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JP3088849B2 - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

インクジェット記録ヘッド

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JP3088849B2
JP3088849B2 JP17243992A JP17243992A JP3088849B2 JP 3088849 B2 JP3088849 B2 JP 3088849B2 JP 17243992 A JP17243992 A JP 17243992A JP 17243992 A JP17243992 A JP 17243992A JP 3088849 B2 JP3088849 B2 JP 3088849B2
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ink
slit
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卓朗 関谷
信彦 梅澤
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Ricoh Co Ltd
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Ricoh Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク流路(ノズル)
先端のインク吐出口から吐出させたインクの小液滴を被
記録体に付着させることにより記録を行なう液体噴射記
録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドに関し、
より詳細には、高速印写を行なうために数百〜数千のイ
ンク吐出口を一つのヘッドに形成することにより印写幅
(インク吐出口列の一端から他端までの幅)を大きくし
た中〜大アレイのインクジェット記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録方法は、記録時にお
ける騒音の発生が無視できる程度に極めて小さいという
点で、オフィス用等として注目されている。その中で、
高速記録が可能であり、しかも、普通紙に特別の定着処
理を必要とせずに記録を行なうことができる、所謂、イ
ンクジェット記録方法は極めて有力な記録方法であり、
これまでにも様々な方式が提案され、又は、既に製品
化、実用化されている。
【0003】このようなインクジェット記録方法は、所
謂インクと称される記録液体の小液滴(インク滴)を飛
翔させ、このインク滴を被記録体に付着させて記録を行
なうものであって、例えば、本出願人が特公昭56−9
429号公報として出願している。ここで、この特公昭
56−9429号公報に記載された発明を要約すれば、
液室内のインクを加熱して気泡を発生させることにより
インクに圧力上昇を生じさせ、このインクを微細なノズ
ルの先端のインク吐出口から吐出させて記録を行なうも
のである。
【0004】その後この原理を利用して多くの発明がな
され、その一つとして、例えば、特公昭62−5967
2号公報に記載されている発明が知られている。これ
は、アルミナ等のセラミックス、金属、プラスチックス
等を形成して得られる基板にインクを吐出させるための
エネルギー源としての発熱素子や圧電素子等のエネルギ
ー作用部を設置し、その基板上に感光性樹脂層を塗布法
やラミネート法等によって設けた後、この感光性樹脂層
に通常行なわれているフォトリソグラフィーの手段によ
ってインク流路溝を形成し、ついで、インク流路溝が設
けられた基板に上蓋を接合してインクジェット記録ヘッ
ドを製作するというものである。また、特開昭57−4
3876号公報に記載されている発明が知られており、
これは、上述した特公昭62−59672号公報に記載
された発明から一歩進んで、上蓋を接合した後、ダイシ
ング法によって切断することによりインク吐出口を形成
するという点にまで言及しており、インクジェット記録
ヘッドの製作方法がより明確になっている。
【0005】しかしながら、上述した公報においては、
基板上にフォトリソグラフィー等の技術を用いてインク
ジェット記録ヘッドとして必要な構成(インク流路溝や
インク吐出口等)を形成する方法についての記載はある
が、具体的にどの位の大きさのインクジェット記録ヘッ
ドを作るのかという記載はない。
【0006】ところで、近年は高速記録の要求が出てき
ており、数百〜数千のインク吐出口を一つのヘッドに形
成して印写幅を大きくした中〜大アレイのインクジェッ
ト記録ヘッドが望まれている。ここで、上述した公報に
記載された発明は、中〜大アレイのインクジェット記録
ヘッドを製作する場合にも利用できると考えられるが、
上述した公報には中〜大アレイのインクジェット記録ヘ
ッドを製作する場合に適用できるという記載がなく、適
用した場合にどのような問題が出てくるかは不明であ
る。
【0007】一方、特開平2−192954号公報の第
8図に開示されているようなインクジェット記録ヘッド
が知られており、その構成を要約すると、樹脂の成形に
よって形成された天板をヒーターボードと一体化して支
持体の上にのせ、さらに、天板の上部から押えバネの付
勢力を作用せさることにより天板とヒーターボードとが
密着状態となったインクジェット記録ヘッドを完成する
というものである。この方法は、インクジェット記録ヘ
ッドの組立てを容易にし、コスト面からみても多くの有
利な点を有している。しかし、これもシリアルプリンタ
に適用されるような印写幅の狭い小アレイのインクジェ
ット記録ヘッドに好適に適用される技術であり、中〜大
アレイのインクジェット記録ヘッドに適用した際に発生
する問題点については未知である。
【0008】また、特公平2−57506号公報には、
上述のような所謂小アレイのインクジェット記録ヘッド
を複数個配列することにより印写幅を用紙幅全域となる
ようにしたフルマルチヘッドの構成が示されており、こ
の技術を利用すれば、印写幅が十分広いので高速記録と
いう要求は満足される。しかし、小アレイのインクジェ
ット記録ヘッドを複数個精度良く配列するという技術が
必要であり、組立てコスト、組立て精度の面から問題が
ある。このような問題を解決するためには、小アレイの
インクジェット記録ヘッドを組合せたフルマルチヘッド
の構成をとるのではなく、一つの中〜大アレイのインク
ジェット記録ヘッドでその印写幅が用紙幅全体となるよ
うな構成をとればよい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、中〜大アレイ
のインクジェット記録ヘッドを採用した場合には、従来
未経験の技術課題があり、例えば、熱膨張である。この
ような中〜大アレイのインクジェット記録ヘッドは、そ
の目的や仕様にもよるが、100〜300mm程度の印
写幅を有し、インク吐出口の配列密度も最低で200d
pi(dot par inch)、好ましくは400dpi程度とな
り、隣接するインク吐出口間距離が127μm又は6
3.5μm或いはそれ以下となる。
【0010】ここで、インクジェット記録ヘッドは、上
述した各公報に開示されたようにインクに熱エネルギー
を与えるエネルギー作用部や電極を形成した基板に対し
て蓋基板を接合させることにより形成されているが、こ
れらの基板と蓋基板とは異なる材料で形成されているも
のが多く、例えば、基板にはシリコン材が用いられて蓋
基板にはガラス材が用いられるというように、基板を形
成する材料の線膨張係数と蓋基板を形成する材料の線膨
張係数とが異なる。
【0011】そして、中〜大アレイのインクジェット記
録ヘッドにおいては熱膨張による累積誤差は無視できな
いものとなり、異なる線膨張係数の基板と蓋基板とを接
合させたインクジェット記録ヘッドが反りを生じたり、
基板に形成したエネルギー作用部に対して蓋基板に形成
したインク流路溝が位置ずれを生じたり、さらに、膨張
と収縮の繰り返しにより基板と蓋基板との接合部の気密
性が損なわれてインク漏れが生ずるという欠点がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
多数のエネルギー作用部を長手方向にそって配列した長
尺状の第一基板と、この第一基板上に設けられると共に
前記エネルギー作用部に対応する位置にインク流路溝を
形成した感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層上に積層さ
れた長尺状の第二基板とを有し、前記第一基板と前記第
二基板とを線膨張率が異なる材料で形成したインクジェ
ット記録ヘッドにおいて、前記第二基板における前記感
光性樹脂層に積層された面の反対側の面にこの第二基板
の長手方向と直交する向きに長いスリットを形成した。
【0013】請求項2記載の発明は、多数のエネルギー
作用部を長手方向にそって配列した長尺状の第一基板
と、多数のインク流路溝を形成すると共にこれらのイン
ク流路溝を前記エネルギー作用部に対応するように前記
第一基板上に積層された長尺状の第二基板とを有し、前
記第一基板と前記第二基板とを線膨張率が異なる材料で
形成したインクジェット記録ヘッドにおいて、前記第二
基板における前記インク流路溝が形成された面の反対側
の面にこの第二基板の長手方向と直交する向きに長いス
リットを形成した。
【0014】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の発明において、スリットの深さ寸法を第二基板の厚
さ寸法の1/3以上とした。
【0015】
【作用】請求項1記載の発明では、温度変化によって第
一基板と第二基板とが伸縮した場合、これらの第一・第
二基板は熱膨張差によって反りを生ずるが、第二基板に
形成されたスリットによって熱膨張差が吸収され、発生
する反りが小さくなる。従って、第二基板と感光性樹脂
層との接合状態が安定した状態に維持され、その接合部
分が剥がれてインクが漏れるということが防止される。
【0016】請求項2記載の発明では、温度変化によっ
て第一基板と第二基板とが伸縮した場合、これらの第一
・第二基板は熱膨張差によって反りを生ずるが、第二基
板に形成されたスリットによって熱膨張差が吸収され、
発生する反りが小さくなる。従って、第二基板と第一基
板との接合状態が安定した状態に維持され、その接合部
分が剥がれてインクが漏れるということが防止される。
さらに、第一・第二基板を接着等により接合するのでは
なく、両基板を圧接させた状態とする場合においては、
スリットによる熱膨張差の吸収によって第一基板のエネ
ルギー作用部と第二基板のインク流路溝との対応関係が
維持され、エネルギー作用部とインク流路溝との位置ず
れが防止される。
【0017】請求項3記載の発明では、スリットの深さ
寸法を第二基板の厚さ寸法の1/3以上とすることによ
り、第一基板と第二基板との熱膨張差のスリットによる
吸収が良好に行なわれる。
【0018】
【実施例】本発明の第一の実施例を図1乃至図10に基
づいて説明する。まず、図1は数百〜数千のインク吐出
口1を配列することにより印写幅を100〜300mm
とした中〜大アレイのインクジェット記録ヘッドの外観
を示した斜視図であり、このインクジェット記録ヘッド
は、長尺状の第一基板である発熱体基板2と、長尺状の
第二基板である蓋基板3と、これらの発熱体基板2と蓋
基板3との間に介装された感光性樹脂層であるフォトレ
ジスト層4とによって形成されている。なお、前記発熱
体基板2上にはこの発熱体基板2の長手方向にそって多
数のエネルギー作用部である発熱部5(図2以降に図
示)が形成されており、さらに、この発熱体基板2上に
設けられた前記フォトレジスト層4には前記発熱部5に
対応する位置にインク流路溝6(図6以降に図示)が形
成されている。
【0019】また、前記蓋基板3における前記フォトレ
ジスト層4に積層された面の反対側の面には、この蓋基
板3の長手方向と直交する向きに長いスリット7が複数
個形成されている。なお、これらのスリット7はその深
さ寸法が蓋基板3の厚さ寸法の1/3以上に形成されて
いる。また、前記発熱体基板2はシリコンを材料として
形成され、前記蓋基板3はガラスを材料として形成さ
れ、これらのシリコンとガラスとの線膨張率を比較する
と、20℃の温度条件下において、シリコンの線膨張率
が2.6×10~6、ガラスの線膨張率が8〜10×10
~6である。
【0020】ここで、前記発熱体基板2の形成及び発熱
体基板2上への発熱部5の形成について図2及び図3に
基づいて説明する。なお、本実施例の発熱体基板2は図
1に示したように長尺状であり、その長手方向にそって
多数の発熱部5が形成されているものであるが、図面及
び説明を簡単化するために発熱体基板2の寸法を短く表
わして説明する。まず、シリコン基板2aを拡散炉中で
2 、H2 Oのガスを流しながら800〜1000℃の
高温にさらし、このシリコン基板2aの表面に熱酸化膜
(SiO2 )2bを1〜2μmの厚さに成長させること
によって前記発熱体基板2を形成する。なお、この熱酸
化膜2bは、発熱部5で発生した熱がシリコン基板2a
の方向へ逃げることを防止する蓄熱層として作用する。
【0021】前記熱酸化膜2bの上面には発熱体層8が
形成され、さらに、発熱体層8の上面には共通電極9と
個別電極10とが形成されており、前記発熱体層8にお
ける互いに対向する共通電極9と個別電極10とに挾ま
れた部分が前記発熱部5とされている。なお、前記発熱
体層8及び前記電極9,10の上部には、保護層11
と、耐キャビテーション保護層12と、電極保護層13
とが形成されている。
【0022】つぎに、前記発熱体層8や電極9,10及
び保護層11〜13について説明する。前記発熱体層8
を構成する材料として有用なものには、タンタル−Si
2の混合物、窒化タンタル、ニクロム、銀−パラジウ
ム合金、シリコン半導体、あるいはハフニウム、ランタ
ン、ジルコニウム、チタン、タンタル、タングステン、
モリブデン、ニオブ、クロム、バナジウム等の金属の硼
化物が挙げられる。金属の硼化物のうち最も特性が優れ
ているのは硼化ハフニウムであり、次いで、硼化ジルコ
ニウム、硼化ランタン、硼化タンタル、硼化バナジウ
ム、硼化ニオブの順となっている。前記発熱体層8は、
上記の材料を用いて電子ビーム蒸着やスパッタリング等
の手法を用いて形成することができる。そして、この発
熱体層8の膜厚は、単位時間当たりの発熱量が所望通り
となるように、その面積、材質及び形状、更には実際面
での消費電力等に従って決定されるものであるが、通常
の場合、0.001〜5μm、好適には0.01〜1μ
mとされる。本実施例では、硼化ハフニウム(HfB
2 )を0.2μmの厚さにスパッタリングした。
【0023】前記電極9,10を構成する材料として
は、通常使用されている電極材料の多くのものが有効に
使用され、例えば、Al、Ag、Au、Pt、Cu等が
挙げられる。これらを使用して蒸着等の手法で所定位置
に、所定の大きさ、形状、厚さで設けられている。本実
施例では、Alをスパッタリングにより1.4μmの厚
さに形成した。
【0024】前記保護層11に要求される特性は、前記
発熱部5で発生した熱を後述するインクに効果的に伝達
することを妨げず、かつ、インクから発熱体層8や電極
9,10を化学的、物理的に保護すると共に、インクを
通じて電極9,10間がショートしたり隣接する電極
9,10間が電気的にリークしたりすることを防止する
ことである。保護層11を構成する材料として有用なも
のには、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化マ
グネシウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジ
ルコニウム等が挙げられ、これらは、電子ビーム蒸着や
スパッタリング等の手法を用いて形成することができ
る。また、炭化ケイ素、酸化アルミニウム等のセラミッ
クス材料も好適に用いられる材料である。保護層11の
膜厚は、通常は0.01〜10μm、好適には0.1〜
3μm、最適には0.1〜3μmである。本実施例で
は、スパッタリングによりSiO2 を1.2μmの厚さ
に形成した。
【0025】前記耐キャビテーション保護層12は、前
記発熱部5をインク中における気泡発生によるキャビテ
ーション破壊から保護するもので、タンタルをスパッタ
リングにより0.4μmの厚さに形成したものである。
また、前記電極保護層13は、樹脂を2μmの厚さに形
成したものである。
【0026】つぎに、前記発熱部5を形成した前記発熱
体基板2と前記蓋基板3との間にフォトレジスト層4を
介装してインクジェット記録ヘッドを製作する工程を図
4乃至図9に基づいて説明する。なお、本実施例の発熱
体基板2及び蓋基板3は図1に示したように長尺状であ
るが、図2及び図3における説明と同様に、発熱体基板
2と蓋基板3との寸法を短く表わして説明する。まず、
図4は前記発熱体基板2を示したもので、その上面部に
は前記発熱部5が形成され、発熱部5は前記保護層11
〜13からなる薄膜14により覆われている。
【0027】図5は、前記薄膜14の上部に高粘度(5
00〜1000cp)のフォトレジストを用いてスピン
コーティングやディップコーティング或いはローラーコ
ーティング等の手法により10〜50μmの厚さのフォ
トレジスト層4を形成した工程である。このフォトレジ
スト層4の厚さ寸法は、最終的に形成される前記インク
吐出口1のサイズによって決定されるが、例えば、イン
ク吐出口1のサイズを25×25μmとするためには、
粘度が1000cpのフォトレジストを用いてスピンコ
ーティングにより500rpmで30秒間回転させるこ
とにより25μmの厚さのフォトレジスト層4を得る。
なお、使用するフォトレジストとしては、液状のフォト
レジストの外に、ドライフィルムタイプのものを使用し
てもよい。その場合には、熱と圧力とをかけてドライフ
ィルムタイプのフォトレジストを発熱体基板2上にラミ
ネートすることによってフォトレジスト層を形成する。
【0028】さらに、図5に示すように、フォトレジス
ト層4の上方にインク流路溝6やインク供給室溝(図9
に図示)15を形成するための所定のパターンが形成さ
れたフォトマスク16を載置した後、このフォトマスク
16の上方から露光を行なう。このとき、発熱部5とフ
ォトマスク16のパターンとの位置合わせを周知の手法
で行ない、発熱部5に対応する位置にインク流路溝6を
形成する。
【0029】図6はフォトレジスト層4にインク流路溝
6とインク供給室溝15とを形成した工程を示したもの
で、図5に示した露光を終了した後にフォトレジスト層
4の未露光部分をトリクロルエタン等の所定の有機溶剤
からなる現像液にて溶解除去することにより、インク流
路溝6とインク供給室溝15とが形成される。つぎに、
発熱体基板2上に残されたフォトレジスト層4の露光さ
れた部分の耐インク性向上のため、熱硬化処理(例え
ば、150〜250℃で30分〜6時間加熱)、又は、
紫外線照射(例えば、50〜200mW/cm2 又はそ
れ以上の紫外線強度)を行ない、充分に重合硬化反応を
進める。なお、上記の熱硬化処理と紫外線照射による硬
化処理との双方を行なうことも効果的である。
【0030】図7は、前記インク流路溝6及びインク供
給室溝15を覆う前記蓋基板3の片面に、ドライフィル
ムタイプの紫外線硬化型樹脂17を接合層としてラミネ
ートした工程を示す。
【0031】図8は、発熱体基板2と蓋基板3とをフォ
トレジスト層4を介して積層した工程であり、蓋基板3
にラミネートした紫外線硬化型樹脂17がフォトレジス
ト層4に接合(押圧貼付)されている。なお、この接合
に際しては、透紫外光材料であるガラスにより形成した
蓋基板3の上方から非酸素雰囲気下で紫外線照射(例え
ば、50〜200mW/cm2 又はそれ以上の紫外線強
度)を行ない、紫外線硬化型樹脂17を充分に硬化させ
る。さらに、熱硬化処理(例えば、130〜250℃で
30分〜6時間加熱)するのも有効である。
【0032】図9は、図8に示した工程終了後の状態を
斜視図で示したものであり、インク流路溝6を蓋基板3
で覆うことによりインク流路18が形成され、インク供
給室溝15を蓋基板3で覆うことにより各インク流路1
8に連通されたインク供給室19が形成されている。な
お、前記蓋基板3には、前記インク供給室19内へイン
クを供給するインク供給管(図示せず)が接続されるイ
ンク導入孔20が形成されている。そして、インク流路
18の先端側の部分をB−B線にそって切断することに
より、インクジェット記録ヘッドが完成する。この切断
は、インク流路18における発熱部5とインク吐出口1
との間隔を最適化するために行なうものであり、切断す
るB−B線の位置は適宜決定される。なお、この切断に
際しては、半導体工業で通常採用されているダイシング
法が採用される。
【0033】つぎに、以上の工程を経て製作されたイン
クジェット記録ヘッドによるインク滴21の吐出原理を
図10に基づいて説明する。同図(a)は定常状態であ
り、インク流路18先端のインク吐出口1においては、
インク22の表面張力と外圧とが平衡状態に保たれてい
る。
【0034】同図(b)は、電極9,10への通電によ
り発熱部5が加熱されると共に発熱部5の表面温度が急
上昇し、隣接インク層に沸騰現象が起きて発熱部5の表
面(正確には、発熱部5を覆っている薄膜14の表面)
に微小な気泡23が点在している状態である。
【0035】同図(c)は、発熱部5の全面で急激に加
熱された隣接インク層が瞬時に気化して沸騰膜を作り、
気泡23が成長した状態である。この時、インク流路1
8内の圧力は気泡23が成長した分だけ上昇し、インク
吐出口1での外圧とのバランスがくずれ、インク吐出口
1からインク柱が成長し始める。
【0036】同図(d)は、気泡23が最大に成長した
状態であり、インク吐出口1から気泡23の体積に相当
する分のインク22が押し出される。この時、電極9,
10への通電が既に遮断されており、発熱部5の表面温
度は降下しつつある。即ち、気泡23の体積が最大とな
るタイミングは、電極9,10への通電タイミングから
やや遅れたものとなる。
【0037】同図(e)は、気泡23がインク22等に
より冷却されて収縮を開始した状態である。なお、イン
ク柱の先端部は押し出された速度を保ちつつ前進し、イ
ンク柱の後端部では気泡23の収縮に伴うインク流路1
8内の圧力減少によりインク流路18内へインク22が
逆流し、インク柱にくびれが生ずる。
【0038】同図(f)は、更に気泡23が収縮し、発
熱部5の上面にインク22が接することにより発熱部5
の上面が更に急激に冷却された状態である。インク吐出
口1では外圧がインク流路18内の圧力より高い状態と
なるためにメニスカスが大きくインク流路18内に入り
込んでいる。一方、インク柱の先端部はインク滴21と
なり、インク吐出口1に対向する位置に設けられている
記録紙(図示せず)の方向へ5〜10m/sの速度で吐
出する。
【0039】同図(g)は、インク滴21の吐出が終了
した後にインク流路18内にインク22が毛管現象によ
って再び供給され、同図(a)に示した状態と同じ状態
に戻った状態であり、気泡23は完全に消滅している。
【0040】つぎに、前記蓋基板3への前記スリット7
の形成方法について説明する。このスリット7の形成は
ダイシングソーによって容易に形成できるが、より好ま
しくは、エッチングによって形成するのが良い。これ
は、ガラスをダイシングソーで溝加工を行なった際に、
目に見えない加工変質層がダイシングの加工面の下深く
に発生し、その加工変質層によってガラス製の蓋基板3
が割れやすくなるためである。しかし、エッチングによ
ってスリット7を形成した場合には、このような加工変
質層が発生せず、従って、ガラス製の蓋基板3が割れや
すくなるということがない。ガラスに対するエッチング
に際しては、フォトセラム(コーニング社の感光性ガラ
ス)を用いてもよいが、通常のガラスにフォトリソグラ
フィを施し、フッ酸等のエッチング液によってエッチン
グを行なってもよい。
【0041】このような構成において、本実施例のイン
クジェット記録ヘッドは、図1に示したように数百〜数
千のインク吐出口1が形成されると共に印写幅が100
〜300mm有り、発熱体基板2と蓋基板3とはインク
吐出口1の配列方向にそって長尺状に形成されている。
【0042】また、発熱体基板2はシリコンにより形成
されると共に蓋基板3はガラスにより形成されており、
その線膨張率は、20℃の温度条件下において、シリコ
ンの線膨張率が2.6×10~6、ガラスの線膨張率が8
〜10×10~6である。ここで、印写幅がA4サイズ用
紙の横幅に合わせた210mm、インク吐出口1の配列
密度が400dpiのインクジェット記録ヘッドを想定
した場合、昼夜の温度差が20℃であるとすると、発熱
体基板2と蓋基板3との熱膨張による差は、210×
(9×10~6−2.6×10~6)×20=0.0268
8(mm)となる(但し、ガラスの線膨張率を9×10
~6とした。)。
【0043】一方、配列密度が400dpiのインク吐
出口1のサイズは、一辺が25〜30μmの正方形であ
り、また、発熱部5のサイズもその短手方向(インク吐
出口1の配列方向)が25〜30μmである。さらに、
隣接するインク吐出口1間の距離は、63.5μmであ
る。つまり、熱膨張差がほぼ1インク吐出口分となり、
無視することができない。現実には、単純に線膨張率の
違いで計算することはできないし、また、両基板2,3
の間にはフォトレジスト層4があり、それが両基板2,
3を互いに接合しているため、単純に1インク吐出口分
横へずれるということはないが、両基板2,3は微視的
な反りを生じる。そして、この反りによってフォトレジ
スト層4が引っ張られ、この引っ張りが最も影響する両
端のインク吐出口1ではひずみや変形が生ずる。また、
このような反りが昼夜の温度差によって毎日繰り返され
るため、両基板2,3を接合しているフォトレジスト層
4及び紫外線硬化型樹脂膜17に疲労が加わり、耐久性
が低下して接合部分が剥がれやすくなる。
【0044】しかし、本実施例では、蓋基板3に複数個
のスリット7を形成し、しかも、これらのスリット7の
深さ寸法を蓋基板3の厚さ寸法の1/3以上としたた
め、これらのスリット7によって発熱体基板2との熱膨
張差が良好に吸収される。従って、温度変化によって生
ずる両基板2,3の反りが小さくなり、両端のインク吐
出口1におけるフォトレジスト層4のひずみや変形も軽
減される。そして、両基板2,3を接合しているフォト
レジスト層4や紫外線硬化型樹脂膜17の接合部分が剥
がれてインク漏れを起こすということが防止される。従
って、出荷前のインクジェット記録ヘッドを昼夜の温度
差が大きい倉庫等に保管した場合でも、それらのインク
ジェット記録ヘッドの品質が維持される。
【0045】なお、本実施例では蓋基板2の奥行き方向
の全体に渡ってスリット7を形成したものを例に挙げて
説明したが、図11に示すように、蓋基板2の奥行き方
向の両端が閉じられた状態のスリット24を形成しても
よい。
【0046】ついで、本発明の第二の実施例を図12乃
至図16に基づいて説明する。なお、図1乃至図10に
おいて説明した部分と同一部分は同一符号で示し、説明
も省略する。まず、図12は数百〜数千のインク吐出口
25を配列することにより印写幅を100〜300mm
とした中〜大アレイのインクジェット記録ヘッドの外観
を示した斜視図であり、このインクジェット記録ヘッド
は、長尺状の第一基板である発熱体基板2と、長尺状の
第二基板である流路基板26とを接合することによって
形成されている。なお、前記発熱体基板2上にはこの発
熱体基板2の長手方向にそって多数の発熱部5が形成さ
れている。一方、前記流路基板26の片面には、前記発
熱部5に対応するインク流路溝27とこれらのインク流
路溝27が連通されたインク供給室溝28とが形成され
ている。
【0047】さらに、前記流路基板26における前記イ
ンク流路溝27が形成された面の反対側の外側部には、
この流路基板26の長手方向と直交する向きに長いスリ
ット29が複数個形成されている。なお、これらのスリ
ット29はその深さ寸法が流路基板26の厚さ寸法の1
/3以上に形成されている。また、前記発熱体基板2は
シリコンを材料として形成され、前記流路基板26は樹
脂を材料として形成されている。
【0048】ここで、前記発熱体基板2と前記流路基板
26との構造を図13乃至図15に基づいて説明する。
なお、本実施例の発熱体基板2と流路基板26とは図1
2に示したように長尺状であるが、図面及び説明を簡単
化するために発熱体基板2と流路基板26との寸法を短
く表わして説明する。まず、発熱体基板2は図1に示し
た発熱体基板2と同じものであり、その上面には電極
9,10や発熱部5が形成されている。つぎに、前記流
路基板26は樹脂を材料として一体成形されたもので、
使用される樹脂としては、耐インク性に優れたポリサル
フォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキ
サイド、ポリプロピレン等が使用される。その中でも、
成形のために流動性のよい(melt flow rateが10g/
10分以上)の材料を用いることが好ましい。成形機
は、市販の射出成形機を用いるが、微細な形状を精度よ
く転写するために、射出圧力が2000kg/cm2
上の能力を有する成形機が望ましい。また、樹脂の流動
性を高めるため、シリンダ温度は400℃以上に加熱す
る。金型は、図15に示した流路基板26と対になる形
状の金型を用いる。また、転写性を良くするため、金型
の材料の熱変形温度以上に加熱できるようにヒーター、
熱触媒等を金型内に設ける。なお、金型の樹脂充填部を
真空ポンプ等により減圧し、転写性を高めることも有効
である。
【0049】つぎに、図16は、ヘッド保持基板30上
に前記発熱体基板2と前記流路基板26とを順次積層
し、さらに、押圧部材として断面がM字状を有する押え
バネ31でこれらの基板2,26,30を圧着して組み
立てる工程を示した分解斜視図である。前記発熱体基板
2と前記ヘッド保持基板30との間には、エポキシ系の
接着剤32が使用されている。上述のように積層された
基板2,26,30に対しては、流路基板26の上部側
から押えバネ31によって発熱体基板2の平面に対して
略垂直な方向の力が加えられる。この押えバネ31とし
ては、例えば、バネ用のリン青銅やステンレス板を用い
て形成することができる。そして、その両端下部に設け
た爪33をヘッド保持基板30に形成した穴部34に嵌
入させて押えバネ31とヘッド保持基板30とを係合さ
せることで、流路基板26の上部から機械的な圧力が発
熱体基板2の平面に対して略垂直な方向に加わるように
なる。これによって、発熱体基板2と流路基板26との
充分な密着状態が得られる。なお、この押えバネ31に
は、流路基板26に形成されたインク導入孔20に接続
されるインク供給管(図示せず)が挿通される穴35が
形成されている。
【0050】ここで、押えバネ31を用いることによっ
て発熱体基板2と流路基板26とは充分な密着状態が得
られるが、必要に応じて両基板2,26の間にインクの
密封性を高めるために接着剤を介在させてもよい。その
際用いられる接着剤としては、インクに対する溶出が極
めて少ない接着剤、例えば、XB3052(チバガイギ
ー製)というエポキシ接着剤が使用できる。この接着剤
の好適な硬化条件は、80℃雰囲気中で8時間放置する
ことによって得られる。
【0051】つぎに、前記流路基板26への前記スリッ
ト29の形成方法について説明する。樹脂製の流路基板
26へのスリット29の形成は、流路基板26を成形す
る際に同時に一体成形することが望ましい。これは、樹
脂に対してダイシング加工を行なうと、加工時の熱によ
って樹脂が溶け、ダイシング加工面がきれいに加工でき
ないからである。また、ダイシング加工という工程が追
加されることにより、加工コスト高にもなるためであ
る。この点、一体成形加工はインク流路溝27やインク
供給室溝28と共に成形できるので、加工コストが低減
される。
【0052】なお、流路基板26をガラスやセラミック
ス等によって形成することもできるが、その場合には、
スリット29は上述したようにダイシングソーやエッチ
ングにより形成する。
【0053】このような構成において、発熱体基板2と
流路基板26とを接着剤を用いて接合させた場合には、
第一の実施例において説明した場合と同様に、両基板
2,26の線膨張率が異なるために温度変化によって両
基板2,26は微視的な反りを生じ、その繰り返しによ
って接合部分が剥がれやすくなる。
【0054】一方、発熱体基板2と流路基板26とを接
着剤を用いて完全に接合させるのではなく、押えバネ3
1によって両基板2,26を押え付けただけの場合に
は、両基板2,26は温度変化に伴って伸縮を繰り返す
が、反りを生ずることはない。しかし、シリコンを材料
とした発熱体基板2と樹脂を材料とした流路基板26と
の線膨張率は1桁又は2桁の違いがあるため、両基板
2,26のずれ量は非常に大きくなり、両端側のインク
吐出口25ではインク流路溝27と発熱部5とが対応し
なくなってインク滴21の吐出を行なえなくなる。
【0055】しかし、流路基板26に複数個のスリット
29を形成し、しかも、これらのスリット29の深さ寸
法を流路基板26の厚さ寸法の1/3以上としたため、
これらのスリット29によって発熱体基板2との熱膨張
差が良好に吸収される。従って、発熱体基板2と流路基
板26とを接着剤を用いて完全に接合させた場合には、
温度変化によって生ずる両基板2,26の反りが軽減さ
れ、両基板2,26の接合部分が剥がれてインク漏れを
起こすということが防止される。一方、両基板2,26
を押えバネ31によって押え付けただけの場合において
は、温度変化によって生ずる発熱部5とインク流路溝2
7とのずれ量が小さくなり、発熱部5とインク流路溝2
7との位置ずれによってインク吐出口25からのインク
滴21の吐出が不可能になるということが防止される。
【0056】なお、本実施例では流路基板26の奥行き
方向の全体に渡ってスリット29を形成したものを例に
挙げて説明したが、図11に示した場合と同様に、流路
基板26の奥行き方向の両端が閉じられた状態のスリッ
トとしてもよい。
【0057】また、本実施例では、基板2,26,30
を積層してインクジェット記録ヘッドを完成させると、
インク流路溝27の先端部がそのままインク吐出口25
となるように構成したが、インク滴21の吐出をより一
層安定させるためには、インク流路溝27の先端部に図
17又は図19に示すようなインク吐出口36を設けて
もよい。
【0058】まず、図17に示した流路基板26aは耐
インク性に優れたポリサルフォン、ポリエーテルサルフ
ォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレン等の
樹脂を用いて形成されており、インク吐出口36が形成
された吐出口プレート部37が一体形成されている。こ
こで、インク流路溝27やインク供給室溝28及びイン
ク吐出口36の形成方法について説明する。インク流路
溝27とインク供給室溝28とについては、それと逆パ
ターンの微細溝を切削等の手法により形成した金型によ
り樹脂を成形し、これによって、流路基板26aにイン
ク流路溝27とインク供給室溝28とを成形することが
できる。インク吐出口36については、インク吐出口3
6の形状の駒、例えば、円筒形スライド駒を金型内のイ
ンク吐出口形成部分に配置し、金型内に樹脂を充填して
この樹脂が硬化した後に駒をスライドさせて逃がすこと
により形成することができる。
【0059】具体的には、インク流路溝27の幅を30
〜50μm、隣接するインク流路溝27同士の間隔を2
0〜40μm、インク吐出口36の穴径を20〜40μ
mの流路基板26aを得た。そして、このような流路基
板26aと発熱体基板2とを図18に示したように接合
させることにより、インクジェット記録ヘッドを形成す
る。
【0060】なお、インク吐出口36を形成する他の方
法としては、金型内ではインク吐出口36を有しない状
態の吐出口プレート部37を形成し、金型内から取出し
た後にオリフィスプレート部37にレーザ装置等により
紫外線を照射して樹脂を蒸発・除去させることによって
インク吐出口36を形成する方法がある。このとき、エ
キシマレーザを適切に用いると、マスクパターンにそっ
た精密な加工を簡単に行なえる。
【0061】また、図19は、インク吐出口36を形成
した吐出口プレート部37aを予め形成しておき、流路
基板26を金型により形成する際にこの吐出口プレート
部37aを金型内に挿入してインサート成形したもので
ある。なお、流路基板26を金型により成形した後にこ
の流路基板26に吐出口プレート部37aを接着しても
よい。
【0062】ついで、本発明の第三の実施例を図20に
基づいて説明する。本実施例は、図1に示した蓋基板3
におけるスリット7が形成された面に樹脂38をコーテ
ィングすると共にスリット7内に樹脂38を充填させた
ものである。図21はその変形例で、スリット7内へ樹
脂38を充填しただけのものである。
【0063】このような構成において、蓋基板3にスリ
ット7を形成することにより蓋基板3の機械的強度が低
下するが、このスリット7に樹脂38を充填することに
より蓋基板3の機械的強度が補強される。なお、充填す
る樹脂38としてはポリエチレン等のような軟質の樹脂
を用いることが好ましい。これは、蓋基板3の熱膨張を
スリット7で吸収する際に、軟質の樹脂の場合には容易
に変形しやすく、スリット7の上部に膨らんだ形になっ
て容易に熱膨張によりスリット7の容積変化を吸収でき
るためである。
【0064】また、樹脂38に代えてゴムを充填しても
よく、ゴムは容易に弾性変形するために熱膨張によるス
リット7の容積変化に対応することができる。
【0065】なお、本実施例では、蓋基板3に形成した
スリット7に樹脂38やゴムを充填したものを例に挙げ
て説明したが、図12に示した流路基板26のスリット
29に樹脂38やゴムを充填すれば、スリット29を形
成することによって一旦は低下した流路基板26の機械
的強度が補強される。
【0066】つぎに、スリット7,24,29の深さ寸
法と、スリット7,24,29の熱膨張吸収作用との関
係について第一の実験を行なった。これは、スリット
7,24,29の深さをどの程度にすればスリット7,
24,29の熱膨張吸収作用が発揮されるかということ
を調べるもので、この実験を行なうために、図22に示
した疑似ヘッド39を形成した。なお、この疑似ヘッド
39は、発熱体基板2に相当するシリコン板39aと、
蓋基板3又は流路基板26に相当するガラス板39bと
をチバガイギー製のエポキシ接着剤“XB3052”で
接合したものである。ここで、シリコン板39aは、縦
横のサイズを30×200mm、厚さを1mmに形成し
た。一方、ガラス板39bは、縦横のサイズを30×2
00mm、厚さを2mmに形成し、シリコン板39aと
の接合面に縦横サイズが25×195mmで厚さが0.
5mmの空洞領域39cを形成した。さらに、ガラス板
39bには、シリコン板39aとの接合面の反対側の面
における長手方向の両端からそれぞれ50mmの位置に
二本のスリット39dを形成した。なお、スリット39
dはダイシングソーによって形成し、その深さ寸法が異
なる複数個の疑似ヘッド39を形成した。
【0067】そして、スリット39dの深さを変えた各
疑似ヘッド39において、10℃と50℃との冷却と加
温とを100回繰り返してシリコン板39aとガラス板
39bとの接合部からの水漏れの有無を調べたところ、
表1に示したような結果が得られた。
【0068】
【表1】
【0069】ここで、表1に示した結果から明らかなよ
うに、スリット39dの深さ寸法をガラス板39bの厚
さ寸法の1/3以上に形成することにより、接合させた
シリコン板39aとガラス板39bとが熱膨張の差によ
って反りを生じても、その熱膨張差がスリット39dに
より有効に吸収され、接合部の劣化や接合部の剥がれが
防止される。
【0070】つぎに、本発明のようなスリット7,2
4,29を形成する必要が生ずるインクジェット記録ヘ
ッドのサイズはどの位かという点について第二の実験を
した。具体的には、表2に示したように、印写幅が2
0、50、100、150mm、かつ、インク吐出口2
5の配列密度が100、200、400dpiの、12
タイプのインクジェット記録ヘッドを試作し、これらの
インクジェット記録ヘッドを冷却・加温を繰り返してイ
ンク滴の吐出特性を調べたものである。なお、試作した
各インクジェット記録ヘッドは、図16に示したように
発熱体基板2と流路基板26とを押えバネ31で押えた
だけで接着剤を用いた接合を行なわないものであり、か
つ、スリットを形成しないものである。
【0071】そして、10℃の冷却と50℃の加温を1
00回繰り返した後、吐出特性の変化を調べたところ、
表2に示したような結果が得られた。なお、吐出特性と
しては、吐出するインク滴の質量をチェックしたもので
あり、この表2において、“○”は冷却・加温の前後に
おいて吐出特性の変化が20%以下であった(吐出特性
が良好な状態に維持された)ことを示し、“×”は冷却
・加温の前後において吐出特性の変化が20%以上にな
った(吐出特性が劣化した)ことを示す。
【0072】
【表2】
【0073】ここで、表2に示した結果から明らかなよ
うに、印写幅が大きくなると共にインク吐出口25の配
列密度が密になるにつれて吐出特性が変化するものであ
り、即ち、このような吐出特性の変化を防止するために
スリット29を形成することが必要になる。例えば、印
写幅が100mmのインクジェット記録ヘッドにおいて
は、インク吐出口25の配列密度が100dpi以下で
あればスリット29を形成しなくてもよいが、インク吐
出口25の配列密度が200dpi以上になればスリッ
ト29を形成する必要性が生ずる。
【0074】つぎに、第二の実験で試作したものと同様
に印写幅及びインク吐出口25の配列密度が異なる複数
個のインクジェット記録ヘッドを試作し、さらに、これ
らのインクジェット記録ヘッドの流路基板26にスリッ
ト29を形成してインク滴の吐出特性が冷却・加温の前
後でどのように変化するかという点について第三の実験
を行なったところ、表3に示したような結果が得られ
た。なお、インクジェット記録ヘッドは表3に示したよ
うに18タイプ試作し、各インクジェット記録ヘッドに
おいて、流路基板26の厚さ寸法を2.5mm、スリッ
ト29の幅寸法を0.5mm、スリット29の深さ寸法
を1.4mmとした。また、冷却・加温は、10℃と5
0℃とを100回繰り返した。
【0075】
【表3】
【0076】ここで、表3に示した結果と表2の結果を
比較することにより、印写幅が大きくなり、かつ、イン
ク吐出口25の配列密度が密になっても、スリット29
を形成することによって吐出特性が良好に維持されるこ
とが明かになった。さらに、スリット29は約100m
m以下の間隔で形成することが望ましいことも明かにな
った。
【0077】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、多数のエネルギ
ー作用部を長手方向にそって配列した長尺状の第一基板
と、この第一基板上に設けられると共に前記エネルギー
作用部に対応する位置にインク流路溝を形成した感光性
樹脂層と、前記感光性樹脂層上に積層された長尺状の第
二基板とを有し、前記第一基板と前記第二基板とを線膨
張率が異なる材料で形成したインクジェット記録ヘッド
において、前記第二基板における前記感光性樹脂層に積
層された面の反対側の面にこの第二基板の長手方向と直
交する向きに長いスリットを形成したので、第一基板と
第二基板とが温度変化により伸縮すると共に熱膨張差に
よって反りを生じても、第二基板に形成したスリットに
より熱膨張差を吸収することができると共に発生する反
りを小さくすることができ、従って、第二基板と感光性
樹脂層との接合状態を安定した状態に維持することがで
きると共にその接合部分が剥がれてインクが漏れるとい
う事態の発生を防止することができる等の効果を有す
る。
【0078】請求項2記載の発明は、多数のエネルギー
作用部を長手方向にそって配列した長尺状の第一基板
と、多数のインク流路溝を形成すると共にこれらのイン
ク流路溝を前記エネルギー作用部に対応するように前記
第一基板上に積層された長尺状の第二基板とを有し、前
記第一基板と前記第二基板とを線膨張率が異なる材料で
形成したインクジェット記録ヘッドにおいて、前記第二
基板における前記インク流路溝が形成された面の反対側
の面にこの第二基板の長手方向と直交する向きに長いス
リットを形成したので、第一基板と第二基板とが温度変
化により伸縮すると共に熱膨張差によって反りを生じて
も、第二基板に形成したスリットにより熱膨張差を吸収
することができると共に発生する反りを小さくすること
ができ、従って、第二基板と第一基板との接合状態を安
定した状態に維持することができると共にその接合部分
が剥がれてインクが漏れるという事態の発生を防止する
ことができ、また、第一基板と第二基板とを接着等によ
り接合するのではなく両基板を圧接させた状態としたイ
ンクジェット記録ヘッドの場合には、スリットによる熱
膨張差の吸収によって第一基板のエネルギー作用部と第
二基板のインク流路溝との対応関係を維持することがで
きると共にエネルギー作用部とインク流路溝との位置ず
れによるインク滴の吐出特性の劣化を防止することがで
きる等の効果を有する。
【0079】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の発明において、スリットの深さ寸法を第二基板の厚
さ寸法の1/3以上としたので、スリットによる第一基
板と第二基板との熱膨張差の吸収を良好に行なうことが
できる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例のインクジェット記録ヘ
ッドを示した斜視図である。
【図2】発熱体基板を示した斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】発熱体基板を示した正面図である。
【図5】発熱体基板上にフォトレジスト層を形成した工
程を示した正面図である。
【図6】フォトリソグラフィーの技術によってインク流
路溝とインク供給室溝とを形成した工程を示した正面図
である。
【図7】蓋基板に紫外線硬化型樹脂をラミネートした工
程を示した正面図である。
【図8】発熱体基板と蓋基板とを積層した工程を示した
正面図である。
【図9】発熱体基板と蓋基板とを積層することにより形
成されたインクジェット記録ヘッドを示した斜視図であ
る。
【図10】インク滴の吐出原理を説明した説明図であ
る。
【図11】蓋基板に形成したスリットの変形例を示した
斜視図である。
【図12】本発明の第二の実施例のインクジェット記録
ヘッドを示した斜視図である。
【図13】発熱体基板と流路基板との構造を示した斜視
図である。
【図14】発熱体基板と流路基板との構造を示した分解
斜視図である。
【図15】流路基板を裏側から見た斜視図である。
【図16】インクジェット記録ヘッドの組立て状態を示
した分解斜視図である。
【図17】流路基板の変形例を示した斜視図である。
【図18】図17に示した流路基板を用いて組立てたイ
ンクジェット記録ヘッドを示した斜視図である。
【図19】流路基板の変形例を示した斜視図である。
【図20】本発明の第三の実施例のインクジェット記録
ヘッドにおける蓋基板を示した正面図である。
【図21】蓋基板の変形例を示した正面図である。
【図22】実験のために形成した疑似ヘッドを示した分
解斜視図である。
【図23】疑似ヘッドを形成するガラス板を裏側から見
た斜視図である。
【符号の説明】
2 第一基板 3,26,26a 第二基板 4 感光性樹脂層 5 エネルギー作用部 6 インク流路溝 7,24,29 スリット 27 インク流路溝

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数のエネルギー作用部を長手方向にそ
    って配列した長尺状の第一基板と、この第一基板上に設
    けられると共に前記エネルギー作用部に対応する位置に
    インク流路溝を形成した感光性樹脂層と、前記感光性樹
    脂層上に積層された長尺状の第二基板とを有し、前記第
    一基板と前記第二基板とを線膨張率が異なる材料で形成
    したインクジェット記録ヘッドにおいて、前記第二基板
    における前記感光性樹脂層に積層された面の反対側の面
    にこの第二基板の長手方向と直交する向きに長いスリッ
    トを形成したことを特徴とするインクジェット記録ヘッ
    ド。
  2. 【請求項2】 多数のエネルギー作用部を長手方向にそ
    って配列した長尺状の第一基板と、多数のインク流路溝
    を形成すると共にこれらのインク流路溝を前記エネルギ
    ー作用部に対応するように前記第一基板上に積層された
    長尺状の第二基板とを有し、前記第一基板と前記第二基
    板とを線膨張率が異なる材料で形成したインクジェット
    記録ヘッドにおいて、前記第二基板における前記インク
    流路溝が形成された面の反対側の面にこの第二基板の長
    手方向と直交する向きに長いスリットを形成したことを
    特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 スリットの深さ寸法を第二基板の厚さ寸
    法の1/3以上としたことを特徴とする請求項1又は2
    記載のインクジェット記録ヘッド。
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