JP3702107B2 - アルカリ蓄電池用焼結式ニッケル電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多孔性ニッケル焼結基板に酸性ニッケル塩を含浸し、ついでアルカリ処理などを行うことにより、焼結基板の細孔中に水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を充填するアルカリ蓄電池用焼結式ニッケル電極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のアルカリ蓄電池用焼結式ニッケル電極の製造方法としては、活物質保持体としての多孔性ニッケル焼結基板を硝酸ニッケルなどの酸性ニッケル塩溶液に浸漬して、多孔性ニッケル焼結基板の細孔中にニッケル塩を含浸した後、含浸されたニッケル塩をアルカリ溶液中で水酸化ニッケルに変化させることで、活物質化させるという活物質充填操作を行って焼結式ニッケル電極を製造する方法がある。この活物質充填操作による多孔性ニッケル焼結基板への活物質の充填量は1回の充填操作では充分な充填量が得られないため、この充填操作を数回繰り返して行うことにより、所望の充填量を充填しなければならない。
【0003】
活物質の充填効率を上げて製造工程を簡略化するために、含浸液として、高濃度で高温の硝酸ニッケル水溶液などの溶融塩含浸液を用いて、少ない含浸回数で、所望の充填量が得られる方法が採用されるようになった。この場合、高濃度で高温の硝酸ニッケル水溶液などの溶融塩含浸液が用いられるため、含浸液の腐食性が強くなり、ニッケル焼結基板が侵食されて、焼結基板を構成するニッケルが溶解し、焼結式ニッケル電極が脆弱化して、充放電のサイクル特性の低下を招くという欠点があった。
【0004】
そこで、ニッケル焼結基板の腐食を防止する方法が特開昭63−48747号公報において提案された。この特開昭63−48747号公報において提案された方法にあっては、多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの混合塩溶液中に浸漬した後、アルカリ処理して水酸化ニッケルと水酸化コバルトとの固溶体層を多孔性ニッケル焼結基板の表面に形成し、ついでこの焼結基板を高濃度で高温の硝酸ニッケル水溶液などの溶融塩含浸液に浸漬した後、アルカリ溶液中で活物質化させるようにしている。これにより、水酸化ニッケルと水酸化コバルトとの固溶体層が溶融塩含浸液に浸漬した際に防食作用をするため、焼結基板を構成するニッケルが溶解することが防止されるようになる。
【0005】
また、従来の硝酸ニッケル塩を含浸した多孔性ニッケル焼結基板をアルカリ溶液中に浸漬して、硝酸ニッケル塩を水酸化ニッケルに変化させて活物質化させた焼結式ニッケル電極においては、ニッケル電極の酸素ガス発生電位とニッケルの酸化還元電位が接近しており、特に、高温においては酸素ガス発生電位が低くなるため、充電の際に、ニッケル活物質の酸化反応と酸素ガス発生反応が競合する。その結果、充電受け入れ性が悪くなるので、電池性能が低下するという問題を生じた。そこで、従来より充電受け入れ性を改善するために、ニッケル電極にコバルトを大量に添加して充電開始電位を下げたり、カドミウムを添加することによって酸素ガス発生電位を上げる方法などが採用されるようになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ニッケル電極にコバルトを添加するとニッケル焼結基板の腐食が防止できるとともに高温での充電受け入れ性が改善される反面、コバルトは高価であるために、添加量が多くなるとニッケル電極のコストが高くなるという問題を生じた。また、ニッケル焼結基板の腐食を防止するために生成させる水酸化コバルトなどの固溶体層は直接電池容量に寄与しないため、水酸化コバルトの生成量はニッケル焼結基板の腐食を防止するために少量に抑える方が望ましい。さらに、充電受け入れ性を改善するために活物質中に添加するコバルト量を多くすると、作動電圧が低下するとともに充放電反応に寄与する水酸化ニッケル活物質の充填量が相対的に減少するため、電極容量が低下するという問題を生じた。
以上のことから、コバルトの添加量は少量に抑える方が望ましく、コバルトの添加量を少量に抑えても、エネルギー密度、高温特性、作動電圧に優れた焼結式ニッケル電極を製造できるようにすることを目的として本発明がなされた。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために、本発明のアルカリ蓄電池用焼結式ニッケル電極の製造方法は、多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬した後、アルカリ処理して、同多孔性ニッケル焼結基板の表面にニッケル・コバルト固溶水酸化物層を形成する第1工程と、ニッケル・コバルト固溶水酸化物層が形成された多孔性ニッケル焼結基板をアルカリ溶液と酸素の存在下で加熱処理する第2工程と、第2工程によりアルカリ溶液と酸素の存在下で加熱処理された多孔性ニッケル焼結基板を高温、高濃度のニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬してアルカリ処理することにより多孔性ニッケル焼結基板の細孔中にコバルトを含む水酸化ニッケルを充填する第3工程とを備え、第1工程において生成するコバルト量を、正極活物質全体に含まれるコバルト量の65重量%以上で85重量%未満になるように規定している。
【0008】
第1工程により、多孔性ニッケル焼結基板の表面にニッケル・コバルト固溶水酸化物層が形成される。第2工程により、このニッケル・コバルト固溶水酸化物層がアルカリ溶液と酸素の存在下で加熱処理されて、高次酸化物層に変化する。このコバルト・ニッケルの高次酸化物層は腐食され難いため、第3工程において、高温、高濃度のニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬しても、安定して多孔性ニッケル焼結基板の腐食および脆弱化を防止することができるようになる。また、この高次酸化物は導電性が良いため、活物質と多孔性ニッケル焼結基板との間の導電性が向上し、活物質利用率および充電効率が向上する。
【0009】
上述した効果は水酸化ニッケル層のみでは全く効果を示さず、水酸化コバルト層のみでは効果が小さく、ニッケルとコバルトの水酸化物の固溶体層において得られる特有な効果である。これは、ニッケルとコバルトの水酸化物の固溶体が有する特有な結晶構造に起因する良好な導電性に基づくものであると考えられる。
【0010】
しかしながら、第1工程において生成されるコバルト量が、活物質全体に含まれる全コバルト量に対して65重量%未満であると、ニッケルとコバルトの水酸化物の固溶体が示していた良好な導電性が得られず、電極容量が低下することとなる。また、第1工程において生成されるコバルト量が、活物質全体に含まれる全コバルト量に対して85重量%以上になると、ニッケルとコバルトの水酸化物の固溶体が示していた良好な導電性は維持されるものの、第3工程において生成されるコバルト量が少なくなるため、即ち、酸化還元反応(充放電反応)に寄与する水酸化ニッケルの結晶中に固溶状態として含有されるコバルト含有量が低下するため、ニッケル電極の酸化電位を十分に卑にすることができず、結果として、ニッケル電極の酸素ガス発生電位とニッケル電極の酸化電位との電位差を大きくすることができず、高温での充電受け入れ性を低下させてしまう。
【0011】
このことから、本発明においては、第1工程において生成するコバルト量を、正極活物質全体に含まれるコバルト量の65重量%以上で85重量%未満の範囲になるように規定している。
【0012】
さらに、正極活物質全体に含まれるコバルト量が正極活物質全体に含まれるニッケル量に対して5重量%未満では、ニッケルとコバルトの水酸化物の固溶体が示していた良好な導電性およびニッケル電極の酸化還元電位の引き下げ効果がともに低下する。これにより、電極容量および高温での充電受け入れ性もともに低下し、電池性能が著しく損なわれる。一方、正極活物質全体に含まれるコバルト量が正極活物質全体に含まれるニッケル量に対して10重量%以上になると、正極活物質中の電池容量に寄与しない成分が増えるため、電極容量が著しく低下して、エネルギー密度の低下をきたすとともに、コバルトのコストに起因する電極のコストの上昇をもたらすこととなる。このことから、正極活物質全体に含まれるコバルト量は、正極活物質全体に含まれるニッケル量に対して5重量%以上で10重量%未満の範囲に規定することが好ましい。
【0013】
なお、本発明において、正極活物質全体に含まれるコバルト量とは、第1工程および第3工程において生成するコバルト量を意味し、正極活物質全体に含まれるニッケル量とは、第1工程および第3工程において生成するニッケル量を意味する。
【0014】
【発明の実施の形態】
1.焼結基板の作製
ニッケル粉末にカルボキシメチルセルロース等の増粘剤および水を混練してスラリーを調整し、このスラリーをニッケル多孔体からなる導電性芯体に塗着する。この後、スラリーを塗着した導電性芯体を還元性雰囲気下で焼結し、多孔度85%のニッケル焼結基板を作製する。
【0015】
2.ニッケル電極の作製
(1)実施例1
a)第1工程
上述のように作製した多孔度85%のニッケル焼結基板を比重1.20の硝酸コバルトと硝酸ニッケルの酸性混合塩水溶液に浸漬した後、80℃で25%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬してニッケル焼結基板の表面に水酸化コバルトと水酸化ニッケルの固溶水酸化物層を生成させる。
【0016】
b)第2工程
このニッケル焼結基板を水酸化ナトリウム水溶液中より引き上げ、水酸化ナトリウム水溶液を除去することなく、90℃で湿度80%の空気雰囲気中で加熱する。これにより、生成さた固溶水酸化物層は高次酸化物層となり、ニッケル焼結基板の表面はニッケルとコバルトの水酸化物の高次酸化物層で覆われることとなる。
【0017】
c)第3工程
ついで、ニッケルとコバルトの高次酸化物層で覆われたニッケル焼結基板を80℃で、比重1.70の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの酸性混合塩水溶液に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に硝酸ニッケルと硝酸コバルトを析出させる。この後、このニッケル焼結基板を25%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に析出させた硝酸ニッケルと硝酸コバルトを水酸化物に置換して活物質化処理する。
【0018】
d)繰り返し工程
ついで、上記の第3工程の処理操作を所定回数(例えば7回)繰り返して、ニッケル焼結基板の細孔内に所定量の活物質が充填された焼結式ニッケル電極を作製した。
【0019】
(コバルト添加量の検討)
ここで、ニッケルとコバルトの高次酸化物層で覆われたニッケル焼結基板を80℃で、比重1.70の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの酸性混合塩水溶液に浸漬するに際して、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを0.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極aとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを1.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極bとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを1.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極cとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを2.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極dとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを5.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極eとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを7.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極fとし、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを10.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて作製された焼結式ニッケル電極を電極gとする。
【0020】
なお、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを0.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して92重量%が生成され、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを1.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して75重量%が生成され、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを1.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して65重量%が生成される。
【0021】
また、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを2.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して54重量%が生成され、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを5.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して35重量%が生成される。
【0022】
さらに、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを7.5重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して29重量%が生成され、硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを10.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いて7回の含浸操作を行うと、第1工程で含浸されたコバルト量は活物質全体に含まれるコバルト量に対して24重量%が生成される。
【0023】
(電極容量の測定)
以上のように作成した焼結式ニッケル電極a〜gと、対極としてのニッケル板と、比重が1.2の水酸化カリウム(KOH)水溶液とを用いて、開放系の試験セルをそれぞれ作成した。
この試験セルを50mAの充電電流で20時間充電した後、500mAの放電電流で、対極のニッケル板に対する電圧が−1.5Vになるまで放電させ、そのときの放電時間から電極容量を求めると下記の表1に示すような結果となった。
【0024】
(充電温度特性の測定)
ついで、これらの焼結式ニッケル電極a〜gを用いて、それらの電極容量の約2倍程度の容量を有する公知の非焼結式カドミウム負極とセパレータとを組み合わせて、それぞれ電極体を形成した後、それぞれの電極体をそれぞれ外装缶内に挿入し、これらに電解液として比重1.25の水酸化カリウム水溶液を注入して、公称容量500mAhのAAサイズのニッケル−カドミウム蓄電池A〜Gを作製した。
【0025】
ここで、焼結式ニッケル電極aを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Aとし、焼結式ニッケル電極bを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Bとし、焼結式ニッケル電極cを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Cとし、焼結式ニッケル電極dを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Dとし、焼結式ニッケル電極eを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Eとし、焼結式ニッケル電極fを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Fとし、焼結式ニッケル電極gを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Gとする。
【0026】
これらの各電池A〜Gを20℃にて0.1C(50mA)の充電電流で16時間充電した後、1C(500mA)の放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させ、このときの放電時間から20℃で充電した場合の放電容量を求めた。一方、これらの各電池A〜Gを40℃にて0.1C(50mA)の充電電流で16時間充電した後、1C(500mA)の放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させ、このときの放電時間から40℃で充電した場合の放電容量を求めた。
【0027】
ついで、上述のようにして求めた20℃で充電した場合の放電容量に対する40℃で充電した場合の放電容量の比率(%)を算出し、これを40℃での充電温度特性(%)とした。これらの結果を表にしてまとめると、以下の表1に示すような結果となった。
【0028】
【表1】
【0029】
そして、正極活物質全体に含まれるコバルト量に対する第1工程で生成されたコバルト量の比率を横軸とし、上述のようにして求めた電極容量(mAh)および40℃での充電温度特性(%)を縦軸にして、上記表1で示した値をプロットしてグラフで表すと、図1に示すような結果となった。なお、図1において、実線は40℃での充電温度特性(%)を表し、破線は電極容量(mAh)を表している。
【0030】
上記表1および図1より明らかなように、40℃での充電温度特性(%)に関しては、第1工程で生成されたコバルト量が活物質全体に含まれるコバルト量に対して85重量%となるまでは緩やかに低下し、85重量%以上になると急激に低下していることが分かる。また、電極容量(mAh)に関しては、第1工程で生成されたコバルト量が活物質全体に含まれるコバルト量に対して65重量%となるまでは著しく増加するが、それ以後は緩やかに増加していることが分かる。
【0031】
これは、第1工程において生成されたコバルト量が正極活物質全体に含まれる全コバルト量に対して65重量%になるまでは、そのコバルトの増加に伴うニッケル焼結基板表面の導電性向上に対する電極容量の増加効果が大きいが、65重量%でほぼ充分な導電性が得られ、それ以上にコバルト量の比率を増加させても、電極容量増加に対して大きな効果が得られなかったためと考えられる。
【0032】
また、第1工程において生成されたコバルト量が正極活物質全体に含まれる全コバルト量に対して85重量%以上になると、ニッケル焼結基板表面の高次酸化物が示す良好な導電性は維持されるものの、第3工程を繰り返すことにより充填された活物質中のコバルト量が減少し、その活物質の酸化還元電位を酸素ガス発生電位よりも十分に卑にすることができないため、40℃での充電温度特性(%)が低下し、即ち、充電受け入れ性が低下して、結果として電極容量が低下したと考えられる。
【0033】
以上のことから、第1工程において生成されたコバルト量が活物質全体に含まれる全コバルト量に対して65重量%以上で85重量%未満とすることにより、コバルト添加量を最小限に抑えても、電池容量を低下させることなく、かつ高温での充電受け入れ性を向上させることができるようになる。
【0034】
(2)実施例2
a)第1工程
上述の実施例1と同様に作製した多孔度85%のニッケル焼結基板を比重1.20の硝酸コバルトと硝酸ニッケルの酸性混合塩水溶液に浸漬した後、80℃で25%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬してニッケル焼結基板の表面に水酸化コバルトと水酸化ニッケルの固溶水酸化物層を生成させる。
【0035】
b)第2工程
このニッケル焼結基板を水酸化ナトリウム水溶液中より引き上げ、水酸化ナトリウム水溶液を除去することなく、90℃で湿度80%の空気雰囲気中で加熱する。これにより、生成さた固溶水酸化物層は高次酸化物層となり、ニッケル焼結基板の表面はニッケルとコバルトの水酸化物の高次酸化物層で覆われることとなる。
【0036】
c)第3工程
ついで、高次酸化物層で覆われたニッケル焼結基板を80℃で、比重1.70の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの酸性混合塩水溶液(この酸性混合塩水溶液としては硝酸ニッケル100重量%に対して硝酸コバルトを2.0重量%含有する酸性混合塩水溶液を用いている)に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に硝酸ニッケルと硝酸コバルトを析出させる。この後、このニッケル焼結基板を25%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に析出させた硝酸ニッケルと硝酸コバルトを水酸化物に置換して活物質化処理する。
【0037】
d)繰り返し工程
ついで、上記の第3工程の処理操作を所定回数(例えば7回)繰り返して、ニッケル焼結基板の細孔内に所定量の活物質が充填された焼結式ニッケル電極を作製した。
【0038】
(ニッケル添加量とコバルト添加量との関係についての検討)
ここで、第1工程と第3工程で用いる酸性混合塩水溶液の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの比率を調整し、第1工程で生成するコバルト量が正極活物質全体に含まれるコバルト量に対して一定の値になるようにして、正極活物質全体に含まれるニッケル量に対する正極活物質全体に含まれるコバルト量の割合が、上記実施例2の場合の0.25倍、0.50倍、0.75倍、1.00倍(実施例2と同様)、1.25倍および1.50倍となった焼結式ニッケル電極を得た。
【0039】
こうして作製した焼結式ニッケル電極のうち、前記割合が0.25倍の焼結式ニッケル電極を電極hとし、0.50倍の焼結式ニッケル電極を電極iとし、0.75倍の焼結式ニッケル電極を電極jとし、1.00倍(実施例2と同様)の焼結式ニッケル電極を電極kとし、1.25倍の焼結式ニッケル電極を電極lとし、1.50倍の焼結式ニッケル電極を電極mとする。なお、上記電極hの正極活物質全体に含まれるコバルト量は正極活物質全体に含まれるニッケル量に対して2.3重量%となる。同様に、電極iは4.6重量%となり、電極jは6.9重量%となり、電極kは9.2重量%となり、電極lは11.5重量%となり、電極mは13.8重量%となる。
【0040】
(電極容量の測定)
以上のように作成した焼結式ニッケル電極h〜mと、対極としてのニッケル板と、比重が1.2の水酸化カリウム(KOH)水溶液とを用いて、開放系の試験セルをそれぞれ作成した。
この試験セルを50mAの充電電流で20時間充電した後、500mAの放電電流で、対極のニッケル板に対する電圧が−1.5Vになるまで放電させ、そのときの放電時間から電極容量を求めると下記の表2に示すような結果となった。
【0041】
(充電温度特性の測定)
ついで、これらの焼結式ニッケル電極h〜mを用いて、それらの電極容量の約2倍程度の容量を有する公知の非焼結式カドミウム負極とセパレータとを組み合わせて、それぞれ電極体を形成した後、それぞれの電極体をそれぞれ外装缶内に挿入し、これらに電解液として比重1.25の水酸化カリウム水溶液を注入して、公称容量500mAhのAAサイズのニッケル−カドミウム蓄電池H〜Mを作製した。
【0042】
ここで、焼結式ニッケル電極hを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Hとし、焼結式ニッケル電極iを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Iとし、焼結式ニッケル電極jを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Jとし、焼結式ニッケル電極kを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Kとし、焼結式ニッケル電極lを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Lとし、焼結式ニッケル電極mを用いたニッケル−カドミウム蓄電池を電池Mとする。
【0043】
これらの各電池H〜Mを20℃にて0.1C(50mA)の充電電流で16時間充電した後、1C(500mA)の放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させ、このときの放電時間から20℃で充電した場合の放電容量を求めた。一方、これらの各電池H〜Mを40℃にて0.1C(50mA)の充電電流で16時間充電した後、1C(500mA)の放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させ、このときの放電時間から40℃で充電した場合の放電容量を求めた。
【0044】
ついで、上述のようにして求めた20℃で充電した場合の放電容量に対する40℃で充電した場合の放電容量の比率(%)を算出し、これを40℃での充電温度特性(%)とした。これらの結果を表にしてまとめると、以下の表2に示すような結果となった。
【0045】
【表2】
【0046】
そして、正極活物質全体に含まれるニッケル量に対する正極活物質全体に含まれるコバルト量の比率(重量%)を横軸とし、上述のようにして求めた電極容量(mAh)および40℃での充電温度特性(%)を縦軸にして、上記表2で示した値をプロットしてグラフで表すと、図2に示すような結果となった。なお、図2において、実線は40℃での充電温度特性(%)を表し、破線は電極容量(mAh)を表している。
【0047】
上記表2および図2より明らかなように、電極容量(mAh)に関しては、活物質全体に含まれる全ニッケル量に対してコバルト量が7重量%になるまでは、ニッケル焼結基板表面の導電性が向上することにより電極容量が増大し、その後は充放電反応に寄与するニッケル量が相対的に減少することにより電極容量が減少していることが分かる。また、活物質全体に含まれる全ニッケル量に対してコバルト量が10重量%以上になると、ニッケル量が減少することに比例して電極容量が減少していることが分かる。このことから、コバルト量を活物質全体に含まれる全ニッケル量に対して10重量%以上に増加させることは、単に電極容量を減少させるだけである。
【0048】
一方、40℃での充電温度特性(%)に関しては、正極活物質全体に含まれる全ニッケル量に対してコバルト量が5重量%までは、著しく増加するがそれ以後は緩やかに増加していることが分かる。これは、コバルト量が増加すると活物質の酸化還元電位が卑になり、酸素ガス発生電位との電位差が増すことにより、コバルト量が5重量%になるまでは、充電受け入れ性、即ち充電温度特性が急激に向上するためと考えられる。また、コバルト量が5重量%に達すると、酸化還元電位が酸素ガス発生電位よりも十分に卑になり、コバルト量増加に伴う充電温度特性の向上も緩やかになったためと考えられる。
【0049】
以上のことから、活物質全体に含まれる全ニッケル量に対して活物質全体に含まれる全コバルト量を5重量%以上で10重量%未満とすることにより、コバルト添加量を最小限に抑えても、電池容量を低下させることなく、かつ高温での充電受け入れ性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1工程で生成されたコバルト量の比率(重量%)と電極容量(mAh)との関係、および第1工程で生成されたコバルト量の比率(重量%)と40℃での充電温度特性(%)との関係を示す図である。
【図2】 活物質全体に含まれるニッケル量1に対する全コバルト量の比率(重量%)と電極容量(mAh)との関係、および活物質全体に含まれるニッケル量1に対する全コバルト量の比率(重量%)と40℃での充電温度特性(%)との関係を示す図である。
Claims (1)
- 多孔性ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬した後にアルカリ処理して、同多孔性ニッケル焼結基板の表面にニッケル・コバルト固溶水酸化物を形成する第1工程と、
この第1工程にてその表面にニッケル・コバルト固溶水酸化物層が形成された前記ニッケル焼結基板をアルカリ溶液と酸素の存在下で加熱処理する第2工程と、
この第2工程にて加熱処理された前記ニッケル焼結基板をニッケルとコバルトの酸性混合塩溶液に浸漬して同ニッケル焼結基板の細孔中にコバルトを含む水酸化ニッケルを充填する第3工程を実施して、
前記第1工程にて生成するコバルト量が正極活物質全体に含まれるコバルト量の65重量%以上で85重量%未満になるように規定すると共に、正極活物質全体に含まれるコバルト量が同正極活物質に含まれるニッケル量に対して5重量%以上で10重量%未満になるように規定したことを特徴とするアルカリ蓄電池用燒結式ニッケル電極の製造方法。
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