JP3593370B2 - モータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、軸受部分に動圧軸受を用いたモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば記録ディスク駆動装置等に組み込まれるブラシレスモータは、駆動負荷の性質上、回転部材を高精度に支持すると共に、振れやガタツキを極力抑えた精度良い回転支持が要求される。こうした要求に応えるため、軸受部分には従来のボールベアリングから、オイルや空気等の流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段へ置き換えられ、それに伴う構成が種々提案されている。これにより、回転ムラや振動等が低減され、高精度な軸受支持が実現される。特に流体潤滑剤としてオイルやグリース等を用いた動圧軸受手段では、これらの持つ粘性によって軸受剛性が高くなり、大きな回転負荷に対して良好な軸受支持を得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記軸受手段によれば、軸受剛性を高くすることができる反面、介在されるオイルやグリース自体の粘性がモータの発生トルクに対し損失として作用する。このため、同一構成のモータであればトルクの低下または実装電流の増加は避けられず、モータの効率を低下せしめる。こうした問題に対処するため、例えば特公昭62ー4565号公報に記載されているように、動圧発生部位に応じて潤滑剤の粘度を使い分け、損失トルクを可及的に低減させるよう提案されている。しかしながら、近時におけるモータの小型化・軽量化の傾向において、上記方策はその構造或いは製造工程上、煩雑となり、必ずしも好適であるとはいい難く、何等かの対策が望まれていた。また加えて、扱う潤滑剤に対応して、潤滑剤の軸受部あるいはモータ外部への漏出を防止する方策も望まれていた。
【0004】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、動圧流体軸受にオイル等の比較的粘度の高い流体潤滑剤を用いても、トルク損失が少なくモータの効率が図れ、しかも製造の容易なモータ並びにその製造方法を提供することにある。また併せて流体潤滑剤の漏出が防止できるモータ及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明に係るモータは、静止部材と、前記静止部材に対して相対回転支持される回転部材と、前記静止部材と前記回転部材との間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段と、を具備したモータにおいて;前記動圧軸受手段には、相対する前記静止部材と前記回転部材とのいずれかに動圧発生溝部が設けられ、前記動圧発生溝部の動圧発生端部側には、前記動圧発生溝部における前記静止部材と前記回転部材とによる半径方向間隙よりも、該間隙が前記動圧発生端部外側へ向けて順次大きくなるテーパ状間隙部が設けられ;前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部を除く前記回転部材と前記静止部材との両部位に、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布されてなるものである。
【0006】
また本発明に係る別のモータは、静止部材と、前記静止部材に対して相対回転支持される回転部材と、前記静止部材と前記回転部材との間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段と、を具備したモータにおいて;前記動圧軸受手段には、相対する前記静止部材と前記回転部材とのいずれかに動圧発生パターン部が設けられ、該動圧発生パターン部は、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤により所定動圧発生模様が形成され;前記動圧発生パターン部の動圧発生端部側には、前記動圧発生パターン部における前記静止部材と前記回転部材とによる半径方向間隙よりも、該間隙が前記動圧発生端部外側へ向けて順次大きくなるテーパ状間隙部が設けられ;前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部を除く前記回転部材と前記静止部材との両部位に、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布されてなるものである。
【0007】
さらに本発明の前者のモータを製造する製造方法としては、前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位には、予め前記撥油剤が塗布され、次に前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部が加工されることにより、実質上前記両加工部位には前記撥油剤が除去されるモータの製造方法が提供される。
【0008】
また更に本発明の後者のモータを製造する製造方法としては、前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位には、予め前記撥油剤が塗布され、次に前記動圧発生パターン部の動圧発生模様及び前記テーパ状間隙部が加工されることにより、実質上前記両加工部位には前記撥油剤が除去されるモータの製造方法が提供される。
【0009】
【作用】
本発明のモータによれば、回転部材と静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及びテーパ状間隙部を除く部位に、流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布されている。このため、流体潤滑剤は撥油剤が塗布されている部位では、撥油されるため、軸受支持部位のうち動圧発生に伴う動圧軸受手段の部位及テーパ状間隙部のみに流体潤滑剤が保持され、滞留する。そしてテーパ状間隙部は、流体潤滑剤が移動するよう作用を受けても、その作用力に対応して平衡する表面張力及び毛細管現象により所定の間隙部分で保持されるシール手段をなす。従って回転部材と静止部材とが対向する、それ以外の支持部位では、実質上、流体潤滑剤が存在せず、流体潤滑剤は動圧発生に有効な動圧軸受手段の部位と漏出防止のシール手段(テーパ状間隙部)の部位のみに保持される。このため、回転部材が支持される負荷トルクは低減され、粘度の高い流体潤滑剤用いたとしても、モータのトルク損失を効果的に抑えることが可能となる。
【0010】
またそうしたモータの製造方法として、予め撥油剤を軸受支持部位に塗布しておき、次に動圧軸受手段を加工することで、その際に動圧発生溝部及びテーパ状間隙部の部位の塗布が除去される。このため、撥油剤の塗布を部分的に施さなくても、容易に実施できるため製造が簡単となる。これにより、モータの小型化に伴って部品が小さくなったり、複雑な形状となっても容易に塗布することができ、製造コストを低減することができる。
【0011】
そして本発明の後者のモータによれば、動圧軸受手段には、撥油剤により動圧発生模様が形成された動圧発生パターン部が設けられている。従って、上記作用に加え、動圧発生溝を設けることなく、動圧発生部が設けられるため、より製造コストを低減することができる。これに加え流体潤滑剤の負荷トルクが低減されトルク損失を抑えることができると共に、流体潤滑剤の漏出防止も図れる。
【0012】
さらに上記モータの製造方法として、同様に予め撥油剤の塗布を軸受支持部位に施しておき、動圧軸受手段を加工する際に動圧発生パターン部、そしてテーパ状間隙部の加工する際にその間隙部、のそれぞれ撥油剤が除去される。このため、撥油剤の塗布を部分的に施さなくてもよく、また複雑な形状に対しても容易に塗布することができ、製造コストの低減をはかることができる。
【0013】
【実施例】
本発明に従うモータの実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、例えば記録ディスクを回転駆動するためのモータであり、その全体を示す断面図である。図2は図1の一部を拡大して示した要部拡大断面図である。そして図3及び図4は、図2を拡大して示した部分断面図である。さらに図5及び図6は、図1に示した部材の断面または側面図である。
【0014】
これらの図において、ハウジング1はアルミ合金から形成され、その中心部には上方(モータ内部側)に隆起して形成されたボス部16が設けられている。ボス部16には、その中央部において孔部15が設けられ、シャフト2の下端部が嵌め込まれて固定されている。シャフト2はハウジング1の取付面に対して、実質上、垂直に取り付けられている。シャフト2は、例えば鉄基合金材等から形成されており、上端部側には円板状をなすスラストプレート5が一体に設けられている。スラストプレート5は、シャフト2の長手(軸心)方向に対して、実質上、直角に形成されると共に、その上下端部33,34の面が実質上平行となるよう形成されている。なお、ハウジング1及びシャフト2により、本モータの静止部材となす。
【0015】
スラストプレート5は、図6に示すように、上下端部33,34において、環状に形成されたヘリングボーン状の動圧発生用溝45,46が設けられている。そして上下端部33,34のそれぞれ外周端には、周方向に均一の肉厚を有した、先細り状のテーパ38,39が形成されている。一方、シャフト2の外周部19における略中央部には、外周部19の外径寸法より僅かに縮径して形成された縮径部35が設けられている。そしてその上下方向の両側には、所定の外径寸法で形成された外周面を有する外周部47,48が設けられている。外周部47,48は、これらと半径方向に外嵌して対面するスリーブ4とにより、ラジアル動圧軸受部A,Bが構成される。スリーブ4の内周部31の対応部には、図5に示すように周方向に形成されたヘリングボーン状の動圧発生用溝50,51が設けられている。
【0016】
シャフト2に回転支持されるロータ(回転部材)3は、略円筒状をなすスリーブ4と、スリーブ4の外周側に固定されたハブ10とを有している。ハブ10は、例えばアルミ合金から形成され、その外周部49に例えば回転負荷としての記録ディスク(図示省略)が外嵌して装着される。ハブ10の鍔41は記録ディスクが受け止めるためであり、孔部20はクランプ部材を取り付るためのネジ孔、そして孔部21は記録ディスクを固定する際の回り止めのためのケレ孔である。
【0017】
スリーブ4はその全長の大部分を占める円筒状の周壁24と、その上部に一体に設けられた拡径部25とからなり、これらはシャフト2に対して同軸状に形成されている。スリーブ4は鉛青銅等の銅合金材料から形成されている。スリーブ4の拡径部25には、内周側に段部26,27が形成されており、段部26には、軸線方向に貫通した貫通孔30,30が回転対称状に2箇所設けられている。スリーブ4における周壁24の上端部44は、スラストプレート5の下端部34と上下(軸)方向へ対向し、動圧発生用溝46とにより、スラストプレート下側のスラスト動圧軸受部Dが構成される。
【0018】
スリーブ4の上部内周側には、スラストカバー6が設けられている。スラストかバー6はスリーブ上端部32の溝部が加締められて固定されている。そしてスラストカバー6の下端部52とスラストプレート5の上端部33とが上下(軸)方向へ対向し、動圧発生用溝45によりスラストプレート下側のスラスト動圧軸受部Cが構成される。これら動圧軸受A,B,C,Dにはいずれも流体潤滑剤であるオイルが介在するよう充填され、もってロータ3はシャフト2に対して回転自在に支持される。
【0019】
ハウジング1のボス部16には、その外周上部に段部17が形成され、段部17にステータ7が固定されている。ステータ7は、所定の磁極歯を有するステータコア12に、ステータコイル11が巻回されてなる。ステータコイル11から引き出されたコイルリード線13は、ハウジング上に貼着されたフレキシブル回路基板14に接続され、さらに図示省略する接続線は絶縁ブッシュ23を介してモータ外部へ導出される。ステータ7と半径方向へ対向したハブ10側には、磁性ヨーク9を介してロータマグネット8が装着されている。
【0020】
本実施例のモータにおける動圧軸受部A,B,C,Dには、いずれもオイルが介在して設けられているが、そのオイルの保持状態について図3及び図4を中心に以下、更に説明する。スラスト動圧軸受部C,Dにおける間隙、即ちスラストカバー6の下端部52とスラストプレート5の上端部33との間隙、そしてスラストプレート5の下端部34とスリーブ4の端部44との間隙、のそれぞれには、オイルが毛細管現象により保持されている。スラストプレート5の外周側には上下のテーパ部38,39が形成されているため、それぞれの間隙(テーパ状間隙部)に保持されたオイルは、モータの回転・停止等によるオイルの移動や変動が発生しても、テーパ部38,39の間における間隙で、表面張力及び毛細管現象の作用により、それに見合う平衡した所定の位置で保持される。従ってこれらの部位において、オイルの変動を実質的に吸収するシール手段となす。そしてこれらの対応するそれぞれの面には、撥油剤等は塗布されていない。
【0021】
スラストプレート5の外周端側には、スリーブ4の端部44から段部27へ連設する環状壁55と、スラストカバー6の下端部52と、により閉塞される環状の空間53が生成されている。もし、モータへの衝撃等が加えられた場合、動圧軸受部C,Dに介在されたオイルが空間53へ飛散しても、空間53内の環状壁55や(スリーブ4の)端部44等にて捕捉されて保持され、しかるべく元の動圧軸受部C,Dへ回収される。空間53を規定する表面には、オイルを撥油する撥油剤が塗布され、オイルの滑性を高めるよう図られている。なお、段部26に設けられた貫通孔30により、モータ外部と空間53とが連通しており、モータ内外部の気圧差が解消される。このため、モータの温度上昇でオイル等に含有する空気が膨張しても、モータ外部へオイルが押し出されることはない。貫通孔30の開口54が段部26の上端に設けられているのは、端部44上などに飛散して滞留したオイルが容易に貫通孔30から漏れ出ないようにするためである。
【0022】
スラストカバー6における内周部57の下端部80は、テーパ状に形成されている(テーパ部80)。これにより、テーパ部80とスラストプレート5(及びシャフト外周部19)との間でテーパ状間隙部が形成され、スラスト動圧軸受部Cのオイルがモータ外部方向(図の上方)へ移動するよう作用力を受けても、この間隙部で保持され、実質上シール効果が得られる。これら対応する部分の面には、撥油剤が塗布されていない。さらに、スラストカバー6(の内周部57)と半径方向に対向して、シャフト2の外周部には環状溝36が形成されている。これにより空隙56が生成され、動圧軸受部Cに介在されるオイルは、表面張力の作用により、モータ外部(図の上方)へ漏出することが防止される。空隙56を規定する、シャフト外周部19及びその環状溝36、そしてスラストカバー内周部57には、それぞれ撥油剤が塗布されており、オイルの漏出をより高めるよう図られている。
【0023】
一方、スリーブ4の下側に位置する動圧軸受部Bにおいても、スリーブ内周部31には、その下端側にテーパ部40が設けられ(これによりテーパ状間隙部が生成される)ており、前述テーパ部38,39と同様の作用により、動圧軸受部Bに介在されるオイルのシール手段としている。そしてシャフト2の外周部19に設けられた環状溝37と、これと半径方向に対向して(スリーブ4に設けられた)環状溝43と、により空隙58が生成され、オイルのモータ外部(図の下方)への漏出が防止される。これらのオイル漏出防止を高めるため、空隙58を規定する、シャフト2の環状溝37及びスリーブ4の環状溝43には、撥油剤が塗布されている。なお、テーパ部40とこれに対応するシャフト2の外径部48には、撥油剤は塗布されていない。
【0024】
動圧軸受部A,Bの中間部分、すなわちスリーブ内周部31とシャフト縮径部35との間のは、半径方向の隙間寸法が動圧軸受部A,Bとの間隙寸法より大きく設定されており、空隙59が形成されている。空隙59により、動圧軸受部A,Bに保持されたオイルは、互いに隔絶される。空隙59に対応するスリーブ内周部31には、オイルを撥油する撥油剤が塗布されている。なお、スリーブ内周部31における動圧発生用溝50,51には、撥油剤は塗布されていない。また、シャフト2側には、外周部19において外径部47と縮径部35との全面にわたり塗布されている。なお、動圧発生溝部が設けられた(本実施例ではスリーブ内周部31側)部位に対応して、その相対する側には、撥油剤の塗布を加工や形状に応じて種々選択することができることはいうまでもない。
【0025】
これら撥油剤の塗布により、オイルは撥油剤により撥油され、塗布面においてオイルの滑性が高められる。このためオイルは動圧軸受部A,B以外には(ただしテーパ状間隙部を除き)滞留することがなく、従ってオイルは実質上、動圧軸受部A,Bにおいて動圧発生に寄与する部分のみ保持・滞留されることになる。そしてオイルは空隙59において実質上介在されないため、オイルは動圧による軸受支持部分(動圧軸受A,B)のみに作用し、オイルの持つ粘性による負荷トルクを必要最小限に抑えることができる。すなわち空隙59の部位にオイルが充填されていた従来に比べ、本モータによればオイルによるトルク損失を効果的に低減することができ、効率の高いモータを得ることができる。特に軸受剛性を高めるために高粘度のオイルやグリース等を用いる際に、モータ効率の向上を図ることができる。同時に、動圧軸受部Bのモータ外側(図の下側)においては、撥油剤の作用により、オイルのシール効果を高めている。
【0026】
上記で明らかなように、スラスト軸受部をなす動圧軸受部C,Dにおいても、動圧発生部(及びテーパ状間隙部)以外において撥油剤が塗布されており、同様の効果をなす。軸受支持を行なうための動圧発生部以外の部位へ撥油剤を塗布することにより、トルク損失を低減することができ、さらに撥油剤の表面張力によるオイルの外部漏出を防止することができる。撥油剤としては、例えば、旭硝子社の商品名サイトップ等のフッソ系樹脂材料が用いられている。
【0027】
本実施例では、動圧軸受部A,Bにおいて、動圧発生用溝50,51がスリーブ4側に設けられているが、これに代えてシャフト2側に設けることができ、或いはこれら両者の組み合わせでも構わない。いずれの場合においても、動圧発生用溝が設けられた部位には、撥油剤が塗布されておらず、それ以外の部位には撥油剤が塗布されることが望ましい。同様に動圧軸受部C,Dにおいても、スラストプレート5に設けられた動圧発生溝45,46に代えて、それぞれ対向するスラストカバー6側及びスリーブ4側に設けることができ、これらの組み合わせでも可能である。そして撥油剤の塗布は、動圧発生用溝が設けられた部位以外に行なうことができる。
【0028】
次に撥油剤の塗布方法について説明する。撥油剤を所定の部位や特定の箇所のみに行なうことは、モータの小型化に伴い或いは複雑な外形になる程、困難となるが、以下の製造手順により容易に行なうことができる。即ち図示の構成のブラシレスモータの場合、まずシャフト2においては、図6に示すシャフト単体において、予め全体を撥油剤に含浸させて塗布し、その後、動圧発生用溝45,46を、プレスによる塑性加工、或いは切削加工等にて形成する。これにより、加工面であるスラストプレート5の上下端部33,34には、動圧発生用溝45,46が形成されると共に、撥油剤が除去される。また、テーパ部38,39もその際撥油剤が除去される。
【0029】
またスリーブ4では、図5に示すスリーブ単体において、予め全体を撥油剤に含浸させて塗布する。そしてその後、スリーブ内周部31の動圧発生用溝50,51を上記と同様に塑性加工や切削加工等の加工により形成する。これにより、スリーブ内周部31の加工部位は撥油剤が除去される。またスリーブ4のテーパ状部40もその際撥油剤が除去される。
【0030】
上記方法によれば、予め部品全体を含浸しておき、その後から不要な部位を除去し、除去の工程を動圧発生溝の加工、またこれと併せてテーパ状間隙部を形成加工を併せて行なうものである。このため、部品の大きさや形状を問わず容易に塗布することができ、塗布の手間を大幅に削減することができる。部品全体の塗布処理としては、上記撥油剤の入った容器に含浸する方法の他、撥油剤を噴射するなど種々の方法を用いることができる。また、上記実施例の他、動圧発生用溝が動圧軸受部を構成する相手部材側に設けられる場合でも同様の手順で処理することはいうまでもない。
【0031】
次に、図7を用いて本発明の別の実施例について説明する。既に説明したモータにおける動圧軸受部A,B,C,Dは、図5及び図6に示す動圧発生溝50,51(いずれもラジアル動圧)及び45,46(いずれもスラスト動圧)によっているが、これらはそれぞれ動圧発生溝が設けられた部分が全域にわたり撥油剤が除去されていた。しかし本実施例では、図7に示す構成が設けられている。図7において、スラストプレート70の上端部79側において動圧発生部が設けられた例を示している。(a)は上から下に向かって見た平面図であり、(b)はX−Xにおける断面図である。図において凹設された部分が動圧発生溝部71であり、凸設された部分が撥油剤塗布部である。
【0032】
あるいは図7において、断面図(c)のように、(b)とは逆に凹設された部分を撥油剤塗布部73とし、凸設された部分を動圧発生溝部74としてもよい。これら撥油剤が塗布されることにより、撥油剤が塗布されていない部分との相互関係により、撥油剤による動圧発生パターンが生成され、これにより動圧軸受部が構成されるものである。これらは、いずれも予め撥油剤を全面に塗布しておき、動圧発生溝を形成するときに対応部分が除去されるものである。図の(b)では、概略形成された凹凸を有するスラストプレート面に、撥油剤を全面塗布しておき、溝部71に対応した加工を行なうことができ、その際溝部71の撥油剤が除去され、凸部に撥油剤が残るものである。また(c)の場合では、予め撥油剤が全面塗布されており、凸設した動圧発生部74が加工されて撥油剤が除去され、凹部に撥油剤が残るものである。
【0033】
さらに図示を省略するが、平坦状をなす動圧発生用プレートに、撥油剤の塗布を動圧発生パターンに従い、例えばヘリングボーン状の動圧発生模様を設けることができる。この場合もオイルが塗布されている部分とそうでない部分との相互配置により、オイルである流体潤滑剤による動圧軸受部を構成することができる。上述の構成は、既に説明して用いた図1乃至図6に対応して適用でき、重複するため、その作用説明を省略する。なおいずれも場合においても、動圧発生パターンに撥油剤を塗布してあるため、動圧発生溝を設けなくとも、あるいはそれ程深く設けなくても動圧発生溝を容易に得ることができる。そして、既に実施例で説明した動圧軸受部及びテーパ状間隙部であるシール部を除いた部分に撥油剤が塗布されることにより、オイルによる負荷トルクの低減を図ることができる。
【0034】
以上、本発明のモータの実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更乃至修正等自由である。即ち本実施例で示した種々の部分的な構成を組み合わせて用いることができる他、動圧軸受の動圧発生用溝の形態や数量等、自由に選定することができる。なお、本実施例では、回転部材としてのロータ3は、ハブ10とスリーブ4とから構成されているが、これらが一体に形成されたものでも対応できる。さらに動圧発生溝の形状は配置等自由である。
【0035】
【発明の効果】
本発明のモータは、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。本発明の請求項1に対応するモータによれば、回転部材と静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及びテーパ状間隙部を除く回転部材と静止部材との両部位に、流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布されている。このため、流体潤滑剤は撥油剤が塗布されている部位では、撥油されるため、軸受支持部位のうち動圧発生に伴う動圧軸受手段の部位及テーパ状間隙部のみに流体潤滑剤が保持され、滞留する。そしてテーパ状間隙部は、流体潤滑剤が移動するよう作用を受けても、その作用力に対応して平衡する表面張力及び毛細管現象により所定の間隙部分で保持されるシール手段をなす。従って回転部材と静止部材とが対向する、それ以外の支持部位では、実質上、流体潤滑剤が存在せず、流体潤滑剤は動圧発生に有効な動圧軸受手段の部位と漏出防止のシール手段(テーパ状間隙部)の部位のみに保持される。このため、回転部材が支持される負荷トルクは低減され、粘度の高い流体潤滑剤用いたとしても、モータのトルク損失を効果的に抑えることが可能となる。
【0036】
またそうしたモータの製造方法として、予め撥油剤を軸受支持部位に塗布しておき、次に動圧軸受手段を加工することで、その際に動圧発生溝部及びテーパ状間隙部の部位の塗布が除去される。このため、撥油剤の塗布を部分的に施さなくても、容易に実施できるため製造が簡単となる。これにより、モータの小型化に伴って部品が小さくなったり、複雑な形状となっても容易に塗布することができ、製造コストを低減することができる。
【0037】
そして本発明の請求項2のモータによれば、動圧軸受手段には、撥油剤により動圧発生模様が形成された動圧発生パターン部が設けられている。従って、上記作用に加え、動圧発生溝を設けることなく、またそれ程深く動圧発生溝を設けることなく、動圧発生部が設けられるため、より製造コストを低減することができる。これに加え流体潤滑剤の負荷トルクが低減されトルク損失を抑えることができると共に、流体潤滑剤の漏出防止も図れる。
【0038】
さらに上記モータの製造方法として、同様に予め撥油剤の塗布を軸受支持部位に施しておき、動圧軸受手段を加工する際に動圧発生パターン部、そしてテーパ状間隙部の加工する際にその間隙部、のそれぞれ撥油剤が除去される。このため、撥油剤の塗布を部分的に施さなくてもよく、また複雑な形状に対しても容易に塗布することができ、製造コストの低減をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るブラシレスモータの全体を示す断面図である。
【図2】図1におけるブラシレスモータの一部を示す要部拡大断面図である。
【図3】図1におけるブラシレスモータの一部を示す要部拡大断面図である。
【図4】図1におけるブラシレスモータの一部を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1におけるスリーブの部分を示す拡大断面図である。
【図6】図1におけるシャフトの部分を示す側面図である。
【図7】本発明の別の実施例に係るモータを示し、(a)は平面図、(b)及び(c)はその断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータ
4 スリーブ
5 スラストプレート
6 スラストカバー
7 ステータ
8 ロータマグネット
30 貫通孔
36,37,43 環状溝
Claims (4)
- 静止部材と、前記静止部材に対して相対回転支持される回転部材と、前記静止部材と前記回転部材との間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段と、を具備したモータにおいて、
前記動圧軸受手段には、相対する前記静止部材と前記回転部材とのいずれかに動圧発生溝部が設けられ、前記動圧発生溝部の動圧発生端部側には、前記動圧発生溝部における前記静止部材と前記回転部材とによる半径方向間隙よりも、該間隙が前記動圧発生端部外側へ向けて順次大きくなるテーパ状間隙部が設けられ、
前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部を除く前記回転部材と前記静止部材との両部位に、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布された、ことを特徴とするモータ。 - 静止部材と、前記静止部材に対して相対回転支持される回転部材と、前記静止部材と前記回転部材との間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段と、を具備したモータにおいて、
前記動圧軸受手段には、相対する前記静止部材と前記回転部材とのいずれかに動圧発生パターン部が設けられ、該動圧発生パターン部は、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤により所定動圧発生模様が形成され、前記動圧発生パターン部の動圧発生端部側には、前記動圧発生パターン部における前記静止部材と前記回転部材とによる半径方向間隙よりも、該間隙が前記動圧発生端部外側へ向けて順次大きくなるテーパ状間隙部が設けられ、
前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位のうち、実質上前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部を除く前記回転部材と前記静止部材との両部位に、前記流体潤滑剤を撥油する撥油剤が塗布された、ことを特徴とするモータ。 - 請求項1記載のモータを製造する製造方法であって、
前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位には、予め前記撥油剤が塗布され、
次に前記動圧発生溝部及び前記テーパ状間隙部が加工されることにより、実質上前記両加工部位には前記撥油剤が除去される、ことを特徴とするモータの製造方法。 - 請求項2記載のモータを製造する製造方法であって、
前記回転部材と前記静止部材とが対向する軸受支持部位には、予め前記撥油剤が塗布され、
次に前記動圧発生パターン部の動圧発生模様及び前記テーパ状間隙部が加工されることにより、実質上前記両加工部位には前記撥油剤が除去される、ことを特徴とするモータの製造方法。
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