JP3606102B2 - 熱延鋼板、溶融めっき熱延鋼板およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用部材等に用いられる熱延鋼板や溶融めっき熱延鋼板およびそれらの製造方法に関し、特にその化成処理性や溶融めっき性の有利な向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、自動車用部材については、車体重量の軽減および信頼性・安全性の向上の観点から、その高強度化が指向されている。
この傾向は、自動車用鋼板として多用される溶融亜鉛めっき鋼板等の溶融めっき鋼板についても例外ではなく、高強度化のために種々の改善策が提案されている。
【0003】
例えば、特開昭59−193221号公報には、SiやMn等の固溶強化元素を比較的多量に含有させることによって鋼板の高強度化を図る方法が提案されている。
しかしながら、この方法では、SiやMnを多量に含有することに由来する別の問題、すなわちSiやMnの表面濃化に起因した溶融めっき性の劣化(めっきされない部分の発生すなわち不めっきの発生)や化成処理性の劣化(冷延鋼板に塗装下地処理として施されるりん酸亜鉛などの化成皮膜が形成されない)という問題が生じるため、自動車用鋼板としては実使用に耐え得なかった。
【0004】
上記の問題の解決策として、高酸素分圧下で鋼板を強制的に酸化したのち、還元し、溶融めっきする方法(特開昭55−122865号公報)や、溶融めっきを施す前にプレめっきを行う方法(特開昭58−104163号公報)等が提案されたが、これらの方法では、熱処理時の表面酸化物の制御が十分でないため、鋼成分およびめっき条件によっては必ずしも安定した溶融めっき性や化成処理性が得られず、また余分なプロセスが付加されるために製造コストが上昇するという問題もあった。
【0005】
また、特開平9−310163号公報には、上記した溶融めっき性の劣化を改善するものとして、熱間圧延後、高温巻取りを行うことによって、鋼板の地鉄表層の結晶粒界や結晶粒内に酸化物を形成する、すなわち内部酸化層を形成させる方法が提案されている。
しかしながら、上記の方法では、鋼種や製造履歴によっては、十分な内部酸化層を確保できないため、必ずしも満足いくほど優れた溶融めっき性および化成処理性が得られるとは限らないところに問題を残していた。
【0006】
特に、溶融めっき処理前の再結晶焼鈍を、ラジアントチューブ等の輻射式加熱方式で行った場合は、この傾向が大きかった。
なお、加熱方式が直火式の場合には、この焼鈍中に幾分かは酸化層が形成されるので、輻射式加熱の場合よりはましであったが、それでも安定して所望の内部酸化層を形成することは困難であった。
【0007】
ところで、最近では、自動車用部材の一部については、従来の冷延鋼板に替えて熱延鋼板が使用されるようになってきた。
この熱延鋼板では、冷延鋼板のように再結晶焼鈍は必要ないので、かような再結晶焼鈍時に主に生じるSiやMnの表面濃化、ひいてはかような表面濃化に起因した弊害の発生は少ないと考えられる。
しかしながら、実際に熱延鋼板について、溶融めっき性や化成処理性について調査したところ、十分に満足いくほどの結果は得られなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、熱延鋼板として使用する場合に、優れた溶融めっき性や化成処理性を安定して発揮できる熱延鋼板や溶融めっき熱延鋼板を、それらの有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
なお、本発明における化成処理性とは、熱延鋼板をそのまま自動車用部材として使用する場合における、りん酸亜鉛などの化成皮膜の形成能を意味する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、熱延鋼板の化成処理性や溶融めっき性、さらには溶融亜鉛めっき鋼板の合金化挙動を劣化させる原因としては、従来言われている溶融めっき前の加熱中でのSiやMnの表面濃化もさることながら、酸洗後の熱延鋼板の表面にSiやMn,P等の酸化物が残存することが本質的な原因であることが究明された。
この原因は、SiやP等の酸化物および鉄との複合酸化物などは、酸洗時に溶解しにくいためと考えられる。
【0010】
従って、上記の問題を解決するためには、酸洗後の熱延鋼板表面を純鉄化することが有効と考えられる。
しかしながら、地鉄表層を純鉄化することは必ずしも容易ではない。
【0011】
そこで、発明者らは、この点について鋭意研究を進めた結果、地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させ、この内部酸化層形成元素として地鉄表面のSiやMn,P等をその内部に閉じこめることによって、熱延鋼板の表面を容易に純鉄化できることの知見を得た。
また、かような内部酸化層を安定して形成するためには、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元を起こさない雰囲気中で熱処理を施すことが極めて有効であることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施し、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層およびその上の地鉄最表層に純鉄化層を形成させたのち、常法に従う酸洗を施して得たことを特徴とする熱延鋼板。
【0013】
2.素材鋼片を、熱間圧延し、ついで酸洗を施して熱延鋼板を製造するに当たり、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させると共に、この内部酸化層の上の地鉄最表層には純鉄化層を形成させることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
【0014】
3.溶融めっき熱延鋼板であって、素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施し、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層およびその上の地鉄最表層に純鉄化層を形成させたのち、常法に従う酸洗、加熱および溶融めっき処理を施して得たことを特徴とする溶融めっき熱延鋼板。
【0015】
4.素材鋼片を、熱間圧延し、ついで酸洗後、加熱処理および溶融めっき処理を施して溶融めっき熱延鋼板を製造するに当たり、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させると共に、この内部酸化層の上の地鉄最表層には純鉄化層を形成させることを特徴とする溶融めっき熱延鋼板の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
図1に、黒皮スケールを予め酸洗により除去した熱延鋼板いわゆる白皮熱延板(同図(a) )と黒皮スケールが付着したままの熱延鋼板いわゆる黒皮熱延板(同図(b), (c))について、熱延板の熱処理後の断面を光学顕微鏡で観察した結果を比較して示す。
なお、素材としては、Si:0.5 mass%、Mn:1.5 mass%を含有するSi−Mn鋼を用い、また熱延板の熱処理条件は 750℃, 5hとした。
【0017】
同図に示したとおり、黒皮スケールがついたまま熱延板熱処理を行った場合 (同図(b), (c))にはいずれも、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層の形成が認められた。
なお、熱処理雰囲気が、100vol%N2の場合(実質的に還元を起こさない雰囲気:同図(b) )には、黒皮スケール表面および地鉄との界面に還元鉄の形成はほとんど認められなかったのに対し、5vol%H2−N2の場合(若干還元を起こす雰囲気:同図(c) )の場合には、黒皮スケールの一部表面と地鉄との界面に還元鉄の形成が観察された。
一方、白皮熱延板の場合には、内部酸化層の形成は全く観察されなかった。
なお、黒皮熱延板を100vol%H2雰囲気(強い還元性雰囲気)で熱処理した場合についても調査したが、この場合には黒皮スケール自体の還元が進むだけで、内部酸化層の形成はほとんど生じなかった。そして、還元鉄中にはSiやMn,P等の酸化物が残存することになる。
【0018】
このように、熱延板における内部酸化層の形成には、熱延板の熱処理時における雰囲気の影響が大きいことが明らかとなった。
図2に、内部酸化層の形成に及ぼす黒皮熱延板の熱処理雰囲気の影響を模式的に示す。
図2(a) に示すように、非還元性(実質的に還元を起こさない)雰囲気(例えば100vol%N2雰囲気)で熱処理を行った場合には、黒皮スケール中の酸素が主に結晶粒界に沿って浸透し、 FeSiO3やMnx Fey Oz が形成される。すなわち、スケール中の酸素は、内部酸化層の形成のみに使用されると考えられる。
【0019】
これに対し、図2(b) に示すように、還元性(実質的に還元を起こす) 雰囲気(例えば100vol%H2や5vol%H2−N2雰囲気)の場合には、黒皮スケール中の酸素は、内部酸化層の形成だけでなく、黒皮スケールの還元( FeO+H2→Fe+H2O )にも使用されるので、内部酸化層の形成が不十分となり、また黒皮スケール層が還元されてSiやMn等の酸化物が混ざった還元鉄が形成される不利も生じる。
【0020】
次に、図3(a), (b)にそれぞれ、0.08mass%C−1.0 mass%Si−1.5 mass%Mn−0.07mass%Pの組成になる黒皮熱延板につき、窒素中で熱処理したものとかような熱処理を施さない比較材について、酸洗後のGDS(グリムグロー発光分光分析)による深さ方向の元素分布について調べた結果を比較して示す。
比較材のSi、Mn等は、内部では金属状態で、かつ均質であるが、表層では酸化物の残存物であるSi濃度が増大している。
【0021】
これに対し、黒皮熱延板の窒素中熱処理材では、地鉄表層の内部にSi、Mn等の酸化物によるピークが認められ、金属元素が酸化物として内部に閉じこめられていることが分かる。内部酸化層中のこれらは酸化物であり、金属元素としてのこれらの元素は格段に低減している。そして、最表層のSi、Mn等の金属元素は、地鉄内部や比較材よりも著しく減少しており、最表層ではほぼ純鉄化していることが分かる。
【0022】
なお、酸化挙動としては、内部酸化と表層酸化の両方が起こり得るのであり、Si、Mn等が最表層側で内部よりも減少するメカニズムは明確に解明されたわけではないが、表層側の酸化物が内部酸化によって内側に移動すること、スケール中に移動すること、酸洗時にスケールと共に除去され易くなったこと、等が考えられる。
そして、かかるメカニズムによって、最表層は純鉄化するものと考えられる。
【0023】
次に、上記のようにして得た熱延板を、酸洗後、レスカ製縦型溶融めっきシュミレーション装置を用いて、加熱→溶融亜鉛めっき→ソルトバスによる加熱合金化処理を行って、合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板を製造した。
図4に、溶融めっき時における不めっきの発生状況について調べて結果を示す。なお、不めっきの評価は、画像処理により不めっき部の面積を求めることにより行った。
同図から明らかなように、黒皮スケールが付いたままで、かつ熱延板の熱処理雰囲気が実質的に非還元性である場合(A)には、不めっきの発生が全くないことが確認された。
【0024】
そこで、本発明では、最表層に純鉄化層を安定して形成するために、熱延板の熱処理を、黒皮スケールがついたまま、実質的な非還元性雰囲気中で行うことにしたのである。
【0025】
【作用】
本発明の素材鋼片としては、成分組成が特に限定されることはなく、いわゆる低炭素鋼板、極低炭素鋼板、Mn添加高張力鋼板およびSi−Mn添加高張力鋼板など従来公知のものいずれもが適合する。
特に、強度向上のために比較的多量にMnを添加したMn系高張力鋼板およびSiやMnを添加した高Si−Mn系高張力鋼板に好適である。
なお、必要に応じて、さらにTi, Nb, B, Mo, Sb, P, S, C, N, Cu, Ni, Cr, VおよびZr等を含有させることもできる。
【0026】
次に、本発明の製造工程について説明する。
まず、鋼片の製造方法としては、連続鋳造法が有利に適合するが、造塊−分塊法であってもかまわないのは言うまでもない。
熱間圧延についても、特に限定されることはなく、従来から公知の方法に従って処理すれば良い。
代表的な熱延条件は、圧下率:80〜99%、熱延終了温度:600 〜950 ℃、巻取り温度:300 〜750 ℃である。
板厚については、熱延鋼板の場合、通常は 1.6〜6.0 mm程度であるが、最近の熱間圧延における強圧化技術の進歩により得られる 0.8mm程度の薄物に対しても適用可能である。
【0027】
さて、上記のようにして得た熱延鋼板は、通常、そのまま酸洗で黒皮スケールを除去したのち、製品に供したり、溶融めっきを施して溶融めっき熱延鋼板とするわけであるが、本発明では、上記の熱間圧延後、黒皮スケールが付着したままの熱延鋼板を、実質的に還元が起きない雰囲気中で熱処理して、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成すると共に、その上の地鉄最表層を純鉄化層とすることにより、安定した溶融めっき性および化成処理性の向上を図るのである。
【0028】
本発明において、純鉄化層とは、 100%鉄で他の元素を全く含まないという意味ではなく、地鉄内部よりもSiやMn等の易酸化性金属元素が著しく減少して純鉄化されていることを意味する。
なお、元素分析では、金属状態と酸化物状態とを区別することができないが、典型的な場合には、図3に示したようにGDSによって内部酸化物より表層側に純鉄化層が存在していることが確認できる。直接的に純鉄化層を確認することは難しい場合があるので、簡易的には光学顕微鏡観察により内部酸化層を確認することにより、その表層に純鉄化層が存在していることを確認することができる。というのは、内部酸化層の形成により最表層が純鉄化されるからである。
【0029】
ここに、優れた溶融めっき性を安定して得るためには、内部酸化層の厚みを5〜40μm 程度にすると共に、表層における内部酸化層の面積率を1〜20%程度とすることが望ましい。
なお、この値は、ノーエッチングの断面観察(1000倍)時に黒く見える部分の面積率として容易に判断することができる。
【0030】
上記した熱延鋼板の熱処理工程において、処理温度は 650〜950 ℃とする必要がある。というのは、熱処理温度が 950℃を超えると、結晶粒径が粗大化して肌荒れが生じるからであり、また熱処理温度が 650℃未満では、十分な純鉄化層を形成させることができないからである。
なお、熱処理時間については特に限定されることはないが、4〜40時間程度とするのが好ましい。
【0031】
また、この発明において、実質的に還元を起こさない雰囲気としては、100vol%N2雰囲気が最も良く、ついでH2含有量が5vol%未満のH2−N2混合雰囲気が有利に適合する。
この点、H2含有量が5vol%以上になると、内部酸化層の形成が著しく少なくなり、表層の純鉄化層が形成されにくくなるだけでなく、黒皮スケール表面にも金属酸化物を含有した還元鉄が生成し、酸洗工程での残存スケールの除去が阻害されるので好ましくない。
また、大気中など、酸素を大量に含む酸化性雰囲気では、鋼中の易酸化性金属元素や鉄そのものの酸化が地鉄表面で進行するだけであり、内部酸化層の形成が著しく少なく、表層に純鉄化層が形成されないために不適である。しかしながら、100vol%N2雰囲気またはH2量が5vol%未満のH2−N2混合雰囲気におけるO2量が1 vol%以下であれば、鉄の酸化は問題とならない程度の少量であり、内部酸化層が生成されて表層の純鉄化が進むので、この程度であれば含有していても良い。O2を完全に排除することはむしろ経済的な不利が大きい。
【0032】
ついで、酸洗を施す。
この酸洗条件についても、特に限定されることはなく、常法に従って塩酸または硫酸にて、必要に応じて酸洗促進剤、酸洗抑制剤を添加して行えば良いが、地鉄を数μm 以上除去してしまうほどの極端に過度の酸洗は行わない方がよい。
【0033】
その後、溶融めっきの場合には、加熱を施して表面を覆っている酸化物(不可視酸化物)を還元したり、表面の活性化を促すが、この加熱条件についても、特に限定されることはなく、常法に従い、例えば、H2:2〜20 vol%、残部:N2の雰囲気中にて、露点:−50〜+10℃、温度:500 〜950 ℃、時間:10秒〜10 min程度の条件で行えば良い。
このような加熱を施すことにより、地鉄表面のSi、Mn、P等の酸化物、鉄との複合酸化物などが表面から払拭されるので、優れた溶融めっき性や合金化特性が得られるのである。
【0034】
また、本発明では、溶融めっき処理前の加熱にラジアントチューブ等の輻射式加熱を用いた場合であっても、表層が純鉄に近いので優れた溶融めっき性および合金化特性を確保できる利点がある。
さらに、本発明では、後述する溶融めっき処理後の鋼帯に対し、形状矯正、表面粗度等の調整のために、10%以下の調質圧延を加えることもできる。
【0035】
上記のようにして得た熱延鋼板に溶融めっきを施すめっき条件としては、従来から公知の方法に従って実施すれば良い。
例えば、溶融亜鉛めっき処理の場合には、加熱した鋼板を、浴温が 460〜490 ℃程度の溶融亜鉛浴に浸漬して溶融めっきを行う。その際、浴に浸入させる時の板温は 460〜500 ℃程度が好適である。また、溶融亜鉛浴中のAl量は0.13〜0.5 wt%程度とするのが好ましい。
このようにして溶融亜鉛浴に浸漬された熱延鋼板は、浴から引き上げられたのち、ガスワイピング処理などによってめっき付着量を調整され、溶融亜鉛めっき熱延鋼板となる。
さらに、このような溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、その後に合金化処理を施すことによって合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板とすることもできる。
【0036】
なお、その他の溶融めっき処理としては、溶融アルミニウムめっき、溶融亜鉛−アルミニウムめっき、溶融亜鉛−マグネシウム−アルミニウムめっき等があり、これらについても従来公知の方法に従って溶融めっき処理を施せば良い。また、めっき浴中にPb, Sb, Bi, REM, Ti 等が少量添加される場合もある。
さらに、溶融めっきの付着量については、片面当たり20〜100 g/m2程度とするのが好ましい。
【0037】
【実施例】
表1に示す成分組成に調整した鋼スラブを、1100〜1250℃に加熱後、熱間圧延により 2.0mm厚の熱延板とした後、表2,3に示す条件で熱延板熱処理を施し、ついで酸洗を施した。
かくして得られた熱延鋼板に、700 ℃,1 minの加熱処理を施したのち、
・浴温:470 ℃
・浸入板温:470 ℃
・Al含有率:0.14wt%
・めっき付着量:60 g/m2 (片面)
・めっき時間:1 sec
の条件で溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき熱延鋼板を製造した。また、一部についてはその後合金化処理を施して、合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板とした。
さらに、一部については、上記の加熱処理後、溶融アルミニウムめっき処理および溶融亜鉛−アルミニウムめっき処理を施した。
またさらに、熱延鋼板の一部については化成処理を施した。
なお、比較のため、従来法に従って、熱延鋼板、溶融めっき熱延鋼板および合金化溶融めっき熱延鋼板を製造した。
かくして得られた熱延鋼板の化成処理性、各種溶融めっき熱延鋼板の溶融めっき性およびめっき密着性、ならびに合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板の合金化速度および合金化ムラについて調べた結果を、表4,5に示す。
【0038】
各特性の評価方法は次のとおりである。
<化成処理性>
熱延鋼板に、表6に示す脱脂→水洗→表面調整→化成からなる化成処理を施して、りん酸亜鉛皮膜を形成させ、以下の基準に従い評価した。
○:全面均一にりん酸亜鉛皮膜が形成された
×:一部りん酸亜鉛皮膜が形成されない部分が発生
【0039】
<溶融めっき性>
溶融めっき後の外観を画像処理して、不めっき面積率を求め、以下の基準に従い評価した。
5:不めっき面積率0%
4:不めっき面積率0〜0.1 %
3:不めっき面積率 0.1〜0.3 %
2:不めっき面積率 0 3〜0.5 %
1:不めっき面積率 0.5%以上
【0040】
<めっき密着性>
デュポン衝撃試験(直径1/4 インチ、重量1kgの重りを50cmの高さから鋼板上に落下)により、めっき密着性を評価した。判定基準は次のとおりである。
○:めっき剥離なし
×:めっき剥離有り
【0041】
<合金化速度>
・合金化条件
昇温速度:20℃/s
降温速度:15℃/s
合金化温度:490 ℃
合金化時間:20秒
上記条件下で処理した合金化材の表面に亜鉛η相が残存しているか否かで合金化速度を評価した。
○:亜鉛η相なし
×:亜鉛η相あり
【0042】
<合金化ムラ>
ソルトバスを用いて、10×20cmの溶融めっき板を 490℃, 30秒で合金化を行い合金化ムラがあるかについて合金化後のめっき外観を観察して評価した。
○:焼けムラなし(均一)
×:焼けムラあり
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
表4,5から明らかなように、この発明に従い得られた熱延鋼板はいずれも、最表層に純鉄化層を有し、その結果、従来法により得られた熱延鋼板に比べて、優れた化成処理性、溶融めっき性および合金化溶融めっき性を呈している。
【0050】
【発明の効果】
かくして、本発明に従い、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中で熱延板熱処理を施すことにより、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させると共に、この内部酸化層の上層の地鉄最表層には純鉄化層を形成させることができ、その結果、化成処理性および溶融めっき性を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】白皮熱延板(同図(a) )および黒皮熱延板(同図(b), (c))の熱延板熱処理後の断面を示す光学顕微鏡組織写真である。
【図2】内部酸化層の形成に及ぼす黒皮熱延板の熱処理雰囲気の影響を示した図である。
【図3】黒皮熱延板に熱延板熱処理を施したもの(a) とかような熱処理を施さないもの(b) について、酸洗後の深さ方向の元素分布を比較して示したグラフである。
【図4】溶融めっき時の不めっきの発生状況を示した図である。
Claims (4)
- 素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施し、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層およびその上の地鉄最表層に純鉄化層を形成させたのち、常法に従う酸洗を施して得たことを特徴とする熱延鋼板。
- 素材鋼片を、熱間圧延し、ついで酸洗を施して熱延鋼板を製造するに当たり、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させると共に、この内部酸化層の上の地鉄最表層には純鉄化層を形成させることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
- 溶融めっき熱延鋼板であって、素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施し、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層およびその上の地鉄最表層に純鉄化層を形成させたのち、常法に従う酸洗、加熱および溶融めっき処理を施して得たことを特徴とする溶融めっき熱延鋼板。
- 素材鋼片を、熱間圧延し、ついで酸洗後、加熱処理および溶融めっき処理を施して溶融めっき熱延鋼板を製造するに当たり、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて 650〜950 ℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、鋼板の地鉄表層近傍に内部酸化層を形成させると共に、この内部酸化層の上の地鉄最表層には純鉄化層を形成させることを特徴とする溶融めっき熱延鋼板の製造方法。
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