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JP3684878B2 - 塗布装置および塗布部材の製造方法、ならびに、カラーフィルタの製造装置および製造方法 - Google Patents

塗布装置および塗布部材の製造方法、ならびに、カラーフィルタの製造装置および製造方法 Download PDF

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JP3684878B2 JP33250798A JP33250798A JP3684878B2 JP 3684878 B2 JP3684878 B2 JP 3684878B2 JP 33250798 A JP33250798 A JP 33250798A JP 33250798 A JP33250798 A JP 33250798A JP 3684878 B2 JP3684878 B2 JP 3684878B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布液の塗布装置および塗布部材の製造方法に係わり、特に、ガラス基板や金属基板などの硬質で平坦な枚葉部材の表面に、粘度の低い塗布液を吐出口から吐出して、均一な厚みの塗布液の塗膜を形成する塗布装置およびこの塗布装置を用いて枚葉部材に塗膜を形成して成る塗布部材の製造方法、ならびに、これら装置および方法を用いたカラーフィルタの製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラー液晶ディスプレイ用のカラーフィルタは、ガラス基板上に、3原色の細かな格子模様を有しており、この格子模様は、該ガラス基板上に、黒色の塗膜が形成された後、そのガラス基板上が、更に、赤、青、緑の3原色に塗り分けられて、形成される。
【0003】
また、必要に応じて、該3原色の格子模様の上に、保護および表面の平滑性を高める目的で、着色剤を含まない塗布液(以下、オーバーコート液と称す)が、薄膜状に塗布され、保護膜が形成される場合もある。
【0004】
それ故、カラーフィルタの製造においては、ガラス基板上に、黒、赤、青、緑の塗布液が薄膜状に順次塗布されるため、それぞれの薄い塗膜を順次形成する塗布工程や、オーバーコート液を塗布して薄い保護膜を形成する工程が、不可欠である。
【0005】
この種の薄膜塗布工程には、従来、枚葉塗布装置として、スピナー、バーコータあるいはロールコータが使用されていたが、塗布液の消費量削減が可能で、塗膜物性の向上や基板の大板化への対応が比較的容易にできるという利点から、近年に至っては、ダイコータの使用が検討され、更には、これを用いての塗布速度の高速化も検討されている。
【0006】
ダイコータでは、特に、平坦な枚葉部材に、薄膜が塗布される場合、塗布開始部から均一な厚みで、かつ、横むらや縦すじ等のない高品位な薄い塗膜が形成可能であることが、製品の品質および生産性の向上のために、要望されている。
【0007】
故に、図4に示すように、塗布液を吐出する塗布器、いわゆるスリットダイ40のフロントおよびリアリップエッジ面(下端面)70、74と被塗布部材Aの表面との隙間H(以下、クリアランスと称す)に形成されるビードと呼ばれる塗布液の液溜まりが、塗布開始時および塗布している間、略同一の大きさで安定に保持されることが、要望されている。
【0008】
この塗布開始部で、高い膜厚の均一性と品位が要求される枚葉塗布に適したスリットダイとして、特開平9−131559号公報には、フロントリップエッジ面の塗布進行方向でみた長さが、リアリップエッジ面の塗布進行方向でみた長さよりも短く、更に、リアリップエッジ面の前記長さが、1mm以上、4mm以下に設定することが、提案されている。
【0009】
しかしながら、特開平9−131559号公報に提案されているスリットダイでは、塗布速度を速くしたり、塗布厚みを薄くする際、ビードの安定性向上のために、塗布液の粘度を低くするにつれて、塗布開始部の膜厚安定性が悪くなり、横むら欠陥が発生する問題が認められる。
【0010】
すなわち、枚葉塗布を行なうためのダイコータでは、ビードの安定性向上のために、ウエブなどへの連続塗布をする場合に用いられるビードの前後に圧力差を設ける手法、具体的には、ビード後方に減圧室が設けられ、ビードが後方へ引っ張られるようにする手法は、塗布開始時の減圧調整が難しく、塗布開始部の膜厚均一性が悪化するため、適用することが困難である。
【0011】
従って、塗布開始部の膜厚均一性を損なわずに、膜塗布速度を速くしたり、塗布膜厚を薄くするには、塗布液の粘度を低くして、ビードの安定性を高める等の対策が必要になる。
【0012】
ところが、上記提案のスリットダイによって、非常に低粘度の塗布液、例えば、10mPa・s以下の有機溶媒を含む表面張力の低い塗布液を塗布する場合、図5に示す通り、塗布開始時に形成される初期ビードB1が、図6に示す通り、塗布中では、リアリップエッジ面74の後方に、濡れ拡がってしまい、塗布開始部の塗布膜厚の変動が認められ、図7で示す横むら80などの塗布欠陥の発生が認められる。
【0013】
なお、図5、6、および、7における符号は、後に記述する図1、2、3、および、4における符号と共通しているので、ここでの詳細な説明は、省略する。
【0014】
更に、塗布液の濡れ拡がりによる塗布膜厚の変動や横むらは、塗布速度が速くなるほど顕著に発生し、品質上重大な問題になることが、判明した。
【0015】
これは、塗布速度が速くなるにつれて、相対的に移動する被塗布部材のビードに及ぼすせん断力が大きくなるため、このせん断力に抗して、塗布液が濡れ拡がるための遷移時間が長くなることと、濡れ拡がる遷移時間の間に、被塗布部材の表面へ塗膜が形成される範囲が、相対的に広くなるためであると推察される。
【0016】
この塗布中に塗布液のビードが、リアリップエッジ面の後方へ濡れ拡がってしまう問題の防止策として、特公平1−57629号公報には、スリットダイのリップエッジ面に、フッ素樹脂などの撥水性樹脂を施すことが提案されている。更に、特開平5−261330号公報には、リップエッジ面または/およびそれに続く傾斜面部に、フッ素含有樹脂が分散共析した複合メッキ被膜を施すことが提案され、メッキ被膜を無電解ニッケルメッキによって形成した後に、300℃以上の熱処理を施して、撥水性を高めることが良いとされている。
【0017】
しかしながら、特公平1−57629号公報で提案されているスリットダイでは、例えば、該樹脂の表面を研摩したとしても、樹脂の強度の問題もあり、充分な精度および強度を得ることは難しく、このダイを用いて、均一な膜厚精度を得ることは困難である。
【0018】
また、特開平5−261330号公報に提案されている方法は、塗布幅が、300mmと比較的小型のスリットダイには適用できるが、更に塗布幅が広くなりダイが大型化するほど、後の研摩修正では修正が不可能になるほど熱処理でリップが歪んでしまい、塗布幅方向における均一な膜厚精度を得ることが困難である。また、この歪み対策として、スリットダイの高さ方向の剛性を向上させると、ダイの重量増加を招き、作業性が悪化したり、製作コストが著しく増加する問題がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術では解決出来ない問題点を解決するもので、その目的とするところは、高速で薄膜塗布を行うために、表面張力や粘度の低い塗布液を枚葉部材に塗布する場合において、塗布開始部の膜厚均一性が良好であり、かつ、横むらなどの塗布欠陥が発生することなく、安価で塗布速度の高速化が実現できる塗布装置および塗布部材の製造方法を提供することにある。
【0020】
更に、これら塗布装置および塗布部材の製造方法を用いた、製造タクトタイムを短縮することができる、カラーフィルタの製造装置および製造方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記目的を達成するためには、リアリップエッジ面の塗布進行方向でみた長さLrを最適な範囲に規定し、リアリップエッジ面とそれに連なり後方へと傾斜している傾斜面とが交わる稜線でビードの濡れ拡がりを防ぐとともに、フロントリップエッジ面の塗布進行方向でみた長さLfを、前記長さLrよりも短くして、塗布開始時のビードの安定性を高めることが効果的であるとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0022】
上記目的を達成する本発明に係る塗布装置の構成は、次の通りである。
【0023】
二つのリップが、所定のリップ間隙をもって対向して位置し、両リップの下端における前記間隙が、一方向に延びる吐出口を下面に形成してなる塗布器と、該塗布器の吐出口に対向して隙間をもって枚葉部材の表面を位置せしめて該枚葉部材を支持する支持手段と、前記塗布器と前記支持手段に支持された枚葉部材とを、前記吐出口の方向に対し実質的に直角な方向に、相対的に移動させる移動手段とを具備し、前記枚葉部材の表面に前記吐出口から粘度が10mPa・s以下の塗布液を吐出して塗膜を形成する塗布装置において、前記二つのリップのうち、前記枚葉部材の相対的な進行方向において、進行方向側に位置する方のリップをフロントリップとし、それとは反対側に位置する方のリップをリアリップとし、両リップの前記吐出口に連なり前記枚葉部材に対向する面を、それぞれ、フロントリップエッジ面およびリアリップエッジ面としたとき、
a)前記フロントリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLfが、0.1mm以下であって、
)該リアリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLrが、0.1mm以上、1.0mm未満であり、
)前記フロントリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLf、が前記長さLrよりも短いことを特徴とする塗布装置。
【0024】
本発明に係るこの塗布装置によれば、塗布開始部の膜厚均一性が良く、特に、低粘度の塗布液を塗布する場合でも、塗布中にリアリップエッジ面におけるビードが、後方へ濡れ拡がることがなく、塗布開始時のビードと略同一の大きさに塗布中のビードが形成されるようになり、塗布開始から塗布終了までの間、適正な塗膜の膜厚が得られ、横むらなどの塗布欠陥が発生することがない。
【0026】
この塗布装置によれば、塗布開始時におけるビードの安定性が更に高まり、塗布速度を速くしても、縦すじが発生することなく、良好な塗膜を得ることができる。
【0027】
また、この塗布装置において、前記フロントおよびリアリップエッジ面は、同一の面内にあることが好ましい。
【0028】
この場合、塗布幅方向に亘り、所望のクリアランスを容易に精度良く設定できるため、塗布幅方向におけるビード形状の均一性が高められ、膜厚精度の高い塗膜が容易に形成される。
【0029】
更に、また、この塗布装置において、前記フロントリップの前面は、前記フロントリップエッジ面に連なり該エッジ面に対し角度θfをもって前記吐出口側に傾斜したフロント傾斜面を有し、前記リアリップの後面は、前記リアリップエッジ面に連なり該エッジ面に対し角度θrをもって前記吐出口側に傾斜したリア傾斜面を有し、前記角度θfおよび角度θrは、それぞれ、30°以上、60°以下であることが好ましい。
【0030】
この場合、ビードの濡れ拡がりを規制したとしても、リアリップ側の傾斜面までビードが回り込むようなことはなく、ビードの境界線は、リアリップエッジ面に安定して保持される。従って、塗布幅方向に亘ってビードの均一性が維持できるため、精度の高い塗膜が容易に形成される。
【0031】
また、更に、この塗布装置において、前記リップ間隙を間隙Lgとするとしたとき、該間隙Lgが、0.05mm以上、0.3mm以下であることが好ましい。
【0032】
この場合、リップ間隙の流路抵抗が、所望の範囲に維持され、塗布器の吐出口からは、その長手方向に沿い、塗布液が一様に吐出される。
【0033】
そして、更に、この塗布装置において、前記フロントリップエッジ面、前記リアリップエッジ面、前記フロント傾斜面、および、前記リア傾斜面の算術平均粗さ(Ra)が、0.001μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。
【0034】
この場合、塗布液によって、リップの先端が汚れることが実質的になく、たとえ汚れが発生したとしても、それが原因で発生する塗布欠陥が、長期間防止できる。さらには、リップの先端を容易に清掃できるため、作業性が大幅に向上し、特に、精密な塗膜の形成が要求される塗布装置には、好適なものとなる。
【0035】
また、この塗布装置において、枚葉部材が、ガラス基板であることが好ましい。
【0036】
この場合、枚葉部材の上面に、厚さが均一で塗布むらのない、高品位の塗膜が、広い領域で形成される。
【0037】
本発明に係るカラーフィルタの製造装置の構成は、次の通りである。
【0038】
上記本発明に係る塗布装置のいずれかにおける枚葉部材が、カラーフィルタ製造用ガラス基板からなることを特徴とするカラーフィルタの製造装置。
【0039】
このカラーフィルタの製造装置によれば、高品質なカラーフィルタを、短いタクトタイムで、製造することができる。
【0040】
本発明に係る塗布部材の製造方法の構成は、次の通りである。
【0041】
前記本発明に係る塗布装置を用いて塗布部材を製造するに当たり、
(イ)前記塗布器とこれに対向して位置する前記枚葉部材の表面との隙間クリアランスを、所定の値に調整し、
(ロ)前記吐出口から塗布液の吐出を開始した後に、
(ハ)前記塗布器と前記枚葉部材とを相対的に移動させ、
(ニ)前記リアリップエッジ面とそれに連なる後方の前記リア傾斜面とが交わる稜線で、前記吐出口および前記リアリップエッジ面と前記枚葉部材の表面との隙間に形成される塗布液のビードの境界線を保持しながら、
前記枚葉部材の表面に塗膜を形成することを特徴とする塗布部材の製造方法。
【0042】
本発明に係るこの塗布部材の製造方法によれば、上記本発明に係る塗布装置と同様な作用、すなわち、塗布開始部およびそれに続く塗布部における横むらの発生がなく、厚さの均一な塗膜を有する塗布部材の製造が可能となる。
【0043】
この本発明の塗布部材の製造方法において、前記クリアランスの値を、0.05mm以上、0.2mm以下に、設定することが好ましい。
【0044】
この場合、塗布開始時に形成するビードと塗布中のビードの大きさとを、容易に略同一に調整することが可能となり、塗布の操作性が向上する。
【0045】
また、この塗布部材の製造方法において、塗布器と前記枚葉部材とを相対的に移動する速度が、3m/分よりも高速であることが好ましい。
【0046】
塗布液の粘度が、10mPa・s以下の、塗布液の粘度がかなり低いにも拘わらず、塗布開始部およびそれに続く塗布部における横むらの発生がなく、厚さの均一な塗膜を形成することが可能となる。
【0047】
本発明に係るのカラーフィルタの製造方法の構成は、次の通りである。
【0048】
上記本発明に係る塗布部材の製造方法のいずれかにおける枚葉部材が、カラーフィルタ製造用ガラス基板からなることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【0049】
このカラーフィルタの製造方法によれば、ガラス基板などの透明基板に、所定の塗膜を短時間で順次形成することができるため、カラーフィルタを効率良く製造することが可能となる。
【0050】
また、このカラーフィルタの製造方法において、塗布液が、カラーフィルタ表層の保護および平滑性付与機能を有するオーバーコート形成用の塗布液であることが好ましい。
【0051】
この場合、着色剤を含まない透明な塗膜を形成する場合であっても、塗布開始部およびそれに続く塗布部において、横むらとして観察される反射むらが目立つことがない良好な塗膜を短時間で形成することができるため、カラーフィルタを効率よく製造することが可能となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、その実施例を用いて、図面を参照しながら、更に説明する。
【0053】
図1は、本発明の塗布装置の一実施例であるダイコータの概略斜視図である。
【0054】
図2は、図1に示したダイコータを、塗布液の供給系および各作動部材の制御系をも含めて示す概略側面構成図である。
【0055】
図3は、図1に示したダイコータに使用されているスリットダイの横断面図である。この図3に、塗布開始部の膜厚を均一にするために塗布開始時に形成される初期ビードB1の適正な状態が模式的に示されている。
【0056】
図4は、図3と同じスリットダイの横断面図であり、塗布している間に形成される塗布ビードB2の状態が模式的に示されている。
【0057】
図1に示したダイコータ(塗布装置)は、カラーフィルタの製造に用いられるものである。このダイコータは、基台2を備えている。基台2上には、一対のガイド溝レール4が設けられており、これらガイド溝レール4には、ステージ6が配置され、このステージ6の上面は、サクション面とされている。ステージ6は、一対のスライド脚8を介して、ガイド溝レール4上を水平方向に往復動自在に支持されている。
【0058】
一対のガイド溝レール4間には、ガイド溝レール4に沿って延びるケーシング12が配置されており、このケーシング12には、送り機構が内蔵されている。送り機構は、図2に示すように、ボールねじからなるフィードスクリュー14を有しており、フィードスクリュー14は、ステージ6の下面に固定されたナット状のコネクタ16にねじ込まれ、このコネクタ16を貫通して延びている。フィードスクリュー14の両端部は、図示しない軸受に回転自在に支持されており、その一端には、ACサーボモータ18が連結されている。なお、ケーシング12の上面または側面には、コネクタ16の移動を許容する開口が形成されているが、図1中にはその開口の図示は、省略されている。
【0059】
なお、ここでは、ステージ6が往復動する構成となっているが、これに限らず、後述するスリットダイ40が、ステージ6に対して、往復動する構成であってもよい。要は、ステージ6とスリットダイ40との少なくとも一方が、他方に対して往復動、すなわち、相対的に往復動すればよい。
【0060】
基台2の上面には、その一端側に、逆L字形のセンサ支柱20が配置されている。センサ支柱20は、その先端が一方のガイド溝レール4の上方まで延びており、その先端には、電動型の昇降アクチュエータ21が取り付けられている。
【0061】
この昇降アクチュエータ21には、厚みセンサ22が下向きにして取り付けられており、この厚みセンサ22としては、レーザ変位計、電子マイクロ変位計、超音波厚さ計などが使用される。
【0062】
更に、基台2の上面には、センサ支柱20よりも基台2の中央側に、同じく逆L字形をなしたダイ支柱24が配置されている。ダイ支柱24の先端は、一対のガイド溝レール4間の上方、すなわち、ステージ6の往復動経路の上方に位置し、その先端には、昇降機構26が取り付けられている。
【0063】
図1中には詳細に示されていないが、昇降機構26には、昇降ブラケットが備えられており、この昇降ブラケットは、一対のガイドロッドに昇降自在に取り付けられている。これらガイドロッド間には、ボールねじからなるフィードスクリューが配置されており、このフィードスクリューは、昇降ブラケットのナット部にねじ込まれ、このナット部を貫通して延びている。
【0064】
フィードスクリューの上端部には、ACサーボモータ30が連結されており、このACサーボモータ30は、ケーシング28の上面に取り付けられている。なお、前述したガイドロッドおよびフィードスクリューは、ケーシング28に収容され、軸を介して回転自在に支持されている。
【0065】
昇降ブラケットには、支持軸(図示せず)を介して、コ字形をなしたダイホルダ32が垂直面内で回転自在に取り付けられており、このダイホルダ32は、一対のガイド溝レール4の上方を、これらガイド溝レール4間に亘って水平に延びている。更に、昇降ブラケットには、ダイホルダ32の上方において、水平バー36が固定されており、この水平バー36は、ダイホルダ32に沿って延びている。
【0066】
水平バー36の両端部には、空圧型の調整アクチュエータ38が、それぞれ取り付けられている。この調整アクチュエータ38は、水平バー36の下面から突出した伸縮可能なロッドを有しており、これら伸縮ロッドの下端は、ダイホルダ32の両端それぞれに、当接されている。
【0067】
ダイホルダ32内には、塗布器としてのスリットダイ40が取り付けられている。図2に示されているように、スリットダイ40からは、塗布液の供給ホース42が延びており、この供給ホース42の先端は、シリンジポンプ44における電磁切り換え弁46の供給ポートに接続されている。電磁切り換え弁46の吸引ポートからは、吸引ホース48が延びており、この吸引ホース48の先端部は、塗布液を蓄えたタンク50内に挿入されている。
【0068】
シリンジポンプ44のポンプ本体52は、電磁切り換え弁46の切り換え作動により、供給ホース42および吸引ホース48の一方に、選択的に接続可能とされている。
【0069】
これら電磁切り換え弁46およびポンプ本体52は、コンピュータ54に電気的に接続され、このコンピュータ54からの制御信号を受けて、それらの作動が制御されるようになっている。コンピュータ54は、前述した昇降アクチュエータ21および厚みセンサ22にもまた、電気的に接続されている。
【0070】
更に、シリンジポンプ44の作動を制御するため、コンピュータ54には、シーケンサ56が電気的に接続されている。このシーケンサ56は、ステージ6側のフィードスクリュー14のACサーボモータ30の作動をシーケンス制御するものである。
【0071】
そのシーケンス制御のために、シーケンサ56には、ACサーボモータ18、30の作動状態を示す信号、ステージ6の移動位置を検出する位置センサ58からの信号、スリットダイ40の作動状態を検出するセンサ(図示せず)からの信号などが入力され、一方、シーケンサ56からは、シーケンス動作を示す信号が、コンピュータ54に出力されるようになっている。
【0072】
なお、位置センサ58を使用する代わりに、ACサーボモータ18にエンコーダを組み込み、このエンコーダから出力されるパルス信号に基づき、シーケンサ56にて、ステージ6の位置を検出することも可能である。また、シーケンサ56に、コンピュータ54による制御を組み込むことも可能である。
【0073】
図示されていないが、ダイコータには、ステージ6上に被塗布部材としての枚葉部材、例えば、カラーフィルタのためのガラス基板Aを供給するローダや、ステージ6からガラス基板Aを取り外すためのアンローダが備えられており、これらローダおよびアンローダには、その主要構成部分に、例えば、円筒座標系産業用ロボットが使用される。
【0074】
図1から明らかなように、前述したスリットダイ40は、ステージ6の往復動方向と直行する方向、すなわち、ステージ6の幅方向に水平に延びており、その両端が、ダイホルダ32に支持されている。ここで、スリットダイ40の水平調整は、前述した水平バー36の両端に設けられた調整アクチュエータ38の伸縮ロッドを伸縮させ、ダイホルダ32をその支持軸回りに回転させることで行われる。
【0075】
図3、4に示す、本発明の塗布装置に用いられるスリットダイ40は、長尺なブロックであるフロントリップ59およびリアリップ60を備えており、これらフロントリップ59およびリアリップ60は、ステージ6の往復動方向に前後して位置し、互いに一体的に結合されている。
【0076】
スリットダイ40内の中央部分には、塗布液を塗布幅方向に拡幅するための拡幅路、すなわち、マニホールド62が形成されており、このマニホールド62は、ステージ6の往復動方向と直行する方向に延びている。マニホールド62は、前記塗布液の供給ホース42に接続されている。
【0077】
マニホールド62からは、下方に向けてリップ間隙64が垂直に延び、スリットダイ40の下面に開口している。リップ間隙64の下端開口、つまり、吐出口66は、マニホールド62と同様に、ステージ6の往復動方向と直交する方向に延びている。具体的には、フロントリップ59とリアリップ60との間には、シム(図示しない)が介在されている。このシムの厚みにより、リップ間隙64および吐出口66の隙間Lg、すなわち、ステージ6の往復動方向に沿う長さが、例えば、0.05mm以上、0.3mm以下に設定されている。
【0078】
図1に示す状態からステージ6がスリットダイ40に向けて往動するとき、その往動方向(図4中の矢印C方向)でみて前側に位置するフロントリップ59に関し、その前面の下部には、吐出口66に向けて傾斜したフロント傾斜面68が形成されており、このフロント傾斜面68の下端縁と吐出口66との間にて、フロントリップエッジ面70が規定されている。
【0079】
一方、リアリップ60に関しては、その後面の下端部が吐出口66に向けて傾斜したリア傾斜面72が、形成されており、このリア傾斜面72の下端縁と吐出口66との間にて、リアリップエッジ面74が規定されている。エッジ面74の長さLrは、0.1mm以上、1.0mm未満に設定されている。
【0080】
ステージ6の往復動方向でみて、図4から明らかなように、フロントリップエッジ面70の長さLfは、リアリップエッジ面74の長さLrよりも短く、そして、これらエッジ面70、74は、同一の水平面内に位置付けられている。
【0081】
更に、フロント傾斜面68およびリア傾斜面72と水平面とのなす角度θf、および、角度θrは、それぞれ、30°以上、60°以下に設定されている。
【0082】
そして、更に、この塗布装置において、前記フロントリップエッジ面および前記リアリップエッジ面、ならびに、前記フロント傾斜面および前記リア傾斜面の算術平均粗さ(Ra)が、0.001μm以上、0.5μm以下に設定されている。
【0083】
以上において、本発明の塗布装置における塗布器、すなわち、スリットダイの実施例を、図面を用いて説明したが、本発明に係る塗布装置の具体的な構成は、この実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
【0084】
次に、上述したダイコータが使用されて行われる塗布部材(カラーフィルタ)の製造方法が説明される。
【0085】
まず、ダイコータにおける各作動部の原点復帰が行われると、ステージ6は、厚みセンサ22の下方に位置付けられ、また、タンク50から、塗布液が供給され、吸引ホース48および供給ホース42を経て、スリットダイ40内のマニホールド62およびリップ間隙64内に、塗布液が満たされる。
【0086】
この状態で、図示しないローダからステージ6上にガラス基板Aが供給され、このガラス基板Aは、ステージ6上に、サクション圧を受けて保持される。このようにしてガラス基板Aのローディングが完了すると、厚みセンサ22が所定の位置まで下降し、ガラス基板Aの厚みが、厚みセンサ22により測定される。測定後、厚みセンサ22は、元の位置まで上昇する。
【0087】
上述したガラス基板Aのローディングの開始と同時に、シリンジポンプ44の電磁切り換え弁46が、そのポンプ本体52に吸引ホース48を接続すべく、切り換え作動し、これにより、ポンプ本体52により、タンク50内の塗布液が、吸引ホース48を通じて、吸引される。シリンジポンプ44内に所定量の塗布液が吸引されると、電磁切り換え弁46は、ポンプ本体52と供給ホース42とを接続すべく、切換え作動する。
【0088】
そして、ステージ6は、スリットダイ40に向けて往動され、スリットダイ40の直前で、停止される。この後、スリットダイ40が下降し、スリットダイ40のフロントおよびリアリップエッジ面70、74とガラス基板Aの上面との間に、所定のクリアランス、すなわち、形成すべき塗膜の厚さ、すなわち塗布膜厚tに対して数倍のクリアランスHが確保される。
【0089】
このクリアランスHは、0.05mm〜0.2mmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.1mm〜0.15mmの範囲である。0.05mm未満の場合は、ガラス基板Aの厚さむらの影響により、塗布開始部の膜厚の均一性が悪く、生産効率が落ちる。一方、0.2mmより大きい場合は、塗布開始部で縦すじなどの塗布欠陥が発生しやすくなる。
【0090】
なお、クリアランスHは、厚みセンサ22により測定したガラス基板Aの厚さを考慮し、ステージ6とスリットダイ40との間の距離を測定する距離センサ(図示せず)からの出力信号に基づき、スリットダイ40の下降位置が制御されることで、正確に設定される。
【0091】
次に、ステージ6が更に往動せしめられ、ガラス基板Aの上面における塗膜の形成を開始すべきスタートラインが、スリットダイ40の吐出口66の直下に位置付けられ、ステージ6が一旦停止せしめられる。
【0092】
このステージ6の一旦停止と実質的に同時に、シリンジポンプ44が塗布液の吐出動作を開始し、塗布液がスリットダイ40に向けて供給される。これにより、スリットダイ40の吐出口66から、ガラス基板A上に、塗布液Lが吐出される。ここで、吐出口66は、その間隙がスリットダイ40の長手方向に沿って一定であるから、吐出口66からは、ガラス基板Aのスタートラインに沿って一様に塗布液Lが吐出され、この結果、スリットダイ40とガラス基板Aとの間には、塗布液の液溜まりである初期ビードB1(図3)が、スタートラインに沿って形成される。
【0093】
この初期ビードB1の形成と同時に、吐出口66からの塗布液Lの吐出が継続されながら、ステージ6が一定の速度で往動方向に進行すると、初期ビードB1にせん断力が働き、ある遷移時間を経て、図4に示されるような塗布ビードB2が、ガラス基板Aとスリットダイ40の間に形成され、この塗布ビードB2を介して、ガラス基板Aの上面に塗布液Lの塗膜Dが連続的に形成される。
【0094】
従って、塗布開始部の膜厚を均一にするためには、リアリップエッジ面74側において、ステージ6を一旦停止する時間(以後、停止時間と称す)の長さを調節し、塗布ビードB2と略同一になる初期ビードB1が形成されなければならない。
【0095】
ステージ6の進行に伴い、ガラス基板A上にて塗膜Dの形成を終了すべきフィニッシュラインが、スリットダイ40の吐出口66の直前位置に到達すると、この時点で、シリンジポンプ44の吐出動作が停止されても、ガラス基板A上の液溜まりであるビードB2の塗布液を消費しながら、塗膜Dの形成がフィニッシュラインまで継続される。
【0096】
なお、ガラス基板A上のフィニッシュラインが、スリットダイ40の吐出口66を通過した時点で、シリンジポンプ44の吐出動作を停止するようにしてもよい。
【0097】
ガラス基板A上のフィニッシュラインが、吐出口66を通過する時点または通過した時点で、シリンジポンプ44の吸引動作がわずかに行われ、これにより、スリットダイ40のリップ間隙64内の塗布液Lは、マニホールド62側に吸引される。同時に、スリットダイ40は、元の位置まで上昇され、スリットダイ40から塗布液Lの吐出工程が終了する。
【0098】
次に、シリンジポンプ44に、吸引動作と同じ量だけ吐出動作を与えて、スリットダイ40のリップ間隙64に空気が残らないようにした後、電磁切り換え弁46は、ポンプ本体52と吸引ホース48とを接続すべく、切り換え動作し、これにより、ポンプ本体52に、タンク50内の塗布液が、吸引ホース48を通じて、吸引される。
【0099】
シリンジポンプ44内に所定量の塗布液が吸引されると、シリンジポンプ44の電磁切り換え弁46は、ポンプ本体52と供給ホース42とを接続すべく、切り換え作動する。
【0100】
なお、スリットダイ40の上昇位置にて、そのフロントおよびリアリップエッジ面70、74とフロントおよびリア傾斜面68、72に付着している塗布液Lが、クリーナ(図示せず)により拭き取られる。
【0101】
一方、ステージ6の往動は、塗布液Lの吐出工程が終了しても継続されており、ステージ6がガイド溝レール4の終端に到達した時点で、その往動が停止される。 この状態で、塗膜Dが形成されたガラス基板Aは、そのサクションによる吸着が解除されて後、アンローダによりステージ6上から取り外される。
【0102】
この後、ステージ6は、復動され、図1に示す初期位置に戻されて、一連の塗布工程が終了する。初期位置にて、ステージ6は、新たなガラス基板がローディングされるまで待機する。
【0103】
上述したガラス基板A上への塗膜Dを形成するダイコータは、上述したスリットダイ40を備えているので、塗布速度を速く、塗布膜厚tを薄くするために、粘度の低い塗布液を塗布する場合でも、その塗膜Dを塗布開始部から均一に形成することができ、カラーフィルタの製造に好適なものとなる。
【0104】
すなわち、スリットダイ40に関し、リアリップエッジ面74の長さLrは、0.1mm以上、1.0mm未満の範囲に設定されており、より好ましくは、0.3mm以上、0.6mm以下に設定されている。
【0105】
長さLrが、上記範囲に設定されていると、図4に示すように、例え低い粘度の塗布液を塗布する場合でも、塗布液の濡れ拡がりを最小限に抑えることができるため、前述した停止時間を調節して、塗布ビードB2の大きさと略同一になる初期ビードB1を容易に形成することができ、塗布開始部の膜厚均一性が良くなり、濡れ拡がりによる横むらの発生を抑制することができる。
【0106】
長さLrが、0.1mmよりも短いと、塗布ビードB2をリアリップエッジ面74側に充分大きく形成できず、空気同伴によるビード破壊が生じて縦すじが発生する。
【0107】
逆に、長さLrが、1.0mm以上あると、塗布液の濡れ拡がりが生じてリアリップエッジ面74側に長く伸びる塗布ビードB2の大きさと略同一になる初期ビードB1を形成するための停止時間は長くなり、フロントリップ59のフロント傾斜面68に溜まった塗布液によって、塗布開始部の膜厚が厚くなったり、塗布幅方向でみた両端から塗布液が溢れ、基板の両端が汚れる。
【0108】
一方、停止時間が短すぎると、図5で示すように、リアリップエッジ面74とガラス基板Aとの間に、初期ビードB1を充分形成することができず、塗布開始時に塗布液の濡れ拡がりによる横むらが発生する。そして、横むらは、塗布速度を速くするほど顕著になる。これは、塗布速度が速くなるにつれて、相対的に移動する被塗布部材のビードに及ぼすせん断力が大きくなるため、このせん断力に抗して、塗布液が濡れ拡がるための遷移時間が長くなることと、濡れ拡がる遷移時間の間に、被塗布部材の表面へ塗膜が形成される範囲が、相対的に広くなるためであると推察される。
【0109】
リアリップエッジ面74に連なるリア傾斜面72の角度θrが、30°以上であれば、塗布液の濡れ拡がりが、リア傾斜面72にまで回り込むようなことはなく、エッジ面74とリア傾斜面72の稜線で、塗布ビードB2の後方側境界線を確実に維持することができる。また、傾斜面72の角度θrが、60°を越えると、リアリップ60における下端部の剛性が不足する虜がある。
【0110】
フロントリップエッジ面70の長さLfは、前述の範囲に設定されたリアリップエッジ面74の長さLrよりも短くなっているため、初期ビードB1がリアリップエッジ面74とガラス基板Aとの間で形成されやすくなり、塗布開始時に、空気同伴によってビードが不安定になったり、縦すじなどの塗布欠陥も発生しない。
【0111】
また、塗布速度をより速く、塗膜Dの塗布厚みtをより薄くするためには、フロントリップエッジ面70の長さLfを短くするほど、塗布ビードB2が安定するため、0.mm以下に設定されていることが好ましい。長さLfは、0、すなわち、フロントリップエッジ面70は、ナイフエッジ状であってもよいが、この場合、そのエッジの剛性を確保するのが困難になる場合がある。従って、より好ましくは、長さLfは、0.03mm〜0.1mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0112】
フロントリップエッジ面70に連なるフロント傾斜面68の角度θfも、30°以上あれば、塗布ビードB2の前方側境界線が、表面張力によりエッジ面70を越え、フロント傾斜面68まで濡れ拡がることはない。なお、傾斜面68の角度θfが、60°を越えると、フロントリップ58における下端部の剛性が不足する虜がある。
【0113】
フロントリップエッジ面70およびリアリップエッジ面74が、同一の水平面にあると、スリットダイの下端面の長さを十分に確保できるため、塗布幅方向に亘って、ガラス基板Aとのクリアランスを容易に精度良く設定することが可能となり、塗布ビードB2の上縁を規定する両境界線が安定に維持され、塗布ビードB2の形状が不安定になることはない。
【0114】
更に、リップ間隙64の隙間Lgが、0.05mm以上確保されていると、スリット64を規定するフロントリップ58およびリアリップ60の内面に関して、加工精度上、その平面性を十分に確保できる。一方、隙間Lgが、0.3mmを越えると、リップ間隙64およびマニホールド62内の塗布液の吐出圧が低下し、スリットダイ40の吐出口66から一様に塗布液を吐出することができない。
【0115】
そして、更に、塗布液Lの吐出工程が終了した後、前述したフロントおよびリアリップエッジ面70、74とフロントおよびリア傾斜面68、72に付着している塗布液Lをクリーナで拭き取る際に、塗布液Lの拭き取りを容易、かつ、確実に行い、拭き残しによる塗布欠陥の発生を防止するために、フロントリップエッジ面70およびリアリップエッジ面74、ならびに、フロント傾斜面68およびリア傾斜面72の算術平均粗さ(Ra)は、0.001μm以上、0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.001μm以上、0.2μm以下の範囲である。
【0116】
算術平均粗さ(Ra)が1.0μmより大きい場合には、クリーナによる拭き残しが生じ易く、表面の凹部に残った塗布液によって縦すじなどの塗布欠陥が発生しやすくなる。逆に、良くしすぎると加工費がかさむため、算術平均粗さ(Ra)は、0.001μm以上とするのがよい。
【0117】
本発明で規定する算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601(1994)に準拠して測定される数値である。すなわち、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその平均線の方向に、基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(X)で表したときに、次式によって求められる値を、マイクロメートル単位(μm)で表したものをいう。
【0118】
【数1】
Figure 0003684878
【0119】
【実施例】
ダイコータにおいて、非常に低粘度の塗布液、例えば、10mPa・s以下の塗布液を塗布するためには、フロントおよびリアリップエッジ面の長さを前述した寸法の範囲に規定して、塗布開始時のビード安定性を高め、塗布中におけるビードの濡れ拡がりを防止することが重要である。
【0120】
上述したフロントおよびリアリップエッジ面70、74の長さLf、長さLrとステージ6の移動速度を、種々に変更して、厚み1.1mmで、被塗布面に、Crメッキを施したガラス基板A(サイズ:縦横550mm×650mm)に、塗膜Dを形成したときの、塗布開始部の膜厚均一性と横むら欠陥の発生有無、および、塗布中における縦すじ欠陥の発生有無について実験した結果を、表1に示す。
【0121】
なお、この実験では、リップ間隙64の隙間Lgが0.1mm、クリアランスHが0.1mm、形成すべき塗膜Dの塗布厚みtが6μmに設定された。また、塗布液としては、日本合成ゴム(株)製のエポキシ系2液混合タイプのオーバーコート液「商品名:オプトマー」が、その粘度が3mPa・sになるように、その主溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとメトキシプロピルアセテートの混合液で希釈され、用いられた。
【0122】
【表1】
Figure 0003684878
表1から明らかなように、フロントリップエッジ面70の長さLfが、0.6mm以上の場合は、塗膜Dが良好に形成されないことが判る。また、リアリップエッジ面74の長さLrが、1.0mm以上の場合は、塗布速度が3m/分より速くなるほど、上述した塗布液の塗れ拡がりに要するビードの遷移時間が長くなったり、濡れ拡がる遷移時間の間に塗膜が形成される範囲が相対的に広くなるため、塗膜Dの塗布開始部で横むらが顕著に発生し、更に膜厚均一性も悪化することが分かる。
【0123】
一方、エッジ面74の長さLrが、0.1mmよりも短くなると、縦すじが発生するため、塗布速度が速くできない。更に、エッジ面70の長さLfが、エッジ面74の長さLrよりも長いと、塗布開始部の膜厚均一性が悪くなる。
【0124】
表1より、非常に粘度の低い塗布液によって高速塗布しても、良好な塗膜Dを得るには、エッジ面74の長さLrが、0.1mm以上、1.0mm未満の範囲に規定され、且つ、エッジ面70の長さLfが、エッジ面74の長さLrよりも短く、好ましくは、0.5mm以下であることが必要であることが分かる。
【0126】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の塗布装置および塗布部材の製造方法、ならびに、カラーフィルタの製造装置および製造方法によれば、その塗布器のリアリップエッジ面の長さLrが適切な範囲に規定され、フロントリップエッジ面の長さLfが前記長さLrより短くされているので、高速で薄膜塗布を行うために望まれる、非常に低粘度の塗布液を塗布する場合において、ビードの後方側への濡れ拡がりが防止され、塗布開始部からの膜厚均一化が図られ、かつ、濡れ拡がりによる横むら発生が防止される。この結果、枚葉部材が、カラーフィルタ用のガラス基板である場合には、高品質なカラーフィルタを、短いタクトタイムで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるダイコータの概略斜視図である。
【図2】図1に示されたダイコータの塗布液の供給系および各作動部材の制御系をも含めて示す概略側面図である。
【図3】図1に示されたダイコータに使用されているスリットダイの初期ビードB1の形成状態を示す横断面図である。
【図4】図3と同じスリットダイの塗布ビードB2の形成状態を示す横断面図である。
【図5】従来のスリットダイの初期ビードB1の形成状態を示す横断面図である。
【図6】図5と同じ従来のスリットダイの塗布ビードB2の形成状態を示す横断面図である。
【図7】従来のスリットダイを用いた場合において、塗布液の濡れ拡がりによって発生した塗布開始部の横むらが発生している塗布部材の概略斜視図である。
【符号の説明】
2:基台
4:ガイド溝レール
6:ステージ
8:スライド脚
12:ケーシング
14:フィードスクリュー
16:コネクタ
18:ACサーボモータ
20:センサ支柱
21:昇降アクチュエータ
22:厚みセンサ
24:ダイ支柱
26:昇降機構
28:ケーシング
30:ACサーボモータ
32:ダイホルダ
36:水平バー
38:調整アクチュエータ
40:スリットダイ(塗布器)
42:供給ホース
44:シリンジポンプ(供給手段)
46:電磁切り換え弁
48:吸引ホース
50:タンク
52:ポンプ本体
54:コンピュータ
56:シーケンサ
58:位置センサ
59:フロントリップ
60:リアリップ
62:マニホールド
64:リップ間隙
66:吐出口
68:フロント傾斜面
70:フロントリップエッジ面
72:リア傾斜面
74:リアリップエッジ面
80:横むら
A:ガラス基板(被塗布部材)
B1:初期ビード
B2:塗布ビード
C:ステージ6の移動方向
D:塗膜

Claims (8)

  1. 二つのリップが、所定のリップ間隙をもって対向して位置し、両リップの下端における前記間隙が、一方向に延びる吐出口を下面に形成してなる塗布器と、該塗布器の吐出口に対向して隙間をもって枚葉部材の表面を位置せしめて該枚葉部材を支持する支持手段と、前記塗布器と前記支持手段に支持された枚葉部材とを、前記吐出口の方向に対し実質的に直角な方向に、相対的に移動させる移動手段とを具備し、前記枚葉部材の表面に前記吐出口から粘度が10mPa・s以下の塗布液を吐出して塗膜を形成する塗布装置において、
    前記二つのリップのうち、前記枚葉部材の相対的な進行方向において、進行方向側に位置する方のリップをフロントリップとし、それとは反対側に位置する方のリップをリアリップとし、両リップの前記吐出口に連なり前記枚葉部材に対向する面を、それぞれ、フロントリップエッジ面およびリアリップエッジ面としたとき、
    a)前記フロントリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLfが、0.1mm以下であって、
    )該リアリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLrが、0.1mm以上、1.0mm未満であり、
    )前記フロントリップエッジ面の前記進行方向に沿った長さLfが、前記長さLrよりも短い、
    ことを特徴とする塗布装置
  2. 前記フロントおよびリアリップエッジ面とが、同一の面内にあることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
  3. 前記フロントリップの前面は、前記フロントリップエッジ面に連なり該エッジ面に対し角度θfをもって前記吐出口側に傾斜したフロント傾斜面を有し、前記リアリップの後面は、前記リアリップエッジ面に連なり該エッジ面に対し角度θrをもって前記吐出口側に傾斜したリア傾斜面を有し、前記角度θfおよび角度θrが、それぞれ、30°以上、60°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布装置
  4. 請求項1乃至のいずれかの塗布装置における枚葉部材が、カラーフィルタ製造用ガラス基板からなることを特徴とするカラーフィルタの製造装置。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の塗布装置を用いて塗布部材を製造するに当たり、
    (イ)前記塗布器とこれに対向して位置する前記枚葉部材の表面との隙間クリアランスを、所定の値に調整し、
    (ロ)前記吐出口から塗布液の吐出を開始した後に、
    (ハ)前記塗布器と前記枚葉部材とを相対的に移動させ、
    (ニ)前記リアリップエッジ面とそれに連なる後方の前記リア傾斜面とが交わる稜線で、前記吐出口および前記リアリップエッジ面と前記枚葉部材の表面との隙間に形成される塗布液のビードの境界線を保持しながら、
    前記枚葉部材の表面に塗膜を形成することを特徴とする塗布部材の製造方法。
  6. 前記クリアランスの値が、0.05mm以上、0.2mm以下であることを特徴とする請求項に記載の塗布部材の製造方法。
  7. 前記塗布器と前記枚葉部材とを相対的に移動する速度が、3m/分よりも高速であることを特徴とする請求項またはに記載の塗布部材の製造方法。
  8. 請求項乃至のいずれかに記載の塗布部材の製造方法における枚葉部材が、カラーフィルタ製造用ガラス基板からなることを特徴とするカラーフィルタの製造方法
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