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JP3716936B2 - Fasリガンドおよびその一部、およびそれをコードするDNA - Google Patents

Fasリガンドおよびその一部、およびそれをコードするDNA Download PDF

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重一 長田
貴司 須田
智裕 高橋
範夫 中村
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Osaka Bioscience Institute
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Osaka Bioscience Institute
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Description

技術分野
本発明は、Fasリガンドおよびその一部、およびそれをコードする新規なDNAを医薬の分野に提供する。本発明は、また、当該新規ポリペプチドを検出するために使用できる抗体を試薬の分野に提供する。さらに、本発明は、当該DNAを含む組換えDNA分子、形質転換体、当該新規ポリペプチドの精製方法、および当該新規ポリペプチドの製造方法、当該DNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、Fasリガンドに関連する物質のスクリーニング法をも提供する。
背景技術
多数の細胞で構成される生体の恒常性は、細胞の増殖と分化およびその死によって巧妙に制御されている。細胞の死は、死につつある細胞の形態から、ネクローシス(壊死)とアポトーシス(自死)に大別される。このうち、ネクローシスとは、一つ以上の細胞あるいは組織や器官の一部分のアクシデンタルな死のことである。ネクローシスを起こした細胞では、細胞膜の破壊、および細胞内容物の細胞外への放出が観察される。一方、アポトーシスとは、生体の恒常性を維持するための細胞死のことである。アポトーシスを起こした細胞では、染色体DNAの断片化、核の濃縮が観察されるが、ネクローシスの場合とは異なり、細胞膜の破壊や細胞内容物の放出は認められない。アポトーシスはプログラム細胞死(programed cell death)の1つの形態であるとも考えられており、例えば、個体発生において不必要な細胞や器官が欠落していく現象は細胞のアポトーシスによるものと考えられている。また、細胞障害性T細胞(CTL)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、TNF−αやTNF−βなどによってウイルス感染細胞や腫瘍細胞が攻撃除去され際の細胞死もアポトーシスであると考えられており、アポトーシスの機能を解明し、生理現象との関係を明らかにするための研究が、多くの研究者によって進められている。
ところで、細胞にアポトーシスを生じさせる物質としてはFas抗体が知られている。Fas抗体は、ヒト線維芽細胞でマウスを免疫して得られたモノクローナル抗体である(ヨネハラS.(Yonehara S.)等、J. Exp. Med.、169巻、1747-1756頁、1989年)。Fas抗体によって認識され、アポトーシスのシグナルを細胞に伝達する細胞表面抗原(Fas抗原)がいかなるものであるかは長年不明であったが、最近、イトウN.(Itoh N.)等によって、Fas抗原遺伝子がクローニングされ、Fas抗原が約45kDの細胞膜上の蛋白質であり、そのアミノ酸配列からTNFレセプターファミリーに属する事が判明した(Cell、66巻、233-243頁、1991年)。また、マウスFas抗原遺伝子もクローニングされ、(ワタナベ−フクナガ(Watanabe-Fukunaga R.)等、J. Immunol., 148巻、1274-1279頁、1992年)、Fas抗原mRNAが、マウスの胸腺、肝、肺、心臓、卵巣で発現していることが確認された。
Fas抗原遺伝子のクローニング以後、Fas抗原を介したアポトーシスと疾患との関係についての研究が進み、種々の報告がされるようになった。
コバヤシN.(Kobayashi N.)等は、エイズウイルス感染によりT細胞膜上にFas抗原の発現が誘導されることを報告し、エイズで見られるT細胞のアポトーシスが、Fas抗原を介した現象である可能性を示唆している(日経サイエンス、6巻、34-41頁、1993年)。
オガサワラ(Ogasawara J.)等は、Fas抗体をマウスに投与することによって、劇症肝炎に似た現象が起きることを観察し、劇症肝炎などの炎症部位では、Fas抗原を介したアポトーシスが生じている可能性を示唆した(Nature、364巻、806-809頁、1993年)。ヒラマツ(Hiramatsu Y.)等は、慢性C型肝炎の患者で、白血球の浸潤が認められる、肝臓の炎症部位にFas抗原の発現が高いことを報告した(Hepatology, 19巻、1354-1359頁、1994年)。
ワタナベ−フクナガ(Watanabe-Fukunaga R.)等は、自己免疫疾患のモデル動物の1つであるlprマウスではFas抗原遺伝子に変異が生じていること、このような変異の生じたFas抗原遺伝子を発現している細胞ではアポトーシスが起きないことを証明している。そして、自己免疫疾患では、Fas抗原もしくはFas抗原に作用してアポトーシスを起こさせる生体内物質に異常があり、そのため、本来アポトーシスを起こして生体内から除去されるべき自己反応性のT細胞が残存し、自己免疫疾患様の症状が生じるのであろうと予想している(Nature, 356巻、314-317頁、1993年)。
このように、Fas抗原が単離され、生体内でFas抗原が発現し、アポトーシスが惹起されることが確認されたことから、Fas抗原に結合して細胞にアポトーシスを起こすような物質(以下、Fasリガンドという)が生体内に存在し、Fas抗原特異的なアポトーシスが起きていることが予想された。
上述のWatanabe-Fukunaga等は、lprマウスと同様に自己免疫疾患様症状を呈するgldマウスでは、Fas抗原に結合する生体内分子の方に異常があるのであろうと予想した。
最近、ルービエE.(Rouvier E.)らは、免疫系においてFas抗原特異的なアポトーシスが生じていることをより具体的に示した(J. Exp. Med., 177巻、195-200頁、1993年)。すなわち、彼らは、マウス末梢血リンパ球(PBL)、および、マウスCTLとラットTリンパ種細胞のハイブリドーマであるPC60-d10S細胞を使用し、これらの細胞によるCa2+非依存的な細胞障害作用が、Fas抗原を発現する細胞に対してのみ認められる事を示した。そして、彼等は、これらのリンパ球細胞、とりわけT細胞がFas抗原もしくはFas抗原に関連する何らかの分子を認識しているであろうこと、およびこれらの細胞がFasリガンドを発現しているかもしれないことを指摘している。
Fas抗原を介したアポトーシスの機構を解明するには、Fasリガンドを単離することが重要である。
上記ルービエ(Rouvier E.)等により、Fasリガンドの存在の可能性が指摘されたが、その実体は何ら明らかにされていない。
前述のように、Fas抗原と様々な疾患、生理現象との関連が示唆されていることから、Fasリガンドの存在を明らかにし、その実体を把握することは、医療をはじめ、多くの分野で渇望されている。
発明の開示
本発明の目的は、Fas抗原に結合する新規な蛋白質およびそれをコードする遺伝子を単離し、提供することにある。
Fas抗原に結合する物質が単離されれば、それを使用して、人為的に生体内で生じるアポトーシスを調節し、疾患の治療や、診断に使用する事ができる。Fas抗原に結合して細胞にアポトーシスを誘導するような物質(Fasリガンド)は、生体にとって不必要な細胞を除去するために使用することが可能である。たとえば、先述したように、エイズウイルス感染細胞ではFas抗原が発現されているので、エイズウイルス感染初期においては、Fasリガンドを使用してアポトーシスを人工的に誘導し、感染細胞を早期に除去する事により、エイズを治療する事が可能であろう。また、ある種の自己免疫疾患では、人為的にFas抗原を介したアポトーシスを生じさせる事により、自己抗原反応性のT細胞の除去が可能になるであろう。また、モリモトH.(Morimoto H.)等は、癌細胞にFas抗原を介したアポトーシスを誘導する事によって、アドリアマイシンやシスプラチンによる制癌効果が相乗的に増強されることを報告している(Cancer Res., 53巻、2591-2596頁、1993年)ので、Fasリガンドは癌治療にも使用することができるであろう。
一方、エイズウイルス感染後期の免疫能の低下や、劇症肝炎における肝機能低下は、免疫担当細胞あるいは肝細胞のアポトーシスにより組織の機能が著しく低下した結果と考えられる。このような状態においては、Fasリガンドの作用を抑制し、細胞のアポトーシスを防ぐことが必要になる。したがって、このような病態には、Fasリガンドの発現を抑制する物質やFasリガンドと拮抗的に作用する物質を使用した治療が必要である。
このように、生体内で生じているアポトーシスを人為的に調節するという原理に基づいた治療方法は、Fasリガンドが同定されて初めて可能になる方法である。
Fas抗原と結合する蛋白質を、治療や研究に使用するためには、当該蛋白質を高純度で、大量に生産することが必要になる。当該蛋白質をコードする遺伝子をクローニングすれば、当該蛋白質を遺伝子工学的に生産することが可能になり、当該蛋白質を治療薬の主成分として使用したり、抗体の作製に使用することが可能になる。また、遺伝子そのものは、遺伝子治療やアンチセンス医薬の開発に使用したり、トランスジェニックマウス等、アポトーシスが関与する治療のモデル動物の作製に使用することができる。
本発明者らは、Fasリガンドを単離すべく鋭意研究を重ねてきた。そして、上述したPC60-d10S細胞に着目した。PC60-d10SはマウスCTLとラットTリンパ腫とのハイブリドーマで、PMA(ホルボールミリステートアセテート)とイオノマイシンで刺激するとFas抗原発現細胞に対してのみアポトーシスを誘導する細胞である。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、無刺激でも、より高い細胞障害作用を示す、Fasリガンド遺伝子をクローニングするのに適した細胞集団、PC60-d10S-2を得る事に成功した。そして、この細胞集団より、ラットFasリガンド遺伝子をクローニングした。また、本発明者らは医薬品等に使用するのに適したヒト由来のFasリガンドを単離することを目的として研究を重ね、ついにヒトFasリガンドをコードする遺伝子を得ることにも成功した。さらに、マウスFasリガンドをコードする遺伝子を得る事にも成功し、これらの配列が互いに類似すること、部分的に共通の配列を有することを確認した。さらに、Fasリガンドの活性に必要と思われる部分を特定し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明第1の態様は、Fasリガンドのアポトーシスを誘導する活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明第2の態様は、Fasリガンドであるポリペプチドの一部を提供する。
本発明第3の態様は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドをコードする塩基配列を有することを特徴とする新規DNAである。
本発明第4の態様は、本発明第3の態様のDNAを含むことを特徴とする組み換えDNA分子である。
本発明第5の態様は、本発明第3の態様の新規DNAで形質転換されたことを特徴とする形質転換体である。
本発明第6の態様は、本発明第4の態様の組み換えDNA分子で形質転換されたことを特徴とする形質転換体である。
本発明第7の態様は、本発明第5または第6の態様の形質転換体を用いることを特徴とする本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドの製造方法である。
本発明第8の態様は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドの精製方法である。
本発明第9の態様は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを認識することを特徴とする新規抗体である。
本発明第10の態様は、Fasリガンド遺伝子またはFasリガンドに対するmRNAの一部に相補的な塩基配列を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体である。
本発明第11の態様は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドもしくはそれを発現する形質転換体を使用することを特徴とするFas抗原もしくはFasリガンドに関連する物質のスクリーニング方法である。
【図面の簡単な説明】
図1は、それぞれd10S、d10S-2、及びpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞のフローサイトメトリーの解析結果、a,b,cを示す図である。
図2は、クローンpTN24-15中の塩基配列および推定されるアミノ酸配を示す図である。
図3は、クローンpTN24-15中の塩基配列および推定されるアミノ酸配を示す図である。
図4は、d10S、d10S-2、d10S-16のノーザンハイブリダイゼションの結果を示す図である。
図5は、ラット脾細胞と胸腺細胞とを用いたノーザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
図6は、ラット各組織のノーザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
図7は、d10S-12及びpTN24-15で形質転換したCOS-7細胞の免疫沈降の結果を示す図である。
図8は、W4、WR19Lを標的細胞としたときのd10S細胞の細胞障害活性を示す図である。
図9は、W4、WR19Lを標的細胞としたときのpTN24-15で形質転換したCOS-7細胞、pCEV4で形質転換したCOS-7細胞の細胞障害活性を示す図である。
図10は、W4、WR19Lを標的細胞としたときのpTN24-15で形質転換したCOS-7細胞、pCEV4で形質転換したCOS-7細胞の細胞障害活性を示す図である。
図11は、W4細胞に対するd10S細胞及びpTN24-15で形質転換したCOS-7細胞の細胞障害作用のmFas-Fcによる阻害を示す図である。
図12は、pTN24-15で形質転換したCOS-7細胞をエフェクター細胞とし、W4細胞を標的細胞としたときの、標的細胞における染色体DNAの変化を示すゲル電気泳動を示す図である。
図13は、精製したFasリガンドの10-20%グラジエントSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。
図14は、W4及びWR19L細胞を標的細胞としたときの精製Fasリガンドの細胞障害活性を示す図である。
図15は、プラスミドpBL-hFL4H中の塩基配列及び推定されるアミノ酸配列を示す図である。
図16は、ヒトFasリガンド染色体遺伝子の塩基配列を示す図である。
図17は、ヒトFasリガンド染色体遺伝子の塩基配列を示す図である。
図18は、ヒトFasリガンド染色体遺伝子の塩基配列を示す図である。
図19は、クローンpBX-hFL1中の塩基配列を示す図である。
図20は、クローンpBX-hFL1中の塩基配列を示す図である。
図21は、pEX-hFL1で形質転換させたCOS細胞およびpEF-MFLW4Fで形質転換させたCOS細胞をエフェクター細胞とし、WR19LおよびWC8Aを標的細胞とした時の特異的細胞溶解率を示す図である。
図22は、hFas-FcおよびmFas-Fcによる、pEX-hFL1で形質転換させたCOS細胞のWC8A細胞に対する細胞障害活性の阻害を示す図である。
図23は、クローンpBL-MFLW4中の塩基配列を示す図である。
図24は、クローンpBL-MFLW4中の塩基配列を示す図である。
図25は、pEF-MFLW4Fで形質転換させたCOS細胞をエフェクター細胞とし、WR19LおよびW4を標的細胞とした時の細胞障害活性を示す図である。
図26は、gldマウスより単離したFasリガンドcDNAを含むプラスミドで形質転換させたCOS細胞をエフェクター細胞とし、WR19LおよびW4を標的細胞とした時の細胞障害活性を示す図である。
図27は、微生物の形態を表す図面代用写真であって、抗血清19-3とヒトFasリガンド発現細胞を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す図面代用写真である。
図28は、微生物の形態を表す図面代用写真であって、モノクローナル抗体F864-5-1とヒトFasリガンド発現細胞を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す図面代用写真である。
図29は、モノクローナル抗体F883-1-1のペプチドとの反応性を示す図である。
図30は、モノクローナル抗体F883-1-1のアポトーシス抑制活性を示す図である。
図31は、モノクローナル抗体F897-1-2のペプチド▲3▼との反応性を示す図である。
図32は、モノクローナル抗体F897-1-2のアポトーシス抑制活性を示す図である。
図33は、WC8およびW4を標的細胞とした時の形質転換体COS-1/pM1070の培養上清の細胞障害活性を示す図である。
図34は、WC8およびW4を標的細胞とした時の、形質転換体COS-1/pEX-hFL1の培養上清の細胞障害活性を示す図である。
図35は、微生物の形態を示す図面代用写真であり、非還元条件下における、形質転換体COS-1/pM1070の培養上清のウエスタンブロッティングの結果を示す。
図36は、微生物の形態を示す図面代用写真であり、非還元条件における形質転換体COS-1/pEX-hFL1の培養上清のウエスタンブロッティングの結果を示す。
図37は、アンチセンスオリゴヌクレオチドA41のアポトーシス抑制活性を示す図である。
図38は、アンチセンスオリゴヌクレオチドA69,A184,A355,A505,A733,A924のアポトーシス抑制活性を示す図である。
図39は、各培養上清中のポリペプチドND38、ND40、ND41、ND42、ND43およびCD179の細胞障害活性を示す図である。
図40は、微生物の形態を示す図面代用写真であって、形質転換体JE5505(pM1068)の菌体および培養上清のウェスタンブロッティングの結果を示す。
図41は、微生物の形態を示す図面代用写真であって、形質転換体JE5505(pM1069)の菌体および培養上清のウェスタンブロッティングの結果を示す。
発明の概要
以下に詳細に本発明を説明する。
まず、本発明第1の態様について説明する。
本明細書中の説明において、「式X(もしくは配列番号X)に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」とは、そのポリペプチドのアミノ酸配列が、式Xもしくは配列番号Xに記載されたアミノ酸配列であるか、式Xもしくは配列番号Xのアミノ酸配列のN末端、C末端のいずれか一方、もしくはその両方に、任意の1つ以上のアミノ酸が付加してなるアミノ酸配列であることを意味する。また、「式X(もしくは配列番号X)に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド」とは、そのポリペプチドのアミノ酸配列が、実質的に、式Xもしくは配列番号Xに記載のアミノ酸配列であることを意味する。
また、本明細書中の説明において、「Fasリガンド」とは、少なくともその活性として、Fas抗原を発現する細胞に対してアポトーシスを誘導する活性を有する物質のことである。Fasリガンドによるアポトーシスの誘導は、Fasリガンドが細胞表面のFas抗原に結合し、Fas抗原を介して、アポトーシスのシグナルが細胞に伝達されるためと考えられている。ここでいうFas抗原はいかなる動物種由来のFas抗原であってもよい。例えば、ヒトFas抗原であれば、イトウ等によりアミノ酸配列が決定されており、マウスFas抗原であればワタナベ−フクナガ等によりアミノ酸配列が決定されており、ラットFas抗原であれば、キムラ等により、アミノ酸配列が決定されている(イトウN.(Itoh N.)等、Cell, 66巻、233-243頁、1991年、ワタナベ−フクナガR.(Watanabe-Fukunaga R.)等、J. Immunol., 148巻、1274-1279頁、1992年、キムラK.(Kimura K.)等、Biochem. Biophys. Res. Commun., 198巻、666-674頁、1994年)。
本発明第1の態様のFasリガンドのアポトーシス誘導活性を有する新規ポリペプチドは、式1ないし12(配列表の配列番号1ないし12)いずれかに記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
このうち、前記式1ないし4は、ヒト細胞より得られたFasリガンドのアミノ酸配列であり、前記式5ないし8はラット細胞より得られたFasリガンドのアミノ酸配列である。また、前記式9ないし12はマウス細胞より得られたFasリガンドのアミノ酸配列である。
前記式4、8、12のアミノ酸配列は、いずれも、細胞内領域、膜貫通領域、細胞外領域を含んでいることから、これらのポリペプチドは、生体内においては細胞表面ポリペプチドとして存在していると考えられる。従って、これらのアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、これらを発現している細胞や組織から精製する必要がある。ところで、このような細胞表面上に存在するポリペプチドの細胞外領域は、細胞膜から切断、遊離され、それを生産する細胞の培養上清中や、尿や血液等の体液中に存在することが多い。一般に、ポリペプチドの精製は、細胞や組織から精製する場合と、培養上清や尿から精製する場合とでは、後者の方が効率的であり収量も多い。従って、Fasリガンドにおいても、細胞外領域の方が、その生産性の面で、都合がよい。
本発明では、このようなFasリガンドの細胞外領域も本発明のFasリガンドのアポトーシス誘導活性を有するポリペプチドとして提供する。細胞外領域が細胞膜から切断される部位は、それを生産する細胞の培養条件や細胞内外のプロテアーゼの影響により、多様性が生じることもある。しかしながら、本発明において提供されるFasリガンドの細胞外領域の好ましい例は、前記式3、7、11のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドである。これらはそれぞれヒト、ラット、マウスのFasリガンドの細胞外領域のアミノ酸配列に相当する。前記式3の配列は、前記式4のアミノ酸配列のN末端より数えて第103番目から281番目に相当し、前記式7の配列は前記式8のアミノ酸配列のN末端から数えて第100番目から278番目に相当する。また、前記式11の配列は前記式12のアミノ酸配列のN末端から数えて第101番目から279番目に相当する。
本発明のFasリガンドのアポトーシス誘導活性を有するポリペプチドは、好ましくは、Fasリガンドの細胞外領域である。
ところで、周知のとおり、ポリペプチドを組み換えDNA技術を使用して製造する場合には、低分子量のポリペプチドの方が発現量が高く、より高い生産効率が期待できる。また、活性に必要な部分のみを有しているポリペプチドは、余分な配列を有しているポリペプチドに比べ、生体に対する抗原性が低いことが期待される。加えて、低分子量のポリペプチドであれば、他の活性を有するポリペプチドと融合させて新たな活性を付加させたり、抗体と結合させて特定の細胞にのみ作用させる等の修飾が容易である。本発明は、このように、生産性、抗原性等の点で有用性が期待できるより低分子のポリペプチドとして、前記式1、5、9のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。また、本発明は、前記式2、6、10のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
前記式1、2、5、6、9および10は、ヒト、ラットおよびマウスの細胞外領域部分のアミノ酸配列の一部を表すものである。
すなわち、前記式1、5、9のアミノ酸配列は、それぞれ、前記式3、7、11のアミノ酸配列のN末端から42アミノ酸が欠損した配列である。また前記式2、6、10のアミノ酸配列は、それぞれ、前記式3、7、11のアミノ酸配列のN末端から41アミノ酸が欠損した配列である。実施例からも明らかなように、細胞外領域のアミノ酸配列である前記式3のN末端から42アミノ酸、41アミノ酸を欠損したアミノ酸配列(それぞれ、前記式1、式2)のアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもアポトーシス誘導活性を有している。また、前記式3のN末端から40アミノ酸、38アミノ酸、34アミノ酸を欠失したアミノ酸配列を有するポリペプチドであっても、アポトーシスを誘導する活性を有している。
このことは、細胞外領域のN末端から43番目以降のアミノ酸配列がアポトーシス誘導活性には必要であり、このアミノ酸配列、すなわち前記式1、5、9いずれかに記載のアミノ酸配列をその一部に含有するポリペプチドは、アポトーシス誘導活性を有していること、および欠損するアミノ酸の数によってアポトーシスを誘導する活性に差があることを示唆している。従って、本発明の新規ポリペプチドは、前記式1、5、9のいずれかのアミノ酸配列を含有するものとして特徴づけられる。
本発明第1の態様のポリペプチドの中で、ヒト由来のFasリガンドの細胞外領域である前記式3のアミノ酸配列のN末端から1ないし42のいずれかの数のアミノ酸が欠如したアミノ酸配列を有するポリペプチドは、いずれも、他の動物種から得られたFasリガンドに比べてヒトに対する抗原性が低く、形質転換体において適当なシグナルペプチドをつけて発現させれば、形質転換体の培養上清から回収でき、低分子化されているので優れた生産性が期待される。なかでも、前記式3のN末端から40アミノ酸を欠損したアミノ酸配列を有するポリペプチド、および前記式3のN末端から34アミノ酸を欠損したアミノ酸配列を有するポリペプチドは、活性の面からも好ましいポリペプチドである。
一般にポリペプチドは、種の違い、個体の違いによって、その基本的な機能が保持れたまま、アミノ酸配列に変異が生じる場合がある。ここでいうアミノ酸の変異とは、アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が、欠失したり、他のアミノ酸に置換されたりすること、および、アミノ酸配列中の任意の位置に1つ以上のアミノ酸が挿入もしくは付加されたりすることである。このような変異は、遺伝子工学的な技術を使用し、人工的に生じさせることも可能である。従って、ポリペプチドが、前記式1ないし12に記載のいずれかのアミノ酸配列に上記のような変異が生じたアミノ酸配列を含有するものであっても、それが、前記式1ないし12のアミノ酸配列を有するポリペプチドと同様の性質を有する限り、本発明のポリペプチドに含まれる。
一般に、同一の機能を有するポリペプチドに対するDNAは、動物種や個体が異なっていても互いに相同性があり、互いにハイブリダイズすることが多い。アミノ酸の多様性も、それらをコードするDNAが互いにハイブリダイズする範囲で生じることが多い。例えば実施例で示したハイブリダイゼーション法によるDNAのクローニングは、前記式3または11のアミノ酸配列をコードするDNAが、前記式7のアミノ酸配列をコードするDNAとハイブリダイズすることを示している。そして、前記式3のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ヒトFas抗原に加え、少なくとも、マウスFas抗原に結合する。前記式7のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ラットFas抗原に加え、少なくともマウスFas抗原にも結合する。前記式11のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、マウスFas抗原に加え少なくともヒトFas抗原にも結合する。このように、互いにハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、実質的に同一の機能を有すると考えられる。
従って、本発明の新規ポリペプチドは、前記式1ないし12、より好ましくは前記式1、5、9のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列にハイブリダイズする塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を含有するものとしても特徴づけることができる。本発明の新規ポリペプチドは、好ましくは、この特徴に加え、少なくともヒトFas抗原、ラットFas抗原、マウスFas抗原のいずれかに結合するものであり、さらに好ましくはアポトーシス誘導活性を有するものである。
つぎに、本発明第2の態様の新規ポリペプチドについて説明する。
本発明第2の態様の新規ポリペプチドは、Fasリガンドの一部およびそれらの融合体である。本発明の第2の態様のポリペプチドは、好ましくは、前記式4、8、12いずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドおよびそれらポリペプチドを2種以上融合させてなる融合体である。
前記式4、8、12いずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドとは、いかなる長さのポリペプチドであってもよい。しかしながら、当該ポリペプチドが、前記式4、8、12に特徴的な配列を有するためには、当該ポリペプチドは、好ましくは、5アミノ酸以上、さらに好ましくは10アミノ酸以上のアミノ酸からなるポリペプチドである。
本発明第2の態様のポリペプチドは、Fas抗原に結合する物であっても、しない物であってもよい。本発明第2の態様のポリペプチドが、Fas抗原に結合し、かつアポトーシスを誘導しない場合には、生体内のFasリガンドに拮抗する物質として、アポトーシスを人為的に抑制するために使用することができる。また、本発明第2の態様のポリペプチドは、実施例に示すように、それが、Fas抗原に結合するかしないかに関わらず、また、アポトーシスを誘導するかしないかに関わらず、本発明第1の態様の新規ポリペプチドに対する抗体作成するための抗原として使用することができる。
前記式4、8、12いずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドを2種以上融合させてなるポリペプチドとは、前記式4、8、12に記載のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドより選ばれる、任意の2つ以上のポリペプチドが任意の順番で融合したポリペプチドである。例えば、前記式4に記載のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチド同士を融合させたもの、前記式4の一部からなるポリペプチドと前記式8の一部からなるポリペプチドを融合させたもの等が本発明に含まれる。このような融合ポリペプチドの例としては、前記式3のアミノ酸配列のN末端から数えて50番目のアミノ酸から179番目までのアミノ酸までの配列に加えて、そのN末端に、前記式7のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸から49番目のアミノ酸までの配列、もしくは前記式11のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸から49番目のアミノ酸までの配列を有するポリペプチドが挙げられる。これらのポリペプチドは、それぞれ、ヒト由来Fasリガンドとラット由来Fasリガンドのキメラ型ポリペプチド、ヒト由来Fasリガンドとマウス由来Fasリガンドのキメラ型ポリペプチドであり、Fas抗原を誘導する細胞に対してアポトーシスを誘導することが期待されるものである。
上述の融合ポリペプチドは、組み換えDNA技術を使用して作製することができる。すなわち、それぞれのポリペプチドをコードするDNAをライゲーションさせて、目的のキメラ型FasリガンドをコードするDNAを作製する。これを適当な発現ベクター組み込んで宿主細胞を形質転換させ、形質転換体もしくはその培養上製から目的のキメラ型Fasリガンドを回収する。
通常、同一の機能を有する蛋白質をコードするDNAの塩基配列は、動物種や個体が違っても、互いにホモロジーを有していることが多い。従って、「配列番号13ないし24(式13ないし24)いずれかの塩基配列中の任意の一つ以上の塩基に変異が生じた塩基配列」とは、前記式13ないし24より選択されるいずれかの塩基配列の少なくとも一部とホモロジーのある配列、すなわち、前記式13ないし24より選択されるいずれかの塩基配列に相補的な配列の少なくとも一部とハイブリダイズする塩基配列を有するDNAであることが好ましい。ここで「ハイブリダイズする」とは、前記式13ないし24のいずれかの塩基配列に相補的な配列の一部をプローブとして、公知の方法(例えば、サムブルックJ.(Sambrook J.)等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., 1989年、Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York)、参照)でハイブリダイゼーションを行った場合にハイブリダイズすることをいう。
本発明の第1および第2の態様の新規ポリペプチドには、糖鎖を有するもの、有さないものいずれもが含まれる。
前記式4および8で示したアミノ酸配列には、それぞれ4ヶ所の糖鎖付加可能部位(N−グリコシレーションサイト)がある。すなわち、前記式4においては、アミノ酸番号76〜78、184〜186、250〜252、260〜262が、前記式8においてはアミノ酸番号116〜118、130〜132、247〜249、257〜259が糖鎖付加可能部位に相当する。また、前記式12のアミノ酸配列には5ヶ所のN−グリコシレーションサイトがある(アミノ酸番号117〜119、131〜133、182〜184、248〜250および258〜260)。
従って、当該ポリペプチドが動物細胞によって生産されたものであったり、遺伝子工学的に酵母や動物細胞等の真核細胞を宿主として生産させたものであったりした場合には、糖鎖が付加される可能性がある。一方、大腸菌等の原核細胞を宿主として遺伝子工学的にポリペプチドを生産させた場合には、当該新規ポリペプチドは糖鎖を持たない。
本発明第1および第2の態様のポリペプチドは、糖鎖の有無にかかわらず有用である。例えば、当該ポリペプチドは、糖鎖の有無にかかわらず、本発明第9の態様の抗体を作成する際の抗原として使用したり、当該ポリペプチドに結合する物質のスクリーニングに使用することができる。
本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドはいかなる方法で生産されたものであってもよい。例えば、ペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー430A型、パーキンエルマージャパン(株)製)を使用して化学合成したものでも、ヒトおよびヒト以外のいかなる生物の組織や細胞、体液から精製されたものであってもよい。ヒトや動物の体液としては、血液や尿があげられる。細胞としては、本発明の新規ポリペプチドを産生する細胞を適宜選択して用いることができる。例えば、脾細胞や胸腺細胞、リンパ球系細胞、および、それらの株化細胞などを、ノーザンブロットあるいはウエスタンブロット等で解析し、本発明の新規ポリペプチドの発現量の高いものを選択する。
必要があれば、細胞をPMA(ホルボールミリステートアセテート)やイオノマイシン、PHA(フィトヘムアグルチニン)、ConA(コンカナバリンA)、IL-2(インターロイキン-2)等の刺激剤から選ばれる、1種もしくは2種以上の適切な刺激剤で刺激して産生誘導する。そして、細胞もしくは培養上清から、当該ポリペプチドを精製する。精製は、濃縮や、各種クロマトグラフィー、塩析など一般的に行われているポリペプチドの精製方法を適宜組み合わせ、Fas抗原への結合性、もしくは、Fas抗原を発現している細胞への細胞障害活性等を指標として行うことができる。精製方法の好ましい例は、第8の態様で説明する。
しかしながら、当該新規ポリペプチドは、その純度の面から、遺伝子工学的に生産されたもの、すなわち、組換え型ポリペプチドであることが好ましい。当該ポリペプチドを遺伝子工学的に生産するには、後述する本発明第3の態様の新規DNA、もしくは第4の態様の組換えDNA分子を用いて、適当な宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養して培養混合物を回収し、当該ポリペプチドを精製する。また、該DNAや組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(サムブルックJ.(Sambrook, J.)et al.: Molecular Cloning 2nd ed.(1989年))で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
遺伝子工学的に本発明の新規ポリペプチドを製造する好ましい方法については本発明第7の態様で説明している。
近年の技術により、ポリペプチドをポリエチレングリコールや、スチレン−マレイン酸コポリマー、デキストラン、ピランコポリマー、ポリリジン等の高分子に結合させたり、多糖類やポリペプチドなどの天然高分子、ホルモンなどの生理活性物質、マグネタイトなどの無機物質に結合させたりすることが可能になった(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84巻,1487-1491頁(1981年)、Biochemistry 28巻,6619-6624頁(1989年))。
ポリペプチドにポリエチレングリコールを結合させる方法の一例を簡単に説明する。まず、ポリペプチドをそれが活性を失わないような範囲の塩基性pHを有する緩衝液に溶解する。その溶液に、メトキシポリエチレングリコールスクリンイミジルサクシネートのような活性化ポリエチレングリコールを混合し、室温で一定時間反応させる。その後、ゲルろ過等によって、活性を有するフラクションを分取する。本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドも公知方法の組み合わせにより、このような修飾が可能である。従って、本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドには、上述のような修飾を受けたものも包含される。
一般に、ポリペプチドは生体や、培養液中で、共有結合によりもしくは共有結合によらずに複数の分子が結合した多量体を形成することがある。多量体の形成は、同じ分子同士が結合して多量体を形成することもあるし、ことなる分子同士が結合して多量体を形成することもある。例えば、TNFは3量体を形成することが知られている。また、アクチビンは2量体を形成することが知られている。
本発明の第1および第2の態様のポリペプチは、単量体であってもよいし、多量体を形成していても良い。例えば、本発明のポリペプチドは、前記式1ないし12いずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドが互いに結合して、3量体を形成していてもよい。
本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドは、生体内で生じるアポトーシスを調節するために使用することができる。
例えば、Fas抗原に結合し、アポトーシスを誘導する、前記式1ないし12のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドに代表される本発明の新規ポリペプチドは、薬剤耐性となった癌を治療するために使用することができる。また、これらは、HIVウイルスが感染した細胞に対し、アポトーシスを人為的に誘導し、AIDSの感染初期の治療薬となり、新しい治療方法を医療の分野に提供する事ができる。
一方、本発明第2の態様の新規ポリペプチドのうち、Fas抗原に結合するがアポトーシスを誘導しないポリペプチドは、肝炎等の重篤な感染症となった時に感染細胞がアポトーシスを起こすのを防ぎ、肝臓等の主要組織の細胞の急激な減少を防止することによって、組織機能の低下を予防することができる。
本発明の新規ポリペプチドを医薬品として使用する場合には、ポリペプチドを有効成分として含む通常の医薬組成物の製造方法に準じて、注射剤、錠剤、カプセル剤、座剤、噴霧剤、クリーム剤、パップ剤、点眼剤等、適当な剤型の医薬組成物を製造する。例えば、注射剤であれば当該新規ポリペプチドを含む溶液を無菌状態で調製し、必要があれば、安定化剤等の補助成分を加えてアンプルに充填し、凍結乾燥することにより、当該新規ポリペプチドを有効成分とする医薬組成物を製造することができる。このようにして得られた医薬組成物は、使用時に、注射用蒸留水等に溶解して静脈内や局所へ投与することができる。医薬組成物の有効成分としては、本発明の新規ポリペプチドの中でもヒトに対する抗原性が最も低い、前記式1ないし4のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、特に前記式1ないし4のアミノ酸配列を有するポリペプチド、もしくは、それらの一部を有するポリペプチドを使用することが好ましい。
本発明のポリペプチドは、患者の年齢や、性別、疾患の種類、程度に応じて、その投与方法、その投与量を設定して使用することができる。すなわち、アポトーシスを調節し、病態を改善するのに適した量を、経口投与、あるいは、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与すればよい。
本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドは、また、抗体を得るための材料として使用することもできる。すなわち、本発明の新規ポリペプチドをウサギなどの動物に投与して、本発明のポリペプチドに対する抗体を作成する。抗体の作製法については、第9の態様で説明する。得られた抗体は、組織や細胞の染色に使用したり、当該新規ポリペプチドを精製するためアフィニティーカラムの作製に使用することができる。
次に本発明の第3の態様の新規DNAを説明する。
本明細書の説明において「式Y(もしくは配列番号Y)の塩基配列を含有するDNA」とは、DNAが、式Y(もしくは配列番号Y)で表されるものであっても、式Y(もしくは配列番号Y)に記載された塩基配列の5'末端、3'末端のいずれか一方、もしくは両方に任意の1つ以上の塩基が付加した配列で表されるものであってもよいことを意味する。ここで、付加される塩基は、コーディングフレームにずれを生じさせない限りいかなるものであってもよく、例えば、リンカー配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他の蛋白質をコードする塩基配列、もしくはDNAプローブ等を作製する際にその検出感度の増加を目的として付加される配列等が例として挙げられる。また、「式Y(もしくは配列番号Y)の塩基配列を有するDNA」とは、そのDNAが実質的に、式Y(もしくは配列番号Y)に記載の塩基配列で表されるものであることを意味する。
本発明第3の態様の新規DNAは、Fasリガンドに対するDNAおよびその一部を含有する。
すなわち、本発明第3の態様の新規DNAは、本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドをコードする塩基配列を含有する。本発明の新規DNAは、好ましくは、前記式1ないし12(配列表の配列番号1ないし12)のいずれかのアミノ酸配列もしくはその一部分をコードする塩基配列を含有する。
一般に、アミノ酸をコードするDNAのトリプレットは、アミノ酸の種類ごとに1〜6種類迄存在することが知られているので、前記配列番号1ないし12いずれかに記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列は1種類には限定されない。したがって、本発明のDNAは、それが前記1ないし12のいずれかに記載のアミノ酸配列もしくはその一部をコードする限り、いかなる配列からなるDNAであってもよい。
しかしながら、好ましくは、本発明の新規DNAは、前記式13ないし24のいずれかに記載の塩基配列もしくは前記式13ないし24(配列表の配列番号13ないし24)のいずれかに記載の塩基配列の一部を含有するDNAである。前記式16、20、24に記載の塩基配列はそれぞれヒト、ラット、マウス由来のFasリガンドのアミノ酸配列である前記式4、8、12に記載のアミノ酸配列をコードするものである。前記式15、19、23に記載の塩基配列は、それぞれ、前記式4、8、12に記載されたFasリガンドの細胞外領域部分である前記式3、7、11に記載のアミノ酸配列をコードするものである。前記式13、14、17、18、21、22に記載の塩基配列はそれぞれ、上記ヒト、ラットまたはマウスFasリガンドの細胞外領域のより短い領域である前記式1、2、5、6、9、10のアミノ酸配列をコードするものである。
本発明のDNAは、それが本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドをコードする塩基配列を含有する限り、cDNAであっても染色体DNAであってもよい。しかしながら、ベクターへの導入の容易さ等、遺伝子工学的手法における扱い易さから、本発明の新規DNAはcDNAであることが好ましい。染色体DNAの一例としては、前記式13ないし16の塩基配列を含有する染色体DNAの塩基配列を図16〜18に示してある。
本発明のDNAは、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを、組み換えDNA技術を使用して製造するために有用である。すなわち、本発明のDNAを、プロモーター配列等の発現に必要な配列を有する適当な発現ベクターの適当な位置に挿入し、このベクターで適当な宿主細胞を形質転換することによって、形質転換体に本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを発現させることができる。例えば、実施例にも示したように、前記式16、20、24の塩基配列を含有する組換えDNA分子で形質転換させた形質転換体の培養上清中には、アポトーシスを誘導する活性を有するポリペプチド、すなわちFasリガンドが遊離される場合がある。Fasリガンドはこのような形質転換体もしくはその培養上清から、回収することができる。
特に、前記式13、14、15、17、18、19、21、22、23のいずれかに記載の塩基配列を有するDNAは、アポトーシスを誘導する活性を有するより低分子のポリペプチドを生産するために適している。これらの塩基配列は、ヒト、ラットおよびマウスのFasリガンドの細胞外領域部分またはその一部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を表すものである前記式1、2、3、5、6、7、9、10、11のアミノ酸配列をコードしているので、適当なシグナルペプチドをコードする塩基配列の下流に、これらのいずれかの塩基配列を有するDNAを接続して発現させると、その培養上清中に前記ポリペプチドが分泌されるからである。
既に説明したように、ポリペプチドの精製においては、細胞のライセートから精製するよりも、培養上清から精製する方が効率的である。前記式13、14、15、17、18、19、21、22、23のいずれかに記載の塩基配列を有するDNAは、上記利点に加え、低分子であるために、遺伝子工学的手法において扱いやすいという点でも利用価値が高い。
先述したように、同一の機能を有するポリペプチドであっても、種差や個体差によってアミノ酸配列や、それをコードするDNAの塩基配列に多様性が生じる事がある。
通常、同一の機能を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列は、動物種や個体が違っても、互いにホモロジーを有していることが多い。従って、前記式13ないし24いずれかに記載の塩基配列中の少なくとも一部とホモロジーのある塩基配列、すなわち、前記式13ないし24のいずれかのに記載の塩基配列に相補的な配列の少なくとも一部とハイブリダイズするDNAは、本発明のDNAがコードするポリペプチドと同一の機能を有するポリペプチドをコードしていると考えられる。ここで「ハイブリダイズする」とは、前記式13ないし24のいずれかに記載の塩基配列に相補的な配列、もしくはその一部をプローブとして、公知の方法(例えば、サムブルックJ.(Sambrook J.)等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., 1989年、Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York)、参照)でハイブリダイゼーションを行った場合にハイブリダイズすることをいう。実施例でも、前記式19の塩基配列に相補的な塩基配列の一部をプローブとして、ハイブリダイゼーションを行う方法を示してある。
このように、前記式13ないし24のいずれかに記載の塩基配列に相補的な塩基配列とハイブリダイズするDNAも本発明第3の態様のDNAに含まれる。特に、前記式13、17、21の塩基配列に相補的な塩基配列とハイブリダイズするDNAであって、FasリガンドをコードするDNAは、本発明第3の態様の好ましい例の1つである。
本発明第3の態様のDNAは、配列表の配列番号27、25、28のいずれかに記載の塩基配列の一部分の塩基配列を有するDNAであってもよい。実施例に示すように配列表の配列番号27、25、28の塩基配列はそれぞれ、Fasリガンドをコードする塩基配列を含有するDNAとして、それぞれヒト、ラット、マウス由来のcDNAライブラリーより得られたcDNAの塩基配列である。配列番号27、25、28に記載の塩基配列は、その配列中に、それぞれ、前記式16、20、24に記載の配列を含有する。
前記配列表の配列番号27、25、28のいずれかに記載の塩基配列の一部分とは、いかなる一部分でもよい。例えば、前記式16、20、24の一部分であってもよいし、5'末端側、3'末端側のノンコーディング領域の一部分であってもよい。また、その長さは特に限定されない。
当該DNAは、アポトーシスを誘導するポリペプチドをコードするDNAをクローニングするためのプローブや、PCR用のプライマーとして使用することができる。
また、当該DNAを、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識し、組織や細胞における本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを検出したり、その発現量を測定する診断用DNAプローブとしても使用することができる。
本発明の第3の態様の新規DNAは、いかなる方法で得られたDNAであってもよい。すなわち、前記式13ないし24(配列表の配列番号13ないし24)、もしくは配列表の配列番号25、27および28を参考にして化学合成されたものであってもよく、適当なDNAライブラリーからクローニングされたものであってもよい。
本発明の新規DNAを化学合成するには、たとえば、次のように行えばよい。すなわち、まず、前記式13ないし24、もしくは配列表の配列番号25、27および28を参考にして、所望の塩基配列を有するDNAを約20塩基程度からなる断片に分けてDNA化学合成機(例えば、394型、パーキンエルマージャパン(株)製)を用いて合成し、その後、必要に応じて5'末端のリン酸化を行い、各断片をアニーリングし、ライゲーションして目的とするDNAを得る。
本発明の新規DNAをDNAライブラリーから得る例としては、適当なゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法等でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。
ハイブリダイゼーション法によるスクリーニングは、前記式13ないし24、もしくは配列表の配列番号25、27および28のいずれかの塩基配列もしくはその一部を有するDNAを32P等でラベルしてプローブとし、任意のcDNAライブラリーに対して、公知の方法で(例えば、マニアティスT.(Maniatis T.)等,Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring harbor Laboratory,ニューヨーク(New York), 1982年)行うことができる。
イムノスクリーニング法で用いる抗体は、後述する本発明第9の態様の抗体を使用することができる。
本発明の新規DNAはまた、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。
PCRは、前記式13ないし24、もしくは配列表の配列番号25、27および28いずれかの配列をもとに、センスプライマー、アンチセンスプライマーを作成し、任意のDNAライブラリーに対し、公知の方法(例えば、ミカエルA. I.(Michael A. I.)等,PCR Protocols, a Guide to Methods and Applications,アカデミック出版社(Academic Press)、1990年参照)等を行って、本発明の新規DNAを得る事もできる。
上記各種方法で使用するDNAライブラリーは、本発明のDNAを有するDNAライブラリーを選択して使用する。当該DNAライブラリーは、本発明のDNAを有するライブラリーであれば、いかなるものも使用可能であり、市販のDNAライブラリーを使用したり、本発明のDNAを有する細胞からcDNAライブラリーを作成するのに適した細胞を選び公知の方法(サムブルックJ.(Sambrook J.)等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年参照)に従って、cDNAライブラリーを作製し、利用することができる。
DNAの塩基配列が提供されれば、RNAの配列や、相補的なDNAおよびRNAの配列が一義的に決定されるので、本発明の開示により、本発明の第3の態様のDNAに対応するRNAや、本発明の第3の態様のDNAと相補的な配列を有するDNAおよびRNAもまた提供される。
本発明の第3の態様のDNAは、1本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。
また、当該DNAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
本発明の新規DNAは、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを大量に生産するために使用することができる。当該DNAを使用して本発明の新規ポリペプチドを生産させる方法の例は、本発明第7の態様で説明する。当該DNAはまた、上述のように酵素等で標識して、組織における本発明第1および第2の態様の新規ポリペプチドの発現状況を検査するために使用することができる。すなわち、当該DNAをプローブとして使用して細胞における本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドの発現量を、mRNA発現量を指標として確認することにより、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドの製造に適した細胞や細胞の培養条件を決定することができるほか、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドが関連する疾患の診断を行うことも可能である。
また、本発明の新規DNAを生体内の細胞に導入し、例えば、自己免疫疾患等の遺伝的にアポトーシスの機構が欠損している疾患の遺伝子治療にも使用する事ができる。
さらに、本発明のDNAが有する塩基配列をもとにアンチセンス医薬品を開発し、生体内におけるFasリガンド発現を調節することもできる。すなわち、前記式13ないし24、もしくは配列表の配列番号25、27および28に記載の塩基配列を有する本発明のDNAの一部や、その誘導体を公知の方法で合成し、それらを使用してFasリガンドの発現を調節したり、本発明のDNAに相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドやその誘導体を使用して、Fasリガンドの発現を調節することが可能である。アンチセンス医薬品の技術については、本発明の第10の態様の説明で詳述する。
次に、本発明の第4の態様の組換えDNA分子について説明する。
本発明の第4の態様の組換えDNA分子は、上述した本発明の第3の態様の新規DNAを含むことを特徴とする組換えDNA分子である。本発明の組換えDNA分子は、環状、直鎖状等がいかなる形態のものであってもよい。また、本発明の組換えDNA分子は、いかなる用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを産生させる際に用いるものであってもよいし、本発明の第3の態様のDNAを増幅させ大量に得るために用いるものであってもよい。
本発明の第4の態様の組換えDNA分子は、本発明の第3の態様の新規DNAに加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサーの配列、プロモーターの配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。これらの塩基配列の必要性は、組換えDNA分子の使用目的によって決定されるが、本発明の組換えDNA分子は、本発明第3の態様のDNAに加えて、少なくとも、複製開始点およびマーカー遺伝子を有していることが好ましい。マーカー遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子等があげられる。
当該組換えDNA分子の好ましい例は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを発現するように大腸菌を形質転換させうるものである。すなわち、当該組換えDNA分子の好適な例は、本発明第3の態様のDNAに加え少なくとも、大腸菌複製開始点、マーカー遺伝子に加えて大腸菌内で機能するプロモーター配列を有していることが好ましい。また、これらに加え、少なくともシグナルペプチドをコードする配列を有していることが好ましい。大腸菌で機能するプロモーター配列の好適な例はtrpプロモーター、lacプロモーターであり、大腸菌で機能しうるシグナルペプチドの好適な例は、大腸菌アルカリフォスファターゼのシグナルペプチドである。
また、当該組換えDNA分子は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを発現するように酵母や昆虫細胞、動物細胞等の真核細胞を形質転換させうるものであってもよい。
すなわち、当該組換えDNA分子は、少なくとも、本発明第3の態様のDNA、マーカー遺伝子に加えて、ポリA付加配列を有していることが好ましい。これらに加えて、少なくとも、酵母で機能するアルコールオキシダーゼ(AOX)1のプロモーター、もしくは昆虫細胞で機能するポリヘドリンプロモーター、もしくは動物細胞で機能するSV40のプロモーターやSRαのプロモーター、ヒトエロンゲーションファクター1α(FE1α)のプロモーター、もしくは大腸菌での複製開始点を有するものも当該組換えDNA分子の好適な例として挙げられる。
本発明の第4の態様の組換えDNA分子は、本発明の第3の態様の新規DNAを任意のベクターに導入して得ることができる。必要であれば、当該新規DNAを他の塩基配列とともに任意のベクターに導入してもよい。また、当該組換えDNA分子は、本発明第3の態様の新規DNAを任意の配列を有するDNA断片とライゲーションさせることにより得ることができる。DNAをベクターに導入する方法は公知である(サムブルックJ.(Sambrook J.)等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)。すなわち、DNAとベクターをそれぞれ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片をDNAリガーゼを用いてライゲーションさせればよい。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター等いかなるものでもよい。たとえば、pUC118、pBR322、pSV2-dhfr、pBluescriptII、PHIL-S1、λZapII、λgt10、pAc700、YRP17、pEF-BOS、pEFN-II等から適宜選択して使用することができる。
次に、本発明の第5の態様の形質転換体について説明する。
本発明の第5の態様の形質転換体は、本発明の第3の態様の新規DNAで形質転換されたことを特徴とする。すなわち、本発明第5の態様の形質転換体は、宿主となる適当な細胞や微生物に、本発明第3の態様の新規DNAを直接導入する事によって形質転換されたことを特徴とする。
本発明の第3の態様の新規DNAを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社、参照)があるがいずれの方法を用いても構わない。
本発明の形質転換体は、本発明の第3の態様のDNA分子を大量に製造する目的でも使用することができる。また、本発明の第3の態様のDNAが、宿主細胞の適当なプロモーターの下流に組み込まれた場合には、当該形質転換体は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを生産する。従って、このような形質転換体は、本発明の第1または第2の態様のポリペプチドを製造する目的等に使用できる。
次に、本発明の第6の態様の形質転換体について説明する。
本発明第6の態様の形質転換体は、本発明の第4の態様の組換えDNA分子を宿主となる細胞や微生物に導入する事によって、形質転換されたことを特徴とする。ただし、該組換えDNA分子の作成に使用するベクターは、宿主細胞に適した種類のものである必要がある。同様に、組換えDNA分子内に含まれるプロモーター、シグナルペプチドをコードする塩基配列、マーカー遺伝子等は、宿主細胞に適したものである必要がある。例えば、組換えDNA分子の作製に使用したベクターと宿主の好ましい組み合わせの例としては、pUC118と大腸菌、pEF-BOSとCOS細胞あるいはCHO細胞、Yacと酵母、AcNPVとSf細胞等(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社、参照)が挙げられる。
本発明の第4の態様の組換えDNA分子を宿主細胞に導入する方法としては、上記第5の態様の形質転換体の作成方法と同様に、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いてインフェクションさせる方法、その他の公知方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社、参照)が挙げられる。
本発明第6の態様の形質転換体は、原核細胞、真核細胞のいずれであってもよい。原核細胞の代表的な例としては、大腸菌と枯草菌があげられる。真核細胞の代表的な例としてはCHO細胞、HeLa細胞、COS細胞、Namalwa細胞等の哺乳動物細胞の他、Sf細胞等の昆虫細胞や酵母等があげられる。
しかしながら、本発明の形質転換体は、好ましくは、大腸菌もしくは哺乳動物細胞もしくは酵母を形質転換させたものである。動物細胞の中では、遺伝子のコピー数を増加させることが可能な、CHO細胞のdhfr欠損株が好ましい。また、酵母については、外来蛋白質の分泌発現量が多いという点で、ピキア(Pichia)属の酵母が好ましい。
本発明第6の態様の形質転換体は、本発明第3の態様の新規DNAを大量に得る目的や、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを生産するために使用することができる。
当該形質転換体は、いかなる目的で使用されるものであってもよいが、好ましくは、当該形質転換体は、本発明の新規ポリペプチドを産生するものがよく、より好ましくは、本発明の新規ポリペプチドを培地中に分泌するものがよい。
本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを産生する形質転換体を得るためには、宿主細胞に導入する本発明の第4の態様の組換えDNA分子中には、少なくとも、その宿主細胞で機能しうるプロモーター配列が含まれていることが必要である。そして、宿主細胞が大腸菌等の原核細胞である場合には、組換えDNA分子にはプロモーター配列に加え、複製開始点が含まれている必要がある。また、宿主細胞が動物細胞等の真核細胞である場合には、組換えDNA分子中には、プロモーター配列に加え、ポリA付加サイト、複製開始点が含まれていることが必要である。なお、いずれの場合にも使用する組換えDNA分子には上述したマーカー遺伝子が含まれていることが好ましい。
また、当該形質転換体が本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを発現し分泌するためには、形質転換に使用する組換えDNA分子中には、上記の産生に必要な配列に加えて、本発明の第3の態様のDNAの5'末端に、シグナルペプチドをコードする塩基配列を有していることが好ましい。
本発明の形質転換体のより好ましい例の一つは、少なくとも、複製開始点、大腸菌で機能するプロモーター、マーカー遺伝子、大腸菌アルカリフォスファターゼ等のシグナルペプチドをコードする塩基配列、及び本発明第3の態様の新規DNAを含む組換えDNA分子で形質転換された大腸菌である。他の好ましい例は、少なくとも、マーカー遺伝子、ポリA付加配列、哺乳動物細胞で機能するプロモーター、および本発明第3の態様のDNAを含む組換えDNA分子で形質転換された哺乳動物細胞である。また、少なくとも、AOX1のプロモーター、マーカー遺伝子、及び本発明の第3の態様のDNAを含む組換えDNA分子で形質転換されたピキア(Pichia)属の酵母も本発明の形質転換体の好ましい例である。
本発明第7の態様の製造方法は、本発明第5または第6の態様の形質転換体を使用することを特徴とする本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドの製造方法である。形質転換体の作製方法については既に説明した通りである。
当該製造方法では、まず、本発明第5または第6の態様の形質転換体を培養し、必要に応じて、遺伝子の増幅や発現誘導を行う。次に、培養混合物を回収し、それらを材料として、必要に応じて濃縮、可溶化、透析、各種クロマトグラフィー等の操作を行い、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを精製する。
当該製造方法で使用する形質転換体は、いかなる宿主を形質転換したものであってもよい。しかしながら、好ましくは、CHO細胞等の哺乳動物細胞もしくは酵母、もしくは大腸菌のいずれかより選択される細胞を宿主とした形質転換体であることが好ましい。
形質転換体の培養は、一般的な方法で行うことができる。形質転換体の培養については各種の成書(たとえば、「微生物実験法」社団法人日本生化学会編、株式会社東京化学同人、1992年、参照)があるので、それらを参考にして行うことができる。また、遺伝子の増幅や発現誘導の方法および必要性は、宿主となる細胞の種類や、使用するプロモーターによって異なる。例えば、プロモーターがtrpプロモーターである時には3β−インドールアクリル酸で、MMTVプロモーターである場合にはデキサメサゾンで、AOX1プロモーターであればメタノールで誘導することが可能である。
一方、遺伝子の増幅方法の例としては、宿主としてdhfr欠損のCHO細胞、ベクターとしてdhfrを有するベクターを使用した際のメソトレキセートを使用した遺伝子の増幅方法がある。
以下に、形質転換体として大腸菌、CHO細胞、ピキア(Pichia)属酵母を使用した場合の培養および発現誘導の例を示す。
trpプロモーターを有する組換えDNA分子で形質転換された大腸菌では、L−ブロース(L-Broth)で菌体を前培養し、それをM9-CAの培地に対して1/50量となるように植え込み、37℃で培養を行う。培養開始数時間後に培地のOD550値が1〜4(すなわち対数増殖期)に達した時点で3β−インドールアクリル酸を終濃度10μg/mlとなるように添加し発現誘導を行う。さらに約1〜2日の培養を行うことにより、目的ポリペプチドを含む培養混合物を得ることができる。
AOX1プロモーターを有する組換えDNA分子で形質転換されたピキア(Pichia)属の酵母を用いる場合には、BMGY培地で約2日間前培養し、培地交換後、メタノールを加えて発現誘導する。さらに、30℃で約2日間の培養を行い、目的ポリペプチドを含む培養混合物を得ることができる。
一方、エロンゲーションファクターのプロモーターを有する発現プラスミドが導入されたCHO細胞等の哺乳動物細胞の形質転換体では、10%ウシ胎児血清を含有するD-MEM(Dulbecco modified egale's medium)で培養する。細胞は、約5×104細胞/mlの濃度で植え込み、37℃、5%炭酸ガス/95%空気の条件で培養を行う。通常、2〜3日後にコンフルエントな状態になるので、その時点で培地を、血清不含のD-MEMに交換する。さらに引き続き、2〜3日間の培養を行うことにより目的ポリペプチドを含む培養混合物を得ることができる。なお、目的ポリペプチドの産生量が少ない場合には前述したようにdhfr遺伝子欠損CHO細胞を使用し、メソトレキセートにより遺伝子を増幅し、産生量を増加させることも可能である。
本発明第7の態様において、培養混合物とは、培養上清もしくは細胞のことである。すなわち、形質転換体が、当該ポリペプチドを細胞外に分泌する場合にはその培養上清を材料として、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを回収、精製する。
一方、当該新規蛋白質が宿主細胞内に蓄積される場合には、リゾチーム、界面活性剤、凍結融解、加圧等の手段を用いて細胞を破砕した後、遠心分離して上清を回収し、濾過等により不要な細胞断片等を取り除いた後に、それを材料として本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを精製する。使用する形質転換体が大腸菌であり、産生された当該新規ポリペプチドがペリプラズムに蓄積される場合は、ウィルスキー(Willsky)等の方法(J. Bacteriol., 127巻、595-609頁、1976年)等が使用できる。
培養混合物から本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを精製する方法としては、ポリペプチドの精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。精製方法の好適な例を、本発明第8の態様として提供する。
当該製造方法において、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドは、他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして形質転換体に生産させてもよい。たとえば、大腸菌のβ−ガラクトシダーゼをコードするDNAの下流に目的のポリペプチドをコードするDNAを接続し、目的のポリペプチドをβ−ガラクトシダーゼとの融合ポリペプチドとして発現させる方法は、高い生産量が期待できることから一般に行われている方法である。
当該ポリペプチドを他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして発現させた場合には、精製工程のいずれかのステップにおいて、融合ポリペプチドをブロムシアン等の化学物質やプロテアーゼ等の酵素で処理して当該ポリペプチドを切り出す操作が必要になる。
また、使用する形質転換体が大腸菌であった場合に、当該ポリペプチドを不溶化蛋白であるインクルージョンボディーとして産生させた場合には、精製の際に、インクルージョンボディーを可溶化し、デネイチャーし、リフォールディングするという操作を精製の適当なステップで行えばよい(トマスE. 及びクライトンJ.(Thomas E. and Creighton J.), Molecular Biology, 87巻, 563-577頁, 1974年参照)。
具体的には、まず、菌体を破砕し、遠心分離してペレットを回収する。次に、尿素もしくはグアニジン塩酸、界面活性剤、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンを適量含む可溶化バッファー(たとえば、5Mグアニジン塩酸、0.005%Tween80、50mMトリス塩酸(pH8.0)、5mM EDTA、2mM還元型グルタチオン、0.02mM酸化型グルタチオンを含む緩衝液)をペレットに加え、2−メルカプトエタノールを加えてデネイチャーし、上記可溶化バッファーからグアニジン塩酸を取り除いた溶液に対して透析してリフォールディングする。目的のポリペプチドを融合蛋白質として発現させている場合には、これらの操作の後で、ブロムシアン等の化学物質もしくはプロテアーゼ等の酵素で不要な部分を切断し、その後、適当なクロマトグラフィーを行う。
次に、本発明の第8の態様の精製方法を説明する。
本発明の第8の態様は、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを含有する試料中から本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを精製する方法であって、少なくとも下記より選ばれるいずれか1つ以上の工程を行う事を特徴とする。
(1)Fas抗原を使用したアフィニティークロマトグラフィー
(2)本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを認識する抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィー
当該精製方法は、上記(1)もしくは(2)のいずれかのみを行うものであってもよく、(1)および(2)の両方を行うものであってもよい。また、他の精製方法と上記(1)もしくは(2)の少なくとも1つを組合わせて行うものであってもよい。しかしながら、好ましくは、蛋白質の精製方法として通常行われている方法の前もしくは後に、上記(1)もしくは(2)のいずれか一方、もしくは両方の工程を任意の順序で行うものである。
例えば、上記(1)もしくは(2)の工程のいずれかに加え、レクチンを吸着させた担体を使用したクロマトグラフィーを行うことにより、本発明第1または第2の態様のポリペプチドを高純度で得ることができる。
本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドを含有する試料とは、当該新規蛋白質を含有するものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、細胞の培養上清であっても、細胞のライセートであってもよく、尿や血液等の体液であってもよい。
上記(1)のアフィニティークロマトグラフィーを行うためには、Fas抗原蛋白質を適当な担体に吸着させる事が必要である。使用するFas抗原は本発明第1または第2の態様のポリペプチドと結合するものであればいかなる動物由来の物であってもよい。しかしながら、精製しようとする目的のポリペプチドが、前記式1ないし4のいずれかのアミノ酸配列またはそれらの一部を有する場合にはヒトFas抗原を、前記式5ないし8のいずれかのアミノ酸配列またはそれらの一部を有するものである場合にはラットFas抗原もしくはマウスFas抗原を、前記式9ないし12のいずれかのアミノ酸配列またはそれらの一部を有するものである場合にはマウスFas抗原を、それぞれ使用する事が好ましい。
Fas抗原を吸着させる担体の種類は特に限定されない。Fas抗原を担体に結合させる場合には、Fas抗原を直接担体に結合させるか、スペーサーを介して結合させる。また、Fas抗原を他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして作製し、融合ポリペプチド中のFas抗原以外の部分をそれと結合可能な担体に結合させ、間接的に、Fas抗原を担体に結合させてもよい。例えば、Fas抗原と免疫グロブリンの定常領域との融合ポリペプチドであれば、免疫グロブリンとプロテインAが吸着する性質を利用して、プロテインAが吸着したカラムに該融合ポリペプチドを吸着させ、結果としてFas抗原吸着担体を容易に得る事が可能になる。
また、上記(2)のアフィニティークロマトグラフィーを行うためには、本発明第9の態様の新規抗体を使用することができる。すなわち当該新規抗体をアガロース等の適当な担体に直接、もしくはスペーサーを介して結合させ、これを、アフィニティークロマトグラフィー用カラムとして使用する。なお、上述したレクチンを吸着させた担体の好ましいものとしては、ConAを吸着させた担体があげられる。例えば、ConAをアガロース担体に吸着させたものなどが市販されているのでそれらを適宜選択し使用することが簡便である。
上記(1)および(2)のアフィニティークロマトグラフィー及び、レクチンを吸着させた担体を使用するアフィニティークロマトグラフィーは、ポリペプチドの精製に使用される溶液を適宜選択して溶出液とし、溶出された各画分の活性もしくは各画分中の本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドの存在を確認しながら行えばよい。本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドの存在を確認するには、各画分のFas抗原を発現する細胞に対する細胞障害活性を測定したり、本発明の第1または第2の態様のポリペプチドを認識する抗体を使用したEIA等で確認することができる。本発明の第1または第2の態様のポリペプチドを認識する抗体については本発明第9の態様で説明する。
次に、本発明の第9の態様の新規抗体について説明する。
本発明の第9の態様の新規抗体は、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドに結合することを特徴とする。
本発明の第9の態様の新規抗体は、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドと結合する限り、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。
抗体、すなわち、免疫グロブリンの構造はH鎖とL鎖とからなり、物理化学的性質や免疫学的性質は、5つのクラス(IgG, IgA, IgM, IgD, IgE)に分けられる。このうち、IgG、IgAはさらにH鎖のタイプによって、サブクラスに分けられる。本発明の新規抗体は、これらのいずれのクラス、サブクラスに属するものであってもよい。
さらに、免疫グロブリンは例えばペプシンで分解すると、F(ab')2とFc'に別れ、パパインで分解するとFabとFcの2つのフラグメントに分かれる。本発明の抗体は、抗原と結合するものであれば、完全な抗体分子でもその一部のフラグメントでもよい。また、本発明の抗体はキメラ抗体であってもよい。
本発明の新規抗体は、それがポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であっても、公知方法を参考にして得ることができる(例えば、免疫実験操作法、日本免疫学会編、日本免疫学会発行、参照)。以下に簡単に説明する。
当該新規抗体を得るには、まず動物に、免疫抗原として本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドを必要に応じてフロイントの完全アジュバント(FCA)や不完全アジュバント(FIA)等の適切なアジュバントとともに接種し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血を行い抗血清を得る。抗原として用いる本発明の新規ポリペプチドは、それが抗体の作製に使用しうる精製度のものであればいかなる方法で得られたものであってもよい。
免疫抗原として使用するポリペプチドが、低分子のポリペプチド、すなわち約10〜20アミノ酸からなるポリペプチドである場合には、それをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のキャリアと結合させて抗原として使用すればよい。当該新規ポリペプチドで免疫する動物はいかなるものであっても良いが、好ましくは通常当業者で免疫学的な実験に使用されるラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウシ等から、目的の抗体を産生しうる動物種を選択して使用することが好ましい。
ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得る事が出来る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行えば良い。
モノクローナル抗体を得るには以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、ポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等を用いる公知方法によって、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。その後、本発明の第1または第2の態様の新規ポリペプチドに結合する抗体を産生しているクローンを選択して培養し、その選択されたクローンの培養上清を精製することによって得れば良い。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて用いれば良い。
また、遺伝子工学的な方法を用いても当該新規抗体が得られる。例えば、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドで免疫した動物の脾細胞、リンパ球あるいは、本発明第1または第2の態様の新規ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを採取し、これをもとにcDNAライブラリーを作成する。抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養混合物から目的とする抗体を公知方法を組み合わせて精製することができる。
本発明の新規抗体は、体液中や組織中に存在する本発明の新規ポリペプチドを検出するために使用することができる。また、本発明の新規ポリペプチドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明の新規ポリペプチドを検出するために使用することができる。
本発明の新規抗体は、細胞に対するFasリガンドの作用を修飾するものであってもよい。細胞に対するFasリガンドの作用を修飾する抗体の中で、特に好ましくは、Fasリガンドが誘導するアポトーシスを抑制する効果を有するものである。当該抗体は、Fasリガンドが誘導するアポトーシスを完全に抑制するものであってもよく、また、部分的に抑制するものであっても良い。
Fasリガンドが誘導するアポトーシスを抑制する効果を有する抗体を得るには、前記ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を製造する過程で得られる血清や、ハイブリドーマの培養上清を、例えば、次のようなアッセイ系にかけてスクリーニングする。すなわち、FasリガンドもしくはFasリガンドを発現する細胞と、Fas抗原を発現する細胞とを使用したin vitroのアッセイ系等である。スクリーニングの結果、選別された血清や培養上清から公知方法を組み合わせて目的の抗体を精製する。なお、FasリガンドもしくはFasリガンドを発現する細胞とFas抗原を発現する細胞を利用したスクリーニング方法の好ましい例は、本発明第11の態様で説明する。
Fasリガンドが誘導するアポトーシスを、完全に、又は、部分的に抑制することができる抗体は、生体におけるアポトーシスを調節するために使用することができる。たとえば、当該抗体はリウマチにおける関節組織の破壊、全身性エリテマトーデス(SLE)における自己組織の破壊、あるいは糖尿病、インフルエンザ、エイズ、肝炎等の組織や細胞のアポトーシスが関与する疾患の治療薬として使用することができる。
次に本発明第10の態様を説明する。
本発明第10の態様は、Fasリガンド遺伝子の一部もしくはFasリガンドに対するmRNAの一部に相補的な塩基配列を含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体である。当該オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体には、その塩基配列として、前記相補的な塩基配列のみを有する物、前記相補的な塩基配列に加えて、リボザイム配列等、他の塩基や塩基配列を有する物のいずれもが含まれる。
ここで、「Fasリガンド遺伝子」とは、FasリガンドをコードするDNAを含む遺伝子のことであり、Fasリガンドをコードする領域に加え、その制御領域を含むものである。制御領域は、Fasリガンドをコードする領域の上流に存在するもの、下流に存在するものいずれをも意味する。「Fasリガンドに対するmRNA」とは、Fasリガンドをコードする塩基配列を含むmRNAである。当該mRNAには、Fasリガンドをコードする塩基配列に加え、その上流および下流のノンコーディング領域を含むものも含まれる。
Fasリガンドをコードする染色体DNAは、図16〜18に示したように、イントロン部位とエクソン部位とからなることがわかっている。イントロンとエクソンからなるDNAがmRNAに転写される際には、まず、イントロンとエクソンとがそのまま転写されてpre-mRNAとなり、その後スプライシングを受けて、イントロンに対応する部分が削除され、エクソン部分のみが転写された成熟mRNAとなる。ここでいう「Fasリガンドに対するmRNA」には、pre-mRNA、成熟mRNAのいずれもが含まれる。
また、「Fasリガンド遺伝子の一部もしくはFasリガンドに対するmRNAの一部」とは、それらがコーディング領域であるか否かに関わらず、また、イントロン部位、エクソン部位に関わらず、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAに含まれるいかなる部分をも意味する。
なお、本発明の第10の態様において「Fasリガンド」はいかなる動物種由来のFasリガンドであってもよいが、好ましくは、ヒト、ラット、マウスいずれかに由来するFasリガンドである。診断薬や医薬品への応用を考えると、特に好ましくは、ヒトFasリガンドである。ヒトFasリガンド遺伝子のコーディング領域付近の塩基配列は図16〜18に示してある。また、ヒトFasリガンド、ラットFasリガンド、マウスFasリガンドをコードするDNAの塩基配列はそれぞれ配列番号31、25、28に示してある。上記各Fasリガンドに対する各成熟mRNAを含む塩基配列は、配列番号31、25、28に示された塩基配列中のTをUに読み変えることによって得ることができる。
「相補的な塩基配列」とは、DNAやmRNAの塩基配列に対して塩基特異的に相補的塩基対を形成するような塩基配列をいう。一般的には、C(シトシン)とG(グアニン)の間、T(チミン)とA(アデニン)の間、およびU(ウラシル)とA(アデニン)との間で相補的塩基対が形成されることが知られている。したがって、ヒトFasリガンド遺伝子に相補的な塩基配列、およびヒトFasリガンド、ラットFasリガンド、マウスFasリガンドに対する各成熟mRNAに相補的な塩基配列を含む配列は、それぞれ、図16〜18、配列番号31、25、28に示した塩基配列中のAに対してT、Cに対してG、Gに対してC、Tに対してAを対応させた配列、もしくはAに対してU、Cに対してG、Gに対してC、Tに対してAを対応させた配列である。配列表の配列番号31の塩基配列に相補的なDNAおよびRNAの配列は、それぞれ配列番号29、30に5'→3'方向で示してある。なお、「相補的な塩基配列」にはC、G、A、T、Uからなる塩基配列のみならず、これら塩基の誘導体を含む配列であってもよい。
本発明のオリゴヌクレオチドには、塩基、リン酸、糖からなるヌクレオチドが複数結合したもの全てが含まれる。その代表的な物はDNAとmRNAである。
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体には、その立体構造や機能がオリゴヌクレオチドと類似するものすべてが含まれる。たとえば、オリゴヌクレオチドの3'末端もしくは5'末端に他の物質が結合した物や、オリゴヌクレオチドの塩基、糖、リン酸の少なくともいずれか1つにおいて、置換や、修飾が生じた物質、天然には存在しないような、塩基、糖、リン酸を有する物や、糖−リン酸骨格以外の骨格(バックボーン)を有するもの等である。
本発明第10の態様のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、Fasリガンド遺伝子の一部もしくはFasリガンドに対するmRNAの一部に相補的な塩基配列を有し、これらの遺伝子やmRNAにハイブリダイズするものが好ましい。特に好ましくは、少なくともヒトFasリガンド遺伝子もしくはヒトFasリガンドに対するmRNAにハイブリダイズするものである。
Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAにハイブリダイズするようなオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、組織や細胞におけるFasリガンド遺伝子の存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することができる。さらに、これらのオリゴヌクレオチドおよびその誘導体は、Fasリガンド遺伝子もしくはmRNAにハイブリダイズして、Fasリガンドの発現を促進もしくは抑制することが期待されるので、Fasリガンドの発現を調節し、Fasリガンドによって誘導されるアポトーシスが関与する疾患の治療薬として使用することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAにハイブリダイズし、Fasリガンドの発現を調節する活性を有するものが好ましく、特に好ましくは、Fasリガンドの発現を抑制するものである。すでに述べたように、エイズや肝炎における細胞死はFas抗原を介したアポトーシスであると考えられている。したがって、Fasリガンドの発現を抑制するオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体は、エイズ、肝炎をはじめ、リウマチにおける関節組織の破壊、全身性エリテマトーデス(SLE)における自己組織の破壊、糖尿病、インフルエンザ等のFasリガンドを介したアポトーシスが関与する疾患の治療薬として使用することができる。
一方、Fasリガンドの発現を促進するものは、エイズ感染初期の治療や、リウマチにおける骨膜細胞の異常増殖や自己免疫疾患における自己抗原反応性T細胞の増殖を抑制するため等、生体にとって不要な細胞を除去するために使用できる。
蛋白質をコードするDNAやmRNAに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを使用して、その蛋白質の発現を調節する方法は、アンチセンス法と呼ばれており、現在多くの研究者によって研究が進められている技術である。相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドは、▲1▼遺伝子からpre-mRNAへの転写段階、▲2▼pre-mRNAから成熟mRNAへのプロセッシング段階、▲3▼核膜通過段階、▲4▼蛋白への翻訳段階のいずれかで、遺伝子情報を担うDNAもしくはmRNAに結合し、遺伝情報の伝達の正常な流れに影響を与えて蛋白質の発現を調節すると考えられている。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAのいかなる部分にハイブリダイズするものであってもよい。ハイブリダイズのしやすさの点では、一般的には、ステム・ループを形成しているmRNAのループ部分にハイブリダイズするような塩基配列、すなわち、ステム・ループを形成している領域の塩基配列に相補的な塩基配列をもつオリゴヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド誘導体を設計するとよいとされている(東海林洋子、臨床免疫、25巻、1200-1206頁、1993年)。
また、翻訳開始コドン付近、リボソーム結合部位、キャッピング部位、スプライス部位に結合するようなオリゴヌクレオチド、すなわち、これらの部位の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドは、一般に高い発現抑制効果が期待できるものと考えられているので(癌と化学療法、20巻、13号、1899-1907頁)、本発明のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体が、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAの翻訳開始コドン付近、リボソーム結合部位、キャッピング部位、スプライス部位に結合するもの、すなわち、これらの部位に相補的な配列を含むものであれば、高い発現抑制効果が期待される。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、診断や医薬用途として使用することを考慮とすると、Fasリガンド遺伝子もしくはmRNAと、特異的にハイブリダイズするものが好ましい。
一般的には、15塩基以上の塩基を含む塩基配列であれば、特異性のある配列であると考えられている(横山一成、蛋白質 核酸 酵素、38巻、754〜765頁、1994年)。したがって、当該オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体も、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAに相補的な塩基配列であって15塩基以上からなる塩基配列を含むものであれば、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAに特異的に結合することが期待される。
一方、オリゴヌクレオチドを細胞内に取り込ませるには、その長さはあまり長すぎても不適当である。本発明第10の態様のオリゴヌクレオチドおよびその誘導体は、いかなる長さのものであってもよいが、本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体を細胞内に取り込ませ、Fasリガンドの発現を調節させることを考慮すると、当該オリゴヌクレオチドおよびこれらオリゴヌクレオチドの誘導体はFasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAに相補的な15塩基以上30塩基以下、好ましくは15塩基以上25塩基以下、より好ましくは18塩基以上22塩基以下の塩基数からなる塩基配列を有するものが好ましい。
アンチセンス技術の進歩とともに、オリゴヌクレオチドの医薬品としての効果を高めることを目的として様々な誘導体が見いだされてきた。現在、目的のDNAやmRNAとの結合力、組織選択性、細胞透過性、ヌクレアーゼ耐性、細胞内安定性の高い様々なオリゴヌクレオチド誘導体が得られている。
前述のように、本発明の「オリゴヌクレオチド誘導体」には、天然には存在しないような、塩基、糖、リン酸、バックボーン構造からなるものも含めて、あらゆる種類の誘導体が含まれる。
現在一般に知られている誘導体の例としては、バックボーン構造として、その全部または一部にフォスフォジエステル(phosphodiester)結合、フォスフォロチオエート(phosphorothioate)結合、フォスフォトリエステル(phosphotriester)結合、メチルフォスフォネート(methylphosphonate)結合、フォスフォロアミデート(phosphoroamidate)結合、フォスフォロジチオエート(phosphorodithioate)結合、モルホリノ基を有する物等(東海林 洋子等、癌と化学療法、20巻、1899-1907頁、1993年)があげられる。また、ポリアミド−核酸(PNA)(P.E.ニールセン(P.E.Nielsen)等、Science、254巻、1497-1500頁、1991年)や、糖の2’位が、他の原子あるいは置換基に置換されたものやα−リボース等、糖部分を修飾したものも誘導体の例として挙げられる(ミカエルJ. ゲート(Michael J. Gait),290-299頁; in Antisense Research and Applications, CRC出版、フロリダ、1993年)。
さらに、糖部分が他の物質に置換されたもの、一部の塩基がイノシン(A、T、C、Gのいずれにでも結合するユニバーサル塩基と呼ばれる)に置換された物、オリゴヌクレオチドの5'末端もしくは3'末端もしくは内部にコレステロールやアクリジン、ポリ−L−リジン、ソラレン(psoralen)、長鎖アルキル等が結合したもの等も、オリゴヌクレオチド誘導体の例として知られている(マコト マツクラ(Makoto Matsukura),506-519頁およびポールS. ミラー(Paul S. Miller)等、190-202頁; in Antisense Research and Applications, CRC出版、フロリダ、1993年)。
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、上に例示した誘導体をはじめとしていかなる誘導体であってもよい。しかしながら、当該誘導体は、ヌクレアーゼ耐性、組織選択性、細胞透過性、結合力の少なくとも1つが高められた誘導体であることが好ましい。
特に好ましくは、当該オリゴヌクレオチド誘導体は、フォスフォロチオエート結合をバックボーン構造として有する誘導体である。
以下に、本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法を説明する。
オリゴヌクレオチドやその誘導体は、公知方法で製造することができる(例えば、スタンレーT. クルーク(Stanley T. Crooke)およびベルナルド レブロー(Bernald Lebleu)編、in Antisense Research and Applications,CRC出版、フロリダ、1993年)。
天然のDNAやRNAであれば、化学合成機を使用して合成したり、Fasリガンド遺伝子を鋳型としてPCR法により本発明のオリゴヌクレオチドを得ることができる。また、メチルフォスフォネート型やフォスフォロチオエート型等、誘導体の中には、化学合成機(たとえばパーキンエルマージャパン(株)製、394型)を使用して合成できるものもある。この場合には、化学合成機に添付されたマニュアルに従って操作を行い、得られた合成産物を逆相クロマトグラフィー等を用いたHPLC法により精製することによっても、目的のオリゴヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド誘導体を得ることができる。
次に、本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体の利用方法について説明する。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体を診断用のプローブとして使用する場合には、それらを、公知の方法に従い、ラジオアイソトープや、酵素、蛍光物質、発光物質等で標識する。次に、Fasリガンドの発現を調べたい患者の細胞からDNAもしくはmRNAを公知方法で調製し、これを被検物質として、前記標識プローブを加えて反応させた後、洗浄して未反応の前記標識プローブを除去する。被検物質中に、Fasリガンド遺伝子もしくはRNAが含まれていれば、当該オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体はそれらと結合する。結合形成の有無は、標識した酵素、蛍光物質、発光物質、あるいは放射性同位元素等による発光、蛍光、放射能等を指標として知ることができる。
近年、Fasリガンドの発現と自己免疫疾患の関係等が報告されているので、本発明のオリゴヌクレオチドを使用した診断プローブは、たとえば、リウマチやSLE等の自己免疫疾患等の診断に利用することができる。また、炎症時のT細胞による細胞障害にもFasリガンドが関係していると考えられるので、炎症の程度や治療方法を決定するための診断にも使用することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体を医薬用途に使用する場合には、医薬品として使用するのに適した純度のものを、薬理学的に許容されうる使用方法で使用することが好ましい。
本発明第10の態様のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体は、それらを直接適当な溶媒に溶解もしくは懸濁して使用してもよいし、リポソーム中に封入したり、適当なベクターに組み込んだ形にして使用してもよい。また、必要に応じて、本発明のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体に薬理学的に許容され得る補助成分を添加し、注射剤、錠剤、カプセル剤、点眼剤、クリーム剤、座剤、噴霧剤、パップ剤等適当な剤型にして使用してもよい。薬理学的に許容され得る補助成分とは、溶媒、基剤、安定化剤、防腐剤、溶解剤、賦形剤、緩衝剤等のことである。
本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体は、上述のような剤型とした場合、患者の年齢や、性別、疾患の種類、程度に応じて、その投与方法、その投与量を設定して使用することができる。すなわち、アポトーシスを調節し、病態を改善するのに適した量を、経口投与、あるいは、吸入、経皮投与、点眼、膣内投与、関節内投与、直腸投与、静脈内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与等から適当な方法を選んで投与すればよい。
以下に、本発明第11の態様のスクリーニング方法について説明する。
本発明の第11の態様のスクリーニング方法は、本発明第1または第2の態様のポリペプチドまたはそれを発現するように形質転換した形質転換体を使用することを特徴とする。
本発明のスクリーニング方法では、好ましくは、本発明第1または第2の態様のポリペプチド、もしくはそれを発現する形質転換体に加え、Fas抗原を発現する細胞を使用することが好ましい。この方法を使用すれば、Fasリガンドに結合する物質、Fasリガンドの発現を促進もしくは抑制する物質に加え、Fas抗原の発現を促進もしくは抑制する物質、Fasリガンドの細胞への作用を調節する物質をスクリーニングすることができる。Fasリガンドの細胞に対する作用の代表的なものはアポトーシスの誘導であるが、当該スクリーニング方法は、アポトーシスを促進したり抑制したりする物質の他にも、Fasリガンド存在下でFas抗原発現細胞に生じる何らかの変化を促進したり抑制したりする物質のスクリーニングにも適している。
当該スクリーニング方法は、いかなる工程を含むものであってもよいが、好ましくは、下記(1)ないし(3)より選ばれるいずれかの工程を含むものである。すなわち、
(1)a.Fas抗原を発現する細胞を、Fasリガンドもしくはそれを発現する形質転換体、もしくはその培養上清からなる群より選ばれるいずれかとともに培養する。
b.aに被験物質もしくは被験物質を含む試料を添加する。
c.Fas抗原を発現する細胞の生死、形態的変化もしくは生化学的変化のうち少なくともいずれか1つを測定する。
(2)a.被験物質もしくは被験物質を含む試料を、Fasリガンドもしくはそれを発現する形質転換体、もしくはその培養上清からなる群より選ばれるいずれかとインキュベートする。
b.aにFas抗原を発現する細胞を加えて、培養する。
c.Fas抗原を発現する細胞の生死、形態的変化もしくは生化学的変化のうち少なくともいずれか1つを測定する。
(3)a.被験物質もしくは被験物質を含む試料をFas抗原を発現する細胞とインキュベートする。
b.aに、Fasリガンド、もしくはそれを発現する形質転換体、もしくはその培養上清からなる群より選ばれるいずれかを加えて培養する。
c.Fas抗原を発現する細胞の生死、形態的変化もしくは生化学的変化のうち少なくともいずれか1つを測定する。
Fas抗原を発現する細胞の形態的変化もしくは生化学的変化を測定する方法は、その変化を検出できる方法であれば特に限定されない。Fas抗原を発現する細胞のアポトーシスの有無やその程度を測定するのであれば、Fas抗原を発現する細胞にあらかじめ取り込ませた51Crの放出量から測定することができる。また、トリパンブルーを用いた染色や、ホルマザンの生成を指標としたアッセイ(MTTアッセイ、アルマールブルーアッセイ等)を行って、Fas抗原を発現する細胞のうち生き残った細胞数を測定してもよい。
一般に、細胞表面上に存在する膜型蛋白質が他分子と結合する領域は、細胞外領域であると考えられる。したがって本発明のスクリーニング方法においても、前記式1ないし3、5ないし7、9ないし11のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはそれらを発現する形質転換体が好適に使用できる。なかでも、前記式1ないし3のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはそれらを発現する形質転換体を使用することが好ましい。当該スクリーニング方法で使用するFasリガンドは、本発明第7の態様の説明に示した方法で得ることができる。また、Fasリガンドを発現する形質転換体は本発明第5または第6の態様で説明した方法で得ることができる。
本発明第11の態様のスクリーニング方法を使用すれば、Fasリガンドに結合する物質やFasリガンドの発現を調節する物質をスクリーニングすることができる。ここでいう物質には、化合物、ペプチド、蛋白質、抗体、核酸などすべての物質が含まれる。また、これらのスクリーニング方法を使用して、Fasリガンドが関与する疾患の診断を行うことも可能である。
例えば、自己免疫疾患の患者より血球細胞や組織由来の細胞を分離し、FasリガンドもしくはFasリガンドを発現する形質転換体と反応させ、患者から分離した細胞に生じるアポトーシスの程度を観察することにより、その患者のFas抗原の機能もしくは発現に異常があるかないかを診断することができる。そして、その診断結果を参考に、原因に応じた治療を選択することができる。
なお、Fas抗原を発現する細胞はいかなる細胞であってもよい。たとえば、エイズウイルス感染細胞のようにウイルスや薬物によってFas抗原の発現が誘導された細胞でもよいし、Fas抗原を発現する株化細胞やハイブリドーマ、形質転換体であってもよい。好ましくは、ヒトFas抗原を発現する細胞であり、特に、ヒトFas抗原を発現する形質転換体、たとえば、WC8細胞(イトウN.(Itoh N.)等、J. Immunol., 151巻、621-627頁、1993年)を使用するのが好ましい。
産業上の利用分野
Fas抗原に結合する物質が単離されれば、それを使用して、人為的に生体内で生じるアポトーシスを調節し、疾患の治療や、診断に使用する事ができる。Fas抗原に結合して細胞にアポトーシスを誘導するような物質(Fasリガンド)は、生体にとって不必要な細胞を除去するために使用することが可能である。たとえば、先述したように、エイズウイルス感染細胞ではFas抗原が発現されているので、エイズウイルス感染初期においては、Fasリガンドを使用してアポトーシスを人工的に誘導し、感染細胞を早期に除去する事により、エイズを治療する事が可能であろう。また、ある種の自己免疫疾患では、人為的にFas抗原を介したアポトーシスを生じさせる事により、自己抗原反応性のT細胞の除去が可能になるであろう。また、モリモトH.(Morimoto H.)等は、癌細胞にFas抗原を介したアポトーシスを誘導する事によって、アドリアマイシンやシスプラチンによる制癌効果が相乗的に増強されることを報告している(Cancer Res., 53巻、2591-2596頁、1993年)ので、Fasリガンドは癌治療にも使用することができるであろう。
一方、エイズウイルス感染後期の免疫能の低下や、劇症肝炎における肝機能低下は、免疫担当細胞あるいは肝細胞のアポトーシスにより組織の機能が著しく低下した結果と考えられる。このような状態においては、Fasリガンドの作用を抑制し、細胞のアポトーシスを防ぐことが必要になる。したがって、このような病態には、Fasリガンドの発現を抑制する物質やFasリガンドと拮抗的に作用する物質を使用した治療が必要である。
このように、生体内で生じているアポトーシスを人為的に調節するという原理に基づいた治療方法は、Fas抗原に結合する物質が同定されて初めて可能になる方法である。
Fas抗原と結合するポリペプチドを、治療や研究に使用するためには、当該ポリペプチドを高純度で、大量に生産することが必要になる。当該ポリペプチドをコードする遺伝子をクローニングすれば、当該ポリペプチドを遺伝子工学的に生産することが可能になり、当該蛋白質を治療薬の主成分として使用したり、抗体の作製に使用することが可能になる。また、遺伝子そのものは、遺伝子治療やアンチセンス医薬の開発に使用したり、トランスジェニックマウス等、アポトーシスが関与する疾患のモデル動物の作成に使用することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例をもって本発明を一層具体的に説明するが、これらは一例として示すものであり、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
また、以下の記載において用いる略号は、当該分野における慣用略号に基づくものである。
なお、以下に示す実施例中の諸操作は、主にサムブルック等編〔モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニャル 第2版〕コールドスプリングハーバーラボラトリー,1989年;今本文男等編〔組換え遺伝子の細胞への導入と発現〕蛋白質核酸酵素臨時増刊28(14)1983年;岡田善雄監修〔細胞工学的技術総集編〕実験医学臨時増刊7(13)1989年等を参考として実施した。
(実施例1)キメラ蛋白質の調製
(1)発現プラスミドpFas-FcIIの調製
実施例2で使用する、マウスFas(mFas)抗原の細胞外領域とヒトIgGl(hIgG1)のFc領域とを結合させたキメラ蛋白質(以下mFas-Fcと称する)の発現プラスミドを以下の方法で作製した。
まず、配列表の配列番号33〜34に示すマウスFas抗原染色体遺伝子のイントロン4のセンス配列(GATTTTCAACCACTCAGTCG)を含むオリゴヌクレオチドプライマーと、イントロン5のアンチセンス配列(ATGCGGCCGCTGGATCCTTTGTATGAAATTGAGTAAT)を含むオリゴヌクレオチドプライマーを化学合成した。後者のオリゴヌクレオチドプライマーにはBamHIサイトを付加してある。
これらのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、マウスFas抗原染色体遺伝子を含むプラスミド(pMF3ES, 1992年度、分子生物学会)を鋳型にしてPCRを行った。その結果、エクソン5の5'末端および3'末端にフランキングリージョンを有する、383bpのDNA断片が増幅された。
得られた増幅産物をPstIとBamHIで消化し、エクソン5の3'末端とイントロン5の一部を含む128bpのDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントでプラスミドpMF1(ワタナベ−フクナガ(Watanabe-Fukunaga R.)等、J.Immunol. 148巻、1274-1279頁、1992年)のPstI-BamHI DNAフラグメント部分を置き換え、プラスミドpMFXを作製した。
一方、ヒトIgG1重鎖定常領域に対するエクソンを有するプラスミドpMH4(ニシムラY.(Nishimura Y.)等、Cancer Res., 47巻、999-1005頁、1987年)をHaeIIで消化し、得られた1.7kbpのDNAフラグメントをpBluescript KS(+)のXbaIサイトにサブクローニングした。
これをHincIIおよびApaIで消化し、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインをコードするエクソンを含む1.4kbpのDNAフラグメントを得た。このフラグメントを前述のプラスミドpMFXのXbaIサイトに挿入し、プラスミドpFAS-Fcを作製した。プラスミドpFAS-FcをKpnIで切断後、平滑化しNotIで消化し、得られた2.3kbpのDNAフラグメントを、哺乳動物発現ベクターpEF-BOS(ミズシマS.(Mizushima S.)およびナガタS.(Nagata S.)、Nucleic Acids Res., 18巻、5332頁、1990年)にライゲートして、目的とする発現プラスミドpFAS-FcIIを得た。
(2)発現プラスミドphTNFRβ-Fcの作製
実施例2で使用する、TNFレセプターβとヒトIgG1のFc領域キメラ蛋白質(以下、hTNFRβFcと称する)の発現プラスミドphTNFRβ-Fcを以下のように構築した。
まず、プラスミドp55TNFr-HG1(レオスツシャーH.(Leostscher H.)等、J. Biol. Chem., 266巻、18324-18329頁、1991年)をKpnIとHindIIIで消化し、650bpのDNAフラグメントを調製した。プラスミドp55TNFr-HG1は、人工的スプライスドナー配列(artificial splice donor sequence)に続くヒトTNFレセプター(p55)の細胞外領域をコードするcDNA配列を含むプラスミドである。
一方、プラスミドpFAS-FcIIをHincIIおよびHindIIIで消化した。マウスFas抗原の細胞外領域をコードする配列を含む約700bpのDNAフラグメントを、前述の650bpのKpnI-HindIIIフラグメントと入れ換え、目的とするプラスミドphTNFRβ-Fcを得た。
(3)発現プラスミドpBF-Fc1の調製
実施例10で使用する、ヒトFas抗原の細胞外領域とヒトIgGlのFc領域キメラ蛋白質(以下、hFas-Fcと称する)の発現プラスミドpBF-Fc1を以下のように構築した。
まず、ヒトFas抗原をコードするDNA(イトウN.(Itoh N.)等、Cell, 66巻、233-243頁、1991年)を含むプラスミドpBLF58-1をXhoIとBamHIで消化し、700bpの断片を得た。次にキメラ蛋白質mFas-Fcの発現ベクター構築に用いたpFas-FcをXhoI、BamHIで消化し、先述の700bpの断片を挿入した(bBHF-C1)。
一方、pBLF58-1を鋳型とし、配列表の配列番号35に示すセンスプライマー1(ATGCCCAAGTGACTGACATCAACT)と配列表の配列番号36に示すアンチセンスプライマー1(GCGCGGATCCAGGAAGTGGGAAAGGATTACCTTCCTCTTTGCACTTGGTG)を使用してPCRを行い、ヒトFas抗原の細胞外領域に、マウスFas抗原染色体遺伝子のイントロン5の配列、BamHIサイトを付加した断片を調製した。
このPCR産物をMscIとBamHIで消化し、得られた360bpのDNA断片をMscIとBamHIで消化したpBHF-C1に挿入した。ついで、形成されたプラスミドをKpnIで切断後、平滑化し、NotIで消化し、ヒトFas抗原の細胞外領域、ヒトIgGlのFc領域をコードするDNA断片を得た。この断片を、BstXIで切断後平滑化し、かつNotIで切断したpEF-BOSに挿入し、ヒトFas-Fc発現ベクターpBF-Fc1を得た。
(4)キメラ蛋白質の生産と精製
プラスミドpFas-FcIIおよびphTNFRβ-FcでそれぞれCOS-7細胞、BTS-1細胞(セディビーJ. M.(Sedivy J. M.), Biol. Technology, 6巻、1192-1196頁、1993年)を形質転換させた。また、プラスミドpBF-Fc1でCOS-7細胞を形質転換させた。
COS-7細胞の形質転換は、フクナガR.(Fukunaga R.)らが報告したDEAE-デキストラン法で行った(フクナガR.(Fukunaga R.)等、Cell, 61巻、341-350頁、1990年)。形質転換の後、このCOS-7細胞を、10%のFCSを含む培地中で24時間インキュベートし、さらに、血清不含の培地中で48時間および72時間インキュベートした。インキュベート後の培養上清液を集め、遠心分離操作を行った後、0.45μmのフィルターを通して細胞の破砕物を除き、プロテインA-セファロース4Bカラム(ファルマシア社)クロマトグラフィーにより、キメラ蛋白質mFas-Fc、hTNFRβ-Fc、hFas-Fcをそれぞれ精製した。
一方、BTS-1の形質転換は、エレクトロポレーション(ポッターH.(Potter H.)等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81巻、7161-7165頁、1984年)によって行った。すなわち、プラスミドpFas-FcIIをApaLIで、プラスミドphTNFRβ-FcをSacIで消化した後、各々のプラスミドDNA50μgをそれぞれ、XhoIで切断したpSTneoB 5μgとともに、1×107個の細胞を形質転換した。10%FCSと300μg/mlのG-418とを含むダルベッコ変法イーグルMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium, 以下D-MEMと略す)で10日間選択を行った後、G-418耐性クローンを分離し、39.5℃で増殖させた。
目的とするキメラ蛋白質を生産するクローンを同定するため、クローンの一部を33℃で3日間培養し、培地中に分泌されたキメラ蛋白質を、酵素免疫法(ELISA)で検定した。検定に使用したELISAでは、捕獲抗体として抗ヒトIgG-Fc抗体(カッペル55071)を、検出抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG-Fc抗体(ジャクソン研究所、109-035098)を用いた。
mFas-FcおよびhTNFRβ-Fcを効率的に生産する形質転換体を一つずつ、39.5℃で増殖させた後、15cmプレートに50%コンフルエントとなるように植え込んだ。33℃で1週間培養したのち、培養上清からmFas−FcとhTNFRβ−FcをプロテインA−セファロース4Bカラム(ファルマシア社)クロマトグラフィーにより、精製した。
精製後のmFas-FcをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析したところ、還元下で分子量55kDの位置にバンドが認められ、非還元下においては、分子量110kDの位置にバンドが認められた。これは、得られたキメラ蛋白mFas-Fcが、S-S結合によるホモダイマーとして存在していることを示している。
(実施例2)フローサイトメトリーによる解析およびd10S-2細胞株の選択(1)キメラ蛋白質のビオチン化およびFITC標識
スルホサクシニミジル 6−(ビオチンアミド)ヘキサノエート(NHS−LC−ビオチン、ピアス社、21335)を用い、その操作手順書に従って、mFAS-FcおよびhTNFRβ-Fcをビオチン化した。
また、1mgのhTNFRβ-Fcと20μgのFITCとを、1mlの50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)中で混合し、室温で4時間反応させた後、未結合のFITCをセファデックスG-25Mを用いたカラムクロマトグラフィーで除去し、FITC標識hTNFRβ-Fcを得た。
(2)フローサイトメトリー
PC60-d10S細胞(以下、d10Sと略す。ルービエE.(Rouvier E.)等、J. Exp. Med., 177巻、195-200頁、1993年)を染色用溶液(2%FCSと0.02%NaN3とを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略す))を用いて洗浄した。約1×106細胞を、5μg/mlのラット抗マウスFcγRIIブロッキング抗体(ファーミジェン社)を含む染色用溶液50μlに懸濁した。これを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、氷上で10分間インキュベーションした。50μlの20μg/mlビオチン化mFas-Fcを各ウェルに加え、氷上でさらに30分間インキュベーションした。染色用溶液で洗浄の後、フィコエリスリン標識ストレプトアビジン(25倍希釈、ベクトン-ディッキンソン社)を加え、さらに染色用溶液を加えて100μlとし、氷上で30分間反応させた。
細胞を染色用溶液で洗浄した後、FACScan(ベクトン−ディッキンソン社)を用いたフローサイトメリーによって解析を行った。この結果を図1aに示す。対照は白抜部分として、またPMAとイオノマイシンで4時間処理する前に染色したものを影付された部分として、さらに、PMAとイオノマイシンで4時間処理した後に染色したものを着色部分で表した。その結果、蛍光強度のわずかなシフトが認められ、当該細胞がビオチン化mFas-Fcで染色された事が確認された。
一方、d10S細胞を、ビオチン化hTNFRβ-Fcで同様に染色し、フローサイトメトリーで分析したところ、染色は認められなかった。これらの結果、実施例1で調製したmFas-Fcは、d10S細胞上のFasリガンドに特異的に結合することが確認された。
(3)d10S-2細胞株の選択
(2)で、高い蛍光活性が認められたd10S細胞、1〜3×107個に、前述の方法でビオチン化mFas-FcおよびFITC標識hTNFRβ-Fcを反応させ、次いで、フィコエリスリン標識ストレプトアビジンで染色し、FACStar(ベクトン−ディッキンソン社)でソーティングした。フィコエリスリン蛍光を高いレベル(上位0.3〜0.5%)で発する細胞を集め、10%FCSと50nMの2−メルカプトエタノールを含むD-MEMで増殖させた。
得られた細胞に対し、上記操作を更に繰り返した結果、選択された細胞群をd10S-2と名づけた。d10S-2について、d10Sと同様にフローサイトメトリーを行った結果を図1bに示す。このd10S-2は、刺激剤存在下、非存在下両方において、高いFasリガンド発現量を示す細胞が極めて濃縮された細胞群である。
(実施例3)cDNAライブラリーの構築
実施例2で得られたd10S-2細胞を10%FCSを含むD-MEM中で2×105細胞/mlまで増殖させ、20ng/mlのPMAと1μg/mlのイオノマイシンで37℃、3時間刺激した。グアニジンイソチオシアネート/アシッドフェノール法(コムシンスキーP.(Chomczynski P.)およびサシーN.(Sacchi N.), Anal. Biochem., 162巻、156-159頁、1987年)によって総RNAを分離した後、オリゴ(dT)−セルロースカラムクロマトグラフィーを2回繰り返しpoly(A)RNAを選択的に分離した。ランダムヘキサマーあるいはオリゴ(dT)プライマーを用い、イトウN.(Itoh N.)等、(Cell, 66巻、233-243頁、1991年)の方法で2本鎖cDNAを合成した。
得られた2本鎖cDNAにBstXIアダプターを付加し、1%アガロースゲルを用いた電気泳動で分子量分画を行った。1.5kbp以上の大きさのcDNAを回収し、BstXIで切断したpCEV4ベクター(イトウN.(Itoh. N.)等、Cell, 66巻,233-243頁、1991年)にライゲートした。
ライゲートプロダクトを使用し、エレクトロポレーション(ドワーW.(Dower W.)等、Nucleic Acids Res., 16巻、6127-6145頁、1988年)により大腸菌DH10B細胞(ギブコBRL(Gibco BRL)社)を形質転換した。オリゴ(dT)でプライムさせたcDNAライブラリーから得た約1.0×106個の独立したクローンと、ランダムヘキサマーでプライムさせたcDNAライブラリーから得た約1.3×106個のクローンとを混合し、プラスミドDNAを調製して、COS-7細胞の形質転換に使用した。
(実施例4)パンニング操作によるcDNAクローンの濃縮
実施例3で得られたプラスミドDNAでエレクトロポレーション法により、COS-7細胞を形質転換した。すなわち、5×106個のCOS-7細胞をK-PBS-(30.8m Nacl, 120.7mM KCl, 8.1mM Na2HPO4および1.46mM KH2PO4を含む緩衝液)で洗浄し、0.4mlの5mM MgCl2を添加したK-PBS(K-PBS+)に細胞を懸濁した。
次に、0.4mlのK-PBS+に40μgのプラスミドDNAを溶解し、それを細胞懸濁液に加え、氷上で10分間インキュベーションした。細胞に960μFのキャパシタンスで230Vの電圧をかけエレクトロポレーションし、氷上で10〜15分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を5mlの血清無添加の冷D-MEMで希釈し、さらに室温で30分間インキュベーションした。その後、この細胞を2つの10cmプレートに植え込み、10%FCSを含むD-MEM中で37℃で60時間培養した。
以上の方法で、総数1.2×108個のCOS-7細胞を形質転換し、10cmプレートで培養した。1プレートあたり5mlの0.5mM EDTAおよび0.02%NaN3を含むPBS(PBS/EDTA/NaN3)を加え、37℃で30分間インキュベーションし、プレートよりこれらの細胞を剥した。剥した細胞を、3mg/mlのBSAおよび2.5μg/mlの抗マウスFcγIIレセプター抗体とを含むPBS/EDTA/NaN3に5〜7×106個/mlの細胞濃度で再度懸濁した。氷上で10分間インキュベーションした後、mFas-Fcを終濃度が4μg/mlになるように加え、氷上で60分間インキュベーションした。この細胞を氷冷したPBSで洗浄し、50mMヘペス緩衝液(pH8.3)および0.2mMビス(スルホサクシニミドイル)スベレート(BS3、ピアス社)とを含むPBS中に5〜7×106個/mlの細胞濃度になるよう浮遊した。
氷上で30分間インキュベーションしたのち、1Mトリス−塩酸(以下、Tris-HClと略す、pH8.0)を終濃度が50mMとなるよう添加し、さらに氷上で10分間インキュベーションした。PBSで洗浄したのち、細胞を3mg/mlのBSAを添加したPBS/EDTA/NaN3 30mlに懸濁し、ナイロンメッシュ(ポアサイズ100μm)で濾過を行い凝集物を取り除いた。
この細胞懸濁液を、抗ヒトIgG-Fc抗体(カッペル55071)を固定化した30個の10cmパンニング用プレートに分配した。室温で2時間インキュベーションしたのち、PBSで穏やかに洗浄することにより非付着細胞を取り除き、イトウN.(Itoh N.)等の方法で染色体外DNAを付着細胞から抽出した(Cell, 66巻、233-243頁、1990年)。以上の1回目のパンニング操作で得られたDNAを用い、エレクトロポレーションにより大腸菌を形質転換させ、4.1×106個のコロニーを得た。これらよりプラスミドDNAを調製し、9.6×107個のCOS-7細胞(60プレート)を形質転換した。
これをパンニング用プレート30枚に分配して2回目のパンニングを行い、1回目と同様に付着細胞からDNAを調製した。回収したプラスミドDNAを用い大腸菌を形質転換し、8.0×106個のクローンを得た。これらよりプラスミドDNAを調製し、4.0×107個のCOS-7細胞(10プレート)を形質転換した。
これをパンニング用プレート30枚に分配して3回目のパンニングを行った。1回目、2回目と同様に付着細胞からプラスミドDNAを回収し、大腸菌を形質転換させ、3.8×106個のクローンを得た。これらより調製したプラスミドDNAで1.0×107個のCOS-7細胞(25プレート)を形質転換し、10枚のパンニング用プレートに分配して、4回目のパンニング操作を行った。
以上の4回目のパンニング操作を終了した後、COS-7細胞から染色体外DNAを調製し、大腸菌を形質転換させた。各菌体クローンより、プラスミドDNAを調製して解析したところ、48クローン中16クローンが、1.0kbp以上のインサートを有していた。これらのプラスミドDNAをそれぞれCOS-7細胞に導入した後、COS-7細胞をビオチン化mFAS-Fcで染色し、実施例2の方法でフローサイトメトリーを行った。その結果、5つのクローンが染色された。この5クローンのうちの1つで、1.6kbpのインサートをもつクローン、pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)の結果を図1cに示した。このpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞はビオチン化hTNFRβ-Fcでは、染色されなかった。また、外来遺伝子を含まないpCEV4で形質転換させたCOS-7細胞はビオチン化mFas-Fcで染色されなかった。
(実施例5)DNA配列の決定およびその解析
実施例4で得られた5クローンについて制限酵素マッピングをしたところ、それらが互いにオーバーラップしていることがわかった。そこで、この5クローンのうちの1つ、pTN24-15をさらに詳しく解析した。DNA配列の決定はDNAシーケンサー(370A型、パーキンエルマージャパン(株))とTaqダイ デオキシ サイクル シーケンシング キット(Taq Dye Deoxy cycle sequencing kit,パーキンエルマージャパン(株))を使用して行った。
クローンpTN24-15の塩基配列と、それから推定したアミノ酸配列を図2、3と、配列表の配列番号25に示した。このcDNAは、1623塩基から成り、1つのオープンリーディングフレームを有していた。
また、この配列中には、配列表の配列番号37に示すコザックM.(Kozak M., J. Cell Biol., 115巻、887-903頁、1991年)によって提唱された配列(CCA/GCCATGG)は認められなかったが、翻訳開始部位は塩基番号74〜76に位置するATGと考えられた。このオープンリーディングフレームは、908〜910の終止コドンTAAで終わっている。そして、このcDNAは、278アミノ酸をコードすることがわかった。アミノ酸配列から推定されるペプチド部分の分子量は31,138であり、等電点は9.53である。
このcDNAがコードする278アミノ酸のうちN末端側の77アミノ酸は、極めてプロリンに富んだ配列であった。N末端付近に典型的なシグナル配列は確認できなかったが、ヒドロパシー分析(Hydropathy Analysis)により、Fasリガンドは、プロリンリッチな領域に続いて、おそらくトランスメンブランアンカーとして機能すると考えられる22個の疎水性アミノ酸を有することがわかった。シグナル配列が欠如しており、内部に疎水性ドメインを有する構造から、FasリガンドはII型のトランスメンブレン蛋白質であることが示唆された。
細胞外領域として推定される領域はC末端側に存在し、179アミノ酸から成り、4つのN−グリコシレーションサイト(Asn-X-Ser/Thr)を含むことが確認された。これらのグリコシレーションサイトは、図2、図3中に*で示した。
cDNAライブラリー作成に使用したd10S-2細胞は、ラットとマウスのハイブリドーマである。FasリガンドcDNAの由来を決定するために、FasリガンドcDNAの3'末端ノンコーディング領域からプライマーを設計、合成し、ラットとマウスの脾臓細胞から得た染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。すなわち、配列表の配列番号25の塩基番号1006〜1025、1305〜1324をセンスプライマー2および3(配列表の配列番号38および39)とし、配列表の配列番号25の1327〜1346および1543〜1562をアンチセンスプライマー2および3(配列表の配列番号40および41)として用いた。その結果、ラット染色体DNAでのみ、サイズ341bpと258bpのバンドが得られた。これらの結果は、クローンpTN24-15より得られたcDNAがd10Sハイブリドーマ細胞のラット遺伝子に由来することを示している。
なお、ハナハンの方法(Hanahan D.著、Techniques for Transformation ofE. coli, In DNA Colning, vol.1、グローバーD. M.(Glover D. M.)編、109-136頁、IRL出版(IRL Press), 1985年)に準じて、上記pTN24-15で大腸菌を形質転換させ、得られた形質転換体DH10B(pTN24-15)を工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(FERM P-13953)。さらに、平成6年10月27日付で原寄託から国際寄託に移管した(FERM BP-4848)。
(実施例6)ノーザンハイブリダイゼーション
mRNA分離キット(ファルマシア)を用い、d10S、d10S-2、ラット各組織(脳、肺、心臓、肝臓、小腸、腎臓、卵巣、精巣、骨格筋)および細胞(脾細胞、胸腺細胞)からpoly(A)RNAを調製した。50%ホルムアミド中で65℃で5分間加熱しRNAを変性させ、6.6%のホルムアルデヒドを含む1.5%アガロースゲルで電気泳動を行い、ニトロセルロースあるいはナイロン膜(シュライヒャー アンド シュエル(Schleicher and Schuell)社)に転写させた。
プローブとして、実施例4で得られたpTN24-15の43〜967のDNA配列(配列表の配列番号42)を含む925bpの2本鎖DNAフラグメントをPCRにより調製し、ランダムプライマーラベリングキット(ベーリンガー マンハイム社)によって32P標識した。ヒトEF1αのcDNA(ウエツキT.(Uetsuki T.)等、J. Biol. Chem., 264巻、5791-5798頁、1989年)の1.8kbpの長さを有するBamHIフラグメントの32P標識物を、コントロールプローブとして使用した。ハイブリダイゼーション操作は、ハイストリンジェンシー(high stringency)の条件下でサムブルックJ.(Sambrook J.)らの方法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年)を用いた。
図4には、d10S、d10S-2、d10S-16各細胞をPMAとイオノマイシンで刺激した場合と刺激しない場合の、ノーザンハイブリダイゼーションの結果を示した。図4から明らかなように、d10Sから得たpoly(A)RNAは、約2.0kbpの弱いハイブリダイゼーションバンドを示した。このバンドのシグナルの強さは、PMAやイオノマイシンでd10S細胞を刺激すると増加する。d10S-2細胞は、PMAとイオノマイシンで刺激したd10Sよりも約4倍強いシグナルを示し、d10S-2細胞ではFasリガンドmRNAの発現量がPMAとイオノマイシンで刺激したd10S細胞よりも、約4倍高いことが示唆された。
また、実施例2の操作を16回繰り返して得たd10S−16細胞では、mRNA発現量はd10S細胞よりも約100倍多かった。d10S−16の細胞障害活性は、d10S細胞より100倍高く、FasリガンドmRNA発現量の増加は、細胞障害活性、mFas−Fcで染色される強さと正の相関関係にある事が分かった。
図5には、ラットの脾臓および胸腺より調製した脾細胞、胸腺細胞の調製直後(培養前)、刺激剤なしで37℃で8時間培養後(未処理)、各刺激剤を加えて37℃で8時間培養後のノーザンハイブリダイゼーションの結果を示した。ラットの脾細胞では、FasリガンドmRNAの弱い発現が認められた。ラット脾細胞をPMAとイオノマイシン、もしくはConAとIL-2で8時間刺激した時、FasリガンドmRNAの量は著しく増加した。ラット胸腺細胞では、培養前及び未処理の場合FasリガンドmRNAは、ほとんど発現していなかった。しかしながら、ラット胸腺細胞をPMAとイオノマイシン、もしくはConAとIL-2で刺激すると、FasリガンドmRNAの発現量は、脾細胞におけるそれと同等にまで増加した(図5)。
ラットの各組織におけるFasリガンドmRNAの発現量を調べた結果を図6に示す。図6に示したように、精巣に於いて約2.0kbpの強いシグナルを有するバンドが確認された。小腸、腎臓、肺では、普通もしくは弱いシグナルを有するバンドが確認されたが、その他の組織ではFasリガンドmRNAの発現は認められなかった。
なお、すべてのmRNAがインタクト(intact)であることは、ヒトEF1αのcDNAプローブと再ハイブリダイゼーションした全ての細胞および組織において、1.8kbpのバンドが認められたことから明らかである(図4、5および6の下段)。
(実施例7)Fasリガンドの生化学的解析
d10S-12細胞で発現しているFasリガンド及びpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞で発現しているFasリガンドの生化学的性状を検討した。
d10S-12細胞は、実施例2の操作を12回繰り返して得られた細胞集団である。まず、d10S-12あるいはpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞の細胞表面蛋白をD−ビオチニル−ε−アミノカプロン酸 N−ヒドロキシサクシニミドエステル(biotin-CNHS-ester、ベーリンガーマンハイム社)用いるマイヤー(Meier)らの方法でビオチン化した(Anal. Biochem., 204巻、220-226頁、1992年)。なお、pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞の対照として、外来遺伝子を含まないpCEV4ベクターで形質転換させたCOS-7細胞を用いた。細胞(7.5×106個)を1mlのライシスバッファー(1%NP−40、50mM Tris-HCl(pH 8.0)、150mM NaCl、1mM(p−アミノフェニル)メチルスルホニルフロライド塩酸塩(APMSF)、1μg/mlペプスタチンおよび1mMロイペプチンを含む)中に加え氷上で30分間インキュベーションし、細胞を溶解させた。
14,000rpmで15分間遠心操作を行った後、上清を10μg/mlのhTNFRβ−Fcと氷上で60分間インキュベーションし、さらに5%液量のプロテインA−セファロース4Bと、4℃で60分間インキュベーションした。プロテインA−セファロース4Bを除去したのち、上清に10μg/mlのmFas−Fcを加え、氷上で60分間インキュベーションした。1%液量のプロテインA−セファロース4Bをこの混合物に加え、4℃で一夜インキュベーションした。遠心操作の後、沈降物をライシスバッファーで洗浄し、5%の2−メルカプトエタノールを含む20μlのラエムリ(Laemmli)の試料用緩衝液(2%SDS、10%グリセリンおよび0.002%ブロモフェノールブルー(BPB,Bromophenol blue)を含む62.5mM Tris-HCl(pH6.3))に再懸濁し、95℃で2分間加熱した。次いで、0.1%SDSを含む10−20%グラジエントポリアクリルアミドゲルを用いてグラジエントゲル電気泳動を行い、PVDF膜へ転写し、ECLシステム(アマーシャム社)で検出した。
図7に、mFas−Fcとd10S−12、COS-7/pCEV4またはCOS-7/pTN24-15との免疫沈降の結果を示す。図7に示したように、mFas−Fcは、d10S−12細胞ライセート中の分子量約40,000の蛋白質と免疫沈降し、一方、pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS-7/pTN24-15)からのライセート中では分子量約37,000−45,000の蛋白質とともに免疫沈降した。外来遺伝子を含まないpCEV4ベクターで形質転換させたCOS-7細胞(COS-7/pCEV4)では、免疫沈降物は認められなかった。
pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞とd10S−12細胞で免疫沈降した蛋白質の分子量は、いずれも前述したアミノ酸配列より推定される分子量よりも大きかった。これら2つの細胞間での分子量の差、およびアミノ酸配列から推定される分子量との差は、4つあるN−グリコシレーションサイトのいくつかにおいてグリコシレーションに違いが生じているためと考えられた。
(実施例8)Fasリガンドの細胞障害活性の測定
(1)エフェクター細胞による細胞障害活性の測定
d10S細胞およびpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞の、細胞障害活性を、W4細胞(オガサワラJ.(Ogasawara J.)等、Nature、364巻、806-809頁、1993年)をターゲット細胞として測定した。W4細胞は、マウスFas抗原を発現させるようにマウスWR19L細胞を形質転換させた細胞である。このWR19L細胞は、マウスFas抗原を殆んど発現せず、TNFの細胞障害作用に感受性の細胞である。
細胞障害活性の検定は、ルービエE.(Rouvier E.)等の方法に準じて行った(J. Exp. Med., 177巻、195-200頁、1993年)。
まず、d10S細胞(2.5〜5×105細胞/ml)を、10ng/mlのPMA(シグマ社)およびカルシウムイオノフォアであるイオノマイシン(カルビオケム社)500ng/mlが添加された10%FCS含有D-MEM中で、37℃で3時間インキュベーションした後、D-MEMで洗浄し、エフェクター細胞とした。また、COS-7細胞をpTN24-15でDEAE−デキストラン法で形質転換し、エフェクター細胞とした。一方、100μlの10%FCSを含むRPMI1640中で、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(アマーシャム社)と共に1×106個のWR19L細胞あるいはW4細胞を37℃で2時間インキュベートした。培養液(RPMI1640)で洗浄した後、これらの細胞を標的細胞として使用した。
d10Sをエフェクター細胞とし、WR19LまたはW4を標的細胞としたときの特異的細胞障害活性を図8に示した。また、エフェクター細胞をCOS/pTN24-15、COS/pCEV4としたときの特異的細胞障害活性を図9に示した。
標的細胞1×104個とエフェクター細胞とを、さまざまな比で丸底のマイクロタイタープレートの各ウェル中で混合した。このとき全液量が計200μlになるようにした。700rpmで2分間、プレートの遠心操作を行ったのち、37℃で4時間インキュベーションした。さらに、1,200rpmで5分間、プレートの遠心操作を行い、各ウェルより上清100μlを分取してγカウンターを用いて放射活性を測定し、特異的細胞溶解率を算出した。
51Crの自然放出は、培地のみで標的細胞をインキュベーションすることにより決定し、一方、最大放出量は、標的細胞に0.1%となるようにトライトンX100を加えることにより決定した。また、特異的細胞溶解率は次の式により計算した。
Figure 0003716936
図9に示したように、pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)は、W4細胞を溶解させたが、外来遺伝子を含まないpCEV4ベクターで形質転換させたCOS-7細胞(COS/pCEV4)では、W4細胞の溶解は認められなかった。pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)と、d10S細胞の細胞障害活性を、W4細胞に対するE/T(エフェクター細胞/標的細胞)比で比較すると、前者は後者に比べ少なくとも10倍高い活性を有していた。また、d10S細胞およびpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)は、ともにWR19L細胞に対しては細胞障害作用を示さなかった(図8、9)。
(2)細胞の培養上清の添加による細胞障害活性の検討
図10に、COS/pTN24-15またはCOS/pCEV4の培養上清を種々の濃度で添加したときの標的細胞(W4,WR19L)に対する細胞障害活性を示した。
pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)の培養上清の細胞障害活性をみたところ、W4細胞に対し顕著な細胞障害活性が認められたが、WR19L細胞に対しては細胞障害活性は認められなかった(図10)。これは、COS-7細胞上で発現されたリコンビナントFasリガンドが切断され、可溶型になっていることを示す結果である。
(3)mFAS−FcおよびhTNFRβ−Fcによる細胞障害活性の阻害
さらに、mFas−Fc、hTNFRβ−Fcをアッセイ系に加えて、エフェクター細胞による細胞障害活性の変化を検討した。この結果を図11に示す。
図11に示すように、Fasリガンドを発現するCOS-7細胞(COS/pTN24-15)の細胞障害活性は、d10S細胞と同様に、10μg/mlのmFas−Fcで阻害され、10μg/mlのhTNFβ−Fcでは阻害されなかった。
(実施例9)染色体DNAのフラグメンテーションについての検定
24ウェルプレート内の8×104個のCOS-7細胞を、10μgのpTN24-15で形質転換した。トランスフェクトの72時間後、2×105個のWR19L細胞あるいはW4細胞(オガサワラJ.(Ogasawara J.)等、Nature, 364巻、806-809頁,1993年)をウェルに加え、10%FCSを含むRPMI1640中37℃で、1〜3時間インキュベーションした。WR19LまたはW4細胞のうち、ウェル内壁に付着しない非付着細胞を集め、レイードP. W.(Laird P. W.)らに準じて染色体DNAを調製し(Laird P. W.等、Nucleic Acids Res., 19巻、4293頁、1991年)、0.5μg/mlの臭化エチジウム存在下でアガロースゲルを使用して電気泳動を行った。
上述のWR19LまたはW4細胞の染色体DNAの電気泳動の結果を図12に示した。
図12から明らかなように、pTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞(COS/pTN24-15)とコカルチャーしたW4細胞では、染色体DNAが、アポトーシスの特徴であるステップラダー様式(step-ladder fashion)でフラグメント化していた。
DNAのラダーは、インキュベーション後1.0時間で観察され、インキュベーション後2時間で、ほとんどのDNAが断片化してしまった。
このようなDNAのフラグメント化は、外来遺伝子を含まないpCEV4で形質転換させたCOS-7細胞とコカルチャーしたW4細胞では認められなかった。さらに、このようなDNAの断片化はターゲット細胞に用いたW4細胞およびWR19L細胞のうちW4細胞でのみ確認され、WR19Lでは確認されなかった。
(実施例10)アフィニティークロマトグラフィーを用いたFasリガンドの精製
(1)細胞表面蛋白質のビオチン化
以下で、トレーサー蛋白質として使用するため、マイヤー(Meier)等の方法(Anal. Biochem., 204巻、220頁、1992年)に従って細胞表面のビオチン化を行った。すなわち、d10S-12細胞を50μg/mlのNHS−LC−ビオチンを含む10mMホウ酸ナトリウム緩衝生理食塩水で、1×107細胞/mlになるように懸濁し、室温で15分間インキュベートした。最終濃度が10mMになるように塩化アンモニウムを添加し、反応を停止後、150mMのNaClを含む50mM Tris-HCl(pH8.0、以下TBSと略す)で3回洗浄し、細胞表面蛋白質をビオチン化した。
(2)mFas−Fcアフィニティーカラムの調製
実施例1で作製したキメラ蛋白質mFas−Fcの精製標品4mgを4mlのPBS(pH7.4)に溶解した後、2mlのプロテインA−セファロース4Bと混合し、4℃で1時間結合させた。遊離の蛋白質を除去するため、樹脂をTBSで3回、次に200mMのホウ酸ナトリウム溶液(pH9.0)で1回洗浄した。さらに、ジメチルピメリミデイト(DMP)を含む200mMホウ酸溶液(pH9.0)で室温45分間インキュベートすることにより、樹脂にmFas−Fcを共有結合させた。
(3)Fasリガンドの精製
実施例2の操作を12回繰り返して得られたd10Sのサブライン、d10S−12を、50nMの2−メルカプトエタノールと20mMヘペス(pH7.4)を添加した10%FCS含有D-MEMを培地を用いて、37℃にて、10本のローラーボトルで培養した。細胞密度が2×105細胞/mlに到した時点で10ng/mlのPMAと500ng/mlのイオノマイシンを添加し、さらに4時間インキュベートした。
培養後の細胞浮遊液を250×gで20分間遠心後ペレットを回収し、PBSで3回、TBSで1回洗浄した。ペレットの状態で、−80℃で保存し、以下の細胞膜画分の調製に使用した。また、一部を(1)の細胞表面蛋白質のビオチン化に使用した。
凍結した細胞ペレットは4倍量の1mMのp−アミノフェニル メタンスルフォニル フルオライド ハイドロクロライド(p-aminophenyl methanesulfonyl fluoride hydrochloride, APMSF)、1μg/mlペプスタチン、1μg/mlロイペプチンおよび0.02%NaN3を含む0.3Mショ糖溶液中で、ウルトラ−トラックスT25(Ultra-Truuax T25, ヤンク ウント クンケル、スタウフェン(Janke & Kunkel, Staufen)社)を用い、ブルーポジションで、氷上で2分間、破砕した。
1,000×gで20分間、4℃にて遠心し、核および破砕されていない細胞を除去した。次に上清を100,000×gで90分間、4℃にて遠心し、膜分画を得た。この膜分画を40mlのライシスバッファー(1%NP−40、1mM APMSF、1μg/mlペプスタチンおよび1μg/mlロイペプチンを含むTBS)に溶解し、4℃で一晩振とうし可溶化した。可溶化した膜分画を100,000×gで60分間、4℃にて遠心し、上清を−80℃で保存した。細胞表面タンパクをビオチン化した細胞も同様に処理し、−80℃で保存した。
Fasリガンドのトレーサーとして可溶化した膜分画100mlに、ビオチン化した細胞からの可溶化膜分画10mlを添加した。その混合物を1%NP−40を含むTBSで平衡化したmFas−Fcカラム(1.4ml)にアプライした。
カラムを1%NP−40を含むTBS 50mlおよび0.1%NP−40を含むTBS 50mlで洗浄後、1M NaClおよび0.1%NP−40を含む50mM Tris-HCl(pH8.0)でFasリガンドを溶出した。
1mlづつフラクションを集め、各フラクションの10μlをSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)に供した後、PVDF膜に転写した。ビオチン化した蛋白質は、HRPO標識ストレプトアビジンと反応させて染色し、使用説明書通りにECLシステム(アマーシャム社)で検出した。
40kDのビオチン化Fasリガンドを含む画分をプールし、10μlのConA−アガロースビーズ(EY ラボラトリーズ社)と4℃で1晩インキュベートした。0.1%NP−40を含むTBSで4回洗浄後、0.1%NP−40および2M α−メチルマンノシドを含むPBS 200μlでFasリガンドを溶出し、精製Fasリガンドを得た。
(4)SDS-PAGE
(3)で得た精製Fasリガンドを用いて0.1%SDSを含む10−20%グラジエントポリアクリルアミド電気泳動を行い、シルバーステイニングキット(和光純薬工業(株))で染色、あるいはPVDF膜に転写後、ECLシステムでバンドを検出した。Fasリガンド精製の結果を図13に示す。図中、レーン1は、銀染色の結果を、レーン2はECLシステムでの検出結果である。
図13に示したように、精製されたFasリガンドは銀染色およびECLシステムでともに非還元下、分子量約40kDの1本のバンドとして検出された。
(5)細胞障害活性
実施例8の方法に従って、精製Fasリガンドの細胞障害活性を測定した。ただし、これまでの細胞障害活性でエフェクター細胞として用いられたd10S細胞およびpTN24-15で形質転換させたCOS-7細胞の代わりに、(3)で得られた精製Fasリガンドを使用し、標的細胞であるW4細胞およびWR19L細胞に対する特異的細胞溶解率を指標として、細胞障害活性を測定した。精製されたFasリガンドの細胞障害活性の検討結果を図14に示す。
図14より明らかなように、Fas抗原を発現していないWR19L細胞に対しては細胞障害活性は認められなかったが、Fas抗原を発現しているW4細胞に対しては濃度依存的な細胞障害活性が確認された。
(実施例11)ラットFasリガンドDNAの一部を使用したスクリーニング
(1)ヒト染色体DNAライブラリーのスクリーニング
ヒト(胎盤)染色体DNAファージライブラリー(EMBL3 SP6/T7、クローンテック(Clontech)社)を指示菌(菌名VCS257)に感染させ、軟寒天と混合し、寒天プレートに重層した。37℃にて一晩インキュベーションし、ファージプラークを形成させた。これを一旦、4℃で約4時間冷却し、その後ファージをニトロセルロースフィルターに転写した。
一方、実施例4で得たプラスミドpTN24-15を鋳型として、センスプライマー4(AGAACTCCGTGAGTTCACCA)およびアンチセンスプライマー4(CAATATTCCTGGCATCCATG)配列(配列表の配列番号43および44)を用いてPCRを行い、ラットFasリガンドcDNAの細胞外領域をコードするcDNA(配列表の配列番号25の塩基番号400から967番)を増幅させた。ランダムプライマーラベリングキット(ベーリンガーマンハイム社)を使用して実施例6の方法で増幅産物を32P標識して、プローブ1(配列表の配列番号45)を作製した。配列表の配列番号25の5'末端側、すなわち配列表の配列番号25の塩基番号43から233をPCRにより増幅させ、得られた増幅産物を上述のように32P標識して、プローブ2(配列表の配列番号46)を作製した。
ショウ(Shaw)等の方法(Nucleic Acids Res., 11巻,555-573頁、1983年)を一部改変して、上記の各プローブとニトロセルロースフィルターとをハイブリダイゼーションさせた。すなわち、フィルターを、65℃で一晩、0.1%SDSを含む3×SSCで洗浄し、次いで、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、0.1%SDS、250μg/mlの変性サケ精子DNAを含む5×SSCP中で、42℃、5時間プレハイブリダイゼーションした。次に、50%ホルムアミド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS、100μg/mlの変性サケ精子DNA、10%(w/v)デキストラン硫酸を含む5×SSCPに上述のプローブを1.1×106cpm/mlとなるように添加し、前記フィルターを28℃で18時間ハイブリダイゼーションさせた。0.1%SDSを含む2×SSCPを用い、室温で2回フィルターを洗浄し、次いで、0.1%SDSを含む0.3×SSCPを用い、37℃で3回洗浄した。オートラジオグラフィーを行ったところ、複数のポジティブクローンが検出された。
(2)ポジティブクローンの解析−1
プローブ1とのハイブリダイゼイーションで得られたポジティブクローンのうち2つのクローン、λhFL4およびλhFL7から、公知方法(サムブルックJ.(Sambrook J.)等、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年参照)でファージDNAを調製した。クローンλhFL4およびλhFL7中には、それぞれ18kbp、17kbpのヒト染色体DNAを含んでおり、制限酵素マップを作成した結果、互いに重複した範囲を含んでいる事が分かった。
配列表の配列番号25の塩基配列中の524番目から967番目に相当するDNA断片(配列表の配列番号47)を実施例4で得られたプラスミドpTN24-15から調製し、実施例6の方法で32Pで標識してプローブ3とした。クローンλhFL4とλhFL7を数種の制限酵素で切断した後、上記プローブ3を使用してサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、クローンλhFL4とλhFL7中の2.8kbpのHindIIIフラグメントが、当該プローブ3とハイブリダイズすることが確認された。
クローンλhFL4からDNAを調製し、HindIIIで消化した。得られた2.8kbのフラグメントを、HindIIIで切断したpBluescript KS(+)に組み込み、プラスミドpBL-hFL4Hと命名した。pBL-hFL4H中のDNA配列をDNAシーケンサー(370A型、パーキンエルマージャパン(株))を使用して解析したところ、当該プラスミドには、ヒトFasリガンドの細胞外領域のC末端側の130アミノ酸をコードするDNAを有するDNA配列が含まれていることが確認された。結果を、図15と配列表の配列番号26に示した。図15中、5'末端より数えて12番目まではイントロンである。エクソン部分は13番目のGから始まっており、405番目から407番目の配列TAAは終止コドンである。
実施例5で解析したpTN24-15の塩基配列と比較し、図15にはヒトFasリガンドと異なるラットFasリガンドのアミノ酸残基および塩基のみに下線をつけて示した。ここで配列を確認した部位は、配列番号25の塩基番号514番目から910番目の塩基配列と高いホモロジーを有しており、塩基配列で86.7%、アミノ酸で81.5%のホモロジーを有していた。
なお、ハナハンの方法に準じてプラスミドpBL-hFL4Hで大腸菌DH10Bを形質転換させ、得られた形質転換体、大腸菌DH10B(pBL-hFL4H)を、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(FERM P-14014)。さらに、平成6年10月27日付で、原寄託から国際寄託に移管した(FERM BP-4849)。また、λhFL4由来のBamHIフラグメントをpBluescript KS(+)のBamHIサイトに組換えて得たプラスミドpBL-hFL4B1には、ヒトFasリガンド遺伝子のエクソン3と上述した130アミノ酸をコードするエクソン4が含まれていることが確認された。
(3)ポジティブクローンの解析−2
プローブ2とのハイブリダイゼーションで得られたポジティブクローンのうち1つのクローンλhFL5から、同様に、ファージDNAを調製した。このクローン中には18kbpのヒト染色体DNAが含まれていることが確認された。クローンλhFL5からDNAを調製し、BamHIで消化した。得られた4.4kbpのフラグメントを、BamHIで切断したpBluescript KS(+)に組み込み、プラスミドpBL-hFL5B1と命名した。pBL-hFL5B1中のDNA配列をDNAシーケンサーを使用して解析したところ、当該プラスミドには、ヒトFasリガンドの細胞内領域を含む131アミノ酸をコードするDNAを有するDNA配列が含まれていることが確認された。得られた塩基配列を、pTN24-15の塩基配列と比較し、プロモーター領域、イントロン、エクソンを決定した。また、プラスミドpBL-hFL5B1には、上述した131アミノ酸をコードするエクソン1とともに、エクソン2も含まれていることが確認された。
(2)および(3)で得られた結果をまとめて、図16〜18および配列表の配列番号27に示した。図中--------で示した部位は、配列未確認の塩基配列である。ヒトFasリガンドに対する染色体遺伝子は、4つのエクソンよりなる。すべてのスプライシングドナーサイトとアクセプターサイトは、GT----AGルール(パジェット(Padgette)等、Annu. Rev. Biochem., 55巻、1119-1150頁、1986年)に適合しており、スプライシングサイトに隣接する塩基配列は、他の遺伝子に見られるスプライシングサイトの塩基配列とよく一致している。
(実施例12)ヒトFasリガンドをコードするcDNAのクローニングおよび発現
(1)ヒトFasリガンドcDNAのPCRによるクローニング
ヒト末梢血よりT細胞を採取し、10%FCS、50μMのβ−メルカプトエタノール、20ng/mlのIL-2を含むRPMI1640培地(日水製薬(株))に、2×106細胞/mlとなるように懸濁し、37℃で一晩培養した。次いで、ConAを5μg/mlとなるように加え、37℃でさらに4日間培養した。死細胞をヒストパック1083(シグマ社)を用いた密度勾配遠心で除き、mRNA調製キット(ファルマシア社)を用いてpoly(A)RNAを調製した。カワサキE. S.等の方法(Kawasaki E. S., Amplification of RNA in PCR Protocols. A Guide to Methods and Amplification., M. A.イニス(M. A.Innis)等編,アカデミック出版(Academic Press),サンディエゴ(San Diego),21-27頁、1990年)に従い、以下のように一本鎖cDNAの合成およびPCRを行った。
まず、センスプライマー5(GCTCTAGACTACAGGACTGAGAAGAAGT)およびアンチセンスプライマー5(GCTCTAGAACATTCTCGGTGCCTGTAAC)を作製した(配列表の配列番号48および49)。このセンスプライマーは、ATG開始コドンの上流域と5'末端のXbaIサイト(GCTCTAGA)を含んでいる。一方、アンチセンスプライマーはTAA終始コドンの下流領域とXbaIサイト(GCTCTAGA)を含んでいる。
先述のpoly(A)RNA 1μgに、50ngのランダムヘキサマー、200ユニットのMMLV RNase H-リバーストランスクリプターゼ(ギブコBRL社)を添加し、逆転写反応させた。この反応液2.0μlを、先述のセンスプライマー、アンチセンスプライマーをそれぞれ100 pmolと4×dNTPとTaq DNAポリメラーゼを含むPCRバッファー100μlで希釈した。DNAサーマル サイクラー(DNA thermal cycler、パーキン−エルマー(Perkin-Elmer)社)を使用して、PCRを行った。なお、PCRは;94℃、1分;55℃、2分;72℃、3分を1サイクルとする反応を20サイクル行った。
得られたPCR産物を、制限酵素XbaIで消化した後、1%アガロースゲル(ローゲル テンペレーチャー(Low Gel Temperature),バイオラッド(BioRad)社)で分離した。約970bpのDNAフラグメントをゲルより回収後、pBluescript IIのXbaIサイトに組み込み、プラスミドpBX-hFL1と命名した。pBX-hFL1中のDNA配列をDNAシーケンサーを使用して確認した。当該プラスミドに含まれる970bpのDNAフラグメントの塩基配列は、実施例11で得られたヒト染色体遺伝子の配列と一致することが確認された。クローンpBX-hFL1中の塩基配列の解析結果を配列表の配列番号31および図19〜20に示す。
ヒトFasリガンドは、ラットFasリガンドと同じく、N末端にシグナル配列を持たないが、タンパク分子の中央部分に22個の疎水性アミノ酸を有し、II型膜タンパクであることがわかった。細胞内領域はMetから始まる80アミノ酸からなり、プロリンが80残基中に32含まれる。C末端細胞外領域は179アミノ酸からなり、3箇所のN−グリコシレーションサイト(Asn-X-Ser/Thr)が存在する。
ハナハンの方法(既出)に準じて、プラスミドpBX-hFL1で大腸菌DH10Bを形質転換し、得られた形質転換体、大腸菌DH10B(pBX-hFL1)を工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託し(寄託番号FERM P-14225)、さらに、平成6年10月27日付で原寄託から国際寄託に移管した(寄託番号FERM BP-4850)。
(2)COS細胞への導入
(1)で得られた970bpのXbaI DNAフラグメントを動物細胞発現ベクターpEF-BOS(ミズシマおよびナガタ(Mizushima & Nagata),Nucleic Acids Res., 18巻、5322頁、1990年)のXbaI部位に挿入し、プラスミドpEX-hFL1と命名した。10%FCSを含むD-MEM培地に、COS-7細胞を10cmシャーレ当り2×106細胞となるように植え込み、5μgのプラスミドpEX-hFL1をDEAE−デキストラン法(フクナガR.(Fukunaga R.)等、Cell, 61巻、341-350頁、1990年)で導入し、形質転換体COS/pEX-hFL1を得た。
(3)形質転換体の細胞障害活性
(2)で形質転換させたCOS細胞をエフェクター細胞とし、106のWR19LまたはWC8A細胞をターゲット細胞として、実施例8と同様に、組換え細胞の細胞障害活性を確認した。WC8A細胞は、マウスWR19L細胞をヒトFas抗原を発現するように形質転換した細胞である(Itoh N.等、J. Immunol., 151巻、621-627頁、1993年)。すなわち、106のWR19LまたはWC8A細胞を、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(アマーシャム(Amersham)社)を含むRPMI1640培地で、37℃で2時間培養し、51Crで標識した。
この51Crで標識した細胞(1×104)を、COS/pEX-hFL1と様々な割合で混合し、37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。この結果を図21に示す。
図21に示すようにCOS/pEX-hFL1はWC8A細胞に対しを濃度依存的に細胞障害活性を示した。WR19Lに対してはアポトーシスは誘導しなかった。さらに、COS/pEX-hFL1の細胞障害活性を調べた結果を図22に示す。この細胞障害活性は、実施例1で作製したヒトFas抗原の細胞外領域を含むキメラ蛋白質(hFas−Fc)あるいはマウスFas抗原の細胞外領域を含むキメラ蛋白質(mFas−Fc)を添加することにより阻害されたが、可溶型のヒトTNFレセプター(hTNFRβ−Fc)を添加しても阻害されなかった(図22)。
以上の結果より、(1)で単離した970bpのcDNAによりコードされる蛋白質は、Fas抗原と結合してアポトーシスを誘導する活性を有するFasリガンドであることが確認された。
(実施例13)マウスFasリガンド染色体遺伝子の単離
129/Svマウス染色体DNAをλFIX IIベクターに導入して作成したマウス染色体DNAライブラリー(ストラタジーン(Stratagene)社、ラホヤ(La Jolla),CA))を指示菌に感染させ、軟寒天と混合し、寒天プレートに重層し、1.3×106個のプラークを得た。これを一旦4℃で約4時間冷却し、ファージをニトロセルロースフィルターに転写した。
実施例11で得たプラスミドpTN24-15を鋳型として、センスプライマー4(AGAACTCCGTGAGTTCACCA)およびアンチセンスプライマー4(CAATATTCCTGGCATCCATG)配列を用いてPCRを行い、細胞外ドメインをコードするcDNA(配列表の配列番号25の塩基配列の塩基番号400から967番)を増幅させた。ランダムプライマーラベリングキット(ベーリンガーマンハイム社)を使用して実施例6の方法で増幅産物を32P標識して、プローブ1を作製した。また、配列表の配列番号25の5'末端側、すなわち配列表の配列番号25の塩基番号43から233をPCRにより増幅させ、上述のように32P標識して、プローブ2を作製した。
プローブ1および2をそれぞれ、ニトロセルロースフィルターとハイブリダイゼーションさせた。ハイブリダイゼーションの条件は後述する実施例16と同様の穏やかな条件で行った。すなわち33℃で18時間ハイブリダイゼーションした後、フィルターを室温にて0.1%SDSを含む2×SSCPで2回洗浄した後、37℃の0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄した。オートラジオグラフィーを行ったところ、2つのポジティブクローンを得た(λMFL5,λMFL18)。ポジティブクローンのプラークをT単離し、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン(Stratagene)社)にサブクローニングした後、挿入されているマウス染色体DNAの制限酵素地図の作成、DNAシーケンサーを使用して塩基配列を決定した。
この2クローンについて制限酵素地図を作成し、サザンハイブリダイゼーション解析したところ、λMFL5,λMFL18は、それぞれFasリガンド染色体遺伝子の5'、3'領域を有していた。また、ラットFasリガンドcDNAと相応する領域、プロモーター領域の塩基配列を決定したところ、決定された塩基配列は、ラットFasリガンドcDNAと高い相同性を示し、クローニングされたλFIX IIベクターに組み込んだDNAがマウスFasリガンド遺伝子を含むことがわかった。
図23〜24に、マウスFasリガンド遺伝子のプロモーター、エクソン、3'フランキング領域の塩基配列を示した。TATA boxから107bp下流のATG開始コドンから837bpのオープンリーディングフレームがあり、279アミノ酸(アミノ酸部分の分子量31,440)をコードしている。マウスFasリガンドは、ラットFasリガンドと同様N末端にシグナル配列を持たないが、タンパク分子の中央部分に22疎水性アミノ酸を有していた。これにより、マウスFasリガンドはII型膜タンパクであることが明らかになった。細胞内領域は78アミノ酸からなりプロリンが78残基中25含まれる。C末端細胞外領域は179アミノ酸からなり、5箇所のN−グリコシレーションサイト(Asn-X-Ser/Thr)が存在する。
また、マウスFasリガンドcDNAは、ラットFasリガンドcDNAと塩基配列で90.6%、アミノ酸配列で91.4%の相同性を持ち、3'ノンコーディング領域で84.5%の相同性を持つことが確認された。
(実施例14)マウスFasリガンドをコードするcDNAのPCRによるクローニングおよび発現
(1)プラスミドpBL-MFLW4の調製
野生型(C3H+/+)マウスの脾臓細胞を、10%FCS、50μMのβ−メルカプトエタノール、1.5μg/mlのConA、20ng/mlのIL-2を含むRPMI1640培地(日水製薬(株))に、2×106細胞/mlとなるように懸濁し、37℃で2日間培養した。10ng/mlのPMA、500ng/mlのイオノマイシンで4時間処理した後、死細胞をヒストパック1083(シグマ社)を用いた密度勾配遠心で除き、mRNA調製キット(ファルマシア社)を用いてpoly(A)RNAを調製した。
カワサキ(Kawasaki)等の方法(Kawasaki E. S., Amplification of RNA In PCR Protocols. A Guide to Methods and Amplifications., M.A.イニス(M. A. Innis)編、アカデミック出版(Academic Press),サンディエゴ(San Diego)、21-27頁、1990年)に従い、以下のように一本鎖cDNAの合成およびPCRを行った。
まず、センスプライマー6(GCTCTAGAGAGAAGGAAACCCTTTCCTG)およびアンチセンスプライマー6(GCTCTAGAATATTCCTGGTGCCCATGAT)を作製した(配列表の配列番号50および51)。このセンスプライマー6は、ATG開始コドンの上流域と5'末端のXbaIのサイト(GCTCTAGA)を含んでいる。一方、アンチセンスプライマーはTAA終始コドンの下流領域とXbaIサイト(GCTCTAGA)を含んでいる。
先述のpoly(A)RNA 1μgに、50ngのランダムヘキサマー、200ユニットのMMLV RNase H-リバーストランスクリプターゼ(ギブコBRL(Gibco BRL)社)を添加し逆転写反応させた。この反応液1.0μlを、先述のセンスプライマー、アンチセンスプライマーをそれぞれ100pmol、4×dNTPとTaq DNAポリメラーゼを含むPCRバッファー100μlで希釈した。DNAサーマル サイクラー(DNA thermal cycler、パーキン−エルマー(Perkin-Elmer)社)を使用して、PCR産物を制限酵素XbaIで処理した後、1%アガロースゲル(ロー ゲル テンペレーチャー(Low Gel Temperature),バイオラッド社)で分離した。
約940bpのDNAフラグメントをゲルより回収後、pBluescript II KS(+)のXbaIサイトに組み込み、プラスミドpBL-MFLW4と命名した。pBL-MFLW4中のDNA配列をDNAシーケンサーを使用して確認した。その結果、pBL-MFLW4は、配列表の配列番号32の塩基配列を有しており、当該塩基配列は、実施例13で得られた染色体遺伝子の配列と一致することが確認された。
ハナハンの方法(既出)に準じて、プラスミドpBL-MFLW4で大腸菌DH10Bを形質転換し、得られた形質転換体、大腸菌DH10B(pBL-MFLW4)を工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(寄託番号FERM P-14226)。さらに、平成6年10月27日付で原寄託から国際寄託に移管した(FERM BP-4851)。
(2)COS細胞への導入
(1)で得られた940bpのXbaIフラグメントを動物細胞発現ベクターpEF-BOS(ミズシマ及びナガタ(Mizushima & Nagata),1990年)のXbaI部位に挿入し、プラスミドpEF-MFLW4Fと命名した。COS-7細胞を10%FCSを含むD-MEM培地に、10cmシャーレ当り2×106細胞となるように植え込み、5μgのプラスミドpEF-MFLW4FをDEAE−デキストラン法(フクナガ(Fukunaga),1990年)で導入した。
(3)形質転換体の細胞障害活性
(2)で形質転換させたCOS細胞(COS/pEF-MFLW4F)をエフェクター細胞とし、106のWR19LまたはW4細胞をターゲット細胞として、実施例8と同様に、組換え細胞の細胞障害活性を確認した。W4細胞はマウスWR19L細胞をマウスFas抗原を発現するように形質転換した細胞である(オガサワラJ.(Ogasawara J.)等,Nature, 364巻,806-809頁,1993年)。すなわち、106のWR19L細胞またはW4細胞を、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(アマーシャム(Amersham)社)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した。
この51Crで標識した細胞(1×104)を、COS/pEF-MFLW4F細胞と様々な割合で混合し、37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定し、結果を図25に示した。
図25に示すようにCOS/pEF-MFLW4F細胞はW4細胞を濃度依存的に細胞障害活性を示したが、WR19L細胞に対してはアポトーシスを誘導しなかった。また、図21に示したように、WC8A細胞に対しても、濃度依存的に細胞障害活性を示した。さらに、COS/pEF-MFLW4F細胞の細胞障害活性は、実施例1で作製したマウスFas抗原の細胞外領域を含むキメラ蛋白質(mFas−Fc)20μg/mlを添加することにより阻害されたが、ヒトTNFレセプターの可溶型(hTNFRβ−Fc)では阻害されなかった。
以上の結果より、(1)で単離した940bpのcDNAによりコードされる蛋白質は、Fas抗原と結合してアポトーシスを誘導する活性を有するFasリガンドであることが確認された。
(実施例15)モノクローナル抗体の作製
(1)ペプチドの合成及びキャリアー結合投与抗原の調製
実施例12で決定したアミノ酸配列に基づき4種類のペプチドを合成した。配列表の配列番号52に示すペプチド▲1▼(LVMMEGKMMSY)はFmoc法を用いたペプチド合成キット(国産化学(株))の使用説明書に従って合成し、樹脂から脱保護切断した後エーテルにより粗ペプチド275.7mgを得た。次に粗ペプチド10mgを5%アンモニア水溶液を用いて溶解し、セファデクスG10により脱塩した。
得られた溶液を逆相HPLCカラム カプセルパックC18(CAPCELLPAK C18 120Å、5μm、4.6mm×250mm、資生堂(株))を用いて精製した。溶出液を凍結乾燥し、精製ペプチドを得た。
また、ペプチド▲2▼(KSNSRSMPLEWEDTYGIVLL)、ペプチド▲3▼(SKYPQDLVMMEGKMMS)およびペプチド▲4▼(LSLVNFEESQTFF)は(株)不二家バイオサイエンス研究所に合成を依頼した(配列表の配列番号53〜55)。
得られたペプチドを以下の方法でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH:ピアス(Pierce)社)およびカチオン化BSA(ピアス社)に結合し投与抗原とした。
KLHおよびカチオン化BSAは蒸留水に溶解し10mg/mlに調製した。各々のペプチドを蒸留水または5%アンモニア水に溶解し1mg/mlに調製した。KLHではペプチドとキャリアーのモル比が100対1となるように、カチオン化BSAでは10対1となるようにそれぞれ混合し、塩酸を用いてpH5に調整した。次に水溶性カルボジイミド(1-Ethy1-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride、同仁化学研究所)をキャリアー1mg当たり等量添加し、室温にて4時間撹拌した。反応液をセファデックスG25(ファルマシア社)により精製し、最初に溶出してくる画分を投与抗原とした。
(2)投与および抗血清の調製
(1)で調製した投与抗原100μgと等量のフロインド完全アジュバントとを混合し、BALB/cまたはddyマウス(5〜6週令、♀)の腹腔内に投与した。1週間後、同量をフロインド不完全アジュバントと混合し、腹腔内に投与した。さらに1週間間隔で2回追加投与を行い、さらに1週間後に投与抗原20μgを生理食塩水で希釈し、静脈内投与し、2日後に細胞融合を行った。2回投与後、抗血清を眼底静脈より採血し、血清を分離して得た。
(3)抗血清のペプチドとの反応性の測定
アミノプレート(住友ベークライト(株)の各ウェルに2.5%のグルタールアルデヒド溶液70μlを分注し、室温で1時間静置し、内容液を廃棄した。0.076MのPBS(pH6.4)で5μg/mlに希釈したペプチド溶液50μlを加え、37℃で1時間処理した。プレートを氷水で冷却後、イオン交換水でプレートを5回洗浄し、0.2%のゼラチンを溶解したPBS 100μlを分注し、30分静置しブロッキングを行った。
次に抗血清をPBSで500倍に希釈し50μl添加した。37℃で1時間反応後、0.005%Tween 20を含む生理食塩水(以下、洗浄液と略す)で2回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリンズ抗体(ダコ(DAKO)社)を0.25%のゼラチンを溶解したPBSで2,000倍に希釈して添加した。37℃で1時間反応させた後、洗浄液で5回洗浄した。オルトフェニレンジアミンを3mg/ml、過酸化水素を0.027%を含むマッキルベイン緩衝液pH5.0を50μlを添加し室温で10分間反応させた。
反応後、2N硫酸50μlを添加し反応を停止し、492nmの吸光度を測定した。各抗血清とも投与したペプチドと反応性を示した。
(4)モノクローナル抗体の作製
(2)で免疫したマウスを屠殺し、脾臓を取り出した。これを細断した後、ステンレス・メッシュを通し、RPMI1640培地に浮遊させ、脾細胞浮遊液を得た。この脾細胞とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8U1)を10:1の割合で混合して遠心(1,400rpmで8分間)した。得られた沈殿に0.5mlの42.5%のポリエチレングリコール1540と15%のジメチルスルフォキサイドを含むRPMI1640をすばやく加え、さらに1分間激しく細胞を振とうした後、10mlのRPMI1640をゆっくり加えた後、遠心(800rpmで5分間)を行った。
この沈殿をHAT培地(ヒポキサンチン1×10-4M、アミノプテリン4×10-7M、チミジン1.6×10-5M、10%FCSを含むRPMI1640培地)に2×105細胞/mlになるように懸濁し、96ウェルマイクロプレートのウェル当り0.2mlを分注した。2〜3日毎に半量の培地を交換し、その後HT培地(ヒポキサンチン1×10-4M、チミジン1.6×10-5M、10%FCSを含むRPMI1640培地)に交換した。
ハイブリドーマ細胞の生育が認められたところで、ELISA法によりスクリーニングを行った。すなわち、実施例15(1)で作製したペプチドを不溶化させた96ウェルプレートを洗浄液で2回洗浄後、0.25%ゼラチンを含むPBSで10倍に希釈した培養上清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間反応させた。反応終了後、洗浄液で5回洗浄し、第2抗体として0.25%ゼラチンを含むPBSで2,000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgs抗体(ダコ(DAKO)社)50μlを添加し、室温で2時間反応させた。
反応終了後、洗浄液で5回洗浄後、3mg/mlオルトフェニレンジアミンおよび0.027%過酸化水素を含む0.1Mマッキルベイン緩衝液pH5.0を100μl添加し、室温で10分間酵素反応を行い、100μlの2N硫酸で反応を停止し、492nmの吸光度を測定した。
ELISA法で陽性であったウェルのハイブリドーマを、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり2個、1個、あるいは0.5個となるよう10%FCSを含むRPMI1640を用いて希釈した。
ウイスターラットの胸腺細胞をフィーダー細胞として加えて、プレートの各ウェルに植え込み、クローニングを行った。
顕微鏡下で観察して、確実にシングルセルコロニーであるウェルを選択し、それらの培養上清を(3)のELISA法によりスクリーニングし、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。
(5)ウエスタンブロッティングによる反応性の確認
前記(2)で得られた抗血清(ペプチド▲2▼を使用して作成した抗原で免疫、lot. 19-3)および前記(4)で得られたモノクローナル抗体(ペプチド▲2▼を使用して作成した抗原で免疫、F864-5-1)とヒトFasリガンドとの反応性を、実施例12でCOS細胞に発現させたヒトFasリガンド、実施例14で発現させたマウスFasリガンドおよびFasリガンドの配列を含まないベクターをトランスフェクトしたCOS細胞をコントロールとしてウエスタンブロッティングで確認した。
まず、各組換えCOS細胞約1×10-4個を150mMのNaCl、1%のNP−40、0.1%デオキシコール酸ナトリウム(Sodium deoxycolate)0.1%SDSおよび0.2U/mlのアプロチニン(Aprotinin)を含む50mM Tris-HCl(pH7.5)9μlと混合し、さらに等量の2%SDS、30%グリセロール、10%の2−メルカプトエタノールおよび0.01%BPBを含む0.25M Tris-HCl(pH6.8)と混合した。
37℃で1時間処理した後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−20%グラジエントゲル)を行い、泳動終了後PVDF膜(ミリポア社)に4℃にて200mA、90分の条件で転写した。メンブレンをブロックエース(雪印乳業(株))で、37℃で2時間ブロッキングを行った。
次にメンブレンを洗浄液で2回、37℃で4分撹拌して洗浄し、PBSで5倍に希釈したブロックエースで500倍に希釈した抗血清19-3、または培養上清F864-5-1と37℃で1.5時間反応させた。反応終了後、洗浄液で2回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリンズ抗体(Cat.No. P260、ダコ社)をPBSで5倍に希釈したブロックエースで1,000倍に希釈した溶液に浸し、37℃で1.5時間反応させた。メンブレンを洗浄液で3回、蒸留水で2回洗浄し、表面の水を切りTMB試薬(Cat.No. TM9125、シツク(SCYTK)社)で発色させた。
図27及び28に、抗血清19-3とモノクローナル抗体F864-5-1を使用したウエスタンブロッティングの結果をそれぞれ示した。図27及び28から明らかなように、ヒトFasリガンド発現COS細胞抽出液と反応するバンドが見られるのに対して、マウスFasリガンドおよびコントロールではバンドは認められなかった。
(6)阻止反応によるペプチドとの反応性の確認−1
前記(4)で得られたモノクローナル抗体(ペプチド▲2▼を使用して作製した抗原で免疫、F883-1-1)と、投与抗原ペプチド(ペプチド▲2▼)との反応性を阻止反応により確認した。
アミノプレート(住友ベークライト(株))の各ウェルに2.5%のグルタールアルデヒド溶液70μlを分注し、室温で1時間静置後、内容液を廃棄した。0.076MのPBS(pH6.4)で5μg/mlに希釈したペプチド▲2▼溶液50μlを加え、37℃で1時間処理した。プレートを氷水で冷却後、イオン交換水でプレートを5回洗浄し、0.2%のゼラチンおよび0.1Mグリシンを含むPBS 100μlを分注し、30分間静置してブロッキングを行った。
次に、阻止ペプチドとして上記ペプチド▲2▼、▲3▼、▲4▼をPBSで10μg/mlに希釈して阻止抗原溶液とし、ネガティブコントロールとして阻止抗原を含まない溶液を調製した。これらの各溶液をそれぞれ25μl添加後、0.2%ゼラチンを溶解したPBSを用いて0.4μg/mlに希釈したF883-1-1を25μl加えた。37℃で1時間反応後、洗浄液で2回洗浄した。
次に、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリンズ抗体(ダコ社)を0.2%のゼラチンを溶解したPBSで2,000倍に希釈して各ウェルに50μlを添加した。37℃で1時間反応させた後、洗浄液で5回洗浄した。オルトフェニレンジアミンを3mg/ml、過酸化水素を0.027%含むマッキルベイン緩衝液pH5.0を上記各ウェルに50μl添加して室温で10分間反応させた。2N硫酸50μlを添加して反応を停止し、492nmの吸光度を測定した。結果を図29に示した。
図29では、阻止抗原無添加のウェル(ネガティブコントロール)の吸光度を100とした場合の各ウェルの吸光度を算出し、反応性として示した。
図29から明らかなように、F883-1-1抗体と抗原ペプチドとの反応性は、阻止ペプチドとしてペプチド▲2▼を使用した場合にのみ阻止されることが確認された。
(7)阻止反応によるペプチドとの反応性の確認−2
前記(4)で得られたIgM型モノクローナル抗体(ペプチド▲3▼を使用して作製した抗原で免疫したマウスより得た脾細胞とミエローマから作成したハイブリドーマF897-1-2の産生する抗体F897-1-2)と、投与抗原ペプチド(ペプチド▲3▼)との反応性を阻止反応により確認した。
まず、中根ら(Immunofluorescence and Related Staining Techniques, W.Knapp, K.Holubar and G.Wick eds. 1978)の方法に従い、ペプチド▲3▼をペルオキシダーゼで標識した。すなわち、ペルオキシダーゼ(RZ3.11、東洋紡(株))を6mg秤量し、1.5mlの蒸留水で溶解した。次に蒸留水で溶解した0.1Mメタ過ヨウ素酸ナトリウムを0.3ml添加し室温で15分間静置し、続いて蒸留水で溶解した1.5%エチレングリコール0.3mlを添加し室温で20分間静置した。この溶液を0.001Mの酢酸緩衝液(pH4.4)に対して4℃で一夜透析した。
得られた活性化ペルオキシダーゼ159μl(オペルオキシダーゼ500μg相当)に1M炭酸緩衝液(pH9.5)を9μl添加し、続けて蒸留水で溶解して1mg/mlに調製したペプチド▲3▼を428μl(ペルオキシダーゼに対して20倍モル量)添加し25℃にて2時間反応させた。次に、0.01M炭酸緩衝液(pH9.5)で溶解した4mg/mlの水素化ホウ素ナトリウムを15μl添加し4℃で2時間静置し、さらに蒸留水で0.2Mに希釈したグリシンを25μl添加し室温で1時間静置した。次に0.076MのPBS(pH6.4)に対して4℃で一夜透析し、得られたペルオキシダーゼ標識ペプチド▲3▼溶液に等量のグリセロールを添加し−20℃にて保存した。
次に、イムノプレート(ヌンク(NUNC)社、マキシソープ(MaxiSorpTM))の各ウェルに0.076MのPBS(pH6.4)で20μg/mlに希釈した抗マウスイムノグロブリン抗体(Z259、ダコ社)を50μl加え、45℃で30分処理した。プレートを氷水で冷却後、イオン交換水でプレートを5回洗浄し、0.2%ゼラチンを含むPBS 100μlを分注し、4℃で一夜静置してブロッキングを行った。ブロッキング後、PBSで100倍に希釈した塩析抗体(F897-1-2)を50μl加え37℃で1時間静置した後、0.005%Tween 20を含む0.9%NaClの洗浄液で2回洗浄し、さらにイオン交換水で1回洗浄した。
一方、ペプチド▲3▼をPBSで3μg/ml、10μg/mlに希釈して阻止抗原溶液とし、ネガティブコントロールとして阻止抗原を含まない溶液を調製した。これらの溶液を25μl添加後、PBSで200倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ペプチド▲3▼を25μl加え、37℃で1時間反応させた。反応終了後洗浄液で5回洗浄し、続いてイオン交換水で2回洗浄した。オルトフェニレンジアミンを3mg/ml、過酸化水素0.027%を含むマッキルベイン緩衝液(pH5.0)を上記各ウェルに50μl添加して室温で5分間反応させた。2N硫酸50μlを添加して反応を停止し、492 nmの吸光度を測定した。阻止抗原無添加のウェル(ネガティブコントロール)の吸光度を100とした場合の各ウェルの吸光度を算出し、反応性(%)とした。結果を図31に示した。
図31から明らかなように、F897-1-2抗体と抗原ペプチドとの反応性は、ペプチド▲3▼により阻止されることが確認された。
(実施例16)アポトーシス抑制活性の評価−1
実施例15で得られた抗体F883-1-1のアポトーシス抑制活性を、Fasリガンドを発現する形質転換体およびFas抗原を発現する形質転換体を使用した以下の方法で確認した。
まず、ヒトFasリガンドをコードするcDNAを含むプラスミドpEX-hFL1(実施例12参照)で、マウス正常骨髄細胞由来細胞株FDC-P1を形質転換した。その中の1クローン、FLh1細胞を、50U/mlのマウスIL-3(インタージェン社)および10%のFCSを含有するRPMI1640培地(ギブコBRL社)中で、5%CO2存在下、37℃にて4日間培養した。培養後、FLh1細胞を10%FCSを含有するRPMI1640培地に5×105細胞/mlとなるよう懸濁し、この懸濁液を96穴平底プレートの各ウェルに50μlずつ添加した。
一方、実施例15で得られた抗体F883-1-1をPBS-を使用して各種濃度に調製した。これを上述の各ウェルに10μlずつ添加し、5%CO2存在下、37℃にて30分間インキュベートした。
次に、10%FCSを含有するRPMI1640培地に、ヒトFas抗原を発現する形質転換体WC8細胞(イトウN.(Itoh N.)等、J.Immunol., 151巻、621-627頁、1993年)を6.3×105細胞/mlとなるよう懸濁し、これを各ウェルに40μlずつ添加した。5%CO2存在下、37℃で16時間インキュベートした後、トリパンブルーを各ウェルに100μlずつ添加して、各ウェルあたりの生細胞数をカウントした。
F883-1-1抗体のアポトーシス抑制活性を図30に示した。図30から明らかなように、FLh1によるWC8のアポトーシスはF883-1-1抗体により用量依存的に抑制された。なお、モノクローナル抗体F883-1-1を産生するハイブリドーマF883-1-1を、平成6年8月9日付で工業技術院生命工学技術研究所に寄託し(寄託番号FERM P-14464)、さらに平成6年10月27日付で原寄託から国際寄託に移管した(FERM BP-4852)。
(実施例17)アポトーシス抑制活性の評価−2
実施例15で得られた抗体F897-1-2のアポトーシス抑制活性を、以下に述べる実施例18(3)の方法で作製した形質転換体COS-1/pEX-hFL1の培養上清およびヒトFas抗原を発現する形質転換体WC8細胞を使用して、実施例8および12の方法に準じて確認した。
まず、106個のWC8細胞を20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社)および10%の非働化ウシ血清を含有するRPMI1640培地中で37℃で2時間培養し、51Crで標識した。
次に、96ウェルU底プレート(コーニング(CORNING)社)の各ウェルに、COS-1 pEX-hFL1の培養上清を終濃度が3%になるように6μl、10%のFCSを含有するRPMI1640を74μlずつ添加した。さらに、実施例15で得られた抗体F897-1-2を、0.1%のBSAを含有するPBS-で300μg/mlになるように調整し、終濃度が30μg/mlとなるように各ウェルに20μlずつ添加した。37℃で30分間インキュベートした後、51Crで標識したWC8細胞を1×104個/100μl/ウェルとなるよう各ウェルに添加し、37℃で4時間培養した。培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。
結果を図32に示した。図32より明らかなように、COS-1/pEX-hFL1の培養上清中に存在するFasリガンドによるWC8細胞のアポトーシスは、F897-1-2抗体により抑制された。
なお、モノクローナル抗体であるF897-1-2抗体を産生するハイブリドーマF897-1-2を、工業技術院生命工学工業技術研究所に、平成6年9月1日付けで寄託し(寄託番号FERM P-14497)、さらに平成6年10月27日付で原寄託から国際寄託に移管した(FERM BP-4853)。
(実施例18)ヒトFasリガンドの細胞外領域の発現
(1)プラスミドpM1067の作製
まず、センスプライマー7(CACCTGCAGAAGGAGCTGGCAGAA)およびアンチセンスプライマー7(AATAAGCTTGGTACCCTATTAGAGCTTATATAA)を化学合成機にて合成した(配列表の配列番号56および57)。このセンスプライマーはヒトFasリガンド細胞外領域、すなわち前記式3のアミノ酸配列のN末端側に位置するアミノ酸配列をコードする塩基配列とPstIサイト(CTGCAG)を含んでいる。また、アンチセンスプライマーは、TAA終止コドンを含む領域とHindIIIサイト(AAGCTT)、KpnIサイト(GGTACC)を含んでいる。
得られたセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーをそれぞれ100pmol、実施例12(1)で得たプラスミドpBX-hFL1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのpfuポリメラーゼおよび添付のpfuバッファー(共にストラタジーン社)10μlを含む100μlの溶液を調整した。DNAサーマルサイクラー(PCRシステム9600,パーキンエルマー社)を使用して;94℃で30秒;55℃で30秒;72℃で1分を1サイクルとするPCRを30サイクル行った。得られたPCR産物をPstI、HindIIIで二重消化し、pUC118のPstI、HindIIIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1067と命名した。
(2)プラスミドpM1070の作製
センスプライマー8(TGCGAATTCACCATGCTGGGCATCTGG)およびアンチセンスプライマー8(AACCTGCAGGTGGAAGAGCTGAGCAACAGACGTAAG)を化学合成機にて合成した(配列表の配列番号58および59)。このセンスプライマー8はヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする配列の5'末端領域とEcoRIサイト(GAATTC)を含んでいる。一方、アンチセンスプライマー8はヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする配列の3'末端領域とヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側をコードする塩基配列およびPstIサイトを含んでいる。
得られたセンスプライマー8、アンチセンスプライマー8をそれぞれ100pmol、実施例1(3)で使用したプラスミドpBLF58-1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのpfuポリメラーゼおよび添付のpfuバッファー(共にストラタジーン社)10μlを含む100μlの溶液を調整し、(1)と同様にPCRを行った。
得られたPCR産物をEcoRI、PstIで二重消化し、(1)で得たプラスミドpM1067のEcoRI、PstIサイト間に組み込み、pM1250を得た。さらに、これをEcoRI、KpnIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約600bpの断片を回収し、キアエックス(QIAEXTM)キット(キアジエン(QIAGEN)社)を使用して、DNAを精製した。実施例14(2)で使用したpEF-BOSにDHFR遺伝子を組換えたプラスミドpM1103を準備し、そのクローニングサイトのEcoRI、KpnIサイト間に、上述の約600bpのDNA断片を組み込み、得られたプラスミドをpM1070と命名した。
(3)COS細胞への導入
pM1070および実施例12(1)で作製したpEX-hFL1を各々COS-1細胞へ導入し、形質転換体COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1を作製した。すなわち、8.1μgのpM1070あるいはpEX-hFL1を40μlの10mM Tris-HCl(pH7.4)/1mMエチレンジアミン四酢酸(以下、TEバッファーと記す)溶液に溶解した。これらに、それぞれ、0.2mg/ml DEAE−デキストランおよび50mM Tris-HCl(pH7.4)を含有するD-MEM(日水製薬(株))11.3mlを添加し、DNA-DEAEデキストラン混合液を作製した。
150cm2のルーフラスコ内でセミコンフルエントまで単層培養したCOS-1細胞にDNA-DEAEデキストラン混合液を滴下し、5%CO2存在下で、37℃にて培養し、形質転換体COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1を得た。4時間後、DNA-DEAEデキストラン混合液を除去し、10%FC(アーバンサイエンティフィック社)を含有するD-MEMに交換し、さらに48〜96時間培養した。COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1の培養上清を回収し、以下の(4)および(5)で使用した。
(4)細胞障害活性の確認
(3)で得た培養上清の細胞障害活性を、WC8細胞あるいはW4細胞をターゲット細胞として、実施例8および実施例12と同様に測定した。すなわち、106個のWC8細胞あるいはW4細胞を、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した。
51Crで標識した細胞を1×104個含む反応液中に、(3)で得た細胞培養上清を終濃度3%あるいは10%となるように添加し、37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。結果を図33および34に示した。図から明らかなように、COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1の培養上清は、WC8細胞あるいはW4細胞に対して濃度依存的に細胞障害活性を示した。図中、Mockは、コントロール(対照)を示す。
以上の結果より、これらの培養上清中には、Fas抗原と結合してアポトーシスを誘導する活性を有するFasリガンドが含まれていることが確認された。
(5)形質転換体COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1の培養上清を使用したウエスタンブロッティング
ヒトFasリガンドのアミノ酸配列の一部(PSPPPEKKELRKVAH、配列表の配列番号60)を認識するウサギ抗血清を公知方法に従って作製し、以下の方法でウエスタンブロッティングを行った。
まず、(3)で得た形質転換体COS-1/pM1070およびCOS-1/pEX-hFL1の培養上清10μlをそれぞれ蒸留水5μlとを混合した。これらに、4%SDS、80%グリセロール、0.04%BPBを含む蒸留水5μlもしくは4%SDS、80%グリセロール、8%DTT、0.04%BPBを含む蒸留水5μlを加え、それぞれ37℃で1時間処理した後、SDS-PAGE(5−20%グラジエントゲル)を行った。泳動終了後、PVDF膜(アトー社)に室温にて200mA、60分の条件で転写した。スキムミルク(雪印乳業(株))を使用して4℃、一夜反応させ、ブロッキングを行ったのち、メンブレンをPBSで1回(室温で15分インキュベート)、0.1%Tween 20/PBSで2回(室温で5分インキュベート)洗浄した。
上述のウサギ抗血清を0.5% BSA/0.1% Tween 20/PBSで1,000倍に希釈し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.1% Tween 20/PBSで2回洗浄した。洗浄後、さらに、0.5% BSA/0.1% Tween 20/PBSで1,000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ウサギイムノグロブリンズ抗体(Cat.No. P448、ダコ社)溶液に浸し、室温で1時間反応させた。メンブレンを0.1%Tween 20/PBSで5回洗浄し、表面の水を切り、ECLシステム(アマーシャム社)で検出した。
その結果、COS-1/pM1070の培養上清では、還元条件下で29kD付近に、非還元条件下で26kD付近に、それぞれバンドが認められた。
一方、COS-1/pEX-hFL1の培養上清では、還元条件下で26kD付近に、非還元条件下で24kD付近にそれぞれバンドが検出された。
非還元条件下でのウェスタンブロットの結果をそれぞれ図35および36に示した。図中、Mockは、図33および34と同じである。
(実施例19)アンチセンスオリゴヌクレオチドによるFasリガンドの発現抑制
(1)アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成
配列表の配列番号31の20番目から41番目の塩基配列(TAAAACCGTTTGCTGGGGCTGG)をもつ22塩基よりなるフォスフォロチオエート型センスオリゴヌクレオチド(以下、センスオリゴヌクレオチドS20と呼ぶ)およびそれに相補的な塩基配列(CCAGCCCCAGCAAACGGTTTTA)をもつフォルフォロチオエート型アンチセンスオリゴヌクレオチド(以下、アンチセンスオリゴヌクレオチドA41と呼ぶ)を公知方法にて合成した(配列表の配列番号61および62)。得られた合成オリゴヌクレオチドを1mMとなるようにTEバッファーに溶解した。
(2)アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への導入
ヒトFasリガンドを発現する形質転換体FLh1細胞(実施例16参照)を10%の非働化FCSを含むRPMI1640培地に懸濁し、2.0×104個/ 196μl/ウェルとなるように96ウェルプレート(ヌンク社)の各ウェルに添加した。(1)で得た1mMのアンチセンスオリゴヌクレオチドA41を、終濃度20μMとなるように4μlずつ各ウェルに添加し、5%CO2存在下で3日間培養し、細胞にオリゴヌクレオチドを導入した。同様に、1mMのセンスオリゴヌクレオチドS20あるいはTEバッファーをそれぞれ4μlずつ各ウェルに添加し、5%CO2存在下で3日間培養し、コントロールした。
(3)細胞障害活性の測定
(2)で3日間培養したFLh1細胞をエフェクター細胞とし、ヒトFas抗原を発現する形質転換体WC8に対する細胞障害活性を測定した。
細胞障害活性の測定は、実施例8および12で用いた方法に従い行った。
すなわち、106個のWC8細胞を20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社製)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した細胞(1×104)を上記エフェクター細胞とE/T比3対1の割合で混合した。37℃で5時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。
その結果、アンチセンスオリゴヌクレオチドA41を導入したFLh1細胞ではWC8細胞に対するアポトーシス誘導活性が抑制された(図37)。
(実施例20)アンチセンスオリゴヌクレオチドによるFasリガンドの発現抑制−2
(1)アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成
配列表の配列番号31のヒトFasリガンドをコードするDNA配列を参考に、フォスフォロチオエート型のセンスオリゴヌクレオチド、S50、S163、S338、S484、S714、S905、およびフォスフォロチオエート型のアンチセンスオリゴヌクレオチドA69、A184、A355、A505、A733、A924を公知方法にて合成した(配列表の配列番号63〜74)。
このうち、センスオリゴヌクレオチドS50およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA69は、それぞれ、配列番号31の50番目から69番目の塩基配列(ACCAGCTGCCATGCAGCAGC)およびその相補的な配列(GCTGCTGCATGGCAGCTGGT)をもつ20塩基よりなるオリゴヌクレオチドである。
センスオリゴヌクレオチドS163およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA184は、それぞれ、配列番号31の163番目から184番目の塩基配列(CTGTGCCCAGAAGGCCTGGTCA)およびそれに相補的な塩基配列(TGACCAGGCCTTCTGGGCACAG)をもつ22塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
センスオリゴヌクレオチドS338およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA355は、それぞれ、配列番号31の338番目から355番目の塩基配列(CTTGGTAGGATTGGGCCT)およびそれに相補的な塩基配列(AGGCCCAATCCTACCAAG)をもつ18塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
センスオリゴヌクレオチドS484およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA505は、配列番号31の484番目から505番目の塩基配列(AGCTGAGGAAAGTGGCCCATTT)およびそれに相補的な塩基配列(AAATGGGCCACTTTCCTCAGCT)をもつ22塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
センスオリゴヌクレオチドS714およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA733は、それぞれ配列番号31の714番目から733番目の塩基配列(CCCCAGGATCTGGTGATGAT)およびそれに相補的な塩基配列(ATCATCACCAGATCCTGGGG)をもつ20塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
センスオリゴヌクレオチドS905およびアンチセンスオリゴヌクレオチドA924はそれぞれ、配列番号31の905番目から924番目の塩基配列(AGAGAAGCACTTTGGGATTC)およびそれに相補的な塩基配列(GAATCCCAAAGTGCTTCTCT)をもつ20塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
得られた上記の合成オリゴヌクレオチドを、それぞれ1mM濃度となるようにTEバッファーに溶解した。
(2)アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への導入
まず、ヒトFasリガンドをコードするcDNAを含むプラスミドpEX-hFL1(実施例12(2)参照)でマウス線維芽細胞様細胞株L929を形質転換した。そのうちの1クローンLFLh3細胞を10%のFCSを含むD-MEMに懸濁し、3.0×105個/2.0ml/ウェルとなるように6ウェルプレート(ヌンク社)に植え込み、5%CO2存在した、37℃にて一夜培養した。
翌日、(1)で合成したオリゴヌクレオチドを終濃度1μMとなるようにリポフェクトアミン(ギブコBRL社)40μgを含有するオプティ−MEMI(OPTI-MEMTMI、ギブコBRL社)1,000μlに懸濁し、オリゴヌクレオチド−リポフェクトアミン混合液を作製した。5%CO2存在下、37℃にて一夜培養し、培地を除去したLFLh3細胞に上述のオリゴヌクレオチド−リポフェクトアミン混合液を添加した。5%CO2存在下、37℃にて4時間培養後、20%非働化FCS及び1μMオリゴヌクレオチドを含有するD-MEMを1,000μl添加し、さらに16時間培養することにより、LFLh3細胞に(1)で合成したオリゴヌクレオチドを導入した。
(3)細胞障害活性の測定
(2)でオリゴヌクレオチドを導入したLFLh3細胞を回収し、トリプシン溶液で3分間処理した後、細胞障害活性測定用のエフェクター細胞として用いた。
細胞障害活性の測定は、実施例8および12で用いた方法に従い行った。
すなわち、106個のWC8細胞を20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した細胞(1×104)を上記エフェクター細胞とE/T比1対1の割合で混合した。37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。
その結果、上述のアンチセンスオリゴヌクレオチド、A69,A184,A355,A505,A733,A924を導入したLFLh3細胞ではWC8細胞に対するアポトーシス誘導活性が抑制された。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの特異的細胞溶解抑制率を以下の式より計算し、図38に示した。
SCLI(%)=(1−(SCLAON-LFLh/SCLSON-LFLh))×100
SCLI:特異的細胞溶解抑制率
SCLAON-LFLh:アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入したLFLh3細胞の特異的細胞溶解率
SCLSON-LFLh:センスオリゴヌクレオチドを導入したLFLh3細胞の特異的細胞溶解率
(実施例21)ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体の動物細胞を宿主とする発現
ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドND38、ND40、ND41、ND42、ND43およびCD179を以下の方法で発現させた。なお、ND38、ND40、ND41、ND42、ND43は、前記式3(配列表の配列番号3)に記載のアミノ酸配列のN末端から、それぞれ38アミノ酸、40アミノ酸、41アミノ酸、42アミノ酸、43アミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有するポリペプチドである(すなわち、ND38は配列番号3のアミノ酸番号39から179までのアミノ酸配列を、ND40は配列番号3のアミノ酸番号41から179までのアミノ酸配列を、ND41は配列番号3のアミノ酸番号42から179までのアミノ酸配列を、ND42は配列番号3のアミノ酸番号43から179までのアミノ酸配列を、ND43は配列番号3のアミノ酸番号44から179までのアミノ酸配列を有するポリペプチドである。配列表の配列番号76〜80)。
また、ポリペプチドCD179は前記式3(配列表の配列番号3)に記載のアミノ酸配列のC末端から1アミノ酸が欠失したアミノ酸配列、すなわちアミノ酸番号1から178までのアミノ酸配列を有するポリペプチドである(配列表の配列番号81)。
(1)プラスミドpM1081の作製
ヒトFas抗原シグナルペプチドとヒトFasリガンド細胞外領域をコードする塩基配列であって、サイレントミューテーションにより、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列中にSpeI、PshAI認識配列が導入され、ヒトFasリガンドをコードする塩基配列中にPstI認識配列が導入された塩基配列を有するプラスミドpM1081を以下の方法で作製した。
まず、アンチセンスプライマー9(CTTCTGCAGGTGGAAGAGCTGAGCGACACTAGTCAGAACCAGAGG)を合成した(配列表の配列番号82)。このアンチセンスプライマー9は、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側とヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側をコードする塩基配列およびPstIサイト(CTGCAG)、SpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。
得られたアンチセンスプライマー9と、実施例18(2)で使用したセンスプライマー8(TGCGAATTCACCATGCTGGGCATCTGG、このセンスプライマー8はEcoRIサイト(GAATTC)およびヒトFas抗原シグナルペプチドのN末端をコードする配列を含んでいる。)とを、それぞれ100pmol、実施例1(3)で使用したプラスミドpBLF58-1を50ng、pfu DNAポリメラーゼを2.5U、添付のpfuバッファーを10μl含む100μlの溶液を調製した。
実施例18(1)と同様にPCRを行い、PCR産物をEcoRIおよびPstIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約70bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。実施例18(1)で作製したプラスミドpM1067のEcoRIサイトおよびPstIサイト間に、上述の約70bpのDNA断片を挿入した。
得られたプラスミドの塩基配列を確認したところ、EcoRIサイトとSpeIサイトとの間に16塩基の欠損があった。そこで、目的とするEcoRIサイトからSpeIサイトまでの配列を構築するためにセンスプライマー9(AATTCACCATGCTGGGCATCTGGACCCTCCTACCTCTGGTTCTGA)、アンチセンスプライマー10(CTAGTCAGAACCAGAGGTAGGAGGGTCCAGATGCCCAGCATGGTG)を合成し、それぞれを1nmolずつ含む20μlのTE溶液を調整した(配列表の配列番号83および84)。このTE溶液を95℃で5分加熱後、16℃まで徐冷することにより、これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、二本鎖DNAの両端にそれぞれEcoRI切断配列とSpeI切断配列を持つDNA断片を得た。これを上述の16塩基欠損したプラスミドのEcoRIサイトとSpeIサイト間に挿入し、pM1081を得た。
(2)ポリペプチドND38をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1253の作製
まず、センスプライマー11(CTGACTAGTGTCGCTAAGGAGCTGAGGAAA)を合成した。これは、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列に加えて、配列表の配列番号3の39番目のリジンから43番目のリジンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、配列中にSpeIサイト(ACTAGT)を含んでいる(配列表の配列番号85)。一方、アンチセンスプライマー11として、配列番号15のApaIサイト(GGGCCC)より下流3'側に位置する塩基配列をもとに(TAAGCCGAAAAACGTCTGAG)を化学合成した(配列表の配列番号86)。
得られたセンスプライマー11とアンチセンスプライマー11をそれぞれ100pmol、実施例12(1)で作製したプラスミドpEX-hFL1を50ng、pfu DNAポリメラーゼを2.5U、添付のpfuバッファーを10μl含む100μlの溶液を調製し、実施例18(1)と同様にPCRを行った。このPCR産物をSpeIおよびApaIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約400bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。(1)で作製したプラスミドpM1081のSpeIサイトとApaIサイトとの間に上述の約400bpのDNA断片を挿入しプラスミドpM1253を得た。
(3)ポリペプチドND40をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1254の作製
まず、センスプライマー12(CTGACTAGTGTCGCTCTGAGGAAAGTGGCC)を合成した。これは、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列に加えて、配列表の配列番号3の41番目のロイシンから45番目のアラニンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、配列中にSpeIサイト(ACTAGT)を含んでいる(配列表の配列番号87)。
このセンスプライマー12およびアンチセンスプライマー11を用いて(2)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をプラスミドpM1081に挿入して、プラスミドpM1254を得た。
(4)ポリペプチドND41をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1255の作製
まず、センスプライマー13(CTGACTAGTGTCGCTAGGAAAGTGGCCCAT)を合成した。これは、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列に加えて、配列表の配列番号3の42番目のアルギニンから46番目のヒスチジンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、配列中にSpeIサイト(ACTAGT)を含んでいる(配列表の配列番号88)。
このセンスプライマー13およびアンチセンスプライマー11を用いて(2)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をプラスミドpM1081に挿入して、プラスミドpM1255を得た。
(5)ポリペプチドND42をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1256の作製
まず、センスプライマー14(CTGACTAGTGTCGCTAAAGTGGCCCATTTA)を合成した。これは、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列に加えて、配列表の配列番号3の43番目のリジンから47番目のロイシンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、配列中にSpeIサイト(ACTAGT)を含んでいる(配列表の配列番号89)。
このセンスプライマー14およびアンチセンスプライマー11を用いて(2)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をプラスミドpM1081に挿入して、プラスミドpM1256を得た。
(6)ポリペプチドND43をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1257の作製
まず、センスプライマー15(CTGACTAGTGTCGCTGTGGCCCATTTAACA)を合成した。これは、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列に加えて、配列番号3の44番目のバリンから48番目のスレオニンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、配列中にSpeIサイト(ACTAGT)を含んでいる(配列表の配列番号90)。
このセンスプライマー15およびアンチセンスプライマー11を用いて(2)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をプラスミドpM1081に挿入して、プラスミドpM1257を得た。
(7)ポリペプチドCD179をコードする塩基配列を有するプラスミドpM1259の作製
アンチセンスプライマー16(CTTGGTACCCTATTACTTATATAAGCC)およびセンスプライマー16(GAGCTACTGCACTACTGGGC)を合成した。アンチセンスプライマー16は、配列表の配列番号3の175番目のグリシンから178番目のリジンまでのアミノ酸配列をコードする塩基配列と終止コドン(TAA、TAG)、KpnIサイト(GGTACC)を含む。センスプライマー16は、配列番号15のヒトFasリガンド細胞外領域DNA配列中のApaIサイト(GGGCCC)より上流5'側に位置する配列である(配列表の配列番号91および92)。
得られたセンスプライマー16とアンチセンスプライマー16それぞれ100pmol、実施例12(1)で作製したプラスミドpEX-hFL1を50ng、pfu DNAポリメラーゼを2.5U、添付のpfuバッファーを10μl含む100μlの溶液を調製し、実施例18(1)と同様にPCRを行った。
このPCR産物をApaIとKpnIとで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約170bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。実施例18(2)で作製したpM1250のApaIサイトとKpnIサイトとの間に上述の約170bpのDNA断片を挿入した。得られたプラスミドをpM1259と命名した。
(8)動物細胞用発現プラスミドpM1083,pM1084,pM1085,pM1086,pM1087,pM1089の作製
上記(2)ないし(7)で得た、プラスミドpM1253,pM1254,pM1255,pM1256,pM1257,およびpM1259をそれぞれEcoRIとKpnIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。
約450bp(ただし、pM1259の消化物の場合は約600bp)のDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。実施例18(2)で使用した動物細胞を宿主に用いた発現用のプラスミドpM1103のEcoRIサイトとKpnIサイトとの間に、上述の約450あるいは約600bpのDNA断片を挿入した。
得られたプラスミドをそれぞれpM1083(ND38),pM1084(ND40),pM1085(ND41),pM1086(ND42),pM1087(ND43),およびpM1089(CD179)と命名した。
(9)COS細胞への導入
実施例18(2)で作製したpM1070並びに(8)で作製したpM1083,pM1084,pM1085,pM1086,pM1087,およびpM1089を実施例18(3)と同様にCOS-1細胞へ導入し、形質転換体COS-1/pM1070,COS-1/pM1083,COS-1/pM1084,COS-1/pM1085,COS-1/pM1086,COS-1/pM1087,およびCOS-1/pM1089を作製した。
すなわち、0.5μgのpM1070、pM1083,pM1084,pM1085,pM1086,pM1087,およびpM1089を、各々別個に2.5μlの10mM Tris-HCl(pH7.4)/1mM EDTA溶液に溶解した。これらに、それぞれ、0.2mg/mlのDEAE−デキストランおよび50mM Tris-HCl(pH8)を含有するD-MEM(日水製薬(株))0.7mlを添加し、DNA-DEAEデキストラン混合液を作製した。6ウェルプレート(9.4cm2/ウェル、ヌンク社)でセミコンフルエントまで単層培養したCOS-1細胞に上述のDNA-DEAEデキストラン混合液を滴下し、5%CO2存在下、37℃にて培養し、形質転換体COS-1/pM1070,COS-1/pM1083,COS-1/pM1084,COS-1/pM1085,COS-1/pM1086,COS-1/pM1087,およびCOS-1/pM1089を得た。
DNA-DEAEデキストラン混合液を滴下してから4時間後に、DNA−DEAEデキストラン混合液を除去し、10%FCS(アーバンサイエンティフィック社)を含有するD-MEMに交換し、さらに96時間培養した。COS-1/pM1070,COS-1/pM1083,COS-1/pM1084,COS-1/pM1085,COS-1/pM1086,COS-1/pM1087,およびCOS-1/pM1089の培養上清を回収し、以下の実験に供した。
(10)プラスミド導入COS細胞の培養上清の細胞障害活性の確認
(9)で得た各プラスミド導入COS細胞の培養上清の細胞障害活性を、WC8細胞を標的細胞として、実施例8および実施例12と同様に測定した。すなわち、106個のWC8細胞を、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した。
51Crで標識した細胞を1×104個含む反応液中に、(9)で得た細胞培養上清を終濃度1%、3%、10%、30%となるように添加し、37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標に細胞障害活性を測定した。
結果を図39に示した。図39から明らかなように、COS-1/pM1070と同様に、COS-1/pM1083,COS-1/pM1084およびCOS-1/pM1085,およびCOS-1/pM1086の培養上清は、WC8細胞に対して濃度依存的に細胞障害活性を示した。したがって、これらの培養上清中に含まれるヒトFasリガンドの欠失変異体は、ヒトFas抗原と結合してアポトーシスを誘導する活性を有すると考えられた。一方、COS-1/pM1087,およびCOS-1/pM1089の培養上清では、COS-1/pM1070の培養上清に比べ、WC8細胞に対する顕著な細胞障害活性が認められなかった。したがって、これらの培養上清中に含まれるヒトFasリガンドの欠失変異体は、アポトーシスを誘導する活性を持たないかもしくは極めて弱い活性しか有していないと考えられた。
このようなアポトーシスを誘導活性の失活の原因は、FasリガンドのN末端あるいはC末端のアミノ酸を欠失したことで、Fasリガンドの立体構造が維持できなくなったためと考えられた。逆に、アポトーシス誘導活性を失うほどN末端もしくはC末端のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有するポリペプチドのN末端もしくはC末端に、立体構造を維持できるようなアミノ酸配列を付加した場合には、それが本来の欠失したアミノ酸配列と異なる場合であっても、アポトーシス誘導活性が再び現れると推測される。また同様に、このような欠失変異体に立体構造を維持できるように、アミノ酸置換を施すことによっても、アポトーシス誘導活性を付与することが可能であることが推測される。
(実施例22)ヒトFasリガンドの細胞外領域およびそのN末端欠失変異体の大腸菌を宿主とする発現
(1)プラスミドpM468の作製
プラスミドpM468は、プラスミドpBR322の誘導体であり、大腸菌内にて複製する機能、アンピシリン耐性遺伝子、トリプトファンプロモーター、アルカリフォスファターゼ(phoA)のシグナルペプチドおよびヒト膵分泌性トリプシンインヒビターをコードするDNAを有するプラスミドとして構築されたプラスミドであり、pM469(モリシタH.(Morishita H.)等、Thrombosis Research, 73巻、193−204頁、1994年)のカナマイシン耐性遺伝子をアンピシリン耐性遺伝子に置換して得た。
(2)プラスミドpM1059の作製
(1)で得られたプラスミドpM468をHindIII、BamHIで二重消化し、0.8%アガロースゲル(シーケムGTG(SeakeM GTG)、宝酒造社)で分離し、目的とするDNA断片を含むゲルを切り出した。キアエックスキットを用いて、約3.3kbpのDNA断片を精製した。
また、BstEII、KpnI、BamHIサイトを有するように設計したアンチセンスプライマー17(CGCGGATCCGGTACCTTTTTTGGTAACCGGGGTAAACAG)とトリプロファンプロモーターのHindIIIサイト上流5&側に位置するセンスプライマー17(CGCAAGTTCACGTAAAAAGC)を化学合成した(配列表の配列番号93および94)。アンチセンスプライマー17はBamHIサイト(GGATCC)、KpnIサイト(GGTACC)、BstEIIサイト(GGTTACC)、およびアルカリフォスファターゼのシグナルペプチドのC末端側を含んでいる。これらのプライマーを用いてプラスミドpM468を鋳型にしてPCRを行なった。
すなわち、上述のPCR用の鋳型DNAを含む溶液100μl中に上記のプライマーを添加し、ジーンアンプキット(Gene AmpTM DNA Amplification Reagent Kit with AmpliTaqTM、宝酒造社)を用いて、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間を1サイクルとして、30サイクルのPCRを行なった。
得られたPCR産物をHindIIIとBamHIで二重消化し4%アガロースゲル電気泳動で分離して約120bpのDNA断片を回収し、DNAを精製した。このDNA断片を上述したプラスミドpM468由来の約3.3kbpのDNA断片とT4 DNAリガーゼ(宝酒造社)を用いてライゲーションし、大腸菌JM109を形質転換することにより、プラスミドpM1059を得た。
(3)ヒトFasリガンドの細胞外領域の大腸菌を宿主とする発現プラスミドpM1068の作製
センスプライマー18(TTGAAGCTTAAAAAAGGGTATAAAATAAAATGCAGCTCTTCCACCT)、アンチセンスプライマー18(AAGGTCGACTATTAGAGCTTATATAAGCC)を化学合成機にて合成した(配列表の配列番号95および96)。センスプライマー18は、大腸菌トリプトファンプロモーター/オペレーターの一部をコードする塩基配列、開始コドン(ATG)、配列表の配列番号3のヒトFasリガンド細胞外領域のうちのN末端部分をコードする塩基配列、HindIIIサイト(AAGCTT)を含む。アンチセンスプライマー18は配列表の配列番号3のヒトFasリガンド細胞外領域のC末端部分をコードする塩基配列、終止コドン(TAA, TAG)およびSalIサイト(GTCGAC)を含む。
得られたプライマーをそれぞれ100pmol、実施例12(1)で得たプラスミドpBX-hFL1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのpfu DNAポリメラーゼと添付のpfuバッファー10μlとを含む100μlの溶液を調製し、実施例18(1)と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をHindIIIとSalIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。
約600bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。(1)で得たプラスミドpM468のHindIIIサイト、SalIサイト間に上述の約600bpのDNA断片を挿入し、pM1068を得た。
(4)ヒトFasリガンドの細胞外領域の大腸菌を宿主とする分泌発現プラスミドpM1069の作製
センスプライマー19(GGGGGTTACCAAAGCCCAGCTCTTCCACCT)を合成した(配列表の配列番号97)。このセンスプライマーはアルカリフォスファターゼシグナルペプチドの一部をコードする塩基配列、配列表の配列番号3のヒトFasリガンド細胞外領域のN末端部分をコードする塩基配列、BstEIIサイト(GGTTACC)を含む。
得られたセンスプライマー19と(3)で用いたアンチセンスプライマー18(AAGGTCGACTATTAGAGCTTATATAAGCC)をそれぞれ100pmol、実施例12(1)で得たプラスミドpBX-hFL1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのpfu DNAポリメラーゼと添付のpfuバッファー10μlとを含む100μlの溶液を調製し、実施例18(1)と同様にPCRを行った。
得られたPCR産物をBstEIIとSalIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約600 bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。(2)で得たプラスミドpM1059のBstEIIサイトとSalIサイトとの間に挿入し、pM1069を得た。
(5)ヒトFasリガンドの細胞外領域のN末端38アミノ酸残基を欠損するペプチドの大腸菌を宿主とする分泌発現プラスミドpM1073の作製
センスプライマー20(CCCGGTTACCAAAGCCAAGGAGCTG)、アンチセンスプライマー20(TAAGCCGAAAAACGTCTGAG)を化学合成した(配列表の配列番号98および99)。センスプライマー20はアルカリフォスファターゼシグナルペプチドの一部をコードする塩基配列、配列表の配列番号3のヒトFasリガンド細胞外領域のうち、N末端アミノ酸38残基を欠損するペプチド(ND38)のN末端をコードする塩基配列、BstEIIサイト(GGTTACC)を含む。アンチセンスプライマー20は、配列表の配列番号15のヒトFasリガンド細胞外領域DNA配列中のApaIサイト(GGGCCC)より下流3'側に位置する塩基配列である。
得られたプライマーをそれぞれ100pmol、実施例12(1)で得たプラスミドpBX-hFL1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのpfu DNAポリメラーゼと添付のpfuバッファー10μlとを含む100μlの溶液を調製し、実施例18(1)と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をBstEIIとApaIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約300 bpのDNA断片を回収し、キアエックスキットを用いてDNAを精製した。(4)で得たプラスミドpM1069のBstEIIサイト、ApaIサイト間に上述の約300 bpのDNA断片を挿入し、pM1073を得た。
(6)形質転換体の作製およびヒトFasリガンドの発現
(3)、(4)、(5)で得たプラスミドpM1068,pM1069,pM1073を用い、ハナハンの方法(Hanahan,D.著、Techniques for Transformation of E. Coli, In:DNA cloning, Vol,1, Glover, D.M.(ed),109−136頁、IRL出版(IRL Press),1985年)により大腸菌JE5505株を形質転換し、組換え大腸菌JE5505(pM1068),JE5505(pM1069),JE5505(pM1073)を作製した。
得られた形質転換体それぞれを、50μg/mlのアンピシリン含有L−ブロース5mlにて一夜培養した。ついで50μg/mlアンピシリン含有M9CA培地25mlにこの培養液0.5mlを植菌し、37℃にて3ないし4時間培養した後、培養液のOD550がおおよそ1になった時点で培地に終濃度10μg/mlの3β−インドールアクリル酸(和光純薬工業社)を添加し、さらに約24時間培養した。得られた培養混合物を遠心分離し、上清と菌体をそれぞれ回収した。
(7)形質転換体の菌体および培養上清を使用したウエスタンブロッティング
実施例18(5)と同様にヒトFasリガンドのアミノ酸配列の一部(PSPPPEKKELRKVAH)を認識するウサギ抗血清を用いてウエスタンブロッティングを行った。
まず、(6)で得た形質転換体JE5505(pM1068),JE5505(pM1069)およびJE5505(pM1073)の菌体(1mlの培養液相当)にRIPAバッファー(150mM NaCl, 1%NP−40、0.1% Sodium deoxycholate, 0.1% SDS,0.2U/ml Aprotininを含む50mM Tris-HCl(pH7.5))1mlを加え、30分間撹拌した後、遠心し、その上清を回収した。得られた形質転換体由来の上清および(6)で得た形質転換体の培養上清10μlを、それぞれ蒸留水5μlと混合した。これらに;4%SDS、80%グリセロール、0.04%BPBを含む溶液5μl;もしくは4%SDS、80%グリセロール、8%DTT、0.04%BPBを含む溶液5μlを加え、それぞれ37℃で1時間処理した後、SDS-PAGEを行った。泳動終了後、PVDF膜(アトー社)に室温にて200mA、60分の条件で転写した。スキムミルク(雪印乳業(株))を使用して4℃で一夜反応させ、ブロッキングを行ったのち、メンブレンをPBSで1回、0.1% Tween 20/PBSで2回洗浄した。
上述のウサギ抗血清を0.5% BSA/0.1% Tween 20/PBSで1,000倍に希釈し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.1% Tween 20/PBSで2回洗浄した。洗浄後さらに0.5% BSA/0.1% Tween 20/PBSで500倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ウサギイムノグロブリンズ抗体(Cat.番号P448、ダコ(DAKO)社)溶液に浸し、室温で1時間反応させた。メンブレンを0.1% Tween 20/PBSで5回洗浄し、表面の水を切り、ECLシステム(アマーシャム社)で検出した。
図40に示したようにJE5505(pM1068)の形質転換体および培養上清中にヒトFasリガンド細胞外領域に相当するバンドが、非還元条件下では約21kD付近と23kD付近に2本、還元条件下では約23kD付近に1本認められた。
また、図41に示したように、JE5505(pM1069)の形質転換体および培養上清中に、ヒトFasリガンド細胞外領域に相当する明瞭なバンドが、非還元条件下、還元条件下の両者において23kD付近に認められた。
(参考例1)gld(C3H gld/gld)マウスからのFasリガンドに対するcDNAのクローニング
gld(C3H gld/gld)マウスの脾臓細胞を実施例14の方法で培養し、実施例14の方法で1本鎖cDNAの合成およびPCRを行った。得られたPCR産物を、XbaIで制限酵素処理後、1%アガロースゲルで分離し、燒940bpDNAフラグメントを回収した。これを、pBluescript II KS(+)のXbaIサイトにサブクローニングし、その塩基配列を決定した。得られた塩基配列を、実施例14(1)で確認した配列と比較したところ、得られたPCR産物の配列は、実施例14(1)で得られた配列の3'末端近くのT(配列番号32の塩基番号849)がCに変異していることが明らかになった(配列表の配列番号100)。この1塩基の変異により、アミノ酸配列にも変異が生じていた。すなわち、gldマウスにおいては、マウスFasリガンドの細胞外領域に位置する273番目のアミノ酸がフェニルアラニンからロイシンに変異していた。
(参考例2)gldマウス由来のFasリガンドの細胞障害活性
参考例1で得られた約940 bpのXbaIフラグメントを、動物細胞発現ベクターpEF-BOSのXbaI部位に挿入した。実施例(2)と同様の方法で、COS細胞を形質転換した。形質転換したCOS細胞をエフェクター細胞とし、実施例14(3)の方法で細胞障害活性を測定した。その結果、gldマウスより得られたFasリガンドcDNAで形質転換させたCOS細胞は細胞障害活性を示さなかった(図26)。以上の結果より、自己免疫疾患のモデルであるgldマウスでは、Fasリガンドによるアポトーシスの誘導が正常に起こらないことが確認された。
今回の結果と、オガサワラ(Ogasawara J.)等の報告から、自己免疫疾患の原因として、Fas抗原の異常およびFasリガンドの異常の少なくとも2つがあることが示唆された。いずれの場合も、自己反応性のT細胞にアポトーシスを誘導することができず、自己反応性のT細胞が生体内より除去されなかったため、自己免疫疾患が生じることが予想された。
産業上の有用性
本発明により、Fasリガンドおよびその一部である新規ポリペプチドが提供される。当該新規ポリペプチドは、Fas抗原を介したアポトーシスが関与する疾患、たとえば自己免疫疾患や、ウイルス感染の治療薬として開発する事ができる。また、当該新規ポリペプチドは抗体を作製する際の抗原として使用できるほか、試料中の当該ポリペプチドを、抗体を使用して競合反応にて測定する際に使用することができる。
本発明によれば、Fasリガンドもしくはその一部をコードするDNAが提供される。
当該DNAは、前記新規ポリペプチドを遺伝子工学的手法を使用して、工業的に大量生産するために使用できる。また、DNAプローブを作製するためにも使用できる。さらに、自己免疫疾患では、遺伝的にアポトーシスの機構が欠損しているケースが考えられるが、当該新規DNAは、このような疾患の遺伝子治療にも使用する事ができる。
さらに、DNA配列が明らかになったことにより、Fasリガンド遺伝子もしくはFasリガンドに対するmRNAの一部に相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体が提供される。当該オリゴヌクレオチドは、Fasリガンドの発現を調節するために使用できる他、診断用プローブとしても利用できる。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:137
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:2
配列の長さ:138
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:3
配列の長さ:179
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:4
配列の長さ:281
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:5
配列の長さ:137
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:6
配列の長さ:138
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:7
配列の長さ:179
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:8
配列の長さ:278
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:9
配列の長さ:137
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:10
配列の長さ:138
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:11
配列の長さ:179
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
配列番号:12
配列の長さ:279
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:13
配列の長さ:411
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:14
配列の長さ:414
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:15
配列の長さ:537
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:16
配列の長さ:843
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:17
配列の長さ:411
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:18
配列の長さ:414
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:19
配列の数:537
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:20
配列の長さ:834
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:21
配列の数:411
配列の種類:核酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:22
配列の数:414
配列の種類:核酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:23
配列の数:537
配列の種類:核酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:24
配列の長さ:837
配列の種類:核酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:25
配列の長さ:1623
配列の種類:アミノ酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:26
配列の長さ:426
配列の種類:アミノ酸
配列の型:タンパク質
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:27
配列の長さ:2433
配列の種類:核酸
配列の型:他の核酸
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:28
配列の長さ:1707
配列の種類:核酸
配列の型:Genomic DNA
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:29
配列の長さ:924
配列の種類:核酸
配列の型:他の核酸、DNA
アンチセンス:yes
配列:
Figure 0003716936
配列番号:30
配列の長さ:924
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸、RNA
アンチセンス:yes
配列:
Figure 0003716936
配列番号:31
配列の長さ:924
配列の種類:核酸
配列の型:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:32
配列の長さ:927
配列の型:核酸
配列の種類:cDNA to mRNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:33
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(ヌクレオチドプライマー1)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:34
配列の長さ:37
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(ヌクレオチドプライマー2)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:35
配列の長さ:24
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー1)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:36
配列の長さ:50
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー1)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:37
配列の長さ:10
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 コザックにより提唱された配列
配列:
Figure 0003716936
配列番号:38
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー2)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:39
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー3)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:40
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー2)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:41
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー3)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:42
配列の長さ:925
配列の型:核酸
配列の種類:Genomic DNA
配列:
Figure 0003716936
配列番号:43
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー4)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:44
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー4)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:45
配列の長さ:568
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸(プローブ1)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:46
配列の長さ:191
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸(プローブ2)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:47
配列の長さ:444
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸(プローブ3)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:48
配列の長さ:28
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー5)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:49
配列の長さ:28
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー5)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:50
配列の長さ:28
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー6)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:51
配列の長さ:28
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー6)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:52
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ペプチド▲1▼
配列:
Figure 0003716936
配列番号:53
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ペプチド▲2▼
配列:
Figure 0003716936
配列番号:54
配列の長さ:16
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ペプチド▲3▼
配列:
Figure 0003716936
配列番号:55
配列の長さ:13
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ペプチド▲4▼
配列:
Figure 0003716936
配列番号:56
配列の長さ:24
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー7)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:57
配列の長さ:33
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー7)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:58
配列の長さ:27
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー8)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:59
配列の長さ:36
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー8)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:60
配列の長さ:15
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド
配列:
Figure 0003716936
配列番号:61
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成ホスホロチオエート(PS)型センスオリゴヌクレオチドS20
配列:
Figure 0003716936
配列番号:62
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成ホスホロチオエート(PS)型アンチセンスオリゴヌクレオチドA41
配列:
Figure 0003716936
配列番号:63
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS50
配列:
Figure 0003716936
配列番号:64
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスヌクレオチドA69
配列:
Figure 0003716936
配列番号:65
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS163
配列:
Figure 0003716936
配列番号:66
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスオリゴヌクレオチドA184
配列:
Figure 0003716936
配列番号:67
配列の長さ:18
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS338
配列:
Figure 0003716936
配列番号:68
配列の長さ:18
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスオリゴヌクレオチドA355
配列:
Figure 0003716936
配列番号:69
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS484
配列:
Figure 0003716936
配列番号:70
配列の長さ:22
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスオリゴヌクレオチドA505
配列:
Figure 0003716936
配列番号:71
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS714
配列:
Figure 0003716936
配列番号:72
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスオリゴヌクレオチドA733
配列:
Figure 0003716936
配列番号:73
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型センスオリゴヌクレオチドS905
配列:
Figure 0003716936
配列番号:74
配列の長さ:20
配列の種類:核酸
配列の種類:他の核酸 合成PS型アンチセンスオリゴヌクレオチドA924
配列:
Figure 0003716936
配列番号:76
配列の長さ:141
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ND38
配列:
Figure 0003716936
配列番号:77
配列の長さ:139
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ND40
配列:
Figure 0003716936
配列番号:78
配列の長さ:138
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ND41
配列:
Figure 0003716936
配列番号:79
配列の長さ:137
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ND42
配列:
Figure 0003716936
配列番号:80
配列の長さ:136
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド ND43
配列:
Figure 0003716936
配列番号:81
配列の長さ:178
配列の型:アミノ酸
配列の種類:ペプチド CD179
配列:
Figure 0003716936
Figure 0003716936
配列番号:82
配列の長さ:45
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー9)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:83
配列の長さ:45
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー9)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:84
配列の長さ:45
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー10)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:85
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー11)
配列:
Figure 0003716936
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配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー11)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:87
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー12)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:88
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー13)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:89
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー14)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:90
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー15)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:91
配列の長さ:27
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー16)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:92
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー16
配列:
Figure 0003716936
配列番号:93
配列の長さ:39
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー17
配列:
Figure 0003716936
配列番号:94
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー17)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:95
配列の長さ:46
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー18)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:96
配列の長さ:29
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー18)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:97
配列の長さ:30
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー19)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:98
配列の長さ:25
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(センスプライマー20)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:99
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 合成DNA(アンチセンスプライマー20)
配列:
Figure 0003716936
配列番号:100
配列の長さ:927
配列の型:核酸
配列の種類:他の核酸 PCR産物
配列:
Figure 0003716936

Claims (41)

  1. 配列表の配列番号19で表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAと50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得るDNAによりコードされるアミノ酸配列を有し、Fas抗原と結合する活性を有するポリペプチド。
  2. 前記ポリペプチドが、Fas抗原を発現する細胞に対してアポトーシスを誘導する活性を有する請求項1に記載のポリペプチド。
  3. Fas抗原と結合する活性を有し、配列表の配列番号26で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
  4. 配列表の配列番号7で表されるアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中の1ないし数個のアミノ酸に欠失、置換、付加が生じたアミノ酸配列を含有し、Fas抗原を発現する細胞に対してアポトーシスを誘導する活性を有するポリペプチド。
  5. 配列表の配列番号8で表されるアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中の1ないし数個のアミノ酸に欠失、置換、付加が生じたアミノ酸配列を含有し、Fas抗原を発現する細胞に対してアポトーシスを誘導する活性を有するポリペプチド。
  6. 配列表の配列番号7または8で表されるアミノ酸配列中の連続した16以上のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  7. 配列表の配列番号19で表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAと、50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得るDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、配列表の配列番号26のアミノ酸配列を含み、Fas抗原と結合する活性を有するポリペプチド。
  8. 配列表の配列番号26で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  9. 配列表の配列番号26で表されるアミノ酸配列中の連続した16以上のアミノ酸からなるポリペプチド。
  10. 配列表の配列番号76,77,78,および79のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  11. 配列表の配列番号52〜55、および60のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  12. 配列表の配列番号26で表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAと、50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得るDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、Fas抗原と結合する活性を有するポリペプチド。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドをコードする塩基配列を有するDNA。
  14. 配列表の配列番号26の15番目から404番目の塩基配列で表される塩基配列を有する請求項13に記載のDNA。
  15. 請求項4または5に記載のポリペプチドをコードするDNAであって、配列表の配列番号19で表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAと、50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得るDNA。
  16. 配列表の配列番号19で表される塩基配列を有するDNA。
  17. 請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAであって、配列表の配列番号20で表される塩基配列を有するDNAと、50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得るDNA。
  18. 配列表の配列番号20で表される塩基配列を有するDNA。
  19. 配列表の配列番号19または20で表される塩基配列の一部であって、請求項6に記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
  20. 配列表の配列番号26の15番目から404番目の塩基配列の一部であって、請求項9に記載のポリペプチドをコードするDNA。
  21. 配列表の配列番号15で表される塩基配列の、115番目から537番目、121番目から537番目、124番目から537番目、127番目から537番目のいずれかで示される、請求項10に記載のポリペプチドをコードするDNA。
  22. 配列表の配列番号15で表される塩基配列の一部であって、請求項11に記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
  23. 配列表の配列番号26の15番目から404番目の塩基配列で表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAと、50%ホルムアルデヒド、1×デンハルト溶液、0.1%SDS,100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび10%デキストラン硫酸を含む5×SSCP中で28℃でのハイブリダイゼーション、および、室温で0.1%SDSを含む2×SSCPで洗浄し、次いで、37℃で0.1%SDSを含む0.3×SSCPで洗浄する条件で、ハイブリダイズし得る請求項12に記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
  24. 請求項13〜23のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
  25. 請求項13〜23のいずれかに記載のDNAで形質転換された形質転換体。
  26. 請求項24に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  27. 形質転換体が、下記a)ないしc)より選ばれる少なくとも1つの宿主の形質転換体である請求項25または26に記載の形質転換体。
    a)大腸菌
    b)酵母
    c)哺乳動物細胞
  28. 請求項2527のいずれかに記載の形質転換体を培養し、培養混合物から回収し精製する工程を有する、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法。
  29. 請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドを含有する試料中より該ポリペプチドを精製する方法であって、少なくとも、下記より選ばれるいずれか1つ以上の精製工程を行う、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドの精製方法。
    (1)Fas抗原を使用したアフィニティークロマトグラフィー
    (2)請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドを認識する抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィー
  30. 請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドに対する抗体。
  31. 前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項30に記載の抗体。
  32. Fas抗原発現細胞のアポトーシスを抑制する活性を有する請求項30または31に記載の抗体。
  33. 請求項32に記載の抗体を有効成分とする、細胞のアポトーシス誘導阻害剤。
  34. 請求項32に記載の抗体を有効成分とする、肝炎の予防・治療剤。
  35. 配列表の配列が番号19、20、および26のいずれかで表される塩基配列の一部と相補的で15塩基以上30塩基以下の塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  36. 配列表の配列が番号19または20で表される塩基配列の一部と相補的で15塩基以上30塩基以下の塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体であって、配列番号19または20の塩基配列にハイブリダイズし、請求項3ないし5のいずれかのポリペプチドの発現を抑制する、下記a)〜e)より選択されるいずれかであるアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体;
    a)フォスフォジエステル結合、フォスフォロチオエート結合、フォスフォトリエステル結合、メチルフォスフォネート結合、フォスフォロアミデート結合、フォスフォロジチオエート結合、モルホリノ基のいずれか1以上をバックボーン構造として有する誘導体、
    b)ポリアミド―核酸(PNA)誘導体、
    c)糖部分が糖の2’位が他の原子あるいは置換基に置換された誘導体 またはα-リボース誘導体である、誘導体、
    d)一部の塩基がイノシンに置換された誘導体、
    e)オリゴヌクレオチドの5’末端もしくは3’末端もしくは内部にコレステロール、アクリジン、ポリ-L-リジン、ソラレン、長鎖アルキルのいずれかが結合した誘導体。
  37. 配列表の配列が番号26で表される塩基配列の一部と相補的で15塩基以上30塩基以下の塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体であって、配列番号26の塩基配列にハイブリダイズし、配列番号26のポリペプチドの発現を抑制する、下記a)〜e)より選択されるいずれかであるアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体;
    a)フォスフォジエステル結合、フォスフォロチオエート結合、フォスフォトリエステル結合、メチルフォスフォネート結合、フォスフォロアミデート結合、フォスフォロジチオエート結合、モルホリノ基のいずれか1以上をバックボーン構造として有する誘導体、
    b)ポリアミド―核酸(PNA)誘導体、
    c)糖部分が糖の2’位が他の原子あるいは置換基に置換された誘導体 またはα-リボース誘導体である、誘導体、
    d)一部の塩基がイノシンに置換された誘導体、
    e)オリゴヌクレオチドの5’末端もしくは3’末端もしくは内部にコレステロール、アクリジン、ポリ-L-リジン、ソラレン、長鎖アルキルのいずれかが結合した誘導体。
  38. 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体が、フォスフォロチオエート型である請求項36または37に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体
  39. 配列番号62、64、66、68、70、72および74のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  40. 配列番号62、64、66、68、70、72および74のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体であって、配列番号31の塩基配列にハイブリダイズし、配列番号31の塩基配列の発現を抑制する、下記a)〜e)より選択されるいずれかであるアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体;
    a)フォスフォジエステル結合、フォスフォロチオエート結合、フォスフォトリエステル結合、メチルフォスフォネート結合、フォスフォロアミデート結合、フォスフォロジチオエート結合、モルホリノ基のいずれか1以上をバックボーン構造として有する誘導体、
    b)ポリアミド―核酸(PNA)誘導体、
    c)糖部分が糖の2’位が他の原子あるいは置換基に置換された誘導体 またはα-リボース誘導体である、誘導体、
    d)一部の塩基がイノシンに置換された誘導体、
    e)オリゴヌクレオチドの5’末端もしくは3’末端もしくは内部にコレステロール、アクリジン、ポリ-L-リジン、ソラレン、長鎖アルキルのいずれかが結合した誘導体。
  41. アンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体が、フォスフォロチオエート型である請求項40に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体。
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