JP3796809B2 - フェノール系配糖体、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、β−1,3オリゴ糖を有する新規なフェノール系配糖体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール系配糖体は、優れた生理活性を持ち且つ低毒性であること、および該配糖体に含まれるフェノール類部分が殺菌・防かび作用を示すことから、薬品などとしての有用性が以前から認識され、また、該配糖体を糖関連酵素の基質、活性測定・検出試薬として使用することも期待されていた。
【0003】
例えば、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド)は自然界に存在し、古くから利尿作用を有することが知られており、更に、最近になってメラニン色素生成阻害作用もあることが明らかにされ、美白剤(化粧品)としても使用されるようになった。
【0004】
カテコール、レゾルシノールのグルコシル配糖体などは、皮膚色素沈着症の予防および治療に有効で、皮膚外用剤の成分として利用できること(特開平4−1115号公報)、頭皮のフケの発生を防止し、頭髪に潤いと、しなやかさを与える顕著な作用効果を有し、頭髪化粧料の成分として利用できること(特開平4−5218号公報)が知られている。
【0005】
また例えばp−ニトロフェノールや2−クロロ−4−ニトロフェノール等の、マルトオリゴ糖配糖体あるいはセロオリゴ糖配糖体については、各々アミラーゼ、セルラーゼの基質や活性測定・検出試薬として用いられてきた。
【0006】
ハイドロキノン配糖体、カテコール配糖体、レゾルシノール配糖体などが優れた生理活性を有することは前述した通りであるが、その活性はハイドロキノン、カテコール、レゾルシノールなど非糖部分に由来するものである。
【0007】
しかし、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール自身は毒性の強い物質であるため、安価であっても、そのまま用いることはできず、糖を付加し低毒化した配糖体の状態で使用している。
【0008】
しかし、これら従来の配糖体は、糖を僅か1残基しか持たない単糖配糖体であり、使用時に生体酵素または皮膚常在菌の酵素など(例えばグルコシダーゼ)によって分解され、毒性物質が遊離してくる可能性が危惧される。このことは、安全性における大きな問題であり、これらフェノール系配糖体の安定化が切望されている。
【0009】
また、p−ニトロフェノールや2−クロロ−4−ニトロフェノールは、発色性物質であることから、これらの配糖体を用いる簡便な酵素活性測定・検出法が提供されてきた。しかし、これまで知られていたのは、アミラーゼあるいはセルラーゼなどの活性を測定する為のp−ニトロフェノールや2−クロロ−4−ニトロフェノールのマルトオリゴ糖あるいはセロオリゴ糖配糖体等であった。
【0010】
またビール製造工程で生じる澱を分解する目的で使用され、また植物の病原体などに対する抵抗性の指標となると期待されるβ−1,3グルカナーゼに関しては、その活性測定・検出に使用できる配糖体はこれまで存在せず、その活性の高精度、且つ簡便な測定を可能にするフェノール系配糖体が切望されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、医薬品やβ−1,3グルカナーゼ活性の検査薬や測定試薬として有用な、新規なフェノール系配糖体、及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フェノール系グルコシル配糖体とβ−1,3グリコシル糖化合物とをβ−1,3グルカナーゼ活性を有する酵素剤の存在下で反応させることにより容易に新規フェノール系配糖体を製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記の一般式(I)
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、Xは水素原子、水酸基又はニトロ基を、nは0〜9の整数を表わす。)で示されるフェノール系配糖体である。
また本発明は、下記の一般式(II)
【0016】
【化6】
【0017】
又は、一般式(III)
【0018】
【化7】
【0019】
(式中、nは0〜9の整数を表わす。)
で示されるフェノール系配糖体を含む。
【0020】
本発明は、フェノール系グルコシル配糖体(A)と、β−1,3グリコシル糖化合物(B)とを、β−1,3グルカナーゼ活性を有する酵素剤(C)の存在下で反応させることを特徴とするフェノール系配糖体の製造方法であり、β−1,3グリコシル糖化合物(B)が、特に、β−1,3グルコシル多糖、又はβ−1,3グルコシルオリゴ糖であるフェノール系配糖体の製造方法や、
【0021】
β−1,3グルカナーゼ活性を有する酵素剤(C)が、特に、ストレプトマイセスspDIC−108菌株(微工研条寄第253号)から得られる糖転移酵素SGTase、キタラーゼ又はドリセラーゼであることを特徴とする、フェノール系配糖体の製造方法や、フェノール系グルコシル配糖体(A)が、特に、下記の一般式(IV)
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、Xは水素原子、水酸基又はニトロ基を表わす。)
で示される配糖体であることを特徴とする、フェノール系配糖体の製造方法や、フェノール系グルコシル配糖体(A)が、特に、ハイドロキノン又はp−ニトロフェノールのグルコシル配糖体であることを特徴とする、フェノール系配糖体の製造方法を含むものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるフェノール系グルコシル配糖体(A)としては、フェニルグルコシド、ヒドロキシフェニルグルコシド、ニトロフェニルグルコシド、2−クロロ−4−ニトロフェニルグルコシドなどが例示され、好ましくは、ハイドロキノングルコシド、p−ニトロフェニルグルコシドが挙げられる。
【0025】
β−1,3グリコシル糖化合物(B)としては、カードラン、パキマン、パラミロン、シゾフィラン、ラミナラン、酵母細胞壁、ラミナリオリゴ糖などが例示され、好ましくは、カードラン、ラミナリオリゴ糖が挙げられる。
【0026】
本発明の製造法に使用するβ−1,3グルカナーゼ活性を有する酵素剤(C)は、それ自体公知であるが、該酵素剤がフェノール系グルコシル配糖体に対して糖転移活性を示すことは知られていなかった。
【0027】
酵素剤(C)としては、ストレプトマイセスspDIC−108菌株(微工研条寄第253号)から得られる糖転移酵素であるSGTase、キタラーゼ(和光純薬工業株式会社製)、ドリセラーゼ(協和発酵工業株式会社製)が例示される。これらの酵素剤(C)は、そのまま用いてもよいし、固定化あるいは修飾酵素として用いてもよい。
【0028】
ストレプトマイセスspDIC−108菌株(微工研条寄第253号)から得られるSGTaseの製造方法、精製方法、特徴に関しては、特公平4−37719号公報、及び特願平7−10602号公報に記載されているが、以下にその概略を示す。
【0029】
SGTaseは、ストレプトマイセスspDIC−108菌株を振盪培養、通気培養等で、pH5.0〜8.0、培養温度20〜50℃で1〜6日培養した培養液中に生産される。その作用は、β−1,3グリコシル糖化合物(例えばカードラン、ラミナラン、パキマン、酵母細胞壁など)及びその部分分解物を加水分解し、ビオース、トリオースを主成分とするオリゴ糖を生成する。
【0030】
更に、その際、適当な受容体(例えば、多糖、オリゴ糖、配糖体など)が存在すると、生成したオリゴ糖をβ−1,3グリコシド結合を介して受容体に転移する。その作用温度は10〜70℃、至適温度は40〜60℃であり、作用pHは4.0〜8.5、至適pHは5.0〜7.0である。またSDS−PAGEから求められる糖の分子量は約3.4万である。
【0031】
前述の酵素剤(C)は、β−1,3グリコシル糖化合物(B)を加水分解し、種々のフェノール系グルコシル配糖体(A)に糖転移させ、これによってオリゴ糖を糖鎖に持つフェノール系配糖体が得られる。
【0032】
本発明によるフェノール系配糖体の製造方法は、より具体的には、以下に示すような操作で行なわれる。反応容器、例えば三角フラスコやねじ口ビン中で、フェノール系グルコシル配糖体(A)と、β−1,3グリコシル糖化合物(B)とを反応溶媒に混和させ、酵素剤(C)を作用させる。
【0033】
フェノール系グルコシル配糖体(A)は、反応溶媒に対して50重量/容量%以下、好ましくは0.1〜30重量/容量%混和させる。β−1,3グリコシル糖化合物(B)は、反応溶媒に対して50重量/容量%以下、好ましくは0.1〜30重量/容量%混和させる。
【0034】
酵素剤(C)は、反応溶媒に対して50重量/容量%以下、好ましくは0.1〜30重量/容量%混和させる。これらの原料は、必ずしも反応溶媒に完全溶解している必要はないが、溶解している方が好ましい。反応溶媒は、水もしくは緩衝液でよいが、これに水溶性有機溶媒を加えてもよい。
【0035】
水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1〜3のアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜3のアルコール、アセトニトリルが挙げられる。
【0036】
反応溶媒に占める水溶性有機溶媒の割合は、0〜90容量/容量%、好ましくは0〜80容量/容量%である。緩衝液の種類については特に限定されるものではないが、例えば酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス緩衝液などを用いることができ、好ましくは酢酸緩衝液である。緩衝液のpHは3〜8の範囲内に設定できるが、用いる酵素剤の至適pHに調整するのが望ましい。
【0037】
上記反応液を10〜70℃、好ましくは40〜60℃の温度条件下で適当時間振盪する。通常1〜2日間で反応の進行は止まる。反応終了後、目的産物であるフェノール系配糖体を精製するには、一般的な酵素の精製方法を適宜利用して行なうことができ、特に限定されない。例えば、順相クロマトグラフィー(例えば固定相がAmide−80(東ソー株式会社製)で移動相がアセトニトリル水溶液)などにより反応液から分取することが可能である。
【0038】
本発明による製造方法の生成物の1つとして得られる、下記の一般式(I)
【0039】
【化9】
【0040】
(式中、Xは水素原子、水酸基又はニトロ基、nは0〜9の整数を表わす。)
で示される配糖体の内、特に下記の一般式(II)
【化10】
【0041】
(式中、nは0〜9の整数を表わす。)
で示されるフェノール系配糖体は、グルコシダーゼなどに対する安定性が高いため、毒性物質が遊離する危険性が低い点で、例えば、化粧品配合剤としても従来のフェノール系配糖体より優れる。また下記の一般式(III)
【0042】
【化11】
【0043】
(式中、nは0〜9の整数を表わす。)
で示されるフェノール系配糖体は、新規なβ−1,3グルカナーゼ基質、活性測定・検出試薬に有用である。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1) フェノール系グルコシル配糖体としてアルブチンを用いたフェノール系配糖体の製造例1
1重量/容量%のアルブチン、1重量/容量%のラミナリペンタオース、80容量/容量%のエタノールを含む20mMの酢酸緩衝液pH5.5に、0.2重量/容量%のSGTaseを加え、この混合液を55℃で振盪することにより反応させた。
【0046】
2時間後、反応液の高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略す)分析で、配糖体の生成を確認した(図1)。HPLC分析には、東ソー株式会社製Amide−80カラムを用い、カラム温度40℃、溶離液73容量/容量%アセトニトリル水溶液、流速0.7ml/min、検出UV280nmとした。
【0047】
検出されたピークの内、図1中の実線矢印で示したピークを分取し、これをNMRにより、構造解析した(図6)。以下にNMRデータを示す。
【0048】
1H−NMR(ppm,プロトン数,形状,結合定数):
7.06,2H,d(ハイドロキノン部分)、6.87,2H,d、4.99,1H,d,J=7.7Hz(還元末端グルコースの1位)、カップリング定数より、ハイドロキノンと糖鎖の結合はβ結合である。また、1H積分比より、ハイドロキノンの水酸基のうち一方のみが糖鎖と結合していることが分かる。
【0049】
13C−NMR:
103.8〜105.4ppmに4C分のピークが存在することから糖鎖はグルコース4残基であることが判る。また還元末端グルコース1位のピークのケミカルシフトが103.8ppmであることからもハイドロキノンと糖鎖の結合がβ結合であることが確認できた。86ppm付近のピークは、グルコース間の結合がβ−1,3結合であることを示す。
【0050】
以上のことから該化合物を、グルコース4残基の全てが、β−1,3結合を介してなるハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシドと同定した。
【0051】
(実施例2) フェノール系グルコシル配糖体としてアルブチンを用いたフェノール系配糖体の製造例2
1重量/容量%のアルブチン、1重量/容量%のカードランを含む20mMの酢酸緩衝液pH5.0に、0.2重量/容量%のSGTaseを加え、この混合液を50℃で振盪することにより反応させた。2時間後、反応液をHPLC分析に付し、配糖体の生成を確認した(図2)。
【0052】
HPLC分析には、昭和電工株式会社製NH2Pカラムを用い、カラム温度40℃、溶離液73容量/容量%アセトニトリル水溶液、流速0.7ml/min、検出UV280nmとした。その結果、ハイドロキノン−β−ラミナリビオシドをはじめとするフェノール系配糖体の生成が認められた。
【0053】
(実施例3) フェノール系グルコシル配糖体としてp−ニトロフェニル−β−グルコシドを用いたフェノール系配糖体の製造例3
1重量/容量%のp−ニトロフェニル−β−グルコシド、1重量/容量%のラミナリペンタオース、20容量/容量%のエタノールを含む20mMの酢酸緩衝液pH5.5に、0.2重量/容量%のSGTaseを加え、この混合液を55℃で振盪することにより反応させた。
【0054】
20時間後、実施例1と同様に、反応液をHPLC分析し、配糖体の生成を確認した(図3)。図3中の実線矢印で示したピークを分取し、NMRで解析した結果、生成物をp−ニトロフェニル−β−ラミナリテトラオシドと同定した(図7)。また、図3中の破線矢印で示したピークを分取し、NMRで解析した。
【0055】
1H−NMR(ppm,プロトン数,形状):
8.22,2H,d、7.24,2H,d、p−ニトロフェノール部分の存在を示す。5.24,1H,d(グルコース残基1の1位)、4.51,1H,d(グルコース残基2の1位)、4.53,1H,d(グルコース残基3の1位)、4.36,1H,d(グルコース残基4の1位)、3.0〜4.8(グルコース残基1〜4の2〜6位)。但し、ここでは、アグリコンに近い方から順にグルコース残基1〜4と表記した。また1H積分比より、p−ニトロフェノール1分子あたりグルコース4分子が結合していることが分かる。
【0056】
13C−NMR:
86ppm付近のピークは、グルコース間の結合がβ−1,3結合であることを示す。99ppm付近のピークは、p−ニトロフェノールと糖鎖の結合がβ結合であることを示す。以上のことから、該化合物をp−ニトロフェニル−β−ラミナリヘプタオシドと同定した。
【0057】
(実施例4)
フェノール系グルコシル配糖体としてp−ニトロフェニル−α−グルコシドを用いたフェノール系配糖体の製造例1
1重量/容量%のp−ニトロフェニル−α−グルコシド、4重量/容量%のラミナリペンタオースを含む20mMの酢酸緩衝液pH5.0に1重量/容量%のキタラーゼを加え、この混合液を50℃で振盪することにより反応させた。2時間後、反応液を実施例2と同様にHPLC分析に付し、配糖体の生成を確認した。HPLC分析結果を図4に示す。
【0058】
(実施例5)
フェノール系グルコシル配糖体としてp−ニトロフェニル−α−グルコシドを用いたフェノール系配糖体の製造例2
1重量/容量%のp−ニトロフェニル−α−グルコシド、4重量/容量%のラミナリペンタオースを含む20mMの酢酸緩衝液pH4.5に、1重量/容量%のドリセラーゼを加え、この混合液を50℃で振盪することにより反応させた。2時間後、反応液を実施例2と同様にHPLC分析に付し、配糖体の生成を確認した。HPLC分析結果を図5に示す。
【0059】
(実施例6)ハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシドとアルブチンのβ−グルコシダーゼに対する安定性比較試験
37mMのハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシドあるいはアルブチンを含む5mlの20mMの酢酸緩衝液pH5に、0.5mgのβ−グルコシダーゼ(アーモンド由来)を加え、50℃で振盪しながら反応させた。
【0060】
経時的に反応液を一部採取し、HPLCによる分析で毒性物質であるハイドロキノンの遊離率を比較した(図8)。その結果、アルブチンからは短時間で多量のハイドロキノンが遊離してくるのに対し、ハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシドからの遊離量は長時間後も少なく、1時間反応の時点でアルブチンの約1/70、2時間反応の時点ではアルブチンの約1/17に抑えられていることが分かった。これから、ハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシドのβ−グルコシダーゼに対する安定性は、アルブチンに比し飛躍的に向上していることが確認された。
【0061】
(実施例7) p−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシドによる酵素活性測定・検出能試験
5.7mgのp−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシドと0.44mgの塩化カルシウムとを含む150mMの緩衝液3mlに各種酵素を1u(ユニット)添加し、40℃で60分間反応させた。反応中、経時的に415nmにおける吸光度を測定し、p−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシドのβ−1,3グルカナーゼ活性測定・検出能を検証した。
【0062】
用いた酵素と緩衝液の組み合わせは、β-1,3グルカナーゼ(Helix pomatia由来)と酢酸緩衝液(pH5.0)、α−アミラーゼ(Bacillus licheniformis由来)とHEPES−NaOH(pH6.9)、セルラーゼ(ウスバタケ由来)と酢酸緩衝液(pH4.5)、β−グルコシダーゼ(アーモンド由来)と酢酸緩衝液(pH5.0)であった。
【0063】
その結果、p−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシドは、β−1,3グルカナーゼの作用を受けて発色し(415nmにおける吸光度が増加する)、該酵素の測定能を有することが確認された(図9)。また、α−アミラーゼ、セルラーゼ、β−グルコシダーゼによる発色は非常に低かったことから、p−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシドはβ−1,3グルカナーゼに対する特異性が高いことも判明した。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、医薬原料や、β−1,3グルカナーゼ活性測定・検出試薬として利用できるp−ニトロフェノールのラミナリオリゴ糖配糖体や、グルコシダーゼなどに対する安定性が従来より高められたハイドロキノンのラミナリオリゴ糖配糖体などの新規のフェノール系配糖体、及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた、ハイドロキノン−β−ラミナリオリゴグリコシドを含む酵素反応終了液のHPLC分析結果を示す図である。横軸は溶離時間(分)を、縦軸は280nmでの吸光度を表わす。
【図2】実施例2で得られた、p−ニトロフェニル−β−ラミナリオリゴグリコシドを含む酵素反応終了液のHPLC分析結果を示す図である。
【図3】実施例3で得られた、p−ニトロフェニル−β−オリゴグリコシドを含む酵素反応終了液のHPLC分析結果を示す図である。
【図4】実施例4で得られた、p−ニトロフェニル−α−オリゴグリコシドを含む酵素反応終了液のHPLC分析結果を示す図である。
【図5】実施例5で得られた、p−ニトロフェニル−α−オリゴグリコシドを含む酵素反応終了液のHPLC分析結果を示す図である。
【図6】実施例1の図1中の実線矢印を付したピークを分取し、その化合物の構造を1H−NMR(上図)及び13C−NMR(下図)にて解析した結果を示す図である。
【図7】実施例3の図3中の実線矢印を付したピークを分取し、その化合物の構造を1H−NMR(上図)及び13C−NMR(下図)にて解析した結果を示す図である。
【図8】ハイドロキノン−β−ラミナリテトラオシド(図中Hyd−G4と略記)とアルブチンのβ−グルコシダーゼに対する安定性を比較した図である。横軸は反応時間(時間)を、縦軸はハイドロキノンの遊離率(%)を表わす。
【図9】p−ニトロフェニル−β−ラミナリペンタオシド(図中PNP−G5と略記)の各種酵素による発色(415nmにおける吸光度)経時変化を示した図である。横軸は時間(分)を縦軸は吸光度を表わす。
Claims (6)
- フェノール系グルコシル配糖体(A)と、β−1,3グリコシル糖化合物(B)とを、β−1,3グルカナーゼ活性を有する酵素剤(C)の存在下で反応させるフェノール系配糖体の製造方法であって、酸化剤(C)がストレプトマイセスspDIC−108菌株(微工研条寄第253号)から得られる糖転移酵素SGTase、キタラーゼ又はドリセラーゼであることを特徴とするフェノール系配糖体の製造方法。
- β−1,3グリコシル糖化合物(B)が、β−1,3グルコシル多糖、又はβ−1,3グルコシルオリゴ糖である請求項3に記載の製造方法。
- フェノール系グルコシル配糖体(A)が、ハイドロキノン又はp−ニトロフェノールのグルコシル配糖体である請求項3又は4に記載の製造方法。
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JPH09295995A (ja) | 1997-11-18 |
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