JP3554286B2 - ろ過分離円筒膜カートリッジ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨水や生活排水を浄水処理したり、活性汚泥水槽から汚泥成分を除去して水を浄化するための水処理装置に浸漬して、非浄水成分をろ過分離することにより、透過水を抽出するために使用されるろ過分離円筒膜カートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、汚水を効率的に処理するための方法として、有機物を餌として増殖する微生物を集めて活性汚泥とし、有機物を吸着分解した後に、沈殿池でこの微生物を沈殿除去して、水を浄化する方法が広く実施されている。この沈殿除去操作を無くしてその代わりに、活性汚泥を分離するためのろ過膜を用いて汚泥を完全に分離する方法が普及し始めており、処理水質が汚泥の沈降性に影響されないので、維持管理が簡単になる等の大きな利点があることが報告されている。
【0003】
このような活性汚泥を固液分離するシステムについて、本発明に係る図面である図6を援用して説明する。上記したろ過分離システムにおいて、円筒形状を有するろ過膜を使用する例としては、セラミック材を円筒形に成形して使用する例が、特開平10-235162 号公報に開示されている。この公報に示されるろ過モジュールMは、後述する複数のセラミック製ろ過円筒体101を、所定の枠体中に平行に横配置して取付けてモジュール化したろ過装置であって、所定の方法で集水管41と連結され、水処理槽43に浸漬して使用されている。その状態において、集水管41に接続されたポンプPを用いてその管内を減圧し、ろ過モジュールM中の各セラミック製ろ過円筒体101内に負圧をかけることにより、水処理槽43内の汚水を吸引ろ過して、セラミック製ろ過円筒体101の内部に透過水を抽出し、集水管41を経由して水処理槽43から排出させている。このシステムにおいては、負圧をかけることによりセラミック製ろ過円筒体101の外周部に汚泥が付着してその気孔が閉塞するのを防ぐために、水処理槽43の下部に曝気装置Bと連結する散気管46を設置して、ろ過モジュールM内部を曝気する方法がとられている。
【0004】
次に、このろ過モジュールMの構成について、図14及び図15を用いて説明する。前記各セラミック製ろ過円筒体101の両端部には、対向配置された一対のヘッダー102,103が設けられ、各ヘッダー102,103の間には、同じく対向配置された一対のガイド板110が渡されて、各々連結している。排水口106が設けられた一方のヘッダー102には、集水室105が形成されるように面板104が取り付けられている。該面板104には、各セラミック製ろ過円筒体101が前記集水室105内に開口した状態で、それらの片端を挿通支持するための孔107が設けられており、一方、それらの他端は、ヘッダー103に支持されている。セラミック製ろ過円筒体101の端部が挿通された孔107の周囲、及びヘッダー103のセラミック製ろ過円筒体101の他端部の支持部分は、それぞれ接着剤108,109によって水密を保たれた状態で、各セラミック製ろ過円筒体101の両端部と固着されている。即ち、ろ過モジュールMは、セラミック製ろ過円筒体101よりも長い間隔をおいた一対のヘッダー102,103が、同じく一対のガイド板110で枠状に一体連結されて、一方のヘッダー103と面板104とによって、多数本のセラミック製ろ過円筒体101の両端部が水平支持されて、上下両面が開口した状態で、水処理槽43内に浸漬配置される。
【0005】
このようなろ過モジュールMを使用してろ過を行う際は、ろ過モジュールMを水処理槽43内に浸漬し、曝気して汚泥水を流動させる。すると、上昇汚水(被ろ過水)11が、多数のセラミック製ろ過円筒体101の間を、図15で矢印で示すように通過し、排水口106を通じてセラミック製ろ過円筒体101に作用する負圧によって、セラミック製ろ過円筒体101の周壁を透過した透過水が、集水室105と排水口106とを経て、ろ過モジュールMの外部の集水管41に排出されるものである。ろ過モジュールMの下端開口部にて、連続的に行われる曝気操作により、上昇汚水11は連続的に発生しており、汚泥水中の固形物8(図5参照)を拡散させて、セラミック製ろ過円筒体101の膜表面を更新し、その閉塞を防止している。
【0006】
しかしながら、特に水処理槽43中に固形物を多く含む活性汚泥槽等においては、曝気するだけでセラミック製ろ過円筒体101の気孔閉塞を防ぐことは、困難であった。また、セラミック製ろ過円筒体101は、横配置して使用されるので、汚泥水が曝気によりモジュール内を上昇した後に、汚泥水中の固形物8(図5参照)が、セラミック製ろ過円筒体101の円筒上部101aに堆積してしまい、円筒体のほぼ全周に亘って有効であるはずのろ過面積が、堆積物によってその部分のみ無効となって減少してしまうので、所定のろ過効率を維持し続けることができなかった。固形物8とは、活性汚泥等の塊状の被ろ過物である。また、固形物8のみならず、滑りのようにセラミック製ろ過円筒体101に付着する非浄水成分10も存在し、各々セラミック製ろ過円筒体101の気孔閉塞の原因となるものであった。そこで、セラミック製ろ過円筒体101を各々露出させて、それら堆積固形物8及び非浄水成分10を物理的に掻き落とす必要があるが、該ろ過円筒体101は、面板104とヘッダー103とに接着剤108,109を用いて固着されて一体となっているので、それらを1本ずつ洗浄することが困難であった。
【0007】
また、セラミック材は、一般的に脆いので、曝気による振動等によって破損し易く、そのために、横配置するよりも振動の影響が大きいと考えられる縦配置した状態で、曝気槽中で使用される例は、報告されておらず、非浄水成分10を主な被ろ過物とするろ過分離システムのみにおいて、縦配置して使用する例が、報告されていた。また、セラミック製ろ過円筒体101が破損した場合には、該セラミック製ろ過円筒体101のみならず、ろ過モジュールMごと交換する必要があるので、信頼性及び効率の双方の高いろ過操作を維持するためには、高いコストが必要であった。
【0008】
また、剛性に欠けるセラミック材の代わりに、樹脂類でろ過膜体を構成する従来のろ過分離システムも存在するが、セラミック材に匹敵する膜強度を有するものは皆無であって、自身の形状を円筒形に保持した使用例は、なかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、軽量で、しかも必要なろ過性能を維持していて、単独で使用可能なろ過分離円筒膜カートリッジを提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、前記カートリッジのろ過材は、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されており、前記FRP製の樹脂膜で構成された円筒状のカートリッジ本体の両端開口が、キャップにより水密保持して閉塞され、ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴としている。
【0011】
請求項1の発明によれば、カートリッジのろ過材が、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されていて、ろ過材がFRP製であること、及び全体形状が円筒状であることとの異なる要因が相乗して、薄肉でありながら必要強度を確保しているので、従来のセラミック製の円筒状のカートリッジ本体よりも軽量であって、取扱いが容易となって、メンテナンスの際の負担が軽くなるので、ろ過分離システムの信頼性を向上させることができる。また、各カートリッジを1本ずつ独立して縦配置するので、各セラミック円筒管を横配置してモジュール化する従来構成の場合と比較して、曝気流が円筒状のろ過部である全外周面にわたって均等に及ぶので、カートリッジ本体に対して非浄水成分が付着しにくくなって、ろ過操作を効率的に行うことができる。また、円筒膜カートリッジに不具合が生じた場合には、その一本のみを容易に交換することができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、カートリッジ本体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明によれば、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなって、長時間に亘って、良好なろ過性能を維持できる。
【0014】
また、請求項3の発明は、水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、カートリッジ本体は、内外二本のろ過円筒膜体が同心状に配置された二重管構造であって、両ろ過円筒膜体の間の空間が透過水の通路となって、前記カートリッジ本体の両端のリング状開口がキャップにより水密を保持して閉塞され、前記カートリッジ本体を構成する内外二本のろ過円筒膜体は、連続した微細気孔を有するFRP製の樹脂膜で構成されて、ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1の効果に加えて、カートリッジ本体の内周面においてもろ過分離することが可能となって、設置空間を増大させずにろ過面積が増大され、ろ過分離システム全体のろ過効率が向上する。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、カートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の下端開口には、上昇汚水が前記ろ過円筒膜体の内周面に沿って流れるようにする逆円錐状の水流案内体が配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明によれば、逆円錐状の外周面に沿って曝気流が円筒膜カートリッジ本体の内周面全域に行き渡るので、円筒膜カートリッジ本体の内周面部への非浄水成分の付着を防ぐことができて、ろ過操作の効率を向上することができる。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、カートリッジ本体の外側のろ過円筒膜体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明によれば、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなる。
【0020】
また、請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれかに記載の発明において、二重管構造のカートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の内側には、単管構造の別のカートリッジ本体がほぼ同心となって配置されて、両カートリッジ本体は、そのキャップの部分で一体連結されていることを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明によれば、二重管構造のカートリッジ本体の内側の空間に、別のろ過領域を形成できるため、カートリッジの占有空間に対するろ過面積の割合が一層大きくなって、ろ過効率が更に高まる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の第1実施形態に係る円筒膜カートリッジK1 について、図1ないし図6を用いて詳細に説明する。図1は、ユニット枠12に多数本の円筒膜カートリッジK1 が縦配置された状態での部分平面図であり、図2は、同様の状態の部分斜視図であり、図3は、同様の状態を底面側から見た部分斜視図であり、図4は、円筒膜カートリッジK1 の分解斜視図であり、図5は、円筒膜カートリッジK1 の使用状態の縦断面図であり、図6は、円筒膜カートリッジK1 を縦配置したユニット枠12が、水処理槽43に浸漬された状態の正面断面図である。
【0023】
最初に、円筒膜カートリッジK1 の構成について説明する。図2ないし図5に示されるとおり、円筒形状を有するろ過膜体である円筒膜カートリッジK1 は、その内外周部の非浄水成分10をろ過分離して、排水管45を経由して集水管41に透過水を抽出するためのろ過体であって、しかも、従来構成のろ過モジュールMとは異なって、各ろ過体が独立したカートリッジ形式のものであり、後述する方法でユニット枠12に縦配置して使用される。円筒膜カートリッジK1 は、円筒管形状の内側ろ過円筒膜体1の外側に、それより大径の外側ろ過円筒膜体2を同心状に配置して、それらの間に透過水路9を形成し、透過水を内部に抽出する二重管構造のカートリッジ本体A1 と、その上端及び下端の両リング状開口部7を水密を保持して閉塞するためのリング形状の上端及び下端の各キャップ4,5と、透過水を排出するために前記上端キャップ4の排水口に取付けられる排水管連結具6とで構成されている。
【0024】
前記内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、いずれもFRP製の樹脂で成形されて、その外径(又は内径)のみが異なって、その長さは、同一である。大径の外側ろ過円筒膜体2の内周部には、それより小径の内側ろ過円筒膜体1が、互いの高さを揃えて挿入されている。また、本発明に係るFRP製の樹脂で成形された内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、透過方向の厚み及び強度と、ろ過するための均質な気孔とを有する樹脂製のろ過材であって、その構成、製法等の詳細は、後述する。
【0025】
また、上端及び下端の各キャップ4,5は、前記一対のリング状の開口部7より僅かに大きいリング形状を有している。上端キャップ4には、外周壁部4a及び内周壁部4bが形成されており、カートリッジ本体A1 を構成する内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2の上端部が、それぞれ前記上端キャップ4の内周壁部4b及び外周壁部4aに挿入嵌合されて、カートリッジ本体A1 の上端のリング状開口部7が閉塞されて、両者の密着部には、接着剤(図示せず)が使用されて、内外の水密が保持されている。また、下端キャップ5にも、外周壁部5a及び内周壁部5bが形成されており、上記と同様の構造によって、下端キャップ5によりカートリッジ本体A1 の下端のリング状開口部7が閉塞されている。また、上端キャップ4には、排水口となる貫通孔が設けられており、その貫通孔には、一対のナット67,68を介して排水管連結具6が取付けられている。なお、上端キャップ4のリング形状面の上部に取付けられている一対の止め具61は、ユニット枠12に設置した円筒膜カートリッジK1 の浮上を防止する浮上防止ワイヤー62を挿通するためのものである。
【0026】
次に、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2に用いられる樹脂材であるFRPろ過材について説明する。本発明の円筒膜カートリッジK1 のろ過円筒膜体として使用するFRPろ過材は、硬化材を加えた液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合した、即ち水相に樹脂粒子が分散したO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、強化材であるガラスチョップストランドマットと不織布の存在下、常温又は加熱下に硬化、乾燥して水を除去して得られる微細な連続気孔を有するものである。硬化反応前の上記樹脂類と水とは、混合されてエマルジョンとなっており、水と接して存在する樹脂類は、表面張力の作用により自己最少表面積である球形状となり、その中で硬化反応が進行する。硬化反応完了後に水分は蒸発して除去されるので、各樹脂粒子間には、その分の微細気孔が連続して形成される。該気孔は、ろ過に最適な性能を有しており、1μm以上の大きさを有する細菌のろ過が充分可能な程度のものである。またFRPろ過材は、樹脂材であるので軽量であり、強化材の添加によりセラミック材に劣らない充分な強度を有しており、耐久性に優れているものである。なお、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂としては、液状不飽和ポリエステル樹脂又は液状エポキシ(メタ)アクリレート樹脂又は液状ウレタン(メタ)アクリレート樹脂又は液状(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、上記説明したFRPろ過材は、液状組成物から成形されるので、自由な形状のろ過材の成形が可能である。所定の比率で混合された液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とは、良好な粘度及び揺変性を示し、垂直面でも垂れることのないO/W型熱硬化性樹脂水性分散体となって、容易に成形することが可能となる。そして、本発明に係る内側及び外側ろ過円筒膜体1,2の成形は、図9に示されるように、それらの各内径に対応する内径を有する円柱形状の中芯20’を用いて行われる。中芯20’の外周面に離型材を塗布しておき、この中芯20’の外周面に、強化材であるガラスチョップストランドマットと不織布とを交互に重ねて、上記液状組成物を目的の肉厚分だけ含浸させた後に、所定の条件により硬化、乾燥させて、生成樹脂から中芯20’を引抜くことにより、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2が成形される。そのために、中芯20’には、抜き勾配が設けられている。なお、図9は、後述するカートリッジ本体A2 の成形を示す図であるが、成形原理は同一であるので、援用した。
【0028】
上記のようにして円筒状に成形された内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2の外径は、それぞれ約60,100mmであって、その高さは、いずれも約800mmであり、更に、その肉厚は、いずれも2〜3mmであった。前記各ろ過円筒膜体1,2は、円筒状に成形されているために、その肉厚が2〜3mmであっても、その形状剛性により、ろ過時における負圧、及び逆洗時における正圧に対して十分な強度を有するものである。
【0029】
次に、円筒膜カートリッジK1 を、多数まとめてユニット枠12に縦配置して収納配置する方法について、図1ないし図3,図6を用いて説明する。まず、ユニット枠12の構成について説明する。ユニット枠12は、直方体状の枠体であって、その上下面は、散気管42から出る気泡が、各円筒膜カートリッジK1 に回るように開口されており、長手方向Qに沿って対向配置された一対の長手方向側板部16と、それらに直交する短手方向に沿って対向配置された一対の短手方向側板部17とが設けられて、一体化されている。そして、一方の長手方向側板部16の上端部側方には、前記集水管41が水平に保持されている。また、該ユニット枠12の下方には、細長い棒状であって横断面がL字形の一対のL字形支持体13が、短手方向に沿って二本(一対)一組となって数組だけ配置されており、また、それら各一対のL字形支持体13の幅方向の中間部には、案内体取付ワイヤー64が短手方向に沿って配置されて、該ワイヤー64には、円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて複数の水流案内体15が、その上方に配置して取付けられている。
【0030】
また、前記L字形支持体13、及び案内体取付ワイヤー64の両端部は、前記一対の長手方向側板部16の下端部にそれぞれ固定されている。また、前記一対のL字形支持体13は、短手方向に沿って所定数の円筒膜カートリッジK1 を載架するためのものであって、その直径と略同一の間隔をおいて配置されている。また、一対のL字形支持体13には、各円筒膜カートリッジK1 を設定場所に縦配置可能にするために、その下端部の外周形状に対応した四個一組の支持突起18が、円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて、一体に設けられている。また、前記水流案内体15は、上昇汚水11が、カートリッジ本体A1 の内周壁に沿って流れるように、案内するためのものである。水流案内体15の下部には、逆円錐台形状の水流案内部15aが設けられており、その上部には、円錐形状の堆積防止部15bが設けられていて、両者の底面を合体させて一体に成形されている。水流案内体15は、所定の間隔をおいて、前記案内体取付ワイヤー64の上方に取付けられている。
【0031】
上記構成のユニット枠12に対して、各円筒膜カートリッジK1 は、その下端部と前記水流案内部15aとが、ほぼ同一高さとなり、しかも互いに同心状に配置されるように、前記支持突起18及びL字形支持体13によって位置決めされて、個別に縦配置されている。また、前記各円筒膜カートリッジK1 の上面部に設けられた前記各一対の止め具61には、浮上防止ワイヤー62が挿通されており、それらの両端部は、前記一対の長手方向側板部16の上方にて、各々固定されている。浮上防止ワイヤー62は、ユニット枠12内に縦配置された各円筒膜カートリッジK1 が、水処理槽43に浸漬された状態において、ユニット枠12に対して浮上するのを防止するためのものである。そして、図2及び図5に示されるように、各々の円筒膜カートリッジK1 の上端面に取り付けられた排水管連結具6と、前記集水管41に取り付けられた集水管連結具44とが、排水管45を用いて互いに連結されている。集水管41は、水処理槽43外に延長されて、その管路の途中にポンプPが組み込まれて、該ポンプPの変圧操作が集水管41の管内に及ぶように構成されている。
【0032】
次に、水処理槽43内に浸漬されるユニット枠12に縦配置した円筒膜カートリッジK1 を使用して、汚水(被ろ過水)をろ過する作用について説明する。水処理槽43内のユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK1 は、上述の方法で、その内部に負圧が作用することにより、カートリッジ本体A1 の外周部及び内周部の双方の汚水を吸引ろ過して、前記透過水路9に透過水を抽出する。カートリッジ本体A1 を構成する外側及び内側の各ろ過円筒膜体1,2は、前記FRP樹脂で成形されているので、適度なろ過気孔及び膜強度並びに剛性を有しており、縦配置した状態でその下方から曝気しても、その振動によって、同じ円筒形のセラミック材のように破損する恐れは無い。また、円筒膜カートリッジK1 が縦配置されているために、曝気泡中にて横配置して使用するセラミック製ろ過円筒体101と異なり、汚水中の固形物8が、ろ過膜上部に堆積しないので、ろ過有効面積を最大限利用することができる。
【0033】
また、ろ過時には、図5に示されるように、水処理槽43の底面に設置された前記散気管46からは、カートリッジ本体A1 の下方から上方に向けて、これと平行に気泡が発生しており、各カートリッジ本体A1 のほぼ全外周部、即ち外側ろ過円筒膜体2のほぼ全外周面部においては、上昇汚水11が連続的に発生している。それらの気泡や上昇汚水11は、縦配置された各カートリッジ本体A1 のほぼ全外周部と接触して、膜表面を連続的に更新する。つまり、ろ過操作と並行しながら、そこに固形物8及び非浄水成分10が付着するのを防ぐので、膜閉塞が生じにくく、ろ過効率が高められている。なお、図5に示される破線矢印は、透過水の通路を示す。
【0034】
一方、各カートリッジ本体A1 の内周部、即ち、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bにおいても、負圧負荷による吸引ろ過が、曝気と同時に進行している。内側ろ過円筒膜体1の下端開口部1aには、前記水流案内体15が設置されているので、その水流案内部15aに気泡や前記上昇汚水11が衝突して、それらの流れる方向は、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bに沿うように整流されて上昇する。従って、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bに上昇汚水11が強制的に接触し易くなるので、その膜表面が更新され、汚泥水中の固形物8及び非浄水成分10の付着を防止できて、外周面部と同様に、この部分での膜閉塞も生じにくくなり、ろ過効率が高められている。また、水流案内体15は、その下面において案内体取付ワイヤー64に支持されているのみであるが、上昇汚水11が前記水流案内体15に及ぼす力は、その軸心に対して均一となるので、該水流案内体15は常にその軸心を垂直にした目的姿勢を保持することができる。また、堆積防止部15bにおいては、先端が鋭角に突出しているので、汚泥等の固形物8が水流案内体15に降下しても、そこから滑り落ちて、その上に堆積することを阻止できる。また、単管構成のセラミック製ろ過円筒体101と異なり、カートリッジ本体A1 は、二重管構成であって、そのほぼ全内周面及び全外周面が、吸引ろ過が可能なろ膜部分となっているので、円筒膜カートリッジK1 の設置空間を増大させずに、ろ過面積を増大させることができる。また、円筒膜カートリッジK1 を縦配置した効果により、ろ過膜表面が効果的に更新されて、該円筒膜カートリッジK1 を使用するろ過分離システムの稼動効率が高められている。
【0035】
また、カートリッジ本体A1 の透過水路9は、前記内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2との間の空間部(その上下の各リング状開口部7が上下端の各キャップ4,5によって閉塞されている)のみで構成されている。一般に、平板形状よりも円筒形状の成形物の方が、その内部に負荷される負圧に抗する形状剛性が大きくなると考えられており、更に、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、セラミック材に劣らない膜強度を有する前記FRP製の樹脂膜で成形されているので、各ろ過円筒膜体1,2の間に、負圧により、これらが変形されるのを防止する変形防止部材を内装させずに、前記負圧負荷に抗して円筒形状を保持できる。このため、円筒膜カートリッジの構成を簡略化することができる。しかし、負圧による変形防止を確実にするには、各ろ過円筒膜体1,2の間に、透水性を有する変形防止部材を内装させてもよい。そして、前記負圧負荷により、透過水路9から排水管連結具6が設けられた排水口に至る透過水は、排水管45 を経て集水管41に至り、水処理槽43から排出される。
【0036】
また、円筒膜カートリッジK1 のろ過膜部分の付着物を掻き落とすには、ユニット枠12そのものを水処理槽43から引き上げた後に、排水管連結具6と排水管45との連結を取り外すと共に、浮上防止ワイヤー62をユニット枠12から取り外すことにより、各円筒膜カートリッジK1 毎に、前記掻落し作業を行える。また、カートリッジ本体A1 は、樹脂材のために軽量であるので、円筒膜カートリッジK1 を引き上げる際にも、作業効率が良く、しかも取扱いも容易である。これに対して、従来のセラミック製ろ過円筒体101は、重量が大きく、しかもモジュール単位で前記ろ過円筒体101を交換しなければならないので、その作業効率が悪かった。
【0037】
なお、本実施例に係る円筒膜カートリッジK1 は二重管構成のものであるが、曝気泡中にて、カートリッジ形式の円筒形状ろ過体を縦配置して使用することにより、単管構成のものであっても、上述した各効果の一部分を期待することができる。
【0038】
引き続いて、本発明の第2実施形態に係る円筒膜カートリッジK2 の構成について詳細に説明する。該円筒膜カートリッジK2 は、それを構成するカートリッジ本体A2 が単管で構成されており、しかも、テーパー円筒状に成形されている点で前記カートリッジ本体A1 と異なっており、各構成部材の機能や使用方法については、円筒膜カートリッジK1 とほぼ同様のものである。円筒膜カートリッジK2 は、その内周空間で形成される透過水路29に透過水を抽出するろ過膜体であるカートリッジ本体A2 と、該カートリッジ本体A2 の上端及び下端の円形の両開口部27を水密を保持して閉塞する上端及び下端の各キャップ24,25と、透過水を排出するために上端キャップ24の排水口に取付けられている排水管連結具6とで構成されている。
【0039】
カートリッジ本体A2 は、テーパー円筒状をなしていて、前記FRP製の樹脂で成形され、大径部が上方となるように縦配置して使用される。FRP製の樹脂は、第1実施形態で説明したのと同様のろ過材であって、図9に示されるとおり、カートリッジ本体A2 は、カートリッジ本体A1 の成形工程について説明したのと同様に、抜き勾配を有する中芯20を用いて成形される。カートリッジ本体A2 の成形においては、単なる抜き勾配と異なって、大きなテーパー形状を有するテーパー円筒状の中芯20が使用される。
【0040】
また、上端キャップ24は、カートリッジ本体A2 の上方の開口部27より僅かに大きい円形のキャップであって、前記上端キャップ4と同様に設けられた外周壁部24aの内側に、カートリッジ本体A2 の上端部が挿入嵌合されて、両者は、接着剤(図示せず)を介して互いに固着されている。上端キャップ24のほぼ中心部の貫通孔には、排水管連結具6が、一対のナット67,68を介して取付られている。また、下端キャップ25は、カートリッジ本体A2 の下端の開口部27より僅かに大きい円形のキャップであって、前記上端キャップ24と同様にして、その外周壁部25aの内側にカートリッジ本体A2 の下端部に挿入嵌合されている。また、下端キャップ25のほぼ中央部には、略円錐形状の凹部25bが設けられている。この凹部25bは、後述する単管カートリッジ支持体19と嵌合するためのものである。
【0041】
上述した所定数の円筒膜カートリッジK2 は、そのテーパー形状の大径部分を上方にして、相隣接する円筒膜カートリッジK2 の上端部に所定の隙間d1 が設けられるようにして、ユニット枠12に縦配置して収納される。ユニット枠12の一対の長手方向側板部16の下端部には、複数本の支持体取付ワイヤー71が前記ユニット枠12の長手方向に沿って所定間隔をおいて、その短手方向に横架されていて、各々の支持体取付ワイヤー71には、略円錐形状の単管カートリッジ支持体19が、前記円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて取付けられている。各円筒膜カートリッジK2 は、その下端キャップ25の凹部25bの部分に、前記単管カートリッジ支持体19が嵌め込まれて、支持されている。また、円筒膜カートリッジK2 は、その上端キャップ24の部分において、一対の長手方向側板部16の上端部において同様に横架された一対の浮上防止ワイヤー72によって押さえ付けられて、浮上防止状態となっている。また、円筒膜カートリッジK2 のカートリッジ本体A2 は、テーパー円筒状であるので、図8に示されるように、縦配置した状態で、隣接する円筒膜カートリッジK2 の隙間は、その下端から上端に向けて漸次狭くなっている。なお、図8において、d2 は、隣接する円筒膜カートリッジK2 の下端部の隙間を示す。
【0042】
そして、ユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK2 は、前記円筒膜カートリッジK1 と同様に、その内部に負圧を負荷させることにより、カートリッジ本体A2 の外周部にある汚水を吸引ろ過して、透過水路29内に透過水を抽出する。この時、前記散気管46からは、各カートリッジ本体A2 の下方から上方にかけて、気泡を含む上昇汚水11が発生している。相隣接する各円筒膜カートリッジK2 の隙間は、下方から上方に向けて漸次狭くなっているので、それらの気泡や上昇汚水11は、各カートリッジ本体A2 の全外周部と強制的に衝突して、膜表面を連続的に更新し、そこに固形物が付着するのを防ぐので、膜閉塞が生じにくく、ろ過効率が高められている。
【0043】
なお、本実施例においては、単管構成の円筒膜カートリッジK2 について説明したが、複合管の場合においても、最外周のろ過円筒膜体をカートリッジ本体A2 と同様のテーパー形状を有するものとして、上述したのと同様に縦配置して使用すれば、同様の効果が得られるものである。
【0044】
引き続いて、図10ないし図13を参照して、本発明の第3実施形態に係る円筒膜カートリッジK3 の構成について詳細に説明する。該円筒膜カートリッジK3 においては、それを構成するカートリッジ本体A3 が、二重管構造の外側カートリッジ本体部A31と、その内側に同心状に配置されて、それより小径の単管構造の内側カートリッジ本体部A32とで構成されている。前記外側カートリッジ本体部A31は、第1実施形態の円筒膜カートリッジK1 に係るカートリッジ本体A1 と同一構成であって、その内周部の汚水通路52の中央部に前記内側カートリッジ本体部A32を挿入して、後述の方法で一体化し、前記カートリッジ本体A1 よりも更に、ろ過表面積が大きくなるようにした構成のものである。また、円筒膜カートリッジK3 に係る各構成部材の機能や使用方法については、第1実施形態の円筒膜カートリッジK1 とほぼ同一であるので、以下の円筒膜カートリッジK3 の説明においては、前記円筒膜カートリッジK1 の各部分に対応する構成部材には、前述した符号に、「’」を付して説明する。
【0045】
円筒膜カートリッジK3 は、透過水路39内に透過水を抽出するろ過膜体である前記カートリッジ本体A3 と、その上端の開口部37を水密を保持して閉塞して、かつ、前記外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32を、その上端部において互いに連結して一体化するための上端キャップ34と、下端の開口部37を水密を保持して閉塞する下端キャップ35と、透過水を排出するために前記上端キャップ34の排水口に取付けられている排水管連結具36とで構成されている。透過水路39は、外側カートリッジ本体部A31を構成する内側及び外側の各ろ過円筒膜体1’,2’の間の空間に形成される外側透過水路9’と、内側カートリッジ本体部A32を構成するろ過円筒膜体3の内周部に形成される内側透過水路部59とで構成されている。また、前記カートリッジ本体A3 の上端及び下端の各開口部37は、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1’,2’の間のリング形状をした外側開口部7’と、その内側の前記ろ過円筒膜体3の内周部に形成される円形の内側開口部57とで構成されている。
【0046】
また、上方の前記開口部37を水密を保持して閉塞する上端キャップ34は、前記外側開口部7’の水密を保持して閉塞する外側上端キャップ部4’と、その内側の内側開口部57の水密を保持して閉塞する内側上端キャップ部54と、外側及び内側の各上端キャップ部4',54の間に形成されて、両者を連結するために放射方向に設けられた三本の棒状の連結体部51とで構成される。また、図11に示されるように、上端キャップ34は、外側及び内側の各上端キャップ部4',54の各外周壁部4'a,54aの内側には、前述した上端キャップ4と同様に、外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32の外周部が挿入嵌合されており、外側上端キャップ部4’の内側に設けられた内周壁部4'bには、前記外側カートリッジ本体部A31の内周部が挿入嵌合されている。
【0047】
また、このように、上端キャップ34を用いて上方の開口部37が水密を保持されて閉塞された状態においては、外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32は、上端キャップ34を介して一体に連結されている。また、外側及び内側の各上端キャップ部4',54には、排水管連結具36を取付けるための排水口用の貫通孔が設けられている。また、排水管連結具36は、外側上端キャップ部4’の排水口に取付けられる外側排水管連結具部6’と、内側上端キャップ部54の排水口に取付けられて、前記外側排水管連結具6’と管路連結された内側排水管連結部56より構成されており、前述の排水管連結具6と同様にして、上端キャップ34に取付けられている。
【0048】
一方、図12に示されるように、下方の開口部37を水密を保持して閉塞する下端キャップ35は、下方の前記開口部7’を水密を保持して閉塞する外側下端キャップ部5’と、下方の前記開口部57を同様にして閉塞する内側下端キャップ部55とで構成されている。また、下端キャップ35は、外側及び内側の各下端キャップ部5 ',55に設けられた各外周壁部5'a, 55a と、外側下端キャップ部5 ’の内周壁部5'bとには、それぞれ外側及び内側の各カートリッジ本体A31,A32が個別に挿入嵌合されている。
【0049】
次に、水処理槽43内に浸漬されるユニット枠12に縦配置した円筒膜カートリッジK3 を使用して、汚水(被ろ過水)をろ過する作用について説明する。水処理槽43内のユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK3 は、その内部に負圧が作用することにより、外側カートリッジ本体部A31の外周部及び内周部の双方の汚水と、内側カートリッジ本体部A32の外周部とに接する汚水を吸引ろ過して、前記透過水路39に透過水を抽出する。透過水は排水管連結具36を経由して集水管41に排出される。
【0050】
このように、円筒膜カートリッジK3 は、前述したカートリッジ本体A1 に相当する前記外側カートリッジ本体A31のろ過表面積に加えて、その内周部に追加した内側カートリッジ本体部A32のろ過表面積分の透過水が増えるので、設置空間を増大させずに、ろ過面積を増大させることができる。従って、前記円筒膜カートリッジK1 を使用する場合よりも更に、該円筒膜カートリッジK3 を使用するろ過分離システムの稼動効率が高めらる。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る円筒膜カートリッジは、これを構成するろ過材が、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されているため、ろ過材がFRP製であること、及び全体形状が円筒状であることとの異なる要因が相乗して、薄肉でありながら必要強度を確保しているので、従来のセラミック製のものよりも軽量であって、取扱いが容易となる。この結果、メンテナンスの際の負担が軽くなって、ろ過分離システムの信頼性を向上させることができる。また、円筒膜カートリッジに不具合が生じた場合には、その一本のみを容易に交換することができる。更に、カートリッジ本体の外周をテーパー円筒状に形成することにより、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなって、長時間に亘って、良好なろ過性能を維持できる。
【0052】
また、各円筒膜カートリッジを一本ずつ独立して縦配置して使用する構成であって、曝気流が円筒状のろ過部である全外周面にわたって均等に及ぶので、カートリッジ本体に対して非浄水成分が付着しにくくなる。更に、カートリッジ本体の下端開口部に、水流案内体を配置することにより、円筒膜カートリッジの本体内周面部への非浄水成分の付着を防ぐことができて、ろ過操作の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ユニット枠12に多数本の円筒膜カートリッジK1 が縦配置された状態の部分平面図である。
【図2】同様の状態の部分斜視図である。
【図3】同様の状態を底面側から見た部分斜視図である。
【図4】円筒膜カートリッジK1 の分解斜視図である。
【図5】円筒膜カートリッジK1 の使用状態の縦断面図である。
【図6】円筒膜カートリッジK1 を縦配置したユニット枠12が、水処理槽43に浸漬された状態の正面断面図である。
【図7】円筒膜カートリッジK2 の分解斜視図である。
【図8】同じく使用状態の縦断面図である。
【図9】カートリッジ本体A2 の成形方法を示す斜視図である。
【図10】円筒膜カートリッジK3 の分解斜視図である。
【図11】円筒膜カートリッジK3 の上端部の部分拡大斜視図である。
【図12】円筒膜カートリッジK3 の下端部の部分拡大斜視図である。
【図13】円筒膜カートリッジK3 の使用状態の縦断面図である。
【図14】セラミック製ろ過円筒体を使用したろ過モジュールMの平面断面図である。
【図15】図14のX−X線断面図である。
【符号の説明】
K1 〜K3 :円筒膜カートリッジ
A1 〜A3 :カートリッジ本体
d1 :相隣接する円筒膜カートリッジK1 の上端部の隙間
d2 :相隣接する円筒膜カートリッジK1 の下端部の隙間
1:内側ろ過円筒膜体
2:外側ろ過円筒膜体
4,24,34:上端キャップ
5,25,35:下端キャップ
11:上昇汚水
15:水流案内体
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨水や生活排水を浄水処理したり、活性汚泥水槽から汚泥成分を除去して水を浄化するための水処理装置に浸漬して、非浄水成分をろ過分離することにより、透過水を抽出するために使用されるろ過分離円筒膜カートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、汚水を効率的に処理するための方法として、有機物を餌として増殖する微生物を集めて活性汚泥とし、有機物を吸着分解した後に、沈殿池でこの微生物を沈殿除去して、水を浄化する方法が広く実施されている。この沈殿除去操作を無くしてその代わりに、活性汚泥を分離するためのろ過膜を用いて汚泥を完全に分離する方法が普及し始めており、処理水質が汚泥の沈降性に影響されないので、維持管理が簡単になる等の大きな利点があることが報告されている。
【0003】
このような活性汚泥を固液分離するシステムについて、本発明に係る図面である図6を援用して説明する。上記したろ過分離システムにおいて、円筒形状を有するろ過膜を使用する例としては、セラミック材を円筒形に成形して使用する例が、特開平10-235162 号公報に開示されている。この公報に示されるろ過モジュールMは、後述する複数のセラミック製ろ過円筒体101を、所定の枠体中に平行に横配置して取付けてモジュール化したろ過装置であって、所定の方法で集水管41と連結され、水処理槽43に浸漬して使用されている。その状態において、集水管41に接続されたポンプPを用いてその管内を減圧し、ろ過モジュールM中の各セラミック製ろ過円筒体101内に負圧をかけることにより、水処理槽43内の汚水を吸引ろ過して、セラミック製ろ過円筒体101の内部に透過水を抽出し、集水管41を経由して水処理槽43から排出させている。このシステムにおいては、負圧をかけることによりセラミック製ろ過円筒体101の外周部に汚泥が付着してその気孔が閉塞するのを防ぐために、水処理槽43の下部に曝気装置Bと連結する散気管46を設置して、ろ過モジュールM内部を曝気する方法がとられている。
【0004】
次に、このろ過モジュールMの構成について、図14及び図15を用いて説明する。前記各セラミック製ろ過円筒体101の両端部には、対向配置された一対のヘッダー102,103が設けられ、各ヘッダー102,103の間には、同じく対向配置された一対のガイド板110が渡されて、各々連結している。排水口106が設けられた一方のヘッダー102には、集水室105が形成されるように面板104が取り付けられている。該面板104には、各セラミック製ろ過円筒体101が前記集水室105内に開口した状態で、それらの片端を挿通支持するための孔107が設けられており、一方、それらの他端は、ヘッダー103に支持されている。セラミック製ろ過円筒体101の端部が挿通された孔107の周囲、及びヘッダー103のセラミック製ろ過円筒体101の他端部の支持部分は、それぞれ接着剤108,109によって水密を保たれた状態で、各セラミック製ろ過円筒体101の両端部と固着されている。即ち、ろ過モジュールMは、セラミック製ろ過円筒体101よりも長い間隔をおいた一対のヘッダー102,103が、同じく一対のガイド板110で枠状に一体連結されて、一方のヘッダー103と面板104とによって、多数本のセラミック製ろ過円筒体101の両端部が水平支持されて、上下両面が開口した状態で、水処理槽43内に浸漬配置される。
【0005】
このようなろ過モジュールMを使用してろ過を行う際は、ろ過モジュールMを水処理槽43内に浸漬し、曝気して汚泥水を流動させる。すると、上昇汚水(被ろ過水)11が、多数のセラミック製ろ過円筒体101の間を、図15で矢印で示すように通過し、排水口106を通じてセラミック製ろ過円筒体101に作用する負圧によって、セラミック製ろ過円筒体101の周壁を透過した透過水が、集水室105と排水口106とを経て、ろ過モジュールMの外部の集水管41に排出されるものである。ろ過モジュールMの下端開口部にて、連続的に行われる曝気操作により、上昇汚水11は連続的に発生しており、汚泥水中の固形物8(図5参照)を拡散させて、セラミック製ろ過円筒体101の膜表面を更新し、その閉塞を防止している。
【0006】
しかしながら、特に水処理槽43中に固形物を多く含む活性汚泥槽等においては、曝気するだけでセラミック製ろ過円筒体101の気孔閉塞を防ぐことは、困難であった。また、セラミック製ろ過円筒体101は、横配置して使用されるので、汚泥水が曝気によりモジュール内を上昇した後に、汚泥水中の固形物8(図5参照)が、セラミック製ろ過円筒体101の円筒上部101aに堆積してしまい、円筒体のほぼ全周に亘って有効であるはずのろ過面積が、堆積物によってその部分のみ無効となって減少してしまうので、所定のろ過効率を維持し続けることができなかった。固形物8とは、活性汚泥等の塊状の被ろ過物である。また、固形物8のみならず、滑りのようにセラミック製ろ過円筒体101に付着する非浄水成分10も存在し、各々セラミック製ろ過円筒体101の気孔閉塞の原因となるものであった。そこで、セラミック製ろ過円筒体101を各々露出させて、それら堆積固形物8及び非浄水成分10を物理的に掻き落とす必要があるが、該ろ過円筒体101は、面板104とヘッダー103とに接着剤108,109を用いて固着されて一体となっているので、それらを1本ずつ洗浄することが困難であった。
【0007】
また、セラミック材は、一般的に脆いので、曝気による振動等によって破損し易く、そのために、横配置するよりも振動の影響が大きいと考えられる縦配置した状態で、曝気槽中で使用される例は、報告されておらず、非浄水成分10を主な被ろ過物とするろ過分離システムのみにおいて、縦配置して使用する例が、報告されていた。また、セラミック製ろ過円筒体101が破損した場合には、該セラミック製ろ過円筒体101のみならず、ろ過モジュールMごと交換する必要があるので、信頼性及び効率の双方の高いろ過操作を維持するためには、高いコストが必要であった。
【0008】
また、剛性に欠けるセラミック材の代わりに、樹脂類でろ過膜体を構成する従来のろ過分離システムも存在するが、セラミック材に匹敵する膜強度を有するものは皆無であって、自身の形状を円筒形に保持した使用例は、なかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、軽量で、しかも必要なろ過性能を維持していて、単独で使用可能なろ過分離円筒膜カートリッジを提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、前記カートリッジのろ過材は、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されており、前記FRP製の樹脂膜で構成された円筒状のカートリッジ本体の両端開口が、キャップにより水密保持して閉塞され、ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴としている。
【0011】
請求項1の発明によれば、カートリッジのろ過材が、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されていて、ろ過材がFRP製であること、及び全体形状が円筒状であることとの異なる要因が相乗して、薄肉でありながら必要強度を確保しているので、従来のセラミック製の円筒状のカートリッジ本体よりも軽量であって、取扱いが容易となって、メンテナンスの際の負担が軽くなるので、ろ過分離システムの信頼性を向上させることができる。また、各カートリッジを1本ずつ独立して縦配置するので、各セラミック円筒管を横配置してモジュール化する従来構成の場合と比較して、曝気流が円筒状のろ過部である全外周面にわたって均等に及ぶので、カートリッジ本体に対して非浄水成分が付着しにくくなって、ろ過操作を効率的に行うことができる。また、円筒膜カートリッジに不具合が生じた場合には、その一本のみを容易に交換することができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、カートリッジ本体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明によれば、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなって、長時間に亘って、良好なろ過性能を維持できる。
【0014】
また、請求項3の発明は、水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、カートリッジ本体は、内外二本のろ過円筒膜体が同心状に配置された二重管構造であって、両ろ過円筒膜体の間の空間が透過水の通路となって、前記カートリッジ本体の両端のリング状開口がキャップにより水密を保持して閉塞され、前記カートリッジ本体を構成する内外二本のろ過円筒膜体は、連続した微細気孔を有するFRP製の樹脂膜で構成されて、ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1の効果に加えて、カートリッジ本体の内周面においてもろ過分離することが可能となって、設置空間を増大させずにろ過面積が増大され、ろ過分離システム全体のろ過効率が向上する。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、カートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の下端開口には、上昇汚水が前記ろ過円筒膜体の内周面に沿って流れるようにする逆円錐状の水流案内体が配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明によれば、逆円錐状の外周面に沿って曝気流が円筒膜カートリッジ本体の内周面全域に行き渡るので、円筒膜カートリッジ本体の内周面部への非浄水成分の付着を防ぐことができて、ろ過操作の効率を向上することができる。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、カートリッジ本体の外側のろ過円筒膜体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明によれば、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなる。
【0020】
また、請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれかに記載の発明において、二重管構造のカートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の内側には、単管構造の別のカートリッジ本体がほぼ同心となって配置されて、両カートリッジ本体は、そのキャップの部分で一体連結されていることを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明によれば、二重管構造のカートリッジ本体の内側の空間に、別のろ過領域を形成できるため、カートリッジの占有空間に対するろ過面積の割合が一層大きくなって、ろ過効率が更に高まる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の第1実施形態に係る円筒膜カートリッジK1 について、図1ないし図6を用いて詳細に説明する。図1は、ユニット枠12に多数本の円筒膜カートリッジK1 が縦配置された状態での部分平面図であり、図2は、同様の状態の部分斜視図であり、図3は、同様の状態を底面側から見た部分斜視図であり、図4は、円筒膜カートリッジK1 の分解斜視図であり、図5は、円筒膜カートリッジK1 の使用状態の縦断面図であり、図6は、円筒膜カートリッジK1 を縦配置したユニット枠12が、水処理槽43に浸漬された状態の正面断面図である。
【0023】
最初に、円筒膜カートリッジK1 の構成について説明する。図2ないし図5に示されるとおり、円筒形状を有するろ過膜体である円筒膜カートリッジK1 は、その内外周部の非浄水成分10をろ過分離して、排水管45を経由して集水管41に透過水を抽出するためのろ過体であって、しかも、従来構成のろ過モジュールMとは異なって、各ろ過体が独立したカートリッジ形式のものであり、後述する方法でユニット枠12に縦配置して使用される。円筒膜カートリッジK1 は、円筒管形状の内側ろ過円筒膜体1の外側に、それより大径の外側ろ過円筒膜体2を同心状に配置して、それらの間に透過水路9を形成し、透過水を内部に抽出する二重管構造のカートリッジ本体A1 と、その上端及び下端の両リング状開口部7を水密を保持して閉塞するためのリング形状の上端及び下端の各キャップ4,5と、透過水を排出するために前記上端キャップ4の排水口に取付けられる排水管連結具6とで構成されている。
【0024】
前記内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、いずれもFRP製の樹脂で成形されて、その外径(又は内径)のみが異なって、その長さは、同一である。大径の外側ろ過円筒膜体2の内周部には、それより小径の内側ろ過円筒膜体1が、互いの高さを揃えて挿入されている。また、本発明に係るFRP製の樹脂で成形された内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、透過方向の厚み及び強度と、ろ過するための均質な気孔とを有する樹脂製のろ過材であって、その構成、製法等の詳細は、後述する。
【0025】
また、上端及び下端の各キャップ4,5は、前記一対のリング状の開口部7より僅かに大きいリング形状を有している。上端キャップ4には、外周壁部4a及び内周壁部4bが形成されており、カートリッジ本体A1 を構成する内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2の上端部が、それぞれ前記上端キャップ4の内周壁部4b及び外周壁部4aに挿入嵌合されて、カートリッジ本体A1 の上端のリング状開口部7が閉塞されて、両者の密着部には、接着剤(図示せず)が使用されて、内外の水密が保持されている。また、下端キャップ5にも、外周壁部5a及び内周壁部5bが形成されており、上記と同様の構造によって、下端キャップ5によりカートリッジ本体A1 の下端のリング状開口部7が閉塞されている。また、上端キャップ4には、排水口となる貫通孔が設けられており、その貫通孔には、一対のナット67,68を介して排水管連結具6が取付けられている。なお、上端キャップ4のリング形状面の上部に取付けられている一対の止め具61は、ユニット枠12に設置した円筒膜カートリッジK1 の浮上を防止する浮上防止ワイヤー62を挿通するためのものである。
【0026】
次に、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2に用いられる樹脂材であるFRPろ過材について説明する。本発明の円筒膜カートリッジK1 のろ過円筒膜体として使用するFRPろ過材は、硬化材を加えた液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合した、即ち水相に樹脂粒子が分散したO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、強化材であるガラスチョップストランドマットと不織布の存在下、常温又は加熱下に硬化、乾燥して水を除去して得られる微細な連続気孔を有するものである。硬化反応前の上記樹脂類と水とは、混合されてエマルジョンとなっており、水と接して存在する樹脂類は、表面張力の作用により自己最少表面積である球形状となり、その中で硬化反応が進行する。硬化反応完了後に水分は蒸発して除去されるので、各樹脂粒子間には、その分の微細気孔が連続して形成される。該気孔は、ろ過に最適な性能を有しており、1μm以上の大きさを有する細菌のろ過が充分可能な程度のものである。またFRPろ過材は、樹脂材であるので軽量であり、強化材の添加によりセラミック材に劣らない充分な強度を有しており、耐久性に優れているものである。なお、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂としては、液状不飽和ポリエステル樹脂又は液状エポキシ(メタ)アクリレート樹脂又は液状ウレタン(メタ)アクリレート樹脂又は液状(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、上記説明したFRPろ過材は、液状組成物から成形されるので、自由な形状のろ過材の成形が可能である。所定の比率で混合された液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とは、良好な粘度及び揺変性を示し、垂直面でも垂れることのないO/W型熱硬化性樹脂水性分散体となって、容易に成形することが可能となる。そして、本発明に係る内側及び外側ろ過円筒膜体1,2の成形は、図9に示されるように、それらの各内径に対応する内径を有する円柱形状の中芯20’を用いて行われる。中芯20’の外周面に離型材を塗布しておき、この中芯20’の外周面に、強化材であるガラスチョップストランドマットと不織布とを交互に重ねて、上記液状組成物を目的の肉厚分だけ含浸させた後に、所定の条件により硬化、乾燥させて、生成樹脂から中芯20’を引抜くことにより、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2が成形される。そのために、中芯20’には、抜き勾配が設けられている。なお、図9は、後述するカートリッジ本体A2 の成形を示す図であるが、成形原理は同一であるので、援用した。
【0028】
上記のようにして円筒状に成形された内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2の外径は、それぞれ約60,100mmであって、その高さは、いずれも約800mmであり、更に、その肉厚は、いずれも2〜3mmであった。前記各ろ過円筒膜体1,2は、円筒状に成形されているために、その肉厚が2〜3mmであっても、その形状剛性により、ろ過時における負圧、及び逆洗時における正圧に対して十分な強度を有するものである。
【0029】
次に、円筒膜カートリッジK1 を、多数まとめてユニット枠12に縦配置して収納配置する方法について、図1ないし図3,図6を用いて説明する。まず、ユニット枠12の構成について説明する。ユニット枠12は、直方体状の枠体であって、その上下面は、散気管42から出る気泡が、各円筒膜カートリッジK1 に回るように開口されており、長手方向Qに沿って対向配置された一対の長手方向側板部16と、それらに直交する短手方向に沿って対向配置された一対の短手方向側板部17とが設けられて、一体化されている。そして、一方の長手方向側板部16の上端部側方には、前記集水管41が水平に保持されている。また、該ユニット枠12の下方には、細長い棒状であって横断面がL字形の一対のL字形支持体13が、短手方向に沿って二本(一対)一組となって数組だけ配置されており、また、それら各一対のL字形支持体13の幅方向の中間部には、案内体取付ワイヤー64が短手方向に沿って配置されて、該ワイヤー64には、円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて複数の水流案内体15が、その上方に配置して取付けられている。
【0030】
また、前記L字形支持体13、及び案内体取付ワイヤー64の両端部は、前記一対の長手方向側板部16の下端部にそれぞれ固定されている。また、前記一対のL字形支持体13は、短手方向に沿って所定数の円筒膜カートリッジK1 を載架するためのものであって、その直径と略同一の間隔をおいて配置されている。また、一対のL字形支持体13には、各円筒膜カートリッジK1 を設定場所に縦配置可能にするために、その下端部の外周形状に対応した四個一組の支持突起18が、円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて、一体に設けられている。また、前記水流案内体15は、上昇汚水11が、カートリッジ本体A1 の内周壁に沿って流れるように、案内するためのものである。水流案内体15の下部には、逆円錐台形状の水流案内部15aが設けられており、その上部には、円錐形状の堆積防止部15bが設けられていて、両者の底面を合体させて一体に成形されている。水流案内体15は、所定の間隔をおいて、前記案内体取付ワイヤー64の上方に取付けられている。
【0031】
上記構成のユニット枠12に対して、各円筒膜カートリッジK1 は、その下端部と前記水流案内部15aとが、ほぼ同一高さとなり、しかも互いに同心状に配置されるように、前記支持突起18及びL字形支持体13によって位置決めされて、個別に縦配置されている。また、前記各円筒膜カートリッジK1 の上面部に設けられた前記各一対の止め具61には、浮上防止ワイヤー62が挿通されており、それらの両端部は、前記一対の長手方向側板部16の上方にて、各々固定されている。浮上防止ワイヤー62は、ユニット枠12内に縦配置された各円筒膜カートリッジK1 が、水処理槽43に浸漬された状態において、ユニット枠12に対して浮上するのを防止するためのものである。そして、図2及び図5に示されるように、各々の円筒膜カートリッジK1 の上端面に取り付けられた排水管連結具6と、前記集水管41に取り付けられた集水管連結具44とが、排水管45を用いて互いに連結されている。集水管41は、水処理槽43外に延長されて、その管路の途中にポンプPが組み込まれて、該ポンプPの変圧操作が集水管41の管内に及ぶように構成されている。
【0032】
次に、水処理槽43内に浸漬されるユニット枠12に縦配置した円筒膜カートリッジK1 を使用して、汚水(被ろ過水)をろ過する作用について説明する。水処理槽43内のユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK1 は、上述の方法で、その内部に負圧が作用することにより、カートリッジ本体A1 の外周部及び内周部の双方の汚水を吸引ろ過して、前記透過水路9に透過水を抽出する。カートリッジ本体A1 を構成する外側及び内側の各ろ過円筒膜体1,2は、前記FRP樹脂で成形されているので、適度なろ過気孔及び膜強度並びに剛性を有しており、縦配置した状態でその下方から曝気しても、その振動によって、同じ円筒形のセラミック材のように破損する恐れは無い。また、円筒膜カートリッジK1 が縦配置されているために、曝気泡中にて横配置して使用するセラミック製ろ過円筒体101と異なり、汚水中の固形物8が、ろ過膜上部に堆積しないので、ろ過有効面積を最大限利用することができる。
【0033】
また、ろ過時には、図5に示されるように、水処理槽43の底面に設置された前記散気管46からは、カートリッジ本体A1 の下方から上方に向けて、これと平行に気泡が発生しており、各カートリッジ本体A1 のほぼ全外周部、即ち外側ろ過円筒膜体2のほぼ全外周面部においては、上昇汚水11が連続的に発生している。それらの気泡や上昇汚水11は、縦配置された各カートリッジ本体A1 のほぼ全外周部と接触して、膜表面を連続的に更新する。つまり、ろ過操作と並行しながら、そこに固形物8及び非浄水成分10が付着するのを防ぐので、膜閉塞が生じにくく、ろ過効率が高められている。なお、図5に示される破線矢印は、透過水の通路を示す。
【0034】
一方、各カートリッジ本体A1 の内周部、即ち、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bにおいても、負圧負荷による吸引ろ過が、曝気と同時に進行している。内側ろ過円筒膜体1の下端開口部1aには、前記水流案内体15が設置されているので、その水流案内部15aに気泡や前記上昇汚水11が衝突して、それらの流れる方向は、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bに沿うように整流されて上昇する。従って、内側ろ過円筒膜体1の内周面部1bに上昇汚水11が強制的に接触し易くなるので、その膜表面が更新され、汚泥水中の固形物8及び非浄水成分10の付着を防止できて、外周面部と同様に、この部分での膜閉塞も生じにくくなり、ろ過効率が高められている。また、水流案内体15は、その下面において案内体取付ワイヤー64に支持されているのみであるが、上昇汚水11が前記水流案内体15に及ぼす力は、その軸心に対して均一となるので、該水流案内体15は常にその軸心を垂直にした目的姿勢を保持することができる。また、堆積防止部15bにおいては、先端が鋭角に突出しているので、汚泥等の固形物8が水流案内体15に降下しても、そこから滑り落ちて、その上に堆積することを阻止できる。また、単管構成のセラミック製ろ過円筒体101と異なり、カートリッジ本体A1 は、二重管構成であって、そのほぼ全内周面及び全外周面が、吸引ろ過が可能なろ膜部分となっているので、円筒膜カートリッジK1 の設置空間を増大させずに、ろ過面積を増大させることができる。また、円筒膜カートリッジK1 を縦配置した効果により、ろ過膜表面が効果的に更新されて、該円筒膜カートリッジK1 を使用するろ過分離システムの稼動効率が高められている。
【0035】
また、カートリッジ本体A1 の透過水路9は、前記内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2との間の空間部(その上下の各リング状開口部7が上下端の各キャップ4,5によって閉塞されている)のみで構成されている。一般に、平板形状よりも円筒形状の成形物の方が、その内部に負荷される負圧に抗する形状剛性が大きくなると考えられており、更に、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1,2は、セラミック材に劣らない膜強度を有する前記FRP製の樹脂膜で成形されているので、各ろ過円筒膜体1,2の間に、負圧により、これらが変形されるのを防止する変形防止部材を内装させずに、前記負圧負荷に抗して円筒形状を保持できる。このため、円筒膜カートリッジの構成を簡略化することができる。しかし、負圧による変形防止を確実にするには、各ろ過円筒膜体1,2の間に、透水性を有する変形防止部材を内装させてもよい。そして、前記負圧負荷により、透過水路9から排水管連結具6が設けられた排水口に至る透過水は、排水管45 を経て集水管41に至り、水処理槽43から排出される。
【0036】
また、円筒膜カートリッジK1 のろ過膜部分の付着物を掻き落とすには、ユニット枠12そのものを水処理槽43から引き上げた後に、排水管連結具6と排水管45との連結を取り外すと共に、浮上防止ワイヤー62をユニット枠12から取り外すことにより、各円筒膜カートリッジK1 毎に、前記掻落し作業を行える。また、カートリッジ本体A1 は、樹脂材のために軽量であるので、円筒膜カートリッジK1 を引き上げる際にも、作業効率が良く、しかも取扱いも容易である。これに対して、従来のセラミック製ろ過円筒体101は、重量が大きく、しかもモジュール単位で前記ろ過円筒体101を交換しなければならないので、その作業効率が悪かった。
【0037】
なお、本実施例に係る円筒膜カートリッジK1 は二重管構成のものであるが、曝気泡中にて、カートリッジ形式の円筒形状ろ過体を縦配置して使用することにより、単管構成のものであっても、上述した各効果の一部分を期待することができる。
【0038】
引き続いて、本発明の第2実施形態に係る円筒膜カートリッジK2 の構成について詳細に説明する。該円筒膜カートリッジK2 は、それを構成するカートリッジ本体A2 が単管で構成されており、しかも、テーパー円筒状に成形されている点で前記カートリッジ本体A1 と異なっており、各構成部材の機能や使用方法については、円筒膜カートリッジK1 とほぼ同様のものである。円筒膜カートリッジK2 は、その内周空間で形成される透過水路29に透過水を抽出するろ過膜体であるカートリッジ本体A2 と、該カートリッジ本体A2 の上端及び下端の円形の両開口部27を水密を保持して閉塞する上端及び下端の各キャップ24,25と、透過水を排出するために上端キャップ24の排水口に取付けられている排水管連結具6とで構成されている。
【0039】
カートリッジ本体A2 は、テーパー円筒状をなしていて、前記FRP製の樹脂で成形され、大径部が上方となるように縦配置して使用される。FRP製の樹脂は、第1実施形態で説明したのと同様のろ過材であって、図9に示されるとおり、カートリッジ本体A2 は、カートリッジ本体A1 の成形工程について説明したのと同様に、抜き勾配を有する中芯20を用いて成形される。カートリッジ本体A2 の成形においては、単なる抜き勾配と異なって、大きなテーパー形状を有するテーパー円筒状の中芯20が使用される。
【0040】
また、上端キャップ24は、カートリッジ本体A2 の上方の開口部27より僅かに大きい円形のキャップであって、前記上端キャップ4と同様に設けられた外周壁部24aの内側に、カートリッジ本体A2 の上端部が挿入嵌合されて、両者は、接着剤(図示せず)を介して互いに固着されている。上端キャップ24のほぼ中心部の貫通孔には、排水管連結具6が、一対のナット67,68を介して取付られている。また、下端キャップ25は、カートリッジ本体A2 の下端の開口部27より僅かに大きい円形のキャップであって、前記上端キャップ24と同様にして、その外周壁部25aの内側にカートリッジ本体A2 の下端部に挿入嵌合されている。また、下端キャップ25のほぼ中央部には、略円錐形状の凹部25bが設けられている。この凹部25bは、後述する単管カートリッジ支持体19と嵌合するためのものである。
【0041】
上述した所定数の円筒膜カートリッジK2 は、そのテーパー形状の大径部分を上方にして、相隣接する円筒膜カートリッジK2 の上端部に所定の隙間d1 が設けられるようにして、ユニット枠12に縦配置して収納される。ユニット枠12の一対の長手方向側板部16の下端部には、複数本の支持体取付ワイヤー71が前記ユニット枠12の長手方向に沿って所定間隔をおいて、その短手方向に横架されていて、各々の支持体取付ワイヤー71には、略円錐形状の単管カートリッジ支持体19が、前記円筒膜カートリッジK1 の配置ピッチと同一ピッチをおいて取付けられている。各円筒膜カートリッジK2 は、その下端キャップ25の凹部25bの部分に、前記単管カートリッジ支持体19が嵌め込まれて、支持されている。また、円筒膜カートリッジK2 は、その上端キャップ24の部分において、一対の長手方向側板部16の上端部において同様に横架された一対の浮上防止ワイヤー72によって押さえ付けられて、浮上防止状態となっている。また、円筒膜カートリッジK2 のカートリッジ本体A2 は、テーパー円筒状であるので、図8に示されるように、縦配置した状態で、隣接する円筒膜カートリッジK2 の隙間は、その下端から上端に向けて漸次狭くなっている。なお、図8において、d2 は、隣接する円筒膜カートリッジK2 の下端部の隙間を示す。
【0042】
そして、ユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK2 は、前記円筒膜カートリッジK1 と同様に、その内部に負圧を負荷させることにより、カートリッジ本体A2 の外周部にある汚水を吸引ろ過して、透過水路29内に透過水を抽出する。この時、前記散気管46からは、各カートリッジ本体A2 の下方から上方にかけて、気泡を含む上昇汚水11が発生している。相隣接する各円筒膜カートリッジK2 の隙間は、下方から上方に向けて漸次狭くなっているので、それらの気泡や上昇汚水11は、各カートリッジ本体A2 の全外周部と強制的に衝突して、膜表面を連続的に更新し、そこに固形物が付着するのを防ぐので、膜閉塞が生じにくく、ろ過効率が高められている。
【0043】
なお、本実施例においては、単管構成の円筒膜カートリッジK2 について説明したが、複合管の場合においても、最外周のろ過円筒膜体をカートリッジ本体A2 と同様のテーパー形状を有するものとして、上述したのと同様に縦配置して使用すれば、同様の効果が得られるものである。
【0044】
引き続いて、図10ないし図13を参照して、本発明の第3実施形態に係る円筒膜カートリッジK3 の構成について詳細に説明する。該円筒膜カートリッジK3 においては、それを構成するカートリッジ本体A3 が、二重管構造の外側カートリッジ本体部A31と、その内側に同心状に配置されて、それより小径の単管構造の内側カートリッジ本体部A32とで構成されている。前記外側カートリッジ本体部A31は、第1実施形態の円筒膜カートリッジK1 に係るカートリッジ本体A1 と同一構成であって、その内周部の汚水通路52の中央部に前記内側カートリッジ本体部A32を挿入して、後述の方法で一体化し、前記カートリッジ本体A1 よりも更に、ろ過表面積が大きくなるようにした構成のものである。また、円筒膜カートリッジK3 に係る各構成部材の機能や使用方法については、第1実施形態の円筒膜カートリッジK1 とほぼ同一であるので、以下の円筒膜カートリッジK3 の説明においては、前記円筒膜カートリッジK1 の各部分に対応する構成部材には、前述した符号に、「’」を付して説明する。
【0045】
円筒膜カートリッジK3 は、透過水路39内に透過水を抽出するろ過膜体である前記カートリッジ本体A3 と、その上端の開口部37を水密を保持して閉塞して、かつ、前記外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32を、その上端部において互いに連結して一体化するための上端キャップ34と、下端の開口部37を水密を保持して閉塞する下端キャップ35と、透過水を排出するために前記上端キャップ34の排水口に取付けられている排水管連結具36とで構成されている。透過水路39は、外側カートリッジ本体部A31を構成する内側及び外側の各ろ過円筒膜体1’,2’の間の空間に形成される外側透過水路9’と、内側カートリッジ本体部A32を構成するろ過円筒膜体3の内周部に形成される内側透過水路部59とで構成されている。また、前記カートリッジ本体A3 の上端及び下端の各開口部37は、内側及び外側の各ろ過円筒膜体1’,2’の間のリング形状をした外側開口部7’と、その内側の前記ろ過円筒膜体3の内周部に形成される円形の内側開口部57とで構成されている。
【0046】
また、上方の前記開口部37を水密を保持して閉塞する上端キャップ34は、前記外側開口部7’の水密を保持して閉塞する外側上端キャップ部4’と、その内側の内側開口部57の水密を保持して閉塞する内側上端キャップ部54と、外側及び内側の各上端キャップ部4',54の間に形成されて、両者を連結するために放射方向に設けられた三本の棒状の連結体部51とで構成される。また、図11に示されるように、上端キャップ34は、外側及び内側の各上端キャップ部4',54の各外周壁部4'a,54aの内側には、前述した上端キャップ4と同様に、外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32の外周部が挿入嵌合されており、外側上端キャップ部4’の内側に設けられた内周壁部4'bには、前記外側カートリッジ本体部A31の内周部が挿入嵌合されている。
【0047】
また、このように、上端キャップ34を用いて上方の開口部37が水密を保持されて閉塞された状態においては、外側及び内側の各カートリッジ本体部A31,A32は、上端キャップ34を介して一体に連結されている。また、外側及び内側の各上端キャップ部4',54には、排水管連結具36を取付けるための排水口用の貫通孔が設けられている。また、排水管連結具36は、外側上端キャップ部4’の排水口に取付けられる外側排水管連結具部6’と、内側上端キャップ部54の排水口に取付けられて、前記外側排水管連結具6’と管路連結された内側排水管連結部56より構成されており、前述の排水管連結具6と同様にして、上端キャップ34に取付けられている。
【0048】
一方、図12に示されるように、下方の開口部37を水密を保持して閉塞する下端キャップ35は、下方の前記開口部7’を水密を保持して閉塞する外側下端キャップ部5’と、下方の前記開口部57を同様にして閉塞する内側下端キャップ部55とで構成されている。また、下端キャップ35は、外側及び内側の各下端キャップ部5 ',55に設けられた各外周壁部5'a, 55a と、外側下端キャップ部5 ’の内周壁部5'bとには、それぞれ外側及び内側の各カートリッジ本体A31,A32が個別に挿入嵌合されている。
【0049】
次に、水処理槽43内に浸漬されるユニット枠12に縦配置した円筒膜カートリッジK3 を使用して、汚水(被ろ過水)をろ過する作用について説明する。水処理槽43内のユニット枠12に縦配置された各円筒膜カートリッジK3 は、その内部に負圧が作用することにより、外側カートリッジ本体部A31の外周部及び内周部の双方の汚水と、内側カートリッジ本体部A32の外周部とに接する汚水を吸引ろ過して、前記透過水路39に透過水を抽出する。透過水は排水管連結具36を経由して集水管41に排出される。
【0050】
このように、円筒膜カートリッジK3 は、前述したカートリッジ本体A1 に相当する前記外側カートリッジ本体A31のろ過表面積に加えて、その内周部に追加した内側カートリッジ本体部A32のろ過表面積分の透過水が増えるので、設置空間を増大させずに、ろ過面積を増大させることができる。従って、前記円筒膜カートリッジK1 を使用する場合よりも更に、該円筒膜カートリッジK3 を使用するろ過分離システムの稼動効率が高めらる。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る円筒膜カートリッジは、これを構成するろ過材が、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されているため、ろ過材がFRP製であること、及び全体形状が円筒状であることとの異なる要因が相乗して、薄肉でありながら必要強度を確保しているので、従来のセラミック製のものよりも軽量であって、取扱いが容易となる。この結果、メンテナンスの際の負担が軽くなって、ろ過分離システムの信頼性を向上させることができる。また、円筒膜カートリッジに不具合が生じた場合には、その一本のみを容易に交換することができる。更に、カートリッジ本体の外周をテーパー円筒状に形成することにより、気泡を含む汚水が上昇する際に、カートリッジ本体の外周面に沿って強制的に流れるために、その非浄水成分が付着しにくくなって、長時間に亘って、良好なろ過性能を維持できる。
【0052】
また、各円筒膜カートリッジを一本ずつ独立して縦配置して使用する構成であって、曝気流が円筒状のろ過部である全外周面にわたって均等に及ぶので、カートリッジ本体に対して非浄水成分が付着しにくくなる。更に、カートリッジ本体の下端開口部に、水流案内体を配置することにより、円筒膜カートリッジの本体内周面部への非浄水成分の付着を防ぐことができて、ろ過操作の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ユニット枠12に多数本の円筒膜カートリッジK1 が縦配置された状態の部分平面図である。
【図2】同様の状態の部分斜視図である。
【図3】同様の状態を底面側から見た部分斜視図である。
【図4】円筒膜カートリッジK1 の分解斜視図である。
【図5】円筒膜カートリッジK1 の使用状態の縦断面図である。
【図6】円筒膜カートリッジK1 を縦配置したユニット枠12が、水処理槽43に浸漬された状態の正面断面図である。
【図7】円筒膜カートリッジK2 の分解斜視図である。
【図8】同じく使用状態の縦断面図である。
【図9】カートリッジ本体A2 の成形方法を示す斜視図である。
【図10】円筒膜カートリッジK3 の分解斜視図である。
【図11】円筒膜カートリッジK3 の上端部の部分拡大斜視図である。
【図12】円筒膜カートリッジK3 の下端部の部分拡大斜視図である。
【図13】円筒膜カートリッジK3 の使用状態の縦断面図である。
【図14】セラミック製ろ過円筒体を使用したろ過モジュールMの平面断面図である。
【図15】図14のX−X線断面図である。
【符号の説明】
K1 〜K3 :円筒膜カートリッジ
A1 〜A3 :カートリッジ本体
d1 :相隣接する円筒膜カートリッジK1 の上端部の隙間
d2 :相隣接する円筒膜カートリッジK1 の下端部の隙間
1:内側ろ過円筒膜体
2:外側ろ過円筒膜体
4,24,34:上端キャップ
5,25,35:下端キャップ
11:上昇汚水
15:水流案内体
Claims (6)
- 水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、
前記カートリッジのろ過材は、強化材の存在下に、液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂と水とを混合してなるO/W型熱硬化性樹脂水性分散体を、常温又は加熱下で硬化し、水を除去して得られる微細な連続気孔を有する硬化物よりなるFRP製の樹脂膜で形成されており、
前記FRP製の樹脂膜で構成された円筒状のカートリッジ本体の両端開口が、キャップにより水密保持して閉塞され、
ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴とするろ過分離円筒膜カートリッジ。 - カートリッジ本体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のろ過分離円筒膜カートリッジ。
- 水を浄化するための水処理槽に浸漬して使用され、非浄水成分を円筒形のろ過膜でろ過分離して、透過水を抽出するためのろ過分離円筒膜カートリッジであって、
カートリッジ本体は、内外二本のろ過円筒膜体が同心状に配置された二重管構造であって、両ろ過円筒膜体の間の空間が透過水の通路となって、前記カートリッジ本体の両端のリング状開口がキャップにより水密を保持して閉塞され、
前記カートリッジ本体を構成する内外二本のろ過円筒膜体は、連続した微細気孔を有するFRP製の樹脂膜で構成されて、
ユニット枠内に一本ずつ独立し、しかも縦配置して使用されることを特徴とするろ過分離円筒膜カートリッジ。 - カートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の下端開口には、上昇汚水が前記ろ過円筒膜体の内周面に沿って流れるようにする逆円錐状の水流案内体が配置されていることを特徴とする請求項3に記載のろ過分離円筒膜カートリッジ。
- カートリッジ本体の外側のろ過円筒膜体は、テーパー円筒状に成形されて、大径部が上方となるように縦配置されて、相隣接するカートリッジの隙間が、上方に向けて漸次狭く形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のろ過分離円筒膜カートリッジ。
- 二重管構造のカートリッジ本体を構成する内側のろ過円筒膜体の内側には、単管構造の別のカートリッジ本体がほぼ同心となって配置されて、両カートリッジ本体は、そのキャップの部分で一体連結されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のろ過分離円筒膜カートリッジ。
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