JP3695197B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の制動時の車輪ロックを防止するアンチスキッド制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のアンチスキッド制御装置としては、例えば、特開平8−133062号公報に記載されるように、目標車輪速と車輪速度との偏差と、目標車輪加減速度と車輪加減速度との偏差との和に基づいて、制動用シリンダ圧の目標増減圧量を算出し、この目標増減圧量に基づいて制動用シリンダの流体圧、つまり制動圧を増減させることによって、比例・微分制御により、制動圧を制御するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両の走行路面は種々様々であり、一般に悪路と呼ばれる凹凸やうねりの多い路面もある。このような悪路を走行した場合には、車輪のバウンド・リバウンドに伴って車輪速が大きく振幅し且つその周期が短くなるいわゆる脈動が発生しやすい。また、このような状況下では、車輪速の微分値である車輪加減速度も大きく振幅し且つその周期も短くなりやすい。
【0004】
このように車輪加減速度の振幅が変動し且つ周期が短くなると、前述のアンチスキッド制御装置では、比例・微分制御における微分項が大きくなり、この微分項が目標増減圧量を支配するようになるため、車輪速が目標車輪速に達する前に減圧が開始され、これが連続して発生することになって、常に制動圧が減圧気味となり、実質的に制動力が低下し、結果的に制動距離が長じてしまうおそれがある。
【0005】
これを回避するために、例えば、車輪加減速度の振幅が所定値よりも大きくなり且つ短い周期で発生したときには、悪路を走行していると判断し、例えば制動力の低下ゲインを小さくするといった対策を行う等の対処策が考えられている。しかしながら、例えば、砂利道、舗装工事中の凸凹路等の比較的路面摩擦係数の大きな粗い路面を走行していても、車輪加減速度の振幅やその周期によっては、悪路と判断されるまでには至らない場合や悪路であることを検知できず、悪路と判断されない場合がある。そのため、前述したとおり、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * に達する前に制動圧であるホイールシリンダ圧Pi の減圧が開始される状態が発生し、制動圧が減圧気味となるという問題が生じてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、この発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、砂利道等の粗い路面を走行する場合でも充分な減速度を得ることの可能なアンチスキッド制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るアンチスキッド制御装置は、マスタシリンダからのマスタシリンダ圧をもとに制御対象車輪に配設された制動用シリンダの流体圧を制御する制御弁と、前記制御対象車輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、所定の目標車輪速及び前記車輪速検出手段の車輪速検出値とこれらの微分値とに基づいて前記流体圧の目標増減圧量を算出する目標増減圧量算出手段と、前記制動用シリンダの流体圧が前記目標増減圧量だけ変化するように前記制御弁を制御する制御手段と、前記目標車輪速に対する前記車輪速検出値の変化状況をもとに走行路面の路面状況を検出する路面状況検出手段と、当該路面状況検出手段で走行路面が粗い路面であることを検出したとき前記制動用シリンダの流体圧の減圧開始タイミングを遅らせる減圧遅延手段と、を備え、前記路面状況検出手段は、前記車輪速検出値が前記目標車輪速以上の予め設定した早期減圧検出用しきい値を上回る状態で前記流体圧の減圧が開始される早期減圧が、連続して生じたことを検出したときに、前記路面は粗い路面であると判定するようになっていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に係るアンチスキッド制御装置は、前記路面状況検出手段は、前記早期減圧の発生間隔が所定の間隔を越えるときに、前記減圧遅延手段による減圧開始タイミングの遅延を解除するようになっていることを特徴としている。さらに、請求項3に係るアンチスキッド制御装置は、前記減圧遅延手段は、前記車輪速検出値が前記目標車輪速以下の予め設定した減圧開始用しきい値を下回ったときに、前記流体圧の減圧を開始するようになっていることを特徴としている。
【0010】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係るアンチスキッド制御装置は、路面状況検出手段で走行路面が粗い路面であることを検出したときには、減圧遅延手段により制動用シリンダの流体圧の減圧開始タイミングを遅らせるようにしたから、粗い路面を走行しているときに制動用シリンダの流体圧つまり制動圧が減圧気味となることを回避することができ、制動距離の短縮を図ることができる。
【0011】
また、このとき、車輪速検出値が目標車輪速以上の早期減圧検出用しきい値を上回る状態で制動用シリンダの流体圧の減圧が開始される早期減圧が生じたことを連続して検出したときに、走行路面は粗い路面であると判定するようにしたから、粗い路面であることを容易的確に検出することができる。
【0012】
また、請求項2に係るアンチスキッド制御装置は、早期減圧の発生間隔が所定の間隔を越えるときに、減圧遅延手段による減圧開始タイミングの遅延を解除するようにしたから、路面状況の変化を的確に検出し、適切な時期に減圧開始タイミングの遅延を解除することができる。さらに、請求項3に係るアンチスキッド制御装置は、車輪速検出値が目標車輪速以下の減圧開始用しきい値を下回ったときに、制動用シリンダの流体圧の減圧を開始するようにしたから、的確なタイミングで減圧を開始することができ充分な制動力を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明によるアンチスキッド制御装置を適用した車両の概略構成図であり、各車輪1FL〜1RRとブレーキ操作部11との間にアンチスキッド制御装置を配置している。ブレーキ操作部11は、ブレーキペダル11aとペダル11aを踏み込む力を増幅するブースタ11bと、このブースタ11bで増幅された力を受けてブレーキ液を圧縮してブレーキ圧を発生させるマスタシリンダ11cと、ブレーキ液を溜めておくリザーバタンク11dとを備えている。そして、各車輪1FL〜1RRは、それぞれホイールシリンダ2FL〜2RRと、ブレーキディスク3FL〜3RRとを備えている。
【0014】
前記ホイールシリンダ2FL〜2RRの液圧は、従来のアンチスキッド制御装置と同様に、電磁弁であるインレットバルブ12FL〜12RR及びアウトレットバルブ14FL〜14RRによって制御される。そして、減圧により、リザーバ16F及び16Rに溜まったブレーキ液は、モータ18で駆動されるポンプ20F及び20Rによってダンパ室22F及び22Rにくみ上げられ、インレットバルブ12FL〜12RRの上流に戻される。
【0015】
また、電磁弁であるインレットバルブ24F及び24Rを閉じてマスタシリンダ11cとホイールシリンダ2FL〜2RRとの間を遮断すると共に、電磁弁であるアウトレットバルブ26F及び26Rを開いてリザーバタンク11dからブレーキ液をくみ上げることにより、非制動時にホイールシリンダ圧を制御できるようになっている。前記インレットバルブ24F及び24Rと並列にリリーフ弁28F及び28Rが設けられている。
【0016】
そして、前記各インレットバルブ12FL〜12RR及び24F、24Rと、各アウトレットバルブ14FL〜14RR及び26F、26Rとは、コントローラ30により制御されるようになっている。
また、車両の適所には、各車輪の車輪速Vwi (i=FL〜RR)を検出するための車輪速センサ32FL〜32RRと、車両の前後方向及び横方向の加速度XG 及びYG を検出するための加速度センサ34と、車両に発生するヨーレートφ′を検出するためのヨーレートセンサ36と、マスタシリンダ圧PMCを検出するためのマスタシリンダ圧センサ38とが、設けられている。
【0017】
そして、コントローラ30は、前述の各センサからの検出信号を入力すると共に、エンジン制御を行うエンジンコントローラ50からのエンジン駆動トルクTe及び自動変速機を制御する変速機コントローラ52からのギア位置GRを入力し、これら信号をもとにアンチスキッド制御処理を行って前記各インレットバルブ及びアウトレットバルブへの制御信号を出力するマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータから出力される制御信号を前述したような電磁弁等からなるインレットバルブ及びアウトレットバルブのソレノイドへの駆動信号に変換する駆動回路とを備えている。そして、前記マイクロコンピュータは、A/D変換機能等を有する入力インタフェース回路や、D/A変換機能等を有する出力インタフェース回路や、マイクロプロセッサユニットMPU等からなる演算処理装置や、ROM、RAM等からなる記憶装置を備えている。
【0018】
次に、前記コントローラ30内のマイクロコンピュータで実行されるアンチスキッド制御処理について、図2のフローチャートに基づいて説明する。このアンチスキッド制御処理は、所定サンプリング時間毎にタイマ割り込みとして実行され、まず、ステップS1で、前記車輪速センサ32FL〜32RRからの車輪速Vwi (i=FL〜RR)、加速度センサ34からの前後加速度XG 及び横加速度YG 、ヨーレートセンサ36からのヨーレートφ′、マスタシリンダ圧センサ38からのマスタシリンダ圧PMC、エンジンコントローラ50からのエンジン駆動トルクTe及び変速機コントローラ52からのギア位置GRを読み込む。
【0019】
次いで、ステップS2に移行し、車輪加速度Vwi ′(i=FL〜RR)を算出する。ここでは、例えば次式(1)に基づき算出する。
Vwi ′=((Vwi1+Vwi0) − (Vwi4+Vwi3))/2・ΔT)……(1)
なお、式中の添字0〜4は、現在の制御周期の各周期前を表し、例えば添字2は2周期前を表す。また、ΔTは制御周期を表す。
【0020】
次いで、ステップS3に移行し、セレクト車輪速Vfsを算出する。例えば、各輪の車輪速Vwi に、加速時、減速時等に応じてデータ中に含まれるノイズを除去するためにフィルタ処理を行って、より車体速に近い速度Vwfi(i=FL〜RR)を各輪毎に算出し、さらに、制動時、非制動時等の条件により各Vwfiの中から最大のものを選択する等によって、最も車体速に近いセレクト車輪速Vfsを算出する。
【0021】
次いで、ステップS4に移行し、各車輪の輪荷重Wi (i=FL〜RR)を算出する。例えば前後加速度XG 及び横加速度YG をもとに、次式(2)にしたがって算出する。
Wi =Wi0+kx×XG +kyi ×YG ……(2)
なお、式中のWi0は、初期荷重(静的荷重)つまり、車両停止時の重量である。kx及びkyi は、車両のホイールベース、重心高、トレッド、ロール剛性配分によって定められる定数である。
【0022】
なお、この輪荷重Wi は、例えば前回までに算出した車体速の変化量、または、路面摩擦係数μの推定値を用いて算出するようにしてもよく、また、車体速と操舵角、又は車体速とヨーレートφ′、或いは車体速と左右の車輪速差等から横加速度YG を推定するようにしてもよい。
次いで、ステップS5に移行し、推定ホイールシリンダ圧Pi を算出する。具体的には、既にアンチスキッド制御によってホイールシリンダ圧の制御が開始されている場合には、その制御量、すなわちホイールシリンダ増減圧量は、後述のように、マイクロコンピュータ内で把握されていると共に、ホイールシリンダ圧に対する増減圧量(=開弁時間)の増減圧特性が予めわかっているので、例えばアンチスキッド制御が開始されたときのマスタシリンダ圧を初期値として、前回までの制御周期におけるホイールシリンダ増減圧量をもとに追跡すればよい。
【0023】
次いで、ステップS6に移行し、各車輪のスリップ率Si を算出する。これは各車輪について、その車輪速Vwi と車体速VX とをもとに、次式(3)にしたがって算出する。
Si =(Vwi −VX )/VX ……(3)
次いで、ステップS7に移行し、各車輪の路面摩擦係数のピーク値にあるか否か、すなわち各車輪に制動力を加えても、路面にこれを伝達できない状態にあるか否かを判別する。ここでは、ステップS2で算出した車輪加速度Vwi ′とスリップ率Si とをもとに判別する。つまり、車輪の状態が、図3に示すように、スリップ率と車輪加速度の絶対値との対応を表す特性図の中の所定の領域(図の斜線の領域)に入っていれば、路面摩擦係数のピークにあると判断する。ここでは、判断のためのしきい値をアンチスキッド制御の制御開始判断と同じ値に設定する。また、一度アンチスキッド制御が作動した後は、後述する例外的な制御が行われていない場合には、車輪が上記領域から外れても、路面摩擦係数のピークにあるとの判断を継続する。さらに、車輪がアンチスキッド制御されている状態であっても、左右(又は前後)輪の同期制御(いわゆるセレクトロー制御)や制御初期における緩増圧制御(いわゆるヨーモーメント制御)等の例外的な制御が行われている場合には、これらの制御によってスリップ率は充分大きな値とはならないため、車輪は路面摩擦係数のピークにはないと判断する。
【0024】
次いで、ステップS8に移行し、前記ステップS7において、路面摩擦係数のピークにあると判断された車輪について、路面摩擦係数μi を推定する。ここでは、例えば、ステップS2で算出した各車輪の車輪加速度Vwi ′と、ステップS4で算出した各車輪の輪荷重Wi と、ステップS5で推定した推定ホイールシリンダ圧Pi とをもとに車輪の回転運動の方程式により算出し、さらに駆動輪については、これらとエンジン駆動トルクTe及びギヤ位置GRとを用いて、車輪の回転運動の方程式により、次式(4)及び(5)にしたがって路面摩擦係数μi を算出する。
【0025】
非駆動輪:
μi =(I×Vwi ′+K×Pi ×R)/(Wi ×R2 ) ……(4)
駆動輪:
μi =(I×Vwi ′+K×Pi ×R−k×Te)/(Wi ×R2 )……(5)
ただし、Iはタイヤの慣性質量、Kはブレーキ諸元(パッドの摩擦係数、ホイールシリンダ面積、ホイールシリンダ有効径)により決まる定数、Rはタイヤ有効径、kはギヤ位置GRに応じたミッションギヤ比とディファレンシャルギヤの最終ギヤ比に応じて決まる定数、である。
【0026】
次いで、ステップS9に移行し、各輪の路面摩擦係数μi を用いて車体速の変化量VX ′を算出する。ここでは、路面摩擦係数のピークにあると判断された車輪の路面摩擦係数μの平均値と、後述する車体速変化量の補正量ΔVX ′とから、次式(6)にしたがって算出する。
VX ′=Σμi /m+ΔVX ′ ……(6)
なお、式中のmは路面摩擦係数のピークにあると判断された車輪の数、車体速変化量の補正量ΔVX ′は、一定値(例えば0.1gとする(gは重力加速度))である。この補正量ΔVX ′は、車体速VX の推定誤差を検出するようにし、実際の車体速よりも車体速VX が大きいと判断されるときには、補正量ΔVX ′を大きくする等の変数としてもよい。また、路面摩擦係数μの平均値Σμi /mには、車両に生じ得る加速度として、例えば最大値として1.3g、最小値として0.05g(gは重力加速度)の制限を設けておく。また、路面摩擦係数のピークにあると判断された車輪がない場合には、全ての車輪がピークに達しておらず、アンチスキッド制御も行われていない状態であるため、VX ′=1.3gとする。
【0027】
なお、車体速の変化量VX ′は、各車輪の路面摩擦係数μi の単なる平均値ではなく、各車輪の輪荷重配分に応じた重みを乗じて算出してもよい。すなわち、ステップS7で前輪が路面摩擦係数のピークにあると判断されている場合には次式(7)により車体速の変化量VX ′を算出してもよい。
VX ′=Σ(μi ×(Wi /W)) ……(7)
なお、式中のWは車両の重量である。また、何れかの車輪が路面摩擦係数のピークにあると判断されていない場合には、例えば、ピークにあると判断されている左右反対側の車輪のμi の値を用いるか、最大のμi の値を用いる等して、前記(7)式にしたがってVX ′を算出する。
【0028】
次いで、ステップS10に移行し、車両の横方向速度Vy を算出する。ここでは、横方向加速度YG 、ヨーレートφ′及び車体速VX (ただし前制御周期での値)を用い、次式(8)にしたがって積分計算を行って算出する。
Vy (n)=Vy (n−1)+ΔVy ×ΔT ……(8)
ΔVy =YG (n)−φ′(n)×VX (n−1)
なお、式中のΔTは制御周期を表す。また、nは今回の制御周期、n−1は前回の制御周期をそれぞれ表す。ここでは、各センサからの信号に基づき積分計算を行って車両の横方向速度Vy を算出しているが、コントローラに、例えば操舵角とヨーレートとの関係等の車両モデルを記憶させておき、車体速VX 及び操舵角δ等から車両の横滑り角βを推定し、このβとVX との積を横方向速度Vy とするようにしてもよい。
【0029】
次いで、ステップS11に移行し、車体速VX を算出する。ここでは、アンチスキッド制御が行われている場合つまり路面摩擦係数がピークとなっていると判断される車輪がある場合には、前回の制御周期での車体速VX (n−1)がセレクト車輪速Vfs以上であるとき(VX (n−1)≧Vfs)には、車両が減速中であると判断し、次式(9)にしたがって車体速VX (n)を算出し、前回の制御周期での車体速VX (n−1)がセレクト車輪速Vfsより小さいとき(VX (n−1)<Vfs)には、車両が加速中であると判断し、次式(10)にしたがって車体速VX を算出する。また、アンチスキッド制御が行われていない場合、つまり路面摩擦係数がピークとなっていると判断される車輪がないときには、セレクト車輪速Vfsを車体速VX (n)とする。
【0030】
VX (n)=VX (n−1)−VX ′−Vh ……(9)
VX (n)=VX (n−1)+5.0g ……(10)
なお、式中のVX ′はステップS9で算出した車体速の変化量、Vh は、ステップS10で算出した横方向速度Vy とヨーレートφ′との積からなる旋回補正量である。
【0031】
次いで、ステップS12に移行し、目標スリップ率S* i を算出する。ここでは、乾燥した路面では、目標スリップ率S* i を所定値S* 0 (例えばS* 0 =0.15)とし、例えば図4に示すように、ステップS8で算出した路面摩擦係数μi に応じて設定する。なお、前後輪で異なる値をとるようにしてもよく、車両の旋回状態により目標スリップ率S* i を変更するようにしてもよい。また、路面摩擦係数μi や旋回状態に係わらず目標スリップ率S* i を一定値とするようにしてもよい。
【0032】
次いでステップS13に移行し、ステップS11で算出した車体速VX とステップS12で算出した目標スリップ率S* i とをもとに次式(11)にしたがって目標車輪速Vwi * を算出する。
Vwi * =VX ×(1−S* i ) ……(11)
次いで、ステップS14に移行し、目標車輪速Vwi * 及び車輪速Vwi をもとに次式(12)にしたがって目標増減圧量ΔP0iを算出する。
【0033】
ΔP0i=kP ×ε+kD ×(dε/dt) ……(12)
ε=Vwi * −Vwi
なお、式中、右辺第1項が比例制御項であり、右辺第2項が微分制御項であり、kP は比例ゲイン、kD は微分ゲインである。これら比例ゲインkP 及び微分ゲインkD は、路面摩擦係数μや車体速等に応じて変更されるようになっている。
【0034】
次いで、ステップS15に移行し、図5に示す減圧制限処理を実行する。
この減圧制限処理では、まず、ステップS20で、後述するABSフラグが“1”であるか否かを判定する。そして、ABSフラグが“1”でなければ、そのまま図2のステップS16に移行する。ABSフラグが“1”であるときには、ステップS21に移行し、ホイールシリンダ圧を減圧させる状態に移行する減圧開始時点であるかどうかを判定する。これは例えば、前回の制御周期で設定した増減圧指令値ΔPi * (n−1)が零を含む正値であり、且つステップS14で算出した今回の制御周期における目標増減圧量ΔP0i(n)が負値であるかにより判定する。そして、減圧開始でないとき、すなわち、継続して減圧を行う場合、或いは増圧又は圧力保持を行う場合にはステップS22に移行し、ステップS14で算出した目標増減圧量ΔP0i(n)を増減圧指令値ΔPi * として設定し、図2のステップS16に移行する。
【0035】
一方、ステップS21で、ホイールシリンダ圧を減圧する状態に移行する減圧開始であると判断されたときには、ステップS23に移行し、後述の早期カウンタが“2”であるかどうかを判定する。そして、早期カウンタが“2”でないときにはステップS24に移行し、今回の制御周期における目標増減圧量ΔP0i(n)を増減圧指令値ΔPi * として設定し、次いでステップS25に移行し、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っているかどうか、つまり、Vwi * >Vwi であるかどうかを判定する。そして、Vwi * >Vwi であるときには、ステップS26に移行して、早期カウンタを零にリセットした後、図2のステップS16に移行する。一方、ステップS25でVwi * ≦Vwi であるときには、ステップS27に移行し、早期カウンタを“1”だけインクリメントした後、ステップS28に移行する。そして、早期カウンタが“2”であるかどうかを判定し、早期カウンタが“2”であるときにはステップS29に移行し、遅延解除タイマを起動した後、図2のステップS16に移行する。前記ステップS28で早期カウンタが“2”でないときにはそのままステップS16に移行する。
【0036】
前記遅延解除タイマは、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回っている状態で減圧が開始される状態が連続して発生したときの、その減圧開始の間隔を検出するためのものである。また、前記早期カウンタは、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * 以上の状態で減圧が開始された回数をカウントするためのカウンタであり、初期状態では零にリセットされている。
【0037】
一方、前記ステップS23で、早期カウンタが“2”であるときには、ステップS31に移行し、前述の遅延解除タイマがタイムアップしているかどうかを判定する。遅延解除タイマがタイムアップしているときには、ステップS32に移行し、ステップS14で算出した目標増減圧量ΔP0i(n)を増減圧指令値ΔPi * として設定し、次いで、ステップS33に移行して早期カウンタを零にリセットした後、図2のステップS16に移行する。
【0038】
前記ステップS31で、遅延解除タイマがタイムアップしていないときには、ステップS34に移行し、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っているかどうか、つまり、Vwi * >Vwi であるかどうかを判定する。そして、Vwi * >Vwi であるときにはステップS35に移行し、ステップS14で算出した目標増減圧量ΔP0i(n)を増減圧指令値ΔPi * として設定し、次いで、ステップS36で早期カウンタを零にリセットした後、図2のステップS16に移行する。
【0039】
一方、前記ステップS34で、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っていないとき、つまり、Vwi * ≦Vwi であるときにはステップS37に移行し、増減圧指令値ΔPi * =0とした後、図2のステップS16に移行する。
この図2のステップS16では、増減圧指令値ΔPi * に応じたバルブ駆動時間Tpi を算出する。ここでは、前記各電磁弁の上流圧PU 及び下流圧PL と増減圧指令値ΔPi * とをもとに、次の手順でバルブ駆動時間Tpi を算出する。
【0040】
例えば、増圧する場合には、増圧弁(インレットバルブ)を一定時間ΔTp(例えば10msec等)開弁を行った場合のブレーキ液の流量ΔQT は、インレットバルブの上流圧であるマスタシリンダ圧PMCと、下流圧であるホイールシリンダ圧Pi とから次式(13)にしたがって算出される。
ΔQT =k1 ×(PMC−Pi ) ……(13)
なお、式中のk1 は、ブレーキ諸元、液圧特性によって定まる定数である。
【0041】
次に、現在のホイールシリンダ圧Pi に基づいて、図6に示すブレーキ特性図にしたがって、現在のホイールシリンダ液量QPiを算出する。そして、一定時間ΔTpの開弁によるブレーキ液のΔ流量QT と、現在のホイールシリンダ液量QPiとの和から、増圧弁を一定時間ΔTp開弁した後のホイールシリンダ液量QPi+dT を推定する。さらに、この開弁後の推定ホイールシリンダ液量QPi+dT をもとに、図6に示すブレーキ特性図から、一定時間ΔTp後のホイールシリンダ圧Pi+dTを算出する。次いで、この一定時間ΔTp後のホイールシリンダ圧Pi+dTから現在のホイールシリンダ圧Pi を減算して、一定時間ΔTpにおけるホイールシリンダ圧変化量ΔPdTを推定し、この推定値をもとに、増減圧指令値ΔPi * を実現するためのバルブ駆動時間Tpi を次式(14)にしたがって算出する。
【0042】
Tpi =(ΔTp×ΔPi * )/ΔPdT ……(14)
なお、バルブ駆動時間Tpi が5msec以下の時は、各切換弁の開閉が追従しないため、バルブ駆動時間Tpi を“0”に補正する。このため、当該プログラムにおいて所定サンプリング時間毎に算出されるバルブ駆動時間Tpi が5msecを越えたときに切換弁が駆動され液圧が変動する。
【0043】
ここで、マスタシリンダ圧PMCの値として、マスタシリンダ圧センサ38からの値を用いてもよいが、ブレーキ動作開始時間からアンチスキッド制御が開始されるまでの時間を用いて簡易に推定する等により求めてもよい。また、現在のホイールシリンダ圧Pi は、前回の制御周期までのバルブ駆動時間Tpi により上記の手順の逆の演算を行って算出する。つまり、まず、前回の制御周期におけるバルブ駆動時間Tpi (n−1)と、一定時間ΔTpにおけるホイールシリンダ圧変化量ΔPdTとに基づき、次式(15)にしたがって前回の制御周期からの液圧変化量ΔPi を算出する。
【0044】
ΔPi =(Tpi (n−1)×ΔPdT)/ΔTp ……(15)
そして、この液圧変化量ΔPi を前回の制御周期におけるホイールシリンダ圧Pi (n−1)に加算して、現在のホイールシリンダ圧Pi (n)を算出する。以上の手順は増圧を行う場合を示したものであるが、減圧時には、減圧弁(アウトレットバルブ)の上流圧をホイールシリンダ圧Pi 、下流圧を大気圧(=0)として同様の手順で算出すればよい。
【0045】
なお、図2のフローチャートには示さないが、アンチスキッド制御処理によってホイールシリンダ圧が制御されていないときつまりABS非制御時に、前記式(12)で算出される目標増減圧量ΔP0iが最初に減圧つまり負値となると、ABSフラグを“1”に設定し、アンチスキッド制御処理によるホイールシリンダ圧の制御が開始されるABS制御開始とする。そして、ABSフラグが“1”のときに、目標増減圧量ΔP0iが所定時間(例えば、50msec)連続して増圧状態が続くと、ABSフラグを“0”にリセットし、ABS制御終了とする。
【0046】
前記ABSフラグが“0”のときには、各インレットバルブ12FL〜12RR及び24F、24R及び各アウトレットバルブ14FL〜14RR及び26F、26Rへの制御電流は零として、マスタシリンダ圧をそのままホイールシリンダ2FL〜2RRへ供給するようにし、ABSフラグが“1”のときには、前記式(14)で算出されるバルブ駆動時間Tpi に基づいて各バルブを駆動する。この間モータ18を駆動し、リザーバ16F及び16Rに溜まったブレーキ液をインレットバルブ12FL〜12RRの上流に戻すようにしている。
【0047】
次いで、ステップS17に移行し、算出した駆動時間Tpi にしたがって、各切換弁を制御するためのバルブ駆動信号を生成し、これを駆動回路を介して出力する。そして、図示しないメインプログラムに復帰する。
ここで、インレットバルブ12FL〜12RR、24F及び24R、及びアウトレットバルブ14FL〜14RR、26F及び26Rが制御弁に対応し、車輪速センサ32FL〜32RRが車輪速検出手段に対応し、図2のステップS14の処理が目標増減圧量算出手段に対応し、図2のステップS16及びS17の処理が制御手段に対応し、図5のステップS25〜S29で早期カウンタをカウントアップする処理及びステップS23で早期カウンタがカウントアップしたかどうかを判定する処理が路面状況検出手段に対応し、図5のステップS34及びS37で、早期カウンタが“2”であり且つ車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回るときに、増減圧指令値をΔPi * =0とする処理が減圧遅延手段に対応している。
【0048】
次に、上記実施の形態の動作を説明する。
今、車両が定速走行している状態から、運転者が車両を停止、或いは減速させるべく、時点t1 でブレーキペダル11aを踏み込むと、マスタシリンダ11cによって生じたブレーキ液の圧力が各ホイールシリンダ2FL〜2RRに伝達され、ホイールシリンダ圧の上昇と共にこの圧力がブレーキディスク3FL〜3RRに作用し、図7に実線で示すように車輪速Vwi が減少する。また、これと共に、図7に一点鎖線で示すように車体速VX が減少し、制動状態となる。
【0049】
コントローラ30では、図2に示すアンチスキッド制御処理を所定の割り込みタイミングで実行し、目標車輪速Vwi * と車輪速Vwi とをもとに、前記式(12)にしたがって目標増減圧量ΔP0iを算出しこれをもとに増減圧指令値ΔPi * を設定し、これに応じたバルブ駆動時間Tpi にしたがってインレットバルブ12i及びアウトレットバルブ14iを駆動し、ホイールシリンダ圧を制御する。すなわち、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回ろうとすると、インレットバルブ12iを閉じると共に、アウトレットバルブ14iを開いてホイールシリンダ圧を減少させて車輪速を上昇させ、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回ろうとすると、車輪速Vwi を減少させるべく、インレットバルブ12iを開き、アウトレットバルブ14iを閉じてホイールシリンダ圧を上昇させる。
【0050】
このとき、コントーラ30では、ホイールシリンダ圧を減圧する際の減圧開始タイミングにおける、車輪速Vwi と目標車輪速Vwi * との関係を監視している。そして、目標増減圧量ΔP0iを算出したときには(ステップS14)、時点t1 では、減圧状態ではないため、ABSフラグは“0”であるから(ステップS20)、減圧制限は行われない。
【0051】
そして、時点t2 で、目標増減圧量ΔP0iを算出したときに、これが負の値となったときにはABS制御開始であると判断され、ABSフラグが“1”となり、ホイールシリンダ2FL〜2RRとマスタシリンダ11cとの間が遮断される。このとき、前記式(14)で算出されるホイールシリンダ圧増減のためのバルブ駆動時間Tpi は5msec以上にはならないため“0”に補正され、減圧はされない。
【0052】
そして、時点t3 でバルブ駆動時間Tpi が5msec以上となると、減圧が開始される。このとき、早期カウンタは零であるから、ステップS21からS23を経てステップS24に移行し、目標増減圧量ΔP0iを増減圧指令値ΔPi * として設定する。このとき、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っている場合には、早期カウンタの更新は行わなず、目標増減圧量ΔP0iにしたがって各バルブを制御し、ホイールシリンダ圧を増圧させる。
【0053】
これにより、車輪速Vwi が回復し、以後目標増減圧量ΔP0iに基づく増減圧指令値ΔPi * にしたがって減圧、保持、増圧が行われる。つまり、時点t4 でホイールシリンダ圧を減圧するバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以下となると、ホイールシリンダ圧は保持され、時点t5 でホイールシリンダ圧を増圧するバルブ駆動増圧時間Tpi が5msec以上となると、ホイールシリンダ圧は増圧される。
【0054】
そして、時点t6 で再び保持された後、時点t7 で目標増減圧量ΔP0iを算出したときに、バルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上の値となると、ステップS21からS23を経てステップS24に移行し、目標増減圧量ΔP0iを増減圧指令値ΔPi * として設定する。このとき、車輪速Vwi は目標車輪速Vwi * を上回っているから、ステップS25からステップS26に移行し、早期カウンタを“1”にカウントアップした後、上記と同様にして、目標増減圧量ΔP0iに基づく増減圧指令値ΔPi * にしたがって各バルブを制御する。
【0055】
そして、時点t8 で目標増減圧量ΔP0iを算出したときに、再びバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上の値となると、ステップS21からS23を経てステップS24に移行し、目標増減圧量ΔP0iを増減圧指令値ΔPi * として設定し、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回っているから、ステップS27で、早期カウンタをカウントアップし、早期カウンタは“2”となる。よって、ステップS28からステップS29に移行して、遅延解除タイマを起動する。
【0056】
そして、時点t9 で目標増減圧量ΔP0iを算出したときに、このバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上となると、ステップS21からS23に移行するが、このとき、早期カウンタは“2”であるから、ステップS31に移行する。そして、遅延解除タイマがタイムアップしていないものとするとステップS34に移行し、このとき、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回っているから、ステップS37に移行して、増減圧指令値ΔPi * として零を設定する。よってホイールシリンダ圧は引き続き保持状態となる。
【0057】
そして、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回っている間は、ステップS21からS23、S31、S34を経てステップS37に移行し、増減圧指令値ΔPi * として零が設定され、ホイールシリンダ圧は保持状態となる。
そして、時点t10で車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回ると、ステップS34からステップS35に移行し、目標増減圧量ΔP0iが増減圧指令値ΔPi * として設定され、早期カウンタが零にリセットされる。よって、この時点でホイールシリンダ圧の減圧が開始される。
【0058】
そして、時点t11で、目標増減圧量ΔP0iに基づくバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上となると、上記と同様に処理が行われて早期カウンタが“1”に更新され、次に、時点t12で目標増減圧量ΔP0iに基づくバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上となると早期カウンタが“2”に更新される。そして、遅延解除タイマが起動される。
【0059】
そして、次に時点t13で目標増減圧量ΔP0iに基づくバルブ駆動減圧時間Tpi が5msec以上となると、ステップS21からS23を経てステップS31に移行し、このとき、遅延解除タイマがタイムアップされていると、ステップS31からステップS32に移行し、目標増減圧量ΔP0iを増減圧指令値ΔPi * として設定し、早期カウンタを零にリセットする。よって、この時点t13で目標増減圧量ΔP0iに基づいてホイールシリンダ圧の制御が行われる。
【0060】
したがって、例えば砂利道等の粗い路面を走行した場合、車輪加速度Vw′の変動が大きくなり目標増減圧量ΔP0iを算出した場合に、微分制御項が支配的となり、時点t7 ,t8 ,t11,t12に示すように、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回った状態で減圧が開始され、その結果制動力不足気味となり制動距離が長くなるおそれがある。上記実施の形態では、時点t7 及びt8 に示すように車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回った状態での減圧開始が、2回連続して行われると、次の減圧開始を、車輪速Vwi が目標車輪速Vw* を下回るまで行わない、つまり、計算上は時点t9 で減圧を開始するものを、時点t10まで行わないようにしたから、制動力不足気味となることを回避することができ、制動距離が長くなることを回避することができる。
【0061】
また、時点t11、時点t12に示すように、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回った状態での減圧開始が2回連続して行われたときには、2回目の減圧開始のタイミングつまり時点t12で遅延解除タイマを起動し、次の減圧開始タイミングつまり時点t13で、遅延解除タイマがカウントアップしているときには、その時点で減圧を開始するようにしている。よって、粗い路面を走行した場合には、通常の平坦路等を走行する場合に比較して、車輪速及び車輪加減速度の振幅の周期が短くなるから、遅延解除タイマのタイムアップ時間を、通常路面を走行しているとみなすことの可能な時間に設定しておけば、粗い路面から通常路面に移行した場合等、車両の制動状態に適した真のタイミングで減速開始が行われる場合には、この時点で減圧を開始することができ、路面状況に応じて的確なタイミングで減圧を開始することができる。
【0062】
また、粗い路面から真の悪路に移行した場合、減圧開始タイミングを遅らせて車輪速を充分減速させた状態からその後減圧を開始したときには、悪路を走行しているため車輪速の回復が早くなり、車輪速の変動が大きくなりこれに伴い車輪加減速度の変動が大きくなる。よって、例えば車輪加減速度がしきい値を越えたときに悪路と判断するようにしておけば、この時点で悪路を走行していると判断することができ、粗い路面走行時の制御に替えて、例えば悪路走行時の制御を実行することにより、粗い路面から悪路に移行した場合でも制動距離を確保することができる。
【0063】
なお、上記実施の形態においては、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回った状態で、3回連続して減圧が開始されるときには、3回目の減圧開始タイミングを遅らせるようにした場合について説明したが、連続回数は3回に限るものではなく、例えば2回連続した場合に、2回目の減圧開始タイミングを遅らせるようにしてもよく、任意に設定することができる。
【0064】
また、この連続回数を、例えば走行状態に応じて変更するようにしてもよい。つまり、路面摩擦係数μが高いほど、粗い路面での制動力の低下によるデメリットが大きくなり、すなわち、減圧開始タイミングを遅らせることにより得られる効果が大きくなるから、例えば路面摩擦係数μが高い場合には連続回数を2回、路面摩擦係数μが低い場合には連続回数を3回として設定するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態においては、計算上の減圧開始タイミングに、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っていないときに早期カウンタをカウントアップするようにした場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、車輪速Vwi と目標車輪速Vwi * との相対関係は、コントローラ30の処理能力或いは車両諸元、タイヤ諸元等によって変わってくるから、車輪速Vwi と目標車輪速Vwi * との差があるしきい値以上のときにカウントアップするようにし、このしきい値を、前記処理能力或いは車両諸元、タイヤ諸元等に基づいて設定するようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、上述の方法に比較して演算処理が複雑になるが、車輪速Vwi の振幅の低い方の極値を検出し、この極値が、継続して目標車輪速Vwi * を上回る回数をカウントするようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態においては、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を下回っていない状態で減圧が開始される回数をもとに、走行路面が粗い路面であるかどうかを検出するようにした場合について説明したが、これに限らず、例えば、車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回った状態の継続時間が、平坦路等の通常路面を走行時において車輪速Vwi が目標車輪速Vwi * を上回る継続時間に基づくしきい値を越えたときに、粗い路面を走行しているものと判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のコントローラにおけるアンチスキッド制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】スリップ率と車輪加速度との関係を表す特性図である。
【図4】路面摩擦係数と目標スリップ率の関係を表す説明図である。
【図5】図2のステップS15における減圧制限処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】ホイールシリンダ圧とホイールシリンダ液量との対応を表すブレーキ特性図である。
【図7】本発明の動作説明に供する説明図である。
【符号の説明】
1FL〜1RR 車輪
2FL〜2RR ホイールシリンダ
11a ブレーキペダル
11c マスタシリンダ
30 コントローラ
32FL〜32RR 車輪速センサ
34 加速度センサ
36 ヨーレートセンサ
38 マスタシリンダ圧センサ
Claims (3)
- マスタシリンダからのマスタシリンダ圧をもとに制御対象車輪に配設された制動用シリンダの流体圧を制御する制御弁と、
前記制御対象車輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、
所定の目標車輪速及び前記車輪速検出手段の車輪速検出値とこれらの微分値とに基づいて前記流体圧の目標増減圧量を算出する目標増減圧量算出手段と、
前記制動用シリンダの流体圧が前記目標増減圧量だけ変化するように前記制御弁を制御する制御手段と、
前記目標車輪速に対する前記車輪速検出値の変化状況をもとに走行路面の路面状況を検出する路面状況検出手段と、
当該路面状況検出手段で走行路面が粗い路面であることを検出したとき前記制動用シリンダの流体圧の減圧開始タイミングを遅らせる減圧遅延手段と、を備え、
前記路面状況検出手段は、前記車輪速検出値が前記目標車輪速以上の予め設定した早期減圧検出用しきい値を上回る状態で前記流体圧の減圧が開始される早期減圧が、連続して生じたことを検出したときに、前記路面は粗い路面であると判定するようになっていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。 - 前記路面状況検出手段は、前記早期減圧の発生間隔が所定の間隔を越えるときに、前記減圧遅延手段による減圧開始タイミングの遅延を解除するようになっていることを特徴とする請求項1記載のアンチスキッド制御装置。
- 前記減圧遅延手段は、前記車輪速検出値が前記目標車輪速以下の予め設定した減圧開始用しきい値を下回ったときに、前記流体圧の減圧を開始するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアンチスキッド制御装置。
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