JP3645984B2 - ポリエステル樹脂製複合成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる、エポキシ樹脂との接着性が大幅に改善された成形品に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、自動車、電気・電子機器その他の諸工業の分野での部品に好適に用いられ、特にエポキシ系樹脂接着剤により接着を行う各種コネクターケース、蓋等およびエポキシ樹脂をポッティングし、気密性を持たせる各種自動車部品に好適に用いられる複合成形品に関する。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばアルキレンテレフタレート樹脂等は機械的性質、電気的性質その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるがゆえにエンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広範な用途に使用されている。
かかる結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独でも種々の成形品に用いられているが、利用分野によってはその性質、特に機械的性質を改善する目的で、様々な強化剤、添加剤等を配合することが行われてきた。しかしながら、ポリエステル樹脂は他樹脂との接着強度、特にエポキシ樹脂との接着強度が比較的低い。
【0004】
そのため、例えばエポキシ系接着剤によるポリエステル樹脂同士の接合、ポリエステル樹脂と他の材料との接合、あるいはエポキシ樹脂による電気・電子部品の封止等の際、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との接着強度が低いことが、しばしば問題となっている。
これらの問題を解決する方法として、ポリエステル樹脂に非晶性ポリマー(エラストマー)を添加する方法、あるいはエポキシ樹脂を添加する方法等が知られている。また、成形面からは、金型温度を下げ、接着面を粗くし、接着面の表面積を大きくする方法等が一般的に用いられている。これらの方法により成形品のエポキシ密着性は多少向上するものの、十分な接着強度は得られず、ほとんどが樹脂接着面での界面剥離により剥がれてしまう。また、多量に非晶性ポリマー(エラストマー)を添加すると、著しく強度・剛性の低下および成形性の低下(離型性・流動性)が見られる。
そこで、優れた機械強度および成形性を維持しながら、高いエポキシ樹脂接着強度を有するポリエステル樹脂成形品の開発が求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み、エポキシ樹脂との接着性に優れた素材を得るべく鋭意検討した。その結果、熱可塑性ポリエステルを主体とし、これに特定の共重合体、無機充填剤及び特定の化合物を配合した組成物は、熱安定性がよく、機械的物性及び流動性の大きな低下がなく、エポキシ樹脂との接着性が大幅に改良された材料であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、(A) 熱可塑性ポリエステル樹脂 100重量部に対し、(B) 同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体 0.5〜80重量部、(C) 繊維状充填剤、非繊維状無機充填剤又は両者の混合物0〜200 重量部、 (D) エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた多官能性化合物の少なくとも1種 0.1 〜 10 重量部を配合した樹脂組成物を成形してなる成形品の表面にエポキシ樹脂系接着剤を塗布し、同材もしくは異材と接合してなる複合成形品、および
上記樹脂組成物を成形してなる成形品の表面にエポキシ樹脂をポッティングしてなる複合成形品である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。
まず、本発明の基体樹脂である熱可塑性ポリエステル樹脂(A) とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれら三成分化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであっても良い。
ここで用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物の例を示せば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸のごとき公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等である。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、たとえばジメチルエステルのごとき低級アルコールエステルの形で重合に使用する事も可能である。
次に本発明のポリエステル(A) を構成するジヒドロキシ化合物の例を示せば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAのごときジヒドロキシ化合物、ポリオキシアルキレングリコールおよびこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等であり、一種又は二種以上を混合使用することができる。
また、オキシカルボン酸の例を示せば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。また、これら化合物のエステル形成可能な誘導体も使用できる。本発明においてはこれら化合物の一種又は二種以上が用いられる。
また、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであっても良い。
本発明では、上記の如き化合物をモノマー成分として、重縮合により生成する熱可塑性ポリエステルは何れも本発明の(A) 成分として使用することができ、単独で、又、二種以上混合して使用されるが、好ましくはポリアルキレンテレフタレート、さらに好ましくはポリブチレンテレフタレート及びこれを主体とする共重合体が使用される。
また本発明においては、熱可塑性ポリエステルを公知の架橋、グラフト重合等の方法により変性したものであっても良い。
【0007】
次に本発明において(B) 成分として用いられるブロック重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1 −ジフェニルスチレン等のうちから一種または二種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3 −ペンタジエン、2,3 −ジメチル−1,3 −ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3 −オクタジエン、フェニル−1,3 −ブタジエン等のうちから一種、または二種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
ここで言うブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であり、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合比は5/95〜70/30であり、特に10/90〜60/40の重合比が好ましい。
また、本発明に供するブロック共重合体の数平均分子量は5000〜600000、好ましくは 10000〜500000の範囲であり、分子量分布〔重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)〕は10以下である。またブロック重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
例えば、A-B-A 、B-A-B-A 、(A-B-)4Si 、A-B-A-B-A 等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック重合体である。さらにブロック重合体の共役ジエン化合物の不飽和結合は部分的に水素添加したものでもよい。
本発明に供するブロック重合体の製造方法としては、上記した構造を有するものが得られるのであればどのような製造方法もとることもできる。例えば、特公昭40−23798 号、特公昭43−17979 号、特公昭46−32415 号、特公昭56−28925 号公報に記載された方法により、リチウム触媒などを用いて不活性溶媒中でビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を合成することができる。
【0008】
さらに、特公昭42−8704号、特公昭43−6636号公報、あるいは特公昭59−133203号公報に記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、本発明に供する部分的に水添したブロック共重合体を合成することができる。
本発明では上記したブロック共重合体をエポキシ化することにより本発明で使用されるエポキシ変性ブロック共重合体が得られる。
本発明におけるエポキシ変性ブロック共重合体は、上記のブロック共重合体を不活性溶媒中でハイドロパーオキサイド類、過酸類などのエポキシ化剤と反応させることにより得ることができる。
過酸類としては過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸などがある。このうち、過酢酸は工業的に大量に製造されており、安価に入手でき、安定度も高いので好ましいエポキシ化剤である。
ハイドロパーオキサイド類としては過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどがある。
エポキシ化の際には必要に応じて触媒を用いることができる。例えば、過酸の場合、炭酸ソーダなどのアルカリや硫酸などの酸を触媒として用い得る。また、ハイドロパーオキサイド類の場合、タングステン酸と苛性ソーダの混合物を過酸化水素と、あるいは有機酸を過酸化水素と、あるいはモリブデンヘキサカルボニルをターシャリーブチルハイドロパーオキサイドと併用して触媒効果を得ることができる。
エポシキ化剤の量に厳密な規制はなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤、所望されるエポキシ化度、使用する個々のブロック共重合体の如き可変要因によって決まる。
不活性溶媒としては、原料粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であれば芳香族化合物、エーテル類、エステル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロホルムである。エポキシ化反応条件には厳密な規制はない。用いるエポキシ化剤の反応性によって使用できる反応温度域は定まる。例えば、過酢酸についていえば0〜70℃が好ましく、0℃より低いと反応が遅く、70℃を越えると過酢酸の分解が起こる。また、ハイドロパーオキサイドの一例であるターシャリブチルハイドロパーオキサイド/モリブデン二酸化物ジアセチルアセトナート系では同じ理由で20〜150 ℃が好ましい。反応混合物の特別な操作は必要なく、例えば混合物を2〜10時間攪拌すればよい。得られたエポキシ変性共重合体の単離は適当な方法、例えば貧溶媒で沈澱させる方法、重合体を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒法などで行うことができる。
上記エポキシ変性ブロック共重合体のエポキシ当量は、 140〜2700g/mol であることが好ましく、特に好ましくは 200〜2000g/mol である。エポキシ当量が2700g/mol を越えると、相溶性が改善されずに相分離が起こり、140 g/mol 未満でも期待される効果(相溶性など)におよぼす以上の効果は得られず、特にゲル化合物などの副反応を重合体の単離中に起こしやすくなるので好ましくない。
その効果的添加量はポリエステル樹脂(A) 100 重量部に対し 0.5〜80重量部、好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは5〜40重量部の範囲である。この添加量が少な過ぎるとエポキシ樹脂との接着性の向上が見られず、逆に多すぎると材料の流動性を低下させ、成形性も低下させるため、好ましくない。
【0009】
次に本発明で用いられる(C) 成分の充填剤は成形収縮率及び線膨張係数を低下させ、高い機械的強度、剛性を必要とする際に必須とされる成分で、目的に応じて繊維状、非繊維状(粉粒状、板状)の充填剤が用いられる。かかる充填剤のうち繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維又はカーボン繊維である。なおポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質も無機繊維状充填剤と同様に使用することができる。
一方、粉粒状充填物としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
また、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
これらの無機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。繊維状充填剤、特にガラス繊維又は炭素繊維と粒状及び/又は板状充填剤の併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
これらの充填剤の使用に当たっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。かかる収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これらの化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施しているか、又は材料調製の際同時に添加しても良い。
無機充填剤(C) の使用量は(A) 成分のポリエステル樹脂 100重量部あたり0〜200 重量部であり、好ましくは10〜90重量部である。過大の場合は成形作業が困難になる。
また、併用される官能性表面処理剤の使用量は、充填剤に対し10重量%以下、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0010】
本発明においては、上記 (A)〜(C) 成分より成る組成物を樹脂材料とすることにより高い接着強度を有し、かつ樹脂界面での剥離が見られず、ポリエステル樹脂の母材破壊またはエポキシ樹脂の凝集破壊形態を示す。これは、エポキシ化した変性ブロック共重合体(B) がポリエステル樹脂(A) との親和性が高く、樹脂との密着性を維持し、かつ表面に出たエポキシ樹脂との接着性を向上させているためと考えられる。ここで、更に(D) 成分として、エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた多官能性化合物の少なくとも1種を配合するのが望ましい。
本発明で用いられる(D) 成分の多官能性化合物としてはエポキシシラン、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環化合物型ジエポキシ化合物、グリシジルエーテル類、エポキシ化ポリブタジエン、トリグリシジルジイソシアネート、ジイソシアネート系化合物およびカルボン酸二無水物が挙げられる。具体的にはα−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメトキシシラン、β−(3,4 −エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシドなどの脂環化合物型エポキシ化合物、2,4 −トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート及び上記イソシアネートの誘導体(重合体ウレタン、ウレチジオン2量体より高次のオリゴマー、シアヌレート重合体)等のジイソシアネート系化合物、ピロメリット酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二水物及び一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(ただし、式中X は-O- 、-SO2- 、-CO-または2価の炭化水素を示す。)
で表される、例えばビス(3,4 −ジカルボキシフェニル)アルカン二水物のようなカルボン酸二水物が挙げられる。またこれらの多官能性化合物中、好ましいのは一般式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
(ただし、n は0〜20の整数)で示されるビスフェノールA型エポキシ化合物である。なお上記に列挙した多官能性化合物は1種または2種以上を使用することができる。
【0015】
さらに本発明においては、上記(A) 〜(C) 成分または(A) 〜(D) 成分に、更に(E) 成分としてエチレンエチルアクリレートを配合することにより、高い流動性を維持したまま、エポキシ樹脂との接着性をさらに向上させることができる。ここで使用するエチレンエチルアクリレートは特に限定はなく、いずれのものでもよい。また、エチレンエチルアクリレート(E) の使用量は(A) 成分のポリエステル樹脂 100重量部あたり 0.5〜40重量部であり、好ましくは5〜20重量部である。過小の場合は上記効果が小さく、また過大の場合は機械強度低下および剥離の問題が発生する。
【0016】
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物には、その目的に応じ所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂に添加される公知の物質、即ち酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤及び結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することが可能である。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に調製される。例えば、1)各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練り込み押出してペレットを調製し、しかる後調製する方法、2)いったん組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。
また、本発明の樹脂組成物を金型に充填するための成形法としては、射出成形法、押出圧縮成形法などがあるが、射出成形法が一般的である。
【0018】
本発明の複合成形品は、成形品の表面にエポキシ樹脂系接着剤を塗布し、同材もしくは異材(例えば、金属片)と接合してなるもの、あるいは成形品の表面にエポキシ樹脂をポッティングしてなるものを言う。ここで使用されるエポキシ樹脂は特に限定されるものではなく、一般的に使用されているものを用いることができる。 例えば、エポキシ樹脂と硬化剤を混合する二液タイプや硬化剤を必要としない一液タイプのものが例示され、硬化機構としても熱硬化型でも室温硬化型でも良い。好ましくは二液タイプの熱硬化型のものが使用される。 硬化剤としては、アミン系、メルカプタン系、チオール系のものが好ましく使用される。
また、エポキシ樹脂の強度を上げるために無機フィラーを添加したものも使用することができる。 無機フィラーに特に限定はなく、マイカ、シリカ、ガラス等が用いられる。また、好ましい添加量は、エポキシ樹脂に対し20〜50重量%である。
上記のエポキシ樹脂(及び硬化剤等)を適当量配合し、十分に練り込んだ状態で上記成形品に塗布あるいはポッティングし、それを熱硬化型では、100 ℃以上、好ましくは120 〜140 ℃で1時間以上放置し、硬化させて、本発明の複合成形品が得られる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の例に示した物性評価の測定法は次の通りである。
▲1▼引張強伸度
ASTM D-638に準拠して測定。
▲2▼引張剪断接着強度
ASTM1号ダンベル片を2等分して、スペーサー(厚さ1mm)を挟んで固定し、エポキシ樹脂(硬化剤を適正量練り込んだもの)を流し込んだ。これを、100 ℃/3hr→150 ℃/3hrで熱硬化させて、1mm/min の速度で引張強度を測定し、得られた強度を接着面積で割りかえして引張剪断接着強度とした。
また、破壊形態を次のように示す。
界面剥離;ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂間の界面にて剥がれた(剥離)。
【0020】
凝集破壊;エポキシ樹脂が破壊された。
母材破壊;ポリエステル樹脂がえぐりとられた。またはポリエステル樹脂が接着面とは別の箇所で破壊した。
▲3▼流動性
下記成形条件にて棒流動長を測定した。
参考例1
攪拌機、還流冷却管、および温度計を備えたジャケット付反応器にポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック共重合体〔日本合成ゴム(株)製、商品名:TR2000〕 300g、酢酸エチル1500gを仕込み溶解した。ついで過酢酸の30重量%酢酸エチル溶液 169gを連続滴下させ、攪拌下40℃で3時間エポキシ化反応を行った。反応液を常温に戻して反応器より取り出し、多量のメタノールを加えて重合体を析出させ、濾物後水洗し、乾燥させエポキシ変性共重合体を得た。
【0021】
実施例1
(A) 成分としてポリブチレンテレフタレート(PBT) 、(B) 成分として参考例1で得られたエポキシ変性共重合体とを表1に示す割合で混合した混合物を調製し、30mmφ押出機を用いて 260℃で溶融混練して押出し、ペレット化した。次いで射出成形により各種試験片を作成し、上記物性の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
(A) 成分としてポリブチレンテレフタレート(PBT) 、(B) 成分として参考例1で得られたエポキシ変性共重合体、(C) 成分としてガラス繊維(径13μm)とを表1に示す割合で混合した混合物を調製し、30mmφ押出機を用いて 260℃で溶融混練して押出し、ペレット化した。次いで射出成形により各種試験片を作成し、上記物性の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3〜5
実施例2において、(B) 成分量および(C) 成分量を表1に示す割合に変更し、実施例2と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6
実施例2の組成物に更に(D) 成分のエポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(シェル化学(株)製、エピコート1004K)を1重量部配合し、実施例2と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例7
実施例2の組成物において、(B) 成分量を5重量部とし、更に(E) 成分のエチレンエチルアクリレートを5重量部配合し、実施例2と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例8
実施例6の組成物において、(B) 成分量を5重量部とし、更に(E) 成分のエチレンエチルアクリレートを5重量部配合し、実施例6と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0022】
比較例1〜4
比較のため表2に示すように、エポキシ変性共重合体を配合しない場合(比較例1〜2)、本発明のエポキシ変性共重合体に代えてエポキシ変性する前のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック共重合体を用いた場合(比較例3)、あるいはエチレンエチルアクリレートを用いた場合(比較例4)について上記実施例と同様にしてペレット状組成物を調製し、上記物性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例5〜7
実施例6、4、5において、エポキシ変性共重合体を配合しない以外は同等の配合にて用意した組成物を調製し、上記物性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例8
実施例4において、エポキシ変性共重合体に代えてエポキシ変性する前のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック共重合体を用いた場合について、実施例4と同様にしてペレット状組成物を調製し、上記物性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表1、2の結果から明らかなように、特定のエポキシ変性共重合体を添加することにより、極めて高いエポキシ樹脂との接着性を有するポリエステル樹脂成形品が得られることがわかる。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の成形品は、優れた機械特性および成形性を極力維持し、高いエポキシ樹脂との接着性を有する。従って、本発明の成形品は、特に自動車分野、例えばトラクションコントロールケース等の各種アクチュエーターケースや各種コネクターケース、また車速センサーやスロットルセンサー等の電装部品、更に電気・電子分野、例えばリレーケースの部品等に好適に使用される。
Claims (6)
- (A) 熱可塑性ポリエステル樹脂 100重量部に対し、(B) 同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体 0.5〜80重量部、(C) 繊維状充填剤、非繊維状無機充填剤又は両者の混合物0〜200 重量部、 (D) エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた多官能性化合物の少なくとも1種 0.1 〜 10 重量部を配合した樹脂組成物を成形してなる成形品の表面にエポキシ樹脂系接着剤を塗布し、同材もしくは異材と接合してなる複合成形品。
- (A) 熱可塑性ポリエステル樹脂 100重量部に対し、(B) 同一分子内にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の、共役ジエン成分の一部又は全部をエポキシ化した変性ブロック共重合体 0.5〜80重量部、(C) 繊維状充填剤、非繊維状無機充填剤又は両者の混合物0〜200 重量部、 (D) エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物からなる群より選ばれた多官能性化合物の少なくとも1種 0.1 〜 10 重量部を配合した樹脂組成物を成形してなる成形品の表面にエポキシ樹脂をポッティングしてなる複合成形品。
- 樹脂組成物が更に (E) エチレンエチルアクリレート 0.5 〜 40 重量部(対 (A) 成分 100 重量部)を含有するものである請求項1又は2記載の複合成形品。
- 熱可塑性ポリエステル樹脂 (A) がポリブチレンテレフタレートを主体とする樹脂である請求項1〜3の何れか1項記載の複合成形品。
- (C) 成分を構成する充填剤がガラス繊維である請求項1〜4の何れか1項記載の複合成形品。
- (D) 成分がビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1〜5の何れか1項記載の複合成形品。
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