JP3692517B2 - 易剥離性フィルム及び可撓性容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐高圧蒸気滅菌性、透明性、柔軟性、剥離性などに優れた易剥離性フィルム及び可撓性容器、特に易剥離性を有するポリオレフィン系樹脂を主体とした多層成形品に関する。
なお本明細書において、易剥離性とは、二つの部材を相対的に高温で熱溶着することによる実質的に剥離開封できない強シール部と、二つの部材を相対的に低温で熱溶着することによる(以下低温溶着という)容易に剥離できる弱シール部とを、一種類の材料から選択的に形成できる性質をいう。
【0002】
【従来の技術】
従来、低温溶着により容易に剥離できる接着面を形成することで開封を容易にした蓋材および包装材や、容易に剥離できる隔壁によって区画された医療用複室容器が採用されている。
医療用複室容器は、混合した状態では変質などにより保存性が悪くなる薬剤や薬液を、使用直前に無菌混合するなどの用途に使われている。これは、容易に剥離可能な隔壁によって区画される複数の室に内容物を別々に保存しておき、使用直前に容器を手で圧縮して隔壁を剥離させ、複数の室を連通させて内容物を無菌混合させるというものである。
この複室容器は易剥離性を有する単層フィルム、あるいは易剥離性を有するフィルムが最内層になるように積層した多層フィルムから形成される。まず、フィルムの沿部を相対的に高温で強固にシールし、形成された容器の外側から加熱金型で相対的に低温で溶着して、容易に剥離可能な隔壁を形成することにより複数の室に区画する。なお、複室容器が易剥離性を有しない樹脂から形成された容器の場合、複室容器の易剥離性隔壁は易剥離性フィルム(通常、容器を形成しているフィルムに使われている樹脂と、これと非相溶である樹脂との混合物から形成されたものが採用される)を隔壁部に挿入して熱溶着することによって形成することができる。
【0003】
医療用容器に用いられる易剥離性フィルムは医療安全性、廃棄性に加え、耐熱性、透明性、柔軟性、耐衝撃性のいずれをも満足し得るものでなければならず、これまでに数多くの提案がなされている。
例えば特開平7−136234号公報や特開平8−131515号公報などには、ポリプロピレン系ポリマーとエチレン・α−オレフィン系エラストマーとの混合物からなる易剥離性フィルムが開示されている。また、特開平8−229099号公報や特開平8−229100号公報などには、主成分であるポリプロピレン系ポリマーやポリエチレン系ポリマーと、スチレン系エラストマーとの混合物からなるフィルムが開示されている。しかしこれらのフィルムはエラストマー成分の耐熱性が悪く、形成された隔壁の剥離強度の変化やばらつきが増大するため、115 ℃以下でしか高圧蒸気滅菌を行うことができない。
一方、特公平7−96283号公報にはポリオレフィン系樹脂と耐熱性に優れたポリメチルペンテン系樹脂など非相溶性樹脂との樹脂組成物から形成された易剥離性フィルムが開示されている。しかし非相溶性樹脂の配合量が多い場合は透明性、柔軟性が悪くなり医療用容器としては不適切となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、透明性、柔軟性に優れ、より高温の滅菌雰囲気でも剥離強度が変化しない易剥離性フィルム及び可撓性容器を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために、種々鋭意検討したところ、特定組成を有する環状オレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合物を使用することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明はポリオレフィン系樹脂(A)と、鎖状共役ジエンブロック含有量が30〜70重量%である環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の水素化体(B)を、A/Bの重量比が50/50〜90/10の範囲になるように混合した樹脂を用いて成形されたことを特徴とする易剥離性フィルム及び可撓性容器である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂とは、プロピレン、エチレン、ブテンなど結晶性オレフィン成分を含む樹脂であり、耐熱性や柔軟性、透明性など、製品の要求性能に応じて選択して使用できる。これらは単独で用いても良いし、結晶性、非結晶性、エラストマーを問わず、複数のポリオレフィン系樹脂との混合物であっても良い。組み合わせた樹脂は、変形やブロッキングなどを起こさずに高圧蒸気滅菌に耐える耐熱性が必要であるため、ビカット軟化点が100 ℃以上、好ましくは110 ℃以上、更に好ましくは120 ℃以上であることが望ましい。
該樹脂の具体例としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどのホモポリプロピレンを含むポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィン成分を一種類以上有するプロピレン・α−オレフィン系共重合体やエチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・アクリル酸系共重合体、環状ポリオレフィン系樹脂等があげられる。また、これらの中から2種以上組み合わせたブレンド物であっても良い。好ましいのは、ポリプロピレン系樹脂やプロピレン・α−オレフィン系共重合体を含んだ組み合わせである。
【0008】
本発明において、環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体とは、環状共役ジエンから構成されるブロック単位数が2個、鎖状共役ジエンから構成されるブロック単位数が1個の共重合体である。さらに、該共重合体の数平均分子量は10,000〜5,000,000 、好ましくは15,000〜5,000,000 、さらに好ましくは20,000〜3,000,000 である。数平均分子量が10,000未満であると、著しく脆弱な固体もしくは粘稠な液体になる。また数平均分子量が5,000,000 を越えると、溶融粘度が著しく高くなり、成形が困難となる。数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)から求めた分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.01〜10の範囲であり、好ましくは1.05〜5.0 の範囲である。
【0009】
本発明において、環状共役ジエン単量体としては、炭素−炭素結合により構成される5〜8員環の環状共役ジエン系単量体を含む。例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエンなどである。特に安定な6員環の環状共役ジエン系単量体が好ましく、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどが例示される。中でも特に好ましいのは1,3−シクロヘキサジエンである。
また、鎖状共役ジエン単量体としては、炭素数3以上の鎖状共役ジエン化合物、例えばイソプレン、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが例示される。好ましいのはイソプレン、1,3−ブタジエンで、特に好ましいのは1,3−ブタジエンである。
重合体の結合は何れのジエン部分でも良い。例えば1,3−ブタジエンの場合、1,2−結合及び1,4−結合の比率を、重合体の反応条件によって任意に変えることが可能である。
【0010】
環状共役ジエンブロックとは、環状共役ジエン単量体をビニル重合した重合体の構造単位を意味し、例えば、2つの1,3−シクロヘキサジエンの炭素が1,2−結合または1,4−結合された分子構造を有するものがある。
鎖状共役ジエンブロックとは、環状共役ジエン単量体をビニル重合した重合体の構造単位を意味し、例えば、ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレンなどがある。重合体の結合は何れのジエン部分でも良い。例えば1,3−ブタジエンの場合、1,2−結合及び1,4−結合の比率を、重合体の反応条件によって任意に変えることが可能である。
該三元ブロック共重合体中、鎖状共役ジエンブロックは、30〜70重量%である。鎖状共役ジエンブロックが30重量%未満であると、ポリオレフィン系樹脂と混合した樹脂からなる成形品は、剛性が高く、柔軟性、弾性に乏しいうえ、医療用成形品としての使用が困難になる。また70重量%を越えると、耐熱性など環状共役ジエンブロックの効果が十分に発揮出来ない場合もあり、好ましいとは言えない。
【0011】
本発明において、環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体は、炭素−炭素不飽和結合部分の一部または全てを水素化することによって飽和させる必要がある。
水素化は、環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体を得た後、水素化反応を行う。
水素化反応は、通常、重合反応が終わった重合体溶液を水素又は不活性ガス雰囲気下で所定の温度に保持し、攪拌下もしくは不攪拌下で水素化触媒を添加し、次いで水素ガスを導入して所定圧に加圧することによって実施される。
【0012】
水素化反応に使用する有機金属触媒の例としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、シクロペンタジエニルリチウムなどのアルキルリチウム、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウムなどのアルキルマグネシウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0013】
水素化は、鎖状共役ジエンブロックのみ、または環状共役ジエンブロックおよび鎖状共役ジエンブロックの両方を水素化する場合があり、好ましくは両方を水素化した完全水素化体である。
水素化率は、三元ブロック共重合体中の主鎖に存在する炭素−炭素不飽和結合に対して、少なくとも90%である。水素化率が90%未満であると、不飽和結合部分が増加するため、滅菌や成形時の耐熱性や耐候性が低下する傾向がある。
【0014】
環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の製造法として、特に好ましいものは、WO95/21202、WO95/21217、特開平 7-247323 号公報、特開平 7-258362 号公報、特開平 7-258362 号公報、特開平 8-225614 号公報、特開平 8-225616 号公報、特開平 9-100388 号公報などに記載される方法がある。
具体的にはn−ブチルリチウムなど周期律表の1A族の金属を含有する有機金属化合物に錯化剤、好ましくはアミン類を反応させることにより作製した有機金属錯体化合物を重合触媒として用いてリビングアニオン重合を行う。得られた重合体は必要に応じて水素化する。このリビングアニオン重合により、任意の分子量や分子量分布を有する重合体を得ることが可能である。
【0015】
重合反応には、まず環状共役ジエン単量体を重合して環状共役ジエンホモポリマーを得た後、該ホモポリマーに鎖状共役ジエン単量体を共重合させ、次いで環状共役ジエン単量体を共重合させる方法がある。その他、環状共役ジエンブロックと鎖状共役ジエンのジブロック共重合体を、鎖状共役ジエンブロック末端部同士のカップリング反応を行い三元共重合化する方法もある。
【0016】
本発明の三元ブロック共重合体には、必要により、炭素数5〜8の他の飽和環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどを若干共重合させてもよい。また、本発明の三元ブロック共重合体には、必要により、炭素数2〜8のα−オレフィン、例えばエチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどを若干共重合させてもよい。
【0017】
さらに、本発明の三元ブロック共重合体は、官能基や該官能基を有する有機化合物残基を部分的に付加することにより、変性化して使用することもできる。該付加方法はリビングアニオン重合を行い、高分子末端(片末端、両末端等)に付加する方法を使用できる。官能基または該官能基を有する有機化合物残基の付加量は、変性環状分子構造単位を含有する重合体に対し、一般に0.1 〜20重量%の範囲が好ましい。官能基の一例としては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、ジメチルアミド、ジエチレンアクリルアミドなどがあり、極性官能基を有するポリアミドやエチレン・ビニルアルコール系共重合体などとのブレンドや多層化に有用である。これらの官能基または官能基を有する有機化合物は、1種または2種以上であってもよい。
【0018】
本発明の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(A)と鎖状共役ジエンブロック含有量が30〜70重量%である環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の水素化体(B)を、A/Bの重量比が50/50〜90/10の範囲になるように混合したものである。
三元ブロック共重合体の水素化体(B)が50重量%を超えると、特に鎖状共役ジエンの量が50重量%を超えるとエラストマーになり、主成分であるポリオレフィン系材料の利点が生かせなくなったり、粘着性が高くなり成形品同士のブロッキング現象がおきたり、また剛性が低くフィルムや可撓性容器を作製するには強度が不十分な場合が生じる。
また、10重量%未満であると、三元ブロック共重合体の含有量が少なすぎて易剥離性を示さなくなる。
本発明に用いる三元ブロック共重合体は、一種類で用いてもよいが、ブロックを形成する単量体の種類や比率、水素化率などの異なる2種類以上の共重合体の混合物であってもよい。
【0019】
本発明のフィルム及び可撓性容器を成形加工するために、従来公知の熱安定性、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を使用する。一般に、樹脂100 重量%に対して、0.001 〜10重量%である。これらは重合反応後の精製時に添加してもよいし、加工時に添加してもよい。
形成品の用途や加工条件に応じて、本発明の条件範囲内であれば、相溶化剤等の熱可塑性樹脂、滑剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、顔料、抗菌剤等の添加剤を使用できる。また、オゾン処理、コロナ処理、蒸着処理などの公知の表面処理を施してもよい。
【0020】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の易剥離性フィルムの一実施例(三層構造になっている)を示す断面図である。図2は本発明の可撓性容器の一実施例を示す平面図(図1に示すフィルムからなる)、図3は図2のX−X線断面図、図4は図3に示す隔壁部分の拡大断面図である。また図5は本発明の可撓性容器の他の実施例を示す断面図である。
【0021】
本発明の易剥離性フィルムは単層でもよいが、図1に示すように易剥離性フィルム11と、他の樹脂フィルム12、13との多層フィルムでも構わない。特に輸液容器などの医療用容器は透明性や柔軟性が重要となるので、出来るだけ薄い易剥離性フィルム11を内壁層とした多層フィルムを使用することが好ましい。この場合、層厚は30〜70μm が好ましく、さらに好ましくは30〜50μm である。
多層フィルムの場合、基材層12、13の樹脂としてはポリプロピレン系樹脂、プロピレン・α−オレフィン系共重合体、ポリエチレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン系共重合体、ポリブテンなどのα−オレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂の他、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂およびこれらをブレンドしたものが採用される。医療安全性、廃棄性を考えるとポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0022】
本発明の易剥離性フィルム11は、単層の場合、Tダイ成形、インフレーション成形など一般の熱可塑性樹脂に用いられる成形方法と同様の方法で製造できる。多層フィルムの場合は、共押出し成形、ドライラミネート、押出しコーティングなどの方法で作製できる。また可撓性容器は、上記易剥離性フィルムから作製できるが、ブロー成形、真空成形などの方法で製造することもできる。
【0023】
図2に示す複室容器4は図1に示す3層のインフレーションフィルムから作製されたものである。該複室容器4は、熱溶着の温度、圧力、時間などの条件を変えることで、容易に剥離可能な隔壁43と強固にシールされた縁部41、45が形成されている。図中42、44は薬液や薬剤を保存する室を示す。
容易に剥離可能な隔壁43を形成するには、相対的に融点の低い三元共重合体の水素化体(B)の軟化点温度以上の温度で、かつ相対的に融点の高い結晶性ポリオレフィン系樹脂(A)の融点より低い温度、具体的には(用いる樹脂の成分や溶着機の仕様、及び溶着条件にもよるが)130 〜170 ℃程度で熱溶着するのが好ましい。この条件で熱溶着することにより、T字剥離強度(張り合わせた短冊状試験片を用い、引き剥がす角度を180 °になるようにしてインストロン型万能試験機等を用いて測定したもの)が0.1 〜1.0kg /15mm(引張速度300mm /min )、好ましくは0.1 〜0.8kg /15mm、さらに好ましくは0.2 〜0.6kg /15mmの弱シール部が得られる。複室容器の場合、前記T字剥離強度に熱溶着すれば、該複室容器を手で圧縮して弱シール部を剥離し、二つの室を連通させることができる。
一方、該複室容器の強固にシールされた縁部41、45を形成するには、樹脂(A)の融点以上の温度、具体的には170 〜220 ℃で熱溶着するのがよい。熱溶着の温度、圧力、時間などの条件は、成形方法、隔壁43部分の厚さや単層か多層かなどの形状により適宜選択する必要がある。
【0024】
上記方法により作成された可撓性容器、たとえば輸液バッグ4は医薬品を室42、44に入れて密封した後、高圧蒸気滅菌される。従来の可撓性容器が115 ℃の滅菌温度までしか絶えられなかったのに比べ、本発明の可撓性容器は115 ℃以上の温度で滅菌を行っても、剥離性や透明性に変化がなく滅菌時間の短縮が可能である。
【0025】
本発明の易剥離性フィルム11は、これを易剥離性のないフィルムから形成された可撓性単室容器の隔壁形成部分に挿入し、容器の外側から相対的に低温で加熱溶着すれば容易に剥離可能な隔壁を成形することができるので、弱接着シートとして使用することもできる。
また、本発明の易剥離性フィルムは図2〜図4に示すような複室容器4の他、図5に示すように、口部51に容易に剥離可能な隔壁52を設けた容器5や、ピールオフタイプの各種包装用フィルムなどにも利用できる。
【0026】
次に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
(参考例1)三元ブロック共重合体の作製と評価
1)シクロヘキサジエン−ブタジエン−シクロヘキサジエン三元ブロック共重合体(重量比がCHD/Bd/CHD=15/70/15)の作製
まず、攪拌機付き5L高圧オートクレーブ反応器内部を十分乾燥して窒素置換を行った。そこへ重合溶媒としてシクロヘキサン2,700 gをオートクレーブ内に入れ、室温に保持した。次いでn−ブチルリチウムをリチウム原子換算として30mmol添加し、更にN, N, N',N' −テトラメチルエチレンジアミン37.5mmolを添加した後、室温で約10分間撹拌した。
次に1,3−シクロヘキサジエン(CHD)45gをオートクレーブ内に導入し、40℃で1時間重合反応を行った。次いでブタジエン(Bd)の30wt%シクロヘキサン溶液700 g(Bd210g)をオートクレーブ内に入れ、40℃で3時間重合反応を行い、CHD−Bd二元ブロック共重合体を得た。
さらに、1,3ーシクロヘキサジエン(CHD)45gをオートクレーブ内に入れ、40℃で3時間重合反応を行った。重合反応終了後、別の(常法に従い十分に乾燥した)5L高圧オートクレーブに重合反応液を圧送し、リチウム原子と等モルの脱水n−ヘプタノールを添加して重合反応を停止させた。その後、重合体溶液に常法に従い酸化防止剤ブチルヒドロキシトルエンを添加し、大量のメタノールにて脱溶媒操作を行い、CHD−Bd−CHD三元ブロック共重合体を得た。
【0027】
上記製法により得られた三元ブロック共重合体は、1 HーNMR(JEOL社製NMR装置、JEOLαー400、測定周波数400MHz)による測定の結果、ポリシクロヘキサジエンブロック(PCHD)およびポリブタジエンブロック(PBd)の1,2−結合/1,4−結合モル比が各々1/1および3/1であった。
【0028】
2)CHD−Bd−CHD三元ブロック共重合体の水素化
撹拌機付き4L高圧オートクレーブの内部を乾燥させ、常法に従い、窒素置換を行った。そして溶媒シクロヘキサン1,000gをオートクレーブ内に入れ、窒素雰囲気下、70℃に保持した。次に重合体の10wt%シクロヘキサン溶液1,000gをオートクレーブ内に入れ、パラジウム(Pd)5wt%をアルミナ(Al2O3)に担持した固定触媒10gを添加した。オートクレーブ内を水素で置換した後、160℃まで昇温した。更に水素圧を55kG / cm 2 として6時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、オートクレーブ内を常温まで冷却し、常圧まで落圧した後に内部を窒素置換した。重合体溶液に常法に従い酸化防止剤ブチルヒドロキシトルエンを添加した後、大量のメタノールにて脱溶媒操作を行い、水素化CHD−Bd−CHD三元ブロック共重合体の水素化体を得た。
上記製法により得られた三元ブロック共重合体の水素化体は、1H−NMR(JEOL社製NMR装置、JEOLα−400、測定周波数400MHz)による測定の結果、水素化率は100%であった。
【0029】
3)三元ブロック共重合体及びその水素化体の評価
上記方法により表1に示す三元ブロック共重合体および該共重合体の水素化体を作製し、下記方法により数平均分子量、密度、曲げ弾性率、硬度を測定した。その結果を表1に示す。
(a)数平均分子量
東ソー(株)社製の液体クロマトグラフ(HLC−8082)を使用し、昭和電工(株)社製カラム(ショウデックス:K805+K804K802)を用いて、G.P.C(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定した標準ポリスチレン換算の値を示した。
(b)密度
東洋精機(株)社製の自動比重計(D−H)を使用し、JIS K−6258に従い密度を測定した。
(c)曲げ弾性率
島津製作所(株)社製の引張り試験機(AG−500D)を使用し、ASTMD790に準じて曲げ弾性率を測定した。
(d)硬度測定
テクロック(株)社製、ゴム硬度計(GS−706)を用い、JIS K6301に従い、JIS−A硬度を測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
また本発明及び比較例のフィルムとして使用するために、表2に示す樹脂を用意し、同様の測定を行った。
【0032】
【表2】
【0033】
(実施例1)複室容器の作製と評価
1)ブレンド樹脂の作製
表3に示される2、3種類の樹脂を混合した樹脂ペレットを、二軸溶融押出機を用い、160 〜220 ℃の温度で溶融混合した後、ペレタイズしてブレンド樹脂ペレットを作製した。
【0034】
【表3】
【0035】
2)易剥離性フィルムの作製
表3に示したブレンド樹脂を用いて、単層の押出Tダイ成形機、または3種3層の共押出Tダイ成形機により、温度160 〜250 ℃の条件で、厚さ200 μm、幅200mm の単層フィルムまたは3層フィルムを作製した。フイルム構成を表4に示した。
【0036】
【表4】
【0037】
3)複室容器の作製
上記方法により作製した単層フイルムまたは3層フィルムを幅200 ×長さ500mm の大きさにカットし、本発明の易剥離性フィルム層(三層フィルムにおいては内層)が内壁面になるようにして重ね合わせ、周囲2方向の端を幅10mm、温度180 〜200 ℃、5.0kg /cm2 、10秒間の条件で強熱溶着した。更にフィルムの中央を、幅10mm、温度130 〜170 ℃、5.0kg /cm2 、10秒間の条件で弱熱溶着して易剥離性隔壁を作製した。この同じ容量を有する二つの室からなる複室容器の各室に500ml の蒸留水を充填し、充填口面を強熱溶着により密封した。
【0038】
4)易剥離性フィルム及び複室容器の評価
(a)医療安全性評価
作製した易剥離性フィルムを、日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法による、ポリエチレン製叉はポリプロピレン製水性注射剤容器基準で溶出物試験を行った。その結果を表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
表5に示す通り、本発明の易剥離性フィルムは全て上記溶出試験に合格した。一方、比較例2の非水素化体を用いたフイルムは、合格しなかった。
【0041】
(b)引張弾性率測定
121 ℃、1.5kg /cm2 の圧力で30分間高圧蒸気滅菌処理した易剥離性フィルムを、島津製作所(株)社製のオートグラフ(AG−500D)を使用し、JISK7113に従い、引張弾性率を測定した。その結果を表6に示す。
下記表6に示すように、本発明の易剥離性フィルムは高圧蒸気滅菌後も高い柔軟性を維持できることが示された。しかし、ブタジエンが30重量%、三元ブロック共重合体が70重量%のブレンド樹脂で形成されたフィルム(比較例1)は、十分な柔軟性を得ることが出来なかった。
【0042】
(c)T字剥離強度測定
前記の条件で高圧蒸気滅菌処理した複室容器の易剥離部分を、島津製作所(株)社製のオートグラフ(AG−500D)を使用し、フィルム幅15mm、試験速度300mm /min の180 °T字剥離試験によって剥離強度を測定した。その結果を表6に示す。
下記表6から明らかなように、本発明の易剥離性フイルムを使用した複室容器は、滅菌後も安定した剥離強度を得ることが示された。しかし比較例3の従来のポリオレフィン系樹脂のみで形成されたフィルムを使用した複室容器は、滅菌後に剥離強度の顕著な増大が見られた。
【0043】
(d)フイルム透明性試験
前記の条件で高圧蒸気滅菌処理した複室容器を、日立製作所(株)社製の分光光度計(U−3210)を使用し、第13改正日本薬局方「プラスチック製医薬品容器試験法」に従い、水中における波長450nm の光線透過率を評価した。その結果を表6に示す。
下記表6から明らかなように、本発明の複室容器は高圧蒸気滅菌後も透明性が維持された。しかし比較例2の水素化されていない環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体を含んだブレンド樹脂で形成されたフィルムを使用した複室容器は、高圧蒸気滅菌後に透明性の顕著な低下が見られた。
【0044】
【表6】
【0045】
【発明の効果】
本発明では、従来のポリオレフィン系樹脂(A)に、鎖状共役ジエンブロック含有量が30〜70重量%である環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の水素化体(B)を、A/Bの重量比が50/50〜90/10の範囲になるように混合することによって、高圧蒸気滅菌後も剥離強度が適切な強度に維持され、かつ柔軟性や透明性が良好な易剥離性フィルム及び可撓性容器を作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の易剥離性フィルムの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の可撓性容器の一実施例を示す正面図である。
【図3】図2に示す可撓性容器のX−X線断面図である。
【図4】図3に示す可撓性容器の剥離部の拡大断面図である。
【図5】本発明の可撓性容器の他の実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
1 易剥離性三層積層フィルム
11 易剥離性フィルム層
12、13 基材層
4 医療用複室容器
41、45 周縁部
43、52 剥離部
42、44 室
5 医療用容器
51 口部
Claims (5)
- ポリオレフィン系樹脂(A)と、鎖状共役ジエンブロック含有量が30〜70重量%である環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の水素化体(B)を、A/Bの重量比が50/50〜90/10の範囲になるように混合した樹脂を用いて成形された、容易に剥離可能な隔壁により区画された複数の室を有する可撓性容器。
- 隔壁が容器の対面する内壁を低温溶着することにより形成された請求項1記載の可撓性容器。
- 輸液バッグである請求項1〜2のいずれかに記載の可撓性容器。
- ポリオレフィン系樹脂(A)と、鎖状共役ジエンブロック含有量が 30 〜 70 重量%である環状共役ジエン/鎖状共役ジエン/環状共役ジエン三元ブロック共重合体の水素化体(B)を、A/Bの重量比が 50 / 50 〜 90 / 10 の範囲になるように混合した樹脂を用いて成形された、容器の口部が容易に剥離可能な隔壁により液密に閉鎖されてなる可撓性容器。
- 隔壁が容器口部の対面する内壁を低温溶着することにより形成された請求項4記載の可撓性容器。
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