JP3779075B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関の排ガスを浄化するために該内燃機関の排気系に設けられた三元触媒等の触媒装置は、その温度がある程度上昇して該触媒装置が活性化していないと、排ガスの所要の浄化性能を確保することが難しい。このため、触媒装置が比較的低温なものとなっている内燃機関の始動直後における排ガスの浄化性能の確保が従来より重要な課題となっている。
【0003】
本願出願人は、このような課題を解決するための技術を、特願平9−109197号あるいは特願平10−10326号にて提案しており、この技術の概要は次の通りである。
【0004】
すなわち、内燃機関の始動後の最初のアイドリング運転に際して、内燃機関の燃焼室に吸入される吸入空気量を通常のアイドリング運転時(例えば内燃機関を搭載した自動車の走行後のアイドリング運転時)よりも増量させるように、該内燃機関の吸入空気通路に設けた流量制御弁(具体的にはスロットル弁あるいはこれを迂回するバイパス通路の制御弁)の開度を操作する。また、この吸入空気量の増量開始後、この増量によって上昇傾向となる内燃機関の回転数(実回転数)を内燃機関の始動直後のアイドリング運転のための所要の目標回転数に収束させるように内燃機関の点火時期をフィードバック制御により操作し、これにより該点火時期を通常の場合よりも遅角側に補正する。
【0005】
このような内燃機関の吸入空気量の増量と点火時期の遅角側への操作とを行うことで、内燃機関が生成する排ガスの熱量が大きくなり、ひいては、この排ガスにより暖められる触媒装置が早期に活性化する。この結果、触媒装置の所要の浄化性能を内燃機関の始動後の早期の段階で確保することができる。
【0006】
また、この技術では、内燃機関の吸入空気量の増量の結果として上昇傾向となる内燃機関の回転数を目標回転数にフィードバック制御することで、結果的に内燃機関の回転数を安定に保持しつつ点火時期が遅角側に操作するので、吸入空気量の操作と点火時期の操作とを互いに独立的に行うことができる。このため、それらの制御システムの構築が容易なものとなると共に該制御システムを簡素なものとすることができる。
【0007】
ところで、かかる技術において、吸入空気量の増量中における前記流量制御弁の開度は、内燃機関の始動後の運転をできるだけ円滑且つ良好な燃焼状態で行い、また、内燃機関の始動後、所要の時間内で触媒装置を十分に活性化できる熱量を該触媒装置に与えることができるように設定される。そして、この場合、流量制御弁の開度により内燃機関の実際の吸入空気量が一義的に定まるものとし、該開度の指令値の大きさや時間的な変化の形態をあらかじめ定めておき、その指令値に従って流量制御弁の開度を操作するようにしていた。
【0008】
しかるに、内燃機関の実際の吸入空気量は、流量制御弁の開度が一定であっても、大気圧の影響を受け、該大気圧が高い程、内燃機関の実際の吸入空気量は多くなる。さらに、大気圧の影響よりは小さいものの、内燃機関の実際の吸入空気量は、大気温度の影響も受け、該大気温度が高い程、吸入空気の密度が小さくなるため、内燃機関の実際の吸入空気量は少なくなる。このため、内燃機関がその吸入空気量に応じて生成する排ガスの熱量も、大気圧や大気温度の影響を受けることとなる。この結果、大気圧や大気温度が異なる環境下では、それらの大気圧や大気温度と無関係に前述の如く流量制御弁の開度を操作したとき、触媒装置に与えられる熱量のばらつきを生じ、ひいては触媒装置の昇温・活性化のばらつきを生じ、場合によっては、該触媒装置の昇温・活性化が不足して十分な浄化性能を確保することができない虞れがあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる背景に鑑み、大気圧や大気温度による内燃機関の吸入空気量、ひいては、触媒装置に与える熱量のばらつきを補償し、大気圧や大気温度によらずに触媒装置の所望の昇温・活性化を行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の内燃機関の制御装置はかかる目的を達成するために、排ガスを触媒装置を介して放出する内燃機関の始動後に前記触媒装置の早期活性化を行うための動作モードでのアイドリング運転時に、該内燃機関の吸入空気量を前記動作モード以外のモードでのアイドリング運転時の吸入空気量よりも所定量、増量させるように該内燃機関の吸入空気通路に設けた流量制御弁の開度を操作する吸入空気量操作手段と、その吸入空気量の増量中に内燃機関の回転数を所定の目標回転数に収束させるように該内燃機関の点火時期をフィードバック制御により操作して、該点火時期を遅角側に補正する点火時期操作手段とを備えた内燃機関の制御装置において、前記触媒装置の早期活性化を行なうための動作モードでの前記吸入空気量操作手段による前記吸入空気量の増量と前記点火時期操作手段による前記点火時期の操作とを、該動作モードの開始時から所定時間が経過するまでの期間で実行するようにし、前記吸入空気量の増量時の前記流量制御弁の開度を、大気圧が低い程、該開度を大きくするように該大気圧に応じて調整する手段を前記吸入空気量操作手段に備えたことを特徴とする。
【0011】
かかる本発明によれば、内燃機関の吸入空気量の増量時の前記流量制御弁の開度を、大気圧が低い程、該開度を大きくするように該大気圧に応じて調整することにより、大気圧による内燃機関の吸入空気量、ひいては、触媒装置に与える熱量のばらつきを補償することができる。つまり、内燃機関の吸入空気量の増量に際して、流量制御弁をある開度に操作したとき、実際の吸入空気量は、大気圧が低い程、少なくなるので、上記のように流量制御弁の開度を大気圧に応じて調整することで、大気圧によらずに内燃機関の吸入空気量を所望の吸入空気量(通常のアイドリング運転時よりも所定量増加させる吸入空気量)にすることができる。これにより、本発明によれば、大気圧によらずに触媒装置の所望の昇温・活性化を行うことができ、ひいては、触媒装置の所要の浄化性能を確実に確保することができる。
【0012】
さらに、本発明では、前記吸入空気量の増量時の前記流量制御弁の開度を、大気温度が高い程、該開度を大きくするように該大気温度に応じて調整する手段を前記吸入空気量操作手段に備える。
【0013】
すなわち、内燃機関の吸入空気量の増量に際して、流量制御弁をある開度に操作したとき、実際の吸入空気量は、大気温度が高い程、少なくなるので、上記のように流量制御弁の開度を、大気温度が高い程、該開度を大きくするように該大気温度に応じて調整する。これにより、大気圧だけでなく大気温度にもよらずに内燃機関の吸入空気量を所望の吸入空気量(通常のアイドリング運転時よりも所定量増加させる吸入空気量)にすることができ、大気温度による内燃機関の吸入空気量、ひいては、触媒装置に与える熱量のばらつきをも補償することができる。この結果、本発明によれば、大気圧だけでなく大気温度にもよらずに触媒装置の所望の昇温・活性化をより確実に行うことができ、ひいては、触媒装置の所要の浄化性能をより確実に確保することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1乃至図25を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の装置の全体的なシステム構成を示すものであり、1は内燃機関、2は内燃機関1の動作制御を担うコントローラである。
【0016】
内燃機関1は、例えば自動車やハイブリッド車等の車両にその推進源として搭載されたものであり、燃料及び空気の混合気を燃焼させて生成した排ガスを例えば三元触媒を用いて構成した触媒装置3を介して大気中に放出する。
【0017】
図2はこの内燃機関1の吸気系を模式化して示したものである。同図2に示すように、この内燃機関1の燃焼室4には、スロットル弁5を設けた主吸気通路6と、該スロットル弁5を迂回して主吸気通路6に連接すると共にバイパス弁7を設けたバイパス通路8とを介して空気を吸入可能とされている。尚、図2中、9はシリンダ、10はピストン、11,12はそれぞれ吸気バルブ及び排気バルブ、13はチャンバーである。
【0018】
図1の説明に戻って、本実施形態のシステムでは、この内燃機関1の動作制御のための付帯的構成として、内燃機関1の回転数Ne(実回転数)及び機関温度Tw(例えば冷却水温)をそれぞれ検出する回転数センサ14及び機関温度センサ15、前記スロットル弁5及びバイパス弁7の下流側における主吸気通路6の内圧(本実施形態では図2のチャンバー13の内圧)である吸気圧Pbを検出する吸気圧センサ16、大気温度Ta及び大気圧Paをそれぞれ検出する大気温度センサ17及び大気圧センサ18、図示しない車両のアクセルペダルの操作量Ap(以下、アクセル操作量Apという)及び車速Vをそれぞれ検出するアクセルセンサ19及び車速センサ20等の各種センサが備えられている。
【0019】
さらに内燃機関1の駆動のための付帯的構成として、前記燃焼室4内で混合気に点火する点火装置21、燃焼室4に燃料を供給する燃料供給装置22、前記スロットル弁5及びバイパス弁7をそれぞれ操作するためのスロットル弁アクチュエータ23及びバイパス弁アクチュエータ24等が備えられている。
【0020】
尚、図示は省略するが、上記の構成の他、内燃機関1を始動するためのスタータモータや、各種電子機器の電源バッテリ、内燃機関1の動力を駆動輪に伝達する変速機(本実施形態のシステムでは自動変速機)等も備えられている。
【0021】
コントローラ2は、マイクロコンピュータを用いて構成されたものであり、前述の各種センサ14〜20の出力(検出値)のデータや、所定のプログラム、あらかじめ設定されたデータ値等に基づき、点火装置21や燃料供給装置22、スロットル弁アクチュエータ23、バイパス弁アクチュエータ24等を介して内燃機関1の所要の運転を行わしめる。
【0022】
このコントローラ2は、スロットル弁5あるいはバイパス弁7の開度をそれぞれスロットル弁アクチュエータ23、バイパス弁アクチュエータ24を介して操作することで、内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量を操作する吸入空気量操作手段25、内燃機関1の点火時期を点火装置21を介して操作する点火時期操作手段26等を機能的構成として具備している。
【0023】
これらの各手段25,26の機能の詳細は後述するが、点火時期操作手段26は本発明に係わる回転数制御装置としての機能を有するものである
尚、本実施形態では、前記バイパス弁7とバイパス通路8とがそれぞれ本発明に係わる流量制御弁と吸入空気通路とに相当するものである。また、本実施形態では、コントローラ2がその制御処理を実行する制御サイクル(制御周期)はクランク角周期(所謂TDC)である。
【0024】
次に本実施形態のシステムの作動を前記コントローラ2の吸入空気量操作手段25及び点火時期操作手段26の機能と併せて説明する。
【0025】
まず、本実施形態のシステムの基本的な動作の概要を図3を参照して簡単に説明しておく。図3は内燃機関1の始動からアイドリング運転にかけての運転における前記バイパス弁7の開度(以下、バイパス開度という)、点火時期、及び回転数の時間的変化の例示的な形態をそれぞれ上段、中段、及び下段に示したものである。
【0026】
同図3を参照して、本実施形態のシステムでは、内燃機関1の運転停止状態で図示しないスタートスイッチを操作する等してシステムを起動すると、システムの動作は、まず、内燃機関1のクランキングをスタータモータ(図示しない)により行いつつ該内燃機関1の始動を行う動作モード(以下、始動モードという)となる。この始動モードでは、バイパス開度及び点火時期はそれぞれ図示のように操作され、また、内燃機関1の回転数Neは図示のように変動する。
【0027】
尚、本実施形態のシステムでは、内燃機関1の運転中の前記スロットル弁5の開度は、前記アクセル操作量Apに応じたものとされ、アクセルペダル(図示しない)の操作がなされていない状態(Ap=0の状態。この状態は、車両の停車中は、内燃機関1のアイドリング運転状態である)では、スロットル弁5の開度は「0」(スロットル弁5の閉弁状態)である。そして、この状態では、燃焼室4の吸気は、バイパス通路8のみを介して行われる。図3は、このようにバイパス通路8のみを介して燃焼室4の吸気が行われる場合に関するものである。
【0028】
上記始動モードにおいて内燃機関1の所謂、完爆が確認されると、システムの動作は、内燃機関1のアイドリング運転を行いつつ前記触媒装置3の早期活性化を図るための動作モード(以下、FIREモードという)に移行する。
【0029】
このFIREモードでは、例えば図3の上段に示すような時間的変化の形態(パターン)で、通常のアイドリング運転時(FIREモード以外でのアイドリング運転時)よりも大きなバイパス開度の指令値θCMD を逐次生成する。そして、この指令値θCMD に従ってバイパス開度を前記バイパス弁アクチュエータ24を介して操作することで、内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量を通常のアイドリング運転時よりも増量させる。
【0030】
この場合、FIREモードの動作は、基本的には、その動作が開始してからの経過時間t/fire(これは、吸入空気量の増量を開始してからの経過時間である。以下、FIRE経過時間t/fireという)が所定の制限時間TFIRELMT(以下、FIREモード制限時間TFIRELMTという)に達するまで行われる。
【0031】
そして、このFIREモードにおける前記バイパス開度の指令値θCMD は、基本的には、上記FIREモード制限時間TFIRELMT内で触媒装置3の所望の昇温・活性化を適正に行い得る熱量の排ガス(該排ガスの熱量は概ね内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量に比例する)を触媒装置3に供給することができ、また、FIREモードにおける内燃機関1の燃焼状態やエミッション状態等を良好に保ちつつ該内燃機関1のアイドリング運転を安定して円滑に行うことができるように設定される。
【0032】
FIREモードにおけるこのような吸入空気量の増量(バイパス開度の増加)に伴い、その増量開始直後の内燃機関1の回転数Ne(実回転数)は、図3の下段に実線で示すような形態で上昇していく。そして、該回転数Neが、FIREモードにおいて最終的に維持すべき適正な回転数としてあらかじめ定めたアイドリング回転数NOBJ(一定)よりも所定量NEFSLDS だけ高い設定回転数(NOBJ+NEFSLDS )に到達すると、内燃機関1の回転数Neを所要の目標回転数ne/fire に収束させるためのフィードバック制御によって、内燃機関1の点火時期を図3の中段に実線で示すように操作する。以下、この回転数Neのフィードバック制御を点火時期操作回転数F/B制御という。尚、この点火時期操作回転数F/B制御は、内燃機関1の回転数Neが上記設定回転数(NOBJ+NEFSLDS )に到達した場合の他、前記FIRE経過時間t/fireがあらかじめ定めた所定値TSLDIGST(図3の下段を参照)に達した場合にも開始される。
【0033】
この点火時期操作回転数F/B制御では、図3の下段に破線で示すような形態で内燃機関1の目標回転数ne/fire が設定される。該目標回転数ne/fire は、上記設定回転数(NOBJ+NEFSLDS )から所定の低下度合い(傾き)で前記アイドリング回転数NOBJに向かって低下され、該アイドリング回転数NOBJに到達した後は、該アイドリング回転数NOBJに保持される。尚、このアイドリング回転数NOBJは、通常のアイドリング運転時の回転数よりも高い回転数に設定されている。
【0034】
点火時期操作回転数F/B制御では、このように設定される目標回転数ne/fire に内燃機関1の回転数Ne(実回転数)を収束させるように、フィードバック制御処理によって図3の中段に破線で示すような点火時期の補正量DIG (この補正量DIG は後述する点火時期偏差指令値である)を求め、この補正量DIG だけ点火時期の基本指令値igbase(図3の中段に一点鎖線で示す)を補正することで、点火時期の指令値iglog を決定する。ここで、点火時期の基本指令値igbaseは、内燃機関1の通常的な運転時(FIREモード以外の運転時)における点火時期の指令値に相当するものであり、進角側の値である。
【0035】
そして、点火時期操作回転数F/B制御では、上記のように基本指令値igbaseを補正した指令値iglog に従って内燃機関1の点火時期を前記点火装置21を介して操作することで、内燃機関1の回転数Neを目標回転数ne/fire に(最終的にはアイドリング回転数NOBJに)フィードバック制御する。
【0036】
このとき、前述した吸入空気量の増量によって、内燃機関1の回転数Neは目標回転数ne/fire に対して上昇傾向となるので、点火時期操作回転数F/B制御により求められる前記補正量DIG は、点火時期を基本指令値igbaseから遅角側に補正するものとなる。従って、この補正量DIG (≦0)により基本指令値igbaseを補正してなる点火時期iglog は、図3の中段の実線示のように遅角側のものとなる。
【0037】
このように内燃機関1の始動後の最初のアイドリング運転時に行うFIREモードは、上記のようなバイパス開度の操作による吸入空気量の増量と点火時期操作回転数F/B制御による点火時期の遅角側への操作とによって、内燃機関1の回転数Neを所要の目標回転数ne/fire (最終的にはアイドリング回転数NOBJ)に制御しつつ、内燃機関1がその燃焼室4で混合気の燃焼により生成する排ガスの熱量を通常のアイドリング運転時よりも多くするものである。そして、このように熱量を多くした排ガスを触媒装置3に供給することによって、触媒装置3の昇温・活性化を早め、該触媒装置3の所要の排ガス浄化性能を早期に確保するものである。
【0038】
このような吸入空気量の増量と点火時期操作回転数F/B制御とを行うFIREモードは、その動作途中で車両のアクセルペダルが操作される等した場合を除いて、前記FIRE経過時間t/fireがFIREモード制限時間TFIRELMTに達するまで連続的に行われ、その後は、システムの動作は、内燃機関1の通常的な運転を行うモード(以下、通常モードという)に移行する。この通常モードでは、バイパス開度は、例えば内燃機関1の通常的なアイドリング運転を行うための開度(<FIREモードにおけるバイパス開度。図3の上段の右側部分を参照)に操作される。また、内燃機関1の点火時期は、図3の中段の右側部分に示すように、FIREモードの終了後、徐々に、前記基本指令値igbaseにより定まる通常的な進角側の点火時期に戻される。
【0039】
尚、本実施形態のシステムでは、前記FIREモードの動作中(FIRE経過時間t/fireがFIREモード制限時間TFIRELMTに達する前)に、車両の発進・走行を行ったり、内燃機関1の所謂、からぶかしを行うために図示しないアクセルペダルが操作され、内燃機関1のアイドリング以外の運転を行うべき状況となったときには、FIREモードの中断動作を行う。
【0040】
この中断動作にあっては、触媒装置3の昇温・活性化を確実なものとするために、前述のようなバイパス開度の操作による吸入空気量の増量は継続的に行われるが、内燃機関1の所要の動力性能を確保するために、点火時期は、前記基本指令値igbaseにより定まる通常的な進角側の点火時期に戻される(点火時期操作回転数F/B制御が中断される)。そして、FIREモード制限時間TFIRELMT内に、再び内燃機関1のアイドリング運転を行う状況となった場合には、点火時期操作回転数F/B制御が再開される。つまり、FIREモードの中断動作は、基本的には点火時期操作回転数F/B制御を中断する動作である。但し、バイパス開度の操作による吸入空気量の増量に関しても、該増量に係わる部分的な制御処理は中断される。
【0041】
以上説明した内容が本実施形態のシステムの基本的動作の概要である。
【0042】
次に、このような基本的動作を考慮しつつ、本実施形態のシステムの詳細な作動を以下に説明する。
【0043】
内燃機関1の運転を停止した状態で本実施形態のシステムを起動すると、コントローラ2は図4のフローチャートに示すメインルーチン処理を所定の制御サイクル、すなわちクランク角周期(TDC)で実行する。
【0044】
コントローラ2は、まず、システムの動作モードが前記始動モードであるか否かを判断する(STEP4−1)。この判断は、例えば内燃機関1の所謂完爆が確認されたか否かにより行われ、システムの起動後、該完爆が確認されるまでの間は、動作モードは始動モードである。尚、完爆の確認は、回転数センサ14の出力(回転数Neの検出値)等に基づいて行われる。
【0045】
STEP4−1の判断で、動作モードが始動モードである場合には、コントローラ2は、内燃機関1を始動するための始動モード処理を制御サイクル毎に実行する(STEP4−2)。
【0046】
この始動モード処理においては、コントローラ2は、内燃機関1を始動する上で適正な点火時期、燃料供給量、及びバイパス開度の指令値を、それぞれ前述の各種センサ14〜20の出力(検出値)や所定のマップ、演算式等に基づいて決定する。そして、その決定した指令値に従って前記点火装置21、燃料供給装置22、及びバイパス弁アクチュエータ24を介して点火時期、燃料供給量及びバイパス開度(吸入空気量)を操作しつつ、図示しないスタータモータによる内燃機関1のクランキングを行わしめることで、内燃機関1を始動する。
【0047】
また、始動モード処理では、コントローラ2は前記FIREモードの制御処理で使用するフラグ等の各種パラメータ(詳細は後述する)の初期設定を行う。
【0048】
さらに、始動モード処理では、内燃機関1の始動時の機関温度Tw、大気温度Ta及び大気圧Paがそれぞれ機関温度センサ15、大気温度センサ17及び大気圧センサ18により検出されて図示しないメモリに記憶保持される。
【0049】
一方、STEP4−1の判断で、動作モードが始動モードでない場合には(内燃機関1の完爆が確認された場合)には、コントローラ2は、制御サイクル毎に、内燃機関1への燃料供給量の指令値を生成する(STEP4−3)。さらに、コントローラ2は、FIREモードの制御処理を行うべきか否か(動作モードをFIREモードにするか通常モードにするか)の条件判断を行った後(STEP4−4)、バイパス開度の指令値θCMD を前記吸入空気量操作手段25によって生成し(STEP4−5)、また、内燃機関1の点火時期の指令値iglog を、前記点火時期操作手段26によって生成する(STEP4−6)。
【0050】
前記STEP4−3における燃料供給量の指令値の生成処理では、まず、前記回転数センサ14及び吸気圧センサ16により検出される内燃機関1の回転数Ne(実回転数)及び吸気圧Pbから、あらかじめ定められたマップに基づいて基本燃料供給量が求められる。そして、この基本燃料供給量を前記機関温度センサ15や大気温度センサ17により検出される機関温度Twや大気温度Ta等に応じて補正することで、内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量に対応した燃料供給量の指令値が生成される。
【0051】
このように生成された燃料供給量の指令値は、制御サイクル毎に、コントローラ2から前記燃料供給装置22に与えられ、該燃料供給装置22は、与えられた指令値に従って内燃機関1への燃料供給を行う。
【0052】
また、前記STEP4−4における条件判断の処理は図5のフローチャートに示すように行われる。
【0053】
すなわち、コントローラ2は、まず、現在の前記FIRE経過時間t/fireが前記FIREモード制限時間TFIRELMT内にあるか否か(t/fire<TFIRELMTであるか否か。STEP5−1)、前記回転数センサ14により検出された現在の回転数Neが正常な所定範囲内にあるか否か(STEP5−2)、前記機関温度センサ15により検出された現在の機関温度Twが正常な所定範囲内にあるか否か(STEP5−3)を順次判断する。尚、STEP5−1で判断するFIRE経過時間t/fireは、前記始動モード処理(STEP4−2)において「0」に初期化され、始動モードが終了した時点(内燃機関1の完爆が確認された制御サイクル)から計時されるものである。
【0054】
これらのSTEP5−1〜5−3の条件が成立しない場合、すなわち、FIRE経過時間t/fireが既にFIREモード制限時間TFIRELMTに達している場合、あるいは、内燃機関1の現在の回転数Neが異常な高回転数もしくは低回転数となっている場合、あるいは内燃機関1の現在の機関温度Twが異常な高温もしくは低温となっている場合には、コントローラ2は、後述する学習演算に係わる処理(詳しくは後述する基本学習補正係数vpskisldの算出処理)を終了するか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグf/flrnend (以下、学習演算終了フラグf/flrnend という)の値を判断する(STEP5−4)。そして、コントローラ2は、f/flrnend =0である場合にのみ、現在のFIRE経過時間t/fireの値をパラメータt/kil の値として保持しておき(STEP5−5)、さらに学習演算終了フラグf/flrnend の値を「1」に設定する(STEP5−6)。ここで、パラメータt/kil は、後述する基本学習補正係数vpskisldの算出処理を終了する際のFIRE経過時間t/fireを表すものである。以下、パラメータt/kil を学習終了時刻パラメータt/kil という。
【0055】
尚、学習演算終了フラグf/flrnend 及び学習終了時刻パラメータt/kil の値は、前記始動モード処理(STEP4−2)において「0」に初期化される。
【0056】
次いで、コントローラ2は、FIRE経過時間t/fireの値を強制的にFIREモード制限時間TFIRELMTに固定した後(STEP5−7)、FIREモードの前述のような中断動作を行うべき状態であるか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグf/fpause(以下、FIRE中断フラグf/fpauseという)の値と、FIREモードの動作を行うべき状態であるか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグf/fireon(以下、FIRE実行可否フラグf/fireonという)の値とを「0」に設定し(STEP5−8,5−9)、図4のメインルーチンの処理に復帰する。尚、FIREモードの動作を行うべき状態でない(f/fireon=0)ということは、前記通常モードの動作を行うべき状態であることを意味する。
【0057】
一方、前記STEP5−1〜5−3の条件が成立する場合には、コントローラ2は、アクセルセンサ19の出力(アクセル操作量Ap)により車両のアクセルペダルの操作がなされているか否か(STEP5−10)、内燃機関1のフュエルカット中であるか否か(STEP5−11)を順次判断する。尚、内燃機関1のフュエルカットは、車両の減速走行時等に燃料供給を遮断する処理である。また、車両のアクセルペダルの操作がなされている状態では、コントローラ2は、前記スロットル弁5の開度をアクセル操作量Apに応じた開度に前記スロットル弁アクチュエータ23を介して操作する。
【0058】
このとき、STEP5−10、5−11のいずれの条件も成立しない場合は、基本的には内燃機関1のアイドリング運転を行う状態である。この場合には、コントローラ2は、前記FIRE中断フラグf/fpauseの値を「0」に設定し(STEP5−12)、さらに前記FIRE実行可否フラグf/fireonの値を「1」に設定した後(STEP5−13)、図4のメインルーチンの処理に復帰する。
【0059】
また、STEP5−10、5−11のいずれかの条件が成立する場合には、コントローラ2は、FIREモードの中断動作を行うべく、FIRE中断フラグf/fpauseの値を「1」に設定した後(STEP5−14)、前記学習演算終了フラグf/flrnend の値を判断する(STEP5−15)。そして、コントローラ2は、f/flrnend =0である場合にのみ、現在のFIRE経過時間t/fireの値を前記学習終了時刻パラメータt/kil の値として保持し(STEP5−16)、さらに学習演算終了フラグf/flrnend の値を「1」に設定する(STEP5−17)。
【0060】
次いで、コントローラ2は、FIREモードの中断動作の終了後の点火時期の操作処理(詳細は後述する)に用いるカウントダウンタイマcnt/igvpl の値を所定の初期値XCNTに設定した後(STEP5−18)、前記STEP5−13を経て図4のメインルーチンの処理に復帰する。
【0061】
尚、STEP5−10、5−11のいずれかの条件が成立する状況、すなわち、FIREモードの中断動作を行うべくFIRE中断フラグf/fpauseの値を「1」に設定する状況は、基本的には前記FIREモード制限時間TFIRELMT内で、車両のアクセルペダルの操作により、車両の発進・走行を行っている状況(内燃機関1がその負荷を駆動している状況)であるか、もしくは、内燃機関1の空ぶかしを行っている状況である。但し、FIREモード制限時間TFIRELMT内で車両を発進させたとき、その後の車両の減速走行中には、STEP5−10、5−11のいずれの条件も成立しない場合もある。つまり、FIREモードの中断動作を行う状況は、より正確に言えば、混合気の燃焼を行いながら内燃機関1のアイドリング運転以外の運転を行う状況である。
【0062】
以上説明したSTEP4−4の条件判断の処理によって、内燃機関1の始動後(始動モードの終了後)、内燃機関1の回転数Neや機関温度Twが適正な範囲内にある限り、前記FIRE経過時間t/fireが前記FIREモード制限時間TFIRELMTに達するまで、システムの動作モードはFIREモードに設定される(f/fireon=1)。そして、このFIREモードが設定されている状態では、該FIREモードの中断動作中を除き、基本的には、前述したようなバイパス開度の操作による吸入空気量の増量と点火時期操作回転数F/B制御とが並行して行われる。
【0063】
また、内燃機関1の回転数Neや機関温度Twがなんらかの原因で異常に高いか、もしくは低いものとなっている状況では、システムの動作モードは内燃機関1の始動直後から通常モードに設定されるか、もしくは、FIREモードが途中で解除(終了)されて通常モードが設定される(f/fireon=0)。そして、この通常モードが設定されている状態では、バイパス開度や点火時期は、内燃機関1の通常的な運転(FIREモード以外の運転)を行うためのバイパス開度や点火時期に操作される。さらに、通常モードが設定されるときには、前記STEP5−7においてFIRE経過時間t/fireの値を強制的にFIREモード制限時間TFIRELMTに固定するため、以後は、内燃機関1を再び始動するまで前記STEP5−1の条件が成立することがない(FIRE経過時間t/fireは始動モードにおいてのみ初期化される)。従って、FIREモードは、内燃機関1の始動後、FIREモード制限時間TFIRELMTが経過するまでの期間においてのみ設定される。
【0064】
また、システムの動作モードがFIREモードに設定されている状態(f/fireon=1)で、アクセルペダルの操作によって車両の走行が行われたり、内燃機関1の空ぶかしが行われたような場合、すなわちアイドリング運転以外の内燃機関1の運転を行うべき場合(STEP5−10、5−11のいずれかの条件が成立する場合)には、前記FIRE中断フラグf/fpauseが「1」に設定される。この場合には、前述のようにバイパス開度の操作による吸入空気量の増量は行うが、点火時期操作回転数F/B制御は中断する、というようなFIREモードの中断動作が行われることとなる。そして、動作モードがFIREモードで、且つ中断動作が行われている状態(f/fireon=1且つf/fpause=1)において、STEP5−10、5−11のいずれかの条件も成立しなくなり、FIRE中断フラグf/fpauseが「0」に戻された場合(これは、基本的にはアイドリング運転を再開する場合である)には、中断動作が解除され、点火時期操作回転数F/B制御が再開される。
【0065】
尚、アクセルペダルの操作によりFIREモードの中断動作が行われる状況(STEP5−10の条件が成立)では、前記スロットル弁5の開度がアクセル操作量Apに応じたもの(>0)とされる。このため、この状況では、内燃機関1の燃焼室4には、バイパス弁7とスロットル弁5との両者を介して吸気が行われることとなる。
【0066】
また、本実施形態では採用していないが、始動モードの終了後、若干の時間が経過するまでは、システムの動作モードをFIREモードに設定しないようにしてもよい。
【0067】
次に、前記図4のSTEP4−5におけるバイパス開度の指令値θCMD の生成処理について説明する。
【0068】
ここで、この処理の具体的な内容を詳細に説明する前に、この処理の基本的な内容を説明しておく。
【0069】
本実施形態のシステムでは、FIREモードにおけるバイパス開度の指令値θCMD を生成するためにコントローラ2の吸入空気量操作手段25が行う主要な処理として、バイパス開度の標準指令値θ0 (以下、標準開度指令値θ0 という)を生成する処理(以下、標準開度指令値生成処理という)と、内燃機関1の燃焼室4の実際の吸入空気量の積算値を所要の目標値に収束させるようにフィードバック制御処理によってバイパス開度の指令値を補正するための処理(以下、吸気量F/B制御補正処理という)と、この吸気量F/B制御補正処理によるバイパス開度の指令値の補正量をFIREモードの動作が行われる毎に学習し、その学習結果に基づいて次回のFIREモードの動作に際してバイパス開度の指令値を補正するための処理(以下、学習補正処理という)と、前記大気圧センサ18及び大気温度センサ17によりそれぞれ検出される大気圧Pa及び大気温度Taのそれぞれに応じてバイパス開度の指令値を補正するための処理(以下、大気条件補正処理という)と、前記点火時期操作回転F/B制御によって操作される点火時期に応じてバイパス開度の指令値を補正するための処理(以下、点火時期応動補正処理という)とがある。以下にこれらの処理の基本的な内容を説明する。
【0070】
まず、前記標準開度指令値生成処理に関して説明する。
【0071】
本実施形態のシステムでは、FIREモードにおける吸入空気量の増量は、触媒装置3の早期の昇温・活性化を主目的とするものであり、この場合、FIREモード制限時間TFIRELMT内で触媒装置3の所望の昇温・活性化を確実に行い得る熱量の排ガス(該排ガスの熱量は概ね内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量に比例する)を触媒装置3に供給することができるように吸入空気量を増量させてやる必要がある。
【0072】
一方、この吸入空気量の増量は、内燃機関1の始動後、直ちに開始するものであると共に、前記点火時期操作回転数F/B制御によって点火時期を通常の点火時期よりも遅角側に操作しながら行うものであるため、該吸入空気量の増量形態(増量の時間的変化のパターン)が不適切であると、内燃機関1の燃焼状態やエミッション状態を損なう虞れがある。従って、FIREモードにおける吸入空気量の増量は、FIREモードにおける内燃機関1の燃焼状態やエミッション状態等を損なうことなく該内燃機関1のアイドリング運転を安定して円滑に行うことができるように行う必要がある。
【0073】
このために、前記標準開度指令値生成処理では、吸入空気量の増量のために前記バイパス弁アクチュエータ24に与えるべきバイパス開度の指令値の基本となる前記標準開度指令値θ0 を、内燃機関1の始動時(始動モード)における機関温度Twや前記FIRE経過時間t/fire等に応じて制御サイクル(TDC)毎にフィードフォワード的に生成する。
【0074】
この標準開度指令値生成処理は次のように行われる。
【0075】
まず、内燃機関1の始動時(始動モード)に前記機関温度センサ15により検出された機関温度Twから、あらかじめ定められたデータテーブルに基づき標準開度指令値θ0 の基本値i/ftbl(これはFIREモードの動作中の標準開度指令値θ0 の最大値である)を決定する。
【0076】
この場合、本実施形態では、上記基本値i/ftblは、FIREモードの動作中における車両の図示しない自動変速機の操作レバーの操作位置(以下、シフト位置という)がNレンジ(ニュートラルレンジ)にある場合と、Dレンジ(ドライブレンジ)にある場合とで各別の値を決定する。
【0077】
すなわち、自動変速機の前記シフト位置がNレンジにある場合には、内燃機関1の始動時の機関温度Twから、図6の実線aのデータテーブルに従って求まる値ifiret(以下、Nレンジ基本値ifiretという)を標準開度指令値θ0 の基本値i/ftblとして決定する。
【0078】
ここで、実線aのデータテーブルは、基本的には、機関温度Twが高い程、Nレンジ基本値ifiretが小さくなるように設定されている。これは、内燃機関1の始動時の機関温度Twは、触媒装置3の初期温度に相当し、該温度が高い程、触媒装置3の所望の昇温・活性化を行う上で必要な熱量、ひいては内燃機関1の吸入空気量が少なくて済むからである。
【0079】
また、自動変速機のシフト位置がDレンジにある場合には、内燃機関1の始動時の機関温度Twから、図6の実線bのデータテーブルに従って求まる値iatfire (以下、Dレンジ補正値iatfire という)を上記Nレンジ基本値ifiretに加算した値を標準開度指令値θ0 の基本値i/ftbl(=ifiret+iatfire )として決定する。
【0080】
ここで、実線bのデータテーブルは、基本的には、内燃機関1の始動時の任意の機関温度Twにおいて、Dレンジでの基本値fitbl をNレンジの場合よりも若干高めるように設定されている。これは、DレンジではNレンジの場合よりも内燃機関1の駆動力を吸収する負荷が多くなって、内燃機関1の回転数低下を引き起しやすいと共に排ガスの熱量がNレンジの場合よりも少なくなるからである。
【0081】
尚、本実施形態では、触媒装置3の初期温度(内燃機関1の始動時における触媒装置3の温度状態)に相当するものとして内燃機関1の始動時の機関温度Twを用いているが、内燃機関1の始動時に触媒装置3の初期温度を直接的に検出し、その検出温度から上記と同様に標準開度指令値θ0 の基本値i/ftblを決定するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、車両に自動変速機を採用しているため、Nレンジと、Dレンジとで各別の基本値i/ftblを設定しているが、手動操作式の変速機を車両に搭載している場合には、このような区別を行うことなく単一の基本値i/ftblを内燃機関1の始動時の機関温度Tw(あるいは触媒装置3の初期温度)に応じて上記と同様に設定するようにしてもよい。
【0083】
このようにして標準開度指令値θ0 の基本値i/ftblを決定する一方、標準開度指令値生成処理では、さらに、前記FIRE経過時間t/fireから、図7に示す如くあらかじめ定められたデータテーブル(タイムテーブル)に従って上記基本値i/ftblを補正(乗算補正)するための補正係数km/fire (≦1)を制御サイクル毎に求める。そして、この補正係数km/fire を上記基本値i/ftblに乗算してなる値を標準開度指令値θ0 (=i/ftbl・km/fire )として決定する。
【0084】
ここで、図7のデータテーブルでは、FIREモードの初期段階(t/fire:0〜t1 )では、始動直後の内燃機関1の燃焼状態等を安定化するために、標準開度指令値θ0 を基本値i/ftblに向かって徐々に増加させていくように、補正係数km/fire を「1」に向かって徐々に増加させていく。そして、標準開度指令値θ0 が基本値i/ftblに達してから(補正係数km/fire が「1」に達してから)は、所定時間の間(t/fire:t1 〜t2 )、標準開度指令値θ0 を基本値i/ftblに維持するように補正係数km/fire を「1」に設定する。その後は(t/fire:t2 〜TFIRELMT)、標準開度指令値θ0 を緩やかに減少させていくように、補正係数km/fire を緩やかに減少させていく。このように、標準開度指令値θ0 を緩やかに減少させていくのは次の理由による。
【0085】
すなわち、内燃機関1の暖機がある程度進行すると、該内燃機関1の各部のフリクション(摩擦)が徐々に低下していき、内燃機関1の回転数Neの上昇傾向が高まり、その結果、前記点火時期操作回転数F/B制御により操作される内燃機関1の点火時期はより遅角側に移行していくこととなる。そして、このとき、内燃機関1の点火時期が、内燃機関1の正常な運転を行いつつ該点火時期を操作し得る遅角側の限界値まで達してしまうと、内燃機関1の回転数Neの上昇傾向を抑えることができなくなってしまう。このような事態を予防するために、FIRE経過時間t/fireが所定時間t2 に達し、FIREモードの動作がある程度進行した後(内燃機関1の暖機がある程度進行した後)は、標準開度指令値θ0 (内燃機関1の吸入空気量)を緩やかに減少させ、フリクションの低下による回転数Neの上昇傾向を抑制する。
【0086】
以上説明した内容が前記標準開度指令値生成処理の内容である。
【0087】
本実施形態のシステムでは、基本的には、上記のようにフィードフォワード的に生成する標準開度指令値θ0 に従ってバイパス開度を操作することで、内燃機関1の運転を安定して行いつつ、触媒装置3の所望の昇温・活性化を適正に行うことを可能としている。
【0088】
次に、前記吸気量F/B制御補正処理及び大気条件補正処理について説明する。
【0089】
本実施形態では、前記標準開度指令値生成処理において前述の如く決定する標準開度指令値θ0 は、バイパス弁アクチュエータ24に与えるバイパス開度の指令値に対して、バイパス弁7の実際の開度や内燃機関1の燃焼室4の実際の吸入空気量が基準的な一定の相関関係で一義的に定まり、また、大気圧Paや大気温度Taがそれぞれ所定の標準大気圧(例えば1気圧)、標準大気温度(例えば25°Cの常温)である、というような理想的な条件を前提として定めたものである。
【0090】
しかるに、バイパス開度の指令値に対するバイパス弁7の実際の開度あるいは実際の吸入空気量は、バイパス弁アクチュエータ24やバイパス弁7の動作特性のばらつき、あるいは経時的な特性変化等に起因してばらつきを生じる(以下、このような吸入空気量のばらつきを構造要因によるばらつきという)。
【0091】
また、上記のような構造要因によるばらつきが無いとしても、バイパス開度の指令値に対する実際の吸入空気量は、大気圧Paによってばらつきを生じる。さらに、この大気圧Paの影響よりは小さいものの、バイパス開度の指令値θCMD に対する実際の吸入空気量は、大気温度Taによってもばらつきを生じる(以下、このような大気圧Pa、大気温度Taによる吸入空気量のばらつきを大気条件によるばらつきという)。
【0092】
すなわち、バイパス開度の指令値を一定(バイパス開度を一定)としたとき、実際の吸入空気量は大気圧Paが低い程、少なくなる。また、大気温度Taが高い程、空気の密度が小さくなるので、実際の吸入空気量(吸入空気の質量)は大気温度Taが高い程、少なくなる。
【0093】
このような吸入空気量のばらつきが生じると、内燃機関1が生成する排ガスの熱量(これは概ね吸入空気量に比例する)のばらつきも生じるため、触媒装置3の昇温形態のばらつきも生じる。このため、場合によっては、FIREモードにおける吸入空気量の増量の主目的である触媒装置3の早期の昇温・活性化を確実に行うことができず、ひいてはFIREモードの動作中に触媒装置3の所要の浄化性能を確保することができなくなる虞れがある。
【0094】
前記吸気量F/B制御補正処理及び大気条件補正処理は、このような不都合を解消するために行う処理であり、このうち、吸気量F/B制御補正処理は、前述した構造要因によるばらつきを補償するための処理、大気条件補正処理は、大気条件によるばらつきを補償するための処理である。
【0095】
まず、前記構造要因によるばらつきを補償するための吸気量F/B制御補正処理に関して説明する。
【0096】
この吸気量F/B制御補正処理における基本的な考え方としては、FIREモードの動作中に、内燃機関1の排ガスにより触媒装置3に実際に与える熱量を表す熱量データを逐次(制御サイクル毎に)検出もしくは推定して取得し、その熱量データの値が所定の目標値(これは触媒装置3に与えるべき目標熱量に相当する)に収束させるようにフィードバック制御処理によりバイパス開度の指令値を補正する。そして、この補正した指令値に基づきバイパス開度を操作することで、触媒装置3に実際に与える熱量を、それを表す上記熱量データの値の目標値に対応する目標熱量に合致させ、これにより、触媒装置3の昇温形態のばらつきを解消する。
【0097】
この場合、触媒装置3に与える熱量を表す熱量データとしては、例えば制御サイクル毎(瞬時瞬時の)の吸入空気量もしくは燃料供給量(これらは基本的には触媒装置3に与える制御サイクル毎の(瞬時瞬時の)熱量に比例する)、あるいはそれらの積算値(これは触媒装置3に与える瞬時瞬時の熱量の積算値に比例する)、あるいは触媒装置3の温度上昇量(触媒装置3の初期温度からの温度上昇量が触媒装置3に与える瞬時瞬時の熱量の積算値に比例する)等が挙げられる。
【0098】
そして、本実施形態では、上記熱量データとして例えば吸入空気量の積算値を用いることとし、FIREモードの動作中の内燃機関1の実際の吸入空気量の積算値を制御サイクル毎に次のように推定し、またその積算値の目標値を制御サイクル毎に次のように設定する。
【0099】
まず、吸入空気量の積算値の推定に関し、本実施形態における制御サイクルである1TDC当たりに内燃機関1の燃焼室4に吸入される吸入空気量は、概ね、前記図2に示したチャンバー13の内圧、すなわち吸気圧Pbに比例する。
【0100】
そこで、本実施形態では、制御サイクル毎の吸入空気量の推定値gair/preを次式(1)により求める(以下、この推定値gair/preを推定吸入空気量gair/preという)。
【0101】
【数1】
【0102】
ここで、式(1)中の係数Ga1は、あらかじめ定めた所定値(一定値)である。
【0103】
そして、この推定吸入空気量gair/preを、FIREモードの動作中に次式(2)により制御サイクル毎に累積加算していくことで、吸入空気量の積算値qair/preを求める(以下、この積算値qair/preを推定積算吸入空気量qair/preという)。
【0104】
【数2】
【0105】
ここで、式(2)中のkは制御サイクルの番数である(以下、同様)。
【0106】
尚、内燃機関1の実際の吸入空気量の積算値は、例えばエアーフローセンサ等により制御サイクル毎の吸入空気量を直接的に検出し、それを積算することで得るようにしてもよい。
【0107】
次に、触媒装置3に与える熱量の積算値の目標値に相当する吸入空気量の積算値の目標値(以下、目標積算吸入空気量qair/cmdという)は、触媒装置3の昇温・活性化を適正に行う上では、種々の形態で設定することが可能である。しかるに、その目標値は、FIREモードの動作中の内燃機関1の吸入空気量、ひいては内燃機関1の燃焼状態、エミッション状態等に影響を及ぼすこととなるので、該内燃機関1の運転の安定性を考慮する必要がある。
【0108】
そこで、本実施形態では、前述の如く理想的な条件下で、触媒装置3の昇温・活性化を適正に行い、また、安定した内燃機関1の運転を行い得るように定めた前記標準開度指令値θ0 に基づいて上記目標積算吸入空気量qair/cmdを設定する。
【0109】
すなわち、前記標準開度指令値θ0 は、バイパス開度の指令値に対して実際のバイパス開度や吸入空気量が一義的に定まる、大気圧Pa及び大気温度Taがそれぞれ一定の標準大気圧及び標準大気温度である、というような理想的な条件下で、触媒装置3の昇温・活性化を適正に行い、また、安定した内燃機関1の運転を行い得るように設定したものである。言い換えれば、標準開度指令値θ0 は、触媒装置3の昇温・活性化を適正に行い、また、安定した内燃機関1の運転を行うために燃焼室4に吸入されるべき最適な吸入空気量を規定するものである。
【0110】
従って、上記のような理想的な条件下で、バイパス開度を標準開度指令値θ0 に従って操作した場合における内燃機関1の燃焼室4の制御サイクル毎の吸入空気量を、制御サイクル毎の目標吸入空気量gair/cmdとして設定し、その目標吸入空気量gair/cmdの積算値を上記目標積算吸入空気量qair/cmdとして設定すればよい。
【0111】
この場合、上記目標吸入空気量gair/cmd及び目標積算吸入空気量qair/cmdは制御サイクル毎に次のように標準開度指令値θ0 から求めることができる。
【0112】
まず、実際のバイパス開度をθとしたとき、バイパス弁7を通過する単位時間(一定時間)当たりの空気量Giは、バイパス弁7の上流側の圧力である大気圧Paと下流側の圧力である吸気圧Pbとを用いて一般的に次式(3)により表される。
【0113】
【数3】
【0114】
ここで、式(3)中のCiは、空気密度に応じた係数で、該空気密度は大気温度Taに応じたものとなる。また、式(3)中のθの項は、厳密には、バイパス弁7の箇所の有効開口面積であるが、ここでは、この有効開口面積の代わりにバイパス開度θを用いている。尚、有効開口面積に代わりにバイパス開度θを用いることによる影響の補正は、係数Ciに含めるようにしてもよい。
【0115】
この場合、前記の理想的条件下で、バイパス開度を標準開度指令値θ0 に従って操作したとき、式(3)において、θ=θ0 、Pa=標準大気圧(一定)となり、また、係数Ciも基本的には標準大気温度に応じた一定値となる。また、FIREモードにおける内燃機関1の定常的な運転状態では、吸気圧Pbの変化は比較的小さく、概ね一定値となる。さらに、FIREモードにおける内燃機関1の定常的な運転状態では、前記スロットル弁5は基本的には閉弁状態で、内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量は、バイパス弁7を通過する空気量Giに等しいと見なせる。
【0116】
従って、理想的条件下で、バイパス開度を標準開度指令値θ0 に従って操作したときの燃焼室4の単位時間(一定時間)当たりの吸入空気量は、標準開度指令値θ0 に比例する。
【0117】
よって、理想的条件下で、バイパス開度を標準開度指令値θ0 に従って操作したときの燃焼室4の1制御サイクル(1TDC)当たりの吸入空気量、すなわち、前記目標吸入空気量gair/cmdは、次式(4)により求めることができる。
【0118】
【数4】
【0119】
ここで、式(4)中で内燃機関1の回転数Neの逆数(1/Ne)の項が含まれるのは、本実施形態で1制御サイクル(1TDC)の時間が回転数Neに反比例するからである。また、式(4)中のパラメータGa2は、前述したことから明らかなように、標準大気圧や標準大気温度、FIREモードにおける内燃機関1の定常的な運転状態での標準的な吸気圧Pb等により定まる所定の定数である。
【0120】
そして、本実施形態では、この式(4)により求まる目標吸入空気量gair/cmdを、FIREモードの動作中に次式(5)により制御サイクル毎に累積加算していくことで、前記目標積算吸入空気量qair/cmdを求める。
【0121】
【数5】
【0122】
尚、このようにして求められる目標積算吸入空気量qair/cmdは、標準開度指令値θ0 により定まるものであるため、内燃機関1の始動時の機関温度Tw(あるいは触媒装置3の初期温度)に応じたものとなる。また、該目標積算吸入空気量qair/cmdに対応して、内燃機関1の燃焼室4に吸入されるべき制御サイクル毎の吸入空気量、すなわち前記目標吸入空気量gair/cmdは、標準開度指令値θ0 と同じような時間的変化の形態でFIRE経過時間t/fireに応じて変化するものとなる。
【0123】
また、上記のような目標積算吸入空気量qair/cmdは、あらかじめタイムテーブルにより設定しておき、このタイムテーブルを用いて制御サイクル毎にFIRE経過時間t/fireから求めるようにしてもよい。
【0124】
本実施形態のシステムでは、前記吸気量F/B制御補正処理は、基本的には、上記のように求めた前記推定積算吸入空気量qair/pre(これは触媒装置3に実際に与える熱量の積算値に相当する)を目標積算吸入空気量qair/cmd(これは触媒装置3に与えるべき熱量の積算値の目標値に相当する)に収束させるように(これらの偏差を解消するように)フィードバック制御処理によりバイパス開度の指令値の補正量を求め、この補正量により標準開度指令値θ0 を補正してバイパス開度の指令値を決定することで、前述した構造要因による吸入空気量のばらつきを補償し、ひいては、触媒装置3の昇温形態のばらつきを解消するものである。
【0125】
この場合、吸気量F/B制御補正処理では、後述の如く、推定積算吸入空気量qair/preと目標積算吸入空気量qair/cmdとの偏差の減衰速度(推定積算吸入空気量qair/preの目標積算吸入空気量qair/cmdへの収束速度)を状況によって可変的に設定することが好ましいこと等から、該減衰速度を任意に所望の減衰速度に指定可能な応答指定型制御としてのスライディングモード制御(より詳しくは適応スライディングモード制御)を上記のフィードバック制御処理に用いる。
【0126】
この適応スライディングモード制御(以下、吸気側適応SLD制御という)を用いて、推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるようにバイパス開度の指令値を補正する吸気量F/B制御補正処理のアルゴリズムは本実施形態では次のように構築されている。尚、以下の説明においては説明の便宜上、しばらくの間、上記推定積算吸入空気量qair/preを含めて内燃機関1の燃焼室4の実際の吸入空気量の積算値を参照符号Qaを用いて積算吸入空気量Qaと称し、その目標値を参照符号qを用いて目標積算量q(これは、目標積算吸入空気量qair/cmdに相当する)と称する。また、バイパス開度の指令値を一般的に参照符号Θを用いて開度指令Θと称する。
【0127】
まず、内燃機関1の燃焼室4の前記制御サイクル毎の実際の吸入空気量を参照符号Gcyl を用いて表し、この吸入空気量Gcyl と前記開度指令Θとの相関関係を次式(6)のように1次遅れ系の離散系(離散時間系)モデル(1次の自己回帰モデル)で表現する。
【0128】
【数6】
【0129】
ここで、式(6)中のα,βは、大気圧Paや大気温度Ta、吸気圧Pb、回転数Ne等に応じたモデルパラメータである。
【0130】
また、制御サイクル毎の前記積算吸入空気量Qaは、次式(7)により表されるので、
【0131】
【数7】
【0132】
この式(7)と前記式(6)とを用いて次式(8)が得られる。
【0133】
【数8】
【0134】
ここで、この式(8)中のGcyl(k)は、式(7)によってGcyl(k)=Qa(k)−Qa(k-1)であるので、これを式(8)に代入して整理すると、次式(9)が得られる。
【0135】
【数9】
【0136】
この式(9)は、本実施形態のシステムにおいて、開度指令Θから積算吸入空気量Qaを生成する系、すなわち、前記吸気側適応SLD制御の制御対象とすべき系を離散系のモデル(2次の自己回帰モデル。以下、吸気制御対象モデルという)で表現したものとなっている。すなわち、該吸気制御対象モデルは、吸気側適応SLD制御の制御対象の出力としての各制御サイクルにおける積算吸入空気量Qa(k+1)を、それより過去の制御サイクルにおける積算吸入空気量Qaの時系列データQa(k),Qa(k-1)、並びに吸気側適応SLD制御の制御対象の入力としての開度指令Θ(k) を用いて表現するものである。尚、式(9)において、積算吸入空気量Qa(k),Qa(k-1)にそれぞれ係る係数a1 ,a2 と、開度指令Θ(k) に係る係数b1 とは吸気制御対象モデルの挙動特性を規定するモデルパラメータである。
【0137】
本実施形態では、この吸気制御対象モデルに基づいて、吸気側適応SLD制御のアルゴリズムを以下の如く構築している。
【0138】
すなわち、吸気側適応SLD制御では、スライディングモード制御に必要な切換関数σ1 を、前記積算吸入空気量Qaと前記目標積算量qとの偏差Eq=Qa−qの制御サイクル毎の時系列データEq(k),Eq(k-1)を変数とする次式(10)の線形関数により定義する。
【0139】
【数10】
【0140】
ここで、式(10)中のs1 ,s2 は切換関数σ1 の各項の係数パラメータであり、次式(11)の条件を満たすように設定する。
【0141】
【数11】
【0142】
尚、本実施形態では、簡略化のためにs1 =1としている。また、本実施形態では、係数パラメータs2 の値(より一般的には、s2 /s1 の値)を可変的に設定するのであるが、これについては後述する。
【0143】
このように切換関数σ1 を定義したとき、前記偏差Eqの時系列データEq(k),Eq(k-1)の組から成る状態量(Eq(k),Eq(k-1))を図8に示す如く、σ1 =0なる関係式によって定義される切換線(これはすべり線とも言われる)上に収束させ、その収束状態を維持すると、状態量(Eq(k),Eq(k-1))を、外乱等の影響によらずに極めて安定に切換線σ1 =0上の平衡点、すなわち、Eq(k)=Eq(k-1)=0となる点に収束させることができる。
【0144】
尚、本実施形態では、切換関数σ1 に関する位相空間が2次元であるため(状態量(Eq(k),Eq(k-1))の成分が二つ)、切換線σ1 =0は直線となるが、位相空間が3次元である場合には、切換線は平面となり、この場合には、該切換線はすべり面といわれることもある。さらに、位相空間が4次元以上の高次元になると、切換線は幾何学的に図示できない超平面となる。
【0145】
一方、前記積算吸入空気量Qaを前記目標積算量qに収束させるために、前記式(9)によりモデル化した制御対象に与えるべき入力として吸気側適応SLD制御が生成する制御入力、すなわち開度指令Θは、基本的には、前記状態量(Eq(k),Eq(k-1))を前述の如く定めた切換線σ1 =0に拘束するための制御則に基づいて定める等価制御入力Θeqと、状態量(Eq(k),Eq(k-1))を切換線σ1 =0に収束させるための制御則である到達則に基づいて定める到達則入力Θrch と、状態量(Eq(k),Eq(k-1))の切換線σ1 =0への収束に際しての外乱等の影響を排除するための制御則である適応則に基づいて定める適応則入力Θadp との総和である(次式(12)を参照)。
【0146】
【数12】
【0147】
尚、通常のスライディングモード制御では、適応則を考慮せず、この場合には、適応則入力Θadp は省略される。
【0148】
この場合、等価制御入力Θeqは、次式(13)により与えられる。
【0149】
【数13】
【0150】
尚、この式(13)は、状態量(Eq(k),Eq(k-1))を切換線σ1 =0に拘束するためのσ1(k)=σ1(k-1)なる条件と、前記吸気制御対象モデルの式(9)とに基づいて導出することができるものである。
【0151】
また、到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp は、それらを定める種々の手法が考えられるが、本実施形態では、到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp は、それぞれ前記切換関数σ1 の値、及び該切換関数σ1 の値の積算値(積分値)に比例させたものとし、それぞれ次式(14)、(15)により定める。
【0152】
【数14】
【0153】
【数15】
【0154】
ここで、式(14)中のF1 は、到達則に係わるゲインを規定する係数であり、次式(16)の条件を満たすように設定すればよい。但し、切換関数σ1 の値の切換線σ1 =0への収束に際してのチャタリングを低減する上では、式(16)’の条件を満たすように係数F1 を設定することが好ましい。
【0155】
【数16】
【0156】
また、式(15)中のF2 は、適応則に係わるゲインを規定する係数であり、次式(17)の条件を満たすように設定すればよい。尚、式(17)中のΔTは制御サイクル(制御周期)である。
【0157】
【数17】
【0158】
本実施形態で用いる吸気側適応SLD制御のアルゴリズムでは、基本的には、式(13)〜(15)により等価制御入力Θeq、到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp を求め、それらの総和を開度指令Θとして生成することで、前記積算吸入空気量Qaを前記目標積算量qに収束させるようにFIREモードの動作中の吸入空気量を操作することが可能である。
【0159】
ところで、等価制御入力Θeq、到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp をそれぞれ前記式(13)〜(15)により求めるためには、前記式(9)により表した吸気制御対象モデルのモデルパラメータa1 ,a2 ,b1 の値を同定しておく必要がある。しかるに、これらのモデルパラメータa1 ,a2 ,b1 の値は、FIREモードの動作中の種々様々の要因の影響を受け、それらの値の最適な同定を行うことは煩雑なものとなりやすい。
【0160】
このため、本実施形態では、次のようにモデルパラメータa1 ,a2 ,b1 を排除し、吸気側適応SLD制御の簡略化したアルゴリズムを構築する。
【0161】
まず、到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp に関しては、これらを求めるための前記式(14)、(15)中に含まれるモデルパラメータはb1 だけである。そして、式(14)で(F1 /b1 )を改めてFxとおき、また、式(15)で(F2 /b1 )を改めてFyとおけば、式(14)、(15)はそれぞれ次式(18)、(19)に書き換えられる。
【0162】
【数18】
【0163】
【数19】
【0164】
従って、これらの式(18)、(19)によって、モデルパラメータb1 を用いずに到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp を求めることができる。
【0165】
尚、この場合、式(18)、(19)中の係数Fx,Fyの値は、切換関数σ1 の値の切換線σ1 =0への収束の安定性や速応性等を考慮して、実験やシミュレーションを通じて定めればよい。
【0166】
次に、等価制御入力Θeqに関しては、これを求めるための前記式(13)は、前記偏差Eq=Qa−qを用いて次式(20)に書き換えることができる。
【0167】
【数20】
【0168】
この式(20)中の第1番目の大括弧を含む項は、積算吸入空気量Qaと目標積算量qとの偏差Eqに基づくフィードバック項で、第2番目の大括弧を含む項は、目標積算量qのみに基づくフィードフォワード項である。以下、このフィードバック項及びフィードフォワード項をそれぞれ次式(21)、(22)のようにΘeq/fb 、Θeq/ff とおく。
【0169】
【数21】
【0170】
【数22】
【0171】
ここで、上記フィードフォワード項Θeq/ff は、前記偏差Eqが定常的に「0」となるような状態で制御対象に与えるべき入力(開度指令Θ)である。一方、前記標準開度指令値θ0 は、本実施形態では目標積算量qを規定するものであると共に、該標準開度指令値θ0 に対して吸入空気量、ひいては積算吸入空気量がその目標とすべき値に一義的に定まりるものとしてフィードフォワード的に設定したものである。
【0172】
従って、式(20)中のフィードフォワード項Θeq/ff は、モデルパラメータa1 ,a2 ,b1 を含まない標準開度指令値θ0 に置き換えることができる。
【0173】
さらに、上記フィードバック項Θeq/fb に関しては、このフィードバック項Θeq/fb を含む等価制御入力Θeqは、前記状態量(Eq(k),Eq(k-1))を前記切換線σ1 =0上に拘束するための制御入力であるが、本願発明者等の各種検討によれば、本実施形態のシステムでは、状態量(Eq(k),Eq(k-1))が切換線σ1 =0の近傍に存する状態において安定性が高い。また、本実施形態では、前記適応則入力Θadp を採用することで、状態量(Eq(k),Eq(k-1))の切換線σ1 =0上への収束の安定性を高めることができる。
【0174】
このため、本実施形態のシステムでは、上記フィードバック項Θeq/fb を省略しても実用上、制御性が損なわれることはないと考えられる。
【0175】
このようなことを考慮すると、等価制御入力Θeqは、そのフィードバック項Θeq/fb を省略し、フィードフォワード項Θeq/ff を標準開度指令値θ0 で置き換えたものとしてもよいと考えられ、このようにすれば、等価制御入力Θeqは、モデルパラメータa1 ,a2 ,b1 を用いずに求めることができる。
【0176】
そこで、本実施形態では、吸気側適応SLD制御の等価制御入力Θeqは、次式(23)により与えるものとする。
【0177】
【数23】
【0178】
以上のことから、本実施形態における吸気量F/B制御補正処理では、前述した構造要因による吸入空気量のばらつきを補償するために前記吸気側適応SLD制御により決定する制御対象への入力、すなわち開度指令Θを次式(24)の演算により求める。
【0179】
【数24】
【0180】
別の言い方をすれば、本実施形態では、前記式(18)、(19)により求まる到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp の総和(=Θrch +Θadp )を次式(25)のようにバイパス開度の指令値の補正量i/sld (以下、SLD開度補正量i/sld という)として求め、このSLD開度補正量i/sld により標準開度指令値θ0 を補正する(標準開度指令値θ0 にSLD開度補正量i/sld を加算する)ことで、構造要因によるばらつきを補償するための開度指令Θを求める。
【0181】
【数25】
【0182】
この場合において、SLD開度補正量i/sld (=Θrch +Θadp )を求めるために必要となる切換関数σ1 の値は、本実施形態では、前記式(10)の積算吸入空気量Qaとして前記式(2)により求まる推定積算吸入空気量qair/preを用い、且つ、目標積算量qとして前記式(5)により求まる目標積算吸入空気量qair/cmdを用いた次式(26)の演算により求める。
【0183】
【数26】
【0184】
尚、本実施形態では、FIREモードの中断動作中(前記FIRE中断フラグf/fpauseが「1」に設定されている状態)は、SLD開度補正量i/sld の算出は中断する(SLD開度補正量i/sld の値を中断動作の直前の値に保持する)が、推定積算吸入空気量qair/preと目標積算吸入空気量qair/cmdの算出は継続する(但し、推定積算吸入空気量qair/preに関しては内燃機関1のフュエルカット中を除く)。そして、前記FIRE制限時間TFIRELMTが経過する前に、中断動作を解除する状態となった場合には、SLD開度補正量i/sld の算出及びそれに応じた標準開度指令値θ0 の補正を再開する。
【0185】
このようにするのは次の理由による。すなわち、FIREモードの中断動作中は、基本的には、車両のアクセルペダルの操作によって、車両の走行、もしくは内燃機関1のからぶかしを行う状況である。そして、この状況では、前記スロットル弁5がアクセル操作量Apに応じた開度に開かれるので、内燃機関1の燃焼室4の実際の吸入空気量は、バイパス弁7を介した吸入空気量に、スロットル弁5を介した吸入空気量を加えたものとなる。
【0186】
このような状況では、推定積算吸入空気量qair/preは、バイパス弁7とスロットル弁5との両者による吸入空気量の積算値となるので、これをバイパス弁7の標準開度指令値θ0 に応じて定まる目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるようにバイパス開度を操作することは、アクセルペダルの操作に応じた内燃機関1の動作性能を確保する上で好ましくない。このために、本実施形態では、FIREモードの中断動作中は、SLD開度補正量i/sld の算出を中断する。
【0187】
また、FIREモードの中断動作中は、内燃機関1の燃焼室4の実際の吸入空気量は、バイパス弁7を介した吸入空気量に、スロットル弁5を介した吸入空気量を加えたものとなるので、触媒装置3に与えられる熱量がさらに多くなる。従って、FIREモードの中断動作中に触媒装置3が十分に昇温・活性化される場合もあるが、該中断動作が短時間で解除されるような場合も多く、この場合には、該触媒装置3の昇温・活性化が未だ不十分なものとなることがある。このために、本実施形態では、FIREモードの中断動作中も推定積算吸入空気量qair/preと目標積算吸入空気量qair/cmdの算出を継続して行っておき、該中断動作の解除後にSLD開度補正量i/sld の算出を再開して標準開度指令値θ0 の補正を行うことで、FIREモードの動作中における触媒装置3の昇温・活性化を確実なものとする。但し、この場合において、推定積算吸入空気量qair/preに関しては、内燃機関1のフュエルカット中は、燃焼室4に吸入される空気が触媒装置3に与える熱量に寄与しないので、該フュエルカット中は、推定積算吸入空気量qair/preの算出を行わない。
【0188】
また、本実施形態では、後述する点火時期応動補正処理を行っている際にも、SLD開度補正量i/sld の算出を中断する(SLD開度補正量i/sld の値を中断動作の直前の値に保持する)。これは次の理由による。すなわち、点火時期応動補正処理は、詳細は後述するが、開度指令Θを標準開度指令値θ0 に対してフィードフォワード的に減少側に補正する処理であり、このような処理を行っている際に、SLD開度補正量i/sld の算出を行うと、点火時期応動補正処理による開度指令Θの減少分を打ち消すように、SLD開度補正量i/sld が算出されてしまうからである。
【0189】
以上説明した内容が、吸気量F/B制御補正処理の基本的内容である。
【0190】
ところで、本実施形態において、内燃機関1の吸入空気量の増量を開始した直後の段階、すなわち、バイパス開度を上昇させていく段階は、内燃機関1の始動直後の状態であるため、このような段階で標準開度指令値θ0 をSLD開度補正量i/sld により大きく補正すると、内燃機関1の燃焼室4での混合気の燃焼状態の悪化や内燃機関1のエミッション状態の悪化を招く虞れがある。また、本実施形態では、目標積算吸入空気量qair/cmdが、内燃機関1の定常的な吸気状態を前提としているため、吸入空気量の増量の開始直後の段階では、目標積算吸入空気量qair/cmdの信頼性が乏しいと考える。このため、吸入空気量の増量の開始直後の段階では、目標積算吸入空気量qair/cmdと前記推定積算吸入空気量qair/preとの偏差Eqが大きなものとなって、前記SLD開度補正量i/sld も大きなものとなる虞れがある。
【0191】
このようなことを考慮し、本実施形態における吸気量F/B制御補正処理では、吸入空気量の増量の開始後(FIREモードの開始後)、所定時間TISLDLMT(SLD補正制限時間TISLDLMTという。図7を参照)が経過するまで(FIRE経過時間t/fire≧TISLDLMTとなるまで)の間は、目標積算吸入空気量qair/cmd及び推定積算吸入空気量qair/preの値を強制的に「0」とする(このときEq=0となる)。このようにすることで、FIRE経過時間t/fireがSLD補正制限時間TISLDLMTに達するまでの内燃機関1の始動直後の状態では、SLD開度補正量i/sld の値も「0」に維持し、該SLD開度補正量i/sld による標準開度指令値θ0 の補正を行わないようにしている。
【0192】
さらに、本実施形態における吸気量F/B制御補正処理では、SLD開度補正量i/sld による標準開度指令値θ0 の実際の補正を開始する直後においても、その補正を急激に行うと、内燃機関1の燃焼状態やエミッション性能を損なう虞れがある。このため、本実施形態では、吸気量F/B制御補正処理で用いる前記吸気側適応SLD制御の応答指定特性を利用し、推定積算吸入空気量qair/preと目標積算吸入空気量qair/cmdとの偏差Eq(以下、吸気偏差Eqという)の減衰速度(推定積算吸入空気量qair/preの目標積算吸入空気量qair/cmdへの収束速度)を、次のように可変的に設定するようにしている。
【0193】
すなわち、吸気側適応SLD制御において、吸気偏差Eqに係わる状態量(Eq(k),Eq(k-1))が前記切換線σ1 =0に収束した状態では、前記式(10)から明らかなように、次式(27)の関係式が成立する。
【0194】
【数27】
【0195】
従って、切換関数σ1 の係数パラメータs1 ,s2 の比(s2 /s1 )(但し、−1<s2 /s1 <1)の値は吸気偏差Eqの「0」への減衰速度を規定するものとなる(|s2 /s1 |が「0」に近づく程、減衰速度は速くなる)。従って、この比(s2 /s1 )の値によって、吸気偏差Eqの減衰速度を指定することができることとなり、これが、吸気側適応SLD制御の応答指定特性である。
【0196】
尚、吸気偏差Eqの減衰速度を速くするということは、吸気側適応SLD制御によるフィードバック制御のゲインを大きくするということと同等である。また、式(27)は、入力の無い一次遅れ系を表現しており、上記比(s2 /s1 )は、この一次遅れ系の極に相当するものである(以下、上記比(s2 /s1 )をポールpole/iと称する)。また、本実施形態では、s1 =1に設定しており、この場合、pole/i=s2 である。また、吸気偏差Eqの「0」への減衰は、非振動的であることが好ましく、このため、本実施形態では、s2 /s1 =pole/i<0としている(s2 /s1 >0とすると、式(27)から明らかなように吸気偏差Eqの「0」への減衰は振動的になる)。
【0197】
本実施形態における吸気量F/B制御補正処理では、このような吸気側適応SLD制御の応答指定特性を利用し、基本的には、FIRE経過時間t/fireから、図9に示すようにあらかじめ定めたデータテーブル(タイムテーブル)に基づいて制御サイクル毎に求まる値pole/itbl (以下、ポールテーブル値pole/itbl という)を前記ポールpole/iの値として設定することで、該ポールpole/iの値をFIRE経過時間t/fireに応じて可変的に設定する。
【0198】
ここで、図9のデータテーブルでは、FIRE経過時間t/fireが所定値TPOLEVST(但し、TPOLEVST≧SLD補正制限時間TISLDLMT)に達してから、ポールテーブル値pole/itbl 、ひいてはポールpole/iをFIRE経過時間t/fireの増加に伴い、所定の下限値pole/i0 (<0。本実施形態では「−1」)から所定の定常値pole/ix (pole/i0 <pole/ix <0)に向かって徐々に増加させ(ポールテーブル値pole/itbl の絶対値を徐々に小さくしていく)、定常値pole/ix に達した後(FIRE経過時間t/fireが図9中の所定値TPOLEXに達した後)は、該定常値pole/ix に維持するようにしている。これにより、本実施形態では、SLD開度補正量i/sld による標準開度指令値θ0 の補正を開始する直後は、吸気偏差Eqの減衰速度を徐々に早めていく(推定積算吸入空気量qair/preの目標積算吸入空気量qair/cmdへの収束を緩やかに行う)ようにしていると共に、FIRE経過時間t/fireが所定値TPOLEXに達するまでは、該所定値TPOLEXに達した後よりも吸気偏差Eqの減衰速度を遅くするようにしている。
【0199】
尚、ポールテーブル値pole/itbl によるポールpole/iの上記のような増加は、基本的には内燃機関1の始動後の初期段階(吸入空気量を増加させていく段階)で行う。
【0200】
また、本実施形態では、FIREモードの中断動作中は、吸気量F/B制御補正処理(より正確には、SLD開度補正量i/sld の算出処理)を行わないようにしており、この状態では、ポールpole/iをポールテーブル値pole/itbl の前記下限値pole/i0 に設定するようにしている。そして、FIREモードの中断動作が解除されたとき、ポールpole/iを上記下限値pole/i0 からポールテーブル値pole/itbl に向かって徐々に復帰させる(図9の仮想線を参照)ようにしている。
【0201】
次に、前述した大気条件による吸入空気量のばらつきの影響を補償するための前記大気条件補正処理について説明する。
【0202】
まず、前記大気条件のうちの大気圧に関して説明する。尚、ここでの説明では、大気温度は一定であり、また、バイパス開度は開度指令Θに等しいものとする。
【0203】
内燃機関1の燃焼室4内の圧力をPcyl 、吸気バルブ11(図2参照)の開度(有効開口面積)をAcyl とおくと、該燃焼室4の吸入空気量Gcyl は、これらの圧力Pcyl 、開度Acyl 及び吸気圧Pbとを用いて、一般的に次式(28)により表される。
【0204】
【数28】
【0205】
ここで、Ciは、前記式(3)に関して説明した如く、空気密度に応じた係数である。
【0206】
この場合、内燃機関1では、式(28)中における燃焼室4内の圧力をPcyl、吸気バルブ11の開度Acyl は基本的には一定である。また、係数Ciも大気温度Taが一定であれば一定と考えてよい。
【0207】
従って、式(28)から、燃焼室4内の吸入空気量Gcyl を大気圧によらないものとするためには、吸気圧Pbが大気圧Paに応じて変化しないことが必要となることが判る。
【0208】
一方、バイパス開度の開度指令Θに対して、バイパス弁7を通る空気量Giは、前記式(3)と同様、次式(29)により表される。
【0209】
【数29】
【0210】
さらに、大気圧Paが所定の標準大気圧(以下、これに参照符号Pa0を付する)である状態において、開度指令Θを前記標準開度指令値θ0 (これは前述の通り標準大気圧Pa0を前提として定めたものである)としたときにバイパス弁7を通る空気量をGi0(これは前記目標吸入空気量gair/cmdに相当する)とおくと、該空気量Gi0(以下、標準空気量Gi0という)は、次式(30)により表される。
【0211】
【数30】
【0212】
ここで、式(30)中のPb0は、標準大気圧Pa0において、バイパス開度を標準開度指令値θ0 としたときにチャンバー13(図2参照)内に発生する吸気圧(以下、標準吸気圧Pb0という)である。
【0213】
また、周知の気体の状態方程式によれば、チャンバー13内の吸気圧Pbが変動しないための条件は、チャンバー13内に流入する空気量、すなわちバイパス弁7を通る空気量Gi と、チャンバー13から流出する空気量、すなわち燃焼室4の吸入空気量Gcyl とが等しくなることである。
【0214】
以上のことから、大気圧Paが標準大気圧Pa0に対して変動したとき、燃焼室4の吸入空気量Gcyl が変化しないようにするための開度指令Θは、式(29)中の吸気圧Pbが、前記標準吸気圧Pb0と等しくなり、且つ、式(29)により表される空気量Giが前記標準空気量Gi0(式(30))と等しくなるように定めればよい。
【0215】
すなわち、その開度指令Θは、次式(31)の条件を満たすように定めればよい。
【0216】
【数31】
【0217】
そして、この式(31)を開度指令Θについて解くと、次式(32)が得られる。
【0218】
【数32】
【0219】
従って、基本的には、この式(32)に基づいて標準開度指令値θ0 を補正して開度指令Θを決定すれば、大気圧による吸入空気量のばらつきを補償しすることができる。つまり、式(32)中の平方根の値kpa (以下、大気圧補正係数kpa という)を開度指令に乗算して補正することで、大気圧による吸入空気量のばらつきを補償するための開度指令を決定することができる。
【0220】
ところで、本実施形態では、標準開度指令値θ0 を前述の如く時間的に変化させるため、式(32)の演算で使用する標準吸気圧Pb0も変化し、従って、大気圧による吸入空気量のばらつきを的確に補償する上では、標準吸気圧Pb0の値をあらかじめ定めたデータテーブル等を用いて標準開度指令値θ0 に応じて適宜変更することが好ましいと考えられる。但し、本実施形態では、FIREモードにおける定常的な内燃機関1の運転中は、実際上、吸気圧Pbの変動は小さいということ、並びに制御系の安定性を考慮し、式(32)中の標準吸気圧Pb0としてあらかじめ定めた所定値(固定値)を用いる。
【0221】
また、本実施形態では、コントローラ2の演算負荷を軽減するために、実際には、式(32)の演算を直接的には行わず、次のような処理を行う。
【0222】
すなわち、制御サイクル毎に、あらかじめ定めた標準大気圧Pa0と、標準吸気圧Pb0と、内燃機関1の始動時(始動モード)において前記大気圧センサ18により検出される大気圧Paとから次式(33)により定義するパラメータratio/dpa (以下、大気圧補正用パラメータratio/dpa という)、すなわち、式(32)の平方根(√)内の値を求める。
【0223】
【数33】
【0224】
そして、あらかじめ大気圧補正用パラメータratio/dpa の種々の値に対して平方根の演算を行って定めた図10のデータテーブルを用意しておき、先に求めた大気圧補正用パラメータratio/dpa の平方根を前記大気圧補正係数kpa として求める。そして、この大気圧補正係数kpa を用いて開度指令を補正(乗算補正)する。
【0225】
尚、この大気圧補正係数kpa は、大気圧センサ18により検出される大気圧Paが標準大気圧Pa0であれば、「1」であり、該大気圧Paが大きくなる程、値が小さくなる。
【0226】
以上説明した内容が、前記大気条件補正処理において、大気圧による吸入空気量のばらつきを補償するための処理の基本的内容である。
【0227】
次に、大気条件のうちの大気温度に関して説明する。前記式(28)から明らかなように内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量Gcyl は、大気密度に応じた係数Ciの影響を受け、大気密度が高い程、多くなる。そして、大気密度は、大気温度が高い程、低くなるので、燃焼室4の吸入空気量Gcyl は大気温度が高い程、少なくなる。
【0228】
従って、大気温度が変化しても、燃焼室4の吸入空気量Gcyl を変化させないようにするためには、大気温度が高い程、バイパス開度が大きくなるように開度指令Θを補正してやればよい。
【0229】
そこで、本実施形態では、内燃機関1の始動時(始動モード)において前記大気温度センサ17により検出される大気温度Taから、図11に示す如くあらかじめ実験等に基づき定めたデータテーブルに基づいて補正係数kta (以下、大気温度補正係数kta という)を求め、この大気温度補正係数kta を用いて開度指令を補正(乗算補正)する。
【0230】
この場合、本実施形態では、標準大気温度Ta0(例えば25°C)における吸入空気量を基準としているので、大気温度補正係数kta は、検出される大気温度Taが標準大気温度Ta0であるとき「1」であり、大気温度Taが高くなる程、値が大きくなる。
【0231】
これが、前記大気条件補正処理において、大気温度による吸入空気量のばらつきを補償するための処理の基本的内容である。
【0232】
次に、前記学習補正処理について説明する。
【0233】
本実施形態では、前述した如く、前記構造要因による吸入空気量のばらつきを補償するために、吸気側適応SLD制御を用いた吸気量F/B制御補正処理によって、制御サイクル毎に前記SLD開度補正量i/sld を求め、このSLD開度補正量i/sld によって標準開度指令値θ0 を補正する。この場合、バイパス弁7の経年劣化等により、標準開度指令値θ0 に対する実際の吸入空気量が、該標準開度指令値θ0 に対応した本来の標準的な吸入空気量に対してばらつきが比較的大きくなっているような状態では、前記積算吸入空気量Qa(推定積算吸入空気量qair/pre)が目標積算量q(目標積算吸入空気量qair/cmd)に対して未収束の段階でのSLD開度補正量i/sld は大きなものとなり、また、その時間的変化も大きなものとなる。このため、SLD開度補正量i/sld により標準開度指令値θ0 を補正して決定した開度指令Θ、ひいては実際の吸入空気量の時間的変化のパターンは、FIREモードの初期段階において、標準開度指令値θ0 の時間的変化のパターン(目標とする吸入空気量の時間的変化のパターン)に対して大きく逸脱した時間的変化を生じるものとなることがある。
【0234】
しかるに、特にFIREモードの初期段階(内燃機関1の始動後まもなくの状態)では、燃焼室4での混合気の燃焼状態が不安定なものとなりやすく、開度指令Θの時間的変化のパターンが標準開度指令値θ0 の時間的変化のパターンに対して大きく逸脱した変化を呈すると、該燃焼状態の悪化や、エミッション状態の悪化を引き起こす虞れがある。
【0235】
そこで、本実施形態における学習補正処理では、FIREモードの動作中に制御サイクル毎に求めるを学習し、次回のFIREモードの動作の全期間にわたって、標準開度指令値θ0 を乗算補正するための補正係数kilearn (以下、学習補正係数kilearn という)を求める。そして、この学習補正係数kilearn を標準開度指令値θ0 に乗算することで、標準開度指令値θ0 の時間的変化のパターンと整合した安定な時間的変化を呈する開度指令Θを生成する。
【0236】
この場合、学習補正係数kilearn は、本実施形態では次のように決定する。
【0237】
すなわち、各回のFIREモードの動作中に制御サイクル毎に求められるSLD開度補正量i/sld から、次式(34)によって、該SLD開度補正量i/sld に対応する実際の吸入空気量の補正量gair/sld(以下、SLD吸気補正量gair/sldという)を制御サイクル毎に求める。
【0238】
【数34】
【0239】
ここで、この式(34)は、前記目標吸入空気量gair/cmd、すなわち標準開度指令値θ0 に対応した実際の吸入空気量(1TDC当たり)を求めるための式(4)と同様の式であり、式(34)中のGa2は、式(4)中のGa2と同一である。
【0240】
さらに、このSLD吸気補正量gair/sldを次式(35)により制御サイクル毎に累積加算することで、SLD吸気補正量gair/sldの積算値qair/sld(以下、SLD積算吸気補正量qair/sldという)を求める。
【0241】
【数35】
【0242】
そして、このSLD積算吸気補正量qair/sldの前記目標積算吸入空気量qair/cmdに対する比(qair/sld/qair/cmd)から次式(36)により求まる値を前記学習補正係数kilearn の基本値vpskisld(以下、基本学習補正係数vpskisldという)を求める。
【0243】
【数36】
【0244】
尚、この基本学習補正係数vpskisldは、基本的には、FIREモードの動作が終了するまで制御サイクル毎に算出するが、FIREモードの前記中断動作が行われる場合や、後述する点火時期応動補正処理が行われる場合にあっては、前述の如くSLD開度補正量i/sld の算出を中断するので、FIREモードの中断動作や点火時期応動補正処理が開始される前(前記学習演算終了フラグf/flrnend が「1」に設定される前)までで基本学習補正係数vpskisldの算出を終了する。
【0245】
そして、このようにして各回のFIREモードの動作中に最終的に求められた基本学習補正係数vpskisldに対して次式(37)によるなまし演算処理(フィルタリング処理)を施すことで、次回のFIREモードの動作に際して標準開度指令値θ0 を補正するための学習補正係数kilearn を求める。
【0246】
【数37】
【0247】
ここで、式(37)中のkilearn(j)は、今回のFIREモードの動作によって新たに決定する学習補正係数kilearn を意味し、kilearn(j-1)は、前回のFIREモードの動作によって決定された学習補正係数kilearn を意味する。また、式(37)中のCkiは、あらかじめ定めた「1」以下の定数である。
【0248】
尚、この場合において、各回のFIREモードの動作において、最終的な基本学習補正係数vpskisldが求められた時のFIRE経過時間t/fire(これは、前記図5のフローチャートのSTEP5−5,5−16等で設定されるパラメータt/kil の値である)が所定時間に満たない場合は、その基本学習補正係数vpskisldは、学習補正係数kilearn を求める(更新する)ためには使用せず、現在の学習補正係数kilearn の値を維持する。これは、FIRE経過時間t/fireが短い段階で得られる基本学習補正係数vpskisldの信頼性が乏しいからである。
【0249】
以上説明した処理が、学習補正処理の基本的内容である。
【0250】
次に前記点火時期応動補正処理について説明する。
【0251】
本実施形態では、前述した如く、内燃機関1の暖機がある程度進行すると(FIRE経過時間t/fireがある程度大きくなると)、該内燃機関1の各部のフリクションの低下による内燃機関1の回転数Neの上昇傾向を抑え、点火時期が前記点火時期操作回転数F/B制御により過度に遅角側に操作されるのを予防するために、標準開度指令値θ0 を緩やかに減少させていくようにしている(図7を参照)。
【0252】
しかるに、内燃機関1の暖機の進行に伴うフリクションの低下の形態は、種々様々の要因の影響を受け、該フリクションの低下が予想以上に早期に始まったり、あるいは、そのフリクションの低下度合いが予想以上に大きなものとなることがある。
【0253】
そして、このような場合には、標準開度指令値θ0 を前記のように緩やかに減少させていっても、内燃機関1の回転数Neの上昇傾向を十分に抑えることができなくなる。その結果、点火時期操作回転数F/B制御によりに操作される点火時期が、実際に操作し得る遅角側の限界値まで達してしまい、ひいては、回転数Neを目標回転数ne/fire にフィードバック制御することができなくなってしまう。
【0254】
前記点火時期応動補正処理はこのような事態を回避するために行う処理であり、点火時期操作回転数F/B制御により後述の如く決定される点火時期の指令値が、遅角側の限界値よりも若干進角側に定めた所定の閾値を超えて遅角側の値になったときに、その状態が解消されるまで(点火時期の指令値が閾値以上の進角側の値に復帰するまで)、制御サイクル毎に、標準開度指令値θ0 を所定量づつ減少側に補正する。
【0255】
すなわち、例えばバイパス開度が図12の上段に示すように標準開度指令値θ0 に従って操作されている状態で、図12の下段のA12領域に示すように点火時期操作回転数F/B制御により決定される点火時期の指令値iglog が、遅角側の限界値IGLGG よりも若干大きい閾値IGX よりも遅角側に低下すると、開度指令Θを標準開度指令値θ0 に対して、図12の上段に示すように、ある補正量分θdec (以下、点火時期応動開度補正量θdec という)、減少させる(Θ=θ0 −θdec とする)。
【0256】
この場合、点火時期応動開度補正量θdec は、図12の上段のB12領域に示すように、点火時期の指令値iglog が閾値IGX 以上の進角側に復帰するまで、制御サイクル毎に所定量Δθdec (>0。以下、開度減少単位量Δθdec という)づつ、増加させる(図15のSTEP15−9の式を参照)。
【0257】
そして、図12の下段のC12領域に示すように点火時期の指令値iglog が閾値IGX 以上の進角側に復帰した後は、図12の上段のD12領域に示すように点火時期応動開度補正量θdec を上記復帰時点の値に保持し(点火時期応動開度補正量θdec を前記開度減少単位量Δθdec づつ増加させる処理を中止する)、その保持した点火時期応動開度補正量θdec だけ、開度指令Θを標準開度指令値θ0 よりも減少側に補正する。
【0258】
尚、本実施形態では、点火時期応動開度補正量θdec を制御サイクル毎に増加させる前記開度減少単位量Δθdec は、内燃機関1の始動時における機関温度Twから、図13に示す如くあらかじめ定めたデータテーブルに基づいて決定する。この場合、特に、内燃機関1の始動時の機関温度Twが高温領域である場合に、該機関温度Twが低中温領域である場合よりもフリクションの低下が大きく生じ易いことから、図13のデータテーブルでは、機関温度Twの高温領域における開度減少単位量Δθdec を低中温領域よりも大きくするように設定している。
【0259】
以上説明した内容が、前記点火時期応動補正処理の基本的内容である。
【0260】
以上説明した内容をふまえて、前記図4のSTEP4−5において前記吸入空気量制御段25が行うバイパス開度の指令値(開度指令)θCMD の生成処理を次に具体的に説明する。
【0261】
図14のフローチャートを参照して、前記STEP4−5では、まず、前記STEP4−4の条件判断処理(図15参照)で前述の如く制御サイクル毎に設定されるFIRE実行可否フラグf/fireonの値(現在の制御サイクルで設定された値)を判断する(STEP14−1)。
【0262】
このとき、f/fireon=1であるとき、すなわち、動作モードがFIREモードに設定されているときには、前記標準開度指令値生成処理によって標準開度指令値θ0 を求めるために用いる前記Nレンジ基本値ifiret及びDレンジ補正値iatfire と、前記大気条件補正処理に用いる前記大気圧補正係数kpa 及び大気温度補正係数kta と、前記点火時期応動補正処理に用いる前記開度減少単位量Δθdec とを、それぞれに対応して前述の如く定めたデータテーブルを用いて求める(STEP14−2)。
【0263】
すなわち、前記始動モード処理(STEP4−2)で取得した内燃機関1の始動時の機関温度Twから、前記図6のデータテーブルに基づいてNレンジ基本値ifiret及びDレンジ補正値iatfire を求める。
【0264】
また、始動モード処理で取得した内燃機関1の始動時の大気圧Paと、あらかじめ定められた標準大気圧Pa0 及び標準吸気圧Pb0 とから、前記式(33)によって、前記大気圧補正用パラメータratio/dpa を算出し、このパラメータratio/dpa から、図10のデータテーブルに基づいて大気圧補正係数kpa (=パラメータratio/dpa の平方根)を求める。
【0265】
さらに、始動モード処理で取得した内燃機関1の始動時の大気温度Taから、図11のデータテーブルに基づいて大気温度補正係数kta を求める。
【0266】
また、始動モード処理で取得した内燃機関1の始動時の機関温度Twから、図13のデータテーブルに基づいて開度減少単位量Δθdec を求める。
【0267】
尚、STEP14−2におけるこれらの処理は、始動モード処理においてあらかじめ行っておくようにしてもよい。
【0268】
次いで、吸入空気量操作手段25は、標準開度指令値θ0 に対して前記吸気量F/B制御補正処理と前記点火時期応動補正処理とを施してなる予備開度指令θi/fireを算出する処理を次のように行う(STEP14−3)。
【0269】
すなわち、図15のフローチャートを参照して、図示しないセンサにより検出される前記自動変速機の現在(今回の制御サイクル)のシフト位置を判断し(STEP15−1)、該シフト位置がNレンジである場合には、標準開度指令値θ0 の前記基本値i/ftblを前記STEP14−2で求めたNレンジ基本値ifiretとする(STEP15−2)。また、現在のシフト位置がDレンジである場合には、上記Nレンジ基本値ifiretに、STEP14−2で求めたDレンジ補正値iatfire を加算した値を基本値i/ftblとする(STEP15−3)。
【0270】
次いで、現在のFIRE経過時間t/fireから、前記図7のデータテーブルに基づいて今回の制御サイクルにおける前記補正係数km/fire を求め(STEP15−4)、この補正係数km/fire をSTEP15−2あるいは15−3で決定した基本値i/ftblに乗算することで、標準開度指令値θ0 を求める(STEP15−5)。これによりFIREモードにおける制御サイクル毎の標準開度指令値θ0 が決定される。
【0271】
次いで、吸入空気量操作手段25は、前記吸気偏差Eqを算出する処理を図16のフローチャートに示すように行う(STEP15−6)。
【0272】
すなわち、図16を参照して、まず、前記吸気圧センサ16により検出される現在の吸気圧Pbとあらかじめ定めた所定値Ga1とから前記式(1)により今回の制御サイクルのおける推定吸入空気量gair/pre(1TDC当たりの吸入空気量の推定値)を求める(STEP16−1)。
【0273】
次いで、内燃機関1のフュエルカット中であるか否かを判断し(STEP16−2)、フュエルカット中でない場合には、さらに、現在のFIRE経過時間t/fireが前記SLD補正制限時間TISLDLMTに達したか否かを判断する(STEP16−3)。
【0274】
このとき、t/fire<TISLDLMTである場合には、今回の制御サイクルにおける推定積算吸入空気量qair/pre(k) の値を強制的に「0」とする(STEP16−4)。また、t/fire≧TISLDLMTである場合には、前記式(2)により推定吸入空気量gair/preを累積加算して推定積算吸入空気量qair/pre(k) を求める(STEP16−5)。
【0275】
尚、STEP16−2でフュエルカット中である場合には、そのとき内燃機関1の燃焼室に吸入される空気は、触媒装置3に与える熱量には寄与しない(フュエルカット中は内燃機関1の燃焼室4での混合気の燃焼は行われない)ため、推定積算吸入空気量qair/pre(k) は現状の値に保持される(STEP16−6)。
【0276】
以上のようなSTEP16−1〜16−6の処理により、FIREモードでは(前記中断動作中も含む)、その開始後、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過した時から、内燃機関1のフュエルカット中の場合を除いて、逐次、触媒装置3に実際に与えられる熱量の積算値に相当する推定積算吸入空気量qair/pre(k) が求められていくこととなる。
【0277】
そして、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで、すなわち、内燃機関1の始動直後の状態では、推定積算吸入空気量qair/pre(k) の値が強制的に「0」に制限されることとなる。
【0278】
尚、このようにSLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで、推定積算吸入空気量qair/pre(k) の値を制限するためには、例えばSLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで、推定吸入空気量gair/preの値を強制的に「0」に制限し、その制限した推定吸入空気量gair/preの値を用いて前記式(2)の演算を行うようにしてもよい。このようにしても、推定積算吸入空気量qair/pre(k) の値は、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまでは「0」に制限されることとなる。
【0279】
このようにして推定積算吸入空気量qair/pre(k) を求めた後、吸入空気量操作手段25は、前記STEP15−5で求めた標準開度指令値θ0 と、前記回転数センサ14により検出される現在の回転数Neと、あらかじめ定められた所定値Ga2とから前記式(4)により今回の制御サイクルにおける目標吸入空気量gair/cmd(1TDC当たりの吸入空気量の目標値)を求める(STEP16−7)。
【0280】
さらに、前記STEP16−3と同じ判断を行い(STEP16−8)、このとき、t/fire<TISLDLMTである場合には、今回の制御サイクルにおける目標積算吸入空気量qair/cmd(k) の値を強制的に「0」とする(STEP16−9)。また、t/fire≧TISLDLMTである場合には、前記式(5)により制御サイクル毎の目標吸入空気量gair/preを累積加算して目標積算吸入空気量qair/cmd(k) を求める(STEP16−10)。
【0281】
以上のようなSTEP16−7〜16−10の処理により、触媒装置3に実際に与えられる熱量の積算値の目標値に相当する目標積算吸入空気量qair/cmd(k) は、FIREモードの開始後、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過した時から、FIREモードの中断動作中を含めて、逐次求められていくこととなる。
【0282】
そして、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまでの内燃機関1の始動直後の状態では、推定積算吸入空気量qair/pre(k) と同様、目標積算吸入空気量qair/cmd(k) の値が強制的に「0」に制限されることとなる。
【0283】
尚、このようにSLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで、目標積算吸入空気量qair/cmd(k) の値を制限するためには、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで、目標吸入空気量gair/cmdの値を強制的に「0」に制限し、その制限した目標吸入空気量gair/cmdの値を用いて前記式(5)の演算を行うようにしてもよい。
【0284】
このようにして、今回の制御サイクルにおける推定積算吸入空気量qair/pre(k) と、目標積算吸入空気量qair/cmd(k) とを求めた後には、吸入空気量操作手段25は、それらの差(qair/pre(k) −qair/cmd(k) )を演算することで、今回の制御サイクルにおける前記吸気偏差Eq(k)を求め(STEP16−11)、図15のフローチャートの処理に復帰する。
【0285】
図15の説明に戻って、上記のように吸気偏差Eqを求めた後、吸入空気量操作手段25は、次に、フラグf/dec の値を判断する(STEP15−7)。このフラグf/dec は、前記点火時期応動補正処理に係わるフラグであって、後述する点火時期の指令値iglog の生成処理において点火時期の指令値iglog が前記閾値IGX (図12参照)よりも遅角側の値であるときf/dec =1とされ、該指令値iglog が前記閾値IGX 以上の進角側の値であるときf/dec =0とされるものである(以下、フラグf/dec を点火時期判別フラグf/dec という)。尚、この点火時期判別フラグf/dec は前記始動モード処理(STEP4−2)において「0」に初期化される。
【0286】
このとき、f/dec =0である場合(点火時期の指令値iglog が、閾値IGX 以上の進角側の状態)には、吸入空気量操作手段25は、前記吸気量F/B制御補正処理に係わるSLD開度補正量i/sld を算出する処理を図17のフローチャートに示すように行う(STEP15−8)。
【0287】
すなわち、まず、前記FIRE中断フラグf/fpauseの現在の値を判断する(STEP17−1)。このとき、f/fpause=1である場合、すなわち、FIREモードの前述の中断動作を行う状態である場合には、前記吸気量F/B制御補正処理で吸気偏差Eqの減衰速度を規定する前記ポールpole/iの値をあらかじめ定めた前記下限値pole/i0 (図9を参照)に設定(初期化)した上で(STEP17−2)、直ちに図15のルーチン処理に復帰する。
【0288】
従って、FIREモードの中断動作中は、SLD開度補正量i/sld は現状の値(中断動作の開始前の値)に保持される。
【0289】
尚、SLD開度補正量i/sld 及びポールpole/iは、前記始動モード処理(STEP4−2)においてそれぞれ「0」、「下限値pole/i0 」に初期化される。
【0290】
一方、STEP17−1の判断で、f/fpause=0である場合、すなわち、FIREモードの通常的な動作を行う状態である場合には、吸入空気量操作手段25は、現在のFIRE経過時間t/fireから、図9のデータテーブルに基づいて今回の制御サイクルにおける前記ポールテーブル値pole/itbl を求める(STEP17−3)。
【0291】
次いで、基本的には、STEP17−3で求めたポールテーブル値pole/itbl を吸気偏差Eqの減衰速度を規定するポールpole/iの値として設定するのであるが、FIREモードの中断動作中に前記下限値pole/i0 (本実施形態では「−1」)に設定されるポールpole/iを該中断動作の終了後に徐々にFIRE経過時間t/fireに応じたポールテーブル値pole/itbl に復帰させるために、次のような処理を行う。
【0292】
すなわち、現在のポールpole/iの値pole/i(k-1) にあらかじめ定めた単位増分値ΔPOLE/I(>0)を加算した値(pole/i(k-1) +ΔPOLE/I)をSTEP17−3で求めたポールテーブル値pole/itbl と比較する(STEP17−4)。そして、pole/i(k-1) +ΔPOLE/I≧pole/itbl である場合には、STEP17−3で求めたポールテーブル値pole/itbl を今回の制御サイクルにおけるポールpole/i(k) の値として設定し(STEP17−5)、pole/i(k-1) +ΔPOLE/I<pole/itbl である場合には、pole/i(k-1) +ΔPOLE/Iの値を今回の制御サイクルにおけるポールpole/i(k) の値として設定する(STEP17−6)。
【0293】
この処理によりFIREモードの中断動作が終了した後には、ポールpole/iが前記下限値pole/i0 から、FIRE経過時間t/fireに応じたポールテーブル値pole/itbl に前記単位増分値ΔPOLE/Iづつ、徐々に復帰することとなる。
【0294】
尚、内燃機関1の始動直後にFIREモードの中断動作が行われない場合には、ポールpole/iは、基本的にはポールテーブル値pole/itbl が設定され、該ポールテーブル値pole/itbl と同じ形態でFIRE経過時間t/fireの増加に伴い値が変化する(このようになるように上記単位増分値ΔPOLE/Iの値が設定されている)。
【0295】
このようにしてポールpole/iの値を設定した後、吸入空気量操作手段25は、さらに、該ポールpole/iの値と、後に詳細を説明する点火時期操作回転数F/B制御において設定されるポールpole/ig (これは点火時期操作回転数F/B制御による内燃機関1の回転数Neと目標回転数ne/fire との偏差の減衰速度を規定するパラメータである)からあらかじめ定めた所定の微小量ΔPOLE/IG (>0)を減算した値とを比較する(STEP17−7)。
【0296】
そして、このとき、pole/i<pole/ig −ΔPOLE/IG であれば、そのまま次のSTEP17−9に進むが、pole/i≧pole/ig −ΔPOLE/IG である場合、ポールpole/iの値を強制的に(pole/ig −ΔPOLE/IG )に設定し直す(STEP17−8)。つまり、ポールpole/iの値は、点火時期操作回転数F/B制御において後述の如く設定されるポールpole/ig (<0)よりも常に小さい値に(より正確には、1>|pole/i|>|pole/ig |>0となるように)設定される。これは次の理由による。
【0297】
すなわち、本実施形態において推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるように行う吸気側適応SLD制御(フィードバック制御)と、内燃機関1の回転数Neを目標回転数ne/fire に収束させるように行う点火時期操作回転数F/B制御とは互いに独立的に行われるものである一方、両者の制御は、内燃機関1の回転数Neに影響を及ぼす制御である。また、一般に、吸気側適応SLD制御に基づくバイパス開度の変化に対する吸入空気量の変化の応答性は、点火時期操作回転数F/B制御に基づく点火時期の変化に対する回転数Neの変化の応答性に比して遅い。このため、吸気側適応SLD制御に係わる吸気偏差Eqの減衰速度を、点火時期操作回転数F/B制御による内燃機関1の回転数Neと目標回転数ne/fire との偏差の減衰速度よりも速めるようにすると、両者の制御が互いに干渉して、内燃機関1の回転数Neが不安定なものとなる虞れがある。
【0298】
このために、本実施形態では、吸気側適応SLD制御に係わるポールpole/iを、前記の如く|pole/i|>|pole/ig |となるように設定し、これにより、吸気側適応SLD制御に係わる吸気偏差Eqの減衰速度を、点火時期操作回転数F/B制御による内燃機関1の回転数Neと目標回転数ne/fire との偏差の減衰速度よりも遅くし、ひいては両制御が互いに干渉するのを回避する。
【0299】
次いで、STEP17−9では、ポールpole/iの値を「−1」と比較し、pole/i≦−1である場合(このような場合は、STEP17−8の処理によって生じることがある)には、ポールpole/iの値を強制的に「−1」に設定した上で(STEP17−10)、STEP17−11に進む。
【0300】
そして、STEP17−11では、上記のようにして決定したポールpole/iの値と、前記STEP15−6で前述の如く求めた今回の制御サイクルにおける吸気偏差Eq(k)及び前回の制御サイクルにおける吸気偏差Eq(k-1)とから前記式(10)(詳しくは、式(10)の係数パラメータs1 ,s2 をそれぞれ「1」、「pole/i」で置き換えた式)により前記切換関数σ1 の値を求める。
【0301】
さらに、この切換関数σ1 の値を用いて、前記式(18)、(19)の演算を行うことで(この場合s1 =1)、前記吸気側適応SLD制御における到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp の値を求め(STEP17−12)、この到達則入力Θrch 及び適応則入力Θadp を加算することで、今回の制御サイクルにおけるSLD開度補正量i/sld を求める(STEP17−13)。そして、図15のルーチン処理に復帰する。
【0302】
図15の説明に戻って、前記STEP15−7の判断でf/dec =1である場合、すなわち、現在の点火時期の指令値iglog が、前記閾値IGX (図12参照)よりも遅角側の状態となっている場合には、吸入空気量操作手段25は、前記点火時期応動補正処理を行うべく、前記点火時期応動開度補正量θdec を前記STEP14−2で決定した開度減少単位量Δθdec づつ制御サイクル毎に増加させていく(STEP15−9)。
【0303】
尚、点火時期応動開度補正量θdec は、前記始動モード処理(STEP3−2)で「0」に初期化されるものである。
【0304】
また、このSTEP15−9の処理を行うときは、SLD開度補正量i/sld を求める処理は行われず、該SLD開度補正量i/sld の値は、前記点火時期判別フラグf/dec が「1」に設定される前の値に保持される。
【0305】
次いで、吸入空気量操作手段25は、STEP15−5で求めた標準開度指令値θ0 に現在のSLD開度補正量i/sld の値を加算し、さらに現在の点火時期応動開度補正量θdec を減算することで、前記吸気量F/B制御補正処理及び点火時期応動補正処理とに基づく前記予備開度指令θi/fire(=θ0 +i/sld −θdec )を算出する(STEP15−10)。
【0306】
次いで、吸入空気量操作手段25は、現在の前記学習演算終了フラグf/flrnend の値を判断する(STEP15−11)。この学習演算終了フラグf/flrnend は、FIREモードの動作中(FIRE実行可否フラグf/fireonが「1」に設定されている状態)は、中断動作が開始されるとき(FIRE中断フラグf/fpauseが「1」に設定されたとき)、あるいは、点火時期の指令値iglog が前記閾値IGX (図12参照)よりも遅角側の状態となって、前記点火時期応動補正処理を開始するとき(点火時期判別フラグf/dec が「1」に設定されたとき)に、前記基本学習補正係数vpskisldの算出処理を終了すべく「1」に設定される(前記図5のSTEP5−17、及び後述の図22のSTEP22−8を参照)。
【0307】
そして、f/flrnend =0である場合、すなわち、前記基本学習補正係数vpskisldの算出を行うべき状態である場合には、前記学習補正処理に関して説明した通り、基本学習補正係数vpskisldを算出する(STEP15−12)。
【0308】
すなわち、制御サイクル毎に、STEP5−18で求められる現在のSLD開度補正量i/sld と、内燃機関1の現在の回転数Neと、前記所定値Ga2とから、前記式(34)により前記SLD吸気補正量gair/sldを求め、それを式(35)により累積加算することで、前記SLD積算吸気補正量qair/sldを求める。そして、このSLD積算吸気補正量qair/sldと、前記STEP16−10(図16参照)で求めた制御サイクル毎の目標積算吸入空気量qair/cmdとから前記式(36)の演算を行うことで、基本学習補正係数vpskisldを算出する。
【0309】
尚、この場合において、FIRE経過時間t/fireが前記SLD補正制限時間TISLDLMTに達するまでは、前述の如くqair/cmd=0とする(このときSLD積算吸気補正量qair/sldも「0」となる)ので、基本学習補正係数vpskisldの値を強制的に「1」に設定する。
【0310】
また、STEP15−11でf/flrnend =1である場合、すなわち、前記基本学習補正係数vpskisldの算出を終了すべき状態である場合には、STEP15−12の処理は省略され、基本学習補正係数vpskisldの算出処理は行われない(この場合、f/flrnend =1となる前の制御サイクルで求められた基本学習補正係数vpskisldの値がその最終値として確定される)。
【0311】
このようにしてSTEP5−11,5−12の処理行った後、吸入空気量操作手段25は、STEP15−10で求めた予備開度指令θi/fireの値を所定の上限値及び下限値の間の値に制限する(θi/fire>上限値、あるいはθi/fire<下限値のとき、それぞれθi/fireを強制的に上限値、下限値に制限する)リミット処理を行った後(STEP15−13)、図14のルーチン処理に復帰する。
【0312】
図14の説明に戻って、上記のように予備開度指令θi/fireを求めた後、吸入空気量操作手段25は、この予備開度指令θi/fire(=θ0 +i/sld −θdec )に、STEP14−2で決定した前記大気圧補正係数kpa と、大気温度補正係数kta と、前回のFIREモードの動作の終了時に決定された学習補正係数kilearn (この学習補正係数kilearn の算出については後に説明する)とを乗算することで、今回の制御サイクルにおけるバイパス開度の指令値θCMD を決定する(STEP14−4)。そして、前記図3のメインルーチン処理に復帰する。
【0313】
以上説明した処理が、FIREモードにおいて、バイパス開度の指令値θCMD を制御サイクル毎に決定するための処理である。
【0314】
一方、前記STEP14−1の判断で、現在のFIRE実行可否フラグf/fireonの値が「0」である場合、すなわち、FIREモードの動作を行わない状態となったとき(これは、基本的には、内燃機関1の始動後、FIRE経過時間t/fireが、FIREモード制限時間TFIRELMTに達してFIREモードの動作を終了した後の状態である)には、吸入空気量操作手段25は、FIRE実行可否フラグf/fireonの前回の制御サイクルにおける値を判断する(STEP14−5)。
【0315】
このとき、FIRE実行可否フラグf/fireonの前回の制御サイクルにおける値が「1」である場合、すなわち、前回の制御サイクルまでFIREモードの動作を行っていた場合(FIREモードを終了した直後の状態)には、直前まで行っていたFIREモードにおいて前記STEP15−12の処理により最終的に求められた前記基本学習補正係数vpskisldから、図18のフローチャートに示すように次回のFIREモードの動作に際して開度指令を補正する(STEP14−4を参照)ための学習補正係数kilearn を決定(更新)する(STEP14−6)。
【0316】
すなわち、図18を参照して、まず、前述した基本学習補正係数vpskisldの算出を最終的に終了した時のFIRE経過時間t/fireを表す前記学習終了時刻パラメータt/kil が、あらかじめ定めた所定値TMKILLMT以上であるか否かを判断する(STEP18−1)。ここで、学習終了時刻パラメータt/kil は、前記図5に示した如く、前記学習演算終了フラグf/flrnend が「0」から「1」に切り換えられた際のFIRE経過時間t/fireである。つまり、FIREモードの中断動作が行われたときは、該中断動作の開始時までのFIRE経過時間t/fireであ、FIREモードの動作中に前記点火時期応動補正処理を行うときは、その処理の開始時までのFIRE経過時間t/fireである。そして、FIREモードの中断動作や点火時期応動補正処理が行われることなくFIREモードの動作が終了したときには、その終了時のFIRE経過時間t/fire(これは通常的にはFIREモード制限時間TFIRELMTである)である。
【0317】
別の言い方をすれば、学習終了時刻パラメータt/kil は、前記SLD開度補正量i/sld の算出処理及びこれに応じた標準開度指令値θ0 の補正が連続して行われたFIRE経過時間t/fireである。
【0318】
そして、STEP18−1判断で、t/kil <TMKILLMTである場合には、最終的に得られた基本学習補正係数vpskisldの信頼性が乏しいと考えられるので、学習補正係数kilearn を現状の値に維持したまま図14の処理に復帰する。
【0319】
一方、t/kil ≧TMKILLMTである場合、すなわち、SLD開度補正量i/sld の算出処理及びこれに応じた標準開度指令値θ0 の補正がある程度長い時間、連続して行われた場合には、前回の制御サイクルまで行われていたFIREモードの動作において最終的に得られた基本学習補正係数vpskisldから前記式(37)のなまし演算処理(フィルタリング処理)によって新たな学習補正係数kilearn(j)を求める(STEP18−2)。そして、この学習補正係数kilearn(j)を所定の上限値及び下限値の間の値に制限する(kilearn(j)>上限値、あるいはkilearn(j)<下限値のとき、それぞれkilearn(j)を強制的に上限値、下限値に制限する)リミット処理を行った後(STEP18−3)、図14のルーチン処理に復帰する。
【0320】
尚、学習補正係数kilearn(j)の初期値は「1」である。また、この学習補正係数kilearn(j)の値は、本実施形態のシステムの運転を停止しても失われることのないようにEEPROM等の不揮発性メモリに記憶保持しておく。
【0321】
図14の説明に戻って、STEP14−5でFIRE実行可否フラグf/fireonの前回の制御サイクルにおける値が「1」である場合には、前述の如く学習補正係数kilearn が更新されるが、FIRE実行可否フラグf/fireonの前回の制御サイクルにおける値が「0」である場合は、既に学習補正係数kilearn が更新されているので、STEP14−6の処理は省略される。すなわち、学習補正係数kilearn の更新処理は、FIREモードが終了した直後の制御サイクルにおいてだけ行われ、その更新された学習補正係数kilearn が次回のFIREモードの動作に際して開度指令を補正するために使用される。
【0322】
このようにしてSTEP14−5、14−6の処理を行った後、吸入空気量操作手段25は、開度指令θCMD を通常モード用の開度指令に設定する(STEP14−7)。この開度指令は、基本的には、FIREモードにおける開度指令θCMD よりも小さく、内燃機関1の通常的な運転を行うべく所要の値に設定される。
【0323】
以上、図14〜図18を参照して説明した処理が、前記図4のSTEP4−5で開度指令(バイパス開度の指令値)θCMD を制御サイクル毎に生成する処理の詳細であり、このようにして決定された開度指令θCMD は前記バイパス弁アクチュエータ24に与えられる。そして、該バイパス弁アクチュエータ24は、与えられた開度指令θCMD に従ってバイパス弁7の開度を操作する。
【0324】
次に、前記図4のSTEP4−6における点火時期の指令値iglog の生成処理について説明する。
【0325】
ここで、この処理の具体的な内容を説明する前に、この処理の基本的な内容を説明しておく。
【0326】
本実施形態のシステムでは、FIREモードにおける前述のような吸入空気量の増量制御によって内燃機関1の回転数Ne(実回転数)が上昇傾向となるので、該回転数Neを前記点火時期操作回転数F/B制御によって所要の目標回転数ne/fire にフィードバック制御し、該点火時期を遅角側に補正する(点火時期操作回転数F/B制御)。この場合、後述する如く、回転数Neと目標回転数ne/fire との偏差の減衰速度(これはフィードバック制御のゲインに相当する)を、適宜可変的に設定することが好ましい。
【0327】
このために、本実施形態のシステムにおける点火時期操作回転数F/B制御にあっては、前述の吸気量F/B制御補正処理の場合と同様に、上記偏差の減衰速度を指定可能な応答指定型制御であるスライディングモード制御(本実施形態では適応スライディングモード制御)を用いる。
【0328】
この適応スライディングモード制御(以下、点火時期側適応SLD制御という)を用いた点火時期操作回転数F/B制御の処理、すなわち、回転数Neを目標回転数ne/fire に収束させるように点火時期の指令値iglog を生成する処理のアルゴリズムは次のように構築されている。
【0329】
まず、本実施形態では、点火時期側適応SLD制御の制御対象を、点火時期の指令値iglog を表すデータから、回転数Ne(実回転数)を表すデータを生成する系と考え、それを離散系(離散時間系)でモデル化しておく。
【0330】
この場合、本実施形態では、点火時期の指令値iglog と所定の基準指令値ig0 と偏差DIG (=iglog −ig0 。以下、点火時期偏差指令値DIG という)を点火時期の指令値iglog を表すデータとして用いると共に、回転数Neと所定の基準回転数Ne0との偏差DNE (=Ne−Ne0。以下、偏差回転数DNE という)を回転数Neを表すデータとして用いる。
【0331】
尚、本実施形態では、点火時期の基準指令値ig0 として、前記図3で示した基本指令値igbase(内燃機関1のFIREモード以外の通常的な運転時における点火時期の指令値)を用いる(ig0 =igbase)。従って、前記図3で示した補正量DIG が上記点火時期偏差指令値DIG である。また、本実施形態では、回転数Neに係わる基準回転数Ne0として、前記図3で示した所定のアイドリング回転数NOBJを用いる(Ne0=NOBJ)。
【0332】
そして、本実施形態で、上記の点火時期偏差指令値DIG と、偏差回転数DNE とを用いて、点火時期側適応SLD制御の制御対象のモデルを次式(38)のように離散系モデル(本実施形態では2次の自己回帰モデル)で表現しておく。
【0333】
【数38】
【0334】
この式(38)により表現した制御対象のモデル(以下、回転数制御対象モデルという)は、該回転数制御対象モデルの出力としての各制御サイクルにおける偏差回転数DNE(k+1)を、それより過去の偏差回転数DNE の時系列データDNE(K),DNE(k-1)、並びに該回転数制御対象モデルの入力としての点火時期偏差指令値DIG(k)を用いて表現したものである。
【0335】
また、式(38)で、偏差回転数DNE(K),DNE(k-1)にそれぞれ係る係数c1 ,c2 と、点火時期偏差指令値DIG(k)に係る係数d1 とは、回転数制御対象モデルの実際の挙動特性を規定するモデルパラメータであり、これらのモデルパラメータc1 ,c2 ,d1 は、回転数制御対象モデルの挙動特性と、該モデルにより表現した実際の制御対象の挙動特性とが整合するようにあらかじめ実験やシミュレーション等を通じて同定しておく。
【0336】
この場合、回転数制御対象モデルは離散系モデルであるため、種々の公知の同定アルゴリズム(例えば回転数制御対象モデル上で生成される偏差回転数DNE(k+1)と実際の偏差回転数との間の誤差が最小になるように最小二乗法によりモデルパラメータc1 ,c2 ,d1 を同定するアルゴリズム等)を用いてモデルパラメータc1 ,c2 ,d1 を比較的容易に同定することが可能である。
【0337】
このようにして定めた回転数制御対象モデルに基づいて、点火時期側適応SLD制御の処理のアルゴリズムは次のように構築する。
【0338】
すなわち、点火時期側適応SLD制御では、スライディングモード制御に必要な切換関数σ2 を、前述の吸気側適応スライディングモード制御の場合と同様に、前記偏差回転数DNE とその目標値dne との偏差En=DNE −dne (以下、回転数偏差Enという)の制御サイクル毎の時系列データEn(k),En(k-1)を変数とする次式(39)の線形関数により定義する。尚、偏差回転数DNE の目標値dne (以下、偏差目標回転数dne という)は、前記図3で示した目標回転数ne/fire と前記基準回転数Ne0(=アイドリング回転数NOBJ)との偏差(=ne/fire −Ne0)である。従って、上記回転数偏差En=DNE −dne は、回転数Ne(実回転数)と目標回転数ne/fire との偏差(=Ne−ne/fire )と同じである。
【0339】
【数39】
【0340】
ここで、式(39)中のs3 ,s4 は切換関数σ2 の各項の係数パラメータであり、次の条件を満たすように設定する。
【0341】
【数40】
【0342】
尚、本実施形態では、簡略化のためにs3 =1としている。また、係数パラメータs4 の値(より一般的には、s4 /s3 =pole/ig の値)を可変的に設定するのであるが、これについては後述する。
【0343】
このように切換関数σ2 を定義したとき、吸気側適応スライディングモード制御の場合と同様に、前記回転数偏差Enの時系列データEn(k),En(k-1)の組から成る状態量(En(k),En(k-1))を、σ2 =0なる関係式によって定義される切換線上に収束させ、その収束状態を維持すると、状態量(En(k),En(k-1))を、外乱等の影響によらずに極めて安定に切換線σ2 =0上の平衡点、すなわち、En(k)=En(k-1)=0となる点に収束させることができる。
【0344】
また、前記偏差回転数DNE を前記偏差目標回転数dne に収束させる(回転数Neを目標回転数ne/fire に収束させる)ために、前記式(39)によりモデル化した制御対象に与えるべき入力として点火時期側適応SLD制御が生成する制御入力、すなわち点火時期偏差指令値DIG は、吸気側適応スライディングモード制御の場合と同様に、等価制御入力DIGeq と到達則入力DIGrchと適応則入力DIGadpとの総和である(次式(41)を参照)。
【0345】
【数41】
【0346】
そして、これらの等価制御入力DIGeq 、到達則入力DIGrch及び適応則入力DIGadpは、吸気側適応スライディングモード制御の場合と同様に、それぞれ次式(42)〜(44)により与えられる。
【0347】
【数42】
【0348】
【数43】
【0349】
【数44】
【0350】
そして、この場合、式(43)中の係数F3 (到達則のゲインを規定する係数)は、次式(45)、より好ましくは(45)’の条件を満たすようにあらかじめ設定しておく。
【0351】
また、式(44)中の係数F4 (適応則のゲインを規定する係数)は、次式(46)の条件を満たすようにあらかじめ設定しておく。尚、式(46)中のΔTは制御サイクル(制御周期)である。
【0352】
【数45】
【0353】
【数46】
【0354】
本実施形態における点火時期側適応SLD制御では、制御サイクル毎に、前記式(42)〜(44)により等価制御入力DIGeq 、到達則入力DIGrch及び適応則入力DIGadpをそれぞれ求め、それらの総和を演算する(式(41))ことで、点火時期偏差指令値DIG を求める。そして、この点火時期偏差指令値DIG を、次式(47)のように前記基準指令値ig0 、すなわち内燃機関1の通常的な運転時の基本指令値igbaseに加算することで、点火時期の指令値iglog を決定する。
【0355】
【数47】
【0356】
この場合、前記等価制御入力DIGeq や切換関数σ2 の値を求めるために必要な偏差目標回転数dne は次のように求める。
【0357】
すなわち、本実施形態では、内燃機関1の回転数Ne(実回転数)が、前記図3に示した設定回転数(=NOBJ+NEFSLDS )に達した時、又は、前記FIRE経過時間t/fireがあらかじめ定めた所定値TSLDIGSTに達した時から点火時期操作回転数F/B制御を開始する。そして、FIREモードにおける内燃機関1の目標回転数ne/fire は、点火時期操作回転数F/B制御の開始時からの経過時間Δt/nfb (以下、回転数F/B経過時間Δt/nfb という)に応じて次式(48)により設定する。
【0358】
【数48】
【0359】
ここで、式(48)中のK/NEは、目標回転数ne/fire の時間的減少度合い(傾き)を規定する一定の所定値(>0)である。
【0360】
尚、この場合において、式(48)の右辺の演算結果がアイドリング回転数NOBJを下回る場合(Δt/nfb >NEFSLDS /K/NEの場合)には、目標回転数ne/fire をアイドリング回転数NOBJに固定する。
【0361】
これにより、目標回転数ne/fire は、点火時期操作回転数F/B制御の開始後、前記設定回転数(=NOBJ+NEFSLDS )からアイドリング回転数NOBJに向かって直線的に徐々に減少し、該アイドリング回転数NOBJに達した後は、該アイドリング回転数NOBJに維持される。
【0362】
従って、本実施形態では、各制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k)は、該制御サイクルにおける前記回転数F/B経過時間Δt/nfb から式(48)により求められ、この目標回転数ne/fire(k)からアイドリング回転数NOBJを減算することで、各制御サイクルにおける偏差目標回転数dne(k)(=ne/fire(k)−NOBJ)が求められる。そして、この偏差目標回転数dne(k)と、その前回値dne(k-1)(=ne/fire(k-1)−NOBJ)、すなわち前回の制御サイクルで求めた偏差目標回転数dne(k-1)とを用いることで、制御サイクル毎に前記式(39)により切換関数σ2(k)の値を求めることができる。そして、この切換関数σ2 の値を用いることで、前記式(43)、(44)により到達則入力DIGrch及び適応則入力DIGadpを求めることができる。
【0363】
また、本実施形態では、制御サイクル(TDC)は、内燃機関1の回転数Neに反比例するので、現在の回転数Neから1制御サイクル分の時間ΔT(∝1/Ne)を求め、該時間ΔTを現在の回転数F/B経過時間Δt/nfb に加算することで、次回の制御サイクルにおける回転数F/B経過時間(=Δt/nfb +ΔT)を予測することができる(以下、この予測値を回転数F/B予測経過時間Δt/nfbpreという)。そして、この回転数F/B予測経過時間Δt/nfbpreを前記式(48)に適用する(式(48)の右辺のΔt/nfb にΔt/nfbpreを代入する)ことで、次式(49)により次回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k+1)を求めることができる。
【0364】
【数49】
【0365】
さらに、該目標回転数ne/fire(k+1)からアイドリング回転数NOBJを減算することで、次回の制御サイクルにおける偏差目標回転数dne(k+1)(=ne/fire(k+1)−NOBJ)が求められる。
【0366】
そして、このようにして求められる偏差目標回転数dne(k+1)と、前述の如く求められる偏差目標回転数dne(k),dne(k-1)とを用いて前記式(42)の演算を行うことで、等価制御入力DIGeq を求めることができる。
【0367】
尚、本実施形態では、FIREモードの中断動作中は、点火時期操作回転数F/B制御を中断し、点火時期の指令値iglog を内燃機関1の通常的な運転時の基本指令値igbaseに戻す。この場合、中断動作が開始してから、式(47)の点火時期偏差指令値DIG の値(絶対値)を、その値が「0」になるまで制御サイクル毎に所定の単位値dec/igづつ減少させていく(徐々に「0」に近づけていく)ことで、点火時期の指令値iglog を徐々に基本指令値igbaseに戻すようにしている。そして、中断動作が解除されたときには、直ちに点火時期操作回転数F/B制御を再開するようにしている。
【0368】
また、本実施形態では、FIREモードの動作が終了し(FIRE実行可否フラグf/fireonが「1」から「0」になる)、システムの動作モードが通常モードに移行する際にも、点火時期の指令値iglog を徐々に基本指令値igbaseに戻すようにしている。
【0369】
以上説明した内容が、本実施形態における点火時期操作回転数F/B制御の処理の基本的内容である。
【0370】
ところで、応答指定型制御である前記点火時期側適応SLD制御にあっては、前記吸気側適応SLD制御と同様、前記切換関数σ2 の係数パラメータs3 ,s4 の比(s4 /s3 )の値(以下、この比の値をポールpole/ig という)によって、前記回転数偏差En(=DNE −dne =Ne−ne/fire )の減衰速度を指定することができる。すなわち、ポールpole/ig (=s4 /s3 )の絶対値を「1」よりも小さい範囲で「0」に近づけていく程、回転数偏差Enの減衰速度は速くなる。尚、本実施形態では、前記吸気側適応SLD制御の場合と同様、回転数偏差Enの振動的な減衰を避けるために、s4 /s3 =pole/ig <0としている。
【0371】
このような点火時期側適応SLD制御の応答指定特性を利用し、本実施形態では次のように回転数偏差Enの減衰速度を可変的に設定する。
【0372】
すなわち、点火時期の変化に対する内燃機関1の回転数Neの変化は該点火時期が遅角側である程、大きくなる傾向がある。このため、回転数Neの目標回転数ne/fire への制御を安定して行うためには、回転数偏差Enの減衰速度を、操作している点火時期が遅角側である程、遅くしてやる(ポールpole/ig の絶対値を大きくする)ことが好ましいと考えられる。
【0373】
そこで、本実施形態では、制御サイクル毎に、現在の点火時期の指令値iglog (前回の制御サイクルで決定された指令値iglog )から、図19に示す如くあらかじめ定めたデータテーブルに基づいてポールpole/ig の基本値pole/igtblを求め、基本的には、この基本値pole/igtblをポールpole/ig の値として設定する。この場合、基本値pole/igtbl(以下、点火時期対応ポール基本値pole/igtblという)は、点火時期の指令値iglog が遅角側である程、その絶対値|pole/igtbl|を大きくするように設定されている(但し、−1<pole/igtbl<0)。
【0374】
尚、点火時期対応ポール基本値pole/igtblは、基本的には、前記吸気側適応SLD制御に関して前記図9のデータテーブルにより決定するポールテーブル値pole/itbl よりも「0」側に近い値に設定されている。換言すれば、点火時期側適応SLD制御に関して点火時期対応ポール基本値pole/igtblにより規定される前記回転数偏差Enの減衰速度は、前記吸気側適応SLD制御に関してポールテーブル値pole/itbl に規定される前記吸気偏差Eq の減衰速度よりも速くなるように点火時期対応ポール基本値pole/igtblが設定されている。
【0375】
また、本実施形態では、点火時期操作回転数F/B制御を開始する際に、前述した点火時期側適応SLD制御の処理によって回転数Neを目標回転数ne/fire に収束させるべく点火時期を急激に変化させると、内燃機関1の燃焼状態が悪化する虞れがある。従って、点火時期操作回転数F/B制御の初期段階では、回転数偏差Enの減衰速度を遅めにするようにポールpole/ig の値を設定することが好ましい。
【0376】
そこで、本実施形態では、制御サイクル毎に、前記回転数F/B経過時間Δt/nfb (点火時期操作回転数F/B制御を開始してからの経過時間)から、図20に示す如くあらかじめ定めたデータテーブル(タイムテーブル)に基づいて点火時期対応ポール基本値pole/igtblを回転数F/B経過時間Δt/nfb に応じて補正(乗算補正)するための補正係数kigtを求め、この補正係数kigt(以下、時間対応補正係数kigtという)を点火時期対応ポール基本値pole/igtblに乗算することで、該点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正するようにしている。
【0377】
この場合、図21のデータテーブルでは、時間対応補正係数kigtは、点火時期操作回転数F/B制御の初期段階(回転数F/B経過時間Δt/nfb が所定値T/NFBXに達するまで)では、点火時期対応ポール基本値pole/igtblの絶対値を若干大きくする方向(回転数偏差Enの減衰速度を遅くする方向)に該点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正するような値(>1)に定められている。しかもこのとき、時間対応補正係数kigtは、回転数F/B経過時間Δt/nfb が短い程、大きな値に定められ、これにより、回転数F/B経過時間Δt/nfb が短い程、点火時期対応ポール基本値pole/igtblの絶対値がより大きくなる(回転数偏差Enの減衰速度がより遅くなる)ように点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正するようにしている。そして、回転数F/B経過時間Δt/nfb が所定値T/NFBXに達した後は、時間対応補正係数kigtは「1」に保持され、この状態では、点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正しないようにしている。
【0378】
さらに、本実施形態では、FIREモードの中断動作中は、点火時期操作回転数F/B制御は中断され、回転数Neのフィードバック制御を行わないため、該中断動作が解除され、点火時期操作回転数F/B制御を再開する際に、内燃機関1の回転数が目標回転数ne/fire よりも大幅に高いものとなっていることがある。そして、このような状態では、前記回転数偏差Enが大きなものとなるため、点火時期操作回転数F/B制御によって前述の如く求められる点火時期の指令値iglog が急激に遅角側に過大なものとなり、内燃機関1の燃焼状態が悪化する虞れがある。従って、FIREモードの中断動作の解除によって点火時期操作回転数F/B制御を再開する際には、内燃機関1の回転数Neが目標回転数ne/fire に対して大きく高回転側に離間しているような状況では、回転数偏差Enの減衰速度を遅くし、ひいては、点火時期の指令値iglog を過大に遅角側にするような前記点火時期偏差指令値DIG が求められるのを回避することが好ましいと考えられる。
【0379】
そこで、本実施形態では、制御サイクル毎に、内燃機関1の現在の回転数Neから、図21に示す如くあらかじめ定めたデータテーブルに基づいて、点火時期対応ポール基本値pole/igtblを回転数Neに応じて補正(乗算補正)するための補正係数kigne (以下、回転数対応補正係数kigne という)を求める。この場合、図21のデータテーブルでは、回転数対応補正係数kigne は基本的には、回転数Neが高い程(回転数Neが目標回転数ne/fire に対して高回転側に離間している程)、点火時期対応ポール基本値pole/igtblの絶対値を大きくする方向(回転数偏差Enの減衰速度を遅くする方向)に該点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正するような値(>1)に設定されている。そして、本実施形態では、回転数対応補正係数kigne に基づく点火時期対応ポール基本値pole/igtblの補正を、点火時期操作回転数F/B制御の再開後、所定期間XCNT(これは、前記図3のSTEP5−18で設定するカウントダウンタイマcnt/igvpl の初期値である)だけ行うために、次式(50)により回転数対応補正係数kigne を修正し、この修正した補正係数kignef(以下、回転数対応修正補正係数kignefという)を点火時期対応ポール基本値pole/igtblに乗算することで、該点火時期対応ポール基本値pole/igtblを補正する。
【0380】
【数50】
【0381】
ここで、式(50)中のカウントダウンタイマcnt/igvpl は、図3のSTEP5−18によって、中断動作中(FIRE中断フラグf/fpause=1の状態)に常時、上記所定期間XCNTが設定される。そして、中断動作の解除により点火時期操作回転数F/B制御が再開されると、カウントダウンタイマcnt/igvpl の値は、所定期間XCNTの値から、制御サイクル毎に所定値づつ減少し、最終的に「0」になった後はその値に保持される。従って、式(50)により求まる回転数対応修正補正係数kignefは、点火時期操作回転数F/B制御が再開してから所定期間XCNTが経過するまでは、回転数Neに応じた値(≧1)であるが、該所定期間XCNTが経過した後は、kignef=1である(このとき、回転数対応修正補正係数kignefによる点火時期対応ポール基本値pole/igtblの補正は行われなくなる)。
【0382】
尚、カウントダウンタイマcnt/igvpl は、前記始動モード処理(STEP3−2)において「0」に初期化されるもので、FIREモードの中断動作中と、該中断動作が終了してから所定期間XCNTが経過するまでの期間とを除いて値が「0」に保持される。
【0383】
本実施形態では、制御サイクル毎に、前述のように求めた点火時期対応ポール基本値pole/igtblに、次式(51)の如く前記時間対応補正係数kigt及び回転数対応修正補正係数kignefを乗算してなる値を、最終的なポールpole/ig の値として設定する。
【0384】
【数51】
【0385】
尚、時間対応補正係数kigtは、点火時期操作回転数F/B制御の開始直後の初期段階においてのみkigt>1となり、これ以外の状態では、kigt=1である。また、回転数対応修正補正係数kignefは、FIREモードの中断動作の解除直後の初期段階で、しかも回転数Neが比較的高い場合のみkignef>1となり、これ以外の状態ではkignef=1である。従って、式(51)により設定されるポールpole/ig の値は、通常的には、点火時期対応ポール基本値pole/igtblである。
【0386】
以上説明した内容をふまえて、前記図4のSTEP4−6において前記点火時期操作手段26が行う点火時期の指令値iglog の生成処理を次に具体的に説明する。
【0387】
図22のフローチャートを参照して、前記STEP4−6では、点火時期操作手段26は、まず、点火時期の基本指令値igbaseを決定する(STEP22−1)。この場合、該基本指令値igbaseは、例えば内燃機関1の現在の回転数Neや吸気圧Pb、機関温度Tw、大気温度Ta等から、あらかじめ定めたマップや演算式を用いて求める。
【0388】
次いで、点火時期操作手段26は、前記点火時期偏差指令値DIG を決定するための処理を図23のフローチャートに示すように実行する(STEP22−2)。
【0389】
すなわち、STEP22−2の処理では、まず、現在のFIRE実行可否フラグf/fireonの値を判断する(STEP23−1)。
【0390】
このとき、f/fireon=1、すなわち、FIREモードの動作を行うべき状態である場合には、点火時期操作手段26は点火時期操作回転数F/B制御を行うか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグf/nefb(以下、回転数F/B実行可否フラグf/nefbという)の値を判断する(STEP23−2)。
【0391】
この回転数F/B実行可否フラグf/nefbは、前記始動モード処理(STEP4−2)において「0」に初期化されるものである。
【0392】
このSTEP23−2において、f/nefb=0、すなわち、点火時期操作回転数F/B制御をまだ行うべき状態でない場合には、前記回転数F/B経過時間Δt/nfb の値を「0」に初期化する(STEP23−3)。該回転数F/B経過時間Δt/nfb は、STEP23−2でf/nefb=1となって、点火時期操作回転数F/B制御を行うべき状態となった制御サイクルから計時を開始するものであり、STEP23−2でf/nefb=1である場合には、STEP23−3の処理は省略される。
【0393】
次いで、点火時期操作手段26は、今回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k)と、次回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k+1)とを求める(STEP23−4)。この場合、今回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k)は、現在の回転数F/B経過時間Δt/nfb から前記式(48)により求められる。また、次回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k+1)に関しては、現在の内燃機関1の回転数Ne(回転数センサ14の検出値)から把握される1制御サイクルの時間ΔTを現在の回転数F/B経過時間Δt/nfb に加算することで回転数F/B予測経過時間Δt/nfbpreを求め、この回転数F/B予測経過時間Δt/nfbpreから前記式(49)により目標回転数ne/fire(k+1)が求められる。
【0394】
尚、今回の制御サイクルにおける目標回転数ne/fire(k)は、回転数F/B経過時間Δt/nfb がSTEP23−3で「0」に設定されている間(f/nefb=0の状態)は、前記設定回転数(NOBJ+NEFSLDS )である。
【0395】
次いで、点火時期操作手段26は、内燃機関1の現在の回転数Neが現在の目標回転数ne/fire(k)以上となったか否か(STEP23−5)、現在のFIRE経過時間t/fireが所定値TSLDIGST(一定値)以上となったか否か(STEP23−6)を順次判断する。
【0396】
そして、STEP23−5、23−6のいずれかの条件が成立したときには、回転数F/B実行可否フラグf/nefbの値を「1」に設定する(STEP23−7)。これにより、FIREモードの動作が開始してから、内燃機関1の回転数Neが前記設定回転数(NOBJ+NEFSLDS )に達した時、又は、FIRE経過時間t/fireが所定値TSLDIGSTに達した時に回転数F/B実行可否フラグf/nefbが「1」に設定され、点火時期操作回転数F/B制御を行い得る状態となる。
【0397】
尚、STEP23−5、23−6のいずれかの条件も成立しない状態では、STEP23−7の処理は省略され、回転数F/B実行可否フラグf/nefbの値は「0」に維持される。また、回転数F/B実行可否フラグf/nefbは、「1」に設定された後にFIREモードの動作中に「0」に戻されることはない。
【0398】
次いで、点火時期操作手段26は、内燃機関1の現在の回転数Neと、STEP23−4で求めた現在の目標回転数ne/fire(k)とから今回の制御サイクルにおける前記回転数偏差En(k) (=Ne−ne/fire(k))を算出する(STEP23−8)。
【0399】
次いで、点火時期操作手段26は、前記FIRE中断フラグf/fpauseの値を判断し(STEP23−9)、f/fpause=0、すなわち、FIREモードの中断動作を行う状態でない場合には、さらに回転数F/B実行可否フラグf/nefbの値を判断する(STEP23−10)。
【0400】
このとき、f/nefb=0である場合には、今回の制御サイクルにおける点火時期偏差指令値DIG(k)の値を「0」として(STEP23−11)、図22のルーチン処理に復帰する。
【0401】
一方、STEP23−10でf/nefb=1である場合には、点火時期操作回転数F/B制御のための点火時期偏差指令値DIG(k)を算出する(STEP23−12)。
【0402】
この点火時期偏差指令値DIG(k)の算出は次のように行われる。
【0403】
すなわち図24のフローチャートを参照して、まず、点火時期の現在の指令値iglog(k-1)(前回の制御サイクルで決定された指令値)から、前記図19のデータテーブルにより前記点火時期対応ポール基本値pole/igtblを求める(STEP24−1)。
【0404】
また、現在の回転数F/B経過時間Δt/nfb から、前記図20のデータテーブルにより前記時間対応補正係数kigtを求める(STEP24−2)。
【0405】
また、内燃機関1の現在の回転数Neから、前記図21のデータテーブルにより前記回転数対応補正係数kigne を求め(STEP24−3)、さらにこの回転数対応補正係数kigne と、前記カウントダウンタイマcnt/igvpl の現在の値と、FIREモードの中断動作の終了後のカウントダウンタイマcnt/igvpl の初期値としてあらかじめ定めた所定期間XCNTとから前記式(50)により前記回転数対応修正補正係数kignefを求める(STEP24−4)。
【0406】
そして、STEP24−1で求めた点火時期対応ポール基本値pole/igtblに、STEP24−2及び24−4でそれぞれ求めた時間対応補正係数kigt及び回転数対応修正補正係数kignefを乗算する(式(51)の演算を行う)ことで、今回の制御サイクルにおけるポールpole/ig の値を決定する(STEP24−5)。
【0407】
次いで、点火時期操作手段26は、今回及び前回の制御サイクルにおいてそれぞれ前記STEP23−8で求めた回転数偏差En(k) ,En(k-1) と、上記STEP24−5で求めたポールpole/ig の今回値とから、前記式(39)の演算により今回の制御サイクルにおける前記切換関数σ2(k)を求める(STEP24−6)。この場合において、式(39)中の係数パラメータs3 ,s4 はそれぞれ、「1」、「pole/ig 」である。
【0408】
次いで、点火時期操作手段26は、前記式(42)〜(44)により、今回の制御サイクルにおける等価制御入力DIGeq 、到達則入力DIGrch、及び適応則入力DIDadpをそれぞれ求める(STEP24−7)。
【0409】
より具体的には、等価制御入力DIGeq に関しては、まず、今回の制御サイクルにおいて前記STEP23−4で求めた目標回転数ne/fire(k)及びne/fire(k+1)と、前回の制御サイクルにおいてSTEP23−4で求めた目標回転数ne/fire(k-1)とから、それらの目標回転数ne/fire(k),ne/fire(k+1),ne/fire(k-1)の前記基準回転数Ne0(=アイドリング回転数NOBJ)に対する偏差、すなわち前記偏差回転数dne(k),dne(k+1),dne(k-1)を求める。そして、この偏差回転数dne(k),dne(k+1),dne(k-1)と、今回及び前回の制御サイクルにおいてそれぞれ前記STEP23−8で求めた回転数偏差En(k) ,En(k-1) と、STEP24−5で求めたポールpole/ig の今回値とを用いて式(42)の演算を行うことで、等価制御入力DIGeq(k)が求められる。この場合において、式(42)中の係数パラメータs3 ,s4 はそれぞれ、「1」、「pole/ig 」である。また、式(42)中のモデルパラメータc1 ,c2 ,d1 は前記回転数制御対象モデル(式(38)を参照)についてあらかじめ同定した所定値である。
【0410】
また、到達則入力DIGrchに関しては、前記STEP24−6で求めた切換関数σ2(k)の値を用いて式(43)の演算を行うことで、到達則入力DIGrch(k) が求められる。この場合において式(43)中の係数パラメータs3 は「1」であり、また、式(43)中の係数F3 は前記式(45)もしくは(45)’の条件を満たすようにあらかじめ設定した所定値である。
【0411】
また、適応則入力DIDadpに関しては、STEP24−6で制御サイクル毎に求められる切換関数σ2 の値を制御サイクル毎に累積加算することで、切換関数σ2 の積算値Σσ2 を求める。そして、この積算値Σσ2 を用いて前記式(44)の演算を行うことで、適応則入力DIDadpを求める。この場合において式(44)中の係数パラメータs3 は「1」であり、また、式(44)中の係数F4 は前記式(46)の条件を満たすようにあらかじめ設定した所定値である。
【0412】
上記のようにして等価制御入力DIGeq 、到達則入力DIGrch、及び適応則入力DIDadpを求めた後、点火時期操作手段26は、式(41)に従ってそれらの総和を演算することで、今回の制御サイクルにおける点火時期偏差指令値DIG(k)を求め(STEP24−8)、図23のルーチン処理に復帰する。
【0413】
図23の説明に戻って、上記のようにしてSTEP23−12で点火時期偏差指令値DIG(k)を算出した後、点火時期操作手段26は、該点火時期偏差指令値DIG(k)の値を所定の上限値と下限値との間の値に制限する(DIG(k)>上限値、あるいはDIG(k)<下限値であるとき、それぞれDIG(k)の値を強制的に上限値、下限値に設定する)リミット処理を行った後(STEP23−13)、図22のルーチン処理に復帰する。
【0414】
前記STEP23−9でf/fpause=1の場合、すなわち、FIREモードの中断動作を行うべき状態となっている場合には、点火時期操作回転数F/B制御を中断し、点火時期の指令値iglog を基本指令値igbaseに徐々に戻す(点火時期偏差指令値DIG を徐々に「0」に戻す)ために、その指令値iglog の制御サイクル毎の戻し量を規定する単位値dec/ig(>0。以下、点火時期戻し単位値dec/igという)を決定する(STEP23−14)。
【0415】
また、STEP23−1でf/fireon=1の場合、すなわち、FIREモードの動作を終了するかもしくは行わない状態となっている場合にも、点火時期の指令値iglog を基本指令値igbaseに徐々に戻すために、前記点火時期戻し単位値dec/igを決定する(STEP23−15)。
【0416】
この場合、本実施形態では、STEP23−15では、点火時期戻し単位値dec/igをあらかじめ定めた所定値(一定値)に設定するが、FIREモードの中断動作に際してSTEP23−14で設定する点火時期戻し単位値dec/igは、現在のスロットル弁5の開度に比例させた値(スロットル弁5の開度が大きい程、点火時期戻し単位値dec/igを大きくする)に決定する。
【0417】
これは次の理由による。すなわち、FIREモードの中断動作は、基本的には、車両のアクセルペダルの操作によって、車両の走行や内燃機関1のからぶかしを行う状況で行われるものである。そして、このときスロットル弁5の開度が前述の如くアクセル操作量Apに応じた開度に操作され、該スロットル弁5の開度が大きい状況では、内燃機関1の所要の動作性能を確保するために、点火時期をなるべくすみやかに通常的な点火時期(これは基本指令値igbaseに相当する)を戻すことが好ましいと考えられる。このために、STEP23−14では、点火時期戻し単位値dec/igをスロットル弁5の開度に比例させた値に決定する。
【0418】
尚、この場合に点火時期戻し単位値dec/igを決定するために必要となるスロットル弁5の開度は、コントローラ2からスロットル弁アクチュエータ23に与える開度指令値あるいは図示しないセンサによる開度の検出値を用る。
【0419】
このようにして、点火時期戻し単位値dec/igを決定した後、点火時期操作手段26は、次に、現在の点火時期偏差指令値DIG の値(これは前回の制御サイクルで決定された点火時期偏差指令値DIG(k-1)である)が「0」より小さいか否か、すなわち、遅角側の値であるか否かを判断する(STEP24−16)。
【0420】
そして、DIG(k-1)<0である場合(DIG(k-1)が遅角側の値である場合)には、現在の点火時期偏差指令値DIG(k-1)に前記STEP24−14又は24−15で決定した点火時期戻し単位値dec/igを加算した値(DIG(k-1)+dec/ig)を今回の制御サイクルにおける点火時期偏差指令値DIG(k)として決定し(STEP24−17)、図22のルーチン処理に復帰する。尚、この場合において、点火時期偏差指令値DIG(k)の上限値を「0」とし、(DIG(k-1)+dec/ig)が「0」より大きくなるような場合には、点火時期偏差指令値DIG(k)の値を強制的に「0」とする。
【0421】
一方、STEP24−16でDIG(k-1)≧0の場合(実質上は、DIG(k-1)=0の場合)には、FIRE実行可否フラグf/fireonの値を判断し(STEP24−18)、f/fireon=1の場合(この場合は、FIREモードの中断動作中である)には、今回の制御サイクルにおける点火時期偏差指令値DIG(k)を「0」として(STEP24−19)、図22のルーチン処理に復帰する。
【0422】
尚、FIREモードの中断動作中(f/fireon=1且つf/fpauseの状態)は、切換関数σ2 の積算値Σσ2 の値は中断動作の開始直前の値に保持される。
【0423】
また、STEP24−18でf/fireon=0の場合、すなわち、FIREモードの終了状態である場合には、FIRE中断フラグf/fpause及び回転数F/B実行可否フラグf/nefbの値を「0」にリセットすると共に、点火時期偏差指令値DIG(k)、切換関数σ2 の値及びその積算値Σσ2 、等価制御入力DIGeq 、到達則入力DIGrch、適応則入力DIGadpの値等を「0」に初期化した後(STEP24−20)、図22のルーチン処理に復帰する。
【0424】
図22の説明に戻って、前述の如く、STEP22−2で点火時期偏差指令値DIG を決定する処理を実行した後、点火時期操作手段26は、STEP22−1で決定した基本指令値igbaseにSTEP22−2で決定した点火時期偏差指令値DIG を加算することで、今回の制御サイクルにおける点火時期の指令値iglog を求める(STEP22−3)。
【0425】
次いで、点火時期操作手段26は、前述した吸入空気量操作手段25の前記点火時期応動補正処理に関して図12示した点火時期の遅角側の限界値IGLGG とこの限界値IGLGG よりも若干進角側の閾値IGX とを決定する(STEP22−4)。
【0426】
この場合、点火時期の遅角側の限界値IGLGG は、内燃機関1の機関温度Twから図示しないデータテーブルに基づいて求められ、該限界値IGLGG 以上の進角側の点火時期では、内燃機関1の正常な運転を行い得るように定められる。また、閾値IGX は、限界値IGLGG にあらかじめ定めた所定値(一定値)を加算した値(限界値IGLGG よりも所定値だけ進角側の値)に設定する。尚、限界値IGLGG は、内燃機関1の機関温度Twが通常的な温度範囲にある場合には、一定値であるが、機関温度Twがかなり低温な温度範囲にある場合には、通常的な温度範囲の場合よりも進角側の値になるようにしている。
【0427】
このようにして点火時期の遅角側の限界値IGLGG と閾値IGX とを決定した後、点火時期操作手段26は、前記STEP22−3で求めた指令値iglog を閾値IGX と比較する(STEP22−5)。そして、このとき、指令値iglog が閾値IGX に等しいかもしくは該閾値IGX よりも進角側の値である場合(iglog ≧IGX )には、前記点火時期応動補正処理を行わないため前記点火時期判別フラグf/dec (図15のSTEP15−7を参照)の値を「0」に設定し(STEP22−6)、STEP22−9に進む。
【0428】
また、STEP22−5でiglog <IGX である場合には、前記点火時期応動補正処理を行うべく前記点火時期判別フラグf/dec の値を「1」に設定し(STEP22−7)、さらに、吸入空気量操作手段25による前記学習補正処理に係わる前記学習演算終了フラグf/flrnend の値を判断する(STEP22−8)。そして、点火時期操作手段26は、f/flrnend =0である場合にのみ、現在のFIRE経過時間t/fireの値を前記学習終了時刻パラメータt/kil の値として保持しておき(STEP22−9)、さらに前記基本学習補正係数vpskisldの算出処理を終了すべく学習演算終了フラグf/flrnend の値を「1」に設定する(STEP22−10)。
【0429】
次いで、点火時期操作手段26は、STEP22−3で求めた指令値iglog をSTEP22−4で決定した遅角側の限界値IGLGG と比較し(STEP22−11)、iglog ≧IGLGG である場合、すなわち指令値iglog が遅角側の限界値IGLGG 内に収まっている場合には、図4のメインルーチンの処理に復帰する。
【0430】
一方、iglog <IGLGG である場合、すなわち、STEP22−3で求めた指令値iglog が、遅角側の限界値IGLGG を超えて遅角側の値となっている場合には、指令値iglog を強制的に限界値IGLGG に設定する(STEP22−12)。さらにこのとき、切換関数σ2 の値の積算値Σσ2 の値をiglog <IGLGG となる直前の制御サイクルで求めた値に強制的にホールド(保持)した後(STEP22−13)、図4のメインルーチンの処理に復帰する。このように積算値Σσ2 の値をホールドするのは、点火時期の指令値iglog を強制的に限界値IGLGG に設定する状態で、前記STEP23−12の処理により点火時期偏差指令値DIG の算出を継続して行うと、切換関数σ2 の値の積算値Σσ2 の値、ひいては前記適応則入力DIGadpの値(絶対値)が過剰に大きくなってしまうからである。
【0431】
以上、図19〜図24を参照して説明した処理が、前記図4のSTEP4−6で点火時期の指令値iglog を制御サイクル毎に生成する処理の詳細であり、このようにして決定された指令値iglog は前記点火装置21に与えられる。そして、該点火装置21は、与えられた指令値iglog に従って内燃機関1の点火時期を操作する。
【0432】
以上説明した本実施形態のシステムの作動によって、前記FIREモードの動作では、バイパス開度の操作により内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量が通常のアイドリング運転時よりも増量される。また、これと並行して、点火時期操作回転数F/B制御によって、内燃機関1の回転数Neを所要の目標回転数ne/fire (最終的にはアイドリング回転数NOBJ)に収束させるように点火時期が遅角側に操作される。これにより、内燃機関1が混合気の燃焼により生成する排ガスによって触媒装置3に与えられる熱量が通常のアイドリング運転時よりも多くなって、該触媒装置3の昇温・活性化を早期に行うことが可能となると同時に、吸入空気量の増量によって上昇傾向となる内燃機関1の回転数Neを適正な回転数に維持することができる。
【0433】
この場合、吸入空気量の増量に関しては、その増量を開始してから触媒装置3に実際に与えられる瞬時瞬時の熱量の積算値に相当する前記推定積算吸入空気量qair/preを、触媒装置3に実際に与えるべき熱量の目標積算値に相当する目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるように、吸気側適応SLD制御を用いた前記吸気量F/B制御補正処理によってバイパス開度の指令値が補正される。
【0434】
例えば図25の中段に示す如く、前記構造要因による吸入空気量のばらつきに起因して、推定積算吸入空気量qair/preが標準開度指令値θ0 に応じて定まる目標積算吸入空気量qair/cmdに対して誤差(吸気偏差Eq)を生じたとき、開度指令Θ(バイパス開度の指令値)は、同図の上段に示す如く、標準開度指令θ0 に対して前記SLD開度補正量i/sld だけ補正される。そして、この補正により、同図の中段に示す如く推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させ、ひいては、触媒装置3に実際に与えられる熱量の積算値をその目標値に追従させることができる。これにより、前記構造要因による吸入空気量のばらつきを補償し、ひいては、該構造要因による触媒装置3の昇温形態のばらつきを解消することができる。
【0435】
さらに、本実施形態では、前記大気条件補正処理により求めた前記大気圧補正係数kpa と大気温度補正係数kta とによって、開度指令Θを乗算補正する。すなわち、大気圧Paが低い程、開度指令Θを増加側に補正し、また、大気温度が高い程、開度指令Θを増加側に補正する。これにより、大気条件による吸入空気量のばらつきを補償し、ひいては、該大気条件による触媒装置3の昇温形態のばらつきも解消することができる。
【0436】
この結果、FIREモードにおける触媒装置3の昇温形態を所望の昇温形態に合わせることができ(本実施形態では、内燃機関1の始動時の機関温度Twや、FIREモードの動作中の自動変速機のシフト位置が一定であれば、FIREモードの中断動作が行われる場合を除いて、各回のFIREモードの動作による触媒装置3の昇温形態はほぼ同じになる)、該FIREモードの動作による触媒装置3の所望の昇温・活性化を確実に行うことができる。
【0437】
また、前記標準開度指令値θ0 、ひいては目標吸入空気量gair/cmd及び目標積算吸入空気量qair/cmdは、内燃機関1の始動時における触媒装置3の温度状態に相当する内燃機関1の始動時の機関温度Twに応じたものに設定するため(基本的には、該機関温度Twが高い程、目標吸入空気量gair/cmd及び目標積算吸入空気量qair/cmdは小さくなる)、内燃機関1の始動時の触媒装置3の温度状態に適した該触媒装置3の昇温・活性化を行うことができる。つまり、FIREモードにおける触媒装置3の昇温形態(経時的な温度の上昇度合い)は、内燃機関1の始動時における触媒装置3の温度状態に応じたものとなるが、FIREモードの動作による最終的な触媒装置3の温度状態を該触媒装置3の活性化の上で適正な温度状態にすることができる。
【0438】
また、標準開度指令値θ0 により規定される目標積算吸入空気量qair/cmdは、それに対応して内燃機関1の燃焼室4に制御サイクル毎に吸入されるべき吸入空気量、すなわち目標吸入空気量gair/cmdを、FIRE経過時間t/fireが所定値t2 (図7を参照)に達した後(内燃機関1の暖機がある程度進行した後)は、緩やかに減少させていくように設定される。このため、内燃機関1の暖機の進行によって、その各部のフリクションが低下しても内燃機関1の回転数Neが上昇傾向となるのを予防することができる。そして、この結果、内燃機関1の点火時期が前記点火時期操作F/B制御によって、過剰に遅角側に操作されるのを予防することができる。
【0439】
さらに、本実施形態では、点火時期操作回転数F/B制御によって決定される点火時期の指令値iglog が、該点火時期を操作し得る遅角側の限界値IGLGG に近い閾値IGX を超えたときには、前記吸気量F/B制御補正処理を中断して、前記点火時期応動補正処理によって、開度指令Θをフィードフォワード的に減少させる。このため、内燃機関1のフリクションの低下が予想以上に大きく、あるいは早期に生じた場合であっても、内燃機関1の回転数Neの上昇傾向の高まりを抑え、点火時期が遅角側の限界値IGLGG に達する程、過剰に遅角側に操作されるような事態を回避することができる。
【0440】
また、本実施形態では、前記吸気量F/B制御補正処理に、外乱や制御対象のモデル化誤差や外乱の影響を受けにくいスライディングモード制御を用い、特に、外乱等の影響を極力排除するための適応則を用いた適応スライディングモード制御(吸気側適応SLD制御)を用いることで、推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させ、ひいては、触媒装置3に与える熱量の積算値をその目標値に収束させる制御を高い安定性で行うことができる。この結果、触媒装置3の所望の昇温・活性化をより確実に行うことができる。
【0441】
また、前記吸気量F/B制御補正処理の吸気側適応SLD制御にあっては、その制御対象を開度指令Θから積算吸入空気量Qaを生成する系として、離散系のモデル(吸気制御対象モデル)で表現したため、該制御対象を連続系のモデルで表現する場合に比して、点火時期側適応SLD制御のアルゴリズムを簡素でコンピュータ処理に適したものに構築することができる。
【0442】
特に、吸気側適応SLD制御の制御対象を離散系でモデル化することで、吸気側適応SLD制御に用いる切換関数σ1 を、前記吸気偏差Eqの変化速度等を用いることなく、該吸気偏差Eqのみの時系列データを用いて構成することができる。この結果、前記SLD開度補正量i/sld を求めるために必要な切換関数σ1 の値の信頼性を高め、ひいては、吸気側適応SLD制御の信頼性を高めることができる。
【0443】
さらに、吸気側適応SLD制御では、等価制御入力Θeqのフィードバック項Θeq/fb を省略して、フィードフォワード項Θeq/ff に相当する標準開度指令値θ0 を本実施形態での等価制御入力Θeqとすることで、制御対象のモデル(吸気制御対象モデル)のモデルパラメータa1 ,a2 ,b1 を用いずに簡略なアルゴリズムで、SLD開度補正量i/sld を求めることができる。
【0444】
尚、SLD開度補正量i/sld をモデルパラメータa1 ,a2 ,b1 を用いて求めるようにしてもよいことはもちろんであるが、この場合であっても、吸気側適応SLD制御の制御対象のモデルを離散系で構築しているため、既知の同定アルゴリズムを用いることで、モデルパラメータa1 ,a2 ,b1 の値を的確に同定することが可能である。
【0445】
また、前記吸気量F/B制御補正処理にあっては、図25の中段に示される如く、内燃機関1の始動直後の前記SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまでは、推定積算吸入空気量qair/pre及び目標積算吸入空気量qair/cmdの値を強制的に「0」に保持し、ひいては、SLD開度補正量i/sld の値も「0」に保持する。
【0446】
このため、内燃機関1の始動直後は、SLD補正制限時間TISLDLMTが経過するまで吸気量F/B制御補正処理が行われないこととなり、バイパス開度は、標準開度指令値θ0 (より正確には、標準開度指令値θ0 に大気圧補正係数kpa 、大気温度補正係数kta 及び学習補正係数kilearn を乗算した値)を主体として、フィードフォワード的に操作されることとなる(図25の上段を参照)。
【0447】
従って、内燃機関1の始動直後は、吸入空気量は、標準開度指令値θ0 の上昇形態と同じような形態で滑らかに増量されていくこととなり、この結果、始動直後の内燃機関1の燃焼状態を円滑に安定化し、内燃機関1の良好なエミッション状態を確保することができる。
【0448】
さらに、吸気量F/B制御補正処理を実際に開始する際には、図25の下段に示す如く前記吸気側適応SLD制御に係わるポールpole/iの値を、FIRE経過時間t/fireが所定値TPOLEXに達するまで、「−1」側から徐々に増加させる(|pole/i|を徐々に減少させる)ことで、前記吸気偏差Eqの減衰速度をFIRE経過時間t/fireが所定値TPOLEXに達するまでは、該所定値TPOLEXに達した後よりも遅くする。
【0449】
この結果、吸気量F/B制御補正処理の開始によって、開度指令Θ、ひいては、吸入空気量が急激に大きく変化するような事態が回避され、これによっても、始動後の初期段階における内燃機関1の燃焼状態の安定性を保ちつつ、内燃機関1の良好なエミッション状態を確保することができる。
【0450】
また、本実施形態では、前記学習補正処理によって、FIREモードの動作毎に吸気量F/B制御補正処理によるSLD開度補正量i/sld を学習し、該SLD開度補正量i/sld をFIREモードの動作中に積算してなるSLD積算吸気補正量qair/sldの、目標積算吸入空気量qair/cmdに対する比の値に基づく学習補正係数kilearn (基本的には前記基本学習補正係数vpskisld)を求める。そして、次回のFIREモードの動作に際して、この学習補正係数kilearn によりFIREモードの全期間にわたって開度指令Θをフィードフォワード的に乗算補正することで、FIREモード中のSLD開度補正量i/sld による制御サイクル毎の開度指令Θの補正を最小限に留めることができる。この結果、構造要因による吸入空気量のばらつきが大きく生じたような場合であっても、吸入空気量の時間的変化のパターンが標準開度指令値θ0 のパターンに対して大きく逸脱した変化を呈するような事態を回避することができ、内燃機関1の燃焼状態やエミッション状態を損なうことなく安定した内燃機関1の運転を行うことができる。
【0451】
また、本実施形態では、FIREモードの動作中に車両のアクセルペダルの操作による内燃機関1のからぶかしや車両の発進・走行が行われて、内燃機関1のアイドリング運転以外の運転を行う状態となり、FIREモードの中断動作を行う状況でも、吸入空気量の増量側へのバイパス開度の操作を行う(但し、吸気量F/B制御補正処理は中断)と共に、推定積算吸入空気量qair/pre及び目標積算吸入空気量qair/cmdの算出を継続する。そして、該中断動作の解除後に、吸気量F/B制御補正処理を再開して、推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるように開度指令Θを補正する。このため、FIREモードの動作中に、内燃機関1のアイドリング運転以外の運転を行う状況となり、FIREモードの中断動作を行うような状況が生じても、FIREモード制限時間TFIRELMT内における触媒装置3の昇温・活性化を確実に行うことができる。
【0452】
また、点火時期操作回転数F/B制御に関しては、そのフィードバック制御処理に、前記吸気量F/B制御補正処理の場合と同様に、適応スライディングモード制御(点火時期側適応SLD制御)を用いることで、内燃機関1の回転数Neの目標回転数ne/fire への制御の安定性を高めることができる。
【0453】
この場合、特に、応答指定型制御である点火時期側適応SLD制御の応答指定特性を利用し、回転数Neの制御のために操作する点火時期の指令値iglog が遅角側の値である程、回転数偏差En(=Ne−ne/fire )の減衰速度を遅くするように、該減衰速度を規定するパラメータである前記ポールpole/ig (=s4 /s3 )の通常的な値として設定される前記点火時期対応ポール基本値pole/igtblを可変的に定める。つまり、一般に、点火時期が遅角側である程、該点火時期の変化に対する内燃機関1の回転数Neの変化が大きなものとなるが、このような状態では、回転数偏差Enの減衰速度を遅めにするようにポールpole/ig の値を設定することで、点火時期側適応SLD制御により決定される指令値iglog の変化を抑制し、回転数Neが目標回転数ne/fire に対して急変するのを回避する。また、逆に点火時期の進角側では、回転数偏差Enの減衰速度を速めにするようにポールpole/ig の値を設定することで、回転数Neの目標回転数ne/fire への迅速な追従性を確保する。これにより、回転数Neの目標回転数ne/fire への制御の適正な速応性を確保しつつ安定性を高めることができる。
【0454】
また、点火時期操作回転数F/B制御の開始直後の初期段階(回転数F/B経過時間Δt/nfb が所定値T/NFBXに達するまで)では、回転数偏差Enの減衰速度を遅くするように前記時間対応補正係数kigtにより点火時期対応ポール基本値pole/igtblを乗算補正してポールpole/ig を決定する。これにより、点火時期操作回転数F/B制御の開始直後に回転数Neが急激に変動し、内燃機関1の燃焼状態が悪化するような事態を回避することができる。
【0455】
さらに、本実施形態では、FIREモードの中断動作の解除後に点火時期操作回転数F/B制御を再開するに際して、内燃機関1の回転数Neが目標回転数ne/fire に対して高回転側に大きく離間している程、回転数偏差Enの減衰速度を遅くするように前記回転数対応修正補正係数kignefにより点火時期対応ポール基本値pole/igtblを乗算補正してポールpole/ig を決定する。これにより、点火時期操作回転数F/B制御を再開に際して内燃機関1の回転数Neが目標回転数ne/fire に対して高回転側に大きく離間しているときに、大きな回転数偏差Enに応じて急激に点火時期の指令値iglog が遅角側に変化するのを抑制し、内燃機関1の安定した運転状態を確保することができる。
【0456】
さらに本実施形態では、点火時期操作回転数F/B制御に係わる前記回転数偏差Enの減衰速度を規定するポールpole/ig の絶対値よりも、前記吸気量F/B制御補正処理に係わる前記吸気偏差Eqの減衰速度を規定するポールpole/iの絶対値の方が大きな値に設定される(図17のSTEP17−7、17−8の処理を参照)。換言すれば、ポールpole/ig は、回転数偏差Enの減衰速度が吸気偏差Eqの減衰速度よりも速くなるような値に設定される。このため、点火時期操作回転数F/B制御により内燃機関1の回転数Neを目標回転数ne/fire に収束させるフィードバック制御と、吸気量F/B制御補正処理により推定積算吸入空気量qair/preを目標積算吸入空気量qair/cmdに収束させるフィードバック制御との相互の干渉を回避して内燃機関1の回転数Neを安定して目標回転数ne/fire に制御することができる。
【0457】
また、本実施形態では、点火時期操作回転数F/B制御に用いる点火時期側適応SLD制御では、その制御対象を点火時期の指令値iglog に相当する点火時期偏差指令値DIG から、内燃機関1の回転数Neに相当する偏差回転数DNE を生成する系として、離散系のモデル(回転数制御対象モデル)で表現したことで、点火時期側適応SLD制御のアルゴリズムを簡素でコンピュータ処理に適したものとすることができる。
【0458】
特に、点火時期側適応SLD制御の制御対象を離散系でモデル化することで、吸気側適応SLD制御の場合と同様、切換関数σ2 を、前記回転数偏差Enの変化速度等を用いることなく、該回転数偏差Enのみの時系列データを用いて構成することができる。この結果、前記点火時期偏差指令値DIG を求めるために必要な切換関数σ2 の値の信頼性を高め、ひいては、点火時期側適応SLD制御の信頼性を高めることができる。
【0459】
尚、本実施形態では、FIREモードにおける内燃機関1の燃焼室4の吸入空気量の増量のための流量制御弁としてバイパス弁7を用いたが、スロットル弁5の開度を操作することで、吸入空気量の増量を行うようにしてもよい。
【0460】
また、前述の実施形態では、燃焼室4で燃焼させる混合気の空燃比が一定であるとした場合に内燃機関1の発生熱量(排ガスの熱量)、ひいては触媒装置3に与えられる熱量が燃焼室4の吸入空気量にほぼ比例することから触媒装置3に与える熱量を表す熱量データとして制御サイクル毎の吸入空気量の積算値を用いている。しかし、内燃機関1の発生熱量は、内燃機関1の点火時期によっても若干変化することから、触媒装置3に与える熱量を表す熱量データの精度をより高める必要がある場合には、瞬時瞬時(制御サイクル毎)の吸入空気量の推定値あるいは検出値を、その時々の点火時期に応じて補正し、それを積算することで、熱量データを取得するようにしてもよい。また、混合気の空燃比を変化させる必要が生じた場合には、点火時期に応じた補正と同様に、瞬時瞬時(制御サイクル毎)の吸入空気量の推定値あるいは検出値を、その時々の空燃比に応じて補正し、それを積算することで、熱量データを取得するようにしてもよい。いずれの場合にあっても、点火時期や空燃比に応じた補正を行うための補正係数をあらかじめ設定したデータテーブル等を用意しておくことで対応することが可能である。
【0461】
尚、触媒装置に与える熱量を表す熱量データを取得するに際しての上記のような補正は、該熱量データとして燃料供給量等、その他のパラメータを用いる場合においても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を含む内燃機関の制御システムの全体構成図。
【図2】図1のシステムの内燃機関の吸気系を模式化して示した図。
【図3】図1のシステムの基本的作動を説明するための線図。
【図4】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図5】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図6】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図7】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図8】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図9】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図10】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図11】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図12】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図13】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図14】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図15】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図16】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図17】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図18】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図19】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図20】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図21】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【図22】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図23】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図24】図1のシステムの作動を説明するためのフローチャート。
【図25】図1のシステムの作動を説明するための線図。
【符号の説明】
1…内燃機関、3…触媒装置、7…バイパス弁(流量制御弁)、8…バイパス通路(吸入空気通路)、25…吸入空気量操作手段、26…点火時期操作手段。
Claims (2)
- 排ガスを触媒装置を介して放出する内燃機関の始動後に前記触媒装置の早期活性化を行うための動作モードでのアイドリング運転時に、該内燃機関の吸入空気量を前記動作モード以外のモードでのアイドリング運転時の吸入空気量よりも所定量、増量させるように該内燃機関の吸入空気通路に設けた流量制御弁の開度を操作する吸入空気量操作手段と、その吸入空気量の増量中に内燃機関の回転数を所定の目標回転数に収束させるように該内燃機関の点火時期をフィードバック制御により操作して、該点火時期を遅角側に補正する点火時期操作手段とを備えた内燃機関の制御装置において、前記触媒装置の早期活性化を行なうための動作モードでの前記吸入空気量操作手段による前記吸入空気量の増量と前記点火時期操作手段による前記点火時期の操作とを、該動作モードの開始時から所定時間が経過するまでの期間で実行するようにし、前記吸入空気量の増量時の前記流量制御弁の開度を、大気圧が低い程、該開度を大きくするように該大気圧に応じて調整する手段を前記吸入空気量操作手段に備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
- 前記吸入空気量の増量時の前記流量制御弁の開度を、大気温度が高い程、該開度を大きくするように該大気温度に応じて調整する手段を前記吸入空気量操作手段に備えたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
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