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JP3010838B2 - 車両用左右駆動力配分装置 - Google Patents

車両用左右駆動力配分装置

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Publication number
JP3010838B2
JP3010838B2 JP26719291A JP26719291A JP3010838B2 JP 3010838 B2 JP3010838 B2 JP 3010838B2 JP 26719291 A JP26719291 A JP 26719291A JP 26719291 A JP26719291 A JP 26719291A JP 3010838 B2 JP3010838 B2 JP 3010838B2
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JP
Japan
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piston
clutch
shaft
driving force
differential
Prior art date
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JP26719291A
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JPH0577653A (ja
Inventor
薫 澤瀬
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Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
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Publication date
Application filed by Mitsubishi Motors Corp filed Critical Mitsubishi Motors Corp
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Publication of JPH0577653A publication Critical patent/JPH0577653A/ja
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Publication of JP3010838B2 publication Critical patent/JP3010838B2/ja
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  • Motor Power Transmission Devices (AREA)
  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)
  • Retarders (AREA)
  • Hydraulic Clutches, Magnetic Clutches, Fluid Clutches, And Fluid Joints (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、4輪駆動式の自動車等
における左右輪への駆動力配分に用いて好適の、車両用
左右駆動力配分装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、四輪駆動式自動車の開発が盛んに
行なわれているが、前後輪間のトルク配分を積極的に調
整できるようにした、フルタイム四輪駆動方式のものの
開発が種々行なわれている。
【0003】一方、自動車において、左右輪に伝達され
るトルク配分機構を広義にとらえると従来のノーマルデ
ィファレンシャル装置や電子制御式を含むLSD(リミ
テッドスリップデフ)が考えられるが、これらはトルク
配分を積極的に調整するものでなく、左右輪のトルクを
自由自在に配分できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、トルク配分機構
には、大きなトルクロスやエネルギロスを招来すること
なく、自由自在なトルク配分を行なえるものが望ましい
が、例えば次のような機構によれば、左右輪へのトルク
配分をエネルギロスを招来しないで、自由自在に調整す
ることができる。
【0005】図11はこのような観点から本発明の案出
過程で考えられた車両用左右駆動力配分装置の原理を示
す摸式図である。この図11に示すように、回転駆動力
(以下、駆動力又はトルクという)を入力される入力軸
1と、入力軸1から入力された駆動力を出力する第1及
び第2の出力軸2,3とが設けられており、第1の出力
軸2と第2の出力軸3と入力軸1との間に車両用左右駆
動力配分装置が介装されている。
【0006】そして、この車両用左右駆動力配分装置
は、次のような構成により、第1の出力軸2と第2の出
力軸3との差動を許容しながら、第1の出力軸2と第2
の出力軸3とに伝達される駆動力を所要の比率に配分で
きるようになっている。
【0007】すなわち、第1の出力軸2と入力軸1との
間及び第2の出力軸3と入力軸1との間に、それぞれ変
速機構Aと多板クラッチ機構Bとが介装されており、第
1の出力軸2又は第2の出力軸3の回転速度が、変速機
構Aにより増速されて駆動力伝達補助部材としての鞘軸
7に伝えられる。
【0008】そして、多板クラッチ機構Bは、この鞘軸
7と入力軸1側のデファレンシャルケース(以下、デフ
ケースと略す)13との間に介装されており、この多板
クラッチ機構Bを係合させることで、高速側の鞘軸7か
ら低速側のデフケース13へ駆動力が返送されるように
なっている。これは、対向して配設されたクラッチ板に
おける一般的な特性として、トルクの伝達が、速度の速
い方から遅い方へ行なわれるためである。
【0009】したがって、例えば、第2の出力軸3と入
力軸1との間の多板クラッチ機構Bが係合されると、第
2の出力軸3へ配分される駆動力の一部は入力軸1側へ
返送されて、第2の出力軸3へ配分される駆動力が減少
して、この分だけ、第1の出力軸2へ配分される駆動力
が増加する。
【0010】上述の変速機構Aは、2つのプラネタリギ
ヤ機構を直列的に結合してなるいわゆるダブルプラネタ
リギヤ機構で構成されており、第2の出力軸3に設けら
れた変速機構Aを例に説明すると次のようになる。
【0011】すなわち、第2の出力軸3には第1のサン
ギヤ4Aが固着されており、この第1のサンギヤ4A
は、その外周において第1のプラネタリピニオン5Aに
螺合している。また、第1のプラネタリピニオン5A
は、第2のプラネタリピニオン5Bと一体に固着され、
共にピニオンリシャフト6Aを通じて、ケーシング(固
定部)に固着されたキャリア6に枢支されている。これ
により、第1のプラネタリピニオン5Aと第2のプラネ
タリピニオン5Bとが、ピニオンリシャフト6Aを中心
として同一の回転を行なうようになっている。
【0012】さらに、第2のプラネタリピニオン5B
は、第2の出力軸3に枢支された第2のサンギヤ4Bに
螺合しており、第2のサンギヤ4Bは、鞘軸7を介して
多板クラッチ機構Bのクラッチ板8Aに連結されてい
る。また、多板クラッチ機構Bの他方のクラッチ板8B
は、入力軸1により駆動されるデフケース13に連結さ
れている。
【0013】そして、図11の構造では、第1のサンギ
ヤ4Aが第2のサンギヤ4Bより大きい径で形成されて
いるので、第2のサンギヤ4Bの回転速度は第1のサン
ギヤ4Aより大きくなり、この変速機構Aは増速機構と
してはたらくようになっている。したがって、クラッチ
板8Aの回転速度がクラッチ板8Bより大きく、多板ク
ラッチ機構Bを係合させた場合には、この係合状態に応
じた量のトルクが、第2の出力軸3側から入力軸1側へ
返送されるようになっている。
【0014】一方、第1の出力軸2にそなえられる変速
機構A及び多板クラッチ機構Bも、同様に構成されてお
り、入力軸1からの駆動トルクを第1の出力軸2により
多く配分したい場合には、その配分したい程度(配分
比)に応じて第2の出力軸3側の多板クラッチ機構Bを
適当に係合し、第2の出力軸3により多く配分したい場
合には、その配分比に応じて第1の出力軸2側の多板ク
ラッチ機構Bを適当に係合する。
【0015】また、多板クラッチ機構Bを油圧駆動式の
ものにすると、油圧の大きさを調整することで多板クラ
ッチ機構Bの係合状態を制御でき、第1の出力軸2又は
第2の出力軸3から入力軸1への駆動力の返送量(つま
りは駆動力の左右配分比)を調整することができる。
【0016】このような装置によれば、ブレーキ等のエ
ネルギーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、
一方のトルクの所要量を他方に転送することによりトル
ク配分が調整されるため、ほとんどトルクロスやエネル
ギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得るこ
とができる。
【0017】したがって、上述のような装置を、例えば
図12に示すような従来のディファレンシャル装置9′
におけるデフキャリア12やデフケース13′等の部品
を利用しながら実現することが望ましい。
【0018】なお、図12に示すディファレンシャル装
置は後輪用のもので、入力軸1と左右輪への出力軸2,
3との間に介装され、入力軸1の端部に設けられたドラ
イブピニオン9Bと、このドライブピニオン9Bに噛合
するリングギヤ9Aと、リングギヤ9Aを設置されたデ
フケース13′と、このデフケース13′に枢着された
ピニオン9aと、出力軸2,3の端部にそれぞれ設けら
れてピニオン9aと噛合するピニオン9b,9cとをそ
なえて構成されている。そして、センターディファレン
シャル及びプロペラシャフト(共に図示省略)を介して
入力軸1からエンジン出力を入力されると、このエンジ
ン出力(駆動力)を、ドライブピニオン9B,リングギ
ヤ9A,ピニオン9a′,9b′,9c′を通じて左右
輪へ差動を許容しながら伝達するようになっている。
【0019】ところで、このような変速機構Aと多板ク
ラッチ機構Bとを用いた装置では、次のような課題があ
る。
【0020】すなわち、従来のデファレンシャル装置に
加えて、変速機構Aおよび多板クラッチ機構Bを左右双
方に装備する必要があり、すべての機構をデフキャリア
に内蔵させるようにした場合は装置が大きくなって、従
来のデフキャリア等の部品を用いることができなくな
る。
【0021】したがって、他のラインを設ける等の手段
を必要とし、製造コストが上昇してしまう。
【0022】また、変速機構Aおよび多板クラッチ機構
Bをデフキャリア外に装備するようにした場合は、多板
クラッチ機構Bの流体圧シール等の油圧系統をデフキャ
リア外に新たに設ける必要があり、この場合にも製造コ
ストが上昇してしまう。
【0023】さらに、多板クラッチ機構Bのアクチュエ
ータとしてのピストン部を、従来の部品を用いながら装
備し、十分な多板クラッチ機構Bの作動を行なわせるた
めには、種々の課題が生じる。
【0024】本発明は、このような課題に鑑み創案され
たもので、従来の部品を最大限に利用しながら上述の機
構を実現できるようにした、車両用左右駆動力配分装置
を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1に記
載の本発明の車両用左右駆動力配分装置は、エンジンの
動力が伝達される入力部と、左輪側回転軸と、右輪側回
転軸と、上記入力部の動力を上記左輪側回転軸及び上記
右輪側回転軸に配分する差動機構と、上記差動機構を収
容するデフケースと、上記左輪側回転軸と上記右輪側回
転軸とのいずれか一方の回転軸の回転速度を変速して上
記入力部に選択的に伝達する動力伝達手段と、をそな
え、上記動力伝達手段が、上記一方の回転軸の回転速度
を変速する変速機構と、上記変速機構の出力部に連接さ
れて上記一方の回転軸に相対回転可能に枢支される円筒
部材と、上記円筒部材と上記入力部との間に介装された
クラッチと、上記クラッチを押圧するピストン部と、を
有するとともに、上記クラッチが上記デフケース内に収
容され、上記ピストン部が上記デフケース外に設けられ
、該ピストン部が上記円筒部材を介して上記クラッチ
を押圧するように構成されていることを特徴としてい
る。
【0026】また、請求項2に記載の本発明の車両用左
右駆動力配分装置は、請求項1記載の装置において、上
記デフケースが、上記ピストン部の作動に際して上記ク
ラッチの支持部材として機能することを特徴としてい
る。
【0027】そして、請求項3に記載の本発明の車両用
左右駆動力配分装置は、請求項1又は2記載の装置にお
いて、上記ピストン部が、作動流体圧に応じて摺動す
ピストンと、該ピストンの摺動に応じて上記クラッチを
押圧する押圧部材と、上記ピストンと上記押圧部材との
間に介装されたベアリングと、上記ピストンを支持する
ピストンリテーナと上記ピストンとの相対回転を規制す
る規制機構と、から構成されていることを特徴としてい
る。さらに、請求項4に記載の本発明の車両用左右駆動
力配分装置は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の装
置において、上記ピストン部が、上記デフケースを収納
するデフキャリア外に設けられていることを特徴として
いる。
【0028】
【作用】上述の請求項1に記載の本発明の車両用左右駆
動力配分装置では、エンジンの動力は入力部から差動機
構を介して左輪側回転軸及び右輪側回転軸にそれぞれ伝
達される。この際、動力伝達手段が、変速機構により左
輪側回転軸と右輪側回転軸とのいずれか一方の回転軸の
回転速度を変速し、この変速した回転を円筒部材及び
ラッチを通じて変速機構から入力部に選択的に伝達する
ため、左輪側回転軸及び右輪側回転軸への動力の配分状
態が調整される。また、このとき、クラッチの結合状態
の調整は、ピストン部が円筒部材を介してクラッチを押
圧することで行われるが、クラッチがデフケース内に収
容され、ピストン部がデフケース外に設けられているの
で、ピストン部の各部の設定をデフケースに拘束される
ことなく行なうことが可能になる。
【0029】また、請求項2に記載の本発明の車両用左
右駆動力配分装置では、ピストン部がクラッチを押圧し
てクラッチの結合状態を調整する際に、クラッチは、ピ
ストン部からの押圧力に対し支持部材として機能するデ
フケースによって支持されながら結合を行なう。
【0030】さらに、請求項3に記載の本発明の車両用
左右駆動力配分装置では、ピストン部では、ピストン
が、作動流体圧に応じて摺動してクラッチを押圧する。
この際、ピストンとこのピストンの摺動に応じてクラッ
チを押圧する押圧部材との間にはベアリングが介装され
ているので、回転するクラッチに対してピストンを非回
転とすることが可能になる。また、ベアリングを介しな
がらも、クラッチ押圧時にはクラッチ側からピストン側
に連れ回りするような回転力が伝達されるが、ピストン
とピストンリテーナとの相対回転を規制する規制機構に
より、ピストンの回転が規制される。さらに、請求項4
に記載の本発明の車両用左右駆動力配分装置では、ピス
トン部が、デフケースを収納するデフキャリア外に設け
られているので、デフキャリの容積を拡大することな
く、本装置を構成できるようになる。
【0031】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
の車両用左右駆動力配分装置について説明すると、図1
はその要部構成について下半部を回転断面で示す横断面
図、図2はその要部構成を示す断面図(図1のA−A矢
視断面図)、図3はその要部構成を示す断面図(図1の
B−B矢視断面図)、図4はその要部構成を示す断面図
(図1のC−C矢視断面図)、図5はその軸連結機構の
構造を示す要部正面図、図6はその軸連結機構の要部構
造を示す分解斜視図、図7〜10はいずれもその軸連結
機構の組み立て工程を示す摸式的正面図である。
【0032】この実施例の車両用左右駆動力配分装置
は、自動車における後輪の左右駆動力を行なうもので、
ここでは特に四輪駆動車の後輪側にそなえられ、センタ
ーディファレンシャル(図示省略)を通じて後輪側へ出
力された駆動力をプロペラシャフト(図示省略)を介し
て入力軸1に受けて、この駆動力を左右に配分できるよ
うになっている。
【0033】つまり、この装置は、図1〜4に示すよう
に、自動車のエンジン出力のうち後輪側へ配分された回
転駆動力を入力される入力部としての入力軸1と、入力
軸1から入力された駆動力を出力する第1及び第2の出
力軸2,3とを連結するように設けられおり、第1の出
力軸2はその左端を左輪の駆動系に連結され左輪側回転
軸として構成され、第2の出力軸3はその右端を右輪の
駆動系に連結され右輪側回転軸として構成されている。
【0034】第1の出力軸2の基端と第2の出力軸3の
基端と入力軸1の後端との間には、差動機構S1と駆動
力伝達制御機構(動力伝達手段)Sとが介装されてお
り、これらの機構により、第1の出力軸2と第2の出力
軸3との差動を許容しながら第1の出力軸2と第2の出
力軸3とに伝達される駆動力を所要の比率に配分できる
ようになっている。
【0035】特に、駆動力伝達制御機構Sは、変速機構
Aと多板クラッチ機構Bとをそなえて構成されている。
これらの変速機構A及び多板クラッチ機構Bは、第1の
出力軸2と入力軸1との間及び第2の出力軸3と入力軸
1との間に介装されており、第1の出力軸2又は第2の
出力軸3の回転速度が、変速機構Aにより増速されて駆
動力伝達補助部材(変速機構Aの出力部)としての鞘軸
(円筒部材)7に伝えられるようになっている。
【0036】そして、多板クラッチ機構Bは、この鞘軸
7と入力軸1側のデファレンシャルケース(以下、デフ
ケースと略す)13との間に介装されており、この多板
クラッチ機構Bを係合させることで、高速側の鞘軸7か
ら低速側のデフケース13へ駆動力が返送されるように
なっている。これは、対向して配設されたクラッチ板
A.8Bにおける一般的な特性として、トルクの伝達
が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためである。
なお、多板クラッチ機構Bは、これらのクラッチ板8
A.8Bからなるクラッチ部(クラッチ)B1と、クラ
ッチ部B1を駆動するピストン部B2とからなってい
る。
【0037】したがって、例えば、第2の出力軸3と入
力軸1との間の多板クラッチ機構Bが係合されると、第
2の出力軸3へ配分される駆動力の一部は入力軸1側へ
返送されて、第2の出力軸3へ配分される駆動力が減少
して、この分だけ、第1の出力軸2へ配分される駆動力
が増加するようになっている。逆に、第1の出力軸2と
入力軸1との間の多板クラッチ機構Bが係合されると、
第1の出力軸2へ配分される駆動力の一部は入力軸1側
へ返送されて、第1の出力軸2へ配分される駆動力が減
少して、この分だけ、第2の出力軸3へ配分される駆動
力が増加するようになっている。
【0038】上述の変速機構Aは、2つのプラネタリギ
ヤ機構を直列的に結合してなるいわゆるダブルプラネタ
リギヤ機構で構成されており、第2の出力軸3に設けら
れた変速機構Aを例に説明すると次のようになる。
【0039】すなわち、第2の出力軸3に第1のサンギ
ヤ4Aが、スプライン及びサークリップ10により固着
されており、第1のサンギヤ4Aは、その外周において
第1のプラネタリギヤ5Aに螺合している。また、第1
のプラネタリギヤ5Aは、第2のプラネタリギヤ5Bと
一体に形成されており、本実施例では、同一の歯数で一
体の部品(つまり、1つのプラネタリギヤ)5として形
成されている。
【0040】これらの、第1のプラネタリギヤ5Aと第
2のプラネタリギヤ5Bとは、変速機構Aのケーシング
11に固着されたキャリア6にピニオンシャフト6Aを
介し枢支されており、第1のプラネタリギヤ5Aと第2
のプラネタリギヤ5Bとが、ピニオンシャフト6Aを中
心として同一の回転を行なうようになっている。
【0041】さらに、第2のプラネタリギヤ5Bは、第
2のサンギヤ4Bに螺合しており、第2のサンギヤ4B
は、第2の出力軸3に枢支された円筒状の鞘軸7に取り
付けられており、この鞘軸7を介して多板クラッチ機構
Bのクラッチ板8Aに連結されている。
【0042】ここで、多板クラッチ機構Bは、対向する
クラッチ板8Aとクラッチ板8Bとをデフキャリア12
内のデフケース13に格納するようにして装備されてお
り、クラッチ板8Bは、デフケース13内周の突起13
aに回転方向を係止されるようになっている。デフケー
ス13はディファレンシャル9を構成するベベルギヤ
(リングギヤ)9Aを固着されているため、多板クラッ
チ機構Bにおける他方のクラッチ板8Bは、デフケース
13及びベベルギヤ9Aを介して、入力軸1の後端を構
成するベベルギヤ(ドライブピニオン)9Bに連結され
ている。
【0043】すなわち、入力軸1は、ベベルギヤ9A,
ベベルギヤ9B及びデフケース13を介しクラッチ板8
Bに連結されており、入力軸1からベベルギヤ9A,ベ
ベルギヤ9B,デフケース13,差動機構15を介して
第1の出力軸2及び第2の出力軸3に伝達される通常の
駆動力伝達ルートの他に、第1の出力軸2又は第2の出
力軸3から変速機構A,鞘軸7,多板クラッチ機構B,
デフケース13,ベベルギヤ9A,ベベルギヤ9Bを介
して入力軸1側に通じる駆動力伝達ルートが設けられる
ことになる。
【0044】なお、図1の構造では、第1のサンギヤ4
Aと第2のサンギヤ4Bとは同一の径で形成されている
が、歯数は転移歯車により第1のサンギヤ4Aの方が第
2のサンギヤ4Bよりも多くなっている。したがって、
第2のサンギヤ4Bの回転速度は第1のサンギヤ4Aよ
りも大きく、変速機構Aは増速機構として構成されてい
る。このため、クラッチ板8Aの回転速度はクラッチ板
8Bよりも大きくなり、多板クラッチ機構Bを所要の結
合状態にした場合には、所要量のトルクが、第2の出力
軸3側から入力軸1側へ返送されるようになっている。
【0045】第1の出力軸2における変速機構A及び多
板クラッチ機構Bも、上記同様に装備されており、第1
の出力軸2から入力軸1側へのトルク伝達が制御される
ようになっている。
【0046】ところで、第1の出力軸2と第2の出力軸
3との差回転を許容する差動機構S1は、遊星歯車機構
で構成されており、これにより一対の多板クラッチ装置
Bと差動機構S1とが同一のデフキャリア12内に設け
られている。
【0047】つまり、差動機構S1としての遊星歯車機
構は、リングギヤ14とプラネタリギヤ15とサンンギ
ヤ16とをそなえ、リングギヤ14がデフケース13の
内周に形成され、サンギヤ16が第2の出力軸3に取り
付けられ、プラネタリギヤ15を軸支するキャリア17
が第1の出力軸2に取り付けられている。
【0048】これにより、デフケース13に入力された
駆動力は、リングギヤ14からプラネタリギヤ15に入
力されてキャリア17から第1の出力軸2に伝達される
一方で、リングギヤ14からプラネタリギヤ15を介し
てサンギヤ16に入力されて第1の出力軸2に伝達され
るようになっている。
【0049】なお、この遊星歯車機構において、プラネ
タリギヤ15はインナピニオンとアウタピニオンとの2
つのピニオンが噛合して一体化されたダブル形式で構成
されている。これらのインナピニオン及びアウタピニオ
ンは何れもキャリア17に枢支され、アウタピニオンが
リングギヤ14に螺合し、インナピニオンがサンンギヤ
16に螺合しており、サンンギヤ16側とリングギヤ1
4側との相対的な回転方向が一致するように設定されて
いる。
【0050】また、この差動機構S1は、デフケース1
3内において、一対の多板クラッチ機構Bの間に装備さ
れているが、差動機構S1を遊星歯車機構で構成してい
るため軸方向にコンパクトであり、差動機構S1及び多
板クラッチ機構Bを従来用いられているデフケース13
内に共に格納している。これにより、デフケース13を
格納するデフキャリア12も従来の部品で構成されてい
る。
【0051】なお、中空円筒状のデフケース13は、そ
の両端の小径部を、ベアリング18を介しデフキャリア
12の両端における開口部に枢支されている。
【0052】そして、多板クラッチ機構Bは、前述のよ
うに、クラッチ板8Aとクラッチ板8Bとをそなえて構
成されるそのクラッチ部B1をデフケース13内に配設
されるとともに、クラッチ部B1を駆動するピストン部
B2をデフケース13外に配設されている。
【0053】すなわち、デフキャリア12の両端開口部
には、中空円筒状に形成された変速機構Aのケーシング
11が、外方から嵌挿され、その基端小径部11Aがボ
ルト19により締めつけ固定されており、この基端小径
部11A内にはその内壁に沿い延在する摺動部20Aを
そなえたピストン20が設けられている。
【0054】ピストン20は、ケーシング11の基端小
径部11Aから大径部11Bに至る内壁に沿うように延
在して、小径の摺動部20Aと大径の摺動部20Bとを
そなえた段付きの中空円筒状に形成されている。
【0055】そして、小径の摺動部20Aと大径の摺動
部20Bとの間における環状鉛直面20Cが加圧面とし
て構成され、この加圧面20Cと、ケーシング11の基
端小径部11Aから大径部11Bに至る内壁面11Cと
の間に、加圧作動室(加圧室)20Dが形成されてい
る。
【0056】加圧作動室20Dには、図示しない作動油
供給路が接続されており、コントローラ等の制御信号に
基づき油圧源から所要の作動油圧が加圧作動室20Dに
供給され、ピストン20が所要量変位するようになって
いる。
【0057】このようにして、多板クラッチ機構Bのピ
ストン部B2がデフケース13外のケーシング11内に
形成されているのである。
【0058】ところで、ピストン部B2における大径の
摺動部20Bの内周には、ベアリング21が嵌挿されて
おり、さらにベアリング21の内周には、鞘軸7が嵌挿
され、鞘軸7はベアリング21の内輪に固着されてい
る。
【0059】すなわち、ピストン部B2がデフケース1
3外において回転部(鞘軸7)に対しベアリング21を
介し装備されており、ピストン20が変位すると、ベア
リング21を介して鞘軸7が軸方向へ所要量駆動される
ようになっている。
【0060】そして、鞘軸7は多板クラッチ機構Bにお
けるクラッチ板8Aに接続されており、上記のように鞘
軸7が駆動されると、クラッチ板8Aが変位し、多板ク
ラッチ機構Bをクラッチ板8A,8Bが互いに離隔した
結合解除状態から、クラッチ板8A,8Bが滑りを伴い
ながら適当に係合した半結合状態、更には、クラッチ板
8A,8Bが完全に結合した完全結合状態まで適宜制御
できるようになっている。
【0061】ところで、鞘軸7は、その先端がスプライ
ン機構を介し、第2のサンギヤ4Bに連結されており、
常時、変速機構Aで変速された速度の回転を行なうが、
ピストン20鞘軸7との間にベアリング21が介装
されており、ピストン20は、回転を行なわない非回転
式で構成されている。
【0062】これは、ピストン20とケーシング11内
壁との間に設けられたシール機構22を良好に保つため
であって、ピストン20は全く回転しないことが望まし
い。しかしながら、ベアリング21のみでは、ピストン
20は摩擦により連れ回りしてしまうため、ピストン部
B2においてピストン20とピストンリテーナとしての
ケーシング11との相対回転を規制する規制機構Cが設
けられている。
【0063】規制機構Cは、ケーシング11における鉛
直な内壁面11Cに、ピストン20側へ向け軸方向に延
在するように立設されたピン23と、このピン23を遊
挿されたピストン20の案内孔20Eとで構成されてお
り、ピストン20の変位に際し、ピストン20はピン2
3が案内孔20Eに案内されることにより、その回転を
規制されるようになっている。
【0064】そして、ピストン20とケーシング11と
の間に設けられたシール機構22は、次のように構成さ
れている。
【0065】すなわち、潤滑油(第2の液体)を内蔵さ
れた潤滑作動室(作動室)24がデフキャリア12とケ
ーシング11と包囲されて形成されており、ケーシング
11側の潤滑作動室24内に、ピストン20が摺動部2
0A,20Bをそなえて設けられている。特に、摺動部
20Aはケーシング11の基端小径部11A内に、摺動
部20Bはケーシング11の大径部11B内に位置して
いる。そして、摺動部20Aと摺動部20Bとの間のピ
ストン20の外壁面の段部と、基端小径部11Aと大径
部11Bとの間のケーシング11の内壁面11Cの段部
との間に、潤滑作動室24から仕切られ加圧作動油を供
給された加圧室20Dを形成されている。
【0066】潤滑作動室24に内蔵される潤滑油と加圧
室20Dに内蔵される作動油とは油の性質が異なるの
で、加圧室20D内の作動油に潤滑油が混入することや
潤滑作動室24内の潤滑油に作動油が混入することを防
止する必要がある。そこで、潤滑作動室24と加圧室2
0Dとの間の液密性を確保すべく、作動室24(つま
り、ケーシング11)の内壁とピストンの摺動部20
A,20Bとの間にそれぞれシール機構22が介装され
ている。
【0067】このシール機構22は、潤滑作動室側(デ
フケース13側,変速機構A側)に設けられた潤滑作動
室用シール(第2の液体用シール)22A,22Dと、
加圧室20D側に設けられた加圧室用シール(加圧作動
油用シール)22B,22Cとをそなえて構成され、潤
滑作動室用シール22A,22Dと加圧室用シール22
B,22Cとがその摺動範囲を相互に干渉しないように
離隔して配設されている。
【0068】すなわち、潤滑作動室用シール22A,2
2Dと加圧室用シール22B,22Cとの距離は、ピス
トン20のストロークの2倍以上に設定されており、そ
れぞれのシール22A,22B,22C,22Dがケー
シング11内壁上を摺動しても、内壁から掻き採った油
が異なる側の作動室内に浸入することのないように構成
されている。
【0069】なお、ここでは、各シール22A,22
B,22C,22Dは、ピストン20側に形成された環
状溝に摺動時に変形しにくいDリングを嵌合させて、D
リングの曲面側をケーシング11の内壁面11Cに摺接
させたものであり、ピストン20のストロークに伴うシ
−ルの自転等を防止できるようになっている。
【0070】そして、潤滑作動室用シール22A,22
Dと加圧室用シール22B,22Cとの間に位置に対応
する潤滑作動室(ケーシング11)の内壁において、全
周に亘る溝25が形成されるとともに、潤滑作動室(ケ
ーシング11)の内壁下部において溝25からケーシン
グ11の外部に至るように外気連通路26が設けられて
いる。なお、溝25は、潤滑作動室用シール22Aの摺
動範囲と加圧室用シール22Bの摺動範囲との間、及
び、潤滑作動室用シール22Dの摺動範囲と加圧室用シ
ール22Cの摺動範囲との間で、各摺動範囲に干渉しな
い位置に配設されている。
【0071】これは、各シール22A,22B,22
C,22Dが掻き採ったオイルを溝25に滞留させて、
潤滑作動室24と加圧室20Dとのオイル干渉を防止す
るとともに、いずれかのシールが破損したとき、溝25
に滞留させた後、外気連通路26を通じて漏出したオイ
ルを外部に排出させ、シールの破損を検知できるように
するとともに、混合した油が潤滑作動室24や加圧室2
0D側へ逆流しないようにすることを期待して装備され
ている。
【0072】ところで、多板クラッチ機構Bのクラッチ
部B1は、デフケース13内に設けられているが、デフ
ケース13における左右の端部13A,13Bは、クラ
ッチ部B1の加圧に際しての支持部材として構成されて
いる。
【0073】すなわち、鞘軸7に連結された多板クラッ
チ機構Bのクラッチハブ8Cは、クラッチ部B1がデフ
ケース13内に設けられているため、クラッチ部B1よ
り中央側に配設され、クラッチハブ8Cとデフケース1
3の端部13A,13Bとの間にクラッチ部B1が挟ま
れるようにして装備されている。
【0074】クラッチ部B1の加圧に際しては、ピスト
ン20により加圧されるクラッチハブ8Cと、この加圧
力を支持する支持部材が必要であるが、加圧力を鞘軸7
のピストン20による引っ張り力とすることにより、デ
フケース13の端部13A,13Bが支持部材としての
機能を持つようになっている。
【0075】これにより、支持部材を装備するためのス
ペースが不要になり、装置の小型化がもたらされるよう
になっている。
【0076】上述のように、多板クラッチ機構Bは鞘軸
7の引っ張り作動により、その結合が行なわれるが、鞘
軸7は、組み立て上の要請から、デフケース13外にお
いて、ピストン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bと
に分割可能に構成されている。そして、ピストン部側部
材7Aとクラッチ部側部材7Bとは、連結機構Dにより
組み立て時に連結されるようになっている。
【0077】連結機構Dは、図1及び図5〜10に示す
ように構成されており、クラッチ部側部材7Bの連結す
べき端部に、軸方向へ延在するように形成されて先端に
周方向への膨大部27Aをそなえた鍵状突起27が設け
られている。
【0078】一方、クラッチ部側部材7Bの連結すべき
端部には、クラッチ部側部材7Bの鍵状突起27の軸方
向への進入を許容するように、軸方向へ延在するように
形成された進入溝28が設けられている。
【0079】そして、進入溝28の先端には、鍵状突起
27における膨大部27Aの周方向への回転により嵌合
する嵌合部28Aが形成されている。
【0080】さらに、内径をピストン部側部材7Aの外
径にほぼ等しく形成されたリング29が設けられ、リン
グ29の内周には、所要の大きさのストッパ29Aが内
方へ向け突設されており、ストッパ29Aは、鍵状突起
27の膨大部27Aと進入溝28の嵌合部28Aとの嵌
合時において発生する進入溝28と鍵状突起27との間
の遊びに埋設され、鍵状突起27の膨大部27Aと進入
溝28の嵌合部28Aとの嵌合状態を保持する保持部材
として構成されている。
【0081】ストッパ29Aは、ピストン部側部材7A
において鍵状突起27の立設された基部における膨大部
27Aの形成されない側に設けられた退避溝27Bに嵌
挿されうるように形成されており、退避溝27Bの軸方
向深さは、ストッパ29Aの軸方向長さと一致するよう
になっている。
【0082】また、ピストン部側部材7Aにおける進入
溝28の幅は、リング29におけるストッパ29Aの幅
と、ピストン部側部材7Aにおける鍵状突起27の幅と
を加算した値に一致するようになっている。
【0083】さらに、ピストン部側部材7Aの連結端か
ら所要の間隔をおいて、スナップリング取り付け溝27
Cが全周にわたり形成されており、リング29をクラッ
チ部側部材7B側へ駆動し、ストッパ29Aが進入溝2
8と鍵状突起27との間の遊びに埋設された状態になっ
たとき、スナップリング取り付け溝27Cにスナップリ
ング30を取り付けることにより、ストッパ29Aのピ
ストン部側部材7A側への退避が係止されるようになっ
ている。
【0084】このような構成により、鞘軸7におけるピ
ストン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bとの連結は
つぎのようにして行なわれる。
【0085】まず、図7に示すように、リング29をピ
ストン部側部材7Aに冠装し、ストッパ29Aを退避溝
27Bに進入させて完全に退避させる。これにより、ス
トッパ29Aの先端は、ピストン部側部材7Aにおける
連結端の先端縁に一致するようになる。
【0086】ついで、図8に示すように、ピストン部側
部材7Aの鍵状突起27を、クラッチ部側部材7Bの進
入溝28に進入させ、完全に進入したところで、ピスト
ン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bとを相対的に回
転させて、図9に示すように、鍵状突起27の膨大部2
7Aを進入溝28の嵌合部28Aに嵌合させるる。
【0087】これにより、膨大部27Aの背側には、進
入溝28との間に遊びが発生する。この遊びにストッパ
29Aを進入させるべく、図10に示すように、リング
29をクラッチ部側部材7B側へ移動させ、ストッパ2
9Aが遊びに埋設された状態にする。
【0088】さらに、スナップリング30をスナップリ
ング取り付け溝27Cに嵌め込むが、このとき、ストッ
パ29Aの後端は、スナップリング取り付け溝27Cの
直前にあるため、スナップリング30の嵌め込み作業は
容易に行なわれる。
【0089】そして、ストッパ29Aは、スナップリン
グ30によりピストン部側部材7A側への退避を係止さ
れるため、ストッパ29Aは、鍵状突起27の膨大部2
7Aと進入溝28の嵌合部28Aとの嵌合状態を保持す
る保持部材となる。
【0090】すなわち、進入溝28が鍵状突起27とス
トッパ29Aとにより充たされ、この状態がスナップリ
ング30により保持されるようになるため、ピストン部
側部材7Aとクラッチ部側部材7Bとの間における回転
力の伝達は鍵状突起27及びストッパ29Aにより行な
われ、ピストン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bと
の間の軸方向への駆動力伝達は、鍵状突起27の膨大部
27Aと進入溝28の嵌合部28Aとの係合により行な
われる。
【0091】このように、本連結機構Dは、回転力と軸
力とを共に伝達できるようになっている。
【0092】なお、鍵状突起27、膨大部27A、進入
溝28、嵌合部28Aは、図6〜10に示すように平面
の集合から形成する他、図5に示すようになめらかな曲
線形状に形成してもよく、この場合は、膨大部27Aと
嵌合部28Aとの嵌合が、曲線形状に案内されて、スム
ーズに行なわれる。
【0093】そして、このようにして組み立てられた連
結機構Dが、デフケース13の軸受け部分に内設される
が、ここでは、図1に示すように、駆動力伝達補助部材
及びピストン駆動力伝達部材としての鞘軸7の連結機構
Dの部分は、ブッシュ35を介して、デフケース13の
軸受け部分に摺接されており、連結機構Dの外周面が軸
受け部分に直接摺接しないようになっている。
【0094】ところで、変速機構Aについては、その概
略を前述したが、以下に、その遊星歯車機構について詳
述する。
【0095】すなわち、本機構では、一体に形成された
第1のプラネタリギヤ5A及び第2のプラネタリギヤ5
Bに、第1のサンギヤ4A及び第2のサンギヤ4Bが螺
合しており、第2のサンギヤ4Bには鞘軸7を介しピス
トン20による変位力が軸方向に作用する。
【0096】したがって、第1のプラネタリギヤ5A、
第2のプラネタリギヤ5B、第1のサンギヤ4A及び第
2のサンギヤ4Bは、その軸方向両側から支承してやる
必要があり、このため、これらは、2分割式のプラネタ
リキャリア6(61,62)によりベアリング30を介
し挟持され、軸力をキャリア6が支承するようになって
いる。
【0097】2分割式のプラネタリキャリア6(61,
62)は、ボルト31により相互に固着されている。ま
た、プラネタリキャリア6(61,62)には、ピニオ
ンシャフト6Aの両端部を嵌挿すべく、ピニオンシャフ
ト取り付け穴61A,62Aが形成されている。
【0098】さらに、ピニオンシャフト6Aとプラネタ
リキャリア6(61,62)とを固定すべく、プラネタ
リキャリア62の外側面に接する所要の厚みのストッパ
リング32が設けられている。このストッパリング32
は、図3に示すような平面形状をそなえている。
【0099】そして、ピニオンシャフト6Aの先端部に
おいて所要の位置に嵌合溝33が設けられており、ピニ
オンシャフト取り付け穴61A,62Aを介しプラネタ
リキャリア61から外側へピニオンシャフト6Aの先端
部が突出した状態において、ストッパリング32の所要
部を嵌挿させうるようになっている。
【0100】ストッパリング32には、ピニオンシャフ
ト6Aの軸方向移動を許容するピニオンシャフト進入可
能部32Aと、ピニオンシャフト32の軸方向移動を嵌
合溝33との嵌合により係止するピニオンシャフト係止
部32Bとが設けられている。すなわち、ストッパリン
グ32におけるピニオンシャフト進入可能部32Aは、
ストッパリング32の内周を切り欠いた凹みで構成さ
れ、ピニオンシャフト進入可能部32A以外の部分は、
ピニオンシャフト6Aの挿通を許容しないようになって
いる。
【0101】一方、ピニオンシャフト6Aにおける嵌合
溝33は、ピニオンシャフト6Aの先端部の半径方向外
側へ開口し、ピニオンシャフト6Aにおける直径の1/
3程度の深さで形成されている。
【0102】そして、ストッパリング32におけるピニ
オンシャフト係止部32Bは、ストッパリング32の内
周の径をピニオンシャフト6Aにおける嵌合溝33の底
より少し大きい状態にすることにより、ストッパリング
32の内周部が嵌合溝33と嵌合してピニオンシャフト
6Aを軸方向に係止するように構成されている。
【0103】さらに、ストッパリング32と嵌合溝33
との嵌合状態においてボルト31のプラネタリキャリア
6Aへの装着を許容するボルト取り付け部としてボルト
取り付け穴32Cが設けられている。
【0104】これは、ストッパリング32を嵌合溝33
と嵌合させる状態で回転させていくと、ボルト取り付け
穴32Cを通じてプラネタリキャリア6(61,62)
に形成されたボルト取り付け穴62Bが覗けるようにな
り、この状態で、ボルト31の取り付けが行なわれるよ
うになっている。
【0105】このような構成により、ピニオンシャフト
6Aの固定作業は次のように行なわれる。
【0106】まず、ピニオンシャフト取り付け穴61
A,62Aを通じ、ピニオンシャフト6Aを出力軸2,
3の軸端側から嵌挿する。このとき、プラネタリキャリ
ア62の外側面にストッパリング32を当接させ、ピニ
オンシャフト進入可能部32Aをピニオンシャフト取り
付け穴61A,62Aに整合させる。
【0107】ピニオンシャフト6Aは、ピニオンシャフ
ト取り付け穴61A,62A及びピニオンシャフト進入
可能部32Aを通じて挿通され、その先端がプラネタリ
キャリア62外側面から突出する状態となり、この状態
で、ピニオンシャフト6Aの嵌合溝33を半径方向にお
ける外方へ向かわせるようにピニオンシャフト6Aを回
転調整する。
【0108】この後、ストッパリング32を回転させ、
ボルト取り付け穴32Cからプラネタリキャリア62の
ボルト取り付け穴62Bが覗けるように調整する。
【0109】これにより、ストッパリング32の内周部
で構成されるピニオンシャフト係止部32Bが自動的に
ピニオンシャフト6Aの嵌合溝33に嵌合し、ピニオン
シャフト6Aはその軸方向移動を係止されるようにな
る。
【0110】そして、ボルト取り付け穴62Bを通じボ
ルト31を締めつけることにより、プラネタリキャリア
6(61,62)が締めつけ固定され、ピニオンシャフ
ト6Aの固定が完了する。
【0111】なお、ボルト31はその取り付け時におい
て、頭部上端がストッパリング32の外表面から突出す
るように形成されており、ストッパリング32が回転し
ようとしても、ボルト31の頭部がストッパリング32
のボルト取り付け穴32C周縁を係止することにより、
その回転が禁止される。
【0112】このようにして、2分割式のプラネタリキ
ャリア6(61,62)結合に際しての整合と、ピニオ
ンシャフト6A取り付けのための整合とが同時に容易に
行なわれ、ピニオンシャフト6Aごとに固定作業を行な
うことなく、ストッパリング32取り付けのみの少ない
工数で作業が完了する。
【0113】ところで、ピニオンシャフト6Aと第1の
プラネタリギヤ5A及び第2のプラネタリギヤ5Bとの
潤滑機構は次のように構成されている。
【0114】すなわち、図3に示すように、プラネタリ
キャリア62において、車載した場合の上端部にあたる
部分に、オイル溜まり41が設けられるとともに、この
オイル溜まり41から各ピニオンシャフト取り付け穴6
2Aへ連通するオイル供給孔42が設けられている。
【0115】そして、ピニオンシャフト6Aには、その
軸心部において軸方向に延在するピニオンシャフト側オ
イル供給孔6Bが形成されるとともに、ピニオンシャフ
ト側オイル供給孔6Bからピニオンシャフト6Aの外周
へ連通するオイル導出路6Cが設けられている。
【0116】ピニオンシャフト側オイル供給孔6Bは、
ピニオンシャフト6Aの端部において外周へ連通してお
り、この連通口及びプラネタリキャリア62における取
り付け穴62A内周のオイル供給孔42の開口が整合さ
れて、ピニオンシャフト側オイル供給孔6Bとオイル供
給孔42とが、ピニオンシャフト6Aの端部及び取り付
け穴62Aを介し連通している。
【0117】このような構造により、装置の運転が行な
われると、第1のプラネタリギヤ5A及び第2のプラネ
タリギヤ5Bが出力軸2,3を中心とする回転を行な
い、ケーシング11内の潤滑油が掻き上げられる。
【0118】これにより、掻き上げられた潤滑油は、プ
ラネタリキャリア62上端のオイル溜まり41に滴下
し、滞留する。こうして、オイル溜まり41内に滞留し
た潤滑油は、重力の作用によりオイル供給孔42を通じ
て各ピニオンシャフト6Aの取り付け穴62Aに供給さ
れる。
【0119】供給された潤滑油は、ピニオンシャフト6
A軸心部のピニオンシャフト側オイル供給孔6Bに進入
し、オイル導出路6Cを通じてピニオンシャフト6A外
周におけるプラネタリギヤ5A,5Bの枢支部に導出さ
れる。
【0120】これにより、新たな加圧機構を装備するこ
となく、効率のよい潤滑が行なわれ、プラネタリキャリ
ア6(61,62)を固定式に装備するという特徴を利
用して重力による潤滑油供給が実現する。
【0121】ところで、変速機構Aにおける第1のプラ
ネタリギヤ5A及び第2のプラネタリギヤ5Bは、前述
のように同一歯数で一体のピニオン5として形成されて
いるが、これらの第1及び第2のプラネタリギヤ5A,
5Bは、一般的には、11図を参照して既に説明したよ
うな、異なる歯数で形成する。
【0122】しかしながら、このように異なる歯数で形
成する場合は、第1のプラネタリギヤ5Aと第2のプラ
ネタリギヤ5Bとの間に歯切りのための製作用遊びを必
要とする。
【0123】したがって、変速機構Aがその幅方向に大
型化し、限られた小さなスペース内に装備すべき本装置
に対する条件を満足できなくなり、本装置の実車への装
備を行なえなくなる。
【0124】そこで、本実施例では、第1のプラネタリ
ギヤ5Aと第2のプラネタリギヤ5Bとを同一の歯数で
一体に形成し、これに螺合する第1のサンギヤ4Aと第
2のサンギヤ4Bとの歯数を転位により異なるもので構
成している。
【0125】これにより、第1のプラネタリギヤ5Aと
第2のプラネタリギヤ5Bとの間の製作用遊びを必要と
しなくなり、幅を小さくできるようになって、変速機構
Aを幅方向に小型化し、実車への装備を可能にしてい
る。
【0126】なお、図2,4において、符号11aはレ
ベルプラグ、11bはマグネットプラグ、11cはエア
ブリーダ、11dは油圧供給口である。
【0127】本発明の一実施例としての車両用左右駆動
力配分装置は、上述のように構成されるため、以下のよ
うに作動する。
【0128】まず、入力軸1の駆動トルクを、第1の出
力軸2により多く伝達したい場合には、その配分の割合
に応じて、第2の出力軸3側の多板クラッチ機構Bに所
要の流体圧を供給する。
【0129】これにより、第2の出力軸3側の多板クラ
ッチ機構Bが所要の結合状態となり、変速機構Aにより
増速されたクラッチ板8Aから通常の回転速度であるク
ラッチ板8Bへトルク伝達が行なわれて、第2の出力軸
3へ入力された駆動トルクのうちの所要量が入力軸1へ
返送され、これに応じて、第1の出力軸2へ転送され
る。
【0130】したがって、第1の出力軸2へ伝達される
駆動トルクが第2の出力軸3へ伝達される駆動トルクよ
り所要量多くなり、目標とするトルク配分が実現され
る。
【0131】一方、第2の出力軸3へのトルク配分を第
1の出力軸2へ伝達される駆動トルクより大きくする場
合は、上述とは逆に、第1の出力軸2側の多板クラッチ
機構Bへ所要の流体圧を供給する。
【0132】これにより、上記同様にして、第2の出力
軸3への配分比が多い状態でのトルク配分が実現され
る。
【0133】また、配分比の大小は、多板クラッチ機構
Bへ供給される流体圧の大小で調整され、ピストン20
の変位量の制御により多板クラッチ機構Bの結合度を調
整することにより、返送されるトルク量を調整して行な
われる。
【0134】このような機構によれば、ブレーキ等のエ
ネルギーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、
一方のトルクの所要量を他方に転送することによりトル
ク配分が調整されるため、ほとんどトルクロスやエネル
ギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得るこ
とができる。
【0135】ところで、多板クラッチ機構Bにおけるク
ラッチ部B1の作動は、デフケース13外に配設された
ピストン部B2を駆動することにより、デフケース13
内に配設されたクラッチ部B1を加圧することで行なわ
れるが、このように、クラッチ部B1がデフケース13
内に設けられることで、車両用左右駆動力配分装置が幅
方向に小型化される。
【0136】また、ピストン部B2をデフケース13外
に設けることにより、ピストン20の外径をデフケース
13の外径に制限されることなく設定できるようにな
り、ピストン20の有効加圧面積を大きく確保できるよ
うになる。
【0137】これにより、クラッチ部B1において必要
な結合力を、ピストン20の小さなストロークにより得
られるようになり、車両用左右駆動力配分装置の幅方向
の小型化が実現する。
【0138】また、クラッチ部B1の加圧に際しては、
クラッチハブ8Cが鞘軸7を介しピストン20により引
っ張られ、クラッチ板8Aとクラッチ板8Bとが押圧さ
れることにより行なわれる。このとき、押圧はクラッチ
板8Bがデフケース13の端部13A,13Bにより支
持されることにより行なわれ、デフケース13が支持部
材となって、多板クラッチ機構Bの結合が行なわれる。
このように、ピストン20によりクラッチ板8Aとクラ
ッチ板8Bとを押圧する際には、鞘軸7が中継してお
り、鞘軸7はピストン20の摺動に応じてクラッチ部B
1を押圧する押圧部材として機能する。
【0139】すなわち、通常多板クラッチ機構Bでは、
押圧力を支持する反力部材(支持部材)を必要とする
が、鞘軸7が多板クラッチ機構Bの結合時に引張部材と
して構成されていることにより、デフケース13を支持
部材とすることができるようになる。
【0140】したがって、デフケース13を支持部材と
して利用できるため、あらためて支持部材を設ける必要
がなくなり、車両用左右駆動力配分装置が幅方向に小型
化される。
【0141】ところで、上述の多板クラッチ機構B
合を行なうため、ピストン20の駆動が行なわれるが、
ピストン20は、規制機構Cを付設されており、そのス
トロークに際しピン23を案内孔20Eにより案内され
るとともに、ピストン20の回転を規制される。
【0142】すなわち、ピストン20は、鞘軸7にベア
リング21を介し装備されているため、鞘軸7の回転駆
動に際し、ベアリング21における摩擦により、ピスト
ン20は回転力を受け、ピン23及び案内孔20Eによ
る回転規制がない場合には、ピストン20が回転を行な
って、ピストン20のシール機構22等が短期間のうち
に消耗し易くなり、本実施例の機構を実現し難い。しか
し、規制機構Cによりピストン20の回転を規制される
ので、シール機構22の性能が長期にわたり安定して確
保される。
【0143】また、多板クラッチ機構Bのクラッチ部B
1とピストン部B2とは、鞘軸7により連結され、これ
により、クラッチ部B1をデフケース13内に装備し、
ピストン部B2をデフケース13外に装備することが可
能になっている。
【0144】そして、クラッチ部B1の装備は、予めデ
フケース13内に組み込んだ状態でデフキャリア12に
取り付けることにより行なわれ、ピストン部B2の装備
も、予め変速機構Aのケーシング11内に組み込んだ状
態で行なわれる。
【0145】したがって、クラッチ部B1とピストン部
B2とを連結する鞘軸7は、デフケース13側と変速機
構A側とで分割可能に構成される必要があり、本実施例
では、ピストン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bと
に分割され、連結機構Dにより連結される。
【0146】これにより、クラッチ部B1をデフケース
13内に装備しながら、ピストン部B2を変速機構A側
に装備することができ、本実施例の機構が組み立て可能
になる。
【0147】そして、連結機構Dによる鞘軸7のピスト
ン部側部材7Aとクラッチ部側部材7Bとの連結は、連
結機構Dの構成の説明とともに前述したとおり、容易に
行なわれ、変速機構Aからの回転力の伝達と、多板クラ
ッチ機構Bにおけるピストン部B2の軸方向への駆動力
伝達とが、連結機構Dの特性により確実に行なわれる。
【0148】また、変速機構Aにおけるプラネタリキャ
リア6(61,62)は、第2のサンギヤ4Bに軸方向
の駆動力が作用するため、2分割式に構成する必要があ
り、本実施例では、プラネタリキャリア61とプラネタ
リキャリア62とは、前述した通りの手順で、ストッパ
リング32を用いて容易に行なわれ、作業性良く、変速
機構Aの組み立てが行なわれる。
【0149】さらに、変速機構Aにおける第1のプラネ
タリギヤ5A及び第2のプラネタリギヤ5Bとピニオン
シャフト6Aとの潤滑は、前述したとおり、オイル溜ま
り41、オイル供給孔42、ピニオンシャフト側オイル
供給孔6B及びオイル導出路6Cを通じて支障なく行な
われる。
【0150】また、これらの潤滑機構により、新たな加
圧機構の装備を必要としなくなり、本実施例の機構の小
型化が実現する。
【0151】ところで、ピストン部B2におけるシール
機構22は、次のような作動を行なう。
【0152】すなわち、潤滑作動室用シール22A,2
2Dと加圧室用シール22B,22Cとがその摺動範囲
を相互に干渉しないように離隔して配設されているた
め、潤滑油を所要量内蔵された潤滑作動室24としての
デフキャリア12内及びケーシング11内と、ピストン
20により仕切られ加圧作動油を供給された加圧室20
Dとが確実に液密性を確保される。
【0153】したがって、ピストン20はその摺動によ
り、内壁に油膜を生成し、この油膜を掻きとることによ
り、潤滑油と加圧作動油とが相互に混入してしまう可能
性があるが、シール間の距離により、加圧室用シール2
2B,22Cが潤滑作動室24内壁の油膜を掻き入れる
ことはなく、また、潤滑作動室用シールが22A,22
Dが加圧室20D内の加圧作動油を掻き入れることはな
いため、各作動室内の動作が良好に行なわれる。
【0154】すなわち、潤滑作動室24内には、厚い油
膜を生成すべく、比較的粘度の高い油(ハイポイドギヤ
オイル等)が潤滑油として内蔵され、加圧室20Dには
ピストン20の作動応答性を良くするため、比較的粘度
の低いATF(オートマチックトランスミッションフル
ード)やパワステ油等が用いられる。したがって、これ
らの油相互の混入が発生した場合には、潤滑作動室24
で焼きつきが発生する可能性があるとともに、加圧室2
0Dでピストン20の作動応答性が悪化する可能性があ
るが、上述の作動により、これらの不具合が回避され、
本実施例の機構が長期にわたり安定して運転される。
【0155】そして、シール機構22において、潤滑作
動室用シール22A,22Dと加圧室用シール22B,
22Cとの間位置に対応する潤滑作動室24の内壁に
は、全周に亘る溝25が形成されるとともに、潤滑作動
室24の内壁下部に形成された溝25に至る外気連通路
26が設けらているため、潤滑作動室24と加圧室20
Dから漏洩した潤滑油もしくは加圧作動油は、内壁にお
いて全周に亘る溝25に滞留し、潤滑作動室24及び加
圧室20Dには浸入しないため、各作動室内の動作が良
好に行なわれる。
【0156】また、シール機構22が破損した場合に
は、破損した側のオイルが外気連通路26を通じて漏出
し、その状況がすぐに発見される。
【0157】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1に記載の
本発明の車両用左右駆動力配分装置によれば、エンジン
の動力が伝達される入力部と、左輪側回転軸と、右輪側
回転軸と、上記入力部の動力を上記左輪側回転軸及び上
記右輪側回転軸に配分する差動機構と、上記差動機構を
収容するデフケースと、上記左輪側回転軸と上記右輪側
回転軸とのいずれか一方の回転軸の回転速度を変速して
上記入力部に選択的に伝達する動力伝達手段と、をそな
え、上記動力伝達手段が、上記一方の回転軸の回転速度
を変速する変速機構と、上記変速機構の出力部に連接さ
れて上記一方の回転軸に相対回転可能に枢支される円筒
部材と、上記円筒部材と上記入力部との間に介装された
クラッチと、上記クラッチを押圧するピストン部と、を
有するとともに、上記クラッチが上記デフケース内に収
容され、上記ピストン部が上記デフケース外に設けられ
、該ピストン部が上記円筒部材を介して上記クラッチ
を押圧するように構成されるという構成により、次のよ
うな利点ないし効果が得られる。デフケース内に差動
機構とともにクラッチを収容させることで、差動機構及
びクラッチをコンパクトに構成でき、デフケースを通常
用いられているキャリア12内に収納できるため、通常
用いられているキャリア等の部品の共用化が可能とな
り、自由自在の駆動力配分を行なえる機構を、製造コス
トの上昇を招かないで装備できるようになる。クラッ
チの作動は、差動機構のデフケース外に配設されたピス
トン部を駆動することによる、デフケース内に配設され
たクラッチへの流体圧による加圧により行なわれるた
め、ピストン部はその有効加圧面積を、デフケースの形
状に依存することなく設定でき、十分な有効加圧面積を
確保できる。
【0158】また、請求項2に記載の本発明の車両用左
右駆動力配分装置によれば、請求項1記載の装置におい
て、上記デフケースが、上記ピストン部の作動に際して
上記クラッチの支持部材として機能するという構造によ
り、上記の効果ないし利点の他に次のような利点ないし
効果が得られる。ラッチの加圧に際してデフケースが
支持部材となってクラッチの結合が行なわれるため、支
持部材を新たに設ける必要がなくなり、小型化、軽量化
に寄与する。
【0159】さらに、請求項3に記載の本発明の車両用
左右駆動力配分装置によれば、請求項1又は2記載の装
置において、上記ピストン部が、作動流体圧に応じて摺
動するピストンと、該ピストンの摺動に応じて上記クラ
ッチを押圧する押圧部材と、上記ピストンと上記押圧部
材との間に介装されたベアリングと、上記ピストンを支
持するピストンリテーナと上記ピストンとの相対回転を
規制する規制機構と、から構成されるという構成によ
り、上記の効果ないし利点の他に次のような利点ないし
効果が得られる。ピストンがデフケース外において回転
部に対しベアリングを介し装備され、クラッチ部の加圧
に際して、ストンがピストンリテーナに対し回転しよ
うとするが、ピストンとピストンリテーナとの相対回転
を規制する規制機構により、回転が規制され、ピストン
とピストンリテーナとの間のシール性能が長期にわたり
安定して確保される。さらに、請求項4に記載の本発明
の車両用左右駆動力配分装置によれば、請求項1〜3の
いずれかの項に記載の装置において、上記ピストン部
が、上記デフケースを収納するデフキャリア外に設けら
れているので、デフキャリアの容積を拡大することな
く、本装置を構成できるようになるため、デフキャリア
として従来品を利用することが可能になり、装置のコス
ト増を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の要部構成について下半部を回転断面で示す横断
面図である。
【図2】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の要部構成を示す断面図(図1のA−A矢視断面
図)である。
【図3】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の要部構成を示す断面図(図1のB−B矢視断面
図)である。
【図4】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の要部構成を示す断面図(図1のC−C矢視断面
図)である。
【図5】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の軸連結機構の構造を示す要部正面図である。
【図6】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の軸連結機構の要部構造を示す分解斜視図であ
る。
【図7】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の軸連結機構の組み立て工程を示す摸式的正面図
である。
【図8】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の軸連結機構の組み立て工程を示す摸式的正面図
である。
【図9】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力配
分装置の軸連結機構の組み立て工程を示す摸式的正面図
である。
【図10】本発明の一実施例としての車両用左右駆動力
配分装置の軸連結機構の組み立て工程を示す摸式的正面
図である。
【図11】本発明の案出過程で提案された車両用左右駆
動力配分装置の原理を示す摸式図である。
【図12】従来のデファレンシャル装置の概略構成を示
す摸式的断面図である。
【符号の説明】
1 入力部としての入力軸 2 左輪側回転軸としての第1の出力軸 3 右輪側回転軸としての第2の出力軸 4A 第1のサンギヤ 4B 第2のサンギヤ 5 一体のピニオン 5A 第1のプラネタリギヤ 5B 第2のプラネタリギヤ 6 プラネタリキャリア 6A ピニオンシャフト 7 駆動力伝達補助部材及びピストン駆動力伝達部材
び押圧部材としての鞘軸(円筒部材) 7A ピストン部側部材 7B クラッチ部側部材 8A クラッチ板 8B クラッチ板 8C クラッチハブ 9 ディファレンシャル 9A ベベルギヤ(リングギヤ) 9B ベベルギヤ(ドライブピニオン) 10 サークリップ 11 ピストンリテーナとしてのケーシング 11A 基端小径部 11B 大径部 11C 内壁面 12 デフキャリア 12A クラッチプレ−ト側部材 12B 軸側部材 13 デフケース 13a 突起 13A 端部 13B 端部 14 リングギヤ 15 プラネタリギヤ 16 サンンギヤ 17 キャリア 18 ベアリング 19 ボルト 20 ピストン 20A 摺動部 20B 摺動部 20C 環状鉛直面 20D 加圧作動室(加圧室) 20E 案内孔 21 ベアリング 22 シール機構 22A,22D 潤滑作動室用シール(第2の液体用シ
ール) 22B,22C 加圧室用シール(加圧作動油用シー
ル) 23 ピン 24 潤滑作動室(作動室) 25 溝 26 外気連通路 27 鍵状突起 27A 膨大部 27B 退避溝 27C スナップリング取り付け溝 28 進入溝 28A 嵌合部 29 リング 29A ストッパ 30 スナップリング 31 ボルト 32 ストッパリング 32A ピニオンシャフト進入可能部 32B ピニオンシャフト係止部 32C ボルト取り付け穴 33 嵌合溝 35 ブッシュ 41 オイル溜まり 42 オイル供給孔 61 プラネタリキャリア 61A ピニオンシャフト取り付け穴 62 プラネタリキャリア 62A ピニオンシャフト取り付け穴 62B ボルト取り付け穴 A 変速機構 B 多板クラッチ機構 B1 クラッチ部(クラッチ) B2 ピストン部 C 規制機構 D 連結機構 S 駆動力伝達制御機構(動力伝達手段) S1 差動機構
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60K 17/354 B60K 17/16 B60K 17/30 F16D 25/063 F16H 48/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの動力が伝達される入力部と、 左輪側回転軸と、 右輪側回転軸と、 上記入力部の動力を上記左輪側回転軸及び上記右輪側回
    転軸に配分する差動機構と、 上記差動機構を収容するデフケースと、 上記左輪側回転軸と上記右輪側回転軸とのいずれか一方
    の回転軸の回転速度を変速して上記入力部に選択的に伝
    達する動力伝達手段と、をそなえ、 上記動力伝達手段が、 上記一方の回転軸の回転速度を変速する変速機構と、 上記変速機構の出力部に連接されて上記一方の回転軸に
    相対回転可能に枢支される円筒部材と、 上記円筒部材 と上記入力部との間に介装されたクラッチ
    と、 上記クラッチを押圧するピストン部と、を有するととも
    に、 上記クラッチが上記デフケース内に収容され、上記ピス
    トン部が上記デフケース外に設けられて、該ピストン部
    が上記円筒部材を介して上記クラッチを押圧するように
    構成されていることを特徴とする、車両用左右駆動力配
    分装置。
  2. 【請求項2】 上記デフケースが、上記ピストン部の作
    動に際して上記クラッチの支持部材として機能すること
    を特徴とする、請求項1記載の車両用左右駆動力配分装
    置。
  3. 【請求項3】 上記ピストン部が、作動流体圧に応じて
    動するピストンと、該ピストンの摺動に応じて上記ク
    ラッチを押圧する押圧部材と、上記ピストンと上記押圧
    部材との間に介装されたベアリングと、上記ピストンを
    支持するピストンリテーナと上記ピストンとの相対回転
    を規制する規制機構と、から構成されていることを特徴
    とする、請求項1又は2記載の車両用左右駆動力配分装
    置。
  4. 【請求項4】 上記ピストン部が、上記デフケースを収
    納するデフキャリア外に設けられていることを特徴とす
    る、請求項1〜3のいずれかの項に記載の車 両用左右駆
    動力配分装置。
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