JP3735729B2 - 改質セルロース再生繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実用に耐える強度を有し、且つカチオン染料に対し優れた染色性と堅牢度を具備した改質セルロース再生繊維に関し、特に濃色染色物の洗濯堅牢度の洗濯液汚染を改良する技術に関するものである。得られる改質セルロース再生繊維は単独またはアクリル繊維等のカチオン染料可染性の繊維と混紡、交編織して使用してもカチオン染料で染色したとき、同色且つ均一に染色される。また、得られる改質セルロース再生繊維を他のセルロース系繊維、例えば通常のセルロース再生繊維、綿、麻等と混紡あるいは交編織して使用しても、これらの繊維はカチオン染料に対する染色性がほとんどなく、明確に染め分けができる。従って、上述の性能を発揮する糸,編織物,不織布,製紙等の分野にも広く利用することができる繊維を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、セルロース再生繊維は、直接染料あるいは反応性染料等に対しては良好な染色性を示すが、カチオン染料に対してはほとんど染色性を示さない。カチオン染料はその色相が鮮明なことからセルロース系繊維に適用しようとする試みは古くからなされている。例えば、繊維学会誌(Vol.34、No.1、1978、71〜77頁)にはビスコースレーヨンにメタ過ヨウ素酸ナトリウムを作用させてセルロースを酸化させ、ジアルデヒドセルロースとした後、亜硫酸水素ナトリウムを付加させることによりスルホン酸基を導入し、さらに、残存水酸基を各種のイソシアネートによりウレタン化して疎水基を導入する研究が報告されている。しかし、この方法で用いられる疎水基は直鎖性アルキル基であるため疎水基の導入としては不十分であり、またセルロース繊維のセルロース分子を直接化学修飾するものであるため、操作が煩雑であるばかりでなく、セルロース繊維が本来具備している風合いや吸湿性を損なう欠点がある。
【0003】
また、特公昭57−19207号公報には、芳香族カルボン酸または芳香族スルホン酸を用いて、セルロース繊維の表面部分だけに芳香族アシル基又は芳香族スルホン酸基を導入し、次いで硫酸エステル基またはスルホン酸基を持った陰イオン界面活性剤の存在下でカチオン染料で染色する方法が開示されている。しかしながら、この方法では芳香族化合物を用いてはいるが、いずれも親水性の高い化合物であり、疎水基の作用としては不十分である。また、セルロース繊維の表面のみを化学修飾するものであるため、セルロース繊維が本来具備している風合いや吸湿性を損なうとともに、濃色に染色した場合、堅牢度の面で問題がある等の欠点がある。
【0004】
また、繊維自体を改質する方法以外に染色方法により染色性や堅牢度を改善する方法も報告されている。例えば、特公平5−4474号公報にはポリスチレンスルホン酸塩を紡糸直前の紡糸原液に添加混合し再生セルロース繊維とした後にカチオン染料で染色し、さらに高濃度のタンニン酸で処理して、堅牢度を向上させる方法が開示されているが、この方法によっても黒、紺等の濃色染色物の洗濯堅牢度は液汚染に問題があった。
【0005】
さらに、特開平10−121383号公報、特開平10−121384号公報には、ジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩縮合物を分子中に少なくとも2個以上のグリシジル基を有する架橋剤で処理して得られた不溶性重合物を紡糸直前に紡糸原液に添加混合して再生セルロースとした後にカチオン染料で染色する方法、あるいはカチオン染料で染色した後にさらに低濃度のタンニン/吐酒石で処理することにより洗濯堅牢度を初めとする湿潤堅牢度を向上させる方法が開示されている。
【0006】
しかしこれらの方法によっても、中,濃色程度までは洗濯堅牢度の液汚染においても実用上充分な堅牢度を有しているが、さらに染料濃度を高くした極濃色の黒,紺等に染色した場合には、未だ問題が大きく、その改善が強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来の欠点を克服し、セルロース再生繊維が本来具備している風合いや吸水性を損なうことなく、実用に耐える十分な強度を有するとともに、カチオン染料に対して優れた染色性と堅牢度を具備し、さらには、黒,紺等の極濃色染色物においても優れた堅牢度を具備したセルロース再生繊維を提供するものである。
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、セルロース再生繊維を改質する改質剤とカチオン染料との親和性に着目して鋭意検討した結果、両者の親和性は単に改質剤のスルホン酸基等の酸性基を増大させるのみでは向上せず、スルホン酸基等の酸性の親水基と芳香族性の疎水基のバランスが極めて重要であることを見出した。この知見に基づきさらに検討を重ね、カチオン染料と改質剤の親和性を高め洗濯堅牢度の液汚染を向上させるために、静電的親和性のみではなく、疎水的親和性および水素結合等も考慮に入れて改質剤の設計を行った。その結果、分子中心に電子求引性の強いスルホン基を有する芳香族化合物であって適度な疎水性を有するジヒドロキシジフェニルスルホンと、親水性の酸性基を有するジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩とを縮合させた物質を用いることが上述した課題を解決するためには優れていることを見出し本発明に至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、セルロース再生繊維中に、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩からなる、アルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるホルマリン縮合物を含有している改質セルロース再生繊維であり、その縮合物がセルロースに対して2〜20重量%含有された改質セルロース再生繊維であり、その縮合物を構成するジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2である改質セルロース再生繊維である。
なお、本発明で用いるモル当量比とは、縮合物中のジヒドロキシジフェニルスルホンのモル数とジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩のスルホン酸塩当量との比を表す。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では、分子中に酸性の親水基としてスルホン酸基を有するジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩を用い、また芳香族性の疎水基を有する物質としてジヒドロキシジフェニルスルホンを用いて、両者をホルマリンにより縮合させた縮合物とする。このときの反応方法及び反応条件は通常用いられるもので良く、特に制限されるものではないが、得られる縮合物の直鎖性、分子量等を考慮して用いるホルマリンの量、触媒の種類と量、反応温度、反応時間等の条件を選定することが好ましい。一般に、ジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン化は、その化学構造から一般的なスルホン化反応によりスルホン酸塩基の4置換体までのスルホン化誘導体が得られる。しかし、本発明においてはそれらを更に縮合させて用いる必要があるため、理論的に縮合性を持たないスルホン酸塩基の3置換体及び4置換体は使用できず、モノスルホン酸塩,ジスルホン酸塩が使用できる。従って本発明では、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩あるいはジスルホン酸塩からなる2種、あるいはジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩およびジスルホン酸塩からなる3種の縮合物とするが、該縮合物は用いるモノマーのモル当量比によってその性質が大きく異なる。
【0011】
ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩あるいはジスルホン酸塩のモル当量比、または、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きくなると得られる縮合物の親水性が増大するため、改質剤として用いても得られる改質セルロース再生繊維をカチオン染料で染色したときに洗濯堅牢度の液汚染を低下させるので好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩あるいはジスルホン酸塩のモル当量比、または、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さくなると得られる縮合物の酸性基が減少するとともに疎水性が増加するため、改質剤として用いても得られる改質セルロース再生繊維をカチオン染料で染色したときに染着性および発色性を低下させるので好ましくない。
【0012】
従って、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩あるいはジスルホン酸塩のモル当量比、または、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比は、1:0.1〜2とすることが好ましい。さらに好ましいモル当量比は、1:0.15〜1.5である。
【0013】
また、得られた縮合物の平均分子量は5000以上が望ましく、このときの縮合物はアルカリ性水溶液に対して可溶であり、かつ酸性水溶液に対して不溶性である。これによりセルロース再生繊維の製造過程において浴中に溶出または流出してしまうなどの不都合を生じることなく、縮合物をセルロース再生繊維中に均一に含有させることができる。
【0014】
上述の如くして得た縮合物を、紡糸直前にセルロースビスコース溶液に所定量添加混合して紡糸すれば本発明の改質セルロース再生繊維を得ることができる。すなわち、縮合物の水分散液をそのままか、又はアルカリ水溶液あるいは添加させる適量のセルロースビスコース溶液と予め混合して紡糸用のセルロースビスコース溶液に添加混合して紡糸すればよい。このときの紡糸条件は、通常のセルロースビスコース溶液からセルロース再生繊維を得るときの条件が適用される。
【0015】
本発明においてセルロースビスコース溶液に添加する縮合物の添加量は、該セルロースビスコース溶液のセルロースに対して2〜20重量%であり、より好ましくは2.5〜15重量%である。該縮合物のセルロースに対する添加量が2重量%より少なくなると、カチオン染料の染着座席が少なくなり、充分な染着性を得ることができないため好ましくない。濃色染色に対応するためのカチオン染料の染着座席としては飽和染着量であらわすとき、少なくとも1.5%以上であることが好ましい。また、該縮合物の添加量が20重量%を越えると、得られる改質セルロース再生繊維の繊維物性あるいは風合いに影響し、強度の低下やセルロース再生繊維が本来具備している柔軟性を損なうなど、好ましくない影響を与える。
【0016】
本発明で用いるセルロースビスコース溶液とは通常レーヨンビスコース溶液やポリノジックビスコース溶液であり、本発明の改質セルロース再生繊維は、ステープル,フィラメント等の如何なる形状でも良く、また、ダル化等のため酸化チタン等の無機顔料を用いることもできる。また、本発明の改質セルロース再生繊維はビスコース法に好適に適用されるものであるが、銅アンモニア法,溶剤法,アセテート法等に応用することも当然可能である。そして、本発明の改質セルロース再生繊維をカチオン染料で染色する方法は、従来の方法を用いればよいが、染色堅牢度をより向上させる種々の染色仕上方法を併用して染色することももちろん可能である。
【0017】
【実施例】
以下、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。なお、実施例中の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度,洗濯堅牢度,飽和染着量,発色性は以下の方法で測定した。
【0018】
(1)繊度、乾強度、湿強度、結節強度、伸度
JIS L 1015「化学繊維のステープル試験法」により測定した。
【0019】
(2)洗濯堅牢度
JIS L 0844「洗濯に対する染色堅ろう度試験方法」A−2法により、添付布は綿と絹を使用して、添付布汚染、変退色を測定した。また、液汚染は、洗濯終了後の洗濯液を内径13mm、長さ15cmの試験管に採取し、別に試料を入れないで同様に処理したブランク液と比較し、添付布汚染用と同じグレースケールにより等級判定を行った。
【0020】
(3)飽和染着量
試料の10%のマラカイトグリーン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)と1g/Lの酢酸(純度90%)と0.5g/Lの酢酸ナトリウムを含む染色液100ml中に2gの試料を入れて、100℃にて2時間染色し、染色前後の波長617nmにおける吸光度から次式により飽和染着量を求めた。
【数1】
【0021】
(4)発色性
5人の検査員により官能検査で調べ、次の基準により判定した。
◎;5人全員良い ○;3〜4人良い
△;1〜2人良い ×;全員悪い
【0022】
〔実施例1〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル比をそれぞれ1:0.05、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のスルホン酸塩当量のモル当量比がそれぞれ1:0.05、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3である平均分子量7,000〜30,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とのホルマリン縮合物6水準をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、pH8〜9の6種類の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して、各縮合物が5.0重量%となるようにそれぞれ均一にポリノジックビスコース溶液に添加し、混合して直ちに0.07mm×500Hのノズルを使用して、紡糸速度30m/分で、硫酸22g/L、硫酸ナトリウム65g/L、硫酸亜鉛0.5g/L、温度35℃の紡糸浴中に紡糸した。次いで硫酸2g/L、硫酸亜鉛0.05g/L、温度25℃の浴中で2倍延伸し、38mmに切断した後、炭酸ナトリウム1g/L、硫酸ナトリウム2g/L、温度60℃の浴中で処理を行った後、再度硫酸5g/L、温度65℃で処理し、続いて通常の精練乾燥処理を行って、およそ1.39デシテックスのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、各水準ともおよそ700gの試料を得、それぞれを試料No.2〜No.7とした。また、比較試料として、改質剤を添加しない以外は上述と同様の方法でセルロース再生繊維を製造し、およそ700gの試料を得、試料No.1とした
。
【0023】
次に、試料No.1〜No.7の各試料10gを、過酸化水素(有効成分35%)5g/L、ノニオン界面活性剤の商品名クリーンN−15(一方社油脂工業(株)製)1g/L、液体水酸化ナトリウム(有効成分48%)1.5g/Lからなる漂白剤4Lの中に入れ、90℃で30分間処理した後、水洗,脱液し、次いで酢酸(有効成分90%)1g/Lを含む中和液4L中に入れ50℃で10分間処理し、水洗,乾燥した。
【0024】
得られた7種類の漂白した各試料から2gの試料を2つずつ正確に秤量し、一方はカチオン染料として、黒色染料(Astrazon Black SW 200%、ダイスタージャパン(株)製)2.5%(owf)、金属イオン封鎖剤である商品名セキュロンFF−100(ヘンケルジャパン(株)製)1.0%(owf)、酢酸(有効成分90%)1g/L、酢酸ナトリウム0.5g/Lを含む100mlの染色液中で100℃にて30分間染色処理し、水洗した後、セレッシュ400(花王(株)製)2g/Lを含む100mlの処理液で60℃にて15分間ソーピングし、水洗した。次いでタンニン酸(大日本製薬(株)製)3.0%(owf)を含む100mlの処理液で60℃にて15分間処理し、排液して、さらに吐酒石1.5%(owf)を含む100mlの処理液で60℃にて15分間処理して水洗した後、乾燥して染色試料とした。このようにして得た試料No.1〜No.7を染色した各試料について、洗濯堅牢度の液汚染、添付布汚染、変退色の測定と発色性を評価した。また、もう一方の試料を用いて飽和染着量を測定した。結果を表1にまとめて示した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.7は、飽和染着量と発色性には優れているが洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.2は、洗濯堅牢度は優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.3〜No.6は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0027】
〔実施例2〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比ををそれぞれ1:0.025、1:0.05、1:0.25、1:0.5、1:1、1:1.5とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量のモル当量比がそれぞれ1:0.05、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3である平均分子量5,000〜25,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩とのホルマリン縮合物6水準をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、pH8〜9の改質剤溶液6種類を調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して各縮合物が5.0重量%となるようにそれぞれ均一にポリノジックビスコース溶液に添加し、混合して、改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液6種類を得た。それぞれの改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液を実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、およそ1.39デシテックスのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、それぞれおよそ700gの試料を得、それぞれを試料No.8〜No.13とした。
【0028】
次いで、各試料を実施例1と同様の方法で漂白処理し、漂白処理した各試料から正確に2gずつを秤量し、実施例1と同様に染色処理して染色試料を得た。得られた各染色試料について、洗濯堅牢度の測定及び発色性の評価を行い、結果を表2に示した。また、試料No.8〜No.13を漂白処理した各試料から2gずつを秤量し、飽和染着量を測定し、その結果を表2にあわせて示した。
【0029】
【表2】
【0030】
表2から明らかなように、ジヒドロキシジフェニルスルホンと縮合させる物質を実施例1のジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩に変えてジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩としても、縮合させるときのモル当量比が本発明の範囲であれば、実施例1と同様に優れた効果が得られる。
【0031】
すなわち、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.13は、飽和染着量と発色性には優れているが洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.8は洗濯堅牢度には優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.9〜No.12は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0032】
〔実施例3〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比をそれぞれ1:0.03:0.01、1:0.04:0.03、1:0.3:0.1、1:0.2:0.4、1:1:0.5、1:1:1とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比がそれぞれ1:0.05、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3である平均分子量6,000〜28,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩の3成分のホルマリン縮合物6水準をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、pH8〜9の改質剤溶液を6種類調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して、各縮合物が5.0重量%となるようにそれぞれポリノジックビスコース溶液に添加し、均一に混合して、改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液6種類を得た。それぞれの改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液を実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、それぞれ約700gのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、それぞれ試料No.14〜No.19とした。
【0033】
次いで、各試料を実施例1と同様の方法で漂白処理し、漂白処理した各試料から正確に2gずつを秤量し、実施例1と同様にして染色し、染色試料を得た。また、漂白処理した各試料から2gずつを正確に秤量し、飽和染着量を測定した。結果を、表3にあわせて示した。
【0034】
【表3】
【0035】
表3から明らかなように、縮合させる物質をジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩の3成分を用いても、モル当量比が本発明の範囲であれば、優れた効果が得られる。
【0036】
すなわち、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.19は、飽和染着量と発色性は優れているが、洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.14は洗濯堅牢度は優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.15〜No.18は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0037】
〔実施例4〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル比を1:0.5とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.5である平均分子量15,000のアルカリ可溶性であり酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して、縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液を実施例1と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.20〜No.26とした。得られた各試料の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度を測定し、結果を表4に示した。また、試料No.20〜No.26の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後各試料2gずつを正確に秤量して飽和染着量を測定し、結果を表4にあわせて示した。
【0038】
【表4】
【0039】
表4から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のホルマリン縮合物を含有させたポリノジックの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.21は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.26は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下が大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.22〜No.25は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0040】
〔実施例5〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比を1:0.15とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.3である平均分子量18,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、pH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して、縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液を実施例1と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.27〜No.33とした。得られた各試料の繊度、乾強度、湿強度、結節強度、伸度を測定し、結果を表5に示した。また、試料No.27〜No.33の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後各試料2gずつを正確に秤量して飽和染着量を測定し、結果を表5にあわせて示した。
【0041】
【表5】
【0042】
表5から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を含有させたポリノジックの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.28は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.33は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下が大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.29〜No.32は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0043】
〔実施例6〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比を1:0.2:0.1とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.4である平均分子量16,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるポリノジックビスコース溶液(セルロース5.0%、全アルカリ3.5%、全硫黄3.0%)のセルロースに対して、該縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したポリノジックビスコース溶液を実施例1と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのポリノジックの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.34〜No.40とした。
【0044】
得られた各試料の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度を測定し、結果を表6に示した。また、試料No.34〜No.40の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後、各試料を2gずつ秤量して飽和染着量を測定し、結果を表6にあわせて示した。
【0045】
【表6】
【0046】
表6から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩とのホルマリン縮合物を含有させたポリノジックの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.35は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.40は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下が大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.36〜No.39は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0047】
〔実施例7〕
実施例1と同様にしてジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のホルマリン縮合物をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液6種類を調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、各縮合物が5.0重量%となるようにそれぞれ均一にレーヨンビスコース溶液に添加し、混合して直ちに0.09mm×100Hのノズルを使用して、紡糸速度55m/分で、硫酸110g/L、硫酸ナトリウム30g/L、硫酸亜鉛15g/L、温度50℃の紡糸浴中に紡糸した。通常の二浴緊張紡糸法により延伸し、38mmに切断した後、通常の精練乾燥処理を行って、およそ3.33デシテックスのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、それぞれおよそ700gの試料を得、それぞれを試料No.42〜No.47とした。また比較試料として、改質剤を添加しない以外は上述と同様の方法でレーヨンのセルロース再生繊維を製造し、およそ700gの試料を得、試料No.41とした。
【0048】
次に、試料No.41〜No.47の各試料10gを、実施例1と同様の方法で漂白処理した。続いて得られた7種類の漂白した各試料から2gの試料を2つずつ正確に秤量し、一方は実施例1と同様の方法で染色処理し、染色試料とした。このようにして得た試料No.41〜No.47を染色した各試料について、洗濯堅牢度の液汚染、添付布汚染、変退色の測定と発色性を評価した。また、もう一方の試料は飽和染着量を測定した。結果を表7にまとめて示した。
【0049】
【表7】
【0050】
表7から明らかなように、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.47は、飽和染着量と発色性には優れているが洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.42は洗濯堅牢度は優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.43〜No.46は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0051】
〔実施例8〕
実施例2と同様にしてジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩とのホルマリン縮合物をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液6種類を調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、各縮合物が5.0重合%となるようにそれぞれ均一にレーヨンビスコース溶液に添加し、混合して、改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液6種類を得た。それぞれの改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液を実施例7と同様の紡糸条件で紡糸し、およそ3.33デシテックスのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、それぞれおよそ700gの試料を得、それぞれを試料No.48〜No.53とした。
【0052】
次いで、各試料を実施例1と同様の方法で漂白処理し、漂白処理した各試料から正確に2gずつを秤量し、実施例1と同様に染色処理して染色試料を得た。得られた各染色試料について、洗濯堅牢度の測定及び発色性の評価を行い、結果を表8に示した。また、試料No.48〜No.53を漂白処理した各試料から2gずつを秤量し、飽和染着量を測定し、その結果を表8にあわせて示した。
【0053】
【表8】
【0054】
表8から明らかなように、ジヒドロキシジフェニルスルホンと縮合させる物質を実施例7のジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩に変えてジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩としても、縮合させるときのモル当量比が本発明の範囲であれば、実施例7と同様に優れた効果が得られる。
【0055】
すなわち、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.53は、飽和染着量と発色性には優れているが洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.48は洗濯堅牢度には優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.49〜No.52は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0056】
〔実施例9〕
実施例3と同様にしてジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩の3成分のホルマリン縮合物をそれぞれ30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を6種類調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、各縮合物が5.0重量%となるようにそれぞれレーヨンビスコース溶液に添加し、均一に混合して、改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液6種類を得た。それぞれの改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液を実施例7と同様の紡糸条件で紡糸し、それぞれ約700gのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れすることなく製造し、それぞれ試料No.54〜No.59とした。
【0057】
次いで、各試料を実施例1と同様の方法で漂白処理し、漂白処理した各試料から正確に2gずつを秤量し、実施例1と同様にして染色し、染色試料を得た。また、漂白処理した各試料から2gずつを正確に秤量し、飽和染着量を測定した。結果を、表9にあわせて示した。
【0058】
【表9】
【0059】
表9から明らかなように、縮合させる物質をジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩の3成分を用いても、モル当量比が本発明の範囲であれば、優れた効果が得られる。
【0060】
すなわち、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:2であるよりもスルホン酸塩当量の割合が大きい試料No.59は、飽和染着量と発色性には優れているが洗濯堅牢度の液汚染が著しく劣るため好ましくない。また、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.1であるよりもスルホン酸塩当量の割合が小さい試料No.54は洗濯堅牢度は優れているものの繊維中の酸性基が少ないため飽和染着量に劣っており、濃色に対応するための十分な染着性が得られず、発色性も不十分であるため濃黒色としての品位が劣り好ましくない。ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.1〜2である本発明の試料No.55〜No.58は染着性にも優れ、洗濯堅牢度、発色性ともに優れていることが明らかである。
【0061】
〔実施例10〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル比を1:0.5とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のモル当量比が1:0.5である平均分子量15,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液を実施例7と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.60〜No.66とした。得られた各試料の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度を測定し、結果を表10に示した。また、試料No.60〜No.66の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後各試料2gずつを正確に秤量して飽和染着量を測定し、結果を表10にあわせて示した。
【0062】
【表10】
【0063】
表10から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩のホルマリン縮合物を含有させた普通レーヨンの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.61は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.66は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下がか大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.62〜No.65は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0064】
〔実施例11〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比を1:0.15とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル当量比が1:0.3である平均分子量18,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液を実施例7と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.67〜No.73とした。得られた各試料の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度を測定し、結果を表11に示した。また、試料No.67〜No.73の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後各試料2gずつを正確に秤量して飽和染着量を測定し、結果を表11にあわせて示した。
【0065】
【表11】
【0066】
表11から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を含有させた普通レーヨンの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.68は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.73は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下が大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.69〜No.72は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0067】
〔実施例12〕
ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩のモル比を1:0.2:0.1とし、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のスルホン酸塩当量をあわせたモル当量比が1:0.4である平均分子量16,000のアルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩及びジスルホン酸塩のホルマリン縮合物を30重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液に溶解させてpH8〜9の改質剤溶液を調製した。通常の方法で得られるレーヨンビスコース溶液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)のセルロースに対して、該縮合物が0、1、2、5、10、20、30重量%となるように改質剤溶液を添加し、均一に混合して、改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液7種類を得た。それぞれの改質剤を添加したレーヨンビスコース溶液を実施例7と同様の紡糸条件にて紡糸し、それぞれ約700gのレーヨンの改質セルロース再生繊維を糸切れなく製造し、それぞれを試料No.74〜No.80とした。
【0068】
得られた各試料の繊度,乾強度,湿強度,結節強度,伸度を測定し、結果を表12に示した。また、試料No.74〜No.80の各試料を実施例1と同様の方法で漂白し、乾燥後、各試料を2gずつ秤量して飽和染着量を測定し、結果を表12にあわせて示した。
【0069】
【表12】
【0070】
表12から明らかなようにジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのモノスルホン酸塩とジヒドロキシジフェニルスルホンのジスルホン酸塩とのホルマリン縮合物を含有させた普通レーヨンの改質セルロース再生繊維は、縮合物の添加量が少ない試料No.75は酸性基が減少するため飽和染着量が低下しており、濃色等に対応するための十分な染着性が得られないため好ましくない。また、縮合物の添加量が多い試料No.80は飽和染着量は優れているものの、繊維物性の低下が大きいため好ましくない。縮合物の添加量が本発明の範囲である試料No.76〜No.79は飽和染着量、繊維物性ともに十分な性能を有していることが明らかである。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、セルロース再生繊維中にジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2であるホルマリン縮合物をセルロース再生繊維のセルロースに対して2〜20重量%含有させることにより、実用に耐える十分な強度を有し、カチオン染料で黒,紺等の極濃色に染色したときの洗濯堅牢度、特に液汚染においても優れた堅牢度を具備した改質セルロース再生繊維を得ることができる。本発明の改質セルロース再生繊維は、綿,麻等と混紡あるいは交編織して使用しても染め分けることができる。また、アクリル繊維等のカチオン染料可染性の繊維と混紡,交編織して使用しても同色且つ均一に染色されるので、これらの性能を発揮する糸、編織物,不織布,製紙等の分野にも広く利用することができる。
Claims (3)
- セルロース再生繊維中に、ジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩からなる、アルカリ可溶性でありかつ酸不溶性であるホルマリン縮合物を含有していることを特徴とする改質セルロース再生繊維。
- 該縮合物の含有量が、セルロースに対して2〜20重量%であることを特徴とする請求項1記載の改質セルロース再生繊維。
- 該縮合物のジヒドロキシジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのスルホン酸塩のモル当量比が1:0.1〜2であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の改質セルロース再生繊維。
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