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JP3300940B2 - 光触媒皮膜用下地膜の形成方法 - Google Patents

光触媒皮膜用下地膜の形成方法

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JP3300940B2
JP3300940B2 JP18363298A JP18363298A JP3300940B2 JP 3300940 B2 JP3300940 B2 JP 3300940B2 JP 18363298 A JP18363298 A JP 18363298A JP 18363298 A JP18363298 A JP 18363298A JP 3300940 B2 JP3300940 B2 JP 3300940B2
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Japan
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film
photocatalytic
base film
forming
photocatalytic film
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JP18363298A
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秀樹 西森
明 橋本
清志 多田
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昭和電工株式会社
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Publication date
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  • Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)
  • Materials Applied To Surfaces To Minimize Adherence Of Mist Or Water (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒皮膜用下地
膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、二酸化チタンの効果を利用した消
臭、抗菌、防かび、防汚等の用途への応用が検討されて
いる。二酸化チタン(チタニア)を基材に固定する方法
の例としては、耐熱性の高い基材には、チタンのアルコ
キシドや四塩化チタンを加水分解・重縮合させたゾルを
基材に塗布し乾燥した後、熱処理する方法、二酸化チタ
ン粒子を水やアルコールに分散したものを基材に塗布し
乾燥後、基材表面に付着した粒子を焼結させる方法等が
ある。
【0003】一方、耐熱性の低い基材に塗布する場合に
は、二酸化チタンのバインダーとして比較的耐光性に優
れたフッ素樹脂やシリコーン樹脂が用いられる。また光
触媒皮膜をプラスチックス基材に塗布する場合には、プ
ラスチックスが直接二酸化チタンに触れて分解されるの
を防止ぐため、プラスチックスと二酸化チタンを含む皮
膜との間にバリヤー層を設けるのが一般的である。さら
に、基材がソーダライムガラスの場合には、光触媒皮膜
焼成時にナトリウムが光触媒膜中に拡散し、光触媒活性
が低下するのを防止するため、バリヤー層として下地膜
を基材に塗布するのが一般的である。
【0004】下地膜の特性としては、内部が緻密であ
り、光触媒効果がなくそれ自身も光触媒により劣化しな
いことが必要であり、SiOなどの無機物もしくはシ
リコーン樹脂、フッ素樹脂等の高耐光性樹脂を下地膜と
して用いるのが一般的である。
【0005】また、金属アルコキシドの加水分解、およ
びその後の縮合重合により得られるゾルを用いるゾル−
ゲル法では、低温焼成が可能であり、様々な基材に密着
性よく無機系皮膜を形成できることが知られている。ま
たゾル−ゲル法では、Siに直接メチル基が結合した3
官能アルコキシドを用いれば、メチル基が皮膜中に残留
するため、加工性に優れた皮膜が得られることが知られ
ている(例えば日本セラミックス協会学術論文誌97,
〔1〕,91−94頁,1989年,参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、下地膜
として無機粉体よりなる皮膜を用いる場合には、粉体を
焼成させるために高温焼成が必要であり、従って耐熱性
の高い基材にしか適用できず、また加工性に乏しいた
め、基材が限定されるという問題があった。
【0007】これに対し、下地膜としてシリコーン樹脂
やフッ素樹脂を用いる場合には、無機物に比べて加工性
にすぐれているため、プレコートも可能であるが、シリ
コーン樹脂やフッ素樹脂を下地としてこの上に光触媒皮
膜を塗布する場合に接着性が乏しいため、下地膜と光触
媒皮膜との間に接着層を必要とする場合が多いという問
題点があり、フッ素樹脂の場合には基材との接着性も乏
しく、基材にブラスト処理を施すか、もしくは基材と下
地膜との間に接着層を必要とする場合があるという問題
があった。
【0008】また、フッ素樹脂やシリコーン樹脂を下地
膜として用いる場合には、耐熱温度の低い基材に光触媒
皮膜を塗布することが可能であるが、一般に、ジメチル
ポリシロキサンを主成分とするシリコーン樹脂では、樹
脂中に多く含まれるメチル基が上塗膜である光触媒膜し
下地膜であるシリコーン樹脂皮膜の界面で光触媒により
分解されるため、用途によっては耐光性が充分でないと
いう問題があった。
【0009】なお、ゾル−ゲル法では、Siに直接メチ
ル基が結合した3官能アルコキシドを用いれば、基材と
の密着性や加工性、および耐光性にすぐれた皮膜が得ら
れるものの、皮膜表面は平滑で、この皮膜に親水性の光
触媒形成用ゾルを塗布すると、塗料がはじかれ、表面に
凹凸がないため、機械的な密着力も期待できないという
問題があった。
【0010】このように、ゾル−ゲル法では、低温焼成
が可能であり、様々な基材に密着性よく無機系皮膜を塗
布でき、加工性に優れた皮膜を形成できる点で優れてい
るが、光触媒皮膜と基材の間に塗布するバリヤー層とし
て必要な緻密な内層と、光触媒皮膜を密着性よく塗布す
るための粗い表層を同時に形成することができないとい
う問題があった。
【0011】本発明の目的は、上記の従来技術の問題を
解決し、Siに直接メチル基が結合したシリコンアルコ
キシドをSiO粒子の存在下で、加水分解・重縮合さ
せて得られたゾルをあらゆる基材に塗布し、乾燥あるい
は乾燥後に焼成することにより得られる基材との密着
性、上塗り膜である光触媒皮膜との密着性、加工性に優
れかつ緻密な内層と粗い表層を持った光触媒皮膜用下地
膜の形成方法を提供しようとするにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明による光触媒皮膜用下地膜の形成方法は、
nSi(OR 4−n (但し式中R はアルキル
基、フェニル基等の疎水基であり、R はアルキル基で
あり、n=1または2である)と、溶媒と、水と、酸触
媒とよりなる液組成物に、SiO 微粒子を混ぜ合わせ
たものを攪拌することにより得たゾルを基材に塗布して
乾燥させることによりゲル膜を形成し、その後焼成する
ことにより、SiOを主成分とするとともに、ゾル−
ゲル法により形成されており、緻密層上に凹凸層が一体
に形成され、凹凸層の表面全体に微細な凹凸が形成され
て粗面化されている光触媒皮膜用下地膜を形成すること
を特徴としている。
【0013】こで、RnSi(OR4−nと、
溶媒と、水と、酸触媒との混合比は、モル比で1:1〜
20:1〜20:0.00001〜0.3である。
【0014】上記において、溶媒としては、プロパノー
ル、エタノール、メタノール等の低級アルコールが単独
でもしくは混合して用いられ、またはこれらにブタノー
ルや、ブタノールより炭素数の多いアルコールを適量添
加して用いられる。あるいは、これらにエーテル、ケト
ン、アミド等の有機溶媒が添加される場合もある。
【0015】SiO微粒子の粒径は5nm〜2μmで
あることが好ましい。
【0016】SiO微粒子は、RnSi(OR
4−nが加水分解し、縮合重合した生成物と結合し、表
面が疎水基で覆われる。
【0017】上記において、液組成物には、さらに微量
のSi(ORやRnSi(OR4−n(但
し式中Rはアルキル基であり、Rは末端に親水基を
有するHN(CH等の置換基であり、n=1ま
たは2である)を添加しておいてもよい。その添加量は
適宜変更されるが、Si(ORがテトラエトキシ
シランの場合、RnSi(OR4−nがメチルト
リエトキシシランであれば、テトラエトキシシランのメ
チルトリエトキシシランに対する混合比は、モル比で
x:(1−x)(但し0<x≦0.3)である。
【0018】また、上記方法において、原料全体中のS
iO微粒子の量は40重量%以下が好ましい。40重
量%を越えると、SiO微粒子を液組成物中に分散で
きなくなるおそれがある。
【0019】本発明の光触媒皮膜用下地膜の形成方法に
よれば、固体として残る成分、すなわちRnSi(O
4−nが加水分解し、縮合重合した生成物および
表面がRnSi(OR4−nからの疎水基を持つ
生成物で覆われたSiO微粒子と水とが膜乾燥時には
じき合うことにより、SiOを主成分とするととも
に、緻密層上に凹凸層が一体に形成されている光触媒皮
膜用下地膜が1回の工程で形成される。
【0020】本発明の光触媒皮膜用下地膜の形成方法に
よれば、ゾル−ゲル法によるため、200℃以下の低温
焼成が可能であり、長時間乾燥できる場合には焼成が不
要であり、様々な基材に密着性よく無機系皮膜を塗布で
き、加工性に優れた下地膜を形成することができるとと
もに、光触媒皮膜と基材の間に介在するバリヤー層とし
て必要な緻密な内層と、光触媒皮膜を密着性よく塗布す
るための粗い表層を同時に具備した下地膜を形成するこ
とができるものである。
【0021】上記本発明の方法により形成された光触媒
皮膜用下地膜は、膜厚が0.1〜10μmであるのが、
好ましい。 また、上記光触媒皮膜用下地膜の凹凸層の表
面粗さが最大高さR max で0.03〜3μmであり、
凹部から最近接の凹部あるいは凸部から最近接の凸部ま
での間隔が0.03〜10μmとなされていることが好
ましい。 上記光触媒皮膜用下地膜の凹凸層の表面には、
微細な凹凸に加え、さらに相当直径0.03〜10μ
m、深さ0.03〜3μmの孔が形成され、この孔の周
面および底面全体にも微細な凹凸が形成されて粗面化さ
れており、孔の周面および底面の表面粗さが最大高さR
max で0.01〜1μmであり、凹部から最近接の凹
部あるいは凸部から最近接の凸部までの間隔が0.01
〜1μmとなされていることが好ましい。ここで、相当
直径とは、孔の横断面積と等しい面積を有する円の直径
を意味する。 本発明の方法により形成された光触媒皮膜
用下地膜によれば、SiO を主成分とするとともに、
ゾル−ゲル法により形成されており、緻密層上に凹凸層
が一体に形成され、凹凸層の表面全体に微細な凹凸が形
成されて粗面化されているので、緻密層の働きにより、
例えば基材がソーダライムガラスである場合に、上塗膜
である光触媒皮膜にナトリウムが拡散してTiO の光
触媒効果が低下するのを、防止することできる。また、
基材がプラスチックスである場合にも、上記下地膜がプ
ラスチックスと光触媒皮膜の間に存在することにより、
プラスチックスが直接二酸化チタンに触れて分解される
のを防止することができる。 上記下地膜は、表面に凹凸
層を有するため、下地膜表面が平滑であると剥離するよ
うな光触媒皮膜であっても、凹凸層の機械的密着力によ
り均一に塗布することができる。従って、例えばバリヤ
ー層として下地膜を必要としない基材に対しても、上塗
膜である光触媒皮膜の密着力を向上させるために好適に
利用することができる。つぎに、本発明の方法により製
造された光触媒皮膜用下地膜を利用して形成した光触媒
皮膜を有する基材を含んでなる物品は、上記光触媒皮膜
用下地膜が形成されている基材の下地膜表面に、TiO
、ZnO、SrTiO、CdS、またはZnS等の
光触媒反応を生じる半導体光触媒を含むコーティング剤
もしくは塗布後熱処理することにより光触媒反応を生じ
る半導体光触媒が形成されるコーティング剤を塗布し
て、光触媒皮膜を形成することを特徴とするものであ
る。本物品に、光を照射すると、酸化チタン等の半導体
光触媒の光触媒効果により、臭気成分等有害物質を酸化
分解して、空気清浄を図ることができる。また、本発明
方法により製造された光触媒皮膜用下地膜を利用して
形成した光触媒皮膜を有する基材を含んでなる物品のい
ま1つは、上記光触媒皮膜用下地膜が形成されている基
材の下地膜表面に、式RSi(X)(式中、Rはアル
キル基、フェニル基、またはビニル基よりなる炭化水素
基、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)で表
される3官能シランと、式Si(X)(式中、Xはア
ルコキシル基、またはハロゲンである)で表される4官
能シランとの加水分解・重縮合物と、光触媒としての二
酸化チタン粒子とよりなる光触媒皮膜を形成することを
特徴とするものである。本物品に、光を照射すると、酸
化チタン等の半導体光触媒の光触媒効果により、臭気成
分等有害物質を酸化分解して、空気清浄を図ることがで
きる。 とくに上記光触媒皮膜は、3官能シランに由来す
るSiに結合したR(炭化水素基)が、皮膜中に残留し
柔軟性を与えるため、優れた加工性を有しており、かつ
上記光触媒皮膜は、皮膜中のRよりなる有機基成分が、
Si−O−Si成分よりなる無機骨格成分に比べて少な
いために、耐光性に優れているものである。そして、上
記下地膜および光触媒皮膜は、無機成分を主とするた
め、例えば厨房等の壁や備品に本発明による下地膜およ
び光触媒皮膜を塗布した場合、汚れが付着しにくく、水
洗いなどで残留した調味料などの汚れも光触媒効果によ
り酸化分解できるため、長期において美しさを保つこと
ができる
【0022】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を、
図面を参照して説明する。
【0023】図1は本発明の方法により形成された光触
媒皮膜用下地膜の1実施形態を示す。図1において、光
触媒皮膜用下地膜(1) は、SiOを主成分とするとと
もに、ゾル−ゲル法により形成されており、緻密層(2)
上に凹凸層(3) が一体に形成されているものである。凹
凸層(3) の表面全体に微細な凹凸が形成されて粗面化さ
れている。
【0024】光触媒皮膜用下地膜(1) の膜厚(T)は、
0.1〜10μmである。凹凸層(3) の表面粗さは最大
高さRmaxで0.03〜3μmであり、凹部(4) から
最近接の凹部(4) あるいは凸部(5) から最近接の凸部
(5) までの間隔(W) が0.03〜10μmとなされてい
る。
【0025】図2は本発明方法により製造された光触媒
皮膜用下地膜の他の実施形態を示す。図2において、光
触媒皮膜用下地膜(10)は、図1と同様な光触媒皮膜用下
地膜(1) における凹凸層(3) の表面に、微細な凹凸に加
え、さらに相当直径(D)0.03〜10μm、深さ
(S)0.03〜3μmの孔(11)が形成されたものであ
る。この孔(11)の周面および底面全体にも微細な凹凸が
形成されて粗面化されており、孔(11)の周面および底面
の表面粗さは最大高さRmaxで0.01〜1μmであ
り、凹部(12)から最近接の凹部(12)あるいは凸部(13)か
ら最近接の凸部(13)までの間隔(W1)が0.01〜1μm
となされている。
【0026】図1および図2に見られる光触媒皮膜用下
地膜(1)(10) の形成方法は、RnSi(OR
4−n(但し式中Rはアルキル基、フェニル基等の疎
水基であり、Rはアルキル基であり、n=1または2
である)と、溶媒と、水と、酸触媒とよりなる液組成物
に、SiO微粒子を混ぜ合わせたものを攪拌すること
により得たゾルを基材に塗布する工程と、機材に塗布し
たゾルを乾燥させゲル膜を形成する工程と、ゲル膜を焼
成する工程とを含む。たゞし、乾燥を充分な時間行なえ
る場合は熱処理の工程を省略してもよい。
【0027】ここで、液組成物におけるRnSi(O
4−nと、溶媒と、水と、酸触媒との混合比は、
モル比で1:1〜20:1〜20:0.00001〜
0.3であることが好ましく、原料全体中の酸化物微粒
子の量は40重量%であることが好ましい。
【0028】基材への下地膜用ゾルの塗布は、ディップ
コート、スプレーコート、バーコート、ロールコートな
どいかなる方法をも用いることができる。
【0029】下地膜の熱処理は、70〜500℃で30
秒〜10分間加熱することにより行う。なお、形成され
たバリヤー層に化学的、物理的耐久性を持たせるために
は、100〜500℃で熱処理することが好ましい。
【0030】本発明のいま1つの目的は、上記下地膜
に、光触媒用コーティング剤を塗布することにより達成
され、光触媒皮膜用下地膜を利用して形成した光触媒皮
膜を有する基材を含んでなる物品を形成することができ
る。
【0031】本発明の方法により製造された下地膜上に
塗布する光触媒用コーティング剤は、光触媒皮膜用下地
膜が形成されている基材の下地膜表面に、TiO、Z
nO、SrTiO、CdS、またはZnS等の光触媒
反応を生じる半導体光触媒を含むか、コーティング剤を
塗布した後熱処理することにより光触媒反応を生じる半
導体光触媒が形成されるものであればいかなる物であっ
ても良いが、価格が安く、光触媒効果が大きいTiO
が好ましく、中でも量子効率の高いアナターゼ型の結晶
を含むTiOがとくに好ましい。
【0032】本発明で利用できるTiO系光触媒用コ
ーティング剤の例としては、チタンのアルコキシドを、
アルコール、水、および酸触媒等の存在下で加水分解、
重縮合させたもの、TiO粒子と、TiO粒子のバ
インダーとしてアルコキシドからの生成物、あるいはフ
ッ素樹脂、シリコーン樹脂を含むものなどが挙げられ
る。
【0033】光触媒用コーティング剤の塗布は、ディッ
プコート、スプレーコート、バーコート、ロールコート
などいかなる方法を用いても良く、加工性にすぐれた皮
膜が得られる光触媒用コーティング剤を塗布する場合に
は、下地膜および光触媒膜を連続してコーティングする
ことができる。
【0034】なお、光触媒用コーティング剤を塗布して
生成した皮膜は、チタンのアルコキシドを用いた場合に
は、皮膜を結晶化させるために熱処理し、バインダーを
用いた場合も、必要に応じて熱処理される。
【0035】また、本発明の方法により製造された光触
媒皮膜用下地膜を利用して形成した光触媒皮膜を有する
基材を含んでなる物品を得るには、上記光触媒皮膜用下
地膜が形成されている基材の下地膜表面に、式RSi
(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、または
ビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル基、ま
たはハロゲンである)で表される3官能シランと、式S
i(X)(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲ
ンである)で表される4官能シランとの加水分解・重縮
合物と、光触媒としての二酸化チタン粒子とよりなる光
触媒皮膜を形成するものである。
【0036】ここで、二酸化チタンは、硫酸法、塩素法
等の工業的手法により調製された粒子あるいは水熱法、
ゾル−ゲル法により得られた粒子などのあらゆる手法で
調製された物が用いられ、粒子の状態としては、粉末状
あるいは粉末を液体に分散させた状態のいずれでもよ
い。
【0037】なお、硫酸法および塩素法では、調製条件
により一次粒子径が0.2〜0.3μm程度の顔料用二
酸化チタンと、一次粒子径が100nm未満の微粒子二
酸化チタンが得られるが、一次粒子が小さく比表面積が
大きい塩素法により調製した微粒子二酸化チタンが特に
好ましい。
【0038】工業的に調製される二酸化チタンの結晶形
は、ルチル型、アナターゼ型、あるいはルチル型とアナ
ターゼ型の混合物であり、水熱法では、ブルカイト型の
結晶が析出する場合がある。ここでは、いかなる結晶形
の二酸化チタン粒子をも用いることができるが、場合に
よっては、無定形の酸化チタンが含まれていても良い
が、結晶形としては、アナターゼ型、あるいはルチル型
とアナターゼ型との混合物が好ましく、量子効率の高い
アナターゼ型を結晶成分中の比率で30重量%以上含む
物が、さらに好ましい。
【0039】また、二酸化チタンは必要な皮膜特性に従
って皮膜中濃度で80重量%以下の好適な量が添加され
るが、二酸化チタン粒子濃度が低い場合には光触媒効果
が小さく、二酸化チタン粒子濃度が高い場合には皮膜の
加工性が劣るため、二酸化チタン濃度は、皮膜中濃度に
おいて5〜80重量%であるのが、好ましい。
【0040】また上記において、3官能シランは、式R
Si(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル基、ま
たはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキシル
基、またはハロゲンである)で表されるものである。
【0041】具体的には、メチルトリエトキシシラン、
エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシ
ラン、メチルトリクロロエシラン、エチルトリクロロエ
シラン、ビニルトリクロロエシラン等が挙げられ、少な
くとも1種類以上用いられる。
【0042】また上記4官能シランは、式Si(X)
(式中、Xはアルコキシル基、またはハロゲンである)
で表されものである。
【0043】具体的には、テトラエトキシシラン、テト
ラメトキシシラン、テトラクロロシシラン等が挙げら
れ、少なくとも1種類以上用いられる。
【0044】そして、上記3官能シランと4官能シラン
とを混合した後、加水分解・重縮合させた物をバインダ
ーとして用いる場合と、上記3官能シランと4官能シラ
ンをそれぞれ加水分解・重縮合させた物、あるいはこれ
らのシラン化合物のオリゴマーを混合して加水分解・重
縮合させた物を用いる場合がある。
【0045】3官能シランと4官能シランの混合比は、
3官能シラン:4官能シラン=x:(1−x)のモル比
で表すと、0.3≦x<0.7、好ましくは0.4≦x
≦0.6である。なお、上記シラン化合物のオリゴマー
をバインダーの原料に用いる場合には、上記モル比はモ
ノマー換算値に相当する。ここで、xの範囲を上記のよ
うに限定したのは、xが小さすぎると、皮膜中にR(炭
化水素基)が少なくなるため皮膜の加工性が低下し、x
が大きすぎると、二酸化チタン粒子表面が親水性である
場合、上記シラン化合物より生成したバインダーを含ん
だゾル中での二酸化チタン粒子の分散性が低下するから
である。
【0046】なお、光触媒皮膜の膜厚は、0.05〜5
μmであるのが、好ましい。
【0047】つぎに、光触媒皮膜の形成方法は、光触媒
皮膜形成用ゾルの調製と皮膜形成とからなる。
【0048】 光触媒皮膜形成用ゾルの調製 光触媒皮膜形成用ゾルは、3官能シランと、4官能シラ
ンとを、アルコールもしくはその他の有機溶媒、水、お
よび酸触媒を、所定の比率で混合、攪拌することにより
得られる。
【0049】ここで、酸触媒は、硫酸、硝酸、塩酸など
の無機酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸が用いられる。
【0050】なお、二酸化チタンのバインダーの原料で
ある3官能シランと4官能シランとは、それぞれ加水分
解・重縮合させたものあるいはこれらシラン化合物のオ
リゴマーを混合して用いても良く、二酸化チタン粒子は
シランの反応前、反応後のいずれのタイミングで添加し
ても良い。
【0051】上記ゾル原料の中で二酸化チタン以外の原
料の比率を、3官能シラン:4官能シラン:アルコール
もしくはその他の有機溶媒:水:酸触媒=x:(1−
x):y:z:aのモル比で表すと、x、y、z、aの
値がそれぞれ0.3≦x<0.7、0.5≦y≦100
0、0.5≦z≦1000、0.00001≦a≦1で
ある。
【0052】上記組成において、yが0.5未満であれ
ば、粒子を分散させるのが困難であり、yが1000を
越えると、調製した光触媒皮膜形成用ゾルの固形成分濃
度が低すぎるため均一な皮膜形成が困難であるので、好
ましくない。また、zが0.5未満であれば、シランの
加水分解に時間がかゝり、zが1000を越えると、ゾ
ルが流動性を失い、ゲル化する可能性があるので、好ま
しくない。またaが0.00001未満であれば、シラ
ンの加水分解反応の進行が遅くなり、aが1を越える
と、反応が早く進みすぎ、光触媒皮膜形成用ゾルを均一
に塗布できる期間が短くなるため、好ましくない。
【0053】上記光触媒皮膜形成用ゾルの調製に用いる
二酸化チタンの製法は、とくに限定されないが、一次粒
子が小さく比表面積が大きい塩素法により調製した微粒
子二酸化チタンがとくに好ましい。
【0054】なお、液体に分散させた二酸化チタン粒子
を用いる場合には、分散媒の液体も上記組成に含まれ
る。
【0055】上記光触媒皮膜形成用ゾルの調製に用いる
二酸化チタンは、あらゆる結晶形の粒子を用いることが
でき、無定形の酸化チタンが含まれていても良いが、結
晶形としては、アナターゼ型、あるいはルチル型とアナ
ターゼ型との混合物が好ましく、量子効率の高いアナタ
ーゼ型を結晶成分中の比率で30重量%以上含む物が、
さらに好ましい。
【0056】また、二酸化チタンは必要な皮膜特性に従
って皮膜中濃度で80重量%以下の好適な量が添加され
るが、二酸化チタン粒子濃度が低い場合には光触媒効果
が小さく、二酸化チタン粒子濃度が高い場合には皮膜の
加工性が劣るため、二酸化チタン濃度は、皮膜中濃度に
おいて5〜80重量%であるのが、好ましい。
【0057】なお、上記組成においてシラン中のSi1
個あたりのRの平均数が0.3個以上0.7個未満の範
囲内であれば、上記3官能シランの組成の一部を、一般
式RSi(X)(式中、Rはアルキル基、フェニル
基、またはビニル基よりなる炭化水素基、Xはアルコキ
シル基、またはハロゲンである)で表される2官能シラ
ンにしても良い。
【0058】 皮膜形成 上記光触媒皮膜形成用ゾルは、金属板、パネル、タイ
ル、プラスチックス等の基材に、上記この発明による下
地膜(バリヤー層)を介して塗布される。塗布方法は、
ディップコート、スプレーコート、バーコート、ロール
コートなどいかなる方法をも用いることができる。
【0059】上記光触媒皮膜形成用ゾルを塗布した基材
を、室温以上の温度で乾燥することにより、光触媒膜を
得ることができる。短時間で皮膜を形成する場合には、
乾燥に加えて500℃以下で熱処理しても良いが、40
0〜500℃で長時間熱処理した場合、Si原子に結合
したR(炭化水素基)が焼成脱離し、皮膜の柔軟性が低
下するため、加工性を保つためには300℃以下の熱処
理が好ましい。
【0060】光触媒皮膜の膜厚はとくに限定されない
が、膜厚が0.05μm未満の場合、欠陥の無い皮膜の
形成が困難であり、また必要以上に厚い場合は、厚さに
見合う光触媒効果の向上がなく、不経済なため、膜厚
は、0.05〜5μmであるのが、好ましい。ただし、
二酸化チタンによる紫外線遮蔽などの機能も兼ねて使用
する場合には、5μm以上の膜厚でも差し支えない。
【0061】上記光触媒皮膜が、優れた加工性を有して
いるのは、3官能シランに由来するSiに結合したR
(炭化水素基)が、皮膜中に残留し柔軟性を与えるから
である。また上記光触媒皮膜が耐光性に優れているの
は、皮膜中のRよりなる有機基成分が、Si−O−Si
成分よりなる無機骨格成分に比べて少なく、仮にバイン
ダー中の有機基成分が二酸化チタンの光触媒効果により
酸化分解されたとしても、皮膜中のバインダーの大部分
は、二酸化チタンの光触媒効果によって分解されないS
i−O−Si成分からなり、チョーキングが起こらない
からである。
【0062】なお、上記下地膜は二酸化ケイ素を主成分
とする酸化物皮膜はよりなり、表面に凹凸を有する無機
−有機複合体であることから、表面の凹凸により光触媒
皮膜の密着性を向上させることができ、加工性、耐光性
に優れていることから、光触媒皮膜の下地膜(バリヤー
層)として好適に利用でき、特に加工性を必要とする場
合には、最適である。
【0063】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に説明する。
【0064】実施例1 メチルトリエトキシシランと、溶媒であるエタノールお
よび2−プロパノールと、水と、塩酸と、2−プロパノ
ールに分散させた粒径0.01〜0.02μmのSiO
粒子を原料として用意した。なお、SiO粒子を分
散させている2−プロパノールは溶媒の一部として用い
た。メチルトリエトキシシラン、溶媒(エタノール、2
−プロパノールのモル比が1:1)、水、塩酸のモル比
が1:5:4:0.005、粒子濃度が10重量%とな
るように原料を混合し、メチルトリエトキシシランを加
水分解、縮合重合させることによりゾルを得た。つい
で、このゾル中にアルミニウム基板、アルミニウム
表面にポリエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネ
ル表面材、およびソーダライムガラス基板を浸漬し、
2mm/秒の引き上げ速度で引き上げ、乾燥させた後、
200℃で5分間焼成し、〜の基材の表面に光触媒
皮膜用下地膜を形成した。
【0065】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜厚は
0.8μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な凹凸
が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成されてい
た。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.03
〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるいは凸
部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.1μ
mであった。さらに、凹凸層の表面に、微細な凹凸に加
えて相当直径0.05〜0.1μm、深さ0.05〜
0.1μmの孔が5×10個/cm以上形成されて
いた。この孔の周面および底面全体にも微細な凹凸が形
成されて粗面化されており、孔の周面および底面の表面
粗さは、最大高さRmaxで0.03〜0.05μmで
あり、凹部から最近接の凹部あるいは凸部から最近接の
凸部までの間隔は、0.03〜0.05μmであった。
【0066】実施例2 ゾル中にアルミニウム基板、アルミニウム表面にポ
リエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を浸漬した後、
〜の基材を引き上げるさいの引上げ速度を20mm/
秒とした他は、上記実施例1と同様にして〜の基材
の表面に光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0067】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜厚は
2.6μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な凹凸
が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成されてい
た。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.03
〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるいは凸
部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.1μ
mであった。さらに、凹凸層の表面に、微細な凹凸に加
えて相当直径0.2〜0.5μm、深さ0.2〜0.5
μmの孔が3.8×10個/cm、相当直径0.0
5〜0.1μm、深さ0.05〜0.1μmの孔が5×
10個/cm以上形成されていた。これらの孔の周
面および底面全体にも微細な凹凸が形成されて粗面化さ
れており、孔の周面および底面の表面粗さは、最大高さ
maxで0.03〜0.1μmであり、凹部から最近
接の凹部あるいは凸部から最近接の凸部までの間隔は、
0.03〜0.1μmであった。
【0068】実施例3 液組成物中の溶媒として、2−プロパノールを単独で用
いた他は、上記実施例1と同様にしてアルミニウム基
板、アルミニウム表面にポリエステルを主成分とする
皮膜を塗布したパネル表面材、およびソーダライムガ
ラス基板の表面に光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0069】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜厚は
0.6μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な凹凸
が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成されてい
た。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.03
〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるいは凸
部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.1μ
mであった。さらに、凹凸層の表面に、微細な凹凸に加
えて相当直径0.05〜0.1μm、深さ0.05〜
0.1μmの孔が5×10個/cm以上形成されて
おり、この孔の周面および底面全体にも微細な凹凸が形
成されて粗面化されており、孔の周面および底面の表面
粗さは、最大高さRmaxで0.03〜0.05μmで
あり、凹部から最近接の凹部あるいは凸部から最近接の
凸部までの間隔は、0.03〜0.05μmであった。
【0070】実施例4 ゾル中にアルミニウム基板、アルミニウム表面にポ
リエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を浸漬した後、
〜の基材を引き上げるさいの引上げ速度を5mm/秒
とした他は、上記実施例3と同様にして〜の基材の
表面に光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0071】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜厚は
1.3μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な凹凸
が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成されてい
た。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.03
〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるいは凸
部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.1μ
mであった。さらに、凹凸層の表面に、微細な凹凸に加
えて相当直径0.1〜0.2μm、深さ0.1〜0.2
μmの孔が1.8×10個/cm、相当直径0.0
5〜0.1μm、深さ0.05〜0.1μmの孔が5×
10個/cm以上形成されていた。これら孔の周面
および底面全体にも微細な凹凸が形成されて粗面化され
ており、孔の周面および底面の表面粗さは、最大高さR
maxで0.03〜0.07μmであり、凹部から最近
接の凹部あるいは凸部から最近接の凸部までの間隔は、
0.03〜0.07μmであった。
【0072】実施例5 ゾル中にアルミニウム基板、アルミニウム表面にポ
リエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を浸漬した後、
〜の基材を引き上げるさいの引上げ速度を20mm/
秒とした他は、上記実施例3と同様にして〜の基材
の表面に光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0073】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜厚は
2.8μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な凹凸
が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成されてい
た。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.03
〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるいは凸
部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.1μ
mであった。さらに、凹凸層の表面に、微細な凹凸に加
えて相当直径0.2〜0.5μm、深さ0.2〜0.5
μmの孔が1.1×10個/cm、相当直径0.0
5〜0.1μm、深さ0.05〜0.1μmの孔が5×
10個/cm以上形成されていた。これら孔の周面
および底面全体にも微細な凹凸が形成されて粗面化され
ており、孔の周面および底面の表面粗さは、最大高さR
maxで0.03〜0.1μmであり、凹部から最近接
の凹部あるいは凸部から最近接の凸部までの間隔は、
0.03〜0.1μmであった。
【0074】実施例6 液組成物中の溶媒として、1−ブタノールと2−プロパ
ノールとをモル比で48:52となるように混合したも
のを用いた他は、上記実施例1と同様にしてアルミニ
ウム基板、アルミニウム表面にポリエステルを主成分
とする皮膜を塗布したパネル表面材、およびソーダラ
イムガラス基板の表面に光触媒皮膜用下地膜を形成し
た。
【0075】アルミニウム基板の表面に形成された金属
光触媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜
厚は0.8μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な
凹凸が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成され
ていた。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.
03〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるい
は凸部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.
1μmであった。
【0076】実施例7 ゾル中にアルミニウム基板、アルミニウム表面にポ
リエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を浸漬した後、
〜の基材を引き上げるさいの引上げ速度を20mm/
秒とした他は、上記実施例6と同様にして〜の基材
の表面に光触媒皮膜用下地膜を形成した。
【0077】アルミニウム基板の表面に形成された金属
光触媒皮膜用下地膜をSEMにより観察したところ、膜
厚は2.4μmであり、緻密層上に、表面全体に微細な
凹凸が形成されて粗面化された凹凸層が一体に形成され
ていた。凹凸層の表面粗さは、最大高さRmaxで0.
03〜0.1μmであり、凹部から最近接の凹部あるい
は凸部から最近接の凸部までの間隔は、0.03〜0.
1μmであった。
【0078】比較例 メチルトリエトキシシランと、2−プロパノールと、水
と、塩酸とよりなり、かつ各成分の量がモル比で1:
5:4:0.005である液組成物を用意した。そし
て、この液組成物を混合し、メチルトリエトキシシラン
の加水分解、縮合重合によりゾルを得た。ついでこのゾ
ル中にアルミニウム基板、アルミニウム表面にポリ
エステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面材、
およびソーダライムガラス基板を浸漬し、5mm/秒
の引き上げ速度で引き上げ、乾燥させた後、200℃で
5分間焼成し、〜の基材の表面にそれぞれ光触媒皮
膜用下地膜を形成した。
【0079】アルミニウム基板の表面に形成された光触
媒皮膜用下地膜を観察したところ、膜厚は0.8μmで
あった。また、皮膜全体が緻密であって、表面は全体に
平滑であった。
【0080】評価試験 上記実施例と比較例において、塗布した下地膜について
耐屈曲性試験、下地膜への光触媒皮膜の密着性試験、お
よび下地膜へ塗布した光触媒皮膜の消臭試験を行なっ
た。
【0081】なお、耐屈曲性試験では、下地膜を塗布す
る基材として、アルミニウム基板、およびアルミニ
ウム表面にポリエステルを主成分とする皮膜を塗布した
パネル表面材を用い、下地膜への光触媒皮膜の密着性試
験では、アルミニウム基板、アルミニウム表面にポ
リエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を用いた。さら
に、消臭試験では、ソーダライムガラス基板の表面に
光触媒皮膜用下地膜を介して光触媒皮膜を塗布したサン
プルについて行なった。
【0082】耐屈曲性(加工性)試験は、JIS K5
400の方法に従い、直径2mmの心棒を用いて180
°曲げ、目視により割れ、剥がれがないかを確認して、
評価した。得られた耐屈曲性試験の結果を下記表1にま
とめて示した。
【0083】また、下地膜への光触媒皮膜の密着性試験
は、以下の方法により実施した。
【0084】光触媒皮膜形成用ゾルの原料として、アナ
ターゼ型二酸化チタン粒子(商品名ST−21、石原産
業株式会社製)、テトラエトキシシラン、2−プロパノ
ール、水、塩酸を用意した。これらの割合は、テトラエ
トキシシラン:2−プロパノール:水:塩酸=1:5:
4:0.005(モル比)とし、TiOの濃度が10
重量%になるように混合し、攪拌して、光触媒皮膜形成
用ゾルを調製した。
【0085】つぎに、このゾルに、実施例1〜7および
比較例において光触媒皮膜用下地膜を形成した3種の基
材すなわちアルミニウム基板、アルミニウム表面に
ポリエステルを主成分とする皮膜を塗布したパネル表面
材、およびソーダライムガラス基板を浸漬し、20m
m/秒の引き上げ速度で引き上げ、室温で5分間乾燥さ
せて、光触媒皮膜を形成し、乾燥時の皮膜剥離の有無で
評価した。得られた下地膜への光触媒皮膜の密着性試験
の結果を下記表1にまとめて示した。
【0086】なお、上記において、光触媒皮膜が剥離し
なかったサンプルの中で、ソーダライムガラス基板に塗
布したものについては、さらに200℃にて5分間熱処
理し、消臭試験用サンプルとした。
【0087】消臭力を確認するための消臭試験は、光触
媒皮膜を塗布した基材(有効面積200cm)をポリ
フッ化ビニル製の袋に固定した後、袋をヒートシールに
より密封し、ついでアンモニア500ppmを含んだ空
気3リットルを封入し、この上から20Wブラックライ
トにより光を照射し、光照射下開始から24時間後にガ
ス検知管により袋内のガス濃度を測定する方法により行
ない、24時間後のアンモニア除去率%を測定した。
【0088】なお、基材とブラックライトの距離は30
cmとし、光触媒皮膜を塗布した基材を入れずに同様に
光照射後のガス濃度を測定し、これを空試験とした。形
成した皮膜の消臭試験の結果を、下記表1に示した。
【0089】
【表1】 上記の表1から明らかなように、実施例1〜7では、耐
屈曲性(加工性)にすぐれ、上塗膜である光触媒皮膜を
塗布できる下地膜が形成できることが分かる。また実施
例1〜7で得られた光触媒皮膜は、優れた消臭効果を示
す。これに対し、比較例では、耐屈曲性(加工性)は優
れているが、光触媒皮膜の密着性は劣るものであった。
【0090】なお、消臭試験において、空試験では、ア
ンモニアの除去率が34%であった。これは試験に用い
た袋に、アンモニアが吸着するためと考えられる。
【0091】実施例8 光触媒皮膜用下地膜が形成されている上記実施例1〜7
基材の下地膜表面に、下記の光触媒皮膜形成用ゾルを用
いて、光触媒皮膜を形成した。
【0092】すなわち、二酸化チタンとして塩素法で調
製した平均一次粒子径28nmの微粒子二酸化チタン
(アナターゼ型84%、ルチル型16%)、その他の原
料としてメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシ
ラン、2−プロパノール、水、塩酸を用意した。これら
の割合は、メチルトリエトキシシラン:テトラエトキシ
シラン:2−プロパノール:水:塩酸=0.5:0.
5:5:4:0.005(モル比)とし、二酸化チタン
濃度10重量%になるように混合し、攪拌して、光触媒
皮膜形成用ゾルを調製した。
【0093】つぎに、このゾルに上記実施例1〜7の下
地膜が形成されている基材を浸漬し、2mm/秒の引き
上げ速度で引き上げ、5分間室温で乾燥させた後、5分
間200℃で熱処理し、光触媒皮膜を形成した。得られ
た光触媒皮膜の乾燥時の皮膜剥離の有無で密着性を評価
したところ、いずれの場合も下地膜への光触媒皮膜の密
着性は充分にすぐれたものであった。
【0094】
【発明の効果】本発明による光触媒皮膜用下地膜の形成
方法は、上述のように、R nSi(OR
4−n(但し式中Rはアルキル基、フェニル基等の疎
水基であり、Rはアルキル基であり、n=1または2
である)と、溶媒と、水と、酸触媒とよりなる液組成物
に、SiO微粒子を混ぜ合わせたものを攪拌すること
により得たゾルを基材に塗布して乾燥させることにより
ゲル膜を形成し、その後焼成することにより、SiO
を主成分とするとともに、緻密層上に凹凸層が一体に形
成され、凹凸層の表面全体に微細な凹凸が形成されて粗
面化されている光触媒皮膜用下地膜を形成することを特
徴とするもので、本発明の光触媒皮膜用下地膜の形成方
法によれば、固体として残る成分、すなわちRnSi
(OR4−nが加水分解し、縮合重合した生成物お
よび表面がRnSi(OR4−nからの疎水基を
持つ生成物で覆われたSiO微粒子と水とが膜乾燥時
にはじき合うことにより、SiOを主成分とするとと
もに、緻密層上に凹凸層が一体に形成されている光触媒
皮膜用下地膜が1回の工程で形成される。そして、本発
明の光触媒皮膜用下地膜の形成方法によれば、ゾル−ゲ
ル法によるため、低温焼成が可能であり、様々な基材に
密着性よく無機系皮膜を塗布でき、加工性に優れた下地
膜を形成することができるとともに、光触媒皮膜と基材
の間に介在するバリヤー層として必要な緻密な内層と、
光触媒皮膜を密着性よく塗布するための粗い表層を同時
に具備した下地膜を形成することができるという効果を
奏する。
【0095】また、本発明の方法により製造された光触
媒皮膜用下地膜は、SiO を主成分とするとともに、
ゾル−ゲル法により形成されており、緻密層上に凹凸層
が一体に形成され、凹凸層の表面全体に微細な凹凸が形
成されて粗面化されているもので、表面に凹凸層を有す
るため、下地膜表面が平滑であると剥離するような光触
媒皮膜であっても、凹凸層の機械的密着力により均一に
塗布することができる。従って、例えばバリヤー層とし
て下地膜を必要としない基材に対しても、上塗膜である
光触媒皮膜の密着力を向上させるために好適に利用する
ことができる。そして、上記光触媒皮膜用下地膜によれ
ば、緻密層の働きにより、例えば基材がソーダライムガ
ラスである場合に、上塗膜である光触媒皮膜にナトリウ
ムが拡散してTiO の光触媒効果が低下するのを、防
止することできる。また、基材がプラスチックスである
場合にも、上記下地膜がプラスチックスと光触媒皮膜の
間に存在することにより、プラスチックスが直接二酸化
チタンに触れて分解されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造された光触媒皮膜用下
地膜の1実施形態を示す一部切欠き拡大斜視図である。
【図2】本発明の方法により製造された光触媒皮膜用下
地膜の他の実施形態を示す一部切欠き拡大斜視図であ
る。
【符号の説明】
1,10 光触媒皮膜用下地膜 2 緻密層 3 凹凸層
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 183/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 nSi(OR 4−n (但し式中
    はアルキル基、フェニル基等の疎水基であり、R
    はアルキル基であり、n=1または2である)と、溶媒
    と、水と、酸触媒とよりなる液組成物に、SiO 微粒
    子を混ぜ合わせたものを攪拌することにより得たゾルを
    基材に塗布して乾燥させることによりゲル膜を形成し、
    その後焼成することにより、SiOを主成分とすると
    ともに、緻密層上に凹凸層が一体に形成され、凹凸層の
    表面全体に微細な凹凸が形成されて粗面化されている
    触媒皮膜用下地膜を形成することを特徴とする、光触媒
    皮膜用下地膜の形成方法
  2. 【請求項2】 nSi(OR 4−n と、溶媒
    と、水と、酸触媒との混合比が、モル比で1:1〜2
    0:1〜20:0.00001〜0.3である、請求項
    1記載の光触媒皮膜用下地膜の形成方法
  3. 【請求項3】 原料全体中のSiO 微粒子の量が40
    重量%以下である、請求項1または2記載の光触媒皮膜
    用下地膜の形成方法
  4. 【請求項4】 形成された光触媒皮膜用下地膜の膜厚が
    0.1〜10μmである、請求項1記載の光触媒皮膜用
    下地膜の形成方法
  5. 【請求項5】 形成された光触媒皮膜用下地膜の凹凸層
    の表面粗さが最大高さRmaxで0.03〜3μmであ
    り、凹部から最近接の凹部あるいは凸部から最近接の凸
    部までの間隔が0.03〜10μmとなされている、請
    求項1記載の光触媒皮膜用下地膜の形成方法
  6. 【請求項6】 形成された光触媒皮膜用下地膜の凹凸層
    の表面に、微細な凹凸に加え、さらに相当直径0.03
    〜10μm、深さ0.03〜3μmの孔を有しており、
    この孔の周面および底面全体にも微細な凹凸が形成され
    て粗面化されており、孔の周面および底面の表面粗さが
    最大高さRmaxで0.01〜1μmであり、凹部から
    最近接の凹部あるいは凸部から最近接の凸部までの間隔
    が0.01〜1μmとなされている、請求項1記載の光
    触媒皮膜用下地膜の形成方法
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