JP3884601B2 - 壁紙用基材及び壁紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は建物の内装材として使用する壁紙用基材及び壁紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建物居室に使用する壁紙はビニール壁紙が一般的であった。ビニール壁紙は裏打ち紙に発泡性塩化ビニル樹脂ペーストをコーティングしたり、裏打ち紙に発泡性塩化ビニル樹脂フィルムを接着した後、模様を印刷し、更に発泡性塩化ビニル樹脂ペースト又はフィルムを加熱発泡させながらエンボスロール間を通し、エンボス模様を形成させて製造していた。このためビニール壁紙は適度なボリューム感、意匠性、耐久性、防汚性、防炎性があり、施工上の作業効率が良好で、しかも安価である。
【0003】
しかしながら、ビニール壁紙は分子構造中に塩素を含む塩化ビニルを主成分としているため、使用時には問題が無くとも廃棄時に焼却させるとダイオキシン類などの有害なガスを発生すると指摘されている。また、火災時には多量の塩化水素ガスなどの有害ガスを発生するという問題もかかえている。このような環境や安全性の問題から、塩化ビニルに代わる非ハロゲン素材からなる壁紙が求められている。
【0004】
このため、塩化ビニル素材に代わる非ハロゲン素材として紙や不織布など種々材料が検討されている。中でも不織布は用途毎の要求性能に合わせて、繊維や製造法を変えることが出きるため有望な素材である。しかしながら、不織布単体では模様の印刷時に伸びて模様がずれたりするため壁紙の製造が困難であり、また、一般的な壁紙施工は水性の接着剤が使用されるため、ビニール壁紙と同様に裏打ち紙がある方が好ましい。このため、不織布は裏打ち紙と接着剤で一体化した壁紙用基材とした後、印刷加工や表面仕上げ処理を行った壁紙も提案されている。
【0005】
この不織布を使用した壁紙として、例えば実公平5―24519には、繊維ウェブを高圧水流で繊維を絡合させた不織布と難燃紙等の裏打ち紙とを接着した壁紙が提案されている。この壁紙は繊維が嵩高な状態で絡合されており、反発弾性があり、感触の良い壁紙であり、表面を印刷することで装飾効果がさらに高まるものである。また、特許公報第2965926号には、壁紙用原紙の片面に、塩素を含まない有機繊維からなるパンチング不織布を接着剤で接着した後、この不織布面に熱成形可能な温度に加熱されたエンボスローラを圧接して凹凸模様を形成する壁紙の製造法が提案されている。
【0006】
これらいずれの方法においても実際には繊維が絡合された不織布と裏打ち紙を水性の液状接着剤などで貼り合わせているため、通気性のある壁紙である。このため、特に親水性であるレーヨンを含む不織布を使用した壁紙は、周囲が高湿度の時は湿気を吸収し、乾燥時には湿気を自然放出する事で湿度調整が出来、結露による水滴発生が少ない壁紙である。しかしながら、通気性のある壁紙を建物に施工する際には、壁紙の裏面(裏打ち紙)に水性の接着剤を塗布してから接着剤が乾燥してしまい、壁等に貼り付けられなくなるまでの時間、すなわち施工可能時間が短く、施工に手間が掛かるという問題があった。この施工可能時間が短い原因は、裏打ち紙に施工用の水性接着剤を塗布したとき、接着剤中の水分が裏打ち紙層へ浸透し、浸透した水分は裏打ち紙から更に不織布面へと短時間に移動し、壁紙表面(不織布)から水分の蒸発が多くなるために、接着剤の乾燥が促進されるためである。
【0007】
これを改善するため、例えば特許公報第2540209号には、天然、合成繊維よりなる不織布、織物、編物、糸を乾燥皮膜が25℃の測定で2000g/m2・24hr以下の透湿度を持つエマルジョンを用いて裏打ち紙と結合された壁紙が開示されている。ここに記載の発明は接着剤として特定のエマルジョンを用いることにより、施工時における接着剤の乾燥性を制御するものである。しかしながら、実際には接着剤の塗布量を乾燥後において80g/m2程度という大量に必要としている。そのため、この方法は重量の重い織物に対しては有効であるが、面密度が100g/m2以下程度の比較的軽い絡合不織布と裏打ち紙を、このように大量な接着剤を使用して接着すると、接着剤が不織布中に浸透してしまって不織布中の繊維間を接着するため、不織布の柔軟な風合いを失わせるものであった。
【0008】
また、特願平8−292191号には、セルロースを主体とする不織布などと裏打ち材とを、難燃処理された溶剤系接着剤でラミネートした壁紙が提案されている。この方法によれば、少量の接着樹脂で通気性を持たせながら施工可能時間を長く出来ることが示されている。しかし難燃処理された溶剤系接着剤は高価であり、また有害な溶剤を扱うためラミネート加工に特殊な設備を必要とするため、高価なものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、柔軟性に優れ、施工可能時間が長くて施工上の作業効率が良好であり、しかも安価な壁紙用基材及び壁紙を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、レーヨン繊維を50mass%以上含む、面密度が30〜100g/m2の絡合不織布と、面密度が80g/m2以上の裏打ち紙とが、ポリオレフィン系熱可塑性フィルム状樹脂(以下、「フィルム状樹脂」という)の溶融により接着一体化された壁紙用基材であり、この壁紙用基材の透湿度が250〜1000g/m2・24hrの壁紙用基材は、前記課題を解決できることを見い出したのである。つまり、本発明の壁紙用基材はフィルム状樹脂の溶融により絡合不織布と裏打ち紙とが接着されているため、フィルム状樹脂が絡合不織布内に浸透しておらず、絡合不織布の柔軟な風合いを損なうことがない。また、本発明の壁紙用基材はフィルム状樹脂の溶融により絡合不織布と裏打ち紙とが接着されているため、裏打ち紙に水性接着剤を塗布しても、接着剤中の水分が裏打ち紙層から更に絡合不織布面へと短時間に移動しないため、接着剤の乾燥を遅くすることができる、つまり施工可能時間を長くすることができる。更には、本発明の壁紙用基材はフィルム状樹脂の溶融により絡合不織布と裏打ち紙とが接着されていれば良く、特殊なフィルム及び設備を必要としないため安価なものである。
【0011】
本発明の壁紙は上記壁紙用基材を使用したものであるため、柔軟性に優れ、施工可能時間が長くて施工上の作業効率が良好であり、しかも安価である。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明による壁紙用基材の絡合不織布はレーヨン繊維を50mass%以上含んでおり、また絡合したものである。つまり接着剤を使用していないためレーヨン繊維の持つ光沢性を維持している。さらに、レーヨン繊維は親水性で、表面処理を施すことなく印刷できるため、意匠性を向上させる事が出きる。また、合成繊維に比べて燃焼時のエネルギーが低く、さらに発煙性も低いため、壁紙としての防炎性能を得ることが容易である。
【0013】
本発明におけるレーヨン繊維とは、再生セルロースよりなり、親水性や光沢感を持つ人造繊維で、例えば、普通のビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラなどをいう。
【0014】
このようなレーヨン繊維100mass%から絡合不織布が構成されていると、光沢感があり、また防炎性能もより優れている。例えば、裏打ち紙として実質的に難燃材を含まない一般紙を用いても、ポリオレフィン系のフィルム状樹脂を用いて接着一体化した壁紙用基材は、難燃剤加工を施さなくても壁紙に求められる防炎性を得ることができる。
しかしながら、レーヨン繊維は絡合不織布中50mass%以上含まれていれば良く、60mass%以上含まれているのがより好ましく、70mass%以上含まれているのが更に好ましく、前述のように100mass%からなるのが最も好ましい。
【0015】
このレーヨン繊維以外の繊維としては、例えば、高融点成分からなる芯成分と低融点成分からなる鞘成分からなる熱接着性繊維を使用することができる。例えば、この熱接着性繊維50mass%未満(0%を越える)とレーヨン繊維50mass%以上(100%未満)とを混合した繊維ウェブを、流体流(例えば、水流)で繊維同士を絡合させた後、熱接着性繊維の低融点成分の融点以上、高融点成分の軟化点以下の温度で熱処理すれば、同時に繊維間が熱接着されて、摩擦強度の強い絡合不織布となるため、結果として表面摩耗性の高い壁紙とすることができる。また、上記の熱接着性繊維を混合した絡合不織布を使用した壁紙用基材は、熱接着性繊維の低融点成分の融点以上に加熱した後、直ちに低融点成分の融点以下の温度のエンボスロール間を通すことにより、エンボス加工することも出来る。エンボス加工性をさらに上げるため、前記のような熱接着性繊維を多く含む層と前記のような熱接着性繊維の少ない層とを有する絡合不織布とし、この絡合不織布の熱接着性繊維を多く含む層側を壁紙用基材の表面側に位置させることもできる。
本発明の絡合不織布を構成する繊維は前記のようなレーヨン繊維や熱接着性繊維に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などの剛性のある合成繊維、或いは各種機能を有する機能性繊維(例えば、抗菌性繊維、脱臭性繊維、マイナスイオン発生繊維、遠赤外線発生繊維、光触媒混合繊維など)を混合することもできる。
【0016】
これら繊維の繊維長は特に限定するものではないが、繊維長が25mm以上の繊維長の長い繊維であると、繊維長の短いパルプ繊維などを抄紙した紙と全く異なる柔らかい感触を持つ壁紙とすることができる。
【0017】
本発明の壁紙用基材を構成する絡合不織布は文字通り絡合した不織布であり、例えば、水流などの流体流の作用で繊維が絡合した不織布である。この流体流により絡合させる方法によれば、比較的低面密度の繊維ウェブを嵩高な状態で絡合することが出来る。また、流体を噴出するノズルピッチを調整したり、流体流を作用させる際に繊維ウェブを支持する支持体の目開きを調整することにより、凹凸模様を付けることが出来る。例えば、この絡合不織布の凹凸模様が織物調であれば、織物壁紙に近い高級感のあるものとなる。
本発明の絡合不織布の面密度は30〜100g/m2である。面密度が30g/m2未満であると、壁紙の化粧層として意匠性やボリュウーム感が不足し、また面密度が100g/m2を越えると、流体流の作用で繊維を充分に絡合させることが困難で、耐摩耗性が悪くなる傾向にあるためで、より好ましい面密度は35〜80g/m2である。
【0018】
本発明の壁紙用基材は前述のような絡合不織布と裏打ち紙とが接着一体化されたものである。この裏打ち紙としては、ビニール壁紙、紙壁紙或いは織物壁紙などの裏打ち紙として通常使用されている紙を使用することができる。しかし、前述のように面密度が30〜100g/m2の絡合不織布は粗い構造のものであるため、裏打ち紙と接着一体化した壁紙用基材は壁面施工下地に対する隠蔽効果の低いものである。そのため、壁面施工下地に対する隠蔽性に優れるように、ビニール壁紙で使用されている裏打ち紙より重い、面密度が80g/m2以上の裏打ち紙を使用する。より好ましくは面密度が90g/m2以上の裏打ち紙を使用する。他方、裏打ち紙の面密度が150g/m2を越えると、壁紙施工時や壁紙加工時の作業性が劣る傾向があるため、150g/m2以下であるのが好ましく、130g/m2以下であるのがより好ましい。
この裏打ち紙として、不透明度(JIS−P―8138で測定した値)が95%以上のものを使用すれば、壁面施工下地に対する隠蔽性を更に向上させることができる。
また、壁紙に仕上げる際における印刷などの化粧を濃色とするなど、化粧層によって壁面施工下地に対する隠蔽性を更に向上させることもできる。
なお、本発明の絡合不織布はレーヨン繊維を含んでいるため、水を含むと伸びる。そのため、壁紙として施工した後における目開きを防止するために、裏打ち紙として、水中伸度が2%以下のものを使用するのが望ましい。この裏打ち紙の水中伸度(S)は次の式から得られる値をいう。
水中伸度(S)={(B−A)/A}×100
ここでAは裏打ち紙を水中に浸漬する前の幅方向(長手方向に対して直角方向)における長さを意味し、Bは裏打ち紙を30分間水中に浸漬した後の幅方向における長さを意味する。
【0019】
前述のような絡合不織布と裏打ち紙とを接着一体化するフィルム状樹脂はポリオレフィン系のものであり、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂などの樹脂からなる。これらポリオレフィン系樹脂は燃焼エネルギーや発煙量が低く、燃焼したときに有害なガスを発生しない。また、汎用的な樹脂で安価であり、レーヨン繊維を50mass%以上含む絡合不織布と裏打ち紙とを、少量の樹脂量で接着する事が出来る。このためレーヨン繊維を50mass%以上含む絡合不織布に難燃処理を施したり、裏打ち紙として難燃紙や不燃紙を使用することなく、JIS−A−1321(建設物の内装材料及び工法の難燃試験方法)に規定される表面試験に従った試験で、難燃2級以上を得ることが出来る。
このフィルム状樹脂による絡合不織布と裏打ち紙との接着一体化は、例えば、
(1)ポリオレフィン系熱可塑性フィルムを絡合不織布と裏打ち紙の間に挟んだ状態で、接着可能温度に加熱したロールで押圧する方法、(2)ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を押出機を用いて溶融し、Tダイから熱溶融したフィルム状のポリオレフィン系熱可塑性樹脂を、絡合不織布又は裏打ち紙上に押出し、そのフィルム状のポリオレフィン系熱可塑性樹脂の上に裏打ち紙又は絡合不織布を供給し、直ちに冷却ロール間で押圧する方法(いわゆる押出ラミネート加工)、などを挙げることができる。後者の押出ラミネート加工方法によると、ポリオレフィン系熱可塑性フィルムを作る工程が必要ないため、効率的な接着一体化方法である。
このようなフィルム状樹脂は、絡合不織布と裏打ち紙との充分な接着強度を得るために、単位面積あたり7g/m2以上であるのが好ましく、10g/m2以上であるのがより好ましい。他方、防火性に優れるように、35g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのがより好ましい。
【0020】
このように本発明の壁紙用基材は、絡合不織布と裏打ち紙とがフィルム状樹脂によって接着一体化されている、つまり絡合不織布と裏打ち紙の間に、水不透過性の層があるため、これを用いた壁紙は建物に施工する際に、その裏面(裏打ち紙)に水性の接着剤を塗布してから接着剤が乾燥し壁に貼り付けることが出来なくなるまでの時間、すなわち施工可能時間を大幅に長くすることが出きる。
しかしながら、施工可能時間を長くするために絡合不織布と裏打ち紙(面密度が80g/m2以上)とをフィルム状樹脂で接着一体化した壁紙用基材を使用した壁紙に対して、壁面に貼り付けるため裏打ち紙に水性接着剤を塗布すると、壁紙は裏打ち材と反対側(絡合不織布側)を内面として巻き込むように大きなカールが発生し、その後もこの状態が継続するため、実際には壁面へ貼り付けることが困難であった。すなわち、カールが大きいため、貼り付け作業に手間がかかったり、貼り付けた後に壁紙の両端部がめくれ上がった状態で接着剤が乾燥してしまうため、接着不良を発生しやすいという問題を含んでいた。この大きなカールが発生する理由は、裏打ち紙に水性接着剤を塗布すると、パルプを主体とする裏打ち紙は膨潤して伸びるのに対して、水性接着剤の水分の移行しない絡合不織布は伸びたりすることなく、そのままの状態を維持することになるため、絡合不織布側を内面としたカールが発生すると考えられた。
そこで、本発明においては、絡合不織布中におけるレーヨン繊維などの繊維をフィルム状樹脂中に食い込ませて、フィルム状樹脂に微細な空隙を発生させることにより、壁紙用基材の透湿度を大きくなるようにすれば、裏打ち紙に塗布した水系接着剤の水分が絡合不織布へ移動し、絡合不織布によって水分が吸収されることによって絡合不織布も伸びることによって、前記カールの問題を解決できることを見い出したのである。つまり、壁紙用基材の透湿度が250g/m2・24hr(より好ましくは300g/m2・24hr以上)であれば、短時間でカールの問題が解消されることを見い出したのである。
他方、この壁紙用基材の透湿度が高すぎると、短時間で水系接着剤の水分が絡合不織布へ移動してしまい、フィルム状樹脂を使用する本来の目的である施工可能時間が短くなってしまうため、壁紙用基材の透湿度の上限は1000g/m2・24hr(より好ましくは800g/m2・24hr)であることを見い出したのである。
このように壁紙用基材の透湿度は、例えば、使用するフィルム状樹脂の厚さ又は質量を変えたり、接着一体化する際の温度や圧力を変化させることにより調整することができる。
なお、この「透湿度」はJIS−Z−0280に規定された方法に準じて、40℃、90%RHの条件で測定した値をいう。
【0021】
本発明の壁紙用基材は絡合不織布表面に様々な模様や色を印刷して壁紙とすることができる。この模様や色の印刷には、一般的な印刷方法を用いることが出き、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセット印刷、転写印刷、活版印刷などを挙げることができる。
【0022】
なお、絡合不織布は表面の摩擦耐久性が低く、また嵩高であるため絡合不織布中に汚れが入りやすいため、表面強化処理及び/又は防汚処理を行うのが好ましい。前者の表面強化処理としては、例えば、アクリル樹脂エマルジョンやエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンなどの接着性樹脂による表面強化処理があり、後者の防汚処理としては、例えば、フッ素樹脂などによる撥水撥油処理がある。このような表面強化処理及び/又は防汚処理は、絡合不織布表面に模様や色を印刷した後に、或いは印刷と同時に実施することができる。これらの表面強化処理や防汚処理は、通常液状の処理剤を絡合不織布表面に適当量塗布することにより実施できる。
また、壁紙の意匠性を上げるため、例えばロータリースクリーン印刷時に発泡性樹脂を添加した場合、所定の防炎性能が得られないことがあるため、このような場合には印刷する前に難燃剤で処理するのが好ましい。
本発明の壁紙用基材を構成する絡合不織布は、親水性の高いレーヨン繊維を50%以上含んでいるため、液状の処理剤(例えば、表面強化処理、防汚処理、難燃処理など)で処理すると、処理剤が繊維の表面を覆いやすく処理効果を得やすいという効果を奏する。さらに裏打ち紙と絡合不織布の間にフィルム状樹脂層があり、液状の処理液が裏打ち紙に浸透する前に乾燥できるので、少量の処理剤で効果的に処理することが可能であり、風合いを損なわないという効果も奏する。
【0023】
【実施例】
以下、この発明について実施例を挙げて説明する。尚、これらの実施例は本発明の内容を何ら限定するものではない。
【0024】
「実施例1」
ビスコースレーヨン繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:40mm)100mass%をカーディング機を使用して繊維ウェブを作成した。この繊維ウェブを100メッシュの支持体で搬送しながら、直径0.13mmのオリフィスを有するノズルから繊維ウエブに対して10MPaの水流を噴射して繊維を絡合させ、乾燥して、面密度40g/m2、厚さ0.31mmの絡合不織布を得た。
この得られた絡合不織布と、面密度120g/m2の一般紙である壁紙用裏打ち紙(透気度:27sec./100ml、不透明度:95%、水中伸度:1.5%)の間に、厚さ30μm(マイクロメートル)の低密度ポリエチレン製フィルム(透湿度:25g/m2・24hr、面密度:27g/m2)を挿入し、コンベアーベルト間に挟み、温度140℃に加熱して前記フィルムを溶融させた後、加圧(圧力:196kPa)することにより絡合不織布と裏打ち紙とを接着一体化して、壁紙用基材(面密度:187g/m2)を得た。
得られた壁紙用基材の表面(絡合不織布側表面)は、ビニール壁紙のようなフィルム感はなく、また従来の紙とは異なるソフトな風合いで、ボリューム感のあるものであった。
【0025】
「実施例2」
厚さ30μm(マイクロメートル)の低密度ポリエチレン製フィルム(透湿度:25g/m2・24hr、面密度:27g/m2)に代えて、厚さ15μm(マイクロメートル)の低密度ポリエチレン製フィルム(透湿度:45g/m2・24hr、面密度:13.5g/m2)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして壁紙用基材(173.5g/m2)を作成した。
得られた壁紙用基材の表面(絡合不織布側表面)は、ビニール壁紙のようなフィルム感はなく、また従来の紙とは異なるソフトな風合いで、ボリューム感のあるものであった。
【0026】
「実施例3」
押出ラミネート加工機を用いて、押出機の内部で低密度ポリエチレンを加熱、加圧により溶融させた後、Tダイのスリットから溶融フィルムを押出し、実施例1と同様の裏打ち紙の上に、厚さが約15μmとなるように導き、直ちにこの溶融フィルム(面密度:13g/m2)の上に、実施例1と同様にして得た絡合不織布を被せ、冷却用スチールロールとゴムロールからなる駆動ロール間で加圧(圧力:196kPa)して絡合不織布と裏打ち紙とを接着一体化して、面密度173g/m2の壁紙用基材を得た。
得られた壁紙用基材の表面(絡合不織布側表面)は、ビニール壁紙のようなフィルム感はなく、また従来の紙とは異なるソフトな風合いで、ボリューム感のあるものであった。
【0027】
「比較例1」
厚さ30μm(マイクロメートル)の低密度ポリエチレン製フィルム(透湿度:25g/m2・24hr、面密度:27g/m2)に代えて、厚さ45μm(マイクロメートル)の低密度ポリエチレン製フィルム(透湿度:14g/m2・24hr、面密度:40.5g/m2)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして壁紙用基材(面密度:200.5g/m2)を作成した。
【0028】
「比較例2」
実施例3で使用した押出ラミネート加工機を用いて、押出機の内部で、実施例3と同様の低密度ポリエチレンを加熱、加圧により溶融した後、Tダイのスリットから溶融フィルムを押出し、実施例1と同様の裏打ち紙の上に、厚さが約15μmとなるように導き、直ちに冷却用スチールロールとゴムロールからなる駆動ロール間で加圧(圧力:196kPa)して、裏打ち紙上に低密度ポリエチレンのフィルム層を形成させた。
次いで、前記と同様の方法により、前記裏打ち紙のフィルム層上に、更に厚さが約15μmとなるように低密度ポリエチレンフィルムを導き、直ちにこの低密度ポリエチレンフィルム上に、実施例1と同様にして得た絡合不織布を被せ、冷却用スチールロールとゴムロールからなる駆動ロール間で加圧(圧力:196kPa)することにより絡合不織布と裏打ち紙とを接着一体化して、面密度191g/m2の壁紙用基材を得た。
【0029】
「比較例3」
実施例1と同様の裏打ち紙上に、濃度45%のエチレン・酢酸ビニル共重合エマルジョンをリバースロールコーターにより、乾燥時質量が20g/m2となるように塗布した。次いで、このエチレン・酢酸ビニル共重合エマルジョン上に、実施例1と同様にして得た絡合不織布を載せ、ロール間で軽く押圧した後、温度120℃に加熱したパルマドライヤーで乾燥して壁紙用基材(面密度:180g/m2)を得た。
【0030】
「比較例4」
コンベアーベルト間に挟んだ後の加熱を温度170℃で実施したこと以外は、実施例2と全く同様にして、壁紙用基材(面密度:173.5g/m2)を得た。
【0031】
(1)透湿度
JIS−Z−0280(透湿度カップ試験法)により、温度40℃、湿度90%RHの条件において、実施例1〜3及び比較例1〜4の透湿度を測定した。この結果は表1に示す通りであった。
【0032】
(2)施工可能時間
JIS−A−6922適合の壁紙施工用澱粉系糊と水とを1:0.7の割合で混合した水系接着剤を、接着剤量が150g/m2になるように、実施例1〜3及び比較例1〜4の各々の壁紙用基材の裏打ち紙面に均一に塗布し、接着剤を塗布した面が内側になるように二つ折りした状態で、温度20℃、湿度65%RHの室内に放置した。
次いで、30分ごとに二つ折りした壁紙用基材の一部を切り取ったサンプルを引き剥がすという操作を繰り返し、裏打ち紙同士が内部破壊することなく、引き剥がすことができなくなる時間(施工可能時間)を測定した。この結果は表1に示す通りであった。なお、施工可能時間は2時間以上であるのが好ましい。
【0033】
(3)カール解消性
JIS−A−6922適合の壁紙施工用澱粉系糊と水とを1:0.7の割合で混合した水系接着剤を、接着剤量が150g/m2になるように、実施例1〜3及び比較例1〜4の各々の壁紙用基材の裏打ち紙面に均一に塗布し、接着剤を塗布した面が内側になるように二つ折りした状態で、温度20℃、湿度65%RHの室内に放置した。
次いで、30分ごとに二つ折りした壁紙用基材から切り取った20cm角のサンプルを観察し、サンプルの4辺が密着しているかどうかを確認するという操作を繰り返し、サンプルの4辺が密着するまでの時間(カール解消時間)を測定した。この結果は表1に示す通りであった。なお、カール解消時間は1時間以内であるのが好ましい。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、透湿度が250〜1000g/m2・24hr程度の壁紙用基材は施工可能時間が長く、カール解消性も速いため、施工作業性の優れるものであることがわかった。
【0036】
(4)耐摩擦性
実施例2、3及び比較例3、4の壁紙用基材を用い、絡合不織布側にアクリル樹脂エマルジョン(日本ゼオン(株)製、ニッポールLX−851)を所定量キスコーターで塗布した後に乾燥して、表面強化処理を行った。
次いで、JIS−L−0849に規定される摩擦試験機II型を用いて、各々の壁紙用基材の絡合不織布面の湿潤摩擦試験を行った。なお、摩擦回数は25回とした。摩擦試験後の絡合不織布の表面状態をJIS−L−1076に規定されるピリング判定写真2に基づき、5〜1級で等級判定した。この結果は表2に示す通りであった。
【0037】
【表2】
【0038】
表2から明らかなように、本発明の壁紙は少量の接着剤でも耐摩耗性を向上させることができるため、風合いも優れるものであることがわかった。
【0039】
【発明の効果】
本発明の壁紙用基材は適度なボリューム感、意匠性を持っている。また、燃焼エネルギーが小さく、発煙量の少ないポリオレフィン系熱可塑性フィルム状樹脂の溶融により接着一体化されているので、防火性も良好である。さらに壁紙用基材の透湿度を250〜1000g/m2・24hrとする事により、施工可能時間を大幅に長くすることが出来、しかも壁面に貼り付け作業時のカール解消時間を短くできるため、施工性の良好な壁紙である。
Claims (2)
- レーヨン繊維を50mass%以上含む、面密度が30〜100g/m2の絡合不織布と、面密度が80g/m2以上の裏打ち紙とが、ポリオレフィン系熱可塑性フィルム状樹脂の溶融により接着一体化された壁紙用基材であり、この壁紙用基材の透湿度が250〜1000g/m2・24hrであることを特徴とする壁紙用基材。
- 請求項1に記載の壁紙用基材を使用したことを特徴とする壁紙。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36647399A JP3884601B2 (ja) | 1999-12-24 | 1999-12-24 | 壁紙用基材及び壁紙 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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