JP3753746B2 - 農薬組成物 - Google Patents
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Description
【発明の目的】
本発明の目的は手軽に処理でき散布者や環境に悪影響を与えず、しかも生物効果及び薬害の面でも良好な結果を与える農薬組成物を提供することにある。
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明は、水田への拡散性及び溶解性が向上した、水田投げ込み用農薬組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、水田用農薬はその使用の便のために、種々の剤型、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、粒剤等に製剤され、水面又は稲体に散布されている。
【0004】
しかし、粉剤や水和剤は、粉立ちによる使用者や生産者の健康上の問題や環境汚染の問題があり、乳剤の場合は、有機溶媒の毒性の問題や火災の危険がある。粒剤はこういった欠点は少ないが、物流や経済性の面で不利であるばかりでなく、活性成分によっては十分な防除効果が得られない場合も多い。
【0005】
これらのことから、最近、フロアブル(以下FLと略す)やドライフロアブル(以下DFと略す)といわれる新しい剤型が開発されてきた。これらは水に稀釈して、水溶液、懸濁液あるいは乳化液として使用される。これらFLやDFといわれる剤型は、粉立ちがなく流動性があるという点で水和剤の上記の欠点を解決した剤型といえるが、従来の剤型を含めこれらの製剤を散布するためには、まず水に溶解又は分散させたあとで、水田に入って散布器具を用いて散布することになる。このように稀釈用の容器と散布器具を準備し、水田に入って散布することは、小規模な兼業農家にとって、経済的負担や安全面の不安ばかりでなく、労力的にも時間的にも負担は大きい。とくに、高齢者と女性に依存することの大きい最近の農家にとっては、このような負担は耐え難いものとなっている。
【0006】
このため、最近、散布に特殊な器具を必要とせず、手軽に散布できる方法として、除草剤のFLをプラボトルに入れ、これをキャップ部に開けた小孔から水田中に振り込む方法が開発された。この方法によれば、散布に特殊な器具を必要とせず、手軽に散布できる利点があるが、散布に際しては依然として水田に入る必要があり労力を要することや、散布方法や風向きによっては薬液の飛沫が作業者にかかる等の欠点があるため、必ずしも、従来法の欠点を完全に除去し得たとは言い難い。また、使用済みの空き瓶の処理も安全面や環境上の問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
一方、水面浮遊性粒剤としては、(1)水浮遊性の担体を用いて浮遊させるもの(特公昭48−15613号公報,同47−1240号公報)、(2)特定の吸水能を有する軽石や蛭石を担体とするもの(特公昭44−8600号公報)、(3)揮散性殺虫化合物を用いた粒剤(特公昭49−11421号公報)、(4)カーバメート系農薬活性成分と、その水に対する分配係数が102 以上の有機化合物を固体担体に保持させたもの(特開平2−174702号公報)、(5)固体担体と、殺菌剤、除草剤又は植物成長調節性の有効成分と、油とからなる組成物(特開平3−193705号公報)等の技術が開示されている。しかしながら、これらは散布法の点においては従来の粒剤と何らかわることなく、散布労力の軽減にはなりえなかった。
【0008】
さらに、最近、有効成分に界面活性剤及び発泡剤を加えた水田用除草剤(特開平3−128301号公報)や、有効成分、界面活性剤、並びに結合剤を含有する水田除草用錠剤又はカプセル(特開平3−173802号公報)に関する技術が開示された。これらの製剤を処理するに当たっては、散布者の安全や環境保護の面から、ポリビニルアルコール(以下PVAと略す)のフィルムのような水溶紙にこれらの製剤を包み、これを水田中に投げ入れるのが有力な方法となる(特開平4−226901号公報)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これらの技術は、簡単に水田除草剤の処理ができるという利点はあるものの、これら固形製剤を水中に投じると、製剤は土壌表面に沈降し、ここで発泡して有効成分を田面水中に分散させることになるため、溶け残った原体粒子は投下地点の周辺に沈降し、また、溶解した有効成分も投下地点近傍の土壌表面近くで高濃度の溶液を形成するため、土壌に吸着され易く、有効成分の水溶解度がかなり高い化合物であっても投下地点近傍で主剤濃度が高くなり、圃場条件、気象条件等によっては有効成分の不均一による薬害や効力のムラが生じ易いという欠点があった。
【0010】
この点を解決するためには、発泡剤の増量、酸及びアルカリの種類又は配合比率を変える、固形剤の硬度を下げる、固形剤に発水性を持たせる、固形剤を浮き易い形状に変える、浮き易い原料を用いる等の方法により、固形剤を一旦水面に浮かせ、水面を拡がらせた後、徐々に崩壊分散させて速やかに有効成分を溶解拡散させるのが有力な手法であると考えられる。しかしながら、浮遊性とした固形剤をPVAのフィルムに包んで密閉した組成物を水田に投げ入れると、あらかじめ袋中にあった空気及び、発泡剤を含有する場合にはフィルム直下での発泡のため、フィルムがドーム状となって固形剤の上を覆い、固形剤の水面での拡がりを阻害し、結果として有効成分の良好な拡散が達成されにくいという欠点がある。一方、他の水溶性フィルム、例えばフレキシーヌ(第一工業製薬(株)製の水溶性フィルム)やプルランフィルムの場合にはこのようなドーム現象は見られないが、価格、供給性、フィルム強度等に問題があり使用しにくいという欠点がある。
【0011】
そこで、本発明者らは、PVAフィルムを用いて、有効成分の偏析による薬効不足や薬害の懸念が少ない水田投げ込み用製剤の開発を目指して鋭意検討を重ねた。
【0012】
その結果、水面浮遊性で、かつ水中で容易に崩壊分散するように調製した農薬固形剤を、穴を空けたPVAフィルムに包装し、それを水田中に投げ込めば、前述したようなドームは生成せず、フィルムは短時間のうちに溶解消失するため、水面に浮上した固形剤は水面で拡がった後徐々に崩壊分散し、水中に懸濁する。このため、有効成分は速やかに溶解拡散し、局所的な有効成分の偏在を防ぐことができるので、薬害や生物効果のフレがはるかに軽減され、しかも省力性、安全性の面でも従来の剤型に比べて格段に優れたものになることを見出し本発明を完成した。
【0013】
【発明の構成】
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水面浮遊性で、水面で崩壊分散し、水中に容易に溶解又は懸濁する農薬固形剤を、穴をあけたポリビニルアルコールのフィルムに包装した水田投げ込み用農薬組成物である。
【0015】
本発明に使用される農薬有効成分は、殺虫剤や殺菌剤の場合、稲体に吸収されて移行する性質のあるものが望ましいが、浸透移行性がなくても、水中又は水面に生息する虫或は水中や水面から感染する菌には有効である。いずれの場合も、薬害の少ない化合物であることが望ましい。除草剤の場合、その本来の性質や使用時期の点から、特に薬害のない化合物を選択することが望ましい。
【0016】
有効成分は、水溶性でも水に難溶性でも、また固体でも液体でも構わない。一般的には固体の化合物の方が本発明に適合し易いが、液体原体も適当な方法で固形化できれば十分に適用できる。本発明の固形剤には2種以上の有効成分を含有することも可能である。2種以上の有効成分を同時に処理する場合、配合すると分解が生じたり、崩壊分散が劣化したりする場合がある。このような場合、2種以上の製剤を別々に作り、これらを混合することにより解決できるので、従来配合禁忌とされていた配合剤も同時処理が可能となる。
【0017】
本発明に使用される有効成分は、殺虫剤では、好適には、イソキサチオン、プロパホス、DEP、ダイアジノン、エチルチオメトン、ホルモチオン、ジメトエート、モノクロトフォス、アセフェート、カルボスルファン、チオシクラム、カルタップ、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、カルバリル、ブプロフェジン、BPMC、PHC、イミダクロプリド、TI304等の浸透移行性殺虫剤、シクロプロトリン、エトフェンプロックス等のイネミズゾウムシやイネドロオイムシのような水中又は水面近くに生息する害虫に有効な合成ピレスロイドを挙げることができる。
【0018】
殺菌剤では、好適には、プロベナゾール、イソプロチオラン、IBP、トリシクラゾール、ピロキロン等のいもち剤、フルトラニル、メプロニル、MON240、S658等のもんがれ剤、テクロフタラムなどを挙げることができる。
【0019】
除草剤では、好適には、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ブロモブチド、メフェナセット、ベンスルフロンメチル、ブタクロール、プレチラクロール、ベンチオカーブ、CNP、クロメトキシニル、ダイムロン、ビフェノックス、ナプロアニリド、オキサジアゾン、ベンタゾン、モリネート、ピペロホス、ジメピペレート、エスプロカルブ、ジチオピル、イマゾスルフロン、ベンフレセート、ACN、シンメスリン、MCPB、キンクロラック、ピラゾスルフロンエチル、KPP314、N−[2−(3−メトキシ)チエニルメチル]−N−クロロアセト−2,6−ジメチルアニリド(NSK850)、1−(2−クロロベンジル)−3−(α,α−ジメチルベンジル)ウレア(JC940)等の水田除草剤を挙げることができる。
【0020】
植物成長調節剤では、好適には、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、トリアペンテノール等を挙げることができる。
【0021】
水面で浮遊して広範囲に拡がった後、有効成分ができるだけ速く田面水中に溶解拡散し、効力を発揮するためには、たとえ水に対する溶解度が高いものでも、固体の場合、ある程度微粉砕しておくほうが良い。水に対する溶解度が低いものでは特に微粉砕が必要である。このため、ハンマーミル、ジェットミル等による乾式粉砕やサンドミル又はアトライター等による湿式粉砕を行うほうが望ましいが、湿式粉砕を行う場合には、成形機にかけにくい。特に、発泡剤を配合する場合は、水の存在下で発泡してしまうので、予め乾燥しておく必要がある。乾燥は湿式粉砕したスラリーをそのままスプレードライヤー等を用いて乾燥してもよいが、他の助剤の一部又は全部と予め混合し、また必要であれば造粒するなどしたのち乾燥しても良い。得られた乾燥粉末又は粒は成形機を用いて本発明の固形剤に成形する。液状原体の場合は、必要なら適当な溶媒や乳化剤に溶解し、適当なキャリアーに吸収させて固形化すれば、固体原体と同様に扱うことができる。
【0022】
本農薬固形剤は、水面浮遊性で、水面で崩壊分散し、水中に容易に溶解又は懸濁することにより、できるだけ早く水田全体に拡散する必要がある。長期間にわたり有効成分が局在すると、効力不足や薬害などの不都合を生じる。
【0023】
水田に投入後、長時間水中に沈降していると、沈降中に、固形剤の崩壊分散によって有効成分が投下地点の周辺に沈降したり、有効成分が溶解したりするので、投下地点周辺の土壌表面の有効成分濃度が高くなり、水田全体に拡散させるという本発明の目的を達成し得ない。
【0024】
このため、後述の試験例に記載の方法による水面浮遊率が80%以上であることが望ましい。
【0025】
この点、発泡剤、拡展剤、発水剤は、水田に投入後、短時間の内に水面に浮上し、水面で浮遊して広範囲に拡がるという点で助剤として重要である。
【0026】
発泡剤は、主に固形剤を水面に浮上させ、主剤を田面水中に分散させるために使用され、水中に投入した直後から短時間内に強く発泡する必要がある。発泡剤の量が不十分の場合や、十分量の発泡剤を配合してあっても、固形剤の硬度が高すぎる場合又は発泡剤組成の選択が不適当な場合には、長時間にわたって弱い発泡が続き、固形剤を水面に浮上させる浮力が不十分となり、結果として固形剤は水面に浮上しない。
【0027】
このため、本発明において発泡剤を配合する場合には、後述の試験例に記載の方法による発泡量が、固形剤2g当たり50ml以上であることが望ましい。
【0028】
発泡剤は、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸等の水溶性の固体酸を、固体のまま混合して使用する。
【0029】
拡展剤としては、ポリカルボン酸及びポリスルホン酸型の高分子界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンのアルキルエステル等の種々の界面活性剤、パラフィンオイルやシリコンオイル等のオイル類、松脂等の樹脂類、樟脳、ナフタレン等を使用できる。
【0030】
発水剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸等の高級脂肪酸、シリコンオイル及びその誘導体、フッソ系界面活性剤、カチオン界面活性剤、疎水性シリカ等を使用できる。
【0031】
崩壊分散剤、湿潤剤は、浮遊した固形剤から有効成分をぼた落ちさせず、水面で崩壊分散し、水中に容易に溶解又は懸濁させるという点で重要である。特に水に難溶性の化合物の場合、有効成分粒子が長時間水面に浮遊すると風に吹き寄せられ、有効成分の局在が加速されるので、水面に広がった主剤粒子は短時間に水中に懸濁されることが望ましい。また、必要であれば適当な増量剤や補助剤を配合し、水に濡れて容易に崩壊分散するような製剤とする。
【0032】
崩壊分散剤としては、例えばリグニンスルホン酸塩、(アルキル)ナフタレンスルホン酸塩及びその縮合物、フェノールスルホン酸塩及びその縮合物、スチレンスルホン酸塩の縮合物、マレイン酸とスチレンスルホン酸との縮合物の塩、アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸縮合物の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェートの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤が使用される。これら分散剤は、湿潤剤としても有用なものが多い。分散剤や湿潤剤はこれらに限らず、ノニオン性やカチオン性あるいは両性イオン性のものであっても適当なものを使用できる。また、澱粉、カルボキシメチルセルロース及びその塩、カルボキシメチル化澱粉及びその塩、ポリビニルピロリドンの架橋体、非結晶セルロース、高吸水性樹脂等の水を吸収して膨潤する性質を有するものも崩壊分散剤として有用である。
【0033】
増量剤としては、ベントナイト、タルク、クレー、珪藻土、無晶形二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の一般的に農薬のキャリヤーとして用いられる鉱物質微粉の他に、グルコース、砂糖、乳糖等の糖類、カルボキシメチルセルロース及びその塩類、澱粉及びその誘導体、結晶セルロース、木粉等の有機物、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム等の水溶性無機塩類、尿素等を使用することができる。
【0034】
固形剤中には、必要に応じて、上記のような発泡剤、拡展剤、発水剤、崩壊分散剤、湿潤剤、増量剤の他に、滑沢剤、結合剤、粒子成長防止剤、安定剤等その他の成分を配合する。
【0035】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのエーテル、蔗糖の脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライド等を使用できる。
【0036】
結合剤としては、低分子量のデキストリンやポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等を使用できる。リグニンスルホン酸塩は分散剤と兼用でき、比較的安価なため増量剤としても用いることができるので特に有用である。
【0037】
固形剤が浮上するかどうかは、有効成分の溶解性、有機酸及び炭酸塩の種類とその配合量等により異なるので、一概にはいえないが、一般的には有効成分が難溶性化合物の方が浮かせ易い。また、発泡力が強い方が浮き易いから、発泡剤が水中で早く反応した方が良い。このため、有機酸は、水に溶け易いクエン酸やリンゴ酸の方が、コハク酸やフマール酸より浮かせ易いし、炭酸塩より重炭酸塩の方が浮かせ易い。また、発泡剤を微粉砕しておくと、発泡力が強くなり浮かせ易くなる。更に、有機酸と炭酸塩の配合比率は、丁度中和当量とするより、若干有機酸の量を多めにする方が発泡力は強くなる。しかし、一方で、水溶性の高い有機酸や重炭酸塩を多く配合したり、微粉砕すると、製剤の経時安定性が保持しにくくなるので、発泡力と経時安定性との兼ね合いで、妥当な接点を見出す必要がある。分散剤やその他の助剤は、水溶性の結晶質のものを用いるより、軽く、かつ水に濡れにくいものを選択する方が好ましい。この意味で、鉱物質や、砂糖、塩化カリウム等を用いるより、デンプン誘導体や非結晶セルロース、無晶形二酸化珪素等を用いる方が浮かせ易い。また、発生した泡を、固形剤の周囲に細かく付着させておくことも固形剤に浮力を持たせる意味で重要で、界面活性剤は起泡性の良いものを選択する方が良い。この意味で、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを配合すると浮かせ易いが、消泡作用のあるアセチレン系界面活性剤を配合すると浮かせにくくなる。滑沢剤は一般に成形する直前に添加し混合することが多いので、固形剤の表面に密に分布する。従って、親水性のものを用いると浮上させにくくなる。この意味で、PEGやプロピレングリコールの誘導体、グリセリンエステル等親水性の滑沢剤を用いるより、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム、タルク等疎水性の滑沢剤を選択する方が望ましい。
【0038】
固形剤の形状も、浮き易さと大いに関係があり、一般に厚みのあるものより薄いものの方が浮かせ易い。
【0039】
以上、一般的傾向を述べたが、固形剤を浮かせられるかどうかは、これら種々の要因の総合的な結果である。実施例にも示すように、例えば、コハク酸や炭酸ナトリウムを用いると固形剤を浮かせられなくなるということではなく、また、全く同一の処方でも錠剤の物理性によって浮くことも沈むこともあり得る。従って、本発明の固形物を得るためには、これらの要因を考慮にいれて、総合的な結果として固形剤を浮上させるように調製すべきである。
【0040】
以上の有効成分粉砕物及び助剤は、混合したのち、適当な成型機を用いて固形に製剤する。成形は特に発泡剤を含有する場合乾式で行なう必要がある。剤型は、球状、フレーク状、板状等でも良いが、浮かせにくい、粉化し易い等の欠点があるので、錠剤やブリケット等の塊状剤が好ましい。錠剤は打錠機により、またブリケットはブリケッティングマシンにより得ることができる。
【0041】
固形剤の重量は、特に限定はないが、好適には1個当たり0.1gから10g程度、より好適には0.3gから5g程度である。重過ぎると袋ごと土中に埋まったり、十分な拡展が見られなかったりする。又、軽過ぎると生産性や小分け性が低下する。
【0042】
固形剤の大きさは、包装するPVAフィルムに空ける穴からこぼれ落ちない大きさでなければならない。固形剤の最短径が穴の直径より大きいことが必要だが、後述するようにフィルムに空ける穴は1〜5mm程度が好適であるので、5mm程度以上あると良い。
【0043】
固形剤の形状は、球、円柱、直方体、立方体、卵状、アーモンド状、たどん状、ドーナツ状、釣り鐘状等いずれでも良い。
【0044】
本発明においては、固形剤は、穴を空けたPVAフィルムに包装する。PVAフィルムに包装した端部はヒートシールする。
【0045】
フィルムの材質は冷水に溶けやすく、水溶液が高粘度の糊状にならないものが望ましい。この意味で重合度は比較的低く(重合度1800程度)、ケン化度も比較的低い(ケン化度が80台のもの)ものが望ましい。フィルムの厚みは薄いほど溶解は早いが、フィルム強度や小分け作業性の面から30〜60μm程度のものが好ましい。又、ビニルアルコールにカルボン酸を共重合させるなどして溶解性を高めたフィルムもPVAフィルムの1種であり、本発明に好適に使用できる。
【0046】
PVAフィルムの穴は1個の大きさが1〜5mm程度が好適である。小さ過ぎると水中に投入したときに塞がってしまって目的を達しない。大き過ぎると穴から農薬が漏れたり輸送中にその部分から破袋したりする。この程度の穴であれば、農薬固形剤が漏れることなく、強度的にも支障とならない。
【0047】
穴の形状は、丸でも、三角でも、四角でも、あるいは多角形でもよい。穴の数は袋の両面に各1個乃至数個必要である。片面だけに穴を空けてもそれなりの効果はあるが、水田に投げ入れられた場合にどの向きに落ちるかわからないため、穴のない面が上向きに落ちた場合には前述のドーム現象を防ぐことができない。具体的には、約8×8cmの袋を作る場合に、袋の両面に1〜5mm程度の穴を各1〜9個程度空ければ十分である。
【0048】
包装した1包みの重量は約30〜120gが最も投げ込み易い。この程度の重さであれば、子供、女性、高齢者でも容易に15m程度以内の目標とした地点に投げ込むことが可能である。これ以上重いと、投げ込むのが苦痛となり、広い面積を処理するのは容易ではない。また、これ以下では、風の影響を受けて目標とした場所に到達しない。
【0049】
かくして得られた分包は、紙袋、樹脂袋あるいはアルミ箔貼り合わせ樹脂袋等の袋や箱で外装する。ただ、PVAフィルムは水に濡れると破れてしまうから、適当な防水加工を施した外装を用いるべきである。また、発泡剤を配合する場合には、吸湿によって反応し、発泡しなくなる場合があるので、アルミ箔を貼り合わせた包装が望ましい。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明の実施態様をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【実施例1〜5】
表1に示した原体プレミックスを混合し、ジェットオーマイザー0101型(セイシン企業(株)製)を用いて、空気圧6kg/cm2 、供給速度1.5kg/hrで2回粉砕した。粉砕品に発泡剤及び助剤部分を加え、混合したのち、ハンマーミルで粉砕した。粉砕物をローラーコンパクターミニ型(フロイント産業(株)製)を用いて乾式造粒し、粗砕して開口径2mmのふるいを通して整粒した。得られた造粒物に滑沢剤を加えて混合し、打錠機を用いて直径1cm、1錠の重さ0.5gに打錠した。得られた錠剤はベンスルフロンメチル0.5%、ピリブチカルブ6.0%、ダイムロン4.5%を含有した。得られた錠剤を表1の穴を空けたPVAフィルムに各50gずつ小分けした。
【0052】
【実施例6〜10】
表3に示した原体プレミックスを混合し、ジェットオーマイザー0101型(セイシン企業(株)製)を用いて、空気圧6kg/cm2 、供給速度1.5kg/hrで2回粉砕した。粉砕品に発泡剤成分と助剤部分を加え、混合したのち、ハンマーミルで粉砕した。粉砕物をブリケッティングマシンK102型(太陽鉄工(株)製)を用いて長さ24mm、幅13mm、厚さ7mm、1個の重量2.0gのアーモンド錠に成形した。得られた成形物はベンスルフロンメチル0.5%、ダイムロン4.5%、メフェナセット10.0%を含有した。得られたブリケットを実施例1〜5と同様に小分けした。
【0053】
【実施例11〜14】
表5に示した原体プレミックス部分、発泡剤部分、助剤部分を量りとり、混合したのち、ハンマーミルで粉砕した。粉砕物をローラーコンパクターミニ型(フロイント産業(株)製)を用いて乾式造粒し、粗砕して開口径2mmのふるいを通して整粒した。得られた造粒物に滑沢剤を加えて混合し、打錠機を用いて直径1cm、1錠の重さ0.5gに打錠した。得られた錠剤はピロキロン24%を含有した。得られた錠剤を表3のPVAフィルムに各50gずつ小分けした。
【0054】
【比較例1〜12】
表2に示すように、実施例1〜12と同じ錠剤をそれぞれ穴を空けていないPVAフィルムに小分けした。
【0055】
【比較例13〜18】
表2、4、5に記載した処方により、実施例と同様にして水面非浮遊性の発泡錠剤を調製した。得られた錠剤を、それぞれ穴の空いたPVAフィルムと穴を空けていないPVAフィルムに50gずつ小分けした。
【0056】
【試験例】
実施例1〜12及び比較例1〜18の錠剤及びブリケットの物理性及び投下地点と周辺部の濃度比を以下の方法により測定した。結果を各表に記した。
【0057】
[発泡量の測定方法]:
図1に示す装置の丸底フラスコに20℃の水10mlを入れた。この中に固形剤2gを投入し、直ちに栓をして発生するガスを導管を通じて、20℃の水を満たした捕集管に受け、5分後に発生したガス量(ml)を読みとった。この際、発生する炭酸ガスは水に溶けるうえ、水温によって溶解度が異なるので、誤差を避けるために、水温、フラスコに入れる水量、ならびに発生するガスを受ける導管の太さ及び導管先端の位置には特に注意が必要である。
【0058】
[水面浮遊率の測定法]:
1×1mの樹脂製パレットに25℃の水を5cmの深さに入れた。固形剤50個を高さ1mの位置より一時に投入し、投入後5分間に浮上する固形剤の数を数えた。浮上した固形剤の数を2倍して、水面浮遊率(%)を求めた。この際、浮上した固形剤は順次崩壊分散して形骸をとどめなくなるので、浮上するに従い、数え落としのないように順次数えることが必要である。
【0059】
[投下地点と周辺部の濃度比の測定法]:
実施例1〜12及び比較例1〜18により得た錠剤及びブリケットの分包を、図2に示すように区取りした水深5cmの水田のA地点に落とした。7日後にA及びB,C地点の土壌を直径7cm,厚さ1cm分採取した。B及びC地点の土壌は均一に混合した。A地点及びB+C地点に残存する有効成分濃度をHPLC法で分析して求めた。各有効成分ごとにA地点の濃度をB+C地点の濃度で除して両地点の濃度比を求めた。
【0060】
表1乃至5に示したように、本発明の水面浮遊性の固形剤を穴を空けたPVAフィルムに包装したものは、何れの有効成分も、投下地点と周辺部の濃度比は2以下であり、有効成分が区内に均一に拡散しているが、穴を空けていないPVAフィルムに包装したもの及び水面非浮遊性の固形剤を穴を空けたPVAフィルムに包装した比較例の固形剤は投下地点における有効成分濃度が明らかに高く、拡散が不十分であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【発明の効果】
本発明の農薬組成物を水田に投げ込むと、袋の中には上面及び底面の穴から水が流れ込み、ただちに発泡が始まる。同時に袋中の空気及び発生したガスは上面の穴から抜けるため、上面のフィルムはドーム状にならずに水面にぬれることになる。このため、フィルムは短時間に溶解し、固形剤はフィルムに妨げられることなく、水面でバラバラに拡展することができる。
【0067】
本発明の農薬組成物は、畦畔等から容易に投げ込むことができ、きわめて簡単、手軽で、かつ安全に農薬を処理することができる。又、水田中で有効成分の偏在が生じにくいため、生物効果のフレや薬害の懸念を従来の投げ込み製剤に比べて格段に軽減できる。しかも、容器はガラスやプラボトルを必要とせず、紙や樹脂あるいはアルミ箔貼り合わせ袋や箱が使用できるので用済み後は焼却処理ができる。
【0068】
このように、本発明は散布者や環境に危害を与えない、薬害の軽減された農薬組成物を提供するものであり、安全性と省力化が求められている農薬及び農薬業界の発展に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発泡量測定装置を示す。
【図2】 水田試験区画図を示す。
Claims (3)
- 水面浮遊性で、水面で崩壊分散し、水中に容易に溶解又は懸濁する農薬固形剤を、穴をあけたポリビニルアルコールのフィルムに包装した水田投げ込み用農薬組成物(但し、固形剤の最短径は、穴の直径より大きい)。
- 農薬固形剤が1個当たり0.1〜10gの錠剤又はブリケットである、請求項1に記載の農薬組成物。
- 農薬固形剤が発泡剤を含有する、請求項1又は2に記載の農薬組成物。
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-
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