JP3860038B2 - 光ファイバグレーティングの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバグレーティングの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いて作製される光フィルタの一例として、光ファイバグレーティングがある。通常この光ファイバグレーティングとは、石英ガラスから成る光ファイバの光が伝播する領域に所定の周期で屈折率変化を形成したものである。以下、この屈折率変化を形成した部分をグレーティング部という場合がある。なお、屈折率変化は、いわゆるフォトリフラクティブ効果を利用して、光ファイバの長手方向に沿って所定の周期で紫外線を照射し(露光し)、その照射部分の屈折率を上昇させることによって形成される。このグレーティング部を形成する工程を露光工程と呼ぶ場合がある。この光ファイバグレーティングは、グレーティング周期(屈折率変化の周期)によって2つに分類することができる。
【0003】
その一つは、グレーティング周期が数百μm程度の長周期光ファイバグレーティング(以下「LPG」と略記する)である。LPGでは、屈折率が変化しているグレーティング部において、入射光のうち所定の波長帯域の光が、入射光と同じ方向に進行する前進クラッドモードと結合するため、LPGを用いるとこの波長帯域について透過損失を有する透過光が得られる。ここで、透過損失とは、透過率の絶対値である。
【0004】
もう一つは、グレーティング周期が、使用波長の1/3程度である短周期光グレーティング(以下「SPG」と略記する)である。SPGでは、入射光のうち所定の波長帯域の光が、入射光と逆方向に進行する導波モード(以下「反射モード」と略記する)、及び入射光と逆方向に進行する後進クラッドモードと結合するため、SPGを用いると、この波長帯域について透過損失を有する透過光が得られる。
【0005】
LPGにおいては、信号光波形の劣化の原因となる、透過スペクトルのリップルが存在しないという利点がある。この透過スペクトルのリップルとは、透過光の波長を横軸に、透過光を縦軸にとったときの、透過光の波長スペクトルにおける透過光の微小な変動をいう。
そのため、LPGは滑らかな透過特性が得られる。また、前進クラッドモードとの結合を用いるため、反射光が殆ど存在しないことも利点の一つである。しかし、透過特性の調整が困難で、所望の透過特性を得がたいという欠点がある。
【0006】
これに対し、SPGでは、反射モードとの結合を利用しているため、グレーティング周期やグレーティング部の屈折率変動量などを調整することの他、グレーティング周期を光ファイバの長手方向に沿って除々に拡大又は縮小させて変化させたチャープ型光ファイバグレーティングを用いることによって、使用波長帯域を広くしたり、透過光の強度を調整することができ、比較的自由に所望の透過特性を実現することができる。
【0007】
しかし、反射モードを利用すると、反射光が再びグレーティング部を通るため、多重反射が生じ、その結果、透過スペクトルのリップルが生じ、滑らかな特性が得られないという問題がある。また、反射光が大きいことも問題となる。
【0008】
そこで、SPGの利点である設計の自由度を生かし、かつ透過スペクトルのリップルを生じにくいスラント形短周期光ファイバグレーティングが開発されている。このスラント型短周期光ファイバグレーティングとは、コアの中心軸に対して斜めにグレーティング(回折格子)が形成された光ファイバグレーティングである。すなわち、グレーティング部の格子ベクトルが光ファイバの長手方向に対して非ゼロの傾斜角度を有しているものである。
【0009】
通常のSPGでは、光の進行方向に対して垂直にグレーティングが形成されているため、反射モードへの結合に比べて後進クラッドモードへの結合が小さいのに対して、スラント型短周期光ファイバグレーティングでは、グレーティング部において反射された光の一部はクラッドに放出され、後進クラッドモードと結合する。また、スラント型にすることで、反射モードとの結合が小さくなり、多重反射が生じにくくなる。従って、透過スペクトルのリップルの強度を小さくすることができる。
【0010】
ところで、グレーティング部の紫外光照射による屈折率変化量は、その使用中などに熱が加わることにより劣化する。これに伴い、光ファイバグレーティングの光学特性は変化する。その影響を小さくするために、グレーティング部形成工程の後に当該グレーティング部全体を高温で加熱し、あらかじめ劣化させることにより、通常の使用条件において、光学特性を安定にすることが行われている。
【0011】
この工程を加熱工程といい、この工程を実施することにより光ファイバグレーティングの光学特性の長期信頼性を保証することができる。
なお、加熱工程の前後で、紫外光により励起された屈折率変化量の熱劣化に伴い、透過率が大きくなる。このため、グレーティング部形成工程においては、設計目標スペクトルに加熱工程で透過率の増加量を加えた透過スペクトルを目標値として、光ファイバグレーティングを形成している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に、グレーティング部形成工程において、紫外光により誘起された屈折率変化量が大きく、飽和領域に達している場合、紫外光の照射量と透過率の変化量の関係が不安定になり、再現性良く、目標の光ファイバグレーティングを形成することができない。
【0013】
また、グレーティング長(グレーティング部の長さ)が長い光ファイバグレーティングのグレーティング部形成工程においては、十分な紫外光の光量を確保するために、光ファイバの長手方向に数回に分割して紫外光を照射する必要がある。
この場合、紫外光照射位置を移動させる際に用いられる移動ステージの制御性等、製造装置に起因して、再現性が良く目標の透過スペクトルを有する光ファイバグレーティングを形成することができない。
【0014】
図7に同一条件で紫外光を照射した後の複数の光ファイバグレーティングの透過スペクトルを示す。同図中、符号12から17が透過スペクトルで、同一条件であってもばらつきがあることがわかる。
【0015】
また、上述の様に、従来の加熱工程においては、グレーティング部全長にわたって一定温度で熱を加え、設計目標スペクトルに一致させるように加熱量を調整していた。
【0016】
図8に、この工程に用いるグレーティング部全体を加熱するグレーティング加熱装置を示す。同図中、符号1はコアであり、このコア1の周囲にコア1よりも屈折率の小さいクラッド2が設けられて光ファイバが構成されている。符号3はコア1の長手方向の一部に形成されたグレーティング部である。符号5は、当該グレーティング部3の全体を加熱するためのリング状のヒータで、光ファイバ全周を覆うように、かつ当該グレーティング部3の長手方向全域を加熱可能な様に配されている。
【0017】
しかし、当該グレーティング部全体を加熱しても、加熱する前よりも後の方が全体の透過率が大きくなるが、透過スペクトルの形状自体はほとんど変化しない。つまり、グレーティング部形成工程後のばらつきがそのまま歩留まりに影響を与えていた。
【0018】
よって、本発明は、グレーティング部形成工程における当該グレーティング部形成後の、当該工程のもつ本質的な透過スペクトルのばらつき、当該グレーティング長の長い場合の製造装置に起因する透過スペクトルのばらつき、および、当該グレーティング部の長さの全長を加熱することによる紫外光照射した後の透過スペクトルの残留を解決すべく、どのような透過スペクトルにも対応して設計目標スペクトルに一致させることが可能な製造方法を提供することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法は、光ファイバの長手方向の一部に、グレーティング周期が光ファイバの長手方向に徐々に変化するチャープ型のグレーティング部を形成する工程と、当該グレーティング部の長手方向の一部を加熱して、当該グレーティング部の透過スペクトルと設計目標スペクトルとの差を小さくする工程を備え、前記グレーティング部の長手方向の一部を加熱する工程において、当該加熱位置を、予め求めた前記グレーティング部の長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の関係から算出して求めることを特徴とする。また、当該グレーティング部の一部を加熱する前に当該グレーティング部全体を加熱する工程を行うと好ましい。また、前記グレーティング部のグレーティング長が5mm以上のときに本発明を適用すると大きな効果が得られる。また、前記グレーティング部がその格子ベクトルが光ファイバの長手方向に対して、非ゼロの傾斜角度を有しているスラント型のときに本発明を適用すると大きな効果が得られる。また、当該グレーティング部の長手方向の一部を加熱する加熱時間は、予め求めた加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係から算出して求めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバグレーティングの製造方法の一例について説明する。
この例においては、位相マスク法により光ファイバに対してグレーティング部を形成した後、このグレーティング部に対し、全体及び長手方向の一部に順次加熱を行うことによって、全長の加熱のみを実施するよりもより設計目標スペクトルに近いものを確実に容易に得ることができる。また、グレーティング部全体を加熱しているため、当該光ファイバグレーティングの熱劣化に伴う光学特性の変化を抑制することが出来るため、光学特性の信頼性も保証することができる。
【0021】
この例においては、チャープ型のスラント型短周期光ファイバグレーティングを製造する。そのグレーティング部の長さは、10〜40mm程度である。
【0022】
なお、本発明はグレーティング部の長さに関係なく適用することができるが、好ましくは、グレーティング部の長さが、5mm以上、さらに好ましくは100mm以下とされる。実質的には、40mm以下である。グレーティング部の長さが長い方がグレーティング部形成工程における光学特性のばらつきが大きくなり、透過スペクトルの波形が安定しなくなる傾向があるので、本発明を実施することにより、特に有利な効果が認められるからである。これは、チャープ型のスラント型短周期光ファイバグレーティングに限らず本発明を適用可能な全ての光ファイバグレーティングにおいて同様である。なお、チャープ型のスラント型短周期光ファイバグレーティングにおいては、必要とされる光学特性からグレーティング部の長さが長くなる傾向にあるため、本発明を適用すると特に大きな効果が得られる。
【0023】
なお、チャープ型とは、グレーティング周期が光ファイバの長手方向に沿って徐々に拡大または、縮小しているものである。
そのグレーティング周期は短周期型光ファイバグレーティングの場合、例えば、525〜550nm程度であり、グレーティング波長に換算すると1523〜1595nm程度である。ここで、グレーティング波長とはグレーティング周期Λで形成されたグレーティングで反射される光の中心波長として定義され、λB=2neffΛで表される。ここで、λBはグレーティング波長、neffはコアを伝播する光の実効屈折率である。
なお、波長チャープ率は、好ましくは1nm/mm以下、例えば、この例では0.75nm/mmである。ここで、波長チャープ率とは、上式を用いてグレーティング周期をグレーティング波長に換算した場合に、グレーティング波長が1mm当たりどれだけ変化するかを表したものである。
【0024】
この例において、グレーティング部の格子ベクトルの角度は2.2〜2.5°程度である。さらに、反射モードへの結合が最も小さくなるような格子ベクトルの角度から±0.2°の範囲が望ましい。角度が小さいと再度コアへの戻り光の影響で光学特性に悪影響を与え、角度が大きいとクラッドモードへの結合が小さくなり、それに伴い透過率が大きくなり、所望の光学特性が得られないからである。
【0025】
まず、グレーティング部形成工程を行う。このグレーティング部形成工程においては、位相マスク法によって、例えばコアがGe添加石英ガラス、その外周に設けられたクラッドが純粋石英ガラスから成る光ファイバに、波長240nm付近の紫外光を光ファイバの長手方向に沿って所定の周期で照射する。
【0026】
コアを構成するGe添加石英ガラスは、特定波長の紫外光を照射すると屈折率が上昇するため、その結果、光ファイバのコアの長手方向の一部にグレーティング部が形成される。グレーティング部形成工程での目標スペクトルは、設計目標スペクトルにグレーティング部全体および一部を加熱する工程における透過率の増加量を加えた透過スペクトルである。
【0027】
次いで、グレーティング部の全体を加熱する工程と、グレーティング部の一部を加熱して透過スペクトルを設計目標スペクトルに近づけ光学特性を調整する工程を行う。なお、設計目標スペクトルとは、最終製品に要求される特性である。
【0028】
図1は、これら二つの工程の手順を示したものである。すなわち、上述の様にグレーティング部を形成した後に、このグレーティング部の透過スペクトルを測定する。そして、この透過スペクトルと設計目標スペクトルとを比較する。
【0029】
このとき、この光ファイバグレーティングの使用波長範囲内において、透過スペクトルの透過率と設計目標スペクトルの透過率との差Δtが最も小さい波長を求める。そしてこの波長におけるΔtが0よりも大きくかつ1.0dB以下、好ましくは、0.1〜0.5dBとなる様に加熱条件を設定する。
この加熱条件は、Δtの大きさと、予め実験において求めた、所定の加熱温度における加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係から求めることができる。
【0030】
この例の加熱条件において、加熱温度は250〜300℃である。加熱時間は温度にも左右されるが大方10分以内である。
この加熱条件に基づき、例えば、図8の装置を用いて、グレーティング部全体を加熱する。この様にして、グレーティング部全体を加熱し、さらに、透過スペクトルを測定する。
【0031】
図2は、グレーティング部全体を加熱した後の透過スペクトルの一例を示したものである。
同図中の符号6はグレーティング部の透過スペクトル、符号7は設計目標スペクトルである。符号8はグレーティング部の透過スペクトルと設計目標スペクトルとの差を示したものであり、これを残差と呼ぶ。
つまり、符号8のグラフが少なくとも光ファイバグレーティングの使用波長範囲内で0に近づき、フラットになる程、設計目標通りの特性が得られたことになる。
【0032】
そこで、この透過スペクトルにおいて、この残差が大きい波長域を少なくとも1個所以上、実際には製造性の観点から対象となるグレーティング部の長手方向位置内で選択する。
ここで、チャープ型グレーティング部の長手方向の位置と、透過スペクトルの波長は、通常対応している。つまり、グレーティング周期が大きい方が長波長側、小さい方が短波長側に対応している。
【0033】
図3は、チャープ型の光ファイバグレーティングにおいて、グレーティング部の短周期側の端を原点とした時の、長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の関係を示したものである。なお、チャープ型の光ファイバグレーティングにおいては、グレーティング周期が大きい方が長波長、小さい方が短波長に対応しているので、図3に示した様に、波長チャープ率からグレーティング部の長手方向の位置と透過スペクトルの波長の対応が一義的に定まる。
つまり、グレーティング部全長に渡り、長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の関係が求まるため、試行を繰返さずに容易に光学特性の調整を行うことができる。
【0034】
そして、このグラフに基づいて、上述の様にして選択した残差が大きい波長域に対応するグレーティング部の長手方向の位置を求め、これを次の工程における加熱位置とする。
加熱時間は、グレーティング部全体を加熱したときと同様に、予め求めた実験則により算出することができる。
なお、グレーティング部の一部を加熱して透過スペクトルを設計目標スペクトルに近づけ光学特性を調整する工程を行う前に、例えば、あらかじめ図5に示される装置を用いて、グレーティング部の長手方向の任意の一点を加熱して、加熱後に透過スペクトルが変化した波長を求める。ここで、波長チャープ率が既知であるので、任意の一点に対する波長の関係が求まればグレーティング部全長において長手方向位置と対応する透過スペクトル波長の関係が求まる。グレーティング部の一部を加熱する工程の前に、この方法を用いて両者の関係を求めておくことが好ましい。
【0035】
図4は、グレーティング部の一部を加熱する工程における、一定温度条件下の加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係の一例を示したグラフである。加熱時間と透過率の変化率はほぼ比例関係にあり加熱時間が長くなるほど透過率の変化率は大きくなる。
【0036】
そこで、選択した波長域の残差の最大値と最小値の差が0.2dB以下、好ましくは0.1dB以下になる様に加熱時間を設定する。なお、グレーティング部の長手方向において、一度に加熱する範囲は、制御性および作業性の観点から、1〜5mm、 好ましくは、1〜3mmとされる。従って、選択された波長域に対応するグレーティング部の範囲の長さが長い場合には、対象となるグレーティング部の長手方向の位置内において、加熱部を移動して分割して加熱する様にすることもできる。
【0037】
加熱条件は、例えば、加熱温度が250〜300℃で、加熱時間は温度にも左右されるが大方30分以内である。そして、この加熱条件に基づき、例えば、図5に示した装置を用いてグレーティング部の一部を加熱する工程を行う。図5中、符号1はコア、符号2はクラッド、符号3はコア1の長手方向の一部に形成されたグレーティング部である。また、符号4は、該グレーティング部3の一部を加熱するためのリング状のヒータである。このヒータは、この光ファイバの長手方向に沿って平行に移動可能とされている。すなわち、ヒータ4を、上述の様に選択したグレーティング部3の加熱位置に配置し、この部分を加熱する。すると、透過スペクトルにおいて、残差の大きかった部分についてのみ透過率を変化させて、効率よく設計目標スペクトルに近づけることができる。
【0038】
図6は、このようにして、グレーティング部の一部を加熱した後に測定した、透過スペクトルの一例を示したものである。図6中の符号9はグレーティング部の透過スペクトル、符号10は設計目標スペクトルである。符号11はグレーティング部の透過スペクトルと設計目標スペクトルとの差を示したものである。
【0039】
図2に示した残差のグラフと比較して、1546〜1560nmの波長域の残差が明らかに小さくなっている。つまり、グレーティング部の全体を加熱した後、一部を加熱して光学特性の微調整を行うことによって、グレーティング部の全体のみを加熱する場合と比較して、より設計目標スペクトルに近づけることができることが明らかである。
【0040】
また、この例の様に、まずグレーティング部全体を加熱すると使用温度での長期間使用時における熱劣化も抑制できるため好ましいが、全体を加熱する工程は必須ではなく、例えば使用時の熱劣化があまり問題にならない場合や非常に小さい場合などにおいては、設計目標スペクトルをグレーティング部形成工程の目標スペクトルとしてグレーティング部を形成した後、全体を加熱する工程を行わずにグレーティング部の一部のみ加熱して透過スペクトルを調整することも出来る。
なお、本発明は、チャープ型のスラント型短周期のみならず、他の短周期の光ファイバグレーティングや、LPGにも用いることが出来る。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
製造した光ファイバグレーティングは、チャープ型のスラント型短周期光ファイバグレーティングとした。当該グレーティング部の長さは、40mmであり、波長チャープ率は、0.75nm/mmとした。また、使用波長範囲は、1538.7nmから1567.4nmで幅28.7nmの範囲とした。さらに、グレーティング部の格子ベクトルの角度は2.2°とした。
【0042】
まず、コアがGe添加石英ガラス、その外周に設けられたクラッドが純粋石英ガラスから成る光ファイバに、紫外光を光ファイバの長手方向の一部に所定の周期で照射させて、グレーティング部形成工程の目標スペクトルを有するグレーティング部を製造した。
【0043】
次いで、図1に示した手順に基づき、このグレーティング部の透過スペクトルを設計目標スペクトルに近づけるために、予め求めた加熱条件でグレーティング部全体の加熱を行った。
【0044】
グレーティング部全体を260℃で22分加熱した後、図2に示した、透過スペクトルが得られた。図2中の符号6は、グレーティング部の透過スペクトル、符号7は設計目標スペクトルである。符号8は、残差である。図2に示した様に、この残差が大きい波長域は1544nmから1560nmであった。このときの使用波長範囲(1538.7nm〜1567.4nm)での残差の最大値から最小値の差は0.1735dBであった。
次いで、設計目標スペクトルに近づけるために、残差が大きい波長域を、選択しこの波長域に対応するグレーティング部の範囲を求め、以下のようにしてこの部分のみを加熱する操作を行った。
【0045】
なお、本実施例においては、あらかじめ図5に示される装置を用いてグレーティング部の長手方向の任意の一点を数秒間加熱を行い、加熱すべきグレーティング部の位置の確認を行った。
実際のグレーティング部の一部を加熱する工程においては、加熱範囲を、グレーティング部の短周期側の端の位置を原点として10.8mmの位置から18.7mmとした。
また、図4に示した様な加熱温度260℃の時の加熱時間に対する透過率の変化率により、加熱時間をあらかじめ算出し、合計7分程度とした。
そして、図5に示した装置を用いてグレーティング部の一部を加熱して残差を減少させた。
なお、図5中符号4のヒータの幅は3mmとした。
【0046】
加熱した後の透過スペクトルを図6に示した。使用波長範囲での残差の最大値と最小値との差は0.1012dBとなり当該グレーティング部全体の加熱のみを行ったときよりも残差の最大値と最小値との差が縮小され設計目標スペクトルに近づくことが出来た。また、一部を加熱する工程の作業時間は7分程度と比較的短く、全体のみを加熱する場合と比較して作業時間は同等であり、製造効率の低下も問題にならない程度であった。以上より本発明の効果が確認された。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した様に本発明においては、光ファイバの長手方向の一部にグレーティング部を形成する工程と、当該グレーティング部の長手方向の一部を加熱して、当該グレーティング部の透過スペクトルと設計目標スペクトルとの差を小さくする工程を備えていることにより、グレーティング部形成工程等における透過スペクトルのばらつきを解消して、設計目標スペクトルに近い製品を効率よく得ることが出来、製造歩留まりを著しく向上させることができた。
また、当該グレーティング部の一部を加熱する前に当該グレーティング部の全体を加熱する工程を行うことにより使用時の熱劣化も抑制することが出来る。
また、グレーティング部のグレーティング長が5mm以上の場合、グレーティング部形成工程での透過スペクトルに、製造装置等に起因したばらつきが生じやすいので、本発明を適用すると効果が大きい。
また、グレーティング部がチャープ型の場合は、一部を加熱する範囲を容易に求めることが出来る。
また、グレーティング部がスラント型の場合は、グレーティング長が長い場合が多いので、本発明を適用すると効果は大きい。
また、グレーティング部の長手方向の一部を加熱する加熱位置は、予め求めた前記グレーティング部の長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の関係から算出して求めることができるために、試行を繰返さずに容易に光学特性の調整ができる。
また、グレーティング部の長手方向の一部を加熱する加熱時間は、予め求めた加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係から算出して求めることができるために、試行を繰返さずに容易に光学特性の調整ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のグレーティング部全体及び一部の加熱工程の一例を示した説明図である。
【図2】 実施例において、用いた当該グレーティング部の全体を加熱した後の透過スペクトル、設計目標スペクトルおよび残差の一例を示したグラフである。
【図3】 実施例において、用いた当該グレーティング部の長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の一例を示したグラフである。
【図4】 実施例において、用いた当該グレーティング部の一部を加熱したときの、加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係の一例を示したグラフである。
【図5】 実施例において、当該グレーティング部の一部を加熱する装置の一例を示した説明図である。
【図6】 実施例において用いた当該グレーティング部の一部を加熱した後の透過スペクトル、設計目標スペクトルおよび残差の一例を示したグラフである。
【図7】 実施例において、同一条件で複数回グレーティング部を形成した後の透過スペクトルの一例を示したグラフである。
【図8】実施例において、当該グレーティング部の全体を加熱する装置の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
1・・・コア
2・・・クラッド、3・・・グレーティング部
4・・・ヒータ、5・・・ヒータ
Claims (5)
- 光ファイバの長手方向の一部に、グレーティング周期が光ファイバの長手方向に徐々に変化するチャープ型のグレーティング部を形成する工程と、当該グレーティング部の長手方向の一部を加熱して、当該グレーティング部の透過スペクトルと設計目標スペクトルとの差を小さくする工程を備え、
前記グレーティング部の長手方向の一部を加熱する工程において、当該加熱位置を、予め求めた前記グレーティング部の長手方向の位置と対応する透過スペクトルの波長の関係から算出して求めることを特徴とする光ファイバグレーティングの製造方法。 - 請求項1に記載の光ファイバグレーティングの製造方法において、前記グレーティング部の一部を加熱する工程の前に当該グレーティング部全体を加熱する工程を備えていることを特徴とする光ファイバグレーティングの製造方法。
- 請求項1または2に記載の光ファイバグレーティングの製造方法において、前記グレーティング部のグレーティング長が5mm以上であることを特徴とする光ファイバグレーティングの製造方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバグレーティングの製造方法において、前記グレーティング部がその格子ベクトルが光ファイバの長手方向に対して、非ゼロの傾斜角度を有しているスラント型であることを特徴とする光ファイバグレーティングの製造方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバグレーティングの製造方法において、前記グレーティング部の長手方向の一部を加熱する工程では、当該加熱する時間を、予め求めた加熱時間と加熱時間に対する透過率の変化率の関係から算出して求めることを特徴とする光ファイバグレーティングの製造方法。
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