JP3629991B2 - 異方性光散乱フィルムとそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の入射角度に応じて散乱性が異なる(あるいは、入射角度選択性を持つ)と共に、光散乱特性に異方性を持つ光散乱フィルムと、それを適用して表示画像の視認性(明るさやコントラストなど)を向上したり、表示装置の消費電力を軽減することが実現される液晶表示装置に関する。
【0002】
上記の液晶表示装置としては、バックライトやエッジライトなどの特殊光源を必要とせず、周辺光(日光や室内照明光など)からの反射光を表示光とするタイプの「反射型液晶表示装置」や、前記の特殊光源を擁するタイプの「透過型液晶表示装置」が含まれる。
【0003】
【従来の技術】
液晶表示装置では、観察の際の視野角を確保する(すなわち、表示装置の前面には、明るく表示画像を見せる)ことや、表示画面の全面に渡って均一な明るさで表示画像を見えるようにする目的で、装置の前面に光散乱フィルムを配置することが行なわれている。
従来の光散乱フィルムとしては、表面をマット状に加工した樹脂フィルムや、内部に拡散材を包含した樹脂フィルムなどが用いられている。
【0004】
従来のマット状に加工した樹脂フィルムや内部に拡散材を含有するフィルムの場合、入射光の入射角度に依存した散乱性の変化といった機能を持たせることは原理上困難であり、現実的にそのような機能は持ち合わせていない。
【0005】
表面をマット状に加工した光散乱フィルムの場合、フィルム表面をサンドブラスター処理のように物理的に加工してマット面を形成したり、あるいは、酸性またはアルカリ性の溶液による溶解処理により化学的にマット面を形成する。
従って光の散乱性を制御する事が難しく、また縦と横の散乱性を変えるといったことも出来ないため、光散乱に異方性を持たせることもできない。
【0006】
また、内部に拡散材を包含した光散乱フィルムにおいても、散乱性を制御するために、拡散材の屈折率,大きさ,形状などを制御する試みも為されているが、技術的に難易度が高く、実用上十分であるとは言えないのが現状である。
【0007】
従って、上記の光散乱フィルムでは、光散乱の入射角度依存性がなく、光散乱の異方性も無いかもしくは少ないため、表示装置に使用した際に、不必要な散乱光が生じ、結果として表示の明るさやコントラストの低下或いは表示画像のぼけを招くという問題点がある。
【0008】
一方、光散乱に異方性を持つ散乱板を用いた反射型液晶表示装置に係る提案として、特開平8−201802号公報が公知である。
上記公報に開示された散乱板は、後方散乱特性がほとんどなく前方散乱特性が強い散乱板であり、液晶表示装置への入射光あるいは液晶表示装置からの出射表示光のどちらか一方を選択的に散乱させる特性を有する。
【0009】
上記公報では、散乱板の構成は具体的に説明されておらず、「透明微細粒子を透明な重合性高分子で固めたもの」とだけ記載されている。
このような散乱板では、上述した「内部に拡散材を包含した光散乱フィルム」と同様に、散乱特性に異方性(前方か後方か)を持たせられたとしても、縦と横の散乱特性までも制御するのは難しい。
【0010】
また、散乱板としてホログラムを用いた透過型液晶表示装置に係る提案として、特開平9−152602号公報が公知である。
上記提案は、バックライトを有する液晶表示装置からの出射表示光を散乱させるものであり、散乱板としてホログラムを採用しているため、散乱特性に異方性を持たせることも容易であり、縦と横の散乱特性も制御することも容易ではあるが、必然的に分光(波長分散)を伴ってしまうため、観察する視点を移動するに応じて、表示光の色が変化して視覚されることになる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、散乱特性に異方性(前方か後方か、および入射角度の依存性)を持たせ、縦横の散乱範囲に係る散乱特性までも制御することが容易であると共に、観察位置によって表示光の色が変化しない異方性散乱体とそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の異方性光散乱フィルムは、
フィルム内部に、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、
屈折率の異なる部分の大きさ,形,分布を、フィルム表面での縦横方向およびフィルムの厚さ方向に沿って最適化することにより、入射光の入射角度に依存した散乱特性に変化を持たせると共に、不必要な方向への光散乱を無くし、必要な方向(範囲)にのみ光を散乱させるものである。
【0013】
このような異方性光散乱フィルムを適用することで、高精細で明るく高コントラストであり、且つ像のぼけの少ない表示が可能な液晶表示装置が提供される。
【0014】
請求項1に記載の異方性光散乱フィルムは、
フィルム内部での、屈折率の異なる部分の分布に応じて、
フィルム表面では、屈折率の高低からなるパターンが形成されており、屈折率の異なる部分の形状が、縦長(あるいは、横長)となっており、
フィルム断面では、屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して分布している構造を有している光散乱フィルムであって、
フィルム表面での屈折率の異なる部分の形状に応じて、光散乱特性が、横長(あるいは、縦長)となるような、光散乱特性に異方性を持つと共に、
屈折率の異なる部分が分布する傾斜方向に沿った角度で入射する光に対しては、光散乱が生じ、
上記傾斜方向とは垂直な角度で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能するような、光散乱性に入射角度選択性を持つことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の異方性光散乱フィルムは、
屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布が一様であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の異方性光散乱フィルムは、
屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布が不規則であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の液晶表示装置は、
印加電圧に応じて透過/非透過を変調することで表示パターンを変更する液晶パネルの前面側(観察者側)または背面側(観察者と反対側)の何れかの位置に、請求項1〜3の何れかに記載の光散乱フィルムを配置した構成である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。
図1は、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布して、屈折率の高低(同図では、黒と白で表現する)からなる濃淡模様が形成された光散乱フィルム1を示す説明図であり、左が平面図,右が断面図である。
【0020】
平面図から分かるように、屈折率の異なる部分の形状は横長である。
また、断面図から分かるように、屈折率の異なる部分は、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布した構造である。
図1では、屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布は一様(傾斜方向では、色が変化していない)である。
【0021】
図2は、別の実施形態に係る光散乱フィルム1を示す説明図であり、左が平面図,右が断面図である。
図2では、屈折率の異なる部分の形状は縦長であり、また、屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布は不規則(傾斜方向でも、色が変化している)である。
【0022】
図1・図2の光散乱フィルムの光学特性について、まず、断面図で考える。
屈折率の異なる部分が層状に分布した上記傾斜方向に沿った角度(フィルムの垂線から角度θをなす、図の矢印2の方向)で入射する光に対しては、光散乱が生じることになる。
【0023】
上記傾斜方向とは垂直な角度(図の矢印3の方向)で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能し、入射光は散乱されずに出射する。
【0024】
次に、平面図で考えると、
屈折率の異なる部分の形状が縦長(あるいは、横長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分からの出射光の光散乱特性が、横長(あるいは、縦長)となるような異方性を持つ。
図1では形状が横長であるから出射光は縦長に散乱し、図2では形状が縦長であるから出射光は横長に散乱することになる。
このことは、光散乱フィルムの作製工程で後述する。
【0025】
図3は、本発明の光散乱フィルム1の持つ入射角度依存性の一例を示すグラフである。
図中実線4で示すように、ある特定入射角度範囲(図では0度から60度)の光に対してはヘイズ値が80%以上あり、逆にそれとは対称な入射角度(図では−60度から0度)の光に対してのヘイズ値は20%以下となっており、これが本明細書中で言う散乱性の入射角度依存性を指す。
【0026】
また、上述したように、屈折率の異なる部分の形状が縦長(あるいは、横長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分からの出射光の光散乱特性が、横長(あるいは、縦長)となるような異方性を持つ。例えば、図1のように形状が横長であると、光散乱フィルムからの散乱出射光は、図4に示すように、縦長の楕円形となるような分布となる。
【0027】
次に、本発明の光散乱フィルム1の構造について詳細に説明する。
上述したように、本発明の光散乱フィルム1の内部には、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されている。
【0028】
この屈折率の差異は、小さすぎると散乱性が悪くなり、逆に大きすぎるとどのような角度で光が入射しても光散乱が生じてしまうことになり、散乱性の入射角依存性を持たせることが困難となる。
そのため、表面上の屈折率差だけでは光散乱が生じず、フィルムに厚みがあることで十分な散乱性を持つような最適な屈折率差である必要がある。
【0029】
本発明では、上記条件に当てはまるように、屈折率差が0.001から0.2の範囲で適宜選択し、同様にフィルム厚みも前記屈折率差に応じて1000μmから1μmの範囲で適宜選択している。
【0030】
一例を挙げると、平均屈折率が1.52で厚みが20μmのフィルム中に、屈折率が1.56(屈折率差0.04)の部分を分布させて、濃淡模様を形成することで、十分な散乱性と入射角度選択性を持つ光散乱フィルムを得ることができた。
【0031】
記録できる屈折率差は作成方法や記録材料などにより制限を受けるため、大きな屈折率差を持つ場合はフィルムを薄く、小さな屈折率差を持つ場合はフィルムを厚くすることで、本発明の光散乱フィルムを実現することが可能である。
【0032】
屈折率の異なる部分の大きさは、光散乱を生じさせるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持たせるために、その平均の大きさは直径で0.1μmから300μmの範囲内で、それぞれの用途での必要な散乱性に応じて適宜選択される。
【0033】
一例として、12μmの平均の大きさを持つ屈折率の高低からなる濃淡模様とすることで、約±40度程度の散乱広がりをもつ散乱性を得た。
【0034】
また、屈折率の異なる部分のフィルム表面上での分布は、光散乱を生じさせるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持たせるために、フィルム全体の平均屈折率を<n>とすると、その確率分布は<n>を中心とする正規分布を呈する。あるいは屈折率nの最小値nmin で最大値をとり指数関数的に屈折率の最大値nmax まで単調減少するような確率分布、或いは単調増加する確率分布に従って分布していてもよい。
【0035】
<実施形態1>
図5は、本発明の光散乱フィルムを用いた反射型液晶表示装置について、要部を概念的に示す断面図である。
液晶パネル5と、その背面(非観察者側)に配置された正反射性もしくは散乱性の反射板6と、液晶パネル5の前面(観察者側)に配置された光散乱フィルム1とで構成されている。
【0036】
前記反射板6は、図示のように液晶パネル2と別体ではなく、液晶パネル2中に液晶を駆動させる電極を兼ねるもの(反射電極)として内在していてもよい。
尚、同図では説明の便宜上、光散乱フィルム1、液晶パネル5、反射板6をそれぞれ離間させて図示しているが、実際には積層されている。
また、液晶の種類によっては、偏光板や位相差板その他の光学フィルムが使われる場合もあるが省略している。
【0037】
前記液晶パネル5は、一般的な構造のものからなり、印加電圧の有無に応じて入射光を変調し、白/黒(透過/非透過)の切り替え表示を行なう。
【0038】
一方、光散乱フィルム1は、図示のように、入射光7が液晶パネル5の前面側から光散乱フィルム1に入射する際に光散乱が生じて、その散乱光8は液晶パネル5の背面側の反射板6で反射し、光散乱フィルム1を透過して前面に出射する。この際に光散乱フィルム1は、出射する散乱光9を二次光拡散せずにそのまま透過させる。
【0039】
従って、前記光散乱フィルム1の持つ散乱性の入射角度依存性により、表示光出射の際の不必要な散乱を生じることがなく、画素の写り込みによる所謂2重像を生じることがないため、表示像のぼけを軽減させる事ができる。加えて、散乱異方性により不必要な散乱を軽減し、表示の明るさやコントラストを向上させることが出来る。
【0040】
<実施形態2>
図6は、本発明の光散乱フィルムを用いた透過型液晶表示装置について、要部を概念的に示す断面図である。
液晶パネル5と、その背面(非観察者側)に配置されたバックライト10と、液晶パネル5とバックライト10との間に配置された光散乱フィルム1とで構成されている。
【0041】
光散乱フィルム1は、バックライト10からの光のうち所定角度範囲内の照明光を所望の形に散乱させて、液晶パネル5に入射させる。この所定角度範囲を液晶パネルにおけるリタデーションのために最適な入射角度内(±30度程度)とすることで、表示のコントラストを向上させることができる。
【0042】
一方、上記の所定角度外の光は光散乱フィルム1にて散乱せずに透過しようとするが、その大部分は光散乱フィルム1の液晶パネル5側の面にて全反射してバックライト10側に戻り、バックライト10内で再び散乱反射を繰り返し、結果的にバックライト10からの殆どの光は光散乱フィルム1で散乱出射する成分となり、光量の損失がなく表示の明るさを低下させることがない。
【0043】
<実施形態3>
図7は、本発明の光散乱フィルムを用いた透過型液晶表示装置の他の実施形態について、要部を概念的に示す断面図である。
液晶パネル5と、その背面(非観察者側)に配置されたバックライト10と、液晶パネル5の前面(観察者側)に配置された光散乱フィルム1とで構成されている。
【0044】
光散乱フィルム1は、液晶パネル5からの表示光のうち所定角度範囲内の出射光13を所望の形に散乱させて出射する。この所定角度範囲を液晶パネルにおいて最適なリタデーションを受けた光の出射角度範囲内(±30度程度)とすることで、表示のコントラストを向上させる事ができる。
【0045】
一方、上記の所定角度外の光14は光散乱フィルム1にて散乱せずに透過するが、その出射光は散乱されずに直接透過するため、所定角度外にて液晶パネルから出射するコントラストの低い画像は観察者に認識されない。
【0046】
また、この時の視野角は、光散乱フィルム1の光散乱の異方性により特定されるため、光散乱フィルムによって視野角を狭めることにはならず、むしろ最適な範囲に表示光を広げることができることになる。
【0047】
本発明の液晶表示装置の液晶表示パネル5には、R,G,B画素に対応してカラーフィルタを搭載したカラー表示用パネルまたはモノクロ表示用パネルのいずれを使用してもよい。
【0048】
また、本発明の液晶表示装置は、TN方式,STN方式,ゲストホスト方式,ポリマー分散型など液晶の駆動方式に特に限定されるものではない。
【0049】
以下、本発明の光散乱フィルムを作製する手段について説明する。
本発明の光散乱フィルムは光学的な露光手段により作製することができる。
【0050】
<作製手段1>
図8は、図1に示す構造の光散乱フィルムを、ランダムマスクパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。
UV光源15から出た紫外光をコリメート光学系16により平行光17とし、マスク原版18を照射する。マスク原版18は、ガラス基板20とランダムパターンであるクロムパターンとからなる。
【0051】
マスク原版18のUV照射側とは反対の面には感光材料19を密着して配置しており、マスク原版18のパターンを感光材料19に露光照射する。
この際、図示のようにUV平行光17とマスク原版18は所定角度αだけ傾いて配置されているため、パターン露光は感光材料19中で、所定角度傾いてなされることになる。
この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾斜角度(すなわち、入射角度依存性の散乱ピーク角度θ)に相当しすることになるので、前記角度は用途に応じて0から60度程度の範囲内で適宜選択される。
【0052】
また、ここで使用する感光材料19は、UV光の露光部と未露光部との屈折率の変化の形態で記録できる感光材料であり、記録しようとする濃淡模様より高い解像力を持ち、その厚みの方向にもパターンを記録できるような材料である必要がある。
【0053】
このような記録材料としては、体積型ホログラム用感光材料が利用でき、アグファ社製ホログラム用銀塩感光材料8E56乾板,デュポン社製ホログラム用感光材料HRFフィルムあるいは重クロム酸ゼラチン,ポラロイド社製DMP−128記録材料などが使用可能である。
【0054】
図8で用いられるランダムパターンを持つマスク原版18は、計算機を用いた乱数計算から作製した白黒パターンデータを、所謂フォトリソグラフィーの手法によりガラス基板20上の金属クロムパターン21としてエッチングしたものを用いた。もちろんマスク原版の作成方法としては、上記方式に限定されるものではなく、リス乾板を使った写真手法などにより作製しても同様なマスクを作製できることは周知である。
【0055】
<作製手段2>
図9は、図2に示す構造の光散乱フィルムを、スペックルパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。
レーザー光源23から出たレーザー光24ですりガラス25を照射する。
すりガラス25のレーザー照射側とは反対の面には、所定距離Fをおいて感光材料19を配置し、すりガラス25で透過散乱したレーザー光が作り出す複雑な干渉パターンであるスペックルパターンが感光材料19に露光照射される。
【0056】
この際、図示のようにすりガラス25と感光材料19は所定角度αだけ傾いて配置されているため、スペックルパターンは感光材料中で、所定角度傾いて露光されることになる。
この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾き(すなわち、入射角度依存性の散乱ピーク角度θ)に相当しすることになるので、前記角度は用途に応じて0から60度程度の範囲内で適宜選択される。
【0057】
記録に使用するレーザ光源は、アルゴンイオンレーザーの514.5nm,488nmまたは457.9nmの波長のうち、感光材料の感度に応じて適宜選択して使用することができる。
また、アルゴンイオンレーザー以外でもコヒーレント性の良いレーザー光源であれば使用可能であり、例えばヘリウムネオンレーザーやクリプトンイオンレーザーなどが使用できる。
【0058】
スペックルパターンは、コヒーレント性の良い光が粗面で散乱反射または透過した時に生ずる明暗の斑点模様であり、粗面の微小な凹凸で散乱した光が不規則な位相関係で干渉するために生ずるものである。
【0059】
「光測定ハンドブック 朝倉書店 田幸敏治ほか著 1994年11月25日発行」の記述(p.266 〜p.268 )によれば、濃度や位相が位置によってランダムな値を示すようなスペックルパターンでは、
前記パターンの大きさは、感光材料から拡散板を見込む角度に反比例して、パターンの平均径が決定される。
従って、拡散板の大きさを、水平方向よりも垂直方向で大きくした場合、感光材料上に記録されるパターンは、水平方向よりも垂直方向が細かいものとなる。
【0060】
図9の光学系での作製方法によるスペックルパターンでは、使用するレーザー光の波長λおよびすりガラスの大きさD,すりガラスと感光材料との距離Fが、記録されるスペックルパターンの平均サイズdを決定することになり、一般に、dは次式で表される。
d=1.2λF/D
【0061】
また、このスペックルパターンの奥行き方向の平均の長さtは
t=4.0λ(F/D)2
で表される。
【0062】
以上より、λおよびF/Dの値を最適な散乱性を持つように最適化することで所望の3次元的な屈折率分布を持つ光散乱フィルムを得ることが出来る。
【0063】
一例として、λ=0.5μmで、F/D=2とすると、d=1.2μm,t=8μmとなり、フィルム表面上の濃淡模様は平均1.2μmで分布し、フィルムの厚み方向には、前記傾斜角度に従った方向に平均8μmの大きさで分布することになる。
【0064】
ただし、これらの大きさはあくまでも平均の大きさであり、実際にはこれらの大きさを中心に大小様々な大きさで、屈折率の異なる部分が表面上および奥行き方向に傾斜して分布することになり、図2に示すような本発明の光散乱フィルムとなる。
【0065】
<作製手段3>
請求項4に記載した本発明の光散乱フィルムは、すりガラス25の大きさを縦横で異ならせ、長方形あるいは楕円形とすることで、図9に示す光学系で作製できる。
【0066】
一例を挙げると、すりガラス25の大きさDが縦(y)方向と横(x)方向で異なり、前記(F/Dx)=2,(F/Dy)=20で、他の条件が上記と同じだとすると、スペックルパターンの横方向の平均サイズdx=1.2μmで、縦方向の平均サイズdy=12μmとなり、縦横比1:10の平均サイズのスペックルパターンが得られる。
これを、<作製手段2>と同様に露光することで、縦横方向の散乱性が異なる散乱異方性を持つ本発明の光散乱フィルムが得られる。
【0067】
上述の<作製手段1〜3>はあくまで一例であり、本発明はこれに限るものではなく、あるいは光学的な露光手段でない作製方法においても、本発明の光散乱フィルムは実現される可能性がある。
【0068】
【発明の効果】
光散乱フィルムが所定角度で入射する光に対しては光散乱が生じ、逆にそれとは垂直な光に対しては透明フィルムとして機能することにより、光散乱性に入射角度選択性を持ち、そのため、散乱性を要する光と散乱性が不要な光とを、そのフィルムへの入射角度により分離することができ、結果として表示装置などに用いた場合に、不必要な散乱を生じることなく表示の明るさや細かさ、コントラストを向上し、且つ表示像のぼけを軽減させるなどの効果がある。
【0069】
また、光散乱が生じる入射角度で光が入射した際に、その散乱光の広がりが、縦横で異なるような散乱異方性をも併せ持つことが可能である。
そのため、必要な方向にのみ散乱光を出射することが出来、結果として、表示装置に用いた場合に、不必要な散乱を生じることなく表示の明るさ、コントラストを向上させるなどの効果がある。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光散乱フィルムを示す説明図であり、左が平面図,右が断面図である。
【図2】本発明の光散乱フィルムを示す説明図であり、左が平面図,右が断面図である。
【図3】本発明の光散乱フィルム1の持つ入射角度依存性の一例を示すグラフ。
【図4】本発明の光散乱フィルムが持つ光散乱の異方性についてのを説明図。
【図5】本発明の光散乱フィルムを用いた反射型液晶表示装置について、要部を概念的に示す断面図。
【図6】本発明の光散乱フィルムを用いた透過型液晶表示装置について、要部を概念的に示す断面図。
【図7】本発明の光散乱フィルムを用いた透過型液晶表示装置について、要部を概念的に示す断面図。
【図8】図1に示す構造の光散乱フィルムを、マスクパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図。
【図9】図2に示す構造の光散乱フィルムを、スペックルパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1…光散乱フィルム
2…散乱方向から入射する照明光
3…透過方向から入射する照明光
4…実測したヘイズ値のプロット
5…液晶パネル
6…反射板
7…周辺照明光
8…散乱光
9…出射散乱光
10…バックライト
11…所定角度範囲内の照明光
12…所定角度範囲外の照明光
13…所定角度範囲内の出射光
14…所定角度範囲外の出射光
15…UV光源
16…コリメート光学系
17…平行光
18…マスク原版
19…感光材料
20…ガラス基板
21…クロムパターン
22…光ファイバー
23…レーザー光源
24…レーザー光
25…すりガラス
26…ビームエキスパンダー
27…コリメーター
Claims (4)
- フィルム内部での、屈折率の異なる部分の分布に応じて、
フィルム表面では、屈折率の高低からなるパターンが形成されており、屈折率の異なる部分の形状が、縦長(あるいは、横長)となっており、
フィルム断面では、屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して分布している構造を有している光散乱フィルムであって、
フィルム表面での屈折率の異なる部分の形状に応じて、光散乱特性が、横長(あるいは、縦長)となるような、光散乱特性に異方性を持つと共に、
屈折率の異なる部分が分布する傾斜方向に沿った角度で入射する光に対しては、光散乱が生じ、
上記傾斜方向とは垂直な角度で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能するような、光散乱性に入射角度選択性を持つことを特徴とする光散乱フィルム。 - 屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布が一様であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム。
- 屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布が不規則であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム。
- 印加電圧に応じて透過/非透過を変調することで表示パターンを変更する液晶パネルの前面側(観察者側)または背面側(観察者と反対側)の何れかの位置に、請求項1〜3の何れかに記載の光散乱フィルムを配置した構成である液晶表示装置。
Priority Applications (9)
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---|---|---|---|
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