JP3775259B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなるレーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性層にSiがドープされたレーザ素子が、特開平7−297494号公報に記載されている。この公報にはGaNよりなる膜厚の厚い活性層にSiをドープして閾値電流を低下させることが開示されている。
【0003】
しかし、前記公報のように、単一層の膜厚が例えば0.1μm以上もある厚膜の活性層を有する素子構造では出力が弱く、レーザ発振させるのは非常に困難である。また活性層を単一膜厚が100オングストーム近辺にある井戸層と障壁層とを積層した多重量子井戸構造の活性層を有するレーザ素子が、例えば特開平8−64909号公報に記載されている。この公報には、井戸層にZnがドープされた多重量子井戸構造の活性層を有するレーザ素子が記載されており、井戸層に極微量のZnをドープすることにより、価電子帯近くにアクセプター的な不純物準位を形成して、閾値電流を低下させることが示されている。さらにまた、特開平6−268257号公報にはInXGa1−XNよりなる井戸層と、InYGa1−YNよりなる障壁層とを積層した多重量子井戸構造の活性層を有する発光素子が示されており、さらにこの公報には活性層にn型不純物、またはp型不純物をドープしても良いことが記載されている。
【0004】
このように活性層にn型、p型不純物をドープして、バンドギャップ内に不純物準位を形成することにより、発光素子の発光出力を高めたり、レーザ素子の閾値電流を低下させることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本出願人は最近窒化物半導体により、パルス電流において、室温での410nmのレーザ発振を発表した(例えば、Jpn.J.Appl.Phys. Vol35 (1996) pp.L74-76)。発表したレーザ素子はいわゆる電極ストライプ型のレーザ素子であり、ノンドープInGaNが積層された多重量子井戸構造の活性層を有するものである。
【0006】
しかしながら、前記窒化物半導体レーザは未だパルス発振でしかなく、しかも閾値電流は1〜2Aもある。窒化物半導体で連続発振させるためには、閾値電流をさらに低下させる必要がある。
【0007】
従って、本発明の目的とするところは、窒化物半導体よりなるレーザ素子の発光出力を高め、さらに閾値電流を小さくして、室温での連続発振を目指すことにある。
【0008】
インジウムを含む窒化物半導体よりなる井戸層と、井戸層よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体よりなる障壁層とが積層されてなる多重量子井戸構造の活性層を有する窒化物半導体レーザ素子において、前記活性層は、In X Ga 1−X N(0< X ≦1)よりなる井戸層と、In X ' Ga 1−X ' N(0< X ’≦1、 X' < X )よりなる障壁層が積層され、前記活性層の1つの井戸層においてIn組成の多い領域とIn組成の少ない領域とを有し、かつ、前記障壁層中にn型不純物がドープされていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
【0009】
前記n型不純物は、Siであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0010】
前記障壁層中のSi濃度は、1×10 18 /cm 3 〜1×10 22 /cm 3 であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0011】
前記活性層に接して、Alを含むp型の窒化物半導体層を有することを請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0012】
請求項1乃至4に記載の窒化物半導体レーザ素子において、n電極と接するn型コンタクト層は、AlとGaを含むn型の窒化物半導体を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図である。基本的な構造としては、基板1の上に、バッファ層2、n型コンタクト層3、n型クラッド層4、不純物がドープされた多重量子井戸構造を有する活性層5、第1のp型層6、第2のp型層7、第3のp型層8、p型コンタクト層9が順に積層された電極ストライプ型の構造を有しており、n型コンタクト層にはストライプ状の負電極、p型コンタクト層には正電極が設けられている。
【0021】
このレーザ素子を各パルス電流を流した際のスペクトルを図3に示す。図3において(a)は280mA(閾値直後)、(b)は295mA、(c)は320mA、(d)は340mAでの発光スペクトルを示している。(b)、(c)、(d)は発振時のスペクトルを示している。
【0022】
(a)は発振直後のスペクトルを示し、この状態ではおよそ404.2nm付近にある主発光ピークの前後に小さな発光ピークが多数(ファブリペローモード)出現してレーザ発振直後の状態であることが分かる。これがいわゆる縦モードのスペクトルである。電流値を上げると(b)に示すように、そのスペクトルがシングルモードとなって404.2nm付近のレーザ発振を示す。次からが本発明の特徴であり、さらに電流を増加させると、(c)に示すように、403.3nm(3.075eV)、403.6nm(3.072eV)、403.9nm(3.070eV)、404.2nm(3.068eV)、404.4nm(3.066eV)というように、主発光ピークの他に、強度の大きな発光ピークが1meV〜100meVの間隔で不規則に出現する。さらに(d)では前記ピークの他に、また新たなピークがはっきりと出現しており。これらのスペクトル間隔は一定ではなく明らかに縦モードのスペクトルと異なる。
【0023】
一般に、半導体レーザの場合、レーザ発振すると、レーザ光の縦モードによる小さな発光ピークが主発光ピークの前後に多数出現する。この場合の発光スペクトルは、ほぼ等間隔の発光ピークよりなっている。赤色半導体レーザでは、その発光ピークの間隔はおよそ0.2nmである。青色半導体レーザではおよそ0.05nm(1meV)以下である(但し、青色半導体レーザの縦モードは共振器長が600μmにおいて、本出願人により初めて計測された。)。つまり、図3(a)、(b)の状態では通常のレーザ素子の挙動を示している。しかし、本発明のレーザ素子の場合、(c)、(d)に示すように、明らかに従来のレーザ素子の縦モードによる発光ピークとは異なった等間隔でないピークが多数出現している。これは図3の電流値による各スペクトルを比較しても分かる。本発明のレーザ素子では、このような発光スペクトルが出現することにより、出力が高くなる。
【0024】
なぜ、このようなピークが発生するとレーザ素子の出力が高くなるのかは定かではないが、例えば次のようなことが考えられる。活性層が量子井戸構造の場合、井戸層の膜厚は100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下に調整される。一方、障壁層も150オングストローム以下、好ましくは100オングストローム以下に調整される。本発明の発光素子では、このような単一膜厚が数十オングストロームの薄膜を積層した場合、井戸層、障壁層共、均一な膜厚で成長しておらず、凹凸のある層が幾重にも重なり合った状態となっている。図2は図1のレーザ素子において活性層5とクラッド層との界面の状態を拡大して示す模式的な断面図である。図2に示すように、このような凹凸のある活性層を、活性層よりもバンドギャップの大きいクラッド層で挟むダブルヘテロ構造を実現すると、活性層に注入された電子とホールとが、凹部にも閉じ込められるようになって、クラッド層の縦方向と共に縦横の両方向に閉じ込められる。このため、キャリアが約10〜70オングストローム凹凸差がある3次元のInGaNよりなる量子箱、あるいは量子ディスクに閉じ込められたようになって、従来の量子井戸構造とは違った、量子効果が出現する。従って、多数の量子準位に基づく発光が室温でも観測されるようになり、発光スペクトルの1meV〜100meVの間隔で多数の発光ピークが観測される。また、他の理由としては、三次元のInGaNよりなる小さな量子箱にキャリアが閉じ込められるので、エキシトン効果が顕著に現れてきて多数の発光ピークが観測される。
【0025】
また、このようにInGaN井戸層に多数の凹凸が発生する理由の一つとして、In組成の面内不均一が考えられる。即ち、単一井戸層内において、In組成の大きい領域と、少ない領域とができるために、井戸層表面に多数の凹凸が発生するのである。InGaNは混晶を成長させにくい材料であり、InNとGaNとが相分離する傾向にある。このためIn組成の不均一な領域ができる。そして、このIn組成の高い領域に電子と正孔とが局在して、エキシトン発光、あるいはバイエキシトン発光して、レーザの出力が向上し、多数のピークができる。特にレーザ素子ではこのバイエキシトンレーザ発振することにより、量子ディスク、量子箱と同等になって多数のピークが出現し、この多数のピークによりレーザ素子の閾値が下がり、出力が向上する。なおエキシトンとは電子と正孔とが弱いクーロン力でくっついてペアになったものである。
【0026】
さらに、活性層中にn型不純物及び/又はp型不純物をドープすることにより、閾値電流を低下させることができる。これらの不純物をドープすることにより、活性層のIn組成の多い領域に局在化しているエキシトンが、今度はそれよりもさらに深い不純物の準位に局在化するようになって、エキシトン発光の効果が顕著となることにより、閾値の低下が起きる。
【0027】
本発明のレーザ素子の活性層について述べたことを、図6のエネルギーバンド図でわかりやすく示す。図6Aは多重量子井戸構造の活性層のエネルギーバンドを示しており、図6Bは、図6Aの単一井戸層のエネルギーバンドを拡大して示すものである。前記したように、井戸層においてIn組成の面内不均一があるということは、Bに示すように単一のInGaN井戸層幅にバンドギャップの異なるInGaN領域が存在する。従って、伝導帯にある電子は一度、In組成の大きいInGaN領域に落ちて、そこから価電子帯にある正孔と再結合することによりhνのエネルギーを放出する。このことは、電子と正孔とが井戸層幅のIn組成の多い領域に局在化して、局在エキシトンを形成し、レーザの閾値の低下を助ける。閾値が下がり、出力が高くなるのはこの局在エキシトンの効果によるものである。さらに、この井戸層にSi等のn型不純物、Zn等のp型不純物をドープすることにより、伝導帯と価電子帯との間にさらに不純物レベルの準位ができる。図6BではSiと、Znとでもってその準位を示している。不純物をドープすると不純物レベルのエネルギー準位が形成される。そのため電子はより深い準位へ落ち、正孔はp型不純物のレベルに移動して、そこで電子と正孔とが再結合して、hν'のより小さいエネルギーを放出する。このことは電子と正孔とがさらに局在化することを意味し、この局在したエキシトン効果によりレーザの閾値が下がるのである。多数のピークが出現するのは、この局在エキシトンに加えて、三次元的に閉じ込められた量子箱の効果により多数の量子準位間の発光が出てくるからである。
【0028】
n型不純物には、例えばSi、Ge、Sn、Se、Sを挙げることができる。p型不純物には、例えばZn、Cd、Mg、Be、Ca等を挙げることができる。これらの不純物を活性層中、特に好ましくは井戸層中にドープすることにより、量子準位間に、不純物レベルの発光を起こさせ、バンド間のエネルギー準位を小さくして、閾値を低下させることができる。なお、n型不純物、p型不純物両方をドープしてもよいことは言うまでもない。
【0029】
特に好ましくはn型不純物、中でもSi、Geをドープすることにより、発光強度を強めると共に、閾値電流を低下させることができる。図4は井戸層にドープしたSi濃度と、閾値電流の低下率の割合を示す図である。具体的には平均膜厚30オングストロームのInGaNよりなる井戸層と、平均膜厚70オングストローム障壁とを5層積層した多重量子井戸構造の活性層を有するレーザ素子において、前記井戸層中にSiをドープした際のレーザ素子の閾値の低下の割合を示しており、図に示す各点は実際のSi濃度を示している。この図に示すようにSiをドープすることにより、閾値電流を最大で50%近く低下させることができる。従って、好ましいSi濃度は、1×1018/cm3〜1×1022/cm3の範囲にあり、さらに好ましくは5×1018/cm3〜2×1021/cm3、最も好ましくは1×1019/cm3〜1×1021/cm3である。なおこの図はSiについて示したものであるが、他のn型不純物、Ge、Sn等に対しても同様の傾向があることを確認した。
【0030】
図5は井戸層にドープしたMg濃度と、閾値電流の低下率の割合を示す図である。これも同じく平均膜厚30オングストロームのInGaNよりなる井戸層と、平均膜厚70オングストローム障壁とを5層積層した多重量子井戸構造の活性層を有するレーザ素子において、前記井戸層中にMgをドープした際のレーザ素子の閾値の低下の割合を示しており、図に示す各点は実際のMg濃度を示している。この図に示すように、Mgをドープすることにより、閾値電流を25%近く低下させることができる。好ましいMg濃度は、1×1017/cm3〜1×1022/cm3の範囲にあり、さらに好ましくは1×1018/cm3〜2×1021/cm3、最も好ましくは1×1018/cm3〜1×1021/cm3である。なお、この図はMgについて示したものであるが、他のp型不純物、Zn、Cd、Be等に対しても同様の傾向があることを確認した。
【0031】
【実施例】
以下、MOVPE法を用いて、図1に示す構造のレーザ素子を得る方法を説明する。図1は本発明のレーザ素子の一構造を示すものであって、本発明のレーザ素子はこの構造に限定されるものではない。なお本発明において示すInXGa1−XN、AlYGa1−YN等の一般式は、単に窒化物半導体の組成式を示しているに過ぎず、異なる層が同一の式で示されていても、それらの層が同一の組成を示すものでは決してない。
【0032】
[実施例1]
サファイアのA面を主面とする基板1を用意し、この基板1をMOVPE装置の反応容器内に設置した後、原料ガスにTMG(トリメチルガリウム)と、アンモニアを用い、温度500℃でサファイア基板1の表面にGaNよりなるバッファ層2を200オングストロームの膜厚で成長させる。基板1にはA面の他にC面、R面等の面方位を有するサファイアが使用でき、サファイアの他、スピネル111面(MgAl2O4)、SiC、MgO、Si、ZnO、GaN等の単結晶よりなる、公知の基板が用いられる。バッファ層2は基板と窒化物半導体との格子不整合を緩和するために設けられ、通常、GaN、AlN、AlGaN等が1000オングストローム以下の膜厚で成長されるが、窒化物半導体と格子定数の近い基板、格子整合した基板を用いる場合、成長方法、成長条件等の要因によっては成長されないこともあるので、省略することもできる。但し、サファイア、スピネルのように、窒化物半導体と格子定数が異なる基板を用いる場合、特開平4−297023号公報に記載されるように、200℃以上、900℃以下の温度でバッファ層2を成長させると、次に高温で成長させる窒化物半導体層の結晶性が飛躍的に良くなる。
【0033】
続いて温度を1050℃に上げ、原料ガスにTMG、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモニア、ドナー不純物としてSiH4(シラン)ガスを用いて、SiドープAl0.3Ga0.7Nよりなるn型コンタクト層3を4μmの膜厚で成長させる。
【0034】
n型コンタクト層3は光閉じ込め層としても作用する。n型コンタクト層3をAlとGaとを含むn型窒化物半導体、好ましくはn型AlYGa1-YN(0<Y<1)とすることにより、活性層との屈折率差が大きくでき、光閉じ込め層としてのクラッド層、及び電流を注入するコンタクト層として作用する。さらに、このコンタクト層をAlYGa1−YNとすることにより、活性層の発光をn型コンタクト層内で広がりにくくできるので、閾値が低下する。n型コンタクト層3をAlYGa1−YNとする場合、基板側のAl混晶比が小さく、活性層側のAl混晶比が大きい構造、即ち組成傾斜構造とすることが望ましい。前記構造とすることにより、結晶性の良いn型コンタクト層が得られるので、結晶性の良いn型コンタクト層の上に積層する窒化物半導体の結晶性も良くなるため、素子全体の結晶性が良くなり、ひいては閾値の低下、素子の信頼性が格段に向上する。また活性層側のAl混晶比が大きいために、活性層との屈折率差も大きくなり光閉じ込め層として有効に作用する。また、このn型コンタクト層3をGaNとしてもよい。GaNの場合、n電極とのオーミック特性については非常に優れている。コンタクト層をGaNとすると、GaNコンタクト層と、活性層との間にAlGaNよりなる光閉じ込め層を設ける必要がある。このn型コンタクト層3の膜厚は0.1μm以上、5μm以下に調整することが望ましい。0.1μm以下であると、光閉じ込め層として作用しにくく、また、電極を同一面側に設ける場合に、精密なエッチングレートの制御をせねばならないので不利である。一方、5μmよりも厚いと、結晶中にクラックが入りやすくなる傾向にある。
【0035】
続いて、温度を1050℃に保持し、原料ガスにTMG、アンモニア、シランガスを用いて、Siドープn型GaNよりなるn型クラッド層4を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0036】
このn型クラッド層4はn層側の光ガイド層、および活性層にInGaNを成長させる際のバッファ層として作用し、n型GaNの他、n型InGaNを成長させることもできる。バッファ層と成長させる場合には0.05μm以下の膜厚で成長させることが望ましい。また、前記のようにコンタクト層2をGaNで成長させた場合、このn型クラッド層4は、光閉じ込め層として作用させるためにAlGaNで成長させる必要がある。AlGaN層の場合、膜厚は0.01μm〜0.5μmの膜厚で成長させることが望ましい。0.01μmより薄いと光閉じ込め層として作用しにくく、0.5μmよりも厚いと結晶中にクラックが入りやすい傾向にある。
【0037】
次に、温度を750℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニア、不純物ガスとしてシランガスを用いてSiをドープした活性層5を成長させる。活性層5は、まずSiを1×1020/cm3の濃度でドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を25オングストロームの膜厚で成長させる。次にシランガスを止めて、TMIのモル比を変化させるのみで同一温度で、ノンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を13回繰り返し、最後に井戸層を成長させ総膜厚0.1μmの多重量子井戸構造よりなる活性層5を成長させる。
【0038】
活性層5は、少なくとも井戸層がInを含む窒化物半導体を含む多重量子井戸構造とする。多重量子井戸構造とは、井戸層と障壁層とを積層したものであり、本発明の場合、井戸層がInを含む窒化物半導体で構成されていれば、障壁層は井戸層よりもバンドギャップが大きければ特にInを含む必要はない。好ましくは、InXGa1−XN(0<X≦1)よりなる井戸層と、InX’Ga1−X’N(0≦X'<1、X'<X)よりなる障壁層とを積層した構造とする。三元混晶のInGaNは四元混晶のものに比べて結晶性が良い物が得られるので、発光出力が向上する。また障壁層は井戸層よりもバンドギャップエネルギーを大きくして、井戸+障壁+井戸+・・・+障壁+井戸層(その逆でもよい。)となるように積層して多重量子井戸構造を構成する。井戸層の膜厚は70オングストローム以下、さらに望ましくは50オングストローム以下に調整することが好ましい。また障壁層の厚さも150オングストローム以下、さらに望ましくは100オングストローム以下の厚さに調整することが望ましい。井戸層が70オングストロームよりも厚いか、または障壁層が150オングストロームよりも厚いと、レーザ素子の出力が低下する傾向にある。このように活性層をInGaNを積層したMQWとすると、量子準位間発光で約365nm〜660nm間での高出力なLDを実現することができる。特に好ましい態様として、両方の層をInGaNとすると、InGaNは、GaN、AlGaN結晶に比べて結晶が柔らかい。そのため第1のp型層であるAlGaNの厚さを厚くできるのでレーザ発振が実現できる。またn型不純物は本実施例のように井戸層にドープしてもよいし、また障壁層にドープしてもよく、さらに井戸層、障壁層両方にドープしてもよい。
【0039】
活性層5の膜厚は、n型コンタクト層3をAlYGa1−YNとした場合、200オングストローム以上、さらに好ましくは300オングストローム以上の膜厚で成長させることが望ましい。なぜなら、MQWよりなる活性層を厚く成長させることにより、活性層の最外層近辺が光ガイド層として作用する。つまり、n型コンタクト層3と第3のp型層8とが光閉じ込め層として作用し、活性層の最外層近傍が光ガイド層として作用する。活性層の膜厚の上限は特に限定するものではないが、通常は0.5μm以下に調整することが望ましい。
【0040】
次に、原料ガスにTMG、TMA、アンモニア、p型不純物としてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用いて、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1のp型層6を100オングストロームの膜厚で成長させる。
【0041】
第1のp型層6はAlを含むp型の窒化物半導体で構成し、好ましくは三元混晶若しくは二元混晶のAlYGa1−YN(0<Y≦1)を成長させることが望ましい。さらに、このAlGaNは後に述べる第3のp型層8よりも膜厚を薄く形成することが望ましく、好ましくは10オングストローム以上、0.5μm以下に調整する。この第1のp型層6を活性層5に接して形成することにより、素子の出力が格段に向上する。これは、第1のp型層6成長時に、活性層のInGaNが分解するのを抑える作用があるためと推察されるが、詳しいことは不明である。第1のp型層6は好ましく10オングストローム〜0.5μm以下の膜厚で成長させることが望ましいが、省略することもできる。
【0042】
次に、温度を1050℃にし、TMG、アンモニア、Cp2Mgを用いて、Mgドープp型GaNよりなる第2のp型層7を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0043】
この第2のp型層7はp層側の光ガイド層若しくはバッファ層として作用し、好ましくは二元混晶または三元混晶のInYGa1−YN(0≦Y<1)を成長させる。第2のp型層7は、活性層の膜厚が薄い場合に成長させると光ガイド層として作用する。また第1のp型層6がAlGaN等よりなるので、この層がバッファ層のような作用をして、次に成長させる第3のp型層8をクラック無く結晶性良く成長できる。つまり、AlGaNの上に直接バンドギャップが大きいAlGaNを積層すると、後から成長させたバンドギャップが大きいAlGaNにクラックが入りやすくなるので、この第2のp型層7を介することによりクラックを入りにくくしている。第2のp型層7は、通常100オングストローム〜0.5μm程度の膜厚で成長させることが望ましいが、省略することもできる。
【0044】
次に、温度を1050℃に上げ、原料ガスにTMG、TMA、アンモニア、アクセプター不純物としてCp2Mgを用いて、MgドープAl0.3Ga0.7Nよりなる第3のp型層8を0.3μmの膜厚で成長させる。
【0045】
第3のp型層8は、Alを含む窒化物半導体で構成し、好ましくは二元混晶または三元混晶のAlYGa1−YN(0<Y≦1)を成長させる。第3のp型層8は、光閉じ込め層として作用し、0.1μm〜1μmの膜厚で成長させることが望ましく、AlGaNのようなAlを含むp型窒化物半導体とすることにより、好ましく光閉じ込め層として作用する。この第3のp型層も活性層5をInを含む窒化物半導体としているために、成長可能となる。つまり、InGaNを含む活性層が緩衝層のような作用をするために、AlGaNを厚膜で成長させやすくなる。逆にAlを含む窒化物半導体層の上に、直接光閉じ込め層となるような厚膜で、Alを含む窒化物半導体を成長させることは難しい傾向にある。
【0046】
続いて、1050℃でTMG、アンモニア、Cp2Mgを用い、Mgドープp型GaNよりなるp型コンタクト層9を0.5μmの膜厚で成長させる。
【0047】
p型コンタクト層9は電流を注入する層であり、p型の窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、特にInGaN、GaN、その中でもMgをドープしたp型GaNとすると、最もキャリア濃度の高いp型層が得られて、正電極と良好なオーミック接触が得られ、しきい値電流を低下させることができる。正電極の材料としてはNi、Pd、Ir、Rh、Pt、Ag、Au等の比較的仕事関数の高い金属又は合金がオーミックが得られやすい。
【0048】
以上のようにして窒化物半導体を積層したウェーハを反応容器から取り出し、図1に示すように最上層のp型コンタクト層9より選択エッチングを行い、n型コンタクト層3の表面を露出させ、露出したn型コンタクト層3と、p型コンタクト層9との表面にそれぞれストライプ状の電極を形成した後、サファイア基板のR面からウェーハを劈開して、バー状にし、さらにストライプ状の電極に直交する方向にレーザの共振面を形成し、共振器長は600μmとする。後は、常法に従い、共振面に誘電体多層膜よりなる反射鏡を形成した後、ストライプ状の電極に平行な位置でウェーハを分割してレーザチップとする。このレーザチップをヒートシンクに設置し、順方向電流320mAのパルス発振を試みたところ、図3(c)に示すような不規則な位置に発光ピークを有するレーザ発振を示し、活性層に不純物をドープしていないレーザ素子に比較して、閾値電流は50%低下し、出力は30%向上した。
【0049】
[実施例2]
実施例1の活性層を成長させる工程において、不純物ガスとしてシランガスの代わりにジエチルジンクを用いて、Znを1×1019/cm3の濃度でドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を25オングストローム、ノンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させて、同じく総膜厚0.1μmの多重量子井戸構造よりなる活性層5を成長させる他は、同様にして、共振器長600μmのレーザ素子を得たところ、活性層に不純物をドープしていないレーザ素子に比較して、閾値電流は25%低下し、出力は10%向上した。
【0050】
[実施例3]
実施例1の活性層を成長させる工程において、不純物ガスとしてシランガス、およびジエチルジンクを用いて、Siを1×1020/cm3、及びZnを1×1019/cm3の濃度でドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を25オングストローム、ノンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させて、同じく総膜厚0.1μmの多重量子井戸構造よりなる活性層5を成長させる他は、同様にして、共振器長600μmのレーザ素子を得たところ、活性層に不純物をドープしていないレーザ素子に比較して、閾値電流は60%低下し、出力は35%向上した。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のレーザ素子は、活性層の1つの井戸層においてIn組成の多い領域とIn組成の少ない領域とを有することにより発光出力が向上する。さらに、活性層中にn型不純物、p型不純物がドープされていることにより、発光出力を低下させることなく閾値を低下させることができる。このため、発光出力が高く閾値の低いレーザ素子を実現することができる。また、本発明のレーザ素子を埋め込みへテロ型、屈折率導波型、実効屈折率導波型等の横モードの安定化を図るレーザ素子とすることにより、さらに閾値電流が下がる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図2】 図1のレーザ素子の活性層付近を拡大して示す模式断面図。
【図3】 本発明のレーザ素子にパルス電流を流した際の発光スペクトルを各電流値で比較して示す図。
【図4】 活性層にドープしたSi濃度と、レーザ素子の閾値電流の低下率との関係を示す図。
【図5】 活性層にドープしたMg濃度と、レーザ素子の閾値電流の低下率との関係を示す図。
【図6】 本発明のレーザ素子の井戸層のエネルギーバンド図。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・バッファ層
3・・・n型コンタクト層
4・・・n型クラッド層
5・・・活性層
6・・・第1のp型層
7・・・第2のp型層
8・・・第3のp型層
9・・・p型コンタクト層
Claims (5)
- インジウムを含む窒化物半導体よりなる井戸層と、井戸層よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体よりなる障壁層とが積層されてなる多重量子井戸構造の活性層を有する窒化物半導体レーザ素子において、
前記活性層は、In X Ga 1−X N(0< X ≦1)よりなる井戸層と、In X ' Ga 1−X ' N(0< X ’≦1、 X' < X )よりなる障壁層が積層され、
前記活性層の1つの井戸層においてIn組成の多い領域とIn組成の少ない領域とを有し、
かつ、前記障壁層中にn型不純物がドープされていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。 - 前記n型不純物は、Siであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
- 前記障壁層中のSi濃度は、1×10 18 /cm 3 〜1×10 22 /cm 3 であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
- 前記活性層に接して、Alを含むp型の窒化物半導体層を有することを請求項1乃至3のいずれか一項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
- 請求項1乃至4に記載の窒化物半導体レーザ素子において、n電極と接するn型コンタクト層は、AlとGaを含むn型の窒化物半導体を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
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