JP3639118B2 - 車両用自動変速機のフェイルセーフ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用自動変速機のフェイルセーフ装置に関し、詳しくは、油圧スイッチの信号に基づいてフェイルセーフ制御への移行及びフェイルセーフ制御の解除を行うフェイルセーフ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、1方向クラッチを用いずに、2つの摩擦係合要素の締結と解放とを同時に油圧制御して変速を行う車両用自動変速機が知られており、かかる自動変速機においては、解放側に対して相対的に締結側の油圧変化が遅いとエンジン回転の吹き上がりが発生し、逆に、解放側に対して相対的に締結側の油圧変化が早いとトルクの引け,エンジン回転の低下(以下、インターロックという)が発生することが知られている(特開平2−37128号公報等参照)。
【0003】
また、各摩擦係合要素に対する供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチを設け、該油圧スイッチの信号から異常な油圧状態が検出されたときに、例えば変速段を固定するなどのフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ装置が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の油圧スイッチを用いた異常検出においては、油圧スイッチの信号が異常方向に反転した時点で直ちにフェイルセーフ制御に移行させていたが、実際には、油圧スイッチの信号が反転してからフェイルセーフが真に必要となる油圧にまで上昇するのに大きな遅れが生じる場合があり、フェイルセーフ制御が必要以上に早く開始されてしまうことになっていた。同様に、油圧スイッチの信号からフェイルセーフの解除を判断しても、実際に油圧がフェイルセーフを解除すべき油圧にまで低下するのに大きな遅れが生じる場合があり、この場合には、フェイルセーフ制御が過剰に早く解除されてしまうことになっていた。
【0005】
また、例えば前記インターロックが発生するような異常時であっても、運転条件によって運転性に対する影響度合いが異なるため、一律に同じタイミングでフェイルセーフに移行させる構成であると、フェイルセーフ制御への移行の必要性を適切に判断する前に移行処理が行われたり、フェイルセーフへの移行が遅れて運転性に大きな影響を生じさせてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、油圧スイッチを用いたフェイルセーフ判断において、油圧の変化遅れに対応してフェイルセーフ制御への移行及びフェイルセーフ制御の解除が行え、かつ、運転性への影響を考慮しつつフェイルセーフ制御への移行が必要であることを適切に判断してフェイルセーフ制御への移行を行わせることができるフェイルセーフ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1記載の発明は、摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、前記供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチと、該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常検出手段と、該異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を自動変速機の負荷に応じて可変に設定するフェイルセーフ判断時間設定手段と、前記異常検出手段による異常状態の検出から前記フェイルセーフ判断時間設定手段で設定されたフェイルセーフ判断時間が経過した後にフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、を含んで構成される。
【0008】
かかる構成によると、油圧スイッチの信号から異常が判断されても、直ちにフェイルセーフ制御に移行させるのではなく、自動変速機の負荷に応じて設定されるフェイルセーフ判断時間が経過してからフェイルセーフ制御に移行させる。前記自動変速機の負荷が大きく例えばインターロックの発生によって運転者に与えるショックが大きいときには、負荷が小さいときに較べてフェイルセーフ制御への移行を短時間のうちに行わせ、逆に、負荷が小さいときには、比較的長い時間異常が継続していることを条件としてフェイルセーフ制御への移行を行わせることが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記フェイルセーフ判断時間設定手段が、異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を作動油の温度に応じて可変に設定する構成とした。
【0010】
かかる構成によると、作動油の温度は作動油の粘性に相関し、作動油の粘性が低いときには油圧の変化が遅れることになるので、油圧スイッチによって異常状態が検出されてからの油圧変化速度の違いに応じて、フェイルセーフ制御に移行させるまでの時間を変化させることが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明では、前記フェイルセーフ判断時間設定手段が、異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を自動変速機の負荷及び作動油の温度に応じて可変に設定する構成とした。
【0012】
かかる構成によると、作動油の温度による油圧変化の速度を考慮すると共に、異常状態の運転性への影響度合いの指標となる負荷を考慮して、フェイルセーフ制御への移行が判断されることになる。
【0013】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の前記フェイルセーフ判断時間設定手段が、作動油の温度に応じて設定した時間と、自動変速機の負荷に応じて設定した時間との総和として前記フェイルセーフ判断時間を設定する構成とした。
【0014】
請求項5記載の発明では、請求項4の構成に対して、前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記フェイルセーフ制御を解除させるまでの遅延時間を作動油の温度に応じて可変に設定する解除遅延時間設定手段と、前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記解除遅延時間設定手段で設定された遅延時間が経過した後に前記フェイルセーフ制御を解除するフェイルセーフ解除手段と、を付加する構成とした。
【0015】
かかる構成によると、油圧スイッチの信号から異常状態の解消が判断されても、直ちにフェイルセーフ制御を解除させるのではなく、作動油の温度に応じた遅延時間が経過してからフェイルセーフ制御を解除させる。ここで、油圧が正常方向ヘ変化するときの変化速度に応じてフェイルセーフ制御の解除を遅らせる時間が変更されることになる。
【0016】
請求項6記載の発明は、摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、前記供給油圧に応じてスイッチングする油 圧スイッチと、該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常状態検出手段と、該異常状態検出手段により異常状態が検出されたときにフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記フェイルセーフ制御を解除させるまでの遅延時間を作動油の温度に応じて可変に設定する解除遅延時間設定手段と、前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記解除遅延時間設定手段で設定された遅延時間が経過した後にフェイルセーフ制御を解除するフェイルセーフ解除手段と、を含んで構成される。
【0017】
かかる構成によると、油圧スイッチの信号から異常状態の解消が判断されても、直ちにフェイルセーフ制御を解除させるのではなく、作動油の温度に応じた遅延時間が経過してからフェイルセーフ制御を解除させる。ここで、油圧が正常方向ヘ変化するときの変化速度に応じてフェイルセーフ制御の解除を遅らせる時間が変更されることになる。
【0018】
請求項7記載の発明では、前記油圧スイッチが、複数の摩擦係合要素それぞれに設けられ、前記異常検出手段が、正常時には発生しない油圧スイッチのON・OFFの組み合わせが発生しているときに異常状態を検出する構成とした。
【0019】
かかる構成によると、例えば締結側及び解放側の双方の摩擦係合要素に対する供給油圧が共に高いインターロックの状態を、異常状態として検出することになる。
【0020】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、フェイルセーフ制御への遅れによる運転性の悪化を回避しつつ、フェイルセーフ制御へ移行させる必要性を的確に判断して、フェイルセーフ制御へ移行させることができるという効果がある。
請求項2記載の発明によると、作動油の温度による油圧変化の違いに対応して、油圧異常に伴うフェイルセーフ制御への移行を適切なタイミングで行わせることができるという効果がある。
【0021】
請求項3,4記載の発明によると、作動油の温度による油圧変化の違いに対応して油圧の上昇を判断し、かつ、フェイルセーフ制御への遅れによる運転性の悪化を回避しつつ、フェイルセーフ制御へ移行させる必要性を的確に判断して、フェイルセーフ制御へ移行させることができるという効果がある。
【0022】
請求項5,6記載の発明によると、作動油の温度による油圧変化の違いに対応して、真に正常油圧になってからフェイルセーフ制御を解除させることができるという効果がある。
【0023】
請求項7記載の発明によると、例えば締結側の摩擦係合要素に対する油圧の増大に対して、解放側の摩擦係合要素に対する油圧が所期の減少変化を示さないインターロック状態を異常状態として判断して、フェイルセーフ制御に的確に移行させ、また、インターロック状態の解消を的確に判断してフェイルセーフ制御を解除させることができるという効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。図1は、実施の形態における車両用自動変速機のシステム構成図であり、図示しない車両に搭載されるエンジン1の出力トルクは、自動変速機2を介して駆動輪に伝達される。
【0025】
前記自動変速機2は、クラッチ,ブレーキなどの摩擦係合要素に対する作動油圧の供給をソレノイドバルブユニット3によって制御することで変速が行われる構成のものであり、具体的には、図2に示すように、トルクコンバータT/Cを介してエンジン1の出力トルクを入力する構成であって、フロント遊星歯車組83,リヤ遊星歯車組84を備えると共に、摩擦係合要素として、リバースクラッチR/C,ハイクラッチH/C,バンドブレーキB/B,ロー&リバースブレーキL&R/B,フォワードクラッチFWD/Cを備える。尚、図2において、81は変速機の入力軸,82は変速機の出力軸を示し、また、Neはエンジン回転速度,Ntはタービン回転速度,Noは出力軸回転速度を示す。
【0026】
上記構成において、図3に示すように、前記リバースクラッチR/C,ハイクラッチH/C,バンドブレーキB/B,ロー&リバースブレーキL&R/B,フォワードクラッチFWD/Cの締結,解放の組み合わせに応じて変速が行われ、例えば、3速→4速のアップシフト時には、フォワードクラッチFWD/Cの解放と、バンドブレーキB/Bの締結とが同時に行われることになる。即ち、本実施の形態における自動変速機2は、1方向クラッチを用いずに、2つの摩擦係合要素の締結と解放とを同時に油圧制御によって行わせる変速(所謂クラッチツウクラッチ変速)を実行する構成となっている(図4参照)。
【0027】
前記コントロールユニット4には、前記ソレノイドバルブユニット3の各ソレノイドバルブの駆動電流と油圧との相関を示すテーブルが記憶されており、指示油圧を演算すると、この指示油圧に対応する駆動電流をテーブル変換によって求めて、前記ソレノイドバルブの駆動電流を制御する。クラッチ等の摩擦係合要素の締結制御においては、図4に示すように、まず、プリチャージを行って摩擦係合要素を接触直前まで無効ストロークさせた後、作動油圧を締結力が発生するぎりぎりのリターン圧(臨界圧)に保持し、その後、摩擦係合要素の締結が所定のタイミングで進行するように作動油圧を制御する。
【0028】
前記ソレノイドバルブ36は、例えば図5に示すように、自動変速機2の摩擦係合要素(クラッチ等)30に対して供給される油圧を、元圧のドレンによって調整するものであって、リターンスプリング31によって付勢されるプランジャ(可動鉄心)32を、前記リターンスプリング31の付勢力に抗して電磁コイル33による磁気力によって図で上下方向に変位させることでドレン通路34の開口面積を変化させる構成となっている。
【0029】
ここで、図5に示すように、各摩擦係合要素30に対して供給される油圧に応じてスイッチング動作する油圧スイッチ35が設けられており、前記コントロールユニット4は、前記油圧スイッチ35の信号に基づいて、油圧の異常状態を判断し、異常発生時には、変速段を例えば3速に固定するなどのフェイルセーフ制御に移行させる。
【0030】
尚、前記油圧スイッチ35は、設定圧よりも実際の油圧が高いときにON信号を出力し、前記設定圧よりも実際の油圧が低いときにOFF信号を出力するものとする。図6のフローチャートは、前記フェイルセーフ制御への移行処理を示すものであり、まず、S1(異常検出手段)では、油圧スイッチ35の信号に基づいて油圧異常が発生しているか否かを判別する。具体的には、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が、同時にONになっているか否かを判別するものであり、例えば、締結側の摩擦係合要素の油圧スイッチ35がONであって、かつ、解放側の摩擦係合要素の油圧スイッチ35がONであるか否かを判別する。
【0031】
S1で、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35のいずれかがOFFで、油圧が正常と判断されるときには、S2へ進み、フラグFに0をセットする。一方、S1で、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が共にONであり、油圧の異常状態であると判別されたときには、S3へ進み、前記フラグFに1がセットされているか否かを判別する。
【0032】
フラグFが0であるときには、異常状態が検出された初回であり、このときには、S4へ進み、自動変速機2の負荷を検出する。前記自動変速機2の負荷として、自動変速機2の入力トルクを検出させることが好ましいが、前記入力トルクとエンジンの発生トルクとが略等しいと見做して、エンジン発生トルクを示すシリンダ吸入空気量やスロットル開度を前記入力トルクに相当する値として検出させても良い。
【0033】
S5(フェイルセーフ判断時間設定手段)では、予め自動変速機2の負荷に応じてフェイルセーフ判断時間を記憶したテーブルを参照し、そのときの負荷に見合うフェイルセーフ判断時間を検索する。前記フェイルセーフ判断時間は、前記負荷が大きいときほどより短く設定されるようになっている。
【0034】
次のS6では、前記フラグFに1をセットする。従って、次回も油圧の異常状態が継続していたときには、S3からS4〜S6を迂回してS7へ進むことになる。S7では、最初の異常検出から前記フェイルセーフ判断時間だけ経過したか否かを判別する。換言すれば、油圧の異常状態が前記フェイルセーフ判断時間以上継続しているか否かを判別する。
【0035】
そして、前記フェイルセーフ判断時間だけ経過するまでは、フェイルセーフ制御に移行させず、図7に示すように、前記フェイルセーフ判断時間だけ経過したことがS7で検出されてからS8へ進んでフェイルセーフ制御に移行させる(フェイルセーフ移行手段)。前記フェイルセーフ制御への移行は、油圧の異常状態が所定時間以上継続していて、解消される見込みのないと判断されるときにのみ行わせることが好ましいが、自動変速機2の負荷が大きいときには、フェイルセーフ制御への移行が遅れると大きな変速ショックを発生させたりすることになるので、負荷が大きいときにはフェイルセーフ判断の信頼性は低下するものの、運転性への悪影響の発生を回避すべく比較的早い段階からフェイルセーフ制御に移行させる。一方、負荷が小さいときには油圧異常による運転性への影響が比較的小さいので、より長い時間油圧異常が継続していることを条件としてフェイルセーフ制御に移行させ、無用なフェイルセーフ制御への移行を回避する。
【0036】
図8のフローチャートは、フェイルセーフ制御への移行処理の第2の実施形態を示すものであり、まず、S11(異常検出手段)では、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が、同時にONになっているか否かを判別する。S11で、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35のいずれかがOFFで、油圧が正常と判断されるときには、S12へ進み、フラグFに0をセットする。
【0037】
一方、S11で、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が共にONであり、油圧の異常状態であると判別されたときには、S13へ進み、前記フラグFに1がセットされているか否かを判別する。フラグFが0であるときには、異常状態が検出された初回であり、このときには、S14へ進み、自動変速機2の負荷を検出する。
【0038】
S15(フェイルセーフ判断時間設定手段)では、予め自動変速機2の負荷に応じて第1フェイルセーフ判断時間を記憶したテーブルを参照し、そのときの負荷に見合う第1フェイルセーフ判断時間を検索する。前記第1フェイルセーフ判断時間は、前記負荷が大きいときほどより短く設定される。次のS16では、前記自動変速機2の作動油(以下、ATFという)の温度を検出する油温センサからの信号に基づいて、前記ATFの温度を検出する。
【0039】
そして、S17(フェイルセーフ判断時間設定手段)では、予めATF温度に応じて第2フェイルセーフ判断時間を記憶したテーブルを参照し、そのときのATF温度に見合う第2フェイルセーフ判断時間を検索する。前記第2フェイルセーフ判断時間は、前記ATF温度が高いときほどより短く設定される。S18では、前記第1フェイルセーフ判断時間と第2フェイルセーフ判断時間との総和を、最終的なフェイルセーフ判断時間として設定する。
【0040】
S19では、前記フラグFに1をセットし、次回も油圧の異常状態が継続していたときには、S13からS14〜S19を迂回してS20へ進むことになる。S20では、最初の異常検出から前記フェイルセーフ判断時間だけ経過したか否かを判別する。換言すれば、油圧の異常状態が前記フェイルセーフ判断時間以上継続しているか否かを判別する。
【0041】
そして、前記フェイルセーフ判断時間だけ経過するまでは、フェイルセーフ制御に移行させず、図9に示すように、前記フェイルセーフ判断時間だけ経過したことがS20で検出されてからS21へ進んでフェイルセーフ制御に移行させる(フェイルセーフ移行手段)。前記ATF温度はATFの粘性に相関し、ATF温度が高く粘性が低いときには、油圧の上昇が比較的速いが、ATF温度が低く粘性が大きいときには、油圧は比較的ゆっくりと上昇することになる。従って、油圧スイッチ35がONになっても、そのときのATF温度によってその後の油圧の上昇速度に違いが生じるので、ATF温度に関わらずに略同程度の油圧になるまでの時間を前記第2フェイルセーフ判断時間として設定させ、同じ油圧条件になってから更に負荷に応じた第1フェイルセーフ判断時間の経過を条件として、フェイルセーフ制御に移行させるものである(図9参照)。これにより、ATF温度が低く油圧の上昇が遅いときに、無用にフェイルセーフ制御に移行されてしまうことを回避できる。
【0042】
図10のフローチャートは、上記のようにして移行させたフェイルセーフ制御を解除させる処理を示すものであり、S31(異常検出手段)では、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が共にONである異常状態から、いずれかの油圧スイッチ35がOFFに反転したか否かを判別する。そして、正常時には同時にONすることのない複数の油圧スイッチ35が共にONである状態が保持されているときには、そのままフェイルセーフ制御状態を維持して本ルーチンを終了させる。
【0043】
一方、S31で、いずれかの油圧スイッチ35がOFFに反転したことが判別されると、S32へ進み、ATF温度の検出を行わせる。そして、次のS33(解除遅延時間設定手段)では、予めATF温度に応じて遅延時間を記憶したテーブルを参照し、そのときのATF温度に見合う遅延時間を検索する。前記遅延時間は、ATF温度が高いときほどより短い設定される。
【0044】
S34では、前記遅延時間だけ待機させる遅延処理を実行し、前記遅延時間が経過してからS35へ進む。S35では、フェイルセーフ制御を解除し、通常の変速制御状態に復帰させる(フェイルセーフ解除手段)。すなわち、油圧スイッチ35から油圧異常状態が解消したことが検出されても、直ちにフェイルセーフ制御を解除させるのではなく、油圧の減少変化速度に関与するATF温度に基づいて設定される遅延時間だけ待ってからフェイルセーフ制御を解除させるものであり(図11参照)、これにより、ATF温度が低く油圧スイッチ35がOFFしてからも比較的高い油圧を保持するようなときに、フェイルセーフ制御の解除が早過ぎて変速ショックなどを招くことを防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における自動変速機を示す図。
【図2】前記自動変速機の詳細を示す構成図。
【図3】前記自動変速機における摩擦係合要素の締結状態の組み合わせによる変速の様子を示す図。
【図4】変速時の油圧制御の特性を示すタイムチャート。
【図5】油圧を制御するソレノイドバルブと油圧スイッチとを示す図。
【図6】フェイルセーフ制御への移行処理を示すフローチャート。
【図7】図6のフローチャートによるフェイルセーフ制御への移行特性を示すタイムチャート。
【図8】フェイルセーフ制御への移行処理の別の実施形態を示すフローチャート。
【図9】図8のフローチャートによるフェイルセーフ制御への移行特性を示すタイムチャート。
【図10】フェイルセーフ制御の解除処理を示すフローチャート。
【図11】図10のフローチャートによるフェイルセーフ制御の解除特性を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…エンジン
2…自動変速機
3…ソレノイドバルブユニット
4…コントロールユニット
30…摩擦係合要素
31…リターンスプリング
32…プランジャ
33…電磁コイル
34…ドレン通路
35…油圧スイッチ
36…ソレノイドバルブ
Claims (7)
- 摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、
前記供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチと、
該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常検出手段と、
該異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を自動変速機の負荷に応じて可変に設定するフェイルセーフ判断時間設定手段と、
前記異常検出手段による異常状態の検出から前記フェイルセーフ判断時間設定手段で設定されたフェイルセーフ判断時間が経過した後にフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、
を含んで構成された車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。 - 摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、
前記供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチと、
該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常検出手段と、
該異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を作動油の温度に応じて可変に設定するフェイルセーフ判断時間設定手段と、
前記異常検出手段による異常状態の検出から前記フェイルセーフ判断時間設定手段で設定されたフェイルセーフ判断時間が経過した後にフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、
を含んで構成された車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。 - 摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、
前記供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチと、
該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常検出手段と、
該異常検出手段による異常状態の検出からフェイルセーフ制御に移行させるまでのフェイルセーフ判断時間を自動変速機の負荷及び作動油の温度に応じて可変に設定するフェイルセーフ判断時間設定手段と、
前記異常検出手段による異常状態の検出から前記フェイルセーフ判断時間設定手段で設定されたフェイルセーフ判断時間が経過した後にフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、
を含んで構成された車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。 - 前記フェイルセーフ判断時間設定手段が、作動油の温度に応じて設定した時間と、自動変速機の負荷に応じて設定した時間との総和として前記フェイルセーフ判断時間を設定することを特徴とする請求項3記載の車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。
- 前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記フェイルセーフ制御を解除させるまでの遅延時間を作動油の温度に応じて可変に設定する解除遅延時間設定手段と、
前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記解除遅延時間設定手段で設定された遅延時間が経過した後に前記フェイルセーフ制御を解除するフェイルセーフ解除手段と、
を設けた請求項4記載の車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。 - 摩擦係合要素に対する供給油圧を制御して変速動作を行わせる構成の車両用自動変速機において、
前記供給油圧に応じてスイッチングする油圧スイッチと、
該油圧スイッチからの信号に基づいて異常状態を検出する異常状態検出手段と、
該異常状態検出手段により異常状態が検出されたときにフェイルセーフ制御に移行させるフェイルセーフ移行手段と、
前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記フェイルセーフ制御を解除させるまでの遅延時間を作動油の温度に応じて可変に設定する解除遅延時間設定手段と、
前記異常検出手段により異常状態が解消したことが検出されてから前記解除遅延時間設定手段で設定された遅延時間が経過した後にフェイルセーフ制御を解除するフェイルセーフ解除手段と、
を含んで構成された車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。 - 前記油圧スイッチが、複数の摩擦係合要素それぞれに設けられ、前記異常検出手段が、正常時には発生しない油圧スイッチのON・OFFの組み合わせが発生しているときに異常状態を検出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両用自動変速機のフェイルセーフ装置。
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