JP3663245B2 - 電解コンデンサ駆動用電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液に関するものであり、更に詳しくは、アルミニウム電解コンデンサの高信頼性化に向けての駆動用電解液の組成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム電解コンデンサは、一般に、高純度アルミニウム箔をエッチングし、その表面を陽極酸化した陽極箔と、アルミニウム箔をエッチングした陰極箔とを、これらの電極箔の間に隔離紙が介在するように巻回したコンデンサ素子に電解コンデンサ駆動用電解液(以下、駆動用電解液という。)を含浸し、しかる後に、このコンデンサ素子をアルミニウムケースに収容して弾性封口体によって密封した構造になっている。
【0003】
近年、電子機器の小型化および軽量化を図ることを目的に、電子部品にも小型化、軽量化が要求され、かかる要求に応えるために、アルミニウム電解コンデンサでは、陽極箔の高容量化が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、アルミニウム電解コンデンサの容量は、陽極箔と陰極箔の合成容量に対応することから、陽極箔を高容量化した場合には、その分だけ、陰極箔の容量も高める必要がある。かかる陰極箔の容量は、エッチング技術の向上の結果、電極箔の実効表面積の拡大によって日々高まりつつあるが、それに伴って、陰極箔の表面は、活性になり、大気中あるいは駆動用電解液中で酸化され易くなる傾向にある。その結果、表面積が拡大された陰極箔を用いたアルミニウム電解コンデンサを周囲の部品が発熱するような条件下で長時間使用すると、陰極箔と駆動用電解液との反応によってアルミニウムケース内で水素ガスが発生し、著しい場合は防爆弁が作動する。
【0005】
そこで、従来は、駆動用電解液にニトロ化合物等の水素ガス吸収剤を配合して、発生した水素ガスをニトロ化合物等によって吸収し、アルミニウムケース内の内圧が異常に高まることを防止している。但し、この対策でも、陰極箔の表面積拡大に伴うガス発生量の増加を十分に抑えることができなくなりつつある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、陰極箔と駆動用電解液との反応に起因するガス発生を抑え、防爆弁作動のような外観異常および特性異常を防止し得るアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液において、溶媒中に、溶質とともにアセチレンアルコールを添加した事を特徴とする。
【0008】
このように構成した駆動用電解液は、繰り返し行った実験結果によれば、電極箔との反応が抑えられる傾向にある。かかる理由については、以下のように考えられる。まず、アセチレンアルコールは、一般に化学式1もしくは化学式2で表され、それが有する三重結合部分は、電子密度が非常に高く、この部分のπ電子と隣接する水酸基の活性水素原子は、金属表面(電極箔表面)に配向し、保持される。この保持されたアセチレンアルコールは、更に多分子層を形成する。すなわち、アルミニウム箔からなる陰極箔表面にアセチレンアルコールの多分子層が形成される結果、当該多分子層が駆動用電解液と陰極アルミニウムとの反応を阻止し、ガス発生を抑制する。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
本発明に係る駆動用電解液に添加可能なアセチレンアルコールとしては、1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール等があるが、本発明の目的を達成するという観点からすれば、化学式1で表されるような三重結合の片側のみにアルキル基を有しているアセチレンアルコールの添加の方が金属との結合が強いので、かかる構造のアセチレンアルコールの添加が適している。
【0012】
本発明において、前記溶媒の主溶媒としては、たとえば、エチレングリコールを用いることができ、前記溶質の主溶質としては、たとえば、有機酸、無機酸および/またはその塩を用いることができる。ここで、溶質としては、アゼライン酸、アジピン酸、1,6−デカンジカルボン酸等のカルボン酸類、安息香酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸類、ホウ酸等の無機酸類あるいはこれらの塩類を用いることができる。
【0013】
また、前記溶媒として、たとえば、エチレングリコールと水との混合溶媒を用い、前記溶質としては、たとえば、アジピン酸および/またはその塩を用いた駆動用電解液でも、アセチレンアルコールの添加は有効である。
【0014】
アセチレンアルコールの添加量はアセチレンアルコールの種類にもよるが、その種類、溶媒の種類等々にかかわらず、電極箔を効果的に保護するという観点からすれば、0.1重量%から10重量%までの範囲とすることが好ましい。すなわち、アセチレンアルコールの添加量が0.1重量%未満であると、陰極箔上へのアセチレンアルコールの多分子層の形成が不十分であり、その効果が小さい一方、10重量%を超えると駆動用電解液の火花電圧を低下させる傾向にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した電解コンデンサの駆動用電解液の実施例を説明する。以下の各実施例は、最も一般的なアルミニウム電解コンデンサに適用した例で説明するため、アルミニウム電解コンデンサの構造についての図示や詳細な説明を省略するが、概ね以下の工程によって製造される巻回構造のアルミニウム電解コンデンサに適用した例である。
【0016】
本例のアルミニウム電解コンデンサは、アルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理し、燐酸塩等の中性ないしは弱酸性水溶液中にて陽極酸化し、表面に酸化皮膜を形成し、その後、電極引き出し用リードタブを取り付けてアルミニウム陽極箔を形成する。一方、アルミニウム箔にエッチング処理を施した後、電極引き出し用リードタブを取り付けて、アルミニウム陰極箔を作製する。次に、陽極箔と陰極箔との間に隔離紙が介在するように、陽極箔、陰極箔、および電解紙を重ね合わせて巻回し、コンデンサ素子を作製する。そして、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸した後、たとえば、有底筒状のアルミニウムケースに収容し、しかる後に、ケース開口を弾性封口体で密閉する。
【0017】
このような方法により製造されるアルミニウム電解コンデンサに関し、その駆動用電解液として、本例では、表1に示す組成の電解液を用いる。
【0018】
【表1】
【0019】
ここで、駆動用電解液の主溶媒は、いずれも、エチレングリコールを主溶媒とし、安息香酸アンモニウムを溶質として溶解してある。また、各電解液組成のうち、試料Aは、従来例1に係る駆動用電解液であり、この組成をベースにアセチレンアルコールを添加し、溶解した電解液(試料B,C,D,E)が本発明を適用した駆動用電解液である。
【0020】
また、本例では、上記と同じ構造のアルミニウム電解コンデンサに関し、その駆動用電解液として、表2に示す組成の電解液についても検討した。
【0021】
【表2】
【0022】
ここで、駆動用電解液は、いずれも、エチレングリコールと水の混合溶媒であり、アジピン酸アンモニウムを溶質として溶解してある。また、各電解液組成のうち、試料Hは、従来例2に係る電解液であり、この組成をベースにアセチレンアルコールを添加し、溶解した電解液(試料I,J,K,L,M)が本発明を適用した駆動用電解液である。
【0023】
かかる電解液について、表1に示す従来例および実施例に係る各駆動用電解液を用いて、定格200V−100μFのアルミニウム電解コンデンサを試作した。また、表2に示す従来例および実施例に係る駆動用電解液を用いて、定格35V−1000μFのアルミニウム電解コンデンサを試作した。
【0024】
これらの供試コンデンサを、105℃に保持された恒温槽中にて定格直流電圧を5000時間連続印加し、防爆弁の作動時間と防爆弁の作動数を測定した。防爆弁が作動しなかったアルミニウム電解コンデンサについては、試験後の電気的特性を測定した。電気的特性は、120Hzにおける容量、 Tanδ、および定格直流電圧を1分間印加した後にアルミニウム電解コンデンサに流れる電流(漏れ電流)を20℃で測定した。その結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3に示した結果から明らかなように、従来の駆動用電解液(試料A、H)を用いたアルミニウム電解コンデンサは、105℃雰囲気中での負荷試験において5000時間経過するまでに防爆弁の作動が発生した。これに対して、本発明を適用した駆動用電解液(試料B,C,D,E、および試料I,J,K,L,M)を用いたアルミニウム電解コンデンサは、105℃雰囲気中での負荷試験において5000時間経過しても、防爆弁の作動がなく、従来の電解液(試料A、H)を用いたアルミニウム電解コンデンサに比較して、高温での安定性に優れていることが確認できた。それ故、本発明を適用した電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサは、周囲の部品が発熱するような条件下での使用においても、長時間にわたって防爆弁が作動しないだけでなく、良好な電気的特性を維持し、信頼性が高い。
【0027】
本発明のアセチレンアルコールの添加量は、各実施例に示したように0.5重量%でも信頼性を高める効果が認められ、その効果は、添加量を増すほど大きくなる傾向にある。但し、アセチレンアルコールは、添加量が0.1重量%未満では、効果が小さくなる一方、添加量が10重量%を超えると、電解液の火花電圧が低下する傾向にあるので、その添加量としては0.1重量%から10重量%までの範囲が好ましいといえる。
【0028】
なお、上記実施例では、エチレングリコール系溶媒を用いた例を説明したが、たとえば、γ−ブチロラクトンとエチレングリコールとの混合溶媒系等にアセチレンアルコールを添加してもよく、このような場合でも、駆動用電解液中に含まれる少量の水分と電極箔との反応を防止できるという利点がある。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る駆動用電解液では、アセチレンアルコールを添加したことに特徴を有し、かかるアセチレンアルコールの添加は、電解液と電極箔との反応を抑制する傾向にある。従って、本発明を適用した駆動用電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサは、高温雰囲気下における使用においても長時間にわたって防爆弁が作動することがなく、良好な特性を維持するなど、信頼性が高いという効果を奏する。
Claims (4)
- アルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液において、溶媒中に、溶質とともにアセチレンアルコールを添加した事を特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
- 請求項1において、前記溶媒は、主溶媒がエチレングリコールであり、前記溶質は、主溶質が有機酸、無機酸および/またはその塩であることを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
- 請求項1において、前記溶媒は、エチレングリコールと水との混合溶媒であり、前記溶質は、主溶質がアジピン酸および/またはその塩であることを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
- 請求項1ないし3のいずれかの項において、前記アセチレンアルコールの添加量は、0.1重量%から10重量%までの範囲にあることを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
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