態の模式的断面図である。
【符号の説明】
10 磁気ディスク
1 基板
2 シード層
3 下地層
4 磁性層
5 保護層
6 潤滑層
6a 第1の潤滑層
6b 第2の潤滑層

Claims (11)

  1. 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられてなり、LUL方式のハードディスクドライブ(HDD)に搭載される磁気ディスクであって、前記潤滑層の保護層側は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含み、かつ前記潤滑層の表面側は、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含むことを特徴とする磁気ディスク。
  2. 潤滑層が、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第1の潤滑層の上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む第2の潤滑層を設けた構造のものである請求項1に記載の磁気ディスク。
  3. 末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、末端基の全水酸基数3個以上のものである請求項1または2に記載の磁気ディスク。
  4. 末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、一般式(I)
    Figure 0003888625
    (式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数である。)
    で表される構造を有する化合物である請求項3に記載の磁気ディスク。
  5. 末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.2以下のものである請求項4に記載の磁気ディスク。
  6. 末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、一般式(II)
    −OCHCF(OCFCF)(OCF)OCFCHO−R
    …(II)
    [式中、Rは式(A)
    Figure 0003888625
    で表される基、Rは水素原子または前記式(A)で表される基、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。]
    で表される構造を有する化合物である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  7. 末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、重量平均分子量2000〜7000であって、分子量分散度1.1以下のものである請求項6に記載の磁気ディスク。
  8. NPAB(負圧)スライダーを備える磁気ヘッドを有するハードディスクドライブ(HDD)に搭載される請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  9. 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成することにより、LUL方式のハードディスクドライブ(HDD)に搭載される磁気ディスク製造する方法であって、前記潤滑層を、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜した後で、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑剤を成膜して形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  10. 末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物A)を分散溶解するフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Aを含む溶液で第1の潤滑層を形成し、その上に、末端基にホスファゼン環を有するパーフルオロポリエーテル化合物(化合物B)は分散溶解するが、前記化合物Aを実質上分散溶解しないフッ素系溶媒を用いて調製された前記化合物Bを含む溶液で第2の潤滑層を形成する請求項に記載の磁気ディスクの製造方法。
  11. 請求項9又は10に記載の製造方法により得られた、LUL方式のハードディスクドライブ(HDD)に搭載される磁気ディスク。
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