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JP3840087B2 - リチウム二次電池及び負極材料 - Google Patents

リチウム二次電池及び負極材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に関し、特に負極の構成を改良したリチウム二次電池と負極材料に係わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、負極活物質としてリチウムを用いた非水電解質電池は高エネルギー密度電池として注目されており、正極活物質に二酸化マンガン(MnO2 )、フッ化炭素[(CF2 n ]、塩化チオニル(SOCl2 )等を用いた一次電池は、既に電卓、時計の電源やメモリのバックアップ電池として多用されている。
【0003】
さらに、近年、VTR、通信機器などの各種の電子機器の小型、軽量化に伴いそれらの電源として高エネルギー密度の二次電池の要求が高まり、リチウムを負極活物質とするリチウム二次電池の研究が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、負極にリチウムを用い、電解液として炭酸プロピレン (PC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、テトラヒドロフラン(THF)等の非水溶媒中にLiClO4 、LiBF4 、LiAsF6 等のリチウム塩を溶解した非水電解液やリチウムイオン伝導性固体電解質を用い、また正極活物質としては主にTiS2 、MoS2 、V2 5 、V6 13、MnO2 等のリチウムとの間でトポケミカル反応する化合物を用いることが研究されている。
【0005】
しかしながら、上述したリチウム二次電池は現在まだ実用化されていない。この主な理由は、充放電効率が低く、しかも充放電が可能な回数(サイクル寿命)が短いためである。この原因は、負極のリチウムと非水電解液との反応によるリチウムの劣化によるところが大きいと考えられている。すなわち、放電時にリチウムイオンとして非水電解液中に溶解したリチウムは、充電時に析出する際に溶媒と反応し、その表面が一部不活性化される。このため、充放電を繰り返していくとデンドライド状(樹枝状)や小球状にリチウムが析出し、さらにはリチウムが集電体より脱離するなどの現象が生じる。
【0006】
このようなことから、リチウム二次電池に組み込まれる負極としてリチウムを吸蔵・放出する炭素質物、例えばコークス、樹脂焼成体、炭素繊維、熱分解気相炭素などを用いることによって、リチウムと非水電解液との反応、さらにはデンドライド析出による負極特性の劣化を改善することが提案されている。
【0007】
前記炭素質物を含む負極は、炭素質物の中でも主に炭素原子からなる六角網面層が積み重なった構造(黒鉛構造)の部分において、前記の層と層の間の部分にリチウムイオンが出入りすることにより充放電を行うと考えられている。このため、リチウム二次電池の負極にはある程度黒鉛構造の発達した炭素質物を用いる必要がある。しかしながら、黒鉛化の進んだ巨大結晶を粉末化した炭素質物を非水電解液中で負極として用いると、非水電解液が分解し、結果して電池の容量および充放電効率が低くなる。特に、高電流密度で電池を作動させると、容量、充放電効率、放電時の電圧の低下が著しくなる。また、充放電サイクルが進むに従い炭素質物の結晶構造あるいは微細構造が崩れ、リチウムの吸蔵放出能が劣化し、サイクル寿命が低下するという問題点があった。
【0008】
また、黒鉛化物においてその粉末は薄片状であるため、リチウムイオンの挿入する黒鉛結晶子のc軸方向の面が電解液に露出する面積がより小さくなるため、ハイレートの充放電サイクルにおいては急激に容量が低下する問題がある。このため、カーボンブラック等を添加して改善がなされているが、負極充填密度が低下する問題が生じる。その結果、従来の黒鉛化物では高容量のリチウム二次電池を実現できなかった。
【0009】
さらに、黒鉛化の進んだ炭素繊維においても、粉末にすると非水電解液が分解し、巨大結晶の粉末を用いた場合と同様に、負極としての性能が大幅に低下するなどの問題点を有していた。
【0010】
一方、黒鉛化度の低いコークスや炭素繊維等の炭素化物では、溶媒の分解はある程度抑えられるものの、容量および充放電効率が低く、しかも充放電の過電圧が大きいこと、電池の放電電圧の平坦性が低いこと、さらにサイクル寿命が低いことなどの問題点を有している。
【0011】
従来、特開昭62−268058号、特開平2−82466号、特開平4−61747号、特開平4−115458号、特開平4−184862号、特開平4−190557号等に開示されているように種々の炭素化物や黒鉛化物の黒鉛化度を制御し、最適な黒鉛構造のパラメータについて提案されてきたが、十分な特性を有する負極は得られていない。また、特開平4−79170号、特開平4−82172号には負極として用いる炭素繊維について開示されているが、それを粉末化した炭素質物を用いた負極の性能は問題を有している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高容量で充放電効率、サイクル寿命、放電電圧の平坦性、急速充放電サイクルなど電池特性が優れたリチウム二次電池及び負極材料を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるリチウム二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物を含む負極と、非水電解液とを具備したリチウム二次電池において、
前記炭素質物は、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.33nmの範囲にあり、X線回折法による六方晶系の(101)回折ピークに対するX線回折法による菱面体晶系の(101)回折ピークの比率が0.6以下で、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係わる負極材料は、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.33nmの範囲にあり、X線回折法による六方晶系の(101)回折ピークに対するX線回折法による菱面体晶系の(101)回折ピークの比率が0.6以下で、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越える炭素質物を含有することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わるリチウム二次電池(例えば円筒形リチウム二次電池)を図1を参照して詳細に説明する。
【0016】
有底円筒状の容器1は、底部に絶縁体2が配置されている。電極群3は、前記容器 1内に収納されている。前記電極群3は、正極4、セパレ―タ5及び負極6をこの順序で積層した帯状物を前記負極6が外側に位置するように渦巻き状に巻回した構造になっている。
【0017】
前記容器1内には、電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁紙7は、前記容器1内の前記電極群3の上方に載置されている。絶縁封口板8は、前記容器1の上部開口部に配置され、かつ前記上部開口部付近を内側にかしめ加工することにより前記封口板8は前記容器1に液密に固定されている。正極端子9は、前記絶縁封口板8の中央には嵌合されている。正極リ―ド10の一端は、前記正極4に、他端は前記正極端子9にそれぞれ接続されている。前記負極6は、図示しない負極リ―ドを介して負極端子である前記容器1に接続されている。
【0018】
前記容器1は、例えばステンレスから作られている。
【0019】
前記正極4は、正極活物質に導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布、乾燥して薄板状にすることにより作製される。
【0020】
前記正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト化合物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2 )、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2 )、リチウムマンガン酸化物(LiMn2 4 、LiMnO2 )を用いると、高電圧が得られるために好ましい。
【0021】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0022】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDE)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0023】
前記正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0024】
前記集電体としては、例えばアルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることができる。
【0025】
前記セパレータ5としては、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。
【0026】
前記負極6は、下記(1)〜(4)に説明する炭素質物を含む。ただし、炭素質物を決定するためのLa、d002 、Lcおよび強度比(P101 /P100 )の測定、定義は、次の通りである。
【0027】
(a)X線回折法による測定のデータは全てCuKαをX線源、標準物質に高純度シリコンを使用した。La、d002 、Lcは各回折ピークの位置、及び半値幅から求めた。算出方法としては、半値幅中点法を用いた。
【0028】
(b)a軸方向の結晶子の長さLaおよびc軸方向の結晶子の長さLcは、シェラーの式の形状因子であるKが0.89とした時の値である。
【0029】
(c)X線回折法による(101)回折ピークP101 と(100)回折ピークP100 の強度比(P101 /P100 )とは、それらピークの高さ比から求めたものである。
【0030】
(1)炭素質物
この炭素質物は、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.336nmの範囲にあり、(101)回折ピークP101 と(100)回折ピークP100 のピーク強度比(P101 /P100 )が2.2を越え、a軸方向の結晶子の長さLaとc軸方向の結晶子の長さLcの比(La/Lc)が1.5未満の粉末である。
【0031】
前記炭素質物は、X線回折法により得られる(002)面の平均面間隔d002 が0.335〜0.336nmである。このような炭素質物は、リチウムイオンを挿入できるサイトが多くなり、容量は増大する。ただし、前記範囲を逸脱する平均面間隔を有する炭素質物では、容量が低下し、電池の放電時の電圧の平坦性が低くなる。
【0032】
前記強度比(P101 /P100 )が2.2を越える炭素質物は、黒鉛構造が非常に発達している。このような黒鉛構造は、積み重なった六角網面層間のずれ、ねじれ、角度が少ないものである。これは従来の天然黒鉛の特徴を有しているため、ハイレートの充放電条件では容量の低下を起す。このため、前記X線回折法によるa軸方向の結晶子の長さLaとC軸方向の結晶子の長さLcの比(La/Lc)を1.5未満とすることにより、前記ハイレートの充放電条件での容量の低下を回避した黒鉛化物を得ることができた。すなわち、従来の黒鉛より前記Laを短く、前記Lcを長くすることにより、リチウムイオンの挿入・脱離反応を円滑に行うことができ、前記層構造の問題点を克服することが可能となり、ハイレートの充放電条件で高容量を得ることができる。
【0033】
前記炭素質物は、X軸回折により得られる(110)面の回折ピークによる黒鉛構造のa軸方向の結晶子の長さLaが20〜100nm、より好ましくは40〜80nmであることが望ましい。また、前記炭素質物の黒鉛構造におけるa軸面の形状は長方形であることが好ましい。
【0034】
前記Laが前記範囲内にある炭素質物は、黒鉛構造が適度に発達しており、かつ結晶子のa軸方向の長さが適度であるため、リチウムイオンが六角網面層の層間に拡散し易くなり、また、リチウムイオンの出入りするサイトが多くなり、リチウムイオンがより多く吸蔵・放出できる性質を示す。
【0035】
前記Laが100nmを越えた炭素質物は、巨大結晶となり、リチウムイオンが六角網面層の層間へ拡散し難くなり、リチウムイオンの吸蔵・放出量が確保し難くなる。また、その表面は、非水溶媒に対して活性であり、該溶媒が還元分解しやすくなる。一方、前記Laが20nm未満の炭素質物は黒鉛構造が未発達の炭素質物が炭素質物中に多く混在するため、リチウムイオンの六角網面層の層間への可逆的な吸蔵・放出が少ないものになる恐れがある。
【0036】
前記炭素質物は、X線回折法により得られるc軸方向の結晶子の大きさLcが15nm以上、より好ましくは20〜100nmであることが望ましい。このような範囲のLcを有する炭素質物は、黒鉛構造が適度に発達し、リチウムイオンが多く可逆的に吸蔵・放出される性質を示す。
【0037】
前記炭素質物を構成する黒鉛構造と乱層構造の比率の尺度としては、アルゴンレーザ(波長514.5nm)を光源として測定された炭素質物のラマンスペクトルがある。前記炭素質物について測定されるラマンスペクトルには、1360cm-1付近に現れる乱層構造に由来するピークと、1580cm-1付近に現れる黒鉛構造に由来するピークが存在する。そのピーク強度比、すなわち前記アルゴンレーザラマンスペクトル(波長514.5nm)における1580cm-1のピーク強度(R2)に対する1360cm-1のピーク強度(R1)の比(R1/R2)の値が、0.2以下の炭素質物を用いることが好ましい。
【0038】
前記炭素質物は、黒鉛化度を示す尺度である真密度が2.20g/cm3 以上であることが好ましい。
【0039】
前記炭素質物は、粒度分布が1〜100μmの範囲に90体積%以上が存在し、かつ平均粒径が1〜80μmであることが好ましい。また、N2 ガス吸着のBET法による比表面積が0.1〜40m2 /gであることが好ましい。このような粒度分布および比表面積を有する炭素質物は、負極の充填密度を向上できると同時に、非水溶媒に対し活性である黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物または無定型炭素の含有を減少させ、非水溶媒の還元分解を抑えることができる。さらに、粒径が0.5μm以下の微粒子を粒度分布において5体積%以下含む炭素質物は黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物あるいは無定型炭素をさらに減少させ、非水溶媒の還元分解を効果的に抑制することが可能になる。逆に、前記粒度分布およびN2 ガス吸着のBET法による比表面積が大きくなり過ぎると、無定型炭素質物の含有および黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物の含有が多くなって溶媒の還元分解が起こり易くなり、その上負極の充填密度が低下する。
【0040】
炭素質物は、硫黄の含有量が1000ppm以下(0ppmを含む)であることが好ましい。このような硫黄の含有量の少ない炭素質物は、リチウムイオンの吸蔵・放出量を増加されると共に非水溶媒の還元分解が低減される。
【0041】
黒鉛構造がある程度発達した炭素質物においては、硫黄の含有量を1000ppm以下(0ppmを含む)の低い値にすると、黒鉛構造の欠陥が少なく、結果として黒鉛構造の崩れが生じにくく、その上リチウムイオンの吸蔵・放出量が増加するものと考えられる。このため、リチウム二次電池の容量、充放電効率、及びサイクル寿命を向上することができる。また、非水溶媒及びリチウムイオンと硫黄または硫黄化合物との反応による非水溶媒の分解および電極反応の阻害が低減されると考えられ、充放電効率、及びサイクル寿命を向上することができる。つまり、炭素質物中の硫黄とリチウムイオンが反応した場合、LiS−等の安定な基や、LiS等の化合物を作る。そのリチウムは可逆的な吸蔵・放出反応に寄与しなくなると考えられる。また、生じた化合物が六角網面層間の障害物となり、リチウムイオンの、スムーズな挿入を妨げると考えられる。これらの要因は、充放電効率及びサイクル寿命を低下させる。
【0042】
前記炭素質物中のその他の不純物として酸素、窒素、ケイ素、またはFe、Niなどの金属元素は、可能な限り少ないことが好ましい。具体的には、酸素の含有量は500ppm以下、窒素の含有量は、1000ppm以下、Fe、Niなどの金属元素はそれぞれ50ppm以下であることが好ましい。これらの不純物元素が前記範囲を越えると、炭素層間にあるリチウムイオンが不純物元素と反応して消費される恐れがある。ただし、アルミニウム、ホウ素、リン、カルシウム、スズなどが含有されることを許容する。
【0043】
前記炭素質物の製造方法の一例を次に説明する。
【0044】
まず、メソフェーズピッチを原料として溶融ブロー法により繊維長が200〜300μmの短繊維を紡糸した後、不融化して粉砕化できる程度に炭素化する。この炭素化の熱処理は、600〜2000℃、好ましくは800〜1500℃で行うことが望ましい。前記炭素化したメソフェーズピッチ系炭素繊維のX線回折法による(002)面の面間隔d002 は、0.344nm以上、より好ましくは0.357nm以上であることが望ましい。このような炭素繊維は、繊維長を短くするのに適した微細構造を有するため、粉砕に適している。これに対し、前記面間隔d002 が0.344nm未満の炭素繊維は粉砕されると、縦割れが生じて繊維長を短くすることが困難になる。つづいて、前記炭素化、粉砕処理を施した炭素繊維を2000℃以上、より好ましくは2500〜3200℃で黒鉛化することにより前述した炭素質物を製造する。この際、前記粉砕、焼成工程が極めて重要であり、粉砕時にボールミルやジェトミルなどを用いて適度な時間(20時間以内)粉砕することにより球状、粒状、ブロック状、円柱状としたものを黒鉛化することが好ましい。また、黒鉛化物の結晶構造に菱面体晶系を有する結晶が30%以上にならないようにする必要がある。これは、粉砕により六方晶系の黒鉛構造がくずれ、菱面体構造が形成されるためであるが、適度に粉砕することにより、0〜30体積%にすることが好ましい。この範囲を越えると電解液の分解が起るため負極性能が低下する。
【0045】
前記方法で製造される炭素質物の前記LaとLcの比および結晶構造は、粉砕条件(粉砕時間、雰囲気、粉砕力)を規定することによりコントロールすることができる。
【0046】
前記方法で炭素質物を製造する際には、得られる炭素質物の粒度分布、比表面積が前述した値になるようにすることが望ましい。
【0047】
前記炭素質物は、前述した方法により得られるものの他、例えば低硫黄の石油ピッチ、コールタールなどを原料として得られたコークスまたはバルクメソフェーズを2500〜3200℃で黒鉛化することにより得ることができる。
【0048】
なお、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d 002 が0.335〜0.336nmの範囲にあり、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越える炭素質物は前記菱面体晶系と六方晶系の比率をX線回折法による(101)回折ピークの比が0.6以下で規定できる。このような比率の菱面体構造が存在する炭素質物は、負極充放電効率を高くすることが可能である。
【0049】
(2)炭素質物
この炭素質物は、X線回折において、黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークと前記面間隔d002が0.344〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークとが現れる粉末である。
【0050】
前記炭素質物は、(002)面の面間隔d002が0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す巨大な黒鉛結晶(a軸方向の厚さLaが20nm以上)有する黒鉛化物と(002)面の面間隔d002が0.344〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶の小さい(Lcが6nm以下)炭素化物からなっているため、急速充電においてもサイクル劣化が少なく高容量を維持することが可能となる。後者の(002)回折ピークが0.356〜0.370nmの範囲に由来する炭素化物がより好ましい。
【0051】
従来では、(002)面の面間隔d002が0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す前記黒鉛化物からなる負極では急速充電においてサイクル劣化が大きく容量も小さくなる。また(002)面の面間隔d002が0.344〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークを示す前記炭素質物は、真密度が1.70〜2.15/cm3 であるため前記黒鉛化物に比べ小さく、負極の単位体積当たりの容量(mAh/cm3 )は小さくなる問題点を有している。
【0052】
このような問題点を改善するため、本発明の負極を構成する炭素質物は、前記特徴を有する黒鉛化物と炭素化物の両方を兼ね備えることにより、急速充電特性と容量が大幅に向上することが可能となった。これは、定電流での急速充電(2mA/cm2 以上)時には主に、(002)面の面間隔d002が0.344〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶にリチウムイオンが選択的に挿入される。この時のリチウムイオンの拡散速度は(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物に比べ非常に速いため急速充電が可能である。さらに急速充電が進行すると充電終了電圧に達し、その電圧で定電圧充電に切り替わる時は、主に、(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶にリチウムイオンが選択的に緩やかな速度で挿入するようになる。このようなリチウムイオンの選択的な挿入反応により、急速充電が可能となり、かつ高容量を維持することができる。
【0053】
前記炭素質物としては、例えばX線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークと0.344〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークとが現れる多相黒鉛化物、または(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物と(002)面の面間隔d002が0.344nm〜0.370nmの範囲に由来する回折ピークを示す炭素化物の混合体を挙げることができる。
【0054】
前記多相黒鉛化物としては、例えばポリ塩化ビニリデン、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、木炭、無煙炭、砂糖、ピッチなどを常圧または高圧下、1500〜3000℃の温度で不均一な黒鉛化を行って多相黒鉛化することにより得られる。このように黒鉛化を不均一に行うことにより、(002)面の面間隔d002が0.340nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化の進んだ相と(002)面の面間隔d002が0.344nm〜0.370nmに由来する回折ピークを示す黒鉛化の低い相を共存したものを得ることができる。
【0055】
前記混合体の一方の成分である黒鉛化物としては、例えば黒鉛、異方性ピッチ系炭素繊維、球状カーボン、熱分解気相成長炭素体、コークスなどの粉末が挙げられる。前記黒鉛化物は、比表面積が0.5〜10m2 /gの範囲にある黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末、メソフェーズ小球体がより好ましい。
【0056】
前記混合体の他方の成分である炭素化物としては、例えば低硫黄含有(2000ppm以下)、低窒素含有(1000pmm以下)のコークス、高純度異方性ピッチ系炭素繊維、球状カーボン、熱分解気相成長炭素体、樹脂焼成体などの粉末が挙げられる。前記炭素化物は、比表面積が2〜30m2 /gの範囲にある合成ピッチ(ナフタレンなど)を原料とする炭素繊維の粉末、高純度メソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末、メソフェーズ小球体、低硫黄含有のコークスがより好ましい。いずれの前記炭素化物も、600〜1200℃の範囲の焼成温度であるため、炭素化物中の硫黄や遷移金属(鉄、ニッケル)などの不純物を低くすることが重要である。このため原料である石油ピッチ、メソフェーズピッチ、コールタール中の前記不純物の少ないものを選択する必要がある。
【0057】
(3)炭素質物
この炭素質物は、ブロック状、繊維状または球状の形状を主体とする黒鉛化物で、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.337nmの範囲にあり、(101)回折ピークP101 と(100)回折ピークP100 のピーク強度比(P101 /P100 )が2.2を越える性状を有する。
【0058】
前記炭素質物は、X線回折法により得られる(002)面の平均面間隔d002 が0.335〜0.337nmである。このような炭素質物は、リチウムイオンを挿入できるサイトが多くなり、容量は増大する。ただし、前記範囲を逸脱する平均面間隔を有する炭素質物では、容量が低下し、電池の放電時の電圧の平坦性が低くなる。
【0059】
前記強度比(P101 /P100 )が2.2を越える炭素質物は、黒鉛構造が非常に発達している。このような黒鉛構造は、積み重なった六角網面層間のずれ、ねじれ、角度が少ないものである。これは従来の天然黒鉛の特徴を有しているため、ハイレートの充放電条件では容量の低下を起す恐れがある。このため、前記X線回折法によるa軸方向の結晶子の長さLaとC軸方向の結晶子の長さLcの比(La/Lc)を1.5未満とすることが好ましい。このようにLa/Lcを規定することにより、前記ハイレートの充放電条件での容量の低下を回避した黒鉛化物を得ることができる。すなわち、従来の黒鉛より前記Laを短く、前記Lcを長くすることにより、リチウムイオンの挿入・脱離反応を円滑に行うことができ、前記層構造の問題点を克服することが可能となり、ハイレートの充放電条件で高容量を得ることができる。
【0060】
前記炭素質物は、その形状がブロック状、繊維状または球状を有する。ここで、ブロック状とは薄片状以外の粒状で、長径と短径の比(長径/短径)が5以下、より好ましくは2以下であることを意味する。前記繊維状とは、繊維長と繊維径の比(繊維長/繊維径)が0.5〜10の範囲で、繊維長さ方向に対して垂直な断面において結晶子の配向性が放射状、ラメラ状またはブルックステーラ型であることが好ましい。前記球状とは、長径と短径の比(長径/短径)が1〜2の範囲の球体で、結晶子の配向性がその断面において放射状、ラメラ状またはブルックステーラ型であることが好ましい。このようなブロック状、繊維状または球状を有する炭素質物は、前記c軸方向の露出面積を大きくすることができるため、ハイレートの充放電条件で高容量の二次電池を得ることが可能になる。特に、結晶子の配向が放射状、ラメラ状またはブルックステーラ型である繊維状または球状を有する炭素質物は、前記c軸方向の露出面積を一層大きくすることができ、リチウムイオンの挿入脱離反応を円滑に行うことが可能になる。
【0061】
前記炭素質物は、X線回折法により得られる(110)面の回折ピークによる黒鉛構造のa軸方向の結晶子の長さLaが20〜100nm、より好ましくは40〜80nmであることが望ましい。また、前記炭素質物の黒鉛構造におけるa軸面の形状は長方形であることが好ましい。
【0062】
前記Laが前記範囲内にある炭素質物は、黒鉛構造が適度に発達しており、かつ結晶子のa軸方向の長さが適度であるため、リチウムイオンが六角網面層の層間に拡散し易くなり、また、リチウムイオンの出入りするサイトが多くなり、リチウムイオンがより多く吸蔵・放出できる性質を示す。
【0063】
前記Laが100nmを越えた炭素質物は、巨大結晶となり、リチウムイオンが六角網面層の層間へ拡散し難くなり、リチウムイオンの吸蔵・放出量が確保し難くなる。また、その表面は、非水溶媒に対して活性であり、該溶媒が還元分解しやすくなる。一方、前記Laが20nm未満の炭素質物は黒鉛構造が未発達の炭素質物が炭素質物中に多く混在するため、リチウムイオンの六角網面層の層間への可逆的な吸蔵・放出が少ないものになる恐れがある。
【0064】
前記炭素質物は、X線回折法により得られるc軸方向の結晶子の大きさLcが15nm以上、より好ましくは25〜200nmであることが望ましい。このような範囲のLcを有する炭素質物は、黒鉛構造が適度に発達し、リチウムイオンが多く可逆的に吸蔵・放出される性質を示す。
【0065】
前記炭素質物を構成する黒鉛構造と乱層構造の比率の尺度としては、アルゴンレーザ(波長514.5nm)を光源として測定された炭素質物のラマンスペクトルがある。前記炭素質物について測定されるラマンスペクトルには、1360cm-1付近に現れる乱層構造に由来するピークと、1580cm-1付近に現れる黒鉛構造に由来するピークが存在する。そのピーク強度比、すなわち前記アルゴンレーザラマンスペクトル(波長514.5nm)における1580cm-1のピーク強度(R2)に対する1360cm-1のピーク強度(R1)の比(R1/R2)の値が、0.2以下の炭素質物を用いることが好ましい。
【0066】
前記炭素質物は、黒鉛化度を示す尺度である真密度が2.20g/cm3 以上であることが好ましい。
【0067】
前記炭素質物は、粒度分布が1〜100μmの範囲に90体積%以上が存在し、かつ平均粒径が1〜80μmであることが好ましい。また、N2 ガス吸着のBET法による比表面積が0.1〜10m2 /gであることが好ましい。このような粒度分布および比表面積を有する炭素質物は、負極の充填密度を向上できると同時に、非水溶媒に対し活性である黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物または無定型炭素の含有を減少させ、非水溶媒の還元分解を抑えることができる。さらに、粒径が0.5μm以下の微粒子を粒度分布において5体積%以下含む炭素質物は黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物あるいは無定型炭素をさらに減少させ、非水溶媒の還元分解を効果的に抑制することが可能になる。逆に、前記粒度分布およびN2 ガス吸着のBET法による比表面積が大きくなり過ぎると、無定型炭素質物の含有および黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物の含有が多くなって溶媒の還元分解が起こり易くなり、その上負極の充填密度が低下する。
【0068】
炭素質物は、硫黄の含有量が1000ppm以下(0ppmを含む)であることが好ましい。このような硫黄の含有量の少ない炭素質物は、リチウムイオンの吸蔵・放出量を増加されると共に非水溶媒の還元分解が低減される。
【0069】
黒鉛構造がある程度発達した炭素質物においては、硫黄の含有量を1000ppm以下(0ppmを含む)の低い値にすると、黒鉛構造の欠陥が少なく、結果として黒鉛構造の崩れが生じにくく、その上リチウムイオンの吸蔵・放出量が増加するものと考えられる。このため、リチウム二次電池の容量、充放電効率、及びサイクル寿命を向上することができる。また、非水溶媒及びリチウムイオンと硫黄または硫黄化合物との反応による非水溶媒の分解および電極反応の阻害が低減されると考えられ、充放電効率、及びサイクル寿命を向上することができる。つまり、炭素質物中の硫黄とリチウムイオンが反応した場合、LiS−等の安定な基や、LiS等の化合物を作る。そのリチウムは可逆的な吸蔵・放出反応に寄与しなくなると考えられる。また、生じた化合物が六角網面層間の障害物となり、リチウムイオンの、スムーズな挿入を妨げると考えられる。これらの要因は、充放電効率及びサイクル寿命を低下させる。
【0070】
前記炭素質物中のその他の不純物として酸素、窒素、ケイ素、またはFe、Niなどの金属元素は、可能な限り少ないことが好ましい。具体的には、酸素の含有量は500ppm以下、窒素の含有量は、1000ppm以下、Fe、Niなどの金属元素はそれぞれ50ppm以下であることが好ましい。これらの不純物元素が前記範囲を越えると、炭素層間にあるリチウムイオンが不純物元素と反応して消費される恐れがある。ただし、アルミニウム、ホウ素、リン、カルシウム、スズなどが含有されることを許容する。
【0071】
前記炭素質物の製造方法の一例を次に説明する。
【0072】
まず、メソフェーズピッチを原料として溶融ブロー法により繊維長が200〜300μmの短繊維を紡糸した後、不融化して粉砕化できる程度に炭素化する。この時の不融化の条件は、後述する黒鉛化に大きく影響し、緩慢に不融化することが望ましい。前記炭素化の熱処理は、600〜2000℃、好ましくは800〜1500℃で行うことが望ましい。前記炭素化したメソフェーズピッチ系炭素繊維のX線回折法による(002)面の面間隔d002 は、0.344nm以上、より好ましくは0.357nm以上であることが望ましい。このような炭素繊維は、繊維長を短くするのに適した微細構造を有するため、粉砕に適している。これに対し、前記面間隔d002 が0.344nm未満の炭素繊維は粉砕されると、縦割れが生じて繊維長を短くすることが困難になる。つづいて、前記炭素化、粉砕処理を施した炭素繊維を2000℃以上、より好ましくは2500〜3200℃で黒鉛化することにより前述した炭素質物を製造する。この際、前記粉砕、焼成工程が極めて重要であり、粉砕時にボールミルやジェトミルなどを用いて適度な時間(20時間以内)粉砕することにより球状、ブロック状、繊維状としたものを黒鉛化することが必要である。さらに球状、ブロック状および繊維状の少なくとも2種の黒鉛化物を含む混合物でもよい。また、黒鉛化物の結晶構造に菱面体晶系を有する結晶が30%以上にならないようにする必要がある。これは、粉砕により六方晶系の黒鉛構造がくずれ、菱面体構造が形成されるためであるが、適度に粉砕することにより、0〜30体積%にすることが好ましい。この範囲を越えると電解液の分解が起るため負極性能が低下する。
【0073】
前記方法で製造される炭素質物の前記LaとLcの比および結晶構造は、粉砕条件(粉砕時間、雰囲気、粉砕力)を規定することによりコントロールすることができる。
【0074】
前記方法で炭素質物を製造する際には、得られる炭素質物の粒度分布、比表面積が前述した値になるようにすることが望ましい。
【0075】
前記炭素質物は、前述した方法により得られるものの他、例えば低硫黄の石油ピッチ、コールタールなどを原料として得られたコークス、メソフェーズ小球体またはバルクメソフェーズを2500〜3200℃で黒鉛化することにより得ることができる。
【0076】
なお、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d 002 が0.335〜0.336nmの範囲にあり、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越える炭素質物は前記菱面体晶系と六方晶系の比率をX線回折法による(101)回折ピークの比が0.6以下で規定できる。このような比率の菱面体構造が存在する炭素質物は、負極充放電効率を高くすることが可能である。
【0077】
(4)炭素質物
この炭素質物は、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物と、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化物とからなる。
【0078】
前記炭素質物は、(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す巨大な黒鉛結晶(a軸方向の厚さLaが40nm以上)有する黒鉛化物と(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶の比較的小さい(Laが40nm以下)の黒鉛化物とからなっているため、急速充電においてもサイクル劣化が少なく高容量を維持することが可能となる。後者の黒鉛化物は、(002)回折ピークが0.3370〜0.3380nmの範囲に由来することが好ましい。
【0079】
(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す前記黒鉛化物からなる負極では、急速充電においてサイクル劣化が大きく容量も小さくなる。また(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nmの範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化物からなる負極は容量が200〜280mAh/cm3 と前記黒鉛化物に比べて容量が小さい問題点を有している。
【0080】
このような問題点を改善するため、本発明の負極を構成する炭素質物は、前記特徴を有する2種の黒鉛化物を兼ね備えることにより、急速充電特性と容量が大幅に向上することが可能となった。これは、定電流での急速充電(2mA/cm2 以上)時には主に、(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶にリチウムイオンが選択的に挿入される。この時のリチウムイオンの拡散速度は(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物に比べ非常に速いため急速充電が可能である。さらに急速充電が進行すると充電終了電圧に達し、その電圧で定電圧充電に切り替わる時は、主に、(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛結晶にリチウムイオンが選択的に緩やかな速度で挿入するようになる。このようなリチウムイオンの選択的な挿入反応により、急速充電が可能となり、かつ高容量を維持することができる。
【0081】
前記炭素質物としては、例えばX線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物と0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化物とからなる多相黒鉛化物、または(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物と(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化物の混合体を挙げることができる。
【0082】
前記多相黒鉛化物としては、例えばポリ塩化ビニリデン、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、木炭、無煙炭、砂糖、ピッチなどを常圧または高圧下、1500〜3000℃の温度で不均一な黒鉛化を行って多相黒鉛化することにより得られる。このように黒鉛化を不均一に行うことにより、(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化の進んだ相と(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化の低い相を共存したものを得ることができる。
【0083】
前記混合体の一方の成分である(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物としては、例えば黒鉛、2300〜3200℃で黒鉛化した異方性ピッチ系炭素繊維、球状カーボン、熱分解気相成長炭素体、コークスなどの粉末が挙げられる。前記黒鉛化物は、比表面積が2〜10m2 /gで、平均粒径が1〜30μmの範囲にある黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末、メソフェーズ小球体がより好ましい。
【0084】
前記混合体の他方の成分である(002)面の面間隔d002が0.3370nmを越え、0.340nm以下の範囲に由来する回折ピークを示す黒鉛化物としては、例えば低硫黄含有(2000ppm以下)、低窒素含有(1000pmm以下)のコークス、高純度異方性ピッチ系炭素繊維、球状カーボン、熱分解気相成長炭素体、樹脂焼成体などの粉末が挙げられる。前記黒鉛化物は、比表面積が1〜10m2 /gの範囲にある合成ピッチ(ナフタレンなど)を原料とする炭素繊維の粉末、高純度メソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末、メソフェーズ小球体、低硫黄含有のコークスがより好ましい。前記黒鉛化物は、いずれも前記原料を2300〜3000℃の範囲の温度で焼成することにより得られる。
【0085】
前記(002)面の面間隔d002が0.3370nm以下に由来する回折ピークを示す黒鉛化物の混合重量比率は、5〜30重量%にすることが好ましい。前記混合重量比率が30重量%を越えるとレート特性が低下する恐れがある。一方、前記混合重量比率を5重量%未満にすると電池容量が低下する恐れがある。
【0086】
前記(1)〜(4)で説明した炭素質物を含む負極6は、具体的には次のような方法により作製される。前記炭素質物に結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布、乾燥して薄板状にすることにより前記正極を作製する。
【0087】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース (CMC)等を用いることができる。
【0088】
前記炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素材90〜98重量%、結着剤2〜10重量%の範囲にすることが好ましい。特に、前記炭素質物は負極6を作製した状態で5〜20mg/cm2 の範囲することが好ましい。
【0089】
前記集電体としては、例えば銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることができる。
【0090】
前記容器1内に収容される前記非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
【0091】
前記非水溶媒としては、リチウム二次電池の溶媒として公知の非水溶媒を用いることができ、特に限定はされないが、エチレンカーボネート(EC)と前記エチレンカーボネートより低融点であり且つドナー数が18以下である1種以上の非水溶媒(以下第2溶媒と称す)との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。このような非水溶媒は、前記負極を構成する黒鉛構造の発達した炭素質物に対して安定で、電解液の還元分解または酸化分解が起き難く、さらに導電性が高いという利点がある。
【0092】
エチレンカーボネートを単独含む非水電解液では、黒鉛化した炭素質物に対して還元分解され難い性質を持つ利点があるが、融点が高く(39℃〜40℃)粘度が高いため、導電率が小さく常温作動の二次電池では不向きである。エチレンカーボネートに混合する第2の溶媒は混合溶媒を前記エチレンカーボネートよりも粘度を小さくして導電性を向上させる。また、ドナー数が18以下の第2の溶媒(ただし、エチレンカーボネートのドナー数は16.4)を用いることにより前記エチレンカーボネートがリチウムイオンに選択的に溶媒和し易くなくなり、黒鉛構造の発達した炭素質物に対して前記第2の溶媒の還元反応が抑制されることが考えられる。また、前記第2の溶媒のドナー数を18以下にすることによって、酸化分解電位がリチウム電極に対して4V以上となり易く、高電圧なリチウム二次電池を実現できる利点も有している。
【0093】
前記第2種の溶媒としては、例えばジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレンまたは、酢酸メチル(MA)などが挙げられる。これらの第2の溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。特に、前記第2種の溶媒はドナー数が16.5以下であることがより好ましい。
【0094】
前記第2溶媒の粘度は、25℃において28mp以下であることが好ましい。前記混合溶媒中の前記エチレンカーボネートの配合量は、体積比率で10〜80%であることが好ましい。この範囲を逸脱すると、導電性の低下あるいは溶媒の分解がおき、充放電効率が低下する恐れがある。より好ましい前記エチレンカーボネートの配合量は体積比率で20〜75%である。非水溶媒中のエチレンカーボネートの配合量を20体積%以上に高めることによりエチレンカーボネートのリチウムイオンへの溶媒和が容易になるため、溶媒の分解抑制効果を向上することが可能になる。
【0095】
前記混合溶媒のより好ましい組成は、ECとDMC、ECとPCとDMC、ECとDEC、ECとPCとDEC、ECとγ−BLとDECの混合溶媒で、DMCまたはDECの体積比率は60%以下とすることが好ましい。このようにDECの比率を60%以下、より好ましくは35%以下にすることにより、混合溶媒の引火点を高くでき、安全性を向上することができる。ただし、粘度をさらに低下させる観点から、ジエトキシエタンなどのエーテル類を30体積%以下添加してもよい。
【0096】
前記混合溶媒(非水溶媒)中に存在する主な不純物としては、水分と、有機過酸化物(例えばグリコール類、アルコール類、カルボン酸類)などが挙げられる。前記各不純物は、黒鉛化物の表面に絶縁性の被膜を形成し、電極の界面抵抗を増大させるものと考えられる。したがって、サイクル寿命や容量の低下に影響を与える恐れがある。また高温(60℃以上)貯蔵時の自己放電も増大する恐れがある。このようなことから、非水溶媒を含む電解液においては前記不純物はできるだけ低減されることが好ましい。具体的には、水分は50ppm以下、有機過酸化物は1000ppm以下であることが好ましい。
【0097】
前記非水電解液に含まれる電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、ホウフッ化リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO2 2 ]などのリチウム塩(電解質)が挙げられる。中でもLiPE6 、LiBF4 、LiN(CF3 SO2 2 を用いるのが好ましい。特に、LiN(CF3 SO2 2 を用いると高温時(例えば60℃)での正極活物質との反応が少なく、高温時において優れた充放電サイクル特性を得ることができる。また、前記炭素質物に対して安定であり、サイクル寿命を向上できる利点を有する。
【0098】
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/1とすることが望ましい。
【0099】
【実施例】
以下、本発明の実施例を前述した図1を参照して詳細に説明する。
【0100】
実施例1
まず、リチウムコバルト酸化物(Lix CoO2 (0.8≦x≦1))粉末91重量%をアセチレンブラック3.5重量%、グラファイト3.5重量%及びエチレンプロピレンジエンモノマ粉末2重量%とトルエンを加えて共に混合し、アルミニウム箔(30μm)集電体に塗布した後、プレスすることにより正極を作製した。
【0101】
また、低硫黄(含有量8000ppm以下)石油ピッチを原料としたコークスをアルゴン雰囲気下、1000℃で炭素化した後、平均粒径40μm、粒度1〜80μmで90体積%が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく(5%以下)なるように適度に粉砕した後、真空下で3000℃にて黒鉛化することにより炭素質物を製造した。
【0102】
得られた炭素質物は、平均粒径40μmの黒鉛化炭素粉末であり、粒度分布で1〜80μmに90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、3m2 /gであった。粉末の形状は、ブロック状であった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は3.6であった。d002 は、0.3354nm、Lcは43nm、Laは43nmで、La/Lcは1であった。なお、X線回折による菱面体晶系と六方晶系の(101)回折ピーク強度の比は0.4であった。また炭素質物中の硫黄の含有量は、100ppm以下であった。その他、酸素の含有量は100ppm以下、窒素の含有は100ppm以下、Fe、Niは各々1ppmであった。
【0103】
次いで、前記炭素質物96.7重量%をスチレンブタジエンゴム2.2重量%とカルボキシメチルセルロース1.1重量%と共に混合し、これを集電体としての銅箔に塗布し、乾燥することにより負極を作製した。
【0104】
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレ―タおよび前記負極をそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が外側に位置するように渦巻き状に巻回して電極群を作製した。
【0105】
さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )をエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(混合体積比率40:30:30)に1.0モル/1溶解して非水電解液を調製した。
【0106】
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0107】
実施例2
まず、石油ピッチから得られた異方性を有するバルクメソフェーズピッチをアルゴン雰囲気下、1000℃で炭素化した後、平均粒径15μm、粒度1〜80μmで90体積%が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく (5%以下)なるように適度に粉砕した。その後、真空下、3000℃の温度で熱処理して黒鉛化することにより炭素質物を製造した。
【0108】
得られた炭素質物は、平均粒径15μmの黒鉛化炭素粉末であり、粒度分布で1〜80μmに90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の分布は1体積%であった。またN2 ガス吸着BET法による比表面積7m2 /gであった。粉末の形状は、球状であった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は2.6であった。d002 は0.3357nm、Lcは45nm、Laは58nmで、La/Lcは1.29であった。なお、菱面体晶系と六方晶系の(101)回折ピーク強度の比は0.5であった。また、炭素質物中の硫黄の含有量は100ppm以下であった。その他、酸素の含有量100ppm以下、窒素の含有量は100ppm以下、Fe、Niは各々1ppmであった。
【0109】
前記炭素質物を用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0110】
実施例3
900℃で炭素化したメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Aは、平均繊維長30μm、平均繊維径7μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積5m2 /g、硫黄含有率1600ppm、窒素含有率200ppm、Feは5ppm、Niは3ppmで、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.361nmに由来する回折ピークを示し、Lcは1.4nm、Laは3.9nmであった。
【0111】
3100℃で黒鉛化したメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Bは、平均繊維長40μm、平均繊維径12μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積3.8m2 /g、硫黄含有率100ppm以下、窒素含有率100ppm以下で、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3365nmに由来する回折ピークを示し、Lcは37nm、Laは67nm、P101 /P100 は2.3であった。
【0112】
前記粉末Aと前記粉末Bを重量比で1:2に混合して得た炭素質物を前記炭素質物を用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0113】
実施例4
1000℃で炭素化したメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Aは、平均繊維長30μm、平均繊維径7μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積5m2 /g、硫黄含有率1500ppm、窒素含有率100ppm、Feは5ppm、Niは3ppmで、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.360nmに由来する回折ピークを示し、Lcは1.48nm、Laは3.4nmであった。
【0114】
コークスを3000℃黒鉛化した人造黒鉛の粉末Bは、平均粒径40μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積3.3m2 /gで、硫黄含有率100ppm以下、窒素含有率100ppm以下、Fe、Niは各々1ppmで、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3354nmに由来する回折ピークを示し、Lcは45nm、Laは60nmであった。
【0115】
前記粉末Aと前記粉末Bを重量比で1:1に混合して得た炭素質物を用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0116】
比較例1
天然黒鉛を平均粒径6μmまで粉砕することにより黒鉛粉末を得た。この黒鉛粉末は、粒度分布1〜80μmの粒径のものが85体積%が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の分布は10体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は10m2 /gであった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は、2.1であった。d002 は0.3357nm、Lcは33nm、Laは60nmであった。La/Lcは1.82である。なお、菱面体晶系と六方晶系の (101)回折ピーク強度の比は0.85であった。
【0117】
前記黒鉛粉末を用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0118】
比較例2
前記実施例4の人造黒鉛の粉末Bのみを用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0119】
比較例3
前記実施例3のメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Aのみを用いて実施例1と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例1と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0120】
得られた実施例1〜4および比較例1〜3のリチウム二次電池について、充電電流400mAで4.2Vまで3時間の充電をし、2.7Vまで1Aのハイレート電流で放電する充放電を繰り返し行い、各電池の放電容量とサイクル寿命をそれぞれ測定した。その結果を図2に示す。
【0121】
図2から明らかなように本実施例1〜4のリチウム二次電池では、比較例1〜3の電池に比べて、ハイレートの放電においても容量が高く、かつサイクル寿命が格段に向上されることがわかる。
【0122】
一方、電解液の電解質にLiN(CF3 SO2 2 を用いて同様な評価を行ったところ、サイクル寿命が実施例1〜4よりも長いことが確認された。
【0123】
実施例5
まず、リチウムコバルト酸化物(Lix CoO2 (0.8≦x≦1))粉末91重量%をアセチレンブラック3.5重量%、グラファイト3.5重量%及びエチレンプロピレンジエンモノマ粉末2重量%とトルエンを加えて共に混合し、アルミニウム箔(30μm)集電体に塗布した後、プレスすることにより正極を作製した。
【0124】
また、低硫黄(含有量8000ppm以下)石油ピッチを原料としたコークスをアルゴン雰囲気下、1000℃で炭素化した後、平均粒径20μm、粒度1〜80μmで90体積%が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく(5%以下)なるようにブロック状に粉砕した後、アルゴン雰囲気下で3000℃にて黒鉛化することにより炭素質物を製造した。
【0125】
得られた炭素質物は、平均粒径20μmのブロック状の黒鉛化炭素粉末であり、粒度分布で1〜80μmに90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、3m2 /gであった。粉末の形状は、粒状であった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は3.6であった。d002 は、0.3354nm、Lcは43nm、Laは43nmで、La/Lcは1であった。なお、X線回折による菱面体晶系と六方晶系の(101)回折ピーク強度の比は0.4であった。また炭素質物中の硫黄の含有量は、100ppm以下であった。その他、酸素の含有量は100ppm以下、窒素の含有は100ppm以下、Fe、Niは各々1ppmであった。
【0126】
次いで、前記炭素質物96.7重量%をスチレンブタジエンゴム2.2重量%とカルボキシメチルセルロース1.1重量%と共に混合し、これを集電体としての銅箔に塗布し、乾燥することにより負極を作製した。
【0127】
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレ―タおよび前記負極をそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が外側に位置するように渦巻き状に巻回して電極群を作製した。
【0128】
さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )をエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(混合体積比率40:30:30)に1.0モル/1溶解して非水電解液を調製した。
【0129】
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0130】
実施例6
まず、石油ピッチから得られた異方性を有するメソフェーズピッチを紡糸し、不融化して得られた炭素繊維をアルゴン雰囲気下、1000℃で炭素化した後、平均繊維径15μm、粒度1〜80μmで90体積%が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく(5%以下)なるように適度に粉砕した。その後、アルゴン雰囲気下、3100℃の温度で熱処理して黒鉛化することにより繊維状の炭素質物を製造した。前記炭素質物は、繊維の長さ方向に対して垂直な断面における配向性が放射状であった。
【0131】
得られた炭素質物は、平均繊維径15μmの黒鉛化炭素粉末であり、粒度分布で1〜80μmに90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の分布は1体積%であった。またN2 ガス吸着BET法による比表面積4m2 /gであった。粉末の形状は、長さと径の比(長さ/径)が3である繊維であった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は2.6であった。d002 は0.3357nm、Lcは45nm、Laは58nmで、La/Lcは1.29であった。なお、菱面体晶系と六方晶系の(101)回折ピーク強度の比は0.5であった。また、炭素質物中の硫黄の含有量は100ppm以下であった。その他、酸素の含有量100ppm以下、窒素の含有量は100ppm以下、Fe、Niは各々1ppmであった。
【0132】
前記炭素質物を用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0133】
実施例7
3000℃で黒鉛化したメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Aは、平均繊維長40μm、平均繊維径7μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積3m2 /g、硫黄含有率1600ppm、窒素含有率200ppm、Feは5ppm、Niは3ppmで、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3375nmに由来する回折ピークを示し、Lcは30nm、Laは60nmであった。
【0134】
3100℃で黒鉛化し、粉砕することにより得られた石油コークスの粉末Bは、平均粒径6μm、N2 ガス吸着BET法による比表面積9m2 /gの薄片状粉末であり、硫黄含有率100ppm以下、窒素含有率100ppm以下で、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3358nmに由来する回折ピークを示し、Lcは60nm、Laは120nm、P101 /P100 は2.5であった。
【0135】
前記粉末Aと前記粉末Bを重量比で4:1に混合して得た炭素質物を用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0136】
実施例8
3000℃で黒鉛したメソフェーズピッチ小球体は、平均粒径20μmで表面から1〜5μmの厚さの表面層が酸化除去されてラメラ層を露出したものである。また、前記メソフェーズピッチ小球体はN2 ガス吸着BET法による比表面積が5m2 /g、硫黄含有率が200ppm、窒素含有率が100ppm、Feは5ppm、Niは3ppmで、X線回折において黒鉛構造の(002)面の面間隔d002が0.3365nmに由来する回折ピークを示し、Lcは60nm、Laは100nm、X線回折による強度比(P101 /P100 )は2.3の球状の黒鉛化物である。
【0137】
前記黒鉛化物(炭素質物)を用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0138】
比較例4
天然黒鉛を平均粒径6μmまで粉砕することにより薄片状の黒鉛粉末を得た。
この黒鉛粉末は、粒度分布1〜80μmの粒径のものが85体積%が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の分布は5体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は10m2 /gであった。X線回折による強度比(P101 /P100 )の値は、3.6であった。d002 は0.3357nm、Lcは60nm、Laは120nmであった。La/Lcは1.82である。なお、菱面体晶系と六方晶系の(101)回折ピーク強度の比は0.85であった。
【0139】
前記黒鉛粉末を用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0140】
比較例5
前記実施例7の黒鉛化した石油コークスの粉末Bのみを用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0141】
比較例6
前記実施例7のメソフェーズピッチ系炭素繊維の粉末Aのみを用いて実施例5と同様な方法により負極を作製した。かかる負極を用いた以外、実施例5と同様で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
【0142】
得られた実施例5〜8および比較例4〜6のリチウム二次電池について、充電電流400mAで4.2Vまで3時間の充電をし、2.7Vまで1Aのハイレート電流で放電する充放電を繰り返し行い、各電池の放電容量とサイクル寿命をそれぞれ測定した。その結果を図3に示す。
【0143】
図3から明らかなように本実施例5〜8のリチウム二次電池では、比較例4〜6の電池に比べて、ハイレートの放電においても容量が高く、かつサイクル寿命が格段に向上されることがわかる。
【0144】
一方、電解液の電解質にLiN(CF3 SO2 2 を用いて同様な評価を行ったところ、サイクル寿命が実施例5〜8よりも長いことが確認された。
【0145】
なお、前記実施例では円筒形リチウム二次電池に適用した例を説明したが、角形リチウム二次電池にも同様に適用できる。また、前記電池の容器内に収納される電極群は渦巻形に限らず、正極、セパレータおよび負極をこの順序で複数積層した形態にしてもよい。
【0146】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば高容量でサイクル寿命に優れ、さらに長期間の使用において高電圧を維持することが可能なリチウム二次電池及び負極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる円筒形リチウム二次電池を示す部分断面図。
【図2】実施例1〜4および比較例1〜3のリチウム二次電池における充放電サイクルと放電容量との関係を示す特性図。
【図3】実施例5〜8および比較例4〜6のリチウム二次電池における充放電サイクルと放電容量との関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…容器、
3…電極群、
4…正極、
6…負極、
8…封口板。

Claims (7)

  1. 正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物を含む負極と、非水電解液とを具備したリチウム二次電池において、
    前記炭素質物は、X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.33nmの範囲にあり、X線回折法による六方晶系の(101)回折ピークに対するX線回折法による菱面体晶系の(101)回折ピークの比率が0.6以下で、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越えることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記炭素質物は、ブロック状、繊維状または球状の形状を主体とする黒鉛化物であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池。
  3. 前記炭素質物は、a軸方向の結晶子の長さLaとc軸方向の結晶子の長さLcの比(La/Lc)が1.5未満であることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム二次電池。
  4. 前記炭素質物の硫黄の含有量は、1000ppm以下(0ppmを含む)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のリチウム二次電池。
  5. 前記炭素質物は、酸素の含有量が500ppm以下で、窒素の含有量が1000ppm以下で、Feの含有量が50ppm以下で、かつNiの含有量が50ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のリチウム二次電池。
  6. 前記炭素質物は、アルミニウム、ホウ素、リン、カルシウムあるいはスズを含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のリチウム二次電池。
  7. X線回折法による黒鉛構造の(002)面の面間隔d002 が0.335〜0.33nmの範囲にあり、X線回折法による六方晶系の(101)回折ピークに対するX線回折法による菱面体晶系の(101)回折ピークの比率が0.6以下で、かつX線回折法による六方晶系の(101)回折ピークP 101 と(100)回折ピークP 100 のピーク強度比(P 101 /P 100 )が2.2を越える炭素質物を含有することを特徴とする負極材料。
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