JP3647309B2 - 電極及びその製造方法及び該電極を用いた電気化学センサー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフローセル、クロマトグラフィー、バイオセンサーなどの検出器に応用されるカーボン被覆電極及びこれを用いた電気化学センサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
もっとも容易で環境にやさしい測定方法の一つに電気化学的測定が一般的に知られており、水素イオン濃度、微量金属イオン検出、生体中の微量成分などの検出に利用されている。つまり、溶液中に溶解している原子、分子、イオン等の検出として電気化学反応を用いた電極電子移動に伴う電流値の測定をすることによる方法が利用されていて、現在様々な分野で応用されている。
【0003】
このような測定を行う上でより明確な目的物質の検出をするためには、電位窓が大きく、電極自身の反応性が小さく、一定面積でのより速い電子移動反応が求められている。
【0004】
上記のような性質を持った、よりよい電極材料としては炭素が従来より注目されている。従来、電極材料としては金、白金、パラジウムなどの貴金属、水銀、SnI2 、In2 O3 などの半導体、クラッシーカーボン、結晶性カーボンなど半金属が使用されていた。
【0005】
これらの材料中、貴金属類は、酸素過電圧が高く酸化溶解し難いため、酸化側では広い電位範囲内において測定用電極として使用可能である。しかしながら、金電極では、ハロゲンイオンやシアンなどを含有する溶液中では錯形成して溶解が生じ易く、測定可能の電位範囲は小さくなる。また、貴金属は水素過電圧が小さいために還元側の測定に使用し難い欠点もあり使用が限定される。
【0006】
一方、水銀電極では、水素過電圧が大きく還元側の測定には適するが、酸化側では溶解が生じるため酸化反応の測定には使用できない。SnI2 、In2 O3 は透明電極として使用され、測定可能の電位範囲も相当に広いが、還元側では、錫やインジウムに電極が還元される欠点がある。
【0007】
一般的なカーボン電極は、耐蝕性が強く、酸化還元側とも電位窓が広いために広い電位における物質検出が可能であり、センサーとして、またクロマトグラフ用の検出器として、最も広く利用されている。一言で炭素電極と総しても、実際はいくつかに分類する事ができる。グラファイト電極、カーボンペースト電極、グラッシーカーボン電極等が代表例として一般的によく知られている。その中でも注目すべき炭素電極として、熱分解グラファイト電極が挙げられるが、この電極は結晶構造が層状に揃ってできるため、液体及び気体はしみ込まず金属などの不純物の混入も多孔性グラファイトに比べて少ないため残余電流は小さくなる。その他に、すべての炭素電極でいえる事だが、電位窓が広く、白金電極と比べて値段が安く、表面研磨ができ容易に再生され、その上水素過電圧が小さいため、生態関連物質の測定に適している等様々な特徴が知られている。
【0008】
また、被覆されるカーボンの高配向性を求めるにあたり、炭化水素と不活性ガスの混合気体を高温で熱処理する方法が知られている。実際の温度として、2100〜3600℃という超高温で処理すると高配向性が得られるが、ほとんどの下地がこの温度に耐えることができず、溶解してしまう。そこで、触媒金属に浸すことによる、高配向性処理温度の低下が期待できる。例としては、Chem.Mater.,1998,10,260に報告されている。
【0009】
また、近年注目されているカーボンファイバー電極(直径が数μm)が、微小センサー用電極として、さらには高速掃引時の電極反応についても用いられている。
【0010】
その中でも、マイクロアレイ電極は溶液中の水素イオン濃度、微量金属イオン検出、生体中の微量成分などの測定に利用されている。測定に用いられる電極材料としては、広い電位範囲における測定が可能であることが重要である。測定可能の電位範囲、即ち電位窓は電極、溶媒、支持電解質により相異し、この電位窓の範囲内では電極は理想分極する。最も一般的な水溶液系の場合は、水素過電圧が大きく、酸素過電圧も大きく、さらに電極の溶解電位が高いものの電位窓が広いという条件である。
【0011】
また、現在マイクロ電極は高感度であって、応答が速いことが知られている。又、フローインジェクションやクロマトグラフィーの検出電極の応答挙動は、電極形状に依存し、電極サイズが減少するに従って、応答が速くなるため、種々の電極形状や電極の微細化が検討されている。さらに、カーボン電極ではガラス細管の内壁表面上に微小リング電極として利用された例が、Anal.Chem.,58(1989),1782に報告されている。これらの電極は生体内など微小領域の測定には有効であるが、検出できる電流値はnAオーダー以下に低下し、測定時にノイズ増加や感度の低下が生じるため、低濃度の試料の測定が困難となり測定時に電気的シールドを必要とするなどの問題があった。
【0012】
電極の感度向上のため、作用電極数を増加すること、即ち、アレイ化の試みとして、多数の炭素繊維をエポキシ樹脂などのプラスチック中に封入し、使用した例がAnal.Chem.,61(1989),159に報告され、又、グラッシーカーボン、または結晶性カーボンの電極上に絶縁膜がコートされた後、レーザーが使用されて微細な孔が多数穿設されてアレイ電極が多数作製された例がAnal.Chem.,62(1990),1339に報告されているが、これらは電極の作製に長時間が必要という欠点を有する。特に、前者では電極間の距離が正確に制御できないことが原因して応答の再現性に問題がある。
【0013】
しかし、アレイ電極は、一般的にバックグラウンド電流が大きくなりナノレベルでの希薄溶液の測定に適するようにするためには、更なる改良が必要とされている。
【0014】
一方、アルミニウムの陽極酸化によって形成されたナノレベルでの規則的な細孔構造を利用することにより高密度、高感度、高効率などの機能を有するデバイスヘの応用が近年注目されている。ナノオーダースケールでの規則性を有する細孔構造形成の従来法としては、ポリマー加工したメンブレンフィルターや、ポーラスガラス等が知られているが、これらは直行する細孔がほぼ等間隔に平行して形成されるハニカム構造をとったり、細孔径、細孔間隔、細孔深さを自由に変化させる事は極めて困難な事である。しかし、上記の陽極酸化アルミナ膜は、電解するだけである程度配列されたハニカム構造を作製する事が知られている。また、この細孔は陽極酸化時の電圧によって間隔が規制でき、陽極酸化時間によって孔の深さが規制できる。また、孔径は浴組成、浴温、電圧などに依存する事が知られている。このような特性を持った陽極酸化アルミナ膜は、ナノ構造デバイスとして様々な新規応用分野に関心が寄せられている。
【0015】
また一方、最近話題となっている60個の炭素原子から構成される安定なクラスターのフラーレンに続いて発見されたカーボンナノチューブは、ナノメータースケールでのユニークな特性が数多く確認されている。まず、カイラリティーによる物性変化がある。カイラリティーを持たないカーボンナノチューブは金属的で、カイラリティーを持っていると半導体となることが確認されている。このカイラリティーのピッチの大きさによってギャップが変化し、直径の増加によりグラファイトに近づく。また、分子素子の部品となり得る1次元ナノ構造結晶であり、チューブの先端の先鋭性によりSPM探針や、電子源として用いることも行われている。またチューブ内に金属等をインターカレーションすることも検討されていて、それを利用した電池など様々な分野で応用例が研究されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来のナノ構造を用いた電極は、バックグラウンド電流や、従来期待していた値より感度が低い結果となる欠点を持っている。
【0017】
本発明の目的は、従来の電極よりも溶液系での電気化学反応をより高感度に検出するための電極製造である。すなわち、本発明は、上述した従来技術によって作製された電極よりも広い電位窓、小さい残余電流、小さいバックグラウンド電流、規制された構造と言う点を改善したカーボン被覆電極及びこれを用いた電気化学センサーを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0019】
すなわち本発明の第1は、基板上に配された導電性膜上に多孔体(多孔質体)を有し、少なくとも、該多孔体(多孔質体)の孔部にカーボン膜が配され、該カーボン膜は該多孔体の孔部を埋めることなく該孔部の内壁を被覆するものであり、該カーボン膜と前記導電性膜とが電気的に接続されてなることを特徴とする電極に関する。
【0020】
上記本発明の電極は、前記カーボン膜と前記導電性膜とが電気的接続されるため、基板の上下双方からカーボン膜に電流を流すことができる。この場合、多孔体(多孔質体)の凹部内の内壁のみがカーボン膜で被覆されている形態をとることにより高感度な測定が可能になる。
【0021】
特に、前記カーボン膜を構成するカーボンの面間隔が、0.3355nm〜0.3400nmであるものは、電位窓、残余電流バックグラウンド電流などに極めて良好な特性を示す。
【0022】
導電性膜にはNb、Ti、Ta、Zr、Hf、W、Moの元素を主成分とする材料を用いることが可能であり、この場合にはカーボン膜と導電性膜が導電パスにより接続していることが好ましい。
【0023】
また、導電性膜としてSi、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、Cの元素を主成分とする材料を用いることも可能であり、この場合には多孔体の孔(凹部)が導電性膜まで貫通し、カーボン膜が孔(ナノホール)の底部で導電性膜と接続していることが好ましい。
【0024】
本発明の第2は、上記本発明の第1の電極の製造方法であって、前記カーボン膜に対する触媒作用を有する材料を、少なくとも前記多孔体の孔部に配する工程と、続いて、前記カーボン膜を少なくとも前記多孔体の孔部に配する工程とを有することを特徴とする電極の製造方法に関する。
【0025】
前記カーボン膜を前記多孔体上に配する工程には、CVD法を好ましく用いることができる。
【0026】
また、前記カーボン膜に対する触媒作用を有する材料としてはFe、Ni、Coを好ましく用いることができ、これによりカーボン膜の配向性を向上させることができる。
【0027】
本発明の第3は、上記本発明の第1の電極を用いた電気化学センサーであって、酵素、抗体、抗原、触媒から選ばれた少なくとも1つを前記カーボン膜に固定化したことを特徴とする電気化学センサーに関する。
【0028】
さらに本発明の第4は、上記本発明の第1の電極を用いた電気化学センサーであって、前記孔部(凹部)の孔径によって、電気化学的に目的分子を分離できることを特徴とする電気化学センサーに関する。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のカーボン被覆電極の一実施形態を示す断面図である。図中、1は基板、2は導電性膜、4は多孔体(多孔質体)であり、好ましくは陽極酸化法により形成されたアルミナからなる。6はカーボン膜、7は凹部(孔)である。
【0030】
多孔体4を陽極酸化法で作成した陽極酸化アルミナから構成すると、直径(孔径)がナノサイズの凹部7が高密度に配列されるので好ましい。
【0031】
基板1としては、例えばSiやPt、Au、Ni、Cu、Ag、Nb等の金属類を少なくとも1種を含む金属単体または合金からなる導電性基板を用いることができる。なお、本発明ではカーボン膜6は、好ましくはCVD法を用いて形成される。そのため、高温での熱膨張率および溶解を考慮して基板材料を適時選択することが好ましい。
【0032】
前記多孔質体として陽極酸化法を用いて形成されるアルミナナノホールを用いる場合には、その下地となる導電性膜2としては、陽極酸化によって多孔質体を形成する金属あるいは合金の使用が望ましい。より好ましい材料として、加工性が優れていて安価なものを用いることである。具体的には、Alの下地としての導電性膜材料にNb、Ti、Ta、Zr、Hf、Ge、W、Moの単体もしくは合金など、Al陽極酸化時に下地物質のパス5が確認されるものを使用し、この細孔体を被覆するカーボン膜6との接続がこのパス5で行われることが好ましい。尚、本発明における多孔質体は上記した陽極酸化法に限られるものではない。
【0033】
また、導電性膜材料にSi、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、Cなど、Al陽極酸化時に下地物質まで貫通することが確認されるものを使用し、この細孔体(多孔質体)を被覆するカーボン膜6との接続がこの細孔(凹部)底で行われることも好ましい。
【0034】
カーボン被覆に関しては、例えば炭化水素を気相炭化させる方法を用いることができる。炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン等の常温で気体であるものがより適している。
【0035】
この電極は見掛け上の電極面積よりも多孔質体の細孔の凹凸によって表面積が拡大していることを特徴としている。また、規則化及び配列が行われているため、実質表面積も計算できる。更に、凹凸構造を形成することにより、より検出物質を明確に検出できる特徴を有する。また、カーボン被覆の電極であることより残余電流が小さい、電位窓が広い、白金電極などと比べてコストがかからない、水素過電圧が小さい等の特徴を持っている。これらのことより、希薄溶液の測定に有効な手段であるといえる。
【0036】
また、図1に示したような本発明の電極に、酵素、抗体、抗原、触媒などを固定化することにより、電気化学センサーとして好適に用いることができる。
【0037】
上記の酵素としては、グルコースオキシターゼ、アルカラインホスフェターゼ、アルコールオキシデース、コレステロールオキシデース、ジアホラーゼ、ガラクトースオキシターゼ、コリンオキシデース、L−アスコペートオキシターゼ等を挙げることができる。
【0038】
酵素を固定化する方法としては、電極の作製に使用した基板の表面処理により活性な置換基を導入して酵素を共有結合により固定化するか、または作用電極の近傍または作用電極間に置換基を持つ高分子のパターンを作製し、この高分子と上記に例示した酵素とを反応させる方法、水溶性高分子の架橋物などの多孔性材料のパターンを形成し、酵素を吸着または吸収により固定化する方法などを挙げることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の電極の構成について、実施例によって具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例の内容に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
本実施例は、Si基板上にNb、Alを順にスパッタし、そのサンプルを陽極酸化し、カーボンを被覆して、図1に示したような電極を作製した例である。
【0041】
以下、本実施例の電極の製造方法を図2を用いて説明する。
【0042】
本実施例の基板1としては、10-2Ωcmの抵抗値を有する鏡面研磨されたn型の単結晶Si基板を用いた。n型はリンドープである。このSi基板1上に、RFスパッタ法によりに厚さ100nmのNb膜2を製膜した(図2(a))。その後、Al膜3を500nm成膜した(図2(b))。
【0043】
次に、陽極酸化を行った。本実施例においては、溶液は0.3Mのシュウ酸水溶液とし、恒温水槽により溶液を17℃に保持した。ここで陽極酸化電圧はDC40Vであり、電極は均一に陽極酸化が進行するようにSi基板1の裏側全面からとった。陽極酸化工程途中、陽極酸化がAl膜3表面から進行しNb膜2まで到達したことを示す電流を検知するため、陽極酸化電流をモニターした。反応が進行するに連れてAlが酸化され、絶縁層のアルミナになっていくのと同時に、ホールが成長していく(図2(c))。最終的には下地Nb膜2が導電パス5で上部と導通した(図2(d))。陽極酸化処理後、純水、およびイソプロピルアルコールによる洗浄を行った。その後、サンプルを5wt%リン酸溶液中に20〜45分間浸してポアワイドニング処理を行い、適宜、ナノホールの孔径を広げた。
【0044】
ポアワイドニング処理後のサンプルを管状炉内に入れ、設定温度まで毎分5℃ずつ上昇させた。熱処理中は、常に2%H2 /98%Heを33sccmで流し、炭化水素ガスとして1%C2 H2 /99%He、1%C2 H4 /99%Heを66sccmで流して使用した。炭化水素熱分解時は、合計100sccmのガスが流れ、混合比はC2 H4 :H2 :He=1:1:1×102 である。2%H2 /98%He雰囲気で1000℃まで3時間20分かけて加熱し、10分間1000℃で保持し、その後1%C2 H2 /99%Heを10分間流した。その後、1000℃で1時間保持した後、3時間20分かけて冷却させた。その結果、図1に示すように、アルミナ4上にカーボン膜6が被覆された。
【0045】
取り出した試料の表面、断面をFE―SEM(Field Emission−Scanning Electron Microscope:電界放出走査型電子顕微鏡)にて観察した。その結果、図1に示したようにNb膜2より導電パス5がホール底に成長し、ナノホール表面を被覆しているカーボン膜6に接続されていることが確認できた。
【0046】
次に、作製されたカーボン被覆電極を作用極として電解溶液中で使用するために行った加工を図3を用いて説明する。
【0047】
作製されたカーボン被覆電極10を作用極として用いるために、まずこの膜電極10の両面からスリーエム社製の導電性テープ9で挟み込んだ。そして、その上から、膜電極10の表面が溶液内に接するように加工したカプトンテープ8を貼り絶縁部を作った。この時、カプトンテープ8を固定するためにスリーエム社製のフィラメントテープ7を使用した。完成状態を図4に示した。
【0048】
このようにして加工したカーボン被覆電極を作用極として使用し、電気化学測定を行った。ここで用いた試薬は、一般的な酸化還元応答を観るときに使用するヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムである。具体的には、電解溶液として10mMのヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液を使用し、支持電解質として1.0Mの塩化カリウムを用いた。
【0049】
カーボン被覆アルミナ膜電極を作用極として使用し、CV応答を測定した結果、このサイクリックボルタモグラムより酸化電位が0.28V、還元電位が0.18Vであり、酸化ピーク電流値が47mA、還元ピーク電流値が−44mAに観られた。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同様にして作製したカーボン被覆アルミナ膜電極の一方のみにリード線を接続し、グルコースオキシターゼとピロールの水溶液に浸漬し、電解重合することにより、グリコースオキシターゼを包括したピロール重合膜をカーボン被覆アルミナ膜電極上に析出させることで、グルコースセンサー用の電極を作製した。
【0051】
本実施例で作製した電気化学測定用セル及び検出装置の模式図を図5に示す。本実施例で用いたフローインジェクションーアンペロメトリー検出システムでは、キャリアー溶液を送液ポンプ11で送液した条件下で、流路系にインジェクター12で導入した試料をフロー電解セルに流入させ、定電位電解を行い電解電流を測定した。電解電流の検出には、BAS社製フローセル電極を用いた。その際、基質を効率よく電解するために、電極に接する流路はガスケット(絶縁膜)17により規制した。なお、図6中、14はカーボン被覆アルミナ膜電極のリード部分、15は参照電極、16は対極、18は廃液、19はポテンシオスタット、20はモニターである。
【0052】
本実施例ではリン酸緩衝液(0.1mol/l、pH6.8)を送液ポンプ11で流し、グルコースを種々の濃度で溶解したリン酸緩衝液(0.1mol/l、pH6.8)をインジェクター12でインジェクションした。この次に、カーボン被覆アルミナ膜電極14に0.6Vの電位を印加したところ、グルコースオキシダーゼの作用により生成した過酸化水素の酸化電位が観測された。電流量は、グルコース1mmol/lあたり1mAであった。
【0053】
また、サンプル溶液0.1ml以下で充分に検出することができ、フラクトースなどの不純物を多量に含むグルコース溶液においても、不純物に影響されることなく、グルコースを選択的に検出できた。
【0054】
(実施例3)
ゴーシュ状の物質にグルコースオキシターゼを固定化し、この固定化酵素膜を実施例1と同様にして作製したカーボン被覆アルミナ膜電極上に張り付け、実施例2と同様の測定を行った。なお、固定化酵素膜に関しては、図6に示すような網目状のところに酵素を固定化した。
【0055】
図8に本実施例で作製したカーボン被覆アルミナ膜電極の略図を示した。21は固定化酵素膜、6はカーボン、4は陽極酸化アルミナ、2はNb膜、1はSi基板である。
【0056】
測定装置については、図5に示した電極14として図8の電極を取り付けている。
【0057】
本実施例ではKCl水溶液(0.1mol/l)を送液ポンプ11で流し、グルコースを種々の濃度で溶解したKCl水溶液(0.1mol/l)をインジェクター12でインジェクションした。この次に、酵素修飾カーボン被覆アルミナ膜電極14に0.6Vの電位を印加したところ、グルコースオキシダーゼの作用により生成した過酸化水素の酸化電位が観測された。電流量は、グルコース1mmol/lあたり10mAであった。
【0058】
また、サンプル溶液0.1ml以下で充分に検出することができ、フラクトースなどの不純物を多量に含むグルコース溶液においても、不純物に影響されることなく、グルコースを選択的に検出できた。
【0059】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば以下の効果を奏する。
(1)本発明の電極は、電位窓が広く、残余電流及びバックグラウンド電流が小さい特性を示し、希薄溶液等の測定が可能になった。
(2)多孔体(多孔質体)の細孔内の内壁のみカーボン膜が被覆されていて、導電性膜の少なくとも1部分がカーボン膜と電気的接続された構造をもつことにより、高感度な測定が可能になった。
(3)触媒となりうる物質に多孔体(多孔質体)を浸した後、カーボンを被覆することによって配向性を向上させることができた。
(4)本発明の電極の近接もしくは少なくとも表面カーボンの1部分に直接に酵素や抗体、抗原、触媒を固定化した修飾電気化学電極は、高感度な電気化学センサーとすることができた。
(5)本発明の電極において、多孔体(多孔質体)の孔の孔径によって、電気化学的に目的分子を分離もしくは単離等の特性を持った電極を作製できた。
(6)以上の優れた特性を有する本発明の電極は、様々な分野で更なる応用が期待され、例えばフローセル、液体クロマトグラフィー、バイオセンサー、などの超高感度分子検出器に使用可能な電気化学電極として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の電極の製造工程を説明するための図である。
【図3】本発明の電極を作用極として利用するための作成方法を説明するための図である。
【図4】本発明の電極を作用極として作成した完成状態を示す図である。
【図5】本発明の電極を利用したフローインジェクション法による試料検出器の概略図である。
【図6】酵素を固定化した網目状物質の概略図である。
【図7】図6の固定化酵素膜をカーボン上に密着させた本発明の電極の断面図である。
【符号の説明】
1 Si基板
2 Nb膜
3 Al膜
4 多孔質体(陽極酸化アルミナ)
5 Nb(導電パス)
6 カーボン
7 フィラメントテープ
8 カプトンテープ
9 導電性テープ
10 カーボン被覆アルミナ膜電極
11 送液ポンプ
12 インジェクター
13 Siチューブ
14 作用電極(カーボン被覆アルミナ膜電極)
15 参照電極
16 対極
17 ガスケット
18 廃液
19 ポテンシオスタット
20 モニター
21 固定化酵素膜
Claims (10)
- 基板上に配された導電性膜上に多孔体を有し、少なくとも、該多孔体の孔部にカーボン膜が配され、該カーボン膜は該多孔体の孔部を埋めることなく該孔部の内壁を被覆するものであり、該カーボン膜と前記導電性膜とが電気的に接続されてなることを特徴とする電極。
- 前記多孔体がアルミナからなることを特徴とする請求項1に記載の電極。
- 前記多孔体が陽極酸化法により形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の電極。
- 前記導電性膜がNb、Ti、Ta、Zr、Hf、W、Mo、Si、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、Cから選ばれた少なくとも1つの元素を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電極。
- 前記孔部により、前記導電性膜が露出してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電極。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の電極を製造する方法であって、前記カーボン膜に対する触媒作用を有する材料を、少なくとも前記多孔体の孔部に配する工程と、続いて、前記カーボン膜を少なくとも前記多孔体の孔部に配する工程とを有することを特徴とする電極の製造方法。
- 前記カーボン膜を配する工程がCVD法により行われることを特徴とする請求項6に記載の電極の製造方法。
- 前記カーボン膜に対する触媒作用を有する材料が、Fe、Ni、Coから選ばれた少なくとも1つからなることを特徴とする請求項6または7に記載の電極の製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の電極を用いた電気化学センサーであって、酵素、抗体、抗原、触媒から選ばれた少なくとも1つを前記カーボン膜に固定化したことを特徴とする電気化学センサー。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の電極を用いた電気化学センサーであって、前記孔部の孔径によって、電気化学的に目的分子を分離できることを特徴とする電気化学センサー。
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