JP3590854B2 - 担持触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上に利用分野】
本発明は、金属等の触媒活性を有する超微粒子を分散した担持触媒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、不均一触媒を使用する接触反応では触媒表面で反応が進行するから、この方面の研究者は試行錯誤的に表面活性の大きい触媒を探索している。この場合、単位表面積当りの活性物質の量及び質が同じなら表面積が広いほど活性が高くなるので、触媒物質の担体には表面積の大きいシリカやアルミナのような無機酸化物ゲルを使う場合が多い。そして、前記無機酸化物ゲルの一般的製造方法は、無機塩の加水分解で得られた無機酸化物ゲルを焼成・脱水する方法であるが、この方法では原料塩や加水分解試薬に由来するナトリウム等の無機イオンが不可避的に微量混入し、これが触媒の活性や物性に影響を及ぼす場合も少なくない。また、前記の方法で得られた無機酸化物ゲルに含浸法で触媒物質を担持させる場合が多いが、該方法で表面の均質な触媒を得るのは至難である。さらに、従来法では金属担持量で触媒金属の粒径が定まってしまうような問題も有り、金属担持量と無関係に粒径を設定できる技術が求められている。
【0003】
前記した表面の不均質が不均一触媒の理論的探索を困難にしており、これが触媒開発や触媒理論の発展を妨げているから、均質で高活性な触媒の開発が昔から触媒研究者の課題であった。しかも、分析技術の発展で均質と思われていた触媒表面の多くが不均質なことも分り、該触媒の開発は進んでいない。この一因は、触媒物質を含浸法で担体に担持する際に溶液から析出する触媒物質の結晶が、担体表面の細孔形状や大きさ及び結晶析出条件で大きく変るためと云われる。
10年位前から、均質な触媒の調製方法としてアルコキシド法が注目されている。この方法による金属担持触媒の製造は、グリコール等の配位能を持つ親水性有機溶媒に金属塩を溶解し、該溶液にアルミニウムやケイ素等の金属の可溶性アルコキシドを加えて均一液としてから、該アルコキシドを加水分解・熟成して対応する金属酸化物コロイドに変え、該生成物を乾燥・焼成後に水素還元することで行われる。該方法では金属酸化物コロイドの乾燥・焼成で形成されたゲルが担体となり、これに金属塩の水素還元で得られた金属が担持されて触媒となる。
【0004】
アルコキシド法による金属担持触媒は、研究の進展に伴って多数の特許や報文が発表されている。例えば、特公昭60−59215号公報にはルテニウムと銅を担持したアルコキシド法シリカ触媒によるベンゼンの部分水素化法が、特公昭63−45620号公報には各種の金属担持アルコキシド法シリカ触媒が、特公昭63−45621号公報には各種の金属担持アルコキシド法アルミナ触媒が、特公昭63−45622号公報には各種の金属担持アルコキシド法チタニア触媒が、特公昭63−45623号公報には各種の金属担持アルコキシド法ジルコニア触媒が開示されている。また、上野らはJ.Chem.Soc. Faraday Trans.I 79 127(1983)等に、水上らはJ.Chem.Tech.Biotechnol.36 236(1986)等にアルコキシド法触媒に関する研究報告を発表している。
【0005】
前記のように金属担持アルコキシド法触媒は多数発表されているが、該触媒は金属塩溶液に金属アルコキシドを溶解してから、該アルコキシドを加水分解して調製されるので、金属塩を金属に転換する還元工程が必要である。この還元工程は、金属酸化物中に分散している金属塩を100℃以上で水素還元する等の高温工程が必要な上に、アルコキシドの加水分解・乾燥で得られた粒子中の金属塩は、アルコキシドの加水分解で生成した金属酸化物ゲルに吸着したり、該金属酸化物ゲルが保有する構造水中に溶解した状態等で存在するから、還元工程で形成される金属超微粒子が不均質になることが避けられない。すなわち、アルコキシド法で充分均質な金属塩の分散体を形成させても、金属塩を金属に還元する過程で金属粒径が不均質になってしまう。また、金属塩は一般に金属より化学的活性が強いから、担体となる金属酸化物と金属塩との間に結合が形成される場合もあり、そのために金属塩の還元で触媒活性を持つ金属を形成させた場合に、該金属固有の性質が損なわれたり、異質の活性が付加されたりする場合もある。
【0006】
一方、超微粒子製造法もコロイド化学の分野等で以前から研究されており、例えば最近急速に進歩しているマイクロエマルジョンを原料とする方法では、直径数Å〜数10Åの金属超微粒子や金属化合物超微粒子の作製例が発表されている〔USP 4,425,261(1984);Colloids Surface 5 209(1982)等〕。該方法は、超微粒子原料の金属塩水溶液と界面活性剤と油から、油中に所望量の金属塩を含む所望の大きさの液滴を形成させ、該金属塩をヒドラジンや水素等で還元して金属超微粒子を得る方法である。
金属超微粒子は今後の機能材料として期待されており、我が国でもその製造方法等が国家プロジェクトとして検討され、金属蒸気から金属超微粒子を得る方法等が発表されている。また、超微粒子の製造方法や物性等については化学総説No.48(日本化学会編、1985年発行)に詳記されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のアルコキシド法による触媒の製造方法に見られる前記の諸問題を解決し、超微粒子が担持されている触媒性能に優れた担持触媒の製造方法を提供することをその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、あらかじめ形成した触媒活性を有する超微粒子の分散液中で、担体原料となる金属アルコキシドを撹拌下に水の存在下で加水分解し、コロイド状金属酸化物粒子を生成させる工程を含むことを特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、超微粒子の分散液が水溶性金属化合物を含む水溶液が超微粒子状の液滴として存在するマイクロエマルジョンを原料とし、該液滴中に含まれている水溶性金属化合物を不溶化して作られたものであることを特徴とする前記の担持触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、水溶性金属化合物の不溶化が還元反応によるものであることを特徴とする前記の担持触媒の製造方法が提供される。
【0009】
本発明において、担持触媒の調製原料となる超微粒子分散液は、触媒活性を持つ超微粒子を分散媒に均一分散した液である。分散媒となる液体は、分散させる超微粒子と反応したり該粒子を溶解したりせず、使用する金属アルコキシドを溶解し得る有機溶媒、又は該溶媒と水との混合液が使われる。また、該分散液には超微粒子を安定に分散させるために、界面活性剤を分散液重量の0.5〜40%、好ましくは4〜20%含有させることができる。
分散液中の超微粒子含有率は、一般に0.0001〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。また、分散液は所定量の超微粒子と分散媒と界面活性剤とを混合し、ジェットミルやボールミル等の強力な分散機を用いて分散媒中に超微粒子を分散させることによって得ることができる。
【0010】
触媒活性を有する超微粒子としては、触媒能を持つものであればどのようなものでもよく、このようなものには、遷移金属、特に、V族〜VIII族の遷移金属の中から選ばれる金属、金属酸化物や金属硫化物等の金属化合物、或いは不溶性金属塩等の種々の超微粒子を使うことができる。また、前記の超微粒子は単独でも二種以上混合して使っても良く、二種以上混合使用の例としては、超微粒子状銅と超微粒子状ルテニウムの混合物を含有するベンゼンの部分水素化触媒の例等が挙げられる。
【0011】
本発明で使われる超微粒子は、▲1▼水溶性化合物を含むマイクロエマルジョンを還元処理や酸化処理する方法、▲2▼蒸気を急冷する方法、▲3▼気相熱分解や気相酸化等の気相反応で形成させる方法、等の種々の方法で製造することができる。
前記製造方法のうち、▲2▼及び▲3▼の方法で得られた超微粒子は、これを分散媒に分散させることによって分散液を得ることができる。一方、▲1▼の方法では超微粒子分散液の形態で超微粒子が得られるから、これをそのまま本発明で用いる超微粒子含有分散液として使うことができるし、必要に応じて有機溶媒や水を加えて本発明の超微粒子含有分散液として使うことも可能である。
【0012】
超微粒子分散液の分散媒となる有機溶媒を例示すると、シクロヘキサン、シクロヘプタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の比較的長鎖の脂肪族一価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも混合して使っても良い。
超微粒子分散液に用いられる界面活性剤は特に限定されず、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤を用いることができる。その具体例としては、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等が例示される。
【0013】
本発明で製造される担持触媒は、金属や金属酸化物等の触媒活性を有する超微粒子を、金属アルコキシドの加水分解で得られる金属酸化物コロイド粒子に担持させた触媒である。また、該触媒は広範囲にわたる接触反応の分野で従来法で製造される触媒より高性能な触媒である。例えば、アルカンの酸化で部分酸化生成物を製造する際に使われるバナジウム、リン及び酸素を含有する担持触媒では、従来法で製造される触媒より大幅に選択性が高い触媒を製造することができる。また、一酸化炭素の部分水素化で炭素数2以上の化合物を製造する際に使われるロジウム触媒の場合も、従来法で製造される触媒より大幅に選択性が高い触媒を製造することができる。さらに、炭化水素の完全酸化用白金触媒では従来法で製造される触媒より大幅に高活性の触媒を製造することができるから、今後の発展が期待されている燃焼触媒の製造に好適な触媒の製造方法である。
【0014】
前記のように、本発明では多岐にわたる接触反応の分野で、従来法より高選択性又は高活性な上に長寿命な触媒を提供できるから、触媒製造原料が高価な貴金属担持触媒等の製造方法として好ましい方法である。また、本発明で製造される触媒の大部分は金属元素を含む触媒であり、特に金属担持触媒の製造に好適な触媒の製造方法である。そこで、該触媒の製造原料となる金属元素を含む超微粒子分散液の製造方法について、詳細かつ具体的に記述することにする。
前記の超微粒子分散液は、金属イオンを含むマイクロエマルジョン溶液を還元することで得られる。このマイクロエマルジョンは、所望の金属塩を溶解した水溶液と油性液体で形成されるが、本発明では特に外部水相のない一相系油中水滴型マイクロエマルジョンを使うのが望ましい。また、金属塩は水溶性で還元容易な塩であれば限定されないが、特に塩化物や硝酸塩が好ましい。
【0015】
前記マイクロエマルジョンに含有させる金属塩を具体的に例示すると、塩化白金酸塩やテトラアンミン白金塩等の白金塩;塩化パラジウムやテトラアンミンジクロルパラジウム等のパラジウム塩;塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサアンミンロジウム等のロジウム塩;塩化ルテニウムやヘキサクロルルテニウム酸塩等のルテニウム塩;塩化イリジウムやヘキサクロルイリジウム酸塩等のイリジウム塩;塩化オスミウムやヘキサクロルオスミウム酸塩等のオスミウム塩;塩化金等の金塩;塩化銅や硝酸銅等の銅塩;塩化鉄や硝酸鉄等の鉄塩;塩化ニッケルや硝酸ニッケル等のニッケル塩;塩化コバルトや硝酸コバルト等のコバルト塩;硝酸銀等の銀塩;塩化モリブデンやモリブデン酸塩等のモリブデン塩;塩化レニウムやヘキサクロルレニウム酸塩等のレニウム塩;塩化タングステンやタングステン酸塩等のタングステン塩;塩化クロムや硝酸クロム等のクロム塩;塩化マンガンや硝酸マンガン等のマンガン塩等である。
【0016】
前記マイクロエマルジョンの形成に用いられる油性液体は、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ベンゼン、キシレン、ブチルベンゼン、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジブチルフタレート、オクチル酸ブチル、メチルエチルケトン等であるが、シクロヘキサンのような低粘度の液体が好ましい。また、マイクロエマルジョン形成に使われる界面活性剤は、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル(NP−5)、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等であり、非イオン性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤が望ましい。
マイクロエマルジョン形成の際の金属塩水溶液と油性液体の混合比、エマルジョン中に含まれる水と界面活性剤の混合比及び水溶液中の金属塩濃度は、形成される金属元素を含む超微粒子に所望される粒径に応じて適当に定めればよい。そして、金属塩水溶液に対する油性液体の比は、容量比で4以上、好ましくは10以上とするのが良い。
【0017】
前記のマイクロエマルジョンは、界面活性剤添加量が多いほど液滴が小さくなり、液滴一個内の金属分子数が少ないほど得られる金属元素を含む超微粒子が小さくなる傾向がある。従って、界面活性剤はエマルジョン中の水の10モル%以上、好ましくは40モル%以上添加するのが良い。また、水溶液中の金属塩濃度を0.05モル/リットル以下、好ましくは0.02モル/リットル以下として液滴一個内の金属分子数を10個以下、好ましくは2個以下にするのが良い。
以上の説明からも分るように、界面活性剤及び油性液体の使用量を大量にして水溶液中の金属塩濃度を小さくすれば、形成される金属元素を含む超微粒子は小さくなる。金属元素を含む超微粒子の粒径は、所望する触媒活性に応じて適宜定めれば良い。なお、本発明者らの実験によると、得られる金属元素を含む超微粒子の大きさは、エマルジョン中の界面活性剤と水の比から求められる液滴サイズと金属塩濃度から計算される値の1〜3倍になる。
マイクロエマルジョンは、一相系油中水滴型エマルジョンの他、二相系のマイクロエマルジョンや、油中に金属塩を含む水中油滴型マイクロエマルジョンであることができる。
【0018】
マイクロエマルジョン中での金属塩の還元は、ヒドラジン、水素、水素化ホウ素ナトリウム等を還元剤とする化学的方法のほか、紫外線やγ線の照射法でも可能であるが、ヒドラジンで行うのが最も容易である。ヒドラジン還元は、液温を10〜40℃、好ましくは20〜30℃に保ち、理論量の1モル倍以上、好ましくは2〜10モル倍のヒドラジンで行われる。この場合、ヒドラジンは1水和物の形で良く撹拌されているマイクロエマルジョン中に全量を迅速に添加するのが良い。また、ヒドラジン還元では反応時に窒素を生成するが、これは気相や水中に逃散して後続のアルコキシド加水分解に影響することはない。なお、塩化ロジウムのようにヒドラジン還元時に金属とヒドラジンの化合物から成る超微粒子を形成する場合もあるが、このような場合は該超微粒子を担持した触媒を製造してから、これを水素還元して前記化合物を超微粒子状金属に変えれば良い。
前記還元法のうちコスト的に有利なのは水素還元法である。この方法は、あらかじめ溶液中の酸素を窒素等の不活性ガスで充分除いてから、撹拌下に水素ガスを溶液中に通す等の方法で行われる。なお、最も均一な金属超微粒子が得られる還元法は紫外線やγ線の照射法であるが、この照射法では装置が大きくなる上に溶媒の選択面等にも難点があり、余り好ましい方法ではない。
【0019】
本発明によれば、金属塩水溶液が超微粒子状の液滴として存在しているマイクロエマルジョンを原料として、金属酸化物担持触媒を製造することができる。すなわち、加水分解すると水不溶の水酸化物に転換することができる金属塩の水溶液を使って、前記した金属超微粒子分散液製造時と同じ方法でマイクロエマルジョン溶液を作製し、該溶液を良く撹拌しながら室温でアンモニア水を添加する等の方法で該金属塩を水酸化物に変えてから、該水酸化物の超微粒子が分散されている分散液中で金属アルコキシドを加水分解し、得られた生成物を焼成すれば超微粒子状の金属酸化物を担持した触媒が形成される。そして、この場合のマイクロエマルジョン溶液製造原料及び製造条件は、前記した金属超微粒子分散液製造原料用のマイクロエマルジョン製造時と同じで良い。また、水溶性金属塩を水不溶の水酸化物に変えるためのpH調整は市販濃アンモニア水等で行えば良く、pHを9〜10とすれば水不溶の水酸化物が形成される。なお、この場合の水不溶性水酸化物製造原料に2種以上の水溶性金属塩を混合使用しても良く、この場合は複数の金属酸化物超微粒子を担持した触媒を得ることができる。さらに、水溶性金属塩と水溶性非金属化合物を併用することも可能であり、併用法によってリンや硫黄等の非金属を含有する金属酸化物超微粒子担持触媒が得られる。
【0020】
本発明では、前記のようにして得られた超微粒子分散液中で金属アルコキシドを加水分解して超微粒子を担持した金属酸化物コロイドを得、これを乾燥・成形後に必要に応じて焼成したり水素還元したりして担持触媒を製造する。金属アルコキシドとしては、その金属酸化物が触媒担体に使えれるものであればよく、特に限定されない。例えば、表面積が大きいシリカを形成するシリコンアルコキシドや、アルミナを形成するアルミニウムアルコキシドが好ましく使われるし、チタニアを形成するチタニウムアルコキシドやジルコニアを形成するジルコニウムアルコキシドも使える。さらに、マグネシア、ボリア、ニオビア、酸化ランタン等を与える金属アルコキシドも使用可能である。また、金属アルコキシドは単独でも2種類以上混合して使っても良く、異種の金属から成る金属アルコキシド混合物を加水分解すると、シリカ−アルミナやシリカ−アルミナ−マグネシアのような複合酸化物が得られる。なお、金属アルコキシドの加水分解速度はその種類で大きく違う場合が多いから、複合酸化物を得る場合には加水分解触媒を添加し、その加水分解速度を同一程度にするのがよい。
【0021】
本発明において、金属酸化物コロイドの製造原料に使われる金属アルコキシドを具体的に例示すると以下のとおりである。
シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシド、シリコンテトラブトキシド等のシリコンアルコキシド;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムブトキシド等のチタニウムアルコキシド;ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウムアルコキシド;マグネシウムジブトキシド、ペンタブトキシニオブ、トリブトキシボラン、トリブトキシランタンその他。
これらの金属アルコキシドは、所望する金属酸化物コロイドの種類によって適宜選択して使えば良い。
【0022】
超微粒子分散液中での金属アルコキシドの加水分解反応において、その金属アルコキシドの加水分解反応に必要な水は、あらかじめ超微粒子分散液中に存在させておくこともできるし、金属アルコキシドの加水分解反応に際し、超微粒子分散液中に添加することもできる。
また、反応に必要な水は、反応開始時に、その全量を超微粒子分散液中に存在させても良いし、反応の進行と共に徐々に加えてもよい。金属アルコキシドの加水分解反応に際して用いる全水量は、金属アルコキシドの加水分解反応に必要とされる理論量の1〜10モル倍、好ましくは1〜3モル倍である。
金属アルコキシドの種類によっては加水分解速度が遅いために、触媒の使用が好ましい場合もある。この場合は、加水分解用の水として、0.01〜1重量%程度のアンモニア水や0.01〜1重量%程度の希硝酸を含む水を用いればよい。加水分解速度が遅い金属アルコキシドとしては、シリコンテトラエトキシドやシリコンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0023】
加水分解温度は、金属アルコキシドの種類によっても異なるが一般に20〜60℃、好ましくは30〜50℃である。分散液に水を加える場合、その添加水は反応開始から0〜8時間、好ましくは1〜2時間の間に分割して加えるのが望ましい。また、水の添加終了後0〜12時間、好ましくは1〜8時間攪拌下に20〜60℃、好ましくは30〜50℃に保って加水分解反応を完結させ、その後0〜3時間、好ましくは1〜2時間前記温度で熟成させるのが良い。この加水分解反応においては、反応が進んでコロイド状生成物が形成される。
加水分解反応時の反応液のpHは、金属アルコキシドの種類等によっても異なるが、一般的には3〜11、好ましくは7〜11、より好ましくは8〜10とするのが良い。
【0024】
本発明により、超微粒子分散液中で金属アルコキシドを加水分解させる場合、分散液全体のゲル状化(高粘度化)を回避し、金属アルコキシドの加水分解により生成する金属酸化物をコロイド粒子状(沈澱物状)で存在させることが重要である。分散液全体がゲル化すると、超微粒子の表面を金属酸化物が覆ってしまうために超微粒子による触媒効果の発現が阻害され、そのためにBET表面積が1000m2/g以上もあるのに触媒活性が認められない場合もある。従って、分散液全体のゲル状化を回避するのが好ましいが、このためには金属アルコキシドの加水分解反応をアルカリ性水溶液で行えば良い。
【0025】
以上のようにして超微粒子を担持した金属酸化物コロイドが形成されるが、このものは、熟成期間が終了すると反応器内に沈澱粒子状で存在する。この生成物は、これを固液分離して該沈殿を母液と濾別してから、アルコール等で洗浄して界面活性剤等の不純物を除き、次いで常圧又は減圧下に加熱・乾燥して水や含有する油性液体等を除くことにより担持触媒を得ることができる。このようにして得られた超微粒子を均一担持した金属酸化物は、所望の粒度に粉砕後に必要であれば所望の雰囲気下に焼成し、或いは水素還元等の処理後に所望の形に成形して触媒とすれば良い。なお、アルコール洗浄等で精製したペースト状の金属酸化物コロイドを、ハニカム状等に加工してから乾燥して触媒に使用しても良い。
【0026】
本発明によれば、粒径5〜200Åの超微粒子を表面又は全体に均一担持した金属酸化物が得られる。そして、金属アルコキシドの加水分解や熟成は低温で行われるから、加水分解中に該超微粒子が熱変質することはない。また、生成物の乾燥も100℃以下の減圧下で行えば良いから、該生成物では原料の超微粒子が熱凝集する等の問題がなく、原料の超微粒子と同一粒径の粒子が均質分散された生成物が得られる。従って、該生成物を成形して得られる担持触媒は従来のアルコキシド法触媒や従来の超微粒子担持触媒と異なっている。すなわち、従来のアルコキシド法金属担持触媒は金属塩を金属酸化物ゲル中に均一分散した前駆体から得られるから、金属塩を金属に変える際の加熱や化学反応で金属粒径が不均質になる等の問題がある。また、通常の含浸法で担体と水溶性塩から担持触媒を製造する際には、担体の表面状態等で粒径分布や粒子間距離が大きく変るが、本発明の場合は触媒が粒子間凝集の起らない温度で製造されるから、シャープな粒径分布を持った非凝集の超微粒子を表面に有する担持触媒を得ることができる。
【0027】
以上のようにして形成された触媒は、アルコキシドの加水分解で形成された金属酸化物表面に超微粒子が独立して強く結合しているために、超微粒子の安定性は非常に良く、金属超微粒子担持触媒ではその金属超微粒子が高温下でも凝集しない。従って、触媒が銅やパラジウムのように凝集し易い金属でも独立粒子同志が凝集せず、活性低下の主因となる凝集(シンタリング)が起こらないために長期間にわたって高い活性の維持が可能である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例で更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例で限定されるものではない。なお、以下の部及び%は重量基準である。
【0029】
実施例1
内容積300mlのビーカーに、塩化白金酸6水和物H2PtCl6・6H2O1部と蒸留水15部より成る均一水溶液を入れ、これにシクロヘキサン190部とポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(鎖長5;非イオン界面活性剤)69部を加え、室温下にマグネチックスターラーで撹拌すると、100g中に0.14gの白金イオンを含むマイクロエマルジョンがすぐに形成された。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、界面活性剤量と水の量から液滴直径は平均22Åと計算され、この値と白金イオンの水中濃度から液滴1個中に含まれる白金イオン数は平均0.5個と計算される。
このマイクロエマルジョンに、市販のヒドラジン1水和物N2H4・H2O0.6部を加え、室温下に30分間良く撹拌して白金イオンを白金超微粒子に還元した。このようにして得られた白金超微粒子分散液の白金粒径は、液滴の大きさ等から直径約40Å程度と推定される。
【0030】
前記の白金超微粒子分散液275部に蒸留水10部を加え、均一になるまで良く撹拌してから28%アンモニア水で液のpHを8.5〜9.5に調整した。この液に67部のシリコンテトラエトキシドを良く溶かしてから、これを湯浴で35〜40℃に加熱しながら2時間マグネチックスターラーで撹拌を継続した。撹拌していると、加水分解反応でシリカコロイドが形成されるために液が濁ってくるから、加水分解反応を完結させるために更に蒸留水を20部添加して撹拌を2時間継続した。反応開始後4時間で加熱を中止し、ビーカーの内容物を室温まで冷却してから母液を濾別し、得られた沈殿を200部のエタノールで3回洗浄した。この精製沈殿を80℃で12時間乾燥してから、空気流通下に500℃で4時間焼成すると、3.0%の白金を含むシリカゲル12部が得られ、原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量の65%で、塩化白金酸からの白金収量は定量的であった。また、ここに得られた白金担持シリカゲルの粒径は、電子顕微鏡による観察の結果では充分に均一であり、全部がほぼ0.03μmの粒径を持っていた。
【0031】
以上のようにして調製した3%白金−シリカゲル触媒の性能を評価するため、該触媒を錠剤成形器で成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成型触媒2gを内径17mmの反応管に装填してプロパンの燃焼反応性を調べた。すなわち、温度幅1℃以内で温度制御の可能な電気炉中に反応管を設置し、この反応管にプロパン:酸素:窒素=0.5:10:89.5(容量比)の混合ガスを150ml/分の速度で送入した。そして、触媒層温度を150℃、200℃、及び250℃とした場合のプロパン反応率から触媒能を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
比較のために、富士ダヴィソン社製シリカゲルCariact−50に3.0%の白金を担持させた粒径16〜24メッシュの触媒を調製し、実施例1と全く同じ評価実験を行い、その結果を表1に併記した。なお、比較例1の触媒は塩素による反応阻害が無いように、原料の白金塩としてジアミン亜硝酸白金を使用し、常法によって前記化合物をシリカゲルに担持させてから80℃で8時間乾燥し、これを水素気流中450℃で2時間還元して調製した触媒である。
【0033】
【表1】
表1から、実施例の触媒は比較例の触媒より高活性なことが明らかである。従って、白金を触媒物質とするプロパンの燃焼触媒では、本発明の超微粒子分散型アルコキシド法で調製した触媒は従来の白金担持触媒より高活性と云える。
【0034】
実施例2
内容積300mlのビーカーに、塩化ロジウム3水塩RhCl3・3H2Oが1部と蒸留水が10部より成る均一液を入れ、これにシクロヘキサン127部と実施例1で使用したものと同じ界面活性剤46部を加え、室温下にマグネチックスターラーで撹拌すると、100g中にロジウムイオン0.21gを含むマイクロエマルジョンがすぐに形成された。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、液滴の直径は22Å(平均値)と計算され、一つの液滴中に含まれるロジウムイオンの数は平均1.3個と計算される。
このマイクロエマルジョンに市販のヒドラジン1水和物N2H4・H2Oを0.6部加え、室温下に30分間良く撹拌してロジウムイオンをロジウムを含有する超微粒子に還元した。このようにして得られたロジウム含有超微粒子分散液のロジウム含有粒子の粒径は、液滴の大きさ及び液滴中のロジウムイオン数から直径約30Åと推定される。
【0035】
前記のロジウム含有超微粒子分散液184部に蒸留水15部を加え、均一になるまで撹拌後に28%アンモニア水で液のpHを8.5〜9.5とした。この液に110部のシリコンテトラエトキシドを溶かしてから、これを湯浴で35〜40℃に加熱しながらマグネチックスターラーで2時間撹拌を続けた。撹拌していると、加水分解反応でシリカコロイドが形成されて液が濁ってくるから、更にイオン交換水を30部加えて撹拌を2時間継続し、加水分解反応を完結させた。次に、ビーカー内容物を室温まで冷却後に母液を濾別し、得られた沈澱を200部のエタノールで3回洗浄した。該精製沈澱を80℃で12時間乾燥後に空気流通下500℃で4時間焼成し、さらに水素流通下に450℃で2時間焼成すると、2.0%のロジウムを含む粒径0.2〜0.4μmのシリカゲル19部が得られた。原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量の62%で、塩化ロジウムからのロジウム収量は定量的であった。
【0036】
以上のようにして調製した2%ロジウム−シリカゲル触媒の性能を評価するために、該触媒を錠剤成形器によって成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成型触媒を使用する一酸化炭素の水素化反応を行った。すなわち、実施例1と同じ反応器を使って2gの触媒を使用する圧力40kg/cm2の気相流通反応を行い、反応温度と反応成績の関係について調べ表2の結果を得た。なお、この評価実験では原料ガスに、一酸化炭素:水素:アルゴン=3:6:1(モル比)の混合ガスを使用し、GHSV6000/hrで行った。ここでGHSVとは気体空間速度の略で、1時間に単位容量の触媒上を通過する標準状態の原料ガス容量を意味している。また、この評価実験で使用した白金−シリカ触媒のBET表面積は61m2/gであった。
【0037】
実施例3
ロジウム含有超微粒子分散液へのシリコンテトラエトキシド添加量を変えた以外は実施例2と同じ方法で4.5%ロジウム−シリカゲル触媒を作製し、実施例2と同じ方法で粒径16〜24メッシュの成型触媒としてから、実施例2と同じ評価試験を行った結果を表2に示す。この評価試験は実施例2と同一組成の原料ガスを使い、実施例2と同一圧力で行ったがGHSVは2000/hrとした。
【0038】
比較例2
比較のために、富士ダヴィソン社製シリカゲルCariact−50に含浸法で2.0%のロジウムを担持させた実施例2と同一粒径の触媒を調製し、GHSVを3000/hrとした以外は実施例2と同じ評価試験を行い、表2に示す結果を得た。なお、本比較例の触媒は実施例2の場合と同じ塩化ロジウムを使って作製したものであり、触媒のBET表面積は60m2/gであった。
【0039】
比較例3
実施例2で製造したロジウム含有超微粒子分散液184部に蒸留水15部を加え、均一になるまで撹拌後に1規定の硝酸で液のpHを3〜4とし、この溶液に71部のシリコンテトラエトキシドを溶解してから、実施例2と同じ方法でシリコンテトラエトキシドの加水分解反応を行った。しかし、この場合は実施例2の場合と異なって沈殿が生成せず、反応器内容物はゼリー状の透明固体となった。この固形物を室温まで冷却後に粉砕して反応器から取り出し、実施例2の場合と同じ方法で良く洗浄後に実施例2の場合と同じ条件で乾燥・空気焼成及び水素還元を行ったところ、2.0%のロジウムを含むシリカゲルが19部得られ、シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収量、及び塩化ロジウムからのロジウム収量はほぼ定量的であった。また、得られた触媒はやや透明感のあるガラス状固体で、BET表面積1020m2/gであった。この触媒を良く粉砕してから実施例2と同じ方法で成形し、GHSVを1000/hrとした以外は実施例2と同じ方法で、一酸化炭素の水素化反応を行った結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から、実施例の触媒は比較例の触媒より大幅に活性が高いことが明らかであるが、本発明の方法と類似の方法で製造される比較例3の触媒が、含浸法で製造される触媒(比較例2の触媒)より活性が低いことは興味深い。また、実施例の触媒ではロジウム担持量の多い実施例3の触媒が優れており、該触媒を使った実験で得られるSTY248.3g/l・hrは、一酸化炭素の水素化による炭素数2以上の含酸素有機化合物製造方法として、現在までに得られているデータの中で最高値である。なお、表2から一酸化炭素を水素化するロジウム触媒における活性差は、表面積の差によるものでないことが明らかである。
【0042】
実施例4
内容積1lのビーカーに、メタバナジン酸アンモニウム3.5部と蒸留水50部とシュウ酸7.46部を採り、撹拌しながら80℃に加熱して均一液とした。この液を室温に冷却後、これにリン酸二水素アンモニウム3.4部を均一溶解させ、この液に1規定の希硝酸を加えて液のpHを3〜4に調整した。このpH調整は、前記の混合液を原料としてマイクロエマルジョンを調製する際に、リン酸二水素アンモニウムが沈殿するのを防ぐためのpH調整である。
前記の混合液に、シクロヘキサン390部と実施例1で使用したものと同じ界面活性剤110部を加え、室温(25℃)下にマグネティックスターラーで撹拌したところ、100g中にリン0.16gとバナジウム0.26gを含有するマイクロエマルジョンがすぐ生成した。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、液滴の平均直径は45Åと計算されるから、個々の液滴中に含まれるリン及びバナジウムの原子数は両者とも平均11個と計算される。このマイクロエマルジョンに28%アンモニア水を加えてpHを9〜9.5とし、室温で30分間撹拌してリン及びバナジウムを含有する超微粒子分散液を作製した。
【0043】
前記分散液190部に蒸留水5部を加えて良く撹拌し、pHが9〜9.5に保たれている前記の水で希釈された分散液にシリコンテトラエトキシド60部を溶解させ、この液を40〜45℃で2時間撹拌した。その結果、シリコンテトラエトキシドが加水分解されてシリカコロイド沈殿が生成してくるから、加水分解反応を完結させるためにアンモニア水でpHを9に調整した蒸留水を30部加え、さらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、生成物を室温まで冷却してから母液を濾別し、得られた沈殿を200部のエタノールで3回洗浄して沈殿に含まれている界面活性剤や有機溶媒を充分に除去した。この沈殿を80℃で12時間乾燥してから空気流通下に500℃で4時間焼成すると、11%のVOPO4を含むシリカゲル11部が得られた。原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量のほぼ60%で、メタバナジン酸アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムからのVとPの収率は理論量のほぼ90%であった。なお、生成したVOPO4担持シリカゲルのBET表面積は38m2/gであった。
【0044】
上記の方法で調製した11%VOPO4−シリカゲル触媒の性能を評価するため、該触媒を錠剤成形器で成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成形触媒3gを内径17mmの反応管(実施例1で使用したものと同一物)に装填してイソブタンの空気酸化特性を調べた。すなわち、実施例1で使用したものと同じ電気炉内に反応管を設置し、この反応管に、イソブタン:酸素:ヘリウム=1:1:3(容量比)の混合ガスを60ml/分の速度で送入し、触媒層温度(反応温度)と反応率の関係、及び触媒層温度と〔メタクロレイン(MAL)+メタクリル酸(MAA)〕選択率の関係等を求め、表3の結果を得た。なお、反応生成物の分析はガスクロマトグラフ法で行った。
【0045】
比較例3
比較のため、常法で製造した含浸法の11%VOPO4−シリカゲル触媒3gを使用し、実施例4と同一条件でイソブタン酸化を行い、表3に併記した結果を得た。この比較例で使用した触媒は、比較例1で使用したものと同じシリカゲルを担体とし、これにバナジン酸アンモニウムとリン酸二水素アンモニウムを常法によって担持させてから、空気の流通下に焼成して調製したものであり、BET表面積61.0m2/gの触媒である。
【0046】
比較例4
比較例3とは別の比較例として、文献〔J.SHIMODA, Bull. Chem. Soc. Jpn.58 2163〜2171(1985)〕に記載されている方法に従って、五酸化バナジウムと塩酸ヒドロキシルアミンとリン酸を出発原料にして調製したピロリン酸バナジル3gを触媒とし、実施例4の場合と同じ方法でイソブタンを酸化させた実験結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3から、本発明の触媒は比較例のそれより大幅に(MAL+MAA)選択率が高いことが分る。例えば、従来のイソブタン酸化用触媒のうちでは部分酸化活性が高い触媒として注目されている比較例4に記載した触媒の使用時は、反応率0.5%で(MAL+MAA)選択率が45.9モル%、反応率3.2%では(MAL+MAA)選択率が18.1モル%なのに、本発明の触媒を使用する実施例4の結果では、反応率0.6%で(MAL+MAA)選択率が75.7モル%、反応率2.0%では(MAL+MAA)選択率が61.2モル%を示している。また、本発明の触媒は完全酸化抑制型触媒と云え、通常の含浸法で調製された比較例3の触媒使用時には、反応率3.2%で(CO+CO2)選択率が84.0%モルとなるのに、本発明の触媒を使用する実施例4の実験結果では、反応率5.1%でも(CO+CO2)選択率が43.4モル%にすぎないことが分る。
【0049】
【発明の効果】
本発明の方法で製造される担持触媒は、超微粒子を均一分散した分散液中で金属アルコキシドを加水分解する方法で製造され、加熱等で該超微粒子が凝集しにくいことから、高機能で使用中の劣化が少ない担持触媒である。従って、該触媒は従来法で製造される担持触媒より高機能で長寿命である。
【産業上に利用分野】
本発明は、金属等の触媒活性を有する超微粒子を分散した担持触媒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、不均一触媒を使用する接触反応では触媒表面で反応が進行するから、この方面の研究者は試行錯誤的に表面活性の大きい触媒を探索している。この場合、単位表面積当りの活性物質の量及び質が同じなら表面積が広いほど活性が高くなるので、触媒物質の担体には表面積の大きいシリカやアルミナのような無機酸化物ゲルを使う場合が多い。そして、前記無機酸化物ゲルの一般的製造方法は、無機塩の加水分解で得られた無機酸化物ゲルを焼成・脱水する方法であるが、この方法では原料塩や加水分解試薬に由来するナトリウム等の無機イオンが不可避的に微量混入し、これが触媒の活性や物性に影響を及ぼす場合も少なくない。また、前記の方法で得られた無機酸化物ゲルに含浸法で触媒物質を担持させる場合が多いが、該方法で表面の均質な触媒を得るのは至難である。さらに、従来法では金属担持量で触媒金属の粒径が定まってしまうような問題も有り、金属担持量と無関係に粒径を設定できる技術が求められている。
【0003】
前記した表面の不均質が不均一触媒の理論的探索を困難にしており、これが触媒開発や触媒理論の発展を妨げているから、均質で高活性な触媒の開発が昔から触媒研究者の課題であった。しかも、分析技術の発展で均質と思われていた触媒表面の多くが不均質なことも分り、該触媒の開発は進んでいない。この一因は、触媒物質を含浸法で担体に担持する際に溶液から析出する触媒物質の結晶が、担体表面の細孔形状や大きさ及び結晶析出条件で大きく変るためと云われる。
10年位前から、均質な触媒の調製方法としてアルコキシド法が注目されている。この方法による金属担持触媒の製造は、グリコール等の配位能を持つ親水性有機溶媒に金属塩を溶解し、該溶液にアルミニウムやケイ素等の金属の可溶性アルコキシドを加えて均一液としてから、該アルコキシドを加水分解・熟成して対応する金属酸化物コロイドに変え、該生成物を乾燥・焼成後に水素還元することで行われる。該方法では金属酸化物コロイドの乾燥・焼成で形成されたゲルが担体となり、これに金属塩の水素還元で得られた金属が担持されて触媒となる。
【0004】
アルコキシド法による金属担持触媒は、研究の進展に伴って多数の特許や報文が発表されている。例えば、特公昭60−59215号公報にはルテニウムと銅を担持したアルコキシド法シリカ触媒によるベンゼンの部分水素化法が、特公昭63−45620号公報には各種の金属担持アルコキシド法シリカ触媒が、特公昭63−45621号公報には各種の金属担持アルコキシド法アルミナ触媒が、特公昭63−45622号公報には各種の金属担持アルコキシド法チタニア触媒が、特公昭63−45623号公報には各種の金属担持アルコキシド法ジルコニア触媒が開示されている。また、上野らはJ.Chem.Soc. Faraday Trans.I 79 127(1983)等に、水上らはJ.Chem.Tech.Biotechnol.36 236(1986)等にアルコキシド法触媒に関する研究報告を発表している。
【0005】
前記のように金属担持アルコキシド法触媒は多数発表されているが、該触媒は金属塩溶液に金属アルコキシドを溶解してから、該アルコキシドを加水分解して調製されるので、金属塩を金属に転換する還元工程が必要である。この還元工程は、金属酸化物中に分散している金属塩を100℃以上で水素還元する等の高温工程が必要な上に、アルコキシドの加水分解・乾燥で得られた粒子中の金属塩は、アルコキシドの加水分解で生成した金属酸化物ゲルに吸着したり、該金属酸化物ゲルが保有する構造水中に溶解した状態等で存在するから、還元工程で形成される金属超微粒子が不均質になることが避けられない。すなわち、アルコキシド法で充分均質な金属塩の分散体を形成させても、金属塩を金属に還元する過程で金属粒径が不均質になってしまう。また、金属塩は一般に金属より化学的活性が強いから、担体となる金属酸化物と金属塩との間に結合が形成される場合もあり、そのために金属塩の還元で触媒活性を持つ金属を形成させた場合に、該金属固有の性質が損なわれたり、異質の活性が付加されたりする場合もある。
【0006】
一方、超微粒子製造法もコロイド化学の分野等で以前から研究されており、例えば最近急速に進歩しているマイクロエマルジョンを原料とする方法では、直径数Å〜数10Åの金属超微粒子や金属化合物超微粒子の作製例が発表されている〔USP 4,425,261(1984);Colloids Surface 5 209(1982)等〕。該方法は、超微粒子原料の金属塩水溶液と界面活性剤と油から、油中に所望量の金属塩を含む所望の大きさの液滴を形成させ、該金属塩をヒドラジンや水素等で還元して金属超微粒子を得る方法である。
金属超微粒子は今後の機能材料として期待されており、我が国でもその製造方法等が国家プロジェクトとして検討され、金属蒸気から金属超微粒子を得る方法等が発表されている。また、超微粒子の製造方法や物性等については化学総説No.48(日本化学会編、1985年発行)に詳記されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のアルコキシド法による触媒の製造方法に見られる前記の諸問題を解決し、超微粒子が担持されている触媒性能に優れた担持触媒の製造方法を提供することをその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、あらかじめ形成した触媒活性を有する超微粒子の分散液中で、担体原料となる金属アルコキシドを撹拌下に水の存在下で加水分解し、コロイド状金属酸化物粒子を生成させる工程を含むことを特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、超微粒子の分散液が水溶性金属化合物を含む水溶液が超微粒子状の液滴として存在するマイクロエマルジョンを原料とし、該液滴中に含まれている水溶性金属化合物を不溶化して作られたものであることを特徴とする前記の担持触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、水溶性金属化合物の不溶化が還元反応によるものであることを特徴とする前記の担持触媒の製造方法が提供される。
【0009】
本発明において、担持触媒の調製原料となる超微粒子分散液は、触媒活性を持つ超微粒子を分散媒に均一分散した液である。分散媒となる液体は、分散させる超微粒子と反応したり該粒子を溶解したりせず、使用する金属アルコキシドを溶解し得る有機溶媒、又は該溶媒と水との混合液が使われる。また、該分散液には超微粒子を安定に分散させるために、界面活性剤を分散液重量の0.5〜40%、好ましくは4〜20%含有させることができる。
分散液中の超微粒子含有率は、一般に0.0001〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。また、分散液は所定量の超微粒子と分散媒と界面活性剤とを混合し、ジェットミルやボールミル等の強力な分散機を用いて分散媒中に超微粒子を分散させることによって得ることができる。
【0010】
触媒活性を有する超微粒子としては、触媒能を持つものであればどのようなものでもよく、このようなものには、遷移金属、特に、V族〜VIII族の遷移金属の中から選ばれる金属、金属酸化物や金属硫化物等の金属化合物、或いは不溶性金属塩等の種々の超微粒子を使うことができる。また、前記の超微粒子は単独でも二種以上混合して使っても良く、二種以上混合使用の例としては、超微粒子状銅と超微粒子状ルテニウムの混合物を含有するベンゼンの部分水素化触媒の例等が挙げられる。
【0011】
本発明で使われる超微粒子は、▲1▼水溶性化合物を含むマイクロエマルジョンを還元処理や酸化処理する方法、▲2▼蒸気を急冷する方法、▲3▼気相熱分解や気相酸化等の気相反応で形成させる方法、等の種々の方法で製造することができる。
前記製造方法のうち、▲2▼及び▲3▼の方法で得られた超微粒子は、これを分散媒に分散させることによって分散液を得ることができる。一方、▲1▼の方法では超微粒子分散液の形態で超微粒子が得られるから、これをそのまま本発明で用いる超微粒子含有分散液として使うことができるし、必要に応じて有機溶媒や水を加えて本発明の超微粒子含有分散液として使うことも可能である。
【0012】
超微粒子分散液の分散媒となる有機溶媒を例示すると、シクロヘキサン、シクロヘプタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の比較的長鎖の脂肪族一価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも混合して使っても良い。
超微粒子分散液に用いられる界面活性剤は特に限定されず、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤を用いることができる。その具体例としては、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等が例示される。
【0013】
本発明で製造される担持触媒は、金属や金属酸化物等の触媒活性を有する超微粒子を、金属アルコキシドの加水分解で得られる金属酸化物コロイド粒子に担持させた触媒である。また、該触媒は広範囲にわたる接触反応の分野で従来法で製造される触媒より高性能な触媒である。例えば、アルカンの酸化で部分酸化生成物を製造する際に使われるバナジウム、リン及び酸素を含有する担持触媒では、従来法で製造される触媒より大幅に選択性が高い触媒を製造することができる。また、一酸化炭素の部分水素化で炭素数2以上の化合物を製造する際に使われるロジウム触媒の場合も、従来法で製造される触媒より大幅に選択性が高い触媒を製造することができる。さらに、炭化水素の完全酸化用白金触媒では従来法で製造される触媒より大幅に高活性の触媒を製造することができるから、今後の発展が期待されている燃焼触媒の製造に好適な触媒の製造方法である。
【0014】
前記のように、本発明では多岐にわたる接触反応の分野で、従来法より高選択性又は高活性な上に長寿命な触媒を提供できるから、触媒製造原料が高価な貴金属担持触媒等の製造方法として好ましい方法である。また、本発明で製造される触媒の大部分は金属元素を含む触媒であり、特に金属担持触媒の製造に好適な触媒の製造方法である。そこで、該触媒の製造原料となる金属元素を含む超微粒子分散液の製造方法について、詳細かつ具体的に記述することにする。
前記の超微粒子分散液は、金属イオンを含むマイクロエマルジョン溶液を還元することで得られる。このマイクロエマルジョンは、所望の金属塩を溶解した水溶液と油性液体で形成されるが、本発明では特に外部水相のない一相系油中水滴型マイクロエマルジョンを使うのが望ましい。また、金属塩は水溶性で還元容易な塩であれば限定されないが、特に塩化物や硝酸塩が好ましい。
【0015】
前記マイクロエマルジョンに含有させる金属塩を具体的に例示すると、塩化白金酸塩やテトラアンミン白金塩等の白金塩;塩化パラジウムやテトラアンミンジクロルパラジウム等のパラジウム塩;塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサアンミンロジウム等のロジウム塩;塩化ルテニウムやヘキサクロルルテニウム酸塩等のルテニウム塩;塩化イリジウムやヘキサクロルイリジウム酸塩等のイリジウム塩;塩化オスミウムやヘキサクロルオスミウム酸塩等のオスミウム塩;塩化金等の金塩;塩化銅や硝酸銅等の銅塩;塩化鉄や硝酸鉄等の鉄塩;塩化ニッケルや硝酸ニッケル等のニッケル塩;塩化コバルトや硝酸コバルト等のコバルト塩;硝酸銀等の銀塩;塩化モリブデンやモリブデン酸塩等のモリブデン塩;塩化レニウムやヘキサクロルレニウム酸塩等のレニウム塩;塩化タングステンやタングステン酸塩等のタングステン塩;塩化クロムや硝酸クロム等のクロム塩;塩化マンガンや硝酸マンガン等のマンガン塩等である。
【0016】
前記マイクロエマルジョンの形成に用いられる油性液体は、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン、ベンゼン、キシレン、ブチルベンゼン、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジブチルフタレート、オクチル酸ブチル、メチルエチルケトン等であるが、シクロヘキサンのような低粘度の液体が好ましい。また、マイクロエマルジョン形成に使われる界面活性剤は、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル(NP−5)、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等であり、非イオン性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤が望ましい。
マイクロエマルジョン形成の際の金属塩水溶液と油性液体の混合比、エマルジョン中に含まれる水と界面活性剤の混合比及び水溶液中の金属塩濃度は、形成される金属元素を含む超微粒子に所望される粒径に応じて適当に定めればよい。そして、金属塩水溶液に対する油性液体の比は、容量比で4以上、好ましくは10以上とするのが良い。
【0017】
前記のマイクロエマルジョンは、界面活性剤添加量が多いほど液滴が小さくなり、液滴一個内の金属分子数が少ないほど得られる金属元素を含む超微粒子が小さくなる傾向がある。従って、界面活性剤はエマルジョン中の水の10モル%以上、好ましくは40モル%以上添加するのが良い。また、水溶液中の金属塩濃度を0.05モル/リットル以下、好ましくは0.02モル/リットル以下として液滴一個内の金属分子数を10個以下、好ましくは2個以下にするのが良い。
以上の説明からも分るように、界面活性剤及び油性液体の使用量を大量にして水溶液中の金属塩濃度を小さくすれば、形成される金属元素を含む超微粒子は小さくなる。金属元素を含む超微粒子の粒径は、所望する触媒活性に応じて適宜定めれば良い。なお、本発明者らの実験によると、得られる金属元素を含む超微粒子の大きさは、エマルジョン中の界面活性剤と水の比から求められる液滴サイズと金属塩濃度から計算される値の1〜3倍になる。
マイクロエマルジョンは、一相系油中水滴型エマルジョンの他、二相系のマイクロエマルジョンや、油中に金属塩を含む水中油滴型マイクロエマルジョンであることができる。
【0018】
マイクロエマルジョン中での金属塩の還元は、ヒドラジン、水素、水素化ホウ素ナトリウム等を還元剤とする化学的方法のほか、紫外線やγ線の照射法でも可能であるが、ヒドラジンで行うのが最も容易である。ヒドラジン還元は、液温を10〜40℃、好ましくは20〜30℃に保ち、理論量の1モル倍以上、好ましくは2〜10モル倍のヒドラジンで行われる。この場合、ヒドラジンは1水和物の形で良く撹拌されているマイクロエマルジョン中に全量を迅速に添加するのが良い。また、ヒドラジン還元では反応時に窒素を生成するが、これは気相や水中に逃散して後続のアルコキシド加水分解に影響することはない。なお、塩化ロジウムのようにヒドラジン還元時に金属とヒドラジンの化合物から成る超微粒子を形成する場合もあるが、このような場合は該超微粒子を担持した触媒を製造してから、これを水素還元して前記化合物を超微粒子状金属に変えれば良い。
前記還元法のうちコスト的に有利なのは水素還元法である。この方法は、あらかじめ溶液中の酸素を窒素等の不活性ガスで充分除いてから、撹拌下に水素ガスを溶液中に通す等の方法で行われる。なお、最も均一な金属超微粒子が得られる還元法は紫外線やγ線の照射法であるが、この照射法では装置が大きくなる上に溶媒の選択面等にも難点があり、余り好ましい方法ではない。
【0019】
本発明によれば、金属塩水溶液が超微粒子状の液滴として存在しているマイクロエマルジョンを原料として、金属酸化物担持触媒を製造することができる。すなわち、加水分解すると水不溶の水酸化物に転換することができる金属塩の水溶液を使って、前記した金属超微粒子分散液製造時と同じ方法でマイクロエマルジョン溶液を作製し、該溶液を良く撹拌しながら室温でアンモニア水を添加する等の方法で該金属塩を水酸化物に変えてから、該水酸化物の超微粒子が分散されている分散液中で金属アルコキシドを加水分解し、得られた生成物を焼成すれば超微粒子状の金属酸化物を担持した触媒が形成される。そして、この場合のマイクロエマルジョン溶液製造原料及び製造条件は、前記した金属超微粒子分散液製造原料用のマイクロエマルジョン製造時と同じで良い。また、水溶性金属塩を水不溶の水酸化物に変えるためのpH調整は市販濃アンモニア水等で行えば良く、pHを9〜10とすれば水不溶の水酸化物が形成される。なお、この場合の水不溶性水酸化物製造原料に2種以上の水溶性金属塩を混合使用しても良く、この場合は複数の金属酸化物超微粒子を担持した触媒を得ることができる。さらに、水溶性金属塩と水溶性非金属化合物を併用することも可能であり、併用法によってリンや硫黄等の非金属を含有する金属酸化物超微粒子担持触媒が得られる。
【0020】
本発明では、前記のようにして得られた超微粒子分散液中で金属アルコキシドを加水分解して超微粒子を担持した金属酸化物コロイドを得、これを乾燥・成形後に必要に応じて焼成したり水素還元したりして担持触媒を製造する。金属アルコキシドとしては、その金属酸化物が触媒担体に使えれるものであればよく、特に限定されない。例えば、表面積が大きいシリカを形成するシリコンアルコキシドや、アルミナを形成するアルミニウムアルコキシドが好ましく使われるし、チタニアを形成するチタニウムアルコキシドやジルコニアを形成するジルコニウムアルコキシドも使える。さらに、マグネシア、ボリア、ニオビア、酸化ランタン等を与える金属アルコキシドも使用可能である。また、金属アルコキシドは単独でも2種類以上混合して使っても良く、異種の金属から成る金属アルコキシド混合物を加水分解すると、シリカ−アルミナやシリカ−アルミナ−マグネシアのような複合酸化物が得られる。なお、金属アルコキシドの加水分解速度はその種類で大きく違う場合が多いから、複合酸化物を得る場合には加水分解触媒を添加し、その加水分解速度を同一程度にするのがよい。
【0021】
本発明において、金属酸化物コロイドの製造原料に使われる金属アルコキシドを具体的に例示すると以下のとおりである。
シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシド、シリコンテトラブトキシド等のシリコンアルコキシド;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムブトキシド等のチタニウムアルコキシド;ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウムアルコキシド;マグネシウムジブトキシド、ペンタブトキシニオブ、トリブトキシボラン、トリブトキシランタンその他。
これらの金属アルコキシドは、所望する金属酸化物コロイドの種類によって適宜選択して使えば良い。
【0022】
超微粒子分散液中での金属アルコキシドの加水分解反応において、その金属アルコキシドの加水分解反応に必要な水は、あらかじめ超微粒子分散液中に存在させておくこともできるし、金属アルコキシドの加水分解反応に際し、超微粒子分散液中に添加することもできる。
また、反応に必要な水は、反応開始時に、その全量を超微粒子分散液中に存在させても良いし、反応の進行と共に徐々に加えてもよい。金属アルコキシドの加水分解反応に際して用いる全水量は、金属アルコキシドの加水分解反応に必要とされる理論量の1〜10モル倍、好ましくは1〜3モル倍である。
金属アルコキシドの種類によっては加水分解速度が遅いために、触媒の使用が好ましい場合もある。この場合は、加水分解用の水として、0.01〜1重量%程度のアンモニア水や0.01〜1重量%程度の希硝酸を含む水を用いればよい。加水分解速度が遅い金属アルコキシドとしては、シリコンテトラエトキシドやシリコンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0023】
加水分解温度は、金属アルコキシドの種類によっても異なるが一般に20〜60℃、好ましくは30〜50℃である。分散液に水を加える場合、その添加水は反応開始から0〜8時間、好ましくは1〜2時間の間に分割して加えるのが望ましい。また、水の添加終了後0〜12時間、好ましくは1〜8時間攪拌下に20〜60℃、好ましくは30〜50℃に保って加水分解反応を完結させ、その後0〜3時間、好ましくは1〜2時間前記温度で熟成させるのが良い。この加水分解反応においては、反応が進んでコロイド状生成物が形成される。
加水分解反応時の反応液のpHは、金属アルコキシドの種類等によっても異なるが、一般的には3〜11、好ましくは7〜11、より好ましくは8〜10とするのが良い。
【0024】
本発明により、超微粒子分散液中で金属アルコキシドを加水分解させる場合、分散液全体のゲル状化(高粘度化)を回避し、金属アルコキシドの加水分解により生成する金属酸化物をコロイド粒子状(沈澱物状)で存在させることが重要である。分散液全体がゲル化すると、超微粒子の表面を金属酸化物が覆ってしまうために超微粒子による触媒効果の発現が阻害され、そのためにBET表面積が1000m2/g以上もあるのに触媒活性が認められない場合もある。従って、分散液全体のゲル状化を回避するのが好ましいが、このためには金属アルコキシドの加水分解反応をアルカリ性水溶液で行えば良い。
【0025】
以上のようにして超微粒子を担持した金属酸化物コロイドが形成されるが、このものは、熟成期間が終了すると反応器内に沈澱粒子状で存在する。この生成物は、これを固液分離して該沈殿を母液と濾別してから、アルコール等で洗浄して界面活性剤等の不純物を除き、次いで常圧又は減圧下に加熱・乾燥して水や含有する油性液体等を除くことにより担持触媒を得ることができる。このようにして得られた超微粒子を均一担持した金属酸化物は、所望の粒度に粉砕後に必要であれば所望の雰囲気下に焼成し、或いは水素還元等の処理後に所望の形に成形して触媒とすれば良い。なお、アルコール洗浄等で精製したペースト状の金属酸化物コロイドを、ハニカム状等に加工してから乾燥して触媒に使用しても良い。
【0026】
本発明によれば、粒径5〜200Åの超微粒子を表面又は全体に均一担持した金属酸化物が得られる。そして、金属アルコキシドの加水分解や熟成は低温で行われるから、加水分解中に該超微粒子が熱変質することはない。また、生成物の乾燥も100℃以下の減圧下で行えば良いから、該生成物では原料の超微粒子が熱凝集する等の問題がなく、原料の超微粒子と同一粒径の粒子が均質分散された生成物が得られる。従って、該生成物を成形して得られる担持触媒は従来のアルコキシド法触媒や従来の超微粒子担持触媒と異なっている。すなわち、従来のアルコキシド法金属担持触媒は金属塩を金属酸化物ゲル中に均一分散した前駆体から得られるから、金属塩を金属に変える際の加熱や化学反応で金属粒径が不均質になる等の問題がある。また、通常の含浸法で担体と水溶性塩から担持触媒を製造する際には、担体の表面状態等で粒径分布や粒子間距離が大きく変るが、本発明の場合は触媒が粒子間凝集の起らない温度で製造されるから、シャープな粒径分布を持った非凝集の超微粒子を表面に有する担持触媒を得ることができる。
【0027】
以上のようにして形成された触媒は、アルコキシドの加水分解で形成された金属酸化物表面に超微粒子が独立して強く結合しているために、超微粒子の安定性は非常に良く、金属超微粒子担持触媒ではその金属超微粒子が高温下でも凝集しない。従って、触媒が銅やパラジウムのように凝集し易い金属でも独立粒子同志が凝集せず、活性低下の主因となる凝集(シンタリング)が起こらないために長期間にわたって高い活性の維持が可能である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例で更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例で限定されるものではない。なお、以下の部及び%は重量基準である。
【0029】
実施例1
内容積300mlのビーカーに、塩化白金酸6水和物H2PtCl6・6H2O1部と蒸留水15部より成る均一水溶液を入れ、これにシクロヘキサン190部とポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(鎖長5;非イオン界面活性剤)69部を加え、室温下にマグネチックスターラーで撹拌すると、100g中に0.14gの白金イオンを含むマイクロエマルジョンがすぐに形成された。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、界面活性剤量と水の量から液滴直径は平均22Åと計算され、この値と白金イオンの水中濃度から液滴1個中に含まれる白金イオン数は平均0.5個と計算される。
このマイクロエマルジョンに、市販のヒドラジン1水和物N2H4・H2O0.6部を加え、室温下に30分間良く撹拌して白金イオンを白金超微粒子に還元した。このようにして得られた白金超微粒子分散液の白金粒径は、液滴の大きさ等から直径約40Å程度と推定される。
【0030】
前記の白金超微粒子分散液275部に蒸留水10部を加え、均一になるまで良く撹拌してから28%アンモニア水で液のpHを8.5〜9.5に調整した。この液に67部のシリコンテトラエトキシドを良く溶かしてから、これを湯浴で35〜40℃に加熱しながら2時間マグネチックスターラーで撹拌を継続した。撹拌していると、加水分解反応でシリカコロイドが形成されるために液が濁ってくるから、加水分解反応を完結させるために更に蒸留水を20部添加して撹拌を2時間継続した。反応開始後4時間で加熱を中止し、ビーカーの内容物を室温まで冷却してから母液を濾別し、得られた沈殿を200部のエタノールで3回洗浄した。この精製沈殿を80℃で12時間乾燥してから、空気流通下に500℃で4時間焼成すると、3.0%の白金を含むシリカゲル12部が得られ、原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量の65%で、塩化白金酸からの白金収量は定量的であった。また、ここに得られた白金担持シリカゲルの粒径は、電子顕微鏡による観察の結果では充分に均一であり、全部がほぼ0.03μmの粒径を持っていた。
【0031】
以上のようにして調製した3%白金−シリカゲル触媒の性能を評価するため、該触媒を錠剤成形器で成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成型触媒2gを内径17mmの反応管に装填してプロパンの燃焼反応性を調べた。すなわち、温度幅1℃以内で温度制御の可能な電気炉中に反応管を設置し、この反応管にプロパン:酸素:窒素=0.5:10:89.5(容量比)の混合ガスを150ml/分の速度で送入した。そして、触媒層温度を150℃、200℃、及び250℃とした場合のプロパン反応率から触媒能を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
比較のために、富士ダヴィソン社製シリカゲルCariact−50に3.0%の白金を担持させた粒径16〜24メッシュの触媒を調製し、実施例1と全く同じ評価実験を行い、その結果を表1に併記した。なお、比較例1の触媒は塩素による反応阻害が無いように、原料の白金塩としてジアミン亜硝酸白金を使用し、常法によって前記化合物をシリカゲルに担持させてから80℃で8時間乾燥し、これを水素気流中450℃で2時間還元して調製した触媒である。
【0033】
【表1】
表1から、実施例の触媒は比較例の触媒より高活性なことが明らかである。従って、白金を触媒物質とするプロパンの燃焼触媒では、本発明の超微粒子分散型アルコキシド法で調製した触媒は従来の白金担持触媒より高活性と云える。
【0034】
実施例2
内容積300mlのビーカーに、塩化ロジウム3水塩RhCl3・3H2Oが1部と蒸留水が10部より成る均一液を入れ、これにシクロヘキサン127部と実施例1で使用したものと同じ界面活性剤46部を加え、室温下にマグネチックスターラーで撹拌すると、100g中にロジウムイオン0.21gを含むマイクロエマルジョンがすぐに形成された。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、液滴の直径は22Å(平均値)と計算され、一つの液滴中に含まれるロジウムイオンの数は平均1.3個と計算される。
このマイクロエマルジョンに市販のヒドラジン1水和物N2H4・H2Oを0.6部加え、室温下に30分間良く撹拌してロジウムイオンをロジウムを含有する超微粒子に還元した。このようにして得られたロジウム含有超微粒子分散液のロジウム含有粒子の粒径は、液滴の大きさ及び液滴中のロジウムイオン数から直径約30Åと推定される。
【0035】
前記のロジウム含有超微粒子分散液184部に蒸留水15部を加え、均一になるまで撹拌後に28%アンモニア水で液のpHを8.5〜9.5とした。この液に110部のシリコンテトラエトキシドを溶かしてから、これを湯浴で35〜40℃に加熱しながらマグネチックスターラーで2時間撹拌を続けた。撹拌していると、加水分解反応でシリカコロイドが形成されて液が濁ってくるから、更にイオン交換水を30部加えて撹拌を2時間継続し、加水分解反応を完結させた。次に、ビーカー内容物を室温まで冷却後に母液を濾別し、得られた沈澱を200部のエタノールで3回洗浄した。該精製沈澱を80℃で12時間乾燥後に空気流通下500℃で4時間焼成し、さらに水素流通下に450℃で2時間焼成すると、2.0%のロジウムを含む粒径0.2〜0.4μmのシリカゲル19部が得られた。原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量の62%で、塩化ロジウムからのロジウム収量は定量的であった。
【0036】
以上のようにして調製した2%ロジウム−シリカゲル触媒の性能を評価するために、該触媒を錠剤成形器によって成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成型触媒を使用する一酸化炭素の水素化反応を行った。すなわち、実施例1と同じ反応器を使って2gの触媒を使用する圧力40kg/cm2の気相流通反応を行い、反応温度と反応成績の関係について調べ表2の結果を得た。なお、この評価実験では原料ガスに、一酸化炭素:水素:アルゴン=3:6:1(モル比)の混合ガスを使用し、GHSV6000/hrで行った。ここでGHSVとは気体空間速度の略で、1時間に単位容量の触媒上を通過する標準状態の原料ガス容量を意味している。また、この評価実験で使用した白金−シリカ触媒のBET表面積は61m2/gであった。
【0037】
実施例3
ロジウム含有超微粒子分散液へのシリコンテトラエトキシド添加量を変えた以外は実施例2と同じ方法で4.5%ロジウム−シリカゲル触媒を作製し、実施例2と同じ方法で粒径16〜24メッシュの成型触媒としてから、実施例2と同じ評価試験を行った結果を表2に示す。この評価試験は実施例2と同一組成の原料ガスを使い、実施例2と同一圧力で行ったがGHSVは2000/hrとした。
【0038】
比較例2
比較のために、富士ダヴィソン社製シリカゲルCariact−50に含浸法で2.0%のロジウムを担持させた実施例2と同一粒径の触媒を調製し、GHSVを3000/hrとした以外は実施例2と同じ評価試験を行い、表2に示す結果を得た。なお、本比較例の触媒は実施例2の場合と同じ塩化ロジウムを使って作製したものであり、触媒のBET表面積は60m2/gであった。
【0039】
比較例3
実施例2で製造したロジウム含有超微粒子分散液184部に蒸留水15部を加え、均一になるまで撹拌後に1規定の硝酸で液のpHを3〜4とし、この溶液に71部のシリコンテトラエトキシドを溶解してから、実施例2と同じ方法でシリコンテトラエトキシドの加水分解反応を行った。しかし、この場合は実施例2の場合と異なって沈殿が生成せず、反応器内容物はゼリー状の透明固体となった。この固形物を室温まで冷却後に粉砕して反応器から取り出し、実施例2の場合と同じ方法で良く洗浄後に実施例2の場合と同じ条件で乾燥・空気焼成及び水素還元を行ったところ、2.0%のロジウムを含むシリカゲルが19部得られ、シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収量、及び塩化ロジウムからのロジウム収量はほぼ定量的であった。また、得られた触媒はやや透明感のあるガラス状固体で、BET表面積1020m2/gであった。この触媒を良く粉砕してから実施例2と同じ方法で成形し、GHSVを1000/hrとした以外は実施例2と同じ方法で、一酸化炭素の水素化反応を行った結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から、実施例の触媒は比較例の触媒より大幅に活性が高いことが明らかであるが、本発明の方法と類似の方法で製造される比較例3の触媒が、含浸法で製造される触媒(比較例2の触媒)より活性が低いことは興味深い。また、実施例の触媒ではロジウム担持量の多い実施例3の触媒が優れており、該触媒を使った実験で得られるSTY248.3g/l・hrは、一酸化炭素の水素化による炭素数2以上の含酸素有機化合物製造方法として、現在までに得られているデータの中で最高値である。なお、表2から一酸化炭素を水素化するロジウム触媒における活性差は、表面積の差によるものでないことが明らかである。
【0042】
実施例4
内容積1lのビーカーに、メタバナジン酸アンモニウム3.5部と蒸留水50部とシュウ酸7.46部を採り、撹拌しながら80℃に加熱して均一液とした。この液を室温に冷却後、これにリン酸二水素アンモニウム3.4部を均一溶解させ、この液に1規定の希硝酸を加えて液のpHを3〜4に調整した。このpH調整は、前記の混合液を原料としてマイクロエマルジョンを調製する際に、リン酸二水素アンモニウムが沈殿するのを防ぐためのpH調整である。
前記の混合液に、シクロヘキサン390部と実施例1で使用したものと同じ界面活性剤110部を加え、室温(25℃)下にマグネティックスターラーで撹拌したところ、100g中にリン0.16gとバナジウム0.26gを含有するマイクロエマルジョンがすぐ生成した。該マイクロエマルジョンは一相系油中水滴型であり、液滴の平均直径は45Åと計算されるから、個々の液滴中に含まれるリン及びバナジウムの原子数は両者とも平均11個と計算される。このマイクロエマルジョンに28%アンモニア水を加えてpHを9〜9.5とし、室温で30分間撹拌してリン及びバナジウムを含有する超微粒子分散液を作製した。
【0043】
前記分散液190部に蒸留水5部を加えて良く撹拌し、pHが9〜9.5に保たれている前記の水で希釈された分散液にシリコンテトラエトキシド60部を溶解させ、この液を40〜45℃で2時間撹拌した。その結果、シリコンテトラエトキシドが加水分解されてシリカコロイド沈殿が生成してくるから、加水分解反応を完結させるためにアンモニア水でpHを9に調整した蒸留水を30部加え、さらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、生成物を室温まで冷却してから母液を濾別し、得られた沈殿を200部のエタノールで3回洗浄して沈殿に含まれている界面活性剤や有機溶媒を充分に除去した。この沈殿を80℃で12時間乾燥してから空気流通下に500℃で4時間焼成すると、11%のVOPO4を含むシリカゲル11部が得られた。原料シリコンテトラエトキシドからのシリカゲル収率は理論量のほぼ60%で、メタバナジン酸アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムからのVとPの収率は理論量のほぼ90%であった。なお、生成したVOPO4担持シリカゲルのBET表面積は38m2/gであった。
【0044】
上記の方法で調製した11%VOPO4−シリカゲル触媒の性能を評価するため、該触媒を錠剤成形器で成形して粒径を16〜24メッシュとし、この成形触媒3gを内径17mmの反応管(実施例1で使用したものと同一物)に装填してイソブタンの空気酸化特性を調べた。すなわち、実施例1で使用したものと同じ電気炉内に反応管を設置し、この反応管に、イソブタン:酸素:ヘリウム=1:1:3(容量比)の混合ガスを60ml/分の速度で送入し、触媒層温度(反応温度)と反応率の関係、及び触媒層温度と〔メタクロレイン(MAL)+メタクリル酸(MAA)〕選択率の関係等を求め、表3の結果を得た。なお、反応生成物の分析はガスクロマトグラフ法で行った。
【0045】
比較例3
比較のため、常法で製造した含浸法の11%VOPO4−シリカゲル触媒3gを使用し、実施例4と同一条件でイソブタン酸化を行い、表3に併記した結果を得た。この比較例で使用した触媒は、比較例1で使用したものと同じシリカゲルを担体とし、これにバナジン酸アンモニウムとリン酸二水素アンモニウムを常法によって担持させてから、空気の流通下に焼成して調製したものであり、BET表面積61.0m2/gの触媒である。
【0046】
比較例4
比較例3とは別の比較例として、文献〔J.SHIMODA, Bull. Chem. Soc. Jpn.58 2163〜2171(1985)〕に記載されている方法に従って、五酸化バナジウムと塩酸ヒドロキシルアミンとリン酸を出発原料にして調製したピロリン酸バナジル3gを触媒とし、実施例4の場合と同じ方法でイソブタンを酸化させた実験結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3から、本発明の触媒は比較例のそれより大幅に(MAL+MAA)選択率が高いことが分る。例えば、従来のイソブタン酸化用触媒のうちでは部分酸化活性が高い触媒として注目されている比較例4に記載した触媒の使用時は、反応率0.5%で(MAL+MAA)選択率が45.9モル%、反応率3.2%では(MAL+MAA)選択率が18.1モル%なのに、本発明の触媒を使用する実施例4の結果では、反応率0.6%で(MAL+MAA)選択率が75.7モル%、反応率2.0%では(MAL+MAA)選択率が61.2モル%を示している。また、本発明の触媒は完全酸化抑制型触媒と云え、通常の含浸法で調製された比較例3の触媒使用時には、反応率3.2%で(CO+CO2)選択率が84.0%モルとなるのに、本発明の触媒を使用する実施例4の実験結果では、反応率5.1%でも(CO+CO2)選択率が43.4モル%にすぎないことが分る。
【0049】
【発明の効果】
本発明の方法で製造される担持触媒は、超微粒子を均一分散した分散液中で金属アルコキシドを加水分解する方法で製造され、加熱等で該超微粒子が凝集しにくいことから、高機能で使用中の劣化が少ない担持触媒である。従って、該触媒は従来法で製造される担持触媒より高機能で長寿命である。
Claims (3)
- あらかじめ形成した触媒活性を有する超微粒子の分散液中で、担体原料となる金属アルコキシドを撹拌下に水の存在下で加水分解し、コロイド状の金属酸化物粒子を生成させる工程を含むことを特徴とする担持触媒の製造方法。
- 超微粒子の分散液が、水溶性金属化合物を含む水溶液が超微粒子状の液滴として存在するマイクロエマルジョンを原料とし、該液滴中に含まれている水溶性金属化合物を不溶化して作られたものであることを特徴とする請求項1に記載した担持触媒の製造方法。
- 水溶性金属化合物の不溶化が還元反応によるものであることを特徴とする請求項2に記載した担持触媒の製造方法。
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