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JP3626940B2 - 化学物質の検出方法及び検出装置 - Google Patents

化学物質の検出方法及び検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、化学物質の検出方法及び検出装置に関し、特に、ごみ焼却炉等から排出される排ガス中にごく微量含まれるダイオキシン類前駆体の異性体を選択的に検出するための化学物質の検出方法及び化学物質の検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ごみ焼却施設から排出される燃焼排ガス中に含まれるダイオキシン類を低減させるために、排ガス中に含まれるダイオキシン類をリアルタイムに計測して焼却炉の燃焼制御に用いる試みが始まっている。ダイオキシン類の計測には、高分解能のGC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)による計測法が知られているが、この方法は複雑な前処理を要するため、試料を採取してから結果が判明するまでに数週間を要するのが現状である。したがって上記のようなリアルタイム制御に適用することは極めて困難である。
【0003】
また、燃焼排ガス中に存在するダイオキシン類の濃度は極めて低いため、燃焼排ガス中のダイオキシン類を直接計測することは難しく、これを焼却炉などの燃焼制御に使用する程度の精度で計測するには時間も要してしまう。したがって、現在では燃焼排ガス中のダイオキシン類を直接計測するよりも、ダイオキシン類の前駆体等、ダイオキシン類の濃度と相関の高い指標物質による代替計測技術が開発されつつある。
【0004】
ここで、励起効率の異なるレーザーによって前駆体をイオン化するレーザー法によれば、前駆体を高感度で計測できる。特に、共鳴増感多光子イオン化法(REMPI:Resonance−enhanced Multiphoton Ionization)は、燃焼排ガス中のダイオキシン類前駆体であるクロロベンゼン類を実用的な感度で計測できる。クロロベンゼン類には異性体が存在するが、ダイオキシン類との相関は異性体によって異なる。このため、ダイオキシン類と相関の低い異性体を測定したのでは、ダイオキシン類の発生量を推定する精度が低くなり、燃焼制御に不具合が生ずることもある。
【0005】
したがって、より高い精度でダイオキシン類の発生量を推定するためには、ダイオキシン類と相関の高い異性体を選択的に計測することが必要である。また、焼却炉等の燃焼制御に使用するためには、数秒から長くとも1分程度で分析を完了する必要があるので、迅速に計測できることが要求される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、波長可変レーザーを使用して、クロロベンゼン類のS→S遷移を励起すれば、異性体によってスペクトルが異なるので、これを利用して特定の異性体を選択的にイオン化して検出することができる。詳しくは、R.Zimmermann, H.J.Heger, R.Dorfner, U.Bosel, M.Blumenstock, D.Lenor and A.Kettrup, Combust Sci. and Tech., Vol. 134, pp.87−101(1998)を参照されたい。この方法によれば、異性体を選択的に検出でき、また、検出に要する時間も短いため、焼却炉等の燃焼制御に適用できる可能性がある。しかし、波長可変レーザーは長時間安定して一定の波長を維持することが困難であり、実験室においては異なる異性体を選択的にイオン化できても、焼却炉等の燃焼状態を長時間監視するような使い方は事実上困難である。また、波長可変レーザーは、塩素が2個以上ついているものについては感度が低く、実用的な感度を得ることができない。
【0007】
一方、選択性の高くない大気圧化学イオン化法等のイオン化法でイオン化した後、特定質量数のイオンをイオントラップに保持し、その後イオンに解離エネルギーを与えて解離生成物(以下フラグメントという)を生成させる。そして、このフラグメントの質量数を計測して、目的とする計測対象物質を選択して計測することができる。なお、この詳細については、馬場章夫他訳、「有機化学のためのスペクトル解析法」、化学同人(2000)を参照されたい。しかし、この方法は、異なる化学種を選択的に計測するのみであり、クロロベンゼン等の異性体を選択的に検出するためには、ガスクロマトグラフを併用する必要がある。このため、数秒から長くとも1分程度で分析を完了させる必要のある焼却炉等の燃焼制御に使用することはできなかった。
【0008】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、焼却炉や加熱炉その他の燃焼炉を運転している最中であってもその燃焼条件を制御できる程度に前駆体の検出速度を向上させること、ダイオキシン類の推定精度を高くすること、ダイオキシン類と相関の強い異性体を選択的に検出することのうち少なくとも一つを達成できる化学物質の検出方法及び化学物質の検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に係る化学物質の検出方法は、複数の異性体の混合物からなるダイオキシン類の前駆体をイオン化するイオン化工程と、このイオン化工程によってイオン化された前記前駆体のイオンにエネルギーを与えてフラグメントイオン化するフラグメント化工程と、前記前駆体のフラグメントイオンの質量から当該フラグメントイオンのフラグメントパターンを求める質量分析工程と、当該質量分析工程で求めた前記前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、前記前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから、前記前駆体中における異性体の濃度を求める演算工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、トリクロロベンゼン等のダイオキシン類前駆体の異性体をフラグメント化すると、異性体によってフラグメントパターンが異なることを見出した。そして、焼却炉排ガス等の実ガスに含まれるダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンは、この前駆体の異性体のフラグメントパターンを重ね合わせたものであり、各々の異性体が干渉して、前駆体のフラグメントパターンが変化することはないことを見出した。本発明はこれを利用してなされたものであって、異性体の標準ガスから求めたフラグメントパターンに基づいて実際の排ガスに含まれるダイオキシン類前駆体の異性体濃度を数学的に求めるものである。
【0011】
この発明に係る化学物質の検出方法は、複数存在するダイオキシン類の前駆体の異性体濃度を、前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、この前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから求めるようにしてある。より具体的には、ダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンを求める。そして、前駆体の異性体の標準ガスを用いて、各異性体のフラグメントパターンを求め、ここから各異性体における各フラグメントイオンの濃度比を求める。
【0012】
ここで、ダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンは、この前駆体の異性体のフラグメントパターンを重ね合わせたものである。したがって、ダイオキシン類前駆体フラグメントイオンの濃度は、異性体の濃度と、前記ダイオキシン類前駆体フラグメントイオンと同じ質量数である異性体フラグメントイオンの濃度比とをそれぞれの異性体について乗算し、その乗算結果を加算して求めることができる。ここで、ダイオキシン類前駆体フラグメントイオンの濃度及び異性体フラグメントイオンの濃度比は既知であるから、異性体の濃度を未知数とした方程式ができる。そして、フラグメントイオンは複数あるため、このような方程式が複数成立する。したがって、これらの方程式を連立させて解くことによって、各異性体の濃度を求めることができる。
【0013】
このように、ダイオキシン類前駆体の各異性体の濃度を知ることができるので、ダイオキシン類と相関の低い異性体とダイオキシン類と相関の高い異性体との濃度を知ることができる。これによって、すべての前駆体からダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を選択的に計測することができる。その結果、ダイオキシン類の発生量を従来よりも高い精度で推定することができるので、焼却炉等の燃焼状態を従来よりも高い精度で制御できる。これにより、ダイオキシン類の発生量を従来よりも低くできる。
【0014】
また、質量分析装置等を用いた質量分析工程によって、ダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンを求めるので、短時間でフラグメントパターンを求めることができる。そして、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度は、数学的計算によって求めることができるので、電子計算機等の計算手段によれば極めて短時間で計算結果を得ることができる。その結果、この化学物質の検出方法においては、短い時間でダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を求めることができ、ダイオキシン類をリアルタイムで測定できる。ここで、質量分析工程においては、特に飛行時間計測方式のものを使用すると、計測時間を短くできるので好ましい。
【0015】
ここで、前駆体のフラグメントイオンの濃度指標には、例えば、前駆体のフラグメントイオンを質量分析した際におけるフラグメントパターンの信号強度が利用できる。質量分析においては、フラグメントイオンの数によって得られる信号強度が変化するので、この信号強度はフラグメントイオンの濃度と比例するからである。また、異性体のフラグメントの濃度比指標には、例えば、異性体のフラグメントイオンを質量分析した際におけるフラグメントパターンのそれぞれの信号強度を、各異性体の全濃度を表す指標で除算したものを使用することができる。
【0016】
また、イオン化工程には後述する真空紫外光を照射する方法や、波長可変レーザーあるいはその高調波を用いることもできる。さらに、真空紫外光の波長を持つレーザー、エキシマランプを使用してもよく、また、例えばHeイオン等のイオンを粒子加速器で打ち出して、排ガス中に含まれる前駆体に衝突させてもよい。さらに、電子ビームをセクターで分離して10eV程度のエネルギーを持つものを取り出し、排ガス中に含まれる前駆体に衝突させてもよい。この他にも、例えば、光子当たり4〜5eVのエネルギーを持つ紫外レーザー光を用い、2光子イオン化過程においてイオン化させてもよい。またフェムト秒パルスレーザーのように、ピーク強度の高いレーザー光を集光させた場合、光子によって生ずる光電場でクロロベンゼン類をイオン化させてもよいし、さらに電子吸収のない近赤外領域の波長においてイオン化してもよい。また、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化、あるいは高速電子衝突イオン化等によって前駆体をイオン化してもよい。フラグメント化工程では、後述するTICKLE波形を前駆体のイオンに与える他、高速電子線を衝突させたり、レーザー光を照射したりすることによって前駆体のイオンをフラグメント化することができる。
【0017】
なお、ダイオキシン類とは、一般にダイオキシンやフランやコプラナーPCBと呼ばれる分子を含むものである。また、前駆体には、例えばトリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン等のベンゼン類や、トリクロロフェノール等のフェノール類が含まれる。このような前駆体の中で、特にダイオキシン類と相関の高いものを使用することが好ましい。
【0018】
また、請求項2に係る化学物質の検出方法は、請求項1に記載の化学物質の検出方法において、上記イオン化工程においては、上記前駆体のイオン化ポテンシャルよりも大きく、当該イオン化ポテンシャルと上記前駆体のイオンの解離エネルギーとの和よりも小さいエネルギーを上記前駆体に与えることを特徴とする。
【0019】
このため、この化学物質の検出方法においては前駆体を壊さずにイオン化できるので、上記化学物質の検出方法の奏する作用・効果の他に、イオン化効率を高くして質量分析工程における検出感度を高くできるという作用・効果を奏する。また、このイオン化においては、イオン化に要するエネルギーを適度に設定しているため、無闇に各種の分子を解離したりイオン化したりすることがない。このため、夾雑物の発生が非常に少ないので、除去すべき夾雑物も極めて少なくなる。その結果、夾雑物除去に要するエネルギーを低く抑えることができるので、残すべき前駆体であるダイオキシン類前駆体を壊さないで済み、質量分析工程における検出感度を高くできる。
【0020】
た、請求項3に係る化学物質の検出方法は、請求項1に記載の化学物質の検出方法において、上記イオン化工程においては、波長が50nm以上200nm以下の光によって上記前駆体をイオン化することを特徴とする。また、請求項4に係る化学物質の検出方法は、請求項1に記載の化学物質の検出方法において、上記イオン化工程においては、真空紫外光を上記前駆体に照射することを特徴とする。
【0021】
このように、イオン化工程において前駆体にエネルギーを与える場合には、イオン化ポテンシャルよりも高く当該イオン化ポテンシャルに4eVを加算した値以下であることが望ましい。また、光のエネルギーによって前駆体をイオン化する場合には、その波長を50nm以上200nm以下とすることが望ましい。そして、このような光を発生させる光源として真空紫外光ランプを使用すると、真空紫外光を容易に得ることができるので好ましい。
【0022】
また、請求項5に係る化学物質の検出方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学物質の検出方法において、上記フラグメント化工程においては、上記前駆体のイオンの軌道共鳴周波数に対応する周波数成分を持つTICKLE波形で上記前駆体のイオンにエネルギーを与えることを特徴とする。
【0023】
この化学物質の検出方法では、フラグメント化工程においてTICKLE波形をダイオキシン類の前駆体イオンに与えることによってこれをフラグメント化する。このため、前駆体の質量数と同程度の質量数を持つ不純物があっても、この影響を排除して正確に計測できる。また、イオン化の際に発生する夾雑物も極めて少ないため、ダイオキシン類の前駆体をフラグメント化する場合には、目的とする当該前駆体を効率的にフラグメント化できる。その結果、ほとんどすべてのダイオキシン類前駆体のフラグメントを質量分析手段の計測対象とすることができるので、質量分析手段の検出感度を高くできる。この作用と上述したダイオキシン類と相関の高い異性体を選択的に検出する作用とによって、より緻密に燃焼制御ができる。
【0024】
また、請求項6に係る化学物質の検出装置は、ダイオキシン類の前駆体をイオン化するイオン化手段と、このイオン化手段によってイオン化された前記前駆体のイオンにエネルギーを与えてフラグメントイオン化するフラグメント化手段と、前記前駆体のフラグメントイオンの質量から当該フラグメントイオンのフラグメントパターンを求める質量分析手段と、当該質量分析手段で求めた前記前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、前記前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから、前記前駆体中における異性体の濃度を求める演算手段と、を有することを特徴とする。
【0025】
この発明に係る化学物質の検出装置は、イオン化手段と、フラグメント化手段と、質量分析手段と、演算手段とを備える。そして、複数存在するダイオキシン類の前駆体の異性体濃度を、前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、この前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから求めるようにしてある。このため、ダイオキシン類と相関の低い異性体とダイオキシン類と相関の高い異性体との濃度を知ることができる。これによって、すべての前駆体からダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を選択的に計測することができる。その結果、ダイオキシン類の発生量を従来よりも高い精度で推定することができるので、焼却炉等の燃焼状態を従来よりも高い精度で制御でき、ダイオキシン類の発生量を従来よりも低くできる。
【0026】
また、この化学物質の検出装置は、質量分析手段によってダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンを求めるので、短時間でフラグメントパターンを求めることができる。そして、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度は、数学的計算によって求めることができるので、コンピュータを利用した演算手段によれば極めて短時間で計算結果を得ることができる。その結果、この化学物質の検出方法においては、短時間でダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を求めることができ、ダイオキシン類をリアルタイムで測定できる。ここで、質量分析手段には、特に飛行時間計測方式のものを使用すると、計測時間を短くできるので好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものが含まれるものとする。
【0028】
(実施の形態1)
この発明は、ダイオキシン類前駆体の異性体をフラグメント化すると、異性体によってフラグメントパターンが異なることを利用し、このフラグメントパターンに基づいて実際の排ガスに含まれるダイオキシン類前駆体の異性体濃度を求める点に特徴がある。以下の説明においては、ダイオキシン類前駆体としてトリクロロベンゼン(以下TCBという)を使用した場合について説明する。TCBを使用したのは、TCBについては異性体によってダイオキシン類との濃度相関が異なるということが既に判明しており、利用しやすい物質だからである。
【0029】
なお、TCBの他にも、ダイオキシン類前駆体としてテトラクロロベンゼン、ジクロロフェノール、あるいはトリクロロフェノール等を使用することができる。なお、これらの物質を使用する場合には、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)法等の既存の分析方法によって、これらの物質の異性体毎にダイオキシン類との濃度相関を予め求めておく。
【0030】
実際の測定においては、前駆体であるTCBをイオン化した後フラグメント化し、質量分析手段によってフラグメントパターンを求める。一方、TCBの各異性体について、これらの標準ガスを用いて予めフラグメントパターンを得ておく。そして、このフラグメントパターンに基づいて、前駆体であるTCBに含まれる異性体の濃度を数学的に求める。
【0031】
この発明におけるイオン化手段及びフラグメント化手段には、様々な手段が利用できる。ここでは、真空紫外光によってTCBをイオン化し、これをRF(Radio Frequency:高周波)リングによるイオントラップに閉じ込めて、TICKLE波形をTCBイオンに与えるTICKLE手段によってフラグメント化する手順について説明する。
【0032】
なお、本発明に適用できるイオン化手段及びフラグメント化手段はこれに限定されるものではない。他のイオン化手段としては、例えば、光子当たり4〜5eVのエネルギーを持つ紫外レーザー光を用い、2光子イオン化過程においてイオン化させることもできる。またフェムト秒パルスレーザーのように、ピーク強度の高いレーザー光を集光させた場合、光子によって生ずる光電場でクロロベンゼン類をイオン化させてもよいし、さらに電子吸収のない近赤外領域の波長においてイオン化してもよい。また、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化、あるいは高速電子衝突イオン化等のイオン化手段によって、排ガスGs中におけるクロロベンゼン類をイオン化してもよい。
【0033】
また、他のフラグメント化手段としては、例えば、高速電子線を衝突させたり、レーザー光を照射したりする手段が使用できる。ただし、使用するフラグメント化手段によって、得られるフラグメントパターンは異なるので、各異性体の標準ガスをフラグメント化させたときと同じフラグメント化手段を使用する必要がある。
【0034】
図1は、この発明の実施の形態1に係る化学物質の検出装置を示す説明図である。この化学物質の検出装置100は、イオン化室1と、ガス導入装置2と、イオン化手段である真空紫外光ランプ3と、質量分析手段である飛行時間型の質量分析計4とを備えている。イオン化室1にはイオントラップ手段であるRFリングを備えたRFイオントラップ装置10が備えられている。これは、内部に形成される高周波電界によって、イオン化された排ガス中の前駆体をトラップ11内に閉じ込めておく。この発明においては、ダイオキシン類と相関の強いTCBを前駆体としてイオン化し、トラップ11内に閉じ込める。
【0035】
イオントラップ手段には電界や磁界その他の電磁気学的力によってイオンを内部に閉じ込めるものが使用できる。そして、電界や磁界等はそれぞれ単独で使用してもよく、またこれらを適宜組み合わせて使用してもよい。このようなイオントラップ手段としてはいくつかの種類が知られており、中でも高周波電界が内部に形成される上記RFイオントラップ装置10は取り扱いが比較的容易であるため好ましい。また、他のイオントラップ手段としては、このRF型の他、直流電圧と静磁場とによるペニング(Penning)トラップを使用することもできる。
【0036】
イオントラップ手段であるRFイオントラップ装置10は、第一エンドキャップ12と第二エンドキャップ13とRFリング14とから構成されており、三次元四重極型である。図1に示すように、RFリング14は、第一エンドキャップ12と第二エンドキャップ13との内部に配置されている。また、RFリング14にはトラップ電圧を印加するための高周波電源装置21が接続されており、RFリング14にトラップ電圧として高周波電圧を印加する。この高周波によって、イオン化された排ガス中の前駆体その他の物質がトラップ11内に閉じ込められる。また、第一及び第二エンドキャップ12及び13には任意波形発生手段である任意波形発生装置20が接続されており、後述するSWIFT及びTICKLE時には両エンドキャップ間に特定の周波数を持つ電圧を印加する。
【0037】
ガス導入装置2にはガス噴射管5が備えられており、ガス噴射管5は、パルスバルブのようなオリフィスを用いた開閉弁あるいはキャピラリ管により形成されている。ガス噴射管5に導入された焼却炉等の排ガスGsはイオン化室1に導入される。ガス噴射管5の周囲にはヒータ6が設けられている。ヒータ6は前駆体がガス噴射管5の内壁に付着することを防止するための加熱装置である。
【0038】
イオン化室1は、前駆体にエネルギーを与えてイオン化するためのイオン化手段として真空紫外光ランプ3を備えている。真空紫外光ランプ3は、Ar、Kr、Xe等の希ガスや、H、O、Cl等をAr、Heに添加したガスの放電により真空紫外光Lを発生する。本実施の形態においては、121.6nmの波長を持つ、水素プラズマからのLyman α光を用いている。
【0039】
真空紫外光ランプ3は、放電するガスの種類を変えることで、発生する真空紫外光の光子エネルギー量を変えることができる。このため、前駆体のイオン化ポテンシャルに合わせて、これよりも大きく、且つ前駆体を解離させない程度の光子エネルギーを与えることができる。これによって、光子エネルギー量より高いイオン化ポテンシャルを持つ混在物質のイオン化を阻止すると共に、前駆体のフラグメント化を抑制することができる。
【0040】
また、イオン化手段は、真空紫外光ランプ3に代えて、レーザーあるいはその高調波を用いることもできる。この場合、波長可変レーザーを使用することにより、発生する光子エネルギー量を変化させることで、イオン化する物質を選別することができる。波長可変レーザーには、周知のものを用いることができる。なお、この発明には50nm以上200nm以下の波長をもつ真空紫外光が適用でき、より好ましくは100nm以上200nmであり、不要なフラグメント発生をより少なく抑える観点からは112nm以上138nmの範囲が望ましい。
【0041】
さらに、前駆体にエネルギーを与えてイオン化する手段としては、真空紫外光の波長を持つレーザー、エキシマランプを使用してもよい。また、例えばHeイオン等のイオンを粒子加速器で打ち出して、イオン化室1内の排ガスGs中に含まれる前駆体に衝突させてもよい。さらに、電子ビームをセクターで分離して10eV程度のエネルギーを持つものを取り出し、イオン化室1内の排ガス中に含まれる前駆体に衝突させてもよい。
【0042】
質量分析手段である飛行時間型の質量分析計4は、イオン化室1内でイオン化された排ガス中の前駆体のイオンについて、その質量を計測することで前駆体を特定する。イオン化された前駆体は、上記RFイオントラップ装置10の第二エンドキャップ13にパルス状の引出し電圧を印加することによって質量分析計4に導入され、質量分析計4内を飛行する。飛行したイオンはイオン検出器30によって検出され、ここで検出された信号はプリアンプ31によって増幅された後、データ処理装置32に取り込まれデータ処理される。なお、本実施の形態においては、イオン検出器にマイクロチャネルプレートが用いられており、イオンの検出感度を高めている。質量分析計4はその飛行時間を計測する。飛行時間と飛行物質の質量との間には高度の対応関係があるので、飛行時間から飛行物質の質量を検出し、この質量から物質を同定するのである。
【0043】
次に、図2を用いてこの化学物質の検出装置100を用いて排ガス中の検出対象であるダイオキシン類の前駆体を検出する手順について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る化学物質の検出方法を示すフローチャートである。この実施の形態においては、ダイオキシン類の前駆体としてTCBを使用している。なお、TCBには3種類の異性体が存在する。まず、イオン化室1に焼却炉の排ガスGsを導入する(ステップS101)。
【0044】
次に、真空紫外光ランプ3からイオン化室1内に導入された排ガスGsに対して真空紫外光Lを照射し、排ガスGsが真空紫外光Lから光子エネルギーを受け取ってイオン化される(ステップS102)。ここで、検査対象物質である前駆体のイオン化ポテンシャルは8.5〜10.0eVの範囲である。また、上述したように、本実施の形態で使用する真空紫外光は121.6nmの波長を持っており、その光子エネルギーは10.1eVである。このように、前駆体のイオン化ポテンシャルよりもやや大きい程度のエネルギーを与えるため、余分なエネルギーを前駆体に与えないで前駆体をイオン化できる。
【0045】
その結果、イオン化した前駆体である前駆体を効率よく計測できるようになった。これは、真空紫外光によるイオン化においてはフラグメントの発生が非常に少ないため、イオン化した前駆体のほとんどすべてを質量分析計4の計測対象とすることができるからである。特に、焼却炉からの排ガス中Gs中には極めて微量の前駆体しか存在しないため、この効果は大きい。また、真空紫外光によってイオン化すれば、トラップ11のトラップ効率低下を抑えることができる。
【0046】
ここで、フラグメント化したイオンが多い場合には、トラップ11内に閉じ込められているイオンによって生ずるイオンの作るポテンシャルがトラップのポテンシャルを打ち消すように作用する。しかし、この真空紫外光によるイオン化では、余分なフラグメントイオンの発生を極めて小さく抑えることができるので、RFイオントラップ装置10のトラップ効率低下を小さくすることができる。
【0047】
さらに、真空紫外光でイオン化すれば、次に説明するSWIFT電圧を低く抑えることができる。ここで、SWIFTは、不純物を除去するために特定の周波数を持つ電圧波形をトラップ11の第一エンドキャップ12と第二エンドキャップ13間に与えることによってイオンの軌道を変える操作をいう。なお、SWIFTの正式な名称はStored Waveform Inverse Fourier Transformであり、詳細は、文献”Development of a Capillary High−performance Liquid Chromatography Tandem Mass Spectrometry System Using SWIFT Technology in an Ion Trap/Reflectron Time−of−flight Mass Spectrometer” Rapid Communication in mass spectrometry, vol. 11 1739−1748(1997) を参照されたい。
【0048】
フラグメントの発生が多いイオン化方法においては、SWIFTの過程で除去しておくべき質量数に、前駆体である前駆体、あるいは他の物質を親分子とする大量のフラグメントが発生してしまう。これをSWIFTで除去するためには非常に大きな電圧を必要とするため、出力の大きなSWIFT電圧発生装置(任意波形発生器)が必要である。一方、SWIFT電圧を大きくすると、壊したい質量数以外の質量数を持つ分子も壊してしまうので、残したい前駆体も壊してしまう。その結果、質量分析においては分析精度の低下を招いてしまう。
【0049】
この発明に係るイオン化においてはフラグメントの発生が非常に少ないため、SWIFTの過程で除去すべきフラグメントも極めて少なくなる。その結果、SWIFT電圧を低く抑え、且つ残すべき前駆体も壊さないで済むので、上記問題点はほとんど回避できる。また、SWIFT後に残った親分子へ後述するTICKLEをかける場合やCOOLINGしたりする場合にも、フラグメントの多いイオン化方法では種々の親分子からフラグメントが発生してしまう。その結果、目的とする前駆体以外のフラグメントが不純物として含まれる結果、質量分析の精度低下を引き起こしていた。しかし、この発明に係るイオン化方法によれば、イオン化の際に発生するフラグメントが極めて少ないため、この問題点もほとんど回避できる。
【0050】
次にSWIFTについて説明する。これは、排ガス中に存在している前駆体以外の不要物質を除去するための操作である。このために、RFイオントラップ装置10の第一エンドキャップ12と第二エンドキャップ13との間に、任意波形発生装置20によって取り除きたい物質の軌道共鳴周波数に対応した広域帯の周波数で電圧を印加する。これによって、この発明に係る不純物除去手段を形成している。なお、この広域帯の周波数からは、前駆体の質量数の周波数に対応する軌道共鳴周波数は除かれている。これによって、取り除きたい物質は大きな振幅で振られることになり、RFイオントラップ装置10の壁に衝突して電荷を失ってイオンとしては存在しなくなる。前駆体はRFリング14に印加されるトラップ電圧によって、トラップ11内に閉じ込められたままである。このような操作をSWIFTといい、この操作によって前駆体以外の不純物を取り除くことができる(ステップS103)。
【0051】
次にTICKLEについて説明する。TICKLEはフラグメント化に必要なエネルギーを前駆体へ与えてフラグメントイオンを生成させて、前駆体と質量数が近似する不純物を分離する操作である。そして、親分子である前駆体から生成されたフラグメントの量を計測して、前駆体の濃度を求める。なお、TICKLEの詳細については、上記文献”Development of a Capillary High−performance Liquid Chromatography Tandem Mass Spectrometry System Using SWIFT Technology in an Ion Trap/Reflectron Time−of−flight Mass Spectrometer” を参照されたい。
【0052】
TICKLEは、上述したSWIFTとは異なり、親分子である前駆体の軌道共鳴周波数に対応する周波数で第一エンドキャップ12と第二エンドキャップ13との間に電圧を印加する。このときには、任意波形発生装置20によって前記エンドキャップ間に前記周波数の電圧を印加する。これによって、本発明に係るフラグメント化手段を構成する。そして、前駆体のイオンをトラップ11内に共存する他の物質と衝突させて、前駆体をフラグメント化する。これによってTICKLEによるフラグメント化が完了する(ステップS104)。この発明の実施の形態1における前駆体はTCBであるが、質量数M=180のTCBがフラグメント化されると、質量数M=74、M=109、M=145のフラグメントイオンが発生する。
【0053】
TICKLEによるフラグメント化が完了したら、RFリング14に対する電圧の印加を止めて、第二エンドキャップ13にパルス状の引出し電圧を印加することによって、前駆体のフラグメントイオンを質量分析計4側に引き出す(ステップS105)。このフラグメントイオンは質量分析計4内を飛行し、質量分析計4によってその飛行時間が計測される。上述した通り、飛行時間と飛行物質の質量との間には高度の対応関係があるので、飛行時間から飛行物質の質量を検出し、この質量から物質を同定できる。また、前駆体のフラグメントイオンを計数することによって、各フラグメントイオンの濃度を求めることもできる。なお、実施の形態1においては、質量数M=74、M=109、M=145のフラグメントイオンを検出する必要があるため、それぞれの質量数に対応する引出し電圧を第二エンドキャップ13に印加する。これによって、それぞれの質量数を持つフラグメントイオンの数を計数する。
【0054】
この実施の形態で使用する飛行時間型の質量分析計は、数10μ秒で一回の計測が完了するため、計測時間が非常に早く、応答性に優れるという利点がある。このため、特に、実際のプラントにおいてリアルタイムで燃焼条件を制御する際に好適である。なお、他の質量分析手段としては、電場型、RFコイル型等の質量分析手段も使用できる。特にRFコイル型はトラップ11の出口にイオン検出器を設けるだけでよいので、簡単な構造で質量分析器を構成できる。
【0055】
質量分析計4によって前駆体であるTCBのフラグメントイオンそれぞれのイオン数(濃度)を計数して、前駆体であるTCBのフラグメントパターンを得る(ステップS106)。そして、次に説明する手順によって、このフラグメントパターンから各異性体の濃度を求める(ステップS107)。
【0056】
まず、TCBの異性体である1,3,5−TCB、1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBの標準ガスを使用して、上記手順によってこれらのフラグメントパターンを得ておく。これは、上述したイオン化手段及びフラグメント化手段によってフラグメント化したイオンを質量分析することによって求めることができる。なお、フラグメント化においては、計測対象化学物質である質量数M=180のTCBをフラグメント化したものと同じフラグメント化手段を使用する。これは、使用するフラグメント化手段によって、得られるフラグメントパターンが異なるからである。この例においては、TICKLEによってフラグメント化する。
【0057】
図3は、TCBの異性体それぞれのフラグメントパターンを表す説明図である。ここで、縦軸は質量分析の際における信号強度Iであり、具体的にはフラグメントイオンの数である。したがって、この信号強度Iはフラグメントイオンの濃度と比例するので、フラグメントイオンの濃度指標となる。ここで、質量数M=74のフラグメントイオンの信号強度をI74、質量数M=109のフラグメントイオンの信号強度をI109、そして質量数M=145のフラグメントイオンの信号強度をI145とする。
【0058】
また、排ガスに含まれるダイオキシン類前駆体であるTCBの異性体である1,3,5−TCB、1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBの濃度をそれぞれC、C、及びCとする。そして、フラグメント化前におけるTCBの濃度をCとすると、C=C+C+Cとなる。すなわち、TCBの濃度Cは、TCBの各異性体の全濃度となる。
【0059】
TCBの異性体である1,3,5−TCBのフラグメントイオンの濃度を、質量数の小さいフラグメントイオンの順に、C74−1、C109−1、及びC145−1とする。ここで、添字の74は質量数M=74のフラグメントを、添字の109は質量数M=109のフラグメントを、添字の145は質量数M=145のフラグメントを表す。そして、C74−1/C=F11、C109−1/C=F21、C145−1/C=F31とする。ここで、F11+F21+F31=1となる。なお、Fはフラグメントの強度比であり、フラグメントイオンの濃度比指標である。
【0060】
同様に、1,2,4−TCBの強度比(濃度比指標)は、C74−2/C=F12、C109−2/C=F22、C145−2/C=F32となり、1,2,3−TCBの強度比(濃度比指標)は、C74−3/C=F13、C109−3/C=F23、C145−3/C=F33となる。なお、この強度比を縦軸に、フラグメントの質量数を横軸にとって表した分布が異性体のフラグメントパターンとなる。この強度比Fを整理すると、次のようになる。
1,3,5−TCBの強度比:F11、F21、F31
1,2,4−TCBの強度比:F12、F22、F32
1,2,3−TCBの強度比:F13、F23、F33
【0061】
図4は、排ガスGs中に含まれるTCBのフラグメントパターンを示す説明図である。この図に示すように、質量数M=74、M=109及びM=145の位置に高い強度比が現れるフラグメントパターンを得ることができる。なお、排ガスに含まれるTCBには上記各異性体が含まれており、質量分析計4ではこれらの異性体を分離して計測することはできない。そこで、各異性体の標準ガスから求めた強度比Fを利用して、排ガスGs中のTCBに含まれる各異性体の濃度を求める。この手順は次の通りである。
【0062】
排ガスGsのフラグメントパターンにおいて、質量数M=74のフラグメントイオンの濃度指標である信号強度Iは、I=C×F11+C×F12+C×F13で表すことができる。ここで、Cは1,3,5−TCBの濃度を、Cは1,2,4−TCBの濃度を、そしてCは1,2,3−TCBの濃度を表す。同様に、質量数M=109のフラグメントイオンの濃度指標である信号強度Iは、I=C×F21+C×F22+C×F23で表すことができる。また、質量数M=145のフラグメントイオンの濃度指標である信号強度Iは、I=C×F31+C×F32+C×F33で表すことができる。整理すると次のような連立方程式になる。
=C×F11+C×F12+C×F13・・・式(1)
=C×F21+C×F22+C×F23・・・式(2)
=C×F31+C×F32+C×F33・・・式(3)
【0063】
このように表すことができるのは、次の理由による。すなわち、TCBの各異性体をフラグメント化した際に得られるフラグメントパターンは各異性体によって異なる。そして、実際の排ガスGsに含まれるTCBのフラグメントパターンは、TCBの各異性体のフラグメントパターンを単純に重ね合わせることによって得られるものだからである。なお、各異性体が干渉して実際の排ガスGsに含まれるTCBのフラグメントパターンが変化することはないことが、本発明者らの研究により確認されている。したがって、求めたい各異性体の濃度C、C及びCは、式(1)〜(3)で表した連立方程式を解くことにより求めることができる。
【0064】
なお、TCBの各異性体をフラグメント化した際に得られるフラグメントパターンが各異性体によって異なるのは、隣接した官能基の影響、すなわちオルト効果によるものと考えられる。図5は、TCBの各異性体を示す説明図である。この図から分かるように、ダイオキシン類と相関が低い1,3,5−TCBの官能基であるClは、すべてメタ位の関係であり、オルト位の関係はない(同図(a))。ところが、ダイオキシン類と相関の高い1,2,4−TCBと1,2,3−TCBとは、官能基であるClがオルト位の関係を持つ(同図(b)及び(c))。これによって、フラグメント化の際に与えられるエネルギーによる励起のされ方が異なるので、各異性体によってフラグメントパターンが異なるものと考えられる。
【0065】
ここで、排ガスGsのTCBをフラグメント化して得られる各フラグメントイオンの信号強度I〜Iを3×1の行列Iで表し、求める各異性体の濃度C〜Cを1×3の行列Cで表し、各異性体の標準ガスから求めた強度比F11〜F33を3×3の行列Fで表す。すると、上記連立方程式は、I=FCで表すことができる。したがって、IにFの逆行列F−1を乗じた行列であるC=F−1Iを求めることによって、各異性体の濃度C〜Cを求めることができる。
【0066】
このようにして求めたC、C及びCが、排ガスGsに含まれるTCB中におけるそれぞれの異性体の濃度となる。このようにして各異性体の濃度を求め、計測が終了する(ステップS108)。そして、この計測結果から、ダイオキシン類と相関の高い1,2,4−TCBの濃度Cと1,2,3−TCBの濃度Cとを用いて排ガスGs中のダイオキシン類の発生量を推定できるので、従来よりも高い精度でダイオキシン類の発生量を推定できる。
【0067】
なお、上記説明においては、TCBのフラグメントイオンが3個発生した場合について説明したが、フラグメント化の方法によってはさらに多くのフラグメントイオンが発生する場合がある。このような場合でも上記検出方法は適用できる。例えば、フラグメントイオンが4個発生する場合には、
=C×F11+C×F12+C×F13・・・式(1)
=C×F21+C×F22+C×F23・・・式(2)
=C×F31+C×F32+C×F33・・・式(3)
=C×F41+C×F42+C×F43・・・式(4)
という連立方程式を解けばよい。
【0068】
また、図1に示す演算手段である演算装置33によって上記計算をさせてもよい。例えば、演算装置33内の記憶部34に、TCB各異性体の標準ガスから求めた強度比F11〜F33を予め記憶させておく。そして、処理部35に、データ処理装置32(図1参照)から送られる排ガスGsに含まれているTCBのフラグメントイオンの計測結果を取り込ませる。次に、処理部35は記憶部34から強度比F11〜F33を3×3の行列の形で読み込んで、この逆行列F−1を計算する。そして、この逆行列とフラグメントイオンの計測結果から求めた行列Iとの積から、各異性体の濃度C〜Cを求める。また、記憶部34には、予め逆行列F−1を記憶させておいてもよい。このようにすると、処理部35で逆行列F−1を演算しなくともよいので、その分処理速度を向上させることができる。
【0069】
なお、記憶部34は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。また、この処理部35は専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、また、この処理部35はメモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、処理部35の機能を実現するためのプログラム(図示省略)をメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。また、この演算装置33には、周辺機器として入力装置、表示装置など(いずれも図示省略)をメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、排ガスに含まれるTCBの異性体のうち、1,3,5−TCBと、1,2,4−TCBと、1,2,3−TCBとの濃度をそれぞれ求め、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を用いてダイオキシン類の発生量を推定した。しかし、実際の計測においては、ダイオキシン類と相関の高い1,2,4−TCBと1,2,3−TCBとのフラグメントパターンに明確な違いが生じない場合がある。このような場合には、1,2,4−TCBの濃度Cと1,2,3−TCBの濃度Cとの和までしか求めることができない。しかし、ダイオキシン類との相関が高い異性体は1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBであるので、これらの和まで分かればダイオキシン類の発生量を推定することができる。実施の形態2においては、1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBの濃度からダイオキシン類の発生量を推定する方法について説明する。
【0071】
具体的には、I=C×F11+C×F12+C×F13、I=C×F21+C×F22+C×F23、及びI=C×F31+C×F32+C×F33の連立方程式を解くが、F12=F13、F22=F23、F32=F33である。なお、添字や文字の意味は上述したものと同じである。この連立方程式を解くと、C及びC+C=Aという解を得ることができる。このように、ダイオキシン類との相関が高い異性体である1,2,4−TCBと1,2,3−TCBとの濃度であるCとCとの和を得ることができる。
【0072】
1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBはダイオキシン類の発生量と高い相関がある。図6は、1,2,4−TCBの発生量とダイオキシン類の発生量との関係を示した説明図である。また、図7は、1,2,3−TCBの発生量とダイオキシン類の発生量との関係を示した説明図である。1,2,4−TCBの濃度C及び1,2,3−TCBの濃度Cそれぞれの値を別個に求めることはできない。しかし、図6及び7に示すように、1,2,4−TCBの濃度Cとダイオキシン類の発生量との関係、及び1,2,3−TCBの濃度Cとダイオキシン類の発生量との関係は近似している。
【0073】
このため、いずれかの関係を用いて1,2,4−TCBの濃度Cと1,2,3−TCBの濃度Cとの和A=C+Cからダイオキシン類の発生量を推定することができる。例えば、1,2,4−TCBの濃度Cとダイオキシン類の発生量Dとの関係がD=a×C+bで表されるとき、この関係式のCにA=C+Cを代入して求めたD=a×A+bをダイオキシン類の発生量と推定する(a、bは任意の定数)。このようにして推定したダイオキシンの発生量は、ダイオキシン類の発生量と相関の低い1,3,5−TCBを除いて推定しているので、従来よりも高い精度を得ることができる。
【0074】
また、実験等によって、ダイオキシン類の濃度と、1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBの濃度との関係を求め、ここからダイオキシン類の発生量を推定してもよい。また、TCBの異性体は、塩素とベンゼン環の反応温度によって発生割合が変化するので、焼却炉等内における燃焼温度が分かれば、1,2,4−TCBと1,2,3−TCBとの発生割合を推定することができる。これによって、1,2,4−TCBの濃度Cと1,2,3−TCBの濃度Cとの和から個々の濃度を推定することができる。このようにして推定した1,2,4−TCBの濃度C及び1,2,3−TCBの濃度Cからそれぞれダイオキシン類の発生量を推定して両者を加算すれば、排ガス中におけるダイオキシン類の発生量を推定できる。
【0075】
また、1,2,4−TCB及び1,2,3−TCBの濃度C及びCの和の変化を監視すれば、ダイオキシン類の発生量がどのように変化しているかを知ることができる。これによって、焼却炉等の燃焼状態を簡易的にモニターすることができる。そして、ダイオキシン類の発生量を時間の推移とともに知ることができれば、焼却炉等の燃焼状態を制御することができる。
【0076】
(実施の形態3)
ダイオキシン類の前駆体には同位体を持つものがあり、同じ前駆体であっても異なる質量数を持つ。実施の形態1及び2で説明したTCBは、質量数Mが180と182と184との同位体を持っている。これは、ベンゼン環に結合している塩素の質量数に35と37との二種類があるためである。このような同位体を持つ前駆体においては、一種類の質量数に係る前駆体の密度は、当該前駆体全体の密度よりも低いため、一種類の質量数のみを質量分析計4における計測対象物質とすると、計測感度の低下を招いてしまう。
【0077】
上記TCBを例にとれば、質量数M=180のTCBのみを計測対象とした場合には質量数M=182及び質量数M=184のTCBは計測されない。その結果、TCB全体としては計測されなかった質量数M=182及び質量数M=184のTCBの分だけ、濃度が低く検出されることになる。特に、焼却炉の排ガスに存在するダイオキシン類の前駆体であるTCBはその濃度が極めて低いため、少しでも検出感度を高くする必要がある。
【0078】
そこで、ダイオキシン類前駆体の同位体のうち少なくとも2個の同位体すべてまでをフラグメント化して、TCBの持つ3個の異性体を計測すれば、上記計測感度の低下という問題は回避できる。ここでは、TCBの同位体を例にとって説明するが、この発明の適用対象はTCBに限られるものではなく、同位体を持つ前駆体であればすべて適用できる。図8は、この発明の実施の形態3に係るTICKLE波形の周波数スペクトルを、質量数を横軸として変換した説明図である。なお、同図(a)は、TCBイオンにおける同位体の分布を示している。
【0079】
この発明においては、例えば、前駆体のすべての同位体をフラグメント化したり、すべての同位体から理論的に濃度の低い同位体を除いたり、あるいは不純物の混入割合の多い質量数を除いた前駆体の同位体をフラグメント化したりすることができる。このときのTICKLE波形は、少なくとも2個の前駆体のうちすべてまでの同位体に対する質量数を含むようにした、広い共鳴周波数帯の範囲で大きな振幅を与える周波数スペクトルを逆フーリエ変換したものが使用できる(図8(b))。
【0080】
また、共鳴周波数がイオンに影響を与える質量数にはある幅があるため、振幅が一定の周波数スペクトルを使用した場合、質量数が最大と最小の同位体にはTICKLEがかかりにくく、中間の同位体は相対的にTICKLEがかかりやすいという現象がある。このため、前駆体同位体の質量数が最大の部分と最小の部分とにおける電圧振幅を大きくとった周波数スペクトルとすると、TICKLEの対象としている複数の同位体すべてに略一定のTICKLEをかけることができる。これによって、略均一にフラグメント化させることができる。また、フラグメント化の対象である同位体のうち質量数が最大の部分と最小の部分とにおいて電圧振幅を大きくとり、質量数が中程度の部分における電圧振幅を相対的に小さくとった周波数スペクトルとしてもよい(図8(c)の実線)。さらに、イオンの信号強度が相対的に低い同位体においては、電圧振幅をイオンの信号強度が相対的に高い同位体における電圧振幅よりも小さくした周波数スペクトルを使用してもよい(図8(c)の破線)。
【0081】
一方、ある一つの同位体と略同一の質量数をもつ不純物が大量に存在する場合がある。例えば、図8(d)において質量数180のTCB同位体と同じ質量数を持つ不純物が大量に存在していたとする。このような場合には、その同位体を除いた複数の同位体をフラグメント化し、大量の不純物をフラグメント化させないことで、精度の高い計測を行うようにしてもよい。この場合には、その同位体(ここではTCBの同位体)の中から同じ質量数に不純物があまり含まれていない複数の同位体を選び、その質量数に対応する複数の共鳴周波数からなる周波数スペクトルを逆フーリエ変換したTICKLE波形を使用することができる(図8(d))。
【0082】
実施の形態3に係る化学物質の検出方法によれば、前駆体に複数存在する同位体のうち、少なくとも2個の同位体すべてまでをフラグメント化してTCBのフラグメントパターンを求めるので、TCB濃度の計測精度をより向上させることができる。これによって、より高い精度で各異性体の濃度を求めることができるので、ダイオキシン類の推定精度もより向上する。これによって、焼却炉等の内部における燃焼状態もより精密に制御できる。
【0083】
(実施の形態4)
前駆体にも同位体は存在するが、前駆体のフラグメントにも同様に同位体が存在する。したがって、フラグメントの計測についても実施の形態3で述べたことと同様な問題が存在する。従来は、一つのフラグメントのみで前駆体の濃度を計測するか、フラグメントの出現パターン、すなわち、どの質量数のフラグメントが表れるかを調べることによって、前駆体の濃度を見積もっていた。
【0084】
しかし、焼却炉の排ガス中に含まれるダイオキシン類の前駆体のように、極めて低い濃度でしか存在しない物質において、フラグメントの一つの同位体のみを計測したのでは、十分な感度の計測はできない。また、複数のフラグメントによるパターンマッチングであっても、一つの同位体のみでは絶対的なフラグメントの量が少なく、統計的に濃度を見積もるためには不十分である。
【0085】
そこで、前駆体から生成されるフラグメントの同位体のうち少なくとも2種類を計測対象とする。具体的には、あるフラグメントのスペクトル(信号電圧)のうち、複数現れる同位体のスペクトルの最大値をそれぞれ加算した値、又は、複数現れる同位体のスペクトルの面積をそれぞれ加算した値を質量分析計4の計測値として使用する。
【0086】
このようにすると、あるフラグメントの同位体をすべて使用できるので、計測対象物質の濃度が極めて低い場合であっても、質量分析計4における計測では計測感度を高くできる。これによって、計測感度を高くして前駆体のフラグメントパターンを求めることができるので、より高い精度で各異性体の濃度を求め、ダイオキシン類の濃度を見積もることができる。
【0087】
また、ある同位体の質量数に不純物のフラグメントが表れている場合等のように、ノイズ成分の大きなスペクトルが存在する場合には、その同位体のスペクトルを除いた同位体の質量数を選択して、計測対象物の濃度を求めればよい。このようにすると、不純物等のノイズを排除できるので、より精度の高い計測ができる。これによって、より高い精度でダイオキシン類の濃度を見積もることができる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る化学物質の検出方法(請求項1)では、複数の異性体の混合物からなるダイオキシン類の前駆体の異性体濃度を、当該前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、この前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから求めるようにした。このため、ダイオキシン類と相関の低い異性体とダイオキシン類と相関の高い異性体との濃度を知ることができる。その結果、ダイオキシン類の発生量を従来よりも高い精度で推定することができるので、焼却炉等の燃焼状態を従来よりも高い精度で制御できる。これにより、ダイオキシン類の発生量を従来よりも低くできる。
【0089】
また、質量分析装置等を用いた質量分析工程によって、ダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンを求めるようにしたので、短時間でフラグメントパターンを求めることができる。さらに、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度は、数学的計算によって求めることができるので、電子計算機等の計算手段によれば極めて短時間で計算結果を得ることができる。その結果、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を短時間で求めることができる。
【0090】
また、この発明に係る化学物質の検出方法(請求項2)では、前駆体のイオン化ポテンシャルよりも大きく、当該イオン化ポテンシャルと上記前駆体のイオンの解離エネルギーとの和よりも小さいエネルギーを与えて、ダイオキシン類の前駆体をイオン化するようにした。
【0091】
このため、この化学物質の検出方法においては前駆体を壊さずにイオン化できるので、上記化学物質の検出方法の奏する効果の他に、イオン化効率を高くして質量分析工程における検出感度を高くできるという効果も奏する。また、このイオン化においては、夾雑物の発生を少なく抑えることができるので、除去すべき夾雑物も極めて少なくできる。その結果、夾雑物除去に要するエネルギーを低く抑えることができるので、残すべき前駆体であるダイオキシン類前駆体を壊さないで済み、質量分析工程における検出感度を高くできる。
【0092】
た、この発明に係る化学物質の検出方法(請求項3)では、イオン化工程において、波長が50nm以上200nm以下の光によってダイオキシン類の前駆体をイオン化するようにした。このため、余計なフラグメントを発生させずに不純物を除去できる。また、この発明に係る化学物質の検出方法(請求項4)では、イオン化工程において、真空紫外光をダイオキシン類の前駆体に照射するようにしたので、取り扱いが容易となる。
【0093】
また、この発明に係る化学物質の検出方法(請求項5)では、フラグメント化工程においてTICKLE波形をダイオキシン類の前駆体のイオンに与えることによってこれをフラグメント化するようにした。このため、ほとんどすべてのダイオキシン前駆体のフラグメントを質量分析手段の計測対象とすることができるので、質量分析工程における検出感度を高くできる。そして、ダイオキシン類と相関の高い異性体を選択的に検出できる作用と相まって、より緻密に焼却炉等の燃焼状態を制御できる。
【0094】
また、この発明に係る化学物質の検出装置(請求項6)では、イオン化手段と、フラグメント化手段と、質量分析手段と、演算手段とを備えた。そして、複数存在するダイオキシン類の前駆体の異性体濃度を、前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、この前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから求めるようにした。このため、すべての前駆体からダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を選択的に計測することができるので、ダイオキシン類の発生量を従来よりも高い精度で推定できる、その結果、焼却炉等の燃焼状態を従来よりも高い精度で制御でき、ダイオキシン類の発生量を従来よりも低くできる。
【0095】
また、この化学物質の検出装置は、質量分析手段によってダイオキシン類前駆体のフラグメントパターンを求めるので、短時間でフラグメントパターンを求めることができる。そして、ダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度は、数学的計算によって求めることができるので、短時間で計算結果を得ることができる。その結果、この化学物質の検出方法においては、短い時間でダイオキシン類と相関の高い異性体の濃度を求めることができ、ダイオキシン類をリアルタイムで測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る化学物質の検出装置を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る化学物質の検出方法を示すフローチャートである。
【図3】TCBの異性体それぞれのフラグメントパターンを表す説明図である。
【図4】排ガスGs中に含まれるTCBのフラグメントパターンを示す説明図である。
【図5】TCBの各異性体を示す説明図である。
【図6】1,2,4−TCBの発生量とダイオキシン類の発生量との関係を示した説明図である。
【図7】1,2,3−TCBの発生量とダイオキシン類の発生量との関係を示した説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るTICKLE波形の周波数スペクトルを、質量数を横軸として変換した説明図である。
【符号の説明】
1 イオン化室
2 ガス導入装置
3 真空紫外光ランプ
4 質量分析計
5 ガス噴射管
6 ヒータ
10 RFイオントラップ装置
11 トラップ
12 第一エンドキャップ
13 第二エンドキャップ
14 RFリング
20 任意波形発生装置
21 高周波電源装置
30 イオン検出器
31 プリアンプ
32 データ処理装置
33 演算装置
34 記憶部
35 処理部
100 化学物質の検出装置
Gs 排ガス
L 真空紫外光

Claims (6)

  1. 複数の異性体の混合物からなるダイオキシン類の前駆体をイオン化するイオン化工程と、
    このイオン化工程によってイオン化された前記前駆体のイオンにエネルギーを与えてフラグメントイオン化するフラグメント化工程と、
    前記前駆体のフラグメントイオンの質量から当該フラグメントイオンのフラグメントパターンを求める質量分析工程と、
    当該質量分析工程で求めた前記前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、前記前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから、前記前駆体中における異性体の濃度を求める演算工程と、
    を有することを特徴とする化学物質の検出方法。
  2. 上記イオン化工程においては、上記前駆体のイオン化ポテンシャルよりも大きく、当該イオン化ポテンシャルと上記前駆体のイオンの解離エネルギーとの和よりも小さいエネルギーを上記前駆体に与えることを特徴とする請求項1に記載の化学物質の検出方法。
  3. 上記イオン化工程においては、波長が50nm以上200nm以下の光によって上記前駆体をイオン化することを特徴とする請求項1に記載の化学物質の検出方法。
  4. 上記イオン化工程においては、真空紫外光を上記前駆体に照射することを特徴とする請求項1に記載の化学物質の検出方法。
  5. 上記フラグメント化工程においては、上記前駆体のイオンの軌道共鳴周波数に対応する周波数成分を持つTICKLE波形で上記前駆体のイオンにエネルギーを与えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学物質の検出方法。
  6. ダイオキシン類の前駆体をイオン化するイオン化手段と、
    このイオン化手段によってイオン化された前記前駆体のイオンにエネルギーを与えてフラグメントイオン化するフラグメント化手段と、
    前記前駆体のフラグメントイオンの質量から当該フラグメントイオンのフラグメントパターンを求める質量分析手段と、
    当該質量分析手段で求めた前記前駆体のフラグメントイオンの濃度指標と、前記前駆体の異性体の標準気体から求めた当該異性体のフラグメントの濃度比指標とから、前記前駆体中における異性体の濃度を求める演算手段と、
    を有することを特徴とする化学物質の検出装置。
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