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JP3815425B2 - 冷間圧延方法 - Google Patents

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JP3815425B2
JP3815425B2 JP2002338325A JP2002338325A JP3815425B2 JP 3815425 B2 JP3815425 B2 JP 3815425B2 JP 2002338325 A JP2002338325 A JP 2002338325A JP 2002338325 A JP2002338325 A JP 2002338325A JP 3815425 B2 JP3815425 B2 JP 3815425B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、循環式圧延油供給系統を使用する冷間圧延機における潤滑用クーラントのスプレー方法を改良し、特に高速圧延時のチャタリングの発生を防止する鋼板の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延では、圧延中に鋼板とロールの間の摩擦を減少させるために潤滑油が必要となる。また、摩擦発熱および加工発熱を除去するためにロールならびに鋼板の冷却が必要となる。冷間圧延における圧延油(クーラント)の供給方式には、直接方式(ダイレクト方式)、循環方式(リサーキュレーション方式)、およびその折衷であるハイブリッド方式がある。
【0003】
直接式圧延油供給方式(ダイレクト方式)は、潤滑の目的で高濃度のエマルション圧延油を鋼板にスプレーし、冷却の目的で水をロールにスプレーするため、潤滑性と冷却性に優れる。しかし、循環方式と異なり、エマルション圧延油を循環使用しないため、圧延油の原単位が高い。
【0004】
一方、循環式圧延油供給方式(リサーキュレーション方式)は、圧延油と冷却水をあらかじめ混合、攪拌して作成した低濃度のエマルション圧延油を、循環しながら潤滑と冷却の目的で鋼板およびロールにスプレーするため、圧延油の原単位が低い。しかし、直接式圧延油供給方式と比較して、潤滑性および冷却性が劣ることは否定できない。そのため、従来の循環方式では、特に、仕上板厚0.2mm以下の薄物材の高速圧延時には潤滑不足となり、チャタリングと呼ばれる圧延機の振動や、ヒートスクラッチと呼ばれる表面疵が発生するため、圧延速度が上げられないという問題があった。
【0005】
これに対し、循環式圧延油供給方式の潤滑性改善を目的とした従来技術としては、10%未満のエマルションを供給する循環式圧延油供給系統とは別に、10%以上の高濃度のエマルションを、ロールバイトの噛み込み直前の鋼板下面に100〜200L/minの割合で直接供給する方法(特許文献1)が提示されている。
【0006】
しかし、上記従来技術には、以下の問題点があった。
【0007】
a)油脂が水中に乳化分散したエマルション圧延油が油と水に分離し、油分が金属表面に付着する性質、すなわちプレートアウト性とエマルション濃度の関係を調査すると、鋼板表面にスプレーされるエマルション圧延油中に含まれる油脂量に対し、鋼板表面にプレートアウトする油脂量の比率(以下、付着効率と称す)は、エマルション濃度を高くすると低下することがわかった。そのため、エマルション濃度を上昇させても十分なプレートアウト層を得られないため、高速で圧延する場合には、潤滑効果が小さく問題であった。
【0008】
b)高速圧延時には、鋼板下面側だけでなく、上面側にもヒートスクラッチが発生することがある。高速圧延域においては下面だけではなく上面の鋼板付着油量の減少もみられ、鋼板下面のみの潤滑性改善では不十分である。
【0009】
c)濃度10%以上のエマルションの直接供給方式の使用は、循環系統タンクの濃度増加の許容範囲に限定される。すなわち、循環系統のエマルションの油濃度を例えば4%とした場合、ストリップとともに付着した油分が系外へ持ち出される分、リークおよびスカムアウト等で失われる圧延油の補給量は、全スタンドで50L/hr程度であるのに対し、上記従来技術(特許文献1)において、直接供給される圧延油は、600L/hr〜1200L/hrに達するため,直接供給方式を使用することは循環系統のエマルション濃度を増加させることになる。一方、圧延材料によっては、高濃度エマルションによる潤滑を行なうと、ロールと鋼板の間の摩擦係数が小さくなり、スリップ等の異常圧延が発生するため、循環系統タンクのエマルション濃度が一定の上限値を越えるのは望ましくない。そのため、直接供給方式は、濃度増加の制約の許容範囲内でしか使用できない問題があった。
【0010】
チャタリングを防止する従来技術として、制御指標として先進率に注目し、先進率を適正な値となるようにクーラント供給量を制御し、適正な潤滑状態に調整する方法が提示されている。例えば、摩擦係数モデル式からクーラント供給量を演算し、供給量を制御する方法がある(特許文献2)。
【0011】
しかし、最近のブリキ材の製品動向である硬質・薄ゲージ化に伴い、生産性向上のために圧延の高速化が進められている。そして、上記製品の生産工程では、潤滑が不足することに起因するチャタリングも発生し、高速圧延の阻害要因となっている。すなわち、高速圧延域においては、潤滑が不足することに起因したチャタリングと、潤滑が過多となることに起因したチャタリングが発生する。このため、チャタリングを防止するために、潤滑状態を広範囲に制御する手段が必要となる。
【0012】
これに対し、循環式圧延油供給系統を用いた冷間タンデム圧延機では、一般的に、エマルション油を潤滑と冷却も兼ねてロールバイトへ向けて供給しているが、先進率を制御指標としてクーラント供給量を変更しても、先進率の変更範囲が狭く、目標とする先進率への制御が困難であった。すなわち、適正な潤滑状態を得られず、チャタリングを防止できなかった。
【0013】
【特許文献1】
特公昭59−24888号公報(特許請求の範囲など)
【0014】
【特許文献2】
特公平6−13126号公報、(特許請求の範囲など)
【0015】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、循環式圧延油供給系統を用いた冷間圧延方法において、濃度10%以上のエマルションの直接供給方式を用いることなく、高速圧延時の潤滑不足を解消することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、循環式圧延油供給系統とは別の圧延油供給系統を用いて、高速圧延時の潤滑不足を解消することを目的とする。
【0017】
更に本発明は、圧延中の先進率を目標先進率範囲内に制御して、高速圧延時のチャタリング発生を防止することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、循環式圧延油供給系統を用いて1200 mpm 以上の高速圧延を行う鋼板の冷間圧延方法において、ロールバイトより離れた上流スタンド側の、下式を満足する位置において、鋼板の上面および下面に直接エマルションをスプレーして、鋼板の上下両面にプレートアウト層を形成することを特徴とする冷間圧延方法である。
L≧V in ・t min (ただし、Lはロールバイトよりスプレーヘッダーの取り付け位置(m)、V in は入側ストリップ速度(m/sec)、 t min は必要な最小転相時間(sec)を表す。)
【0019】
以下、本第1発明の原理を説明する。
【0020】
エマルションのスプレーノズルの位置を、ロールバイトから離れた上流スタンドにできるだけ近い位置とするのは、エマルションがプレートアウトするための時間(以下、転相時間と称す。)を確保することで、鋼板付着量が増加し、潤滑性が向上するという試験結果に基づくものである。
【0021】
図4は、エマルションを供給するスプレーヘッダーの取り付け位置を示すものである。ヘッダーAは、循環式圧延油供給方式の一般的な潤滑用クーラントの供給ヘッダーであり、ロールバイト直近に設置されている。ヘッダーB、Cは、ヘッダーAの取付け位置を移動させ、ロールバイトより各々1m、3m離れた位置とした場合である。また、ヘッダーA’は、循環式圧延油供給系統とは別に、循環式圧延油供給系統よりも高濃度なエマルションを、ロールバイト直近の鋼板下面側に供給する従来技術によるへッダーである。
【0022】
図5は、上記各へッダーを用い、鋼板を圧延したときの、圧延機出側の上面側及び下面側の鋼板付着油量の平均値を示すものである。なお、鋼板付着油量の測定は、鋼板表面の油分をヘキサン等の有機溶剤にて抽出し、抽出油分量を測定する方法(溶剤抽出法)により行った。圧延油として牛脂を用い、循環式圧延油供給系統のヘッダーA、B、Cより、油分濃度3.5%、平均粒径9μmのエマルションを、3400L/minの割合で供給した。また、ヘッダーAと併せて、ヘッダーA’より、平均粒径9μm、濃度10%のエマルションを鋼板下面に200L/minの割合で供給した。この結果によると、ヘッダー取り付け位置をロールバイトより離すに従って、鋼板付着油量は増加し、潤滑不足が解消される傾向を示す。また、ヘッダーAとあわせて、ヘッダーA’を併用すると、ヘッダーAを単独で使用する場合よりも鋼板付着油量は若干増加するものの、ヘッダーBと同等であり、むしろヘッダーCの方が鋼板付着油量は高く、潤滑性の改善効果の大きいことがわかる。
【0023】
上述した結果は、エマルション圧延油のプレートアウト性が、スプレーされてからの時間に依存する現象と関係している。
【0024】
図6は、エマルション圧延油がストリップにスプレーされる場合に、油分が水から分離し油膜(プレートアウト層)を生成する過程を詳細に示す。水に油滴が分散したいわゆるO/W型のエマルションがストリップの表面に噴射された際、エマルション中の油滴がストリップの表面にまず衝突することにより圧力を受け、次にストリップとの相対速度でせん断を受け、さらに温度上昇をともなったストリップと物理的に吸着したり、場合によっては水分の蒸発を生じて、O/W型のエマルションがW/0型(油中に水滴が分散)のエマルションあるいは油単層に転相する。これによりプレートアウト層を生じると考えられる。この過程はスプレーされると瞬時に起るのではなく、上述した力学条件、温度条件の下での転相といった遷移過程(反応)に起因するため、時間依存過程であると考えられる。それに所要する時間は短時間かもしれないがいずれにしてもある時間を必要とすることは言うまでもない。発明者らは、このようにプレートアウト性に転相のための時間、すなわち転相時間が大きな影響を与えると考えた。
【0025】
また、発明者らはさらに、図7に示すプレートアウト試験方法(圧延油をスプレーした後、所定の時間後エアブローによりプレートアウトしない圧延油を吹き飛ばす方法)により、エマルション圧延油のプレートアウト性と転相時間の関係を調査した。図8にその結果を示す。これによると、プレートアウト量は転相時間に大きく依存し、転相時間を増加させるとプレートアウト量は増加する。また、図中のtmin よりも転相時間が短くなると、急激にプレートアウト量は低下する。そのため、tmin 以上の転相時間を確保するのが好ましい。なお、「最小転相時間T min 」とは、プレートアウト量として250mg/m2を確保するのに必要な転相時間をいう。プレートアウト量が250mg/m2以上であれば、ロールバイト入側における油分量としては十分な付着量であり、高速圧延域であっても比較的安定した圧延が可能となる量である。
【0026】
以上の結果より、従来技術で行われているロールバイト噛み込み直前でエマルションを供給する方法では転相時間を確保できないため、十分なプレートアウト層を形成できない。特に高速圧延域では、プレートアウトするまでの時間が極端に短かくなるため、従来技術のようにロールバイト噛み込み直前でエマルションを供給する方式では、エマルションを高濃度化してもほとんど潤滑性の改善効果はない。
【0027】
一方、本発明により、スプレーノズルの位置をロールバイトから離れた上流スタンドに近い位置とし、転相時間を確保することにより、循環系統の濃度の低いエマルションを用いても十分なプレートアウト層を形成できるため、高速圧延域での潤滑性を確保することができる。ヘッダーは上記プレートアウト試験より得られる最小転相時間tmin を少なくとも確保できる位置に取り付けるのが好ましい。従って、エマルション供給位置からロールバイトまでの距離L(m)は下式を満足するよう決定する。
【0028】
L≧Vin・tmin …式(1)
(ただし、Vinは入側ストリップ速度(m/sec)、tmin は必要な最小転相時間(sec)を表す。)
また、図9は、5スタンド冷間圧延機における圧延速度と圧延機出側の鋼板付着油量の関係を示すが、高速圧延域においては鋼板下面側だけでなく、上面側の鋼板付着油量も減少している。これは、エマルションのプレートアウトが、エマルションがスプレーされてプレートアウトするまでの転相時間に依存する現象と関係している。すなわち銅板下面側はプレートアウトしないエマルションは直ちに落下するが、鋼板上面側はスプレーされたエマルションが鋼板面上に滞留するため有効な供給圧延油量は多くなる。そのため低速圧延域では上面側の付着量は下面側に比べて通常多くなるが、高速圧延域ではエマルションがスプレーされてプレートアウトするまでの転相時間が短くなるためにプレートアウト量が下面と同様に減少する。従って、上下面にスプレーすることで、高速圧延域でも上面、下面の両方で十分な濶滑性改善を行なう必要がある。
【0029】
以上では、循環式圧延油供給系統を用いる場合について述べたが、本発明原理は直接式圧延油供給系統を用いた冷間タンデム圧延機にも適用可能である。
【0030】
第2の発明は、循環式圧延油供給系統のエマルションより大きな平均粒径となるように調整した付着効率の高い、プレートアウト性に優れるエマルションを供給する。このことは以下の検討結果に基づくものである。
【0031】
すなわち、発明者らは、エマルションを鋼板に供給したとき、エマルションの付着効率を向上させる手段について鋭意検討した結果、エマルション平均粒径を増加させると、付着効率が大幅に向上することを見出した。図7に示すプレートアウト試験方法により、エマルションの平均粒径と付着効率の関係を調査した結果を図10に示すが、平均粒径の増加とともに付着効率が増加する。特に、平均粒径が20μm以上で、急激に付着効率が増加する。
【0032】
図11は、図4に示すスプレーヘッダーCより、平均粒径20μmのエマルション圧延油と、平均粒径9μmのエマルション圧延油を鋼板表面にスプレーしたときの、エマルション供給量と鋼板付着油量の関係を調査した結果である。このとき、基油としては牛脂を用い、油分濃度3.5%のエマルション圧延油とし、タンク内に設置された攪拌器の回転数によりエマルションの平均粒径を調整した。
【0033】
これによると、平均粒径20μmのエマルシヨン圧延油とすることにより、平均粒径9μmのエマルション圧延油よりも鋼板付着油量が多くなった。このことは、付着効率の高い平均粒径の大きいエマルション圧延油を用いることにより、少量のエマルション供給量でも高速圧延域での潤滑性を改善することができる。
【0034】
しかし、エマルションの粒径を大きくすると、乳化安定性が損なわれるため、循環式圧延油供給方式のエマルションとしては適さない。例えば、圧延により発生する摩耗粉や鋼板が持ち込む鉄粉などが循環系統クーラントに混入すると、平均粒径の大きなエマルションは容易に破壊されるため、乳化分散性が経時的に変化しやすい。それに伴い圧延の不安定化、鋼板表面の光沢性の変化などの発生が問題となる。
【0035】
そこで、平均粒径の大きいエマルションを潤滑用エマルションとして用いるには、循環式圧延油供給系統とは別に第2の圧延油供給系統を設け、圧延油原油、界面活性剤、および希釈水を新たに調合し、平均粒径の大きいエマルションとする必要がある。
【0036】
第3の発明は、循環式圧延油供給系統を用いた鋼板のタンデム圧延機による冷間圧延方法において、循環式圧延油供給系統とは別に第2の圧延油供給系統を設け、循環式圧延油供給系統よりも大きな粒径(例えば20μm)となるように調整した付着効率の高いエマルションを、ロールバイトより離れた上流スタンド側の位置で鋼板にスプレーし、その供給量を調整することにより、圧延中の先進率を目標先進率範囲内に制御し、そのことにより高速圧延時のチャタリング発生を防止する方法である。
【0037】
図17は、全5スタンド・タンデムミルにおいて、チャタリングの発生とNo.5スタンドの先進率の関係を示すものであるが、チャタリングの発生しない安定先進率範囲が存在することがわかる。先進率は、圧下率、張力等の圧延条件が同一である場合には、圧延潤滑状態を表す一つの指標といえる。1%以上の高い先進率領域で発生しているチャタリングは潤滑が不足することに起因するチャタリングであり、0%以下の低い先進率域で発生しているチャタリングは潤滑が過多となることに起因するチャタリングである。
【0040】
本発明者らは、クーラント供給量を調整して目標先進率に制御する方法において、クーラント供給量の変更に対し、先進率の変更範囲を大きく取れる方法について、鋭意検討した結果、次のような新たな知見を得た。
【0041】
1つは、クーラントヘッダーの取り付け位置を、ロールバイトから離れた上流スタンドにできるだけ近い位置とすることにより、クーラント供給量の変更による先進率の変更範囲を広く取れることを見出した。
【0042】
図18は、図4と同様の試験で、試験時のヘッダーの取り付け位置を示すものである。スプレーヘッダーAは循環式圧延油供給系統における一般的な潤滑用エマルションの供給ヘッダーであり、ロールバイト直近に設置されている。また、スプレーヘッダーB,Cは、ロールバイトより各々1.0m、3.5m離れた位置とした。なお、スタンド間距離は4.5mである。図19は、試験時のエマルション供給量と先進率の関係を示すが、スプレーヘッダーの取り付け位置を、ロールバイトより離し、上流スタンド側へ近づけるほど、クーラント供給量の変更による先進率の変更範囲が広くなっているのがわかる。図20は、このときの圧延材表面の鋼板付着油量の調査結果であるが、鋼板付着油量は先進率と対応し、スプレーヘッダーの取り付け位置をロールバイトより離し上流スタンド側へ近づけるほど多くなる。
【0043】
この理由は以下の通りである。すなわち、ロールバイトより離れた上流スタンド側で鋼板へエマルションをスプレーすることにより、スプレーされたエマルションが鋼板表面にプレートアウトするための転相時間を確保できるためプレートアウト量が増加する。このため、エマルション供給量を変更すると、摩擦係数が大きく変化する。これに伴い、先進率の変更範囲も広くなる。特に、高速圧延域においては、エマルションがプレートアウトするための時間が短くなるため、ヘッダー位置をロールバイトよりできるだけ上流スタンド側とすることは有効である。
【0044】
本発明において、ロールバイトより離れた上流スタンド側の位置にヘッダーを設置し、鋼板にスプレーするエマルション供給量を調整し、圧延中の先進率を目標範囲内に制御するとしたのは、かかる知見に基づくものである。
【0045】
さらに、鋭意検討した結果、循環式圧延油供給系統よりも平均粒径の大きいエマルションを用いると、さらに効果的であることが分かった。図21は、圧延油として牛脂を用い、カチオン系分散剤を界面活性剤として添加し、循環系統と同じ平均粒径10μmのエマルションとして使用する場合と、より平均粒径の大きい20μmのエマルションを使用した場合の、エマルション供給量と先進率の関係を示す。このときのスプレーヘッダーは、図18中のスプレーヘッダーCを用いた。また、エマルションの平均粒径は、界面活性剤の添加量および機械的撹拌条件の調整により行った。これによると、平均粒径20μmのエマルションの場合、供給するエマルションが少量であっても、先進率の変更範囲を大きく取れることがわかる。また、図22は圧延材表面の付着油量の測定結果であるが、先進率と対応しており、平均粒径20μmのエマルションを用いると付着油量が大きく増加する。
【0046】
23は、エマルション供給量を0〜100L/minの範囲で変更したときの、先進率の変更範囲とエマルション平均粒径との関係を示すものであるが、平均粒径の増加とともに先進率の変更範囲が増加し、特に、平均粒径が20μm以上で急激に先進率の変更範囲が拡大する。
【0047】
これは、エマルションの平均粒径が大きくなると、プレートアウト量が増加するため、エマルションの供給量の変更に対する、摩擦係数の変化が大きくなり、これに伴い、先進率の変化も大きくなるためである。
【0048】
以上に示したように、循環式圧延油供給系統を備えた冷間タンデム圧延機において、本発明によるクーラント供給方法を用いることにより、クーラント供給量の変更による先進率の変更範囲を大きくとれる。このため、高速圧延域において、先進率を指標としたクーラント供給量を変更することにより、潤滑の不足に起因したチャタリングおよび潤滑の過多となることに起因するチャタリングのいずれも発生しない目標先進率に制御できるため、チャタリングを防止できる。
【0049】
【本発明の実施の形態】
(実施の形態1)図1は、本第1発明方法を実施する設備の一例であり、全5スタンドのタンデムミルの第4スタンドおよび第5スタンドに適用した場合である。第4、5スタンドに適用したのは、後段スタンドほど圧延速度が速く、しかも、板厚が薄くなるため、圧延荷重が高くなり、潤滑条件として厳しくなり、ヒートスクラッチの発生頻度が高くなるためである。図1は、No.1〜No.5(#1STD〜#5STD)のスタンドを有するタンデム圧延機の配置例を示し、1はワークロール、2はバックアップロール、3はストリップ、4aは従来の潤滑用クーラントヘッダー、4bは冷却用クーラントヘッダー、5は、本発明によるNo.4,5スタンド入側の潤滑用クーラントヘッダーである。潤滑用クーラントヘッダー5の位置は、ロールバイトからの距離Lが、式(1)を満足し、ロールバイトよりできるだけ離れた位置とし、鋼板表面に供給されたエマルションがプレートアウトするための転相時間を最大限に確保する。最小転相時間tmin は、図7に示すプレートアウト試験により求める。牛脂系エマルションの場合、図8よりtminは、0.12secとなる。また、最高圧延速度が2000mpmのとき、No.4、5スタンドの圧下率を各々35%、30%とすると、各スタンドの入側ストリップ速度は、910mpm、1400mpmとなる。よってロールバイトよりヘッダー取り付け位置までの距離Lは、No.4スタンドで1.8m以上、No.5スタンドで2.8m以上必要となる。ここでは、前スタンド出側のロール・ストリップ冷却用クーラントヘッダー4bの影響を受ける領域の直後(前スタンド出側より1.0m)とし、入側ロールバイトより3.5mの位置に設置した。なお、スタンド間は4.5mである。
【0050】
(実施の形態2)図2は、本第2発明方法を実施する設備の一例であり、全5スタンドのタンデムミルの第4スタンドおよび第5スタンドに適用した場合である。なお、スプレーヘッダーの配置は、上記実施形態1で示した図1と同様であり、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0051】
温水、圧延油原油、界面活性剤は、各タンク7、8、9より供給ポンプ10a、10b、10cを経由し、所定の油分濃度、界面活性剤の対油濃度となるように流量調整弁11a、11b、11cで補給量を調整され、エマルション貯蔵タンク6へ供給される。タンク内のエマルション濃度、界面活性剤の対油濃度、およびエマルション温度は、循環式圧延油供給系統と同一とする。タンク内の油分の平均粒径は、撹拌器12の回転数の調整により循環式圧延油供給系統よりも平均粒径の大きなエマルションとする。例えば、基油を牛脂とし、乳化分散剤にカチオン系分散型の界面活性剤を対油濃度0.6%添加する場合、循環式圧延油供結系統のエマルションの平均粒径は約9〜10μmとなる.これに対し、タンク6内の平均粒径は30〜50μmとなるように調整する。
【0052】
この平均粒径の大きいエマルション圧延油は、ポンプ13により、圧延油供給ライン14を経由してスプレーヘッダー5よりストリップの上下面に供給される。この時のエマルション粒径は、ポンプ13およびスプレーヘッダー5のノズル部にてせん断を受け、平均粒径20〜40μmとなる。
【0053】
鋼板へのスプレー後、鋼板にプレートアウトしないエマルションは、回収オイルパン15にて、冷却用の循環系エマルションとともに回収され、戻りライン16を経由して、循環式圧延油供給タンク17内に混入する。混入後、タンク内の撹拌器18により撹拌され、循環系エマルションと同じ粒径まで細分化され、タイトなエマルションとなる。
【0054】
(実施の形態3)図16は、本第3発明方法を実施する設備の一例であり、全5スタンド・タンデム圧延機に適用した場合である。調査の結果、No.5スタンドをトリガー・スタンドとしたチャタリングの発生頻度が高く、本第3発明のNo.5スタンドへの適用が効果的であることが確認された。この結果に基づき、図16には、No.1〜4スタンドの潤滑を循環式の第1の圧延油供給系統により行い、No.5スタンドの潤滑を本発明による第2の圧延油供給系統により行う場合について示す。なお、No.1〜5スタンドのロール冷却は、各スタンド出側にて循環系統のエマルションをロールへスプレーして行う。
【0055】
温水、圧延油原油、界面活性剤は各タンク7,8,9より供給ポンプ10a,10b,10cを経由しエマルション貯蔵タンク6へ補給される。この時の補給量は、流量制御弁11a,11b,11cの弁開度により調整される。タンク内の撹拌器12の撹拌条件および界面活性剤の添加量を調整し、平均粒径の大きい(例えば20μm以上)エマルションを作成する。なお、エマルション濃度は、循環式の第1の圧延油供給系統のエマルションと同じかそれ以上とする。
【0056】
【0054】
この第2の圧延油供給系統のエマルション液は、ポンプ13により供給配管14を経由して、ヘッダー5aおよびヘッダー5bより鋼板表面へ供給される。ヘッダー5a,5bは、できるだけNo.4スタンドに近い位置に設置するのが望ましい。ここでは、No.4スタンド出側のロール冷却の影響範囲の直後(No.4スタンドより1m)のロールバイトより、3.5m離れた位置に設置した。
【0057】
鋼板へスプレーされるエマルション流量は、バルブ30の開度により調整され、その弁開度は制御装置31により、No.5スタンドの先進率がチャタリングの発生しない安定範囲内となるように設定される。
【0058】
以下に、弁開度の設定方法を示す。
【0059】
(1)パルスジェネレータ32より計測されるワークロールの回転速度とスタンド出側の板速度計33より計測される板速度を式(2)に代入し、No.5スタンドの圧延中の先進率を求める。
【0060】
【数1】
Figure 0003815425
【0061】
ただし、fs(%):先進率、Vs(m/min):板速度、D(m):ワークロール直径、n(rpm):ロール回転速度(2)目標先進率との偏差を式(3)より計算する。
【0062】
【数2】
Figure 0003815425
【0063】
ただし、Δfs(%):目標先進率との偏差、fs(%):圧延中の先進率、fs(%):目標先進率
目標先進率は、図17に示すような、チャタリングの発生しない安定な先進率範囲の調査を元にして決定する。
【0064】
(3)式(4)より第2の圧延油供給系統のエマルション供給量の変更量ΔQを計算する。
【0065】
【数3】
Figure 0003815425
【0066】
ただし、ΔQ(L/min)はエマルション供給量の変更量、Δfs(%)は圧延中の先進率と目標先進率との偏差、∂fs/∂μ(%/−)は、先進率fsに対する摩擦係数μの影響係数、∂μ/∂Q(−/L/min)は、摩擦係数μに対するエマルション供給量Qの影響係数、である。
【0067】
∂fs/∂μは、例えば、Bland&Fordの先進率式の摩擦係数μに関する導関数式(5)で与える。
【0068】
【数4】
Figure 0003815425
【0069】
【数5】
Figure 0003815425
【0070】
ただし、μは圧延中の摩擦係数、km(kg/mm2 )は圧延材の平均変形抵抗、H(mm)、h(mm)は入・出側板厚、σb(kg/mm2 )、σf(kg/mm2 )は圧延中の前・後方ユニット張力、R′(mm)はロール偏平半径を表す。
【0071】
なお、圧延中の平均変形抵抗kmおよび摩擦係数μは、Hillの圧延荷重式(7)およびBland&Fordの先進率式(8)に圧延中の測定荷重P、fsを代入し、両式を連立させて求める。
【0072】
【数6】
Figure 0003815425
【0073】
【数7】
Figure 0003815425
【0074】
ただし、W(mm)は板幅、P(ton)は圧延中の圧延荷重、fs(%)は圧延中の先進率、を表す。
【0075】
また、∂μ/∂Qは、圧延実験および操業上採取されるデータをもとに決定する。以下に、その一例を示す。
【0076】
エマルション供給量とプレーアウト油膜厚PΦの関係は、プレートアウト試験による調査の結果、式(9)で表される。
【0077】
【数8】
Figure 0003815425
【0078】
ただし、PΦはプレートアウト油膜厚(μm)、cはエマルション濃度(%)、fはエマルション付着効率(%)、Qはエマルション供給量(L/min)、Wはスプレー幅(m)、Vsはスプレー部の鋼板速度(m/min)を表す。
【0079】
また、摩擦係数μは、プレートアウト油膜厚PΦとワークロールの表面粗さΛの比の関数として式(10)で表される。
【0080】
【数9】
Figure 0003815425
ただし、n、mは定数、Λはワークロールの表面粗さ(μm)である。
【0081】
式(9)を式(10)に代入し、エマルション供給量Qの導関数を計算すると、式(11)が得られる。
【0082】
【数10】
Figure 0003815425
【0083】
ただし、Q(L/min)はエマルション供給量、c(%)はエマルション濃度、f(%)はエマルション付着効率、w(m)はスプレー幅、Vs(m/min)はスプレー部の鋼板速度、Λ(μm)はワークロールの表面粗さ、a,m,nは定数。
【0084】
(4)ΔQに応じて流量制御弁30の弁開度を変更し流量制御を行う。
【0085】
一方、循環式圧延油供給系統のエマルションは、タンク17よりポンプ19、配管20を経由し、潤滑油としてヘッダー4a,4aよりロールバイト入側へ供給される。また、冷却としてヘッダー4b,4bよりスタンド出側ロールへ供給される。その後、オイルパン15により回収され、配管16を経由してタンク17へ戻る。
【0086】
【実施例】
(実施例1)図3は、全5スタンドの冷間タンデム圧延機の第4,5スタンドに本発明を適用した実施形態1(図1)の、特に#4、#5スタンドの潤滑用クーラントヘッダーの配置に関して詳細に示したものである。このようなヘッダー配置の5スタンド・タンデムミルを用い、母材厚1.8mm、板幅900mmの硬質ブリキ原板を仕上げ厚0.183mmまで冷間圧延を行なった際の、使用ヘッダー、エマルション濃度およびエマルション供給量の組み合わせを表1に示す。なお、圧延油として牛脂系エマルション(40℃で基油粘度40cSt、エマルション温度60℃)を用いた。図3中、1は本発明による潤滑用クーラントヘッダー(ヘッダーB)を示し、2は従来の潤滑用クーラントヘッダー(ヘッダーA)を示し、3は従来技術(特公昭59-24858号)の別系統の潤滑用クーラントヘッダーを示す。
【0087】
【表1】
Figure 0003815425
【0088】
以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を行い、鋼板付着油量および第5スタンドの摩擦係数を調査した。図12に圧延速度と鋼板付着油量の関係を、そして、図13に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の関係を、本発明と従来方式1および従来方式2を比較して示した。なお、鋼板付着油量は、鋼板表面の油分をヘキサン等の有機溶剤にて抽出し、抽出油分量を測定する方法(溶剤抽出法)により行なった。
【0089】
従来方式1では、800mpm以上の速度域で鋼板付着量が表裏面とも減少した。また、従来方式2では、1000mpmでは、従来方式1よりも裏面のみ鋼板付着量が増加しているものの、1200mpm以上の高速域では付着油量が急激に低下した。これに対応して、従来方式1、従来方式2の場合の摩擦係数は、高速圧延域で上昇し、それぞれ速度1200mpm、1500mpmにおいて潤滑不足により発生するチャタリングが発生した。
【0090】
一方、本発明では、表裏面とも1200mpm以上の高速域でも安定した鋼板付着油量が得られた。その結果、第5スタンドの摩擦係数の上昇が抑制され、高速域まで安定した摩擦条件が得られている。特に、高速域での摩擦係数の上昇がほとんど生じることがなくなり、潤滑不足により発生するチャタリングが発生しなくなった。
【0091】
(実施例2)実施例1と同じ5スタンド・タンデムミルを用い、母材厚2.3mm、板幅900mmの軟質ブリキ原板を仕上げ厚0.183mmまで冷間圧延を行なった。エマルション性状および供給量は、表1と同じである。なお、本実施例の対象圧延材は、実施例1の対象圧延材よりも軟質であるが冷圧率が高く、従来の循環式圧延油供給系統により圧延すると、特に圧延速度の高い第5スタンドにおいてヒートスクラッチ疵の発生頻度が高かった。
【0092】
以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を行い、鋼板付着油量および第5スタンドの摩擦係数を調査した。図14に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の関係を、図15に、圧延速度と第5スタンド出側の鋼板温度の関係をヒートスクラッチ疵の発生状況も含めて示す。いずれも、本発明と従来方式1および従来方式2を比較して示した。従来方式1、従来方式2の摩擦係数は、高速圧延域で上昇した。第5スタンド出側の鋼板温度は、従来方式1、従来方式2の場合、速度とともに温度上昇が大きく、従来方式1では1500mpm、従来方式2では1700mpm以上で170℃を越え、ヒートスクラッチ疵が発生した。
【0093】
これに対し、本発明の場合、第5スタンドの摩擦係数の上昇が抑制され、高速域まで安定した摩擦条件が得られている。特に、高速域での摩擦係数の上昇がほとんど生じなくなった。このように本発明によると高速圧延域での摩擦係数の上昇を抑制できるため、摩擦発熱が低減し、結果として鋼板温度が低下するため、ヒートスクラッチ疵が発生しなくなった。
【0094】
(実施例3)全5スタンドのタンデム圧延機のNo.4、5スタンドに本第2発明を適用した実施形態2(図2)を用い、実施例1と同じ母材厚1.8mm、板幅900mmの硬質ブリキ原板を仕上げ厚0.183mmまで冷間圧延を行った。圧延油に牛脂系エマルション(40℃で基油粘度40cSt、エマルション温度60℃)を用い、エマルション濃度、平均粒径及び供給量は表2に示すとおりである。これは本第1発明の実施例1と比較して、エマルション濃度は同一、エマルション平均粒径は大きく、そしてエマルション供給量は少ない条件である。
【0095】
以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を行い、鋼板付着油量及び第5スタンドの摩擦係数を調査した。図26に圧延速度と鋼板付着油量の関係を、そして、図27に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の関係を示す。本第3発明によると、本第1発明による実施例1と同様に、表裏面とも1200mpm以上の高速域でも安定した鋼板付着油量が得られた。その結果、第5スタンドの摩擦係数の上昇が抑制され、高速域まで安定した摩擦条件が得られている。特に、高速域での摩擦係数の上昇がほとんど生じることがなくなり、潤滑不足により発生するチャタリングが発生しなくなった。
【0096】
【表2】
Figure 0003815425
【0097】
(実施例4)本発明の効果を確認するために行った試験結果と、従来の循環式圧延油供給系統を用いた場合の比較を図24に示す。なお圧延条件およびエマルション条件は以下の通り。
【0098】
〈圧延条件〉・圧延材鋼種〜ブリキ材サイズ〜母材厚1.8mm、仕上厚0.183mm、板幅900mm・ワークロール:Φ600mm・No.5スタンド圧下率30%
【表3】
Figure 0003815425
【0099】
24(a)は圧延中のNo.5スタンドの先進率と圧延速度の関係、図24(b)は本発明によるエマルション供給量と圧延速度の関係、図24(c)は従来技術によるエマルション供給量と圧延速度の関係を示す。本発明を用いた場合のエマルション供給量は、1000mpmまでが90L/minと低く、1000mpm以降は速度とともに増加している。このような供給量制御を行うことにより、圧延中の先進率は目標先進率(1000mpm以上において、0.3〜0.4%)に制御されるため、安定圧延が可能となり、チャタリング未発生のまま2000mpmまで加速できた。一方、従来の循環式圧延油供給系統を用いた場合、1000mpm以降、速度とともに先進率が上昇しはじめた。これに対し、エマルション供給量を2000L/minから340L/minまで増加させたが、1500mpmにて安定先進率範囲を外れチャタリングが発生した。このため、1500mpm以上の加速は不可能であった。
【0100】
以上の結果より、本発明を用いることにより、高速域において、安定な先進率範囲に制御でき、適正な潤滑状態を確認できるためチャタリングを防止できることがわかる。
【0101】
本発明を用い、仕上厚0.21mm以下の硬質薄物ブリキ材を圧延した場合の圧延速度の分布を、従来の循環式圧延油供給系統の場合と比較して図25に示す。本発明を用いることにより、高速域で発生するチャタリングの発生頻度が低減するため、平均圧延速度が1500mpmから1900mpmに向上できた。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように本第1発明および本第2発明によれば、循環式圧延油供給系統を用いた鋼板の冷間圧延方法において、10%以上の高濃度なエマルションの直接供給方式を用いることなく、高速圧延域での鋼板付着油量を大輻に向上できる。これにより、高速圧延時に発生していた潤滑不足が解消され、ヒートスクラッチの発生を防止でき、圧延速度が向上するため、生産性が大幅に向上する。また、ロールの損傷を防止できるため、ロール寿命の向上によるロール原単位の向上等の付帯効果も期待できる。
【0103】
本第3発明によれば、第2の圧延油供給系統から平均粒径の大きいエマルションを、プレートアウトのための転相時間を最大限に確保できる鋼板位置に供給し、その供給量を調整することにより、高速圧延域においても先進率を広範囲に制御可能となり、チャタリングの発生しない目標先進率への制御が可能となる。その結果、チャタリングの発生を未然に防止できるため、高速圧延が可能となり生産性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるタンデム圧延機への適用例を示す図。
【図2】本発明の第2実施形態に係わるタンデム圧延機への適用例を示す図。
【図3】No.4,5スタンドの潤滑用クーラントヘッダーの配置図。
【図4】試験時のヘッダー取付位置を示す図。
【図5】鋼板付着油量の測定結果を示す図。
【図6】プレートアウト層の生成過程の模式図。
【図7】プレートアウト試験方法を示す図。
【図8】転相時間と付着効率の関係図。
【図9】鋼板付着油量と圧延速度の関係図。
【図10】エマルション平均粒径と付着効率の関係図。
【図11】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係図。
【図12】本発明と従来方式の鋼板付着油量の比較を示す図。
【図13】本発明と従来方式の摩擦係数の比較を示す図。
【図14】本発明と従来方式の第5スタンドの摩擦係数の比較を示す図。
【図15】本発明と従来方式の第5スタンド出側の鋼板温度の比較を示す図。
【図16】請求項3の発明方法の適用例を示す図。
【図17】チャタリング発生と先進率の関係を示す図。
【図18】試験時のヘッダー取付位置を示す図。
【図19】エマルション供給量と先進率の関係を示す図。
【図20】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係を示す図。
【図21】エマルション供給量と先進率の関係を示す図。
【図22】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係を示す図。
【図23】エマルション平均粒径と先進率の変更範囲の関係を示す図。
【図24】請求項3の発明の効果の説明図で、(a)破線新率と圧延速度の関係を示し、(b)は本発明による別圧延油強休憩等のエマルション流量を示し、(c)は従来技術のエマルション流量を示す。
【図25】圧延速度の分布の比較を示す図。
【図26】圧延速度と鋼板油付着量との関係を示す図で、(a )は表面、(b) は裏面の鋼板油付着量を示す。
【図27】圧延速度とNo.5スタンドの摩擦係数の関係を示す図。
【符号の説明】
1...ワークロール、
2...バックアップロール、
3...ストリップ、
4a...潤滑用クーラントヘッダ、
4b...冷却用クーラントヘッダ、
5...潤滑用クーラントヘッダ、
6...平均粒径の大きいエマルションの貯蔵タンク、
7...温水タンク、
8...圧延油原油タンク、
9...界面活性剤タンク、
10a,10b,10c...ポンプ、
11a,11b,11c...バルブ、
12...アジテータ、
13...エマルション供給用ポンプ、
14...圧延油供給ライン、
15...回収オイルパン、
16...戻り配管、
17...循環式の第1の圧延油供給タンク、
18...アジテータ、
19...エマルション供給用ポンプ、
20...圧延油供給ライン、
30...バルブ、
31...制御装置、
32...パルスジェネレータ、
33...スタンド出側の板速度計。

Claims (1)

  1. 循環式圧延油供給系統を用いて1200 mpm 以上の高速圧延を行う鋼板の冷間圧延方法において、ロールバイトより離れた上流スタンド側の、下式を満足する位置において、鋼板の上面および下面に直接エマルションをスプレーして、鋼板の上下両面にプレートアウト層を形成することを特徴とする冷間圧延方法。
    L≧Vin・tmin(ただし、Lはロールバイトよりスプレーヘッダーの取り付け位置(m)、Vinは入側ストリップ速度(m/sec)、t min は必要な最小転相時間(sec)を表す。)
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