JP3759984B2 - 牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3の精製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3の精製法に関し、詳しくは牛乳に含まれるタンパク質のうちプロテオースペプトンと総称される画分からコンポーネント3を主要成分とする画分を乳清(ホエー)から経済的に、しかも高い純度で精製する方法に関するものである。
本発明によって得られるコンポーネント3画分は高い界面活性力をもち、食品や化粧品、医薬品用の界面活性剤あるいは乳化剤、安定剤として利用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】
牛乳中のプロテオースペプトンは、牛乳タンパク質のうちホエーを95℃から100℃で20分加熱後、pH4.6に調整しても沈殿せず、12%トリクロル酢酸で沈殿する成分として定義されている(Thompson, M. P., Tarassuk, N. P., Jenness, R., Lillevik, H. A., Ashworth, U. S.and Rose, D.: Journal of Dairy Science 48, 159 (1965))。
このプロテオースペプトンは、均一な化学組成をもつものではなく、主にコンポーネント3、5及び8と呼ばれる複数のタンパク質画分から構成されている(Larson, B. L., and G. R. Rolleri. : Journal of Dairy Science 38, 351(1955))。その後、さらにコンポーネント3、5、8-slow,8-fast の4種の成分があると認識されている(Kolar, C. W., and Brunner, J. R., Journal of Dairy Science 53, 997 (1970)) 。このように不均一な成分から構成されているため、今日プロテオースペプトンという用語は単一の成分を示す物質名ではなく、一つの画分名として慣用的に用いられている。
【0003】
このうちコンポーネント3は脂肪球膜を構成する糖タンパク質と抗原性を同じくする成分を多く含み、菅野は、これをラクトフォリンと命名している(Kanno, C.: Journal of Dairy Science 72, 883(1989)) 。最近、本発明者らは、ラクトフォリンを構成する主要糖タンパク質をコードするcDNAの配列を決定することに成功し(Tsukasaki, F., Motoshima, H., Kuriki, H., Minagawa, E. and Kanno, C. 24th In ternational Dairy Congress: Melbourne, Australia, 18th-22nd September,1994, Brief communications and abstracts of posters and invited papers, page 190, Gb21p,1994) 、その配列から推定されるアミノ酸配列が、別の研究者が決定したコンポーネント3の主要糖タンパク質の一次構造(Sorensen, E. S and Petersen, T. E. Journal of Dairy Research 60, 535 (1993)) と完全に一致することを明らかにした。すなわち、プロテオースペプトンのコンポーネント3とラクトフォリンは定義がやや異なるが、物質としては事実上同一の成分を示した用語であるため、本発明ではコンポーネント3とラクトフォリンは同一のものを意味するものとして用いる。
【0004】
本発明のプロテオースペプトン画分からのコンポーネント3の精製法は、ラクトフォリンの精製法と同義として扱う。我々は、すでにこのラクトフォリン画分が極めて高い界面活性力を有し天然の界面活性剤として利用価値が高いことを見出している(特開平4−104830号)。
コンポーネント3の従来的な分画方法は、文献(例えば、Ng, W. C., Brunner, J. R. And Rhee K. C. Journal of Dairy Science 53,987 (1969))にすでに詳しく説明されている。しかし、従来このコンポーネント3を主成分とした画分を脱脂乳やホエーから精製する方法は硫安分画等の煩雑な工程を必要とし、経済的にも非常に不利で、事実上、界面活性剤や乳化剤として利用するには問題があった。また、複雑な精製法を用いると、精製過程で不純物が混入するおそれもあり、より簡便なコンポーネント3の精製法の開発が求められている。なお、本発明のような膜処理による精製法はいまだ報告されていない。その理由は、コンポーネント3の主要な構成タンパク質の分子量が変性下で約27000と17000の分子量の糖タンパク質からなり、他の混在するα−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリンとあまり大きさに差がないことから、事実上分画は困難であると考えられていたためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、コンポーネント3あるいはラクトフォリンを効率的に精製する方法は未だ報告されていなかった。本発明は、従来報告されている方法のように硫安沈殿やカラムクロマトグラフィーなどの方法を用いずに、ホエーから特にコンポーネント3を多く含む画分を精製する方法を開発することを目的とする。
なお、本発明において原料として用いるホエーには制限がなく、例えば酸性ホエーや中性ホエーのみならず、ホエーを粉末化したホエーパウダー、ホエータンパク質を濃縮したホエータンパク質の濃縮物(WPC)、ホエータンパク質の単離物(WPI)なども使用できる。これらは、すべて市販されており、容易に入手が可能である。これらは、いずれもコンポーネント3成分をホエーと同様に含んでおり、適当に水などで還元すれば、ホエーと同じく原料として利用することができる。したがって、本明細書において「ホエー」とは特に断わらない限り、これらを含んだものを意味する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
牛乳やホエーをpH4から5の範囲で加熱(約90℃) した後、遠心分離により凝集物を除去しても、単にプロテオースペプトンを多く含む画分が得られるのみで、コンポーネント3のみを精製することができない。しかし、本発明者らは鋭意努力の結果、単にホエーを限外濾過濃縮装置で濃縮後(タンパク質含量として0.05%(重量/容量)以上)に、90℃前後の加熱をすることによって、コンポーネント3以外の大部分のタンパク質を凝集させて除去し、上清にはコンポーネント3が主要な成分として残り、精製することが可能であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、分画分子量5万以上50万以下の限外濾過膜を用いてホエーを濃縮及び透析することを特徴とする牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3の精製法であり、請求項2に記載の本発明は、限外濾過膜を用いてホエーを透析した後、濃縮液を70〜100℃の温度で10〜60分間加熱処理し、あるいはこれと同等の加熱変性を引き起こす、より高温で短時間の加熱処理を実施し、牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3以外のホエータンパク質を凝集させ、除去することを特徴とする請求項1記載の精製法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、ホエーから効率よく牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3を精製する方法である。ホエーは、チーズ製造やカゼイン製造などの副産物として得られるものであるが、ホエー(狭義)には大きく分けて酸性ホエーと甘性ホエー(あるいは中性ホエー)の2種類がある。酸性ホエーは主にクワルク、カッテージチーズなどの製造やカゼインの製造により生じ、ホエーのpHが低い(通常、pH4〜5)という特徴がある。一方、甘性ホエーはゴーダチーズやチェダーチーズあるいはカマンベールチーズなどの製造によって生じ、ホエーのpHが高い(通常pH6前後)という特徴がある。
本発明のコンポーネント3の精製方法には、これら狭義のホエーのいずれをも用いることができ、同様に前記したホエーパウダー,WPC,WPIなども用いられ、これらの2種以上を併用することも可能である。
【0009】
ホエーの濃縮に際して限外濾過膜を使用するが、分画分子量が1万以上の膜を使用すれば、膜透析を行うことによって、ホエー中に存在する乳糖や低分子量物質を効果的に除去して、高純度のコンポーネント3画分を得ることができる。分画分子量の上限は100万である。それ以上の分画分子量のときは、コンポーネント3も透過してしまい、濃縮は困難となる。さらに、分画分子量が5万以上の膜、好ましくは10万〜50万の膜を用いて膜透析を行うことによって、コンポーネント3以外のカゼイン分解物やαラクトアルブミンやβラクトグロブリンなどの主要な共存タンパク質成分を効果的に除去し、濃縮液側にコンポーネント3を主に含む画分を蓄積させることができる。この場合は、以下に述べる加熱処理は必ずしも必要としない。
分画分子量が1万以上100万以下の膜を使用して膜透析を行った場合は、得られた濃縮液を加熱処理することによって、コンポーネント3以外のタンパク質成分を凝集させ、除くことができる。その結果、より効果的にコンポーネント3を精製することが可能である。加熱温度は70℃以上、通常は70〜100℃である。加熱処理の時間は、通常10〜60分が適当であり、加熱温度が80℃では20分以上、90℃では10分以上が目安とされる。しかし、この加熱処理はタンパク質を熱変性させて凝集化させることが目的であるから、これと同等の加熱変性を引き起こす、より高温で短時間の加熱処理、例えば121℃で数秒程度の加熱処理でもよい。この方法としては、例えばプレート式熱交換器を用いた加熱法等が挙げられる。なお、加熱処理時にpHを3〜10、好ましくは3.0以上5.0未満に調整することが望ましい。このpH調整は、加熱後に行い、その後で遠心等により凝集物を除去することによっても同様の結果が得られる。また、濃縮液のタンパク質濃度が0.05(重量/容量)以上となるように濃縮を行う。
【0010】
コンポーネント3の主要成分は変性下での分子量は3万未満程度であり、ゲル濾過での分子量は13万程度であることが明らかにされている。しかし、ホエー中の天然条件下の存在形態では30万以上の分子量を有していると考えられる。実際に、分画分子量が50万あるいは100万の膜を用いても、コンポーネント3は濃縮液側に蓄積される。
【0011】
【実施例】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1
<コンポーネント3の同定>
チーズ製造、例えばクワルク製造で生じた酸性ホエーを分画分子量5万の膜を使用して濃縮し、濃縮液を非変性下でポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)し、クマーシーブリリアントブルーR250で染色してコンポーネント3の存在を確認した。なお、ゲルの濃度は12.5%であった。図1はその電気泳動写真を示したものである。なお、電気泳動は文献(Davis, B. J. Ann. N. Y. Acad. Sci. 121,404(1964))記載の方法により実施した。目的とするコンポーネント3は、この泳動方法では移動度の比較的小さい位置に容易に確認することができる。この画分は、前記したように、菅野によりラクトフォリンと命名されている。本発明のポリアクリルアミドゲル電気泳動は、すべてこの条件で実施した。
【0012】
実施例2
<限外濾過によるコンポーネント3の選択的濃縮>
クワルク製造で生じた酸性ホエーからの限外濾過によるコンポーネント3の濃縮の例を示す。この酸性ホエーはpH4.23であった。これをさらにイオン交換樹脂法でpHを8.30に置換したpH調整ホエーを準備した。
これら2種類のpHのホエーを平膜型の限外濾過装置で濃縮した結果を図2に示した。なお、実験装置は東洋ソーダ(株)製UF−LMS型UFモジュールであり、分画分子量30万の膜(UF−300PS)を用いた。それぞれのサンプル200mlを流速2.5ml/分で通液し、濃縮液40mlと透過液160mlを得た。
【0013】
得られた透過液は凍結乾燥した。濃縮液はさらに水60mlを加えた後、40mlになるまで濃縮し、凍結乾燥した。得られたそれぞれの凍結乾燥物を電気泳動で比較した(図2)。その結果、pH調整していないホエーでもpH調整後のホエーでも、濃縮液にはコンポーネント3が濃縮されていること、透過液側にはコンポーネント3のバンドが見られないことが明らかとなった。
また、コンポーネント3以外の移動度の大きいαラクトアルブミンやβラクトグロブリンなどのホエータンパク質は濃縮液と透過液の両方に存在することが明らかとなった。この結果から、ホエーを限外濾過膜で濃縮するときにαラクトアルブミンやβラクトグロブリンは透過し、かつコンポーネント3は透過できない分画分子量の限外濾過膜を利用すれば、コンポーネント3を効率的に濃縮できることが容易に理解できる。
図2において、レーン1はpHを調整していない酸性ホエー原液(pH4.2)、レーン2は該酸性ホエーを限外濾過装置で濃縮した時の濃縮液、レーン3は該酸性ホエーを限外濾過装置で濃縮した時の透過液、レーン4はイオン交換法でpHを調整した酸性ホエー(pH8.3)、レーン5は該pH調整酸性ホエーを限外濾過装置で濃縮した時の濃縮液、レーン6は該pH調整酸性ホエーを限外濾過装置で濃縮した時の透過液を示す。レーン3とレーン6の透過液ではコンポーネント3のバンドが見られないことが分かる。
【0014】
実施例3
<コンポーネント3の回収に対する加熱の影響>
実施例2に示したように、コンポーネント3は限外濾過によって効率よく選択的に濃縮できることが明らかとなった。しかし、αラクトアルブミンとβラクトグロブリンを主成分とするコンポーネント3以外のタンパク質も、特に分画分子量の小さい膜を使用して膜透析を行った場合にはやや濃縮されるか、または濃縮されない場合でも平衡状態となり、濃縮液中に混在していることが判明した。
そこで、さらにコンポーネント3の純度を高めるために、濃縮後に90℃、30分の加熱処理を実施し、混在するコンポーネント3以外の成分を変性させ、凝集させた後、それらを遠心分離により分離することでコンポーネント3以外の成分を除去すべく検討した。
【0015】
その結果、分画分子量10万あるいは50万の膜を用いて酸性ホエーを濃縮した後に、濃縮液を90℃で30分加熱し、遠心分離したとき、どちらの膜を用いても加熱処理によって効率よくコンポーネント3以外の画分を除去できることが明らかとなった。電気泳動で求めた結果を図3に示す。
図3において、レーン1は酸性ホエーを分画分子量50万の膜で濃縮後、加熱し、遠心分離後の上澄液、レーン2はレーン1と同様なサンプルの加熱していないもの、レーン3は酸性ホエーを分画分子量10万の膜で濃縮し、加熱していないもの、レーン4はレーン3と同じサンプルを加熱し、遠心分離した上澄液を示す。これらの電気泳動により加熱後、遠心分離を行うことによってコンポーネント3以外のバンドが減少していることが明らかである。
【0016】
実施例4
<コンポーネント3の回収に対する限外濾過膜の分画分子量の影響>
コンポーネント3は、前記したように、変性下で電気泳動すると、分子量は主に27000と17000の比較的小さな分子が主要構成分であること、またゲル濾過では約13万前後の分子量であることが分かっているが、ホエー中の天然状態ではさらに大きな分子量で存在していると考えられ、分画分子量が1万以上100万までの限外濾過膜を使用して濃縮を行ったとき、コンポーネント3は濃縮液側に蓄積することが分かった。すなわち、従来はコンポーネント3は分子量がカゼインやαラクトアルブミンやβラクトグロブリン等と比較的近いものであると考えられていたため、膜による効率的な分画は不可能と考えられていたが、実際には、本実施例で示したように、分画分子量が5万から50万という非常に大きい膜でも、コンポーネント3は膜を透過できずに濃縮できることが明らかとなった。
【0017】
図4は、分画分子量1万、5万、10万、50万、100万の限外濾過膜を使用して濃縮して得たものを加熱処理(90〜95℃で10〜30分間)し、遠心分離して得た上清を電気泳動により分析した結果を示したものである。図中、レーン1は分画分子量1万の膜で濃縮したのち、加熱し、遠心分離して得た上澄液のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、レーン2は分画分子量5万の膜で濃縮したのち、加熱し、遠心分離して得た上澄液のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、レーン3は分画分子量10万の膜で濃縮したのち、加熱し、遠心分離して得た上澄液のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、レーン4は分画分子量50万の膜で濃縮したのち、加熱し、遠心分離して得た上澄液のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、レーン5は分画分子量100万の膜で濃縮したのち、加熱し、遠心分離して得た上澄液のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をそれぞれ示す。
この結果から明らかなように、1万から50万までの分画分子量の膜では濃縮液側に濃縮させることが可能で、透過液側にコンポーネント3は出てこなかった。しかし、分画分子量100万の膜では、コンポーネント3は透過液側にも漏洩したが、ある程度濃縮された。
したがって、効率よくコンポーネント3を限外濾過法で濃縮、精製するには、コンポーネント3が通過できないぎりぎりの分画分子量の膜(例えば、5万から50万の膜)を用いれば、膜透析によって効率よく夾雑物を減少させることが可能であり、しかも膜の詰まりが起こりにくくなり経済的である。
【0018】
実施例5
<加熱時のタンパク質濃度の影響>
クワルク製造で生じた酸性ホエーを濃縮前に加熱しても、凝集物や沈殿物は生成せず、遠心分離を行ってもαラクトアルブミンやβラクトグロブリンは殆ど除去できない。それ故、効率よくコンポーネント3を限外濾過法で精製するには膜透析で濃縮後に加熱処理を行うことが必要である。このとき、どの程度のタンパク質濃度で加熱処理すれば、コンポーネント3成分以外の成分を除去できるかについて検討した。
分画分子量50万の膜を使用して得た酸性ホエー濃縮物を凍結乾燥した。これをタンパク質濃度として0.05、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、2.0%(W/V)になるように水で還元し調製した。なお、タンパク質含量はウシ血清アルブミンを標準タンパク質として色素法によって決定した。これらの濃度に調製した濃縮液を95℃で20分間加熱処理した後、15000rpmで遠心分離後、上澄液を各レーンのタンパク質量がほぼ同じになるようにして、電気泳動で分析した。結果を図5に示す。各レーンのサンプルのタンパク質濃度は次の通りである。
レーン1:加熱前の濃縮液(対照)、レーン2:0.05%(W/V)、レーン3:0.1%(W/V)、レーン4:0.3%(W/V)、レーン5:0.5%(W/V)、レーン6:0.7%(W/V)、レーン7:1.0%(W/V)、レーン8:2.0%(W/V)
図から明らかなように、タンパク質濃度が0.05%以上の濃縮液を加熱処理した場合に、特にβラクトグロブリンを除去できることが分かった。また、0.1%以上のタンパク質濃度では、αラクトアルブミンも除去できることが分かった。
【0019】
実施例6
<濃縮液のpHの影響>
コンポーネント3成分以外の成分を効果的に除去してコンポーネント3を効率よく精製するためには、濃縮液のpHをどのように調整すればよいかを調べるため、濃縮液のpHの影響について検討した。すなわち、分画分子量50万の膜を使用して得た酸性ホエー濃縮物を凍結乾燥した。この酸性ホエー濃縮物は水で膜透析を続けると、アルカリ性(pH8.3)になった。これをタンパク質濃度0.5%(W/ V)になるように各種緩衝液で調製し、これらの濃縮液を煮沸(95〜100℃)で20分間加熱処理し、15000rpmで遠心分離後、上澄液をタンパク質量として同じになるようにしてから、電気泳動で分析した。結果を図6に示す。図中、各レーンのサンプルのpHは次のとおりである。
レーン1:pH3、レーン2:pH4、レーン3:pH5、レーン4:pH6、レーン5:pH7、レーン6:pH8、レーン7:pH9、レーン8:pH10
図から明らかなように、どのpH値においてもαラクトアルブミンやβラクトグロブリンなどは除去可能であると考えられる。さらに、よく観察すると、コンポーネント3よりも移動度の小さい高分子の糖タンパク質は酸性下での加熱処理によって除去することができることが分かる。遠心分離後の上澄液は、pHが3.0以上5.0未満のとき透明度が高かったが、アルカリ側で加熱処理すると、上澄液が白濁し、変性したタンパク質が多くなったものと考えられる。それ故、加熱時のpHは3.0以上5.0未満が望ましい。なお、加熱後にpH調整を行い、その後で遠心分離等により凝集物を除去しても同様の結果が得られる。
【0020】
実施例7
<加熱温度の影響>
コンポーネント3を効率よく精製するためには、加熱処理の温度をどの程度にすればよいか検討した。そこで、分画分子量50万の膜を使用して得た酸性ホエー濃縮物を凍結乾燥した。これをタンパク質濃度0.5%(W/V)になるように調製した(HClを用いてpH4.0に調整した。)次いで、濃縮液を40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または煮沸(95〜100℃)の温度で20分間加熱処理した後、15000ppmで遠心分離後、上澄液をタンパク質量として同じになるように調整後、電気泳動で分析した。その結果を図7に示す。なお、対照として加熱処理をしないものを用いた。図中、各レーンのサンプルの加熱温度は次の通りである。
レーン1:加熱前の濃縮液(対照):レーン2:40℃、レーン3:50℃、レーン4:60℃、レーン5:70℃、レーン6:80℃、レーン7:90℃、レーン8:煮沸(95〜100℃)
その結果、90℃で20分に相当する加熱処理でかなりの除去が可能であると考えられた。しかし、加熱処理温度が95〜100℃であれば、さらに効率よくコンポーネント3以外の成分を除去できることが明らかとなった。
【0021】
実施例8
<加熱時間の影響>
コンポーネント3を効率よく精製するためには、加熱処理の時間をどの程度とすればよいか検討した。実施例7と同様な濃縮液を煮沸(95〜100℃)で1分から60分加熱した。次いで、15000rpmで遠心分離後、得られた上澄液を各レーンのタンパク質量が同じになるようにして、電気泳動で分析した。その結果を図8に示した。各レーンのサンプルの煮沸(95〜100℃)での加熱時間はレーン1:未加熱(0分間)、レーン2:1分間、レーン3:5分間、レーン4:10分間、レーン5:15分間、レーン6:20分間、レーン7:25分間、レーン8:30分間、レーン9:40分間、レーン10:50分間、レーン11:60分間である。
図から明らかなように、95〜100℃で5分間以上加熱すれば、コンポーネント3を効率的に精製できることが分かる。この結果と実施例7の結果とを併せて判断すると、90℃で10分程度の加熱処理が適当である。なお、当然のことながら、この加熱処理はタンパク質を熱変性させるためであるから、これと同等な変性を引き起こすことができる、より高温で短時間の加熱(例えば121℃、数秒間)でも同様の結果が得られることは明白である。
【0022】
実施例9
<酸性ホエーからのコンポーネント3画分の生産>
上記の各実施例の結果に基づいて、実際にホエーからコンポーネント3を精製した。すなわち、クワルク製造で生じた酸性ホエー270kg(pH4.3)を50〜55℃に加温し、これを限外濾過装置(α−ラバルUFR1/2、フォローファイバーPM100、分画分子量10万)で濃縮、加水による膜透析を行い、総量36kgまで濃縮した。次いで、逆浸透膜(Reverse Osmosis、RO)(DDS,HR95) で5kgまで濃縮した後、煮沸(95〜100℃)で30分間加熱処理し、3000rpmで15分間遠心分離して沈殿物を除去した。なお、加熱処理時の濃縮液のpHは8.3に調整した。得られた上清を凍結乾燥してコンポーネント3画分を64g得た。
【0023】
実施例10
<酸性ホエーからの透明度の高いコンポーネント3画分の生産>
実施例9で得られたコンポーネント3は水に溶解したとき白濁しているので、この例では透明度の高いコンポーネント3の製造例を示す。酸性ホエー363kgを50〜55℃に加温して限外濾過装置(α−ラバルUFR1/2、フォローファイバーPM500、分画分子量50万)で濃縮、加水による膜透析を行い、総量22kgまで濃縮した。次いで、逆浸透膜(RO)(DDS,HR95)で5kgまで濃縮した後、撹拌しながら6規定塩酸を用いてpH4.0に調整した。それから煮沸(95〜100℃)で30分間加熱処理し、3000rpmで15分間遠心分離して沈殿物を除去した。得られた上清を凍結乾燥して透明度の高いコンポーネント3画分を54g得た。
【0024】
実施例11
<実施例9および実施例10で得たコンポーネント3画分の分析>
実施例9および10で製造したコンポーネント3画分をポリアクリルアミド電気泳動で分析した結果を図9に示した。図中、レーン1が実施例9で得たコンポーネント3画分であり、レーン2が実施例10で得たコンポーネント3画分である。
【0025】
実施例12
<中性ホエーからのコンポーネント3の精製例>
これまでの実施例では酸性ホエーからのコンポーネント3の精製例のみを示したが、この例では中性ホエーからも同様な方法でコンポーネント3を精製できることを示す。中性ホエーを用い実施例9と同様な方法で処理して得たコンポーネント3画分のポリアクリルアミドゲル電気泳動での分析結果を図10に示す。
図から明らかなように、得られたコンポーネント3画分の純度は、中性ホエーからの場合も酸性ホエーからの場合とほぼ同様であった。
【0026】
【発明の効果】
本発明によって、ホエー中のコンポーネント3を主要成分とする画分を試薬等を殆ど用いずに、物理的な方法のみで高度に精製する実用的な方法が提供される。コンポーネント3、すなわちラクトフォリンは非常に高い乳化性があることがすでに分かっているが、このものを本発明によって初めて経済的に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の結果を示す電気泳動写真である。
【図2】 実施例2の結果を示す電気泳動写真である。
【図3】 実施例3の結果を示す電気泳動写真である。
【図4】 実施例4の結果を示す電気泳動写真である。
【図5】 実施例5の結果を示す電気泳動写真である。
【図6】 実施例6の結果を示す電気泳動写真である。
【図7】 実施例7の結果を示す電気泳動写真である。
【図8】 実施例8の結果を示す電気泳動写真である。
【図9】 実施例11の結果を示す電気泳動写真である。
【図10】 実施例12の結果を示す電気泳動写真である。
Claims (4)
- 分画分子量5万以上50万以下の限外濾過膜を用いてホエーを濃縮及び透析することを特徴とする牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3の精製法。
- 限外濾過膜を用いてホエーを透析した後、濃縮液を70〜100℃の温度で10〜60分間加熱処理し、あるいはこれと同等の加熱変性を引き起こす、より高温で短時間の加熱処理を実施し、牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3以外のホエータンパク質を凝集させ、除去することを特徴とする請求項1記載の精製法。
- 限外濾過膜を用いてホエーを透析した後、濃縮液を70〜100℃の温度で10〜60分間加熱処理し、牛乳プロテオースペプトンのコンポーネント3以外のホエータンパク質を凝集させ、除去することを特徴とする請求項1記載の精製法。
- 加熱処理の前または後にpHを3.0以上5.0未満に調整した後、コンポーネント3以外のホエータンパク質を凝集させる請求項2または3記載の精製法。
Priority Applications (1)
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