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JP3713511B2 - ウォッシュ・アンド・ウェア性の付与された絹布帛からなるインクジェット捺染製品とその製造方法 - Google Patents

ウォッシュ・アンド・ウェア性の付与された絹布帛からなるインクジェット捺染製品とその製造方法 Download PDF

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JP3713511B2 JP2001195541A JP2001195541A JP3713511B2 JP 3713511 B2 JP3713511 B2 JP 3713511B2 JP 2001195541 A JP2001195541 A JP 2001195541A JP 2001195541 A JP2001195541 A JP 2001195541A JP 3713511 B2 JP3713511 B2 JP 3713511B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォッシュ・アンド・ウェア性(洗濯したのち乾燥し、そのまま着用できるイージーケア性に優れたWash and Wear特性を意味し、以下WW性と略記する)を所有する絹布帛に鮮明な図柄をインクジェット捺染により付与する繊維製品とその製造方法に関する。さらに詳しくは、絹繊維のもつ本来の優れた官能特性と付与されたWW性を保持したまま、高度の発色性と堅牢度をもつモチーフの繊維製品を、市場のニーズに応じて極めて短期間に生産できる多品種超少ロット方式の繊維製品とその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明でいうWW性を所有する絹布帛とは、特公昭52−38131号公報にみられる中性塩水溶液を含浸した絹繊維をエポキシド含有有機溶剤溶液中で100℃以下の温度で浸漬処理する、いわゆる二相湿熱処理法に分類できる国有特許を基礎に、特公平2−53544号公報で開示される独特の装置を開発して量産化に成功した、本来の絹繊維の官能特性を維持したまま、優れた乾湿防皺性及び防縮性等の機能特性の大幅改善と、例えば特公昭63−66947号公報にみられる繊維素反応型架橋剤でのパーマネントプレス加工性への拡張及び特公平6−35715号公報に開示される特有の染色性を顕示する等の多くのメリットを兼備する絹繊維製品を指定するものである。
【0003】
しかしながら、厳密には、該プロセスは操業過程でエポキシド処理後の絹繊維に残存付着した実用性の高い不燃性有機溶剤のトレースが廃水処理施設に蓄積することが見出され、その対応策を鋭意研究して相間移動触媒を利用した安全性のより高い、処理効果のより改善された新規二相湿熱処理法に移行したことは、特開平5−195431号公報及び特開平6−184931号公報等で公知である。該改良法から産出されるWW性を付与された絹繊維製品も、前法と同様、もっぱら精練・漂白後の白地での処理が必須条件であり、実用的には後染めで製品にバラェティーを提供するには極めて好都合であり、多品種少ロット生産、例えば引き染、手描、友禅、型染及び注染等の高付加価値商品には広く賞用されている。
【0004】
なぜならば化学的には絹繊維を構成するポリペプチド連鎖にジグリシジール化合物によって膨潤状態で架橋化を効率よく促進するためには、多くの異なった反応基を内蔵する染料種の介在を避け、先染繊維の処理過程での変退色の回避を含めて、白生地で処理することが推奨される。なお、架橋反応時にグリシジール基の開環により生成する新たな2個の水酸基の存在が吸湿性ないし染色性に寄与する機構が内蔵されていることが、該二相湿熱法の最大の特徴と考えられている。
【0005】
【従来の技術】
絹繊維から構成される繊維製品は、どちらかといえば高級衣料素材として風合い及び深みのある色艶等の官能特性を賞用する古くからの根強い需要に支援され、特殊な消費科学的取扱を余儀なくされながら、アパレル分野に急激にシェアを拡大してきた合成繊維と対峙してその特有の存在価値が認識されてきた。しかしながら、異形断面糸使いのポリエステル繊維から構成される繊維集合体とアルカリ減量加工の相乗効果により調製される絹様の官能特性を所有するポリエステルからなる繊維製品の開発に触発され、絹繊維の機能性付与に関する改質加工への関心が高まり、その消費性能は大きく様変わりしていることは周知である。
【0006】
例えば、前述のジグリシジールを利用した二相湿熱処理法等と併行して、シリコン化合物超微粒子からなる水系溶液をパッド・ドライして布帛構成絹繊維内部間隙ないしは繊維表面上に該微粒子を沈積させて繊維間の摩擦係数を減衰して柔軟化仕上げしたもの、もしくはセラミック超微粒子の懸濁液による加工等をセラミック加工等と呼称し、保温・抗菌・防臭及び遠赤効果等の付帯効果と同時に撥水機能を活用した耐洗濯性のメリットを強調してウォッシャブル・シルクと喧伝した商品が市場に出廻っていることもよく知られている。又、同様に水系フッ素化合物を付与して、高度な撥水・撥油機構に依存する防縮性からウォッシャブル・シルクとして提供される事例等が数多く知られている。
【0007】
さらに、トルマリンないしはゲルマニウム含有鉱石等の超微粒子の水懸濁液による絹繊維製品への防縮、制電及び消臭機能等の特殊効果の付与方法。繊維素反応型架橋剤をパッド・ドライ・キュアして形態安定性を改良する手法に各種仕上げ剤等を複合化して付加価値幅を広げる試みも数多く提案されているが、それらの加工は絹繊維に目的のケミカルズを固定するための補助手段、例えばバインダーの併用ないしは高温キュア等による絹繊維自体のもつ本来の官能特性、特に風合の粗硬化要因を誘致する結果になることが知られている。ただ、これらの多くの加工方法のすべてが着色後の最終仕上げ工程で採用されることが前述の二相湿熱方法と基本的な相違点であり、一般のウォッシャブル・シルクへのインクジェット捺染への適用は極めて困難であることは容易に理解される。
【0008】
一方、絹と同様に蛋白繊維としてより広く世界で消費されている羊毛製品の取扱についても検討され、ウォッシャブル・ウールを手洗い及び機械洗いの二つに分類して実用に供されている。すなわち、一般的に前者は通常の染色条件下でもフェルト化現象が抑制できるジクロロイソシアヌール酸による脱スケールを目的にした塩素化による防縮加工品が適用されるのに対し、後者にはモノ過硫酸による塩素化後、染色され、カチオン型樹脂ないしはシリコン含有高分子ケミカルズによる後加工が複合化される等の短繊維から構成される繊維集合体の応力緩和に対するきめ細かい技術的対策がなされている。
【0009】
これに反して、主として長繊維から構成される絹繊維集合体の応力緩和の遂行が求められるウォッシャブル・シルクの防縮機構についての加工履歴が不明なものが多く、一般的にはシーツ及びタオル等のランドリーないしウェットクリーニングと呼ばれる機械洗いが所望される商品群よりもシャツ、ブラウス、スカーフ、ハンカチーフ、セーター及びインナー等の家庭における手洗いが推奨される商品群に利用されているケースが多く、しかも撥水機能の付与による耐水性の改善を想定して、ドライクリーニングに代替する大きなメリットを強調しているが、絹本来の風合いの保証は必ずしも十分な水準とは認められない。
【0010】
これに対して、洗濯、乾燥後、そのまま、ないしは軽いアイロン掛けで着用が可能になるWW性絹布帛の改質加工技術には、着用時の乾燥防皺性と同時に水系洗濯時の湿潤防皺性の改善が必須条件として課せられ、同時に高い防縮性が求められる。その改善の度合いは布帛の組織に応じて単位重量当たりの架橋度によって調製できることが確認されている。一般的には架橋結合の導入による重量変化が絹繊維に対して10重量%程度までは該繊維から構成される絹布帛の風合い変化はほとんど感知されずに前述の各種機能特性が付与されている。
【0011】
白生地に対する改質加工は、長時間の浸染が求められる前述のウォッシャブル・ウールのように染色時のフェルト化収縮を防止し、発色の鮮明化を促進する目的からも染色前に塩素化と呼ばれてきた防縮処理が実用化されていることは公知である。一方、絹繊維に対しても増量目的から広く実用化されるアクリル系樹脂モノマーによるシルクのグラフト加工と呼ばれる繊維内重合法等の白生地ないし糸染での利用が総てである特殊な例外を除けば、着色後の仕上げ工程で実施されるケースが多い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
少品種大量生産による品質管理とコスト低減を目標に掲げて合理化を推進してきた染色工業にも、年間国民一人当たりの繊維消費量(Kg/capita)の高水位での停滞から低減への推移に加えて、海外からの流入品の増加による国内での加工量の大幅低下を伴って、流行の短サイクル化と呼応した消費者の所望する商品のクィック・レスポンス(QR)が極度に進行している。
【0013】
かかる環境下では、多品種超少ロットの高付加価値商品の産出が企業のサバイバルの共通目標になっている。従来の高付加価値加工種の代表として挙げられてきた希少価値繊維素材の絹繊維に対する、手作業依存度の高い捺染商品といえどももロットの一段の削減とQRの要請が加速されている。かかる社会的ニーズを背景に検討した結果、WW性絹布帛に対するインクジェット捺染の企業化が研究の焦点として収斂されている。
【0014】
インクジェット捺染とは、コンピュータ・グラフィックス・システムにより、CRT(Cathode Ray Tube Display)画面上に作図した図柄、もしくはスキャナで読み取った図柄のデジタル情報に対して複写、移動、拡大、縮小及び配色替え等を遂行する画像処理技術と連動したインクジェットプリンターのノズルから染料ベースのインクを布帛の所望する部位に射出し、固定して図柄を再生した後、染料の固着及び後処理から構成される超少ロットの生産とQRに好適な捺染システムである。
【0015】
一般に、布帛に適用されるインク出力装置は、主としてバルブの開閉機構を利用した連続方式ないしDOD(drop−on−demand)方式からなる低解像度の相対的に多量のインクを射出できるタイプがカーペット捺染に利用され、DOD方式のバブル及びピェゾ機構から構成される高解像度のタイプがアパレル素材用には多用されていることはよく知られている。
【0016】
該システムはいずれもノズルの細孔からインク液滴を布帛に向けて吐出させる機構のため、ノズルの目詰り防止の視点からインクの比重、粘度及び表面張力を中心としたレオロジカル特性の経時変化の抑制と同時に、併用する有機溶剤等の染料に対する溶解力、臭気ないしは労働環境の安全性等が配慮され、最終的にはYMCKの四色ないしは該インクの濃淡からなる八色程度のプロセスカラーで、従来の捺染の色糊に適用される無限大のスポットカラーと呼ばれる指定色ペーストを用いた図柄の発色色相に匹敵する色調の構成を狙う点が基本的に相違する。したがって、インクの合理化は最大限に発揮される反面、指定色及び色調の難点を回避するための対策が所望されている。
【0017】
該被捺染布帛は、出力装置から高速で射出して飛翔するインク液滴を所望される部位に精確に的中せしめ、その周辺へのインクの拡散を極力抑制するために、一般的には、予め布帛構成原糸表面を水溶性高分子糊剤でコーティングすることが求められている。これらの原糸表面の糊剤皮膜は、飛翔してくるインクの液滴に対しては防染作用を示すので、繊維への浸透と表面拡散の抑制のバランスを配慮した組成物、付着量ないし分布位置等の選定が重要になる。なお、該糊剤の適用は、二次的には布帛の形態安定性を改善して印捺作業の効率化にも寄与するが、最終工程での完全除去が容易であることも必須条件になる。
【0018】
さらに、該前処理組成物の組成は発色色相にも関与し、商品品位に直接影響する。したがって、配合薬剤の添加が相対的に自由に選択できる色糊の場合と比べてインクジェット捺染に際しては、物理的規制を受けるインクでは必須成分が不足するケースが避けられない。すなわち、インク中に不足する必須成分を前処理組成物として調製し、予めパッド・ドライして布帛上に介在せしめておくことが求められる。
【0019】
WW性の付与された絹布帛は、従来の染色ないし手作業による高付加価値捺染による取扱は、むしろ未処理布帛よりも向上する傾向が確認されているが、インクジェット捺染に適用した際、いくつかの課題が提起されている。すなわち、該インクジェット捺染布帛の仕上がり品には、元のWW特性は持続確認されるものの、次のような問題点が判明した。WW性付与絹布帛は、未処理絹布帛と対比して発色濃度は濃色化する傾向は、従来の捺染手法の場合と同様な傾向を確認できるが、モチーフににじみの傾向が顕著に観察されるようになる。
【0020】
又、従来の捺染用糊剤として推奨されてきた水溶性高分子材料のうち、特に絹布帛に推奨されるアルギン酸ソーダよりも、適用の忌避されてきた繊維素誘導体ないし澱粉及びガム系誘導体が好適である傾向が観察された。特に後者の糊剤はインクジェット捺染後の整理工程における糊落ちに難点があり、絹本来の風合いの維持に大きな問題点としてクローズアップされている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明者等は周辺技術を整理要約し、鋭意研究を進めた結果、インクジェットプリンターのタイプ、印捺する布帛の組織の相違、及び前処理剤組成物の付与方式、付与量、含有成分の内容等により、WW性シルクから産出される製品品位が著しく変動することを確認し、特殊な成分の添加剤によりその効果が一段と改善し、安定した品位を確保できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0022】
高精度のモチーフを表現するためには、一般にDOD方式の高解像度プリンターの適用が望ましいが、厳密には機種によって仕様されるインク組成に起因すると推定される発色色相に影響し、インクの吐出量に起因する発色濃度の相違が観察される。しかしながら、例えば、サーマル(バブル)ないしピェゾ方式の射出機構をもつ機種固有の特性によって支配される捺染品位の改善にも前処理組成物による影響がみられることも確認された。
【0023】
射出されるインクの粘性は捺染糊と比較して極めて低く、布帛上でのインクの拡散は、布帛自体では該構成繊維のインクの親和性と単位面積当たりに含有される繊維容量とによって支配されることになる。本発明のWW性シルクの吸水性は架橋結合量による相違はみられるが、相間移動触媒をパッド・ドライした絹布帛に、例えばエチレングリコールジグリシジールエーテル水溶液をパッドしてそのままウェット・スチームしたWW性シルクは、未処理シルクよりも吸水性は大きいのが一般的特徴である。したがって、布帛に高速(例えば時速7.2−14.4kmの計算値がある)で飛翔・衝突したインク液滴の染着面積は、組織の緻密度に反比例して浸透が抑制され、表面染着が拡大し、同一目付けの生地に対しては、その厚さに比例して浸透は増大し、表面染着が縮小する現象等がみられる。
【0024】
又、印捺作業性の改善、染着必須ケミカルズの布帛上への固定、発色向上及びにじみ防止対策等に用いられる水溶性高分子材料は、易溶性糊剤から選出されるケースが一般的である。特に風合いを重視するWW性シルクに対しては、従来の捺染手法の慣例から想定されるアルギン酸ソーダが最終工程での糊落ちの安易さからも推奨できるものと考えられながら、作業性の改善確認に対して、発色ないしにじみ防止効果は必ずしも満足できる水準でないことが見出された。該挙動は低粘度(高濃度溶液使用)、中粘度(中濃度溶液使用)及び高粘度(低濃度溶液使用)アルギン酸ソーダでも共通にみられる。
【0025】
これに対して繊維素誘導体、特に高エーテル化度CMC、加工澱粉、ローカストストビーンガム等によるにじみ防止効果が顕著である。特に、従来の捺染においてWW性シルクに適用される染料部属としては、酸性染料、反応染料及びバット染料等が推奨されているが、現時点でインクジェット捺染に適用されるインクは前二者が中心に推移していることは周知であり、製品の染色堅牢度を配慮して反応染料の選択される機会が多い。したがって、加工澱粉ないしはローカストビーンガム等はソジウムモンモリロナイトを配合する特殊糊剤の処方を採用する対策も想定されるが、従来の捺染用色糊ペーストに対比して、インクジェット捺染用前処理組成物の粘度は相対的に著しく低く、該水溶液の経時安定性に難点が指摘される。
【0026】
該前処理組成物の布帛への付与手段は、パディング、しごきないしは表面コート方式が採用されるが、布帛表面上に前処理組成物を集中させる後二者方式よりも布帛全体に均一に付着させるパディング方式が推奨できる。なぜならば、インクの布帛裏面からのにじみも無視できない生地も多く、同一重量の前処理剤組成物を布帛表面に塗付すると仮定すると、インクの浸透が過度に阻害されるケースも想定されるからである。前処理組成物として、発色色相及びにじみ防止を強調する目的で、水不溶性のガラスないしセラミック系の無機超微粒子及びセルロース系及び合成樹脂系有機超微粒子粉末等を高分子水溶液中に懸濁するか、ワックス、パラフィン、ターペン、油脂、界面活性剤、その他の水不溶性有機物質を高分子水溶液中に乳化させた前処理組成物を適用する多くの提案も知られている。
【0027】
しかしながら、WW性シルクに適用する場合のパディング方式を前提とした該前処理組成物中の水溶性高分子の溶液濃度からの保護コロイド効果を期待することは極めて困難であり、懸濁ないし乳化系前記処理組成物の安定性の難点がインクの斑付き要因になる問題が生ずる。例えば、ポリエステル繊維布帛の捺染のHPS(高温高圧蒸熱)発色に匹敵するHTS(高温蒸熱)ないしはサーモゾルによる連続固着時に併用する濃染化剤の多くは、HLB8以下の親油性化合物が主体に実用に供されているのは、捺染用色糊の高粘性が保護コロイドとして作用しているからにほかならない。ちなみに、ポリエステル布帛のパディング方式による連続染色等の固着に併用できる濃染剤についての知見は極めて乏しい。
【0028】
又、前処理組成物に含まれる糊剤固形量についても検討し、パディング適性を所有する粘性の範囲では必ずしも極端な影響は現れないものの、低分子量の糊剤ほど高固形量溶液が適用でき、布帛構成原糸表面の糊層皮膜の厚さは増し、繊維層へのインクの到達が抑制される傾向がある。なお、糊剤とインク組成物との親和性が増加すればするほど糊層内に保留されるインク量が増し、繊維への染着が阻害される傾向がみられ、特にインク内の染料成分と糊剤との関係によっては糊落ちの困難になる組み合わせもみいだされる。
【0029】
なお、該前処理剤組成物の効果を強調するために浸透剤として、界面活性剤、層間化合物、無機ないし有機水不溶性ケミカルズの超微粒子、撥水剤及び保湿剤等の配合が前記のように提案されているが、にじみ、カラーバリューの低下。色相変化等、種々の問題が内蔵されていることもよく知られている。
【0030】
本発明者等は、WW性シルク発色性の改善、にじみ防止および併用糊剤の糊落ちを促進するため低HLB価の親油性界面活性剤を水溶液として安定化させるため、多くの界面活性剤の組み合わせを研究した結果、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック・ポリマー及びノニルフェノールエトキシレートからなる配合体が相対的に所望する効能のあることを見出し、その好適配合体の絞込みに成功した。
【0031】
ポリオキシエチレン・ポリプロピレン共重合体は、ポリオキシエチレン部位の親水性基群とポリプロピレン部位の親油性基群からなるエーテル型の非イオン系界面活性剤であり、その分子構造によって、例えば該共重合体の分子量に対するエチレンオキサイド部位の重量%からHLBを調製することができることが知られている。該ポリマーは難水性であって、その分子量が増大するにつれて水に対する溶解度は減少する。
【0032】
したがって、従来の捺染用色糊等への添加は、糊剤を保護コロイドとして該ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・プロック・コポリマーを低級脂肪族アルコール−水系の混合溶媒に溶解して、攪拌しながら添加すれば容易に安定したペーストを調製することができる。しかしながら、インクジェット捺染における布帛の前処理剤組成物としての低粘度の糊剤水溶液中では、安定性に難点があり、処理布帛に付着斑が発生し、製品品位を著しく低下させることが観察される。
【0033】
該難水性の中分子量のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールにHLB15付近のノニルフェノールエトキシレートを共存させると該配合体水溶液の安定性は著しく向上することが見出される。特に、分子量が2000−3000のエチレンオキサイド成分が10重量%から構成されるものが好適に利用できる。分子量が3000以上になると配合体水溶液の安定性を確保するためにノニルフェノールエトキシレートの配合比率を増加させることが必要になり、前処理布帛に所望されるインクジェット捺染適性を維持することが困難になるからである。これらの配合体の中からインクジェット捺染布帛の品位の改善に寄与する配合体組成を選出すると以下のようになる。
【0034】
WW性絹布帛に対するインクジェット捺染時のにじみ防止及び発色色相の改善に効果的に作用する配合体組成は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール中のエチレンオキサイド成分が10%から構成される分子量2000−3000の共重合体にHLB15付近のノニルフェノールエトキシレート10〜15重量%の範囲で配合したHLB計算値が6.0以下の配合体の作用が好適に利用される。10重量%以下になると配合体水溶液の安定性が著しく低下し、15重量%になるとインクジェット捺染適性を改善する効果が著しく低下する。又、該グリコールの分子量が増加すると、ノニルフェノールエトキシレート配合体水溶液の安定性が阻害される傾向が顕現し、該配合体により前処理したWW性絹布帛の印捺適性の改善が見られない。
【0035】
なお、ポリオキシエチレンアルキルないしポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系の非イオン界面活性剤を単独又は混合してHLBを6.0以下に調製した配合体は水−低級脂肪族アルコール混合溶剤等で安定化することは可能であり、高粘性の捺染用色糊への添加は実用化されているが、インクジェット捺染用布帛の前処理剤としての低粘度糊剤水溶液中では安定性に難点が見出され、捺染商品品位の欠点要因になることが指摘されている。
【0036】
WW性絹布帛のインクジェット捺染用に使用されるインクは、一般的には反応染料ベースから構成されるケースが多い。これらは色相に優る酸性染料よりも染色堅牢度のメリットに加えて、生産量の拡大が予測されるセルロース系繊維素材に適用できる商業的理由からによるものである。したがって、繊維との染着に必要なアルカリは、インクの安定性保持のためインク組成物内に添加することは忌避されるので、前処理組成物内に共存させることが義務付けられる。該アルカリ成分は、WW性シルクは耐アルカリ性が向上していることから、セルロース系繊維素材と同様に炭酸ソーダないし重炭酸ソーダ等が問題なく使用される。又、乳酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ、ピロリドンカルボン酸アルカリ塩等のヒドロトロープ剤は、適宜併用することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0038】
【実施例1】
特許第2580422号(増実株式会社)による、相間移動触媒をパッド・ドライした10匁絹シフォンにエチレングリコール・ジグリシジール・エーテルをパッドし、そのまま湿熱処理する、いわゆる二段湿熱処理法(以下二相法処理と略称する)を用いて、処理前後の重量変化率から5.5重量%の架橋増量を付与したWW性絹布帛を調製した。該布帛は、標準処方で整理仕上げした布帛と対比して、同等ないしそれ以上に優れた感触とドレープ性をもち、防縮性及びWW性の著しく改善されていることが確認された。
【0039】
又、標準処方で整理仕上げした10匁絹シフォン及びWW性付与10匁絹シフォンに、低粘度アルギン酸ソーダ6g/l,重炭酸ソーダ40g/l,尿素100g/lの反応染料ベースのインクを使用するインクジェット捺染用標準前処理組成物をパッド・ドライして、ピェゾ型インクジェットプリンターで捺染し、標準処方に準じて固着(HTS使用、100℃、15分)、後処理、整理仕上げした。該布帛の赤及び緑インクの発色性を表1に示す。
【0040】
Figure 0003713511
【0041】
すなわち、WW性絹シフォンの発色色相はかなり向上していることがわかる。しかしながら、全体としてWW性シルクがにじみの大きい傾向が観察された。なお、風合い、感触及びWW性についてはインクジェット捺染によりなんら影響を受けないことが確認された。
【0042】
【実施例2】
実施例1に準じて、前処理剤組成物のアルギン酸ソーダを高粘度・高エーテル化CMC3g/lに代替して、その発色色相を比較すると表2のようになる。すなわち、アルギン酸ソーダよりも、未処理及びWW性処理シルクとも発色性がやや低下す
Figure 0003713511
る傾向が観察される。これらの要因は、高エーテル化度とはいえCMCと反応染料との相互作用により、絹繊維への染着が抑制されるためと推定される。しかしながら、肉眼判定によるにじみの傾向はCMCに代替することによりかなりの改善がみられる。又、防縮性ないしWW性に及ぼす影響は認められないが、風合い及び感触に若干の改善の余地がみられることが判明した。
【0043】
【実施例3】
実施例1及び実施例2に準じて前処理剤組成物にそれぞれエチレンオキサイド成分が10重量%から構成される分子量2220のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック・ポリマー90.0重量%と、HLB15.0のノニルフェノールエトキシレート10.0重量%の配合物を18g/l添加して水溶液として安定した前処理組成物を調製し、パッド・ドライして標準及びWW性仕上げ絹シフォンのインクジェット捺染布帛を準備し、インクジェット捺染した後、固着・後処理して仕上げした。該布帛の発色性の一例を表3にまとめた。
【0044】
Figure 0003713511
【0045】
いずれも発色濃度が改善され、鮮明性が向上することがわかる。特に、アルギン酸ソーダよりもCMCとの併用でにじみ防止効果が大幅に改善されることが観察された。又、CMC併用に指摘される糊落ち不良による風合いの粗硬化が解消するメリットが確認できる。
【0046】
【実施例4】
実施例2に準じて、CMC3g/l、ソーダ灰20g/l、ピロリドンカルボン酸ソーダ20g/lに、それぞれ次に示すA,B及びC組成のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体/ノニルフェノールエトキシレート配合体を30g/l添加した前処理剤組成物水溶液を調製し、二相法処理に準じて準備したWW性14匁シルク・ツイルにパッド・ドライして(A)、(B)及び(C)の3種類の被捺染布帛を用意した。
【0047】
Aはエチレンオキサイド成分6.1重量%からなる分子量2180のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック・ポリマー90重量%とHLB14.5のノニルフェノールエトキシレート10重量%の配合体。Bはエチレンオキサイド成分24.4重量%からなる分子量2708のポリオキシエチレン・ポリプロピレン・プロック・ポリマー85重量%とHLB15.5のノニルフェノールエトキシレート15重量%の配合体。Cはエチレンオキサイド成分40.0重量%からなる分子量3331のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック・ポリマー85重量%とHLB15のノニルフェノールエトキシレート15重量%の配合体である。
【0048】
該(A)、(B)及び(C)の3種類の前処理剤組成物を含有するWW性14匁シルク・ツイルにサーマル型インクジェットプリンターで印捺し、実施例1に準じて、固着、後処理、整理仕上げし、捺染品位を比較した結果は次のとおりである。(A)は、発色の濃度及び鮮明性が乏しく、かなりのにじみが観察される。(B)は、前処理組成物の不安定性に起因するとみられる斑染部分が見られる。(C)は、(A)と対比して発色、鮮明性及びにじみの向上する傾向が観察されるが、全体の品位は実施例3に比べてかなり見劣りする。
【0049】
【実施例5】
実施例3に準じて、エチレンオキサイド成分が11.4重量%から構成される分子量2312のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体85重量%と、HLB15.5のノニルフェノールエトキシレート15重量%の配合組成物を前処理剤水溶液中に30g/l添加して調製したWW性シルク・ツイルを実施例4に使用したインクジェットプリンターを用いて印捺し、常法に準じて固着、後処理及び整理仕上げした結果は発色性に優れ、ブリードのない繊細なモチーフを布帛上に再現し、染色堅牢度に優れた、ドレープ性の優れたインクジェット捺染物を得た。
【0050】
【発明の効果】
相間移動触媒を用いた二相法処理によりエポキシド架橋を導入した絹布帛は、絹繊維特有の官能特性を保持したまま、高度のWW性を具備し、従来の繊維加工技術を適用して各種染色及び捺染手法と複合化して高品位差別化商品として市場に広く定着してきたことは周知である。しかしながら、急変する市場のニーズにQRできるインクジェット捺染手法での高品位商品の製造にはいくつかの難点が指摘され実用化の域に到達し得なかったが、本発明により絹繊維本来の優雅な風合・感触をもち、高いWW性を維持したまま、多品種超少ロットの高付加価値化商品を容易に製造することができ、その用途を著しく拡張する見通しが確立され、市場のニーズに即応することが可能になった。

Claims (2)

  1. ウォッシュ・アンド・ウェア性を所有する絹布帛に、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体及びノニルフェノールエトキシレートからなる配合体を含有する水溶性高分子化合物水溶液をパッド・ドライした後、インクジェット捺染することを特徴とする繊維製品の製造方法。
  2. インクジェット捺染の前処理剤として併用する配合体は、エチレンオキサイド成分が10重量%から構成される分子量2000以上のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール85〜90重量%とHLB14.5から15.5のノニルフェノールエトキシレート15〜10重量%を配合した水に易溶性組成物を含有する水溶性高分子水溶液をパッド・ドライした後、インクジェット捺染することを特徴とする請求項1記載の繊維製品の製造方法。
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