JP3587439B2 - 磁性体トンネル接合素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性体トンネル接合素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録の高密度化、及び高速化は、磁気記録媒体の進歩と並んで、磁気記録装置の進歩、なかでも磁気記録の書き込み、及び読み出しに用いられる磁気ヘッドの進歩に負うところが大きい。例えば、大きな出力が得られる新しいタイプの読み出し用磁気ヘッドとして、巨大磁気抵抗効果ヘッド(GMRヘッド)の開発が進められている。GMRヘッドは、従来の磁気抵抗効果ヘッド(MRヘッド)と比較して磁気抵抗効果比(MR比)が大きいという、優れた特性を持っている。
【0003】
一方、従来の磁気記録媒体は、磁気ディスク、すなわちファイルメモリーとして機能し、その情報は一旦コンピューター本体の、ダイナミックランダムアクセスメモリー(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリー(SRAM)等の半導体メモリーに読み込まれた後、利用される。これらの半導体メモリーは、多くの優れた特性を持っているが、記憶保持の為に大量の電力を消費するという欠点がある。近年は、記憶保持の為の電力が必要ないフラッシュメモリーや、フェロエレクトリックランダムアクセスメモリー(FRAM)等の開発が進められているが、いずれも書き換え回数が限られるという欠点がある。
【0004】
実質的に無限の書き換えが可能な磁気メモリーとして、マグネティックランダムアクセスメモリー(MRAM)の開発も始められているが、その実現の為には大きなMR比を示す材料やデバイスの構造等の開発が望まれる。
【0005】
そこで、従来のスピンバルブ膜に比べてより大きなMR比を示す素子として、磁性体トンネル接合素子が注目され、磁性体トンネル接合素子単体、あるいは磁性体トンネル接合素子とMOS型トランジスターとを組み合わせる事によって、磁気ヘッドや磁気メモリーを形成しようという試みが始められている。
【0006】
現在では、上記の磁性体トンネル接合素子は、約数10mV以下の低電圧域で30%程度のMR比を示すものが得られているが、約数100mV以上の実用電圧域ではMR比が10%程度に低下してしまうという問題がある。MR比の低下は、トンネル電子が電極中で磁気励起されたマグノンや、絶縁膜中の局在スピンと相互作用し、そのスピンが反転する為なのであるが、これらの相互作用の大きさが電圧に依存するからである。
【0007】
実用電圧域における磁性体トンネル接合素子のMR比を増大させる為に、これまでに様々な試みがなされているが、そのうちの1つはハーフメタルと呼ばれる磁性体を電極として用いる事である。ハーフメタルは図5に模式的に示す様に、一方の向き(↑)のスピンを持った電子のみがフェルミ準位(EF )の近くに存在する。図5では、電子が存在するエネルギー準位を斜線で示した。よって、ハーフメタルを磁性体トンネル接合素子の電極として用いれば、一方の向きのスピンを持った電子のみがトンネル伝導する為に、原理的には電圧域を高くしても、無限大のMR比を示す磁性体トンネル接合素子が得られる事になる。
【0008】
しかし、実際には、ハーフメタルを用いて、室温で、100エルステッド程度の現実的な印加電場をかけても、大きなMR比を示す磁性体トンネル接合素子を得る事は容易でないと考えられる。それは、ハーフメタルは一般にホイスラー合金や、スピネル酸化物等の複雑な組成や、構造を持つ化合物が多く、磁気特性が、その組成や結晶構造に敏感なので、結合界面近傍の組成ずれや結晶歪みにより、容易に特性が劣化してしまう為である。また、比較的簡単な結晶構造のペロブスカイト型酸化物は、キュリー温度が低く、かつ保持力が大きい為、低磁場での動作が困難である。
【0009】
これに対し、接合形成の容易な、Fe、Co、Ni等の強磁性体金属、またはそれらの合金を、磁性体電極に用いる方法もある。
図6はFe、Co、Ni等の強磁性体金属、またはそれらの合金を用いた磁性体トンネル接合素子である。この磁性体トンネル接合素子は、2つの磁性体電極層61と、これらに挟持される絶縁層62から成る。
【0010】
薄い絶縁層62を2つの磁性体電極層61で挟持しそれらの間に電圧を印加すると、電子の波の性質により、トンネル電流が流れる。金属が強磁性体の場合には、フェルミ面での状態密度がスピンの向きに依存する為、トンネルする電子の数がスピンの向きによって異なる。この性質を利用して2つの磁性体電極61の磁化を、外部磁場で平行、または反平行に制御することで、トンネル磁気抵抗(TMR)を得る事が出来る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Fe、Co、Ni等の強磁性体金属、またはそれらの合金を用いる方法にも問題がある。これらの金属、または合金中では、図7に模式的に示すように、局在性電子としてdバンドと、質量の軽い非局在性電子としてs、pバンドとが共存しているが、トンネル電流は、主として非局在性電子によって担われている。よって、図7から分かる様に、フェルミ準位近くで非局在性電子のスピン偏極率は小さく、MR比は、高い電圧域でなくとも、高々30%程度に留まってしまうという問題が生ずる。
【0012】
本発明は、上記問題を解決する為に考えられたものであり、高い電圧域で低磁場中においても、高いMR比が得られる磁性体トンネル接合素子を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、第1の磁性体電極と、[ 100] 方向に結晶配向した第2の磁性体電極と、第1の磁性体電極と第2の磁性体電極との間に設けられる絶縁層とを具備し、第2の磁性体電極は、鉄、コバルト、またはニッケルを含む第1の薄膜と、貴金属、銅、またはクロムを含む第2の薄膜との積層構造から構成され、第1の薄膜は、第2の薄膜よりも絶縁層側に設けられている事を特徴とする磁性体トンネル接合素子を提供する。
【0015】
ここで、本発明の第1と第2において貴金属とは、金、銀と白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)の事を言う。
また、本発明の第1と第2において、第1の薄膜の金属は、鉄、コバルト、またはニッケルを含む合金であっても良く、第2の薄膜の金属は、貴金属、銅、またはクロムを含む合金であっても良い。
【0016】
本発明において、磁性体トンネル接合素子の第2の薄膜は半導体基板上に直接またはバッファー層を介して形成されても良いし、第1の薄膜及び第2の薄膜はエピタキシャル成長されても良い。ここで、エピタキシャル成長とは、気相エピタキシャル成長だけでなく、液相エピタキシャル成長であっても良い。またスパッタ、蒸着等を行った後、アニール等を行って、結晶配向するようにしても良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態の磁性体トンネル接合素子の断面図を図1に示す。
【0019】
本実施形態の磁性体トンネル接合素子は、図1のように、2つの非磁性体層11、12と、これらの非磁性体層11、12に挟持される2つの強磁性体層13、14、そしてこれらの強磁性体層13、14に挟持される絶縁層15から成る。本実施形態では、非磁性体層11として、膜厚約10nmのAuの薄膜を、その上の強磁性体層13として、膜厚約1.5nmのα鉄(体心立方構造)の薄膜を、その上の絶縁層15として、膜厚約1.2nmのAlOx の薄膜を、その上の強磁性体層14として、膜厚約1nmのCoの薄膜を、その上の非磁性体層12として、膜厚がそれぞれ約10nm、約50nmの、CuとAuを積層してなる。非磁性体層11、12、また強磁性体層13、14は後述するように、[ 100] 方向に結晶配向してなる。尚、非磁性体層11は、n+ GaAsのバッファー層(図示せず)の上に形成されてなる。
【0020】
この磁性体トンネル接合素子について、室温でn+ GaAs層と第2の非磁性体層12との間、または第1の非磁性体層11と第2の非磁性体層12の間に、約1Vの電圧をかけ、磁性体トンネル接合素子面内に外部磁場を印加して、磁気抵抗の測定を行った。どちらも、磁化曲線を反映した磁気抵抗特性が見られ、MR比は約38%と高い値が得られた。また、飽和磁場の下での接合抵抗の絶対値は約2kΩであった。
【0021】
次に、本実施形態の磁性体トンネル接合素子の製造方法を図1を用いて説明する。この磁性体トンネル接合素子はマルチチャンバーの分子線エピタキシャル装置(MBE装置)を用いて、ウエファー(図示せず)上に形成する。
【0022】
まず半導体形成用のチャンバー内でウエファー上に[ 100] 方向に結晶配向したn+ GaAsのバッファー層を形成し、その上に、スペーサー層として、約5nmのノンドープGaAs層を形成する。走査型トンネル顕微鏡(STM)、及び反射高速電子線回折(RHEED)観察により、ノンドープGaAs表面がAsのダイマーにより終端され、通常の1つのGaAs結晶格子の大きさに対して、本実施形態の1つの結晶格子の大きさが一方向に2倍、その垂直方向に4倍に増大し、2×4構造となっている事を確認した。また、結晶が段差なく1つの面となって続く幅は、約0.5μmであった。
【0023】
n+ GaAs層にノンドープGaAs層を形成したウエファーを金属膜形成用のチャンバーに移送した後、蒸発源としてクヌーセン・セル(Knudsen−Cell)を用い、ノンドープGaAs層の上に、第1の非磁性体層11として、[ 100] 方向に結晶配向したAuの薄膜を約0.3nm/minの速度で約10nmの厚さに形成する。続いて、同様の方法で、Auの薄膜上に、第1の強磁性体層13として、[ 100] 方向に結晶配向したα鉄の薄膜を約0.1nm/minの速度で約1.5nmの厚さに形成する。
【0024】
さらに、α鉄層の上に、Al膜を約0.3nm/minの速度で約1.2nmの厚さに形成した後、酸素中のグロー放電によりAl膜を酸化し、図1に示すAlOx の絶縁層15とする。
【0025】
続いて、第2の強磁性層14として、[ 100] 方向に結晶配向したCo膜を約0.1nm/minの速度で約1nmの厚さに形成し、第2の非磁性層12として、[ 100] 方向に結晶配向したCuを約0.3nm/minの速度で約10nmの厚さ、[ 100] 方向に結晶配向したAuを約50nmの厚さで積層する。
【0026】
磁性体トンネル接合素子は、電子線ビーム(EB)レジストとArミリングを用いて、0.5μm×0.5μmの大きさとする。この後、非磁性体層11、12を電極として、配線と接続する。
【0027】
本実施形態の比較例として、第1の強磁性体層13として、[ 100] 方向に結晶配向したα鉄の薄膜を約10nmの厚さに、第2の強磁性層14として、[ 100] 方向に結晶配向したCo膜を約10nmの厚さに形成する以外は、第1の実施形態と同様にして磁性体トンネル接合素子を作製し、磁気抵抗特性の測定を行ったところ、MR比は約25%であった。
【0028】
この他、強磁性体層の厚さを変化させる事により、5nmを境に、5nm以下ではMR比が向上し、スピンの向きに依存したエネルギー準位の離散化の効果が得られる。
【0029】
さて、磁性体トンネル接合では、強磁性体層と絶縁層との接合面にほぼ垂直に進む電子のみがトンネル伝導に寄与する事が知られている。
自由電子モデルでは、トンネル電流の電流密度は角度依存し、exp[ −β2 sin2 θ] (ただし、β4 =2ms2 EF 2 /[ h2 (EV −E)] )に比例する。θは接合面の法線と、電子の波数ベクトルとのなす角度であるので、絶縁膜をトンネルする電子の波数ベクトルは接合面にほぼ垂直となる。
【0030】
一方、Fe、Co、Ni等の強磁性体金属、またはそれらの合金のフェルミ準位近くのトンネル電流に寄与できる電子、つまり非局在性電子のエネルギーバンドは、波数kがk=0のときT2gの対称性を持つ為、T2gバンドと呼ばれているが、その対称性をより詳しく調べると、これらの金属、または合金のうち[ 100] 方向に結晶配向しているものは、スピンの向きによって、その対称性が異なっている。つまり、アップスピンのエネルギーバンドはΔ1 の対称性を、またダウンスピンのエネルギーバンドはΔ5 の対称性を持つ。
【0031】
また、[ 100] 方向に結晶配向している、Au、Ag等の貴金属、または銅のエネルギーバンドは、フェルミ準位近くでは強磁性体のアップスピンバンドと同じ、Δ1 の対称性を持っている。
【0032】
従って、[ 100] 方向に結晶配向した、強磁性体薄膜と、前段落中の貴金属、または銅の薄膜の積層構造を形成する事により、強磁性体薄膜中を[ 100] 方向に運動する電子のうち、同じΔ1 の対称性を持つアップスピンバンドの電子は、貴金属薄膜中に入り、他方で、貴金属薄膜のバンドと対称性の異なるΔ5 の対称性を持つダウンスピンバンドの電子は、貴金属薄膜中に入れず、強磁性体薄膜中に閉じ込められる。
【0033】
厚さ数nm以下の強磁性体薄膜中に閉じ込められた電子は、膜厚方向(z方向)の電子の運動が量子化され、そのエネルギーは
E=h2 (kx 2 +ky 2 )/[ 8πm] +Ezn
Ezn=h2 /(8πm)(nπ/l)2
となり、状態密度は図2に示すように階段状になる。ここでlは膜厚である。図2は薄膜中の電子の状態密度とエネルギーの関係図である。図2の斜線部が[ 100] 方向、つまり膜厚方向に運動し、トンネル電流に寄与する電子である。よって、トンネル電流に寄与できる、ダウンスピン電子のエネルギーはE1 、E2 、E3 …というように、離散的になっている。
【0034】
磁性体トンネル接合素子のMR比が低下する理由としては、トンネル電子のスピン反転現象によると考えられる。すなわちトンネル電子が電極中で磁気励起されたマグノンや、絶縁膜中の局在スピンと相互作用し、そのスピンが反転してしまう為である。また、このスピン反転現象は、電圧に依存する。従って、高い電圧域において大きなMR比を示す磁性体トンネル接合素子を得る為には、このスピン反転現象を抑制する事が必要となる。
【0035】
図3はスピンの方向による、状態密度とエネルギーの関係である。本発明では、図3に示すように、トンネル電子のエネルギーがスピンの向きにより大きく異なり、一方のスピン方向の電子はフェルミ準位に存在し、他方のスピン方向の電子はフェルミ準位に存在しない為に、高い電圧域においてもスピン反転現象が抑制される。よって、トンネル電子の偏極率が増大し、実用電圧域における磁性体トンネル接合素子のMR比を増大する事が出来るのである。
【0036】
Au、Ag等の貴金属、または銅を用いることにより、ダウンスピンバンドの電子を強磁性体薄膜中に閉じ込めたが、クロムを用いた場合には、アップスピンバンドの電子が強磁性体薄膜中に閉じ込められる。
【0037】
離散的なエネルギー間隔は膜厚に依存する為、本発明の磁性体トンネル接合素子の強磁性体層は、エネルギー間隔を増大させる様、膜厚を約5nm以下とすると、上述の特性が得られる。
【0038】
さらに、高い配向性を持った強磁性体薄膜を得る為には、GaAs等の半導体基板上にエピタキシャル成長させる事が好ましい。従って、基板表面を配向させるのに適した構造とするほか、配向を得るのに適したバッファ層を用いる事が好ましい。
【0039】
次に、本発明の第1の実施形態の応用例について説明する。
この応用例の磁性体トンネル接合素子は第1の実施形態と同様、図1を用いて、2つの非磁性体層11、12と、これらの非磁性体層11、12に挟持される2つの強磁性体層13、14、そしてこれらの強磁性体層13、14に挟持される絶縁層15から成る。本実施形態の構成は、第1の実施形態では第1の非磁性体層11としてAuを形成したが、その代わりに、Agを約10nm形成するほかは、第1の実施形態と同様な構成である。また、この応用例の磁性体トンネル接合素子の製造方法としては、クヌーセン・セルを用い、第1の非磁性体層11として、[ 100] 方向に結晶配向したAgの薄膜を約0.3nm/minの速度で約10nmの厚さにエピタキシャル成長する以外は、第1の実施形態と同様の方法で磁性体トンネル接合素子を製造する。
【0040】
第1の実施形態と同様にして、磁気抵抗特性の測定を行ったところ、MR比は約35%と高い値が得られた。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0041】
本実施形態の磁性体トンネル接合素子は第1の実施形態と同様、図1に示すように、2つの非磁性体層11、12と、これらの非磁性体層11、12に挟持される2つの強磁性体層13、14、そしてこれらの強磁性体層13、14に挟持される絶縁層15から成り、第1の強磁性体層13として、[ 100] 方向に結晶配向したα鉄の薄膜を約0.1nm/minの速度で約1nmの厚さに、[ 100] 方向に結晶配向したAuの薄膜を約0.1nm/minの速度で約1.5nmの厚さに、[ 100] 方向に結晶配向したα鉄の薄膜を約0.1nm/minの速度で約1nmの厚さに積層する以外は、第2の実施形態と同様の方法で磁性体トンネル接合素子を製造した。
【0042】
第1の実施形態と同様にして、磁気抵抗特性の測定を行ったところ、MR比は約41%と、高い値が得られた。
以上詳細に説明したような磁性体トンネル接合素子を用いる事により、高密度記憶素子を作製出来る。上記の実施形態では両方の磁性体電極を非磁性体と強磁性体の積層構造とし、[ 100] 方向に結晶配向したが、片方の磁性体電極が本発明に示す構成になっていれば良い。
【0043】
[ 100] 方向の配向については、膜主面、つまり、強磁性体層と絶縁層との接合面と垂直方向に結晶配向している事をいい、言い換えると、膜主面が〈100〉面に配向したものをいう。この結晶配向は、RHEEDにより観察する事が出来る。
【0044】
また、一方の強磁性体層内にIrMn合金等の反強磁性固着層を挿入して、強磁性体層の磁化方向を固着しても良い。
なお、上記各実施形態では、Fe、Au、Ag等と表記したが、各層が数nmと薄い事から、隣接する層、特に下層を構成する材料原子が、上層に混入する事もある。この場合、互いの磁気特性に損傷を与えない程度の拡散であれば、本発明の効果は得られる。
【0045】
図4は本発明の磁性体トンネル接合素子を用いたMRAMセルの回路図である。磁性体トンネル接合素子41は、一方の電極はワード線42に接続され、もう一方はノードNを介してMOS型トランジスタ43のゲートと、抵抗44へ各々接続される。MOS型トランジスタ43のソースは接地されており、ドレインはビット線45へ接続されている。
【0046】
このMRAMセルへの書き込み、読み出し方法としては、公知の方法で行う事が出来、書き込み方法としては、磁性体トンネル接合素子41上にワード線42とビット線45が直交するように配置し、ワード線42、ビット線45に、同時に電流を流す。2つの電流により発生する合成磁場を利用して、磁化の向きを変化させる事により、1つのセルに選択的に書き込みが出来る。電流の大きさは、磁性体トンネル接合素子41の一方の強磁性体層の磁化を変化させる程度にすれば良い。
【0047】
また、読み出し方法としては、ワード線42から磁性体トンネル接合素子41に電圧をかける際に、磁性体トンネル接合素子41の磁化が平行であるか反平行であるかによって抵抗が変化する事を利用して、ゲートがオン、またはオフし、ビット線45に流れる電流が変化する事によって読み出す。抵抗44は、ノードNの電位に、バイアスを与える為に設ける。
【0048】
以上の様に磁性体トンネル接合素子を用いる事により、高感度、かつMR比の高い磁気再生ヘッドや磁気メモリーを形成する事が出来、ひいては高記録密度の磁気記録装置、及び高集積の記録装置を提供する事が可能である。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、MR比が大きく、電圧依存性の小さい磁性体トンネル接合素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁性体トンネル接合素子の断面図。
【図2】薄膜中の電子の状態密度とエネルギーの関係。
【図3】電子状態密度とエネルギーのスピン依存性。
【図4】MRAMセル。
【図5】ハーフメタルのバンド図。
【図6】従来の磁性体トンネル接合素子の断面図。
【図7】強磁性金属のバンド図。
【符号の説明】
11…第1の非磁性体層
12…第2の非磁性体層
13…第1の強磁性体層
14…第2の強磁性体層
15…絶縁層
41…磁性体トンネル接合素子
42…ワード線
43…MOS型トランジスタ
44…抵抗
45…ビット線
61…磁性体電極層
62…絶縁層
Claims (3)
- 第1の磁性体電極と、
[ 100] 方向に結晶配向した第2の磁性体電極と、
前記第1の磁性体電極と前記第2の磁性体電極との間に設けられる絶縁層とを具備し、
前記第2の磁性体電極は、鉄、コバルト、またはニッケルを含む第1の薄膜と、貴金属、銅、またはクロムを含む第2の薄膜との積層構造から構成され、前記第1の薄膜は、前記第2の薄膜よりも前記絶縁層側に設けられている事を特徴とする磁性体トンネル接合素子。 - 前記第2の薄膜が半導体基板上に直接またはバッファー層を介して形成されている事を特徴とする請求項1記載の磁性体トンネル接合素子。
- 前記第1の薄膜及び前記第2の薄膜がエピタキシャル成長されている事を特徴とする請求項2記載の磁性体トンネル接合素子。
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