JP3390544B2 - 微小部物性情報測定装置および微小部物性情報測定方法 - Google Patents
微小部物性情報測定装置および微小部物性情報測定方法Info
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- JP3390544B2 JP3390544B2 JP23877394A JP23877394A JP3390544B2 JP 3390544 B2 JP3390544 B2 JP 3390544B2 JP 23877394 A JP23877394 A JP 23877394A JP 23877394 A JP23877394 A JP 23877394A JP 3390544 B2 JP3390544 B2 JP 3390544B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トンネル顕微鏡、原子
間力顕微鏡など表面微小部形状や局所電子状態又は局所
原子核状態等を観察、計測する微小部物性情報測定装置
および微小部物性情報測定方法に関する。
間力顕微鏡など表面微小部形状や局所電子状態又は局所
原子核状態等を観察、計測する微小部物性情報測定装置
および微小部物性情報測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子スピン、核磁気モーメントお
よび核四重極モーメント等の物性情報を計測するとき、
例えば、半導体試料中の不純物や欠陥の如く、全体に占
める割合が極めて微量な場合でも、それらの二次元ない
し三次元の局所的な分布を計測することは非常に困難で
あった。その理由は、例えば電子スピン共鳴(ESR)
の場合、検出し得る最小のスピン数Nminは次式で表さ
れる。
よび核四重極モーメント等の物性情報を計測するとき、
例えば、半導体試料中の不純物や欠陥の如く、全体に占
める割合が極めて微量な場合でも、それらの二次元ない
し三次元の局所的な分布を計測することは非常に困難で
あった。その理由は、例えば電子スピン共鳴(ESR)
の場合、検出し得る最小のスピン数Nminは次式で表さ
れる。
【0003】
【数1】
Nmin=(kT/μ2)(△H/H0)(1/π2Q0ηξ)(kTd△f/2P0)1/2
ここで、P0は、入射波の電力(V0 2/2R0)、Tdは
検出器の温度、△fは検出装置の帯域幅で1Hz〜10
kHzの程度、Q0は空洞共振器の共振の鋭さをあらわ
す定数で無負荷時〜5000程度、△Hは吸収線の幅、
H0は磁界強度、Tは発振器から空洞共振器へのパワー
透過率、kはボルツマン定数、そしてμはスピンの磁気
モーメント、ηは試料の磁気的なふるまいが空洞共振器
全体の電磁気的特性に影響する程度を示す係数、ξは1
/3〜1/8の空洞共振器に由来する係数をそれぞれ示
す。これらを実用的数値によって求めると理想的な場合
でも、検出できる最小のスピン数は106〜108程度が
限度である。従って、この手法では、例えば、半導体試
料中や表面に存在する不純物や欠陥などを、原子スケー
ルで解析することは、全く困難であった。
検出器の温度、△fは検出装置の帯域幅で1Hz〜10
kHzの程度、Q0は空洞共振器の共振の鋭さをあらわ
す定数で無負荷時〜5000程度、△Hは吸収線の幅、
H0は磁界強度、Tは発振器から空洞共振器へのパワー
透過率、kはボルツマン定数、そしてμはスピンの磁気
モーメント、ηは試料の磁気的なふるまいが空洞共振器
全体の電磁気的特性に影響する程度を示す係数、ξは1
/3〜1/8の空洞共振器に由来する係数をそれぞれ示
す。これらを実用的数値によって求めると理想的な場合
でも、検出できる最小のスピン数は106〜108程度が
限度である。従って、この手法では、例えば、半導体試
料中や表面に存在する不純物や欠陥などを、原子スケー
ルで解析することは、全く困難であった。
【0004】一方、近年、試料表面の原子スケールでの
構造観察や分析を行う手段として、走査型トンネル顕微
鏡などの、微小探針を検知器として用いたプローブ顕微
鏡装置が盛んに使用されるようになってきた。そして最
近、このプローブ顕微鏡により、磁界中に置かれた試料
の電子スピン共鳴現象を、上記の微小探針を用いて検出
する手法が提案されてきた。これに関しては、例えば、
フィジカル・レビュー・レター、62巻、21号、25
31〜2534ページおよび特開平5−40100公報
に記載されている。この手法は、ESRを間接的に検出
するものであって、試料における電子スピン共鳴の発生
部分において、ラーモア周波数で歳差運動を行う磁気モ
ーメントによりトンネル電流が同じ周波数で変動を受け
るという前提の下に提案されている。この手法では、探
針で測定されるトンネル電流をフィルタで周波数別に分
離して検出していることが記載されている。
構造観察や分析を行う手段として、走査型トンネル顕微
鏡などの、微小探針を検知器として用いたプローブ顕微
鏡装置が盛んに使用されるようになってきた。そして最
近、このプローブ顕微鏡により、磁界中に置かれた試料
の電子スピン共鳴現象を、上記の微小探針を用いて検出
する手法が提案されてきた。これに関しては、例えば、
フィジカル・レビュー・レター、62巻、21号、25
31〜2534ページおよび特開平5−40100公報
に記載されている。この手法は、ESRを間接的に検出
するものであって、試料における電子スピン共鳴の発生
部分において、ラーモア周波数で歳差運動を行う磁気モ
ーメントによりトンネル電流が同じ周波数で変動を受け
るという前提の下に提案されている。この手法では、探
針で測定されるトンネル電流をフィルタで周波数別に分
離して検出していることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の技術に
おいて、電子スピン共鳴状態にある試料と微小探針の先
端との間隙に発生するトンネル電流は試料表面形状に基
づいて発生する成分とESRに基づく高周波成分とが混
在していた。即ち、この計測にて探針で測定されるトン
ネル電流に試料の表面形状と電子スピン共鳴という異な
る情報が含まれるため、トンネル電流からESR信号を
抽出することが必要となり、直接ESR信号を測定する
ことができなかった。従って、ESR信号を抽出するた
めには、試料に印加する電界又は磁界の周波数毎に探針
による試料表面の走査を繰返し、また周波数毎に再現性
よく得られたトンネル電流の周波数スペクトルを比較せ
ねばならず、多大な時間と煩雑な作業を要する。加え
て、上記の計測手法はトンネル電流を発生する試料に限
り適用できるため、絶縁性の試料での電子スピン共鳴を
測定することは不可能である。
おいて、電子スピン共鳴状態にある試料と微小探針の先
端との間隙に発生するトンネル電流は試料表面形状に基
づいて発生する成分とESRに基づく高周波成分とが混
在していた。即ち、この計測にて探針で測定されるトン
ネル電流に試料の表面形状と電子スピン共鳴という異な
る情報が含まれるため、トンネル電流からESR信号を
抽出することが必要となり、直接ESR信号を測定する
ことができなかった。従って、ESR信号を抽出するた
めには、試料に印加する電界又は磁界の周波数毎に探針
による試料表面の走査を繰返し、また周波数毎に再現性
よく得られたトンネル電流の周波数スペクトルを比較せ
ねばならず、多大な時間と煩雑な作業を要する。加え
て、上記の計測手法はトンネル電流を発生する試料に限
り適用できるため、絶縁性の試料での電子スピン共鳴を
測定することは不可能である。
【0006】本発明は上記の従来の計測手法が抱える課
題を解決するためになされたもので、プローブ顕微鏡に
より、電子スピン、核磁気モーメント又は核四重極モー
メント等の物性情報を、表面に吸着した分子のような粒
子についても共鳴信号を直接原子スケールで高感度に計
測できる微小部物性情報測定方法並びに装置を提供する
ことを目的とする。
題を解決するためになされたもので、プローブ顕微鏡に
より、電子スピン、核磁気モーメント又は核四重極モー
メント等の物性情報を、表面に吸着した分子のような粒
子についても共鳴信号を直接原子スケールで高感度に計
測できる微小部物性情報測定方法並びに装置を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明においては特許請求の範囲に記載するような
構成をとる。すなわち、請求項1記載の微小部物性情報
測定方法は、原子間力顕微鏡の探針を被検試料の表面に
接近させ、前記被検試料には磁界発生用コイルを用いて
磁界を印加すると共に、コイルにより高周波磁界を印加
し、前記高周波磁界に共鳴する前記被検試料の表面に存
在する原子からの信号を前記探針をアンテナとして機能
させることにより前記探針により検出することを特徴と
する。また、請求項2記載の微小部物性情報測定方法
は、請求項1記載の微小部物性情報測定方法において、
前記探針の走査と電子スピン共鳴信号測定とを交互に行
うことを特徴とする。また、請求項3記載の微小部物性
情報測定装置は、原子間力顕微鏡の探針と、被検試料に
磁界を印加する磁界発生用コイルと、前記被検試料に高
周波磁界を印加するコイルとを具備し、前記探針を前記
被検試料の表面に接近させ、前記被検試料に前記磁界発
生用コイルを用いて磁界を印加すると共に、前記コイル
により高周波磁界を印加し、前記高周波磁界に共鳴する
前記被検試料の表面に存在する原子からの信号を前記探
針をアンテナとして機能させることにより前記探針によ
り検出することを特徴とする。また、請求項4記載の微
小部物性情報測定装置は、請求項3記載の微小部物性情
報測定装置において、前記探針の走査と電子スピン共鳴
信号測定とを交互に行う手段を有することを特徴とす
る。また、請求項5記載の微小部物性情報測定装置は、
探針と、前記探針と被検試料との間にトンネル電流を流
し、前記探針の位置を制御するサーボ回路と、前記被検
試料に磁界と高周波電界をかけて共鳴信号を発生する手
段と、前記被検試料と前記探針との間の間隙における検
出対象として前記トンネル電流、前記共鳴信号のいずれ
か一つを選択する選択手段とを有することを特徴とす
る。磁界中に置かれ、且つ、高周波電磁界を印加された
被検試料の原子スケール微小部からの電子スピン、核磁
気モーメント、核四重極モーメントなどの共鳴に基づく
物性情報を、プローブ顕微鏡の金属探針又は金属を被覆
した探針により、高周波信号(共鳴信号)として直接計
測する。プローブ顕微鏡としてSTMを用いる場合、探
針は別の機能(被検試料表面計測等)も有するため、探
針を走査させるサーボ状態と共鳴信号検出状態とに切り
換えるスイッチ手段を加え、共鳴信号を直接検出するこ
とが望ましい。また、STMとの組合せでトンネル電流
でサーボしながら共鳴信号を検出するために、探針を絶
縁物をへだてて少なくとも2つの領域に分け、その部分
に導電性部材を設けた電極又はアンテナの構造とし、探
針のトンネル電流によるサーボと共鳴信号測定とを同時
に行ってもよい。
に、本発明においては特許請求の範囲に記載するような
構成をとる。すなわち、請求項1記載の微小部物性情報
測定方法は、原子間力顕微鏡の探針を被検試料の表面に
接近させ、前記被検試料には磁界発生用コイルを用いて
磁界を印加すると共に、コイルにより高周波磁界を印加
し、前記高周波磁界に共鳴する前記被検試料の表面に存
在する原子からの信号を前記探針をアンテナとして機能
させることにより前記探針により検出することを特徴と
する。また、請求項2記載の微小部物性情報測定方法
は、請求項1記載の微小部物性情報測定方法において、
前記探針の走査と電子スピン共鳴信号測定とを交互に行
うことを特徴とする。また、請求項3記載の微小部物性
情報測定装置は、原子間力顕微鏡の探針と、被検試料に
磁界を印加する磁界発生用コイルと、前記被検試料に高
周波磁界を印加するコイルとを具備し、前記探針を前記
被検試料の表面に接近させ、前記被検試料に前記磁界発
生用コイルを用いて磁界を印加すると共に、前記コイル
により高周波磁界を印加し、前記高周波磁界に共鳴する
前記被検試料の表面に存在する原子からの信号を前記探
針をアンテナとして機能させることにより前記探針によ
り検出することを特徴とする。また、請求項4記載の微
小部物性情報測定装置は、請求項3記載の微小部物性情
報測定装置において、前記探針の走査と電子スピン共鳴
信号測定とを交互に行う手段を有することを特徴とす
る。また、請求項5記載の微小部物性情報測定装置は、
探針と、前記探針と被検試料との間にトンネル電流を流
し、前記探針の位置を制御するサーボ回路と、前記被検
試料に磁界と高周波電界をかけて共鳴信号を発生する手
段と、前記被検試料と前記探針との間の間隙における検
出対象として前記トンネル電流、前記共鳴信号のいずれ
か一つを選択する選択手段とを有することを特徴とす
る。磁界中に置かれ、且つ、高周波電磁界を印加された
被検試料の原子スケール微小部からの電子スピン、核磁
気モーメント、核四重極モーメントなどの共鳴に基づく
物性情報を、プローブ顕微鏡の金属探針又は金属を被覆
した探針により、高周波信号(共鳴信号)として直接計
測する。プローブ顕微鏡としてSTMを用いる場合、探
針は別の機能(被検試料表面計測等)も有するため、探
針を走査させるサーボ状態と共鳴信号検出状態とに切り
換えるスイッチ手段を加え、共鳴信号を直接検出するこ
とが望ましい。また、STMとの組合せでトンネル電流
でサーボしながら共鳴信号を検出するために、探針を絶
縁物をへだてて少なくとも2つの領域に分け、その部分
に導電性部材を設けた電極又はアンテナの構造とし、探
針のトンネル電流によるサーボと共鳴信号測定とを同時
に行ってもよい。
【0008】また、被検試料を冷却する手段を設けても
よく、被検試料の測定環境は真空雰囲気中でも、液体中
でもよい。真空中で測定を行う場合は、被検試料に磁界
を印加する磁界印加手段は、被検試料に直接磁界を印加
するギャップ部分を真空中に、磁界を発生するコイル部
分を真空外に配置し、磁界印加手段の磁路は相互に分
割、分離できるようにするとよい。磁界印加手段は、物
性情報測定手段の種類(電子スピン共鳴(ESR)、核
磁気共鳴(NMR)又は核四重極共鳴(NQR))及び
測定条件により、省略しても、又は交流磁界印加手段を
付加してもよい。
よく、被検試料の測定環境は真空雰囲気中でも、液体中
でもよい。真空中で測定を行う場合は、被検試料に磁界
を印加する磁界印加手段は、被検試料に直接磁界を印加
するギャップ部分を真空中に、磁界を発生するコイル部
分を真空外に配置し、磁界印加手段の磁路は相互に分
割、分離できるようにするとよい。磁界印加手段は、物
性情報測定手段の種類(電子スピン共鳴(ESR)、核
磁気共鳴(NMR)又は核四重極共鳴(NQR))及び
測定条件により、省略しても、又は交流磁界印加手段を
付加してもよい。
【0009】
【作用】本発明によれば、探針をアンテナとして機能さ
せ、被検試料の物性情報を高周波信号(電波)として検
出する。このため、プローブ顕微鏡として原子間顕微鏡
(AFM)や磁気力顕微鏡(MFM)を用いたり、被検
試料が絶縁物であるような、探針と被検試料表面との間
にトンネル電流を生じない場合でも被検試料の物性情報
を測定できる。
せ、被検試料の物性情報を高周波信号(電波)として検
出する。このため、プローブ顕微鏡として原子間顕微鏡
(AFM)や磁気力顕微鏡(MFM)を用いたり、被検
試料が絶縁物であるような、探針と被検試料表面との間
にトンネル電流を生じない場合でも被検試料の物性情報
を測定できる。
【0010】上記の物性情報のうち、例えば、電子スピ
ン共鳴(以下、ESRと略称)は、磁界中に被検試料を
おいたときに、縮退した状態にあったエネルギー状態が
分離して、これが超短波周波数帯で共鳴現象を起す。こ
の周波数は、磁界の大きさにもよるが、一般に100M
Hz以上の高周波であるため、従来のトンネル電流の制
御が行われている周波数帯域(DC〜数kHz)とは大
きく異なる。そこで、前記の従来法のようにトンネル電
流に現われる電流変化で間接的に検出するのではなく、
本発明では、目的の信号を直接高周波信号として捉え
る。本発明にて、探針走査(サーボ)と同時にESR信
号測定を行うことは原理的に可能であるが、浮遊容量の
増加等による信号対雑音比が低くなるため、探針走査と
ESR信号測定を交互に行う。これにより、トンネル電
流の制御回路はESRに起因する高周波の影響を受けず
に探針走査を制御し、またESR信号は、探針制御に関
係なく高感度で検出される。核磁気共鳴や核四重極共鳴
の場合も、周波数帯域は異なるが、略同様に行う。
ン共鳴(以下、ESRと略称)は、磁界中に被検試料を
おいたときに、縮退した状態にあったエネルギー状態が
分離して、これが超短波周波数帯で共鳴現象を起す。こ
の周波数は、磁界の大きさにもよるが、一般に100M
Hz以上の高周波であるため、従来のトンネル電流の制
御が行われている周波数帯域(DC〜数kHz)とは大
きく異なる。そこで、前記の従来法のようにトンネル電
流に現われる電流変化で間接的に検出するのではなく、
本発明では、目的の信号を直接高周波信号として捉え
る。本発明にて、探針走査(サーボ)と同時にESR信
号測定を行うことは原理的に可能であるが、浮遊容量の
増加等による信号対雑音比が低くなるため、探針走査と
ESR信号測定を交互に行う。これにより、トンネル電
流の制御回路はESRに起因する高周波の影響を受けず
に探針走査を制御し、またESR信号は、探針制御に関
係なく高感度で検出される。核磁気共鳴や核四重極共鳴
の場合も、周波数帯域は異なるが、略同様に行う。
【0011】超高真空中において被検試料に磁界を印加
して行う測定は、磁界を発生する電磁コイルを大気圧と
真空部を遮断するフランジに挟んで真空外に置き、磁性
体からなる磁路や磁極のみを真空中に導入する構成とす
ることで、真空度を低下させずに行える。
して行う測定は、磁界を発生する電磁コイルを大気圧と
真空部を遮断するフランジに挟んで真空外に置き、磁性
体からなる磁路や磁極のみを真空中に導入する構成とす
ることで、真空度を低下させずに行える。
【0012】本発明によれば、プローブ顕微鏡の探針か
ら得られる情報は被検試料表面の原子スケールの微小領
域からのものであるため、これにより、本発明の測定装
置では、まさに原子単位の物性情報を極めて高い信号対
雑音比で得ることができる。また本発明は、大気圧下で
も、超高真空でも調べるのが困難な、液状物質、もしく
は生物学的試料のように液体中での測定が有効である被
検試料の測定(例えば、探針を液中に挿入して行う測
定)も可能となる。
ら得られる情報は被検試料表面の原子スケールの微小領
域からのものであるため、これにより、本発明の測定装
置では、まさに原子単位の物性情報を極めて高い信号対
雑音比で得ることができる。また本発明は、大気圧下で
も、超高真空でも調べるのが困難な、液状物質、もしく
は生物学的試料のように液体中での測定が有効である被
検試料の測定(例えば、探針を液中に挿入して行う測
定)も可能となる。
【0013】
【実施例】以下、図面に示した実施例を参照して本発明
をさらに詳細に説明する。なお、図1〜6における同一
の記号は、同一又は類似物を示す。
をさらに詳細に説明する。なお、図1〜6における同一
の記号は、同一又は類似物を示す。
【0014】<実施例1>本発明の実施例を図1により
説明する。プローブ顕微鏡としては、原子間力顕微鏡
(以下AFMと略)で、共鳴信号を直接検出したもので
ある。カンチレバー15の先端に取り付けた探針2によ
り原子間力を受け、それを制御して、通常のAFM制御
によって被検試料1表面の形状測定を行う。それに対し
探針2の一部に導電性部材を設け、そこからリード線を
介して信号を検出する構成とする。一方、被検試料1は
磁界発生用のコイル27、及び磁路22〜26によって
作られる磁界中に置かれ、図示していない高周波発振器
からコイル16か17、または両者によって与えられる
高周波電磁界(磁界の強さにもよるが、ESRの場合よ
りも1〜2桁低い周波数)がかけられる。この状態で被
検試料1中で核磁気共鳴(NMR)する元素や欠陥など
が存在すれば、高周波電界を印加しているコイル16、
17によって、共鳴周波数での共鳴信号が電波として上
記探針2から観測される。ここで、被検試料1表面の吸
着原子等の信号は、図2と同様にして探針2から検出す
る。本実施例のようにAFMによる測定では、被検試料
1表面と探針2との間にトンネル電流が生じないため、
被検試料1表面を探針2で走査すると同時に高周波信号
(NMR信号)を検出することができる。
説明する。プローブ顕微鏡としては、原子間力顕微鏡
(以下AFMと略)で、共鳴信号を直接検出したもので
ある。カンチレバー15の先端に取り付けた探針2によ
り原子間力を受け、それを制御して、通常のAFM制御
によって被検試料1表面の形状測定を行う。それに対し
探針2の一部に導電性部材を設け、そこからリード線を
介して信号を検出する構成とする。一方、被検試料1は
磁界発生用のコイル27、及び磁路22〜26によって
作られる磁界中に置かれ、図示していない高周波発振器
からコイル16か17、または両者によって与えられる
高周波電磁界(磁界の強さにもよるが、ESRの場合よ
りも1〜2桁低い周波数)がかけられる。この状態で被
検試料1中で核磁気共鳴(NMR)する元素や欠陥など
が存在すれば、高周波電界を印加しているコイル16、
17によって、共鳴周波数での共鳴信号が電波として上
記探針2から観測される。ここで、被検試料1表面の吸
着原子等の信号は、図2と同様にして探針2から検出す
る。本実施例のようにAFMによる測定では、被検試料
1表面と探針2との間にトンネル電流が生じないため、
被検試料1表面を探針2で走査すると同時に高周波信号
(NMR信号)を検出することができる。
【0015】<実施例2>図2において、被検試料1及
び探針2は通常のトンネル間隙を維持し、電源4によっ
て与えられるバイアス電圧によって流れるトンネル電流
を増幅器5で増幅して、その電流値の増減の変化を検出
して一定値を保つように圧電素子3を制御回路6によっ
て制御する。この時、制御回路6は100V以上の高電
圧を制御するため高速の応答が困難であり、数kHzま
でしか応答制御しない。ここで被検試料1に磁界を印加
したうえ、高周波発振器7、切換スイッチ8によって電
磁界をコイル16に与えると、被検試料1中の原子や欠
陥における不対電子のスピン共鳴に基づく信号が、検出
器13及び検波回路14によって検出される。
び探針2は通常のトンネル間隙を維持し、電源4によっ
て与えられるバイアス電圧によって流れるトンネル電流
を増幅器5で増幅して、その電流値の増減の変化を検出
して一定値を保つように圧電素子3を制御回路6によっ
て制御する。この時、制御回路6は100V以上の高電
圧を制御するため高速の応答が困難であり、数kHzま
でしか応答制御しない。ここで被検試料1に磁界を印加
したうえ、高周波発振器7、切換スイッチ8によって電
磁界をコイル16に与えると、被検試料1中の原子や欠
陥における不対電子のスピン共鳴に基づく信号が、検出
器13及び検波回路14によって検出される。
【0016】次にこのようなSTMと静磁界(直流磁
界)発生手段と高周波を印加する構成からなる装置にお
いて、共鳴信号を直接測定する点について詳述する。被
検試料1に探針2を近づけるために、高周波発振器7か
らの信号を切換スイッチ8により遮断し、切換スイッチ
9の接点をA側にして圧電素子3を駆動し、所定の高さ
のところでサーボをかける。この状態では被検試料1に
は静磁界のみ印加されている状態にあるためトンネル電
流はなんら影響を受けることがない。
界)発生手段と高周波を印加する構成からなる装置にお
いて、共鳴信号を直接測定する点について詳述する。被
検試料1に探針2を近づけるために、高周波発振器7か
らの信号を切換スイッチ8により遮断し、切換スイッチ
9の接点をA側にして圧電素子3を駆動し、所定の高さ
のところでサーボをかける。この状態では被検試料1に
は静磁界のみ印加されている状態にあるためトンネル電
流はなんら影響を受けることがない。
【0017】次に被検試料1から共鳴信号(ここではN
MR信号)の測定について説明する。
MR信号)の測定について説明する。
【0018】探針2のトンネル電流によるサーボ動作を
停止するため、切換スイッチ9の接点をB側にし、且
つ、被検試料1に高周波信号を印加するため、切り換え
スイッチ8を接点のON側にしてコイル16より被検試
料1に高周波電力を印加する。これによって被検試料1
中の特定の元素の原子の有る部分(例えば不純物元素)
からNMR信号が発生する。被検試料1表面の探針2と
対向した位置で発生したNMR信号の電波は、アンテナ
として機能する探針2により検出される。
停止するため、切換スイッチ9の接点をB側にし、且
つ、被検試料1に高周波信号を印加するため、切り換え
スイッチ8を接点のON側にしてコイル16より被検試
料1に高周波電力を印加する。これによって被検試料1
中の特定の元素の原子の有る部分(例えば不純物元素)
からNMR信号が発生する。被検試料1表面の探針2と
対向した位置で発生したNMR信号の電波は、アンテナ
として機能する探針2により検出される。
【0019】探針2は、被検試料1表面各部から直接N
MR信号を検出するために、図3(タイムチャート)に
示した如く探針走査(サーボ動作)状態とNMR信号検
出状態として動作する。また高周波信号の被検試料1へ
の印加中はサーボ動作(トンネル電流に基づく探針の自
動走査)を行わない点にも特徴を有するものである。
MR信号を検出するために、図3(タイムチャート)に
示した如く探針走査(サーボ動作)状態とNMR信号検
出状態として動作する。また高周波信号の被検試料1へ
の印加中はサーボ動作(トンネル電流に基づく探針の自
動走査)を行わない点にも特徴を有するものである。
【0020】図3中のtaは高周波信号が切換スイッチ
8の接点をONにしても、すぐに安定に供給されない場
合があるので若干の時間を空けているものであり、この
様な問題がない場合は0としてもよい。
8の接点をONにしても、すぐに安定に供給されない場
合があるので若干の時間を空けているものであり、この
様な問題がない場合は0としてもよい。
【0021】以上の説明では、探針1本でNMR信号計
測を行ったが、高速に検出を行うためには、複数本の探
針を複数のサーボ回路で制御して行ってもよい。また、
若干時間を要するが、複数本の探針を用い、1つのサー
ボ回路で制御して行ってもよい。
測を行ったが、高速に検出を行うためには、複数本の探
針を複数のサーボ回路で制御して行ってもよい。また、
若干時間を要するが、複数本の探針を用い、1つのサー
ボ回路で制御して行ってもよい。
【0022】<実施例3>ESR信号をSTMを用い、
探針走査と同時に直接観測する例について説明する。探
針2の先端付近において、図4の如く導電部分を2つに
分け、各々にリード線401、404を取り付け、導電
部400からの信号はESR信号のみを処理するESR
検出回路402に供給する。また、導電部403はリー
ド線404からトンネル電流を検出してサーボ回路(探
針走査制御)405に供給する。これにより、ESR信
号を直接検出しながらトンネル電流に基づいて探針走査
を自動制御できる。なお、導電部400、403は、絶
縁部406により絶縁されている。導電部400、40
3は、絶縁部材からなる針状部材の表面に形成しても、
又は原子レベルに制御できる成膜法を用いて導電膜と絶
縁膜を積層させ、これを針状に成形しても良い。ここで
は、探針を左右(軸方向)に絶縁したが、上下(軸に垂
直)に分離し、先端側をトンネル電流検出部分としても
良い。
探針走査と同時に直接観測する例について説明する。探
針2の先端付近において、図4の如く導電部分を2つに
分け、各々にリード線401、404を取り付け、導電
部400からの信号はESR信号のみを処理するESR
検出回路402に供給する。また、導電部403はリー
ド線404からトンネル電流を検出してサーボ回路(探
針走査制御)405に供給する。これにより、ESR信
号を直接検出しながらトンネル電流に基づいて探針走査
を自動制御できる。なお、導電部400、403は、絶
縁部406により絶縁されている。導電部400、40
3は、絶縁部材からなる針状部材の表面に形成しても、
又は原子レベルに制御できる成膜法を用いて導電膜と絶
縁膜を積層させ、これを針状に成形しても良い。ここで
は、探針を左右(軸方向)に絶縁したが、上下(軸に垂
直)に分離し、先端側をトンネル電流検出部分としても
良い。
【0023】<実施例4>次に被検試料1の保持及び冷
却について、図5を用いて詳細に説明する。本実施例で
は、超高真空でのNMR又はNQR測定のため、磁界発
生部(コイル216)からの放出ガスの影響を除去する
構造的考慮から、大気圧側と真空側を遮断するフランジ
221と真空筐体内に収納される磁路213〜215は
接合して一体化してある。磁路213及び215は、そ
の端部で夫々円錐状の磁路211及び212に接合され
る。磁路213と215はスペーサ217によって同軸
上に固定され、これらの磁路に接合される磁路211と
212の頂点部の開口も同心円状に並ぶ。従って、コイ
ル216で発生した磁界は、磁路211と212の間隙
を通り、2つの開口部の間において磁束密度の高い空間
を形成する。被検試料201は、この磁束密度の高い空
間に、液体ヘリウム冷却部203の端部に設けられた試
料ホルダ202によって固定される。この空間には、試
料に高周波電界を印加するためのコイル206が設けら
れ、高周波電力伝送線207で高周波電力が供給され
る。また、被検試料201表面には、カンチレバー20
5に固定された探針204が接近し、被検試料201か
らのNMR又はNQR信号を検出する。
却について、図5を用いて詳細に説明する。本実施例で
は、超高真空でのNMR又はNQR測定のため、磁界発
生部(コイル216)からの放出ガスの影響を除去する
構造的考慮から、大気圧側と真空側を遮断するフランジ
221と真空筐体内に収納される磁路213〜215は
接合して一体化してある。磁路213及び215は、そ
の端部で夫々円錐状の磁路211及び212に接合され
る。磁路213と215はスペーサ217によって同軸
上に固定され、これらの磁路に接合される磁路211と
212の頂点部の開口も同心円状に並ぶ。従って、コイ
ル216で発生した磁界は、磁路211と212の間隙
を通り、2つの開口部の間において磁束密度の高い空間
を形成する。被検試料201は、この磁束密度の高い空
間に、液体ヘリウム冷却部203の端部に設けられた試
料ホルダ202によって固定される。この空間には、試
料に高周波電界を印加するためのコイル206が設けら
れ、高周波電力伝送線207で高周波電力が供給され
る。また、被検試料201表面には、カンチレバー20
5に固定された探針204が接近し、被検試料201か
らのNMR又はNQR信号を検出する。
【0024】本実施例では、被検試料201を液体ヘリ
ウム温度に冷却することにより、ノイズの非常に低い測
定が行うことができる。なお、被検試料201の冷却効
率を上げるため、液体ヘリウム冷却部203の周囲を真
空により断熱し、この周囲の温度を下げるために液体窒
素熱シールド223に導入管224及び排出管225で
絶えず液体窒素を供給し、液体窒素熱シールド223の
外周に複数の鏡面研磨された銅板からなる熱シールド2
22を配置している。また、コイル216による発熱の
影響を抑制するために、コイル216と磁路213〜2
15及びスペーサ217との間隙に冷却ガスを導入口2
18から供給し、排気口219より排出させて、コイル
216を冷却する。
ウム温度に冷却することにより、ノイズの非常に低い測
定が行うことができる。なお、被検試料201の冷却効
率を上げるため、液体ヘリウム冷却部203の周囲を真
空により断熱し、この周囲の温度を下げるために液体窒
素熱シールド223に導入管224及び排出管225で
絶えず液体窒素を供給し、液体窒素熱シールド223の
外周に複数の鏡面研磨された銅板からなる熱シールド2
22を配置している。また、コイル216による発熱の
影響を抑制するために、コイル216と磁路213〜2
15及びスペーサ217との間隙に冷却ガスを導入口2
18から供給し、排気口219より排出させて、コイル
216を冷却する。
【0025】<実施例5>本発明の微小部物性情報測定
装置の基本構成と動作原理を、原子間力顕微鏡(AF
M)を用いて電子スピン共鳴(ESR)を測定する実施
例により述べる。図6は、本発明の基本構成を試料に高
周波電界を印加し電子スピン共鳴を発生させ且つ測定す
る回路とともに示す。被検試料1は、空洞10内部にそ
の周囲を磁界変調コイルで囲まれて設置されている。空
洞10には、マイクロ波発振器102(ガンダイオード
発振電源101で駆動)からマイクロ波が減衰器10
3、サーキュレータ104を介して供給される。このマ
イクロ波と空洞10の外部からの磁界により生じる被検
試料1の電子スピン共鳴現象は、マイクロ波の吸収信号
として結晶検波器105で検出され、前置増幅器10
6、信号利得調整器107及び帯域フィルタ108を通
して、信号用位相検波器109に送られる。一方、空洞
10内部に設けられた磁界変調コイル(図示せず)は、
発振器115により30kHz以上の周波数で変調磁界
を形成する。発振器115で発生した周期波は、移相器
114より変調増幅器118を介して磁界変調コイルに
供給され、また信号位相検波器109にも供給される。
これにより、信号用位相検波器109は、電子スピン共
鳴現象によるマイクロ波の吸収信号を磁場変調周波数の
周期波に変換し、その信号の微分形を低雑音で検出す
る。磁界変調幅は、試料の吸収曲線の半値幅によって設
定できる。マイクロ波発振器102は、空洞10及びガ
ンダイオード発振器101の温度等によるドリフトと被
検試料1の電子スピン共鳴状態における共振点のずれを
補正するために、増幅器112、位相検波器113、移
相器116、発振器(3kHz以上の周期波発生)11
7及びバラクタ電源119からなる自動周波数制御回路
にも接続されている。
装置の基本構成と動作原理を、原子間力顕微鏡(AF
M)を用いて電子スピン共鳴(ESR)を測定する実施
例により述べる。図6は、本発明の基本構成を試料に高
周波電界を印加し電子スピン共鳴を発生させ且つ測定す
る回路とともに示す。被検試料1は、空洞10内部にそ
の周囲を磁界変調コイルで囲まれて設置されている。空
洞10には、マイクロ波発振器102(ガンダイオード
発振電源101で駆動)からマイクロ波が減衰器10
3、サーキュレータ104を介して供給される。このマ
イクロ波と空洞10の外部からの磁界により生じる被検
試料1の電子スピン共鳴現象は、マイクロ波の吸収信号
として結晶検波器105で検出され、前置増幅器10
6、信号利得調整器107及び帯域フィルタ108を通
して、信号用位相検波器109に送られる。一方、空洞
10内部に設けられた磁界変調コイル(図示せず)は、
発振器115により30kHz以上の周波数で変調磁界
を形成する。発振器115で発生した周期波は、移相器
114より変調増幅器118を介して磁界変調コイルに
供給され、また信号位相検波器109にも供給される。
これにより、信号用位相検波器109は、電子スピン共
鳴現象によるマイクロ波の吸収信号を磁場変調周波数の
周期波に変換し、その信号の微分形を低雑音で検出す
る。磁界変調幅は、試料の吸収曲線の半値幅によって設
定できる。マイクロ波発振器102は、空洞10及びガ
ンダイオード発振器101の温度等によるドリフトと被
検試料1の電子スピン共鳴状態における共振点のずれを
補正するために、増幅器112、位相検波器113、移
相器116、発振器(3kHz以上の周期波発生)11
7及びバラクタ電源119からなる自動周波数制御回路
にも接続されている。
【0026】被検試料1の表面には、空洞10の開口部
(図示せず)を通してカンチレバー15に固定された探
針2の先端が接近する。探針2の先端と被検試料1表面
との距離は、この間に原子間力による反発又は吸引が生
じる状態(この距離が1nm以内)となるようにカンチ
レバー15に設けられたアクチュエータ(図示せず)で
調整される。これにより被検試料1表面の形状は、表面
原子からの反発力又は引力によるカンチレバー15の動
作として測定される。ここで被検試料1にて電子スピン
共鳴を発生させると、この発生部分とこれに接近する探
針2の先端との間に共鳴波が生じる。通常のESR測定
では、スイッチ110を閉じスイッチ111を開いた状
態で、試料全体における電子スピン共鳴を空洞10から
の信号として検波するため、被検試料1全体の平均的な
情報しか得られない。このときスイッチ111を閉じた
状態で被検試料1の電子スピン共鳴部分に探針2の先端
を接近させると、両者の間に発生する共鳴波を探針2か
ら結晶検波器105に直接導入することで検波できる。
これにより、被検試料1の微小部分において電子スピン
共鳴を生じている部分を局所的に測定できるため、被検
試料1における原子(例えば不純物元素)や欠陥(格子
欠陥)等の詳細な情報が判る。また、電子スピン共鳴に
より被検試料1表面と探針2の先端に生じる共鳴波に
は、ESR以外の成分が混入しないため、検波した信号
の分離が不要となり、この信号から直接被検試料の微小
部の物性情報が得られる。
(図示せず)を通してカンチレバー15に固定された探
針2の先端が接近する。探針2の先端と被検試料1表面
との距離は、この間に原子間力による反発又は吸引が生
じる状態(この距離が1nm以内)となるようにカンチ
レバー15に設けられたアクチュエータ(図示せず)で
調整される。これにより被検試料1表面の形状は、表面
原子からの反発力又は引力によるカンチレバー15の動
作として測定される。ここで被検試料1にて電子スピン
共鳴を発生させると、この発生部分とこれに接近する探
針2の先端との間に共鳴波が生じる。通常のESR測定
では、スイッチ110を閉じスイッチ111を開いた状
態で、試料全体における電子スピン共鳴を空洞10から
の信号として検波するため、被検試料1全体の平均的な
情報しか得られない。このときスイッチ111を閉じた
状態で被検試料1の電子スピン共鳴部分に探針2の先端
を接近させると、両者の間に発生する共鳴波を探針2か
ら結晶検波器105に直接導入することで検波できる。
これにより、被検試料1の微小部分において電子スピン
共鳴を生じている部分を局所的に測定できるため、被検
試料1における原子(例えば不純物元素)や欠陥(格子
欠陥)等の詳細な情報が判る。また、電子スピン共鳴に
より被検試料1表面と探針2の先端に生じる共鳴波に
は、ESR以外の成分が混入しないため、検波した信号
の分離が不要となり、この信号から直接被検試料の微小
部の物性情報が得られる。
【0027】本実施例の構成では前述の数式で定義され
るNminに関係なく、探針2により原子スケールの領域
で共鳴波を検出できるため、例えば、被検試料1表面の
吸着原子も信号雑音比の極めて良い状態で測定できる。
探針2によるESR信号は、スイッチ110を閉じた状
態でスイッチ111を開閉し、開状態での信号(空洞の
みで検出)と閉鎖状態での信号(空洞及び探針2により
検出)の差として求めても、スイッチ110を閉じて共
鳴波を起し、スイッチ110を開くと同時にスイッチ1
11を閉じて探針2のみで検出した共鳴波として求めて
も良い。なお、探針2により検出される共鳴波には被検
試料1表面だけではなく、探針2自体の情報も含まれる
可能性があるが、探針2だけの情報を予め測定しておく
ことで、両者は識別できる。
るNminに関係なく、探針2により原子スケールの領域
で共鳴波を検出できるため、例えば、被検試料1表面の
吸着原子も信号雑音比の極めて良い状態で測定できる。
探針2によるESR信号は、スイッチ110を閉じた状
態でスイッチ111を開閉し、開状態での信号(空洞の
みで検出)と閉鎖状態での信号(空洞及び探針2により
検出)の差として求めても、スイッチ110を閉じて共
鳴波を起し、スイッチ110を開くと同時にスイッチ1
11を閉じて探針2のみで検出した共鳴波として求めて
も良い。なお、探針2により検出される共鳴波には被検
試料1表面だけではなく、探針2自体の情報も含まれる
可能性があるが、探針2だけの情報を予め測定しておく
ことで、両者は識別できる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
従来不可能であった被検試料表面の微小部における電子
スピン、核磁気モーメント、核四重極モーメントなどの
物性情報を走査プローブ顕微鏡の装置本来の機能を失う
ことなく、原子スケールで直接高感度に計測することが
可能となった。
従来不可能であった被検試料表面の微小部における電子
スピン、核磁気モーメント、核四重極モーメントなどの
物性情報を走査プローブ顕微鏡の装置本来の機能を失う
ことなく、原子スケールで直接高感度に計測することが
可能となった。
【図1】本発明の第1の実施例の装置構成図。
【図2】本発明の第2の実施例の概略図。
【図3】本発明の第2の実施例におけるタイムチャー
ト。
ト。
【図4】本発明の第3の実施例の探針先端部の詳細図。
【図5】本発明の第4の実施例の装置構成図。
【図6】本発明の第5の実施例の概略図。
1…被検試料、2…探針、3…圧電素子、4…バイアス
電源、5…増幅器、6…制御回路、7…高周波発振器、
8…切換スイッチ、9…切換スイッチ、10…空洞、1
1…試料ホルダ、13…検出器、14…検流計、15…
カンチレバー、16…コイル、17…コイル、18…液
体ヘリウム冷却部、19…液体ヘリウム導入管、20…
ヘリウム帰還管、21…液体窒素熱シールド、22〜2
6…磁路、27…磁界発生用コイル、28…フランジ、
101…ガンダイオード発振電源、102…マイクロ波
発振器、103…減衰器、104…サーキュレータ、1
05…結晶検波器、106…前置増幅器、107…信号
利得調整器、108…帯域フィルタ、109…信号用位
相検波器、110、111…スイッチ、112…増幅
器、113…位相検波器、114、116…移相器、1
15、117…発振器、118…変調増幅器、119…
バラクタ電源、201…被検試料、202…試料ホル
ダ、203…液体ヘリウム冷却部、204…探針、20
5…カンチレバー、206…コイル、207…高周波電
力伝送線、211〜215…磁路、216…コイル、2
17…スペーサ、218…冷却ガス導入口、219…冷
却ガス排気口、221…フランジ、222…熱シール
ド、223…液体窒素熱シールド、224…液体窒素導
入管、225…液体窒素排出管、400、403…導電
部、401、404…リード線、402…ESR検出回
路、405…サーボ回路。
電源、5…増幅器、6…制御回路、7…高周波発振器、
8…切換スイッチ、9…切換スイッチ、10…空洞、1
1…試料ホルダ、13…検出器、14…検流計、15…
カンチレバー、16…コイル、17…コイル、18…液
体ヘリウム冷却部、19…液体ヘリウム導入管、20…
ヘリウム帰還管、21…液体窒素熱シールド、22〜2
6…磁路、27…磁界発生用コイル、28…フランジ、
101…ガンダイオード発振電源、102…マイクロ波
発振器、103…減衰器、104…サーキュレータ、1
05…結晶検波器、106…前置増幅器、107…信号
利得調整器、108…帯域フィルタ、109…信号用位
相検波器、110、111…スイッチ、112…増幅
器、113…位相検波器、114、116…移相器、1
15、117…発振器、118…変調増幅器、119…
バラクタ電源、201…被検試料、202…試料ホル
ダ、203…液体ヘリウム冷却部、204…探針、20
5…カンチレバー、206…コイル、207…高周波電
力伝送線、211〜215…磁路、216…コイル、2
17…スペーサ、218…冷却ガス導入口、219…冷
却ガス排気口、221…フランジ、222…熱シール
ド、223…液体窒素熱シールド、224…液体窒素導
入管、225…液体窒素排出管、400、403…導電
部、401、404…リード線、402…ESR検出回
路、405…サーボ回路。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平5−40100(JP,A)
特開 平2−287246(JP,A)
特開 平4−19585(JP,A)
特開 平7−311251(JP,A)
特開 平6−34732(JP,A)
欧州特許出願公開551814(EP,A
1)
D.Rugar,C.S.Yanno
ni & J.A.Sidles,”M
echanical detectio
n of magnetic reso
nance”,Nature,1992年12
月10日,第360巻,p.563−566
Y.Manassen,R.J.Ha
mers,J.E.Demuth,an
d A.J.Castellano,J
r.,”Direct Observa
tion of the Preces
sion of Individual
Paramagnetic Spin
s on Oxidized Sili
con Surfaces”,Phys
ical Review Letter
s,米国,The American
Physical Society,
1989年5月22日,第62巻、第21号,p.
2531−2534
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
G01N 13/10 - 13/24
G12B 21/00 - 21/24
G01N 24/00 - 24/14
JICSTファイル(JOIS)
Claims (5)
- 【請求項1】原子間力顕微鏡の探針を被検試料の表面に
接近させ、前記被検試料には磁界発生用コイルを用いて
磁界を印加すると共に、コイルにより高周波磁界を印加
し、前記高周波磁界に共鳴する前記被検試料の表面に存
在する原子からの信号を前記探針をアンテナとして機能
させることにより前記探針により検出することを特徴と
する微小部物性情報測定方法。 - 【請求項2】前記探針の走査と電子スピン共鳴信号測定
とを交互に行うことを特徴とする請求項1記載の微小部
物性情報測定方法。 - 【請求項3】原子間力顕微鏡の探針と、被検試料に磁界
を印加する磁界発生用コイルと、前記被検試料に高周波
磁界を印加するコイルとを具備し、 前記探針を前記被検試料の表面に接近させ、前記被検試
料に前記磁界発生用コイルを用いて磁界を印加すると共
に、前記コイルにより高周波磁界を印加し、前記高周波
磁界に共鳴する前記被検試料の表面に存在する原子から
の信号を前記探針をアンテナとして機能させることによ
り前記探針により検出することを特徴とする微小部物性
情報測定装置。 - 【請求項4】前記探針の走査と電子スピン共鳴信号測定
とを交互に行う手段を有することを特徴とする請求項3
記載の微小部物性情報測定装置。 - 【請求項5】探針と、前記探針と被検試料との間にトン
ネル電流を流し、前記探針の位置を制御するサーボ回路
と、前記被検試料に磁界と高周波電界をかけて共鳴信号
を発生する手段と、前記被検試料と前記探針との間の間
隙における検出対象として前記トンネル電流、前記共鳴
信号のいずれか一つを選択する選択手段とを有すること
を特徴とする微小部物性情報測定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23877394A JP3390544B2 (ja) | 1993-10-04 | 1994-10-03 | 微小部物性情報測定装置および微小部物性情報測定方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24823193 | 1993-10-04 | ||
JP5-248231 | 1993-10-04 | ||
JP23877394A JP3390544B2 (ja) | 1993-10-04 | 1994-10-03 | 微小部物性情報測定装置および微小部物性情報測定方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH07167868A JPH07167868A (ja) | 1995-07-04 |
JP3390544B2 true JP3390544B2 (ja) | 2003-03-24 |
Family
ID=26533880
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23877394A Expired - Fee Related JP3390544B2 (ja) | 1993-10-04 | 1994-10-03 | 微小部物性情報測定装置および微小部物性情報測定方法 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3390544B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4252150B2 (ja) | 1999-03-24 | 2009-04-08 | 富士通株式会社 | 磁気記録媒体特性測定装置および方法 |
-
1994
- 1994-10-03 JP JP23877394A patent/JP3390544B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (2)
Title |
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D.Rugar,C.S.Yannoni & J.A.Sidles,"Mechanical detection of magnetic resonance",Nature,1992年12月10日,第360巻,p.563−566 |
Y.Manassen,R.J.Hamers,J.E.Demuth,and A.J.Castellano,Jr.,"Direct Observation of the Precession of Individual Paramagnetic Spins on Oxidized Silicon Surfaces",Physical Review Letters,米国,The American Physical Society,1989年5月22日,第62巻、第21号,p.2531−2534 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07167868A (ja) | 1995-07-04 |
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