JP3638332B2 - 被覆硬質合金 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本願発明は、耐摩耗性、耐欠損性に優れる切削工具として用いられる被覆切削工具及び耐摩耗工具として用いられる被覆耐摩工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来PVD法による硬質皮膜は、TiNが主流であったが、最近TiCN膜があるいは(TiAl)Nといった新しい種類の皮膜が開発され注目されてきている。TiCNはビッカース硬さが3000近くあり、TiNのビッカース硬さ2200に比べ格段に硬く耐摩耗性を著しく高める効果も持つ。一方(TiAl)NはTiとAlの比率により異なるが、概略2300〜2800のビッカース硬さを有し、TiNに比べ耐摩耗性を高める一方耐酸化性が著しく優れるため刃先が高温になる切削条件下などで優れた特性を発揮するものである。
【0003】
また、(TiAl)N膜の皮膜の改善としてTi/Alの比率を限定した特公平5−67705号や、(TiAlZr)N、(TiAlV)Nといった更に多元系の皮膜にした米国特許4871434号等が提案され、更に改善が計られている。しかしながら、これらの新しい皮膜は、Alの含有により耐酸化性は向上したものの、まだ十分に満足されるものではなく、また皮膜に残留する圧縮応力がTiN皮膜の1.5倍以上と高く、次のような種々の問題点を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
皮膜の密着力は、皮膜の残留圧縮応力が高くなるほど弱くなるものであり、これら新しい皮膜はその密着性がTiNに比べ劣るものである。又、この残留応力が高いことは皮膜の密着性を悪くするだけでなく、膜厚が厚くなるに従い残留応力が増加するため皮膜の厚膜化への技術上の障害ともなり厚膜化が実現されていないのも現状である。
【0005】
残留圧縮応力を低減する最も簡単な方法は、被覆工程における被覆パラメーターを変更することが考えられる。本発明者は、アークイオン放電法により鋼基板上へTiNを3μm成膜する場合、被覆パラメーターである窒素分圧、バイアス電圧に付いて、残留圧縮応力を調べてみたところ、バイアス電圧−50Vにおいては−2GPa、同 −100Vにおいては−5GPaの残留圧縮応力を示した。又、窒素分圧を10-1Pa下においては−1GPa、同100 Paにおいては−2GPaの残留圧縮応力を示した。
この様に、成膜パラメーターを変えることにより容易に残留圧縮応力は変更可能ではあるが、アークイオン放電法やホロカソード法等においては、それぞれの最適なパラメーターの範囲を有すること、及びパラメーターの変更により成膜される皮膜の膜特性が全く異なってしまうことの理由により、事実上、パラメーターを変更することにより残留圧縮応力を低減することは不可能であった。
【0006】
一方、耐酸化性においては、Alを含む皮膜は確かに酸化開始温度は、TiN、TiCNに比べ高く、耐酸化性には優れるものの酸化が連続的に進行する条件下においては酸化進行速度は、TiN、TiCNと比べほとんど変わりのないものである。つまり、酸化により生成する酸化皮膜は、TiN、TiCNの場合と同様Alを含有する皮膜においても、ルチル構造を有し、ポーラスな皮膜である。従って、酸化進行に対する抵抗は、ルチル構造であるがために極めて低い結果となるわけである。
【0007】
【本発明の目的】
本発明は上述の残留圧縮応力が高い欠点を改善し、残留圧縮応力を低減することにより皮膜の密着性を高め、強いては被覆工具の耐剥離性を改善すると同時に厚膜化をも可能とする技術を提供するものである。
加えて、TiとAlを含有する窒化物、炭窒化物皮膜の耐酸化性をさらに改善し、酸化が連続的に進む高速切削において、より長寿命を示す皮膜を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、(TiAl)Nを基本にこれに各種元素を添加する検討を行った結果、次のような知見を得た。表1は、3μmの(TiAl)N皮膜をアークイオンプレーティング法により、バイアス電圧 −120V、窒素圧力10-1Paの条件下で成膜するときに種々の元素を添加した場合の残留圧縮応力を3μmのTiNの残留圧縮応力を1とした場合の比で示している。
【0009】
【表1】
【0010】
表1より、(TiAl)N皮膜中に軟質金属を分散、または固溶体化させることにより、膜中の残留応力が減少する傾向があることがわかる。
また耐酸化性においては、(TiAlFe)Nを基本にこれに各種元素を添加する検討を行った結果、Y、Dy、Nd、Ce、Ca、Srのうちいずれか1種以上の添加により耐酸化性が著しく改善される知見を得た。
表2は、3μmの(TiAlFe)N皮膜をアークイオンプレーティング法により、バイアス電圧120V、窒素圧力10-1Paの条件下で成膜するときにYを添加した場合の酸化開始温度、及び850℃大気中での酸化速度を、3μmのTiN、(TiAl)N皮膜と比較した結果を示す。
【0011】
【表2】
【0012】
表2より、(TiAlFe)N皮膜中にYを固溶体化させることにより、皮膜の耐酸化性が向上することがわかる。尚、同様の結果がDy、Nd、Ca、Ce、Srにおいても得られた。
よって、本願発明は、主成分としてTiとAl及び/またはその固溶体の窒化物、炭窒化物より構成された0.5〜10μmの膜厚から成る硬質皮膜の主成分の1部をFe族金属及びMで示される金属で置換した被覆硬質合金の該皮膜組成をモル比において、(Tia Alb Fe族c Md)CxN1-xと表した場合、a、b、c、d、xがそれぞれ、a+b+c+d=1、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.2、0.001≦d≦0.2、0≦x≦1より成る皮膜であり、MはY、Dy、Nd、Ca、Ce、Srのうちいずれか1種以上の金属であり、さらに、主成分の一部をFe及びMで置換された(TiFeM)の窒化物、炭窒化物の層とAlの窒化物から成る層を5層以上の多層にし、厚膜化を達成したものである。
【0013】
【作用】
(TiAl)化合物の皮膜中にFe族を添加することにより、膜中の残留応力を減少させ、膜の耐衝撃性、特に断続切削等の機械的な衝撃に対しても剥離しにくい膜となる。
また、耐酸化性においては、(TiAlFe)化合物の皮膜中にY等を添加することにより、皮膜の耐酸化性を向上させることが可能である。特に酸化速度において著しい改善が可能になる理由は、Yを添加した場合、形成される酸化皮膜の形態がルチル構造ではなくアナターゼ構造を示すためである。つまり、Y等の添加により非常に緻密な酸化膜が形成され酸化の進行が形成された酸化膜中の酸素の拡散に律速される形態をとることにより、酸化の進行が著しく抑制されるわけである。
従って、酸化が連続的に進行する高速切削において、皮膜の酸化がごく表面のみで発生し、これが酸化に対し保護膜として作用し、皮膜内部にまで酸化が進行せず、長寿命が得られるわけである。
【0014】
以下、数値限定した理由に付いて説明する。
(TiAl)化合物膜中に固溶体/混合体として添加するFe族は、0.01未満では残留応力を低減するのに十分な効果がなく、0.2を越えると皮膜中のFe族の量が多くなりすぎ耐摩耗性、耐溶着性等が劣化するため0.01≦c≦0.2の範囲とした。
また、(TiAlFe族)化合物膜中に固溶体/混合体として添加するY等は共通して、0.01未満では耐酸化性を向上するのに必ずしも十分な効果がなく、0.20を越えると皮膜の硬さが著しく低下し、著しく耐摩耗性を劣化する傾向にあるため0.001≦c≦0.20の範囲とした。
【0015】
尚、上記の元素はターゲット材として固溶体化しても、また各元素を個別のターゲットとして蒸着時に成分を調整してもさらに固溶体ターゲットと個別ターゲットを組み合わせても同様の効果が得られる。
【0016】
皮膜中のCNの比率は、0≦x≦1、すなわち炭化物、窒化物、炭窒化物の範囲としたのは、(TiAl)膜中に固溶体/混合体として添加したFe族の効果により応力が緩和されるため、硬さの高い炭化物でも十分に使用でき、また硬さのやや低い窒化物、炭窒化物においてもFe族の量を調整することにより十分な性能を有するため0≦x≦1の範囲とした。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本願発明を詳細に説明する。
84WC−3TiC−1TiN−3TaC−9Coの組成になるよう市販の2.5μmのWC粉末、1.5μmのTiC粉末、同TiN粉末、1.2μmのTaC粉末をボールミルにて96時間混合し、乾燥造粒の後、SNMA432のスローアウェイインサートをプレスし、焼結後、所定の形状に加工した。
この超硬合金基体上にPVD法により、各種合金ターゲット、各元素単独のターゲットを用意し、表3に示すような皮膜を形成した。
【0018】
【表3】
【0019】
尚、比較のため従来例で記載した膜に付いても行った。
次いで、これらの皮膜をスクラッチテスターにより、0から徐々に荷重を上げ、引っかいていき、膜が剥離する荷重を求めた。それらの結果を表4に示す。
【0020】
【表4】
【0021】
また、下記に示す工具が繰り返し衝撃を受ける切削条件にて切削テストを行い最大摩耗が0.2mmに達するまでの寿命時間を求め、その結果を表4に併記する。
【0022】
表4の結果より、スクラッチ荷重においては明確に違いがでていないが、機械的衝撃が加わる耐衝撃性の試験では使用初期に剥離を生じて、異状摩耗をきたしたことが分かる。
なお、実施例では窒化物の皮膜を使用したが、蒸着時の雰囲気を窒素、メタン等の分圧を調整することにより様々な組成比率の炭窒化物の製作も可能である。
【0023】
【実施例2】
84WC−3TiC−1TiN−3TaC−9Coの組成になるよう市販の2.5μmのWC粉末、1.5μmのTiC粉末、同TiN粉末、1.2μmのTaC粉末をボールミルにて96時間混合し、乾燥造粒の後、SNMG432のスローアウェイインサートをプレスし、焼結後、所定の形状に加工した。
この超硬合金基体上にPVD法により、各種(TiAlFeY)合金のターゲットを用い、表5に示すような皮膜を形成した。
尚、比較のため従来例で記載した膜も形成した。
【0024】
【表5】
【0025】
次いで、これらの皮膜をコーティングされたスローアウェイインサートを大気中で徐々に昇温し、酸化増が認められる温度を測定した。また、大気中900℃において、時間とともに酸化増量を測定し、酸化速度を算出した。これらの結果も表5に併記する。
更に、下記に示す高速切削条件にて切削テストを行い最大摩耗が0.2mmに達するまでの時間を求め、その結果も表5に併記する。
【0026】
表5より、Yを添加した皮膜は、格段に酸化速度が遅く、また、そのことが連続高速切削において著しい長寿命化に寄与している事が明らかである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の被覆硬質合金は、従来のTiN、TiAlNに比べ、硬さの低い元素を添加/固溶させることにより、皮膜の残留圧縮応力を低め密着性を向上させ、断続切削などにおいて、格段に長い工具寿命が得られるものである。
また、本発明は超硬合金を主に説明してきたがTiCN基サーメットに適用した場合にも優れた効果を現すことは自明である。
【産業上の利用分野】
本願発明は、耐摩耗性、耐欠損性に優れる切削工具として用いられる被覆切削工具及び耐摩耗工具として用いられる被覆耐摩工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来PVD法による硬質皮膜は、TiNが主流であったが、最近TiCN膜があるいは(TiAl)Nといった新しい種類の皮膜が開発され注目されてきている。TiCNはビッカース硬さが3000近くあり、TiNのビッカース硬さ2200に比べ格段に硬く耐摩耗性を著しく高める効果も持つ。一方(TiAl)NはTiとAlの比率により異なるが、概略2300〜2800のビッカース硬さを有し、TiNに比べ耐摩耗性を高める一方耐酸化性が著しく優れるため刃先が高温になる切削条件下などで優れた特性を発揮するものである。
【0003】
また、(TiAl)N膜の皮膜の改善としてTi/Alの比率を限定した特公平5−67705号や、(TiAlZr)N、(TiAlV)Nといった更に多元系の皮膜にした米国特許4871434号等が提案され、更に改善が計られている。しかしながら、これらの新しい皮膜は、Alの含有により耐酸化性は向上したものの、まだ十分に満足されるものではなく、また皮膜に残留する圧縮応力がTiN皮膜の1.5倍以上と高く、次のような種々の問題点を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
皮膜の密着力は、皮膜の残留圧縮応力が高くなるほど弱くなるものであり、これら新しい皮膜はその密着性がTiNに比べ劣るものである。又、この残留応力が高いことは皮膜の密着性を悪くするだけでなく、膜厚が厚くなるに従い残留応力が増加するため皮膜の厚膜化への技術上の障害ともなり厚膜化が実現されていないのも現状である。
【0005】
残留圧縮応力を低減する最も簡単な方法は、被覆工程における被覆パラメーターを変更することが考えられる。本発明者は、アークイオン放電法により鋼基板上へTiNを3μm成膜する場合、被覆パラメーターである窒素分圧、バイアス電圧に付いて、残留圧縮応力を調べてみたところ、バイアス電圧−50Vにおいては−2GPa、同 −100Vにおいては−5GPaの残留圧縮応力を示した。又、窒素分圧を10-1Pa下においては−1GPa、同100 Paにおいては−2GPaの残留圧縮応力を示した。
この様に、成膜パラメーターを変えることにより容易に残留圧縮応力は変更可能ではあるが、アークイオン放電法やホロカソード法等においては、それぞれの最適なパラメーターの範囲を有すること、及びパラメーターの変更により成膜される皮膜の膜特性が全く異なってしまうことの理由により、事実上、パラメーターを変更することにより残留圧縮応力を低減することは不可能であった。
【0006】
一方、耐酸化性においては、Alを含む皮膜は確かに酸化開始温度は、TiN、TiCNに比べ高く、耐酸化性には優れるものの酸化が連続的に進行する条件下においては酸化進行速度は、TiN、TiCNと比べほとんど変わりのないものである。つまり、酸化により生成する酸化皮膜は、TiN、TiCNの場合と同様Alを含有する皮膜においても、ルチル構造を有し、ポーラスな皮膜である。従って、酸化進行に対する抵抗は、ルチル構造であるがために極めて低い結果となるわけである。
【0007】
【本発明の目的】
本発明は上述の残留圧縮応力が高い欠点を改善し、残留圧縮応力を低減することにより皮膜の密着性を高め、強いては被覆工具の耐剥離性を改善すると同時に厚膜化をも可能とする技術を提供するものである。
加えて、TiとAlを含有する窒化物、炭窒化物皮膜の耐酸化性をさらに改善し、酸化が連続的に進む高速切削において、より長寿命を示す皮膜を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、(TiAl)Nを基本にこれに各種元素を添加する検討を行った結果、次のような知見を得た。表1は、3μmの(TiAl)N皮膜をアークイオンプレーティング法により、バイアス電圧 −120V、窒素圧力10-1Paの条件下で成膜するときに種々の元素を添加した場合の残留圧縮応力を3μmのTiNの残留圧縮応力を1とした場合の比で示している。
【0009】
【表1】
【0010】
表1より、(TiAl)N皮膜中に軟質金属を分散、または固溶体化させることにより、膜中の残留応力が減少する傾向があることがわかる。
また耐酸化性においては、(TiAlFe)Nを基本にこれに各種元素を添加する検討を行った結果、Y、Dy、Nd、Ce、Ca、Srのうちいずれか1種以上の添加により耐酸化性が著しく改善される知見を得た。
表2は、3μmの(TiAlFe)N皮膜をアークイオンプレーティング法により、バイアス電圧120V、窒素圧力10-1Paの条件下で成膜するときにYを添加した場合の酸化開始温度、及び850℃大気中での酸化速度を、3μmのTiN、(TiAl)N皮膜と比較した結果を示す。
【0011】
【表2】
【0012】
表2より、(TiAlFe)N皮膜中にYを固溶体化させることにより、皮膜の耐酸化性が向上することがわかる。尚、同様の結果がDy、Nd、Ca、Ce、Srにおいても得られた。
よって、本願発明は、主成分としてTiとAl及び/またはその固溶体の窒化物、炭窒化物より構成された0.5〜10μmの膜厚から成る硬質皮膜の主成分の1部をFe族金属及びMで示される金属で置換した被覆硬質合金の該皮膜組成をモル比において、(Tia Alb Fe族c Md)CxN1-xと表した場合、a、b、c、d、xがそれぞれ、a+b+c+d=1、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.2、0.001≦d≦0.2、0≦x≦1より成る皮膜であり、MはY、Dy、Nd、Ca、Ce、Srのうちいずれか1種以上の金属であり、さらに、主成分の一部をFe及びMで置換された(TiFeM)の窒化物、炭窒化物の層とAlの窒化物から成る層を5層以上の多層にし、厚膜化を達成したものである。
【0013】
【作用】
(TiAl)化合物の皮膜中にFe族を添加することにより、膜中の残留応力を減少させ、膜の耐衝撃性、特に断続切削等の機械的な衝撃に対しても剥離しにくい膜となる。
また、耐酸化性においては、(TiAlFe)化合物の皮膜中にY等を添加することにより、皮膜の耐酸化性を向上させることが可能である。特に酸化速度において著しい改善が可能になる理由は、Yを添加した場合、形成される酸化皮膜の形態がルチル構造ではなくアナターゼ構造を示すためである。つまり、Y等の添加により非常に緻密な酸化膜が形成され酸化の進行が形成された酸化膜中の酸素の拡散に律速される形態をとることにより、酸化の進行が著しく抑制されるわけである。
従って、酸化が連続的に進行する高速切削において、皮膜の酸化がごく表面のみで発生し、これが酸化に対し保護膜として作用し、皮膜内部にまで酸化が進行せず、長寿命が得られるわけである。
【0014】
以下、数値限定した理由に付いて説明する。
(TiAl)化合物膜中に固溶体/混合体として添加するFe族は、0.01未満では残留応力を低減するのに十分な効果がなく、0.2を越えると皮膜中のFe族の量が多くなりすぎ耐摩耗性、耐溶着性等が劣化するため0.01≦c≦0.2の範囲とした。
また、(TiAlFe族)化合物膜中に固溶体/混合体として添加するY等は共通して、0.01未満では耐酸化性を向上するのに必ずしも十分な効果がなく、0.20を越えると皮膜の硬さが著しく低下し、著しく耐摩耗性を劣化する傾向にあるため0.001≦c≦0.20の範囲とした。
【0015】
尚、上記の元素はターゲット材として固溶体化しても、また各元素を個別のターゲットとして蒸着時に成分を調整してもさらに固溶体ターゲットと個別ターゲットを組み合わせても同様の効果が得られる。
【0016】
皮膜中のCNの比率は、0≦x≦1、すなわち炭化物、窒化物、炭窒化物の範囲としたのは、(TiAl)膜中に固溶体/混合体として添加したFe族の効果により応力が緩和されるため、硬さの高い炭化物でも十分に使用でき、また硬さのやや低い窒化物、炭窒化物においてもFe族の量を調整することにより十分な性能を有するため0≦x≦1の範囲とした。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本願発明を詳細に説明する。
84WC−3TiC−1TiN−3TaC−9Coの組成になるよう市販の2.5μmのWC粉末、1.5μmのTiC粉末、同TiN粉末、1.2μmのTaC粉末をボールミルにて96時間混合し、乾燥造粒の後、SNMA432のスローアウェイインサートをプレスし、焼結後、所定の形状に加工した。
この超硬合金基体上にPVD法により、各種合金ターゲット、各元素単独のターゲットを用意し、表3に示すような皮膜を形成した。
【0018】
【表3】
【0019】
尚、比較のため従来例で記載した膜に付いても行った。
次いで、これらの皮膜をスクラッチテスターにより、0から徐々に荷重を上げ、引っかいていき、膜が剥離する荷重を求めた。それらの結果を表4に示す。
【0020】
【表4】
【0021】
また、下記に示す工具が繰り返し衝撃を受ける切削条件にて切削テストを行い最大摩耗が0.2mmに達するまでの寿命時間を求め、その結果を表4に併記する。
【0022】
表4の結果より、スクラッチ荷重においては明確に違いがでていないが、機械的衝撃が加わる耐衝撃性の試験では使用初期に剥離を生じて、異状摩耗をきたしたことが分かる。
なお、実施例では窒化物の皮膜を使用したが、蒸着時の雰囲気を窒素、メタン等の分圧を調整することにより様々な組成比率の炭窒化物の製作も可能である。
【0023】
【実施例2】
84WC−3TiC−1TiN−3TaC−9Coの組成になるよう市販の2.5μmのWC粉末、1.5μmのTiC粉末、同TiN粉末、1.2μmのTaC粉末をボールミルにて96時間混合し、乾燥造粒の後、SNMG432のスローアウェイインサートをプレスし、焼結後、所定の形状に加工した。
この超硬合金基体上にPVD法により、各種(TiAlFeY)合金のターゲットを用い、表5に示すような皮膜を形成した。
尚、比較のため従来例で記載した膜も形成した。
【0024】
【表5】
【0025】
次いで、これらの皮膜をコーティングされたスローアウェイインサートを大気中で徐々に昇温し、酸化増が認められる温度を測定した。また、大気中900℃において、時間とともに酸化増量を測定し、酸化速度を算出した。これらの結果も表5に併記する。
更に、下記に示す高速切削条件にて切削テストを行い最大摩耗が0.2mmに達するまでの時間を求め、その結果も表5に併記する。
【0026】
表5より、Yを添加した皮膜は、格段に酸化速度が遅く、また、そのことが連続高速切削において著しい長寿命化に寄与している事が明らかである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の被覆硬質合金は、従来のTiN、TiAlNに比べ、硬さの低い元素を添加/固溶させることにより、皮膜の残留圧縮応力を低め密着性を向上させ、断続切削などにおいて、格段に長い工具寿命が得られるものである。
また、本発明は超硬合金を主に説明してきたがTiCN基サーメットに適用した場合にも優れた効果を現すことは自明である。
Claims (2)
- 主成分としてTiとAl及び/またはその固溶体の窒化物、炭窒化物より構成された0.5〜10μmの膜厚から成る硬質皮膜の主成分の1部をFe族金属及びMで示される金属で置換した被覆硬質合金の該皮膜組成をモル比において、(Tia Alb Fe族c Md)CxN1-xと表した場合、a、b、c、d、xがそれぞれ、a+b+c+d=1、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.2、0.001≦d≦0.2、0≦x≦1より成る皮膜であり、MはY、Dy、Nd、Ca、Ce、Srのうちいずれか1種以上の金属であることを特徴とする被覆硬質合金。
- 請求項1記載の被覆硬質合金において、主成分の一部をFe及びMで置換された(TiFeM)の窒化物、炭窒化物の層とAlの窒化物から成る層を5層以上の多層にしたことを特徴とする被覆硬質合金。
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1995
- 1995-01-31 JP JP03461195A patent/JP3638332B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH08209334A (ja) | 1996-08-13 |
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