[go: up one dir, main page]

JP3830987B2 - ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤 - Google Patents

ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤 Download PDF

Info

Publication number
JP3830987B2
JP3830987B2 JP07250595A JP7250595A JP3830987B2 JP 3830987 B2 JP3830987 B2 JP 3830987B2 JP 07250595 A JP07250595 A JP 07250595A JP 7250595 A JP7250595 A JP 7250595A JP 3830987 B2 JP3830987 B2 JP 3830987B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tetramethylbutyl
bis
phosphine
reaction
formula
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP07250595A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08245657A (ja
Inventor
杉矢  正
努 渡辺
馨 竹内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Original Assignee
Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Chemical Industrial Co Ltd filed Critical Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Priority to JP07250595A priority Critical patent/JP3830987B2/ja
Publication of JPH08245657A publication Critical patent/JPH08245657A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3830987B2 publication Critical patent/JP3830987B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な化合物であるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物及びその製造方法に関し、特にコバルトのような稀少金属を選択分離するための溶媒抽出剤として有用なビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ジアルキルホスフィンから誘導されるジアルキルホスフィン酸化合物が、溶媒抽出によるニッケル、コバルト、クロム、銅及び鉛等の分離に有用であることは、公知である。(特開昭57−73142号公報、特開昭57−73143号公報、特開昭61−44139号公報、特開平1−315384号公報、特開平6−264156号公報)
【0003】
しかし、上記刊行物には、本発明に係るビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物については開示されていない。
【0004】
また、ホスフィン酸化合物として、下記の式(5)で表されるビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸およびその製造方法が公開されている。(米国特許第4,374,780号明細書)
【0005】
【化9】
Figure 0003830987
【0006】
この特許に明記してあるジアルキルホスフィン酸の製造方法は、ラジカル触媒を用いて、ホスフィンとジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1が70%、2,4,4−トリメチルペンテン−2が30%の混合物)を反応させてジアルキルホスフィンを生成させ、次いで該生成物と酸化剤とを反応させてジアルキルホスフィン酸を製造する方法である。
【0007】
しかしながら、上記ホスフィンとジイソブチレンとの反応におけるラジカル付加反応は、反応選択性がなく、一般にモノ、ジ、トリ−アルキルホスフィンの混合物が生成する。そのため、選択的にジアルキルホスフィンの生成比率を高めることが困難である。従って、上記反応に係るジアルキルホスフィンから誘導されるジアルキルホスフィン酸の収率は悪い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記事実に鑑み、コバルト等の金属抽出剤として有用なホスフィン酸化合物について鋭意研究をおこなった結果、新規なジアルキルホスフィン酸化合物であるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、それを製造する方法およびそれが金属の抽出剤として有用であることを確認し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化10】
Figure 0003830987
(式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒として下記一般式(2)
【0012】
【化11】
R−SO3 H (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるアルカンスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させて下記式(3)
【0013】
【化12】
Figure 0003830987
で表されるジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させた後、該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【0014】
【化13】
Figure 0003830987
(式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒として下記一般式(2)
【0016】
【化14】
R−SO3 H (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるアルカンスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させて下記式(3)
【0017】
【化15】
Figure 0003830987
で表されるジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させた後、該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させ下記一般式(4)
【0018】
【化16】
Figure 0003830987
(式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。)
で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドを生成させ、次いで該ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドと酸化剤または硫黄とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【0019】
【化17】
Figure 0003830987
(式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物からなる金属の抽出剤を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、上記のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物からなる抽出剤を含有する有機溶媒を、コバルトとニッケルを含有する水溶液と接触混合し、該水溶液からコバルトを有機溶媒相に抽出し分離することを特徴とする金属の抽出方法を提供するものである。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の上記の(1)式で示すビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物は、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)モノチオホスフィン酸、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ジチオホスフィン酸である。
【0023】
本発明のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法は、下記の▲1▼および▲2▼の方法が挙げられる。
▲1▼ 第一反応として、ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒としてアルカンスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させることにより、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させる。
次いで第二反応として、生成物の該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させてビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物を得る方法である。
【0024】
上記の製造方法▲1▼において、第二反応を一般式で示すと以下のようになる。
【0025】
【化18】
Figure 0003830987
(式中、R1 は1,1,3,3−テトラメチルブチル基を示す。)
【0026】
▲2▼ 第一反応として、ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒としてアルキルスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させることにより、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させる。
【0027】
次いで第二反応は下記の二段階により行なわれる。
まず、第二反応の第一段階として、生成物の該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させることにより、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドを生成させる。
次に、第二反応の第二段階として、生成物の該ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドと酸化剤または硫黄とを反応させてビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物を得る方法である。
【0028】
上記の▲2▼の第二反応において、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドと硫黄と反応させる時には、アミンの存在下で行なうと反応収率が高くなり好ましい。
【0029】
上記の製造方法▲2▼において、第二反応において、具体的には3つの反応経路がある。すなわち、その反応を一般式で示すと以下のようになる。
【0030】
【化19】
Figure 0003830987
(式中、R1 は前記と同じものを意味する)
【0031】
本発明の第一反応において、原料であるホスフィン(PH3 )は、いかなる製法に基づいて得られたものであってもよい。例えば、次亜リン酸ソーダの製造に際して副生する粗製ホスフィンを、脱水、脱アルシン、脱低級水素化隣化合物の精製操作をしたホスフィンガス及び高圧圧縮ホスフィンガス、液化ホスフィン等が用いられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0032】
本発明の第一反応における他の原料であるトリメチルペンテンは、工業的に入手可能であれば特に限定されないが、例えば2,4,4−トリメチルペンテン−1;2,4,4−トリメチルペンテン−2;ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1(A)と2,4,4−トリメチルペンテン−2(B)の混合物)が好ましい。特にジイソブチレンが安価なことから工業的に好ましいが、その異性体比(2,4,4−トリメチルペンテン−1(A)と2,4,4−トリメチルペンテン−2(B)の混合比)は、製造メーカーによって異なり、例えば(A):(B)=75:25%,75:22%,70:30%などがあるが、本発明においてはその混合比率は特に制限されない。
【0033】
本発明の第一反応における触媒として用いられるアルカンスルホン酸は、下記の一般式(2)
【0034】
【化20】
R−SO3 H (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
【0035】
で表される炭素原子数1〜4の低級アルカンスルホン酸を使用するのが好ましく、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸等が挙げられる。これらは、一種または二種以上の混合物であっても、また無水でも水溶液でもかまわない。
【0036】
本発明の第一反応は有機溶媒の存在下で行なわれるが、本発明に使用する有機溶媒は、工業的に入手が容易な飽和炭化水素が適し、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−イソオクタン、n−デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、石油ナフサ、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、好ましくはトルエン、ベンゼン、n−ヘキサン等である。
【0037】
また、反応は有機溶媒の存在下で行なわれればよく、有機溶媒単独の系でも、または有機溶媒と水の混合系でもよい。この水は、触媒の希釈溶媒に水を用いた場合に混入するものでも、または任意の割合で混合したものでもよい。
【0038】
本発明の第二反応において使用される酸化剤は、過酸化水素、過酸化ベイゾイル等の過酸化物、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、NO、N24 、N2 O等の窒素酸化物、塩素等が挙げられるが、特に過酸化水素が工業的に有利である。
【0039】
同じく本発明の第二反応において使用されるアミンは、N,N−ジメチルベンジルアミン、ベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリーnープロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、α−フェニレチルアミン、β−フェニレチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
本発明における第一の反応において、ホスフィンとトリメチルペンテンを、触媒としてアルカンスルホン酸及び有機溶媒の存在下で反応させる反応条件は、オートクレーブ等の耐圧容器を用い、望ましくは、酸による腐食を防止するために、テフロン内筒を備えた装置が適している。ホスフィンとトリメチルペンテンのモル比は、1:2〜1:5モル、好ましくは1:2〜1:3モルが適当である。反応温度は、室温〜100℃、好ましくは60〜80℃であり、反応時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。
【0041】
原料の仕込は、反応容器内を窒素やヘリウム等の不活性ガスで十分置換した後、トリメチルペンテンの自己重合を防止するために、有機溶媒、トリメチルペンテン、ホスフィンの順序で行い、所望の温度に昇温後、触媒を圧入するのが望ましい。
【0042】
反応終了後は、室温に冷却後、未反応ホスフィンガスを不活性ガスで置換する。生成するジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンは、触媒の希釈溶媒に水を用いた場合には、生成物の一部は有機溶媒に遊離するが、大部分は下層の水層に触媒のアルカンスルホン酸とホスホニウム塩を形成している。また、触媒に無水のアルカンスルホン酸を用いた場合、生成物はすべてアルカンスルホン酸とホスホニウム塩を形成する。
【0043】
その二層の有機層と水層を常法の手段により分離する。ここで生成物からジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを単離する場合は、アルカリ水溶液で中和することにより有機相にジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンは移る。更に、この有機相を減圧蒸留することにより、異性体をほとんど含まない純度の高いジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを得ることができる。
【0044】
次いで行われる第二反応について、上記反応A〜Eについて説明する。
上記反応Aは、第一反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤とを反応させてなるものである。その反応は、上記反応でジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを単離精製する場合と上記反応終了後有機層を分離した水層中にジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンとアルキルスルホン酸とがホスホニウム塩を形成している場合とは、その操作が異なる。
【0045】
即ち、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを単離精製した場合は、酸化剤を添加するだけ、反応Aの様に順次酸化反応が進み、本発明の目的物であるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸を得ることができる。
【0046】
また、第一反応で得られた反応液中にジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンとアルカンスルホン酸がホスホニウム塩を形成している場合には、三つの方法がある。
【0047】
第一の方法は、反応Aの様に、該反応液に、所定量の酸化剤を添加してビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸を生成させ、アルキルスルホン酸と分離する方法である。
【0048】
第二の方法は、反応Bの様に、該反応液に必要量の酸化剤の半分を添加してジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドを生成した後、さらに残りの酸化剤を添加してビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸にする方法である。この時、アルカンスルホン酸は、ホスフィンオキサイドを生成させた時に分離するのが好ましく、同時に蒸留精製することができる。
【0049】
第三の方法は、初めに該反応液にアルカリを添加して、アルカンスルホン酸を金属塩にして分離した後、反応Aの様に、酸化剤を添加反応させビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸を得る方法である。
【0050】
上記の方法において、より高純度のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸を得る方法は、反応途中で得られるホスフィンオキサイドを蒸留精製して行う第二の方法が特に好ましい。この理由は、ジアルキルホスフィン酸にしてからでは蒸留精製ができないことによる。
【0051】
上記の方法の何れにおいても、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤との反応は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを、無溶媒あるいは、水又は酢酸等の溶媒中で、過酸化水素等の酸化剤を用いて、酸化することにより異性体をほとんど含まない純度の高いビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸を得ることができる。
【0052】
酸化剤の使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン1モルに対して、2〜2.2モル、好ましくは2.1〜2.15モルである。反応温度は、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃である。酸化反応は、発熱反応であるので、温度が急上昇しないように、滴下速度を調節しながら反応するのが望ましい。
【0053】
反応Cは、第一反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを含む反応液に、所定量の酸化剤を添加してジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドを生成させ、次いで硫黄を反応させることによりビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)モノチオホスフィン酸を生成させる方法である。硫黄と反応させるに際して、アミンの存在下で反応させるのが、より好ましい。
【0054】
酸化剤の使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン1モルに対して、1〜1.2モル、好ましくは1.1〜1.15モルである。反応温度は、上記反応A,Bと同様な条件である。硫黄の使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイド1モルに対して、1〜1.2モル、好ましくは1.0〜1.05モルである。同様にアミンの使用量は1〜1.2モル、好ましくは1.0〜1.05である。反応温度は、室温〜100℃、好ましくは30〜50℃である。
【0055】
反応Dは、第一反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを含む反応液に、所定量の硫黄を添加してジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンスルフィドを生成させ、更に硫黄を添加反応させてビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ジチオホスフィン酸を生成させる方法である。アミンは、ホスフィンスルフィドからジチオホスフィン酸への反応において、添加するのが好ましい。
【0056】
硫黄の使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン1モルに対して、2〜2.2モル、好ましくは2.0〜2.1モルである。アミンの使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンスルフィド1モルに対して1.0〜1.2モル、好ましくは1.0〜1.05モルである。反応温度は、室温〜100℃、好ましくは30〜50℃である。
【0057】
次に、反応Eは、第一反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと硫黄とを直接反応させる方法である。その反応は、第一反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを含む反応液に、所定量の硫黄を添加して、直接ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ジチオホスフィン酸を生成させる方法である。この時、アミンの存在下で反応させるのが、より好ましい。
【0058】
硫黄の使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン1モルに対して、2〜2.2モル、好ましくは2.0〜2.1モルである。アミンの使用量は、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン1モルに対して1.0〜1.2モル、好ましくは1.0〜1.05モルである。反応温度は、室温〜100℃、好ましくは30〜50℃である。
【0059】
次に、本発明のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物は、水溶液に含有量されている金属の抽出剤として有用である。抽出される金属としては、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ハフニウム、ガリウム、バナジウム、モリブデン等の貴金属元素とイットリウム、サマリウム、ネオジムなどの希土類金属元素等が挙げらる。これらの中でコバルトとニッケルの分離に特に好適である。
【0060】
水溶液に含有量されている金属の抽出方法としては、例えばコバルト、ニッケルの抽出は、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物からなる抽出剤を含有する有機溶媒を、コバルトとニッケルを含有する水溶液と接触混合し、該水溶液からコバルトを有機溶媒相に抽出し、ニッケルを水相に留めて、コバルトとニッケルを分離することにより行なわれる。
コバルトを含有する有機溶媒相は、鉱酸を含有する水溶液と接触させることにより、コバルトを水溶液の水相中に逆抽出し、コバルトを該水相から回収する。
【0061】
有機溶媒に含有される抽出剤の濃度は、金属イオン濃度、有機溶媒相と水相の相比等により変わるが、通常3〜70重量%、好ましくは5〜40重量%が望ましい。また、抽出時のpHは5〜9、好ましくは6〜8が望ましい。
【0062】
抽出に用いられる有機溶媒には、ヘキサン、ヘプタン、ノルマルパラフィン等の脂肪族炭化水素、1−ナフテン酸、2−ナフテン酸等のナフテン系炭化水素、ケロシン、キシレン等の芳香族炭化水素等が用いられる。
【0063】
【作用】
本発明に係る製造方法における反応機構は、ホスフィンとトリメチルペンテンとの反応においては、触媒のアルカンスルホン酸のプロトンがオレフィン(トリメチルペンテン)の不飽和結合に付加して下記の式(6)に示すカルボニウムカチオンを形成し、このカチオンがホスフィンの不対電子対に求電子付加反応を起こす。
【0064】
【化21】
Figure 0003830987
【0065】
したがって、原料であるトリメチルペンテン、例えばジイソブチレンの異性体2,4,4−トリメチルペンテン−1と2,4,4−トリメチルペンテン2は、ともに同じ式(6)に示すカルボニウムカチオンを生成するので、異性体をほとんど含まないジアルキルホスフィン[ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン]を得ることができる。更に、酸化剤により容易にジアルキルホスフィン酸を得ることができる。
【0066】
このことは、原料のオレフィン混合物はそのまま使用できるので、分離精製された単一化合物を原料に用いる必要がなく、また反応を途中で停止させたり、仕込比を過剰にしたり等の特殊な反応操作もいっさい不要であるため、異性体をほとんど含まない純度の高いジアルキルホスフィン酸化合物を、安価に製造できる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例によって更に本発明を具体的に説明する。
【0068】
実施例1
テフロン製内筒を備えた容量1.5L(リットル)のオートクレーブを十分に窒素置換し、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1が75%、2,4,4−トリメチルペンテン−2が25%の混合物)224.4g(2.0モル)、n−ヘキサン300mlを仕込み、ホスフィンをボンベから34.0g(1.0モル)導入した。80℃に昇温し、メタンスルホン酸192.2g(2.0モル)の50%水溶液を、温度を80℃に保ちながら、3時間かけて圧入ポンプで添加した。さらに、80℃で2時間熟成した。内圧は15.0kg/cm2 から5.5kg/cm2 に減少した。室温まで冷却し、残留ホスフィンを除外設備に除々にブローし、窒素で系内を3回置換した。
【0069】
反応液を窒素雰囲気下で、コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた3Lの四口フラスコに移し、温度を30℃以下に保ちながら、25%水酸ナトリウム水溶液320g(2.0モル)を滴下した。ヘキサン層を分液し、10%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水、一昼夜静置した。
【0070】
硫酸ナトリウムを除去後、さらにエバポレーターでn−ヘキサンを留去した。得られた無色透明液体を減圧蒸留で、114〜116℃/1.8mmHgの留分を分取することにより、無色透明液体121.7gを得た。
【0071】
GC−MASSにより、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンであることを確認した。また、ガスクロマトグラフィーによる純度は96.8%で、構造異性体は1.1%含有し、収率は45.7%であった。
【0072】
GC−MASS:m/z=258「M」+
1H−NMR:(CDC13 、δ) 1.00(s、18H)、1.37(d、12H、J=11.4Hz)、1.63(d、4H、J=9.0Hz)
FT−IR;(液膜法、cm-1) 2940(C−H伸縮)、2260(P−H伸縮)、1465(t−ブチル非対称変角)、1360(t−ブチル対称変角)、1200(t−ブチル骨格振動)、1120(P−C伸縮)、800(C−P−C変角)
【0073】
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた1Lの四口フラスコに、窒素雰囲気下で、上記反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン106.6g(0.40モル)、酢酸300mlを仕込み、60℃にて30%過酸化水素95.2g(0.84モル)を滴下し、さらに100℃で2時間熟成した。冷却後、酢酸をエバポレーターで留去して、白色固体112.2gを得た。この固体を、FAB−MASSで分析したところ、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸であることが確認された。融点は、101〜102℃で、滴定純度98.5%で、収率は95.3%であった。
【0074】
FAB−MASS:m/z=291「M+H」+
1H−NMR:(CDC13 、δ) 1.03(s、18H)、1.40(d、12H、J=16.8Hz)、1.77(d、4H、J=8.4Hz)、9.94(s、1H)
FT−IR;(KBr、cm-1)2950(C−H伸縮)、1470(t−ブチル非対称変角)、1360(t−ブチル対称変角)、1145(P=O伸縮)、925(P−O−H伸縮)、800(C−P−C変角)
【0075】
実施例2
テフロン製内筒を備えた容量1.5Lのオートクレーブを十分に窒素置換し、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルぺンテン−1が75%、2,4,4−トリメチルペンテン−2が25%の混合物)224.4g(2.0モル)、n−ヘキサン300mlを仕込み、ホスフィンをボンベから34g(1.0モル)導入した。80℃に昇温し、メタンスルホン酸192.2g(2.0モル)の50%水溶液を、温度を80℃に保ちながら、3時間かけて圧入ポンプで添加した。さらに、80℃で2時間熟成した。内圧は、15.0kg/cm2 から5.5kg/cm2 に減少した。室温まで冷却し、残留ホスフィンを除外設備に除々にブローし、窒素で系内を3回置換した。
【0076】
反応液を窒素雰囲気下で、分液ロートで分液し、微黄色透明な水溶液を541.2g得た。FAB−MASS等で分析したところ、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンは、メタンスルホン酸と安定なホスホニウム塩を形成していることが判明した。この水溶液を過塩素酸の無水酢酸溶液で非水滴定したところ、濃度は37.6%、収率は57.5%であった。
【0077】
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた1Lの四口フラスコに、上記反応で得られた反応液470.9g[ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン0.50モル]を仕込み、30%過酸化水素120.2g(1.06モル)を液温が60〜70℃を保つように滴下し、さらに100℃で2時間熟成した。反応液は、二層に分離し、生成物がメタンスルホン酸水溶液から遊離した。
【0078】
反応液は、n−ヘキサン300mlで抽出分離し、5%の炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水、一昼夜静置した。
分液した際の水溶液をエバポレータで濃縮することにより、純度95.1%のメタンスルホン酸167.8gを得た。回収率95.4%で再生することができ、この再生メタンスルホン酸は上記第一反応で再使用が可能であった。
【0079】
ヘキサン溶液は、硫酸ナトリウムを濾別し、エバポレータでヘキサンを留去することにより、白色固体140.9gを得た。FAB−MASSでの分析により、ビス(1,1,3−3テトラメチルブチル)ホスフィン酸であることを確認した。(滴定純度96.5%、収率93.6%)
【0080】
実施例3
テフロン製内筒を備えた容量1.5Lのオートクレーブを十分に窒素置換し、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1が75%、2,4,4−トリメチルペンテン−2が25%の混合物)224.4g(2.0モル)、n−ヘキサン300mlを仕込み、ホスフィンをボンベから34g(1.0モル)導入した。80℃に昇温し、メタンスルホン酸192.2g(2.0モル)の50%水溶液を、温度を80℃に保ちながら、3時間かけて圧入ポンプで添加した。さらに、80℃で2時間熟成した。内圧は、15.0kg/cm2 から5.5kg/cm2 に減少した。室温まで冷却し、残留ホスフィンを除外設備に除々にブローし、窒素で系内を3回置換した。
【0081】
反応液を窒素雰囲気下で、分液ロートで分液し、微黄色透明な水溶液を541.2gを得た。FAB−MASS等で分析したところ、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンは、メタンスルホン酸と安定なホスホニウム塩を形成していることが判明した。この水溶液を過塩素酸の無水酢酸溶液で非水滴定したところ、濃度は37.6%、収率は57.5%であった。
【0082】
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた1Lの四口フラスコに、上記反応で得られた反応液470.9g[ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン0.50モル]を仕込み、30%過酸化水素60.1g(0.53モル)を液温が60〜70℃を保つように滴下し、さらに100℃で2時間熟成した。反応液は、二層に分離し、生成物が上層に遊離していた。
【0083】
上層を分液し、さらにn−ヘキサン300mlで下層のメタンスルホン酸水溶液を抽出し、先ほどの遊離上層と合わせた。続けて、5%炭酸ナトリムウ水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水、一昼夜静置した。
【0084】
硫酸ナトリウムを濾別し、さらにエバポレータでヘキサンを留去すると、無色透明粘性液体132.7gを得た。減圧蒸留して、152〜154℃/3.5mmHgの留分を分取することにより、無色透明粘性液体114.8gを得た。GC−MASSでの分析により、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドであることを確認した。(純度98.1%、収率82.2%)
【0085】
GC−MASS;m/z=274[M]+
1H−NMR;(CDC13 、δ)1.06(s、18H)、1.41(dd、12H、J=17.4、3.6Hz)、1.80(dd、4H、J=7.8、2.4Hz)、5.81(d、1H、J=425.1Hz)
FT−IR;(液膜法、cm-1) 2950(C−H伸縮)、2260(P−H伸縮)、1475(t−ブチル非対称変角)、1362(t−ブチル対称変角)、1170(P=O伸縮)、1130(P−C伸縮)、800(C−P−C変角)
【0086】
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた1Lの四口フラスコに、上記反応で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイド97.8g(0.35モル)、酢酸300mlを仕込み、30%過酸化水素41.9g(0.37モル)を液温が60〜70℃を保つように滴下し、さらに100℃で2時間熟成した。エバポレーターで酢酸を留去して、白色固体94.5gを得た。FAB−MASSでの分析により、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸であることを確認した。(滴定純度99.1%、収率92.3%)
【0087】
実施例4
コンデンサー、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた1Lの四口フラスコに、実施例3で得られたジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイド97.8g(0.35モル)、トルエン300ml、硫黄11.2g(0.35モル)を仕込み、室温で攪拌しながらN,N−ジメチルベンジルアミン47.3g(0.35モル)を滴下した。滴下に従い硫黄は減少し、さらに60℃で2時間熟成した。冷却後、塩酸水溶液で抽出することにより、アミンを除去し、純水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。
【0088】
トルエンをエバポレーターで留去して、白色固体108.2gを得た。この固体を、FAB−MASSで分析したところ、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)モノチオホスフィン酸であることが確認された。融点は、121〜122℃で、滴定純度97.9%で、収率は98.8%であった。
【0089】
FAB−MASS;m/z=307[M+H]+
1H−NMR;(CDC13 、δ) 1.05(s、18H)、1.49(dd、12H、J=18.0、1.2Hz)、1.88(dd、4H、J=9.0、0.6Hz)
FT−IR;(KBr、cm-1)2950(C−H伸縮)、1475(t−ブチル非対称変角)、1368(t−ブチル対称変角)、1240(t−ブチル骨格振動)、1125(P−C伸縮)、910(P−O−H伸縮)、800(C−P−C変角)、678(C−P−S変角)、620(P=S伸縮)、535(P−S−H伸縮)
【0090】
実施例5
コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1Lの四口フラスコに、窒素雰囲気下でジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン106.6g(0.40モル)、トルエン300ml、硫黄12.8g(0.4モル)を仕込み、室温で攪拌したところ、液温は35℃まで上昇し、さらに60℃で2時間熟成した。冷却後、未反応の硫黄が低部に沈澱していないことを確認した。トルエンをエバポレーターで留去して、白色固体120.3gを得た。この固体を、FAB−MASSで分析したところ、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンスルフィドであることが確認された。融点は79〜80℃で、滴定純度95.1%で、収率は98.5%であった。
【0091】
FAB−MASS;m/z=291[M+H]+
1H−NMR;(CDC13 、δ) 1.06(s、18H)、1.50(d、12H、J=18.6Hz)、1.95(dd、4H、J=16.8、6.3Hz)、5.90(d、1H、382.6Hz)
FT−IR;(KBr、cm-1)2970(C−H伸縮)、2310(P−H伸縮)、1480(t−ブチル非対称変角)、1370(t−ブブチル対称変角)、1245(t−ブチル骨格振動)、1125(P−C伸縮)、800(C−P−C変角)、680(C−P−S変角)、632(P=S伸縮)
【0092】
コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1Lの四口フラスコに、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンスルフィド91.6g(0.30モル)、トルエン300ml、硫黄9.6g(0.3モル)を仕込み、室温で攪拌しながらN,N−ジメチルベンジルアミン40.6g(0.3モル)を滴下した。滴下に従い硫黄は減少し、さらに60℃で2時間熟成した。冷却後、塩酸水溶液で抽出することにより、アミンを除去し、純水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。
【0093】
トルエンをエバポレーターで留去して、白色固体100.5gを得た。この固体を、FAB−MASSで分析したところ、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ジチオホスフィン酸であることが確認された。融点は、42〜43℃で、滴定純度95.6%で、収率は99.5%であった。
【0094】
FAB−MASS;m/z=323[M+H]+
1H−NMR;(CDC13 、δ) 1.05(s、18H)、1.58(d、12H、J=20.4Hz)、1.92(d、4H、J=9.6Hz)
FT−IR;(KBr、cm-1)2975(C−H伸縮)、1480(t−ブチル非対称変角)、1370(t−ブチル対称変角)、1240(t−ブチル骨格振動)、1120(P−C伸縮)、795(C−P−C変角)、670(C−P−S変角)、620(P=S伸縮)、530(P−S−H伸縮)
【0095】
実施例6
コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた1Lの四口フラスコに、窒素雰囲気下で、ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン106.6g(0.40モル)、トルエン300ml、硫黄25.6g(0.8モル)を仕込み、撹拌しながら、N,N−ジメチルベンジルアミン54.1g(0.4モル)を滴下した。滴下に従い硫黄は減少し、さらに60℃で2時間熟成した。冷却後、塩酸水溶液で抽出することにより、アミンを除去し、トルエン層は純水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。
【0096】
トルエンをエバポレーターで留去して、白色固体130.4gを得た。この固体を、FAB−MASSで分析したところ、ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ジチオホスフィン酸であることが確認された。滴定純度98.6%で、収率は99.8%であった。
【0097】
実施例7
溶媒抽出法によるコバルトの抽出
ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸(滴定純度98.5%)を20重量%、さらにエマルジョン防止のために、りん酸トリ−n−ブチルエステルを10容量%になるようにキシレンで溶解することにより、抽出剤溶液(O)を調製した。また、コバルト(II)が10.1g/lに、ニッケル(II)が100.5g/lになるように、硫酸コバルトおよび硫酸ニッケルを純水に溶解して被抽出溶液(A)を調製した。所定のpHへの調製は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0098】
各々の溶液50mlをエルレンマイエルフラスコに入れ(A/O=1)、恒温振とう機で50℃、10分間接触させた。有機溶媒(キシレン)相と水相に分液後、有機溶媒相中のコバルト(II)とニッケル(II)を分析することにより、各々の金属の抽出率と選択係数を求めた。その結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
Figure 0003830987
【0100】
【数1】
Figure 0003830987
【0101】
【発明の効果】
本発明に係るビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物は新規化合物で金属抽出剤として有用な化合物である。
また、本発明に係る製造方法によれば、ジイソブチレンの如き混合オレフィンをそのまま使用して上記目的化合物のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物を高純度で製造できるので、非常に工業的に有利な合成法として期待されるものである。
【0102】
また、本発明のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物は、水溶液に含有量されている金属の抽出剤として有用であり、特に水溶液に含有量されているコバルトとニッケルを高選択率で抽出分離するとができる。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0003830987
    (式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
    で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物。
  2. ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒として下記一般式(2)
    Figure 0003830987
    (式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるアルカンスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させて下記式(3)
    Figure 0003830987
    で表されるジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させた後、該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
    Figure 0003830987
    (式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
    で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法。
  3. トリメチルペンテンがジイソブチレンである請求項2記載のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法。
  4. ホスフィンとトリメチルペンテンとを、触媒として下記一般式(2)
    Figure 0003830987
    (式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるアルカンスルホン酸と有機溶媒の存在下で反応させて下記式(3)
    Figure 0003830987
    で表されるジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンを生成させた後、該ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンと酸化剤または硫黄とを反応させ下記一般式(4)
    Figure 0003830987
    (式中、X1 は酸素原子または硫黄原子を示す。)
    で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドを生成させ、次いで該ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドと酸化剤または硫黄とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
    Figure 0003830987
    (式中、X1 、X2 は酸素原子または硫黄原子を示す。但し、X1 とX2 は同じでも又は異なっていてもよい。)
    で表されるビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法。
  5. 前記ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィンオキサイドまたはスルフィドと硫黄とをアミンの存在下で反応させる請求項4記載のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法。
  6. トリメチルペンテンがジイソブチレンである請求項4記載のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物の製造方法。
  7. 請求項1記載のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物からなる金属の抽出剤。
  8. 請求項1記載のビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物からなる抽出剤を含有する有機溶媒を、コバルトとニッケルを含有する水溶液と接触混合し、該水溶液からコバルトを有機溶媒相に抽出し分離することを特徴とする金属の抽出方法。
JP07250595A 1995-03-07 1995-03-07 ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤 Expired - Fee Related JP3830987B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07250595A JP3830987B2 (ja) 1995-03-07 1995-03-07 ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07250595A JP3830987B2 (ja) 1995-03-07 1995-03-07 ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08245657A JPH08245657A (ja) 1996-09-24
JP3830987B2 true JP3830987B2 (ja) 2006-10-11

Family

ID=13491276

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP07250595A Expired - Fee Related JP3830987B2 (ja) 1995-03-07 1995-03-07 ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3830987B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110172073A (zh) * 2012-12-19 2019-08-27 Igm集团公司 双酰基次膦酸的衍生物、其制备及其作为光敏引发剂的用途
CN110746454B (zh) * 2019-11-12 2021-07-13 济南大学 一种萃取分离锆铪的双磷酸萃取剂及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08245657A (ja) 1996-09-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3830986B2 (ja) ジ(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン及びその製造方法
HU188490B (en) Procedure for producing sulfhonated phenylphosphins
JP4405089B2 (ja) β亜燐酸ニトロキシドラジカルの製造方法
JP3830987B2 (ja) ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ホスフィン酸化合物、その製造方法および抽出剤
EP1805107B1 (en) Process for the preparation of highly purified, dialkyl phosphinic acids
JPH0249316B2 (ja)
EP1926740B1 (en) Process for the monosulfonation of aromatic phosphines, and zwitterionic product derived therefrom
EP0298870B1 (fr) Synthèse des bromures de perfluoroalkyle
JPH072721A (ja) 第3アミンで二量化することによるアルキルケテンダイマーの製造方法
US5250736A (en) Method of preparing a phosphine compound
US3414625A (en) Process for preparing tertiary phosphines
US7208626B2 (en) Method for the production of perfluoroalkyl phosphines and the use thereof as perfluoroalkylating reactants
US5641888A (en) Synthesis of an O,O' -diesters of thiophosphoric acid, an O-ester of thiophosphonic acid, or a thiophosphinic acid
US3449426A (en) Phenothiaphosphines
WO1997002210A2 (en) Contaminant free organometallic amide compositions and processes for making same
JPH0751590B2 (ja) 有機ホスフイニト類の製造
JP2831226B2 (ja) 有機燐化合物の精製方法
JP2002371088A (ja) スルホン酸アミン塩およびその製造方法
EP2383274B1 (en) Process for production of purified o-(2,6-dichloro-4-methyl- phenyl) o,o-dimethyl phosphorothioate
JP2774431B2 (ja) 高純度モノアルキルホスフィンの製造方法
JPH0374394A (ja) N,n‐ジアルキルカルバモイルメチルホスフィンオキサイドの製造法
JP3432261B2 (ja) モノアルキルホスフィン
JPH03123790A (ja) リン酸エステルの製造方法
US4351960A (en) Production of an isomeric mixture of secondary phosphines
JP2582396B2 (ja) 1α,3β―ジヒロドキシステロイド―5―エン類の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060627

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060706

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060713

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100721

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100721

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120721

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees