JP3709716B2 - ラケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テニスラケット等の球技用のラケットに関し、特に、振動特性に影響を与える左右枠部を連結するヨークを改良して、振動減衰性を高めるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ラケットのフレームは繊維強化樹脂製が、その軽量性、高剛性、高強度、耐久性等の特性を生かして主流となっている。一般的なラケットフレームは炭素繊維のような高強度、高弾性率を有する繊維で補強されあ熱硬化性樹脂から一体的に成形されている。この熱硬化性樹脂製のラケットフレームは剛性が高く、高強度で耐久性が良い利点はあるが、打球時に衝撃を受けると振動が発生しやすく、プレーヤーがテニスエルボーになりやすい問題がある。
【0003】
例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維を強化繊維として用い、エポキシ樹脂をマトリクス樹脂として用いた繊維強化熱硬化性樹脂からなるラケットでは、振動減衰率は0.5以下と小さい。
【0004】
上記繊維強化熱硬化性樹脂製のラケットフレームに対して、繊維強化熱可塑性樹脂製のラケットフレームが提供されており、熱可塑性樹脂のもつ靭性の高さを反映して、繊維強化熱硬化性樹脂製のラケットフレームでは得られなかった耐衝撃性を有し、振動減衰率は0.9以上と大きくなっている。
【0005】
しかしながら、一般に熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して、弾性率の環境依存性が大きく、使用環境によってラケットフレームの剛性等の特性が変化しやすい問題がある。剛性および強度を高めるために強化繊維量を増大すると、ラケットフレームの重量が増加する。その場合、スピンをかけるといったプレースタイルに対応するためには、ラケットの操作性が重要視され、ラケットフレームの軽量化が要求されている点より、強化繊維量を増加して対応することはできない。
【0006】
上記のように、繊維強化樹脂製のラケットにおいて、そのマトリクス樹脂を熱硬化性樹脂とした場合、あるいは熱可塑性樹脂とした場合のいずれにしても、一長一短があり、軽量かつ高剛性、高強度でありながらも振動減衰性も高いという全ての要求を満たしたラケットとすることは困難であった。
【0007】
上記した問題に対して、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを組み合わせて用いるようにしたラケットフレームが提案されている。例えば、特開平6−63183号公報に記載のラケットフレームでは、図11(A)(B)に示すように、グリップ1からスロート部2の中央点Pまでの範囲X1が熱可塑性樹脂で成形され、スロート部の中央点Pから打球面を囲むガット張架部3の範囲X2が熱硬化性樹脂で成形され、その連結点のP位置の部分は繊維布帛シート4が巻き付けられて連結されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを組み合わせたラケットでは、ラケットフレームの略半分のマトリクス樹脂が熱可塑性樹脂であるため、使用環境による影響をうけやすいばかりでなく、ラケットの振動モードが考慮されておらず、有効な振動減衰効果が得られない問題がある。
【0009】
即ち、打球時にラケットフレームに発生する面外(ラケットフレームの厚さ方向の)振動モードおよび面内(ラケットフレームの幅方向の)振動モードでは、ラケットフレームの略中心部の左右枠部を連結するヨークの部分が振動幅が大きい腹の部分となる。よって、ヨークよりも位置がずれるスロート部の長さ方向の中央部からグリップ端までを振動減衰性が優れた熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として用いても、振動減衰性は低い。
【0010】
また、従来のラケットでは、図12に示すように、ヨーク5は同一断面形状の略直方体形状で、フレーム本体6の左右枠部の内面に突き当て状に接合し、接着剤を用いて接着固定して連結されている。この連結部を強固に接着しなければ、ラケットとしての耐久性を保持できないが、接着面積が小さい問題がある。
【0011】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、特に、剛性、打球面の面的安定性およびヨークとフレーム本体との連結強度を満足させながら、ラケットフレームの減衰率を効果的に高めることを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ラケットのフレーム本体の左右枠部を連結するヨークが、連続繊維を強化繊維とすると共に熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化樹脂からなり、かつ、該ヨークは中空形状の中央連結部の左右両端部に水平断面コ字状の連結補強部を備え、該連結補強部を上記フレーム本体の各左右枠部の内面と前後側に被せてフレーム本体と一体成形することで左右枠部の一部を構成し、
上記連結補強部の連続繊維の長さを50mm〜300mmとすると共に上記フレーム本体の左右枠部との接触面積をそれぞれ15cm2以上150cm2以下、接触長さが50mm以上とし、かつ、上記ヨーク重量をローフレーム重量の15%乃至35%としていることを特徴とするラケットを提供している。
【0013】
上記連続繊維とは、繊維強化樹脂で用いられる強化繊維における連続繊維を指し、通常は10mm以上の長さのものである。なお、長繊維とは1mm程度のものを指し、短繊維とは0.5mm程度のものを指す。
また、上記ヨークは、セカンドヨークも含み、セカンドヨークを備えたラケットでは、セカンドヨークとファーストヨークのいずれか一方あるいは両方を上記構成としている。
【0014】
上記構成では、打球時に、面外振動モードおよび面内振動モードの曲げの影響を受けて、振動の腹となり、振幅が大きくなるヨークを、振動減衰性の良い熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として用いて成形しているため、振動の減衰を有効に図ることができる。しかも、強化繊維として連続繊維を用いているため、剛性を高めることができ、振動の腹となるヨークに高い剛性を持たせることにより、振動自体を抑制できると共に、ハードヒットした時に打球面の変形を抑制し、打球面の面的安定性を高めることができる。
【0015】
特に、ヨークに連結補助部を設け、フレーム本体との接触面積を増大させ、フレーム本体の成形時に連結補助部をフレーム本体の一部として一体成形しているため、ヨークとフレーム本体との連結強度を高めることができ、この点からも、ヨークの高剛性、高強度として、振動幅の抑制を図ることが出来ると共に、打球面の面的安定性に寄与することができる。
【0016】
上記フレーム本体は繊維強化熱硬化性樹脂から成形することが好ましい。即ち、フレーム本体を繊維強化熱硬化性樹脂で成形し、ヨークのみを繊維強化熱可塑性樹脂とすると、環境依存性を低減できると共に、高剛性、高強度となり、反発性を高めることができる。
【0017】
上記のようにフレーム本体を繊維強化熱硬化性樹脂とし、ヨークを繊維強化熱可塑性樹脂とした場合、従来と同様な、ヨークをフレーム本体の左右枠部に突き当てて接着剤で接着固定する構成とすると、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを接着する接着剤が問題となり、かつ、突き当ての場合、前記したように接着面積が小さいため、連結固定の信頼性が問題となる。この問題に対して、ヨークの左右両端に連結補助部を設けて、ヨークとフレーム本体との接触面積を増大させ、しかも、接着剤による接着ではなく、フレーム本体の成形時に、同時にヨークの連結補助部をフレーム本体の一部として成形しているため、ヨークとフレーム本体とを強固に連結することができる。
【0018】
上記ヨークの連結補強部は水平断面略コ字状で、フレーム本体の各左右枠部を構成する繊維成形体の内面と前後側面に被せられて一体成形されていると共に、各左右枠部とヨークとが接合する部分の面積が夫々15cm2以上150cm2以下で、フレーム本体の長さ方向の接触長さが50mm以上であり、かつ、ヨーク重量が後述する実施例に記載のように、ローフレーム重量の15%乃至35%としている。
【0019】
上記のように、左右枠部との接合部分では、水平断面略コ字状とすると、各左右枠部の内面および前後側面と接触させることができ、接触面積を大とすることができる。この接触面積を上記15cm2以上とすると、十分な接合面積を得ることができる。一方、150cm2より大きくすると、フレーム本体と接合する部分が長くなり、吸水の影響を受けやすい熱可塑性樹脂が、吸水により寸法変化し、ラケット内に歪みが生じやすくなり、強度が低下する問題がある。
【0020】
上記ヨークの左右両端の連結補強部は、中央連結部より上下に延在させて、全体として略H形状とし、上方のガット張架部および下方のスロート部と一体化させて連結強度を高めることが好ましい。なお、中央部より上方へのみ延在させた略U形状とし、ガット張架部とのみ一体化させても良いし、下方へのみ延在させて略逆U形状とし、スロート部とのみ一体化させてもよい。
【0021】
ヨークを構成する繊維強化樹脂は、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等からなる強化繊維で、連続繊維を用いているが、連結補強部の連続繊維の長さを50mm〜300mmとしていることが好ましい。このように、50mm〜300mmと長尺とすると、フレーム本体との接合される連結補強部の強度をより高めることができる。
【0022】
ヨークに用いる連続繊維の形態は、ブレイド、平織りのクロス、一方向繊維シート、コンティニユアンスストランドマット、フィラメントワインディングした連続繊維のいずれでもよい。例えば、熱可塑性樹脂を含浸させた一方向繊維からなるシートを積層し、これを溶融加熱して成形しても良いが、ブレイドやクロスといった織布を用いることが好ましい。即ち、織布では、成形品に繊維の凹凸が発生し、フレーム本体との接合の際、凹凸部によるアンカー機能を生じさせ、連結強度をより高めることができる。また、上記のように、織物でないコミングルドヤーンをフィラメントワインディングしたものを用いることもできるが、繊維の方向性が安定しないため、ブレイド、クロス等の織布の方が好ましいま。さらに、フレーム本体と一体化させる連結補強部には、フレーム本体を成形する強化繊維と同一材料を用いることが好ましい。
【0023】
左右両端の連結補強部を繋ぐヨークの中央連結部は重量軽減の観点から中空形状として、該中空部にウレタン等の発泡体を中芯として充填することが好ましい。
【0024】
ヨークの成形方法としては、強化繊維として連続繊維を用いるため、繊維を含む樹脂を射出成形する方法は採用できないが、マトリクス樹脂の繊維と強化繊維とを繊維形状のまま積層して筒状体を形成し、高温の内圧をかけてマトリクス樹脂を溶融して成形する方法と、金型内に強化繊維を予め配置し、熱可塑性樹脂を反応射出成形する方法とが採用できる。しかしながら、前記方法では、熱可塑性樹脂の成形温度が高く高圧であるため、中空部に充填する中芯として、ポリアミド樹脂の発泡体等の耐熱性材料を使用する必要がある。さらに、複雑な形状のため、成形圧力を均一にすることが非常に困難であり、成形品中に空隙が発生し、耐久性が低下しやすい。
【0025】
よって、本発明で用いるヨークは、反応射出成形で成形することが好ましい。反応射出成形方法を用いると、複雑な形状で、かつ連続繊維強化の熱可塑性樹脂からなる成形品を好適に成形することができる。例えば、ナイロンをマトリクス樹脂として用いた場合、成形温度は150℃前後に低く押さえることができ、また、モノマーの注入圧も3〜7kgf/cm3と低圧成形できるため、中芯として軽量なウレタン等の発泡体を用いても、該発泡体を押し潰すことなく成形できる。そのため、繊維含有率が高く剛性があると共に、軽量なヨークを得ることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂が有する長所の振動減衰性性と短所の環境依存性とを考慮すると、ラケットのローフレーム(バンパー、グロメット、グリップレザー、エンドキャップ等のアセンブル、バランス調整用鉛、グリップ部材およびペイントを除いた成形品そのものであるフレーム)の重量のうち、熱可塑性樹脂量が15〜35wt%とすることが好ましい。なお、上記ローフレームの重量のうちにはヨークの中空部に充填する中芯の重量を含めている。
【0027】
さらに、本発明は、上記構成からなるラケットを、フレーム本体の左右枠部を連結するヨークを、連続繊維を強化繊維とすると共に熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化樹脂から予め成形しておき、上記フレーム本体を繊維強化熱硬化性樹脂から成形する時に、上記ヨークをフレーム本体と一体化させて成形しているラケットの製造方法を提供している。
【0028】
上記のように、連続繊維強化熱可塑性樹脂で予め成形したヨークを、フレーム成形用の金型のキャビテイのヨーク部分に充填すると共に、キャビテイの他の部分に繊維強化熱硬化性樹脂で成形した筒状成形体を充填しておき、この金型を所要温度で加熱することにより、フレーム本体を成形すると同時に、該フレーム本体とヨークとの連結部を一体成形している。このように、ヨークとフレーム本体とを結合すると、熱可塑性樹脂マトリクスからなるヨークと熱硬化性樹脂マトリクスからなるフレーム本体との連結部の強度を大として、耐久性の良いラケットとすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わるテニスラケットの実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に示す第一実施形態のテニスラケットのフレーム10は、繊維強化樹脂製の中空状で、筒形状の1本のフレーム本体11より、ガットが張架されるフエース面Sを囲むガット張架部12、スロート部13、シャフト部14、グリップ部15を連続して構成している。上記ガット張架部12は、別部材からなるヨーク16をスロート側で連続して、フェース面Sを囲む環状としている。
【0031】
上記フレーム本体11は繊維強化熱硬化性樹脂で成形し、上記ヨーク16は連続繊維強化熱可塑性樹脂で成形している。該ヨーク16は、正面視で略H形状とし、中央連結部20の左右両端より、ガット張架部12側の上方と、スロート部12側の下方へ延在する連結補強部21、21を一体的に設けた略H形状としている。
【0032】
ヨーク16は図2、図3および図4に示す形状で、中央連結部20は略四角枠形状として中空部20aを設けており、該中空部20a内にウレタン等の中芯(図示せず)を充填している。左右両端より上下に延在する連結補強部21は、水平断面略コ字状で、その中央部21aがフレーム本体11の左右枠部の内面(a)に、一方側部21bがフレーム本体の前面(b)に、他方側部21cがフレーム本体の後面(c)に夫々位置し、該フレーム本体11を構成する繊維強化樹脂と共に一体成形され、フレーム本体11の一部を構成している。
【0033】
上記ヨーク16の各連結補強部21がフレーム本体11と接触する面積を15cm2以上で150cm2以下としている。また、連結補強部21を構成する連続繊維の長さは50mm以上300mm以下としている。
【0034】
上記ラケットフレームは、ヨーク16を予め成形しておき、ラケットフレーム成形用金型のキャビテイのヨーク部に充填しておく一方、他のキャビテイ部分にはフレーム本体の形成材料である繊維強化熱硬化性樹脂シートからなる筒状積層体を充填し、この状態で金型を所要温度で加熱して、ラケットのローフレームを成形している。上記ヨークの成形品重量はラケットのローフレームの重量の15%〜35%の範囲に設定している。
【0035】
(実施例1)
本発明に係わるテニスラケットフレームを作製した。
まず、ヨークを以下の手順で成形した。
発泡ウレタン(大日本インキ製)でヨークの中芯を作成した。該中芯の外周に厚さ80μmの66ナイロンチューブを被せ、該チューブと中芯の発泡ウレタンの中に空気が残存しないように減圧しながらチューブの両端を加熱溶融してシールした。その後、チューブの外周にカーボン繊維をスリーブ状に織ったブレイド(東レ製カーボンブレイド、TX364A,繊維角度24°、φ20とTX364B,繊維角度45°、φ20を各2層)積層し,ヨークの中央連結部のレイアップを作成した。また、ヨークの左右両端に設ける連結補強部を、カーボン繊維のブレイド(東レ製、TX364B(45°、φ20)を用いてレイアップを作成した。ヨーク成形用金型の略H形状としたキャビテイの中央に上記中央連結部のレイアップを充填し、キャビテイの両側に連結補強部のレイアップを充填した。
【0036】
上記ヨーク成形用金型を150℃に昇温し、キャビテイ内に溶融したナイロンモノマー(宇部興産製UX−75)を注入した。該ナイロンモノマーは溶融温度は90℃で、触媒を含むA液と開始剤を含むB液を1:1の割合で混合して、注入した。注入圧は5kgf/cm3に制御して、3分間保持した後に離型した。
【0037】
ヨークとなる成形品は図2乃至図4に示す形状とし、厚み24mm、幅13〜15mmの断面形状を持ち、打球面積(フェース面積)を110インチとしたラケットフレームの左右枠部間を連結するヨークの長さに相当する長さとした。このヨークとなる成型品の重量を48g、フレーム本体と連結する連結補強部の上下方向の長さを90mm、連結補強部のフレーム本体との接触面積を45cm2とした。
【0038】
一方、フレーム本体を構成するため、φ14.5のマンドレルに66ナイロンチューブに被せ、このチューブの外周に、エポキシ樹脂を含浸したカーボン繊維プリプレグ(東レ製、T800、P2053、樹脂含浸量30%)を積層し、鉛直状の積層体を作成した。上記プリプレグの繊維角度を0°(2層)、22°(1層)、30°(2層)、90°(1層)とし、6枚積層して、フレーム本体のレイアップを作成した。
【0039】
ラケットフレーム成形用金型のキャビテイ内に上記フレーム本体のレイアップとヨークのレイアップを充填した。この時、ヨークの連結補強部をフレーム本体のレイアップの内面および前後側面に被せた。かつ、このフレーム本体とヨークの連結部にカーボン繊維プリプレグを15g相当巻き付けて補強した。
【0040】
上記ラケットフレーム成形用金型を150℃に加熱して、40分間保持した後に、離型して、成型品を取り出した。成形品では、フレーム本体とヨークの連結部分では、フレーム本体の左右枠部の一部としてヨークの連結補強部が一体化されて成形されていた。このヨークの連結補強部はフレーム本体の左右枠部と表面が平滑に連続し、段差のない状態として、フレームの左右枠部の一部となるようにした。成形されたラケットフレーム(ローフレーム)は210gであった。
【0041】
(実施例2)
実施例1との相違点は、ヨークを構成するカーボン繊維ブレイドの積層枚数を実施例1より増加して、ヨークの成型品の重量を66gとする一方、フレーム本体のカーボン繊維プリプレグの積層枚数を減少した。成形ローフレームの重量は202gであった。
【0042】
(実施例3)
実施例1との相違点は、ヨークを構成するカーボン繊維ブレイドの積層枚数を実施例1より減少し、ヨークの成型品の重量を34gとする一方、フレーム本体のカーボン繊維プリプレグの積層枚数を増加した。成形ローフレームの重量は203gであった。
【0043】
(実施例4)
実施例1とヨーク成形用金型を変更し、連結補強部がフレーム本体と接触する連結補強部の長さが60mmとなり、フレーム本体との接触面積が18cm2となるものを用いた。他は実施例1と同様とした。ヨークの成形品の重量は45gであり、成形ローフレームの重量は201gであった。
【0044】
上記実施例と比較するため、下記の比較例1〜比較例4のラケットフレームを作成した。
【0045】
(比較例1)
実施例1との相違点は、ヨークを構成するカーボン繊維ブレイドの積層枚数を実施例1より増加して、ヨークの成型品の重量を78gとする一方、フレーム本体のカーボン繊維プリプレグの積層枚数を減少した。成形ローフレームの重量は204gであった。即ち、ヨーク重量はローフレーム重量の38%で、好ましい範囲の35%を越える値とした。
【0046】
(比較例2)
実施例1との相違点は、ヨークを構成するカーボン繊維ブレイドの積層枚数を実施例1より減少して、ヨークの成型品の重量を26gとする一方、フレーム本体のカーボン繊維プリプレグの積層枚数を増加した。成形ローフレームの重量は202gであった。即ち、ヨーク重量はローフレーム重量の12%で、好ましい範囲の15%未満とした。
【0047】
(比較例3)
実施例1とヨーク成形用金型を変更し、連結補強部がフレーム本体と接触する連結補強部の長さが46mmとなり、フレーム本体との接触面積が13cm2となるものを用いた。他は実施例1と同様とした。ヨークの成形品の重量は43gであり、成形ローフレームの重量は202gであった。即ち、連結補強部の長さを好ましい範囲の50mmより小さくし、且つ、接触面積を好ましい範囲の15cm2より小さくした。
【0048】
(比較例4)
ラケットフレーム成形用金型は実施例1と同一のものを用いた。ヨークの材料は従来の一般的なものとし、未発泡ポリスチレンを66ナイロンチューブに挿入して中芯とした。該チューブの外周にフレーム本体と同一材料であるカーボン繊維プリプレグ(東レ製、T800、P2053、熱硬化性樹脂の含浸量30%)を積層し、さらに、フレーム本体と接着させるために、15gのカーボン繊維プリプレグの補強を加えた。ヨークの形状は実施例1と同様として連結補強部を設け、フレーム本体と接触する部分の長さを90mm、接触面積を45cm2とした。即ち、実施例1と形状は同一であるが、ヨークを繊維強化熱硬化性樹脂で成形した。成形したローフレームの重量は200gであった。
【0049】
上記実施例1乃至実施例4、比較例1乃至比較例4のテニスラケットを3本ずつ作成し、夫々ガットを張架した状態で、頂圧強度、面外一次振動減衰率、面内振動減衰率、耐久テストを行った。その結果を、下記の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
頂圧強度の測定は、図5に示すように、ガットを張架したラケットのトップ(12時)を上端として垂直方向に配置し、両側を固定して保持し、上端に50mm/minの速度で荷重を加え、破断時の荷重値を測定した。
【0052】
表1に示すように、実施例1〜実施例4は頂圧強度は119〜107kg/cmで、頂圧強度が大きく、打球を受けるフェース面の面内安定性が優れていることが確認できた。これに対して、フレーム本体のプリプレグ枚数を減少した比較例1は90kg/cmで頂圧強度が低かった。また、ヨークの連結補強部の長さを50mm以下の46mmとし、接触面積が15cm2より小さい13cm2とした比較例3も頂圧強度が90kg/cmで低かった。これら頂圧強度の低い比較例1と比較例3は後述する耐久テストにおいても破損が発生し、強度、耐久性の点で劣ることが確認できた。
【0053】
面外一次振動減衰率の測定は、図6に示すように、ラケットのトップを紐で吊り下げて自由支持し、この状態で、5時の位置の一面に加速度ピックアップ100を取り付け、その裏面からインパクトハンマー101で加振した。インパクトハンマーに取り付けたフォースピックアップで計測した入力振動と加速度ピックアップで計測した応答振動をアンプ102と、103を介して周波数解析装置104により解析した。この解析で周波数領域での伝達関数を求めて、面外一次固有振動数を得た。減衰率は図7から下記の式によって求めた。
【0054】
ζ=(1/2)×(△ω/ωn)
T0=Tn/√2
【0055】
表1に示すように、実施例1〜実施例4の面外一次振動減衰率は0.69〜0.78であった。ヨークの重量がローフレーム重量の15%未満である比較例2は0.48で、振動減衰性が悪かった。また、ヨークのマトリクス樹脂を熱硬化性樹脂とした比較例4も0.36で、振動減衰性が悪かった。
【0056】
面内振動減衰率の測定は、図8に示すように、ラケットフレームのグリップ端を固定して下向きに吊り下げ、3時の位置に加速度ピックアップ100を取りつけ、その裏面からインパクトハンマー101で加振した。インパクトハンマーに取り付けたフォースピックアップで計測した入力振動と加速度ピックアップで計測した応答振動をアンプを介して周波数解析装置により解析した。この解析で周波数領域での伝達関数を求めて、面内固有振動数を得た。減衰率は面外一次固有振動数と同様に図7から上記式によって求めた。
【0057】
表1に示すように、実施例1〜実施例4の面内振動減衰率は0.71〜0.78であった。これに対して比較例2は0.52、比較例4は0.33で面内振動減衰率も悪かった。
【0058】
耐久テストは、ガット張りテンションを、縦糸651b×横糸601bとしたテニスラケットをフリーな状態として、55m/secでボールを衝突させた。ボール衝突位置はヨークより6cm上の位置と、トップしたから6cm下の位置とした。各1000回ボールを衝突させて、破損本数を測定した。
【0059】
表1に示すように、実施例1〜実施例4はいずれも破損しなかった。これに対して、振動減衰率は優れている比較例2はトップの位置で3本のラケットとも破損が生じた。同様に、振動減衰率が優れている比較例4はヨークとフレーム本体との連結部において3本のラケットのうち2本のラケットに損傷が生じた。
【0060】
上記のように、各種のテストにより、ヨークを構成する繊維強化樹脂のマトリクス樹脂を熱可塑性樹脂とすると、面外一次振動および面内振動のいずれに対しても減衰率がよいことが確認できた。また、ヨークに連結補強部を設け、フレーム本体との接触長さを50mm以上、接触面積を15cm2以上とし、かつ、ヨーク重量をローフレーム重量の15%〜35%とすると、強度および耐久性に優れることが確認できた。
【0061】
上記した実施形態および実験例では、ヨーク16に設ける連結補強部21をガット張架部側とスロート部側との上下両側へと延在させ、ヨークを略H形状としているが、第2実施形態の図9(A)に示すように、連結補強部21をガット張架部側の上方へのみ延在させて、ヨーク全体を略U形状としてもよい。あるいは、図9(B)に示すように、連結補強部21をスロート部側へのみ延在させて、略逆U字形状としてもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態は、フレーム本体の左右枠部を連結する部材として1本のヨーク16のみを設けたものであるが、第3実施形態の図10に示すように、ファーストヨーク16にセカンドヨーク16’を設けたものにおいて、該セカンドヨーク16’もファーストヨーク16と同様な連続繊維強化熱可塑性樹脂で成形し、かつ、中央連結部20’の左右両端に連結補強部21’を設け、スロート部の左右枠部に連結補強部21’を接触させて一体的に成形してもよい。
【0063】
なお、ファーストヨークとセカンドヨークの2本のヨークがある場合には、いずれか1本のみを連結繊維強化熱可塑性樹脂で成形して、その両端に連結補強部を設けた構成とし、他の1本は従来と同様な熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂としたものを用いてもよい。さらに、フレーム本体も熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする場合においても、ヨークに連結補強部を設けておくと、フレーム本体との連結強度を高めることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明のラケットは、面外振動および面内振動のいずれにおいても振動の腹となり振幅の大きな位置のヨークを、連続繊維強化熱可塑性樹脂で構成しているため、面外振動減衰率および面内振動減衰率のいずれも大きくでき、振動減衰特性が優れたラケットなる。よって、プレーヤに伝わる不快な振動を抑制でき、打球感を良好とすることができる。
【0065】
しかも、ヨークは連続繊維を用いると共に、フレーム本体との連結部に連結補強部を設けて、フレーム本体の接触長さおよび接触面積を大としているため、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂としながら、強度および剛性を高めることが出来ると共にフレーム本体と強固に連結することができる。このように、強度および剛性を高めることにより打球面の面的安定性を保持でき、ボールのコントロール性を高めることができる。
【0066】
さらに、ヨークのマトリクス樹脂を熱可塑性樹脂とする一方、フレーム本体のマトリクス樹脂を熱硬化性樹脂とすると、フレーム全体の強度および剛性を高めることができ、その結果、強化繊維量を増大させず、軽量化も図ることができる。よって、高強度、高剛性、高振動減衰率を備えながら軽量で操作性のよいラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の第1実施形態のテニスラケットフレームを示す平面図、(B)は要部斜視図である。
【図2】 ヨークを示す斜視図である。
【図3】 上記ヨークの平面図である。
【図4】 上記ヨークの各断面を示し、(A)は図3のA−A線断面図、(B)は図3のB−B線断面図、(C)は図3のC−C線断面図、(D)は図3のD−D線断面図である。
【図5】 頂圧強度の測定方法を示す図面である。
【図6】 面外振動減衰率の測定方法を示す図面である。
【図7】 周波数と伝達関数の関係を示す線図である。
【図8】 面内振動減衰率の測定方法を示す図面である。
【図9】 (A)(B)は第2実施形態を示す概略図である。
【図10】 第3実施形態を示す概略図である。
【図11】 (A)(B)は従来例を示す図面である。
【図12】 (A)(B)は他の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
10 テニスラケット
11 フレーム本体
12 ガット張架部
13 スロート部
16 ヨーク
20 中央連結部
21 連結補強部
Claims (3)
- ラケットのフレーム本体の左右枠部を連結するヨークが、連続繊維を強化繊維とすると共に熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化樹脂からなり、かつ、該ヨークは中空形状の中央連結部の左右両端部に水平断面コ字状の連結補強部を備え、該連結補強部を上記フレーム本体の各左右枠部の内面と前後側に被せてフレーム本体と一体成形することで左右枠部の一部を構成し、
上記連結補強部の連続繊維の長さを50mm〜300mmとすると共に上記フレーム本体の左右枠部との接触面積をそれぞれ15cm2以上150cm2以下、接触長さが50mm以上とし、かつ、上記ヨーク重量をローフレーム重量の15%乃至35%としていることを特徴とするラケット。 - 上記ヨークは熱可塑性樹脂を反応射出成形したものからなる請求項1に記載のラケット。
- 上記フレーム本体とヨークを備えたラケットの面外1次振動減衰率は0.69〜0.79、面内振動減衰率は0.71〜0.77である請求項1または請求項2に記載のラケット。
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