JP3882019B2 - 釣り用リールのドラグ機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドラグ機構、特に、釣り用リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をドラグ操作部材の操作により可変に制動可能な釣り用リールのドラグ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
両軸受リールや片軸受リールやスピニングリール等の釣り用リールには、スプールの糸繰り出し方向の回転を制動するドラグ機構が設けられている。ドラグ機構は、ドラグ操作部材の操作によりドラグ力を調整できる。
【0003】
一般に、釣り用リールのドラグ機構は、スプール又はスプールに連動する連動部材に設けられた第1ディスク部材と、第1ディスク部材に対向して設けられ、ドラグ操作部材の操作により第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材とを備えている。両軸受リールでは、ハンドル軸に螺合するスタードラグやリール本体に揺動自在に設けられたドラグレバー(ドラグ操作部材の一例)の操作により、第2ディスク部材を第1ディスク部材に対してハンドル軸やスプール軸の軸方向に相対移動させることで第1ディスク部材に圧接させてスプールを制動する。スピニングリールでは、スプール先端に設けられスプール軸に螺合するドラグつまみを回転させ、第2ディスク部材をスプール軸の軸方向に移動させることで第1ディスク部材に圧接させてスプールを制動する。
【0004】
この種の釣り用リールのドラグ機構では、ドラグ作動時に魚の引きにより相対回転する両ディスク部材の摩擦により両ディスク部材が発熱する。したがって両ディスク部材には耐摩耗性及び耐熱性を有しかつ冷却しやすい熱伝導率が良好な素材を用いるのが好ましい。
【0005】
耐摩耗性及び耐熱性を有し熱伝導率が良好な素材として、従来、フェノール樹脂を紙や織布に含浸させて積層成型したフェノール樹脂積層素材がディスク部材に使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のフェノール樹脂積層素材製のディスク部材は、耐摩耗性及び耐熱性が高く熱伝導率も良好でさらに軽量であるため、ドラグ機構のディスク部材として好適である。しかし、フェノール樹脂積層素材は、紙や織布にフェノール樹脂を含浸して製造しているため、摩耗により紙や織布が露出して紙や織布の内部に水が入るおそれがある。紙や織布の内部に水が入ると、水が入った部分と入っていない部分とで摩擦係数が変化し、ドラグ作動時にスムーズに釣り糸が繰り出されないしゃくり現象が生じる。これを抑えるためには、両ディスク部材の摩擦面にグリース等の潤滑油を塗らなければならない。潤滑油を摩擦面に塗ると摩擦係数が小さくなりディスク面積に比べて大きなドラグ力を得にくい。また、温度変化に伴って潤滑油の粘度が変化しドラグ力を一定に維持しにくい。さらに経年変化により摩擦面の粗度が変化してドラグ力が徐々に小さくなり、経年変化によってもドラグ力を一定に維持しにくい。
【0007】
本発明の課題は、釣り用リールのドラグ機構において、経年変化や温度変化によるドラグ性能の変動を抑え、かつ大きなドラグ力が得られるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る釣り用リールのドラグ機構は、釣り用リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をドラグ操作部材の操作により可変に制動可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向して設けられ、ドラグ操作部材の操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材は、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる。
【0009】
このドラグ機構では、ドラグ操作部材を操作して両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に設けられた第1ディスク部材と第1ディスク部材に対向して設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製である。グラファイトは、硬く耐摩耗性も良好でしかも均質性が高いので摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、熱膨張率が小さく熱伝導率が良好であり耐熱性も高い。このような性質のグラファイトをディスク部材に用いているので、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、回り止め部となる窪みをたとえば機械加工により形成した後に切断して回り止め部を得ているので、切断後に回り止め部を形成する場合に比べて回り止め部の形成が容易である。しかも、回り止め部を窪みで実現しているので、突起で実現する場合に比べて、回り止め部の形成が容易である。
【0010】
発明2に係る釣り用リールのドラグ機構は、釣り用リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をドラグ操作部材の操作により可変に制動可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向して設けられ、ドラグ操作部材の操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材は、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる。
【0011】
このドラグ機構では、ドラグ操作部材を操作して両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に設けられた第1ディスク部材と第1ディスク部材に対向して設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製である。グラファイトは、硬く耐摩耗性も良好でしかも均質性が高いので摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、熱膨張率が小さく熱伝導率が良好であり耐熱性も高い。このような性質のグラファイトをディスク部材に用いているので、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、押し出し成形や焼結により凸形状を有する棒状部材を形成して切断することにより、ディスク部材の均質性がより高くなるとともに、回り止めの相手物の製造が容易になる。
【0012】
発明3に係る釣り用リールのドラグ機構は、両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸に螺合するスタードラグの回動操作により可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプールを回転させるためにハンドル軸に回転自在に装着されたメインギアに圧接可能に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向しかつハンドル軸に回転不能に設けられ、スタードラグの回動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材には、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる。
【0013】
このドラグ機構では、スタードラグの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、メインギアに圧接可能に設けられた第1ディスク部材とハンドル軸に回転不能に設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してメインギアを介してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、回り止め部となる窪みをたとえば機械加工により形成した後に切断して回り止め部を得ているので、切断後に回り止め部を形成する場合に比べて回り止め部の形成が容易である。しかも、回り止め部を窪みで実現しているので、突起で実現する場合に比べて、回り止め部の形成が容易である。
【0014】
発明4に係る釣り用リールのドラグ機構は、両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸に螺合するスタードラグの回動操作により可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプールを回転させるためにハンドル軸に回転自在に装着されたメインギアに圧接可能に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向しかつハンドル軸に回転不能に設けられ、スタードラグの回動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラ ファイト製のディスク部材には、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる。
【0015】
このドラグ機構では、スタードラグの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、メインギアに圧接可能に設けられた第1ディスク部材とハンドル軸に回転不能に設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してメインギアを介してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、押し出し成形や焼結により凸形状を有する棒状部材を形成して切断することにより、ディスク部材の均質性がより高くなるとともに、回り止めの相手物の製造が容易になる。
【0016】
発明5に係る釣り用リールのドラグ機構は、両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をリール本体に揺動自在に装着されたドラグレバーの揺動操作によりスプール軸を軸方向に移動させて可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向して設けられ、ドラグレバーの揺動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材には、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる。
【0017】
このドラグ機構では、ドラグレバーの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に圧接可能に設けられた第1ディスク部材と第1ディスク部材に対向して設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、回り止め部となる窪みをたとえば機械加工により形成した後に切断して回り止め部を得ているので、切断後に回り止め部を形成する場合に比べて回り止め部の形成が容易である。しかも、回り止め部を窪みで実現しているので、突起で実現する場合に比べて、回り止め部の形成が容易である。
【0018】
発明6に係る釣り用リールのドラグ機構は、両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をリール本体に揺動自在に装着されたドラグレバーの揺動操作によりスプール軸を 軸方向に移動させて可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向して設けられ、ドラグレバーの揺動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材には、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる。
【0019】
このドラグ機構では、ドラグレバーの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に圧接可能に設けられた第1ディスク部材と第1ディスク部材に対向して設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、押し出し成形や焼結により凸形状を有する棒状部材を形成して切断することにより、ディスク部材の均質性がより高くなるとともに、回り止めの相手物の製造が容易になる。
【0020】
発明7に係る釣り用リールのドラグ機構は、スピニングリールのスプールの糸繰り出し方向の回転をスプール軸に螺合するドラグ操作つまみの回動操作により可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に回転不能に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向しかつスプール軸に回転不能に設けられ、ドラグ操作つまみの回動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材には、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる。
【0021】
このドラグ機構では、ドラグ操作つまみの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に設けられた第1ディスク部材とスプール軸に回転不能に設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、回り止め部となる窪みをたとえば機械加工により形成した後に切断して回り止め部を得ているので、切断後に回り止め部を形成する場合に比べて回 り止め部の形成が容易である。しかも、回り止め部を窪みで実現しているので、突起で実現する場合に比べて、回り止め部の形成が容易である。
【0022】
発明8に係る釣り用リールのドラグ機構は、スピニングリールのスプールの糸繰り出し方向の回転をスプール軸に螺合するドラグ操作つまみの回動操作により可変に制御可能な機構であって、第1ディスク部材と、第2ディスク部材とを備えている。第1ディスク部材は、スプール又はスプールに連動して回転する連動部材に回転不能に設けられた部材である。第2ディスク部材は、第1ディスク部材に対向しかつスプール軸に回転不能に設けられ、ドラグ操作つまみの回動操作により第1ディスク部材に圧接可能な部材である。この両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製である。また、グラファイト製のディスク部材には、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる。
【0023】
このドラグ機構では、ドラグ操作つまみの操作により両ディスク部材を圧接させた状態で魚の引き等によりスプールが糸繰り出し方向に回転すると、スプール又は連動部材に設けられた第1ディスク部材とスプール軸に回転不能に設けられた第2ディスク部材とが圧接しつつ相対回転してスプールが制動される。このとき摩擦により発熱するが、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるため、発明1と同様に摩耗しても摩擦係数が変化しにくい。また、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。また、ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めしているので、ディスク部材に作用するせん断力が小さくなり、ディスク部材をグラファイト製にしても強度を維持できる。さらに、棒状のグラファイト素材を切断してディスク部材を得ているので、ディスク部材の剥離が生じにくくなり耐久性が向上するとともに、ディスク部材の均質性が高くなる。さらにまた、押し出し成形や焼結により凸形状を有する棒状部材を形成して切断することにより、ディスク部材の均質性がより高くなるとともに、回り止めの相手物の製造が容易になる。
【0024】
発明9に係る釣り用リールのドラグ機構は、発明1から8のいずれかに記載の機構において、第1ディスク部材がグラファイト製である。この場合には、スプール又は連動部材(メインギアを含む)に設けられた第1ディスク部材がグラファイト製であるので、第1ディスク部材の外周側でスプール又は連動部材に回り止めすることで第1ディスク部材に作用するせん断力を小さくすることができ、第1ディスク部材をグラファイト製にしても第1ディスク部材の強度を維持できる。
【0025】
発明10に係る釣り用リールのドラグ機構は、発明1から9のいずれかに記載の機構において、第2ディスク部材がステンレス鋼製である。この場合には、第2ディスク部材が腐食しにくく耐久性が向上するとともに、第2ディスク部材の内周側でスプール軸などに回り止めしてせん断力が大きくなっても確実に回り止めできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、たとえば、5号の釣り糸を300m程度巻き付け可能な中型の丸型リールである。丸型リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、ハンドル組立体2のリール本体1側に配置されたスタードラグ3とを備えている。なお、この両軸受リールは、レベルワインド機構は有していない。
【0027】
リール本体1には、スプール15が回転自在に装着されている。リール本体1は、竿取付脚4を介して釣り竿RDに装着され得る。リール本体1は、図2に示すように、所定の間隔をあけて配置された左右1対の側板10,11と側板10,11を連結する複数の支持部材12とを有するフレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1カバー13及び第2カバー14と、第2カバー14に装着された機構装着板16とを有している。機構装着板16は側板11に接触して配置され、機構装着板16と第2カバー14との間には、後述する各種機構を収納するための空間が形成されている。
【0028】
フレーム5はダイキャスト成形により得られ、第2カバー14は、金属薄板をプレス成形して得られる。1対の側板10,11及び第1カバー13は、それぞれ側面から見て円形をなしており、外周面はたとえば旋盤等を用いて機械加工されている。第2カバー14及び機構装着板16は、図2及び図3に示すように、側面から見て円形の一部が径方向に突出した形状である。第2カバー14は、ハンドル軸30(後述)の装着部分を中心に軸方向外方にも膨出している。
【0029】
支持部材12は、両側板10,11の外周に沿う形状で両側板10,11と一体で形成された板状の部材であり、たとえばリール本体1の後部と下部と上部との3か所で1対の側板10,11を連結している。このように側板10,11と複数の支持部材12とを一体で形成することで、リール本体1に大きな荷重が作用しても撓み等の変形が生じがたく、巻上げ効率の低下が抑制される。この支持部材12の外周部と側板10,11とは一体で、第1カバー13と同様に機械加工されている。
【0030】
下部の支持部材12には竿取付脚4が固定されている。竿取付脚4は、フレーム5の側板10,11間の中心位置Fに沿って配置されている。この中心位置Fは、スプール15の糸巻取部の中心位置でもある。後部の支持部材12には、リールを釣り竿とともに保持するための合成樹脂製のサムレスト17が装着されている。
【0031】
サムレスト17は、支持部材12の上部と後部とに接するように形成され、かつ後部が側板10,11から径方向外方、つまり後方に突出している。サムレスト17の上面後部は、下方に凸に湾曲しながら傾斜している。また、サムレスト17の上面後部の左端及び右端は、後方への突出量が左側にいくにつれて徐々に減少している。
【0032】
このような形状のサムレスト17を設け、このサムレスト17にたとえば左手の親指を置いて他の指で釣り竿RDをつかみ釣り竿RDとともにリールを握ることで、バーチカルジギング時等に釣り竿RDをリールとともに確実に保持できる。
【0033】
ハンドル組立体2は、ハンドル軸30の先端に回転不能に装着されたクランクアーム6と、クランクアーム6の一端にクランクアーム6の一端部と直交する軸回りに回転自在に装着されたハンドル把手7と、ハンドル把手7をクランクアーム6に回転自在に装着するための回転支持部8とを有している。ハンドル組立体2において、クランクアーム6のハンドル軸30装着部分が回転支持部8装着部分よりリール本体1から離反している。つまり、ハンドル把手7の基端部の回転平面がクランクアーム6のハンドル軸30への固定部分の回転平面よりリール本体1側に接近している。
【0034】
クランクアーム6は、ハンドル軸30の径方向に延び2カ所で屈曲した平板状の金属製の部材である。クランクアーム6は、図2に示すように、ハンドル軸30の先端に形成された面取り部30aに回転不能に係止されており、固定ナット30bによりハンドル軸30に着脱自在に固定されている。
【0035】
スプール15は、図2に示すように、1対の側板10,11間に回転自在に配置されている。スプール15は、糸巻胴部15aと、糸巻胴部15aの両端に一体で形成されたフランジ部15bとを有している。スプール15の中心にはスプール軸25が貫通して固定されている。スプール軸25は第1カバー13及び機構装着板16に軸受26a,26bを介して回転自在に支持されている。
【0036】
機構装着板16と第2カバー14の間の空間には、ハンドル組立体2からのトルクをスプール15に伝えるための回転伝達機構20と、回転伝達機構20内に設けられたクラッチ機構21と、クラッチ機構21をオンオフ操作するためのクラッチ操作機構22とが配置されている。
【0037】
回転伝達機構20は、スプール15からハンドル組立体2側にトルクが逆に伝達された場合のトルクを規制するための回転制御機構23を含んでいる。また、側板11の中心部には糸繰り出し方向に自由回転するスプール15を制動するための遠心ブレーキ機構24が配置されている。側板10の外側で第1カバー13内には、スプール15回転時に発音させる発音機構や根がかりしたとき等にスプール15を完全にロックして糸切れしやすくするためのロック機構等が配置されている。
【0038】
回転伝達機構20は、一端にハンドル組立体2が固定されたハンドル軸30と、ハンドル軸30の他端に回転制御機構23を介して連結されたメインギア31と、メインギア31に噛み合うピニオンギア32とを有している。
【0039】
ハンドル軸30は、スプール軸25と平行に配置されており、一端側が機構装着板16に回転自在に支持されている。メインギア31は、ハンドル軸30に対して回転自在に装着されており、ハンドル軸30の一端側に回転制御機構23を介して相対回転不能に連結することが可能である。メインギア31の内周部には、リング状の収納空間31dが形成されている。また、メインギア31には、係止用の溝31bが収納空間31aの縁部に2カ所形成されている。このような構成では、クラッチ機構21がオンされた状態では、ハンドル組立体2からのトルクがメインギア31及びピニオンギア32を介してスプール15に直接伝達される。
【0040】
クラッチ機構21は、スプール軸25の外周部にスライド自在に装着された筒状のピニオンギア32と、ピニオンギア32の一部に配置された係合溝32aとスプール軸25に配置されたピン33とを有している。スプール軸25に沿ってピニオンギア32を摺動させて、係合溝32aをピン33と係合すれば、スプール軸25とピニオンギア32との間で回転力が伝達される。この状態が連結状態(クラッチオン状態)である。係合溝32aとピン33の係合を外せば、スプール軸25とピニオンギア32との間で回転力は伝達されない。この状態が遮断状態(クラッチオフ状態)である。クラッチオフ状態では、スプール15は自由に回転する。ピニオンギア32は、クラッチ操作機構22により係合溝32aとピン33とが係合する方向すなわちクラッチオン状態に付勢されている。クラッチ操作機構22は、リール本体1の第2カバー14に連結姿勢と遮断姿勢との間で揺動自在に装着されたクラッチレバー40を備えている。
【0041】
回転制御機構23は、ハンドル軸30を糸巻取方向にのみ回転させる(糸繰り出し方向の回転を禁止する)ローラ型のワンウェイクラッチ機構70と、スプール15の糸繰り出し方向の回転に対して設定したドラグ力を作用させるためのドラグ機構72と、ハンドル軸30を糸巻取方向にのみ回転させる爪式のラチェット機構74とを有している。
【0042】
なお、ハンドル軸30の逆転(糸繰り出し方向の回転)を禁止するだけであれば、ラチェット機構74のみを設けてワンウェイクラッチ機構70を省いてもよい。しかし、ラチェット機構74は、ラチェット爪がラチェットホイールに噛み合ったり外れたりする動作にある程度の時間がかかる。釣りの動作に要求される迅速で滑らかな逆転禁止動作を果たすには、前記のようなローラ型のワンウェイクラッチ機構70が好ましく、ワンウェイクラッチ機構70では負担できないような過大な力をラチェット機構74で負担することが有効である。
【0043】
ドラグ機構72は、図3に示すように、ハンドル軸30に螺合するスタードラグ3の操作によりドラグ力を調整可能である。ドラグ機構72は、メインギア31とワンウェイクラッチ機構70との間に順に配置された6枚のドラグディスク80〜85と、ワンウェイクラッチ機構70とスタードラグ3との間に配置された2枚の皿ばね92,93とを有している。皿ばね92とワンウェイクラッチ機構70との間には、ハンドル軸30を支回転自在に持するための転がり軸受90とワッシャ91とが配置されている。スタードラグ3と皿ばね93との間にはワッシャ94が配置されている。
【0044】
ドラグディスク80〜82は、メインギア31内の収納空間31a内に収納される。ドラグディスク80は、グラファイト製のリング状の部材であり、円筒棒状のグラファイト素材を切断して得られる。ドラグディスク80は、メインギア31に対向して配置されておりメインギア31に圧接可能である。ドラグディスク81は、ハンドル軸30に形成された第1角形部30dに係止される四角形の中心孔81aを有している。このため、ドラグディスク81は、ハンドル軸30に対して回転不能でありドラグディスク80と相対回転可能である。ドラグディスク81はたとえばステンレス合金製である。ドラグディスク82は、グラファイト製のリング状の部材であり、ドラグディスク80と同様に円筒棒状のグラファイト素材を切断して得られる。ドラグディスク82は、ハンドル軸30に対して回転自在である。
【0045】
なお、ハンドル軸30には、第1角形部30dの図3左側に間隔を隔てて第2角形部30eが形成されており、第2角形部30eには鍔部30fも形成されている。この第2角形部30eには、ラチェット機構74を構成するラチェットホイール74aが回転不能に装着されており、ラチェットホイール74aとメインギア31との間には、ワッシャ95がラチェットホイール74aとメインギア31に圧接可能に装着されている。
【0046】
ドラグディスク83は、ステンレス合金製のリング状の部材でありハンドル軸30に対して回転自在である。ドラグディスク83の周縁部の対向する2カ所には、メインギア31側に延びる係止片83aが形成されている。係止片83aは、メインギア31の係止用の溝31bに係止される。この結果、ドラグディスク83は、メインギア31と一体回転する。ドラグディスク84は、グラファイト製のリング状の部材である。ドラグディスク85は、ステンレス製のリング状の部材であり、内周部にハンドル軸30の面取り部30aに回転不能に係止される小判孔85aが形成されている。このため、ドラグディスク85は、ハンドル軸30に対して回転不能である。また、この内周部の対向する2カ所には、係止凹部85bが形成されている。この係止凹部85bには、ワンウェイクラッチ機構70を構成する内輪86が回転不能に連結されている。この内輪86の一端には、係止凹部85bにはめ込まれる1対の係止突起86aがドラグディスク85側に突出している。内輪86の他端は転がり軸受90に接触している。これにより内輪86は、ハンドル軸30とともに回転するようになっている。
【0047】
皿ばね92、93は、周縁部が接触するように配置されている。皿ばね92,93は、各ドラグディスク80〜85への圧接力を調節するために設けられている。
【0048】
次に、リールの動作について説明する。
【0049】
釣りを行う前には、スタードラグ3を回転させてドラグ力を調整する。ドラグ力を調整する場合には、ばね秤や目標とする魚と同程度の重さを有する重りを釣り糸の先端に連結し、連結したはかりや重りを引っ張って所望のドラグ力が発生するようにスタードラグ3を回転させる。
【0050】
スタードラグ3を図3時計回りに回転させると、ハンドル軸30に螺合するスタードラグ3がリール本体1に近づく方向に軸方向に移動する。これにより皿ばね92,93が撓んでワッシャ91,転がり軸受90及び内輪86をハンドル軸30の基端側(図3左側)に押圧する。すると、各ドラグディスク80〜85及びメインギア31の圧接力が高まりドラグ力が強くなる。逆にスタードラグ3を反時計回りに回転させると、スタードラグ3がハンドル軸30の先端側に移動し、各ドラグディスク80〜85及びメインギア31の圧接力が低まりドラグ力が弱くなる。
【0051】
釣り糸を繰り出す時には、クラッチレバー40によりクラッチ機構21をクラッチオフ状態にする。これによりスプール15が自由回転状態になり、ジグ(仕掛け)の自重によりスプール15が糸繰り出し方向に回転し、釣り糸がスプール15から繰り出される。ジグが海底に到達するとハンドル組立体2を糸巻取方向に回転させてバーチカルジギングを開始する。ハンドル組立体2を糸巻取方向に回転させると図示しないクラッチリターン機構によりクラッチオン状態になる。
【0052】
バーチカルジギングを行うときには、たとえば、左の脇に釣り竿RDの図示しない後端部を挟み、リール本体1の後部に固定されたサムレスト17に左手の親指を置き、残りの指で釣り竿を掴んでリールと釣り竿RDとを保持し、左手で釣り竿RDをしゃくりつつ右手でハンドル組立体2のハンドル把手7をつまみ、高速でハンドル軸30を回すポンピング動作を繰り返す。
【0053】
ハンドル組立体2を糸巻取方向に回転させると、ハンドル組立体2の回転がハンドル軸30からワンウェイクラッチ機構70、ドラグ機構72を介してメインギア31にそのまま伝達される。このときクラッチ機構21はオン状態のため、メインギア31の回転はピニオンギア32からスプール15に伝達されて、釣り糸が巻き上げられる。このとき、ワンウェイクラッチ機構70及びラチェット機構74では、回転が糸巻取方向であるので回転を許容する。
【0054】
魚の引きなどで釣り糸が繰り出される際には、スプール15の回転がメインギア31に伝達され、ドラグ機構72を介してハンドル軸30およびワンウェイクラッチ機構70に伝わる。ワンウェイクラッチ機構70ではハンドル軸30の逆転が禁止される。魚の引きが弱ければ、スプール15は回転せず釣り糸が引き出されることもない。そして、魚の引きが強くなりスプール15の回転力が大きくなると、伝達される回転力がドラグ機構72の設定されたドラグ力を超える。すると、ドラグ機構72でドラグディスク80〜85の滑りが生じるので、メインギア31を含むスプール15側は回転を始める。このとき、スプール15には常にドラグ機構72から一定の抵抗力すなわちドラグ力が作用する。このドラグ力が作用するときドラグディスク80〜85の一部がグラファイト製であるので、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。
【0055】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、スタードラグ型の両軸受リールを例に説明したが、図4に示すレバードラグ型の両軸受リールや図5に示す片軸受リールや図6に示すスピニングリール等のドラグ機構を有する全ての釣り用リールに本発明を適用できる。
【0056】
図4において、レバードラグ型の両軸受リールは、スプール105とスプール軸106とがクラッチ機構107を介して連結されたリールである。
【0057】
スプール105を制動するドラグ機構100は、ドラグレバー101の揺動操作によりスプール軸106が軸方向に移動してドラグ力が調整される。ドラグ機構100は、ハンドル102の回転を伝達する回転伝達機構103の途中に配置されている。ドラグ機構100は、スプール軸106に回転不能に装着された第1ドラグ部110と、回転伝達機構103に連結された第2ドラグ部111とを備えている。回転伝達機構103は、糸繰り出し方向の回転が禁止されている。両ドラグ部110,111は圧接可能に対向して配置されており、ドラグレバー101を操作すると第1ドラグ部110がスプール軸106とともに軸方向に移動し、第2ドラグ部111との圧接力が変化しドラグ力が調整される。この第2ドラグ部110には、グラファイト製のドラグディスク110aが固着されており、第2ドラグ部111にはドラグディスク110aに対向してステンレス合金製のドラグディスク111aが固着されている。
【0058】
このような構成のドラグ機構100でも、設定されたドラグ力を超える魚の引きによりスプール105が糸繰り出し方向に回転して第2ドラグ部111に対して第1ドラグ部110が回転すると、前記実施形態と同様な効果が得られる。
【0059】
なお、レバードラグ型の両軸受リールにおいて、スプールに直接ドラグディスクを固着した形態のものにおいても同様な効果が得られる。
【0060】
図5において、片軸受リールは、ハンドル120によりスプール121を直接回転させるリールである。
【0061】
スプール121を制動するドラグ機構122は、ドラグつまみ123の揺動操作によりドラグ力が調整される。ドラグ機構122は、スプール121内部に配置されている。ドラグ機構122は、スプール軸130にワンウェイクラッチ124を介して連結された筒状のホルダ125と、ドラグディスク126と、ドラグディスク126を押圧するための押圧機構127とを備えている。ホルダ125の一端面は、2枚のワッシャ128,129を介してスプール121の内側端面に当接している。ワンウェイクラッチ124は、ホルダ125がスプール軸130に対して糸巻上げ方向に回転するのは許容するが、糸繰り出し方向に相対回転するのは禁止する。ドラグディスク126はグラファイト製のリング状の部材であり、ホルダ125の他端面と押圧機構127との間に両者に接触可能に配置されている。
【0062】
このような実施形態においても、手で釣り糸を引っぱり出すときや魚の引きにより釣り糸が繰り出されるときに前記同様な効果が得られる。
【0063】
図6において、スピニングリールは、スプール140にロータ141により案内された釣り糸が巻き付けられるリールである。スプール140は前後にのみ移動するとともに、スプール軸142に回転自在に装着されている。
【0064】
ドラグ機構145は、スプール140とスプール軸142との間に配置され、スプール140の回転を制動する。ドラグ機構145は、スプール軸の先端に螺合したドラグつまみ146の回動操作によりドラグ力が調整される。ドラグ機構145は、ドラグつまみ146とスプール140との間に配置された4枚のドラグディスク150〜153を備えている。ドラグディスク150は、ステンレス合金製のリング状の部材であり、内周部でスプール軸142に回転不能に装着されている。ドラグディスク151,153は、グラファイト製のリング状の部材でありスプール140及びスプール軸142のいずれにも回転自在である。ドラグディスク152は、ドラグディスク151,153の間に配置され、外周部でスプール140の内周部に回転不能に装着されている。ドラグディスク153は、スプール140に発音機構155を介して当接している。
【0065】
このような構成のドラグ機構145でも、設定されたドラグ力を超える魚の引きによりスプール140が糸繰り出し方向に回転してドラグディスク150〜153が相対回転すると、前記実施形態と同様な効果が得られる。
【0066】
(b) 前記実施形態では、グラファイト製のドラグディスクに回り止め部を設けていないが、図7に示すように、グラファイト製のドラグディスク160の外周部にスプール等の他の部材との回り止めを行う窪みで形成された回り止め部161を設けてもよい。この場合、棒状のグラファイト素材に予め機械加工により窪みを形成し切断することで、窪みからなる回り止め部161を有するドラグディスク160が得られる。
【0067】
なお、図8に示すように、回り止め部163を突起で形成してもよい。この場合には、押し出し加工や焼結等により棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に延びる突起を形成した後に切断することで、突起からなる回り止め部を有するディスク部材162が得られる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも一方のディスク部材がグラファイト製であるので、摩耗してもドラグ力が変動しにくく、経年変化によるドラグ性能の変動が少ない。しかも、グリース等の潤滑油を塗布する必要がないので、温度変化によるドラグ性能の変動を抑えられるとともに摩擦係数を高く維持でき大きなドラグ力を得やすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】 その断面図。
【図3】 ドラグ機構の分解斜視図。
【図4】 他の実施形態の図2に相当する図。
【図5】 他の実施形態の図2に相当する図。
【図6】 他の実施形態の図2に相当する図。
【図7】 ドラグディスクの変形例の正面図。
【図8】 ドラグディスクの変形例の正面図。
【符号の説明】
1 リール本体
3 スタードラグ
15,105,121,140 スプール
72,100,122,145 ドラグ機構
80〜85,110a,111a,126,150〜153,160 ドラグディスク
101 ドラグレバー
123,142 ドラグつまみ
161 回り止め部
Claims (10)
- 釣り用リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をドラグ操作部材の操作により可変に制動可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能に設けられ、前記ドラグ操作部材の操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 釣り用リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をドラグ操作部材の操作により可変に制動可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能に設けられ、前記ドラグ操作部材の操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸に螺合するスタードラグの回動操作により可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプールを回転させるために前記ハンドル軸に回転自在に装着されたメインギアに圧接可能に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能かつ前記ハンドル軸に回転不能に設けられ、前記スタードラグの回動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸に螺合するスタードラグの回動操作により可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプールを回転させるために前記ハンドル軸に回転自在に装着されたメインギアに圧接可能に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能かつ前記ハンドル軸に回転不能に設けられ、前記スタードラグの回動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に突起で形成された回り止め部が設けら れており、
前記回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をリール本体に揺動自在に装着されたドラグレバーの揺動操作によりスプール軸を軸方向に移動させて可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能に設けられ、前記ドラグレバーの揺動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に窪みで形成された1回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 両軸受リールのスプールの糸繰り出し方向の回転をリール本体に揺動自在に装着されたドラグレバーの揺動操作によりスプール軸を軸方向に移動させて可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向して相対回転可能に設けられ、前記ドラグレバーの揺動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - スピニングリールのスプールの糸繰り出し方向の回転をスプール軸に螺合するドラグ操作つまみの回動操作により可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に回転不能に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向しかつ前記スプール軸に回転不能に設けられ、前記ドラグ操作つまみの回動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に窪みで形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、棒状のグラファイト素材の外周面に軸方向に長い窪みを形成した後切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - スピニングリールのスプールの糸繰り出し方向の回転をスプール軸に螺合するドラグ操作つまみの回動操作により可変に制御可能な釣り用リールのドラグ機構であって、
前記スプール又は前記スプールに連動して回転する連動部材に回転不能に設けられた第1ディスク部材と、
前記第1ディスク部材に対向しかつ前記スプール軸に回転不能に設けられ、前記ドラグ操作つまみの回動操作により前記第1ディスク部材に圧接可能な第2ディスク部材と、を備え、
前記両ディスク部材のうち少なくとも一方はグラファイト製であり、
前記グラファイト製のディスク部材は、外周側に突起で形成された回り止め部が設けられており、
前記回り止め部は、外周面の軸方向に延びる凸形状が形成された棒状のグラファイト素材を切断することで得られる、釣り用リールのドラグ機構。 - 前記第1ディスク部材がグラファイト製である、請求項1から8のいずれかに記載の釣り用リールのドラグ機構。
- 前記第2ディスク部材がステンレス鋼製である、請求項1から9のいずれかに記載の釣り用リールのドラグ機構。
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