JP3780159B2 - 乾式トナー、その製造方法及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法などを利用した記録方法に用いられる乾式トナー及び前記トナーを用いた画像形成方法に関するものである。詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッター等に利用し得る画像記録装置に用いられるトナー及び前記トナーを用いる画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術としては、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報に記載されているような多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し種々の手段により感光体上に静電荷潜像を形成し、次いで上記静電荷潜像を乾式トナー(以下、「トナー」ともいう)を用いて現像し、必要に応じて紙やフィルムなどの転写材にトナー像を転写した後、加熱、圧力、加熱加圧あるいは溶剤蒸気により定着し、トナー像を得るものである。
【0003】
静電荷潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が知られている。さらには、磁性トナーを用い、中心に磁極を配した回転スリーブを用い感光体上とスリーブ上の間を電界にて飛翔させる方法も用いられている。
【0004】
一成分現像方式は、二成分方式のようにガラスビーズや鉄粉等のキャリア粒子が不要な為、現像装置自体を小型化・軽量化出来る。さらには、二成分現像方式はキャリア中のトナーの濃度を一定に保つ必要がある為、トナー濃度を検知し必要量のトナーを補給する装置が必要である。よって、ここでも現像装置が大きく重くなる。一成分現像方式ではこのような装置は必要とならない為、相対的には、小さく軽く出来るのが一般的である。
【0005】
また、プリンタ装置はLED、LBPプリンタが最近の市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度即ち、従来300、600dpiであったものが1200、2400dpiとなってきている。従って、現像方式もこれにともなってより高精細が要求されてきている。また、複写機においても高機能化が進んでおり、そのためデジタル化の方向に進みつつある。この方向は、静電潜像をレーザで形成する方法が主である為、やはり高解像度の方向であり、ここでもプリンタと同様に高解像度・高精細の現像方式が要求されてきている。
【0006】
高解像度・高精細を達成するには、トナーを小粒径化することが要求される。しかし、トナーを小粒径化するとトナー粒子の帯電性のバラツキが大きくなり、前記目的を達成するためには、そのコントロールが重要になってくる。
【0007】
例えば、特開平4−276762号公報においては、重合法により製造した平均粒子径が3〜8μmのトナー粒子の表面に特定のカーボンブラックを付着させたトナーが提案されている。このように粒子表面に帯電性をコントロールする材料を配置したトナーを用いて画像を出力した場合には、通紙枚数が5000枚附近を超えると粒子表面に付着しているカーボンブラックが脱落するなどしてトナーの帯電性が大きく変動してしまうため、帯電安定性が不十分となってしまう。
【0008】
また材料の面から帯電安定性を付与する提案としては、例えば、特開平6−242631号公報などが挙げられる。しかし、該公報に記載の方法で実際に画像評価を行ったところ、解像度において未だ改善の余地を残すものであった。
【0009】
トナーの帯電性を均一にするために、規制部材などによるトナーへの規制力を強める方法もとられる。トナーへの規制力を強めると摩擦によるトナーの劣化が起こりやすくなり、画像の出力枚数が多くなるにつれて画像品質が低下する傾向になる。
【0010】
そのため、トナーの強度を高める必要性が生じる。一般的にはトナーの結着樹脂のガラス転移温度を高めたり、結着樹脂中に架橋成分を導入したりして上記トナーのガラス転移温度以下の温度領域での弾性率を高くすることで解決することが可能であるが、その結果、画像形成時における定着温度を高くしたり、熱ローラによる定着の場合にはローラによって加える圧力を高めに設定しなくてはならず、必要な熱エネルギーに応じて消費電力が増大したり、ローラ汚れや巻き付きオフセットの頻度が高くなったりするなど不具合が生じる。
【0011】
一方で、定着温度を低くするためにはガラス転移温度を低くしたり、架橋成分を減じる方法が挙げられるが、このような手法では前述のような弊害やさらにはトナー貯蔵時のブロッキング性の低下を招くため、好ましいものではない。
【0012】
また、トナー像を紙やフィルムなどのシートに定着するプロセスに関して種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は熱ローラ又は耐熱フィルムを介した固定発熱ヒータによる圧着加熱方式である。
【0013】
加熱ローラによる圧着加熱方式は、トナーに対し離型性を有する熱ローラの表面と被定着シートのトナー像面を加圧下で接触しながら被定着シートを通過させることにより、トナー像の定着を行うものである。この方法は熱ローラの表面と被定着シート上のトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことができる。
【0014】
しかしながら、このような定着方法においては、加熱ローラ表面とトナー像とが溶融状態、加圧下で接触するために、トナー像の一部が定着ローラ表面に付着し転移し、次の被定着シートにこれが再転移し、被定着シートを汚す、所謂オフセット現象が生じやすい。このようなオフセット現象は、定着速度、定着温度の影響を大きく受けるため、一般に定着速度が遅い場合は、加熱ローラの表面温度を比較的低く設定し、定着速度が速い場合は、加熱ローラの表面温度を比較的高く設定することにより、トナーを定着させるために加熱ローラからトナーに与える熱量を、常に一定量に調整することによりオフセット現象を抑制することが試みられている。
【0015】
被定着シート上のトナーは、何層かのトナー層を形成しているため、特に定着速度が速く、加熱ローラの表面温度が高い系においては、加熱ローラに接触するトナー層と被定着シートに接触している最下層のトナー層との温度差が大きくなるために、加熱ローラの表面温度が高いと、最上層のトナーがオフセット現象を起こしやすく(高温オフセット)、加熱ローラの表面温度が低いと、最下層のトナーは十分に溶けないために、被定着シートにトナーが定着しない現象(低温オフセット)が発生しやすい。
【0016】
この問題を解決する方法として、定着速度が速い場合には、定着時の圧力を上げ、被定着シートへトナーをアンカーリングさせる方法が通常行われている。この方法だと、加熱ローラ温度をある程度下げることができ、最上トナー層の高温オフセット現象を防ぐことは可能となる。しかし、トナーにかかるせん断力が非常に大きくなる為に被定着シートが定着ローラに巻きつき、巻きつきオフセットが発生したり、定着ローラから被定着シートを分離するための分離爪の分離あとが定着画像に出現しやすい。さらには、圧力が高いために、定着時にライン画像が押しつぶされたり、トナーが飛び散るなど定着画像の画質劣化を生じ易くなるのが実状である。
【0017】
高速定着では、一般的には、低速定着の場合より溶融粘度の低いトナーを用い、加熱ローラの表面温度を下げ、定着圧力を下げることにより、高温オフセットや巻きつきオフセットを防止しつつトナー像を定着している。しかし、この様な溶融粘度の低いトナーを低速定着に用いると、高温でオフセット現象が発生しやすい。
【0018】
トナーの小粒径化により、画像の解像力や鮮映度が上がる一方で、小粒径のトナーで形成したハーフトーン部の定着性が低下する。この現象は特に高速定着において顕著である。これは、ハーフトーン部分のトナーののり量が少なく、被定着シートの凹部に転写されたトナーは、加熱ローラから与えられる熱量が少なく、さらに定着圧力も、被定着シートの凸部によって凹部への圧力が抑制される為に悪くなるからである。ハーフトーン部分で被定着シートの凸部に転写されたトナーは、トナー層厚が薄い為に、トナー粒子1個当りにかかるせん断力はトナー層厚の厚いベタ黒部分に比べ大きいものとなり、オフセット現象が発生しやすく、低画質の定着画像となりやすい。
【0019】
また、昨今の装置の小型化、印字速度の高速化やネットワーク化に対応するために、トナーの耐オフセット領域を低温側へ広げることで定着器を簡略化しやすくしたり、トナーの定着温度を低温化して定着プロセスをより高速化することは効果的な方法である。
【0020】
さらに、オフセット現象を防止するため加熱ローラ表面をフッ素系樹脂等の離型性の優れた材料で加工したり、加熱ローラ表面にシリコーンオイル等の離型剤を塗布して対処する手段も可能である。しかしながら、シリコーンオイル等を塗布する方式は定着装置が大きくなりコスト高となるばかりでなく、装置が複雑になるためトラブルの原因にもなり易く好ましいものではない。
【0021】
また、特公昭57−493号公報、特開昭50−44836号公報、特開昭57−37353号公報には、樹脂を非対称化、架橋化させる事によってオフセット現象を改善する方法が記載されているが、定着温度に係る改善は十分になされていない。
【0022】
一般に最低定着温度は低温オフセットと高温オフセットの間にあるため、使用可能温度領域は、最低定着温度と高温オフセットとの間となり、最低定着温度をできるだけ下げる事、高温オフセット発生温度をできるだけ上げることにより使用定着温度を下げる事ができると共に使用可能温度領域を広げることができ、省エネルギー化、高速定着化、紙のカールを防ぐことができる。そのため常に定着性、耐オフセット性の良いトナーが望まれている。
【0023】
そのために、特開平9−265209号公報においては、重量平均分子量3×103〜1×104の低分子量ビニル系重合体成分と重量平均分子量3×105〜1×106の高分子量ビニル系重合体成分とを主成分とするビニル系重合体100重量部に、酸化防止剤0.05〜1部が含有されるトナー用樹脂組成物を主成分とし、これを溶融混練した後、冷却し、微粉砕して得られるトナーにより定着温度領域を広げられることを提案している。しかし、この方法では、定着領域が低温側へシフトしているにすぎず、高温側でのオフセットは悪化する可能性が高い。
【0024】
一方、特開平8−262795号公報においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された分子量分布において、分子量50万以上の領域に分子量ピークを有する高分子量スチレン−アクリル系樹脂、分子量5万〜50万の領域にピークを有するスチレン−アクリル系樹脂、架橋構造を有するスチレン−アクリル系樹脂、および分子量5万以下の領域に分子量ピークを有するポリエステル樹脂バインダー樹脂よりトナーを提案しているが、高速定着への対応は未だ不十分なものである。
【0025】
また、芯材とこの芯材の表面を被覆するよう設けられた外殻とにより構成されたカプセルトナーを用いることにより、低温定着性を高める技術が提案されている。その内、芯材として塑性変形し易い低融点ワックス等を用いた場合、圧力のみで定着可能となると報告されている(米国特許第3,269,626号、特公昭46−15876号公報、特公昭44−9880号公報、特開昭48−75032号公報、特開昭48−75033号公報)。しかし、定着強度が劣り、限定された用途のみの使用となる。また、芯材として液状のものを使用する場合、殻材の強度が小さいと、圧力のみで定着はするものの、現像器内で割れて機内を汚す場合があり、殻材の強度が大きいとカプセルを破壊するのに大きな圧力が必要となり、光沢が強すぎる画像をもたらしてしまい、殻材の強度調整が難しい。
【0026】
そこで、熱圧力定着用として、芯材として単独使用では高温時にブロッキングを起こしてしまうが、定着強度の向上をもたらすガラス転移点の低い樹脂を用い、外殻として耐ブロッキング性等を付与する目的で界面重合にて高融点の樹脂壁を形成させた熱ローラ定着用カプセルトナーが考案されている(特開昭61−56352号公報)。しかし、壁材料が高融点となっており、更に強靭で割れにくくなっているため、芯材の性能を引き出しきれていなかった。
【0027】
また、特開平8−286416号公報において不飽和ポリエステル樹脂、あるいはスチレン−アクリル樹脂を重合性単量体との混合物を懸濁重合により得られた粒子に吸着・重合することにより被覆する技術が開示されている。この技術によると、耐久性は非常に優れ、しかも前記のトナーよりも定着性に関して向上されたトナーを得ることができるが、低温定着性については、未だ改良の余地が残されていた。
【0028】
また、同様の考え方で芯材の定着強度を改良した熱ローラ定着用カプセルトナーが提案されている(特開昭58−205162号公報、特開昭58−205163号公報、特開昭63−128357号公報、特開昭63−128358号公報、特開昭63−128359号公報、特開昭63−128360号公報、特開昭63−128361号公報、特開昭63−128362号公報)。しかし、製法がスプレードライ法の為、製造設備に負担がかかると共に、これらも殻材の工夫がなされていない為、芯材の性能を引き出しきれていない。
【0029】
更に、特開昭63−281168号公報に提案されているカプセルトナーは、設材がサーモトロピック液晶ポリエステルとの記載があり、特開平4−184358号公報に提案されているカプセルトナーは、結晶性ポリエステルとの記載がされているが、いずれもポリエステルが非晶質でない為、樹脂がシャープに融解するものの融解に必要なエネルギー量が大きく、また芯材のガラス転移温度も高いため定着性に劣る。
【0030】
このように種々の材料および製造方法を用いたカプセルトナーが提案されているが、十分な低温定着性と耐オフセット性および耐ブロッキング性、現像器内での耐ストレス性について、すべてを満足するには至っておらず、特にこれらの性能を満たすようなカプセルトナーの物性に関して、いままで定量的な値が示されていない。
【0031】
一方、特開平7−301947号公報に提案されているカプセルトナーでは、微小圧縮試験機における一定の荷重範囲で負荷を与えたときのトナーの変形の程度と加熱放置前後の凝集度変化を規定しているが、これだけでは現像プロセスでのトナー劣化を考慮しておらず、実際には決して満足のできるものではない。
【0032】
材料的には熱可塑性エラストマーと200℃における貯蔵弾性率を規定したトナーが提案されている(特開平7−271096号公報)が、その効果は耐オフセット性の向上や熱ローラへの巻き付き防止に重点が置かれ、画質の点では未だ不十分なものである。
【0033】
汎用的な材料であるブタジエンやイソプレンなどのポリエン化合物を用いたトナーとしては、特開平7−271096号公報に提案されているが、その効果は耐オフセット性の向上や熱ローラへの巻き付き防止のみである。
【0034】
以上のような理由から、定着プロセスにおいて、定着温度領域の広い、耐オフセット性に優れるトナーが望まれているにもかかわらず、それらの点を十分に満足させ、かつ高解像度・高精細および帯電安定性を満足するトナーはないのが実状である。
【0035】
また、トナーの製造方法について、油溶性重合開始剤存在下で重合転化率が30〜97%の範囲内になるまで重合性単量体組成物を懸濁重合する工程後、水溶性重合開始剤を添加してさらに重合させる方法が、特開平11−160909号公報に開示されている。しかし、この方法ではマクロモノマーを使用しており、反応性としては通常のモノマーには及ばず、耐久性に優れたトナーを得るには不十分なものである。
【0036】
一方、現像工程で感光体上に形成されたトナー像が転写工程で転写材に転写される際に感光体上に転写残トナーが残る場合は、クリーニング工程でクリーニングされ廃トナー容器に蓄えられる必要が出てくる。このクリーニング工程については、従来ブレードクリーニング、ファーブラシクリーニング、ローラクリーニング等が用いられている。いずれの方法も力学的に転写残余のトナーを掻き落とすか、またはせき止めて廃トナー容器へと捕集されるものである。よって、このような部材が感光体表面に押し当てられることに起因する問題が生じている。例えば、転写残の多いトナーを用いる場合、部材を強く押し当てる必要が生じ、感光体が摩耗されるため短命化することが挙げられる。
【0037】
装置面からみると、かかるクリーニング装置を具備するために装置が必然的に大きくなるため装置のコンパクト化を目指すときのネックになっていた。さらには、エコロジーの観点よりトナーの有効活用と言う意味で、廃トナーのでないシステムが望まれている。
【0038】
ここで、クリーナレスに関連する技術の開示を行っているものに特開昭59−133573号公報、特開昭62−203182号公報、特開昭63−133179号公報、特開昭64−20587号公報、特開平2−302772号公報、特開平5−2289号公報、特開平5−53482号公報、特開平5−61383号公報等があるが、望ましいトナー構成については言及されていない。
【0039】
なお、本質的にクリーニング装置を有さない現像兼クリーニング構成においては、感光体表面をトナー及びトナー担持体により擦り、非画像部のトナーをトナー担持体で回収し、画像部をトナーで現像する構成が必要となる。この摺擦時に、転写残トナーあるいはカブリトナーといった逆帯電トナーを、容易に反転させることができれば電気的な回収が容易となる。そのためには、トナーに極性成分を添加することが1つの手段として挙げられる。
【0040】
即ち、多くの極性成分を含有するトナーは帯電速度が早いという一般的な現象を利用するわけであるが、前述したように、トナーのオフセット性の改良のためにポリエチレンあるいはポリプロピレンといった極性をほとんど持たない離型剤を添加した場合、トナーの帯電速度は低下してしまい、現像工程における感光体上のトナーのスムーズな回収を阻害してしまう。その結果、本来は画像の無い領域がトナーによって画像状に汚れた印刷画像、いわゆるゴースト画像となってしまう。
【0041】
このように、現像兼クリーニング構成においてはトナーの定着性と画像特性の両立の技術が望まれる。さらに現像工程においてトナーを回収する技術は、感光体の長寿命化のために部材の押し当てを弱くしたような系においても非常に重要なものと言える。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決した乾式トナーを提供することにある。
【0043】
本発明の目的は、帯電安定性に優れた乾式トナーを提供することにある。
【0044】
本発明の目的は、高解像度で高精細な画像を得ることができ、定着性と耐オフセット性に優れた乾式トナーを提供することにある。
【0045】
本発明の目的は、高品質な画像が長期にわたって安定して得られるトナーを提供することにある。
【0046】
また本発明の目的は、感光体、トナー担持体、更には中間転写体等に悪影響を及ぼさない電子写真プロセスに高度に適用を可能とする乾式トナー、上記トナーの製造方法及び上記トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0047】
さらに、本発明の目的は、クリーナレス構成あるいは中間転写体を用いるような接触現像方式画像形成プロセスにおいて、定着性を維持しつつ、解像性、転写性を向上させ、トナーの回収性向上によりゴーストの発生を抑制し、さらには耐久性をも大きく向上しうる電子写真用画像形成方法を提供することにある。
【0048】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子及び外添剤を有する乾式トナーであって、
【0049】
(1)前記結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有しており、
(2)前記トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定される主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃であり、
(3)前記トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足し、
0.8≦A≦4.0
0.80≦(B/A)≦1.05
(4)前記トナーのフロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーの円相当個数平均径D1が2〜10μmであり、前記トナーの平均円形度が0.950〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満であり、
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲にあり、THF不溶分が5〜60質量%である、
ことを特徴とする乾式トナーに関する。
【0050】
さらに、本発明は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有するジエン単量体成分含有樹脂、重合性ビニル単量体、着色剤、ワックス及び重合開始剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中へ分散して造粒し、水系媒体中で重合し、トナー粒子を生成する製造方法であって、
前記重合開始剤がラジカル重合開始剤であり、重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに、ラジカル重合開始剤を新たに添加することを特徴とする乾式トナーの製造方法に関する。
【0051】
さらに、本発明は、帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を帯電する帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に、静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを付着させて、トナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を、中間転写体を介して、又は介さずに転写材に静電転写する転写工程と、転写材に静電転写されたトナー像を定着する定着工程とを有する画像形成方法であって、
【0052】
該トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子及び外添剤を有する乾式トナーであって、
(1)結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有しており、
(2)前記トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定される主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃であり、
(3)前記トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足し、
0.8≦A≦4.0
0.80≦(B/A)≦1.05
(4)前記トナーのフロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーの円相当個数平均径D1が2〜10μmであり、前記トナーの平均円形度が0.950〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満であり、
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲にあり、THF不溶分が5〜60質量%である、
ことを特徴とする画像形成方法に関する。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0054】
<1>本発明の乾式トナー
本発明の乾式トナー(以下、「トナー」という)は、少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子と無機微粉体とを有する。
【0055】
本発明のトナーにおける結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンのうちから選ばれる少なくとも一つの単量体(以下、「ジエン単量体」ともいう)に由来する成分を含有している。
【0056】
上記ジエン単量体には、何れも酸素原子が存在しない。そのため、空気中にある水分の吸着するサイトがないため、トナー中において電荷のリークが起こりにくい。そのため、帯電量への湿度の影響が小さくなり、結果としてトナーの帯電性が安定する。さらに、ラジカル重合しうる二重結合を一分子中に2個有するので3次元構造をとりやすいため、例えば、粘度上昇効果や網目構造の形成に起因しうる。そのため製造方法の影響をあまり受けることなく、顔料や荷電制御剤のようなトナー粒子内にて(半)溶解・分散している材料の存在状態を良化させ、帯電性を安定化させ、更にはトナーの色味を改善することができると考えられる。スチレンあるいはそれに水添したビニルシクロヘキサンのような単量体を用いた場合には、酸素原子が存在しないことによる前者の効果は得られるが、二重結合を一分子中に2個有することによる後者の効果は単量体の特性上得られにくい。さらに、ジビニルベンゼンのような単量体では、一分子中の二重結合の両者が反応すると構造が剛直なベンゼン環により架橋され、高分子の架橋点間のフレキシビリティーが失われ、定着性への悪影響が生じたり、脆性が高くなったりすることがある。以上のような理由により、本発明ではジエン単量体を必須の構成成分として用いている。
【0057】
それに加えて、ブタジエン、クロロプレン、イソプレンの沸点は−4.4℃,59.4℃,34.1℃といずれも常圧では揮発性が高いため、後述する懸濁重合法により製造されるトナーにジエン単量体を導入する際に直接ジエン単量体を導入すると重合中に揮発してしまう可能性が高いため、加圧下での懸濁重合を行うか、あるいは予め別の手段で樹脂を製造しそれを添加することが好ましい。定量的にトナーへ導入するには後者の方がより好ましい。
【0058】
また、ジエン系単量体を含有する樹脂は加圧下における溶液重合、乳化重合、ソープフリー重合などが好ましい。
【0059】
懸濁重合に使用されるジエン系単量体を含有する樹脂は、カルボキシル基や硫酸基などを有する重合開始剤などによって重合されたものも好ましく用いられる。その理由は、高分子中に極性基を含有させることにより得られるトナー粒子表面近傍にジエン単量体含有樹脂が局在化しやすくなり、3次元構造をとることにより耐久性の向上効果が得られるためである。
【0060】
また、本発明において、結着樹脂に含有されるブタジエン、イソプレン、クロロプレンに由来する成分の含有量の総和は、トナーに対して0.1〜20質量%が好ましい。
【0061】
トナーは、低温および高温のオフセットを防止するために、トナーのTHF可溶分のGPCにより測定される分子量分布におけるピーク分子量が5×105を越えるような高分子量樹脂や架橋樹脂と、トナーのTHF可溶分のGPCにより測定される分子量分布におけるピーク分子量1×103〜5×104程度の低分子量樹脂とを結着樹脂として併用することにより、トナーの粘弾性の設計をすることが一般に行われているが、上記結着樹脂中のジエン単量体の含有量が20質量%を越えてしまうと、この様な設計のトナーの製造が困難となり問題を生じることがある。従って、ジエン単量体の含有量は上記トナー中の20質量%を越えないことが好ましく、さらには0.1〜10質量%の範囲がより好ましい。また、結着樹脂中のジエン単量体の含有量が0.1質量%未満であると、本発明の効果である帯電の安定化が十分に達成できず、高解像度で高精細な画像が得られないことがある。
【0062】
本発明のトナー中に含まれるジエン単量体の含有量の測定は、特に限定されないが、熱分解ガスクロマトグラフとマススペクトルの組み合わせやそれに元素分析、その他の測定方法を組み合わせることによって行うことが出来る。また、トナー中のTHF可溶分に含まれるジエン単量体量を1H−NMR、13C−NMRなどで定量することによってジエン単量体成分量を見積もることも可能である。
【0063】
本発明において結着樹脂を構成する単量体としては、上記したように、ブタジエン、クロロプレン、イソプレンからなるグループより選ばれる単量体(以下、「ジエン単量体」ともいう)を必須成分として含有していれば特に制限されないが、結着樹脂を構成するその他の単量体としては、例えば、スチレン、o(m-,p-)-メチルスチレン、m(p-)-エチルスチレンの如きスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベへニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル系単量体;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルの如きマレイン酸エステル系単量体;エチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテルの如きビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シクロへキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミドの如き単量体が好ましく用いられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
この中でも、スチレンやスチレン誘導体の如きスチレン系単量体が、ジエン単量体と共重合させた場合にトナーの帯電安定性に優れるため好ましい。本発明における結着樹脂としては、上記スチレン系単量体とジエン単量体との共重合体、特にはブタジエンとの共重合体が好ましい。
【0065】
また、本発明において結着樹脂として用いられるジエン単量体を必須成分として含有する樹脂(以下、「ジエン単量体成分含有樹脂」という)は、トナーの帯電安定性を向上させるために、エポキシ、無水マレイン酸、マレイン酸(ハーフ)エステル、及び/又はメタクリル酸誘導体により変性されていてもよい。
【0066】
さらに、本発明における結着樹脂として、上記ジエン単量体成分含有樹脂と、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、一般的なポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリシアノアリールエーテル、ポリアリーレンスルフイドとのブロック共重合体又は、ジエン単量体成分含有樹脂にアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸又はスチレン系モノマーをグラフトしたグラフト変性共重合体の使用も可能である。
【0067】
本発明において、ジエン単量体成分含有樹脂とともに、他の樹脂を併用することもできる。ジエン単量体成分含有樹脂と共に併用される他の樹脂としては、一般に用いられているスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂の如き様々な樹脂が挙げられる。
【0068】
これら樹脂は以下に示す単量体を重合することにより得ることが出来る。具体的な単量体としては、スチレン、o(m-,p-)-メチルスチレン、m(p-)-エチルスチレンの如きスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸べへニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル系単量体;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルの如きマレイン酸エステル系単量体;エチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテルの如きビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミドの如き単量体が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明においてジエン単量体成分含有樹脂と併用される樹脂は、結着樹脂中に50〜99.9質量%含有されていることが好ましく、より好ましくは80〜99.9質量%、更には85〜99.5質量%、特に好ましくは85〜98質量%含有されているのが好ましい。樹脂の種類としてはスチレン−アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0070】
上記ジエン単量体成分含有樹脂と併用される樹脂は、単独または理論ガラス転移温度(Tg)が40〜75℃を示すように上記単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度(Tg)を上記のようにするには、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−139〜192頁(JohnWiley&Sons社製)に記載の方法が挙げられる。その他の樹脂を併用する場合においても同様に、単独または理論ガラス転移温度(Tg)が40〜75℃を示すように上記単量体を適宜混合して用いられる。
【0071】
理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を越える場合にはトナーの定着点の上昇をもたらすことがある。特にフルカラー画像を形成するためのカラートナーの場合においては、各色トナーの定着時の混色性が低下し色再現性に乏しく、さらにOHP画像の透明性が低下するため好ましくない。
【0072】
本発明のトナーは、上記結着樹脂の他に着色剤及びワックス成分を含有する。
【0073】
本発明におけるトナーは、熱ロール定着時の離型性を向上させる目的で、トナー中に炭化水素系化合物、高級脂肪酸、高級アルコール及びそれらの誘導体の如き離型剤として用いられているワックス成分を配合することが好ましい。そのようなワックス成分として具体的には、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプッシュワックス及びその誘導体、ポリオレフインワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタムが挙げられ、誘導体には酸化物、ビニル系モノマーとのブロック共重合物及びグラフト変性物が含まれる。
【0074】
これらワックス成分は、単独で、あるいは2種以上を併用しても何ら差し支えない。
【0075】
これらのワックス成分は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時に40〜130度領域に最大吸熱ピークを有する。上記温度領域に最大吸熱ピークを有することにより、低温定着に大きく貢献しつつ離型性をも効果的に発現する。上記最大吸熱ピークが40℃未満であるとワックス成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性に劣るようになるとともにグロスが高くなりすぎる。
【0076】
一方、上記最大吸熱ピークが130℃を越えると、定着温度が高くなるとともに定着画像表面を適度に平滑化せしめることが困難となるため、特にカラートナーに用いた場合には混色性低下の点から好ましくない。さらに、水系媒体中で造粒/重合を行い重合方法により直接トナーを得る場合、上記最大吸熱ピーク温度が高いと主に造粒中にワックス成分が析出する等の問題を生じ好ましくない。
【0077】
ワックス成分の最大吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418-8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で測定を行う。本発明おいては、これらのワックス成分の添加量は特に限定されないが、トナーに対して0.5〜30質量%が好ましい。
【0078】
本発明のトナーに用いられる着色剤は、従来より知られている無機・有機の染料・顔料が使用可能であり、以下に示すイエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤が挙げられる。
【0079】
また、黒色着色剤としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、磁性体、焼成顔料又は以下に示すイエロー着色剤/マゼンタ着色剤/シアン着色剤を混合して黒色に調色されたものが利用されうる。
【0080】
本発明のトナーにカーボンブラックを用いる場合には、一次粒径が25〜80nmであることが好ましい。カーボンブラックの粒径に関しては、25nmよりも小さいと、一次粒径が微細なため十分な分散が得られにくく使いこなすのが困難となることがある。80nmよりも大きい場合には、良好に分散してもトナーとしての着色力の不足から低濃度の画像しか得られない、或いはトナー消費量が増大するなどの不都合が生ずることがある。さらに、カーボンブラックの粒径に関しては、粒径が35〜70nmであることがより好ましく、転写残トナーの帯電部材による帯電極性及び帯電量の制御がより確実に且つ均一になされ、トナーの帯電量の安定性及びトナー着色力の面でもより有利である。
【0081】
さらに本発明のトナーは黒色着色剤として磁性体を使用し、磁性トナーとしても使用し得る。この際使用することのできる磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属;これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金;及びその混合物が挙げられる。
【0082】
本発明に用いられる磁性体は、表面改質された磁性体であることがより好ましく、重合法トナーに用いる場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を例示することができる。
【0083】
これらの磁性体は平均粒径が2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μm程度のものである。トナー粒子中に含有させる磁性体の量としては結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部、特に好ましくは40〜150質量部である。また、796kA/m(10キロエルステッド)印加での磁気特性が保磁力(Hc)1580〜23700A/m(20〜300エルステッド)、飽和磁化(σs)50〜200Am2/kg(emu/g)、残留磁化(σr)2〜20Am2/kg(emu/g)の磁性体が好ましい。
【0084】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
【0085】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、26、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0086】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用できる。
【0087】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー粒子への分散性の点から選択される。上記着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1〜20質量部使用するのが好ましい。
【0088】
黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、結着樹脂100質量部に対し40〜150質量部使用するのが好ましい。
【0089】
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有していても良く、用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、上記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。上記荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対し0.5〜10質量部使用することが好ましい。
【0090】
本発明において荷電制御剤の添加は必須ではなく、二成分現像方法を用いた場合においては、キャリアとの摩擦帯電を利用し、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法を用いた場合においては、ブレード部材との摩擦帯電を積極的に利用することもできる。
【0091】
本発明のトナーに荷電制御剤を用いるとすれば、上記のうち下記一般式(I)に示される化合物がより好ましい。
【0092】
一般式(I)
【外2】
【0093】
[式中、X1およびX2は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、X1とX2は同じであっても異なっていてもよく、mおよびm’は1〜3の整数を表し、R1およびR3は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、スルホンアミド基、メシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ハロゲン原子又は−COOR5を表し、R1とR3は同じであっても異なっていてもよく、nおよびn’は1〜3の整数を表し、R2およびR4は、水素原子またはニトロ基を表し、R5はアルキル基又はアリール基を表し、A+は水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンを表す。]
【0094】
X1およびX2の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基の如き炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。X1およびX2の低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基の如き炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
【0095】
X1、X2、R1およびR3のハロゲン原子としては、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。
【0096】
X1およびX2の好ましい基としては、水素原子又はニトロ基が挙げられる。
【0097】
R1およびR3の炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
【0098】
R1およびR3の炭素数1〜18のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。
【0099】
R1およびR3の炭素数1〜18のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0100】
またR1およびR3は−COOR5で表される基でも良く、この場合のR5は、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0101】
これらの中で、好ましいR1およびR3としては、塩素が挙げられる。
【0102】
好ましいR2およびR4としては、水素が挙げられる。
【0103】
上記荷電制御剤の好ましい具体例としては、下記一般式(II)及び(III)に示す化合物が挙げられる。
【0104】
【外3】
【0105】
【外4】
【0106】
上記荷電制御剤は、結着樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部使用することが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部である。
【0107】
また、本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、トナー粒子に外添剤が混合される。
【0108】
本発明に用いられる外添剤としては、まず無機微粉体が挙げられる。具体的には、シリカ微粉体、酸化チタン、アルミナ微粉体が挙げられ、特にシリカ微粉体が好ましく用いられる。この中でもBET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して無機微粉体0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量部使用するのが良い。無機微粉体の比表面積は、トナーの比表面積と同様にBET法に後述の方法によって算出することができる。
【0109】
本発明に用いられる無機微粉体は、疎水化、帯電性コントロールの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物の如き処理剤で処理されていることが好ましい。特に、シリコーンオイル及び/又はシランカップリング剤で処理された疎水化シリカが好ましい。
【0110】
本発明のトナーに含有される他の外添剤としては、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤;トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子の如き現像性向上剤が挙げられる。
【0111】
本発明において、無機微粉体や他の外添剤をトナー粒子に添加し、攪拌・混合して製造されたトナーの場合には、トナー粒子の有する後述する各種物性値の測定は、これらの無機微粒子や他の外添剤を除去した後のトナー粒子を用いて行うことができる。これらの無機微粒子や他の外添剤をトナー粒子表面から除去する方法は特に制限されないが、例えば以下のようにしてトナーを水洗することにより行うことができる。
【0112】
まずドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如き界面活性剤を添加した水の中に、トナーを加えて充分に攪拌、混合する。この操作で、比較的粒径の大きな無機微粒子や他の外添剤がトナー粒子から遊離し、水中にトナー粒子と無機微粒子や他の外添剤が別々に分散される。次いでこの混合分散液からトナー粒子を単離する。単離方法としては、例えば、適度な目開きを持つ瀘紙を用いて濾過操作を行うことにより、瀘紙上にトナー粒子、濾液に無機微粒子や他の外添剤を含む水溶液として分離することができる。また、他の単離方法として、混合分散液を湿式分級することにより、トナー粒子を単離する方法も採用することができる。
【0113】
本発明のトナーは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃に観測されるものである。本発明において、ガラス転移温度の異なる複数の樹脂を使用する場合には、DSCにおいて複数のガラス転移温度が観測される場合がある。その場合には、吸熱量の大きな方を主たるガラス転移温度と定義する。
【0114】
主たるガラス転移温度が40℃未満だと、トナーの耐ブロッキング性が低下することにより現像器内での流動性が低下したり、トナー担持体や静電潜像担持体上で極めて融着しやすくなるため好ましくない。70℃を越えると、一定の熱量を与えられたトナーの溶融粘度が高くなり、その結果として定着温度が高くなる。即ち、必要とする熱量が増大したり、同じ熱量で定着させるためには、例えば、転写材に与える圧力を高めなければならず、好ましいものではない。本発明のトナーのより好ましいガラス転移温度は、42〜68℃であり、特に45〜65℃である。
【0115】
本発明におけるトナーのDSC曲線は、測定原理から高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することができる。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7が利用できる。測定方法は、「ASTM D3418-8」に準じて行うことができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で測定を行うことができる。
【0116】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、具体的には以下の方法により測定できる。
【0117】
サンプルを一旦昇温してから冷却した後、二度目の昇温時のDSCカーブより吸熱ピーク前の基線と吸熱ピーク後の基線の中線と、立ち上がり曲線での交点をもってガラス転移温度(Tg)とする(図8参照)。
【0118】
トナーが、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線においてガラス転移温度(Tg)が40〜70℃に観測されるようにするには、具体的には、重合性単量体の種類や比率を変えて調整すればよい。
【0119】
本発明におけるトナーは、雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、上記トナーを雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、0.8≦A≦4.0、かつ0.80≦(B/A)≦1.05の関係式を満足するものである。Aが0.8未満だと、トナーの流動性のコントロールが難しくなったり、高解像度な画像を得にくくなる傾向が強くなったりすることがあり、4.0を越えると、トナーの帯電性にバラツキが多くなったり、トナー担持体や静電潜像担持体とのマッチングに劣るようになったりすることで、高品質な画像が得られにくくなることがある。さらに、1.0≦A≦3.0の範囲がより好ましい。また(B/A)の値としては、0.85≦(B/A)≦1.05、の範囲が好ましく、更には、0.90≦(B/A)≦1.05の範囲が好ましく、特には0.92≦(B/A)≦1.03、最も好ましくは0.92≦(B/A)≦1.00である。
【0120】
(B/A)が減少するということは、トナー表面に存在するシリカなどの外添剤が、雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置することにより埋没することを示し、この値が0.80未満だと、高品質な画像を安定して得ることができない傾向がある。(B/A)が、1.05を越えるということは、トナー粒子自身の変形が大きいということであり、やはり高品質な画像を安定して得ることができないことがある。
【0121】
本発明におけるBET法による比表面積とは、例えば、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出したものである。
【0122】
BET比表面積に係る上記の規定を満たすトナーを製造する方法は、特に制限されないが、例えば、粉砕法或いは重合法によってジエン単量体を含有する樹脂粒子を製造し、その表面近傍に存在するジエン単量体の有する未反応の二重結合を反応させることにより、達成することができる。
【0123】
こうして得られたトナー粒子は、粒子表面のフレキシビリティーが大きく損なわれることなく3次元構造をとることにより強度が増す。そのため、高温高湿環境下にトナーを放置した場合においても、外添剤のトナー粒子への埋没が生じにくくなり、またトナー粒子自体の変形も抑制される。また、トナーの表面にジエン単量体による網目構造が形成されるため、空気中にある水分の影響を受けにくくなり、更なる帯電の安定化が図られる。
【0124】
尚、本願発明のトナーの製造方法に関しては、後段で詳細に説明する。
【0125】
本発明のトナーは、転写性と現像性をバランス良く改善するために、以下のような形状を有する必要がある。即ち、トナーの個数基準の粒径頻度分布における円相当個数平均径が2〜10μmであり、円形度頻度分布における平均円形度が0.950〜0.995、好ましくは0.960〜0.995、さらに好ましくは0.970〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満、好ましくは0.035未満となる様にトナーの粒子形状を精密に制御することにより、転写性と現像性をバランス良く改善することができる。
【0126】
トナーの個数基準の粒径頻度分布における円相当個数平均径を2〜10μmと小粒径化することにより、画像の輪郭部分、特に文字画像やラインパターンの現像での再現性が良好なものとなる。しかし、一般にトナー粒子を小粒径化すると、必然的に微小粒径のトナーの存在率が高くなるため、トナーを均一に帯電させることが困難となり画像カブリを生じるばかりか、静電潜像担持体表面への付着力が高くなり、結果として転写残トナーの増加を招く傾向がある。
【0127】
しかし、本発明のトナーは、円形度頻度分布の円形度標準偏差を上記のように制御することで、現像性や転写性の環境変動に対する安定性、更には耐久性が良好なものとなる。その理由として、現像工程においてトナー担持体上にトナーの薄層が形成される際に、トナー層厚規制部材の規制力を通常よりも強くしても十分なトナーコート量を保つことができるため、トナー担持体に対するダメージを与えることなくトナー担持体上のトナーの帯電量を通常よりも高くすることが可能となるからだと考えられる。
【0128】
円形度頻度分布における平均円形度を0.950〜0.995、より好ましくは0.970〜0.995とすることにより、従来では困難とみなされている小粒径を呈するトナーの転写性が大幅に改善されると共に、低電位潜像に対する現像能力も格段に向上することができる。特にデジタル方式の微小スポット潜像を現像する場合に有効である。平均円形度が0.950未満の場合、転写性が低下するばかりか、現像性が低下する場合がある。また、平均円形度が0.995を超えるとトナー表面の劣化が著しいものとなり耐久性等に問題を生じる傾向がある。
【0129】
平均円形度が0.950〜0.995であるような球形トナーは、通常、粒子同士が点で接するようになるため、接触点での圧力が高まり、トナー粒子表面に存在する外添剤が、トナーに埋め込まれてしまいやすいものであります。しかしながら、本願発明のトナーは、トナー粒子表面にジエン単量体による網目構造が形成されているため、表面強度が高く、外添剤の埋め込みが抑制される。このため、長期にわたって使用した場合においても、初期の優れた特性が維持されるようになる。この傾向は、平均円形度が0.970〜0.995であるトナーにおいて、特に顕著となる。
【0130】
また、多種の転写材に対応させるために転写工程で中間転写方式を行う場合、転写工程が実質2回行われるため、一般には、転写効率低下率は著しくトナーの利用効率の低下を招く問題となる。デジタルフルカラー複写機やプリンタにおいては、色画像原稿を予めB(ブルー)フィルター、G(グリーン)フィルター、R(レッド)フィルターを用い色分解した後、感光体上に20〜70μmのドット潜像を形成し、Y(イエロー)トナー、M(マゼンタ)トナー、C(シアン)トナー、B(ブラック)トナーの各色トナーを用いて減色混合作用を利用し、原稿に忠実な多色カラー画像を再現する必要がある。この際、原稿やCRTの色情報に対応して感光体上または中間転写体上に、Yトナー、Mトナー、Cトナー、Bトナーの各カラートナーが多量に乗るため、本発明使用される各カラートナーは、極めて高い転写性が要求される。このようなより高いレベルの要求を満たすためには、前述したトナーの平均円形度が0.950〜0.995、好ましくは0.970〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満、好ましくは0.035未満であることが好ましい。
【0131】
また、本発明のトナーは、上記フロー式粒子像測定装置で計測される個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、円形度0.950未満のトナーが15個数%以下であることが好ましい。円形度0.950未満のトナーが15個数%を越えて含まれていると、転写残トナーが増加する傾向があるため好ましくない。
【0132】
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0133】
【外5】
【0134】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
【0135】
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満…0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う算出法を用いている。
【0136】
この算出法で算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いている。
【0137】
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0138】
また、円相当径とは、
【0139】
【外6】
【0140】
と定義される値であり、円相当個数平均径(D1)とは、個数基準によるトナーの円相当径の平均値を表し、粒度分布の分割点iでの粒径(中心値)をdi、頻度をfiとすると下式の如く表される。
【0141】
【外7】
【0142】
本発明における粒度分布の分割点は、下表に示されるとおりである。
【0143】
【表1】
【0144】
具体的な測定方法としては、例えば、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10m1を用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機UH−50型(エスエムテー社製)に振動子として直径5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、上記分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。
【0145】
円形度及び円相当径の具体的な測定方法としては、ノニオン型界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させ分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
【0146】
測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年6月版)、測定装置の操作マニュアル及び特開平8−136439号公報に記載されているが、以下の通りである。
【0147】
試料分散液は、フラットで扁平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。本発明においては、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子を測定の対象とする。
【0148】
トナーの形状を上記のようにするには、具体的には、重合法トナーにおける場合は重合方法や重合温度を調整すればよく、粉砕トナーにおいては粉砕条件を調整すればよい。
【0149】
本発明の乾式トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲であり、且つTHF不溶分が5〜60質量%である。
【0150】
本発明において、トナー中の結着樹脂の分子量は、GPCにおける分子量分布からポリスチレン換算分子量として求めた値である。本発明のトナーにおいては、THF可溶分のGPCにより測定される分子量分布が、2×103〜1×105の範囲にメインピーク分子量を有しており、好ましくは5×103〜5×104の範囲に有する。メインピーク分子量が2×103よりも低いと帯電特性に悪影響がでる場合があり、また高温下で保存された場合、ジエン単量体を含有する樹脂成分がトナー表面に移行し、耐ブロッキング性に悪影響を及ぼすことがある。メインピーク分子量が1×105を越えると溶融粘度が高くなりすぎ、定着性に問題を生じたり、ジエン単量体を含有する樹脂成分のフレキシビリティーを効果的に発現させることが出来ず、低温オフセットが発生したりしてしまう。
【0151】
本発明において、トナーのTHF可溶分とは、THFに可溶であるトナー成分であるが、具体的には、結着樹脂が主成分であり、ワックス成分等も含む。トナーのTHF可溶分は、以下のようにして得ることができる。
【0152】
トナー試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分に振とうし、THFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm、例えば、マイショリディスクH−25−5:東ソー社製、エキクロディスク25CR:ゲルマンサイエンス ジャパン社製などが利用できる)を通過させることによってTHF可溶分を分取することができる。得られた溶液の濃度を結着樹脂成分が0.5〜5.0mg/mlとなるように調整しGPCの試料とする。
【0153】
本発明において、トナーのTHF可溶分のGPCによるクロマトグラムの分子量分布は、次の条件で測定することができる。
【0154】
すなわち、40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラハイドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、THF可溶トナー試料溶液(上記THF可溶分)を約100μl注入して測定する。トナー試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0155】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料として、たとえば、東ソー社製TSKスタンダードポリスチレンF-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500を用いて検量線を作成することができ、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
【0156】
また、検出器には、RI(屈折率)検出器とUV(紫外線)検出器とを直列に配列したものを用いる。なおカラムとしては、市販のポリスチレンゲルカラムを複数本組み合わせるのが良く、本発明では例えば、昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせを挙げることができる。装置には、東ソー社製の高速GPC HPLC8120 GPCを使用することができる。
【0157】
また本発明において、THF不溶分が5〜60質量%でなければならない。好ましくは、5〜55質量%である。THF不溶分が5質量%以上存在する場合に、ジエン単量体によるトナー表面近傍での3次元化が良好に行われていると考えられる。THF不溶分が5質量%未満であると、トナー表面近傍での3次元化が不十分であるため、高温下での耐久性に劣るようになってしまい、またトナーの帯電安定性を長期間に亘って保持しにくくなる。一方、THF不溶分が60質量%を越えると、ジエン単量体を含有する結着樹脂の有するフレキシビリティーに由来する特長が発揮されにくくなるため、定着時にオフセットが発生しやすくなる。
【0158】
本発明おいては、ジエン単量体によりTHF不溶分を比較的容易にコントロールすることができる。即ち、トナー中のジエン単量体含有量を多くすれば、THF不溶分を多くすることができる。
【0159】
但し、本発明のトナーのTHF不溶分は、ジエン単量体の量のみによって決まるのではなく、粉砕法によってトナーを製造する場合には、含有するジエン単量体量や、トナー粒子表面近傍の未反応の二重結合を反応させるために添加される重合開始剤量等によって決まる。この際には、ジエン単量体量による影響が大きい傾向がある。また、懸濁重合によってトナーを製造する場合には、ジエン単量体量、重合反応や反応処理する際の重合開始剤量、さらには重合温度や反応処理する際の温度等の影響を受ける。重合開始剤の使用量等を変えると、THF可溶分のピーク分子量にも大きな影響を与えることになるので、本発明においてTHF不溶分の調整を行う際には、THF可溶分のピーク分子量に関しても配慮しなくてはならない。
【0160】
また、それ以外にも重合性二重結合を2つ以上有する単量体を含有させることによっても同様な効果を得ることが可能である。
【0161】
そのような単量体として、o(m-,p-)-ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、o(m-,p-)-ジビニルシクロへキサン、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを例示することが出来る。これらの単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても何ら差し支えない。
【0162】
本発明においてトナーのTHF不溶分とは、トナー粒子中の結着樹脂組成物のTHFに対して不溶性となった結着樹脂成分の質量割合のことであり、架橋成分を含む結着樹脂組成物の架橋の程度を示す目安となる。しかし、THF不溶分が0質量%であっても必ずしも架橋していないという訳ではない。本発明においてTHF不溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
【0163】
即ち、トナーが非磁性トナーの場合には顔料の含有率などを、磁性トナーの場合には顔料及び磁性体の含有率などを、予め公知の方法で測定しておく。次に、トナー0.5〜1.0gの一定量を秤量し(W1g)、円筒濃紙(東洋濃紙製 No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF100〜200mlを用いて20時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。そして、上記トナー一定量中に含まれている顔料や磁性体のうち、THFに可溶な成分の質量をW3g、THFに不溶な成分の質量をW4gとすると、以下の式に従って樹脂組成物中のTHF不溶分を算出することができる。
【0164】
【外8】
【0165】
<2>本発明の乾式トナーの製造方法
本発明のトナーの製造方法としては様々な方法が挙げられるが、一部又は全体が重合法によって製造されることが好ましい。トナーの一部が重合法により製造されるとは、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、ブロック共重合、グラフト化などを応用して結着樹脂のみを重合することにより得た後、粉砕法、溶融スプレー法等によってトナー粒子を得る方法であり、トナー全体が重合法により製造されるとは、モノマーに着色剤、電荷制御剤等を添加混合し、その後重合を行ってトナー粒子を得る手法であり、結着樹脂の製造とトナー製造を同時に行う方法のことである。
【0166】
本発明のトナーを粉砕法により製造する場合には、上記ジエン単量体成分含有樹脂、ワックス成分、着色剤(磁性体でも可)、必要に応じて併用される樹脂、荷電制御剤及びその他の添加剤等を、へンシェルミキサー或いはボールミルの如き混合機より充分混合してから加圧ニーダーやエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後に固形物を機械的又はジェット気流下でターゲットに衝突させ、所望のトナー粒径に微粉砕化する。その後、必要に応じてトナー粒子の平滑化及び球形化処理を行う。次いで、分級工程により粒度分布をシャープにする。さらに、分級粉をシリカ微粒子の如き外添剤とへンシェルミキサーのごとき混合機により充分混合することで本発明のトナーを得ることができる。本発明の製造方法としては、例えば球形化処理したトナー粒子に重合開始剤、および必要に応じて添加される重合性単量体にてトナー表面に存在するジエン単量体成分含有樹脂を反応させることによりトナー粒子表面近傍の強度を増すことができる。
【0167】
本発明のトナーに含有される結着樹脂を構成するジエン単量体成分含有樹脂は、トナー中にいかなる形状、状態で含有されていても良く、結着樹脂を構成する他の樹脂と相溶した状態であっても、相分離した状態であっても良い。粉砕法でトナーを製造する場合には、溶融混練工程において、他の樹脂と共にジエン単量体成分含有樹脂が溶融されている必要はなく、溶融された他の樹脂の中に分散した状態あっても良い。このような場合には、トナー中のジエン単量体成分含有樹脂は併用される他の樹脂中に分散された状態になる。ジエン単量体成分含有樹脂と他の樹脂をキシレン等の溶剤を用いて予め均一に溶解混合した場合には、ジエン単量体成分含有樹脂が他の樹脂中に微分散、または場合により相溶化される。このような均一化操作を実施せずに、ジエン単量体成分含有樹脂の粉末と他の樹脂を混練し、かつ、ジエン単量体成分含有樹脂の溶融温度未満で混練を行う場合には、ジエン単量体成分含有樹脂が粉末の状態でトナー中に分散されることとなるため、1μm以下、好ましくは0.5μm以下に微粉砕したジエン単量体成分含有樹脂を用いるのがよい。
【0168】
その他のトナーの製造方法として、分級工程にて得られた分級粉に流動化剤とともに、あるいは別々に超微粉化したジエン単量体成分含有樹脂を加えて充分混合し、トナー粒子表面にジエン単量体成分含有樹脂を固着させる方法もあり、この場合、分級粉中の樹脂にジエン単量体成分含有樹脂が含まれていても良いし、全く含まれていなくても良い。また、固着させた後にトナー粒子の平滑化及び球形化処理を行っても良い。さらに、固着後、あるいは球形化処理後のトナー粒子に重合開始剤、および必要に応じて添加される重合性単量体を吸着させて、表面に存在するジエン単量体成分含有樹脂と反応させることによりトナー粒子表面近傍の強度を増すことができる。
【0169】
また、ジエン単量体成分含有樹脂を有さないコアとなるトナー粒子に、ジエン単量体成分含有樹脂を有する単量体成分と重合開始剤からなる組成物を吸着させて、同様な効果を得ることも可能である。
【0170】
その他の方法として、特公昭56−13945号公報に記載の方法と同様に、ディスク又は多流体ノズルを用い、結着樹脂を構成するジエン単量体成分含有樹脂を含む溶融混合物を空気中に霧化し球形トナーを得る溶融スプレー法が挙げられる。また、ジエン単量体を含有しない重合体粒子を重合法により製造し、その後、重合体粒子の表面に微粒子状のジエン単量体成分を含む樹脂を付着させ、必要に応じて粒子の平滑化および球形化処理を行う方法が挙げられる。
【0171】
いずれの場合も、結着樹脂は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、ブロック共重合、グラフト化などを応用して重合することにより得られる。
【0172】
本発明のトナー全体を重合法により製造する場合には、単量体組成物にジエン単量体成分含有樹脂を溶解し、特公昭36−10231号公報、特開昭59−61842号公報に述ベられているような懸濁重合方法を用いて直接トナーを製造する方法、単量体には可溶で、得られる重合体には不溶な水系有機溶剤を用いて直接トナー製造する分散重合法または水溶性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを製造するソープフリー重合法に代表される乳化重合法により、本発明のトナーを得ることができる。また、ジエン単量体成分含有樹脂を有さないコア粒子にジエン単量体成分含有樹脂と、その他の樹脂の単量体(組成物)により表面層を設ける方法も採用することができ、あるいはジエン単量体成分含有樹脂を有するトナー粒子に重合開始剤、好ましくは親水性の高い重合開始剤にて表面に存在するジエン単量体成分含有樹脂をトナー粒子中に残存する、あるいは必要に応じて添加された単量体成分と反応させることによりトナー粒子表面近傍の強度を増すための工程を入れることが好適に用いられる。その際にジエン単量体成分含有樹脂と重合性単量体を併せて添加することも好ましい。
【0173】
また、加圧下にて、ジエン単量体成分含有樹脂、他の重合性ビニル系単量体、ワックス、着色剤を含有する重合性単量体組成物を懸濁重合、乳化重合あるいは分散重合することにより、本発明のトナーを得ることができる。
【0174】
上述したトナーの製造方法のうち、溶融スプレー法は、得られるトナーの粒度分布が広くなりやすく、分散重合法は、得られるトナーは極めてシャープな粒度分布を示すが、使用する材料の選択の幅が狭く、また有機溶剤を利用するため廃溶剤の処理や溶剤の引火性に関する観点から製造装置が複雑で煩雑化しやすい。また、乳化重合法は、トナーの粒度が比較的揃うという利点があるが、一般に生成する粒子の粒度が非常に細かく、トナーとしてそのまま使用することは困難であり、また、使用した水溶性重合開始剤の末端や乳化剤がトナー粒子表面に存在し、トナーの環境特性を低下させることがある。
【0175】
一方、粉砕法によって得られたトナー粒子を平滑化及び球形化処理することにより製造する方法、或いは懸濁重合法による製造が、トナーの円形度や円形度標準偏差を希望する範囲に収めることが容易であり、好ましい方法であるが、本発明では懸濁重合法による製造が最も好ましい製造方法である。
【0176】
また、懸濁重合法により本発明のトナーを製造する方法は、特にトナー粒子の形状制御が容易であり、また、ジエン単量体成分含有樹脂を結着樹脂の原料となる単量体組成物中に溶解すれば良いので、使用できる樹脂の種類が多く特に好ましい製造方法である。
【0177】
本発明においては、上述した如く、種々の製造方法を用いることができるが、重要なことは、粉砕法であれば樹脂の粉砕後、重合法であれば後述する重合転化率の時点で、トナー粒子に含有される成分の有する未反応の二重結合、特にジエン単量体に由来する成分の有する二重結合を反応させて、トナー粒子表面に架橋を形成することである。
【0178】
本発明においては、次の如き製造方法が特に好ましい。
【0179】
重合性ビニル系単量体中に、ジエン単量体成分含有樹脂、着色剤、ワックス、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等によって、均一に溶解又は分散せしめて重合性単量体組成物を調製する。通常の攪拌機又はホモミキサー、ホモジナイザーを用いて、分散安定剤を含有する水系媒体に該重合性単量体組成物を分散せしめる。好ましくは重合性単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように攪拌速度、攪拌時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の攪拌を行いながら、水系媒体中で重合性ビニル系単量体を重合してトナー粒子を生成する。重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに、ラジカル重合開始剤を新たに添加して、トナー粒子の表面近傍の強度を増す方法が好ましく挙げられる。
【0180】
本発明において、重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系重合開始剤及びジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤の如きラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが一般的には重合性単量体に対し0.5〜20質量%用いられる。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に、上記重合開始剤のうちから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせで使用される。
【0181】
重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに新たに添加される重合開始剤としては、上述した如き油溶性の重合開始剤であっても構わないが、下記の水溶性のラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0182】
水溶性のラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムの如き重合開始剤が挙げられ、これらの1つ又は2つ以上の組み合わせを用いることが可能である。水溶性のラジカル重合開始剤であると、製造時の添加が容易となり水溶液で添加可能であるため利用しやすく好ましい。さらに、水溶性、或いは親水性の高い重合開始剤は、トナー粒子表面に存在するジエン単量体含有樹脂に効率良くトナー粒子に作用するため、この点からも好ましい。
【0183】
逆に、油溶性のラジカル重合開始剤は、水に乳化、あるいは分散させて添加することが可能であるため、重合開始剤の選択肢を拡げて反応性を制御することが出来るという観点においては好ましい。
【0184】
上記ラジカル重合開始剤を新たに添加する際の使用量は、目的とする重合度により変化するが重合性単量体に対し0.5〜10質量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0185】
上記水系媒体としては、水、水/アルコール混合溶媒が挙げられ、好ましくは水が用いられる。懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部に対して、水100〜5000質量部を分散媒体として使用するのが好ましい。
【0186】
本発明のトナーの製造方法において、重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに、ラジカル重合開始剤を新たに添加することが好ましいが、10質量%に到達する前に新たに添加すると、重合反応の転化率が非常に低いため、粒子の形状が安定していない状態で重合性単量体に対する重合開始剤量が増加することになり、得られる結着樹脂成分のピーク分子量が低くなりすぎることがあるため好ましくない。ラジカル重合開始剤を新たに添加するタイミングとしてより好ましくは、転化率が20〜95質量%、特に25〜90質量%の範囲のときである。
【0187】
重合反応の転化率の計算は、例えば、以下のように測定することができる。
【0188】
ガスクロマトグラフを用いて系内に残存している予め作成しておいた検量線から未反応の重合性単量体を定量し、それを未転化率(%)として定義し、100から減じた値を転化率として求める。具体的には、以下の条件で内部標準法により測定することができる。
【0189】
(転化率:%)=100−(未反応重合性単量体の量より検量線から求められる未転化率)
サンプル:試料(重合反応液)5μlとジメチルフォルムアミド1μlとをバイアル瓶に入れ、密閉したものを用いる。
測定装置:HP6890(HP製)
キャリアガス:工業用純ヘリウム
スプリット(スプリット比100:1)、線速度35cm/秒
カラム:HP-INNOWax内径0.2mm、長さ50m、膜厚0.4μm
昇温:40℃で2分間、保持した後、毎分20℃の割合で200℃まで昇温する。
注入口温度:120℃
検出器:FlD 220℃
【0190】
製造方法に係る本発明は、ジエン単量体成分含有樹脂を含む結着樹脂の重合性二重結合を粒子表面近傍で反応させて三次元ネットワークを形成させることによりトナー粒子の強度を向上するための効率的な方法を提供するものであり、ラジカル重合開始剤を新たに添加する時点で、重合転化率が95質量%を越えていると、残存する重合性単量体が非常に少なく、粒子がほぼ固まった状態で重合開始剤を新たに添加することになるため、粒子中での分子運動が極めて制限されており、ジエン単量体成分含有樹脂を含む結着樹脂の重合性二重結合をうまく反応させることが出来なくなる傾向があるため好ましくない。一方、ラジカル重合開始剤を新たに添加する時点で、重合転化率が10質量%に達していない場合には、逆に、自由な分子運動が可能であるため、重合開始剤を新たに添加しても、粒子表面に三次元ネットワークを形成するようには、反応が起こらなくなってしまう。
【0191】
本発明では、新たに添加されるラジカル重合開始剤の10時間半減期温度をT1(℃)、添加される際の反応系温度をT2(℃)とする際、5≦(T2−T1)≦30の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすと効率よくラジカル重合開始剤が反応に関与するようになり好ましい。
【0192】
また、トナーを懸濁重合により製造する際、用いる分散安定剤としては、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンが挙げられる。これら分散安定剤は、重合性単量体組成物100質量部に対して0.2〜20質量部を使用することが好ましい。
【0193】
分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい粒子を得るために分散媒体中にて上記無機化合物の微粒子を生成しても良い。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速攪拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することによって得られる。
【0194】
これら分散安定剤の微細な分散のために、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。これは上記分散安定剤の所期の作用を促進するためのものであり、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウムの如きアニオン性界面活性剤、アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などのノニオン性界面活性剤、アルキルオニウム塩型のカチオン性界面活性剤、べタイン型やアミノ酸型の両性界面活性剤が挙げられる。
【0195】
重合反応時間としては、2〜24時間が好ましい。2時間未満だと重合性単量体の所望の転化率とならず未反応の重合性単量体が多くその除去工程が煩雑なものとなり、24時間を超えると反応時間が長すぎて生産性が低くなるため、2〜24時間が好ましい。
【0196】
また、重合温度は40℃以上、一般には50〜90℃の温度に設定すればよい。重合反応後半に昇温しても良く、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を反応系から留去しても良い。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄後、ろ過により回収し、乾燥する。
【0197】
また、本発明におけるトナーの製造方法において、重合度を制御するため公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いても良い。
【0198】
重合法によってトナーを製造する場合においては、トナー粒子の粒度分布制御や粒径の制御は、分散安定剤の種類もしくは添加量、機械的装置条件(例えばローターの周速、パス回数、攪拌羽根形状、容器形状)又は、水系媒体中での固形分濃度等を制御することにより調整することが出来る。
【0199】
<3>本発明の画像形成方法
本発明の画像形成方法は、帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を帯電させる帯電工程;帯電された静電潜像担持体に、静電潜像を形成させる静電潜像形成工程;静電潜像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持された本発明のトナーを付着させて、トナー像を静電潜像担持体上に形成させる現像工程;静電潜像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写させる転写工程;及び転写材に転写されたトナー像を定着させる定着工程を有する画像形成方法である。
【0200】
次に本発明の画像形成方法のいくつかの実施の形態を図に沿って具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0201】
図5は、一成分現像法で行われる画像形成装置を示す。
【0202】
本発明の画像形成方法においては、図5に示すとおり、トナー担持体と静電潜像担持体(以下、「感光ドラム」ともいう)とが、逆方向に回転してもよく、また、同方向に回転(図5において、トナー担持体202が矢印Cと反対方向に回転し、感光ドラム209が矢印D方向に回転する)してもよい。
【0203】
現像領域におけるトナー担持体表面の移動速度が、静電潜像担持体表面の移動速度に対し、1.05〜3.0倍の速度となるように設定することが好ましい。移動速度を1.05〜3.0倍となるように設定することで、上記トナー担持体上のトナー層は適度な攪拌効果を受けるため、静電潜像の忠実な再現が一層良好なものとなる。
【0204】
現像工程において、静電潜像担持体上の静電潜像とトナー担持体に薄層コートされたトナーとを接触させながら現像する際(以下、「接触現像」と略す。)には、特にトナー担持体の周速が、静電潜像担持体の周速に対し、1.05倍未満であると、静電潜像担持体上のトナーの受ける攪拌効果が不十分となり、良好な画像品質が望めない。また、ベタ黒画像等、広い面積にわたって多くのトナー量を必要とする画像を現像する場合、静電潜像へのトナー供給量が不足し画像濃度が薄くなってしまう。周速比が高まれば高まるほど、現像部位に供給されるトナーの量は多くなる。また潜像に対しトナーの脱着頻度が多くなるため、不要な部分(非画像部)のトナーは回収され、必要な部分(画像部)には付与されるという繰り返しにより、静電潜像に忠実な画像が得られるようになる。また、本発明の画像形成方法としては、後述する現像兼クリーニング工程を適用することも可能あり、現像兼クリーニング工程において、静電潜像担持体上に密着した転写残トナーが存在する場合には、静電潜像担持体表面とトナーの付着部分を周速差により転写残トナーの帯電性を調整し、その後に電界クリーニングにより回収するという操作が重要であることから、周速比は高いほど転写残トナーの回収には都合がよい。但し、逆に周速比が3.0を超える場合には、上記の如きトナーの過剰な帯電によって引き起こされる種々の問題(トナーの過度なチャージアップによる画像濃度低下等)の他に、機械的ストレスによるトナーの劣化やトナー担持体へのトナー固着が発生または促進されることがあり好ましくない。
【0205】
本発明における静電潜像担持体としては、a-Se、CdS、ZnO2、OPC、a-Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光ドラムもしくは感光ベルトが好適に使用される。
【0206】
また、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等の結着樹脂を含有する有機系感光層を有するOPC感光体(感光ドラムもしくは感光ベルト)も、転写性及びクリーニング性がよく、クリーニング不良、感光体へのトナー融着及び外添剤のフィルミングが起こりにくいため好ましい。
【0207】
また、本発明では、現像工程が非接触の現像方式である場合、トナー担持体の表面粗度Ra(μm)は、0.2〜1.5であることが好ましい。表面粗度Raを1.5以下とすることでトナー担持体のトナー搬送能力を抑制し、上記トナー担持体上のトナー層を薄層化すると共に、上記トナー担持体とトナーの接触回数が多くなるため、上記トナーの帯電性も改善されるので相乗的に画像品質が向上する。
【0208】
さらに、現像工程が接触現像の方式である場合、トナー担持体の表面形状は、その表面粗度Ra(μm)を0.2〜3.0となるように設定すると、高画質及び高耐久性を両立できることから好ましい。上記表面粗度Raは、トナー搬送能力及びトナー帯電能力と相関する。上記トナー担持体の表面粗度Raが3.0を超えると、上記トナー担持体上のトナー層の薄層化が困難となることがあるばかりか、トナーの帯電性が改善されないことがあるので画質の向上は望めない。3.0以下にすることでトナー担持体表面のトナーの搬送能力を抑制し、上記トナー担持体上のトナー層を薄層化すると共に、上記トナー担持体とトナーの接触回数が多くなるため、上記トナーの帯電性も改善されるので相乗的に画質が向上する。一方、表面粗度Raが0.2よりも小さくなると、トナーのコート量の制御が難しくなることがある。
【0209】
トナー担持体の表面粗度Raを上記の範囲にするには、例えば、トナー担持体の表層の研磨状態を変えることにより可能となる。即ち、トナー担持体表面の研磨を粗く行えば、その表面粗さを大きくすることができ、表面の研磨を細かく行えば、その表面粗さを小さくすることができる。本発明において、トナー担持体の表面粗度Raは、JlS表面粗さ「JIS B 0601」に基づき、表面粗さ測定器(サーフコーダSE−30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さである。具体的には、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さaとして2.5mmの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0210】
【外9】
【0211】
上記のような性質を有するトナー担持体として、表面に弾性層を有する、いわゆる弾性ローラが好ましく用いられる。
【0212】
弾性ローラの構成としては、芯金を用い、その外周に弾性層を被覆したものであり、弾性層の材料としては、シリコーンゴム、テフロンゴムが好ましく用いられる。
【0213】
使用される弾性層の硬度としては、アスカーC硬度における20〜65度のものが好適に使用される。
【0214】
また、トナー担持体の抵抗としては、体積抵抗値で102〜109Ω・cm程度の範囲が好ましい。静電潜像担持体の表面にピンホール等がある場合などに、102Ω・cmよりも低いと過電流が流れる恐れがあり、反対に109Ω・cmよりも高い場合は、摩擦帯電によるトナーのチャージアップが起こりやすく、画像濃度の低下を招きやすい。弾性層の体積抵抗値を上記範囲にするには、弾性材料に、カーボンブラック、酸化鉄の如き導電性付与剤を配合分散して調整することができる。
【0215】
トナー担持体上のトナー量は、規制部材により規制されるが、トナー規制部材としては、トナー担持体と一定間隔をおいて配置される規制部材や、トナー担持体と当接される弾性体からなる規制部材が挙げられる。
【0216】
トナー担持体上のトナー量は、0.1乃至1.5mg/cm2が好ましく、0.2乃至0.9mg/cm2がより好ましい。0.1mg/cm2よりも少ないと十分な画像濃度が得られにくく、1.5mg/cm2よりも多くなると個々のトナー粒子を均一に摩擦帯電することが難しくなり、カブリを生じる要因となる。
【0217】
本発明において、トナー担持体と一定間隔をおいて配置される規制部材としては、金属ブレード、磁性ブレードの如き強磁性金属ブレードであるドクターブレード、又は金属、樹脂、セラミックなどを用いた剛体ローラもしくはスリーブを用いても良く、それらの内部に磁気発生手段を入れても良い。
【0218】
また、トナー担持体と対向して当接される弾性体からなる規制部材としては、トナーを圧接塗布して薄層化するものであれば特に制限されないが、例えば、弾性ブレードや弾性ローラの如き弾性体が挙げられるが、弾性体からなるブレードが好ましい。
【0219】
トナー担持体と対向して当接されるとは、例えば、弾性ブレードの上辺部側である基部をトナー容器に固定し、可変部側をブレードの弾性に抗してトナー担持体の順方向あるいは逆方向にたわめた状態にして、ブレード内面側(逆方向の場合には外面側)をトナー担持体表面に適度の弾性押圧を持って当接させることである。このような装置によると、環境の変動よる影響が小さく、安定、且つ緻密なトナー層がトナー担持体上に形成されるようになる。その理由は必ずしも明確ではないが、上記弾性体によって上記トナー担持体表面と強制的に摩擦されるためトナーの環境変化による挙動の変化に関係なく常に同じ状態でトナーに対する帯電の付与が行われるためと推測される。
【0220】
図5に、トナー層厚を規制するための規制部材として、現像ブレード201を示す。この現像ブレード201はトナー層を介してトナー担持体202に接触している。この時の接触圧は、5〜50g/cmが好ましい範囲である。
【0221】
5g/cmよりも小さいとトナーコート量の制御が困難となることに加え、トナーに対しての均一な摩擦帯電の付与も難しくなることがあり、カブリが生じる原因となる。一方、50g/cmよりも大きくなるとトナー粒子が過剰な負荷を受けることがあるため、粒子の変形や、現像ブレードあるいはトナー担持体へのトナーの融着等が発生しやすくなり、好ましくない。
【0222】
弾性の規制部材には所望の極性にトナーを帯電させるのに適した摩擦帯電系列の材質を選択することが好ましく、シリコーンゴム、ウレタンゴム、NBRの如きゴム弾性体、ポリエチレンテレフタレートの如き合成樹脂弾性体、ステンレス、鋼、リン青銅の如き金属弾性体の中から選択して用いることができる。また、それらの複合体であっても良い。
【0223】
また、弾性の規制部材とトナー担持体に耐久性が要求される場合には、金属弾性体のスリーブ当接部に樹脂やゴムを当たるように貼り合わせたり、コーティング塗布したものが好ましい。
【0224】
更に、弾性の規制部材中に有機物や無機物を添加してもよく、溶融混合させても良いし、分散させても良い。例えば、金属酸化物、金属粉、セラミックス、炭素同素体、ウィスカー、無機繊維、染料、顔料、界面活性剤を添加することにより、トナーの帯電性をコントロールできる。特に、弾性体がゴムや樹脂の如き成型体の場合には、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化亜鉛の如き金属酸化物微粉末、カーボンブラック、一般にトナーに用いられる荷電制御剤を含有させることも好ましい。
【0225】
また、トナーへのほぐし作用のため、トナー担持体上のトナー量を規制する規制部材である現像ブレード、トナー担持体にトナーを供給する供給部材である供給ローラ、ブラシ部材に直流電界および/又は交番電界を印加することも好ましい構成である。ほぐし作用が働くことによって、トナー担持体における均一薄層塗布性、均一帯電性がより向上し、供給部位におけるトナーの供給・はぎとりがよりスムーズになされるため、十分な画像濃度を有する良質の画像を得ることができるようになる。
【0226】
本発明における現像工程において、静電潜像担持体とトナー担持体がある一定の間隔を有し、両者間に交番電界を形成することにより現像することも可能であり、このような現像方法として、具体的には、ジャンピング現像方法が挙げられる。上記で「一定の間隔」とは、トナー担持体上のトナー層の厚さ以上に設定されていればよい。静電潜像担持体とトナー担持体との間に交番電界を形成するには、例えば、両者間に交流バイアスを印加することにより行いうる。
【0227】
上記の接触現像方法における現像工程としては、例えば図6に示すような現像装置31を具備する現像手段を用い現像を行うことができる。具体的には、電源36により、直流あるいは交流バイアスをトナー担持体37に印加しつつ、塗布ローラ32より供給され規制部材である現像ブレード33でトナー層厚を規制されたトナー34が感光ドラム35に接触している状態で、現像が行われる。トナー担持体としては、弾性ローラを用いることが好ましい。交番電界を用いる場合には、三角波、矩形波、正弦波あるいはデューティー比(Duty比)を変えた波形や、定期的に交番をオフした波形等種々選択して用いることもできるが、本発明においては感光ドラムへの電圧的負荷の少ない直流電界が好適に使用され、印加バイアスは感光ドラム上の暗部電位(帯電工程直後の電位)と明部電位(露光工程後の露光部の電位)のと間の適当な値に設定される。
【0228】
本発明の画像形成方法における現像工程の条件としては、ジャンピング現像方法又は接触現像方法のいずれの場合においても反転現像方法を用いることが好ましい。さらに、転写工程において静電潜像担持体上に残存した転写残トナーを、現像工程中にトナー担持体により回収する現像兼クリーニング工程(「クリーナレスプロセス」ともいう)を併用することは、装置の大幅な小型化が可能となるため好ましい。
【0229】
即ち、反転現像の場合、この現像兼クリーニング工程は、現像バイアスによる静電潜像担持体の暗部電位からトナー担持体にトナーを回収する電界と、トナー担持体から静電潜像担持体の明部電位へトナーを付着させる電界の作用でなされる。
【0230】
現像時のみでなく、転写工程後であり現像工程の前に、直流あるいは交流のバイアスを転写残トナーに印加し、静電潜像担持体上の残余のトナーを回収出来るような電位に制御しても良い。このとき直流バイアスは、明部電位と暗部電位の間に位置する。
【0231】
また、上記接触現像方法の場合、現像兼クリーニング工程においては、静電潜像担持体である感光体と、トナーを介して感光体表面に対向する弾性ローラとの間に働く電界によって、転写残トナーのクリーニングが行われるので、弾性ローラ表面あるいは表面近傍が電位をもち、感光体表面とトナー担持体表面の狭い間隙で電界を有する必要性がある。このため、弾性ローラの弾性ゴムが中抵抗領域に抵抗制御されて感光体表面との導通を防ぎつつ電界を保つか、または導電性ローラの表面層に薄層の絶縁層を設ける必要がある。さらには、導電性ローラ上に感光体表面に対向する側を絶縁性物質により被覆した導電性樹脂スリーブあるいは、絶縁性スリーブで感光体に対向しない側に導電層を設けた構成も可能である。また、トナー担持体として剛体ローラを用い、感光体をベルトのごときフレキシブルな物とした構成も可能である。トナー担持体としての上記ローラの抵抗としては102〜109Ω・cmの範囲が好ましい。
【0232】
本発明の画像形成方法において、現像兼クリーニング工程を用いた場合の単色での画像形成方法について図5を用いて説明する。
【0233】
図5において、現像装置200はトナー204を収容しており、静電潜像担持体である感光体209と接触して矢印C方向に回転するトナー担持体202と、トナー量の制及び帯電付与のための規制部材である現像ブレード201と、トナー204をトナー担持体202に付着させ且つトナー担持体202との摩擦でトナーへの帯電付与を行うため矢印B方向に回転する塗布ローラ203を具備している。トナー担持体202には現像バイアス電源217が接続されている。塗布ローラ203にもバイアス電源218が接続されており、負帯電性トナーを使用する場合は現像バイアスよりも負側に、正帯電性トナーを使用する場合は現像バイアスよりも正側に電圧が設定される。
【0234】
転写装置206には感光体209と反対極性の転写バイアス電源216が接続されている。ここで、感光体209とトナー担持体202の接触部分における回転方向の長さ、いわゆる現像当接幅は0.2〜8.0mmが好ましい。0.2mm未満では現像量が不足して満足な画像濃度が得られず、転写残トナーの回収も不十分となることがある。8.0mmを越えてしまうと、トナーの供給量が過剰となり、カブリが生じやすく、また、感光体の摩耗にも悪影響を及ぼすことがある。
【0235】
一次帯電部材としての帯電ローラ210は、感光体209に接触して直接帯電を行う。一次帯電部材210には、感光体209表面を一様に帯電するようにバイアス電源215が接続されている。ここで用いている一次帯電部材210は、中心の芯金210bとその外周を形成した導電性弾性層210aとを基本構成とする帯電ローラである。帯電ローラ210は、感光体209表面に押圧力を持って当接され、感光体209の回転に伴い従動回転する(帯電ローラ210は、矢印A方向に回転する)。
【0236】
帯電ローラを用いたときの好ましいプロセス条件としては、ローラの当接圧が5〜500g/cmであり、印加バイアスとしては直流バイアスあるいは直流バイアスに交流バイアスを重畳したものが用いられ、特に限定されないが、本発明においては直流バイアスのみの印加バイアスが好適に用いられ、この場合のバイアス値としては、絶対値で0.2〜5.0kVの範囲で使用される。
【0237】
本発明の画像形成装置においては、種々の帯電方法を使用することができるが、上述したように、帯電部材と静電潜像担持体を接触させて、静電潜像担持体を帯電させる接触帯電法が好適に使用される。接触帯電法を用いる場合に、転写残トナーが多量に存在すると帯電部材に付着してしまい、結果、帯電不良を引き起こし、画像上に帯電ムラが発生することがある。即ち、接触帯電法により帯電を行う場合には、静電潜像担持体に接することのないコロナ放電等により帯電を行う場合に比べて、転写残トナー量をより少なく抑える必要がある。これらのことから、接触帯電法においては、平均円形度及び円形度標準偏差が厳密に規定された本発明のトナーを用いることが好ましい。
【0238】
この他の接触帯電法における帯電部材としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法がある。これらの接触帯電法における帯電は、非接触のコロナ帯電に比べて、高電圧を必要とせず、またオゾンの発生を抑制することができるため好ましい。接触帯電手段としての帯電ローラおよび帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けても良い。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)が適用可能である。
【0239】
一次帯電工程に次いで、発光素子からの露光211によって感光体209上に情報信号に応じた静電潜像を形成し、トナー担持体202と当接する位置においてトナーにより静電潜像を現像しトナー像を形成する。さらに、本発明の画像形成方法は、デジタル潜像を現像するような場合に、好適な現像を行うことが可能となる。次に、上記トナー像は、転写装置206により転写材205上に転写される。このように本発明の画像形成方法において、感光体209と転写装置206は、転写材205を介して当接されていることが好ましい。
【0240】
更に転写材205上の転写トナー212は、加熱体としての加熱ローラ208と加圧部材としての加圧ローラ207とを有する定着装置を通過して、転写材に定着され、永久画像を得る。
【0241】
定着工程としては特に制限はないが、本発明においては、加熱定着装置を用いる定着工程が好ましく、さらには、上記のような加熱ローラと、それに対向圧接される加圧ローラとの間を通過させて加熱加圧定着する工程がより好ましい。
【0242】
上記加熱ローラとしては、内部にハロゲンヒータの如き発熱体を内蔵したものが挙げられ、上記加圧ローラは、弾性体からなるものが挙げられる。
【0243】
なお、加熱加圧定着手段としては、加熱ローラと加圧ローラを基本構成とする上記のような熱ローラ方式以外に、フィルムを介してヒーターにより加熱定着する方式も、本発明のトナーを良好なマッチングを示すことから用いることができる。この様な方式として具体的には、図3、図4に示されるが、フィルム端部規制フランジ25は、定着フィルム22の左右両端部を支持している。筒状の定着フィルム22内にステー20が配置され、給電コネクタ26および断電部材27と一体となって、加熱体21を装備して定着加熱部を構成する。フィルム端部規制フランジ25は、コイルばね24をばね受け部材(不図示)との間に縮設することによりステー20に押し下げ力を作用させている。これにより定着フィルム22の下面と加圧ローラ23の上面とで所定幅の定着ニップ部が形成される。加熱体21は、ヒーター基板21aと発熱体21bと表面保護層21cと検温素子21dからなる。加圧ローラ23はシリコーンゴム等の発泡体を下層に有するスポンジ加圧ローラである。定着フィルム22には、転写材との接触面に耐熱性フィルムを使用することが好ましい。耐熱性フィルムとしては、具体的にPTFEの如き樹脂に導電物質を分散させた、低抵抗の離型層を有する厚さのものを使用することができる。
【0244】
例えば、加熱体21の検温素子21dの表面温度を180℃となるようにし、加熱体21とシリコーンゴムの発泡体を下層に有するスポンジ加圧ローラ23との間の総圧を6kg、加圧ローラ23と定着フィルム22のニップを8mmとする。定着フィルム22には、転写材との接触面にPTFE(高分子量タイプ)に導電性物質を分散させた低抵抗の離型層を有する厚さ60μmの耐熱性ポリイミドフィルムを使用することができる。
【0245】
一方、転写されずに感光体209上に残った転写残トナー213は、感光体209と帯電ローラ210の間を通過して、再び現像当接部に到達し、現像兼クリーニング工程によりトナー担持体202を介して現像器200内に回収される。このように転写後の感光体上の転写残トナーは、現像兼クリーニング工程により回収されるが、このとき回収されたトナーは、現像器に回収され、再度現像に使用される。
【0246】
また、本発明の画像形成方法は、中間転写方式を用いたフルカラーでの画像形成方法でも良く、上記した接触現像方式を好適に使用することができる。
【0247】
図2は、中間転写体として中間転写ベルトを用いたカラー画像形成装置(複写機あるいはレーザビームプリンタ)の一例である。本発明の画像形成方法において用いるトナーは、上記した本発明のトナーとする。また、中間転写ベルトを用いる以外は、上記の画像形成装置と同様のものを用いた他の画像形成方法を利用できる。
【0248】
第1の静電潜像担持体としてのドラム状の電子写真感光体である感光ドラム101は、矢印のX方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。感光ドラム101は回転過程で、1次帯電器102により所定の極性電位に一様に帯電処理され、次いで像露光手段(不示図)による露光103を受ける。このようにして目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばイエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成される。
【0249】
次いで、その静電潜像が第1の現像器(イエロー色現像器141)により第1色であるイエロー成分像に現像される。このとき第2?第4の現像器、即ち、マゼンタ現像器142、シアン色現像器143及びブラック色現像器144は作動しておらず、感光ドラム101には作用していないので、上記第1色のイエロー成分画像は上記第2〜第4の現像器による影響を受けない。
【0250】
中間転写ベルト120は矢印Wの方向に感光ドラム101と同じ周速度で回転駆動される。
【0251】
感光ドラム101上に形成された上記第1色のイエロー成分像が、感光ドラム101と中間転写ベルト120との当接部を通過する過程で、1次転写ローラ162を介してバイアス電源129から中間転写ベルト120に印加される1次転写バイアスによって形成される電界により、中間転写ベルト120の外周面に転写(1次転写)されていく。
【0252】
中間転写ベルト120に対応する第1色のイエロートナー像の転写を終えた感光ドラム101の表面は、クリーニング装置113によりクリーニングされる。
【0253】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像を形成し、順次中間転写ベルト120上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
【0254】
2次転写ローラ163は、2次転写対向ローラ164に対応し平行に軸受させて中間転写ベルト120の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0255】
トナー像を感光ドラム101から中間転写ベルト120へ転写するための1次転写バイアスは、トナーとは逆極性でバイアス電源129から印加される。その印加電圧は例えば、+100V〜+2kVの範囲である。
【0256】
感光ドラム101から中間転写ベルト120へ第1色〜第3色のトナー像を1次転写する際には、中間転写ベルト120から2次転写ローラ163を離間することも可能である。図2の(b)の如く、転写残トナー帯電部材152を有するような場合には、これも中間転写ベルト120から離間する。尚、転写残トナー帯電部材には、バイアス電源126より電圧が印加されている。
【0257】
ガイド110を通って、給紙ローラ111から中間転写ベルト120と2次転写ローラ163との当接部分に所定のタイミングで第2の画像担持体である転写材Pが給送される。2次転写バイアスが、バイアス電源128によって2次転写ローラ163に印加されることにより、中間転写ベルト120上に転写されたフルカラー画像は、転写材Pに2次転写される。トナー像が転写された転写材Pは、定着器115へ導入され加熱定着される。
【0258】
転写材Pへの画像転写終了後、中間転写ベルト120には転写残トナークリーニング装置150が当接され、中間転写ベルト120の表面が清掃される。
【0259】
また、中間転写体として、中間転写ベルトに変えて中間転写ドラムも同様に使用することが出来る。その一例について、以下に述べる。
【0260】
中間転写ドラムは、パイプ状の導電性芯金と、その外周面に形成した中抵抗の弾性体層からなる。芯金は、プラスチックのパイプに導電性メッキを施したものでも良い。
【0261】
中抵抗の弾性体層としては、シリコーンゴム、テフロンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンの三元共重合体)の如き弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素の如き導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗)を105〜1011Ω・cm程度の中抵抗に調整した、ソリッドあるいは発泡肉質の層が好適に用いられる。
【0262】
中間転写ドラムは、静電潜像担持体に対して並行に軸受けさせて静電潜像担持体の下面部に接触して配設されており、静電潜像担持体と同じ周速度で静電潜像担持体と同方向または逆方向に回転する。
【0263】
中間転写ドラムに対して並行に軸受けさせて中間転写ドラムの下面部に接触させて転写装置が配設され、転写装置は例えば転写ローラまたは転写ベルトであり、中間転写ドラムと同じ周速度で接触部において同方向に回転する。
【0264】
転写装置は直接中間転写ドラムと接触するように配設されていて、転写ローラの場合、中心の芯金とその外周を形成した導電性弾性層とを基本構成とするものである。
【0265】
中間転写ドラムおよび転写ローラとしては、一般的な材料を用いることが可能である。中間転写ドラムの弾性層の体積固有抵抗値をより小さく設定することで転写ローラへの印加電圧が軽減でき、転写材上に良好なトナー像を形成できると共に転写材の中間転写ドラムへの巻き付きを防止することができる。特に中間転写ドラムの弾性層の体積抵抗値が、転写ローラの弾性層の体積抵抗値の10倍以上であることが特に好ましい。
【0266】
例えば、転写ローラの導電性弾性層はカーボンの如き導電材を分散させたポリウレタン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体(EPDM)の如き体積抵抗値106〜1010Ω・cm程度の弾性体でつくられる。転写ローラの芯金には低電圧電源によりバイアスが印加されており、バイアス条件としては、絶対値で0.2〜10kVが好ましい。
【0267】
なお、上記において、現像兼クリーニング工程を有する一成分現像法による画像形成方法、又は中間転写ベルトおよび中間転写ドラムを有する画像形成装置を用いた中間転写方式の画像形成方法について説明したが、本願発明のトナーは、上記以外の画像形成方法においても好適に用いることができる。
【0268】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0269】
以下の配合における部数は全て質量部である。
【0270】
<1>ジエン単量体成分含有樹脂の製造
以下のようにジエン単量体成分含有樹脂1〜10までを製造した。
【0271】
<ジエン単量体成分含有樹脂1の製造>
減圧可能な反応容器に、スチレン80質量部と2,2'-アゾビスイソブチロニトリル1質量部及びベンゼン500質量部を加え、これに20質量部の1,3-ブタジエンを液化計量器を通して蒸留により仕込み、次いで溶存空気の泡がなくなるまで減圧脱気を繰り返し、真空下に溶封した。これを60℃の恒温槽中で振とうしながら、重合させた。重合終了後、封管を開け内容物をメタノール中に投じ再沈殿させた。上澄みをデカンテーションし、沈殿物をメタノールにて洗浄した後に、40℃、200Pa(1.5mmHg)で24時間減圧乾燥してスチレンブタジエン共重合体(ジエン単量体成分含有樹脂1)を得た。この重合体の組成比は、以下のようにして求めた。その結果、スチレン/ブタジエンの質量比は、80/20であった。原料の混合比率を表2に示し、特性値を表3に示す。
【0272】
ジエン単量体に由来する成分の含有量の測定は、1H−NMRを用いて以下のようにして行った。
【0273】
十分に洗浄及び乾燥した重合体50〜100mgを秤量し、1体積%テトラメチルシランを含有した重水素化溶媒1.0mlに一昼夜溶解し、必要に応じてメンブランフィルターで不溶分を除いた後、直径10mmのサンプルチューブに入れ、FT−NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)を用いて測定した。
【0274】
【表2】
【0275】
【表3】
<ジエン単量体成分含有樹脂2の製造>
使用した単量体の種類及び量を表2に示すとおりに変える以外は、ジエン単量体成分含有樹脂1の製造と同様にしてジエン単量体成分含有樹脂2を得た。その特性値を表3に示す。
【0276】
<ジエン単量体成分含有樹脂3の製造>
セプタムキャップを装備した耐圧ビンに水126質量部、不均化ロジン酸カリウム3.3質量部、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.07質量部、テトラエチレンペンタミン0.07質量部、スチレン50質量部、第三ドデシルメルカプタン0.17質量部を仕込み、さらに液化計量器を使用してイソプレン9質量部を仕込み、イソプレンを2質量部気化させて内部の空気を追い出して栓をした。5℃の回転式重合相の回転板に取り付け30分間攪拌後、注射器を用いてクメンヒドロペルオキシド0.1質量部とスチレン3.5質量部の溶液を注入し重合を開始した。72時間後にジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム10%水溶液3.5質量部を注入して重合を停止させ、スチームを吹き込んで未反応モノマーを追い出した。共重合体の2%に相当するフェニル−6−ナフチルアミンを添加後、25%食塩水、続いて1%硫酸を注いで共重合体を凝固させ水洗後、乾燥させてジエン単量体成分含有樹脂3を得た。その特性値を表3に示す。
【0277】
<ジエン単量体成分含有樹脂4の製造>
使用した単量体の種類及び量を表2に示すとおりに変える以外は、ジエン単量体成分含有樹脂3の製造と同様にしてジエン単量体成分含有樹脂4を得た。その特性値を表3に示す。
【0278】
<ジエン単量体成分含有樹脂5の製造>
スチレン85質量部、ブタジエン15質量部、脂肪酸ナトリウム5質量部、イオン交換水200質量部を混合し、重合器であるオートクレーブ中に入れた。次いでn−ドデシルメルカプタン3.5質量部、過硫酸カリウム0.2質量部を加え、50度で15時間乳化重合させ、ジエン単量体成分含有樹脂5を得た。その特性値を表3に示す。
【0279】
<ジエン単量体成分含有樹脂6の製造>
30lオートクレーブにベンジルナトリウム114質量部、トルエン368質量部、n−ヘキサン9900質量部を窒素気流下で仕込み、30℃にした後、ブタジエン8185質量部を30℃に保ちながら2時間かけて滴下後、メタノール200質量部を加え重合を停止した。次に白土1000質量部を加え激しく攪拌した後、ろ過しアルカリを含まない透明なポリマー溶液を得た。次にこのポリマー溶液から未反応ブタジエン、トルエン、n−ヘキサンを留去し、数平均分子量1900のジエン単量体成分含有樹脂6を合成した。その特性値を表4に示す。
【0280】
【表4】
<ジエン単量体成分含有樹脂7の製造>
ジエン単量体成分含有樹脂6を1000質量部、無水マレイン酸150質量部、キシレン300質量部、アンチゲン3C(住友化学商品名)2質量部を2lオートクレープに仕込み窒素気流下に190℃で8時間反応させた。次に未反応無水マレイン酸、キシレンを減圧下で留去し、数平均分子量2000のマレイン化ポリブタジエン(ジエン単量体成分含有樹脂7)を合成した。
【0281】
マレイン化ポリブタジエン(A)’中の酸基の構造は、大部分が下記(IV)で示されるものである。
【0282】
【外10】
【0283】
また、一部空気中や溶媒などに含まれる水により加水分解した下記式(V)の構造のものも含まれている。
【0284】
【外11】
【0285】
ジエン単量体成分含有樹脂7の特性値を表4に示す。
【0286】
<ジエン単量体成分含有樹脂8の製造>
ジエン単量体成分含有樹脂6の製造例で、使用した原材料のブタジエンをイソプレン6500質量部に変える以外はジエン単量体成分含有樹脂6の製造と同様にしてジエン単量体成分含有樹脂8を得た。その特性値を表4に示す。
【0287】
<ジエン単量体成分含有樹脂9の製造>
コンデンサー、過酢酸仕込み口、N2導入管を備えたジャケット付き2l反応器にジエン単量体成分含有樹脂8の固形分46.3%の酢酸エチル溶液400質量部を仕込んだ。次に過酢酸280質量部(30%、酢酸エチル溶液)に2−エチルへキシルトリポリリン酸ナトリウム0.2質量部を加え溶解させた。その後50℃に反応温度を保持しながら約4時間で過酢酸溶液を滴下した。その後50℃でさらに6時間保った。
【0288】
次いで、680質量部の精製水を加え30分攪拌後50℃で静置した。30分後、分液した水相を徐々に抜き取った。次に酢酸エチル300質量部を加え、さらに精製水800質量部を加え30分攪拌した後、50℃に維持しながら30分静置して水相を抜き取った。さらに精製水700質量部を加え50℃で30分攪拌した。次いで50℃で30分間静置し、水相を抜き取り、固形分30.1%の酢酸エチル溶液650質量部を得た。
【0289】
続いて、得られた上層液を薄膜式蒸発器に50℃、2700〜6700Pa(20〜50mmHg)及び300ml/hという条件で仕込んで、目的のエポキシ基を有するジエン単量体成分含有樹脂9を180質量部得た。その特性値を表4に示す。
【0290】
<ジエン単量体成分含有樹脂10の製造>
コンデンサー、N2導入管を備えたジャケット付き2l反応器に、合成したジエン単量体成分含有樹脂7の1150質量部にグリシジルメタクリレート150質量部を加えて、反応容器中で60℃に加熱して12時間反応させて、ジエン単量体成分含有樹脂10を1300質量部得た。その特性値を表4に示す。
【0291】
<2>ジエン単量体成分含有樹脂と併用する樹脂の製造
以下のように樹脂1及び2を製造した。
【0292】
<樹脂1の製造>
温度計、ステンレス攪拌棒、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を装備したガラス製のセパラブルフラスコに、キシレン200質量部を入れ還流温度まで昇温した。これにスチレン80質量部、アクリル酸−n−ブチル20質量部およびジ−tert−ブチルパーオキサイド2.3質量部の混合液を滴下後、キシレン還流下、7時間で溶液重合を完了し、低分子量樹脂溶液を得た。
【0293】
一方、スチレン65質量部、アクリル酸ブチル25部、マレイン酸モノブチル10質量部、ポリビニルアルコール0.2質量部、脱気水200質量部、過酸化ベンゾイル0.5質量部を混合懸濁分散させた。上記懸濁分散溶液を加熱し、窒素雰囲気下において85℃に24時間保持して重合を完結させ、高分子量樹脂を得た。
【0294】
上記高分子量樹脂30質量部を前記の低分子量樹脂70質量部を含有する低分子量樹脂溶液中に投入し、溶媒中に完全に溶解せしめ混合を行い、その後、溶媒を留去して樹脂1を得た。
【0295】
上記樹脂1を分析したところ、低分子量側ピーク分子量は1万、高分子量側ピーク分子量は56万、重量平均分子量(Mw)は30万、数平均分子量(Mn)は5.5万であった。また、ガラス転移温度は55℃であった。
【0296】
<樹脂2の製造>
樹脂1の製造の場合と同様にして、低分子量樹脂溶液を得た。
【0297】
一方、スチレン75質量部、アクリル酸ブチル25部、ポリビニルアルコール0.2質量部、脱気水200質量部、過酸化ベンゾイル0.5質量部を混合懸濁分散させた。上記懸濁分散溶液を加熱し、窒素雰囲気下において85℃に24時間保持して重合を完結させ、高分子量樹脂を得た。
【0298】
上記高分子量樹脂30質量部を前記の低分子量樹脂70質量部を含有する低分子量樹脂溶液中に投入し、溶媒中に完全に溶解せしめ混合を行い、その後、溶媒を留去して樹脂2を得た。
【0299】
上記樹脂2を分析したところ、低分子量側ピーク分子量は1.2万、高分子量側ピーク分子量は58万、重量平均分子量(Mw)は30万、数平均分子量(Mn)は5.5万であった。また、ガラス転移温度は55℃であった。
【0300】
<3>トナーの製造
以下のように、本発明のトナー1〜12及び比較用のトナーとして比較用トナー1〜6を製造した。
【0301】
<トナー1の製造>
・樹脂1 100質量部
・ジエン単量体成分含有樹脂1 10質量部
・カーボンブラック(BET比表面積=90m2/g) 10質量部
・負荷電性制御剤(前記化合物(II)) 2質量部
・低分子量ポリエチレン(吸熱ピークの極大値=115℃) 5質量部
上記材料をブレンダーにて混合し、これを160℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕した後、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕した。
【0302】
次いで、ローターを回転して機械的衝撃量を与える装置を用いて、表面改質処理を行い、得られた粒子を分級して分級粉1とした。一方、高速攪拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を備えた2lの4つ口フラスコ中にイオン交換水650質量部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液500質量部を投入し、回転数を12000rpmに調整し、70℃に加温せしめた。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液80質量部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤(リン酸カルシウム塩)を含む水系分散媒体を調製した。分散安定剤を含有する水系分散媒体へ上記分級粉1の127質量部を徐々に投入し、60℃に加温して同温度を保持し、そこへt−ブチルパーオキシネオデカノエート0.7質量部をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01質量部とイオン交換水20質量部に超音波分散せしめた分散液を5分間かけて添加し、その後同温度で5時間保持して反応を行った。反応終了後、懸濁液を冷却し、次いで希塩酸を添加し分散安定剤を除去せしめた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥させ、反応処理粒子Aを得た。
【0303】
上記反応処理粒子Aの100質量部とシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粉体(BET比表面積240m2/g)1.2質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本発明のトナー1とした。
【0304】
トナー1の平均円形度は0.953、円形度標準偏差は0.039、円相当個数平均径D1は5.3μm、高分子量側ピーク分子量は58万、低分子量側ピーク分子量は1.1万であった。
【0305】
<トナー2の製造>
結着樹脂の種類、および添加量を変える以外はトナー1の製造と同様にしてトナー2を得た。使用した材料の種類と量を表5に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0306】
【表5】
【0307】
<トナー3の製造>
高速攪拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を備えた2lの4つ口フラスコ中にイオン交換水650質量部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液500質量部を投入し、回転数を12000rpmに調整し、70℃に加温せしめた。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液80質量部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤(リン酸カルシウム塩)を含む水系分散媒体を調製した。
【0308】
一方、分散質として、
・スチレン 82質量部
・2−エチルへキシルアクリレート 18質量部
・カーボンブラック(BET比表面積=90m2/g) 10質量部
・ジエン単量体成分含有樹脂1 10質量部
・ワックス(エステルワックス、吸熱ピークの極大値=76℃) 7質量部
・負荷電性制御剤(化合物(II)) 2質量部
上記混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散させた後、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し重合性単量体組成物を調製した。
【0309】
次に、前記水系分散媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、内温70度の窒素雰囲気下で、高速攪拌機の回転数を12000rpmに維持しつつ、10分間攪拌し、上記重合性単量体組成物を造粒した。その後、攪拌器をプロペラ攪拌羽根に換え50rpmで攪拌しながら同温度で2時間保持した時点で、過硫酸カリウム0.4質量部をイオン交換水20質量部に溶解せしめた溶液を5分間かけて添加し、さらに同温度で8時間保持して重合を完了した。過硫酸カリウムを添加した時点での重合反応の転化率は、43%であった。
【0310】
重合終了後、懸濁液を冷却し、次いで希塩酸を添加し分散安定剤を除去せしめた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥させ、重合体粒子3を得た。上記重合体粒子3は、質量平均径が6.8μmであった。
【0311】
上記重合体粒子3の100質量部とシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粉体(BET比表面積240m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して本発明のトナー3とした。
【0312】
トナー3の平均円形度は0.989、円形度標準偏差は0.021、円相当個数平均径D1は5.5μm、ピーク分子量は2.6万であった。
【0313】
<トナー4〜10の製造>
結着樹脂の種類、添加量及び反応処理時の反応温度を変える以外はトナー3の製造と同様にしてトナー4〜10を得た。使用した材料の種類と量を表6に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0314】
【表6】
【0315】
<トナー11及び12の製造>
結着樹脂の種類、添加量及び反応処理時の反応温度を変えて、表6に示す重合転化率のときに表中の有機過酸化物をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01質量部とイオン交換水に超音波分散せしめた分散液を5分間かけて添加した以外は、トナー3の製造と同様にしてトナー11及び12を得た。使用した材料の種類と量を表6に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0316】
<比較用トナー1の製造>
原材料の種類、添加量を変える以外はトナー1の製造と同様にして比較用トナー1を得た。使用した材料の種類と量を表5に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0317】
<比較用トナー2の製造>
原材料の種類、添加量を変え、開始剤による反応処理を行わない以外はトナー1の製造と同様にして比較用トナー2を得た。使用した材料の種類と量を表5に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0318】
<比較用トナー3〜6製造>
結着樹脂の種類、および添加量を変える以外はトナー3と同様にして比較用トナー3〜6を得た。使用した材料の種類と量を表7に、トナーの分析結果を表8に示す。
【0319】
<比較用トナー7製造>
高速攪拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を備えた2lの4つ口フラスコ中にイオン交換水650質量部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液500質量部を投入し、回転数を12000rpmに調整し、70℃に加温せしめた。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液80質量部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤(リン酸カルシウム塩)を含む水系分散媒体を調製した。
【0320】
一方、分散質として、
・スチレン 82質量部
・2−エチルへキシルアクリレート 18質量部
・カーボンブラック(BET比表面積=90m2/g) 10質量部
・不飽和ポリエステル 10質量部
・ワックス(エステルワックス、吸熱ピークの極大値=76℃) 7質量部
・負荷電性制御剤(化合物(II)) 2質量部
上記混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散させた後、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し重合性単量体組成物を調製した。
【0321】
次に、前記水系分散媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、内温70度の窒素雰囲気下で、高速攪拌機の回転数を12000rpmに維持しつつ、10分間攪拌し、上記重合性単量体組成物を造粒した。その後、攪拌器をプロペラ攪拌羽根に換え50rpmで攪拌しながら同温度で2時間保持した時点で、スチレンモノマー8.2質量部、n-ブチルアクリレート1.8質量部、不飽和ポリエステル2.5質量部、過硫酸カリウム0.4質量部をイオン交換水40質量部に溶解・分散せしめた重合性単量体組成物を60分間かけて添加し、さらに同温度で8時間保持して重合を完了した。重合性単量体組成物を添加した時点での重合反応の転化率は、60%であった。
【0322】
重合終了後、懸濁液を冷却し、次いで希塩酸を添加し分散安定剤を除去せしめた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥させ、重合体粒子7を得た。上記比較用重合体粒子7は、質量平均径が7.0μmであった。
【0323】
上記重合体粒子7の100質量部とシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粉体(BET比表面積240m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して比較用トナー7とした。
【0324】
比較用トナー7の平均円形度は0.975、円形度標準偏差は0.031、円相当個数平均径D1は5.8μm、ピーク分子量は3.0万であった。トナーの分析結果を表8に示す。
【0325】
【表7】
【0326】
【表8】
【0327】
<実施例1>
上記の如くして得られた本発明のトナー1〜12、及び比較用トナー1〜7を以下のようにして評価した。
【0328】
まず、本実施例に用いた画像形成装置について説明する。本実施例中では、市販のレーザービームプリンターLBP−PX(キヤノン製)を非磁性一成分現像用に改造して用いた。図1を参照しながら、本画像形成装置について説明する。
【0329】
本実施例では、感光体上のネガ(負極性)潜像をネガ(負極性)トナーを用いて現像する反転現像の装置を利用した。
【0330】
図1は本発明に適用するレーザービームプリンターの断面の概略的説明図である。OPC感光ドラム10(直径24mm)は、矢印の方向に回転し、帯電ロール11により暗部電位(Vd)が−600Vになるように均一に帯電される。次に露光装置14により、画像部に露光が行われ、明部電位(Vl)が−150Vの静電潜像が形成される。トナー塗布ローラ16を有するトナー担持体17上のトナー層と感光ドラム10とを接触させずに300μmの間隔をもって設定し、交流バイアス(f=1800Hz、Vpp=1400V)、及び直流バイアス(Vdc=−400V)とをバイアス印加手段Vによりトナー担持体17に印加しながら、画像部をネガトナーTで現像してトナー像を感光ドラム10上に形成した。
【0331】
得られた上記トナー像を転写ロール19によって転写材P上にトナーを転写し、感光ドラム10の表面上に残ったトナーをクリーナー13によりクリーニングする。一方、感光ドラム10から分離された転写材Pは、転写材P上のトナー像を定着するために加熱定着装置Hにより加熱定着処理される。以上の工程を繰り返して画像形成を行っている。このとき加熱定着装置Hとしては、図3及び4に記載されているものを用い、加熱体21の検温素子21dの表面温度は190℃、加熱体21と加圧ローラ23間の総圧は6kg、加圧ローラ23と定着フィルム22のニップは3mmとし、定着フィルム22には、転写材との接触面にPTFEに導電物質を分散させた低抵抗の離型層を有する厚さ50μmの耐熱性ポリイミドフィルムを使用した。
【0332】
また、ここで用いたトナー担持体の表面粗度Ra(μm)は1.5であり、トナー層厚規制ブレードの材質はステンレスである。
【0333】
本実施例においては、上記の図1に示す画像形成装置を用い、常温常湿(25℃、60%RH)、高温高湿(30℃、80%RH)及び低温低湿(15℃、10%RH)環境下で、28枚/分(A4サイズ)のプリントアウト速度で、本発明のトナー1〜12及び比較用トナー1〜6を間欠モード(すなわち、1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)で5000枚のプリントアウト試験を行った。そして、得られたプリントアウト画像を後述の項目について評価した。
【0334】
<プリントアウト画像評価>
【0335】
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)を用いた5000枚のプリントアウト試験終了時の画像濃度により評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
A:1.40以上
B:1.35以上、1.40未満
C:1.00以上、1.35未満
D:1.00未満
【0336】
(2)画像カブリ
「リフレクトメータ MODEL TC-6DS」(東京電色社製)を用いて、プリントアウト試験終了時のプリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差からカブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを評価した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。数値が小さい程、カブリが少ないことを意味する。
A:1.5%未満
B:1.5%以上、2.5%未満
C:2.5%以上、4.0%未満
D:4.0%以上
【0337】
(3)ハーフトーン画像の均一性
プリントアウト試験終了時のプリントアウト画像の画質を以下の基準で評価した。
A:非常に良好。
B:わずかにがさついているものの、良好な画像。
C:がさついているものの、実用上問題の無いレベル。
D:ひどいがさつきが生じた。
【0338】
(4)定着性
定着性は50g/cm2の荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を5往復摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
A:5%未満
B:5%以上、10%未満
C:10%以上、20%未満
D:20%以上
【0339】
(5)耐オフセット性
耐オフセット性は、画像面積率約5%のサンプル画像をプリントアウトし、5000枚後の画像上の汚れの程度により評価した。
A:汚れは未発生。
B:かすかに汚れが見られる。
C:若干の汚れが見られる。
D:顕著な汚れが発生する。
【0340】
これらの評価結果を表9に示す。
【0341】
【表9】
【0342】
<実施例2>
前述のトナーの製造例で得られた本発明のトナー3〜12、及び比較用トナー3〜7を以下のようにして評価した。
【0343】
まず、画像形成装置として、上記実施の形態の図5で示される画像形成装置と同様の構造を有する装置を実施例2の画像形成装置とした。具体的には、以下の通りである。
【0344】
600dpiレーザービームプリンター(キヤノン製:LBP−860)を用意し、プロセススピードを60mm/sに改造した。
【0345】
このプロセスカートリッジにおけるクリーニングゴムブレードを取り外し、装置の帯電方式を、ゴムローラを静電潜像担持体(感光体)に当接して行う直接帯電とし、印加電圧を直流成分(−1200V)とした。次にプロセスカートリッジにおける現像部分を改造した。ステンレススリーブの代わりにカーボンブラックを分散したシリコーンゴムからなる中抵抗ゴムローラ(直径16mm、硬度ASKER C 45度、抵抗105Ω・cm)をトナー担持体とし、感光体に当接した。この時の現像当接幅は約3mmとなるようにした。上記トナー担持体の回転周速は、感光体との接触部分において同方向であり、上記感光体回転周速に対し150%となるように駆動させた。
【0346】
ここで用いる感光体としては、直径30mm、254mmのAlシリンダーを基体としたもので、これに、以下に示すような構成の層を順次浸漬塗布により積層して、感光体を作成した。
1)導電性被覆層:酸化錫及び酸化チタンの粉末をフェノール樹脂に分散したものを主体とする(膜厚1.5μm)。
2)下引き層:変性ナイロン、及び共重合ナイロンを主体とする(膜厚0.6μm)。
3)電荷発生層:長波長域に吸収を持つチタニルフタロシアニン顔料をブチラール樹脂に分散したものを主体とする(膜厚0.6μm)。
4)電荷輸送層:ホール搬送性トリフェニルアミン化合物をポリカーボネート樹脂(オストワルド粘度法による分子量2万)に8:10の質量比で溶解したものを主体とする(膜厚20μm)。
【0347】
トナー担持体にトナーを塗布する手段として、現像器内に発泡ウレタンゴムからなる塗布ローラを設け、上記トナー担持体に当接させた。塗布ローラには、約−550Vの電圧を印加する。さらに、上記トナー担持体上トナーのコート層制御のために樹脂をコートしたステンレス製ブレードを、トナー担持体との接触圧が線圧約20g/cmとなるように取付けた。概略を図5に示す。また、現像時の印加電圧をDC成分(−450V)のみとした。
【0348】
これらのプロセスカートリッジの改造に適合するよう画像形成装置に以下のように改造及びプロセス条件設定を行った。
【0349】
改造された装置は、ローラ帯電器(直流のみを印加)を用い静電潜像担持体を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成し、トナーにより可視画像とした後に、電圧を印加したローラによりトナー像を転写材に転写するプロセスを持つ。
【0350】
また、感光体帯電電位は、暗部電位を−600Vとし、明部電位を−150Vとした。転写材としては、75g/m2の紙を用いた。
【0351】
上記画像形成装置により、本発明のトナー3〜12及び比較用トナー3〜7を用いて、温度15℃/湿度10%の条件下で耐久試験を行った。
【0352】
なお、耐久性評価は印字面積比率3%で文字印刷を行い、以下のように評価した。
【0353】
(1)トナーの帯電ローラ汚染:ハーフトーン画像上に帯電部材汚染による帯電むらが発生した枚数で判断した。
A:3000枚まで発生せず
B:2700枚から3000枚未満の間で発生
C:2000枚から2700枚未満の間で発生
D:2000枚未満で発生
【0354】
(2)トナーの感光体融着およびスリーブ融着:ベタ黒画像上に白抜けが発生した段階で感光体表面およびスリーブ表面を観察し、融着の有無を確認した。融着が観察されなければ耐久性評価を継続した。
A:3000枚まで発生せず
B:2700枚から3000枚未満の間で発生
C:2000枚から2700枚未満の間で発生
D:2000枚未満で発生
帯電ローラ汚染、感光体融着およびスリーブ融着が発生しない場合3000枚まで画像印刷を続けた。発生した枚数が多い程、トナーの耐久性が良好なことを意味する。
【0355】
(3)耐久初期の転写性:ベタ黒が像現像時の感光体上の転写残トナーをマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、紙上に貼ったもののマクベス濃度から、テープのみを貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。従って、値の小さいほど転写性は良好である。
A:0.05未満
B:0.05〜0.10未満
C:0.10〜0.20未満
D:0.20以上
【0356】
(4)耐久初期(100枚時)の解像力は潜像電界によって電界が閉じやすく、再現しにくい図7に示すような小径(X=50μm)の孤立ドットパターンの画像をプリントアウトし、そのドット再現性を評価した。
A:欠損2個以下/100個
B:欠損3〜5個/100個
C:欠損6〜10個/100個
D:欠損11個以上/100個
【0357】
(5)オフセット性:初期から耐久100枚での画像サンプルの裏側に発生する汚れを観察し、発生枚数を数えた。
A:未発生
B:発生枚数1〜2枚/100枚
C:発生枚数3〜5枚/100枚
D:発生枚数6枚以上/100枚
【0358】
(6)カブリの測定:東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用い、測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、かぶり濃度(%)を算出し、画像カブリを評価した。数値が小さい程、カブリが少ない。
A:1.5%未満
B:1.5%以上、2.5%未満
C:2.5%以上、4.0%未満
D:4.0%以上
これらの評価結果を表10に示す。
【0359】
【表10】
【0360】
<実施例3>
上記のトナーの製造例で得られた本発明のトナー5、及び比較用トナー6を以下のようにして評価した。
【0361】
まず、画像形成装置として、上記実施の形態の図2で示される画像形成装置と同様の構造を有する装置を用いた。
【0362】
具体的には、以下の通りである。
【0363】
トナー担持体面の移動速度が、静電潜像担持体面の移動速度に対し150%となるように設定し、常温常湿(23℃、65%RH)環境下で、20枚/分(A4サイズ)のプリントアウト速度でトナー5及び6’を単色での連続モード(すなわち、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモード)において印字面積比率5%で6000枚のプリントアウト試験を行った。そして、得られたプリントアウト画像を前述の項目および中間転写ベルトへの汚染状態も含めて、評価した。
【0364】
(7)トナーの中間転写ベルト融着、感光体融着およびスリーブ融着:ベタ黒画像上に軽微な白抜けが発生した段階で中間転写ベルト、感光体表面およびスリーブ表面を観察し、融着の有無を確認した。融着が観察されなければ耐久性評価を継続した。
A:6000枚まで発生せず
B:5500枚から6000枚未満の間で発生
C:5000枚から5500枚未満の間で発生
D:5000枚未満で発生
その結果を表11に示す。
【0365】
【表11】
【0366】
【発明の効果】
以上のように本発明の乾式トナーは、電子写真特性に優れ、高精細な画像を与え、帯電安定性に優れ、トナー担持体、静電潜像担持体、定着器等、中間転写体への汚染も少ないものである。さらに、本発明の乾式トナーの製造方法は、前記の優れた電子写真特性を有し、画像形成装置への汚染も少ないトナーを効率良く製造することが可能である。
【0367】
さらに、粒子表面近傍の強度を向上させたトナーを用いることにより、クリーナレス構成あるいは中間転写体を用いるような接触現像方式画像形成プロセスにおいて、定着性を維持しつつ、解像性、転写性を向上させ、トナーの回収性向上によるゴースト発生の抑制し、さらには耐久性をも大きく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を適用できる画像形成装置の1例の概略構成図を示す。
【図2】本発明の画像形成方法を実施するための中間転写ベルトを用いた画像形成装置の概略構成図を示す。
【図3】定着装置の要部の分解傾斜図を示す。
【図4】本発明の画像形成方法に適用できる定着装置の非駆動時のフィルム状態を示した要部の横断面図を示す。
【図5】一成分現像方式により画像形成を行う画像形成装置の概略構成図を示す。
【図6】本発明の画像形成方法に適用できる現像装置の概略構成図を示す。
【図7】トナーの現像特性をチェックするための小径孤立ドットパターンの図を示す。
【図8】ガラス転移温度の測定するためのグラフを表す。
Claims (39)
- 少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子及び外添剤を有する乾式トナーであって、
(1)前記結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有しており、
(2)前記トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定される主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃であり、
(3)前記トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足し、
0.8≦A≦4.0
0.80≦(B/A)≦1.05
(4)前記トナーのフロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーの円相当個数平均径D1が2〜10μmであり、前記トナーの平均円形度が0.950〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満であり、
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲にあり、THF不溶分が5〜60質量%である、
ことを特徴とする乾式トナー。 - 結着樹脂中に含有されるブタジエン、イソプレン及びクロロプレンの含有量の総和が、トナーに対して0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の乾式トナー。
- 結着樹脂中に含有されるブタジエン、イソプレン及びクロロプレンの含有量の総和が、トナーに対して0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂は、スチレン及び/又はスチレン誘導体とブタジエンとの共重合体を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該荷電制御剤が、下記一般式(I)で表わされる荷電制御剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式トナー。
【外1】
[式中、X1およびX2は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、X1とX2は同じであっても異なっていてもよく、mおよびm’は1〜3の整数を表し、R1およびR3は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、スルホンアミド基、メシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ハロゲン原子又は−COOR5を表し、R1とR3は同じであっても異なっていてもよく、nおよびn’は1〜3の整数を表し、R2およびR4は、水素原子またはニトロ基を表し、R5はアルキル基又はアリール基を表し、A+は水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンを表す。] - トナーの平均円形度が0.970〜0.995であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の乾式トナー。
- トナーの平均円形度が0.970〜0.995であり、円形度標準偏差が0.035未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の乾式トナー。
- トナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーが円形度0.950未満のトナー粒子が15個数%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂が、スチレン−アクリル系樹脂を50〜99.9質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂が、スチレン−アクリル系樹脂を80〜99.9質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂が、スチレン−アクリル系樹脂を85〜98質量%含有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該外添剤が、シリカ微粉体であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該シリカ微粉体が、BET比表面積30m2/g以上であることを特徴とする請求項12に記載の乾式トナー。
- 該シリカ微粉体が、BET比表面積50〜400m2/g以上であることを特徴とする請求項12に記載の乾式トナー。
- トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足しすることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の乾式トナー。
0.8≦A≦4.0
0.90≦(B/A)≦1.05 - トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が5×103〜5×104の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の乾式トナー。
- トナーのTHF不溶分が、5〜55質量%であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の乾式トナー。
- ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有するジエン単量体成分含有樹脂、重合性ビニル単量体、着色剤、ワックス及び重合開始剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中へ分散して造粒し、水系媒体中で重合し、トナー粒子を生成する製造方法であって、
前記重合開始剤がラジカル重合開始剤(A)であり、重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに、ラジカル重合開始剤(B)を新たに添加することを特徴とする乾式トナーの製造方法。 - 該ラジカル重合開始剤(B)が、水溶性であることを特徴とする請求項18に記載の乾式トナーの製造方法。
- 該ラジカル重合開始剤(B)が、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる重合開始剤であることを特徴とする請求項19に記載の乾式トナーの製造方法。
- 該ラジカル重合開始剤(B)が、油溶性であり、水に乳化或いは分散させて添加することを特徴とする請求項18に記載の乾式トナーの製造方法。
- 該ラジカル重合開始剤(B)が、アゾ系重合開始剤、ジアゾ系重合開始剤或いは過酸化物系重合開始剤のうちから選ばれる重合開始剤であることを特徴とする請求項21に記載の乾式トナーの製造方法。
- ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有するジエン単量体成分含有樹脂、重合性ビニル単量体、着色剤、ワックス及び重合開始剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中へ分散して造粒し、水系媒体中で重合し、トナー粒子を生成する製造方法であって、
前記重合開始剤がラジカル重合開始剤(A)であり、重合反応の転化率が10〜95質量%の範囲にあるときに、ラジカル重合開始剤(B)が新たに添加され、
得られるトナーが、請求項1乃至17のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする乾式トナーの製造方法。 - 帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を帯電する帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に、静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを付着させて、トナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を、中間転写体を介して、又は介さずに転写材に静電転写する転写工程と、転写材に静電転写されたトナー像を定着する定着工程とを有する画像形成方法であって、
該トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子及び外添剤を有する乾式トナーであって、
(1)結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有しており、
(2)前記トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定される主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃であり、
(3)前記トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足し、
0.8≦A≦4.0
0.80≦(B/A)≦1.05
(4)前記トナーのフロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーの円相当個数平均径D1が2〜10μmであり、前記トナーの平均円形度が0.950〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満であり、
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲にあり、THF不溶分が5〜60質量%である、
ことを特徴とする画像形成方法。 - 現像工程において、現像領域におけるトナー担持体表面の移動速度が、静電潜像担持体表面の移動速度に対し、1.05〜3.0倍の速度であることを特徴とする請求項24に記載の画像形成方法。
- トナー担持体上のトナー層厚が規制部材により規制され、該規制部材が強磁性金属ブレードであることを特徴とする請求項24又は25に記載の画像形成方法。
- 該強磁性金属ブレードが、トナー担持体と対向して一定間隔をもって配されていることを特徴とする請求項26に記載の画像形成方法。
- トナー担持体上のトナー層厚が規制部材により規制され、前記規制部材が弾性体からなるブレードであることを特徴とする請求項24又は25に記載の画像形成方法。
- 該弾性体からなるブレードが、トナー担持体と対向して当接されることを特徴とする請求項28に記載の画像形成方法。
- 現像工程において、静電潜像担持体とトナー担持体とがある一定の間隔を有して配されており、両者間に交番電界を形成することにより現像が行われることを特徴とする請求項24乃至29のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記現像工程において、静電潜像担持体に形成された静電潜像と、トナー担持体上に薄層コートされたトナーとを接触させながら現像が行われることを特徴とする請求項24乃至29のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記帯電工程において、帯電部材を静電潜像担持体に接触させて、静電潜像担持体の帯電を行うことを特徴とする請求項24乃至31のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記転写工程において、前記静電潜像担持体と転写装置とが前記転写材を介して当接されていることを特徴とする請求項24乃至32のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記定着工程が、前記転写材上のトナー像を加熱定着させる加熱定着工程であることを特徴とする請求項24乃至33のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記加熱定着工程が、加熱体と該加熱体に対向圧接した加圧部材とにより、トナー像を転写材に加熱加圧定着させる工程であることを特徴とする請求項34に記載の画像形成方法。
- 前記加熱定着工程において、転写材と加熱体との間にフィルムを介在させることを特徴とする請求項34に記載の画像形成方法。
- 転写工程後、静電潜像担持体上に残存した転写残トナーを、現像工程においてトナー担持体により回収する現像兼クリーニング工程を有することを特徴とする請求項24乃至36のいずれかに記載の画像形成方法。
- 転写工程後、静電潜像担持体上に残存した転写残トナーをクリーニングして回収し、回収した前記トナーを現像手段に供給して、再度、静電潜像の現像に供するトナーリユース機構を有することを特徴とする請求項24乃至36のいずれかに記載の画像形成方法。
- 帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を帯電する帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に、静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像担持体に形成された静電潜像に、トナー担持体上に担持されたトナーを付着させて、トナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を、中間転写体を介して、又は介さずに転写材に静電転写する転写工程と、転写材に静電転写されたトナー像を定着する定着工程とを有する画像形成方法であって、
該トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するトナー粒子及び外添剤を有する乾式トナーであって、
(1)結着樹脂は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する成分を含有しており、
(2)前記トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定される主たるガラス転移温度(Tg)が、40〜70℃であり、
(3)前記トナーの雰囲気温度23℃、相対湿度65%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をA(m2/g)、前記トナーの雰囲気温度50℃、相対湿度3%の環境に72時間放置したときのBET法による比表面積をB(m2/g)とするときに、A及びBが下記式を満足し、
0.8≦A≦4.0
0.80≦(B/A)≦1.05
(4)前記トナーのフロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、前記トナーの円相当個数平均径D1が2〜10μmであり、前記トナーの平均円形度が0.950〜0.995であり、円形度標準偏差が0.040未満であり、
(5)前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が2×103〜1×105の範囲にあり、THF不溶分が5〜60質量%であり、
且つ、該トナーが請求項2乃至17のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
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