JP3816621B2 - タキソイド誘導体およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタキソイド誘導体およびその製造法に関し、詳しくはパクリタクセルおよびドセタクセルのいずれかにスペーサーを介して糖を結合して、生理活性,水に対する溶解性を改善したタキソイド誘導体およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パクリタクセル(Paclitaxel) 〔商品名:タキソール(Taxol)〕は、北米産イチイ(Taxus brevifolia) の樹皮から単離されたジテルペン化合物 [M.C.Wani et al.: J.Am.Chem.Soc.,93,2325(1971)]で、従来の化学療法では治癒しない癌に対しても改善効果を持つ強力な抗癌剤として知られている。このパクリタクセルが癌を抑制するメカニズムは特異的であり、他の多くの抗癌剤が有糸分裂装置である紡錘体の主成分の微小管の形成を抑えるのに対し、パクリタクセルは微小管の過剰形成を引き起こして有糸分裂を抑制するものである。
【0003】
パクリタクセルは有力な抗癌剤であるが、水に対する溶解性が低いため、実際の治療薬としての利用が限られる。そのため、可溶化剤の使用や誘導体として溶解性を高めるための研究開発等が活発に行われてるが、未だ十分な解決策は見出されていない。例えば、現在パクリタクセルは可溶化剤「クレモフォア」を用いて患者に投与されているが、2週間毎に6時間かけて1L投与し、これを4クール実施するという、患者に大きな負担を与えるもの〔Eric K.Rowinsky et al.: CANCER RESEARCH 49, 4640 (1989) 〕である上に、可溶化剤の副作用が問題となっている。
また、溶解性が改善されたパクリタクセルの誘導体としてドセタクセル(Dosetaxel)〔商品名:タキソテア(Taxotere) 〕が開発されたが、ドセタクセルの水に対する溶解度はパクリタクセルの1.3倍にすぎず〔I.Ringel et al.: J.Natl.Cancer Inst.,83, 288 (1991) 〕、さほど改善されてはいない。
【0004】
パクリタクセルの溶解性を改善するために、パクリタクセルの側鎖や母核に様々な官能基を導入しているが、それらの誘導体のうち、いくつかの化合物には溶解性の改善が認められるものの、生理活性が増強されたものは未だ報告されていない。
また、パクリタクセルの糖誘導体に関する報告はなく、天然にキシロースがエーテル結合している化合物が存在することが報告されているだけである〔H.Lataste et al.: Proc.Natl.Acad.Sci. USA,81, 4090 (1984) 〕。
化学的なグリコシル化には、例えば「日本化学会編 第4版 実験化学講座26 有機合成VIII 第3章」に記載されているように、多くの方法が知られているが、いずれの方法も重金属塩もしくは強力なルイス酸を用いる必要がある。しかし、パクリタクセルおよびドセタクセルは、酸に不安定なオキセタン骨格、立体障害の大きい基本骨格を有しているため、従来の化学的グリコシル化法は効率的に進行しない。一方、酵素によるグリコシル化は、パクリタクセルおよびドセタクセルが極めて水溶性が低いため、目的物が得られない。
さらに、パクリタクセルと同じく北米産イチイから抽出される10−デアセチル−バッカチンIII はドセタクセルの前駆体であり、本物質を用いて親水性タキソイド誘導体を製造する方法の開発が期待される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑み、溶解性と生理活性を共に向上したパクリタクセル等の糖誘導体を開発し、患者の負担を軽減し、かつ効果的な癌治療薬を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パクリタクセルの誘導体を開発すべく鋭意検討した結果、パクリタクセルにスペーサーを介してエステル結合により糖を結合したパクリタクセル誘導体が得られること、該誘導体は水に対する溶解性および生理活性の向上が認められることを知見し、本発明を完成させたのである。また、上述のドセタクセルについても、同様にしてエステル結合にて糖を結合したタキソイド誘導体を得る方法を確立した。
【0007】
すなわち本発明は、パクリタクセルおよびドセタクセルのいずれかにスペーサーを介して糖を結合してなるタキソイド誘導体とその製造法に関する。
【0008】
本発明のタキソイド誘導体の具体例を以下に示す。
下記の式で表されるグルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(以下、7−S−パクリタクセルと略す)、
【化5】
【0009】
および、下記の式で表されるグルコシルオキシアセチル−10−ドセタクセル(以下、10−S−ドセタクセルと略す)。
【0010】
【化6】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明のタキソイド誘導体は、上記したように、パクリタクセルおよびドセタクセルのいずれかにスペーサーを介して糖を結合してなるものである。
パクリタクセルは、Kingston, D.G.I.: Pharmacol. Ther., 52, 1 (1992)に記載された方法により、北米産イチイ(Taxus brevifolia) の樹皮から単離することにより得られる他、化学合成されたもの(R.A.Holton : Europian Patent-A 400971, 1990)なども用いられる。また、ドセタクセルは、Greene, A.E. et al.: J. Org. Chem., 59, 1238 (1994) に記載されている方法により、パクリタクセルから誘導される。
【0012】
パクリタクセルおよびドセタクセルのいずれかにスペーサーを介して糖を結合する反応は、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドを用いて行われる。このテトラベンジル酢酸オキシグルコシドは、グルコースを出発物質として常法により得られるテトラベンジルグルコースにスペーサーとしてエチルグリコレートなどのグリコレートを結合させてエステル化合物とした後、脱エチル化してカルボン酸化合物としたもので、下記の式で表される。
【0013】
【化7】
次に、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドの製造法の1例を以下に示す。
【0014】
【数1】
【0015】
常法により得られたテトラベンジルグルコース(1)にエチルグリコレートをp−トルエンスルホン酸と共にベンゼン中で0〜150℃、好ましくは110℃にて0.5〜50時間、好ましくは8時間反応させてエチルグリコレートを1位に結合させ、エチルエステル(化合物(2)、分子量626.76)を得る。この後、該化合物(2)をアルカリ(例えば6N NaOH)メタノール−ジオキサン溶液中で室温〜100℃にて0.5〜50時間、好ましくは3時間処理した後、塩酸(例えば1N HCl)酸性に移して脱エチル化することにより、対応するカルボン酸化合物(3)を得る。この物質が、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドである。
なお、グルコースの代わりに他の糖類を用いた場合も同様の反応によって、糖の種類が異なった、対応する糖修飾体を得ることができる。この場合に使用される糖類としては、例えばグルコースの他に、マンノース,アロース,アルトロース,グロース,イドース,ガラクトース,タロース,リボース,アラビノース,キシロース,リキソース,プシコース,フルクトース,ソルボース,タガトース,フコース,マルトースなどがある。
【0016】
本発明では、糖供与体のスペーサーとしてエチルグリコレートなどのグリコレートを用いているが、この物質のアルキル鎖長を変えることでスペーサーの長さを容易に調節することができる。例えば、3−ヒドロキシ酪酸等をスペーサーとして用いることも可能である。
【0017】
本発明のタキソイド誘導体は、上述のパクリタクセルおよびドセタクセルのいずれかとテトラベンジル酢酸オキシグルコシドを反応させて製造することができる。タキソイド誘導体の製造法の具体例としては、下記の反応工程( III )に示した方法がある。
【0018】
下記の反応工程(III)に示した方法は、パクリタクセルの2’位をクロロトリエチルシリル基を用いて保護した後にテトラベンジル酢酸オキシグルコシドと反応させ、その後、脱ベンジル化および脱トリエチルシリル化してパクリタクセル誘導体を製造するものである。
【0019】
【数2】
【0020】
まず、パクリタクセル(4)とクロロトリエチルシラン(TESCl)等の保護剤、イミダゾール等の塩基、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤をアルゴン下、室温で0.5〜50時間、好ましくは19.5時間反応してパクリタクセルの2’位をトリエチルシランで保護し、化合物(16)を得る。
【0021】
次に、得られた化合物とテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)、DMAP等の塩基、DCC等の縮合剤、塩化メチレン等の溶剤をアルゴン下、室温で0.5〜100時間、好ましくは5時間反応し、配糖体化した化合物(17)を得る。
その後、化合物(17)を、パラジウムブラック等の触媒、酢酸等の酸と共に水素下、室温で激しく攪拌しながら0.5〜50時間、好ましくは5時間反応させ、さらにテトラヒドロフラン(THF)等の溶剤と水を加え、室温で0.5〜50時間、好ましくは15時間反応させて目的とする化合物(18)を得る。この化合物(18)が前記式で表される7−S−パクリタクセルである。
なお、パクリタクセルの代わりにドセタクセル(9)を用いることによって、下記の式で表される10−S−ドセタクセル(21)を得ることができる。
【0022】
【化8】
【0023】
本発明のタキソイド誘導体は、ODSなどのシリカゲルを母体とする担体を用いた液体クロマトグラフィーを適用することにより、容易にアノマーを分離することができ、医薬品としても利用できる精製標品が得られる。
これらのタキソイド誘導体はいずれも水に対する溶解度が向上しており、パクリタクセルの溶解度が0.4μg/mlであるのに対し、例えば7−S−パクリタクセルは14.7μg/ml(36.8倍)である。また、これらのパクリタクセル誘導体は、アルコールに対する溶解性も改善されている。
【0024】
また、これらのパクリタクセル誘導体の生理活性を、パクリタクセルの微小管脱重合阻害活性を100として相対評価すると、7−S−パクリタクセルは225である。このように、パクリタクセル誘導体の生理活性は十分保持されており、本発明のタキソイド誘導体を抗癌剤として用いることが可能である。また、糖としてガラクトースやマンノースを用いると、これらは肝細胞と親和性があるため、肝臓癌の治療に有効である。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明する。
製造例1
常法により得られたテトラベンジルグルコース(1)1.62g、エチルグリコレート1.56g、p−トルエンスルホン酸0.10g、ベンゼン80mlを110℃でリフラックスさせながら8時間反応させ、化合物(2)(C38H42O8, 分子量626.74)を得た。
次いで、この化合物1.88gを6N NaOH 10ml、メタノール10ml、ジオキサン15mlと共に室温〜100℃で3時間反応させた後、1N HCl 80ml中に移して脱エチル化することにより、化合物(3)、すなわちカルボン酸化合物(C36H38O8, 分子量598.69)を得た。
上記の化合物(3)を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属して構造を決定し、前記の構造式で表されるものであることを確認した。
【0026】
参考例1
パクリタクセル(4)(C47H51NO14, 分子量853.92)256mg、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)539mg、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)110mg、ジシクロヘキシルカーボジイミド(DCC)186mgおよび塩化メチレン8mlをアルゴン下、室温で16.5時間反応し、2’位に配糖体化した化合物(5)(C83H87NO21,分子量1434.59)および2’,7位に配糖体化した化合物(6)(C119H123NO28,分子量2015.27)を得た。
【0027】
化合物(5)187mg、パラジウムブラック50mgおよび酢酸3mlを水素下、室温で激しく攪拌しながら5時間反応して脱ベンジル化を行い、グルコシルオキシアセチル −2’−パクリタクセル(以下、2’−S−パクリタクセルと略す)(7)(C55H63NO21,分子量1074.10)を101mg得た。収率は73%であった。
また、化合物(6)983mg、パラジウムブラック200mgおよび酢酸3mlを水素下、室温で激しく攪拌しながら5時間反応して脱ベンジル化を行い、グルコシルオキシアセチル−2’,7−パクリタクセル(以下、2’,7−S−パクリタクセルと略す)(8) (C63H75NO28, 分子量1294.28)を259mg得た。収率は41%であった。
次に、シリカゲル(商品名:キーゼルゲル、メルク社製) を充填したカラム( φ20mm, 容積40ml) を用い、クロロホルムを移動相として2’−S−パクリタクセルおよび2’,7−S−パクリタクセルをそれぞれ精製した。
【0028】
実施例1
パクリタクセル(4)427mg, クロロトリエチルシラン(TESCl)0.1mg、イミダゾール102mgおよびDMF5mlをアルゴン下、室温で19.5時間反応し、パクリタクセルの2’位をトリエチルシリル基で保護した化合物(16)(C53H65NO14Si, 分子量968.18)を得た。
この化合物(16)392mg、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)479mg, DMAP98mg、DCC165mgおよび塩化メチレン8mlをアルゴン下、室温で5時間反応し、配糖体化した化合物(17)(C89H101NO21Si,分子量1548.86)を得た。
次いで、得られた化合物(17)513mg、パラジウムブラック100mgおよび酢酸3mlを水素下、室温で激しく攪拌しながら5時間反応した。さらに、テトラヒドロフラン(THF)1mlと水1mlを加え、室温で15時間反応して7−S−パクリタクセル(18) (C55H63NO21, 分子量1074.10)を350mg得た。
【0029】
次に、シリカゲル(商品名:ODS、ワイエムシィ社製) を充填したカラム( φ20mm×250mm) を用い、メタノールを移動相として、7−S−パクリタクセルをアノマー毎に精製した。
また、7−S−パクリタクセルを重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属し構造を決定した。結果を以下に示す。
【0030】
7−S−パクリタクセル(α−アノマー)の1H-NMR(500MHz,CDCl3)
1.12 (S,3H,CH3)
1.18 (S,3H,CH3)
1.77 (S,3H,CH3)
1.83 (S,3H,CH3)
2.15 (S,3H,CH3)
2.35 (S,3H,CH3)
1.6-2.55 (m,5H)
3.4-3.9 (m,7H)
4.0-4.4 (m,4H)
4.75-5.1 (m,3H)
5.5-5.8 (m,3H)
6.05-6.2 (m,1H)
7.2-7.6 (m,11H,Ar,NH)
7.6-7.7 (m,1H,Ar)
7.7-7.9 (m,2H,Ar)
8.1-8.2 (m,2H,Ar)
【0031】
7−S−パクリタクセル(β−アノマー)の1H-NMR(500MHz,CDCl3)
1.14 (S,3H,17-CH3)
1.20 (S,3H,CH3)
1.81 (S,3H,CH3)
1.84 (S,3H,CH3)
2.17 (S,3H,CH3CO)
2.38 (S,3H,CH3CO)
2.25-2.35 (m,2H)
2.5-2.7 (m,2H)
3.3-3.9 (m,5H)
4.1-4.5 (m,4H)
4.85 (br,1H,H2')
4.95 (brd,J=9.1,1H,H5)
5.5-5.8 (m,3H)
6.1-6.2 (m,2H)
7.3-7.6 (m,11H,Ar,NH)
7.6-7.7 (m,1H,Ar)
7.7-7.8 (m,2H,Ar)
8.1-8.2 (m,2H,Ar)
【0032】
実施例2
パクリタクセル、7−S−パクリタクセル、2’−S−パクリタクセルおよび2’,7−S−パクリタクセルをそれぞれ10mg秤取し、水5mlを加えて18時間攪拌した。攪拌終了後、上清をメンブランフィルター(0.45μm) にて濾過し、濾液をHPLCにて分析した。その結果、各化合物の水に対する溶解度は第1表に示す通りであった。なお、HPLCの分析条件は下記のとおりである。
カラム:MetaChem製 Taxil 5μ(4.6×250mm)
溶 媒:MeOH/H2O(80/20)
流 速:0.5ml/min
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(230nm)
注入量:20μl
【0033】
【表1】
第1表
【0034】
表から明らかなように、パクリタクセルと比較して、パクリタクセル誘導体の溶解度は飛躍的に向上している。しかし、2’−S−パクリタクセルと2’,7−S−パクリタクセルは水溶液中でパクリタクセルに分解され、水溶液中では不安定であることが認められた。
【0035】
実施例3
パクリタクセル、7−S−パクリタクセル、2’−S−パクリタクセルおよび2’,7−S−パクリタクセルをそれぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、ジメチル−β−サイクロデキストリン(DM−β−CD、塩水港精糖株式会社製)とパクリタクセルの包接複合体(塩水港精糖株式会社製)は水に溶解し、反応液中の濃度がそれぞれ5μMになるように調製した。
次に、上記の各サンプルをチューブリン(微小管の主要構成タンパク質)と混合し、37℃で15分間反応した。反応後2分、5分、10分および15分に反応溶液の350nmの吸光度を測定した。また、反応終了後に塩化カルシウムを添加し、その5分後に再度350nmの吸光度を測定した。各測定値から、パクリタクセルの重合促進活性および脱重合阻害活性を100とした場合の各サンプルの相対活性を求め、結果を第2表に示した。
【0036】
表から明らかなように、7−S−パクリタクセルは脱重合阻害活性がパクリタクセルの2倍以上あり、非常に有効な抗癌剤であることが確認された。
また、パクリタクセルをDM−β−CDと包接させて複合物とすることによって、重合促進活性を高めることができることも認められた。
【0037】
【表2】
第2表
【0038】
参考例2
参考例1と同様にして、ドセタクセル(9)260mg、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド540mg、DMAP 110mg、DCC 190mgおよび塩化メチレン8mlをアルゴン下、室温で16.5時間反応し、2’位に配糖体化した化合物(10)と2’,7位に配糖体化した化合物(11)および2’,7,10位に配糖体化した化合物(12)を得た。
次いで、参考例1と同様に各配糖体化合物を脱ベンジル化し、それぞれグルコシルオキシアセチル−2’−ドセタクセル(13)、ジグルコシルオキシアセチル−2’,7−ドセタクセル(14)、トリグルコシルオキシアセチル−2’,7,10−ドセタクセル(15)を得た。
【0039】
参考例3
パクリタクセルの代わりにドセタクセル(9)を用いて、前記実施例1と同様にしてドセタクセルの2’位をトリエチルシリル基(TES)で保護した化合物(28)を得た後、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)と反応させて化合物(29)および(30)を得た。その後、これらの化合物(29)および(30)からベンジル基とTESをはずしてグルコシルオキシアセチル−7−ドセタクセル(19)とジグルコシルオキシアセチル−7,10−ドセタクセル(20)を得た。これらは反応式(IV)により製造される。
【0040】
【数3】
【0041】
実施例4
パクリタクセルの代わりにドセタクセル(9)を用いて、前記実施例1と同様にしてドセタクセルの2’位と7位をTESで保護した化合物(31)を得た後、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)と反応させて化合物(32)を得た。その後、この化合物(32)からベンジル基とTESをはずして10−S−ドセタクセル(21)(C51H65NO21,分子量1028.07)を得た。この化合物は、反応工程(V)により製造される。
【0042】
【数4】
【0043】
参考例4
パクリタクセルの代わりに10−デアセチル−パクリタクセル(C45H49NO13,分子量811.88)(22)を用いて、前記実施例1と同様にして、10−デアセチル−パクリタクセルの2’位と7位をTESで保護した化合物(33)を得た後、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)と反応させて化合物(34)を得た。その後、ベンジル基とTESをはずしてグルコシルオキシアセチル−10−パクリタクセル(C53H61NO20,分子量1032.06)(23)を得た。この化合物は、反応工程(VI)により製造される。
【0044】
【数5】
【0045】
参考例5
パクリタクセルの代わりにN−デベンゾイルパクリタクセル(C40H47NO13,分子量749.81)(24)を用いて、前記実施例1と同様にして、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)と反応させて化合物(35)を得た。その後、ベンジル基をはずして3’−S−パクリタクセル(C48H59NO20,分子量969.99)(25)を得た。この化合物は、反応工程(VII)により製造される。
また、N−デブトキシカルボニルドセタクセルを原料として、上記と同様に行うことにより、N−(グルコシルオキシアセチル)−N−デベンゾイルパクリタクセルのドセタクセル型の配糖体であるN−(グルコシルオキシアセチル)−N−デブトキシカルボニルドセタクセルを合成することも可能である。
【0046】
【数6】
【0047】
参考例6
パクリタクセルの代わりに10−デアセチル−バッカチンIII (C29H36O10 ,分子量544.60)(26)を用いて、前記実施例1と同様にして、10−デアセチル−バッカチンIII の7位をTESで保護した化合物(36)を得た後、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)と反応させて化合物(37)を得た。その後、ベンジル基とTESをはずしてグルコシルオキシアセチル−10−バッカチンIII (C37H48O17 ,分子量764.78)(27)を得た。この化合物は、反応工程(VIII) により製造される。このものは、親水性タキソイド合成の中間体として有効である。
【0048】
【数7】
【0049】
【発明の効果】
本発明により、水に対する溶解度が向上し、かつ生理活性も改善されたタキソイド誘導体とその製造法が提供される。このタキソイド誘導体は、患者の負担を軽減し、かつ効果的な癌治療薬としての利用が期待できる。
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