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JP3867903B2 - 歯列矯正部材の製造方法 - Google Patents

歯列矯正部材の製造方法 Download PDF

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JP3867903B2
JP3867903B2 JP2002089803A JP2002089803A JP3867903B2 JP 3867903 B2 JP3867903 B2 JP 3867903B2 JP 2002089803 A JP2002089803 A JP 2002089803A JP 2002089803 A JP2002089803 A JP 2002089803A JP 3867903 B2 JP3867903 B2 JP 3867903B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯列矯正部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
口腔内で使用される歯科用器具(歯科用部品)として、歯列を矯正する歯列矯正用ブラケットおよびワイヤーが知られている。
【0003】
歯列矯正用ブラケット(以下単に「ブラケット」と言う)は、歯牙に接着固定される基部と、この基部の上部に形成された係合部とを有し、係合部に形成されたスロット内にワイヤーを挿通し、このワイヤーを緊張して歯列を矯正するものである。
【0004】
このようなブラケットは、金属材料またはセラミックスで構成されており、次のような方法により製造(加工)されていた。
【0005】
[1]金属またはセラミックス製の板材に機械加工を施して所望の形状を得る方法。
[2]金属製の板材に放電加工を施して所望の形状を得る方法。
[3]金属またはセラミックスの粉体とバインダーとを混練してなるコンパウンドを所望の形状に射出成形し(MIM)、得られた成形体を脱脂、焼結する方法。
【0006】
しかしながら、上記[1]の方法では、複雑な形状のブラケットを全て機械加工により製造するため、製造に多大な手間と時間がかかり、量産には不向きであるという問題がある。さらに、セラミックス製のものは、硬度が高いため、機械加工が困難であり、適用可能な素材に制約があるという問題もある。
【0007】
また、上記[2]の方法でも、複雑な形状のブラケットを製造するには、多大な手間と時間がかかり、また、材料に導電性を要することから、セラミックス製のものには適用できないという問題がある。
また、上記[3]の方法では、例えば長さが異なるブラケットを製造しようとする場合、それ毎に成形金型を用意しなければならないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製造が容易で、量産に適し、材料選択の幅が広い歯列矯正部材の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)の本発明により達成される。
【0010】
(1) 原料粉末を含むコンパウンドを用いて、押出成形により、歯列矯正部材の横断面形状に対応する断面形状の長尺な成形体を得る成形工程と、
ダイシングマシンを用いた機械加工により、前記長尺な成形体にスロットに対応する溝を形成する工程と、
前記溝が形成された長尺な成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
前記切断された成形体に対し脱脂処理を施して脱脂体を得る脱脂工程と、
前記脱脂処理がなされた脱脂体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを有することを特徴とする歯列矯正部材の製造方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の歯列矯正部材の製造方法について、添付図面に示す好適な実施形態に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の歯列矯正部材の製造方法の第1実施形態を示す工程図、図2は、本発明の歯列矯正部材(歯列矯正用ブラケット)の構成例を示す斜視図、図3は、図2に示す歯列矯正部材の底面図、図4は、本発明の製造方法の製造工程で得られる長尺な成形体の構成例を示す斜視図である。
【0031】
まず、歯列矯正部材の例として、歯列矯正用ブラケットの構成例について、図2、図3に基づき説明する。図2に示すように、歯列矯正用ブラケット(以下単に「ブラケット」と言う)1は、板状の基部(ブラケットベース、ブラケットステム)2と、該基部2より突出形成された係合部(タイウイング)3とで構成されている。
【0032】
係合部3には、その中央部に、図示しないワイヤーが挿通されるスロット(溝)4が形成されている。このスロット4は、後述する長尺成形体10の長手方向と平行な方向に延在している。
【0033】
また、係合部3には、スロット4と交差し、長尺成形体10の長手方向と直交する方向に伸びるもう一つのスロット(溝)5が形成されている。これらスロット4および5により、係合部3は、外方に向かって広がる2対の爪状の突部31、32、33および34に分割されている。
【0034】
なお、本実施形態におけるスロット4、5の断面形状は、それぞれ、矩形をなしているが、これに限らず、例えば、V字状、U字状であってもよい。
【0035】
このようなブラケット1は、基部2の底面(裏面)6を接着剤により歯牙に接着、固定して使用される。この接着強度を高めるために、基部2の底面6には、微小な凹凸61が形成されている。
【0036】
図示の構成では、凹凸61は、格子状に形成されたものであるが、例えば、筋目状に形成された溝や、規則的または不規則(散点状)に配置された凸部(突起)または凹部(ディンプル)等であってもよい。
【0037】
次に、歯列矯正部材の製造方法の第1実施形態について、図1、図2、図3および図4に基づき説明する。
【0038】
[1A]成形体の製造
本発明では、原料粉末を含む混合物(コンパウンド)を用いて押出成形法(押出成形)により成形体を製造する。
【0039】
この押出成形法は、コンパウンドを押出成形機のシリンダーの中に供給し、加圧してダイ(成形金型)の口部から押し出し、横断面形状を規制しつつ連続的に押し出す加工方法である。この加工方法は、長尺な成形体(長尺成形体10)を連続的に製造できるという利点がある。
【0040】
特に、シリンダーおよび成形金型を加熱する押出成形の場合、混合物の押出抵抗を減少することができ、成形性に優れ、より好ましい。
【0041】
以下、押出成形法による成形体の製造について説明する。
まず、原料粉末と結合材(有機バインダー)とを用意し、これらを混練機により混練し、混練物を得る。
【0042】
この原料粉末には、金属粉末やセラミックス粉末等が挙げられる。
金属粉末を構成する金属材料としては、例えばTiまたはTi系合金、ステンレス鋼等が挙げられるが、生体適合性に優れるという点で、TiまたはTi系合金が好ましい。
【0043】
金属粉末の平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.5〜150μm以下が好ましく、1〜100μm程度がより好ましい。
【0044】
本発明では、押出成形により成形するため、比較的小さい粒径の金属粉末を用いることができる。その結果、最終的に得られるブラケット1の焼結密度を高くすることができ、高い強度が得られる。
【0045】
なお、金属粉末の製造方法は、特に限定されず、例えば、水またはガスアトマイズ法、還元法、カルボニル法、粉砕法により製造されたものを用いることができる。
【0046】
次に、セラミックス粉末を構成するセラミックス材料(以下単に「セラミックス材料」と言う)としては、特に限定されず、例えば、ZrO(部分安定化ジルコニアを含む)、Y、Al、TiOのような酸化物系セラミックスや、ヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウム系セラミックスが挙げられる。
【0047】
セラミックス粉末の平均粒径は、特に限定されないが、通常、30μm以下が好ましく、0.1〜10μm程度がより好ましい。
【0048】
本発明では、押出成形により成形するため、比較的小さい粒径のセラミックス粉末でも容易に成形することができる。その結果、最終的に得られるブラケット1の焼結密度を高くすることができ、高い強度が得られる。
【0049】
なお、セラミックス粉末の製造方法は、特に限定されず、例えば、粉砕、噴霧熱分解法、共沈法、ガラス結晶化法、ゾル−ゲル法により製造されたものを用いることができる。
【0050】
結合材(バインダー)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、またはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
また、さらに可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
なお、前記混練に際しては、前記原料粉末、結合材、可塑剤の他に、例えば、潤滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することができる。
【0053】
混練条件は、用いる金属粉末あるいはセラミックス粉末の組成や粒径、結合材、添加剤の組成およびその配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:35〜270℃程度、混練時間:10〜240分程度とすることができる。
【0054】
本発明では、押出成形法によるため、粉末射出成形法(MIM法等)に比べ、高い流動性が要求されないため、コンパンド中の結合材等の含有量をより少なくすることができる。これにより、第一に、空孔率が小さく焼結密度の高い焼結体が得られ、結果として、高強度の歯列矯正部材が得られる。また、表面の空孔が少なくなるので、歯列矯正部材は、食べかすや雑菌等が入りにくいものとなる。第二に、TiまたはTi系合金で構成する場合、焼結体中のC量およびO量を減らすことができ、靭性の高い歯列矯正部材が得られる。
【0055】
次に、前記で得られた混練物を用いて、押出成形機により押出し、所望の断面形状の長尺成形体10を製造する。
【0056】
この場合、押出成形機に取付けられる押出ダイ(成形金型)を選択することにより、長尺成形体10の横断面形状が定まる。この横断面形状は、長尺成形体10の全長に渡って一定である。なお、製造される長尺成形体10の横断面形状、寸法は、以後の脱脂および焼結による成形体の収縮分を見込んで決定される。
【0057】
また、長尺成形体10の長さは、特に限定されず、例えば、20〜400mm程度とすることができる。
【0058】
押出成形条件としては、用いる原料粉末の組成や粒径、結合材の組成およびその配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、シリンダー温度が好ましくは、100〜350℃程度、成形金型温度が好ましくは、30〜150℃程度、押出速度が好ましくは、0.1〜50mm/sec程度、押出圧力が好ましくは1000kgf/cm以下とされる。
【0059】
ここで、成形性の向上のために、成形金型温度を前述のような比較的低い温度とし、金型内でコンパウンドを冷却固化するのが好ましい。
【0060】
成形体中の原料粉末の含有量は、70〜98wt%程度であるのが好ましく、80〜98wt%程度であるのがより好ましい。70wt%未満では、成形体を焼結した際の収縮率が増大し、寸法精度が低下する。また、98wt%を超えると、相対的に結合材の含有量が減るので、成形時における流動性が乏しくなり、押出成形が不能または困難となるか、あるいは成形体の組成が不均一となる。
【0061】
以上のようにして、製造される長尺成形体10は、図4に示すように、押出成形の際の押出方向を長手方向とするものであって、その横断面形状は一定である。この長尺成形体10には、スロット4に相当する溝が形成されている。また、係合部3の各突部31〜34を形成するための凸条35、36が形成され、これらの凸条35、36の内側にそれぞれ溝7、8が形成されている。
【0062】
[2A]成形体の切断
前記工程[1A]で得られた長尺成形体10(長尺体)に対して、後述するような機械加工によるスロット5に対応する溝の形成を行った後に、当該長尺成形体を所定の長さに切断する。
【0063】
長尺成形体10の切断は、通常、メタルソー、カッター等の切断装置を用いて行う。
【0064】
1本の長尺成形体10からは、複数(例えば、5〜100個程度)の成形体(切断体)が得られる。この場合、切断により得られた各切断体は、長さが全て同じものに限らず、異なる長さのものがあってもよい。このように、本発明によれば、切断長さを変化させることで長さの異なる何種類もの歯列矯正部材を容易に製造することができる。
【0065】
このときの成形体の切断長さは、以後の脱脂および焼結による成形体の収縮分を見込んで決定されるが、最終的に得られるブラケット1の長さ(L)が、1mm以上となるように切断するのが好ましく、2〜10mm程度となるように切断するのがより好ましい。切断長さが小さすぎると、切断サイクルが短くなり、寸法精度を維持することが難しく、安定性が劣る。
【0066】
また、成形体は、焼結体に比べ硬度が低いため、原料粉末の組成にかかわらず、切断を容易に行うことができ、加工性に優れる。これにより、硬質な焼結体を切断する場合に比べ、超硬合金等で構成される切断刃やダイヤモンドカッター等を用いなくとも簡単に切断できるので切断装置の設備を簡略化することができる。また、切断対象物の硬度が低いので切断刃等の負担(摩耗、損傷等)が軽減され、使用寿命が長くなる。
【0067】
[3A]成形体の脱脂処理
前記工程[2A]で切断された成形体(切断体)に対し、脱脂処理(脱バインダー処理)を施すことにより、脱脂体を得る。
【0068】
この脱脂処理としては、特に限定されないが、非酸化性雰囲気、例えば減圧(真空)状態下(例えば1×10〜1×10−6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
【0069】
この場合、脱脂処理の条件としては、好ましくは温度150〜750℃程度で20〜2200分程度、より好ましくは温度250〜650℃程度で50〜1300分程度とされる。
【0070】
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば脱脂時間の短縮の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行われてもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂処理するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法とが挙げられる。
【0071】
また、前述の熱処理との組み合わせにより、脱脂における雰囲気の圧力を変化させてもよい。この場合、例えば、脱脂の前半を減圧(例えば、1×10−3Torr)状態下で、脱脂の後半を常圧で行う方法や、減圧と常圧を交互に繰り返し行う方法が挙げられる。
【0072】
このように、脱脂条件に変化を与えることにより、成形体に対しより効率的に脱脂処理を行うことができる。
【0073】
なお、この脱脂処理は、他の方法、例えば、結合材や添加剤中の特定成分を所定の溶媒(液体、気体)を用いて溶出させることにより行ってもよい。
[4A]脱脂体の焼結
以上のようにして得られた脱脂体を炉で焼成して焼結し、焼結体(金属焼結体またはセラミックス焼結体)を製造する。
【0074】
焼結により原料粉末が拡散、粒成長し、結晶粒となる。この場合、空隙は消滅し、全体として緻密な、すなわち高密度、低空孔率の焼結体が得られる。
【0075】
焼結における焼結温度は、例えば、金属組成がTiまたはTi系合金の場合、好ましくは950〜1500℃程度、より好ましくは1000〜1450℃程度とされ、ステンレス鋼の場合、好ましくは1000〜1550℃程度、より好ましくは1050〜1500℃程度とされ、セラミックスの場合、好ましくは1300〜2200℃程度、より好ましくは1400〜1850℃程度とされる。
【0076】
なお、焼結温度は、前述した範囲内または範囲外で、経時的に変動(上昇または下降)してもよい。
【0077】
焼結時間は、前述したような焼結温度の場合、好ましくは30〜480分程度、より好ましくは60〜300分程度とされる。
【0078】
また、焼結雰囲気は、特に限定されないが、原料粉末が金属粉末の場合、減圧(真空)下または非酸化性雰囲気とされるのが好ましい。これにより、金属の酸化による特性劣化を防ぐとともに、焼結体の空孔率の低減に寄与する。また、原料粉末がセラミックスの場合、大気下または不活性ガス雰囲気とされるのが好ましい。これにより、焼結体の空孔率の低減に寄与する。
【0079】
好ましい焼結雰囲気としては、原料粉末が金属粉末の場合、1Torr以下(より好ましくは1×10−2〜1×10−6Torr)の減圧(真空)下、または1〜760Torrの窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、あるいは1〜760Torrの水素ガス雰囲気であるのが好ましい。原料粉末がセラミックスの場合、1〜760Torrの窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、または1〜760Torrの大気雰囲気であるのが好ましい。
【0080】
以上のような条件で焼結を行うことにより、焼結体の空孔率を低減することができる。得られた焼結体の空孔率は、7vol%以下が好ましく、5vol%以下がより好ましい。空孔率の低減は、焼結体の高密度化に寄与するとともに、高強度、高い寸法精度、焼結欠陥の防止、良好な外観性が得られ、また、焼結の効率が良く、より短い焼結時間で焼結を行うことができ、生産性が向上する。
【0081】
なお、焼結は、2段階またはそれ以上で行ってもよい。例えば、焼結条件(焼結温度、焼結時間、焼結雰囲気等のうちの少なくとも1つ)が異なる1次焼結と2次焼結を行うことができる。この場合、2次焼結の焼結温度を、1次焼結の焼結温度より高い温度とすることができる。これにより、焼結の効率がさらに向上し、空孔率の更なる低減を図ることができる。
【0082】
焼結体が、Tiを基本成分とする場合、すなわちTiまたはTi系合金(以下「Ti系金属材料」と言う)で構成されている場合、焼結体は、C:0.01〜0.5wt%、O:0.02〜0.8wt%、N:0.01〜0.6wt%を含むものであるのが好ましい。
【0083】
Ti系金属材料は、軽量でかつ高強度であり、変形や破損が生じ難く、耐久性、耐食性に優れ、また、金属成分の溶出も極めて少なく、金属アレルギーの発症等も抑制されるなど、生体適合性に優れている。さらに、Ti系金属材料は、ステンレス鋼に比べて金属光沢が少ないので、ブラケット1の装着時に審美性を損なわないという利点がある。
【0084】
焼結体を構成するTi系金属材料中には、C、OおよびNが、例えばTiとの化合物を形成する形で存在しているが、これらの元素がTi系金属材料中に適切な量含まれていることで、歯列矯正部材(歯科用器具)として好適な強度、硬度、延性(靱性)、弾性等の物理的特性を保持することができる。
【0085】
Ti系金属材料中のCの含有量は、好ましくは0.01〜0.5wt%程度とされ、より好ましくは0.03〜0.25wt%程度、さらに好ましくは0.03〜0.15wt%程度とされる。Cの含有量が0.01wt%未満では、O、Nの含有量が少ない場合に、材料強度が低下し、また、0.5wt%を超えると、材料の延性が低下するおそれがある。
【0086】
Ti系金属材料中のOの含有量は、好ましくは0.02〜0.8wt%程度とされ、より好ましくは0.06〜0.6wt%程度、さらに好ましくは0.06〜0.4wt%程度とされる。Oの含有量が0.02wt%未満では、C、Nの含有量が少ない場合に、材料強度が低下し、また、0.8wt%を超えると、材料の延性が低下するおそれがある。
【0087】
Ti系金属材料中のNの含有量は、好ましくは0.005〜0.6wt%程度とされ、より好ましくは0.01〜0.18wt%程度、より好ましくは0.01〜0.09wt%程度とされる。Nの含有量が0.005wt%未満では、C、Oの含有量が少ない場合に、材料強度が低下し、また、0.6wt%を超えると、材料の延性が低下するおそれがある。
【0088】
また、Ti系金属材料中のC、OおよびNの合計含有量は、0.035〜1.2wt%程度であるのが好ましく、0.08〜0.95wt%程度であるのがより好ましく、0.08〜0.6wt%程度であるのがさらに好ましい。この合計含有量が0.035wt%未満では、材料強度が低下し、また、1.2wt%を超えると、材料の延性が低下するおそれがある。
【0089】
また、Ti系金属材料中には、例えば、Fe、Ni、Cr、Pd、Co、Zr、Al、V、Mo等の他の元素が不可避的にまたは積極的に、金属アレルギー等の弊害が生じない範囲で含有していてもよい。これらの元素の添加は、金属材料の強度の増大に寄与する。これらの元素は、Tiとの合金または金属間化合物を形成する形で存在しているのが好ましい。
【0090】
なお、本発明においては、任意の目的で、工程[1A]の前工程、工程[1A]〜[4A]の間に存在する中間工程、または工程[4A]の後工程が存在していてもよい。この場合、中間工程、後工程(後処理)として、例えば、バリ取り、面取り(例えば、切断面の縁部付近の面取り)、洗浄、研磨等の表面処理や、切削、転写(圧転)、研削、ブラスト処理(例えば、ショットブラスト等)等の機械加工、化学エッチング等の化学処理、レーザー加工、放電加工等の各種加工等が挙げられる。
【0091】
特に、中間工程、後工程(後処理)として、上記加工を施すことにより、前述したようなスロット(溝)5や凹凸61を有するブラケット1を得ることができる。
【0092】
なお、スロット(溝)5に対応する溝や凹凸61に対応する凹凸の形成方法としては、上記加工の中でも、特に機械加工が好ましい。これにより、成形体、脱脂体、焼結体のいずれに対してでも、容易に加工を施すことが可能となる。
【0093】
機械加工によるスロット5に対応する溝の形成には、回転可能な砥石を備えたダイシングマシンを用いる。このようなダイシングマシンを用いた場合、形成される溝の幅は、砥石の厚さに相当する。
【0094】
上記のような加工を成形体に施す場合、当該加工をより容易に行うことができる。
【0095】
また、上記のような加工を脱脂体に施す場合、当該加工を容易かつ精度良く行うことができる。
【0096】
また、上記のような加工を焼結体に施す場合、当該加工の精度は特に優れたものとなる。従って、最終的に得られるブラケット1がより高い寸法精度を要求される場合、上記のような加工は焼結体に施すのが好ましい。
【0097】
また、スロット5の幅は、各ブラケット1で、同じものであってもよいし、異なるものがあってもよい。
【0098】
また、上記のような加工は、長尺体(長尺成形体10)に対して施すものであっても、切断体(切断された成形体、脱脂体または焼結体)に対して施すものであってもよいが、長尺体に対して施すのが好ましい。
【0099】
これにより、例えば、長尺体(長尺成形体10)に対して、スロット5に対応する溝を形成する場合、位置合わせを容易に行うことが可能となる。また、このような溝を、容易に連続して形成することができる。
【0100】
なお、このような加工は、複数回行ってもよい。例えば、スロット5(またはこれに対応する溝)と、凹凸61(またはこれに対応する凹凸)とを、それぞれ異なる工程で形成してもよい。
【0176】
以上、本発明の歯列矯正部材の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0178】
例えば、前述した実施形態では、脱脂工程を1回のみ行う方法について説明したが、脱脂工程は、2回以上に分けて行ってもよい。例えば、脱脂条件(脱脂温度、脱脂時間、脱脂雰囲気のうちの少なくとも1つ)が異なる1次脱脂と2次脱脂とを行うことができる。この場合、1次脱脂と2次脱脂との間に、前記機械加工等の中間処理を施してもよい。
【0179】
【実施例】
次に、本発明の歯列矯正部材の製造方法の具体的実施例について説明する。
【0180】
(実施例1)
原料粉末(金属粉末)として、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径20μmのTi粉末を用意した。
【0181】
この金属粉末:91wt%に、ポリスチレン(PS):2.7wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):2.7wt%およびパラフィンワックス:2.3wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):1.3wt%とを混合し、これらを混練機にて100℃×60分の条件で混練した。
【0182】
次に、この混練物(コンパウンド)を用い、押出成形機にて、図4に示す異形断面(ブラケット用:横断面積=3.5mm)の長尺な成形体(長尺成形体)を押出し成形した。押出成形時における成形条件は、シリンダー温度140℃、成形金型(出口部分)温度70℃、押出圧力120kgf/cm、押出速度10mm/secであった。得られた長尺成形体中の金属粉末の含有量は、約91wt%であった。
【0183】
このようにして得られた長尺成形体に対して機械加工を施し、図2中のスロット(溝)5に対応する溝を形成した。当該溝の形成は、回転可能な砥石を備えたダイシングマシンを用いて行った。
【0184】
次に、上記のような機械加工が施された長尺成形体を所定長さに切断し、切断長さが、4.5mm(焼結後の目標寸法:切断長さ4mm)である異形断面の成形体(切断体)を50個得た。
【0185】
次に、これらの切断された成形体(切断体)に対し、脱脂炉を用いて脱脂処理を行った。脱脂条件は、1×10−3Torrの減圧下で、500℃×60分とした。
【0186】
次に、脱脂がなされた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、焼結体を得た。焼結条件は、1×10−3Torrの減圧下で、1200℃×180分とした。
【0187】
このようにして得られた焼結体の底面に機械加工を施すことにより凹凸61を形成し、歯列矯正部材(ブラケット)を得た。凹凸61の形成は、ショットブラストにより行った。
【0188】
この歯列矯正部材(ブラケット)は、Ti系金属材料で構成されており、LECO社製のEC−12型(炭素分析装置)、RO−116型(酸素分析装置)、TN−114型(窒素分析装置)の分析装置による元素分析の結果、含有するC、OおよびNの量は、それぞれ、C:0.055wt%、O:0.42wt%、N:0.03wt%であった。
【0189】
また、歯列矯正部材(ブラケット)の空孔率(アルキメデス法により測定)は、3vol%であった。
【0249】
<品質・特性等の評価>
上記の実施例で得られた歯列矯正部材(ブラケット)について、以下に示すような品質・特性等の評価を行った。
【0250】
1.品質
実施例1で得られたブラケットを多方向に切断し、それらの切断端面を目視観察し、焼結欠陥の有無を調べた。その結果、実施例1によるブラケットは、焼結欠陥の無い良好な品質のものであった。
【0251】
2.寸法誤差
実施例1で得られたブラケット10個について、係合部3の最大幅およびスロット4の幅の寸法を測定し、寸法誤差(寸法のバラツキ)を調べたところ、寸法誤差は±0.5%以下であった。これにより、実施例1のものは、高い寸法精度を有することが確認された。
【0252】
3.機械的強度(抗折力)
日本粉末冶金工業会規格 JPMA M 09−1992に準拠し、実施例1で得られたブラケットについて抗折力を測定した。
【0253】
4.硬度
JIS Z 2244に準拠し、実施例1で得られたブラケットの焼結体における係合部3の表面のビッカース硬度Hvを測定した(荷重500g)。
【0254】
5.金属成分溶出量(生体適合性)
実施例1で得られたブラケットを0.05%塩酸溶液に100日間浸漬した後、この液中の金属イオン濃度を、プラズマ発光分析装置により分析し、定量した。この溶出量が少ないものほど、生体適合性に優れることを示す。
【0255】
6.審美性
表面の光沢の度合いおよび歯牙の色調との差を目視により判定した。光沢が少ない(=審美性大)ものから順に、◎、○、△、×の4段階で評価した。また、歯牙の色調との差が少ないものも審美性大と評価した。
【0256】
前記機械的強度(抗折力)、硬度、金属成分溶出量(生体適合性)および審美性の結果を、下記表1に示す。
【0257】
【表1】
Figure 0003867903
【0258】
表1に示すように、実施例1で得られたブラケットは、機械的強度(抗折力)および表面の硬度が高い。また、実施例1で得られたブラケットは、生体適合性および審美性も優れている。
【0259】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、複雑な形状のものでも容易に製造でき、高い寸法精度を有する高密度(低空孔率)の歯列矯正部材を得ることができる。そして、押出成形によるため、生産性が高く、歯列矯正部材の量産に適する。
【0260】
また、従来、加工が困難であった硬質材料等についても、それを用いて歯列矯正部材を製造することができ、歯列矯正部材の機能・形状(デザイン)の拡大を図ることができる。
【0261】
また、切断長さを調整することにより、何種類もの歯列矯正部材を容易に製造することができるので、生産性に優れ、安価に歯列矯正部材を供給することができる。
【0262】
また、Ti系金属材料で構成されているものの場合、焼結体中のC、O、Nの含有量を低減することができるので、延性(靭性)の高い歯列矯正部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯列矯正部材の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明の歯列矯正部材(歯列矯正用ブラケット)の構成例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す歯列矯正部材の底面図である。
【図4】本発明の製造方法の製造工程で得られる長尺な成形体の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…歯列矯正用ブラケット、2…基部、3…係合部(タイウイング)、31〜34…突部、35、36…凸条、4、5…スロット(溝)、6…底面(裏面)、61…凹凸、7、8…溝、10…長尺成形体、1A〜4A…工程

Claims (1)

  1. 原料粉末を含むコンパウンドを用いて、押出成形により、歯列矯正部材の横断面形状に対応する断面形状の長尺な成形体を得る成形工程と、
    ダイシングマシンを用いた機械加工により、前記長尺な成形体にスロットに対応する溝を形成する工程と、
    前記溝が形成された長尺な成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
    前記切断された成形体に対し脱脂処理を施して脱脂体を得る脱脂工程と、
    前記脱脂処理がなされた脱脂体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを有することを特徴とする歯列矯正部材の製造方法。
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