JP3720969B2 - 法面、壁面等の緑化構造 - Google Patents
法面、壁面等の緑化構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の生長が困難な法面、壁面等を緑化する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、岩盤を緑化して景観を向上させるための緑化構造が種々開発されている。その1つとして、合成樹脂、金属等によって形成された網篭からなる複数の緑化ボックスを、傾斜した岩盤法面の複数箇所に打込まれたフックにそれぞれ吊下げ、各緑化ボックスに盛土材を充填し、ここに苗木を植栽するようにした技術がある(特許公報第2559652号参照)。この技術は、緑化ボックス内で苗木を根付かせるとともに、各種植物を生長させることにより、岩盤を緑化しようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した緑化構造では、傾斜した岩盤法面に緑化ボックスを配置する構造であるため、緑化ボックスの全体が岩盤法面から露出してしまう。法面のところどころから緑化ボックスが突出したように見え、これが景観を損なってしまう。また、緑化ボックスが網篭によって形成されているので、雨等により、その緑化ボックス内に充填されている盛土材が網目を通って流れ出てしまうという問題もある。
【0004】
これに対しては、単に、盛土材の流出を防止するだけならば、例えば岩盤の一部を削り取って凹部を設け、木を密に並べて打込んで柵を設け、柵と凹部との間の空間に盛土材を充填して植物を植栽することも考えられる。しかし、この構造では、前記とは逆に、盛土材にしみ込んだ水の流れが柵によって遮られ、十分に排水されず、盛土材の軟弱化を招くという新たな問題が生ずる。
【0005】
なお、前述したものとは異なるタイプとして、特開平4−213625号公報には、前部壁と底部壁とからなる多数の型格子を岩盤等の法面に沿って配置し、植物フリースを敷いた状態で、同型格子内に盛土材を充填する技術がある。しかし、この技術は、平坦な傾斜面を形成して法面の全面を覆い、同傾斜面を補強するものである。従って、同技術では、上述したような盛土材の流出や軟弱化はあまり問題とならないが、施工に多くの資材が必要であるばかりでなく、施工に長い期間を要する。このように、多数の型格子を法面全面に配置する技術は施工にコストがかかり、経済性の点で問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、法面からの突出部分を少なくして良好な景観を保ちつつ、盛土材が流出したり軟弱化したりするのを未然に防止でき、経済性にも優れた法面、壁面等の緑化構造の提供を課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、傾斜した法面、壁面等の保護対象面に設けられた凹部と、略水平方向に延び、かつ前記凹部に載置される底部、及びその底部の前端から略上方へ延びる前壁部を有する格子状の枠柵と、前記凹部内において前記枠柵の前壁部よりも後方の空間に充填された盛土材と、ジオテキスタイルからなり、前記凹部の底面及び盛土材間に介在された強化シートと、前記枠柵の前壁部及び盛土材間に介在された透水性を有する緑化シートとを備えることを要旨としている。
【0008】
ここで、保護対象面の1つである法面の種類としては、例えば、岩盤法面、コンクリート・モルタル吹付け法面、切り土法面、盛土材法面等が挙げられる。壁面の種類としては、例えば、擁壁やダム等のコンクリート構造物の壁面が挙げられる。また、強化シートを構成するジオテキスタイルは地盤の補強材の一種であり、ポリエチレン、ポリエステル等の高分子材料を素材としたシート状の製品をいう。ジオテキスタイルの種類には、主として、不織布、織布、ジオグリッド、ジオネットがある。不織布は、織機や編機を使用せずに繊維をランダムに積層し、ニードルパンチ、熱融着等の方法によって繊維同士を結合させて平面状にしたものである。織布は、織機の使用により平行に並べた縦糸に横糸を交差するように組合わせて織ったものである。ジオグリッドは、引っ張り部材が交点部で強固に結合あるいは一体化されていて格子構造となったものである。ジオネットは、樹脂材料を押出して製造し、開口部が比較的大きく、交点部が一体となった網目構造を有するものである。
【0009】
上記の発明によると、盛土材に植物が植えられたり、植物の種子を含む植生材が緑化シートに付着されたりする等、緑化のための処理が施されると、その植物は時間の経過とともに徐々に生長してゆく。そして、法面において、植物による緑色の部分が次第に広がってゆく。
【0010】
ところで、枠柵が載置された状態では、その枠柵の少なくとも一部が凹部内に入り込んでいる。その入り込んだ分だけ、凹部のない場合に比べ、保護対象面からの枠柵の突出量が少なくなる。また、枠柵の格子部分及び緑化シートは水を通すが、盛土材を通さない。強化シートは、盛土材にしみ込んで同強化シートに至った水を毛細管現象により凹部の外へ導く。
【0011】
また、本発明は、上記の発明の構成に加え、前記盛土材の上部に緑化用の植物が設けられるものとすることができる。
【0012】
これにより、植物の各部は時間の経過とともに徐々に生長してゆく。すなわち、植物の幹が盛土材から伸び、その幹や枝に葉がつき、大きくなる。この生長にともない、葉等の緑色の占める割合が増加してゆく。この際、幹、枝、葉等は、凹部の内壁面の前方に位置していることから、同内壁面を隠す機能も発揮する。また、植物の根は盛土材内で広がってゆく。
【0013】
また、本発明は、前記枠柵の前壁部が、前記保護対象面に沿って傾斜していることを要旨としている。
【0014】
これにより、保護対象面からの突出部分の量は、主に、同凹部の開口部分に位置する枠柵によって決定される。この枠柵の前壁部が保護対象面に沿って傾斜しているので、沿ってない場合(例えば垂直の場合)に比べ、同前壁部の出っ張りが少ない。
【0015】
また、本発明は、上記の発明の構成に加え、前記凹部が、前記保護対象面の複数箇所において、隣り合う凹部との間隔が略一定となる位置に設けられているものとすることができる。
【0016】
これにより、隣り合う凹部の間隔が略一定であることから、凹部毎に植物が設けられていれば、複数の植物が保護対象面の全面に対し略等間隔で点在することとなる。各植物の緑色の部分は時間の経過、すなわち、植物の生長とともに拡大してゆく。これにともない保護対象面が緑色の部分によって覆い隠されてゆく。隣り合う植物の間隔が略一定であることから、極端に緑色の部分が少なくて保護対象面が多く露出したり、極端に緑色の部分が多くなることはない。保護対象面の略全面が時間の経過に従い緑色の部分で覆われてゆく。
【0021】
また、本発明は、前記植物が、前記盛土材の上部に植栽された苗木が生長したものとすることができる。ここで、植栽の対象となる樹木の種類としては、例えば高木の一種であるサザンカ、どろのき、中木の一種であるシデコブシ、低木の一種であるミツバツツジが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
これにより、緑化構造物の構築時に盛土材の上部に植栽される植物は、既にある程度生長した苗木である。この苗木は時間の経過に従い生長する。そして、この生長にともない葉等の緑色の部分が増えてゆく。
【0023】
また、本発明は、前記植物が、前記盛土材の上部に配置された土のう内の種子が発芽し生長したものとすることができる。ここで、土のう内に入れられる種子としては、木本種子、外来草本種子、在来草本種子等が挙げられる。
【0024】
これにより、緑化構造物の構築後、土のう内の種子は発芽及び生長し、その過程で土のうの袋体を通る。また、土のうは防塞機能も発揮する。
【0025】
また、本発明は、前記土のうの袋体が生分解性材料により形成されているものとすることができる。
【0026】
これにより、盛土材の上部に配置された土のうの袋体は、その土中に存在する雑菌等の微生物により分解される。
【0027】
また、本発明は、上記の発明の構成に加え、前記枠柵の前壁部が、前記底部の前端から略上方へ延びる棒状部材を備えており、その棒状部材の上端部は下方へ向けて折返されているものとすることができる。
【0028】
これにより、枠柵の棒状部材において最も高い箇所に位置するのは、折返された部分(屈曲部分)であり、棒状部材の端面は同屈曲部分よりも下方に位置する。そのため、屈曲部分が露出しない程度に盛土材が充填された状態では、棒状部材の端面は盛土材内に入り込んでいる。
【0029】
また、本発明は、上記の発明の構成に加え、前記枠柵、盛土材、強化シート及び緑化シートにより1つの段が構成され、この段が前記凹部に複数積層されているものとすることができる。
【0030】
これにより、1つ当りの枠柵の高さがわずかであっても、複数の枠柵が重ねられて、凹部に複数の段が積層されると、最上段の枠柵や盛土材の位置が高くなる。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を、図1乃至図7に従って説明する。
【0032】
本実施形態では、図3に示すような岩盤法面1を保護対象面としている。この岩盤法面1は、水平面50に対し例えば約45度をなした急斜面となっている。岩盤法面1には、岩盤51の一部を削り取る(穿設する)ことにより、複数の凹部2が形成されている。これらの凹部2は岩盤法面1の傾斜方向(以下、縦方向Xという)にも、岩盤法面1の幅方向(以下、横方向Yという)にも列をなしている。縦方向Xにおいて隣り合う凹部2の間隔d1は、どの凹部2に関しても略一定である。同様に、横方向Yにおいて隣り合う凹部2の間隔d2は、どの凹部2に関しても略一定である。各凹部2は略水平な底面3と、前記岩盤法面1よりも大きな角度(例えば約60度)を有する内壁面4とを備え、全体として横方向Yに細長い形状をなしている。
【0033】
各凹部2には緑化構造物52が構築されている。各緑化構造物52は互いに同一構成を採っている。そのため、ここでは1つの緑化構造物52についてのみ詳述する。図1及び図2に示すように、底面3には、そのほぼ全面にわたってジオテキスタイルよりなる下部強化シート5が敷かれ、その上に下部枠柵6が設置されている。本実施形態では、下部強化シート5として、高強度を有する厚手の不織布が用いられている。下部枠柵6は、略水平方向に延び、かつ下部強化シート5の前部に載置される底部7と、その底部7の前端(図1の左端)から斜め後ろ上方へ延びる前壁部8とから構成されている。前壁部8が底部7となす傾斜角度は約60度であり、この角度は岩盤法面1の傾斜角度に近似している。
【0034】
下部枠柵6は、例えば、直線状をなす鉄筋を縦方向及び横方向に配置し、互いに溶接した後、中央部分で折曲げて製作したものである。あるいは、下部枠柵6は、くの字状に屈曲形成してなる複数の縦用鉄筋を水平方向に並べて配置するとともに、直線状をなす複数の横用鉄筋を前記縦用鉄筋に交差するように配置し、これらの縦用鉄筋と横用鉄筋とを互いに溶接して製作したものである。上述したいずれの下部枠柵6においても、前壁部8の一部は棒状部材としての多数本の縦用鉄筋56によって構成されている。下部枠柵6は、その底部7の格子部分を通じて打付けられた杭9によって、下部強化シート5及び岩盤51に止められている。杭9の数は1本でも複数本でもよい。この杭9に代えて、底部7を、ワイヤ等によって下部強化シート5に結び付けて止めてもよい。
【0035】
本実施形態において使用した下部枠柵6の寸法等は次の通りであるが、例示にすぎず、この寸法等は施工現場に応じて適宜変更可能である。
【0036】
前壁部8の傾斜長: 約600mm
前壁部8の奥行き: 約600mm
前壁部8及び底部7の左右長: 約2600mm
鉄筋の直径: 約10mm
鉄筋格子の格子ピッチ: 100乃至300mm
前壁部8と内壁面4との間隔: 2000乃至5000mm
【0037】
凹部2内において前壁部8よりも後方の空間には、盛土材10が下部盛土層11及び中下部盛土層12の2層に分けて充填されている。盛土材10としては、土のみを用いてもよいが、土に岩石、クリンカアッシュ、フライアッシュ、アスファルト廃材等を混合したものを用いてもよい。岩石の寸法は特に限定されず、岩石には大型の破砕岩石から2乃至75mm程度の礫までが含まれる。盛土材10としては、施工現場のものでも他所から運んだものでもよいが、前者の方が好ましい。これは、施工現場の環境での生育に適した植物の種子が含まれている可能性が高いからである。
【0038】
両盛土層11,12は、いずれも衝撃ローラ等を用いた転圧により押し固められている。中下部盛土層12の上面は前壁部8の上端よりも低くなっている。両盛土層11,12間の前端部には養分補給部材13が配置されている。養分補給部材13は、透水性を有する収納体14と、その収納体14に入れられ、かつ、盛土材10に養分を補給し得る肥料15とを備えている。収納体14としては、編物、織布、不織布、生分解性材料からなるフィルム等よりなる袋や、金網、樹脂網等よりなるかごが用いられる。生分解性材料は、土壌中の雑菌等の微生物により分解されて消滅する材料である。生分解性材料としては、でんぷん系化合物、蛋白質系化合物、ビニールエマルジョン系化合物、ポリ乳酸系化合物、でんぷんと樹脂とのブレンド等を例示でき、これらから選ばれる少なくとも一種を使用できる。収納体14には、肥料15のほかにも、土壌改良剤、保水剤、人工土壌、種子またはこれらの組合わせを加えてもよい。本実施形態では、編物等により横方向Yに細長く形成された袋が収納体14として用いられ、この中に、緩効性の肥料15、土壌改良剤及び保水剤が入れられている。なお、養分補給部材13は必須ではなく、状況に応じ適宜省略可能である。
【0039】
各前壁部8と両盛土層11,12との間には下部緑化シート16が介在されている。下部緑化シート16の下端部16bは後方へ曲げられ、底部7と下部盛土層11との間に介在されている。下部緑化シート16の上端部16aは後方へ曲げられ、中下部盛土層12上に敷かれている。下部緑化シート16には、盛土材10の前壁部8からの抜け落ちを防止する機能と、水を通す機能(透水性)とが要求される。そのほかにも、下部緑化シート16は、植物の生長の妨げにならないものであることが好ましい。これらの機能を有するものとして、本実施形態では不織布が用いられている。
【0040】
中下部盛土層12上には、下部強化シート5と同一構成の上部強化シート17が載置されている。上部強化シート17は杭18によって中下部盛土層12に対し移動不能に係止されている。上部強化シート17上には、下部枠柵6と同様な底部20及び前壁部21を備えた上部枠柵19が配置されている。上部枠柵19の格子部分には下部枠柵6の上端部が係入されている。この係入により、上下両枠柵19,6が相互に連結されて、実質上一体となっている。このように、上下両枠柵19,6の連結のために上部枠柵19の格子部分が利用されている。前記連結を強固なものとするためには、上下両枠柵19,6の重なり部分を、さらに結束線等によって接続することが望ましい。上部枠柵19の縦用鉄筋56の上端部分は斜め後ろ下方へ向けて折返されており、その端面56aは縦用鉄筋56の最も高い箇所(屈曲部56b)よりも低くなっている。
【0041】
凹部2内において前壁部21よりも後方の空間には、盛土材10が中上部盛土層22及び上部盛土層23の2層に分けて充填されている。両盛土層22,23間の前端部には、前記養分補給部材13と同一構成の養分補給部材24が配置されている。この養分補給部材24は必須ではなく、状況に応じ適宜省略可能である。前壁部21と両盛土層22,23との間には上部緑化シート25が介在されている。上部緑化シート25の下端部25bは後方へ曲げられ、底部20と中上部盛土層22との間に介在されている。上部緑化シート25の上端部25aは、前記縦用鉄筋56の上端部の形状に沿うように折曲げられ、上部盛土層23上に敷かれている。上部盛土層23の上には、縦用鉄筋56の屈曲部56bが露出しない程度の高さまで盛土材10が充填され、この盛土材10により表土23aが形成されている。縦用鉄筋56の端面56a及び上部緑化シート25の上端部25aはいずれも盛土材10中に埋まっている。以上のようにして1つの単位の緑化構造物52が構成されている。
【0042】
図1に示すように、全緑化構造物52及び岩盤法面1には、金属、合成樹脂等の材料によって形成された、目の粗い網部材27が敷かれている。網部材27は、緑化構造物52においては内壁面4の一部、表土23a、上下両枠柵19,6に被せられている。岩盤法面1及び各緑化構造物52の表面には、土及び種子を含む植生材30が付着されている。植生材30としては、人工土壌、種子等の混合物を吹付けてなる吹付け層や、袋体に土、種子等を含ませてなる土のうが用いられる。吹付け層としては、人工土壌、種子、肥料、吹付け層の安定固着を図る養生剤、微生物の活性化を図る土壌活性剤等の素材を水に溶かして吹付ける、いわゆる「客土吹付け工法」によるもの、同様の素材を乾式で吹付ける、いわゆる「厚層基材吹付け工法」によるものがある。種子は施工現場の土、施工季節、気象条件等に応じて適宜選択される。本実施形態では、「厚層基材吹付け工法」によって吹付け層31が形成されており、この吹付け層31によって網部材27が被覆されている。吹付け層31の厚みは10乃至100mm程度であることが好ましく、例えば約60mmに設定することができる。なお、吹付け層31は単層であっても複数層であってもよい。
【0043】
各緑化構造物52の上部には植物としての苗木29が植栽されている。苗木29の根29aは上部盛土層23に位置し、幹は、上部緑化シート25に形成された十字状の切込み26(図2参照)、表土23a、網部材27及び吹付け層31を通過して上方へ伸びている。
【0044】
上述した緑化構造は以下の工程に従って構築される。まず、図3に示すように、岩盤51の所定の箇所(間隔d1,d2が一定となる箇所)を削り取ることにより、各々底面3及び内壁面4からなる複数の凹部2を岩盤法面1に形成する。図4に示すように、各底面3に下部強化シート5を敷き、その前部に下部枠柵6を置く。底部7の格子部分を通して所定の数の杭9を打付ける。杭9は下部強化シート5を通り、岩盤51に打込まれる。この杭9により下部強化シート5が岩盤51に係止されるとともに、下部枠柵6の水平方向への移動(ずれ)が規制される。
【0045】
図5に示すように、前壁部8と底部7とに沿って下部緑化シート16を配置する。この際、長さ方向(図5において紙面と直交する方向)にスリット32aの入れられたパイプ32を用い、スリット32aを介してパイプ32を縦用鉄筋56の上端部56cに被せる。パイプ32としては、滑らかな外周面を有するもの、例えば塩化ビニール等の合成樹脂からなるものを用いることが好ましい。下部緑化シート16の上端部16aをパイプ32の上に被せ、前壁部8の前面に一時的に垂らしておく。このとき、下部緑化シート16が上端部56cに引っ掛かって作業性を低下させることがない。
【0046】
下部強化シート5、下部緑化シート16及び内壁面4によって囲まれた空間に、前壁部8の中間高さ位置まで、現場の土等を利用して盛土材10を充填する。この盛土材10を衝撃ローラ等で転圧して押し固める。すると、下部強化シート5上に下部盛土層11が形成される。下部盛土層11の前部に、養分補給部材13を横方向Yに沿って延びるように添えて配置する。続いて、図6に示すように、下部盛土層11の上に再び盛土材10を充填し、これを衝撃ローラ等で押し固める。すると、下部盛土層11上に中下部盛土層12が積層される。
【0047】
次に、中下部盛土層12上に上部強化シート17を敷き、余らせておいた下部緑化シート16の上端部16aを同上部強化シート17の上に重ねる。この際、下部緑化シート16が縦用鉄筋56の上端部56cに引っ掛かることがない。同緑化シート16はパイプ32から簡単に離れ、作業性がよい。その後、縦用鉄筋56からパイプ32を外し、上部強化シート17等の上に上部枠柵19を置く。この際には、上部枠柵19の格子部分に下部枠柵6の上端部を係入させ、上下両枠柵19,6を相互に連結させる。底部20の格子部分を通して所定の数の杭18を打付ける。杭18は上部強化シート17を通り、中下部盛土層12に入り込む。
【0048】
図7に示すように、前壁部21と底部20とに沿って上部緑化シート25を配置する。この際にも、前述したものと同様のスリット入りパイプ(図示略)を用い、そのスリットを介しパイプを縦用鉄筋56の上端部56cに被せる。上部緑化シート25の上端部25aをパイプの上に被せ、前壁部21の前面に一時的に垂らしておく。上部強化シート17、上部緑化シート25及び内壁面4によって囲まれた空間に、前壁部21の中間高さ位置まで盛土材10を充填する。盛土材10を衝撃ローラ等で転圧して押し固める。すると、上部強化シート17上に中上部盛土層22が積層される。中上部盛土層22の前部に養分補給部材24を配置し、さらにその上に盛土材10を再び充填し、これを衝撃ローラ等で押し固める。すると、中上部盛土層22上に上部盛土層23が積層される。
【0049】
余らせておいた上部緑化シート25の上端部25aを上部盛土層23上に敷く。この際にも、上部緑化シート25はパイプから簡単に離れる。縦用鉄筋56からパイプを外し、同縦用鉄筋56の上端部分を曲げ加工する。上部盛土層23の上にさらに盛土材10を充填し、これを衝撃ローラ等で押し固める。すると、上部盛土層23上に表土23aが積層され、各縦用鉄筋56の上端部が同表土23a内に埋まって隠れる。このようにして1つの緑化構造物52が構築される。
【0050】
続いて、全緑化構造物52及び岩盤法面1の略全面に網部材27を被せる。網部材27の上から、前述した「厚層基材吹付け工法」に基づき植生材30を吹付け、吹付け層31を形成する。植生材30の一部は、網部材27の網目及び前壁部21,8の格子部分を通り上下両緑化シート25,16に付着する。各緑化構造物52の上部において、苗木29を植栽する予定の箇所に穴28を掘る。この際、網部材27の該当個所を切抜き、上部緑化シート25の該当個所に切込み26を入れる。切込み26に代えて、同上部緑化シート25の一部を切抜いて孔を形成してもよい。穴28に苗木29を入れ、隙間に盛土材10を充填する。この苗木29の植栽作業を全緑化構造物52に対し行うと、緑化作業が終了する。
【0051】
前記緑化構造によれば、図1及び図3に示すように、岩盤法面1の複数箇所において縦横に隣り合う凹部2の間隔d1,d2が略一定であり、各凹部2毎に苗木29が植栽されている。このことから、複数の苗木29が岩盤法面1の全面に対し略等間隔で点在することとなる。このときには、吹付け層31内の種子が発芽せず、草本類が生えてない。このため、緑化構造の構築直後には、まばらに植栽された苗木29のみによって緑色の部分が構成される。
【0052】
各苗木29の各部は時間の経過とともに徐々に生長してゆく。すなわち、苗木29の幹や枝が伸び、葉が大きくなる。この生長にともない、葉等による緑色の部分の面積が増加してゆく。各緑化構造物52よりも上方の空間が効果的に緑化される。この際、幹、枝、葉等は凹部2の内壁面4の前方に位置していることから、同内壁面4を隠す機能も発揮する。また、苗木29の根29aは盛土材10の中で伸びる。やがて、根29aの一部が岩盤51内に入り込む場合もある。また、植生材30及び盛土材10に含まれている種子や飛来してきた種子が発芽し、時間の経過とともに徐々に生長してゆく。これらの生長により、枠柵19,6における前壁部21,8の前方部分(吹付け層31)が効果的に緑化される。
【0053】
ここで、隣り合う苗木29の間隔d1,d2が略一定であることから、極端に緑色の部分が少なくて岩盤法面1が多く露出したり、極端に緑色の部分が多くなったりすることはない。岩盤法面1の略全面が時間の経過に従い緑色の部分で覆われてゆく。このように、岩盤51のみでは植物が育ちにくく緑色の部分が少ないが、前述したように生長する樹木、草等の植物によって緑色の部分が広がってゆく。
【0054】
ところで、岩盤法面1に多数の凹部2が穿設され、しかも、緑化構造物52の大部分が各凹部2内に入り込んでいる。この入り込んだ分だけ、岩盤法面1からの緑化構造物52の突出量が少なくてすむ。このため、凹部を穿設せずに岩盤法面に網篭を吊下げた従来技術(特許公報第2559652号)とは異なり、岩盤法面1が凸凹にならず、緑化構造によって岩盤法面1の景観を損なうことがない。
【0055】
特に、岩盤法面1からの突出部分の量は、主に、凹部2の開口部分に位置する上下両枠柵19,6によって決定される。本実施形態では、上部両枠柵19,6の前壁部21,8が岩盤法面1に沿って傾斜している、すなわち、前壁部21,8が底部20,7に対し約60度の角度で傾斜している。このため、沿ってない場合(例えば垂直の場合)に比べ、同前壁部21,8の突出量が少ない。従って、上下両枠柵19,6を設置したことによる不自然さを、見る者にあまり感じさせない。この点も、景観向上に役立っている。
【0056】
上下両緑化シート25,16は不織布によって形成されているので、土や石を通しにくい。このため、上下両枠柵19,6が鉄筋によって格子状に形成されているにもかかわらず、網篭よりなる緑化ボックスを用いた従来技術(特許公報第2559652号)とは異なり、降雨によって上下両枠柵19,6から盛土材10が抜け落ちるのを防止できる。
【0057】
また、上下両強化シート17,5は、その繊維材料の有する毛細管現象により、盛土材10に含まれて同強化シート17,5に至った水を凹部2の開口部分へ導く。上下両緑化シート25,16及び上下両枠柵19,6はともに水を通す。このため、たとえ大量の降雨があっても十分に排出される。排出されずに残った水によって盛土材10が軟弱化するおそれはない。
【0058】
さらに、本実施形態では、岩盤法面1のところどころに凹部2を穿設し、そこに緑化構造物52を構築しているので、岩盤法面1の全面にわたって構築する従来技術(特開平4−213625号公報)に比べて資材が少なくてすみ、施工にかかる期間(工期)も短くてすむ。施工に要するコストを低減することができ、経済性に優れる。
【0059】
本実施形態は前述した事項以外にも以下の特徴を有する。
【0060】
(a)上下両強化シート17,5により導かれて凹部2の開口部から排出された水は、各盛土層11,12の前面を伝って流下する。この水により、盛土材10の前部が削り取られたり盛土材10の養分が流れたりするおそれがある。しかし、その流下する水は、前壁部21,8に沿って配置した養分補給部材24,13にも浸潤し、緩効性の肥料15等を少しずつ溶け出させる。溶け出した肥料15等は盛土材10に養分を補給するため、前記流下水に起因する盛土材10の痩せを防止し、緑化を促進することができる。
【0061】
(b)不織布によって構成された上下両強化シート17,5の一部は、対応する底部20,7を越えて盛土材10中に広がり、上下両枠柵19,6を盛土材10に係留するとともに、盛土材10を安定化させる。また、上下両強化シート17,5は厚手で高強度を有する不織布によって形成されているので、盛土材10からの圧力を受けても切れにくい。
【0062】
(c)盛土材10の充填に際しては、ショベルカー等の機械により同盛土材10を各凹部2の奥部に運び入れ、その後、人手によって盛土材10をならすことがある。この場合、盛土材10をショベルですくって上下両枠柵19,6側へ向けて放り込むことになる。このとき、盛土材10といっても、土ばかりでなく小石も多く含まれている。このような盛土材10を放り投げた場合には、一般的には、盛土材10中の土はあまり遠くへ飛ばず、土よりも重い礫が遠くへ飛ぶ傾向にある。その結果、底部20,7上には礫の占める割合が高くなる。このことは、土の割合の高い箇所よりも養分が少ないことを意味する。しかし、この礫の多い箇所は、苗木29の植栽箇所から離れているため、同苗木29の生育にほとんど影響がない。なお、苗木29が根付いて、その根29aが伸びてきた場合には、礫が多く土が少なくても、その礫の溜った箇所に配置された養分補給部材24,13から、養分を根29aに供給することができる。
【0063】
(d)上下両緑化シート25,16の前面や、岩盤法面1に、種子及び人工土壌を含む吹付け層31を形成しているので、単に上下両緑化シート25,16に種子を内蔵した場合と比べて、種子の発芽及び生長性がよく、洋芝等の種子の発芽による一次植生を短期間で達成することができる。その後は、木本植物が生長する。なお、吹付け層31内に埋設された網部材27は、その吹付け層31が流出するのを規制する。
【0064】
(e)緑化構造物52の構築時に苗木29を植栽しているので、構築後の比較的早期から緑量を確保することができる。また、景観向上を図るうえで効果的である。
【0065】
(f)枠柵、盛土材、強化シート、緑化シート等からなる段を1つの単位とし、この段を凹部2毎に複数段にわたり積み上げることにより緑化構造物52を構築している。このため、1つ当りの枠柵の高さがわずかであっても、複数の枠柵19,6が重ねられて複数の段が形成されると、最上段の枠柵(上部枠柵19)や盛土材10の上面(表土23a)の位置が高くなる。少ない種類(ここでは単一)の枠柵でも、種々の高さの緑化構造物52を簡単に構築できる。従って、大きさの異なる多種類の枠柵を準備しなくてもすむ。
【0066】
(g)縦用鉄筋56の上端部が曲げ加工されていて、端面56aが盛土材10内に埋まっている。このため、縦用鉄筋56の端部が露出して景観を損なうのを防止するために、特別な処理を施す必要はない。屈曲部56bは湾曲させられているので、たとえ吹付け層31から露出しても上記不具合を引き起さない。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図8に示すように、複数の凹部2は岩盤法面1の傾斜方向(縦方向X)に沿う複数箇所において、隣り合う凹部2との間隔d1が略一定となる位置に設けられている。各凹部2は岩盤法面1の幅方向(横方向Y)に沿って延びている。各凹部2は、ちょうど第1実施形態において横方向Yに隣り合う凹部が互いに繋がれたような形状をなしている。また、図示はしないが、上下両強化シート17,5、上下両枠柵19,6、上下両緑化シート25,16、表土23a及び盛土層23,22,12,11が各凹部2の略全長にわたって配設されている。このようにして1つの単位の緑化構造物52が構成されている。各緑化構造物52の表面には網部材27が敷かれ、吹付け層31が形成されているが、表土23aに対応する箇所には網部材27は敷かれていない。これは、吹付け層31等が雨等によって流されたときに、網部材27が露出して歩行の邪魔になるのを防ぐためである。さらに、各緑化構造物52の上面の吹付け層31も省略可能である。
【0069】
岩盤法面1には、隣り合う緑化構造物52の端部同士等を繋ぐ階段64が設けられている。また、各緑化構造物52上部の上部枠柵19寄りの箇所には、苗木29が横方向Yに沿って略一定間隔d3毎に植栽されている。この間隔d3は、場所によって異なっていてもよい。各緑化構造物52上部において苗木29よりも後方の箇所は、人が歩くことのできる程度の幅を有している。
【0070】
上記構成によると、各凹部2においては、横方向Yに沿って複数の苗木29が略一定間隔d3毎に位置する。すなわち、複数の苗木29が岩盤法面1に対し、縦方向X及び横方向Yに点在することとなる。このため、各苗木29が生長してゆくと、岩盤法面1が時間の経過に従い緑色の部分で覆われていく。このように、本実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0071】
また、緑化構造物52は、緑化のための植物が根付く箇所(土壌)として機能するだけでなく、遊歩道等の道路としての機能も発揮する。すなわち、人が各緑化構造物52の上を歩くことにより、岩盤法面1の横方向Yにおける位置が変化する。加えて、階段64を登ったり降りたりすることにより縦方向Xにおける位置(高さ)が変化する。従って、人は緑化構造物52の上や階段64を歩くことにより、森林浴等を楽しみながら、傾斜した岩盤法面1を登り降りすることができる。
【0072】
なお、縦用鉄筋56の端部が曲げ加工されている点は第1実施形態と同様であるが、このことは、第2実施形態では、歩行の際に同縦用鉄筋56が邪魔になるのを防止するうえで特に重要である。
【0073】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、第1及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態等と同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。また、図9及び図10には説明の便宜上、1段からなる緑化構造物52が示されている。つまり、下部強化シート5、杭9、下部枠柵6、下部盛土層11、中下部盛土層12、養分補給部材13及び下部緑化シート16が省略された状態が示されている。もちろん、複数段からなる緑化構造物52に変更してもよい。第3実施形態では、上部枠柵19の前壁部21が、底部20となす傾斜角度が約90度となるように曲げ形成されている。同上部枠柵19が凹部2に設置された状態では、前壁部21が略垂直方向へ延びている。
【0074】
上記構成によると、各凹部2の内壁面4から前壁部21の上端までの距離は、前壁部21が約60度で曲げ形成されている第1及び第2実施形態よりも大きくなる。これにともない緑化構造物52の上面の有効面積が広がる。従って、第2実施形態と同様に緑化構造物52を遊歩道等の道路として機能させる場合、十分に広い幅(幅員)を簡単に確保することができる。
【0075】
また、前壁部21が略垂直となっていることから、緑化構造物52の構築時において、充填された盛土材10を押し固める際に、次のような利点がある。仮に、前壁部21が後方へ大きく傾斜していると、その根本部分の近くに衝撃ローラを配置することができない。これは、前壁部21と衝撃ローラとが干渉し合うからである。そのため、他の方法によって盛土材10を押し固める必要が生ずるが、衝撃ローラによる場合と同程度に盛土材10を押し固めることは難しい。これに対し、前壁部21が略垂直であると、前述した干渉が少なく、前壁部21の根本部分の近くであっても、他の箇所と同様にして衝撃ローラを配置できる。このため、盛土材10のどの箇所であっても略均一に高い圧力で押し固めることができる。このことは、緑化構造物52を複数段からなるものに変更した場合に特に有利である。
【0076】
なお、図9及び図10では、表土23aの上に吹付け層31が形成された状態が図示されているが、この吹付け層31は第2実施形態と同様に省略可能である。
【0077】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
図11に示すように、表土23aには前述した苗木29に代えて、土のう58が埋められている。土のう58は、生分解性材料によって形成された袋体59と、その袋体59の中に詰められた土砂60及び植物の種子61とを備えている。なお、上部緑化シート25における土のう58の近傍箇所に、植物の根の通過を許容する孔を予めあけておいてもよい。
【0079】
上記構成によると、緑化構造物52の構築後、土のう58内の種子61が発芽及び生長し、その過程で袋体59を通る。従って、本実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。そのほかにも、土のう58は防塞機能を発揮し、雨等によって表土23a等が軟弱化しても、その部分の流動をせき止める。このため、盛土材10の流出を防止できる効果がある。また、袋体59を構成する生分解性材料は、土砂60中や盛土材10中に存在する雑菌等の微生物により分解され、時間の経過とともに消失する。袋体59が長期にわたって残存することによる不具合、例えば、植物における根の生長の妨げとなったり、除草の際に除草器具に絡まったりするのを未然に防止できる。
【0080】
本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0081】
(1)第1実施形態において、岩盤法面1での凹部2の穿設位置を適宜変更してもよい。例えば、第1実施形態では図3に示すように、凹部2を縦方向Xにも横方向Yにも等間隔となる位置に設けたが、千鳥状となる位置に設けてもよい。岩盤法面1の全面を満遍なく緑化する観点からは、凹部2の配列状態が規則的になるように、同凹部2の位置を決定することが望ましい。例えば、岩盤法面1を側方から見た場合に、緑色の部分が傾斜方向に沿って連続しているようにするには、間隔d1を略一定にすることが重要である。この際、横方向Yにおける間隔d2は必ずしも略一定でなくてもよい。
【0082】
(2)第1実施形態では、上下両枠柵19,6に関し、2回に分けて盛土材10を充填している。これは、主に、盛土材10が多く、1度の転圧では十分に押し固めることが困難であることによる。従って、盛土材10の量が少なく、1度の転圧で十分押し固めることができる場合には、盛土材10を1度に(1回で)充填してもよい。
【0083】
(3)養分補給部材24,13を第1実施形態とは異なる箇所に配置してもよい。例えば、盛土材10中という条件のもとでは、図12に示すように、枠柵19,6の底部20,7の上方近傍に配置してもよい。
【0084】
また、養分補給部材24,13を上下両枠柵19,6の前方に配置してもよい。この場合には、養分補給部材24,13を係止する手段が必要であり、例えば、網部材27の必要箇所に同養分補給部材24,13を取付けてもよい。具体的には、網部材27の網目を利用して養分補給部材24,13を紐等で結び付ける。特に、合成樹脂製の網部材27であれば、養分補給部材24,13を横方向Yに細長い形状とし、これを網部材27の網目に通して係止してもよい。
【0085】
さらに、養分補給部材24,13を、前壁部21,8と上下両緑化シート25,16との間に配置してもよい。この場合には、同養分補給部材24,13を前壁部21,8に直接係止したり、同前壁部21,8の格子部分を通じて網部材27に係止したりする。
【0086】
(4)網部材27において、上下両枠柵19,6の前壁部21,8に対応する箇所を省略してもよい。この箇所では、網部材27がなくても、吹付け層31が前壁部21,8及び上下両緑化シート25,16に付着して係留されるからである。
【0087】
(5)前記各実施形態において、重ねられる枠柵19,6の段の数を変更してもよい。1段の場合、枠柵、強化シート、緑化シート等はそれぞれ1つになる。また、多数段にした場合、各前壁部21,8が底部20,7となす傾斜角度を、1段毎にまたは複数段毎に上段側ほど大きく設定することもできる。すなわち、上側ほど前壁部21,8の傾斜を急峻にしてもよい。このようにすると、盛土材10の荷重による圧力が大きな下段側において前壁部21,8の傾斜角度が小さくなり、同圧力に耐える強度が確保される。また、前記圧力の小さな上段側ほど前壁部21,8の傾斜角度が大きくなり、緑化構造物52の上面の有効面積が広がる。
【0088】
(6)盛土材10からの圧力によって上下両枠柵19,6が前方へ膨らむのを防ぐために、同枠柵19,6を構成する鉄筋において特に強度の要求される部分に、他よりも太い鉄筋を用いてもよい。また、剛性の高い別の部材を添えて、枠柵19,6を補強してもよい。
【0089】
(7)上下両強化シート17,5の後端部をさらに後方へ延ばし、凹部2の内壁面4に杭等で固定してもよい。このようにすれば、同強化シート17,5に係止された枠柵19,6の移動を強力に防止することができる。
【0090】
(8)前記各実施形態では説明を省略したが、図10に示すように、枠柵19,6における前壁部21,8の傾斜角度にかかわらず、同前壁部21,8及び底部20,7をフック付き連結棒35、ターンバックル(図示略)等の連結手段によって連結することが重要である。これは、前壁部21,8の強度を高め、盛土材10の荷重によって比較的大きな力が加わっても、同前壁部21,8が前方へ曲がるのを確実に阻止するためである。
【0091】
(9)凹部2の内壁面4にアンカーを固定し、そのアンカーと枠柵19,6とを連結部材によって連結してもよい。アンカーの形状や長さは、岩盤法面1に応じて適宜決定する。連結部材としては金属製のワイヤ、金属製の鎖、合成樹脂製のロープ、ガラス繊維製のロープ等を用いることができる。
【0092】
その一例を図12に示す。この例では、内壁面4に多数の取付け穴36を縦横に間隔をおいてあけ、各取付け穴36に金属棒等よりなるアンカー37を挿入し、モルタル、接着剤、樹脂等の充填材38で固定する。枠柵19,6を設置した後、これとアンカー37とを連結部材39により連結する。詳しくは、連結部材39はワイヤ40と、その両端に固定された二つのフック41,42とからなる。一方のフック41を上下両枠柵19,6の鉄筋に引っ掛けるとともに、他方のフック42をアンカー37に引っ掛ける。すると、上下両枠柵19,6が連結部材39及びアンカー37によって内壁面4に接続される。上下両枠柵19,6においてフック41を引っ掛ける箇所は、底部20,7でも前壁部21,8でもよいが、前壁部21,8下部の横用鉄筋や底部20,7の横用鉄筋が適当である。また、フック41を引っ掛ける箇所の数は枠柵19,6毎に少なくとも2箇所とするのが好ましい。
【0093】
このようにすれば、上下両枠柵19,6の移動を確実に防止できる。盛土材10の奥行きを小さくしても、アンカー37及び連結部材39によって岩盤51に係留された上下両枠柵19,6が盛土材10を抱持し続けるので、その盛土材10が崩れるのを防止できる。
【0094】
(10)上下両緑化シート25,16として、前述した不織布以外の素材を用いてもよい。例えば、水溶性紙を用いたり、生分解性材料からなるシートを用いたりできる。
【0095】
(11)第4実施形態における土のう58に代えて植生袋を用いてもよい。植生袋は、袋体内に堆肥、肥料、改良土種子等を詰めたものである。
【0096】
(12)第1実施形態等における苗木29に代えて、上部盛土層23に成木を植栽したり、ポット苗を埋めたりしてもよい。
【0097】
(13)縦用鉄筋56の上端部56cを、前記各実施形態で説明した手段(斜め後ろ下方へ折返す)以外の手段によって処理してもよい。例えば、図13に示すように、上端部56cの周りにコンクリート等からなる縁石62を設けてもよい。
【0098】
(14)第2実施形態において、岩盤法面1の傾斜方向(縦方向X)に関し隣り合う凹部2同士を連続して形成してもよい。この場合には、凹部2が階段状に続くことになる。
【0099】
(15)植物として樹木を採用する場合には、可食性の実がなる種類、例えば、通草(あけび)、ぐみ、栗等の樹木を選択してもよい。
【0100】
(16)盛土材10に植物を設ける方法としては、上述した苗木29を植栽する方法や、種子61を含んだ土のう58を配置する方法以外にも、草本類や木本類の種子を盛土材に蒔く方法(いわゆる播種工)を採用してもよい。
【0101】
(17)前記第1乃至第3実施形態における苗木29、及び第4実施形態における土のう58を省略し、上部盛土層23に緑化用植物を設けないようにしてもよい。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、法面、壁面等の保護対象面からの突出部分を少なくして良好な景観を保つことができる、また、降雨等により盛土材が流出したり、しみ込んだ水が排出されずに残って盛土材が軟弱化したりするのを未然に防止できる。さらに、緑化構造物を保護対象面の全面にわたって設ける場合に比べて、施工に要するコストを低減し、施工期間を短縮できる。
【0103】
また、本発明によれば、生長する植物により凹部の内壁面を隠すとともに、盛土材よりも上の空間を効果的に緑化することができる。
【0104】
また、本発明によれば、保護対象面からの枠柵の突出部分を極力少なくできるので、発明の効果を奏するうえで有効である。
【0105】
また、本発明によれば、保護対象面を略均一に緑化することができる。
【0108】
また、本発明によれば、緑化構造物の構築後の比較的早期から緑量を確保することができる。また、樹木による緑化は景観向上を図るうえでも好ましい。
【0109】
また、本発明によれば、盛土材が雨等によって流出するのを防止することができる。
【0110】
また、本発明によれば、不要となった土のうの袋体を時間の経過とともに消失させることができる。袋体が残存することによる不具合の発生を防止できる。
【0111】
また、本発明によれば、枠柵の棒状部材の端面が盛土材から露出し、他の物や人に直接触れるのを未然に防止することができる。
【0112】
また、本発明によれば、少ない種類の枠柵でも、種々の高さの緑化構造物を簡単に構築できる。従って、大きさの異なる多種類の枠柵を準備しなくてもすむ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における緑化構造物を示す縦断面図である。
【図2】図1の緑化構造物の部分斜視図である。
【図3】複数の凹部が穿設された岩盤法面を示す部分斜視図である。
【図4】岩盤法面を緑化する工程を示す部分縦断面図である。
【図5】同じく、岩盤法面を緑化する工程を示す部分縦断面図である。
【図6】同じく、岩盤法面を緑化する工程を示す部分縦断面図である。
【図7】同じく、岩盤法面を緑化する工程を示す部分縦断面図である。
【図8】本発明を具体化した第2実施形態において、複数の緑化構造物が構築された岩盤法面を示す部分斜視図である。
【図9】本発明を具体化した第3実施形態における緑化構造物の部分斜視図である。
【図10】図9の緑化構造物の縦断面図である。
【図11】本発明を具体化した第4実施形態における緑化構造物の縦断面図である。
【図12】上下両枠柵を岩盤に係留した別の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図13】前壁部の上端部を縁石によって処理した別の実施形態を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 保護対象面として岩盤法面
2 凹部
3 凹部の底面
5 下部強化シート
6 下部枠柵
7,20 底部
8,21 前壁部
10 盛土材
16 下部緑化シート
17 上部強化シート
19 上部枠柵
25 上部緑化シート
29 植物としての苗木
56 棒状部材としての縦用鉄筋
56c 上端部
58 土のう
59 袋体
61 種子
d1,d2,d3 間隔
X 傾斜方向としての縦方向
Y 幅方向としての横方向
Claims (8)
- 傾斜した法面、壁面等の保護対象面の幅方向及び傾斜方向の複数箇所において設けられた凹部と、
略水平方向に延び、かつ前記凹部に載置される底部、及びその底部の前端から略上方へ延び、前記保護対象面に沿って傾斜している前壁部を有する格子状の枠柵と、
前記凹部内において前記枠柵の前壁部よりも後方の空間に略水平な表土を有するように充填された盛土材と、
ジオテキスタイルからなり、前記凹部の底面及び盛土材間に介在された強化シートと、
前記枠柵の前壁部及び盛土材間に介在された透水性を有する緑化シートと
を具備することを特徴とする法面、壁面等の緑化構造。 - 前記盛土材の上部には緑化用の植物が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記凹部は、前記保護対象面の複数箇所において、隣り合う凹部との間隔が略一定となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記植物は、前記盛土材の上部に植栽された苗木が生長したものであることを特徴とする請求項2に記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記植物は、前記盛土材の上部に配置された土のう内の種子が発芽し生長したものであることを特徴とする請求項2に記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記土のうの袋体は生分解性材料により形成されていることを特徴とする請求項5に記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記枠柵の前壁部は、前記底部の前端から略上方へ延びる棒状部材を備えており、その棒状部材の上端部は下方へ向けて折返されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の法面、壁面等の緑化構造。
- 前記枠柵、盛土材、強化シート及び緑化シートにより1つの段が構成され、この段が前記凹部に複数積層されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の法面、壁面等の緑化構造。
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