JP3564179B2 - 1,2−インダンジオールの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、1,2−インダンジオール(1,2−ジヒドロキシインダンとも呼ばれる。)の製造方法に関する。1,2−インダンジオールは、医薬品の中間体として工業的に重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させると、1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルが得られる事が知られている。(例えば、William E.Rosen等、J.Org.Chem.,29,1723(1964)) このモノギ酸エステルを取り出し、エタノールに溶解し、NaOHを加えて加熱し、エーテルで抽出した後、エーテルを留去する事によって、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。
また、インデンに臭素と水を作用させて、2−ブロモ−1−ヒドロキシインデンを得、これにアルカリを作用させて、1,2−インダンジオールを得る方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記William等の方法を工業的スケールで実施する場合には、工程数が多く、多量の有機溶剤を使用するため、安全面、経済面で多くの問題を抱えている。また、臭素を使用する方法は、臭素の持つ有害性が指摘されており、作業員に対する労働災害上の問題を始め、地球環境的問題として、ハロゲンの使用は、今後ますます制限される方向にある。
【0004】
本発明は、一切のハロゲン物質、及び有機溶剤を使用しない1,2−インダンジオールの経済的な製造方法を見出す事を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インデンに対してギ酸と過酸化水素を作用させて得られる反応中間生成物(1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルを主成分とする。)に対して、水を加え、これを加熱する事によってギ酸のエステルの加水分解が簡単に進行し、1,2−インダンジオールが得られる事を発見した。
さらに、1,2−インダンジオールを取り出す際、不溶性の油状物質を除去した後、水相部を冷却する事により、純度のより高い製品を得る事が出来る事を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、インデンに対してギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加えて40〜120℃の範囲に加熱する事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。また、インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加え、40〜120℃の範囲に加熱して加水分解を行い、その後、不溶性油分を除去して水相部を得、この水相部を冷却して、目的成分を固型分をとして取り出す事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。更にまた、水を加えて40〜120℃に加熱して加水分解を行った後、反応系を30〜60℃の範囲に冷却してから、不溶性油分を除去して水相部を得、この水相部を更に冷却して、目的成分を固型分を取り出す事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。
【0007】
1,2−インダンジオールには、cis−体とtrans−体の二種類が存在する事が知られており、ギ酸−過酸化水素酸化方法においては、cis−体が優先的に生成する事が知られている。従って、本発明の方法は、cis−体が主な対象目的物となるが、用途によっては、cis−体、trans−体の混合物でもそのまま有用であり、本発明においては、cis−体、trans−体の混合比率は、特に問題では無い。
【0008】
本発明の方法で用いるインデンは、通常の工業薬品を使用する事で対応され、その純度は、80〜95%程度である。
【0009】
本発明の方法で使用されるギ酸は、工業的グレードのもので良く、特に濃度等に制限は無いが、50〜98%の範囲のものを使用するのが通常であり、一般的には85%品を使用すのが良い。ギ酸の使用量は、インデンに対して2〜10倍モルの範囲で使用されるが、6〜8倍モル使用するのが良い。
【0010】
過酸化水素は、30〜80%の濃度のものを使用するが、特には35〜60%のものが良く、安全性を考慮する時、35%品を使用するのが良い。過酸化水素の使用量は、インデンに対して、1.0〜1.8倍モル、好ましくは、1.2〜1.5、さらには、1.3〜1.4倍モルの範囲で使用するのが良い。
【0011】
過酸化水素とギ酸による酸化工程の反応温度は、20〜70℃の範囲で可能であるが、30〜50℃の範囲、さらには35〜40℃の間にコントロールするのが良い。
【0012】
インデンに対して、過酸化水素とギ酸を作用させた後、過剰のギ酸を留去する。この際の残渣分は、1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルを主体とするものであり、この残渣分を便宜上「ギ酸エステル」と呼ぶ事にする。
【0013】
このギ酸エステルに対して、加える水の量は、広い範囲において有効であるが、1〜50倍重量の範囲で使用するのが良く、さらには3〜10倍重量を使用するのが良い。
【0014】
ギ酸エステルを水で加水分解する際の温度は、40〜120℃の範囲が良いが、通常80〜105℃で行うのが良い。加熱時間は、0.5〜6hrの範囲が良く、さらには1〜2hrの範囲が良い。
【0015】
加水分解時に水を使用する事が、本発明の重要な要件の一つであり、一般的にエステルの加水分解に使用されるアルカリ水溶液を使用してはならない。アルカリ水溶液を使用すると、反応液が黒色化し、また、不溶性油分の分離が不可能となる。
【0016】
加水分解後、そのまま水を留去すれば、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合の純度は、70%程度である。
【0017】
さらに、純度の高い製品を得るために、水と加熱した後、不溶性の油状物質を高温のまま除去し、水相部を冷却する事によって固形物を得、これを濾別する事により、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合には、製品の純度は、85%程度となる。
【0018】
さらに高純度の製品を得ようとする場合には、水と加熱後、一度30〜60℃まで冷却し、その時に不溶性である油状物質を除去した後、水相部を冷却し、固形物を濾別する事によって、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合の純度は、95%程度である。
【0019】
不溶性油状物質の除去方法は、通常の分液操作で良く、反応器下部に設けたサイトグラスで界面を目視で観察しながら、油相と水相を分離すれば良い。また、撥油性のフィルターでろ過する事により、油状物質を除去する事も可能である。
【0020】
1,2−インダンジオールを濾別し、湿潤結晶として得た場合は、それを乾燥する事によって最終製品となる。
【0021】
【作用】
一般的に、エステル類を加水分解する時には、アルカリ性物質を作用させるのが通常であり、酸性側での反応は極めて遅い。まして、単に水を加えて加熱しても、通常加水分解は、短時間では起こらない。本発明の場合、どういう機構で加水分解が起きるのか不明確であるが、インダンジオールのギ酸エステルの持つ特有な性質として、水と加熱される事により、簡単に加水分解されるものと思われる。
【0022】
さらに、アルカリを使用して加熱した場合の黒色化現象も反応機構上の説明は出来ないが、インダンジオールの副反応、あるいは酸化工程での副生物がさらに複雑な発色団を持つ化合物となるものと想像される。
【0023】
本発明の方法においては、第一段の酸化工程における副生物であるインデンの重合物(二量体、三量体も含む。)が主な不純物であるが、これらは、水に不溶性であるため、水と加熱した際に、不溶性油状物質として除去する事が可能である。さらに、目的とする1,2−インダンジオールは、加熱時には、水に対してかなりの溶解性を示し、冷却時には、析出して取り出す事が出来る事が、本発明の機構の重要な要件となている。
【0024】
加水分解時にアルカリを使用すると、油状物質として分離されるべき副生物に何らかの化学反応が起き、水溶性を持つようになるため、油状物質も水相側に溶解してしまい、分離不可能となるのと考えられる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の方法に従えば、ギ酸−過酸化水素系による酸化工程以降、水以外の物質を全く使用する事無く、1,2−インダンジオールを得る事が可能であり、さらに、必要な純度に応じて簡単に精製する事も可能である。酸化工程において毒性の強い臭素を使う事無く、精製工程において危険性、毒性の強い有機溶剤を全く使用しない事は大きな意義を持っている。さらに、加水分解工程においても、アルカリ成分を全く使用しない事は、経済的であり、かつ製品の純度向上に寄与するものである。本発明の持つ工業的意義は大きなものがある。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
1リットル容量の反応フラスコに、撹拌羽根、温度計、冷却器を付け、85%ギ酸519.9g(9.6モル)と35%過酸化水素163.2g(1.68モル)を入れ撹拌する。反応温度を35℃に保ちながら、インデン145.4g(純度95.85%品、1.20モル)を2hrかけて滴下する。インデンの滴下終了後8hr、35℃を保つ。
反応後、反応液からギ酸分を留去し、残渣分(以下、ギ酸エステルと呼ぶ。)254.5gを得た。これに605.5gの水を加え、100℃に1hr加熱撹拌した。この系から減圧下、水分を留去し、1,2−インダンジオール220.6gを得た。液体クロマトグラフによる分析の結果、cis−1,2−インダンジオール55.76%、trans−1,2−インダンンジール11.78%が含有されており、1,2−インダンジオール合計としては、67.54%の純度である事が判明した。純分としての絶対量としては、148.99g(0.992モル)であり、インデンベースの収率では、82.7%であった。
【0027】
実施例2
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して、605.5gの水を加え、100℃に1hr加熱撹拌した。静置後、液温を80℃以上に保ったまま、ポンプで、上層である水相を吸引し、下層にあるタール状褐色不溶性物質を除去した。得られた水相部を、別の反応器に移し、撹拌しながら、10℃以下まで冷却すると、白色固形物が析出する。これに、202gの水を加えてスラリー化し、濾別して湿潤固体を得、75℃で真空乾燥して、11.69gのインダンジオールを得た。分析の結果、trans−1,2−インダンジオールが24.17%、cis−1,2−インダンジオールが61.28%含有され、1,2−インダンジオールとしては、85.48%の純度である事が判明した。純分としての絶対量は、95.40g(0.635モル)であり、インデンベースの収率は、52.94%である。
【0028】
実施例3
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して605.5gの水を加え、100℃に3hr加熱撹拌した。これを40℃まで冷却した後、40℃を保ちながら静置し、ポンプで上層(水相)を別の反応器に移し、10℃以下に冷却して得られた結晶を濾別した。得られた湿潤固体を真空乾燥して65.39gの1,2−インダンジオールを得た。分析の結果、trans−1,2−インダンジオールは、17.71%、cis−インダンジオールは、77.29%の含有率であり、1,2−インダンジオール合計としては、95.0%の純度であった。純分の絶対量は、62.12g(0.414モル)、インデンベースの収率は、34.47%であった。
【0029】
比較例1
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して10%水酸化ナトリウム水溶液605.5gを加え、100℃に1hr加熱した。この後、実施例2のように、不溶性油分を分離しようと考えていたが、加熱すると液は黒色化し、不溶性油分の分離が観測されなかった。
【産業上の利用分野】
本発明は、1,2−インダンジオール(1,2−ジヒドロキシインダンとも呼ばれる。)の製造方法に関する。1,2−インダンジオールは、医薬品の中間体として工業的に重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させると、1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルが得られる事が知られている。(例えば、William E.Rosen等、J.Org.Chem.,29,1723(1964)) このモノギ酸エステルを取り出し、エタノールに溶解し、NaOHを加えて加熱し、エーテルで抽出した後、エーテルを留去する事によって、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。
また、インデンに臭素と水を作用させて、2−ブロモ−1−ヒドロキシインデンを得、これにアルカリを作用させて、1,2−インダンジオールを得る方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記William等の方法を工業的スケールで実施する場合には、工程数が多く、多量の有機溶剤を使用するため、安全面、経済面で多くの問題を抱えている。また、臭素を使用する方法は、臭素の持つ有害性が指摘されており、作業員に対する労働災害上の問題を始め、地球環境的問題として、ハロゲンの使用は、今後ますます制限される方向にある。
【0004】
本発明は、一切のハロゲン物質、及び有機溶剤を使用しない1,2−インダンジオールの経済的な製造方法を見出す事を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インデンに対してギ酸と過酸化水素を作用させて得られる反応中間生成物(1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルを主成分とする。)に対して、水を加え、これを加熱する事によってギ酸のエステルの加水分解が簡単に進行し、1,2−インダンジオールが得られる事を発見した。
さらに、1,2−インダンジオールを取り出す際、不溶性の油状物質を除去した後、水相部を冷却する事により、純度のより高い製品を得る事が出来る事を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、インデンに対してギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加えて40〜120℃の範囲に加熱する事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。また、インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加え、40〜120℃の範囲に加熱して加水分解を行い、その後、不溶性油分を除去して水相部を得、この水相部を冷却して、目的成分を固型分をとして取り出す事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。更にまた、水を加えて40〜120℃に加熱して加水分解を行った後、反応系を30〜60℃の範囲に冷却してから、不溶性油分を除去して水相部を得、この水相部を更に冷却して、目的成分を固型分を取り出す事を特徴とする1,2−インダンジオールの製造方法である。
【0007】
1,2−インダンジオールには、cis−体とtrans−体の二種類が存在する事が知られており、ギ酸−過酸化水素酸化方法においては、cis−体が優先的に生成する事が知られている。従って、本発明の方法は、cis−体が主な対象目的物となるが、用途によっては、cis−体、trans−体の混合物でもそのまま有用であり、本発明においては、cis−体、trans−体の混合比率は、特に問題では無い。
【0008】
本発明の方法で用いるインデンは、通常の工業薬品を使用する事で対応され、その純度は、80〜95%程度である。
【0009】
本発明の方法で使用されるギ酸は、工業的グレードのもので良く、特に濃度等に制限は無いが、50〜98%の範囲のものを使用するのが通常であり、一般的には85%品を使用すのが良い。ギ酸の使用量は、インデンに対して2〜10倍モルの範囲で使用されるが、6〜8倍モル使用するのが良い。
【0010】
過酸化水素は、30〜80%の濃度のものを使用するが、特には35〜60%のものが良く、安全性を考慮する時、35%品を使用するのが良い。過酸化水素の使用量は、インデンに対して、1.0〜1.8倍モル、好ましくは、1.2〜1.5、さらには、1.3〜1.4倍モルの範囲で使用するのが良い。
【0011】
過酸化水素とギ酸による酸化工程の反応温度は、20〜70℃の範囲で可能であるが、30〜50℃の範囲、さらには35〜40℃の間にコントロールするのが良い。
【0012】
インデンに対して、過酸化水素とギ酸を作用させた後、過剰のギ酸を留去する。この際の残渣分は、1,2−インダンジオールのモノギ酸エステルを主体とするものであり、この残渣分を便宜上「ギ酸エステル」と呼ぶ事にする。
【0013】
このギ酸エステルに対して、加える水の量は、広い範囲において有効であるが、1〜50倍重量の範囲で使用するのが良く、さらには3〜10倍重量を使用するのが良い。
【0014】
ギ酸エステルを水で加水分解する際の温度は、40〜120℃の範囲が良いが、通常80〜105℃で行うのが良い。加熱時間は、0.5〜6hrの範囲が良く、さらには1〜2hrの範囲が良い。
【0015】
加水分解時に水を使用する事が、本発明の重要な要件の一つであり、一般的にエステルの加水分解に使用されるアルカリ水溶液を使用してはならない。アルカリ水溶液を使用すると、反応液が黒色化し、また、不溶性油分の分離が不可能となる。
【0016】
加水分解後、そのまま水を留去すれば、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合の純度は、70%程度である。
【0017】
さらに、純度の高い製品を得るために、水と加熱した後、不溶性の油状物質を高温のまま除去し、水相部を冷却する事によって固形物を得、これを濾別する事により、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合には、製品の純度は、85%程度となる。
【0018】
さらに高純度の製品を得ようとする場合には、水と加熱後、一度30〜60℃まで冷却し、その時に不溶性である油状物質を除去した後、水相部を冷却し、固形物を濾別する事によって、1,2−インダンジオールを得る事が出来る。この場合の純度は、95%程度である。
【0019】
不溶性油状物質の除去方法は、通常の分液操作で良く、反応器下部に設けたサイトグラスで界面を目視で観察しながら、油相と水相を分離すれば良い。また、撥油性のフィルターでろ過する事により、油状物質を除去する事も可能である。
【0020】
1,2−インダンジオールを濾別し、湿潤結晶として得た場合は、それを乾燥する事によって最終製品となる。
【0021】
【作用】
一般的に、エステル類を加水分解する時には、アルカリ性物質を作用させるのが通常であり、酸性側での反応は極めて遅い。まして、単に水を加えて加熱しても、通常加水分解は、短時間では起こらない。本発明の場合、どういう機構で加水分解が起きるのか不明確であるが、インダンジオールのギ酸エステルの持つ特有な性質として、水と加熱される事により、簡単に加水分解されるものと思われる。
【0022】
さらに、アルカリを使用して加熱した場合の黒色化現象も反応機構上の説明は出来ないが、インダンジオールの副反応、あるいは酸化工程での副生物がさらに複雑な発色団を持つ化合物となるものと想像される。
【0023】
本発明の方法においては、第一段の酸化工程における副生物であるインデンの重合物(二量体、三量体も含む。)が主な不純物であるが、これらは、水に不溶性であるため、水と加熱した際に、不溶性油状物質として除去する事が可能である。さらに、目的とする1,2−インダンジオールは、加熱時には、水に対してかなりの溶解性を示し、冷却時には、析出して取り出す事が出来る事が、本発明の機構の重要な要件となている。
【0024】
加水分解時にアルカリを使用すると、油状物質として分離されるべき副生物に何らかの化学反応が起き、水溶性を持つようになるため、油状物質も水相側に溶解してしまい、分離不可能となるのと考えられる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の方法に従えば、ギ酸−過酸化水素系による酸化工程以降、水以外の物質を全く使用する事無く、1,2−インダンジオールを得る事が可能であり、さらに、必要な純度に応じて簡単に精製する事も可能である。酸化工程において毒性の強い臭素を使う事無く、精製工程において危険性、毒性の強い有機溶剤を全く使用しない事は大きな意義を持っている。さらに、加水分解工程においても、アルカリ成分を全く使用しない事は、経済的であり、かつ製品の純度向上に寄与するものである。本発明の持つ工業的意義は大きなものがある。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
1リットル容量の反応フラスコに、撹拌羽根、温度計、冷却器を付け、85%ギ酸519.9g(9.6モル)と35%過酸化水素163.2g(1.68モル)を入れ撹拌する。反応温度を35℃に保ちながら、インデン145.4g(純度95.85%品、1.20モル)を2hrかけて滴下する。インデンの滴下終了後8hr、35℃を保つ。
反応後、反応液からギ酸分を留去し、残渣分(以下、ギ酸エステルと呼ぶ。)254.5gを得た。これに605.5gの水を加え、100℃に1hr加熱撹拌した。この系から減圧下、水分を留去し、1,2−インダンジオール220.6gを得た。液体クロマトグラフによる分析の結果、cis−1,2−インダンジオール55.76%、trans−1,2−インダンンジール11.78%が含有されており、1,2−インダンジオール合計としては、67.54%の純度である事が判明した。純分としての絶対量としては、148.99g(0.992モル)であり、インデンベースの収率では、82.7%であった。
【0027】
実施例2
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して、605.5gの水を加え、100℃に1hr加熱撹拌した。静置後、液温を80℃以上に保ったまま、ポンプで、上層である水相を吸引し、下層にあるタール状褐色不溶性物質を除去した。得られた水相部を、別の反応器に移し、撹拌しながら、10℃以下まで冷却すると、白色固形物が析出する。これに、202gの水を加えてスラリー化し、濾別して湿潤固体を得、75℃で真空乾燥して、11.69gのインダンジオールを得た。分析の結果、trans−1,2−インダンジオールが24.17%、cis−1,2−インダンジオールが61.28%含有され、1,2−インダンジオールとしては、85.48%の純度である事が判明した。純分としての絶対量は、95.40g(0.635モル)であり、インデンベースの収率は、52.94%である。
【0028】
実施例3
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して605.5gの水を加え、100℃に3hr加熱撹拌した。これを40℃まで冷却した後、40℃を保ちながら静置し、ポンプで上層(水相)を別の反応器に移し、10℃以下に冷却して得られた結晶を濾別した。得られた湿潤固体を真空乾燥して65.39gの1,2−インダンジオールを得た。分析の結果、trans−1,2−インダンジオールは、17.71%、cis−インダンジオールは、77.29%の含有率であり、1,2−インダンジオール合計としては、95.0%の純度であった。純分の絶対量は、62.12g(0.414モル)、インデンベースの収率は、34.47%であった。
【0029】
比較例1
実施例1と全く同様にして得られたギ酸エステル254.5gに対して10%水酸化ナトリウム水溶液605.5gを加え、100℃に1hr加熱した。この後、実施例2のように、不溶性油分を分離しようと考えていたが、加熱すると液は黒色化し、不溶性油分の分離が観測されなかった。
Claims (2)
- インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加え、40〜120℃の範囲に加熱して加水分解を行い、その後、不溶性油分を除去して水相部を得、該水相部を冷却して目的成分を固型分として取り出す、アルカリ水溶液を一切使用しないことを特徴とする、1,2−インダンジオールの製造方法。
- インデンに対して、ギ酸と過酸化水素を作用させた後、ギ酸を留去し、得られる反応中間生成物に水を加え、40〜120℃の範囲に加熱して加水分解を行った後、反応系を30〜60℃に冷却してから、不溶性油分を除去して水相部を得、該水相部を更に冷却して、目的成分を固型分として取り出す、アルカリ水溶液を一切使用しないことを特徴とする、1,2−インダンジオールの製造方法。
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JP27859894A JP3564179B2 (ja) | 1994-10-19 | 1994-10-19 | 1,2−インダンジオールの製造方法 |
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JP27859894A JP3564179B2 (ja) | 1994-10-19 | 1994-10-19 | 1,2−インダンジオールの製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH08119891A JPH08119891A (ja) | 1996-05-14 |
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JP27859894A Expired - Fee Related JP3564179B2 (ja) | 1994-10-19 | 1994-10-19 | 1,2−インダンジオールの製造方法 |
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JP (1) | JP3564179B2 (ja) |
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1994
- 1994-10-19 JP JP27859894A patent/JP3564179B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH08119891A (ja) | 1996-05-14 |
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