JP3540186B2 - タイヤ空気圧推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ付きホイールである車輪のタイヤ空気圧を推定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平7−089304号公報には上記タイヤ空気圧推定装置の一従来例が記載されている。この従来例は、(a) ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する車輪速センサと、(b) その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づき、タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラメータである目的パラメータを推定するために用いられる基礎パラメータを逐次取得するとともに、今回取得された基礎パラメータを含んで今回以前に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて目的パラメータを推定する推定器とを備えるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発明の効果】
本発明者らは、この種のタイヤ空気圧推定装置において、タイヤ空気圧の推定精度を向上させることを目的として研究を行い、その結果、次の事実に気がついた。
【0004】
今回の目的パラメータを推定するために用いられる複数個の基礎パラメータの値は、タイヤ空気圧の影響を受けるのはもちろんであるが、さらに、基礎パラメータが取得される環境の影響も受ける。その環境の構成要素としては、車輪が走行する路面の凹凸状況,車両の走行速度または車輪の回転速度,車輪の接地荷重等がある。したがって、目的パラメータの推定精度を向上させるためには、今回の目的パラメータを推定するために用いられる複数個の基礎パラメータがそれぞれ互いに実質的に等しい環境の下で逐次取得されることが望ましい。このようにして複数個の基礎パラメータが取得される場合には、各基礎パラメータの値が環境に依存して減少する場合にはその減少分を補い、増加する場合にはその増加分を削るという補正を各基礎パラメータに対して行うことが容易となる。
【0005】
また、それら複数個の基礎パラメータが取得される間に経過する時間が短い場合において長い場合におけるより、それら複数個の基礎パラメータがそれぞれ互いに実質的に同じ環境で取得される可能性が高い。また、複数個の基礎パラメータが取得される間に経過する時間が短いほど、取得される基礎パラメータの個数が少ない。
【0006】
このように、今回の目的パラメータを取得するために用いられる基礎パラメータの個数と目的パラメータの推定精度との間には特定の関係があるのである。
【0007】
そして、本発明者らは、そのような知見に基づいて基礎パラメータの個数を適正化すれば、目的パラメータの推定精度を向上させることができるという事実に気がついた。
【0008】
このような事情を背景として、本発明は、タイヤ空気圧またはそれに関連するパラメータである目的パラメータの推定精度を向上させることを課題としてなされたものであり、本発明によって下記各態様が得られる。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0009】
(1) ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する車輪速センサと、
その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づき、前記タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラメータである目的パラメータを推定するために用いられる基礎パラメータを逐次取得するとともに、今回取得された基礎パラメータを含んで今回以前に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて目的パラメータを推定する推定器と
を備えたタイヤ空気圧推定装置において、
前記推定器を、前記基礎パラメータが依存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くものが実質的に変化しないと予想される長さの設定期間が経過するごとに前記目的パラメータを、最新の一設定期間中に逐次取得された複数個の前記基礎パラメータに基づいて推定するパラメータ推定部を含むものとしたことを特徴とするタイヤ空気圧推定装置〔請求項1〕。
この装置においては、今回の目的パラメータを推定するために用いられる複数個の基礎パラメータが、それら基礎パラメータが依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くものが実質的に変化しないと予想される長さの設定期間中に取得されたものとされる。したがって、この装置によれば、実質的に同じ環境の下に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータが推定される傾向が強くなるため、互いに異なる環境の下で取得された複数個の基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータが推定される傾向が弱い場合におけるより高い精度で目的パラメータの推定を行い得る。
パラメータ推定部は、逐次取得された複数個の基礎パラメータに対して最小二乗法を適用することにより、今回の目的パラメータを推定する態様で実施することが可能である。そして、この態様においては、逐次取得された複数個の基礎パラメータの中に、他の基礎パラメータと値が大きく異なる特異な基礎パラメータが存在する場合には、その特異な基礎パラメータが一般には、目的パラメータの推定精度を低下させる要因となる可能性が高いにもかかわらず、その特異な基礎パラメータが比較的重視されて今回の目的パラメータが推定されてしまう傾向がある。また、そのような特異な基礎パラメータは、車輪におけるリム側部とベルト側部との相対角であるねじれ角が増加するにつれて、それらリム側部とベルト側部とを相対回転可能に互いに連結するねじりばねのばね定数が減少する特性、いわゆる、タイヤ剛性の非線形性を原因として生ずる場合がある。
これに対して、今回の目的パラメータを推定するために用いられる複数個の基礎パラメータの個数が少なくなれば、それら複数個の基礎パラメータの中に特異な基礎パラメータが存在する可能性が低くなり、今回の目的パラメータが、そのような特異な基礎パラメータが全く存在しない複数個の基礎パラメータに基づいて推定される可能性が高くなる。特異な基礎パラメータが特異でない基礎パラメータから分離されて目的パラメータが推定される可能性が高くなるのである。したがって、逐次取得された複数個の基礎パラメータに対して最小二乗法を適用することにより、今回の目的パラメータを推定する態様をパラメータ推定部において採用する場合に、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置を適用すれば、特異な基礎パラメータの影響をできる限り受けない状態で推定される目的パラメータの個数が増加し、全体として、目的パラメータの推定精度が向上する。
本項に記載のタイヤ空気圧推定装置において「基礎パラメータが依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くもの」は、車輪が走行する路面の凹凸状況と、車両の走行速度または車輪の回転速度と、車輪の接地荷重と、車輪速信号の振幅と、車輪または車両の駆動力と、車輪または車両の横力との少なくとも一つを含むように構成することができる。
また、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置は、タイヤ空気圧が判定値より低いか否かを判定して運転者に報知する判定・報知部を出力部として有する態様で実施したり、タイヤ空気圧を運転者に表示する表示部を出力部として有する態様で実施することができる。
(2) 前記パラメータ推定部が、
車輪に対して、相対回転可能なリム側部とベルト側部とが少なくともねじりばねにより互いに連結されたモデルが想定され、そのモデルに基づき、車輪の回転運動に係る運動システムが想定され、その運動システムにおいて、前記タイヤ空気圧の変化に伴う前記ねじりばねのばね定数の変化を車輪に対する外乱とみなし、前記リム側部の角速度を表す信号である前記車輪速信号に基づき、前記外乱を前記運動システムの状態変数の一つとして推定するとともにベルト側部の角速度とリム側部とベルト側部との相対回転角であるねじれ角とのうち少なくともねじれ角を推定する外乱オブザーバと、
前記車輪速センサにより検出されたリム側部の角速度と、前記外乱オブザーバにより推定された外乱および前記少なくともねじれ角とをそれぞれ前記基礎パラメータとし、かつ、それら基礎パラメータに基づき、前記ねじりばねのばね定数の変化量であるばね定数変化量を前記目的パラメータとして同定するパラメータ同定部と
を含む(1) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(3) 前記パラメータ推定部が、前記車輪速信号の複数の周波数成分のうち設定周波数範囲内において強度が実質的に最大となるものの周波数を前記基礎パラメータとし、かつ、その基礎パラメータに基づいて前記目的パラメータを推定するものである(1) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(4) 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を、その推定値が依存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くものに基づいて補正するパラメータ補正部を含む(1) ないし(3) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置〔請求項2〕。
本発明者らは、目的パラメータの推定精度を低下させる要因について研究を行い、その結果、目的パラメータの推定値が、車輪速信号の振幅,車輪または車両の駆動力,車輪または車両の横力,車両の走行速度または車輪の回転速度,ねじれ角速度信号の振幅,路面から車輪に入力される振動の周波数等、各種の物理量に対して依存性を有するという事実に気がついた。すなわち、タイヤ空気圧の実際値が同じであっても、それら物理量が変化すれば、目的パラメータの推定値も変化してしまうという事実に気がついたのである。この事実に鑑み、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が、その推定値が依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くものに基づいて補正される。その結果、目的パラメータの推定値を、その推定値が依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くものに対する依存性が除去されるように補正し得、よって、そのような物理量の変化にもかかわらず、目的パラメータを精度よく推定可能となる。
本項に記載のタイヤ空気圧推定装置において「推定値が依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くもの」は、車輪速信号の振幅と、車輪または車両の駆動力と、車輪または車両の横力と、車両の走行速度または車輪の回転速度と、リム側部の角速度とベルト側部の角速度との差であるねじれ角速度を表すねじれ角速度信号の振幅と、路面から車輪に入力される振動の周波数との少なくとも一つを含むように構成することができる。
本項に記載の特徴は、前記(1) ないし(3) 項に記載の特徴から独立して実施することが可能である。
(5) 前記パラメータ補正部が、前記車輪速信号の振幅が増加するにつれて絶対値が減少する負の補正量を算出し、その算出した補正量を、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値に加算することにより、その推定値を補正する第1補正手段を含む(4) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(6) 前記パラメータ補正部が、車両の走行速度または車輪の回転速度が増加するにつれて絶対値が減少する正の補正量を算出し、その算出した補正量を、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値に加算することにより、その推定値を補正する第2補正手段を含む(4) または(5) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(7) 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化処理部を含む(1) ないし(6) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置〔請求項3〕。
本発明者らの研究により、パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を平滑化して出力した方が、平滑化しないで出力する場合より、当該装置の出力の精度が向上するという事実が判明した。目的パラメータの推定値を平滑化すれば、それの推定ばらつきが低減されるという事実が判明したのである。この事実に基づき、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が平滑化される。したがって、このタイヤ空気圧推定装置によれば、その装置の出力の精度を容易に向上させ得る。
本項に記載の特徴は、前記(1) ないし(6) 項に記載の特徴から独立して実施することが可能である。
パラメータ推定部により逐次取得された複数個の基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータを逐次推定し、このようにして逐次推定された複数個の目的パラメータの値を考慮し、今回推定された目的パラメータを平滑化する場合が考えられる。さらに、この場合に、同じ時間が経過するごとに一回の出力を行うために、2つの手法が考えられる。第1の手法は、比較的短い期間内に逐次取得された比較的少ない数の基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータを推定することを比較的多数回繰り返すというものである。第2の手法は、比較的長い期間内に逐次取得された比較的多い数の基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータを推定することを比較的少数回繰り返すというものである。第1の手法を実施する場合には、今回の目的パラメータを推定するのに用いられる複数個の基礎パラメータが取得される期間を、前記(1) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置におけると同様に設定することが望ましい。
一方、本発明者らは、前述のタイヤ剛性の非線形性が存在する場合には、上記第2の手法を採用すると、目的パラメータの推定値が変動する傾向が強く現れるが、上記第1の手法を採用すれば、その傾向がそれほどには強く現れないという事実に気がついた。
したがって、このような事実を考慮すれば、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置は、上記第1の手法を実施するものであるため、タイヤ剛性の非線形性が存在する場合であっても、目的パラメータを精度よく推定し得る。
(8) 前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値の個数が基準個数と等しくなったときに、それら基準個数の推定値を加算平均して平滑化する第1平滑化手段を含む(7) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(9) 前記第1平滑化手段が、前記基準個数を、車両の走行速度または車輪の回転速度が増加するにつれて増加するように変更する基準個数変更手段を含む(8) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(10)前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部により目的パラメータが推定されるごとに、目的パラメータの今回推定値を含む過去複数個の推定値を考慮して今回推定値を平滑化して平滑化値を逐次取得するとともに、取得された複数個の平滑化値がそれらの取得順序に対して変動する状態が基準状態以下になったときに最新の平滑化値を出力し、基準状態以下にならないうちは出力しない第2平滑化手段を含む(7) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(11)前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの複数個の推定値の分布が実質的に正規分布を示したときにそれら複数個の推定値を考慮して目的パラメータの今回推定値を平滑化して出力し、正規分布を示さないときは出力しない第3平滑化手段を含む(7) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(12)前記推定器が、さらに、前記パラメータ補正部により補正された目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化処理部を含む(4) ないし(6) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置〔請求項4〕。
このタイヤ空気圧推定装置においては、目的パラメータを推定するのに用いられる複数個の基礎パラメータがそれぞれ互いに実質的に同じ環境の下で取得され、さらに、目的パラメータの推定値が、その推定値が依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くものに基づいて補正され、さらにまた、そのようにして補正された目的パラメータの推定値が平滑化され、これにより、当該タイヤ空気圧推定装置の出力が生成される。したがって、このタイヤ空気圧推定装置によれば、目的パラメータを一層高い精度で推定し得る。
(13)前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を予め設定された許容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガード処理部を含む(1) ないし(12)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置〔請求項5〕。
パラメータ推定部による目的パラメータの推定値は、タイヤ空気圧の変化という予定された要因のみならず、予定外の要因、例えば、路面から車輪に入力される振動等によっても変化する。予定外の要因が生じると、タイヤ空気圧がほとんど変化していない場合であっても、目的パラメータの推定値が変化してしまう。これに対して、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、目的パラメータの推定値が予め設定された許容範囲を超えないように補正される。したがって、目的パラメータの推定値がその許容範囲を超えた要因が、上述の予定外の要因である場合に、そのことが当該タイヤ空気圧推定装置の出力に現れずに済み、目的パラメータの推定精度を容易に向上させ得る。
本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、その装置がタイヤ空気圧が判定値より低いか否かを判定する異常判定部を有する場合に、許容範囲の中心値をその判定値と等しく設定することができる。このようにすれば、その異常判定部の精度を確保することが特に必要である領域で目的パラメータの精度が確保されることになる。
(14)前記ガード処理部が、各回のガード処理において用いる前記許容範囲の中心値を、前回のガード処理の影響を受けた目的パラメータの推定値と等しくなるように設定する中心値設定手段を含む(13)項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(15)前記ガード処理部が、前記許容範囲の幅を時間の経過につれて減少させる幅減少手段を含む(13)または(14)項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(16)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が前記許容範囲を逸脱することが設定回数連続した場合に、その許容範囲の幅を増加させる幅増加手段を含む(13)ないし(15)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
ここに「推定値が許容範囲を逸脱する」とは、推定値が許容範囲の上限値を上回ることと、許容範囲の下限値を下回ることとの少なくとも一方を意味する。
(17)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が前記許容範囲の上限値を上回ることが設定回数連続した場合に、その推定値を、前記タイヤ空気圧の標準値に相当する値に補正する推定値補正手段を含む(13)ないし(16)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
(18)前記推定器が、さらに、前記平滑化処理部により平滑化された目的パラメータの推定値を予め設定された許容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガード処理部を含む(7) ないし(12)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
(19)前記推定器が、(7) ないし(12)項のいずれかに記載の平滑化処理部と、(13)ないし(18)項のいずれかに記載のガード処理部とを含み、当該タイヤ空気圧推定装置が、さらに、前記平滑化処理部から出力された目的パラメータの推定値と、前記ガード処理部から出力された目的パラメータの推定値とに基づき、前記タイヤ空気圧が異常であるか否かを判定する異常判定部を含む(1) ないし(6) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
(20)前記異常判定部が、前記平滑化処理部から出力された目的パラメータの推定値と、前記ガード処理部から出力された目的パラメータの推定値とのいずれかでも、予め設定された条件を満たさない場合に、前記タイヤ空気圧が異常であると判定するものである(19)項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(21)ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する車輪速センサと、
その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づき、前記タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラメータである目的パラメータを推定するパラメータ推定部を含む推定器と
を備えたタイヤ空気圧推定装置において、
前記推定器を、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を予め設定された許容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガード処理部を含むものとしたことを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。
パラメータ推定部による目的パラメータの推定値は、タイヤ空気圧の変化という予定された要因のみならず、予定外の要因、例えば、路面から車輪に入力される振動等によっても変化する。予定外の要因が生じると、タイヤ空気圧がほとんど変化していない場合であっても、目的パラメータの推定値が変化してしまう。これに対して、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、目的パラメータの推定値が予め設定された許容範囲を超えないように補正される。したがって、目的パラメータの推定値がその許容範囲を超えた要因が、上述の予定外の要因である場合に、そのことが当該タイヤ空気圧推定装置の出力に現れずに済み、目的パラメータの推定精度を容易に向上させ得る。
本項に記載のタイヤ空気圧推定装置においては、その装置がタイヤ空気圧が判定値より低いか否かを判定する異常判定部を有する場合に、許容範囲の中心値をその判定値と等しく設定することができる。このようにすれば、その異常判定部の精度を確保することが特に必要な領域で目的パラメータの推定精度が確保されることになる。
(22)前記ガード処理部が、各回のガード処理において用いる前記許容範囲の中心値を、前回のガード処理の影響を受けた目的パラメータの推定値と等しくなるように設定する中心値設定手段を含む(21)項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(23)前記ガード処理部が、前記許容範囲の幅を時間の経過につれて減少させる幅減少手段を含む(21)または(22)項に記載のタイヤ空気圧推定装置。
(24)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が前記許容範囲を逸脱することが設定回数連続した場合に、その許容範囲の幅を増加させる幅増加手段を含む(21)ないし(23)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
ここに「推定値が許容範囲を逸脱する」とは、推定値が許容範囲の上限値を上回ることと、許容範囲の下限値を下回ることとの少なくとも一方を意味する。
(25)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値が前記許容範囲の上限値を上回ることが設定回数連続した場合に、その推定値を、前記タイヤ空気圧の標準値に相当する値に補正する推定値補正手段を含む(21)ないし(24)項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本発明の第1実施形態はタイヤ空気圧異常警告装置である。図1において10はロータ、12は電磁ピックアップとして構成された車輪速センサを示す。ロータ10は図2に示す車輪14と共に回転するものであり、外周に多数の歯16を備えている。車輪速センサ12はそれらの歯16の通過に応じて周期的に変化する電圧を発生する。この電圧は図1に示す波形整形器18によって矩形波に整形され、コンピュータ20の入出力装置としてのI/Oポート22に供給される。車輪14は4個あり、それらに設けられている各車輪速センサ12が全て波形整形器18を経てコンピュータ20に接続されるが、図1には代表的に1組のみが示されている。
【0012】
車輪14は図2に示すように、ホイール24の外周にタイヤ26が取り付けられたタイヤ付ホイールであるが、図3に示すように、相対回転可能なリム側部28とベルト側部30とが、互いに並列に接続されたねじりばね32とダンパ34とによって連結されたモデルで近似することができる。このモデルと車輪14との関係を説明すれば、リム側部28が剛体としてのホイール24に対応し、ベルト側部30が弾性体としてのタイヤ26に対応する。なお、ロータ10はホイール24と一体的に回転するように取り付けられるため、車輪速センサ12は結局、リム側部28の角速度ωR を検出することになる。
【0013】
コンピュータ20は図1に示すように、プロセッサとしてのCPU48と、それぞれメモリとしてのROM49およびRAM50とを備えている。図5にはROM49の構成が概念的にブロック図で示されている。
【0014】
ROM49には、リム側部角速度演算ルーチンが記憶されており、これにより、図4に示すリム側部角速度演算部45が構成されている。リム側部角速度演算部45は、車輪速センサ12から波形整形器18を経て入力された車輪速信号(アナログ信号)に基づき、角速度ωR を設定周期T1 (例えば、5ms)で逐次演算する。
【0015】
ROM49には、さらに、タイヤ空気圧異常判定ルーチン,各種初期値,各種マップ等が記憶されている。コンピュータ20にそれらタイヤ空気圧異常判定ルーチン等が記憶されることによって、図4に示す外乱オブザーバ52,パラメータ同定部54,パラメータ補正部56,平滑化処理部58,ガード処理部60および異常判定部62が構成されている。図6にはRAM50の構成が概念的にブロック図で示されている。RAM50には各種メモリが設けられている。
【0016】
ROM49には、さらに、図5に示すように、前処理フィルタ作動ルーチンが記憶されており、それにより、図4に示す前処理フィルタ64が構成されている。この前処理フィルタ64により、リム側部角速度演算部45からの回転速度信号(角速度ωR の演算値が時間と共に変化することを表すデジタル信号)が直ちに外乱オブザーバ52に供給されるのではなく前処理フィルタ64を経て供給される。回転速度信号は、車輪14に関連する周波数成分のみならず、車輪14以外の要素、例えば、駆動系に関連する周波数成分をも含んでいる。前処理フィルタ64は、回転速度信号から、車輪14に関連する周波数成分のみを抽出するバンドパスフィルタとして機能する。
【0017】
ROM49には、さらに、図5に示すように、車両の走行速度である車速を検出する車速検出ルーチンが記憶されており、それにより、図4に示す車速検出部68が構成されている。車速検出部68は、各車輪に設けられた複数の車輪速センサ12からの信号に基づき、複数の車輪の車輪速(リム側部角速度ωR に相当する)のうち最大のものが実車速に等しいという事実を利用して、実車速を推定する。
【0018】
コンピュータ20のI/Oポート22には、図1に示すように、異常判定部62の判定結果を運転者に知らせる表示装置66が接続されている。I/Oポート22には、さらに、温度センサ70も接続されている。温度センサ70は、車両の前面部(フロントバンパー近傍)に搭載され、そこにおける車両の外気温度Θをタイヤ26の温度として、サーミスタの抵抗値によって検出する。
【0019】
外乱オブザーバ52は、車輪14の図3に示すモデルに基づいて構成されている。同図に示すモデルは、図7に示すように、いわゆる2慣性モデルに単純化することができる。
【0020】
ただし、
mR :リム側部28の等価慣性質量
mB :ベルト側部30の等価慣性質量
KW :ねじりばね32の等価ばね定数
DW :ダンパ34の等価減衰係数
xR :リム側部28の等価直線変位
xB :ベルト側部30の等価直線変位
xRB:リム側部28の等価直線変位xR とベルト側部30の等価直線変位xB との差である相対等価直線変位
Fd :路面からタイヤ26への等価外乱力(路面の段差等によって突発的に発生するころがり抵抗力や路面の凹凸によって定常的に発生するころがり抵抗力による外乱トルクTd を直線力に換算したもの)
【0021】
ここで、この2慣性モデルにおける各種変数と図3のモデル(以下、「基本モデル」という)における各種変数との関係について説明する。
【0022】
リム側部28およびベルト側部30の等価慣性質量mR ,mB は、基本モデルの慣性モーメントJR ,JB とそれぞれ等価である。また、等価ばね定数KW および等価減衰係数DW は、基本モデルのねじりばね32のばね定数Kおよびダンパ34の減衰係数Dとそれぞれ等価である。また、リム側部28およびベルト側部30の等価直線変位xR ,xB は、基本モデルのリム側部28およびベルト側部30の回転角θR ,θB とそれぞれ等価である。また、等価直線変位速度xR ′,xB ′は、基本モデルのリム側部28およびベルト側部30の角速度ωR ,ωB とそれぞれ等価である。また、等価直線変位加速度xR ”,xB ”は、基本モデルのリム側部28およびベルト側部30の角加速度ωR ′,ωB ′とそれぞれ等価である。また、相対等価直線変位xRBは、図3のモデルのねじれ角θRB(=θR −θB )と等価である。また、相対等価直線変位速度xRB′は、基本モデルのねじれ角速度θRB′(=ωR −ωB )と等価である。また、等価外乱力Fd は、基本モデルの外乱トルクTd と等価である。
【0023】
したがって、基本モデルを記述する状態方程式は次の(1) 式となる。
【0024】
【数1】
【0025】
なお、この状態方程式は、車輪14の回転運動を線形システムとして記述するものである。
【0026】
また、この状態方程式には、エンジンまたはブレーキからリム側部28に作用する駆動・制動トルクT1 に対応するパラメータが存在しないが、これは、その状態方程式は基本モデルの回転運動のうち特に振動に着目し、各パラメータについてはそれの変動成分をもって記述することとし、一方、駆動・制動トルクT1 は他のパラメータとの関係において固定値とみなすことができるからである。すなわち、この状態方程式においては、角速度ωR ,ωB ,ねじれ角θRB,ばね定数Kおよび減衰係数Dの各々が、固定成分を除いた変動成分を意味しているのである。
【0027】
なお、前述のように、リム側部角速度演算部45から出力された回転速度信号は、前処理フィルタ64により、周波数が設定周波数帯域内にある変動成分のみが抽出されて外乱オブザーバ52に供給されるため、外乱オブザーバ52には角速度ωR の変動成分が入力されることとなる。
【0028】
いま、タイヤ26の空気圧が変化し、ばね定数Kおよび減衰係数Dが共に変化し、その結果、K=K+ΔKおよびD=D+ΔDとなった場合、上記(1) 式は次の(2) 式となる。
【0029】
【数2】
【0030】
このように、ばね定数Kおよび減衰係数Dが共に変化し、K=K+ΔKおよびD=D+ΔDとなることは、正常なタイヤ26に、上記(2) 式の右辺の最終項で表される外乱が加えられるのと等価である。この外乱には、ばね定数Kの変化量ΔKの情報と、減衰係数Dの変化量ΔDの情報とが含まれており、かつ、ばね定数Kおよび減衰係数Dはタイヤ26の空気圧に応じて変化するので、この外乱を推定することによってタイヤ26の空気圧の変化量を推定することができる。この外乱の推定に外乱オブザーバの手法を用いるのであり、いま路面からのトルクTd をも外乱として扱うとすれば、推定すべき外乱wは次の(3) 式で表される。
【0031】
【数3】
【0032】
しかし、理論上、外乱[w]の中の一つの要素しか推定することができないため、この外乱のうち第2要素であるw2 を推定することとする。外乱w2 は次の(4) 式で表される。
【0033】
w2 =(ΔD/JB )(ωR −ωB )+(ΔK/JB )θRB−Td /JB +n・・・(4)
【0034】
ここに「n」は、外乱を第2要素しか推定しないために生ずる誤差項である。
【0035】
したがって、車輪14の状態方程式は次の(5) 式となる。
【0036】
【数4】
【0037】
外乱オブザーバ52は外乱をシステムの状態変数の一つとして推定するものである。そこで、前記(4) 式の外乱w2 をシステムの状態に含めるため、推定すべき外乱w2 のダイナミクスを次の(6) 式で近似する。
【0038】
w2 ′=0・・・(6)
【0039】
これは、図8に示すように連続して変化する外乱を階段状に近似(零次近似)することを意味し、外乱オブザーバ52の外乱推定速度を推定すべき外乱の変化に比べて十分速くすれば、この近似は十分に許容される。上記(6) 式より、外乱w2 をシステムの状態に含めると、次の(7) 式の拡張系が構成される。
【0040】
【数5】
【0041】
上式においてリム側部角速度ωR のみが検出可能であり、[ωB θRB w2 ]T (=状態[z])が検出することができない状態となる。したがって、このシステムに基づいて外乱オブザーバ52を構成すれば、外乱w2 と、元々測定できない状態変数ωB ,θRBとを推定することができる。
【0042】
記述を簡単にするために、上記(7) 式のベクトルおよび行列を分解して次のように表すこととする。
【0043】
【数6】
【0044】
このとき、状態[z]=[ωB θRB w2 ]T を推定する最小次元オブザーバの構成は次の(8) 式で表される。
【0045】
[zp ′]=[A21][xa ]+[A22][zp ]+[B2 ][u]+[G]{[xa ′]−([A11][xa ]+[A12][zp ]+[B1 ][u])}=([A21]−[G][A11])[xa ]+([A22]−[G][A12])[zp ]+[G][xa ′]+([B2 ]−[G][B1 ])[u]・・・(8)
【0046】
ただし、
[zp ] :[z]の推定値
[zp ′]:推定値[zp ]の変化率
[G] :外乱オブザーバ52の推定速度を決めるゲイン
【0047】
この方程式をブロック線図で表わすと図9のようになる。なお、図において[I]は単位行列、sはラプラス演算子である。
【0048】
また、真値[z]と推定値[zp ]との誤差[e]を[e]=[z]−[zp ]とおき、誤差[e]の変化率を[e′]とすると、次の(9) 式の関係を得る。
【0049】
[e′]=([A22]−[G][A12])[e]・・・(9)
【0050】
これは外乱オブザーバ52の推定特性を表しており、行列([A22]−[G][A12])の固有値がすなわち外乱オブザーバ52の極となる。したがって、この固有値がs平面の左半面において原点から離れるほど外乱オブザーバ52の推定速度が速くなる。オブザーバゲイン[G]は希望の推定速度になるように決定すればよい。
【0051】
以上のようにして構成された外乱オブザーバ52においては、リム側部角速度演算部54から前処理フィルタ64を経て入力された角速度ωR に基づき、ねじりばね32のばね定数KがΔK変化し、ダンパ34の減衰係数DがΔD変化した場合の、前記(4) 式で表される外乱w2 が推定され、さらに、検出が不可能である角速度ωB およびねじり角θRBも推定される。
【0052】
図10には、前記タイヤ空気圧異常判定ルーチンがフローチャートで表されている。このルーチンは、車両走行中繰返し実行される。以下、このルーチンを図10に基づいて説明するが、まず、概略的に説明する。
【0053】
このタイヤ空気圧異常判定ルーチンの各回の実行時には、まず、ステップS50(以下、単に「S50」で表す。他のステップについても同じとする)において、前処理フィルタ64が作動させられる。それにより、リム側部角速度演算部45からの回転速度信号から、車輪14に関連する周波数成分のみが抽出される。
【0054】
次に、S100において、外乱オブザーバ52が作動させられ、それにより、今回の角速度ωR (i) から、今回の外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i) が推定される。
【0055】
その後、S200において、現時点までに取得された、角速度ωR ,外乱w2 ,角速度ωB およびねじれ角θRBを1組とするM組分の基礎パラメータに基づき、ばね定数Kの今回の変化量ΔK(j) が同定される。
【0056】
ばね定数変化量ΔK(j) は、外乱オブザーバ52における目的パラメータである。また、ばね定数変化量ΔK(j) は、タイヤ26の空気圧Pの変化量ΔPに応じて増加するパラメータであるから、ばね定数変化量ΔK(j) を同定することは結局、空気圧変化量ΔPを推定することを意味する。
【0057】
続いて、S300において、S200において同定されたばね定数変化量ΔK(j) が、温度Θと車速Vと角速度振幅|ωR |(このパラメータの意味は後に詳述する)とに基づいて補正される。S200において同定されたばね定数変化量ΔK(j) を第1暫定値ΔKPRO1(j) として記述することとすれば、S300においては、その第1暫定値ΔKPRO1(j) が補正されて第2暫定値ΔKPRO2(j) が取得されることになる。
【0058】
その後、S400において、今回以前に取得されたN個の第2暫定値ΔKPRO2が加算平均により平滑化され、それにより第3暫定値ΔKPRO3が取得される。
【0059】
続いて、S500において、その第3暫定値ΔKPRO3が許容範囲から逸脱しないようにガードされ、それにより、ばね定数変化量の最終値ΔKFNL が取得される。
【0060】
その後、S600において、その最終値ΔKFNL がしきい値ΔKTHより低いか否かが判定され、低い場合には、タイヤ空気圧Pが低いと判定され、そのことが運転者に告知される。なお、しきい値ΔKTHの符号は、外乱オブザーバ52におけるばね定数K(固定値)の設定次第で正であったり負であったりする。以上でこのタイヤ空気圧異常判定ルーチンの一回の実行が終了する。
【0061】
次に、このタイヤ空気圧異常判定ルーチンを図11ないし図22に基づいて詳細に説明する。
【0062】
図11には、S100、すなわち、外乱オブザーバ52を作動させるステップの詳細が外乱オブザーバ作動サブルーチンとしてフローチャートで表されている。
【0063】
この外乱オブザーバ作動サブルーチンにおいては、まず、S101において、前処理フィルタ64から最新の角速度ωR が今回の角速度ωR (i) として取り込まれる。次に、S102において、外乱オブザーバ52により、その今回の角速度ωR (i) を入力として、外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i) が前述のようにして推定される。その後、S103において、演算された角速度ωR (i) と、推定された外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i) とが、回数iに関連付けてωR 等メモリにストアされる。ωR 等メモリは図6に示されているように、RAM50に設けられている。以上でこのサブルーチンすなわちS100の一回の実行が終了する。
【0064】
この外乱オブザーバ作動サブルーチンは、角速度ωR (i) から外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i) を推定することを設定周期T1 (例えば、5ms)で繰り返すように設計されており、図12の上側には、外乱オブザーバ52が繰返し作動させられるタイミングが概念的に示されている。
【0065】
図13には、S200、すなわち、パラメータ同定を行うステップの詳細がパラメータ同定サブルーチンとしてフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを図13に基づいて詳細に説明するが、それに先立ち、このサブルーチンが採用している理論を説明する。
【0066】
ばね定数変化量ΔK(=第1暫定値ΔKPRO1(j) )の同定は、最小二乗法により行われる。最小二乗の和が次の(10)式で表され、それが最小になるように、すなわち、最小二乗和Sをばね定数変化量ΔKで偏微分した場合の値と減衰係数変化量ΔDで偏微分した場合の値とがそれぞれ0となるようにばね定数変化量ΔKを取得するのである。
【0067】
【数7】
【0068】
具体的には、ばね定数変化量ΔKが次の(11)式を用いて同定される。
【0069】
【数8】
【0070】
なお、最小二乗法によれば、ばね定数変化量ΔKのみならず減衰係数変化量ΔDをも同定可能であるが、本実施形態においては、空気圧変化量ΔPをばね定数変化量ΔKで代用してタイヤ空気圧Pが低いか否かを判定するように設計されていて、その異常判定に減衰係数変化量ΔDは必要ではないため、減衰係数変化量ΔDの同定は行われない。
【0071】
次に、このパラメータ同定サブルーチンを図13に基づいて詳細に説明する。
【0072】
このサブルーチンにおいては、まず、S201aにおいて、回数iが1増加させられる。次に、S201bにおいて、ωR 等メモリに、角速度ωR ,外乱w2 ,角速度ωB およびねじれ角θRBを1組とする基礎パラメータがM組ストアされたか否か、すなわち、回数iの現在値が基準値Mに到達したか否かが判定される。今回は、基準値Mに到達していないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンすなわちS200の一回の実行が終了する。
【0073】
これに対して、今回は、回数iの現在値が基準値Mに到達したと仮定すれば、S201bの判定がYESとなり、S202において、ωR 等メモリから角速度ωR ,外乱w2 ,角速度ωB およびねじれ角θRBという基礎パラメータが読み出される。続いて、S203において、それら基礎パラメータに基づき、最小二乗法により、今回の第1暫定値ΔKPRO1(j) が目的パラメータとして前述のようにして演算される。その後、S204において、演算された第1暫定値ΔKPRO1(j) がΔKPRO1メモリにストアされる。ΔKPRO1メモリは図6に示すように、RAM50に設けられている。続いて、S205において、前記ωR 等メモリがクリアされ、その後、S206において、回数iが0にセットされる。以上でこのサブルーチンすなわちS200の一回の実行が終了する。
【0074】
本実施形態においては、最小二乗法により1個の第1暫定値ΔKPRO1を取得するために用いられる基礎パラメータの組数が基準値Mとされている。基準値Mは、設定周期T2 (例えば、1s)が経過する間に外乱オブザーバ52が作動させられる回数として設定されている。図12には、基礎パラメータが設定周期T1 (<T2 )で逐次取得されるのに対して、第1暫定値ΔKPRO1が設定周期T2 で取得されるタイミングが示されている。
【0075】
ここで、設定周期T2 の設定について詳しく説明する。
【0076】
図14には、設定周期T2 を60秒に設定し、60秒ごとに最小二乗法によりばね定数変化量ΔKを推定する実験を行った場合に、その推定値が時間(秒)と共に変化する様子が、「60秒推定」なるタイトルが付されている破線グラフで示されている。この実験は、ばね定数変化量ΔKの真の値が約35である状況で行われた。このグラフから明らかなように、設定周期T2 を60秒に設定した場合には、推定値が落ち込むことが確認された。
【0077】
以下、この推定値が落ち込む原因を数学的に解析するが、設定周期T2 を60秒とし、60秒ごとに推定値を取得し、それを最終値とする場合と、設定周期T2 を1秒とし、1秒ごとに推定値を取得し、60秒間に取得された60個の推定値の平均値を最終値とする場合とを互いに比較しつつ説明する。
【0078】
外乱オブザーバ52により設定周期T1 (例えば、5ms)ごとに推定される各回のねじれ角θRB(j) と外乱w2 (j) との積をE(j) 、各回のねじれ角θRB(j) の二乗をD(j) で表すこととすれば、60秒間における積E(j) の合計値Eと二乗D(j) の合計値Dとはそれぞれ、次の(21)式と(22)式とで表される。
【0079】
【数9】
【0080】
よって、60秒ごとにばね定数変化量の推定値を取得することにすれば、その推定値ΔKは、次の(23)式で表される。
【0081】
【数10】
【0082】
一方、1秒ごとに推定値を取得することにすれば、その推定値ΔK(j) は、次の(24)式で表される。
【0083】
【数11】
【0084】
このようにして60秒間に取得した60個の推定値の平均値ΔKm は、次の(25)式で表される。
【0085】
【数12】
【0086】
前記(24)式を変形すると、次の(26)式が得られる。
【0087】
【数13】
【0088】
この式より、次の(27)式が得られる。
【0089】
【数14】
【0090】
この式と前記(21)式とから、次の(28)式が得られる。
【0091】
【数15】
【0092】
この式の両辺をDで割り算すると、次の(29)式が得られる。
【0093】
【数16】
【0094】
ここで、F(j) =D(j) /Dとおき、さらに、推定値ΔK(j) の、平均値ΔKm からのばらつきδ(j) を次の(30)式により定義する。
【0095】
【数17】
【0096】
この式と上記(29)式とから、次の(31)式が得られる。
【0097】
【数18】
【0098】
したがって、ΔK=ΔKm なる式が成立するためには、ばらつきδ(j) とF(j) との間に相関が成立しないことが必要である。
【0099】
ところで、車輪14には、それのねじれ角θRBが増加するにつれてタイヤ26のばね定数K(剛性)が低下する特性がある。タイヤ剛性が非線形性を示すのである。この特性に基づき、ねじれ角θRBが増加するにつれて回転速度信号の共振周波数も低下する。この性質は、ばらつきδ(j) とF(j) との間に負の相関が成立することを意味し、このことは次の(32)式で表される。
【0100】
【数19】
【0101】
この式と上記(31)式とから、次の(33)式が得られる。
【0102】
【数20】
【0103】
したがって、ばね定数Kがねじれ角θRBに依存するという性質が存在することが原因で、60秒ごとに推定される推定値ΔKは、1秒ごとに推定されて60秒間の合計値に対して推定される平均値ΔKm に対して落ち込むことが分かる。また、ばらつきδ(j) とF(j) との間に負の相関が成立する場合には、推定値ΔKの推定周期を長くすると(すなわち、基礎パラメータの組数を多くすると)、その負の相関がさらに強くなるため、推定精度がさらに低下する可能性がある。
【0104】
このような知見に基づき、本実施形態においては、設定周期T2 が1秒とされ、設定周期T3 が60秒とされ、1秒ごとにばね定数変化量ΔKの推定値を取得し、60秒間に取得された60個の推定値ΔKの平均値が最終値とされるようになっている。このような条件で実験を行った場合の結果の一例が、図14に、「1秒推定,60点平均」なるタイトルが付された実線グラフで示されている。このグラフから明らかなように、本実施形態によれば、推定値が真の値に対して落ち込むことが、60秒ごとに推定値を取得する、前述の実験例におけるより抑制される。さらに、このグラフから明らかなように、推定値の変動幅も、その実験例におけるより抑制される。その結果、本実施形態によれば、その実験例におけるよりタイヤ空気圧Pの推定精度が向上する。
【0105】
本実施形態においては、タイヤ空気圧Pを推定するために同定することが必要な目的パラメータ、すなわち、ばね定数変化量ΔKを同定するために必要な基礎パラメータ、すなわち、角速度ωB ,外乱w2 およびねじれ角θRBを1組とするパラメータが取得される設定時間T2 が1秒に設定されているが、例えば、2秒以内とすることができ、また、望ましくは、0.5〜1秒とすることができる。0.5秒以下では、基礎パラメータの組数が目的パラメータの同定精度との関係において不足する傾向があり、また、2秒以上では、基礎パラメータが取得される環境、例えば、路面の凹凸状況の変化や角速度ωR の振幅の変化が、目的パラメータの同定精度との関係において過大となる傾向があるからである。
【0106】
図15には、S300、すなわち、パラメータ補正を行うステップの詳細がパラメータ補正サブルーチンとしてフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを同図に基づいて詳細に説明するが、それに先立ち、このサブルーチンが採用している理論を説明する。
【0107】
本発明者らは、本発明に先立ち、実験対象品に選ばれた車輪14のタイヤ空気圧Pの実際値を圧力センサで検出した後、タイヤ26の温度Θ,車速Vおよび角速度ωR をそれぞれ変化させつつ外乱オブザーバ52によりばね定数変化量ΔKを推定するという実験を行った。その結果、次のような事実が判明した。すなわち、図16の(a) に示すように、温度Θが低下するにつれて外乱オブザーバ52による推定値(すなわち、ばね定数変化量ΔK)が増加するという事実が判明したのである。さらに、図17の(a) に示すように、車速Vが低下すると、推定値が減少するという事実も判明した。さらにまた、図18の(a) に示すように、変動成分である角速度ωR の振幅である角速度振幅|ωR |が減少すると、推定値が増加するという事実も判明した。このように、外乱オブザーバ52による推定値には、温度Θ,車速Vおよび角速度振幅|ωR |にそれぞれ依存するという特性があることが判明したのである。
【0108】
このような知見に基づき、本実施形態においては、第1暫定値ΔKPRO1が、温度Θ,車速Vおよび角速度振幅|ωR |に基づき、第2暫定値ΔKPRO2に補正される。具体的には、
ΔKPRO2=ΔKPRO1+ΔKCOM1+ΔKCOM2+ΔKCOM3
なる式を用いて第2暫定値ΔKPRO2が演算される。
【0109】
ここに、「ΔKCOM1」は、温度Θに応じて変化する第1部分補正量であって、図16の(b) に示すように、温度Θが低下するのに応じて絶対値が増加する負の数値である。また、「ΔKCOM2」は、車速Vに応じて変化する第2部分補正量であって、図17の(b) に示すように、車速Vが低下するのに応じて絶対値が増加する正の数値である。また、「ΔKCOM3」は、角速度振幅|ωR |に応じて変化する第3部分補正量であって、図18の(b) に示すように、角速度振幅|ωR |が低下するのに応じて絶対値が増加する負の数値である。なお、角速度振幅|ωR |は、変動成分である角速度ωR を二乗した値で代用することができる。角速度振幅ωR の正負を問わず、それの絶対値を簡易に取得するためである。
【0110】
なお、上記の演算式においては、3個の部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2,ΔKCOM3につき、第2暫定値ΔKPRO2に対する重みが互いに等しくされているが、それら部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2,ΔKCOM3に、相互に独立ではないものが存在すること等を考慮することにより、必要に応じて互いに異なる重みを持たせることが可能である。
【0111】
このような補正を行うことにより、タイヤ空気圧Pの実際値が変化しない限り、外乱オブザーバ52による推定値が、温度Θ,車速Vおよび角速度振幅|ωR |の変化にもかかわらず実質的に一定となるように補償される。
【0112】
次に、このパラメータ補正サブルーチンすなわちS300を図15に基づいて詳細に説明する。
【0113】
このサブルーチンにおいては、まず、S301aにおいて、最新の第1暫定値ΔKPRO1(i) が取得された直後であるか否かが判定される。直後ではない場合には、判定がNOとなり、直ちにこのサブルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、直後である場合には、判定がYESとなり、S301bに移行する。
【0114】
S301bにおいては、最新の第1暫定値ΔKPRO1(i) を取得するのに経過した期間と同じ期間に取得された複数個の角速度ωR についてそれぞれ角速度振幅|ωR |が演算され、さらに、それら複数個の角速度振幅|ωR |の平均値が演算される。以後、その平均値が今回の角速度振幅|ωR |として使用される。次に、S302において、今回の角速度振幅|ωR |が最大値MAX以上であるかまたは最小値MIN以下であるか否かが判定される。最大値MAX以上であるかまたは最小値MIN以下である場合には、判定がYESとなり、直ちにこのサブルーチンすなわちS300の一回の実行が終了する。
【0115】
これに対して、今回の角速度振幅|ωR |が最大値MAX以上でもなく最小値MIN以下でもない場合には、S302の判定がNOとなり、S303において、ΔKPRO1メモリから最新の第1暫定値ΔKPRO1(i) が読み込まれる。続いて、S304において、車速検出部68から最新の車速Vが読み込まれ、S305において、温度センサ70から最新の温度Θが読み込まれる。
【0116】
その後、S306において、第1ないし第3部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2およびΔKCOM3が決定される。第1部分補正量ΔKCOM1は、読み込まれた温度Θに応じ、ROM49に記憶されたマップが規定する両者の関係に従って決定される。その関係は例えば、図16の(b) に示すものとされる。第2部分補正量ΔKCOM2は、読み込まれた車速Vに応じ、ROM49に記憶されたマップが規定する両者の関係に従って決定される。その関係は例えば、図17の(b) に示すものとされる。第3部分補正量ΔKCOM3は、今回の角速度振幅|ωR |に応じ、ROM49に記憶されたマップが規定する両者の関係に従って決定される。その関係は例えば、図18の(b) に示すものとされる。
【0117】
続いて、S307において、最新の第1暫定値ΔKPRO1と、今回演算された3個の部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2およびΔKCOM3とを、前述の、
ΔKPRO2=ΔKPRO1+ΔKCOM1+ΔKCOM2+ΔKCOM3
なる式に代入することにより、今回の第2暫定値ΔKPRO2(j) が演算される。その後、S308において、演算された第2暫定値ΔKPRO2(j) が、RAM50に設けられたΔKPRO2メモリに、回数jに関連付けてストアされる。
【0118】
以上で、このパラメータ補正サブルーチンすなわちS300の一回の実行が終了する。
【0119】
なお付言すれば、このパラメータ補正サブルーチンにおいては、外乱オブザーバ52によるばね定数変化量ΔKの推定値が角速度振幅|ωR |によって補正されるが、角速度振幅|ωR |に代えてねじれ角速度振幅|ωR −ωB |を用いることができる。ねじれ角速度振幅|ωR −ωB |は、前処理フィルタ64から外乱オブザーバ52に入力された角速度ωR と、その角速度ωR に基づいて外乱オブザーバ52により推定された角速度ωB とを用いて演算することができる。
【0120】
さらに付言すれば、上記パラメータ補正サブルーチンにおいては、第3部分補正量ΔKCOM3と角速度振幅|ωR |との関係が、実験結果等に基づいて予め設定された関係であって、車輪14の実際の状態(タイヤ26の剛性等)に追従して変化することはなく、かつ、4輪に共通の関係とされている。しかし、その関係の設定は種々の手法により行い得る。タイヤ空気圧Pが標準値(例えば、2.0kgf/cm2 )であると推定される状況において実際に取得された関係として設定することができる。例えば、タイヤ空気圧Pが標準値であると推定される状況において、ばね定数変化量ΔKの推定値と角速度振幅|ωR |との関係を実際に取得し、その取得した関係に基づいて、第3部分補正量ΔKCOM3と角速度振幅|ωR |との関係を設定することができる。タイヤ空気圧Pが標準値であると推定される状況には例えば、車両のイグニションスイッチがOFFからONに操作された直後や、タイヤ空気圧Pが標準値と等しいことが運転者により入力されたときや、第3部分補正量ΔKCOM3と角速度振幅|ωR |との関係を再度設定することが必要になったことが運転者から入力されたときを選ぶことができる。このような関係設定を行う場合には、車輪14の実際の状態に則して、かつ、各輪ごとに個別に第3部分補正量ΔKCOM3と角速度振幅|ωR |との関係を設定可能となり、タイヤ空気圧Pの推定精度を容易に向上可能となる。
【0121】
さらに付言すれば、前記パラメータ補正サブルーチンにおいては、外乱オブザーバ52によるばね定数変化量ΔKの推定値が温度Θと車速Vと角速度振幅|ωR |とにそれぞれ依存するという性質に鑑み、推定値が温度Θと車速Vと角速度振幅|ωR |とによって補正されるが、以下に説明するように、推定値は他のパラメータにも依存する。
【0122】
前述のように、リム側部角速度演算部45から出力される回転速度信号のうち、外乱オブザーバ52がばね定数変化量ΔKを精度よく推定するのに必要な周波数成分のみが外乱オブザーバ52に入力されることなるように、それらリム側部角速度演算部45と外乱オブザーバ52との間に前処理フィルタ64が設けられている。しかし、何らかの理由により、回転速度信号の周波数特性が変化すると、外乱オブザーバ52による推定精度が低下する。一方、路面から車輪14に入力される振動は、回転速度信号の周波数特性を変化させる原因となり得る。したがって、外乱オブザーバ52によるばね定数変化量ΔKの推定値は、路面から車輪14に入力される振動の周波数にも依存する。
【0123】
したがって、推定値は、路面から車輪14に入力される振動の周波数によって補正することも望ましい。なお、その周波数は、路面の凹凸の変化状況を超音波,撮像結果等を用いて、車速Vと共に検出する(必要に応じて車輪14の接地荷重も検出する)ことにより、それら検出値相互の関係から推定することが可能である。路面の突起間の間隔と、それら突起を車輪14が通過する際の速度と、路面の複数の突起(大きいものや小さいものがある)のうち実際に車輪14に対する加振源となるもの(これは、車輪14の接地荷重等によって変化する)とのうち少なくとも前2者が判明すれば、路面から車輪14に入力される振動の周波数を推定可能であるからである。
【0124】
図19には、S400、すなわち、平滑化処理を行うステップの詳細が平滑化処理サブルーチンとしてフローチャートで表されている。
【0125】
このサブルーチンにおいては、まず、S401aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S401bにおいて、ΔKPRO2メモリにストアされている第2暫定値ΔKPRO2の数、すなわち、回数jの現在値が基準値Nに到達したか否かが判定される。今回は、到達していないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンすなわちS400の一回の実行が終了する。
【0126】
これに対して、回数jの現在値が基準値Nに到達したと仮定すれば、S401bの判定がYESとなり、S402において、ΔKPRO2メモリから、N個の第2暫定値ΔKPRO2(1) 〜ΔKPRO2(N) が読み出される。その後、S403において、それらN個の第2暫定値ΔKPRO2(1) 〜ΔKPRO2(N) に対して加算平均が行われ、それら第2暫定値ΔKPRO2が平滑化されることにより、第3暫定値ΔKPRO3が演算される。その演算式は同図に示されている。
【0127】
その後、S404において、演算された第3暫定値ΔKPRO3が、RAM50に設けられたΔKPRO3メモリにストアされる。続いて、S405において、ΔKPRO2メモリがクリアされ、その後、S406において、回数jが0にセットされる。以上でこのサブルーチンすなわちS400の一回の実行が終了する。
【0128】
本実施形態においては、平滑化処理により1個の第3暫定値ΔKPRO3を取得するために用いられる第2暫定値ΔKPRO2のデータの数が基準値Nとされている。基準値Nは、設定周期T3 (例えば、60s)が経過する間に第2暫定値ΔKPRO2が演算される個数として設定されている。図12には、第2暫定値ΔKPRO2が設定周期T2 (<T3 )で逐次取得されるのに対して、第3暫定値ΔKPRO3が設定周期T3 で取得されるタイミングが示されている。
【0129】
なお付言すれば、基準値Nは固定値とすることができ、この場合、60個としたり、120個とすることができる。また、可変値とすることができ、この場合、第2暫定値ΔKPRO2がばらつく程度に応じて変化するパラメータ、例えば、車速Vまたは車輪の回転速度に応じて変化させることができる。車速Vまたは車輪の回転速度に応じて変化させる場合、車速Vまたは車輪の回転速度が増加するにつれて増加するように基準値Nを変化させることができる。
【0130】
図20には、S500、すなわち、ガード処理を行うステップの詳細がガード処理サブルーチンとしてフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを説明するが、まず、概略的に説明する。
【0131】
このサブルーチンにおいては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、上限値と下限値とで規定される許容範囲内にあるか否かが判定され、許容範囲内にあれば、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲の上限値より大きい場合には、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲の下限値より小さい場合には、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。また、許容範囲の中心値は、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) と等しくされ、その結果、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) と比較されるとともに、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) からの外れ量が許容範囲の幅の半値ΔKGRD より大きいか否かが判定され、その判定結果に応じて、今回の最終値ΔKFNL (k) が決定されることになる。
【0132】
ただし、車両の走行開始スイッチとしてのイグニションスイッチがOFFからONに操作された直後にあっては、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在しない。この場合、本実施形態においては、前回の最終値ΔKFNL (k-1) が、標準値ΔKSTD とされる。ここに、「標準値ΔKSTD 」は、車輪14のホイール24に装着されているタイヤ26が正規のものであり、かつ、それの空気圧Pが標準値であるときに、ばね定数変化量ΔKが取るべき値である。ただし、前回の最終値ΔKFNL (k-1) は例えば、前記しきい値ΔKTHより少し大きい値に設定することもできる。
【0133】
次に、このガード処理サブルーチンを図20に基づいて具体的に説明する。
【0134】
このサブルーチンにおいては、まず、S501において、このサブルーチンの今回の実行が、イグニションスイッチ(図において「IG」と略称する)がOFFからONに操作された後、初回であるか否かが判定される。今回は、初回であると仮定すれば、判定がYESとなり、S502において、ばね定数変化量ΔKの最終値ΔKFNL の前回値ΔKFNL (k-1) が仮に、標準値ΔKSTD とされる。今回は、前回の最終値ΔKFNL (k-1) が存在しないからである。
【0135】
その後、S503において、ΔKPRO3メモリから今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が読み込まれる。続いて、S504において、その第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) (許容範囲の中心値として機能する)に許容範囲の半値ΔKGRD を足し算した値、すなわち、許容範囲の上限値より大きいか否かが判定される。今回は、大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S505に進む。S505においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) から許容範囲の幅の半値ΔKGRD を引き算した値、すなわち、許容範囲の下限値より小さいか否かが判定される。今回は、小さくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S506に進む。S506においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S507において、今回の最終値ΔKFNL (k) が、RAM50に設けられたΔKFNL メモリに、回数kに関連付けてストアされる。以上で、このガード処理サブルーチンすなわちS500の一回の実行が終了する。
【0136】
これに対して、今回は、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) に許容範囲の半値ΔKGRD を足し算した上限値より大きいと仮定すれば、S504の判定がYESとなり、S508において、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S507に移行する。また、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) から許容範囲の幅の半値ΔKGRD を引き算した下限値より小さいと仮定すれば、S505の判定がYESとなり、S509において、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S507に移行する。
【0137】
以上、イグニションスイッチがOFFからONに操作された直後である場合を説明したが、そうでない場合には、S501の判定がNOとなり、S502がスキップされ、その後、S503において、ΔKPRO3メモリから最新の第3暫定値ΔKPRO3(k) (今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) )が読み込まれる。続いて、S504ないしS506において、最新の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) を中心値とする許容範囲内にある場合には、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲の上限値より大きい場合には、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲の下限値より小さい場合には、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。
【0138】
以上要するに、イグニションスイッチがOFFからONに操作された直後である場合、すなわち、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在しない場合には、前述のように、第3暫定値ΔKPRO3とは無関係に、標準値ΔKSTD が許容範囲の中心値とされるが、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在する場合には、その前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が許容範囲の中心値とされる。したがって、このサブルーチンが繰り返される間、許容範囲の中心値が、例えば、図21にグラフで示すように、第3暫定値ΔKPRO3に接近するように変化させられるとともに、第3暫定値ΔKPRO3が変化すれば、それに追従して変化させられることになる。
【0139】
ところで、第3暫定値ΔKPRO3の時間的変化をもたらす要因を考慮するに、タイヤ空気圧Pの変化という予定された要因のほかに、路面から車輪14に入力された振動,タイヤ26の温度変化等、予定外の要因もある。予定された要因は3つに分類することができる。タイヤ26がバーストしてタイヤ空気圧Pが素早く低下するという要因と、タイヤ26から空気が自然に漏れてタイヤ空気圧Pが緩やかに低下する(1月当たり0.1kgf/cm2 程度)という要因と、路面上に落ちていた釘がタイヤ26に刺さったためにタイヤ空気圧Pが低下するが釘がタイヤ26に刺さったままであるためにタイヤ空気圧Pが緩やかに低下する(1時間当たり1kgf/cm2 程度)という要因とに分類される。
【0140】
そして、上記予定外の要因によって第3暫定値ΔKPRO3が素早く変化した場合には、その急変による影響が最終値ΔKFNL に及ばないように第3暫定値ΔKPRO3に対して前記ガード処理を行うことは必要であるが、予定された3つの要因のうち、自然漏れという要因と釘刺さりという要因とについては、それらの影響が最終値ΔKFNL に及ばないように第3暫定値ΔKPRO3に対してガード処理を行うことが必要ではない。
【0141】
このような知見に基づき、このガード処理サブルーチンにおいては、自然漏れという要因または釘刺さりという要因によって第3暫定値ΔKPRO3が変化することが予想される変化幅より広くなるように前記許容範囲の幅が設定されている。
【0142】
なお付言すれば、このガード処理サブルーチンにおいては、許容範囲の幅の半値ΔKGRD が固定値とされているが、可変値とすることが可能である。可変値とする場合には、半値ΔKGRD を種々の手法で変化させることができる。
【0143】
例えば、半値ΔKGRD は、経過時間に応じて変化させることができる。例えば、半値ΔKGRD は、経過時間が長くなるにつれて小さくなるように変化させることができる。
【0144】
また、過去の複数個の第3暫定値ΔKPRO3の分布が実質的に正規分布を示すと仮定した場合に、半値ΔKGRD を、その正規分布の特性に応じて変化させることができる。例えば、その正規分布において一定確率で存在する信頼区間の幅に対応するように半値ΔKGRD を変化させることができる。
【0145】
さらに、半値ΔKGRD を、第3暫定値ΔKPRO3と許容範囲との相対的な位置関係の履歴に応じて変化させることができる。例えば、第3暫定値ΔKPRO3と許容範囲の下限値を下回ることが設定回数連続した場合には、ガード処理なしで第3暫定値ΔKPRO3をそのまま最終値ΔKFNL とすることが適当であるとして、半値ΔKGRD を一定値だけ増加するように変化させたり、また、半値ΔKGRD を実質的に無限大に増加するように変化させることができる。半値ΔKGRD が実質的に無限大になることは、第3暫定値ΔKPRO3が必ず、そのまま最終値ΔKFNL とされることを意味する。また、第3暫定値ΔKPRO3と許容範囲の上限値を上回ることが設定回数連続した場合には、ガード処理なしで第3暫定値ΔKPRO3をそのまま最終値ΔKFNL とすることが適当であるとして、半値ΔKGRD を一定値だけ増加するように変化させたり、また、半値ΔKGRD を実質的に無限大に増加するように変化させることができる。また、第3暫定値ΔKPRO3と許容範囲の上限値を上回ることが設定回数連続した場合には、タイヤ26に空気が補充されてそれの空気圧Pが標準値に増加させられたと推定して、その標準値を最終値ΔKFNL とすることができる。
【0146】
図22には、S600、すなわち、異常判定を実行するステップが異常判定サブルーチンとしてフローチャートで表されている。
【0147】
この異常判定サブルーチンにおいては、まず、S601において、ΔKFNL メモリから最新の最終値ΔKFNL (k) が読み込まれる。次に、S602において、その最終値ΔKFNL (k) がしきい値ΔKTHより小さいか否かが判定される。今回は、小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、S603において、今回はタイヤ空気圧Pが低いと判定され、表示装置66によるタイヤ空気圧異常警告が運転者に対して行われる。これに対して、最終値ΔKFNL (k) がしきい値ΔKTHより小さくはない場合には、S602の判定がNOとなり、S603がスキップされ、表示装置66によるタイヤ空気圧異常警告が行われない。いずれの場合にも、以上で、この異常判定サブルーチンすなわちS600の一回の実行が終了する。
【0148】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ばね定数変化量ΔKが「目的パラメータ」の一例を構成し、リム側部角速度ωR とベルト側部角速度ωB と外乱w2 とねじれ角θRBとを1組とするパラメータが「基礎パラメータ」の一例を構成し、コンピュータ20のうち外乱オブザーバ52とパラメータ同定部54とを構成する部分が「パラメータ推定部」の一例および「推定器」の一例を構成しているのである。
【0149】
なお付言すれば、本実施形態においては、図4に示すように、パラメータ補正部56がパラメータ同定部54の下流側に配置されているが、上流側に配置することが可能である。外乱オブザーバ52とパラメータ同定部54との間に配置し、温度Θと車速Vと角速度振幅|ωR |とねじれ角速度振幅|ωR −ωB |との少なくとも一つに基づく補正を上記基礎パラメータに対して行うようにすることが可能なのである。
さらに付言すれば、本実施形態においては、各輪ごとの基礎パラメータが、4輪に関して共通に車速Vが用いられて補正されるが、車速Vに代えて各輪の回転速度すなわちリム側部角速度ωR を用いて基礎パラメータを補正することが可能である。このようにすれば、基礎パラメータが各輪ごとにその各輪の事情を正確に考慮して精度よく補正することが容易になる。
【0150】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とガード処理に関する構成のみが異なり、他の構成については共通であるため、他の構成については図示および文章による説明を省略し、ガード処理に関する構成については詳細に説明する。
【0151】
図23には、本実施形態におけるガード処理サブルーチンがフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、まず、概念的に説明する。
【0152】
リム側部角速度演算部54からの回転速度信号のうち、車輪14の振動を反映した周波数成分は、外乱オブザーバ52に供給することが必要である周波数成分である。また、その周波数成分の周波数(以下、単に「車輪振動周波数」という)は、車輪14に装着されているタイヤ26の仕様(剛性)に応じて変化する。
【0153】
そこで、本実施形態においては、リム側部角速度演算部54からの回転速度信号のうち、外乱オブザーバ52に供給される周波数成分の周波数が、タイヤ26の種類に応じて変化するように前処理フィルタ64の特性、すなわち、回転速度信号のうち外乱オブザーバ52に供給するために前処理フィルタ64により抽出される周波数成分の周波数(以下、「狙い値」という)が自動的に調整される。
【0154】
具体的には、タイヤ26の仕様が標準仕様と等しいと仮定した場合に、回転速度信号のうち外乱オブザーバ52に供給することが望ましい周波数成分が外乱オブザーバ52に供給されるように前処理フィルタ64の狙い値が事前に設定される。さらに、その仮定が実際と一致する場合に外乱オブザーバ52により推定されることが予想されるばね定数変化量ΔKと、タイヤ26の実際の仕様の下で外乱オブザーバ52により実際に推定されたばね定数変化量ΔKとが互いに比較される。さらに、それらばね定数変化量ΔKの予想値(正規値)と推定値との相対的な関係に応じて、前処理フィルタ64の狙い値が、タイヤ26の実際の仕様の下で外乱オブザーバ52により推定されることが予想されるばね定数変化量ΔKと、狙い値を調整した後に外乱オブザーバ52により推定されることが予想されるばね定数変化量ΔKとが互いに実質的に一致するように調整される。なお、このフィルタ調整の実行中においては、タイヤ26の実際の空気圧Pが標準値に等しいと仮定される。
【0155】
次に、このガード処理サブルーチンを図23に基づいて詳細に説明する。
【0156】
このサブルーチンにおいては、まず、S521において、前処理フィルタ64の狙い値を調整することが必要であるか否かが判定される。このS521は例えば、イグニションスイッチがOFFからONに操作された直後である場合にその調整が必要であると判定したり、タイヤ26を交換したという事実が運転者から知らされた場合に前処理フィルタ64の狙い値の調整が必要であると判定するように設計することができる。調整指令を自動的に発したり、手動的に発するように設計することができるのである。
【0157】
今回は、前処理フィルタ64の狙い値の調整が必要であると仮定すれば、S521の判定がYESとなり、S522において、第3暫定値ΔKPRO3(k) に対してガード処理を行う際の許容範囲の中心値ΔKCTR の初期値が7個、ROM49から読み込まれる。すなわち、中心値ΔKCTR0,ΔKCTR1,ΔKCTR2,ΔKCTR3,ΔKCTR4,ΔKCTR5およびΔKCTR6の各値が読み込まれるのである。それらの中央に位置する中心値ΔKCTR3は、タイヤ26の仕様が標準仕様であり、かつ、それの空気圧Pが標準値である場合のばね定数変化量ΔK、すなわち、標準値ΔKSTD と等しく設定されている。
【0158】
その後、S523において、ΔKPRO3メモリから最新の第3暫定値ΔKPRO3(k) が読み込まれる。続いて、S524において、その読み込まれた第3暫定値ΔKPRO3(k) に対してガード処理が、7個の中心値ΔKCTR に関してそれぞれ行われ、それにより、7個の最終値ΔKFNL0,ΔKFNL1,ΔKFNL2,ΔKFNL3,ΔKFNL4,ΔKFNL5,ΔKFNL6が取得される。
【0159】
このガード処理は、第1実施形態におけるガード処理に準じて行われるものであるため、7個の中心値のうちの一つである中心値ΔKCTR0に関して行われる場合を例にとり、簡単に説明する。
【0160】
まず、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔKCTR0に許容範囲の半値ΔKGRD を足し算した上限値より大きいか否かが判定される。今回は、大きくはないと仮定すれば、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔKCTR0から許容範囲の半値ΔKGRD を引き算した下限値より小さいか否かが判定される。今回は、小さくはないと仮定すれば、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔKCTR0に対応する最終値ΔKFNL0とされる。また、今回は、第3暫定値ΔKPRO3(k) が上限値より大きいと仮定すれば、その上限値が、中心値ΔKCTR0に対応する最終値ΔKFNL0とされる。また、今回は、第3暫定値ΔKPRO3(k) が下限値より小さいと仮定すれば、その下限値が、中心値ΔKCTR0に対応する最終値ΔKFNL0とされる。
【0161】
このようなガード処理が7個の中心値に関して実行されると、第3暫定値ΔKPRO3(k) が例えば、7個の中心値ΔKCTR に対して図24に示すように相対的に位置させられる場合には、同図に示すように、7個の最終値ΔKFNL が取得されることになる。
【0162】
その後、S525において、各中心値ΔKCTR ごとに、中心値ΔKCTR と最終値ΔKFNL との差である誤差値dが演算される。具体的には、誤差値d0 ,d1 ,d2 ,d3 ,d4 ,d5 ,d6 がそれぞれ次式を用いて演算される。
【0163】
d0 =ΔKFNL0−ΔKCTR0
d1 =ΔKFNL1−ΔKCTR1
d2 =ΔKFNL2−ΔKCTR2
d3 =ΔKFNL3−ΔKCTR3
d4 =ΔKFNL4−ΔKCTR4
d5 =ΔKFNL5−ΔKCTR5
d6 =ΔKFNL6−ΔKCTR6
【0164】
そして、図24に示す例では、誤差値d0 〜d6 が同図に示すように、取得される。同図には、誤差値d1 が示されていないが、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔKCTR1に対応する許容範囲内に位置させられていて、誤差値d1 が0であるからである。
【0165】
続いて、S526において、演算された7個の誤差値d0 〜d6 のうち最小値が検索され、さらに、演算された7個の最終値ΔKFNL0〜ΔKFNL6のうち、誤差値dが最小値であるものが、今回の最終値ΔKFNL(k)として選択される。図24に示す例では、誤差値d1 が最小値であるため、暫定値ΔKFNL1が今回の最終値ΔKFNL(k)として選択されることになる。
【0166】
その後、S527において、選択された最終値ΔKFNL (k) がΔKFNL メモリに、回数kに関連付けてストアされる。
【0167】
続いて、S528において、前処理フィルタ64の狙い値が、図24に示すように、それの調整前の狙い値であるΔKCTR3と最終値ΔKFNL (k) との差Sに応じた量ADJで、かつ、調整後の狙い値が最終値ΔKFNL (k) (次回の最終値ΔKFNL (k+1) にほぼ等しいと考えられる)に近づく向きに調整される。狙い値の調整量ADJは例えば、差Sを、その狙い値を単位量(例えば、1Hz)変更することに応じてばね定数変化量ΔKの推定値が変化することとなる量で割り算することにより取得できる。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0168】
これに対して、今回は、前処理フィルタ64の狙い値の調整が済んだ後であるため、再度の調整は不要であると仮定すれば、S521の判定がNOとなり、S531に移行する。S531ないしS535においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) に対してガード処理が、第1実施形態におけるに準じて行われる。
【0169】
具体的には、S531において、ΔKPRO3メモリから今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が読み込まれ、続いて、S532において、その第3暫定値ΔKPRO3(k) が、許容範囲の中心値ΔKCTR (後に説明する)に許容範囲の半値ΔKGRD を足し算した上限値より大きいか否かが判定される。今回は、大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S533に進む。S533においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔKCTR から許容範囲の半値ΔKGRD を引き算した下限値より小さいか否かが判定される。今回は、小さくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S534に進む。S534においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S535において、今回の最終値ΔKFNL (k) が、RAM50に設けられたΔKFNL メモリに、回数kに関連付けてストアされる。以上で、このサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0170】
これに対して、今回は、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が上限値より大きいと仮定すれば、S532の判定がYESとなり、S536において、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S535に移行する。また、今回は下限値より小さいと仮定すれば、S533の判定がYESとなり、S537において、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S535に移行する。
【0171】
ここで、中心値ΔKCTR の設定について説明する。
【0172】
中心値ΔKCTR は、第1実施形態におけると同様に、前回の最終値ΔKFNL (k-1) と等しく設定することができる。このように設定する場合には、タイヤ空気圧Pの実際値を、それの変化領域全体において同じ精度で推定できるという利点が得られる。また、標準値ΔKSTD と等しく設定することもできる。さらに、タイヤ空気圧異常判定のためのしきい値ΔKTHと等しく設定することもできる。このように設定する場合には、異常判定のためにタイヤ空気圧Pを精度よく推定することが特に必要である領域において、タイヤ空気圧Pを精度よく推定できるという利点が得られる。
【0173】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1および第2実施形態と共通する要素については同一の符号を使用することにより詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
【0174】
第1および第2実施形態においては、図4に示すように、パラメータ補正部56に対して平滑化処理部58とガード処理部60とが互いに直列に接続され、パラメータ補正部56により取得された第2暫定値ΔKPRO2に対して平滑化処理部58が作動させられ、それにより取得された第3暫定値ΔKPRO3に対してガード処理部60が作動させられ、それにより取得された最終値ΔKFNL が異常判定部62に供給される。
【0175】
これに対して、本実施形態においては、図25に示すように、パラメータ補正部56に対して平滑化処理部100とガード処理部102とが互いに並列に接続され、パラメータ補正部56により取得された第2暫定値ΔKPRO2に対して平滑化処理部100とガード処理部102とが互いに実質的に並行に作動させられる。
【0176】
平滑化処理部100は、第1および第2実施形態における平滑化処理部58と同様にして取得した「第3暫定値ΔKPRO3」を「第1最終値ΔKFNL1」として異常判定部104に出力する。
【0177】
ガード処理部102は、パラメータ補正部56により取得された「第2暫定値ΔKPRO2」が、第1および第2実施形態においては平滑化処理部58から入力された「第3暫定値ΔKPRO3」に代えて入力され、その「第2暫定値ΔKPRO2」に基づき、第1および第2実施形態におけるガード処理部60と同様にして取得した「最終値ΔK」を「第2最終値ΔKFNL2」として異常判定部104に出力する。
【0178】
異常判定部104は、それら平滑化処理部100とガード処理部102とから入力された第1最終値ΔKFNL1と第2最終値ΔKFNL2とに基づき、タイヤ空気圧Pが低いか否かを判定する。具体的には、異常判定部104は、第1最終値ΔKFNL1と第2最終値ΔKFNL2とのいずれかでも、しきい値ΔKTHより小さい場合に、タイヤ空気圧Pが低いと判定する。
【0179】
図26には、このような異常判定を行うためのサブルーチンがフローチャートで表されている。
【0180】
この異常判定サブルーチンにおいては、まず、S651において、平滑化処理部100から第1最終値ΔKFNL1が読み込まれ、次に、S652において、ガード処理部102から第2最終値ΔKFNL2が読み込まれる。その後、S653において、読み込まれた第1最終値ΔKFNL1がしきい値ΔKTHより小さいか否かが判定される。今回は、小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、S654において、タイヤ空気圧Pが低いことが表示装置66により運転者に告知される。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0181】
これに対して、今回は、第1最終値ΔKFNL1がしきい値ΔKTHより小さくはないと仮定すれば、S653の判定がNOとなり、S655において、読み込まれた第2最終値ΔKFNL2がしきい値ΔKTHより小さいか否かが判定される。今回は、小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、S654において、タイヤ空気圧Pが低いことが表示装置66により運転者に告知される。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0182】
また、第1最終値ΔKFNL1も第2最終値ΔKFNL2もしきい値ΔKTHより小さくはないと仮定すれば、S653の判定もS655の判定もNOとなり、S654がスキップされ、運転者への異常警告が行われることなく、このサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0183】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と平滑化処理に関する構成のみが異なり、他の構成については共通であるため、他の構成については図示および文章による説明を省略し、平滑化処理に関する構成については詳細に説明する。
【0184】
図27には、本実施形態における平滑化処理サブルーチンがフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、まず、概念的に説明する。
【0185】
第1実施形態においては、第2暫定値ΔKPRO2の取得数が固定値である基準値Nに到達したときに、取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0186】
これに対して、本実施形態においては、第2暫定値ΔKPRO2が取得されるごとに、その時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j) が逐次演算され、その平均値AVE(j) の時間的変動が基準状態以下にならないうちは第3暫定値ΔKPRO3を演算せず、基準状態以下になったなったときに、その時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j) が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0187】
次に、この平滑化処理サブルーチンを図27に基づいて詳細に説明する。
【0188】
このサブルーチンにおいては、まず、S421aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S421bにおいて、回数jの現在値が基準値j0 に到達した以上であるか否かが判定される。基準値j0 以上でない場合には、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。したがって、第2暫定値ΔKPRO2の取得数が一定値に到達しない場合には、たとえ平均値AVE(j) の時間的変動が基準状態以下であっても、第3暫定値ΔKPRO3が演算されず、これにより、誤った第3暫定値ΔKPRO3に基づいてタイヤ空気圧Pの異常判定がなされずに済む。
【0189】
これに対して、今回は、回数jの現在値が基準値j0 に到達したと仮定すれば、S421bの判定がYESとなり、S422に進む。S422においては、現時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2、すなわち、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j) が演算される。その後、S423において、演算された今回の平均値AVE(j) から前回の平均値AVE(j-1) (RAM50にストアされている)を引き算することにより、今回の変化量ΔAVE(j) (第2暫定値ΔKPRO2の1回微分値に相当する)が演算される。続いて、S424において、演算された今回の変化量ΔAVE(j) の絶対値がしきい値G以下であるか否かが判定される。今回は、しきい値G以下ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0190】
これに対して、今回は、今回の変化量ΔAVE(j) の絶対値がしきい値G以下であると仮定すれば、S424の判定がYESとなり、S425において、今回の平均値AVE(j) が第3暫定値ΔKPRO3とされる。その後、S426において、その第3暫定値ΔKPRO3がΔKPRO3メモリにストアされる。続いて、S427において、ΔKPRO2メモリがクリアされ、その後、S428において、回数jが0にセットされる。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0191】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と平滑化処理に関する構成のみが異なり、他の構成については共通であるため、他の構成については図示および文章による説明を省略し、平滑化処理に関する構成については詳細に説明する。
【0192】
図28には、本実施形態における平滑化処理サブルーチンがフローチャートで表されている。以下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、まず、概念的に説明する。
【0193】
第1実施形態においては、第2暫定値ΔKPRO2の取得数が固定値である基準値Nに到達したときに、取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0194】
これに対して、本実施形態においては、過去の複数個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すに至ったときに、取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0195】
次に、この平滑化処理サブルーチンを図28に基づいて詳細に説明する。
【0196】
このサブルーチンにおいては、まず、S441aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S441bにおいて、回数jの現在値が基準値j0 に到達した以上であるか否かが判定される。基準値j0 以上でない場合には、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。したがって、第2暫定値ΔKPRO2の取得数が一定値に到達しない場合には、たとえ過去の複数個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示す場合であっても、第3暫定値ΔKPRO3が演算されず、これにより、誤った第3暫定値ΔKPRO3に基づいてタイヤ空気圧Pの異常判定がなされずに済む。
【0197】
これに対して、今回は、回数jの現在値が基準値j0 に到達したと仮定すれば、S441bの判定がYESとなり、S442に進む。S442においては、現時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2、すなわち、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すが否かが判定される。具体的には、例えば、それら第2暫定値ΔKPRO2の歪度b1 (分布の左右非対称度を示す指標)が実質的に0であり、かつ、尖度b2 (分布の尖りまたは裾の長さを示す指標)も実質的に0であるか否かが判定され、そうであれば、それら第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すと判定される。
【0198】
ここに、歪度b1 は、
b1 =Σ[(ΔKPRO2(j) −AVE(j) )/s]3 /j
なる式で定義され、また、尖度b2 は、
b1 =Σ[(ΔKPRO2(j) −AVE(j) )/s]4 /j−3
なる式で定義される。これらの式において「AVE(j) 」は、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値を表す。
【0199】
今回は、それら第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示さないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0200】
これに対して、今回は、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すと仮定すれば、S442の判定がYESとなり、S443において、それら第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j) が演算される。その後、S444において、その演算された今回の平均値AVE(j) が第3暫定値ΔKPRO3とされる。その後、S445において、その第3暫定値ΔKPRO3がΔKPRO3メモリにストアされる。続いて、S446において、ΔKPRO2メモリがクリアされ、その後、S447において、回数jが0にセットされる。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0201】
なお、本実施形態においては、過去の複数個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すに至った時に、それら第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVEが第3暫定値ΔKPRO3とされるようになっているが、それら第2暫定値ΔKPRO2が示す実質的な正規分布における中央値が第3暫定値ΔKPRO3とされるように変更することが可能である。
【0202】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発明の効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の改良,変形を加えた形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるタイヤ空気圧異常警告装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記タイヤ空気圧異常警告装置によりタイヤ空気圧を推定される車輪の一部を示す断面図である。
【図3】上記車輪の力学モデルを示す図である。
【図4】上記タイヤ空気圧異常警告装置の機能を示すブロック図である。
【図5】図1におけるROM49の構成を概念的に示すブロック図である。
【図6】図1におけるRAM50の構成を概念的に示すブロック図である。
【図7】図3の車輪モデルを簡略化して示す図である。
【図8】上記タイヤ空気圧異常警告装置における外乱のダイナミクスの近似を説明するためのグラフである。
【図9】図4における外乱オブザーバの構成を示すブロック線図である。
【図10】図1におけるROM49に記憶されているタイヤ空気圧異常判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】図10におけるS100の詳細を外乱オブザーバ作動サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図12】図10のタイヤ空気圧異常判定ルーチンの実行結果の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】図10におけるS200の詳細をパラメータ同定サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図14】上記タイヤ空気圧異常警告装置によるばね定数変化量の推定値が時間と共に変化する様子を参考例と比較しつつ説明するためのグラフである。
【図15】図10におけるS300の詳細をパラメータ補正サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図16】上記パラメータ補正サブルーチンにおける温度Θと推定値との関係を示すグラフと、温度Θと補正量ΔKCOM1との関係を示すグラフである。
【図17】上記パラメータ補正サブルーチンにおける車速Vと推定値との関係を示すグラフと、車速Vと補正量ΔKCOM2との関係を示すグラフである。
【図18】上記パラメータ補正サブルーチンにおける角速度振幅|ωR |と推定値との関係を示すグラフと、角速度振幅|ωR |と補正量ΔKCOM3との関係を示すグラフである。
【図19】図10におけるS400の詳細を平滑化処理サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図20】図10におけるS500の詳細をガード処理サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図21】上記ガード処理サブルーチンの実行結果の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図22】図10におけるS600の詳細を異常判定サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図23】本発明の第2実施形態であるタイヤ空気圧異常警告装置におけるコンピュータにより実行されるガード処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図24】上記ガード処理サブルーチンの実行結果の一例を説明するための図である。
【図25】本発明の第3実施形態であるタイヤ空気圧異常警告装置の構成を示すブロック図である。
【図26】図25におけるコンピュータのROMに記憶されている異常判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図27】本発明の第4実施形態であるタイヤ空気圧異常警告装置のコンピュータにより実行される平滑化処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図28】本発明の第5実施形態であるタイヤ空気圧異常警告装置のコンピュータにより実行される平滑化処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ロータ
12 車輪速センサ
14 車輪(タイヤ付ホイール)
20,47 コンピュータ
24 ホイール
26 タイヤ
28 リム側部
30 ベルト側部
32 ねじりばね
34 ダンパ
52 外乱オブザーバ
Claims (5)
- ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する車輪速センサと、
その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づき、前記タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラメータである目的パラメータを推定するために用いられる基礎パラメータを逐次取得するとともに、今回取得された基礎パラメータを含んで今回以前に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて目的パラメータを推定する推定器と
を備えたタイヤ空気圧推定装置において、
前記推定器を、前記基礎パラメータが依存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くものが実質的に変化しないと予想される長さの設定期間が経過するごとに前記目的パラメータを、最新の一設定期間中に逐次取得された複数個の前記基礎パラメータに基づいて推定するパラメータ推定部を含むものとしたことを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。 - 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を、その推定値が依存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くものに基づいて補正するパラメータ補正部を含む請求項1に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化処理部を含む請求項1または2に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記推定器が、さらに、前記パラメータ補正部により補正された目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化処理部を含む請求項2に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部による目的パラメータの推定値を予め設定された許容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガード処理部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
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