JP3038007B2 - フィルター・セクター - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は紙パルプ等のスラリー又は懸濁液から固体粒
子を濾過する回転式フィルターが有するフィルター・デ
ィスク形成用フィルター素子（以下フィルター・セクタ
ーと称する）に関するものである。

全体が扇形に形成された複数のフィルター・セクター
を円盤状に回転軸に嵌着し所謂フィルター・ディスクを
形成し、複数のこれらのディスクを重ね合わせてフィル
ターを形成するものである。回転軸はフィルター・ディ
スクの一部が濾過すべき液体に浸漬するように支持さ
れ、回転軸の回転にともない各フィルター・セクターは
順次浸漬され該セクターに担持された濾過材を介して濾
過作用を行い、その後液面より上方に上昇され濾過材に
付着した固形物を乾燥除去するようになっている。回転
軸にはフィルター・セクターから送られる濾液を排出す
る手段が設けられている。

特に本発明は折曲又は波形手段（以下コルゲート手段
と称する）を含むフィルター・セクターに係るもので、
隣接するコルゲートのうね部間で且つ放射状外端部と放
射状内端部間を延びる複数の流体通路が形成された構成
のフィルター・セクターに関する。コルゲート手段には
そのうね部に支持される濾過布等の濾過材が取り付けら
れている。濾過作用はフィルター・セクターの両面に於
て濾過材を介して行われ、濾液は実質的に放射状にのび
た通路を通りフィルター・セクターの放射状内端部から
排出される。この種のフィルター・セクターは米国特許
第4,655,920号に対応するSE−Ｂ−830069−３号に記載
されているが、この場合使用されるコルゲート手段は１
個である。この公知のフィルター・セクターは重大な欠
点を有する。即ちコルゲートが扇形に形成され又うね部
と谷部により形成された濾液排出通路の高さと断面がフ
ィルター・セクターの排出端に向って徐々に大きくなっ
ているため、通常耐酸性スチール等の金属プレートから
なるフィルター・プレートを折曲してコルゲートを形成
するのに極めて困難である。更には前記濾液通路を流れ
る濾液は濾過材と連続的に接触し、濾過材上に付着する
固形物（一部は濾過材より突出している）によって濾液
の流量に相当なロスを招き更に該固形物を再び濡らす恐
れがある。

本発明は従来のフィルター・セクターに比べ効率良く
製造し得る安定した強固なフィルター・セクターを提供
することを目的とする。本発明によるフィルター・セク
ターは濾液の大部分が濾過材と接触することなく排出さ
れる構成になっている。更に本発明のフィルター・セク
ターは濾過材に付着する固形物が高い乾燥度を有するよ
うに構成されている。更に又、本発明によるフィルター
・セクターはその露出面積が大であるため高い濾過能力
を有する。

本発明の一つの態様に於てフィルター・セクターは第
１、第２及び第３セクター部の三つの部分を有しこれら
の部分を介して濾液の受入と排出を行う。第１及び第２
セクター部はフィルター・セクターの外端部に向って外
方に放射状に延び且つ第３セクター部の側面にそれぞれ
配されている。第１、第２セクター部を以下“外側セク
ター部”と称する。一方、第３セクター部の大部分は前
記第１、第２セクター部間に配されフィルター・セクタ
ーの排出即ち放射状内端部に向って内方に放射状に形成
されている。この第３セクター部を以下“中間セクター
部”と称する。外側セクター部に形成された濾液通路は
中間セクター部に於て交差するように形成されている。
本発明の好ましい態様に於て、中間セクター部の交差す
る濾液通路が互いに連通し、第１、第２セクター部のい
ずれか一つのセクター部の濾液通路を流れる濾液が他の
外側セクター部に選択的に流れを変えることもでき、又
元の濾液通路に留まることもできるように構成したフィ
ルター・セクターを設ける。即ちこの構成によれば中間
セクター部は二つの外側セクター部のいずれからでも濾
液を受入・排出できるようになっている。

特に製造の面から有利であるように、本発明のフィル
ター・セクターは二つの図形のエレメントから構成し、
好ましくは例えば実質的に平行四辺形のエレメントをフ
ィルター・セクターの円周の長さが長い放射状外端部に
於て互いに当接させ、同時にフィルター・セクターの放
射状内端部に於て大部分が互いに重なり合うように設け
る。その結果、フィルター・セクターの三つのセクター
部は実質的に二等辺三角形の形状を呈することとなり、
外側セクター部の三角形の頂点と中間セクター部の三角
形の底辺はそれぞれフィルター・セクターの放射状内端
部に対向するように配されている。この構成のフィルタ
ー・セクターは支軸に取り付けられる且つ応力の最もか
かる内端部に於て二つのエレメントの厚さを有すること
になり構造上の強度の観点から有利である。

更に、本発明によるフィルター・セクターはプラスチ
ック材から作成する場合ワンピースに仕上げることもで
きるので有益である。

本発明の他の好ましい態様に於て、二つの外側セクタ
ー部の内の一つの濾液通路が中間セクター部に通じ、更
に中間セクター部と境界をなす他の外部セクター部の濾
液通路に開孔を設けることにより濾過効率の向上を図る
ものである。

更に又、本発明の他の好ましい態様に於て、互いに交
差する濾液通路間にプレート部材を設けこれにより構造
上の安定を図ると同時に濾過材及びこれに付着する固形
物の再浸潤を防ぐように構成した。

進んで本発明を図面に従って詳述する。

第１図は本発明によるフィルター・セクターの一面を
示す。

第２図は第１図のII−II線上の断面図である。

第３図は第１図のIII−III線上の断面図である。

第４図は第１図のIV−IV線上の断面図である。

第５図は第４図の相当する部分の拡大図である。

第１図に示すフィルター・セクター（１）は通常の回
転式フィルターと同様に扇形に形成されている。フィル
ター・セクター（１）は放射状内端部（２）、放射状外
端部（３）及び二つの実質的に放射状に延びる縁部
（４）、（５）を有する。内端部（２）には接続手段
（６）が設けられこれによりフィルター・セクター
（１）が回転軸（図示せず）に取り付けられている。接
続手段（６）にはフィルター・セクター（１）からの濾
液を集める収集手段（７）とこれから濾液を受入し、回
転軸に送り更にフィルター・セクターを回転軸に取り付
ける際に用いる排出部（８）が設けられている。

第１図乃至第４図に示すフィルター・セクター（１）
は二つのプレート状のエレメント（９）、（10）を有
し、これらのプレートは波形に折り曲げ即ちコルゲート
され一面に複数の平行な谷部（11）とうね部（12）を形
成し、他面に同様な谷部（11′）とうね部（12′）をそ
れぞれ形成してなる。プレート（９）、（10）は実質的
に平行四辺形を呈し、第１図に於てプレート（９）は左
側に、プレート（10）は右側にそれぞれ傾斜し互いに一
部が重なり合った状態に設けられている。重なり合う度
合いはフィルター・セクター（１）の放射状外端部
（３）に於て小さく（第２図）、放射状内端部（２）に
向かうに従い徐々に大きくなり（第３図）、そして該内
端部（２）に於ては実質的に完全に重なり合った状態
（第４図）になる。このようにして、所定の扇形セクタ
ーの形状が得られ、図示の如くフィルター・セクター
（１）には実質的に放射状に延びる互いに平行な谷部
（11）、（12）に対応する濾液通路（13）、（14）が形
成される。

フィルター・セクター（１）の実質的に放射状に延び
る側縁部（４）、（５）はほぼＵ−字状の断面を有する
リブ（15）、（16）によりそれぞれ規定され支持されて
いる。フィルター・セクター（１）の外端部（３）はほ
ぼＵ−字状の断面を有する円弧状のリブ（17）により規
定され支持されている。側縁部（４）、（５）及び外端
部（３）はそれぞれの支持リブの内部に挿入された状態
になっている。プレート（９）、（10）の重なり合った
内端部は収集手段（７）内に挿入され、濾過布（18）の
如き濾過材（第２図乃至第４図）がプレート（９）、
（10）及びそれらの支持リブ（15）、（16）、（17）を
包むように設けられている。

上記の構成からなるプレート（９）、（10）を有する
フィルター・セクター（１）は二つの外側セクター部
（Ａ）、（Ｂ）と、二つのプレート（９）、（10）の層
が重なり合った領域からなる中間セクター部（Ｃ）とか
らなっていて、プレート（９）、（10）の濾液通路（1
3）、（14）は中間セクター部（Ｃ）で互いに交差する
ようになっている。

第１図図示のフィルター・セクター（１）の場合、プ
レート（９）の濾液通路（13）に流入する濾液は該通路
（13）に沿って流れ収集手段（７）に収集され、同様に
プレート（10）の濾液通路（14）に流入する濾液は該通
路（14）に沿って流れ収集手段（７）に収集される。こ
の場合、プレート（９）を例にとれば、このプレートの
一側端部（４）に近いところを流れる濾液は反対側側縁
部に近いところを流れる濾液に比べプレート（10）の下
側のセクター部（Ｃ）に流入するのは遅く、従ってセク
ター部（Ａ）に於ける通路（13）を流れる濾液と濾過布
（18）との接触時間が大小と異なる。濾液通路（13）を
流れる濾液がプレート（10）の下側からセクター部
（Ｃ）に流入すると直ちに濾過布（18）との接触は絶
え、流れ抵抗は減少する。従って、通路（13）が通路
（11）と交差するフィルター・セクター部（Ｃ）に於け
る濾液は流れ抵抗の最も小さい個所によっては通路（1
3）に沿って流れ続けるか、或いはいずれかの通路（1
1）の方へ流れを変えるか、自由に選択的に進行でき
る。第１図より明らかな通り、プレート（９）の露出面
積即ちセクター部（Ａ）はフィルター・セクター（１）
全体の露出面積の約1/3、一方プレート（10）の露出面
積即ちセクター（Ｂ）とセクター（Ｃ）を加えた分は全
体の約2/3であるから、プレート（10）を流れる濾液は
プレート（９）を流れる濾液より約２倍の量になる。従
って、プレート（10）の濾液通路（14）に沿って流れる
濾液は濾過布（18）と常時接触していることになる。

濾液の流れ分布をより均一にするために、プレート
（10）には開孔（19）を設ける。これらの開孔（19）は
第１図に示す如く好ましくはセクター部（Ｂ）、（Ｃ）
の境界に隣接してプレート（９）の最も内側の濾液通路
（13）即ち谷部（11）の上に位置する濾液通路（14）の
底部即ち谷部（12′）に設ける。通路（14）を流れる濾
液の少なくとも相当量がプレート（９）、（10）間の間
隙即ち通路（13）に流れ込み、そこから流れ抵抗の大小
によっては再び選択的にプレート（10）の裏側の通路
（13）へ又はプレート（９）の通路（13）へ逆流する。

上記の濾液の流れは第１図では露出されてないフィル
ター・セクターの面についても同様である。

本発明フィルター・セクター（１）の使用条件によっ
ては、第５図に示す如くプレート部材（20）をセクター
部（Ｃ）内のプレート・エレメント（９）、（10）間の
重なり合う領域に設けることが好ましい。このプレート
部材（20）によりフィルター・セクター（１）の構造的
強度を増すと同時にフィルターの回転位置によっては収
集手段（７）に向って下方に流れる濾液が低い位置にあ
る開孔（19）から逃れ濾過布（18）とその上の固形物を
再び濡らす可能性を防ぐことができる。

図示した本発明フィルター・セクターは二つの別個の
エレメント（９）、（10）からなっているが、プラスチ
ック材等を用いてこれを一体的に形成することも可能で
ある。又、二つ以上のエレメント（９）、（10）を用い
てフィルター・セクター（１）を構成しても良い。

Claims (11)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】長手方向に延びて濾液通路を形成するうね
   部と谷部を有するコルゲート手段と、この手段を包んで
   設けられた濾過材とを含むフィルター・セクターに於
   て、前記コルゲート手段が互いに平行なうね部（12,1
   1′）と谷部（11,12′）を有する少なくとも二つのエレ
   メント（9,10）からなり、更に該二つのエレメントが少
   なくとも一部が互いに重なり合った状態に保持され、一
   方のエレメント（９）の濾液通路（13）が他方のエレメ
   ント（10）の濾液通路（14）と交差するように設けたこ
   とを特徴とする回転式フィルターのフィルター・ディス
   ク用フィルター・セクター。
2. 【請求項２】前記二つのエレメント（9,10）が実質的に
   同一形状であることを特徴とする請求項１に記載のフィ
   ルター・セクター。
3. 【請求項３】前記エレメント（9,10）の濾液通路（13,1
   4）が前記二つのエレメント（9,10）の互いに重なり合
   った領域に於て連通したことを特徴とする請求項１又は
   ２に記載のフィルター・セクター。
4. 【請求項４】前記フィルター・セクターが、放射状外端
   部と放射状内端部を有する扇形を呈し、前記エレメント
   （9,10）が前記放射状外端部に於て互いに当接し且つ前
   記放射状内端部に於ては互いに実質的に全領域に亘って
   重なり合うことを特徴とする請求項２又は３に記載のフ
   ィルター・セクター。
5. 【請求項５】前記エレメント（9,10）のそれぞれが実質
   的に平行四辺形を呈することを特徴とする請求項２乃至
   ４のいずれか１項に記載のフィルター・セクター。
6. 【請求項６】前記二つのエレメント（9,10）の互いに重
   なり合った領域に於ける前記エレメント（9,10）の対向
   面間が連通したことを特徴とする請求項３乃至５のいず
   れか１項に記載のフィルター・セクター。
7. 【請求項７】前記エレメント（9,10）に、エレメントの
   互いに重なり合った領域に於て前記エレメントの露出側
   の濾液通路を流れる濾液を前記エレメントの非露出側の
   濾液通路に導くように開孔（19）を設けたことを特徴と
   する請求項３乃至６のいずれか１項に記載のフィルター
   ・セクター。
8. 【請求項８】前記開孔（19）が前記エレメントの互いに
   重なり合う領域と重なり合わない領域の境界に隣接して
   前記互いに重なり合う領域内に設けられたことを特徴と
   する請求項７に記載のフィルター・セクター。
9. 【請求項９】前記二つのエレメント（9,10）の互いに重
   なり合った領域に於て前記エレメント（9,10）間にプレ
   ート部材（20）を設けたことを特徴とする請求項１乃至
   ８のいずれか１項に記載のフィルター・セクター。
10. 【請求項１０】前記コルゲート手段が一体的に形成され
    たことを特徴とする請求項１乃至９のいずれか１項に記
    載のフィルター・セクター。
11. 【請求項１１】前記二つのエレメント（9,10）が、これ
    らエレメントを一部が互いに重なりあった状態に保持さ
    れたとき、全体的に扇形に形成され、且つ、エレメント
    の重なり合う領域の第３セクター部と、重なり合わない
    領域の一方のエレメントの第１セクター部と、重なり合
    わない領域の他方のエレメントの第２セクター部との３
    つのセクター部が実質的に二等辺三角形を呈し、第１、
    第２セクター部の三角形の頂点と第３セクター部の三角
    形の底辺が前記扇形の放射状内端部に配されると共に、
    前記第３セクター部が前記第1,第２セクター部間に配さ
    れるように形成されたことを特徴とする請求項２に記載
    のフィルター・セクター。