JP3847981B2 - 工作機の初期位置決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1平面内で揺動する伸縮自在な第1および第2駆動リンクの連結先端で加工具を支持し、第1および第2駆動リンクの長さを変化させることによって1平面内で加工具を移動させることができる工作機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばNC工作機を用いてワークに孔を開ける場合には、ワークの加工位置に加工具の中心軸が位置決めされ、回転するドリルといった加工具は中心軸に沿って前進させられる。このとき、加工具の位置決めは、x軸方向に延びる第1ガイドと、y軸方向に延びる第2ガイドとを備える駆動機構によって実現される。駆動機構は、指定されたx軸方向移動量で第1ガイドに沿って加工具を移動させるとともに、指定されたy軸方向移動量で第2ガイドに沿って加工具を移動させる。
【0003】
x軸方向移動量およびy軸方向移動量はコントローラで算出される。コントローラでは、互いに直交する第1および第2ガイドによって構築されるxy座標系が特定される。コントローラは、xy座標系上で加工具の初期位置および加工位置を特定する。初期位置のx座標値と加工位置のx座標値との差分量がx軸方向移動量に相当し、初期位置のy座標値と加工位置のy座標値との差分量がy軸方向移動量に相当する。コントローラは、初期位置と加工位置との間でx座標差分値およびy座標差分値を算出すればよいのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者らによって提案される新たな工作機では、1平面内で揺動する第1および第2駆動リンクの連結先端に加工具が支持される。第1および第2駆動リンクを伸縮させることによって1平面内で加工具を移動させることができる。こうした工作機では、加工具を位置決めするにあたって第1および第2駆動リンクの伸縮量が算出されなければならない。こうした伸縮量は、x座標値およびy座標値の差分計算では算出されることはできない。
【0005】
こうした工作機で第1および第2駆動リンクの伸縮量を算出するにあたって、コントローラは、加工具の移動平面を規定するxy座標系に対して、第1および第2駆動リンクを2辺に含む三角形を投影する。このxy座標系で、第1駆動リンクを斜辺に含む直角三角形と、第2駆動リンクを斜辺に含む直角三角形とに三平方の定理を適用すれば、加工位置のx座標値およびy座標値に基づいて伸縮量が算出されることができるのである。しかしながら、こうして伸縮量を算出するには、その加工位置を確立する第1および第2駆動リンクの長さや、第1および第2駆動リンクの支点同士の間隔が正確に知られていなければならない。第1および第2駆動リンクの長さや支点同士の間隔が正確でなければ、算出された伸縮量で第1および第2駆動リンクを伸縮させても、正確な加工位置に加工具を位置決めすることはできない。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、2つの駆動リンクを用いた工作機で加工具の位置を正確に設定する際に役立つ工作機の初期位置決定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、揺動する第1および第2駆動リンクの連結先端に支持される加工具の移動平面に平行にワークの1平面を設定する工程と、第1および第2駆動リンクの初期長さで確立される加工具の初期位置で前記1平面上に第1加工痕を形成する工程と、第1および第2駆動リンクの初期長さを記憶する工程と、第2駆動リンクの初期長さを第1変化量fで変化させて加工具の第2加工痕を前記1平面上に形成する工程と、第2駆動リンクの初期長さを第2変化量gで変化させて加工具の第3加工痕を前記1平面上に形成する工程と、第1駆動リンクの初期長さを第3変化量hで変化させて加工具の第4加工痕を前記1平面上に形成する工程と、前記1平面上に形成された第1加工痕から第2、第3および第4加工痕までの距離に対して、第1および第2駆動リンクの支点同士を結ぶ直線に平行な水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3を取得する工程と、取得された3つの水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3および前記第1、第2および第3変化量f、g、hに基づいて、前記初期位置を確立する第1および第2駆動リンクの実測長さL、Rを算出する工程と、算出された実測長さL、Rを記憶する工程とを備えることを特徴とする工作機の初期位置決定方法が提供される。
【0008】
2つの駆動リンクを用いた工作機では、加工具の移動平面に設定されるxy座標系で加工位置を特定することができる。こうしたxy座標系では、第1駆動リンクを斜辺に含む直角三角形や、第2駆動リンクを斜辺に含む直角三角形に基づいて、加工位置を確立する第1および第2駆動リンクの長さが特定される。xy座標系で、第1および第2駆動リンクの支点の位置や加工位置が特定されれば、第1および第2駆動リンクの長さが特定されることができる。
【0009】
xy座標系で、加工位置を頂点に、第1および第2駆動リンクを2辺に含む三角形が特定されれば、第1および第2駆動リンクの支点の位置を特定することができる。こうした三角形は、加工位置を確立する第1および第2駆動リンクの長さや、第1および第2駆動リンクの支点同士の間隔によって特定されることができる。しかも、初期位置を確立する第1および第2駆動リンクの初期長さが算出されれば、初期長さに対する第1および第2駆動リンクの伸縮量を設定するだけで、初期位置を基準に加工具を位置決めすることができる。
【0010】
本発明に係る初期位置決定方法によれば、初期位置を確立する第1および第2駆動リンクの初期長さが正確に測定されることができる。したがって、こうして正確に測定された初期長さを用いれば、精度よく加工具を加工位置に位置決めすることができる。
【0011】
前記第1駆動リンクの実測長さLを算出するにあたって、工作機の初期位置決定方法は、
【数4】
を用いることができる。
【0012】
また、前記第2駆動リンクの実測長さRを算出するにあたって、工作機の初期位置決定方法は、
【数5】
を用いることができる。
【0013】
工作機の初期位置決定方法は、前記第2および第3加工痕に関する水平方向成分Δ1、Δ2および前記第1および第2変化量f、gに基づいて前記第1および第2駆動リンクの支点同士の間隔Hを算出する工程と、算出された間隔Hを記憶する工程とをさらに備えてもよい。このように、初期位置を確立する第1および第2駆動リンクの初期長さに加えて第1および第2駆動リンクの支点同士の間隔が正確に測定されれば、一層精度よく加工具を加工位置に位置決めすることができる。
【0014】
ここで、前記支点同士の間隔Hを算出するにあたって、工作機の初期位置決定方法は、
【数6】
を用いることができる。
【0015】
前記xy座標系は、原点で前記第1駆動リンクの支点を特定し、x座標軸上で前記第2駆動リンクの支点を特定することが望ましい。こうしてxy座標系が設定されれば、加工位置のx座標値およびy座標値を用いて簡単に第1および第2駆動リンクの伸縮量を決定することができる。
【0016】
また、前記xy座標系では、前記初期位置を原点に設定するマシン座標系が特定されてもよい。こうしたマシン座標系では、初期位置を基準に加工位置のx座標値およびy座標値を特定することができる。
【0017】
なお、前記加工具には、中心軸回りで回転するドリルやエンドミルといった工具のほか、レーザビームの照射源やウォータージェットの発射源などが含まれることができる。後者の場合には、レーザビームやウォータージェットの進行方向が加工具の中心軸に一致されていればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用される工作機10を示す。この工作機10は、ワークが設置される加工テーブル11と、工具が装着されるスピンドル12とを備える。スピンドル12は、加工テーブル11のワーク設置面11aに平行な回転軸13回りで工具を回転させる。この工作機10では、ワーク設置面11aに直交する1平面と工具の回転軸13との間で面直関係が維持される。ワーク設置面11aにワークが設置されると、ワーク設置面11aに直交する1平面内で工具の回転軸13が位置決めされる。工具が位置決めされると、工具の回転軸13に沿ってスピンドル12が前進し、回転する工具によってワークに対して加工が施される。
【0020】
スピンドル12は、ワーク設置面11aに直交する1平面内で変形するリンク機構14に支持される円筒体15に装着される。円筒体15は、工具の回転軸13回りのスピンドル12の回転を阻止する一方、回転軸13に沿ったスピンドル12のスライドを許容する。リンク機構14は、工具の回転軸13に平行な軸16を介して基台17に連結される1対の下側支持リンク18と、工具の回転軸13に平行な軸19を介して各下側支持リンク18の先端に連結される1対の上側支持リンク20とを備える。各上側支持リンク20の先端同士は円筒体15を介して互いに連結される。工具の位置決め時に起因されるスピンドル12の移動はリンク機構14の変形によって許容される。こうしたリンク機構14の変形は、基台17に対する下側支持リンク18の揺動や、下側支持リンク18に対する上側支持リンク20の揺動、上側支持リンク20の先端同士の相対回転によって達成される。こうしてリンク機構14が変形すると、工具は、ワーク設置面11aに直交する移動平面内で移動することとなる。
【0021】
スピンドル12の位置決めは、ワーク設置面11aに直交する1平面内で揺動する伸縮自在な第1および第2駆動リンク22、23によって達成される。第1および第2駆動リンク22、23は、第1および第2長さ調節機構24、25を介して基台17に連結される。第1および第2長さ調節機構24、25は、工具の回転軸13に平行な軸26回りで第1および第2駆動リンク22、23の揺動を許容するとともに、第1および第2駆動リンク22、23を伸縮させる。第1および第2駆動リンク22、23の先端には、工具の回転軸13回りで円筒体15に対して相対回転するリング22a、23aが形成される。第1および第2駆動リンク22、23の先端同士は円筒体15を介して相対回転可能に互いに連結される。
【0022】
図2に示されるように、第1長さ調節機構24は、第1駆動リンク22に形成されるねじ軸30と、軸方向移動不能にねじ軸30に結合されるナット31とを備える。ナット31には、駆動ベルト32を通じて駆動モータ33の回転力が伝達される。ナット31や駆動モータ33は、工具の回転軸13に平行な軸26回りで揺動する支持部材34に支持される。駆動モータ33が回転すると、ナット31が回転し、その結果、ねじ軸30の軸方向移動が生起される。ねじ軸30の移動量は、周知のとおり、ナット31の回転量すなわち駆動モータ33の回転量に基づいて決定される。ここで、ねじ軸30とナット31とはボールねじを構成してもよい。駆動モータ33はサーボモータによって構成されればよい。なお、第2長さ調節機構25は第1長さ調節機構24と同様な構成を備える。
【0023】
図3に示されるように、スピンドル12には前後方向駆動機構35が連結される。この前後方向駆動機構35は、工具の回転軸13に沿ってスピンドル12から延び、円筒体15を突き抜けるねじ軸36と、軸方向移動不能にねじ軸36に結合されるナット37とを備える。ナット37には、駆動ベルト38を通じて駆動モータ39の回転力が伝達される。駆動モータ39が回転すると、ナット37が回転し、その結果、ねじ軸36の軸方向移動が生起される。ねじ軸36の移動量は、周知のとおり、ナット37の回転量すなわち駆動モータ39の回転量に基づいて決定される。このねじ軸36の軸方向移動によってスピンドル12の前進や後退が達成される。ここで、ねじ軸36とナット37とはボールねじを構成してもよい。駆動モータ39はサーボモータによって構成されればよい。
【0024】
図4に示されるように、第1および第2長さ調節機構24、25や前後方向駆動機構35はコントローラ41によって制御される。このコントローラ41は、第1および第2駆動リンク22、23の伸縮量a、bやスピンドル12の前後移動量cを特定するマンマシンインターフェース回路42を備える。第1および第2回転量決定回路43、44では、特定された伸縮量a、bに基づいて第1および第2長さ調節機構24、25の駆動モータ33の回転量が決定される。第1および第2回転量決定回路43、44は、決定された回転量を特定する伸縮指令信号を出力する。伸縮指令信号を受け取った第1および第2長さ調節機構24、25の駆動回路45、46は、伸縮指令信号で特定される回転量を起因させる電力を各駆動モータ33に供給する。第3回転量決定回路47では、同様に、特定された前後移動量cに基づいて前後方向駆動機構35の駆動モータ39の回転量が決定される。第3回転量決定回路47は、決定された回転量を特定する前後移動指令信号を出力する。前後移動指令信号を受け取った前後方向駆動機構35の駆動回路48は、前後移動指令信号で特定される回転量を起因させる電力を駆動モータ39に供給する。第1および第2長さ調節機構24、25の駆動モータ33や前後方向駆動機構35の駆動モータ39の回転量はエンコーダ50、51、52によって検出されることができる。
【0025】
マンマシンインターフェース回路42は、第1および第2駆動リンク22、23の連結先端に支持された加工具の移動平面にxy座標系を設定する座標系設定回路として機能するメモリ回路55を備える。加工位置設定回路56は、設定されたxy座標系で加工具の位置を特定するx座標値およびy座標値に基づいて第1および第2駆動リンク22、23の長さを決定する。こうしたx座標値およびy座標値は入力回路57から取り込まれる。入力回路57は、例えば作業者が入力するNCプログラムを解読してx座標値およびy座標値を取得することができる。前後移動量決定回路58は、解読されたNCプログラムに基づいて工具の前後移動量cを決定する。
【0026】
検出回路59では、第1および第2長さ調節機構24、25のエンコーダ50、51で検出された駆動モータ33の回転量が取得される。取得された回転量に応じて第1および第2駆動リンク22、23の長さが検出される。加工位置算出回路60は、検出された2つの長さに基づきxy座標系で加工具の位置を特定するx座標値およびy座標値を算出する。表示器駆動回路61は、算出されたx座標値およびy座標値を表示器62の表示画面に表示させる。
【0027】
メモリ回路55には、例えば図5に示されるように、第1駆動リンク22の支点63に原点を設定するとともに、第1および第2駆動リンク22、23の支点63、64同士を結ぶ直線にx座標軸を設定するxy座標系が記憶される。このxy座標系では、第1および第2駆動リンク22、23の連結先端に支持される工具の位置は座標点(x,y)で特定される。このとき、第1および第2駆動リンク22、23を2辺に含む三角形では、第1駆動リンク22を斜辺とした第1直角三角形65と、第2駆動リンク23を斜辺とした第2直角三角形66とが特定されることができる。したがって、工具の位置(x,y)のx座標値およびy座標値を用いれば、第1直角三角形65に関する三平方の定理に基づいて第1駆動リンク22の長さが算出されることができる。また、第2駆動リンク23の支点64のx座標値が明らかであれば、第2直角三角形66に関する三平方の定理に基づいて第2駆動リンク23の長さが算出されることができる。第2駆動リンク23の支点64のx座標値は、第1および第2駆動リンク22、23の支点63、64同士の間隔Hによって特定されることができる。
【0028】
しかも、メモリ回路55は、前述のxy座標系でマシン座標系XYを規定する。マシン座標系XYは、xy座標系上に設定されるマシン原点(x0,y0)によって特定される。例えば図6に示されるように、xy座標系でマシン原点(x0,y0)を特定するには、マシン原点(x0,y0)を確立する第1および第2駆動リンク22、23の初期長さL、Rや、第1および第2駆動リンク22、23の支点63、64同士の間隔Hが明らかであればよい。前述したように第1直角三角形や第2直角三角形に対して三平方の定理が適用されれば、次式に従ってマシン原点(x0,y0)が特定されることができるのである。
【0029】
【数7】
こうしてマシン座標系XYが特定されると、ワーク上ではこのマシン座標系XYに基づいて加工位置(X,Y)が特定されることとなる。
【0030】
図7に示されるように、コントローラ41には、初期位置決定回路70がさらに設けられる。この初期位置決定回路70は、後述する本発明に係る初期位置決定方法に基づいて、マシン原点(x0,y0)を確立する第1および第2駆動リンク22、23の初期長さL、Rや、第1および第2駆動リンク22、23の支点63、64同士の間隔Hを算出する。この初期位置決定回路70で算出された初期長さL、Rおよび支点同士の間隔Hがメモリ回路55に記憶されることとなる。
【0031】
次に工作機10の動作を説明する。まず、工作機10を操る作業者は、工具の移動平面上でマシン原点(x0,y0)を任意に設定する。設定にあたっては、まず、加工テーブル11上に測定用のワークが設置される。このワークには、工具の回転軸13に直交する1平面に広がる測定面が形成される。加工テーブル11にワークが設置されると、測定面では、第1および第2駆動リンク22、23の支点同士を結ぶ直線と平行な水平方向が特定されることができる。
【0032】
続いて作業者は、任意の初期位置に工具を位置決めする。この初期位置はマシン原点(x0,y0)に相当する。初期位置決定回路70は、初期位置を確立する第1および第2駆動リンク22、23の初期長さを記憶する。ここでは、第1および第2駆動リンク22、23の伸縮量a、bがゼロに設定されればよい。この初期位置で、工具の加工が実施され、ワークの測定面に第1加工痕が形成される。
【0033】
続いて初期位置決定回路70は、第1駆動リンク22の初期長さを維持しつつ第2駆動リンク23の長さを変化させて第1移動位置に工具を位置決めする。第2長さ調節機構25の駆動回路46に電力が供給され、駆動モータ33の回転が起因される。このとき、エンコーダ51は駆動モータ33の回転量を検出する。初期位置決定回路70は、検出された回転量に基づき、第2駆動リンク23の第1伸縮量fを算出する。算出された第1伸縮量fは記憶される。この第1伸縮量fによって、第2駆動リンク23の初期長さに対する第1変化量が特定される。この第1移動位置で、工具の加工が実施され、ワークの測定面に第2加工痕が形成される。
【0034】
再び初期位置決定回路70は、第1駆動リンク22の初期長さを維持しつつ第2駆動リンク23の長さをさらに変化させて第2移動位置に工具を位置決めする。第2長さ調節機構25の駆動回路46に電力が供給され、駆動モータ33の回転が起因される。このとき、エンコーダ51は駆動モータ33の回転量を検出する。初期位置決定回路70は、検出された回転量に基づき、第2駆動リンク23の第2伸縮量gを算出する。算出された第2伸縮量gは記憶される。この第2伸縮量gによって、第2駆動リンク22の初期長さに対する第2変化量が特定される。この第2移動位置で、工具の加工が実施され、ワークの測定面に第3加工痕が形成される。
【0035】
その後、初期位置決定回路70は、第2駆動リンク23の長さを初期長さに復帰させる。第2長さ調節機構25の駆動回路46には、伸縮量(−g)を起因させる伸縮指令信号が供給される。第2駆動リンク23が初期長さに復帰した時点で、初期位置決定回路は、第2駆動リンク23の初期長さを維持しつつ第1動リンク22の長さを変化させて第3移動位置に工具を位置決めする。第1長さ調節機構24の駆動回路45に電力が供給され、駆動モータ33の回転が起因される。このとき、エンコーダ50は駆動モータ33の回転量を検出する。初期位置決定回路70は、検出された回転量に基づき、第1駆動リンク22の第3伸縮量hを算出する。算出された第3伸縮量hは記憶される。この第3伸縮量hによって、第1駆動リンク23の初期長さに対する第3変化量が特定される。この第3移動位置で、工具の加工が実施され、ワークの測定面に第4加工痕が形成される。
【0036】
初期位置決定回路70は、続いて、第1加工痕から第2、第3および第4加工痕までの距離に対して、第1および第2駆動リンク22、23の支点同士を結ぶ直線に平行な水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3を取得する。こうした水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3は測定面上で実測されればよい。水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3が取得されると、初期位置決定回路70は、記憶された第1、第2および第3伸縮量f、g、hを呼び出し、次式に従って、第1および第2駆動リンク22、23の実測長さL、Rおよび第1および第2駆動リンク22、23の支点同士の間隔Hを算出する。
【0037】
【数8】
算出された実測長さL、Rおよび支点同士の間隔Hはメモリ回路55に記憶される。
【0038】
ここで、図8を参照しつつ本発明に係る初期位置決定方法の原理を説明する。ワークの測定面に形成された第1〜第4加工痕は、実測長さL、Rおよび支点同士の間隔Hに基づいて設定されるxy座標系で、初期位置(x0,y0)、第1移動位置(x1,y1)、第2移動位置(x2,y2)および第3移動位置(x3,y3)を各々特定する。これらの位置では、前述したとおり、第1駆動リンク22を斜辺に含む第1直角三角形と、第2駆動リンク23を斜辺に含む第2直角三角形とに基づいて三平方の定理が適用されることができる。したがって、各位置のx座標値は、第1および第2駆動リンク22、23の実測長さL、Rおよび支点同士の間隔Hに基づき次式で表現されることができる。
【0039】
【数9】
初期位置(x0,y0)に対して、第1移動位置(x1,y1)、第2移動位置(x2,y2)および第3移動位置(x3,y3)のx座標差分値Δ1、Δ2、Δ3は次式で表現されることができる。
【0040】
【数10】
これらの数式に各位置でのx座標値を表現する前述の数式を代入すると、各x座標差分値Δ1、Δ2、Δ3は次式で表現されることができる。
【0041】
【数11】
こうして得られた数式を連立させ、実測長さL、Rおよび支点同士の間隔Hを解くと、次式が得られることとなる。
【0042】
【数12】
したがって、前述のように実測長さL、Rに対する各伸縮量f、g、hや、x座標差分値Δ1、Δ2、Δ3が実測されれば、実測長さL、Rおよび支点同士の間隔Hを得ることができるのである。なお、前述のように第2駆動リンク23を2回にわたって伸縮させる代わりに、第1駆動リンク22を2回にわたって伸縮させてもよい。
【0043】
いま、マシン座標系XYに従って加工位置(X1,Y1)が特定されたと仮定する。ワークが加工テーブル11上に設置されると、マシン座標系XYにワークが取り込まれる。作業者は、NCプログラムなどを通じてワーク上で設定される加工位置(X1,Y1)を入力回路57に入力する。
【0044】
入力回路57で取得された加工位置(X1,Y1)のx座標値およびy座標値は加工位置設定回路56に送り込まれる。加工位置設定回路56は、マシン座標系XYで特定された加工位置(X1,Y1)をxy座標系に投影する。すると、xy座標系では、図6に示されるように、加工位置(X1,Y1)を確立する第1駆動リンク22を斜辺とした第1直角三角形が特定される。したがって、xy座標系で第1駆動リンク22の支点63に対する加工位置のx座標差分値X1+x0およびy座標差分値Y1+y0が算出されれば、三平方の定理に従って次式が成立する。
【0045】
【数13】
したがって、算出されたx座標差分値X1+x0およびy座標差分値Y1+y0に基づけば、次式に従って、加工位置(X1+x0,Y1+y0)を確立する第1駆動リンク22の長さL+aが算出されることができる。
【0046】
【数14】
xy座標系では、同様に、加工位置(X1,Y1)を確立する第2駆動リンク23を斜辺とした第2直角三角形が特定される。したがって、支点63、64同士の間隔Hおよび前述のx座標差分値X1+x0に基づいて、第2駆動リンク23の支点64および加工位置(X1,Y1)の間でx座標差分値H−(X1+x0)が算出されれば、三平方の定理に従って次式が成立する。
【0047】
【数15】
したがって、算出されたx座標差分値H−(X1+x0)およびy座標差分値Y1+y0に基づけば、次式に従って、加工位置(X1+x0,Y1+y0)を確立する第2駆動リンク23の長さR+bが算出されることができる。このとき、支点63、64同士の間隔Hはメモリ回路55から取得される。
【0048】
【数16】
第1および第2長さ調節機構24、25の各駆動モータ33では、マシン原点を確立する際に必要とされる回転位置を基準に回転量が制御される。したがって、第1および第2駆動リンク22、23の伸縮は、初期長さL、Rを基準に設定される伸縮量a、bに基づいて制御される。第1および第2駆動リンクの長さL+a、R+bが算出されれば、メモリ回路55に記憶された初期長さL、Rを用いることによって、加工位置(X1,Y1)を確立する伸縮量a、bが特定されることができる。こうして特定された伸縮量a、bに基づいて第1および第2駆動リンク22、23が伸縮されると、工具は加工位置(X1,Y1)に位置決めされることとなる。
【0049】
こうして工具が加工位置(X1,Y1)に位置決めされれば、工作機10を操る作業者は、加工位置(X1,Y1)を特定するx座標値およびy座標値を入力回路57に入力するだけでよく、その結果、NCプログラムに慣れ親しんだ作業者でも簡単に工作機10を操ることができる。加えて、ワークを設計する設計者は、従来と同様に、ワーク上に設定されるマシン座標系XYと、加工位置のx座標値およびy座標値とを設計図面上で指定すれば済むこととなる。
【0050】
マシン原点を基準に工具が移動し加工位置(X1,Y1)に位置決めされると、第1および第2長さ調節機構24、25の各駆動モータ33の回転量はエンコーダ50、51によって検出される。すると、検出回路59では、検出された回転量に対応する伸縮量a、bが算出される。加工位置算出回路60は、算出された伸縮量a、bと、メモリ回路55に記憶された初期長さL、Rとに基づいて第1および第2駆動リンク22、23の長さL+a、R+bを特定する。
【0051】
図6に示されるように、算出された第1および第2駆動リンク22、23の長さL+a、R+bがxy座標系に投影されると、前述したように、第1および第2駆動リンク22、23を2辺に含む三角形では、第1駆動リンク22を斜辺に含む第1直角三角形と、第2駆動リンク23を斜辺に含む第2直角三角形とが特定されることができる。したがって、2つの直角三角形に三平方の定理を適用すれば、特定された第1および第2駆動リンク22、23の長さL+a、R+bに基づき、次式に従って工具の位置(X1+x0,Y1+y0)が算出されることができる。
【0052】
【数17】
その結果、マシン座標系XYに従って工具の位置(X1,Y1)を特定することができる。このとき、xy座標系でマシン原点を特定する座標点(x0,y0)は、メモリ回路55に記憶される初期長さL、Rおよび支点同士の間隔Hに基づいて前述のとおり算出されていればよい。
【0053】
特定された工具の位置(X1,Y1)のx座標値およびy座標値は表示器駆動回路61に供給される。表示器駆動回路61は、供給されたx座標値およびy座標値を表示器62の表示画面に表示させる。こうして工作機10の操作時に工具の位置(X1,Y1)が表示されれば、工作機10を操る作業者は、表示されたx座標値およびy座標値で加工位置を確認しながら工作機10を操ることができ、その結果、NCプログラムに慣れ親しんだ作業者でも簡単に工作機10を操ることができる。
【0054】
例えば、第1加工位置から第2加工位置まで連続的に工具を移動させる場合には、前述のxy座標系で第1加工位置と第2加工位置とを結ぶ直線や曲線が特定されればよい。直線や曲線上でx座標値およびy座標値が特定されれば、特定されたx座標値およびy座標値に基づいて工具を移動させることができる。コントローラ41は、x座標値を漸増させながら、x座標値およびy座標値を順次特定していくこととなる。
【0055】
以上説明してきた工作機10では、メモリ回路55に記憶されるxy座標系で、マシン座標系XYのX座標軸をxy座標系のx座標軸に一致させてもよい。すなわち、マシン原点をxy座標系のx座標軸上に設定してもよい。加工位置(X1,Y1)のy座標値と、y座標差分値Y1+y0とが一致することから、y座標差分値Y1+y0の算出の手間を省くことができる。しかも、マシン原点をxy座標系の原点に一致させれば、加工位置(X1,Y1)のx座標値およびy座標値と、x座標差分値X1+x0およびy座標差分値Y1+y0とが一致することから、x座標差分値X1+x0およびy座標差分値Y1+y0の算出の手間を省くことができる。また、xy座標系やマシン座標系XYでは、x座標軸およびy座標軸が入れ替えられてもよい。
【0056】
なお、本実施形態に係る工作機10では、前述のスピンドル12に代えて、レーザビームの照射源やウォータージェットの発射源などが第1および第2駆動リンク22、23の連結先端に支持されてもよい。こうした場合には、工具の回転軸13に代えてレーザビームやウォータージェットの進行方向が特定されればよい。また、工作機10は、前述のように加工テーブル11を備えている必要はなく、ワークに設定されるマシン座標系XYと工作機10のマシン座標系XYとが正確に一致されればよい。さらに、前述のコントローラ41で実施される処理は、演算処理回路によって実行されるソフトウェアプログラムによって達成されてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、2つの駆動リンクを用いた工作機で加工具を正確に加工位置に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 工作機の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】 第1長さ調節機構の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】 前後方向駆動機構の構造を概略的に示す断面図である。
【図4】 工作機の制御系を概略的に示すブロック図である。
【図5】 メモリ回路に記憶されるxy座標系の概念を示す図である。
【図6】 メモリ回路に記憶されるマシン座標系の概念を示す図である。
【図7】 コントローラの構造を概略的に示すブロック図である。
【図8】 本発明に係る工作機の初期位置決定方法の原理を概略的に示す図である。
【符号の説明】
10 工作機、22 第1駆動リンク、23 第2駆動リンク、70 初期位置決定回路、63 第1駆動リンクの支点、64 第2駆動リンクの支点、f 第1変化量としての第1伸縮量、g 第2変化量としての第2伸縮量、h 第3変化量としての第3伸縮量、L 第1駆動リンクの実測長さ、R 第2駆動リンクの実測長さ。
Claims (7)
- 揺動する第1および第2駆動リンクの連結先端に支持される加工具の移動平面に平行にワークの1平面を設定する工程と、第1および第2駆動リンクの初期長さで確立される加工具の初期位置で前記1平面上に第1加工痕を形成する工程と、第1および第2駆動リンクの初期長さを記憶する工程と、第2駆動リンクの初期長さを第1変化量fで変化させて加工具の第2加工痕を前記1平面上に形成する工程と、第2駆動リンクの初期長さを第2変化量gで変化させて加工具の第3加工痕を前記1平面上に形成する工程と、第1駆動リンクの初期長さを第3変化量hで変化させて加工具の第4加工痕を前記1平面上に形成する工程と、前記1平面上に形成された第1加工痕から第2、第3および第4加工痕までの距離に対して、第1および第2駆動リンクの支点同士を結ぶ直線に平行な水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3を取得する工程と、取得された3つの水平方向成分Δ1、Δ2、Δ3および前記第1、第2および第3変化量f、g、hに基づいて、前記初期位置を確立する第1および第2駆動リンクの実測長さL、Rを算出する工程と、算出された実測長さL、Rを記憶する工程とを備えることを特徴とする工作機の初期位置決定方法。
- 請求項1、2または3に記載の工作機の初期位置決定方法において、前記第2および第3加工痕に関する水平方向成分Δ1、Δ2および前記第1および第2変化量f、gに基づいて前記第1および第2駆動リンクの支点同士の間隔Hを算出する工程と、算出された間隔Hを記憶する工程とをさらに備えることを特徴とする工作機の初期位置決定方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の工作機の初期位置決定方法において、前記xy座標系は、原点で前記第1駆動リンクの支点を特定し、x座標軸上で前記第2駆動リンクの支点を特定することを特徴とする工作機の初期位置決定方法。
- 請求項6に記載の工作機の初期位置決定方法において、前記初期位置を原点に設定するマシン座標系が特定されることを特徴とする工作機の初期位置決定方法。
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