JP3375719B2 - レーザ溶接によるステンレス鋼溶接管の製造方法 - Google Patents
レーザ溶接によるステンレス鋼溶接管の製造方法Info
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- JP3375719B2 JP3375719B2 JP06091294A JP6091294A JP3375719B2 JP 3375719 B2 JP3375719 B2 JP 3375719B2 JP 06091294 A JP06091294 A JP 06091294A JP 6091294 A JP6091294 A JP 6091294A JP 3375719 B2 JP3375719 B2 JP 3375719B2
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- B23K2103/02—Iron or ferrous alloys
- B23K2103/04—Steel or steel alloys
- B23K2103/05—Stainless steel
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- Laser Beam Processing (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザ溶接により加工
性や靭性に優れたステンレス鋼溶接管を製造する方法に
関する。
性や靭性に優れたステンレス鋼溶接管を製造する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】レーザ溶接は、高エネルギー密度のビー
ムにより溶接方法であることから、従来の溶接法に比較
して溶接ビードの幅が狭く、熱影響が小さいことから熱
履歴による材料の劣化も抑制される。しかも、極めて狭
い面積に熱を集中させるため、溶接速度を高く設定でき
る。このような特徴を活用し、生産性を向上させるため
造管ラインの高速化に適した溶接法として採用され始め
ている。他方、高純度フェライト系ステンレス鋼では、
溶接金属の結晶粒が粗大化することにより靭性が著しく
低下する傾向を示す。この傾向は、C,N,O,S等の
不純物元素を極低化した高純度フェライト系ステンレス
鋼ほど顕著となる。この点、レーザ溶接は、熱影響が小
さく溶接部の結晶粒粗大化の程度が小さいことから、フ
ェライト系ステンレス鋼の溶接に適した方法である。
ムにより溶接方法であることから、従来の溶接法に比較
して溶接ビードの幅が狭く、熱影響が小さいことから熱
履歴による材料の劣化も抑制される。しかも、極めて狭
い面積に熱を集中させるため、溶接速度を高く設定でき
る。このような特徴を活用し、生産性を向上させるため
造管ラインの高速化に適した溶接法として採用され始め
ている。他方、高純度フェライト系ステンレス鋼では、
溶接金属の結晶粒が粗大化することにより靭性が著しく
低下する傾向を示す。この傾向は、C,N,O,S等の
不純物元素を極低化した高純度フェライト系ステンレス
鋼ほど顕著となる。この点、レーザ溶接は、熱影響が小
さく溶接部の結晶粒粗大化の程度が小さいことから、フ
ェライト系ステンレス鋼の溶接に適した方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】フェライト系ステンレ
ス鋼は、大気中のガス成分と反応し易いCrを多量に含
んでおり、溶接時の加熱により酸化及び窒化する傾向が
ある。たとえば、大気中から窒素が吸収されると、溶接
部に窒化クロムが析出する。窒化クロムにより靭性が著
しく低下するため、溶接部が脆くなる。この傾向は、特
に高純度のフェライト系ステンレス鋼になるほど顕著に
現れる。通常の溶接ではガスシールドを完全にすること
により、溶接部に大気中からガス成分が吸収されること
が抑制される。しかし、エネルギー密度が高いレーザ溶
接では、溶融金属の温度は、従来のTIG溶接に比較し
て格段に高く、鉄系金属が蒸発する温度にまで達するこ
とがある。昇温した溶融金属は、その温度に応じてガス
吸収能が大きく上昇する。
ス鋼は、大気中のガス成分と反応し易いCrを多量に含
んでおり、溶接時の加熱により酸化及び窒化する傾向が
ある。たとえば、大気中から窒素が吸収されると、溶接
部に窒化クロムが析出する。窒化クロムにより靭性が著
しく低下するため、溶接部が脆くなる。この傾向は、特
に高純度のフェライト系ステンレス鋼になるほど顕著に
現れる。通常の溶接ではガスシールドを完全にすること
により、溶接部に大気中からガス成分が吸収されること
が抑制される。しかし、エネルギー密度が高いレーザ溶
接では、溶融金属の温度は、従来のTIG溶接に比較し
て格段に高く、鉄系金属が蒸発する温度にまで達するこ
とがある。昇温した溶融金属は、その温度に応じてガス
吸収能が大きく上昇する。
【0004】たとえば、大気雰囲気においた溶鋼の窒素
吸収量は、図1に示すように溶鋼温度に応じて多くな
る。TIG溶接では溶融金属がほぼ1800Kに達する
ことから窒素吸収量が240ppm程度であるのに対
し、レーザ溶接では溶融金属がほぼ2900Kにも達す
ることから窒素吸収量が300ppm程度まで上昇す
る。また、同じ2900Kに保持されたステンレス溶鋼
であっても、窒素吸収量は、図2に示すようにCr含有
量に応じて変わる。ステンレス鋼のレーザ溶接では、シ
ールドガスの窒素濃度をどの程度まで下げればよいかが
把握されていないため、過度に窒素濃度を低下させたA
r等の不活性ガスでシールすることが余儀なくされる。
或いは、大気からシールドボックスへ侵入する窒素の影
響を抑えるため、多量の高純度Arガスを循環させるこ
とも考えられる。しかし、高純度Arガスを多量に消費
することから、生産コストを上昇させる原因となる。本
発明は、このような問題を解消すべく案出されたもので
あり、母材のCr含有量と許容窒素量との関連でシール
ド雰囲気の窒素濃度を制御することにより、レーザ溶接
独自の高いガス吸収能を呈する溶融金属が雰囲気のガス
成分を吸収することを抑制し、健全で靭性に優れた溶接
部をもつステンレス鋼溶接管を得ることを目的とする。
吸収量は、図1に示すように溶鋼温度に応じて多くな
る。TIG溶接では溶融金属がほぼ1800Kに達する
ことから窒素吸収量が240ppm程度であるのに対
し、レーザ溶接では溶融金属がほぼ2900Kにも達す
ることから窒素吸収量が300ppm程度まで上昇す
る。また、同じ2900Kに保持されたステンレス溶鋼
であっても、窒素吸収量は、図2に示すようにCr含有
量に応じて変わる。ステンレス鋼のレーザ溶接では、シ
ールドガスの窒素濃度をどの程度まで下げればよいかが
把握されていないため、過度に窒素濃度を低下させたA
r等の不活性ガスでシールすることが余儀なくされる。
或いは、大気からシールドボックスへ侵入する窒素の影
響を抑えるため、多量の高純度Arガスを循環させるこ
とも考えられる。しかし、高純度Arガスを多量に消費
することから、生産コストを上昇させる原因となる。本
発明は、このような問題を解消すべく案出されたもので
あり、母材のCr含有量と許容窒素量との関連でシール
ド雰囲気の窒素濃度を制御することにより、レーザ溶接
独自の高いガス吸収能を呈する溶融金属が雰囲気のガス
成分を吸収することを抑制し、健全で靭性に優れた溶接
部をもつステンレス鋼溶接管を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、その目的を達
成するため、円筒状に成形したステンレス鋼板を走行さ
せながらシールドボックスを通過させ、シールドボック
ス内でステンレス鋼板の幅方向両端部をレーザ溶接して
造管する際、溶接点近傍の雰囲気の窒素濃度を、ステン
レス鋼板のCr濃度[%Cr] (重量%),溶融金属の温
度T(℃)及び溶接金属の許容窒素量[%N]WM (重量%)
に応じて次式で定まる窒素濃度[%N]at(重量%)以下に
維持することを特徴とする。 log([%N]at)≦2log([%N]WM)−2×(518/T+1.068) −2×(0.046[%Cr]−0.00028[%Cr]2) 許容窒素量[%N]WMとしては、得られる溶接管の加工度
に応じて0.005〜0.035重量%の範囲で予め設定
された値が使用される。本発明に従った雰囲気制御は、
特にC:0.03重量%以下,N:0.025重量%以
下,O:0.03重量%以下及びS:0.02重量%以下
に規制した高純度フェライト系ステンレス鋼板のレーザ
溶接に適している。この種の高純度フェライト系ステン
レス鋼は、特にCrに起因した酸化・窒化傾向が強いこ
とから、雰囲気の窒素濃度を制御した効果が顕著に表れ
る。
成するため、円筒状に成形したステンレス鋼板を走行さ
せながらシールドボックスを通過させ、シールドボック
ス内でステンレス鋼板の幅方向両端部をレーザ溶接して
造管する際、溶接点近傍の雰囲気の窒素濃度を、ステン
レス鋼板のCr濃度[%Cr] (重量%),溶融金属の温
度T(℃)及び溶接金属の許容窒素量[%N]WM (重量%)
に応じて次式で定まる窒素濃度[%N]at(重量%)以下に
維持することを特徴とする。 log([%N]at)≦2log([%N]WM)−2×(518/T+1.068) −2×(0.046[%Cr]−0.00028[%Cr]2) 許容窒素量[%N]WMとしては、得られる溶接管の加工度
に応じて0.005〜0.035重量%の範囲で予め設定
された値が使用される。本発明に従った雰囲気制御は、
特にC:0.03重量%以下,N:0.025重量%以
下,O:0.03重量%以下及びS:0.02重量%以下
に規制した高純度フェライト系ステンレス鋼板のレーザ
溶接に適している。この種の高純度フェライト系ステン
レス鋼は、特にCrに起因した酸化・窒化傾向が強いこ
とから、雰囲気の窒素濃度を制御した効果が顕著に表れ
る。
【0006】本発明では、たとえば図3に示した装置を
使用し、溶接部をシールしながらステンレス鋼管を連続
的にレーザ溶接する。ステンレス鋼板1は、ロール成形
機やロールレス成形機等で円筒状に成形され、シールド
ボックス2に送り込まれる。シールドボックス2内には
一対のスクイズロール3が配置されており、ステンレス
鋼板1の円筒形状が維持され、板幅方向両端部が互いに
突き合わされる。レーザ発振器4から出射したレーザビ
ーム5をミラー6で反射させた後、集光レンズ7でビー
ム径を絞り、円筒状ステンレス鋼板1の突合せ部に指向
させる。シールドボックス2には、Ar等の不活性ガス
供給源に接続されたシールドガス供給管8が臨んでい
る。シールドガス供給管8の先端は、図示するように集
光レンズ7を通過したレーザビーム9を取り囲むフード
10に開口させることが好ましい。シールドガス供給管
8には流量調節器11が設けられており、制御機構12
からの制御信号に基づいてシールドボックス2に送り込
まれるシールドガスの流量を調整する。
使用し、溶接部をシールしながらステンレス鋼管を連続
的にレーザ溶接する。ステンレス鋼板1は、ロール成形
機やロールレス成形機等で円筒状に成形され、シールド
ボックス2に送り込まれる。シールドボックス2内には
一対のスクイズロール3が配置されており、ステンレス
鋼板1の円筒形状が維持され、板幅方向両端部が互いに
突き合わされる。レーザ発振器4から出射したレーザビ
ーム5をミラー6で反射させた後、集光レンズ7でビー
ム径を絞り、円筒状ステンレス鋼板1の突合せ部に指向
させる。シールドボックス2には、Ar等の不活性ガス
供給源に接続されたシールドガス供給管8が臨んでい
る。シールドガス供給管8の先端は、図示するように集
光レンズ7を通過したレーザビーム9を取り囲むフード
10に開口させることが好ましい。シールドガス供給管
8には流量調節器11が設けられており、制御機構12
からの制御信号に基づいてシールドボックス2に送り込
まれるシールドガスの流量を調整する。
【0007】シールドボックス2内には、溶接部近傍の
位置に窒素センサー13及び温度センサー14が配置さ
れている。溶接雰囲気に含まれる窒素等のガス濃度及び
溶接部の温度は、それぞれ窒素センサー13及び温度セ
ンサー14で検出され、検出信号として制御機構12に
入力される。窒素センサー13に代えて酸素センサーを
使用し、検出した雰囲気の酸素濃度から窒素濃度を推定
することもできる。制御機構12には、適正窒素濃度及
び雰囲気条件に関する設定データが端末機15から予め
入力されている。制御機構12は、検出信号を設定デー
タと比較演算し、演算結果を制御信号として流量調節器
11に出力する。制御信号に応じた流量でシールドガス
が溶接部近傍に送り込まれ、窒素濃度が調整された保護
雰囲気下でステンレス鋼板1の突合せ部がレーザ溶接さ
れる。そして、シールドボックス2から溶接管16とし
て連続的に送り出される。
位置に窒素センサー13及び温度センサー14が配置さ
れている。溶接雰囲気に含まれる窒素等のガス濃度及び
溶接部の温度は、それぞれ窒素センサー13及び温度セ
ンサー14で検出され、検出信号として制御機構12に
入力される。窒素センサー13に代えて酸素センサーを
使用し、検出した雰囲気の酸素濃度から窒素濃度を推定
することもできる。制御機構12には、適正窒素濃度及
び雰囲気条件に関する設定データが端末機15から予め
入力されている。制御機構12は、検出信号を設定デー
タと比較演算し、演算結果を制御信号として流量調節器
11に出力する。制御信号に応じた流量でシールドガス
が溶接部近傍に送り込まれ、窒素濃度が調整された保護
雰囲気下でステンレス鋼板1の突合せ部がレーザ溶接さ
れる。そして、シールドボックス2から溶接管16とし
て連続的に送り出される。
【0008】ところで、溶接金属の窒素濃度に伴って延
性−脆性遷移温度が上昇し、溶接金属の靭性が劣化す
る。すなわち、溶接部の割れ発生率は、図4に示すよう
に溶接金属の窒素濃度と密接な関係にある。なお、図4
の割れ発生率は、最低温度0℃の雰囲気温度で板厚0.
2mm及び外径30mmのフェライト系ステンレス鋼パ
イプを曲げR120mm及び角度90度に曲げ加工する
条件下で求めた値である。図4から明らかなように、加
工に耐える靭性を確保するためには、溶接金属の窒素濃
度を低下させる必要がある。そこで、図3の装置を使用
したレーザ溶接において、シールドボックス2内に窒素
濃度が種々異なる雰囲気を維持し、割れ発生率が急激に
立ち上がる窒素濃度、すなわち許容窒素濃度[%N]WM
(重量%)を調査した。その結果、許容窒素濃度[%
N]WMは、雰囲気中の窒素濃度[%N]at(重量%),
溶融金属の温度T(℃)及びステンレス鋼板1のCr含
有量[%Cr](重量%)と密接な関係があり、式
(1)で表されることが判った。 [%N]WM=K・([%N]at/100)1/2 /fN ・・・・(1)
性−脆性遷移温度が上昇し、溶接金属の靭性が劣化す
る。すなわち、溶接部の割れ発生率は、図4に示すよう
に溶接金属の窒素濃度と密接な関係にある。なお、図4
の割れ発生率は、最低温度0℃の雰囲気温度で板厚0.
2mm及び外径30mmのフェライト系ステンレス鋼パ
イプを曲げR120mm及び角度90度に曲げ加工する
条件下で求めた値である。図4から明らかなように、加
工に耐える靭性を確保するためには、溶接金属の窒素濃
度を低下させる必要がある。そこで、図3の装置を使用
したレーザ溶接において、シールドボックス2内に窒素
濃度が種々異なる雰囲気を維持し、割れ発生率が急激に
立ち上がる窒素濃度、すなわち許容窒素濃度[%N]WM
(重量%)を調査した。その結果、許容窒素濃度[%
N]WMは、雰囲気中の窒素濃度[%N]at(重量%),
溶融金属の温度T(℃)及びステンレス鋼板1のCr含
有量[%Cr](重量%)と密接な関係があり、式
(1)で表されることが判った。 [%N]WM=K・([%N]at/100)1/2 /fN ・・・・(1)
【0009】ただし、Kは、雰囲気中窒素と溶融金属中
窒素との平衡定数で、log K=−518/T−1.06
8で表される。また、fN は、溶融金属中窒素の活量係
数であり、窒素吸収に対するCrの一次影響係数をeN
(=−0.046),二次影響係数をrN (=0.00
028)とするとき、log fN =eN ・[%Cr]+r
N ・[%Cr]2 で表される。したがって、式(1)
は、式(2)に変換される。 [%N]WM =K・([%N]at/100)1/2 /eN ・[%Cr]+rN ・[%Cr]2 ・・・・(2) 式(2)にeN =−0.046及びrN =0.0002
8)を代入し、制御対象である[%N]atで整理する
と、式(3)が得られる。 log([%N]at) =2log([%N]WM)−2×(518/T+1.068) −2×(0.046[%Cr]−0.00028[%Cr]2) ・・・・(3) したがって、式(3)の値よりlog([%N]at) が小さ
くなるように、シールドボックス2に送り込まれるシー
ルドガスの流量や組成で溶接雰囲気の窒素濃度[%N]
atを制御することにより、窒素の吸収量が許容窒素濃度
[%N]WM以下に押さえられた溶接部が得られる。この
条件下でレーザ溶接すると、得られた溶接管16は、靭
性の劣化がない溶接部をもち、加工性に優れた製品とな
る。
窒素との平衡定数で、log K=−518/T−1.06
8で表される。また、fN は、溶融金属中窒素の活量係
数であり、窒素吸収に対するCrの一次影響係数をeN
(=−0.046),二次影響係数をrN (=0.00
028)とするとき、log fN =eN ・[%Cr]+r
N ・[%Cr]2 で表される。したがって、式(1)
は、式(2)に変換される。 [%N]WM =K・([%N]at/100)1/2 /eN ・[%Cr]+rN ・[%Cr]2 ・・・・(2) 式(2)にeN =−0.046及びrN =0.0002
8)を代入し、制御対象である[%N]atで整理する
と、式(3)が得られる。 log([%N]at) =2log([%N]WM)−2×(518/T+1.068) −2×(0.046[%Cr]−0.00028[%Cr]2) ・・・・(3) したがって、式(3)の値よりlog([%N]at) が小さ
くなるように、シールドボックス2に送り込まれるシー
ルドガスの流量や組成で溶接雰囲気の窒素濃度[%N]
atを制御することにより、窒素の吸収量が許容窒素濃度
[%N]WM以下に押さえられた溶接部が得られる。この
条件下でレーザ溶接すると、得られた溶接管16は、靭
性の劣化がない溶接部をもち、加工性に優れた製品とな
る。
【0010】
実施例1:造管素材として、板厚0.5mm及び板幅9
3mmの低C,N−18Cr−0.5Nb−0.5Cu
系の高純度フェライト系ステンレス鋼板を使用した。こ
のステンレス鋼板について、N2 の配合割合を変化させ
たAr雰囲気をシールドガスとして使用し、平板にビー
ドオンプレート溶接する方法によって溶接部を作製し
た。曲げR1.0mm及び試験温度0℃,10℃で溶接
後の試験片を曲げ加工したとき、窒素吸収量と曲げ加工
限界温度との間に図5に示す関係が成立していた。ステ
ンレス鋼板をロールレス造管法で円筒状に成形し、板幅
方向両端部をレーザ溶接することにより、直径30mm
の溶接管を製造した。溶接管に最低温度0℃の曲げ加工
を施すことから、溶接金属の許容窒素濃度を300pp
mに設定した。そして、溶融金属が最高で2900℃に
到達するものと仮定し、本発明で規定した式に従って溶
接部近傍にある雰囲気の窒素濃度を制御した。
3mmの低C,N−18Cr−0.5Nb−0.5Cu
系の高純度フェライト系ステンレス鋼板を使用した。こ
のステンレス鋼板について、N2 の配合割合を変化させ
たAr雰囲気をシールドガスとして使用し、平板にビー
ドオンプレート溶接する方法によって溶接部を作製し
た。曲げR1.0mm及び試験温度0℃,10℃で溶接
後の試験片を曲げ加工したとき、窒素吸収量と曲げ加工
限界温度との間に図5に示す関係が成立していた。ステ
ンレス鋼板をロールレス造管法で円筒状に成形し、板幅
方向両端部をレーザ溶接することにより、直径30mm
の溶接管を製造した。溶接管に最低温度0℃の曲げ加工
を施すことから、溶接金属の許容窒素濃度を300pp
mに設定した。そして、溶融金属が最高で2900℃に
到達するものと仮定し、本発明で規定した式に従って溶
接部近傍にある雰囲気の窒素濃度を制御した。
【0011】雰囲気の窒素濃度が溶接金属の窒素濃度に
与える影響を調査したところ、表1に示すように、本発
明で規定した関係式を満足する条件下でレーザ溶接した
ものでは、溶接部の窒素濃度が300ppmより十分に
低くなっていた。そのため、温度0℃で曲げ加工を施し
た場合でも、加工割れの発生が検出されなかった。他
方、窒素濃度が高い雰囲気下でレーザ溶接した比較例で
は、溶接金属の窒素濃度が許容値300ppmを超える
値を示し、曲げ加工後に割れが多発した。この対比から
明らかなように、本発明で規定した関係式に従って雰囲
気の窒素濃度を抑制することにより、溶接部の窒素濃度
が低下し、加工割れが発生しない良好な溶接部をもつ溶
接管が得られることが確認された。
与える影響を調査したところ、表1に示すように、本発
明で規定した関係式を満足する条件下でレーザ溶接した
ものでは、溶接部の窒素濃度が300ppmより十分に
低くなっていた。そのため、温度0℃で曲げ加工を施し
た場合でも、加工割れの発生が検出されなかった。他
方、窒素濃度が高い雰囲気下でレーザ溶接した比較例で
は、溶接金属の窒素濃度が許容値300ppmを超える
値を示し、曲げ加工後に割れが多発した。この対比から
明らかなように、本発明で規定した関係式に従って雰囲
気の窒素濃度を抑制することにより、溶接部の窒素濃度
が低下し、加工割れが発生しない良好な溶接部をもつ溶
接管が得られることが確認された。
【0012】
【表1】
【0013】実施例2:造管素材として、板厚1mm及
び板幅131.3mmの低C,N−22Cr−0.5N
b−0.5Mo系の高純度フェライト系ステンレス鋼板
を使用した。このステンレス鋼は、最低温度0℃で20
%の拡管加工を施す場合、許容窒素濃度が200ppm
であった。そこで、レーザ溶接時に溶融金属の温度を測
定しながら、本発明で規定した関係式が満足されるよう
に雰囲気の窒素濃度を制御した。得られた溶接管は、表
2に示すように、最低温度0℃で20%の拡管加工によ
っても加工割れを発生することがない加工性に優れた製
品であった。他方、窒素濃度が高い雰囲気下で溶接した
比較例では、同じ拡管加工を施したとき5%以上の発生
率で加工割れが生じた。
び板幅131.3mmの低C,N−22Cr−0.5N
b−0.5Mo系の高純度フェライト系ステンレス鋼板
を使用した。このステンレス鋼は、最低温度0℃で20
%の拡管加工を施す場合、許容窒素濃度が200ppm
であった。そこで、レーザ溶接時に溶融金属の温度を測
定しながら、本発明で規定した関係式が満足されるよう
に雰囲気の窒素濃度を制御した。得られた溶接管は、表
2に示すように、最低温度0℃で20%の拡管加工によ
っても加工割れを発生することがない加工性に優れた製
品であった。他方、窒素濃度が高い雰囲気下で溶接した
比較例では、同じ拡管加工を施したとき5%以上の発生
率で加工割れが生じた。
【0014】
【表2】
【0015】実施例3:造管素材として、板厚1mm及
び板幅87.3mmの低C,N−30Cr−0.5Nb
−2.0Mo系の高純度フェライト系ステンレス鋼板を
使用した。このステンレス鋼は、最低温度10℃で管端
フレア加工を施す場合、許容窒素濃度が150ppmで
あった。そこで、レーザ溶接時に溶融金属の温度を測定
しながら、本発明で規定した関係式が満足されるように
雰囲気の窒素濃度を制御した。得られた溶接管は、表2
に示すように、最低温度10℃で管端フレア加工によっ
ても加工割れを発生することがない加工性に優れた製品
であった。他方、窒素濃度が高い雰囲気下で溶接した比
較例では、同じ管端フレア加工を施したとき40%以上
の発生率で加工割れが生じた。
び板幅87.3mmの低C,N−30Cr−0.5Nb
−2.0Mo系の高純度フェライト系ステンレス鋼板を
使用した。このステンレス鋼は、最低温度10℃で管端
フレア加工を施す場合、許容窒素濃度が150ppmで
あった。そこで、レーザ溶接時に溶融金属の温度を測定
しながら、本発明で規定した関係式が満足されるように
雰囲気の窒素濃度を制御した。得られた溶接管は、表2
に示すように、最低温度10℃で管端フレア加工によっ
ても加工割れを発生することがない加工性に優れた製品
であった。他方、窒素濃度が高い雰囲気下で溶接した比
較例では、同じ管端フレア加工を施したとき40%以上
の発生率で加工割れが生じた。
【0016】
【表3】
【0017】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、溶接管にバルジ加工,フレア加工等を施す際の加工
条件に応じて予め定まっている許容窒素濃度を、母材の
Cr濃度及び溶融金属の温度と共に制御ファクターとし
て取り込んで、レーザ溶接時に生じている溶融金属が曝
される雰囲気の窒素濃度を制御している。これにより、
形成された溶接部の窒素濃度は許容窒素濃度以下に維持
され、加工割れ等の欠陥発生がない加工性に優れた溶接
管が得られる。しかも、雰囲気の窒素濃度を極端に低下
させた不活性ガスの使用や、雰囲気中の窒素濃度を希釈
するため多量の高純度不活性ガスを連続送給する必要が
ないので、多量の不活性ガス消費に起因した生産コスト
の上昇を招くことなく、レーザ溶接本来の高速造管性が
十分に活用される。
は、溶接管にバルジ加工,フレア加工等を施す際の加工
条件に応じて予め定まっている許容窒素濃度を、母材の
Cr濃度及び溶融金属の温度と共に制御ファクターとし
て取り込んで、レーザ溶接時に生じている溶融金属が曝
される雰囲気の窒素濃度を制御している。これにより、
形成された溶接部の窒素濃度は許容窒素濃度以下に維持
され、加工割れ等の欠陥発生がない加工性に優れた溶接
管が得られる。しかも、雰囲気の窒素濃度を極端に低下
させた不活性ガスの使用や、雰囲気中の窒素濃度を希釈
するため多量の高純度不活性ガスを連続送給する必要が
ないので、多量の不活性ガス消費に起因した生産コスト
の上昇を招くことなく、レーザ溶接本来の高速造管性が
十分に活用される。
【図1】 溶鋼温度が窒素吸収量に与える影響
【図2】 Cr含有量が窒素吸収量に与える影響
【図3】 シールドボックスを備えたレーザ溶接による
造管ラインの一部
造管ラインの一部
【図4】 溶接金属の窒素濃度が割れ発生に与える影響
【図5】 実施例1で使用したステンレス鋼の窒素吸収
量と曲げ加工限界温度との関係
量と曲げ加工限界温度との関係
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
B23K 103:04 B23K 103:04
(56)参考文献 特開 平6−670(JP,A)
特開 平4−258390(JP,A)
特開 昭56−168988(JP,A)
特開 昭50−5266(JP,A)
特開 昭60−87919(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B23K 26/00 - 26/26
B21C 37/08
Claims (3)
- 【請求項1】 円筒状に成形したステンレス鋼板を走行
させながらシールドボックスを通過させ、シールドボッ
クス内でステンレス鋼板の幅方向両端部をレーザ溶接し
て造管する際、溶接点近傍の雰囲気の窒素濃度を、ステ
ンレス鋼板のCr濃度[%Cr] (重量%),溶融金属の
温度T(℃)及び溶接金属の許容窒素量[%N]WM (重量
%)に応じて次式で定まる窒素濃度[%N]at (重量%)以
下に維持することを特徴とするレーザ溶接によるステン
レス鋼溶接管の製造方法。 log([%N]at)≦2log([%N]WM)−2×(518/T+1.068) −2×(0.046[%Cr]−0.00028[%Cr]2) - 【請求項2】 請求項1記載の許容窒素量[%N]WMと
しては、得られる溶接管の加工度に応じて0.005〜
0.035重量%の範囲で予め設定された値を使用する
ステンレス鋼溶接管の製造方法。 - 【請求項3】 C:0.03重量%以下,N:0.02
5重量%以下,O:0.03重量%以下及びS:0.0
2重量%以下に規制したフェライト系ステンレス鋼板を
使用する請求項1又は2記載のステンレス鋼溶接管の製
造方法。
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Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06091294A JP3375719B2 (ja) | 1994-03-30 | 1994-03-30 | レーザ溶接によるステンレス鋼溶接管の製造方法 |
Publications (2)
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---|---|
JPH07266072A JPH07266072A (ja) | 1995-10-17 |
JP3375719B2 true JP3375719B2 (ja) | 2003-02-10 |
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ID=13156073
Family Applications (1)
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JP06091294A Expired - Fee Related JP3375719B2 (ja) | 1994-03-30 | 1994-03-30 | レーザ溶接によるステンレス鋼溶接管の製造方法 |
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JP3171580U (ja) * | 2011-06-14 | 2011-11-10 | 弘保 磯部 | フェライト系ステンレス設備用配管 |
JP2013169579A (ja) * | 2012-02-22 | 2013-09-02 | Nisshin Steel Co Ltd | 電縫鋼管のシールボックス溶接装置 |
CN106181039B (zh) * | 2016-08-04 | 2017-11-14 | 哈尔滨工业大学 | 一种减少t型接头焊接热裂纹的双激光束焊接方法 |
-
1994
- 1994-03-30 JP JP06091294A patent/JP3375719B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH07266072A (ja) | 1995-10-17 |
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