JP3819100B2 - 光学活性なアンブレインの製造方法および該製造方法に有用な中間体化合物並びに該中間体化合物の製造方法 - Google Patents
光学活性なアンブレインの製造方法および該製造方法に有用な中間体化合物並びに該中間体化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下記式(1);
【化8】
で表される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法、該製造方法に有用な中間体化合物、並びに該中間体化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性な(+)−アンブレインは、抹香鯨から産する竜涎香(アンバーグリス)の主成分であり、自動的に酸化分解されることにより アンブロックスをはじめとする有用な香気成分を生成する。
従来、この光学活性な(+)−アンブレインの製造方法としては、下記の二例が知られている。
▲1▼ 2,2 −ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンのパン酵母還元によって得られる(+)−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルシクロヘキサノンから多工程を経て(+)−γ−ホモシクロゲラニオ−ルに変換し(−)−1−(3’−ブチニル)−2,2−ジメチル−6−メチレンシクロヘキサンに導く。別途、(±)−2−ヒドロキシ−5,5,8a−トリメチルヒドロナフタレン−1−カルボン酸メチルを光学活性なナフチルエチルカ−バメ−ト誘導体とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−を用いて光学分割し、多工程を経て(−)−13,14,15,16−テトラノル−8α,12−ラブダンジオ−ルに変換した後(−)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−(メトキシメチルオキシ)−2,5,5,8a−テトラメチル−1−ナフタレンアセトアルデヒドに導く。次に、上記の(−)−1−(3’−ブチニル)−2,2−ジメチル−6−メチレンシクロヘキサンをジルコニウム触媒の存在下有機アランに変換し、(−)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−(メトキシメチルオキシ)−2,5,5,8a−テトラメチル−1−ナフタレンアセトアルデヒドを縮合し、脱アセトキシ化して(+)−アンブレインを合成する方法[Liebigs Ann. Chem., 361 (1990)参照]。
▲2▼ ファルネシル酢酸を閉環させて得られる(±)−アンブレノリドを天然アルカロイドであるキニンの塩として光学分割して(+)−アンブレノリドを得、(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンに導く。別途、ステラの方法により導いた(±)−γ−シクロゲラニオ−ルを塩素化して(±)−γ−シクロゲラニルクロリドに導く。次に、上記の(±)−γ−シクロゲラニルクロリドのグリニヤ−ル試薬と(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンを銅触媒の存在下縮合してジアステレオマ−混合物を得、再結晶により(+)−アンブレインを合成する方法[Agric. Biol. Chem. , 571 (1990).参照]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼の方法は(+)−γ−ホモシクロゲラニオ−ルの調製において多数の反応工程を必要とする上、精製操作が困難であり、(−)−13,14,15,16−テトラノル−8α,12−ラブダンジオ−ルの調製においても多工程を必要とするので工業的製造法として適当でない。
一方、上記▲2▼の方法は、(±)−γ−シクロゲラニルクロリドの調製において熟練した技術を必要とし、(+)−アンブレノリドの調製においては、光学分割剤として高価なキニンを(+)−アンブレノリドに対して1当量以上必要とし、製造コスト上望ましくない。また、(±)−γ−シクロゲラニルクロリドのグリニヤ−ル試薬と(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンを銅触媒の存在下縮合する際、再現性よく良好な反応成績を得るには、非常に高度の技術を必要とするため、工業的に実施する上で有利な方法とはいいがたい。
【0004】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点について鋭意研究の結果、アンブレノリドから簡便で収率よく製造できる新規なスルホン化合物を製造し、これにγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体をカップリングさせる工程を経由する方法によれば、上記の式(1)で表される光学活性なアンブレインを簡便、安価に効率よく製造できることを見い出し本発明に至ったものである。
また、本発明者らは、光学活性(+)−アンブレノリドを効率よく製造できる方法についてもさらに研究を進め、新たな知見を得て、全く新規な製造経路を開発した。
さらに、また、光学活性γ−シクロゲラニルハライドの製造方法についても改良された方法を見い出すに至ったのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題は、以下の各発明によりそれぞれ達成される。
【0006】
(1)下記式(1);
【化9】
で示される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法であって、
下記式(2);
【化10】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物と、
下記式(3);
【化11】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体とをカップリングした後、脱スルホン化して、
下記式(17);
【化12】
(式中、符号Yは前記定義のとおりである)
で示される化合物を得、次いで、水酸基の保護基Yを脱離することを特徴とする、上記式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法。
【0007】
(2)下記式(2);
【化13】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物。
【0008】
(3)下記式(2);
【化14】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法であって、
下記式(13);
【化15】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号X’はハロゲン原子を示す)
で示される化合物に、
式:R1SO2H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩を反応させることを特徴とする、上記式(2)で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法。
【0009】
また、本発明者らは、γ−シクロゲラニルハライドの光学活性体について、改良された方法を見出すに至っている。すなわち、下記式(3);
【化16】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体{(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(ハロゲノ)メチル]シクロヘキサン}は、
下記式(15);
【化17】
(式中、符号R2はアルキル基を示す)
で示される(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステルを還元して下記式(16);
【化18】
で示される(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンメタノールを得、次いで、これをハロゲン化することにより、簡便かつ容易に製造することができる。
【0010】
さらに、本発明者らは、光学活性な(+)−アンブレノリドを効率よく製造できる方法について研究を進め、新たな知見を得て、新規な製造経路を開発した。すなわち、下記式(9);
【化19】
で示される光学活性(+)−アンブレノリド{(4aR,6aS,10aS,10bR)−(+)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチルナフト[2,1−b]ピラン−3−オン}は、
下記式(7);
【化20】
(式中、符号Y’は水酸基の保護基、また、符号Zは脱離基をそれぞれ示す)
で示される化合物にマロン酸ジエステルを反応させ、得られる下記式(8);
【化21】
(式中、符号Y’は、前記定義のとおりであり、また、符号R’はアルキル基を示す)
で示される縮合物を脱炭酸反応に付すことにより、容易、かつ、効率よく製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明により提供される式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレイン[以下、「(+)−アンブレイン(1)」と称することがある]の新規な製造方法は、式(2)で示される新規なスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体から、その大略を表す以下の反応工程図(A)に従って(+)−アンブレイン(1)を製造する方法である。
【0012】
【化22】
【0013】
上記において式(2)で示される新規なスルホニル化合物は、その大略を表す以下の反応工程図(B)に従って製造できる。
【0014】
【化23】
【0015】
また、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体は、その大略を示す以下の反応工程図(C)に従って製造することができる。
【0016】
【化24】
【0017】
[(+)−アンブレイン(1)の合成]
式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレインは、式(2)で示されるスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体をカップリングした後、脱スルホン化することによって式(17)で示される化合物を得、さらに水酸基の保護基Yを脱離することによって製造される。
ここで式(2);
【化25】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R 1 は有機基を示す)
で示されるスルホニル化合物と
式(3);
【化26】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体とのカップリング反応は、液相中において有機アルカリ金属化合物の存在下で実施することができる。
【0018】
上記の式(2)中の符号R 1 で示される有機基としては、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基等の基であれば特に制限はないが、置換されていてもよいフェニル基等のアリール基であることが好ましい。また、符号Yで示される水酸基の保護基としては、アルコール性水酸基を保護する基であれば、特に制限はなく、例えばテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基等のエーテル系保護基が好ましく用いられる。符号Yで示される水酸基の保護基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル系保護基を使用することもできる。
また、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体としては、(+)−γ−シクロゲラニルクロライド、(+)−γ−シクロゲラニルブロマイド、(+)−γ−シクロゲラニルアイオダイド等が用いられる。
【0019】
使用される有機アルカリ金属化合物としては、脂肪族炭化水素類のアルカリ金属化合物、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン等の低級脂肪族炭化水素のリチウム、ナトリウム、カリウム化合物が好ましく、特に、ブチルリチウムが好ましく用いられる。
【0020】
反応は、溶媒の存在下で実施するのが好ましい。溶媒としては、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒が好ましく、また、これらの非プロトン性極性溶媒とジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒との混合溶媒も好ましい溶媒である。
【0021】
反応温度は、特に制限はないが、−30℃〜室温程度とするのがよい。
【0022】
式(2)で示されるスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体との使用割合は、特に制限がないが、通常、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体を式(2)で示されるスルホニル化合物に対して等モルまたは過剰量使用することが好ましい。
【0023】
次いで、上記カップリング反応で得られた生成物は、通常公知の手段により精製した後、脱スルホン化され、式(17)で示される化合物に変換される。
【0024】
上記の脱スルホン化反応は、ソジウムボロヒドリド(NaBH4)、ス−パ−ヒドリド[LiAl(OEt)3H]などによるヒドリド還元;ナトリウム−アマルガムやサマリウムアイオダイドを用いたラジカル条件での還元;リチウム・エチルアミン系のようなアルカリ金属による還元反応によって行うことができるが、特にジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどのパラジウム触媒存在下におけるソジウムボロヒドリド、ス−パ−ヒドリドなどによるヒドリド還元[Chem. Lett.,451(1985)参照]によって実施することが望ましい。ナトリウム−アマルガムやサマリウムアイオダイドを用いたラジカル条件で反応を行う場合やリチウム−エチルアミン系のようなアルカリ金属による還元を行う場合には、二重結合が移動した14−(E)−異性体が副生し得る。
【0025】
脱スルホン化生成物である式(17)で示される化合物から、水酸基の保護基Yを脱離することにより、(+)−アンブレイン(1)を高収率で製造することができる。
この水酸基の保護基Yの脱離は、例えばYがテトラヒドロピラニル基である場合には、酸性条件下での加水分解など、使用した保護基Yの種類に応じた適切な周知の手段を適用することにより行われる。
【0026】
[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン(2)の合成]
式(2)で示される化合物は、反応工程図(B)に従って合成される。
【0027】
すなわち、本発明では、式(13)で示される(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−ヒドロキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンをそのハロゲン化誘導体[式(14)で示される化合物]に変換し、次いで、式R1SO2H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩と反応させて式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0028】
また、本発明では、式(9)で示される(+)−アンブレノリド[以下、「(+)−アンブレノリド(9)」と称することがある]から、反応工程図(B)に従った方法で、再現性よく、かつ高収率に、式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0029】
さらに、本発明者らは、式(7)で表されるデカリン誘導体、例えば(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネートを原料化合物として、簡便な方法で、式(9)で示される(+)−アンブレノリドを合成する方法についても見出しており、この一連の工程より、式(2)で示されるスルホニル化合物および(+)−アンブレイン(1)を製造する方法も、本発明の態様に包含される。
【0030】
上記の方法において出発原料として用いる式(7)のデカリン誘導体、例えば(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネートは、公知の方法[Tetrahedron Asymmetry, 7, 1695 (1996)参照]に従って容易に製造できる。式(7)における水酸基の保護基Y’は、テトラヒドロピラニル基に特に限定されるものではなく、他の周知の水酸基を保護する基、例えばメトキシメチル基、エトキシエチル基などのエーテル系保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル系保護基などを用いることができる。また、式(7)における脱離基Zとしては、メタンスルホニルオキシ基に限定されるものではなく、脂肪族並びに芳香族系スルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ基等)などのスルホン酸エステル基、あるいは、ピバロイル基を始めとするカルボン酸エステル基などを特に制限なく使用することができる。
【0031】
式(7)で示されるデカリン誘導体に、マロン酸ジエステルを縮合させて、式(8)で示されるジエステルを製造する。この縮合反応は、適切な溶媒中で塩基の存在下に実施することができる。この際に用いられる塩基としては、リチウムヒドリド、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド、カリウムt−ブトキシドなどがあげられる。また、使用可能な溶媒としてはヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、エーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらの中でも高極性のものが望ましい。また、触媒として18−クラウン−6等のクラウンエーテルを添加して反応を実施してもよい。
【0032】
次いで、式(8)で示されるジエステルを加水分解し、次いで得られた生成物に対して脱炭酸反応を行うことにより(+)−アンブレノリド(9)を得ることができる。式(8)で示されるジエステルの加水分解反応は、一般に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基の存在下に実施される。また、式(8)で示されるジエステルの加水分解反応は、一般に、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中で実施される。式(8)で示されるジエステルの加水分解生成物は、通常、精製することなく脱炭酸反応に供される。この脱炭酸反応は、一般に、トルエン、ベンゼン、キシレン等の溶媒中、80℃以上の温度において実施することができる。
【0033】
本発明においては、以下の工程に従って、(+)−アンブレノリド(9)から式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0034】
まず、(+)−アンブレノリド(9)を還元することにより式(10)で示されるラクト−ルを製造する。この際の還元手段としては、ラクトン環の開環を起こすことなく、ラクトン環のカルボニル基のみを選択的に水酸基に還元できるものであればよく、公知の手段を特段制限なく利用することができ、例えばトルエン、ベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL;(i−Bu)2AlH)、リチウムジエトキシアルミニウム(Li(OEt)2AlH2)などの還元剤を用いて実施することが好ましい。
【0035】
上記において得られた式(10)で示されるラクトールは、
式;R 3 P=CH(CH 3 )CO 2 R "
(式中の符号Rは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R”はアルキル基)
で示されるホスホラン化合物、例えば1−(メトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホラン、1−(エトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホランを縮合させることにより式(11)で示される化合物に変換される。この反応は、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒などの溶媒中で、式(10)で示されるラクトールと上記のホスホラン化合物をほぼ等モル量で反応させることにより、高収率で行うことができる。このとき新たに形成される炭素−炭素二重結合のE/Z比は16/1から18/1程度であり、選択的に反応が進行する。生成した両異性体はシリカゲルカラムクロマトグラフィ−や再結晶等の手段により分離でき、式(11)で示される化合物を高純度で得ることができる。
【0036】
式(11)で示される化合物は、その水酸基を適切な保護基で保護することによって式(12)で示される化合物に変換される。ここで使用される保護基としては、式(2)で示されるスルホニル化合物を経て式(17)で示される化合物に至る一連の反応条件を考慮して、水酸基の保護基として公知のものの中から適切なものが選択されるが、例えばテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基などのエーテル系保護基が好ましく用いられる。
【0037】
式(12)で示される化合物は、そのエステル部分(CO2R”)を選択的に還元することにより式(13)で示される不飽和アルコールに変換される。式(12)で示される化合物のエステル部分を選択的に還元する手段としては、公知の方法を特に制限なく使用することができるが、金属水素化物を用いる還元手段を適用することが好ましい。具体的には、ソジウムボロヒドリド(NaBH4)、リチウムアルミニウムヒドリド(LiAlH4)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド((i−Bt)2AlH)などが挙げられるが、特に、リチウムアルミニウムヒドリドなどの安価な金属水素化物を使用することが望ましい。この際炭素−炭素二重結合の還元は認められない。この反応は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒やトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒を用いて実施することが好ましい。
【0038】
式(13)で示される不飽和アルコールは、ハロゲン化することにより式(14)で示されるハロゲン化誘導体とした後、式(2)で示されるスルホニル化合物に変換される。
式(13)で示される不飽和アルコールのハロゲン化は、リチウムクロリドの存在下にメタンスルホニルクロリド[J. Org. Chem., 36, 3044(1971)参照]やp−トルエンスルホニルクロライド等の芳香族スルホニルハライドを反応させる方法[Tetrahedron lett., 393(1984)参照]などの反応条件が穏やかな手段を用いることが望ましい。
式(14)で示されるハロゲン化誘導体の式(2)で示されるスルホニル化合物への変換は、一般に、式:R 1 SO 2 H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩と該ハロゲン化誘導体を溶媒中で反応させることによって実施される。上記スルフィン酸の塩としては、例えばp−トルエンスルフィン酸ナトリウムやベンゼンスルフィン酸ナトリウムなどが挙げられ、また、溶媒としては、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらの中でも極性の高い溶媒が好ましく用いられる。
【0039】
[γ−シクロゲラニルハライドの光学活性体(3)の合成]
式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体は、式(4)で示される化合物を出発原料として反応工程図(C)に従って合成される。
上記において、式(4)で示される化合物は、公知の方法[Helv. Chim. Acta , 1752 (1952)参照]に従って容易に製造できる。
式(4)で示される化合物は、ウィッティヒ反応によってカルボニル基(C=O)をビニル基(C=CH 2 )に変化することにより式(5)で示される化合物に導くことができる。この際、ウィッティヒ反応においては、メチルブロミドやメチルアイオダイドから誘導されるホスホニウム塩などが用いられる。このウィッティヒ反応は、一般に、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒やジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒中で実施される。上記のウィッティヒ反応で得られた式(5)で示される化合物は光学活性体の混合物であるが、かかる化合物から公知の方法[Helv. Chim. Acta, 539 (1995)参照]に従って、式(6)で示される光学活性な化合物を経て、光学活性な式(15)で示される化合物を得ることができる。
かくして得られた式(15)で示される化合物を還元することにより式(16)で示される光学活性なアルコールを得る。この還元反応は、通常、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒やトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒などの溶媒中において、金属水素化物を用いて行われる。かかる金属水素化物としては、例えば、ソジウムボロヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどが挙げられるが、これらの中でも、安価なリチウムアルミニウムヒドリドが望ましい。
上記で得られた式(16)で示される光学活性なアルコールは、公知の方法[Can.J.Chem.,46,86-87 (1968)参照]に従って、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体[(+)−γ−シクロゲラニルハライド]に変換される。
【0040】
なお、本発明では、クロリド、ブロミド、アイオダイド等いずれの(+)−γ−シクロゲラニルハライドも用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、比旋光度の値はクロロホルム溶液として測定したものであり、また、1H−NMRは、重クロロホルム(CDCl3)中、テトラメチルシラン(TMS)を基準としたケミカルシフトの値である。
〔実施例1〕(+)−アンブレノリド[(4aR,6aS,10aS,10bR)−(+)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチルナフト[2,1−b]ピラン−3−オン][式(9)で示される化合物]の製造
マロン酸ジメチル(0.330g,2.50mmol)をナトリウムメトキシド(0.148g,2.74mmol)のメタノール(5ml)溶液に室温下で加え、得られた溶液を30℃にて30分間撹拌した後、(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネ−ト([式(7)で示される化合物](0.403g,1.00mmol)のヘキサメチルホスホリックトリアミド(8ml)溶液と18−クラウン−6の20mgを加え、68℃にて12時間撹拌した。その後、得られた反応混合液を冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。得られたジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−5:1(体積比)]で精製し、式(8)で示されるジエステルを1.2:1のジアステレオマー混合物として0.189g(収率43%)得た。次に水酸化カリウム(0.085g,1.5mmol)のエタノール(3ml)溶液に、上記で得られた式(8)で示されるジエステル(0.189g,0.431mmol)のエタノール(2ml)溶液を加え、55℃にて1.5時間撹拌した。その後、得られた反応混合液を室温まで冷却した後、1規定塩酸中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。得られたジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣をトルエン(5ml)に溶解させ、得られたトルエン溶液を95℃にて5分間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=6:1−2:1(体積比)]で精製し、(+)−アンブレノリド(9)0.105g(収率:92.1%)を得た。
【0042】
上記で得られた化合物の物性値を以下に示す。
式(8)で示されるジエステル;
IR(film)ν(cm-1):1738(s, C=O), 1150 (m, C-O), 1020 (m, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.81 (3H, s, CH 3), 0.85 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.23 and 1.31 (3H in total, s each, CH 3), 1.1-2.1 (21H, m), 3.41-3.50 (1H, m, CHH-O), 3.71 and 3.73 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.73 and 3.75 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.82-3.87 and 3.90-3.95 (1H, m, CHH-O), 4.06-4.09 and 4.16-4.19 [1H in total, m each, CH-(CO2CH3)2], 4.83 and 4.86 (1H in total, m each, O-CH-O)
【0043】
(+)−アンブレノリド(9);
mp: 142−143℃
[α]D 21: +34.5 (c 1.00)
IR (KBr)ν(cm-1): 1738 (s, C=O), 1190 (m), 1159 (m), 1125 (s, C-O), 1043 (s, C-O), 970 (s)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm): 0.82 (3H, s, CH 3), 0.85 (3H, s, CH 3), 0.90 (3H, s, CH 3), 1.38(3H, s, CH 3), 0.9-1.75 (13H, m), 2.03 (1H, dt, J= 3.2, 12.8 Hz), 2.54 [1H, ddd, J=8.4, 9.2, 9.3 Hz, CHHC(=O)], 2.67 [1H, ddd, J=2.9, 8.5, 18.8 Hz, CHH(C=O)]
【0044】
〔実施例2〕(4aR,6aS,10aS,10bR)−(−)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]ピラン−3−オール[式(10)で示される化合物]の製造
(+)−アンブレノリド(9)(0.377g,1.43mmol)のトルエン(20ml)溶液に、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(1.0M、トルエン溶液、1.6ml、1.6mmol)を−65℃にて加え、同温度で1時間撹拌した後、メタノール0.1mlおよび飽和酒石酸ナトリウム水溶液を加え、得られた混合物を室温にて2時間撹拌し、次いでクロロホルムで抽出した。クロロホルム抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をベンゼンで再結晶することによって、式(10)で示されるラクトール0.270g(収率:71.1%)を無色の結晶として得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0045】
mp:196−197℃
[α]D 21: −9.2 (c 0.2)
IR (KBr)ν(cm-1):3370 (br. s, OH), 1120 (s,C-O), 1055 (s, C-O) cm-1
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.74 and 0.74 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 (3H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 1.28 and 1.28 (3H in total, s each, CH 3), 1.1-1.75 (14H, m), 1.81 (1H, dt, J = 3.1, 12.5 Hz), 1.99-2.05 (1H, m), 2.65 (1H, br, OH), 4.98 (1H, ddd, J = 2.6, 7.1, 8.4 Hz, CH-OH)
【0046】
〔実施例3〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[4’−カルボキシメチル−4’−メチル−3−ヘキシル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン−2−オ−ル [式(11)で示される化合物]の製造
1−(メトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホラン(1.5g,4.3mmol)のベンゼン(15ml)溶液に、式(10)で示されるラクトール(0.793g,2.98mmol)を加え、得られた混合物を70℃にて15時間撹拌した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣から大部分のトリフェニルホスフィンオキシド(Ph3PO)を再結晶(溶媒:トルエン−ヘキサン)によって除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]、次いで再結晶(溶媒:ジイソプロピルエーテル−ヘキサン)で精製し、式(11)で示される化合物0.903g(収率:90.1%)を白色結晶として得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0047】
mp: 85℃
[α]D 21:+5.8 (c 1.05)
IR (KBr)ν(cm-1): 3500 (br. s, OH), 1705 (s, C=O)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.77 (6H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 1.15 (3H, s, CH 3), 0.9-1.75 (14H, m), 1.83 (3H, d, J = 1.4 Hz, CH=C-CH 3), 1.84 (1H, dt, J = 3.3, 12.4 Hz), 2.17-2.32 (2H, m, CH 2-CH=C), 3.73 (3H,s, CO2-CH 3), 6.80 (1H, dt, J = 1.7, 7.0 Hz, CH2-CH=C)
【0048】
〔実施例4〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[4’−カルボキシメチル−4’−メチル−3−フェニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(12)で示される化合物]の製造
式(11)で示される化合物(0.338g,1.00mmol)および3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(0.32ml,3.5mmol)のジクロロメタン(40ml)溶液に触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、0℃にて1時間撹拌した後、得られた反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=20:1−8:1(体積比)]で精製し、式(12)で示される化合物0.392g(収率:92.7%)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた式(12)で表される化合物の物性値を以下に示す。
【0049】
[α]D 21:+2.7 (c 1.06 )
IR (KBr)ν(cm-1): 1710 (s, C=O), 1120 (s, C-O), 1070 (s, C-O), 1025 (s, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 and 0.81 (3H in total, s each, CH 3), 0.85 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.13 and 1.21 (3H in total, s each, CH 3), 1.82 (3H, CH=C-CH 3), 0.9-2.0 (20H, m), 2.10-2.50 (2H, m, CH 2-CH=C), 3.38-3.47 (1H, m, CHH-O), 3.73 and 3.73 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.82-3.98 (1H, m, CHH-O), 4.80 and 4.89 (1H in total, m each, O-CH-O), 6.80 (1H, m, CH2-CH=C)
【0050】
〔実施例5〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−ヒドロキシ−4’−メチル−3−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(13)で示される化合物]の製造
実施例4で得られた式(12)で示される化合物(0.392g,0.932mmol)を常法に従い、ジエチルエーテル中、リチウムアルミニウムヒドリド20mgを用いて還元し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製し、式(13)で示される不飽和アルコール0.352g(収率:96.2%)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた式(13)で示される不飽和アルコールの物性値を以下に示す。
【0051】
[α]D 21:−5.9 (c 0.95 )
IR (film)ν(cm-1): 3400 (br. s, OH), 1125 (s, C-O), 1070 (m, C-O), 1020 (s, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 and 0.81 (3H in total, s each, CH 3), 0.85 and 0.89 (3H in total, s each, CH 3), 1.12 and 1.19 (3H in total, s each, CH 3), 1.64 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.4 (23H, m), 3.39-3.51 (1H, m, CHH-O), 3.84-4.02 (3H, m, CHH-O and CH 2OH), 4.78 and 4.89 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.45 (1H, m,
CH 2-CH=C)
【0052】
〔実施例6〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−トリルスルホニルl−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(2)で示されるスルホニル化合物]の製造
塩化リチウム(0.095g,2.2mmol)と炭酸水素ナトリウム(0.20g)のジメチルホルムアミド(DMF)(15ml)溶液に、0℃にて、実施例5で得られた式(13)で示される不飽和アルコール(0.274g,0.698mmol)と2,6−ルチジン(0.35ml,3.0mmol)のDMF(1ml)溶液を加え、同温度で50分撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(0.16ml,2.1mmol)を加え、得られた混合物を0℃にて2.5時間撹拌し、次いで得られた反応液に水およびジエチルエーテルを加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和硫酸銅水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=5:1(体積比)]で精製し、式(14)で示されるハロゲン化誘導体を得た。得られた式(14)で示されるハロゲン化誘導体を直ちにDMF(5ml)に溶解させ、得られたDMF溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム(0.35g,2.0mmol)を加え、室温にて12時間撹拌した後、得られた反応混合物を水中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=12:1−5:1(体積比)]で精製し、式(2)で示されるスルホニル化合物0.213 g[収率:57.5%、式(13)で示される不飽和アルコールを基準とする。]を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0053】
式(14)で示されるハロゲン化誘導体:
IR (film)ν(cm-1): 1670 (w, C=C), 820 (m, C=C)
【0054】
式(2)で示されるスルホニル化合物:
[α]D 21:+0.6 (c 0.64 )
IR (film)ν(cm-1): 1620 (m, C=C), 1340[s, S(=O)2], 1155 [s, S(=O)2], 840 (m, aromatic)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 (6H, CH 3), 0.84 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.09 and 1.16 (3H in total, s each, CH 3), 1.73 and 1.75 (3H in total, s each, CH=C-CH 3), 0.9-2.2 (22H, m) 2.42 (3H, s, Ph-CH 3), 3.38-3.48 (1H, m, CHH-O), 3.68 (2H, s, CH 2SO2Tol), 3.80-3.96 (1H, m, CHH-O), 4.76 and 4.85 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.02 (1H, m, CH2-CH=C), 7.28-7.34 (2H, m, aromatic) 7.70 and 7.72 (2H in total, d, J = 8.5 Hz, aromatic)
【0055】
〔実施例7〕メチル(±)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボキシレート[式(5)で示される化合物]の製造
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(52.5g,147mmol)とカリウムt−ブトキシド(17.5 g,156 mmol)のトルエン(350ml)溶液を3時間加熱還流し、次いで室温まで冷却し、同温度で3時間静置した後、上澄をデカンテーションにより分離し、別途調製した式(4)で示される化合物(12.5g,67.8mmol)のトルエン(80ml)溶液に加え、室温にて撹拌した。上記において上澄みを分離した後の残留物にトルエン(200ml)を加えて撹拌し、2時間静置することによってさらにメチルフェニルホスホニウムブロミドより誘導されるイリドを抽出し、得られたイリドのトルエン溶液を、イリドの黄色の消失速度が遅くなるまで4時間かけて、先に分離した上澄みと式(4)で示される化合物の反応液に加え、さらに30分撹拌した。得られた反応混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和塩化アンモニウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣から大部分のトリフェニルホスフィンオキシド(Ph3PO)を再結晶(溶媒:トルエン−ヘキサン)によって除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=100:1−80:1(体積比)]、次いで蒸留(105℃,30mmHg)によって精製し、式(5)で示される化合物10.9g(収率:88.1%)を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0056】
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)C-H], 1740 (s, C=O), 1650 (m, C=C), 895 (m, C=CH2)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.93 (3H, CH 3) and 0.97 (3H, CH3), 1.20-1.30 (1H, m), 1.45-1.70 (2H, m), 1.79-1.89 (1H, m), 2.07-2.16(1H, m), 2.42-2.51 (1H,m), 2.89 (1H, s), 3.65 (3H, s), 4.73 (1H, s, C=CHH), 4.85 (1H, s, C=CHH).
【0057】
〔実施例8〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボン酸[式(6)で示される化合物]の製造
上記で得られた式(5)で示される化合物(10.9g、59.8mmol)を公知の方法[Helv. Chim. Acta, 539 (1995) 参照]に従って加水分解して遊離のカルボン酸とし、次いで(S)−1−フェニルエチルアミンを用いて光学分割することにより、式(6)で示される光学活性な化合物を4.12g得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0058】
mp:63℃
[α]D 21:+125.0 (c 0.11)
IR (KBr)ν(cm-1): 2950 (br. s, C=O), 1700 (s, C=O), 900 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.95 (3H, CH 3), 1.03 (3H, CH 3), 1.20-1.29 (1H, m), 1.44-1.70 (2H, m), 1.79-1.92 (1H, m), 2.08-2.18 (1H, m), 2.41-2.54 (1H,m), 2.89 (1H,s), 4.82 (1H, s, C=CHH), 4.90 (1H, s, C=CHH), 9.9-11.0 (1H, br, CO2 H)
【0059】
〔実施例9〕メチル(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボキシレート[式(15)で示される化合物]の製造
実施例8で得られた式(6)で示される化合物(0.167g,0.993mmol)を常法によってジエチルエーテル中、ジアゾメタンと反応させることによりメチルエステル化し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=100:1−80:1(体積比)]で精製し、式(15)で示される光学活性な化合物0.180g(収率:99.4%)を得た。この化合物の比旋光度は次のとおりである。
[α]D 21:+101.3 (c 0.10).
【0060】
〔実施例10〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンメタノール[式(16)で示される化合物]の製造
実施例9で得られた式(15)で示される化合物(0.180g,0.988mmol)を常法に従い、ジエチルエーテル中、リチウムアルミニウムヒドリド20mgで還元し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製して、式(16)で示される化合物0.138g(収率:90.6%)を得た。この式(16)で示される化合物の物性値を以下に示す。
【0061】
[α]D 21:+23.7 (c 0.31)
IR (film)ν(cm-1): 3375 (br. s, OH), 3070 [w, (C=)C-H], 1645 (m, C=C), 885 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.87 (3H, CH 3), 0.96 (3H, CH 3), 1.20-1.62 (4H, m), 2.04 (1H, dd, J=4.7, 10.9 Hz), 2.08-2.15 (2H, m), 3.64 (1H, t, J = 10.4, CHHOH), 3.72 (1H, dd, J = 4.7, 10.4 Hz, CHHOH), 4.76 (1H, m, C=CHH), 4.96 (1H, m, C=CHH)
低分解能マススペクトル(EIms)m/z [relative intensity(%)]: 154 (M+, 5), 136 ([M-H2O]+, 58), 69 (100).
【0062】
〔実施例11〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(クロロ)メチル]シクロヘキサン[式(3)で示される化合物(X=Cl)]の製造
実施例10で得られた式(16)で示される化合物(1.54g,10.0mol)を、公知の方法[Can. J. Chem.,46,86-87(1968)参照]に従って、トリオクチルホスフィンの存在下、四塩化炭素中、75℃の条件で塩素化し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製し、式(3)で示される化合物(X=Cl)1.38g(収率:80.0%)を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0063】
bp: 70℃(45mmHg)
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)CミH], 1645 (m, C=C), 895 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.86 (3H, CH 3), 1.00 (3H, CH 3), 1.25-1.66 (4H, m), 2.02-2.20 (3H, m), 3.58 (1H, t, J = 11.0, CHHCl), 3.78 (1H, dd, J = 3.6, 11.0 Hz, CHHCl), 4.72 (1H, s, C=CHH), 4.94 (1H, s, C=CHH)低分解能マススペクトル(EIms)m/z[relative intensity(%)]: 174 (M++2, 4), 172 (M+, 12), 69 (100).
【0064】
〔実施例12〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(ブロモ)メチル]シクロヘキサン[式(3)で示される化合物(X=Br)]の製造
実施例10で得られた式(16)で示される化合物(3.09g,20.0mmol)のピリジン(10ml)溶液に、メタンスルホニルクロリド(2.3ml,30.0mmol)を加え、0℃にて1時間撹拌した後、水、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和硫酸銅水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=5:1(体積比)]で精製し、式(16)で示される化合物のメタンスルホネート誘導体を得た。得られたメタンスルホネート誘導体を直ちにDMF(10ml)に溶解させた。得られたDMF溶液に臭化ナトリウム(4.0g,39mmol)を加え、90℃にて5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ペンタン)、次いで蒸留(105℃,40mmHg)で精製し、式(3)で示される化合物(X=Br)2.27g[収率:52.2%、式(16)で示される化合物を基準とする]を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0065】
式(16)で示される化合物のメタンスルホネ−ト誘導体:
IR (film)ν(cm-1): 3075 [w, (C=)C-H], 1650 (m, C=C), 1360 [s, S(=O)2], 1175 [s, S(=O)2], 895 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.88 (3H, CH 3), 1.01 (3H, CH 3), 1.25-1.62 (4H, m), 2.03-2.28 (3H, m), 2.99 (3H, SO2CH 3), 4.33 (1H, t, J = 9.9 Hz, CHHOMs), 4.43 (1H, dd, J = 4.7, 9.9 Hz, CHHOMs), 4.70 (1H, s, C=CHH), 4.91 (1H, s, C=CHH)
【0066】
式(3)で示される化合物(X=Br);
IR (film)ν(cm-1): 3075 [w, (C=)C-H], 1645 (m, C=C), 895 (s, C=CH2)≡H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.86 (3H, CH 3), 1.01 (3H, CH 3), 1.24-1.60 (4H, m), 2.02-2.25 (3H, m), 3.43 (1H, dd, J=10.2, 10.2 Hz, CHHBr), 3.71 (1H, dd, J=3.6, 10.2 Hz, CHHBr), 4.70(1H, s, C=CHH), 4.94(1H, s, C=CHH)
低分解能マススペクトル(EIms)m/z [relative intensity(%)]: 218 (M++2, 5), 216 (M+, 5), 137 ([M-Br]+, 82), 81 (100).
【0067】
〔実施例13〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E,1”S)−(+)−1−[6’−(2”,2”−ジメチル−6”−メチレンシクロヘキシル)−4’−メチル−3−ヘキシル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(17)で示される化合物]の製造
n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,0.48ml,0.76mmol)を、実施例6で得られた式(2)で示されるスルホニル化合物(0.336g,0.633mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(1.5ml)とヘキサメチルホスホリックトリアミド(1.5ml)の混合溶媒に溶解してなる溶液に、−30℃にて加え、15分間撹拌した。次に、得られた混合物に、−30℃にて、実施例12で得られた式(3)で示される化合物(X=Br)(0.22g,1.0mmol)のTHF(0.1ml)溶液を加え、得られた反応混合物を10℃まで3時間かけて昇温した。得られた反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−5:1(体積比)]で精製し、カップリング生成物0.135g(収率:約32%)を得るとともに、式(2)で示されるスルホニル化合物0.197g(収率:58.6%)を回収した。次いで、前記で得られたカップリング生成物と該カップリング生成物に対して10mol%となる量のジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム[PdCl2(dppp)]のTHF(3ml)に溶解してなる溶液に、0℃にてリチウムトリエチルボロヒドリド(LiHBEt3)(1.0M、THF溶液,0.81ml,0.81mmol)を加え、0℃にて8時間撹拌した。得られた混合物に3規定の水酸化ナトリウム水溶液(1.5ml)と少量のシアン化カリウムを加え、30分間撹拌した後、塩化ナトリウムおよびジエチルエーテルを加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=100:1−50:1(体積比)]で精製し、式(17)で示される化合物0.098g[収率:30%、式(2)で示されるスルホニル化合物を基準とする]を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0068】
[α]D 21:+8.0 (c 0.25 )
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)C-H], 1645 (w, C=C), 1125 (m, C-O), 1020 (m, C-O,) 885 (m, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.78 and 0.79 (3H in total, s each, CH 3), 0.81 and 0.82 (3H in total, s each, CH 3), 0.84 (3H, s, CH 3), 0.86 and 0.86 (3H in total, s each, CH 3), 0.92 (3H, s, CH 3), 1.15 and 1.21 (3H in total, s each, CH 3), 1.60 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.15 (33H, m), 3.43-3.51 (1H, m, CHH-O), 3.93-4.00 (1H, m, CHH-O), 4.55 (1H, d, 2.4, C=CHH), 4.75 (1H, m, C=CHH), 4.84 and 4.92 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.15 (1H, m, CH2-CH=C)
【0069】
〔実施例14〕
実施例13と同様の操作によって、式(2)で示されるスルホニル化合物(0.119g,0.224mmol)と実施例11で得られた式(3)で示される化合物(X=Cl)(0.086g,0.5mmol)をカップリングさせ、次いで脱スルホン化反応を行い、式(17)で示される化合物0.041g[収率:36%、式(2)で示されるスルホニル化合物を基準とする]を得た。
【0070】
〔実施例15〕(+)−アンブレイン(1)の製造
実施例13または実施例14で得られた式(17)で示される化合物(0.050g,0.097mmol)のメタノール(1ml)溶液に、ビス(トリメチルシリル)サルフェ−ト(1mg)のジクロロエタン(1ml)溶液を加え、室温にて2分間撹拌した。得られた反応混合物にピリジン(0.02ml)を加え、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1(体積比)]で精製し、(+)−アンブレイン(1)0.033g(収率:79%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0071】
mp:81-82℃[mp:81.5-82.5℃(文献値)(Liebigs Ann. Chem., 361(1990))参照]
[α]D 21:+17.2 (c 0.20 ) ([α]D:+18.7 (c 0.63)(文献値)[Liebigs Ann. Chem.,361(1990) 参照])
IR (KBr)ν(cm-1): 3400 (br. s, OH), 3075 [w, (C=)C-H], 1650 (w, C=C), 890 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.78 (6H, s, CH 3), 0.83 (3H, s, CH 3), 0.86 (3H, s, CH 3), 0.91 (3H, s, CH 3), 1.13 (3H, s, CH 3), 1.60 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.12 (28H, m), 4.53 (1H, s, C=CHH), 4.74 (1H, s, C=CHH), 5.15 (1H, dt, J = 1.1, 7.1 Hz, CH2-CH=C)
【0072】
また、上記のカラムクロマトグラフィーによる精製により、下記の物性を有する少量の(Z)−異性体も得られた。
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.78 (6H, s, CH 3), 0.83 (3H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 0.94 (3H, s, CH 3), 1.25 (3H, s, CH 3), 1.61 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.12 (28H, m) 4.54 (1H, m, C=CHH), 4.74 (1H, m, C=CHH), 5.10 (1H, m, CH2-CH=C)
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、(+)−アンブレノリドから容易に誘導することができる新規なスルホン化合物(2)を経る新規な反応工程により、香料として有用な光学活性な(+)−アンブレインを簡便、かつ安価に効率よく製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、下記式(1);
【化8】
で表される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法、該製造方法に有用な中間体化合物、並びに該中間体化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性な(+)−アンブレインは、抹香鯨から産する竜涎香(アンバーグリス)の主成分であり、自動的に酸化分解されることにより アンブロックスをはじめとする有用な香気成分を生成する。
従来、この光学活性な(+)−アンブレインの製造方法としては、下記の二例が知られている。
▲1▼ 2,2 −ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンのパン酵母還元によって得られる(+)−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルシクロヘキサノンから多工程を経て(+)−γ−ホモシクロゲラニオ−ルに変換し(−)−1−(3’−ブチニル)−2,2−ジメチル−6−メチレンシクロヘキサンに導く。別途、(±)−2−ヒドロキシ−5,5,8a−トリメチルヒドロナフタレン−1−カルボン酸メチルを光学活性なナフチルエチルカ−バメ−ト誘導体とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−を用いて光学分割し、多工程を経て(−)−13,14,15,16−テトラノル−8α,12−ラブダンジオ−ルに変換した後(−)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−(メトキシメチルオキシ)−2,5,5,8a−テトラメチル−1−ナフタレンアセトアルデヒドに導く。次に、上記の(−)−1−(3’−ブチニル)−2,2−ジメチル−6−メチレンシクロヘキサンをジルコニウム触媒の存在下有機アランに変換し、(−)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−(メトキシメチルオキシ)−2,5,5,8a−テトラメチル−1−ナフタレンアセトアルデヒドを縮合し、脱アセトキシ化して(+)−アンブレインを合成する方法[Liebigs Ann. Chem., 361 (1990)参照]。
▲2▼ ファルネシル酢酸を閉環させて得られる(±)−アンブレノリドを天然アルカロイドであるキニンの塩として光学分割して(+)−アンブレノリドを得、(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンに導く。別途、ステラの方法により導いた(±)−γ−シクロゲラニオ−ルを塩素化して(±)−γ−シクロゲラニルクロリドに導く。次に、上記の(±)−γ−シクロゲラニルクロリドのグリニヤ−ル試薬と(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンを銅触媒の存在下縮合してジアステレオマ−混合物を得、再結晶により(+)−アンブレインを合成する方法[Agric. Biol. Chem. , 571 (1990).参照]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼の方法は(+)−γ−ホモシクロゲラニオ−ルの調製において多数の反応工程を必要とする上、精製操作が困難であり、(−)−13,14,15,16−テトラノル−8α,12−ラブダンジオ−ルの調製においても多工程を必要とするので工業的製造法として適当でない。
一方、上記▲2▼の方法は、(±)−γ−シクロゲラニルクロリドの調製において熟練した技術を必要とし、(+)−アンブレノリドの調製においては、光学分割剤として高価なキニンを(+)−アンブレノリドに対して1当量以上必要とし、製造コスト上望ましくない。また、(±)−γ−シクロゲラニルクロリドのグリニヤ−ル試薬と(−)−1−[5’−アセトキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンを銅触媒の存在下縮合する際、再現性よく良好な反応成績を得るには、非常に高度の技術を必要とするため、工業的に実施する上で有利な方法とはいいがたい。
【0004】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点について鋭意研究の結果、アンブレノリドから簡便で収率よく製造できる新規なスルホン化合物を製造し、これにγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体をカップリングさせる工程を経由する方法によれば、上記の式(1)で表される光学活性なアンブレインを簡便、安価に効率よく製造できることを見い出し本発明に至ったものである。
また、本発明者らは、光学活性(+)−アンブレノリドを効率よく製造できる方法についてもさらに研究を進め、新たな知見を得て、全く新規な製造経路を開発した。
さらに、また、光学活性γ−シクロゲラニルハライドの製造方法についても改良された方法を見い出すに至ったのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題は、以下の各発明によりそれぞれ達成される。
【0006】
(1)下記式(1);
【化9】
で示される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法であって、
下記式(2);
【化10】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物と、
下記式(3);
【化11】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体とをカップリングした後、脱スルホン化して、
下記式(17);
【化12】
(式中、符号Yは前記定義のとおりである)
で示される化合物を得、次いで、水酸基の保護基Yを脱離することを特徴とする、上記式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法。
【0007】
(2)下記式(2);
【化13】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物。
【0008】
(3)下記式(2);
【化14】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R1は有機基を示す)
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法であって、
下記式(13);
【化15】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号X’はハロゲン原子を示す)
で示される化合物に、
式:R1SO2H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩を反応させることを特徴とする、上記式(2)で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法。
【0009】
また、本発明者らは、γ−シクロゲラニルハライドの光学活性体について、改良された方法を見出すに至っている。すなわち、下記式(3);
【化16】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体{(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(ハロゲノ)メチル]シクロヘキサン}は、
下記式(15);
【化17】
(式中、符号R2はアルキル基を示す)
で示される(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステルを還元して下記式(16);
【化18】
で示される(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンメタノールを得、次いで、これをハロゲン化することにより、簡便かつ容易に製造することができる。
【0010】
さらに、本発明者らは、光学活性な(+)−アンブレノリドを効率よく製造できる方法について研究を進め、新たな知見を得て、新規な製造経路を開発した。すなわち、下記式(9);
【化19】
で示される光学活性(+)−アンブレノリド{(4aR,6aS,10aS,10bR)−(+)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチルナフト[2,1−b]ピラン−3−オン}は、
下記式(7);
【化20】
(式中、符号Y’は水酸基の保護基、また、符号Zは脱離基をそれぞれ示す)
で示される化合物にマロン酸ジエステルを反応させ、得られる下記式(8);
【化21】
(式中、符号Y’は、前記定義のとおりであり、また、符号R’はアルキル基を示す)
で示される縮合物を脱炭酸反応に付すことにより、容易、かつ、効率よく製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明により提供される式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレイン[以下、「(+)−アンブレイン(1)」と称することがある]の新規な製造方法は、式(2)で示される新規なスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体から、その大略を表す以下の反応工程図(A)に従って(+)−アンブレイン(1)を製造する方法である。
【0012】
【化22】
【0013】
上記において式(2)で示される新規なスルホニル化合物は、その大略を表す以下の反応工程図(B)に従って製造できる。
【0014】
【化23】
【0015】
また、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体は、その大略を示す以下の反応工程図(C)に従って製造することができる。
【0016】
【化24】
【0017】
[(+)−アンブレイン(1)の合成]
式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレインは、式(2)で示されるスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体をカップリングした後、脱スルホン化することによって式(17)で示される化合物を得、さらに水酸基の保護基Yを脱離することによって製造される。
ここで式(2);
【化25】
(式中、符号Yは水酸基の保護基、また、符号R 1 は有機基を示す)
で示されるスルホニル化合物と
式(3);
【化26】
(式中、Xはハロゲン原子を示す)
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体とのカップリング反応は、液相中において有機アルカリ金属化合物の存在下で実施することができる。
【0018】
上記の式(2)中の符号R 1 で示される有機基としては、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基等の基であれば特に制限はないが、置換されていてもよいフェニル基等のアリール基であることが好ましい。また、符号Yで示される水酸基の保護基としては、アルコール性水酸基を保護する基であれば、特に制限はなく、例えばテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基等のエーテル系保護基が好ましく用いられる。符号Yで示される水酸基の保護基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル系保護基を使用することもできる。
また、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体としては、(+)−γ−シクロゲラニルクロライド、(+)−γ−シクロゲラニルブロマイド、(+)−γ−シクロゲラニルアイオダイド等が用いられる。
【0019】
使用される有機アルカリ金属化合物としては、脂肪族炭化水素類のアルカリ金属化合物、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン等の低級脂肪族炭化水素のリチウム、ナトリウム、カリウム化合物が好ましく、特に、ブチルリチウムが好ましく用いられる。
【0020】
反応は、溶媒の存在下で実施するのが好ましい。溶媒としては、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒が好ましく、また、これらの非プロトン性極性溶媒とジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒との混合溶媒も好ましい溶媒である。
【0021】
反応温度は、特に制限はないが、−30℃〜室温程度とするのがよい。
【0022】
式(2)で示されるスルホニル化合物と式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体との使用割合は、特に制限がないが、通常、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体を式(2)で示されるスルホニル化合物に対して等モルまたは過剰量使用することが好ましい。
【0023】
次いで、上記カップリング反応で得られた生成物は、通常公知の手段により精製した後、脱スルホン化され、式(17)で示される化合物に変換される。
【0024】
上記の脱スルホン化反応は、ソジウムボロヒドリド(NaBH4)、ス−パ−ヒドリド[LiAl(OEt)3H]などによるヒドリド還元;ナトリウム−アマルガムやサマリウムアイオダイドを用いたラジカル条件での還元;リチウム・エチルアミン系のようなアルカリ金属による還元反応によって行うことができるが、特にジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどのパラジウム触媒存在下におけるソジウムボロヒドリド、ス−パ−ヒドリドなどによるヒドリド還元[Chem. Lett.,451(1985)参照]によって実施することが望ましい。ナトリウム−アマルガムやサマリウムアイオダイドを用いたラジカル条件で反応を行う場合やリチウム−エチルアミン系のようなアルカリ金属による還元を行う場合には、二重結合が移動した14−(E)−異性体が副生し得る。
【0025】
脱スルホン化生成物である式(17)で示される化合物から、水酸基の保護基Yを脱離することにより、(+)−アンブレイン(1)を高収率で製造することができる。
この水酸基の保護基Yの脱離は、例えばYがテトラヒドロピラニル基である場合には、酸性条件下での加水分解など、使用した保護基Yの種類に応じた適切な周知の手段を適用することにより行われる。
【0026】
[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン(2)の合成]
式(2)で示される化合物は、反応工程図(B)に従って合成される。
【0027】
すなわち、本発明では、式(13)で示される(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−ヒドロキシ−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレンをそのハロゲン化誘導体[式(14)で示される化合物]に変換し、次いで、式R1SO2H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩と反応させて式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0028】
また、本発明では、式(9)で示される(+)−アンブレノリド[以下、「(+)−アンブレノリド(9)」と称することがある]から、反応工程図(B)に従った方法で、再現性よく、かつ高収率に、式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0029】
さらに、本発明者らは、式(7)で表されるデカリン誘導体、例えば(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネートを原料化合物として、簡便な方法で、式(9)で示される(+)−アンブレノリドを合成する方法についても見出しており、この一連の工程より、式(2)で示されるスルホニル化合物および(+)−アンブレイン(1)を製造する方法も、本発明の態様に包含される。
【0030】
上記の方法において出発原料として用いる式(7)のデカリン誘導体、例えば(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネートは、公知の方法[Tetrahedron Asymmetry, 7, 1695 (1996)参照]に従って容易に製造できる。式(7)における水酸基の保護基Y’は、テトラヒドロピラニル基に特に限定されるものではなく、他の周知の水酸基を保護する基、例えばメトキシメチル基、エトキシエチル基などのエーテル系保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル系保護基などを用いることができる。また、式(7)における脱離基Zとしては、メタンスルホニルオキシ基に限定されるものではなく、脂肪族並びに芳香族系スルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ基等)などのスルホン酸エステル基、あるいは、ピバロイル基を始めとするカルボン酸エステル基などを特に制限なく使用することができる。
【0031】
式(7)で示されるデカリン誘導体に、マロン酸ジエステルを縮合させて、式(8)で示されるジエステルを製造する。この縮合反応は、適切な溶媒中で塩基の存在下に実施することができる。この際に用いられる塩基としては、リチウムヒドリド、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド、カリウムt−ブトキシドなどがあげられる。また、使用可能な溶媒としてはヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、エーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらの中でも高極性のものが望ましい。また、触媒として18−クラウン−6等のクラウンエーテルを添加して反応を実施してもよい。
【0032】
次いで、式(8)で示されるジエステルを加水分解し、次いで得られた生成物に対して脱炭酸反応を行うことにより(+)−アンブレノリド(9)を得ることができる。式(8)で示されるジエステルの加水分解反応は、一般に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基の存在下に実施される。また、式(8)で示されるジエステルの加水分解反応は、一般に、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中で実施される。式(8)で示されるジエステルの加水分解生成物は、通常、精製することなく脱炭酸反応に供される。この脱炭酸反応は、一般に、トルエン、ベンゼン、キシレン等の溶媒中、80℃以上の温度において実施することができる。
【0033】
本発明においては、以下の工程に従って、(+)−アンブレノリド(9)から式(2)で示されるスルホニル化合物を製造することができる。
【0034】
まず、(+)−アンブレノリド(9)を還元することにより式(10)で示されるラクト−ルを製造する。この際の還元手段としては、ラクトン環の開環を起こすことなく、ラクトン環のカルボニル基のみを選択的に水酸基に還元できるものであればよく、公知の手段を特段制限なく利用することができ、例えばトルエン、ベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなどの溶媒中で、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL;(i−Bu)2AlH)、リチウムジエトキシアルミニウム(Li(OEt)2AlH2)などの還元剤を用いて実施することが好ましい。
【0035】
上記において得られた式(10)で示されるラクトールは、
式;R 3 P=CH(CH 3 )CO 2 R "
(式中の符号Rは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、R”はアルキル基)
で示されるホスホラン化合物、例えば1−(メトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホラン、1−(エトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホランを縮合させることにより式(11)で示される化合物に変換される。この反応は、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒などの溶媒中で、式(10)で示されるラクトールと上記のホスホラン化合物をほぼ等モル量で反応させることにより、高収率で行うことができる。このとき新たに形成される炭素−炭素二重結合のE/Z比は16/1から18/1程度であり、選択的に反応が進行する。生成した両異性体はシリカゲルカラムクロマトグラフィ−や再結晶等の手段により分離でき、式(11)で示される化合物を高純度で得ることができる。
【0036】
式(11)で示される化合物は、その水酸基を適切な保護基で保護することによって式(12)で示される化合物に変換される。ここで使用される保護基としては、式(2)で示されるスルホニル化合物を経て式(17)で示される化合物に至る一連の反応条件を考慮して、水酸基の保護基として公知のものの中から適切なものが選択されるが、例えばテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基などのエーテル系保護基が好ましく用いられる。
【0037】
式(12)で示される化合物は、そのエステル部分(CO2R”)を選択的に還元することにより式(13)で示される不飽和アルコールに変換される。式(12)で示される化合物のエステル部分を選択的に還元する手段としては、公知の方法を特に制限なく使用することができるが、金属水素化物を用いる還元手段を適用することが好ましい。具体的には、ソジウムボロヒドリド(NaBH4)、リチウムアルミニウムヒドリド(LiAlH4)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド((i−Bt)2AlH)などが挙げられるが、特に、リチウムアルミニウムヒドリドなどの安価な金属水素化物を使用することが望ましい。この際炭素−炭素二重結合の還元は認められない。この反応は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒やトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒を用いて実施することが好ましい。
【0038】
式(13)で示される不飽和アルコールは、ハロゲン化することにより式(14)で示されるハロゲン化誘導体とした後、式(2)で示されるスルホニル化合物に変換される。
式(13)で示される不飽和アルコールのハロゲン化は、リチウムクロリドの存在下にメタンスルホニルクロリド[J. Org. Chem., 36, 3044(1971)参照]やp−トルエンスルホニルクロライド等の芳香族スルホニルハライドを反応させる方法[Tetrahedron lett., 393(1984)参照]などの反応条件が穏やかな手段を用いることが望ましい。
式(14)で示されるハロゲン化誘導体の式(2)で示されるスルホニル化合物への変換は、一般に、式:R 1 SO 2 H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩と該ハロゲン化誘導体を溶媒中で反応させることによって実施される。上記スルフィン酸の塩としては、例えばp−トルエンスルフィン酸ナトリウムやベンゼンスルフィン酸ナトリウムなどが挙げられ、また、溶媒としては、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらの中でも極性の高い溶媒が好ましく用いられる。
【0039】
[γ−シクロゲラニルハライドの光学活性体(3)の合成]
式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体は、式(4)で示される化合物を出発原料として反応工程図(C)に従って合成される。
上記において、式(4)で示される化合物は、公知の方法[Helv. Chim. Acta , 1752 (1952)参照]に従って容易に製造できる。
式(4)で示される化合物は、ウィッティヒ反応によってカルボニル基(C=O)をビニル基(C=CH 2 )に変化することにより式(5)で示される化合物に導くことができる。この際、ウィッティヒ反応においては、メチルブロミドやメチルアイオダイドから誘導されるホスホニウム塩などが用いられる。このウィッティヒ反応は、一般に、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒やジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒中で実施される。上記のウィッティヒ反応で得られた式(5)で示される化合物は光学活性体の混合物であるが、かかる化合物から公知の方法[Helv. Chim. Acta, 539 (1995)参照]に従って、式(6)で示される光学活性な化合物を経て、光学活性な式(15)で示される化合物を得ることができる。
かくして得られた式(15)で示される化合物を還元することにより式(16)で示される光学活性なアルコールを得る。この還元反応は、通常、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒やトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒などの溶媒中において、金属水素化物を用いて行われる。かかる金属水素化物としては、例えば、ソジウムボロヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどが挙げられるが、これらの中でも、安価なリチウムアルミニウムヒドリドが望ましい。
上記で得られた式(16)で示される光学活性なアルコールは、公知の方法[Can.J.Chem.,46,86-87 (1968)参照]に従って、式(3)で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体[(+)−γ−シクロゲラニルハライド]に変換される。
【0040】
なお、本発明では、クロリド、ブロミド、アイオダイド等いずれの(+)−γ−シクロゲラニルハライドも用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、比旋光度の値はクロロホルム溶液として測定したものであり、また、1H−NMRは、重クロロホルム(CDCl3)中、テトラメチルシラン(TMS)を基準としたケミカルシフトの値である。
〔実施例1〕(+)−アンブレノリド[(4aR,6aS,10aS,10bR)−(+)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチルナフト[2,1−b]ピラン−3−オン][式(9)で示される化合物]の製造
マロン酸ジメチル(0.330g,2.50mmol)をナトリウムメトキシド(0.148g,2.74mmol)のメタノール(5ml)溶液に室温下で加え、得られた溶液を30℃にて30分間撹拌した後、(1S,2R,4aS,8aS)−(−)−(1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフチル)メチルメタンスルホネ−ト([式(7)で示される化合物](0.403g,1.00mmol)のヘキサメチルホスホリックトリアミド(8ml)溶液と18−クラウン−6の20mgを加え、68℃にて12時間撹拌した。その後、得られた反応混合液を冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。得られたジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−5:1(体積比)]で精製し、式(8)で示されるジエステルを1.2:1のジアステレオマー混合物として0.189g(収率43%)得た。次に水酸化カリウム(0.085g,1.5mmol)のエタノール(3ml)溶液に、上記で得られた式(8)で示されるジエステル(0.189g,0.431mmol)のエタノール(2ml)溶液を加え、55℃にて1.5時間撹拌した。その後、得られた反応混合液を室温まで冷却した後、1規定塩酸中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。得られたジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣をトルエン(5ml)に溶解させ、得られたトルエン溶液を95℃にて5分間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=6:1−2:1(体積比)]で精製し、(+)−アンブレノリド(9)0.105g(収率:92.1%)を得た。
【0042】
上記で得られた化合物の物性値を以下に示す。
式(8)で示されるジエステル;
IR(film)ν(cm-1):1738(s, C=O), 1150 (m, C-O), 1020 (m, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.81 (3H, s, CH 3), 0.85 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.23 and 1.31 (3H in total, s each, CH 3), 1.1-2.1 (21H, m), 3.41-3.50 (1H, m, CHH-O), 3.71 and 3.73 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.73 and 3.75 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.82-3.87 and 3.90-3.95 (1H, m, CHH-O), 4.06-4.09 and 4.16-4.19 [1H in total, m each, CH-(CO2CH3)2], 4.83 and 4.86 (1H in total, m each, O-CH-O)
【0043】
(+)−アンブレノリド(9);
mp: 142−143℃
[α]D 21: +34.5 (c 1.00)
IR (KBr)ν(cm-1): 1738 (s, C=O), 1190 (m), 1159 (m), 1125 (s, C-O), 1043 (s, C-O), 970 (s)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm): 0.82 (3H, s, CH 3), 0.85 (3H, s, CH 3), 0.90 (3H, s, CH 3), 1.38(3H, s, CH 3), 0.9-1.75 (13H, m), 2.03 (1H, dt, J= 3.2, 12.8 Hz), 2.54 [1H, ddd, J=8.4, 9.2, 9.3 Hz, CHHC(=O)], 2.67 [1H, ddd, J=2.9, 8.5, 18.8 Hz, CHH(C=O)]
【0044】
〔実施例2〕(4aR,6aS,10aS,10bR)−(−)−2,3,4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b−ドデカヒドロ−4a,7,7,10a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]ピラン−3−オール[式(10)で示される化合物]の製造
(+)−アンブレノリド(9)(0.377g,1.43mmol)のトルエン(20ml)溶液に、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(1.0M、トルエン溶液、1.6ml、1.6mmol)を−65℃にて加え、同温度で1時間撹拌した後、メタノール0.1mlおよび飽和酒石酸ナトリウム水溶液を加え、得られた混合物を室温にて2時間撹拌し、次いでクロロホルムで抽出した。クロロホルム抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をベンゼンで再結晶することによって、式(10)で示されるラクトール0.270g(収率:71.1%)を無色の結晶として得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0045】
mp:196−197℃
[α]D 21: −9.2 (c 0.2)
IR (KBr)ν(cm-1):3370 (br. s, OH), 1120 (s,C-O), 1055 (s, C-O) cm-1
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.74 and 0.74 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 (3H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 1.28 and 1.28 (3H in total, s each, CH 3), 1.1-1.75 (14H, m), 1.81 (1H, dt, J = 3.1, 12.5 Hz), 1.99-2.05 (1H, m), 2.65 (1H, br, OH), 4.98 (1H, ddd, J = 2.6, 7.1, 8.4 Hz, CH-OH)
【0046】
〔実施例3〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[4’−カルボキシメチル−4’−メチル−3−ヘキシル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン−2−オ−ル [式(11)で示される化合物]の製造
1−(メトキシカルボニル)エチリデントリフェニルホスホラン(1.5g,4.3mmol)のベンゼン(15ml)溶液に、式(10)で示されるラクトール(0.793g,2.98mmol)を加え、得られた混合物を70℃にて15時間撹拌した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣から大部分のトリフェニルホスフィンオキシド(Ph3PO)を再結晶(溶媒:トルエン−ヘキサン)によって除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]、次いで再結晶(溶媒:ジイソプロピルエーテル−ヘキサン)で精製し、式(11)で示される化合物0.903g(収率:90.1%)を白色結晶として得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0047】
mp: 85℃
[α]D 21:+5.8 (c 1.05)
IR (KBr)ν(cm-1): 3500 (br. s, OH), 1705 (s, C=O)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.77 (6H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 1.15 (3H, s, CH 3), 0.9-1.75 (14H, m), 1.83 (3H, d, J = 1.4 Hz, CH=C-CH 3), 1.84 (1H, dt, J = 3.3, 12.4 Hz), 2.17-2.32 (2H, m, CH 2-CH=C), 3.73 (3H,s, CO2-CH 3), 6.80 (1H, dt, J = 1.7, 7.0 Hz, CH2-CH=C)
【0048】
〔実施例4〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[4’−カルボキシメチル−4’−メチル−3−フェニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(12)で示される化合物]の製造
式(11)で示される化合物(0.338g,1.00mmol)および3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(0.32ml,3.5mmol)のジクロロメタン(40ml)溶液に触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、0℃にて1時間撹拌した後、得られた反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=20:1−8:1(体積比)]で精製し、式(12)で示される化合物0.392g(収率:92.7%)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた式(12)で表される化合物の物性値を以下に示す。
【0049】
[α]D 21:+2.7 (c 1.06 )
IR (KBr)ν(cm-1): 1710 (s, C=O), 1120 (s, C-O), 1070 (s, C-O), 1025 (s, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 and 0.81 (3H in total, s each, CH 3), 0.85 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.13 and 1.21 (3H in total, s each, CH 3), 1.82 (3H, CH=C-CH 3), 0.9-2.0 (20H, m), 2.10-2.50 (2H, m, CH 2-CH=C), 3.38-3.47 (1H, m, CHH-O), 3.73 and 3.73 (3H in total, s each, CO2-CH 3), 3.82-3.98 (1H, m, CHH-O), 4.80 and 4.89 (1H in total, m each, O-CH-O), 6.80 (1H, m, CH2-CH=C)
【0050】
〔実施例5〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−ヒドロキシ−4’−メチル−3−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(13)で示される化合物]の製造
実施例4で得られた式(12)で示される化合物(0.392g,0.932mmol)を常法に従い、ジエチルエーテル中、リチウムアルミニウムヒドリド20mgを用いて還元し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製し、式(13)で示される不飽和アルコール0.352g(収率:96.2%)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた式(13)で示される不飽和アルコールの物性値を以下に示す。
【0051】
[α]D 21:−5.9 (c 0.95 )
IR (film)ν(cm-1): 3400 (br. s, OH), 1125 (s, C-O), 1070 (m, C-O), 1020 (s, C-O)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 and 0.78 (3H in total, s each, CH 3), 0.80 and 0.81 (3H in total, s each, CH 3), 0.85 and 0.89 (3H in total, s each, CH 3), 1.12 and 1.19 (3H in total, s each, CH 3), 1.64 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.4 (23H, m), 3.39-3.51 (1H, m, CHH-O), 3.84-4.02 (3H, m, CHH-O and CH 2OH), 4.78 and 4.89 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.45 (1H, m,
CH 2-CH=C)
【0052】
〔実施例6〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E)−(+)−1−[5’−トリルスルホニルl−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(2)で示されるスルホニル化合物]の製造
塩化リチウム(0.095g,2.2mmol)と炭酸水素ナトリウム(0.20g)のジメチルホルムアミド(DMF)(15ml)溶液に、0℃にて、実施例5で得られた式(13)で示される不飽和アルコール(0.274g,0.698mmol)と2,6−ルチジン(0.35ml,3.0mmol)のDMF(1ml)溶液を加え、同温度で50分撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(0.16ml,2.1mmol)を加え、得られた混合物を0℃にて2.5時間撹拌し、次いで得られた反応液に水およびジエチルエーテルを加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和硫酸銅水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=5:1(体積比)]で精製し、式(14)で示されるハロゲン化誘導体を得た。得られた式(14)で示されるハロゲン化誘導体を直ちにDMF(5ml)に溶解させ、得られたDMF溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム(0.35g,2.0mmol)を加え、室温にて12時間撹拌した後、得られた反応混合物を水中に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=12:1−5:1(体積比)]で精製し、式(2)で示されるスルホニル化合物0.213 g[収率:57.5%、式(13)で示される不飽和アルコールを基準とする。]を1:1のジアステレオマー混合物として得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0053】
式(14)で示されるハロゲン化誘導体:
IR (film)ν(cm-1): 1670 (w, C=C), 820 (m, C=C)
【0054】
式(2)で示されるスルホニル化合物:
[α]D 21:+0.6 (c 0.64 )
IR (film)ν(cm-1): 1620 (m, C=C), 1340[s, S(=O)2], 1155 [s, S(=O)2], 840 (m, aromatic)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.77 (6H, CH 3), 0.84 and 0.85 (3H in total, s each, CH 3), 1.09 and 1.16 (3H in total, s each, CH 3), 1.73 and 1.75 (3H in total, s each, CH=C-CH 3), 0.9-2.2 (22H, m) 2.42 (3H, s, Ph-CH 3), 3.38-3.48 (1H, m, CHH-O), 3.68 (2H, s, CH 2SO2Tol), 3.80-3.96 (1H, m, CHH-O), 4.76 and 4.85 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.02 (1H, m, CH2-CH=C), 7.28-7.34 (2H, m, aromatic) 7.70 and 7.72 (2H in total, d, J = 8.5 Hz, aromatic)
【0055】
〔実施例7〕メチル(±)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボキシレート[式(5)で示される化合物]の製造
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(52.5g,147mmol)とカリウムt−ブトキシド(17.5 g,156 mmol)のトルエン(350ml)溶液を3時間加熱還流し、次いで室温まで冷却し、同温度で3時間静置した後、上澄をデカンテーションにより分離し、別途調製した式(4)で示される化合物(12.5g,67.8mmol)のトルエン(80ml)溶液に加え、室温にて撹拌した。上記において上澄みを分離した後の残留物にトルエン(200ml)を加えて撹拌し、2時間静置することによってさらにメチルフェニルホスホニウムブロミドより誘導されるイリドを抽出し、得られたイリドのトルエン溶液を、イリドの黄色の消失速度が遅くなるまで4時間かけて、先に分離した上澄みと式(4)で示される化合物の反応液に加え、さらに30分撹拌した。得られた反応混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和塩化アンモニウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣から大部分のトリフェニルホスフィンオキシド(Ph3PO)を再結晶(溶媒:トルエン−ヘキサン)によって除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=100:1−80:1(体積比)]、次いで蒸留(105℃,30mmHg)によって精製し、式(5)で示される化合物10.9g(収率:88.1%)を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0056】
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)C-H], 1740 (s, C=O), 1650 (m, C=C), 895 (m, C=CH2)
1H−NMR (400 MHz) δ(ppm):0.93 (3H, CH 3) and 0.97 (3H, CH3), 1.20-1.30 (1H, m), 1.45-1.70 (2H, m), 1.79-1.89 (1H, m), 2.07-2.16(1H, m), 2.42-2.51 (1H,m), 2.89 (1H, s), 3.65 (3H, s), 4.73 (1H, s, C=CHH), 4.85 (1H, s, C=CHH).
【0057】
〔実施例8〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボン酸[式(6)で示される化合物]の製造
上記で得られた式(5)で示される化合物(10.9g、59.8mmol)を公知の方法[Helv. Chim. Acta, 539 (1995) 参照]に従って加水分解して遊離のカルボン酸とし、次いで(S)−1−フェニルエチルアミンを用いて光学分割することにより、式(6)で示される光学活性な化合物を4.12g得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0058】
mp:63℃
[α]D 21:+125.0 (c 0.11)
IR (KBr)ν(cm-1): 2950 (br. s, C=O), 1700 (s, C=O), 900 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.95 (3H, CH 3), 1.03 (3H, CH 3), 1.20-1.29 (1H, m), 1.44-1.70 (2H, m), 1.79-1.92 (1H, m), 2.08-2.18 (1H, m), 2.41-2.54 (1H,m), 2.89 (1H,s), 4.82 (1H, s, C=CHH), 4.90 (1H, s, C=CHH), 9.9-11.0 (1H, br, CO2 H)
【0059】
〔実施例9〕メチル(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボキシレート[式(15)で示される化合物]の製造
実施例8で得られた式(6)で示される化合物(0.167g,0.993mmol)を常法によってジエチルエーテル中、ジアゾメタンと反応させることによりメチルエステル化し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=100:1−80:1(体積比)]で精製し、式(15)で示される光学活性な化合物0.180g(収率:99.4%)を得た。この化合物の比旋光度は次のとおりである。
[α]D 21:+101.3 (c 0.10).
【0060】
〔実施例10〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンメタノール[式(16)で示される化合物]の製造
実施例9で得られた式(15)で示される化合物(0.180g,0.988mmol)を常法に従い、ジエチルエーテル中、リチウムアルミニウムヒドリド20mgで還元し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製して、式(16)で示される化合物0.138g(収率:90.6%)を得た。この式(16)で示される化合物の物性値を以下に示す。
【0061】
[α]D 21:+23.7 (c 0.31)
IR (film)ν(cm-1): 3375 (br. s, OH), 3070 [w, (C=)C-H], 1645 (m, C=C), 885 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.87 (3H, CH 3), 0.96 (3H, CH 3), 1.20-1.62 (4H, m), 2.04 (1H, dd, J=4.7, 10.9 Hz), 2.08-2.15 (2H, m), 3.64 (1H, t, J = 10.4, CHHOH), 3.72 (1H, dd, J = 4.7, 10.4 Hz, CHHOH), 4.76 (1H, m, C=CHH), 4.96 (1H, m, C=CHH)
低分解能マススペクトル(EIms)m/z [relative intensity(%)]: 154 (M+, 5), 136 ([M-H2O]+, 58), 69 (100).
【0062】
〔実施例11〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(クロロ)メチル]シクロヘキサン[式(3)で示される化合物(X=Cl)]の製造
実施例10で得られた式(16)で示される化合物(1.54g,10.0mol)を、公知の方法[Can. J. Chem.,46,86-87(1968)参照]に従って、トリオクチルホスフィンの存在下、四塩化炭素中、75℃の条件で塩素化し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ペンタン−酢酸エチル=10:1−4:1(体積比)]で精製し、式(3)で示される化合物(X=Cl)1.38g(収率:80.0%)を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0063】
bp: 70℃(45mmHg)
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)CミH], 1645 (m, C=C), 895 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.86 (3H, CH 3), 1.00 (3H, CH 3), 1.25-1.66 (4H, m), 2.02-2.20 (3H, m), 3.58 (1H, t, J = 11.0, CHHCl), 3.78 (1H, dd, J = 3.6, 11.0 Hz, CHHCl), 4.72 (1H, s, C=CHH), 4.94 (1H, s, C=CHH)低分解能マススペクトル(EIms)m/z[relative intensity(%)]: 174 (M++2, 4), 172 (M+, 12), 69 (100).
【0064】
〔実施例12〕(1S)−(+)−2,2−ジメチル−6−メチレン−1−[1’−(ブロモ)メチル]シクロヘキサン[式(3)で示される化合物(X=Br)]の製造
実施例10で得られた式(16)で示される化合物(3.09g,20.0mmol)のピリジン(10ml)溶液に、メタンスルホニルクロリド(2.3ml,30.0mmol)を加え、0℃にて1時間撹拌した後、水、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を水、飽和硫酸銅水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=5:1(体積比)]で精製し、式(16)で示される化合物のメタンスルホネート誘導体を得た。得られたメタンスルホネート誘導体を直ちにDMF(10ml)に溶解させた。得られたDMF溶液に臭化ナトリウム(4.0g,39mmol)を加え、90℃にて5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ペンタン)、次いで蒸留(105℃,40mmHg)で精製し、式(3)で示される化合物(X=Br)2.27g[収率:52.2%、式(16)で示される化合物を基準とする]を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0065】
式(16)で示される化合物のメタンスルホネ−ト誘導体:
IR (film)ν(cm-1): 3075 [w, (C=)C-H], 1650 (m, C=C), 1360 [s, S(=O)2], 1175 [s, S(=O)2], 895 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.88 (3H, CH 3), 1.01 (3H, CH 3), 1.25-1.62 (4H, m), 2.03-2.28 (3H, m), 2.99 (3H, SO2CH 3), 4.33 (1H, t, J = 9.9 Hz, CHHOMs), 4.43 (1H, dd, J = 4.7, 9.9 Hz, CHHOMs), 4.70 (1H, s, C=CHH), 4.91 (1H, s, C=CHH)
【0066】
式(3)で示される化合物(X=Br);
IR (film)ν(cm-1): 3075 [w, (C=)C-H], 1645 (m, C=C), 895 (s, C=CH2)≡H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.86 (3H, CH 3), 1.01 (3H, CH 3), 1.24-1.60 (4H, m), 2.02-2.25 (3H, m), 3.43 (1H, dd, J=10.2, 10.2 Hz, CHHBr), 3.71 (1H, dd, J=3.6, 10.2 Hz, CHHBr), 4.70(1H, s, C=CHH), 4.94(1H, s, C=CHH)
低分解能マススペクトル(EIms)m/z [relative intensity(%)]: 218 (M++2, 5), 216 (M+, 5), 137 ([M-Br]+, 82), 81 (100).
【0067】
〔実施例13〕(1R,2R,4aS,8aS,3’E,1”S)−(+)−1−[6’−(2”,2”−ジメチル−6”−メチレンシクロヘキシル)−4’−メチル−3−ヘキシル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−テトラヒドロピラニルオキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン[式(17)で示される化合物]の製造
n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,0.48ml,0.76mmol)を、実施例6で得られた式(2)で示されるスルホニル化合物(0.336g,0.633mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(1.5ml)とヘキサメチルホスホリックトリアミド(1.5ml)の混合溶媒に溶解してなる溶液に、−30℃にて加え、15分間撹拌した。次に、得られた混合物に、−30℃にて、実施例12で得られた式(3)で示される化合物(X=Br)(0.22g,1.0mmol)のTHF(0.1ml)溶液を加え、得られた反応混合物を10℃まで3時間かけて昇温した。得られた反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1−5:1(体積比)]で精製し、カップリング生成物0.135g(収率:約32%)を得るとともに、式(2)で示されるスルホニル化合物0.197g(収率:58.6%)を回収した。次いで、前記で得られたカップリング生成物と該カップリング生成物に対して10mol%となる量のジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム[PdCl2(dppp)]のTHF(3ml)に溶解してなる溶液に、0℃にてリチウムトリエチルボロヒドリド(LiHBEt3)(1.0M、THF溶液,0.81ml,0.81mmol)を加え、0℃にて8時間撹拌した。得られた混合物に3規定の水酸化ナトリウム水溶液(1.5ml)と少量のシアン化カリウムを加え、30分間撹拌した後、塩化ナトリウムおよびジエチルエーテルを加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=100:1−50:1(体積比)]で精製し、式(17)で示される化合物0.098g[収率:30%、式(2)で示されるスルホニル化合物を基準とする]を得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0068】
[α]D 21:+8.0 (c 0.25 )
IR (film)ν(cm-1): 3070 [w, (C=)C-H], 1645 (w, C=C), 1125 (m, C-O), 1020 (m, C-O,) 885 (m, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm): 0.78 and 0.79 (3H in total, s each, CH 3), 0.81 and 0.82 (3H in total, s each, CH 3), 0.84 (3H, s, CH 3), 0.86 and 0.86 (3H in total, s each, CH 3), 0.92 (3H, s, CH 3), 1.15 and 1.21 (3H in total, s each, CH 3), 1.60 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.15 (33H, m), 3.43-3.51 (1H, m, CHH-O), 3.93-4.00 (1H, m, CHH-O), 4.55 (1H, d, 2.4, C=CHH), 4.75 (1H, m, C=CHH), 4.84 and 4.92 (1H in total, m each, O-CH-O), 5.15 (1H, m, CH2-CH=C)
【0069】
〔実施例14〕
実施例13と同様の操作によって、式(2)で示されるスルホニル化合物(0.119g,0.224mmol)と実施例11で得られた式(3)で示される化合物(X=Cl)(0.086g,0.5mmol)をカップリングさせ、次いで脱スルホン化反応を行い、式(17)で示される化合物0.041g[収率:36%、式(2)で示されるスルホニル化合物を基準とする]を得た。
【0070】
〔実施例15〕(+)−アンブレイン(1)の製造
実施例13または実施例14で得られた式(17)で示される化合物(0.050g,0.097mmol)のメタノール(1ml)溶液に、ビス(トリメチルシリル)サルフェ−ト(1mg)のジクロロエタン(1ml)溶液を加え、室温にて2分間撹拌した。得られた反応混合物にピリジン(0.02ml)を加え、減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー[溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=10:1(体積比)]で精製し、(+)−アンブレイン(1)0.033g(収率:79%)を得た。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0071】
mp:81-82℃[mp:81.5-82.5℃(文献値)(Liebigs Ann. Chem., 361(1990))参照]
[α]D 21:+17.2 (c 0.20 ) ([α]D:+18.7 (c 0.63)(文献値)[Liebigs Ann. Chem.,361(1990) 参照])
IR (KBr)ν(cm-1): 3400 (br. s, OH), 3075 [w, (C=)C-H], 1650 (w, C=C), 890 (s, C=CH2)
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.78 (6H, s, CH 3), 0.83 (3H, s, CH 3), 0.86 (3H, s, CH 3), 0.91 (3H, s, CH 3), 1.13 (3H, s, CH 3), 1.60 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.12 (28H, m), 4.53 (1H, s, C=CHH), 4.74 (1H, s, C=CHH), 5.15 (1H, dt, J = 1.1, 7.1 Hz, CH2-CH=C)
【0072】
また、上記のカラムクロマトグラフィーによる精製により、下記の物性を有する少量の(Z)−異性体も得られた。
1H−NMR (300 MHz) δ(ppm):0.78 (6H, s, CH 3), 0.83 (3H, s, CH 3), 0.87 (3H, s, CH 3), 0.94 (3H, s, CH 3), 1.25 (3H, s, CH 3), 1.61 (3H, s, CH=C-CH 3), 0.9-2.12 (28H, m) 4.54 (1H, m, C=CHH), 4.74 (1H, m, C=CHH), 5.10 (1H, m, CH2-CH=C)
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、(+)−アンブレノリドから容易に誘導することができる新規なスルホン化合物(2)を経る新規な反応工程により、香料として有用な光学活性な(+)−アンブレインを簡便、かつ安価に効率よく製造することができる。
Claims (3)
- 下記式(1);
下記式(2);
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物と、
下記式(3);
で示されるγ−シクロゲラニルハライドの光学活性体とをカップリングした後、脱スルホン化して、
下記式(17);
で示される化合物を得、次いで、水酸基の保護基Yを脱離することを特徴とする、上記式(1)で示される光学活性な(+)−アンブレインの製造方法。 - 下記式(2);
で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法であって、
下記式(13);
で示される化合物に、
式:R1SO2H(式中、R1は前記定義のとおりである)で示されるスルフィン酸またはその塩を反応させることを特徴とする、上記式(2)で示される[(−)−1−[5’−有機スルホニル−4’−メチル−3’−ペンテニル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−置換ヒドロキシ−2,5,5,8a−テトラメチルナフタレン化合物の製造方法。
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