JP3593169B2 - ケイ素含有スチルベン誘導体 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ケイ素含有スチルベン誘導体に関する。さらに詳しくは、高硬度、高屈折率を有し、透明性、耐熱性、形状安定性、耐久性、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料や、コンタクトレンズ材料、眼内レンズ材料などの眼用レンズ材料などに好適に使用しうるケイ素含有重合体をうることができるケイ素含有スチルベン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえばコンタクトレンズ材料の酸素透過性を高めるために、シロキサン結合を分子内に有するケイ素含有(メタ)アクリレート系モノマーやケイ素含有スチレン系モノマーを適当な共重合成分と共重合させ、えられた共重合体を用いることが試みられている。
【0003】
しかしながら、さらにコンタクトレンズ材料の酸素透過性を向上せしめるためには、前記共重合体をうる際に、ケイ素含有(メタ)アクリレート系モノマーやケイ素含有スチレン系モノマーを多量に用いなければならず、その結果、えられる共重合体は、そのガラス転移温度がいちじるしく低下したり、それほど上昇しないため、コンタクトレンズ材料としては硬度が不充分な材料となるといった問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、かつガラス転移温度が高く、高硬度を有する重合体をうることができる化合物を提供するべく鋭意研究を重ねた結果、特定のスチルベン誘導体を一重合成分として用いたばあいには、えられる重合体が前記物性にすぐれるほか、さらに透明性、耐熱性、形状安定性、耐久性にもすぐれ、高屈折率も有することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、R 1 およびR2はそれぞれ独立して水素原子または一般式(II):
−SipOp−1(CH3)2p+1 (II)
(式中、pは1〜8の整数を示す)で表わされる基であり、R1およびR2の少なくとも一方が一般式(II)で表わされる基を示す)で表わされるケイ素含有スチルベン誘導体に関する。
【0008】
【作用および実施例】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、前記したように、一般式(I):
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R 1 およびR2はそれぞれ独立して水素原子または一般式(II):
−SipOp−1(CH3)2p+1 (II)
(式中、pは1〜8の整数を示す)で表わされる基であり、R1およびR2の少なくとも一方が一般式(II)で表わされる基を示す)で表わされる化合物である。
【0011】
前記一般式(I)で表わされるケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体にすぐれた酸素透過性を付与し、かつガラス転移温度を高めて硬度および耐熱性を向上させるほか、すぐれた透明性、形状安定性、耐久性および高屈折率を付与するという性質を有する化合物である。
【0012】
前記一般式(I)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水素原子または一般式(II)で表わされる基であるが、かかる一般式(II)において、pが8よりも大きいばあいには、えられる重合体中でのスチルベン骨格由来の単位の相対量が低下するため、耐熱性の向上などの効果が発現されにくくなるので好ましくない。
【0013】
また、前記一般式(I)において、R1 およびR2 の少なくとも一方が前記一般式(II)で表わされる基であるが、えられる重合体の酸素透過性を効果的に向上させるためには、R1 およびR2 がいずれも一般式(II)で表わされる基であることが好ましく、とくにR1 およびR2 がいずれもトリメチルシリル基であることがさらに好ましい。
【0014】
さらに、前記一般式(I)において、R1 および/またはR2 が一般式(II)で表わされる基であるばあい、それぞれのエチレン基(−HC=CH−)に対する結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、ケイ素含有スチルベン誘導体の重合性を考慮すると、R1 およびR2 がいずれもエチレン基に対してパラ位またはメタ位に結合していることが好ましい。
【0015】
前記ケイ素含有スチルベン誘導体の具体例としては、たとえば3−トリメチルシリルスチルベン、4−トリメチルシリルスチルベン、3,3´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、4,3´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、3−ペンタメチルジシロキサニルスチルベン、4−ペンタメチルジシロキサニルスチルベン、3,3´−ビス(ペンタメチルジシロキサニル)スチルベン、4,4´−ビス(ペンタメチルジシロキサニル)スチルベン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチルベン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチルベン、3,3´−ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリル)スチルベン、4,4´−ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリル)スチルベンなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
なお、スチルベン誘導体には、シス体とトランス体が存在し、本発明においては、そのいずれも用いることができるが、たとえば他の重合成分との重合性の観点からトランス体が好ましい。
【0017】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、たとえば以下のような方法によって製造することができる。
【0018】
たとえば、一般式(I)において、R1 およびR2 がいずれも一般式(II)で表わされる基であるケイ素含有スチルベン誘導体をうる方法としては、つぎのような方法があげられる。
【0019】
まず、一般式(III):
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、X1 およびX2 はそれぞれ独立して塩素原子または臭素原子を示す)で表わされるジハロゲン化ベンゼンと、一般式(IV):
X3 −Sip Op−1 (CH3 )2p+1 (IV)
(式中、X3 は塩素原子または臭素原子、pは1〜8の整数を示す)で表わされる化合物とを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、一般式(V):
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、X1 およびpは前記と同じ)で表わされる化合物を合成する。
【0024】
前記一般式(III)で表わされるジハロゲン化ベンゼンとしては、たとえば1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、4−ブロモクロロベンゼン、3−ブロモクロロベンゼンがあげられる。また前記一般式(IV)で表わされる化合物としては、たとえばトリメチルクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシランなどがあげられる。
【0025】
なお、前記ジハロゲン化ベンゼンおよび一般式(IV)で表わされる化合物の種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえばジハロゲン化ベンゼン1モルに対して、一般式(IV)で表わされる化合物を1〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中でジハロゲン化ベンゼンとマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらに一般式(IV)で表わされる化合物を添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0026】
かくしてえられる一般式(V)で表わされる化合物としては、たとえば4−トリメチルシリルブロモベンゼン、3−トリメチルシリルブロモベンゼン、4−トリメチルシリルクロロベンゼン、3−トリメチルシリルクロロベンゼン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブロモベンゼン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブロモベンゼン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルクロロベンゼン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルクロロベンゼンなどがあげられる。
【0027】
つぎに、前記一般式(V)で表わされる化合物と1,2−ジハロゲン化エチレンとを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を合成する。
【0028】
前記1,2−ジハロゲン化エチレンとしては、たとえばトランス−1,2−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,2−ジブロモエチレンのシス体およびトランス体の混合体などがあげられる。
【0029】
なお、前記一般式(V)で表わされる化合物および1,2−ジハロゲン化エチレンの種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえば一般式(V)で表わされる化合物1モルに対して1,2−ジハロゲン化エチレンを0.3〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で一般式(V)で表わされる化合物とマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらに1,2−ジハロゲン化エチレンを添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0030】
さらに、たとえば、一般式(I)において、R1 およびR2 のいずれか一方が一般式(II)で表わされる基であるケイ素含有スチルベン誘導体をうる方法としては、つぎのような方法があげられる。
【0031】
まず、たとえば前記と同様に、ジハロゲン化ベンゼンおよび一般式(IV)で表わされる化合物の種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などを、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整し、一般式(V)で表わされる化合物を合成する。
【0032】
つぎに、前記一般式(V)で表わされる化合物とβ−ハロゲン化スチレンとを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を合成する。
【0033】
前記β−ハロゲン化スチレンとしては、たとえばβ−ブロモスチレンなどがあげられる。
【0034】
また、前記一般式(V)で表わされる化合物およびβ−ハロゲン化スチレンの種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえば一般式(V)で表わされる化合物1モルに対してβ−ハロゲン化スチレンを0.3〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で一般式(V)で表わされる化合物とマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらにβ−ハロゲン化スチレンを添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0035】
かくしてえられる本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いたばあいには、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、かつガラス転移温度が高く、高硬度を有し、耐熱性にすぐれるほか、さらに透明性、形状安定性、耐久性にすぐれ、高屈折率を有する重合体をうることができる。
【0036】
なお、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体から重合体をうるには、たとえば該ケイ素含有スチルベン誘導体と、これと共重合可能な他の重合成分とを、その種類や配合割合を適宜調整し、さらに架橋剤や重合開始剤を用いるなどして、通常の塊状重合法や溶液重合法などによって重合させればよい。
【0037】
このように、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体に種々のすぐれた物性を付与しうるものであるので、かかる重合体は、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料、眼用レンズ材料などに好適に使用することができる。
【0038】
つぎに、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
実施例1(トランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの合成)撹拌モータ、滴下ロート、ジムロート冷却管および温度計を取り付けた2リットル容の4つ口丸底フラスコに、マグネシウム36.47g(1.5モル)を入れ、1,4−ジブロモベンゼン235.91g(1.0モル)をジエチルエーテル750mlに溶解させたものを、チッ素雰囲気中でマグネシウムにゆっくりと滴下した。滴下終了後、前記2リットル容の4つ口丸底フラスコを約40℃に加熱し、さらに1時間反応させた。
【0040】
こののち、過剰のマグネシウムを取り除き、トリメチルクロロシラン149.3g(1.37モル)をジエチルエーテル150mlに溶解させた溶液を、前記2リットル容の4つ口丸底フラスコ中に滴下し、滴下終了後、室温で16時間攪拌した。
【0041】
折出した塩を濾過して取り除き、氷冷しながら濾液に蒸留水200mlをゆっくりと滴下し、未反応のグリニャール試薬およびトリメチルクロロシランを失活させた。こののち、有機層を取り出し、蒸留水500mlで3回洗浄した。該有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥したのち、溶媒を留去した。えられた液体を蒸留により精製し、4−トリメチルシリルブロモベンゼン43.24g(沸点:118.6〜126.0℃/20mmHg)をえた。
【0042】
つぎに、撹拌モータ、滴下ロート、ジムロート冷却管および温度計を取り付けた200ml容の4つ口丸底フラスコに、マグネシウム4.59g(0.189モル)を入れ、えられた4−トリメチルシリルブロモベンゼン43.24g(0.189モル)をジエチルエーテル90mlに溶解させたものを、チッ素雰囲気中でマグネシウムにゆっくりと滴下した。滴下終了後、前記200ml容の4つ口丸底フラスコを約40℃に加熱し、さらに1時間反応させた。
【0043】
こののち、トランス−1,2−ジクロロエチレン7.27g(0.075モル)をジエチルエーテル10mlに溶解させたものを、前記200ml容の4つ口丸底フラスコ中に滴下し、室温で16時間攪拌した。
【0044】
析出した塩を濾過して取り除き、濾液を蒸留水200mlで3回洗浄した。ついで、取り出した有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥したのち、溶媒を留去し、粗生成物30.72gをえた。
【0045】
えられた粗生成物をエタノール中で再結晶し、淡黄色結晶5.18gをえた(収率:3.2%)。
【0046】
えられた淡黄色結晶を四塩化炭素に溶解させ、日本電子(株)製、JNM−PMX60を用いて 1H−核磁気共鳴スペクトル(60MHz)を測定した。その結果を図1に示す。
【0047】
図1に示された結果から、0.26ppm付近に−Si(CH3 )3 に帰属したシグナル(図1中、aのピーク)、7.07ppm付近に−HC=CH−に帰属したシグナル(図1中、bのピーク)、7.45ppm付近に芳香核水素に帰属したシグナル(図1中、cのピーク)がそれぞれ認められる。
【0048】
また、ヒューレット・パッカード社製、GC−MS(5890IIガスクロマトグラフ+5971A 質量検出器)を用いて質量スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。
【0049】
図2に示された結果から、分子イオンピークが324にあることが認められる。
【0050】
さらに、日本分光工業(株)製、FT/IR−8300を用い、KBr錠剤法にて赤外吸収スペクトルを測定した。その結果を赤外線の透過率(%)として図3に示す。
【0051】
図3に示された結果から、3080cm−1、3100cm−1付近に芳香核のC−Hに基づく吸収、2900cm−1、2950cm−1付近にエチレン基のC−Hに基づく吸収、840cm−1付近にSi−Cに基づく吸収がそれぞれ認められる。
【0052】
これらの結果から、えられた淡黄色結晶は、式:
【0053】
【化6】
【0054】
で表わされるトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンであることが確認された。
【0055】
参考例1(重合体の調製)
実施例1でえられたトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン0.6492g(2ミリモル)、N−フェニルマレイミド0.363g(2ミリモル)および重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.003gをクロロホルム3mlに溶解させてガラス製試験管に注入し、脱気後密閉して35℃の恒温水槽中で64時間重合を行なった。こののち、重合体が生成した溶液を大量のメタノール中に滴下し、重合体を沈殿させ、再沈精製した。えられた精製重合体をクロロホルムに溶解させ、キャストして厚さ0.135mmの試験フィルムをえた。この試験フィルムを目視にて観察したところ、眼用レンズ材料として充分な透明性を有するものであった。
【0056】
えられた試験フィルムを用い、酸素透過係数およびガラス転移温度を以下の方法にしたがって測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
(イ)酸素透過係数
理科精機工業(株)製の製科研式フィルム酸素透過率計を用い、35℃の生理食塩水中にて酸素透過係数を測定した。なお、単位は(cm2 /sec)・(mlO2 /(ml×mmHg))である。
【0058】
(ロ)ガラス転移温度
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定装置RSAIIを用い、引っ張りモードで温度分散(周波数1Hz)を測定し、貯蔵弾性率が低下しはじめた際の温度をガラス転移温度とした。
【0059】
比較参考例1
4−トリメチルシリルスチレン1.7317g(10ミリモル)、N−フェニルマレイミド1.7634g(10ミリモル)および重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.015gをアセトン15mlに溶解させてガラス製試験管に注入し、脱気後密封して35℃の恒温水槽中で64時間重合を行なった。こののち、重合体が生成した溶液を大量のジエチルエーテル中に滴下し、重合体を沈殿させ、再沈精製した。えられた精製重合体をクロロホルムに溶解させ、キャストして厚さ0.137mmの試験フィルムをえた。
【0060】
えられた試験フィルムを用い、参考例1と同様にして酸素透過係数およびガラス転移温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示された結果から、実施例1でえられた本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いてえられた参考例1の重合体は、従来のケイ素含有スチレン系モノマーを一重合成分として用いてえられた比較参考例1の重合体と比べて、酸素透過係数が2倍以上といちじるしく大きく、かつガラス転移温度が100℃以上も高いことから、酸素透過性に格段にすぐれ、かつ高硬度を有し、耐熱性にすぐれたものであることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体にすぐれた酸素透過性を付与し、かつガラス転移温度を高めて硬度および耐熱性を向上させるほか、すぐれた透明性、形状安定性、耐久性および高屈折率を付与するという性質を有する化合物であるので、該ケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いてえられた重合体は、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料や、コンタクトレンズ材料、眼内レンズ材料などの眼用レンズ材料などに好適に使用しうるといった効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの 1H−核磁気共鳴スペクトルである。
【図2】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの質量スペクトルである。
【図3】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの赤外線の透過率を示すチャートである。
【産業上の利用分野】
本発明は、ケイ素含有スチルベン誘導体に関する。さらに詳しくは、高硬度、高屈折率を有し、透明性、耐熱性、形状安定性、耐久性、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料や、コンタクトレンズ材料、眼内レンズ材料などの眼用レンズ材料などに好適に使用しうるケイ素含有重合体をうることができるケイ素含有スチルベン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえばコンタクトレンズ材料の酸素透過性を高めるために、シロキサン結合を分子内に有するケイ素含有(メタ)アクリレート系モノマーやケイ素含有スチレン系モノマーを適当な共重合成分と共重合させ、えられた共重合体を用いることが試みられている。
【0003】
しかしながら、さらにコンタクトレンズ材料の酸素透過性を向上せしめるためには、前記共重合体をうる際に、ケイ素含有(メタ)アクリレート系モノマーやケイ素含有スチレン系モノマーを多量に用いなければならず、その結果、えられる共重合体は、そのガラス転移温度がいちじるしく低下したり、それほど上昇しないため、コンタクトレンズ材料としては硬度が不充分な材料となるといった問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、かつガラス転移温度が高く、高硬度を有する重合体をうることができる化合物を提供するべく鋭意研究を重ねた結果、特定のスチルベン誘導体を一重合成分として用いたばあいには、えられる重合体が前記物性にすぐれるほか、さらに透明性、耐熱性、形状安定性、耐久性にもすぐれ、高屈折率も有することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、R 1 およびR2はそれぞれ独立して水素原子または一般式(II):
−SipOp−1(CH3)2p+1 (II)
(式中、pは1〜8の整数を示す)で表わされる基であり、R1およびR2の少なくとも一方が一般式(II)で表わされる基を示す)で表わされるケイ素含有スチルベン誘導体に関する。
【0008】
【作用および実施例】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、前記したように、一般式(I):
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R 1 およびR2はそれぞれ独立して水素原子または一般式(II):
−SipOp−1(CH3)2p+1 (II)
(式中、pは1〜8の整数を示す)で表わされる基であり、R1およびR2の少なくとも一方が一般式(II)で表わされる基を示す)で表わされる化合物である。
【0011】
前記一般式(I)で表わされるケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体にすぐれた酸素透過性を付与し、かつガラス転移温度を高めて硬度および耐熱性を向上させるほか、すぐれた透明性、形状安定性、耐久性および高屈折率を付与するという性質を有する化合物である。
【0012】
前記一般式(I)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水素原子または一般式(II)で表わされる基であるが、かかる一般式(II)において、pが8よりも大きいばあいには、えられる重合体中でのスチルベン骨格由来の単位の相対量が低下するため、耐熱性の向上などの効果が発現されにくくなるので好ましくない。
【0013】
また、前記一般式(I)において、R1 およびR2 の少なくとも一方が前記一般式(II)で表わされる基であるが、えられる重合体の酸素透過性を効果的に向上させるためには、R1 およびR2 がいずれも一般式(II)で表わされる基であることが好ましく、とくにR1 およびR2 がいずれもトリメチルシリル基であることがさらに好ましい。
【0014】
さらに、前記一般式(I)において、R1 および/またはR2 が一般式(II)で表わされる基であるばあい、それぞれのエチレン基(−HC=CH−)に対する結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、ケイ素含有スチルベン誘導体の重合性を考慮すると、R1 およびR2 がいずれもエチレン基に対してパラ位またはメタ位に結合していることが好ましい。
【0015】
前記ケイ素含有スチルベン誘導体の具体例としては、たとえば3−トリメチルシリルスチルベン、4−トリメチルシリルスチルベン、3,3´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、4,3´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン、3−ペンタメチルジシロキサニルスチルベン、4−ペンタメチルジシロキサニルスチルベン、3,3´−ビス(ペンタメチルジシロキサニル)スチルベン、4,4´−ビス(ペンタメチルジシロキサニル)スチルベン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチルベン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチルベン、3,3´−ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリル)スチルベン、4,4´−ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリル)スチルベンなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
なお、スチルベン誘導体には、シス体とトランス体が存在し、本発明においては、そのいずれも用いることができるが、たとえば他の重合成分との重合性の観点からトランス体が好ましい。
【0017】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、たとえば以下のような方法によって製造することができる。
【0018】
たとえば、一般式(I)において、R1 およびR2 がいずれも一般式(II)で表わされる基であるケイ素含有スチルベン誘導体をうる方法としては、つぎのような方法があげられる。
【0019】
まず、一般式(III):
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、X1 およびX2 はそれぞれ独立して塩素原子または臭素原子を示す)で表わされるジハロゲン化ベンゼンと、一般式(IV):
X3 −Sip Op−1 (CH3 )2p+1 (IV)
(式中、X3 は塩素原子または臭素原子、pは1〜8の整数を示す)で表わされる化合物とを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、一般式(V):
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、X1 およびpは前記と同じ)で表わされる化合物を合成する。
【0024】
前記一般式(III)で表わされるジハロゲン化ベンゼンとしては、たとえば1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、4−ブロモクロロベンゼン、3−ブロモクロロベンゼンがあげられる。また前記一般式(IV)で表わされる化合物としては、たとえばトリメチルクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシランなどがあげられる。
【0025】
なお、前記ジハロゲン化ベンゼンおよび一般式(IV)で表わされる化合物の種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえばジハロゲン化ベンゼン1モルに対して、一般式(IV)で表わされる化合物を1〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中でジハロゲン化ベンゼンとマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらに一般式(IV)で表わされる化合物を添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0026】
かくしてえられる一般式(V)で表わされる化合物としては、たとえば4−トリメチルシリルブロモベンゼン、3−トリメチルシリルブロモベンゼン、4−トリメチルシリルクロロベンゼン、3−トリメチルシリルクロロベンゼン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブロモベンゼン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブロモベンゼン、4−トリス(トリメチルシロキシ)シリルクロロベンゼン、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルクロロベンゼンなどがあげられる。
【0027】
つぎに、前記一般式(V)で表わされる化合物と1,2−ジハロゲン化エチレンとを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を合成する。
【0028】
前記1,2−ジハロゲン化エチレンとしては、たとえばトランス−1,2−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,2−ジブロモエチレンのシス体およびトランス体の混合体などがあげられる。
【0029】
なお、前記一般式(V)で表わされる化合物および1,2−ジハロゲン化エチレンの種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえば一般式(V)で表わされる化合物1モルに対して1,2−ジハロゲン化エチレンを0.3〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で一般式(V)で表わされる化合物とマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらに1,2−ジハロゲン化エチレンを添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0030】
さらに、たとえば、一般式(I)において、R1 およびR2 のいずれか一方が一般式(II)で表わされる基であるケイ素含有スチルベン誘導体をうる方法としては、つぎのような方法があげられる。
【0031】
まず、たとえば前記と同様に、ジハロゲン化ベンゼンおよび一般式(IV)で表わされる化合物の種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などを、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整し、一般式(V)で表わされる化合物を合成する。
【0032】
つぎに、前記一般式(V)で表わされる化合物とβ−ハロゲン化スチレンとを、たとえばチッ素雰囲気中でマグネシウムを用いて反応させるグリニャール反応などの通常の反応に供し、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を合成する。
【0033】
前記β−ハロゲン化スチレンとしては、たとえばβ−ブロモスチレンなどがあげられる。
【0034】
また、前記一般式(V)で表わされる化合物およびβ−ハロゲン化スチレンの種類や配合割合、反応温度、反応時間などの条件、用いる溶媒の種類などは、目的とするケイ素含有スチルベン誘導体の種類に応じて適宜調整すればよいが、たとえば一般式(V)で表わされる化合物1モルに対してβ−ハロゲン化スチレンを0.3〜2モル程度、マグネシウムを1〜2モル程度用い、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で一般式(V)で表わされる化合物とマグネシウムとを30〜80℃程度で1〜5時間程度反応させ、さらにβ−ハロゲン化スチレンを添加し、室温程度で1〜72時間程度反応させることが好ましい。
【0035】
かくしてえられる本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いたばあいには、気体透過性、とくに酸素透過性にすぐれ、かつガラス転移温度が高く、高硬度を有し、耐熱性にすぐれるほか、さらに透明性、形状安定性、耐久性にすぐれ、高屈折率を有する重合体をうることができる。
【0036】
なお、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体から重合体をうるには、たとえば該ケイ素含有スチルベン誘導体と、これと共重合可能な他の重合成分とを、その種類や配合割合を適宜調整し、さらに架橋剤や重合開始剤を用いるなどして、通常の塊状重合法や溶液重合法などによって重合させればよい。
【0037】
このように、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体に種々のすぐれた物性を付与しうるものであるので、かかる重合体は、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料、眼用レンズ材料などに好適に使用することができる。
【0038】
つぎに、本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
実施例1(トランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの合成)撹拌モータ、滴下ロート、ジムロート冷却管および温度計を取り付けた2リットル容の4つ口丸底フラスコに、マグネシウム36.47g(1.5モル)を入れ、1,4−ジブロモベンゼン235.91g(1.0モル)をジエチルエーテル750mlに溶解させたものを、チッ素雰囲気中でマグネシウムにゆっくりと滴下した。滴下終了後、前記2リットル容の4つ口丸底フラスコを約40℃に加熱し、さらに1時間反応させた。
【0040】
こののち、過剰のマグネシウムを取り除き、トリメチルクロロシラン149.3g(1.37モル)をジエチルエーテル150mlに溶解させた溶液を、前記2リットル容の4つ口丸底フラスコ中に滴下し、滴下終了後、室温で16時間攪拌した。
【0041】
折出した塩を濾過して取り除き、氷冷しながら濾液に蒸留水200mlをゆっくりと滴下し、未反応のグリニャール試薬およびトリメチルクロロシランを失活させた。こののち、有機層を取り出し、蒸留水500mlで3回洗浄した。該有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥したのち、溶媒を留去した。えられた液体を蒸留により精製し、4−トリメチルシリルブロモベンゼン43.24g(沸点:118.6〜126.0℃/20mmHg)をえた。
【0042】
つぎに、撹拌モータ、滴下ロート、ジムロート冷却管および温度計を取り付けた200ml容の4つ口丸底フラスコに、マグネシウム4.59g(0.189モル)を入れ、えられた4−トリメチルシリルブロモベンゼン43.24g(0.189モル)をジエチルエーテル90mlに溶解させたものを、チッ素雰囲気中でマグネシウムにゆっくりと滴下した。滴下終了後、前記200ml容の4つ口丸底フラスコを約40℃に加熱し、さらに1時間反応させた。
【0043】
こののち、トランス−1,2−ジクロロエチレン7.27g(0.075モル)をジエチルエーテル10mlに溶解させたものを、前記200ml容の4つ口丸底フラスコ中に滴下し、室温で16時間攪拌した。
【0044】
析出した塩を濾過して取り除き、濾液を蒸留水200mlで3回洗浄した。ついで、取り出した有機層を無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥したのち、溶媒を留去し、粗生成物30.72gをえた。
【0045】
えられた粗生成物をエタノール中で再結晶し、淡黄色結晶5.18gをえた(収率:3.2%)。
【0046】
えられた淡黄色結晶を四塩化炭素に溶解させ、日本電子(株)製、JNM−PMX60を用いて 1H−核磁気共鳴スペクトル(60MHz)を測定した。その結果を図1に示す。
【0047】
図1に示された結果から、0.26ppm付近に−Si(CH3 )3 に帰属したシグナル(図1中、aのピーク)、7.07ppm付近に−HC=CH−に帰属したシグナル(図1中、bのピーク)、7.45ppm付近に芳香核水素に帰属したシグナル(図1中、cのピーク)がそれぞれ認められる。
【0048】
また、ヒューレット・パッカード社製、GC−MS(5890IIガスクロマトグラフ+5971A 質量検出器)を用いて質量スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。
【0049】
図2に示された結果から、分子イオンピークが324にあることが認められる。
【0050】
さらに、日本分光工業(株)製、FT/IR−8300を用い、KBr錠剤法にて赤外吸収スペクトルを測定した。その結果を赤外線の透過率(%)として図3に示す。
【0051】
図3に示された結果から、3080cm−1、3100cm−1付近に芳香核のC−Hに基づく吸収、2900cm−1、2950cm−1付近にエチレン基のC−Hに基づく吸収、840cm−1付近にSi−Cに基づく吸収がそれぞれ認められる。
【0052】
これらの結果から、えられた淡黄色結晶は、式:
【0053】
【化6】
【0054】
で表わされるトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンであることが確認された。
【0055】
参考例1(重合体の調製)
実施例1でえられたトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベン0.6492g(2ミリモル)、N−フェニルマレイミド0.363g(2ミリモル)および重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.003gをクロロホルム3mlに溶解させてガラス製試験管に注入し、脱気後密閉して35℃の恒温水槽中で64時間重合を行なった。こののち、重合体が生成した溶液を大量のメタノール中に滴下し、重合体を沈殿させ、再沈精製した。えられた精製重合体をクロロホルムに溶解させ、キャストして厚さ0.135mmの試験フィルムをえた。この試験フィルムを目視にて観察したところ、眼用レンズ材料として充分な透明性を有するものであった。
【0056】
えられた試験フィルムを用い、酸素透過係数およびガラス転移温度を以下の方法にしたがって測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
(イ)酸素透過係数
理科精機工業(株)製の製科研式フィルム酸素透過率計を用い、35℃の生理食塩水中にて酸素透過係数を測定した。なお、単位は(cm2 /sec)・(mlO2 /(ml×mmHg))である。
【0058】
(ロ)ガラス転移温度
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定装置RSAIIを用い、引っ張りモードで温度分散(周波数1Hz)を測定し、貯蔵弾性率が低下しはじめた際の温度をガラス転移温度とした。
【0059】
比較参考例1
4−トリメチルシリルスチレン1.7317g(10ミリモル)、N−フェニルマレイミド1.7634g(10ミリモル)および重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.015gをアセトン15mlに溶解させてガラス製試験管に注入し、脱気後密封して35℃の恒温水槽中で64時間重合を行なった。こののち、重合体が生成した溶液を大量のジエチルエーテル中に滴下し、重合体を沈殿させ、再沈精製した。えられた精製重合体をクロロホルムに溶解させ、キャストして厚さ0.137mmの試験フィルムをえた。
【0060】
えられた試験フィルムを用い、参考例1と同様にして酸素透過係数およびガラス転移温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示された結果から、実施例1でえられた本発明のケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いてえられた参考例1の重合体は、従来のケイ素含有スチレン系モノマーを一重合成分として用いてえられた比較参考例1の重合体と比べて、酸素透過係数が2倍以上といちじるしく大きく、かつガラス転移温度が100℃以上も高いことから、酸素透過性に格段にすぐれ、かつ高硬度を有し、耐熱性にすぐれたものであることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明のケイ素含有スチルベン誘導体は、えられる重合体にすぐれた酸素透過性を付与し、かつガラス転移温度を高めて硬度および耐熱性を向上させるほか、すぐれた透明性、形状安定性、耐久性および高屈折率を付与するという性質を有する化合物であるので、該ケイ素含有スチルベン誘導体を一重合成分として用いてえられた重合体は、たとえば酸素富化膜、耐熱性材料や、コンタクトレンズ材料、眼内レンズ材料などの眼用レンズ材料などに好適に使用しうるといった効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの 1H−核磁気共鳴スペクトルである。
【図2】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの質量スペクトルである。
【図3】実施例1でえられた本発明のトランス−4,4´−ビス(トリメチルシリル)スチルベンの赤外線の透過率を示すチャートである。
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