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JP2992291B2 - 植物および細菌における転写 - Google Patents

植物および細菌における転写

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JP2992291B2
JP2992291B2 JP60-36263A JP3626385A JP2992291B2 JP 2992291 B2 JP2992291 B2 JP 2992291B2 JP 3626385 A JP3626385 A JP 3626385A JP 2992291 B2 JP2992291 B2 JP 2992291B2
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JP
Japan
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dna
plant
structural gene
plasmid
promoter region
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JP60-36263A
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JPS60221080A (ja
Inventor
ビー・ゲルビン スタントン
Original Assignee
マイコジェン プラント サイエンス インコーポレイテッド
パーデュー リサーチ ファウンデーション インコーポレイテッド
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Publication date
Priority claimed from US06/584,244 external-priority patent/US4771002A/en
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,遺伝子工学と植物培養との分野に関し,特
に,植物と細菌の双方における転写の促進と選択マーカ
ーに対する手段を供給する。 (従来の技術) 本発明に密接に関係する技術的背景の情報を開示する
出版物を下記に示す。これらの出版物はこの従来技術の
項で詳細に論議されている。M.W.Bevan et al.(1983)
Nature 304:184−187,R.T.Fraley et al.(1983)Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 80:4803−4807およびL.Herrera−Es
trella et al.(1983)Nature 303:209−213,は細菌抗
生物質耐性構造遺伝子の植物での発現をもたらすような
nosプロモーターの使用を開示した(TIPプラスミドの操
作を参照)。R.F.Barker et al.(1983)Plant Molec.B
iol.:335−350およびR.F.Barker and J.D.Kemp,U.S P
atent application ser.no.553,786はオクトピン型プラ
スミドpTi15955由来のT−DNAの完全な配列を開示す
る;他のTiプラスミド遺伝子の相同性のある公にされた
配列はそこに引用されている(TIPプラスミド上の遺伝
子)。N.Murai and J.D.Kemp(1982)Nucleic Acids Re
s.10:1679−1689は1600塩基の大きさを持ち,その配列
のオープンリーディングフレーム(ORF)24をコードし
ているとして,そこで同定された1450塩基転写物(1450
bTx)の存在とおよその位置を開示した。S.B.Gelvin et
al.(1981)Plasmid :17−29はTRがアグロバクテリ
ウム細胞と植物細胞中で転写されると開示した(TIPプ
ラスミド上の遺伝子)。S.J.Karcher et al.(1984)Mo
l.Gen.Genet.,は,1450bTxの位置を決定した。2元目的
機能の特徴は,ここで開示され,教えられるので,前述
の参考文献には報告されなかった。L.Herrera−Estrell
a et al.(1983)EMBO J.:987−995はカナマイシンと
メトトレキセートに対する耐性をコードする構造遺伝子
が,nosプロモーターの後に置かれると,細菌および植物
細胞の両方で発現したと,報告した。 シャトルベクター G.B.Ruvkun and F.M.Ausubel(1981)Nature 298:85
−88によって発明されたシャトルベクターは,外来遺伝
物質を巨大プラスミド,ウィルスあるいはゲノム中の適
切な位置へ挿入する方法を提供する。巨大プラスミドあ
るいはゲノムを扱う際に出会う2つの主な問題がある。
初めに,巨大プラスミドはそれぞれの制限酵素に対する
多くの部位をもつであろう。独特な部位特異性開裂反応
は再現できず,複数の部位開裂反応,それに続く結合は
変わって欲しくない順序や方向の多くの断片の奪い合い
による非常な困難さを導く。第2は,巨大DNAプラスミ
ドでの形質転換効率が大変低いことである。シャトルベ
クターは外来遺伝物質のしばしばインビトロでの小さい
プラスミドへの挿入を促進し,次いで通常インビボの技
術による巨大プラスミドへの転移によりこれらの困難さ
を克服することを可能にする。 シャトルベクターは,最終宿主細菌へ導入されること
が可能で,そこで独立に維持されることができるレプリ
コンを持つDAN分子,通常,プラスミドから成る。ま
た,シャトルベクターは,外来遺伝物質が挿入されるこ
とができる宿主ゲノムの断片のコピーと,やはり宿主ゲ
ノム断片へ挿入される選択できる特徴をコードするDNA
小片を含む。選択できる特徴(マーカー)はインビボで
トランスポゾン突然変異によるか,あるいは制限酵素と
リガーゼのインビボでの使用によって,都合のよいこと
に挿入される。 当該シャトルベクターは最終宿主細胞へ特に(アグロ
バクテリウム属を含む)リゾビアッシー科の細菌へ,次
のような方法で導入されることが可能である。三親交雑
法(Ruvkin and Ausubel,前出),二親交雑における自
律移動可能なベクターの直接転移,アグロバクテリウム
細胞による外来DNAの直接取込み(“形質転換",M.Holst
ers et al.(1978)Molec.Gen.Genet.163:181−187の条
件を用いて)もうひとつの細菌細胞とのアグロバクテリ
ウムのスフェロプラスト融合リポゾームで包括されたDN
Aの取込み,あるいはインビトロでパッケージされ得る
ウィルスに基づいたシャトルベクターでの感染。リゾビ
アッシー科の中で見つけられた巨大プラスミドの操作で
あり,当業者に良く知られている技術である三親交雑は
当該シャトルベクターを保持する株と,プラスミド起動
と接合伝達に対する遺伝子を含む移動可能なプラスミド
を保持する株との交雑を含む。もし,当該シャトルベク
ターがプラスミド遺伝子によって起動することが可能な
ら,当該シャトルベクターは巨大ゲノム,例えば,アグ
ロバクテリウム株のTiあるいはRiプラスミドを保持する
宿主細胞へ転移される。 当該シャトルベクターが宿主細胞へ導入された後,可
能な事象は,マーカーのどちらかの側でひとつの組み換
え事象を伴う2重交差を含む。このホモ部分二倍体化事
象は,挿入を欠いた相同小片の置き換えで,マーカーを
含むDNA小片の宿主ゲノムへの転移という結果を招く。
元のシャトルベクターを失った細胞の選択をするため,
当該シャトルベクターは,最終宿主細胞中での複製不可
能か,あるいは宿主細胞中で元より存在している独立に
選択可能なプラスミドと不和合性でなければならない。
このことを整えるひとつの一般的手段は,第3の宿主に
当該シャトルベクターと不和合性で違った薬剤耐性マー
カーを保持するもうひとつのプラスミドを供給すること
である。したがって,両方の薬剤に対する耐性を選択す
ると,生き残った細胞のみがその中で,当該シャトルベ
クター上のマーカーが宿主ゲノムと組み換えたものであ
る。もし当該シャトルベクターが特別なマーカーを保持
していると,それで,当該シャトルベクターと宿主プラ
スミドとの間での一重交差事象の結果に由来するプラス
ミドを含む細胞を排除でき,無傷の当該シャトルベクタ
ーが宿主プラスミドと統合されるような結果となる。も
し外来遺伝物質が選択されるべきマーカーへ挿入される
か,あるいは隣接すると,また同様の2重組み換えの結
果として宿主プラスミドへ統合されるであろう。また,
マーカー内や隣接した位置以外で相同性断片へ挿入され
ると,いっしょに保持され,しかし,外来遺伝物質をマ
ーカーから分離している距離が大きくなるにつれて,外
来遺伝物質とマーカーの間に組み換え事象が起こりやす
くなり,外来遺伝物質の転移を妨げる。 もし,当該シャトルベクターが,表現型的に優性な特
徴(例えば,新しく発現可能な殺虫剤構造遺伝子だが,
不活性化された腫瘍性T−DNA遺伝子ではない)を誘導
するために使われると,二重相同組み換えに頼る必要が
なくなる。共同組み込みプラスミドをもたらす一重組み
換え事象により得られる細胞は,植物細胞へ望む特徴を
転移することができる(A.Caplan et al.(1983)Scien
ce 222:815−821,R.B.Horsch et al.(1984)Science 2
23:496−498)。単一の連続したT−DNAの配列を持つ色
々なシャトルベクターを用いることさえ可能かもしれな
い。しかし,その結果として得られたT−DNAは,今
や,繰り返し遺伝子重複を含むであろうから,アグロバ
クテリウムか植物細胞のどちらかで2つの相同配列間で
起こる一重相同組み換え事象による当該シャトルベクタ
ーのまれに起こる欠失に気をつけて注目しなければなら
ない。 シャトルベクターはアグロバクテリウムプラスミドの
操作において効力を与えた。D.J.Garfinkel et al.(19
81)Cell 27:143−153,A.J.M.Matzke and M.−D.Chilto
n(1981)J.Molec.Appl.Genet.:39−49,and J.Leeman
s et al.(1981)J.Molec.Appl.Genet.:149−164を参
照せよ。彼らは,シャトルベクターを仲介ベクターある
いは“iV"という言葉で称した。 巨大DNA分子への変化の挿入に対するシャトルベクタ
ー系の最近明らかにされた変形は“自殺ベクター”であ
る。この系ではSimon et al.細菌−植物相互作用の分子
遺伝学pp.98−106(ed.A.Puhler,(1983))の“グラム
陰性細菌のインビボおよびインビトロ操作のためのベク
タタープラスミド”とR.Simon et al.(1983)Biotechn
ol.:784−791によって延べられたように,シャトルベ
クターレプリコンは宿主細胞内では独立に維持され得な
い。この特性は,一般に三親交雑中になされるようなシ
ャトルベクターを排除するために,宿主細胞へ不和合性
のプラスミドを導入する必要を削除している。すでに存
在するDNAへ統合されないすべてのベクター配列は複製
されないことによって効率良く自殺する。シャトルベク
ターの伝統的な型で成され得るように,2つの相同領域の
間にない抗生物質耐性遺伝子をスクリーニングすること
によって,二重と一重相同性の間の区別ができるかもし
れない。DNA配列をTiプラスミドへ転移するための自殺
ベクターの使用はE.Van Haute et al.(1983)EMBO J.
:411−417,L.Comai et al.(1982)Plant.Molec.Bio
l.:291−300,L.Comai et al.(1983)Plasmid 10:21
−30,P.Zambryski et al.(1983)EMBO J.:2143−215
0,およびA.Caplan et al.,前出,によって報告もされて
いる。C.H.Shaw et al.(1983)Gene 28:315−330,
は,外来DNAを一重相同性組み換えの選択の手段によっ
て選択可能なマーカーの導入もせずにTiプラスミドへ導
入し,次いで二重相同組み換えに対する選択することに
よる自殺ベクターの使用を報告している。 T−DNAへの新しいDNA配列の導入に対する相同性組み
換えの使用に代わるものに細菌トランスポゾンがある。
TIPプラスミド上のアグロバクテリウム遺伝子の項で述
べられるように,トランスポゾンはTIPプラスミドのT
−DNAへ飛び込むことができる。(例えば,D.J.Garfinke
l et al.(1981)Cell 27:14−153を参照)。当該トラ
ンスポゾンは新しい配列の挿入によってインビトロで修
飾されるので,その新しいDNAは,当該トランスポゾン
によってTIPプラスミドのT−DNAへ転移され得る。TIP
は,それが安定に組み込まれると,植物細胞へ新しいDN
A/トランスポゾン/T−DNAの組合せを転移することがで
きる。 アグロバクテリウムの外観 グラム陰性菌のリゾビアッシー科(リゾビウム属も含
む)に含まれるアグロバクテリウム属には,アグロバク
テリウム・チユーメファシエンスとアグロバクテリウム
・リゾゲネスがある。これらの種はそれぞれ,植物のク
ラウンゴール症と毛状根症の原因である。クラウンゴー
ルは脱分化組織のゴールの成長によって性格づけされ
る。毛状根は感染された組織において,根の不適当な誘
導によって性格づけされる奇形である。どちらの病症に
おいても,不適当に成長する植物組織が,正常には植物
によって生産されず,感染している細菌によって代謝さ
れる,オピンとして知られる,ひとつあるいはそれ以上
のアミノ酸誘導体を通常生産する。既知のオピンは,オ
クトピン,ノパリンおよびアグロピンという3つの主な
グループに分けられている。不適当に増殖する組織の細
胞は培養することで増殖させることができ,適当な条件
下で,ある形質転換された表現型を維持する完全な植物
へ再生することができる。 アグロバクテリウムの病原性株は,アグロバクテリウ
ム・チユーメファシエンスではTi(腫瘍誘導)プラスミ
ド,アグロバクテリウム・リゾゲネスではRi(根誘導)
プラスミドとして知られる巨大プラスミドを保持する。
これらのプラスミドを株から脱落させると,疾病性が失
われる。Tiプラスミドは,T−DNA(転移DNA)と呼ばれる
領域を含み,そのT−DNAは腫瘍中で宿主植物のゲノム
へ取り込まれていることがわかっている。当該T−DNA
は,いくつかの転写物をコードしている。突然変異の研
究は,これらのいくつかは腫瘍成長の誘導に含まれてい
る,ことを示した。tml,tmrおよびtmsに対する遺伝子に
おける突然変異体はそれぞれ(タバコでの)巨大腫瘍,
根を産する性質,茎葉誘導の傾向という結果をもたら
す。当該T−DNAは少なくともひとつのオピン合成酵素
の遺伝子もコードしており,当該Tiプラスミドはそれら
によって合成を引き起こされるオピンによってしばしば
分けられる。それぞれのT−DNA遺伝子はT−DNAプロモ
ーターの調節下にある。T−DNAプロモーターは構造上
真核生物プロモーターと似ており,それらは形質転換さ
れた植物細胞中でのみ機能するようである。当該Tiプラ
スミドはT−DNA以外の遺伝子も保持する。これらの遺
伝子はオピン代謝,腫瘍性,アグロシン感受性,複製,
および細菌細胞への自律転移を含む機能に含まれる。Ri
プラスミドはTiプラスミドと同様の構造に組織されてい
る。植物細胞の形質転換に対応する遺伝子とDNA配列の
組は,以後,集中的に形質転換誘導原理(TIP)として
呼ぶ。したがって,TIPという名称は,制限されないが,T
iとRiプラスミドの両方を含む。TIPの組み込まれた小片
は,Tiプラスミドに由来するかRiプラスミドに由来する
かにかかわらず,ここではT−DNA(転移DNA)と呼ばれ
る。 M.−D.Chilton(June 1983)Sci.Amer.248 (6):5
0−59は最近ベクターとしてのTiプラスミドの利用にお
ける紹介記事を示した。アグロバクテリウムが原因とな
る疾病の最近の一般的総説にD.J.Merlo(1982),Adv.Pl
ant Pathol.:139−178;L.W.Ream and M.P.Gordon(19
82),Science 218:854−859,and M.W.Bevan and M.−D.
Chilton(1982),Ann.Rev.Genet.16:357−384;G.Kahl a
nd J.Schell(1982)Molecular Biology of Plant Tumo
r,K.A.Barton and M.−D.Chilton(1983)Meth.Enzymo
l.101:527−539,およびA.Caplan et al.(1983)Scienc
e 222:815−821によるものがある。 植物組織の感染 植物細胞は,当業者に知られる多くの方法で,アグロ
バクテリウムによって形質転換されることができ,その
方法とは,アグロバクテリウムと共に植物細胞を培養す
ること,アグロバクテリウムスフェロプラストとの植物
プロトプラストの融合,植物細胞プロトプラストでの遊
離T−DNAの取込みによる直接形質転換,完全な細菌で
の部分的に再生された細胞壁を持つプロトプラストの形
質転換,T−DNAを含むリボゾームによるプロトプラスト
の形質転換,T−DNAを持つウィルスの使用,マイクロイ
ンジェクション,等々,を含むが,限定されない。どの
方法にも遺伝子が有糸分裂と減数分裂を通して安定に伝
達される限り充分である。 アグロバクテリウムによる植物細胞の感染は当業者に
良く知られた簡単な技術である(例えば,D.N.Butcher e
t al.(1980)in Tissue Culture Methods for Plant P
athologists,eds.:D.S.Ingram and J.P.Helgeson,pp.20
3−208を参照せよ)。典型的には,植物は多くのいかな
る方法によっても傷つけられるが,その方法とは,刃物
で切ること,針で刺すこと,あるいは研磨剤でこするこ
とを含む。次いで,その傷に腫瘍誘導細菌を含む溶液を
植菌する。完全な植物の感染に代わるものはポテト茎デ
ィスク(D.K.Anand and G.T.Heberlein(1977)Amer.J.
Bot.64:153−158)あるいは,タバコの茎の逆位の小片
(K.A.Barton,et al.(1983)Cell 32:1033−1043)の
ような組織片の植菌がある。感染後,腫瘍は植物ホルモ
ンを欠いた培地での組織培養中に置かれる。ホルモンに
依存しない増殖は形質転換された組織の典型で,そのよ
うな組織培養の増殖の通常の条件と非常に対照的であ
る。(A.C.Braun(1956)Cancer Res.16:53−56)。 アグロバクテリウムは,分離された細胞や,培養で増
殖した細胞(L.Maton et al.(1979)Nature 277:129−
131)および,分離されたタバコ葉肉プロトプラストに
も感染する能力を持つ。後者の技術では,新しい細胞壁
の部分再生をさせる時間の後,アグロバクテリウム細胞
がしばらくの間培養に加えられ,そして抗生物質の添加
によって殺された。Tiプラスミドを保持するアグロバク
テリウム・チユーメファシエンス細胞にさらされた。こ
れらの細胞のみが,ホルモンを欠いた培地上においた
際,カルスを形成する能力を持った。たいていのカルス
はオピン同化に関与する酵素活性を含むことがわかっ
た。他の研究者ら(R.B.Horsch and R.T.Fraley(18 Ja
nuary 1983)15th Miami Winter Symposium)は,ホル
モンに依存しない増殖を示すカルスを高い比率で(10%
以上)導き,それらのカルスの95%がオピンをつくる,
共存培養による形質転換を報告した。M.R.Davey et al.
(1980)in Ingram and Helgeson,前出,pp.209−219,
は,プロトプラストから再生された古い細胞の感染を述
べている。 植物プロトプラストはTIPプラスミドの直接取込みに
よって形質転換され得る。M.R.Davey et al.(1980)Pl
ant Sci.Lett.18:307−313およびM.R.Davey et al.(19
80)in Ingram and Helgeson,前出は,は,ペチュニア
・プロトプラストをポリ−L−α−オルチニンの存在下
にTiプラスミドで,オピン合成の表現型および培養での
ホルモンに依存しない増殖という状態に形質転換でき
た。ポリエチレングリコールがTiプラスミドの取込みを
刺激すること,およびT−DNA配列がゲノムへ取り込ま
れることが,後に示された。(J.Draper et al.(198
2)Plant and Cell Physiol.23:451−458,M.R.Davey et
al.(1982)in Plant Tissue Culture 1982,ed:A.Fuji
wara,pp.515−516)。F.A.Krens et al.(1982)Nature
296:72−74は,彼らのデータは,組み込まれたT−DNA
が隣接するTiプラスミド配列を含むことを示唆するが,
カルシウムショックを伴うポリエチレングリコールを用
いる同様の結果を報告した。 DNA取込みを得る他の方法はリポゾームの使用を含
む。DNAを含むリポゾームの調製は当業者に良く知られ
ている。リポゾームを介するTi−DNAの導入に対する調
製が報告されている。(T.Nagata et al.(1982)in Fu
jiwara,前出,pp.509−510,およびT.Nagata(1981)Mol.
Gen.Genet.184:161−165)。類似した系に細胞壁除去後
の植物と細菌細胞の融合がある。この技術の実施例はS.
Hasezawa et al.(1981)Mol.Gen.Genet.182:206−210
によって報告されたアグロバクテリウムスフェロプラス
トによるビンカ・プロトプラストの形質転換である。植
物プロトプラストは,細胞壁が境界を定めているアグロ
バクテリウム細胞を取り込むことができる(S.Hasezawa
et al.(1982)in Fujiwara,前出pp.517−518)。 T−DNAは二つのプロトプラストの融合から再生され
る組織に伝達されうる。これら二つのプロトプラストの
うちの一方のみがすでに形質転換されていた(G.J.Wull
ems et al.(1980)Theor.Appl.Genet.56:203−208)。
植物の再生の項で詳述するように,T−DNAは減数分裂を
経,そして単純なメンデル形質として子孫に伝達されう
る。 植物の再生 正常な形態での脱分化植物組織は,クラウンゴール腫
瘍から得られる。A.C.Braun and H.N.Wood(1976)Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 73:496−500,は正常植物上へタバ
コ奇形を移植して,花を着け得る正常に現れる葉茎を得
ることができた。この葉茎は培養されると,オピンを作
る能力と植物ホルモンに依存せず増殖する能力を得た。
スクリーニングされた植物では,これらの腫瘍表現型は
減数分裂の間に失われたらしく子孫への伝達は観察され
なかった。(R.Turgeon et al.(1976)Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA 73:3562−3564)。自然に腫瘍特性を失った
かあるいは奇形種から由来した植物が,最初はそれらの
T−DNAをすべて失ったと示された。(F.−M.Yang et a
l.(1980)In Vitro 16:87−92,F.Yang et al.(1980)
Molec.Gen.Genet.177:707−714,M.Lemmers et al.(198
0)J.Mol.Biol.144:353−376)。しかし,ホルモン処理
(1mg/カイネチン)後,復帰突然変異となった植物で
の後の研究は形質転換された表現型に対するT−DNA遺
伝子を失っているが,減数分裂を経験した植物がT−DN
Aの両端に相同性のある配列を保持することができたこ
とを示した(F.Yang and R.B.Simpson(1981)Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 78:4151−4155)。G.J.Wullems et al.
(1981)Cell 24:719−724,はさらにオピン同化系に含
まれる遺伝子が当該植物が雄性不念であるが減数分裂を
経験する能力を持ち,表面上不変のT−DNAがメンデル
則で遺伝され得ることを示した(g.Wullems et al.(19
82)in fujiwara,前出)。L.Otten et al.(1981)Mole
c.Gen.Genet.183:209−213,は茎葉を増殖さす腫瘍を形
成するtms(茎葉誘導)部位でTn7トランスポゾンで作成
したTiプラスミドの変異体を用いた。これらの葉茎が植
物へ再生すると,自家受粉花を形成することがわかっ
た。その結果,得られた種は出芽してT−DNAを含みオ
ピンを作る植物へとなった。さらに行われた実験で,H.D
eGreve et al.(1982)Nature 300:752−755,は,オク
トピン合成が,一重優性メンデルの遺伝子として遺伝さ
れ得ることを見つけた。しかし,当該T−DNAは,カル
スからの再生を行っている間ocs以外の機能の広範な欠
失を受けた。tmr(根誘導)変異体での同様の実験は,
完全な長さのT−DNAが減数分裂を通して子孫へ伝達さ
れ得たことを示し,その子孫では,ノパリン遺伝子が様
々なレベルだが発現し,ともに形質転換された酵母アル
コールデヒドロゲナーゼ1遺伝子は発現されないことを
示した(K.A.Barton et al.(1983)Cell 32:1033−104
3)。他の実験は,ノパリンT−DNAが再生の間維持さ
れ,雄性不念性花はメンデル則でT−DNA上を伝えると
いうことを示した(J.Memelink et al.(1983)Mol.Ge
n.Genet.190:516−522)。機能する外来遺伝子も,優性
メンデル則で遺伝される(R.B.Horsch et al.(1984)S
cience 233:496−498)。今や,T−DNA配列を欠いた再生
組織は,腫瘍に“混在している”非形質転換細胞由来で
あり(G.Ooms et al.(1982)Cell 30:589−597)。初
めに形質転換された植物細胞の後成説的な状態が,再生
の可能性に影響する(G.M.S.vanSlogteren et al.(198
3)Plant Mol.Biol.:321−333)ことが明らかであ
る。A.N.Binns(1983)Planta 158:272−279による最近
の研究は,腫瘍性遺伝子,この場合tmr,は再生の間“止
める”ことができ,再生組織を培養に置くことによっ
て,“再び開始する”ことができると示している。 アグロバクテリウム・リゾゲネスからの形質転換の結
果として得た根は栽培植物へ直接再生することが比較的
簡単なことを証明した(M.−D.Chilton et al.(1982)
Nature 295:432−434),そして簡単にクローン化され
た。再生能力はT−DNAのコピー数に依存するようであ
る(C.David ed al.(1984)Biotechnol.:73−76)。 TIPプラスミドにおける遺伝子 ATCC15955で見つけられたオクトピン型プラスミドのp
Ti15955のT−DNAの完全な配列が報告されており,真核
生物の転写制御配列に隣接している14のオープンリーデ
ィングフレーム(ORHs)が含まれている(R.F.Barker a
nd J.D.Kemp.U.S.Patent application ser.no.553,786,
これは参考文献,R.F.Barker et al.(1983)Plant Mole
c.Biol.:335−350に編入されている)。 多くの遺伝子がTIPプラスミドのT−DNA内に同定され
ている。オクトピンプラスミドT−DNA転写物の多くの
地図が作られており(S.B.Gelvin et al.(1982)Proc.
Natl.Acad.sci.USA 79:76−80,L.Willmitzer et al.(1
982)EMBO J.:139−146,N.Murai and J.D.Kemp(198
2)Nuclei Acids Res.10:1679−1689,S.J.Karcher et a
l.(1984)Mol.Gen.Genet.),いくつかの機能が認めら
れている(J.Leemans et al.(1982)EMBO J.:147−1
52)。これらの領域のうちのいくつか,特にtmrやtmsを
コードしているものも原核細胞で転写される(G.Schrod
er et al.(1983)EMBO J.:403−409)。トランスポ
ゾンを用いた変異により充分明らかになっているオクト
ピン型プラスミドの遺伝子は,tms,tmr,tml,そしてocsを
含んでいる(D.J.Garfinkel et al.(1981)Cell 27:14
3−153)。これらの遺伝子にそれぞれ変異を持つTiプラ
スミドは,シュートを生じ,根を発育させ,そして正常
よりも大きいニコチナタバカムの腫瘍カルスを刺激す
る。他の宿主では,これらの遺伝子の突然変異体は異な
る表現型を誘導することができる(M.W.Bevan and M.−
D.Chilton(1982)Ann.Rev.Genet.16:357−384)。tmr
とtmsの表現型は,腫瘍に存在する植物ホルモンレベル
の違いに相関する。サイトカイニン:オーキシン比の違
いは,形質転換されてないカルス組織の葯あるいは根の
形成を培地で誘導できるそれに似ている(D.E.Akiyoshi
et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:407−411,
A.N.Binns(1983)Planta 158:272−279,A.Caplan et a
l.(1983)Science 222:815−821,R.M.Amasino and C.
O.Miller(1982)Plant Physiol.69:389−392)。機能
を有するtmlだけではなく,tmsかtmrのどちらかの機能を
有する遺伝子を含むT−DNAは重要な腫瘍の成長を促進
することができる。シュートや根の促進はそれぞれ機能
を有するtmlにより刺激されたり,阻害されたりする
(L.W.Ream et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
0:1660−1664)。T−DNA遺伝子の変異は,T−DNAの植物
ゲノムへの挿入に影響を及ぼしたりしないようである
(Leemans et al.(1982)前出,Ream et al.(1983)前
出)。T−DNA遺伝子はホルモンに非依存性の成長を促
進させるために,境界の配列(TIPプラスミドDNAを参
照)の間に位置する必要がない(H.Joos et al.(198
3)EMBO J.:2151−2160)。 オクトピンTiプラスミドは,オクトピンシンターゼ
(リゾピンデヒドロゲナーゼ)をコードするocs遺伝子
を有する。ocs遺伝子はイントロン(真核生物の遺伝子
にふつうに見られる介在配列で,mRNAの成熟時にメッセ
ンジャー前駆体から転写後に切り出される)を含まな
い。それは,真核生物の転写信号(“TATA"ボックス)
やポリA付加部位に似ている配列を持っている。ocs遺
伝子の発現に必要なすべての信号は,ocs転写開始部位の
295bp内に見出される(C.Koncz et al.(1983)EMBO J.
:1597−1603)。P.Dhaese et al.(1983)EMBO J.:
419−426は,“転写物7"(Barker et al.のORF3,前出)
とocsによる様々なポリA付加部位の利用について報告
した。組織内の酵素オクトピンシターゼが存在すること
により,様々なアミノ酸類似物の毒性効果からその組織
を保護することができる(G.A.Dahl and J.Tempe(198
3)Theor.Appl.Genet.66:233−239,G.A.Dahl et al.,US
Pat.applicfation ser.no.532,280,ここで参考文献に
編入している)。 ノパリンTiプラスミドはノパリンシンターゼ(nos)
をコードしており,その配列はA.Depicker et al.(198
2)J.Mol.Appl.Genet.:561−573により決められてい
る。ocs遺伝子で見られたように,nosはイントロンで中
断されていない。それは,2つのポリA付加部位と重要な
“TATA"ボックス転写開始信号を持つ。ocsと比べて,nos
は“CAT"ボックスとして知られている転写開始信号であ
るかもしれない配列が前にある。nos遺伝子の発現に必
要な信号のすべてがnos転写開始部位の261bp内に見られ
る(C.Koncz et al.,前出)。アグロシノピンシンター
ゼの遺伝子や,tmsとtmrに等価な遺伝子がノパリン型プ
ラスミド上で同定されており(H.Joos et al.(1983)C
ell 32:1057−1067),多くの転写物が地図上で決めら
れている(L.Willmitzer et al.(1983)Cell 32:1045
−1056)。J.C.McPhersson et al.(1980)Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 77:2666−2670は,クラウンゴール腫瘍か
らT−DNAにコードされているmRNAのインビトロでの転
写を報告した。 根毛のT−DNAの転写が検出されている(L.Willmitze
r et al.(1982)Mol.Gen.Genet.186:16−22)。機能
上,根毛症候群は,tms内に突然変異のあるTiプラスミド
とRiプラスミドは互いに相補できる(G.M.S.van Slogte
ren(1983)Ph.D.thesis,Rijksuniversiteit te Leide
n,Netherlands)ように,tmr内に突然変異のあるTiプラ
スミド(F.F.White and E.W.Nester(1980)J.Bacterio
l.144:710−720)により刺激されたクラウンゴール腫瘍
と等価のようである。 真核生物では,DNAのメチル化(とりわけシトシン残
基)は転写の不活性化と相関関係があるが,比較的メチ
ル化の少ない遺伝子はmRNAに転写される。S.B.Gelvin e
t al.(1983)Nucleic Acids Res.11:159−174は,クラ
ウンゴール腫瘍におけるT−DNAはいつも少なくともメ
チル化されてない1コピー内に存在しているということ
を見出した。同じゲノムがメチル化されているT−DNA
の多くの他のコピーを含むかもしれないということか
ら,1個より多いT−DNAのコピーは生物学的に不活性で
あるかもしれないということを示唆している。(G.Ooms
et al.(1982)Cell 30:589−597も参照)5−アザシ
チジンで腫瘍系列を処理すると転写の増大に並行してい
るT−DNA遺伝子の脱メチル化をもたらす(A.G.Hepburn
et al.(1983)J.Mol.appl.Genet.:315−329)。5
−アザシチジン処理あるいは細胞移植は,休眠オピン遺
伝子を活性化することが示されている(G.M.S.van Slog
teren(1983)Ph.D.thesis,Rijksuniversiteit te Leid
en,Netherlands)。 Tiプラスミドは,T−DNA領域の外側にある他の遺伝子
をコードしており,感染過程に必要である。(ノパリン
プラスミドについては,M.Holsters et al.(1980)Plas
mid :212−230,オクトピンプラズミドについては,H.D
eGreve et al.(1981)Plasmid :235−248,D.J.Garfi
nkelとE.W.Nester(1980)J.Bacteriol.144:732−743と
G.Ooms(1980)J.Bacteriol.144:82−91を参照)最も重
要なのはonc遺伝子であって、変異を起こすと腫瘍形成
不能なTiプラスミドを生じる。(ヴィルレンスに対し
て,これらの場所はvirとして知られる。)いくつかのo
nc遺伝子は正確に位置づけられており,様々なTiプラス
ミド間で保存された領域内にあることが見出されている
(H.J.Klee et al.(1983)J.Bacteriol.153:873−883,
V.N.Iyer et al.(1982)Mol.Gen.Genet.188:418−42
4)。onc遺伝子は,異なるプラスミド型のT−DNAを持
つ植物細胞を形質転換し,しかも物理的に別のプラスミ
ドにあるという,トランスに機能する(J.Hille et al.
(1982)Plasmid.:107−118,H.J.Klee et al.(198
2)J.Bacteriol.150:327−331,A.J.de Framond et al.
(1983)Biotechnol.:262−269)。ノパリンTi DNA
は,Tiプラスミドから切除したりあるいは宿主ゲノムへ
の組み込みのどちらかに関与しているであろうT−DNA
の左右の境界にすぐ隣接している約25ベースペアーの同
方向反復配列を持ち(N.S.Yadav et al.(1982)Proc.N
atl.Acad.Sci.USA 79:6322−6326),類似配列がオクト
ピンT−DNAの境界に隣接して認められている(R.B.Sim
pson et al.(1982)Cell 29:1005−1014)。オピン分
解は,オクトピン型プラスミドやノパリン型プラスミド
のocc遺伝子やnoc遺伝子のそれぞれに特異づけられてい
る。Tiプラスミドも複製の開始点を含む自身の再生産に
必要な機能をコードしている。 Tiプラスミドの転写物はS.B.Gelvin et al.(1981)P
lasmid :17−29により,アグロバクテリウム・チュー
メファシエンス内で検出され,彼はT−DNA領域が非T
−DNA配列より微弱ながら転写されることを見出した。T
iプラスミドに指定されている特徴がMerlo,上記(特にT
able II参照)と,ReamとGordon,上記により概説されて
いる。 TIPプラスミドDNA DNAハイブリダイゼーション(T.C.Currier and E.W.N
ester(1976)J.Bacteriol.126:157−165)あるいは制
限酵素分析(D.Sciaky et al.(1978)Plasmid :238
−253)により調べると,異なるオクトピン型Tiプラス
ミドが殆ど100%互いに類似している。ノパリン型Tiプ
ラスミドは互いにはたかだか67%の類似しか持っていな
い(Currier and Nester,前出)。概観すると異なるRi
プラスミドは互いに非常に類似しているということが明
らかになった(P.Costantino et al.(1981)Plasmid
:170−182)。N.H.DrummondとM.−D.Chilton(1978)
J.Bacteriol.136:1178−1183はオクトピン型やノパリン
型Tiプラスミドの比較的小さな部分が互いに類似してい
るということを示した。こういった類似性は,G.Engler
et al.(1981)J.Mol.Biol.152:183−208により詳細に
地図上に位置づけられている。彼らは四つの類似領域の
うちの三つが,三つ(部分的にT−DNAを重複してい
る),四つ(いくつかのonc遺伝子を含む),および九
つ(onc遺伝子を持つ)の類似配列に細分化されること
を見出した。連続した類似性は少なくとも一つのtra遺
伝子(Tiプラスミドを他の細菌の細胞への接合伝達のた
め)と、複製と不和合性に関する遺伝子を含む。この連
続した領域は,リゾビウム科の異なる遺伝子であるリゾ
ビウム属のある種由来のSymプラスミド(共生窒素固定
に関係する)と類似性がある(R.K.Prakash et al.(19
82)Plasmid :271−280)。四つの領域の順序は保存
されていないが,それらはすべて同方向に並んでいる。
T−DNA配列のある部分はノパリンプラスミドとオクト
ピンプラスミド間で非常によく保存されている(M.−D.
Chilton et al.(1978)Nature 275:147−149,A.Depick
er et al.(1978)Nature275:150−153)。Riプラスミ
ドは自身の間で,オクトピンTiプラスミド(F.F.White
and E.W.Nester(1980)J.Bacteriol.144:710−720)や
ノパリンTiプラスミド(G.Risuleo et al.(1982)Plas
mid :45−51)の両方に対して,主としてonc遺伝子を
コードしている領域について,広い類似性を有している
ことが示されている。RiT−DNAはTiプラスミドの両型か
らT−DNAへ広いけれども,弱い類似性を有している
(L.Willmitzer et al.(1982)Mol.Gen.Genet.186:16
−22)。未感染のニコチアナ・グラウカ由来の植物DNA
は,cT−DNA(細胞性T−DNA)と呼ばれるが,RiT−DNAの
部分に類似性を示している(F.F.White et al.(1983)
Nature 301:348−350,L.Spano et al.(1982)Plant Mo
lec.Biol.:291−300)。G.A.Huffman et al.(1983)
J.Bacteriol.,はクロスハイブリダイゼーションの領域
を地図上に位置づけ,RiプラスミドpRiA4bはpTiT37より
もpTiA6(オクトピン型)によく似ていることおよびこ
のRiプラスミドはtmrでなくtmsに類似している領域を有
するように見えることを示している。彼らの結果もRi T
−DNAは不連続でオクトピンT−DNAの場合に似ていると
いうことを示唆している。 Tiプラスミド(M.−D.Chilton et al.(1977)Cell 1
1:263−172)あるいはRiプラスミド(M.−D.Chilton(1
982)Nature 295:432−434,F.F.White et al.(1982)P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 79:3193−3197,L.Willmitzer
(1982)Mol.Gen.Genet.186:16−22)の一部は腫瘍植物
細胞のDNA内に見出されるということが示された。転送
されたDNAはT−DNAとして知られている。T−DNAは,
核内の(M.P.Nuti et al.(1980)Plant Sci.Lett.18:1
−6,L.Willmitzer et al.(1980)Nature 287:359−36
1,M.−D.Chilton et al.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 77:4060−4064),多くの部位で(D.Ursic et al.
(1983)Mol.Gen.Genet.190:494−503,J.Memelink et a
l.(1983)Mol.Gen.Genet.190:516−522),宿主DNAに
組み込まれている(M.F.Thomashow et al.(1980)Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA77:6448−6452,N.S.Yadav et al.
(1980)Nature287:458−461)。多くの非T−DNA Ti
プラスミドDNAが,T−DNAの組み込み前に植物細胞に転送
されるようである(H.Joos et al.(1983)EMBO J.:2
151−2160)。 M.F.Thomashow et al.(1980)Proc.Natl.acad.Sci.U
SA77:6448−6452およびM.F.Thomashow et al.(1980)C
ell 19:729−739は,オクトピン型Tiプラスミド由来の
T−DNAが,二つの異なる部分のTL−DNAとTR−DNA,それ
ぞれ左側T−DNAと右側T−DNAであるが,に組み込まれ
ていることを見出した。TRとTLのコピー数は異なる腫瘍
系列で変化し得る(D.J.Merlo et al.(1980)Molec.Ge
n.Genet.177:637−643)。T−DNAの芯はノパリンT−D
NAに非常に類似しており(Chilton et al.(1978)前
出,Depicker et al.(1978)前出),腫瘍維持に必要で
あり,TLの中にあり,一般に細胞あたり1コピー存在し
ており,そしてtms,tmr,およびtmlの遺伝子をコードし
ている。他方では,TRは全体として省くことができるが
(M.De.Beuckeleer et al.(1981)Molec.Gen.genet.18
3:283−288,G.Ooms et al.(1982)cell30:589−59
7),ふつう高いコピー数で見られる(Merlo et al.(1
980)前出)。G.Ooms et al.(1982)Plasmid :15−2
9は,彼らはTRがTiプラスミドから欠失すると,アグロ
バクテリウム・チューメファシエンス あるヴィルレン
スを持つことを認めているが,TRはT−DNAの組み込みに
関係しているという仮説を立てた。G.Ooms et al.(198
2)Cell 300:589−597は植物ゲノムに組み込まれた後T
−DNAはしばしばTiプラスミドにより欠失するが,一般
に安定であるということ,およびT−DNA形成の点にお
いて異なる細胞の混合液を含む腫瘍は,多様な形質転換
が生じた結果であることを示した。osc遺伝子はTL内で
見出されているが,腫瘍成長に似た表現型を失うことな
く植物ゲノムより欠失され得る。TLの左側と右側の境界
およびTRの左側と右側の境界は,ここではTLLB(A),T
LRB(B),TRLB(C),TRRB(D)とそれぞれ表すが,
配列が決定されており(R.F.Barker et al.(1983)Pla
nt Mol.Biol.:335−350,およびR.F.Barker and J.D.K
emp,U.S.Patent application ser.no.532,280),各々
が24ベースペアの不完全な同方向反復配列であり,そし
てノパリンT−DNAのどちらかの未満で見られる同方向
反復配列に類似している。組み込まれたTLLB(A)の周
辺にある植物DNAが,同方向あるいは逆方向のどちらか
であるT−DNA配列の繰り返しから成っていると観察さ
れている(R.B.Simpson et al.(1982)Cell 29:1005−
1014)。M.Holsters et al.(1983)Mol.Gen.Genet.19
0:35−41は,TLが,植物とT−DNA配列の両方から生じる
約400bpの“リンカー”により隔てられた一列に並ぶコ
ピーに組み込まれていることを見出した。 オクトピン型腫瘍内の状況と比べて,ノパリンT−DN
Aはある連続した断片内の宿主ゲノムに組み込まれてい
る(M.Lemmers et al.(1980)J.Mol.Biol.144:353−37
6,P.Zambryski et al.(1980)Science 209:1385−139
1)。同向縦列繰り返しが観察された。奇形種から再生
した植物のT−DNAは挿入されたDNAの境界の断片に小数
の修飾を持っていた(Lemmers et al.,前出)。右と左
の境界の間の接点の配列分析により多くの同方向繰り返
しと一つの逆方向繰り返しが明らかとなった(Zambrysk
i et al.(1980)前出)。左側の接点は少なくとも70bp
にまでわたり多様であることが示されているが,右側の
接点は単一のヌクレオチド以外の変化はない(P.Zambry
ski et al.1982)J.Mol.Appl.Genet.:361−370)。縦
列した中の接点の左側と右側の境界は130bpを越えるで
あろう間隙により隔てられている。間隙は未知の起原の
ものであり,いくつかのT−DNA配列を含んでいた。T
−DNAは,反復しており,低分子数の宿主の配列に組み
込まれていることが見出された。H.Joos et al.(198
3)Cell 32:1057−1067によると,ヴィルレンスは通常
のノパリンT−DNA境界配列のどちらかの一つの欠失後
に引き起こされるものではないことが示されている。 Simpson et al.(1982)前出やZambryski et al.(19
80)前出では,境界領域の同方向反復は植物DNAへのT
−DNAの組み込みに関係していると示唆されている。二
つの異なるTiプラスミド由来のT−DNAの持つ境界は類
似した境界ほど特異的に組み込まれないということは,
この示唆を支持している(G.Ooms et al.(1982)Plant
Molec.Biol.:265−276)。 N.S.Yadav et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA7
9:6322−6326は,バクテリオ・ファージλ内で10キロベ
ースも離れた周囲のDNAにおける普遍的組み換えを増加
させるchi部位がT−DNAの左側末端のちょうど外側のノ
パリンTiプラスミドにあることを見つけた。R.B.Simpso
n et al.(1982)Cell29:1005−1014によれば,オクト
ピンTiプラスミド内の同様の位置にchi配列が見つけら
れなかった。Tiプラスミド内のchiの重要性は知られて
いない。 TIPプラスミドの操作 シャトルベクターに関する節の中で詳述したように,
改造したDNA配列をTIPプラスミド上の所望の場所に導入
するための技術が開発された。この技術を用いればトラ
ンスポゾンを容易に挿入することができる(D.J.Garfin
kel et al.(1981)Cell27:143−153)。J.−P.Hernals
teen et al.(1980)Nature 287:654:656はTiプラスミ
ド中のT−DNAに挿入されたDNA配列(ここでは細菌のト
ランスポゾン)が受容植物のゲノム中に転移そして組み
込まれることを示した。M.Holsters et al.(1982)Mo
l.Gen.Genet.185:283−289は,T−DNAに挿入された細菌
のトランスポゾン(Tn7)が植物ゲノム中に組み込まれ
た後も,完全に機能的で外観上は不変な形で再分離され
得ることを示した。異なる起原からのいくつかの遺伝子
を用いて外来DNAの挿入が行われたが,現在までは,外
来遺伝子は植物細胞中において通常はそれ自身のプロモ
ーター制御下で発現されていない。これらの遺伝子の起
原は,ウサギβ−グロビン(C.H.Shaw et al.(1983)G
ene23:315−330),酵母アルコールデヒドロゲナーゼ
(Adh)(K.A.Barton et al.(1983)Cell32:1033−104
3),トウモロコシAdh I(J.Bennetzen,未発表)および
ゼイン,哺乳動物インターフェロンおよびグロビン,お
よび哺乳動物ウィルスSV40(J.Schell,未発表)が含ま
れる。しかし,ノパリンシンターゼ遺伝子をオクトピン
T−DNAに挿入し植物組織を形質転換した場合は,それ
は完全に機能的であることが分かった(C.L.Fink(198
2)M.S.thesis,ウィスコンシン−マディソン大学)。豆
ファゼオラス・ブルガリス(Phaseolus vulgaris L.)
の種子中に見られる貯蔵蛋白であるファセオリンをコー
ドする遺伝子は,ヒマワリの腫瘍へ導入され,そこで発
現した。転写は正しい位置で開始および終結され,そし
てイントロンは転写後に正しくプロセッシングを受けた
(N.Murai et al.(1983)Science 222:476−482,およ
びT.C.Hall et al.US application ser.no.485,613,こ
れはここで文献に編入されている)。A.Caplan et al.
(1983)Science 222:815−821は,エンドウ リブロー
ス−1,5−ビスホスフェート カルボキシラーゼの小さ
いサブユニット遺伝子の5′側上流領域由来のDNA900bp
の断片により,タバコの光誘導性発現が細菌クロラムフ
ェニコール アセチルトランスフェラーゼ構造遺伝子に
授与されるのに充分であることを主張している。 TIPプラスミドにおいていくつかの方法により欠失を
引き起こすことができる。標準的な組み換えDNA技術に
より造り出された欠失を導入するのにシャトルベクター
を用いることができる。すでに決定されている一つの末
端をもつ欠失は,トランスポゾンの不適当な切り出しに
より作成することができる(B.P.Koekman et al.(197
9)Plasmid :347−357,およびG.Ooms et al.(1982)
Plamid :15−29)。J.HilleおよびR.Schilperoot(19
81)Plasmid :151−154は,前もって決められた位置
に両端をもつ欠失は二つのトランスポゾンの使用により
引き起こすことができることを証明した。この技術はま
た,“組み換えDNA"分子をインビボで構築するのに用い
ることができる。P.Zambryski et al.(1983)EMBO J.
2:2143−2150は,タバコにおいて非常に小さなカルスの
形成を促進し,普通の形態をもつ植物の再生に導くよう
な,nosおよび転写a以外のノパリンT−DNA遺伝子のす
べてを欠失したベクターの使用を報告している。 ノパリンシンターゼ遺伝子は,形質転換された植物細
胞の選別に用いることができる薬剤耐性をコードするDN
A小片の挿入のために用いられている。植物細胞では,Tn
5からのバクテリアカナマイシン耐性遺伝子はそれ自身
のプロモーター制御下では転写されない(J.D.Kemp et
al.(1983)in Genetic Engineering:Applications to
Agriculture,(Beltsville Symp.Agric.Res.),ed.:
L.D.Owens,pp.215−228;およびC.L.Fink(1982)前
出)。M.W.Bevan et al.(1983)Nature 304:184−187,
R.T.Fraley et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:
4803−4807,およびL.Herrera−Estrella et al.(198
3)EMBO.J.:987−995,は,Tn5由来のカナマイシン耐性
遺伝子(ネオマイシン フォスフォトランスフェラーゼ
II)をノパリンシンターゼのプロモーターの後に挿入し
た。その構築物は植物細胞の形質転換に用いられ,その
植物細胞は培養下においてカナマイシンおよびG418のよ
うなそのアナログに対する耐性を示した。Herrera−Est
rella et al.前出,はTn7由来のメトトレキセート耐性
遺伝子(ジヒドロ葉酸リダクターゼ)がノパリンシンタ
ーゼ プロモーターの後ろに置かれたような,類似の構
造を報告した。形質転換細胞は,葉酸の拮抗アナログで
あるメトトレキセートに耐性であった。同様に,L.Herre
ra−Estrella et al.(1983)Nature 303:209−213は,
オクトピンシンターゼおよびクロラムフェニルコールア
セチルトランスフェラーゼ(細菌においてクロラムフェ
ニコール耐性を賦与する)の酵素活性の発現を,これら
の二つの酵素の構造遺伝子をnosプロモーターの制御下
に置くことにより,植物細胞において獲得した。 N.Murai et al.(1983)Science 222:476−482,およ
びT.C.Hall et al.US application ser.no.485,614,こ
こでは文献に編入される,はocsプロモーターおよびオ
クトピンシターゼ構造遺伝子の5′末端のマメ種子蛋白
のファセオリンの構造遺伝子への融合を報告している。
オクトピンシンターゼのアミノ末端を保持し,ファセオ
リンのアミノ末端を欠失する融合蛋白が,T−DNAプロモ
ーター制御下において生産された。ファセオリン配列に
より与えられたイントロンは,転写後に正しくプロセッ
シングを受けた。 A.J.de Framond et al.(1983)Biotechnol.:262−
269は“ミニ−Tiプラスミド”の構築に関してそのこと
を報告している。ノパリンT−DNAにおいて,制限酵素K
pn Iにより切断される部位は通常ただ一つのみ存在す
る。その部位を欠失する突然変異を作成し,全ノパリン
T−DNAを含むKpn I断片が分離された。この断片はカナ
マイシン耐性遺伝子と共にpRK290中に挿入され,その結
果,アグロバクテリウム・チューメファシエンス(A.tu
mefaciens)中で保持可能で,非T−DNAのTi配列のほと
んどすべてを欠失するプラスミドとなった。単独では,
このプラスミドは植物細胞を形質転換することができな
かった。しかし,オクトピンTiプラスミドを保持するア
グロバクテリウム・チューメファシエンス中に置かれる
と,腫瘍は誘導されてオクトピンおよびノパリンの両方
を合成した。ミニTiプラスミドもまた,それ自身のT−
DNAを欠失するTiプラスミドで相補された場合に植物細
胞に導入されている。これらの結果は,非T−DNAの機
能がT−DNAとトランスに働くこと,欠失ノパリンTiプ
ラスミドの機能がオクトピンTiプラスミドにより相補さ
れること,およびノパリン“ミニ−Tiプラスミド”が植
物細胞の形質転換において機能することを示した。各々
オクトピンT−DNAもしくはonc遺伝子を有し,相補性の
あるこれに似た対がA.Hoekema et al.(1983)Nature 3
03:179−180により構築されている。 Chilton et al.(18 January 1983)15th Miami Wint
er Symp.は,ノパリンシンターゼ遺伝子および左右の境
界以外の実質的にすべてのT−DNAを欠失させるために,
Sma Iを用いた“ミニ−Ti"の再区分により作成した“ミ
クロ−Ti"の構築について報告した。ミクロ−Tiは,Sma
I部位を欠失する修飾pRK290プラスミドに挿入され,ミ
ニ−Tiプラスミドに類似した方法で用いられ,同等の結
果が得られた。G.A.Dahl et al.US application ser.n
o.532,280は,オクトピン型プラスミドpTi15955のTL
域から構築されたocs遺伝子を所持するミクロ−Tiプラ
スミドを発表している。 本発明の概要 本発明の遺伝的に細胞を修飾する方法は,(a)二元
目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合体を有する
DNA分子で原核生物細胞を形質転換し,結果として生じ
た原核生物株でのこの結合体の発現を検知する工程;お
よび(b)二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子
結合体を有するDNA分子で植物細胞を形質転換し,結果
として生じた植物組織でのこの結合体の発現を検知する
工程,を包含する。本発明の植物は,(a)二元目的プ
ロモーター領域/外来構造遺伝子結合体を有するDNA分
子で原核生物細胞を形質転換し,結果として生じた原核
生物株でのこの結合体の発現を検知する工程;および
(b)二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合
体を有するDNA分子で植物細胞を形質転換し,結果とし
て生じた植物組織でのこの結合体の発現を検知する工
程,を包含する遺伝的に細胞を修飾する方法により遺伝
的に修飾される。本発明のDNAベクターは,同定し得る
表現型を与え得る1つまたはそれ以上の二元目的プロモ
ーター領域/外来構造遺伝子結合体を有するDNAベクタ
ーであって,該結合体が該ベクターにより形質転換され
た細菌株に同定し得る表現型を与える該ベクターに対し
唯一の手段である。本発明の植物組織は,同定し得る表
現型を与え得る1つまたはそれ以上の二元目的プロモー
ター領域/外来構造遺伝子結合体を有するDNAベクター
であって,該結合体が該ベクターにより形質転換された
細菌株に同定し得る表現型を与える該ベクターに対し唯
一の手段である,DNAベクターに由来するDNAを含む。本
発明の植物は,また,同定し得る表現型を与え得る1つ
またはそれ以上の二元目的プロモーター領域/外来構造
遺伝子結合体を有するDNAベクターであって,該結合体
が該ベクターにより形質転換された細菌株に同定し得る
表現型を与える該ベクターに対し唯一の手段である,DNA
ベクターに由来するDNAを含む植物組織に由来する。さ
らに,本発明の細菌株は,同定し得る表現型を与え得る
1つまたはそれ以上の二元目的プロモーター領域/外来
構造遺伝子結合体を有するDNAベクターを含む細菌株で
あって,該結合体は該株に該同定し得る表現型を与える
唯一の手段である,DNAベクターを含む。 本発明の目的の一つは,その遺伝子がその細胞に対し
て外来であり他の方法では発現されないという場合の,
植物および細菌の両方の細胞中での構造遺伝子の発現を
促進させるための方法を供することである。この目的の
遂行において,二元目的プロモーター領域/外来構造遺
伝子結合体が供される。それは,その結合体によって形
質転換される細胞に対して同定可能な表現型を授与する
外来構造遺伝子に結合した,植物および細菌の細胞中で
の構造遺伝子の転写の制限可能なDNA配列である。もう
一つの目的は,外来構造遺伝子にコードされたタンパ
ク,そしてもしそれが酵素である場合には,その遺伝子
が挿入された細胞中に,挿入されていない時には見られ
ない,または見られる代謝産物もしくは化合物をそれぞ
れ保持する,もしくは欠失する,特殊な植物組織および
植物を供することである。他の目的には,真核生物で発
現するために設計された構造の,原核生物中における予
備実験の,そしてまた他には選択の,方法を供するこ
と,そしてそれによって,真核と原核の両方の形失転換
細胞を同定し得るような方法を供することである。それ
以外の目的および利点は,以下の記述から明らかとなる
であろう。 本発明は,導入され,発現される外来構造遺伝子を保
持する,遺伝学的に修飾された植物細胞から成る植物を
供する。そしてその外来構造遺伝子は,分り易く言え
ば,T−DNAの1450bTx由来の植物で発現可能な転写制御配
列の制御下で発現される。さらに本発明は,T−DNA由来
の植物で発現可能な転写制御配列に関して,それらの配
列の制御下において植物細胞内で発現可能なような方向
および間隔で挿入された,外来構造遺伝子を含むゲノム
を有する植物細胞から成る植物組織を供する。また,T−
DNAを保持し,そして複製する細菌の新しい株が供され
る。そしてそのT−DNAは,T−DNA由来の植物および細菌
で発現可能なプロモーター領域に関して,植物または細
菌の細胞内で上記プロモーター領域の制御下で発現可能
であるような方向および間隔で挿入された外来構造遺伝
子を保持するように修飾されている。それに加えて,本
発明は細菌内での複製能力を保持し,T−DNAを含むよう
に,植物を形質転換するという努力において便利な新し
いベクターを供する。さらにそのベクターは,T−DNA由
来のプロモーター領域の制御下における植物細胞または
細菌内で発現可能であるように,ベクターに含まれるT
−DNA中に挿入された外来構造遺伝子を含む。さらにま
た,上記ベクターを保持する細菌の株を開示する。 ここで紹介する実験作業は,真核および原核生物の両
方において構造遺伝子の単一コピーの転写を生じるプロ
モーター活性を有するDNA分子を記述する。二元目的プ
ロモーター領域/外来構造遺伝子結合体の有効性は,植
物の形質転換の当業者が外来構造遺伝子を発現させるの
を,そしてDNA配列の他の操作を行うのを容易にする。
真核生物への形質転換前に,原核生物中で外来構造遺伝
子を発現できることは,その構造が正しく組み立てられ
ているかどうかを確認するために,組み換えDNA構造を
機能的に調べることを可能にする。遺伝的マーカーの発
現を制御するのに用いられた場合,このプロモーター領
域のさらに他の効用が明らかとなる。マーカーが植物と
細菌の両方に毒性を持つ選択薬剤,例えば抗生物質,に
対して抵抗性もしくは耐性を与える場合,プロモーター
領域および外来構造遺伝子を含む単一DNA配列は形質転
換細胞が細菌かまたは植物由来かを同定または選択する
のに用いることができる。二元目的プロモーター領域/
構造遺伝子結合体は,その結合体が,その構造遺伝子に
より授与される同定可能な表現型の細胞内での発現にと
って唯一の方法である場合に,特に有用である。2つの
目的,すなわち植物における選別(または選択)および
細菌における選別(または選択),のために単一DNA配
列を用いることは,そのようなマーカーを所持するDNA
分子の大きさを小さくすることを可能とし,それによっ
て組み換えDNA操作および細胞形質転換手順を容易にす
る。 本発明は,二元目的プロモーター領域の制御下におけ
る外来構造遺伝子およびポリアデニル化部位から成り,
上記プロモーター/遺伝子/ポリアデニル化部位の結合
は,当業者には知られたどんな方法によってでも細胞に
挿入される。もっと明確に,分り易く言えば,ここで発
表される本発明はT−DNAを介した導入の後に,すなわ
ち外来構造遺伝子をT−DNAの1450bTxPRの制御下および
ポリアデニル化部位の前に挿入し,既知の方法を用いて
挿入物を含むT−DNAを植物細胞に導入することによ
り,あるT−DNA由来の植物内で発現可能な転写制御配
列,すなわち1450bTxPRの制御下での外来構造遺伝子の
植物および細菌内での発現をさらに含む。ひとたび,二
元目的プロモーター領域の制御下で外来構造遺伝子を発
現する植物細胞が得られれば,当業者にはよく知られた
方法および技術を用いて,そこから植物組織および植物
全体を再生することができる。再生した植物はその後,
普通の方法により増殖させられ,導入された遺伝子は,
普通の植物育種技術により他の株および栽培種へ移すこ
とができる。本発明は原則として,外来DNA(分り易く
言えばT−DNA)をどのようにかして導入でき,上記DNA
が安定に複製されて存在し得るようなどんな植物への,
外来構造遺伝子のあらゆる導入に対して適用される。一
般的に,これらの分類には現在,これだけに限定されな
いが,ヒマワリ(コンポジタエ科),タバコ(ソラナサ
エ科),ムラサキウマゴヤシ,ダイズ,そして他のマメ
科植物(レグミノッセ科),綿(マルバッセー科),お
よびほとんどの植物を含む。 本発明は,他の種,生物,株からの有用な構造遺伝子
を挿入することにより,細菌,植物細胞,植物組織,お
よび植物全体を遺伝学的に修飾するのに有益である。そ
のような有用構造遺伝子には,これらに限定されるわけ
ではないが,次のような同定可能な表現型を伝達する遺
伝子が含まれる:極端な暑さまたは寒さに対する改良さ
れた耐性;嫌気的条件(例えば浸水),旱魃,または浸
透圧に対する改良された耐性;昆虫(例えばバチルス・
チューリンゲンシスの結晶性タンパクのような殺虫性毒
素),くも,線虫,または寄生害虫,およびカビ,細
菌,またはウィルス性の病気に対する改良された抵抗性
または耐性;通常は上記組織または植物に存在しない酵
素もしくは二次代謝産物の生産;改良された栄養性(例
えばレクチン,またはゼインもしくはファセオリンのよ
うな貯蔵タンパク),香味(例えばタウマチンのような
甘味タンパク),または繊維もしくは人や動物の食糧に
用いられる場合の加工処理における特性;変化した形態
学上の特徴もしくは生育における様式(例えば昆虫から
植物を保護する葉毛,美的にとって喜ばしい変色,変化
した植物の生育習性,矯性植物,成熟するまでにかかる
短縮された時間,組織中での遺伝子の発現もしくは,通
常は発現されない時期における発現,など;雄性不稔;
改良された光合成能(低下した光呼吸を含む);改良し
た窒素固定能;改良された栄養物の摂取;植物に対する
有害物に対する改良された耐性(例えばグリフォセート
またはトリアジン);増加した穀物の収率;他の植物に
対する改良された競争力;遺伝学的に修飾された細胞に
対して新しい遺伝マーカー;など。遺伝マーカーは,1つ
もしくはそれ以上の特徴的な核酸配列;タンパク,遺伝
子産物,もしくはどうにかして同定された表現型,の存
在による生殖細胞の同定を改良するのに用いることがで
きる。遺伝マーカーは,遺伝学的に連鎖の,もしくは同
時形質転換された,人工的導入DNA配列,もしくは他の
(例えば性的の)方法による,他の遺伝型への表現型の
移動を促進するように,もしくは,特許または植物系統
保護証明書により保護された植物の同定を促進するよう
に,は修飾されていない植物,植物細胞,または細菌か
ら,本発明における遺伝学的に修飾された植物,植物細
胞,または細菌細胞を区別することができる。細胞もし
くは組織の培養における選択薬剤に対する抵抗性(また
は耐性)(すなわち選択可能マーカー),および選択中
に容易に認識できるマーカー(例えば明確な細胞表面抗
原もしくは酵素のような,もしくは視覚的に容易に認識
できるβ−ガラクトシダゼのような選択マーカー)もま
た,有用な遺伝マーカーである。Tn5由来のネオマイシ
ンフォスフォトランスフェラーゼII(NPT II)をコード
し,カナマイシンおよびそのアナログ化合物の効果に対
して耐性である表現型を授与する構造遺伝子(kan遺伝
子)を,自然には1450bTxの発現を制御するプロモータ
ー領域の制御下に置くことにより,本発明は例証され
る。プロモーター/kan結合体は,この結合体により形質
転換された細胞の検出および選択に用いることができ
る。当業者には理解されるように,真核および原核生物
において,この結合体に連鎖したDNA配列は何でも選択
され,連鎖したDNA配列により形質転換された細胞はそ
れゆえ同定されるであろう。レクチンの構造遺伝子を14
50bTxプロモーター領域の制御下に置くことにより,本
発明はさらに例証される。レクチンは,栄養上重要な,
ファセオラス・ブルガリス(マメ)の種子の子葉タンパ
クである。レクチン構造遺伝子の導入および発現は,タ
ンパク含有量を増加し,いろいろな穀物の栄養価を変化
させるのに用いることができる。本発明の他の利用,い
ろいろな植物種に導入された他の構造遺伝子の特性を開
発すること,は当業者には容易に明らかとなるだろう。 本発明は,さらに1450dTxプロモーター支配下に転写
される外来構造遺伝子を有するサブ−Tiプラスミドを含
んでいる。 T−DNAの植物ゲノムへの取込みに関与する直接反復
配列と1つ以上のオピン合成遺伝子を有するサブ−Tiプ
ラスミドの利用は,以下の利点を有している:1,onc遺伝
子が欠失しているため,形質転換した組織培養物やプロ
トプラストから再生植物体が得やすいこと。2,オピン合
成遺伝子が,T−DNAが組み込まれた植物細胞や組織を同
定するために用いることができる(したがってさらに組
み込まれている他の連接したあるいは共同形質転換され
ている遺伝子も)。3,植物細胞は、TL−DNAのみでも,TR
−DNAのみでも,またTL,TR−DNA両方でも形質転換され
る。形質転換植物細胞中では,TR−DNAが多コピー見ら
れ,活発に転写されているので,TL−DNAの全体または一
部の欠失は,種々のonc遺伝子が存在せず,外来遺伝子
を効率的に発現させる。4,サブ−Tiプラスミドは,小さ
いので,形質転換の際に要求される多くの操作が簡略化
できる。 第1図は,S.J.Karcher et al.(1984)Mol.Gen.Gene
t.よりとったオクトピン型TiプラスミドのT−DNA領域
の制限酵素地図である。 BamH I断片30′は,BamH I断片8と30の間に位置す
る。制限酵素地図の下にひかれている線は,E9タバコ腫
瘍細胞系列の中に含まれているDNA領域を示している。 第2図は,Karcher et al.前出の論文よりとったTRDNA
の制限酵素地図であり,5つのTR転写産物の地図上の位置
と極性を示している。示されている制限酵素は,BamH I,
EcoR I,Hinc II,Xba I,Sst I,Cla I,Hind III,Pst I,お
よびSal Iである。上の酵素によるTR内のすべての切断
部位が本地図中に含まれているわけではない。 第3図は,実施例2.2から3.4までに用いたDNA実験操
作の概略図であり,大きさは正確ではない。制限酵素に
よって切断される部位は,酵素名を示した。制限酵素に
よってもはや切断されなくなった部位は,制限酵素名の
前後にカッコをおくことにより示した。プロモーターま
たは構造遺伝子の大きさと極性は,矢印によって示し
た。プラスミドの名前は,プラスミドを環状に表記する
時その内に記した。“Ex"は,実施例を意味し,特殊な
操作について記している。これらの用法は,第5図にお
いても用いた。 第4図は,1450bTxプロモーター領域とNPT II構造遺伝
子の結合体を有している細菌細胞の増殖特性を示すグラ
フである。このプロモーター領域は,アグロバクテリウ
ム・チユーメファシエンス中で活性があり,この構造遺
伝子との組合せは,カナマイシン耐性を賦与している。 第5図は,実施例6.1に記されているDNA実験操作の概
略図である。 本発明の詳細な記述 以下の用語の定義は本願特許明細書および特許請求の
範囲中のこれら用語の趣旨および意味の範囲のあいまい
さを除去するためのものである。 プロモーター;本語は,構造遺伝子の5′末端に位置す
る転写開始に関与する配列を意味する。本発明は,2つの
プロモーター活性(真核プロモーター活性と原核プロモ
ーター活性)が,T−DNA配列のプロモーター領域に存在
することから成っている。その結果として,目的の外来
構造遺伝子DNA配列の転写が,真核生物と原核生物にお
いて,すなわちある特定の植物とグラム陰性細菌におい
て可能となった。自然には,ここに例示しているT−DN
Aプロモーター領域配列は,1450bTxのクラウンゴール中
の転写を引きおこす。プロモーター支配下の発現は,直
接発現かまたは融合蛋白発現の型をとるであろう。前者
の型では,正常にプロモーター支配をうけている構造遺
伝子を一部または全部除去し,外来構造遺伝子の挿入に
よって置換する。そして開始コドンは,T−DNA構造遺伝
子の残っている部分のもの,または,挿入された構造遺
伝子のものが用いられる。後者の型では,既在のT−DN
A構造遺伝子内にリーディングフレームが合うように構
造遺伝子の全体または一部が挿入される。この時,翻訳
産物は,融合蛋白になっている。真核プロモーター配列
は,mRNAの5′末端(キャップ部位)の約10〜30ベース
ペアー(bp)5′側にある5′・・・TATAA・・・3′
という基本配列と相同性のあるDNA配列の存在によって
共通的に認識される。TATAA配列の約30bp5′側には,基
本配列5′・・・CCAAT・・・3′の別のプロモーター
配列が見られる。翻訳開始は,一般的にキャップ部位の
3′側にある最初のAUGからが最も効率的である。 ポリアデニル化部位;本語は,真核生物において,伝達
RNA(mRNA)のポリアデニル化を誘起し得る核酸の配列
を意味する。すなわち,転写終了後,ポリアデニル酸
“末尾”が,mRNA前駆体の3′末端に付加される。ポリ
アデニル化部位のDNA配列は,天然または人工,原核ま
たは真核の遺伝子DNAまたはmDNA由来cDNA等の多くの情
報から導かれる配列の混合物である。ポリアデニル化部
位は,基本型5′・・・AATAAA・・・3′に相同性のあ
るDNA配列の存在によって認識される。ところが,転写
産物の5′から3′末端までの距離のばらつき部分的
“読み込し”と基本配列の縦列重複は珍しくない。“ポ
リアデニル化部位”の基本型は,ポリアデニル化それ自
体の位置ではなくて,mRNAの3′末端の位置を決定して
いると考えられるべきである(N.Proudfoot(1984)Nat
ure 307:412−413)。 転写調節配列;本語は,構造遺伝子に隣接して存在する
プロモーター/ポリアデニル化部位の組合せを意味す
る。特定の外来構造遺伝子に隣接しているプロモーター
とポリアデニル化DNA配列は,同一起源の遺伝子(例え
ば,2つのT−DNA転写産物の一組)または同一分類上の
起源の遺伝子(例えば,T−DNA由来の配列と植物,動
物,カビ,酵母,真核性ウィルス,細菌と合成配列等の
ような非T−DNA由来のDNA配列の一組)由来である必要
はない。 外来構造遺伝子;本語はここでの用法は,外来RNA,蛋白
質,ポリペプチドをコードするDNA配列を含む遺伝子の
一部または,翻訳開始コドンを含む遺伝子の一部を意味
する。外来構造遺伝子は,その遺伝子が導入された細胞
では普通見出せない遺伝子産物をコードしている場合も
ある。さらに本語は,天然にその細胞内に存在する遺伝
子の場合でも,人為的に導入された構造遺伝子のコピー
をも意味する。外来遺伝子は,原核DNA,真核DNA,エピソ
ームDNA,プラスミドDNA,プラスティッドDNA,遺伝子DAN,
cDNA,ウィルスDNA,ウィルスcDNA,化学合成DNA等から一
部または全体が由来している。外来構造遺伝子は,コー
ディング部位または非翻訳部位に一つ以上の修飾を有す
るものも考慮している。この修飾は,発現産物の生物活
性や化学構造,発現の速度や発現調節の様式に影響を及
ぼすだろうと考えられる。この修飾は,一つまたはそれ
以上の核酸の変異,挿入,欠失,置換,および発現産物
の化学構造は変えずに,発現産物の細胞間局在化,転
送,分泌または安定性に影響をおよぼす“サイレント”
修飾を含むが,これに限らない。構造遺伝子は,コーデ
ィング部のみから成っているかもしれないし,また化学
合成したものであれ天然のものであれ,1つ以上のイント
ロンを含んでいるかもしれない。本イントロンは,適正
な機能スプライス部を両端に有している。構造遺伝子
は,化学合成したものであれ天然のものであれ,構成蛋
白質をコードする部位からなっている。この構成蛋白質
は,本遺伝子が導入され,発現している細胞にとって外
来性であるかまたは,一部が外来蛋白質由来のものであ
る。外来構造遺伝子は,融合蛋白質,特に転写調節配列
が由来している構造遺伝子の一部または全部と融合して
いるもの,でもよい。 二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合体;本
語は,複数のプロモーター活性,例えば,真核プロモー
ター活性および原核プロモーター活性,により調節され
ている外来構造遺伝子を意味する。このプロモーター活
性部位は,重複する必要はない,すなわち,真核および
原核プロモーター活性は,物理的に同一のところになく
てもよいし,あってもよい。例えば,真核プロモーター
活性および原核プロモーター活性が,異なったDNA配列
上にあってもよい。両プロモーター活性間の距離は,本
発明においては,原核プロモーター活性と構造遺伝子間
に原核性の転写終止点が存在しない限り,またキャップ
部位とコーディング配列との間に真核性のmRNA転写終止
シグナルが存在しない限りにおいては,重要ではない。 植物組織;本語は,植物の分化,未分化組織を含む。こ
れは,根,茎葉,花粉,種子,クラウンゴールのような
腫瘍組織のみならず,胚およびカルスのような植物培養
細胞の種々の集合体をも意味する。植物組織は,植物体
中,または器官,組織中または培養細胞中のものをい
う。 植物細胞;本語は,植物体中の植物細胞,植物培養物中
の植物細胞およびプロトプラストを意味する。 細菌細胞;ここでの使用は生物学的に純粋な培養および
環境中に分散したものを含み,かつこれに限定されない
培養中の細胞を含む。 DNA断片の定義は第1図,第2図で規定されている。 二元目的のプロモーター領域/外来遺伝子結合体を発
現する遺伝的に修飾された細胞の生成は,ここに開示さ
れる特殊な知識と当該分野の種々の技術および手段を組
み合わせたものである。大部分の例において,全体のプ
ロセスの各段階に他の手段が存在する。手段の選択は二
元目的の結合体の導入と安定な維持のための基本的なベ
クター系の選択,修飾される植物種および望まれる再生
手段,そして用いられる特別の外来構造遺伝子またはプ
ロモーター配列などの変数に依存し,それらすべてに当
業者が望む結果を得るために選択し,用いることができ
る別のプロセス段階がある。例えば,二元目的のプロモ
ーター領域を得るための出発点は,本応用においてはpT
iA6から単離されたT−DNAに例証されているが,他の相
同性TiプラスミドのDNA配列で,適切な修飾がプロモー
ター領域の単離および操作手順に施される限り,置き換
えても良い。(しばしば,pTi15955が修飾なしに用いら
れる。)ここで示された1450bTx遺伝子由来以外の二元
目的プロモーター領域が発見または構築されるであろ
う。相同性遺伝子は当業者により,適切な厳密さの条件
下で相同性核酸の交差ハイブリダイズ能により,または
当該分野で熟知の核酸または蛋白質の配列により同定さ
れるだろう。本適用で利用されるまたは開示される遺伝
子配列内でのわずかな配列の変動があることは理解され
るだろう。これらの変動は当業者が操作し得る標準技術
により決定され,そのような相同性遺伝子のプロモータ
ー領域を利用できるであろう。外来遺伝子の植物細胞へ
の安定な挿入に対する新しい手段が開発されれば,当業
者は望みの結果を達成するために,これら他のプロセス
段階の中で選択できるであろう。本発明の基本面は二元
目的プロモーター領域の性質と外来構造遺伝子の単一コ
ピーの原核および真核再生物内での発現をもたらすため
のその利用である。他の面として,外来構造遺伝子の性
質と構造,および細菌および植物ゲノムへの挿入と発現
のための手段がある。遺伝的に修飾された植物を得るた
めに望まれる具体化の残された段階として,T−DNAへの1
450bTxPR/構造遺伝子結合体の挿入,細菌での発現の監
視,修飾T−DNAが植物細胞ゲノムの一部として安定に
取り込まれる植物細胞への修飾T−DNAの移送,形質転
換植物細胞の選抜と検出の段階,および最初に形質転換
された株から実用的な栽培物への導入遺伝子と他の共存
した,または同時に転移したDNA配列の移送の段階を含
むインビトロ培養と完全植物体への再生の技術,および
形質転換植物での発現の監視がある。 本発明のその望まれる具体化での基本面は挿入外来構
造遺伝子が1450bTxPRの支配下にある,すなわち二元目
的プロモーター領域とポリアデニル化部位の間にある,T
−DNA誘導体の構築であり,これらの用語は上で定義し
た。構造遺伝子はプロモーター領域に関して正しい位置
と方向に挿入されねばならない。位置には2つの観点が
ある。第1はプロモーターのどちら側に構造遺伝子が挿
入されるかに関するものである。大多数のプロモーター
は転写と翻訳の開始をDNAに沿って唯一の方向に支配す
ることが知られている。プロモーター支配下にあるDNA
領域はプロモーターの“下流に",または他の表現として
“後に”または“3′側に”あると言われる。したがっ
て,プロモーターに支配されるためには外来構造遺伝子
の正しい挿入の位置はプロモーターの“下流に”なけれ
ばならない。位置についての第2の観点はプロモーター
の既知機能要素,例えば転写開始部位,と構造遺伝子の
翻訳開始部位間の塩基対での距離に関するものである。
プロモーターによりこの距離に関して実質上の変動が存
在するらしい。したがって,これに関する構造上の要求
は機能的という言葉により最もよく表現される。第一次
近似として,理にかなった作用能はプロモーターと挿入
外来構造遺伝子間の距離が,正常に支配しているプロモ
ーターと遺伝子間の距離に近い場合に得られる。向きと
は構造遺伝子の方向性に関するものである。最終的には
外来蛋白質のアミノ末端をコードする構造遺伝子の部分
を構造遺伝子の5′末端と呼び,一方,蛋白質のカルボ
キシル末端付近のアミノ酸をコードする端を構造遺伝子
の3′末端と呼ぶ。外来構造遺伝子の正しい向きは,そ
の5′末端をプロモーターの近くに有する。融合蛋白質
発現をもたらす構築の場合にさらに要求されることは,2
つの構造遺伝子の融合は,2つの遺伝子のコード配列が同
じリーディングフレームフェーズになければならないこ
とであり,この構造上の要求性は当該分野に熟知されて
いる。このフェーズの要求性の例外はイントロンが2つ
の構造遺伝子由来のコード配列を分断している場合に存
在する。その場合,両構造遺伝子は適合するスプライス
部位を保有しなければならず,そしてイントロンスプラ
イス部位は正しいリーディングフレームが,イントロン
が転写後のプロセッシングにより除去された後,同じフ
ェーズに保存されるような位置になければならない。発
現速度または発達の制御の差は別の外来構造遺伝子が14
50bTxPR誘導体または他の二元目的プロモーター領域の
支配下に挿入されるときに観察されるであろう。発現速
度はまた生じるmRNAの2次構造,特にステム−ループ構
造の細部により大きく影響される。当該分野で熟知の如
く,原核細胞における翻訳速度はAUG翻訳開始部位の
5′側のリボゾームRNA結合配列(J.Shine and L.Dalga
rno(1974)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 71:1342−1346)
の存在により影響されるであろうし,また真核細胞内で
の翻訳速度はAUG近傍の特別のヌクレオチド(M.Kozak
(1981)Nucl.Acids Res.:5233−5252)により影響さ
れるであろう。発現蛋白質自身の安定性,細胞間または
細胞内局在性または分泌,溶解性,標的特異性,および
他の機能上の性質を含み,またそれに限定されない性質
の差は融合蛋白質の場合に,挿入部位,融合蛋白質に含
まれる外来蛋白質の部分の長さと性質,およびその折り
たたみ構造の効果に依存することが観察されるであろ
う,そしてそれらのすべてに,植物細胞,植物組織およ
び完全植物体で要求される生理的性質に依存して,外来
蛋白質産物の機能上の性質を操作する,および制御する
多数の機会が存在する。プロモーター領域に似て,ポリ
アデニル化部位もコード配列の3′末端に関して正いし
位置と方向に位置しなければならない。外来構造遺伝子
蛋白質の3′末端とポリアデニル化部位の起源を提供す
るDNAにコードされるポリペプチド間の融合蛋白質もま
た可能である。 当業者には理解されるであろうが,他の部位が,連結
部の配列が翻訳と転写の機能に適合性を保持するように
より具体的に用いられるCla Iプロモーター/構造遺伝
子構造に置き換えられる。構造遺伝子を荷なう断片の
5′および3′末端の制限部位は同じであるかも知れな
いし,異なるかも知れない。遺伝子断片の両末端で特異
性の異なる粘着末端を有する部位の利用は,自動的に構
造遺伝子を1450bTxPRの後に正しい方向で位置させるこ
とになる。制限部位が適合性のない末端を有する場合,
当該分野で熟知の方法により,それらを平滑末端に変換
し,平滑末端は共に結合される。適当なリンカー,アダ
プターあるいはカップラーの使用もまた,1450bTxPRと構
造遺伝子間の連結部の形成に,ある場合には有効であ
り,これは当業者には証明されており,ここでも示され
る。 植物形質転換を実際に行っている人々は構造遺伝子が
細菌宿主内で,植物細胞内と同様有利に発現するという
いくつもの状況に気づくだろう。しかし,形質転換細胞
の同定および/または選択のための遺伝マーカーとして
機能する遺伝子の発現をもたらすための1450bTxPRの使
用は特に有効であり,そしてここで例証される(実施例
4)。原核,真核生物に拘らず,細胞の形質転換はマー
カーおよび連接したDNA配列を保持する特別の組み換えD
NA分子により形質転換された細胞を容易に同定する方法
をもつ場合に,最も簡単に達成される。単一マーカーの
効果的な発現のための1450bTxPRの使用は当業者に形質
転換ベクターへの第2のマーカーを導入する手間を省か
せる。さらに,第2のマーカーが不要なことは形質転換
ベクターを作成するのに小型化ができ,それによりDNA
操作の容易性,形質転換効率の上昇などをもたらす。し
かし,特別のマーカーを1450bTxPRの後に置く場合,当
該分野で既知の如く,遺伝子の再配置をもたらすプラス
ミド内の他の部分との相同配列に気をつけねばならな
い。例えば,TLonc遺伝子とTRの1450bTxPR/kan組合せを
欠失したホモ部分2倍体を選択するのに用いるkan遺伝
子は組み換えを起こし,介在T−DNA配列の欠失あるい
は逆転を生ずる。1コピー以上の1450bTxPRを似たよう
な数の種々の外来構造遺伝子の発現をもたらすために用
いる場合に注意を払わねばならないことは同様である。 当業者には明らかなように,二元目的プロモーター領
域/外来構造遺伝子結合体は,それが乗っているプラス
ミドからその組合せを除去するのに都合の良い何らかの
制限部位と,植物形質転換体または選んだシャトルベク
ターへの挿入に都合の良い制限部位の間に置かれるだろ
う。T−DNA内の二元目的組合せの挿入部位の位置は,
近接するT−DNA境界の配列の転移機能が損なわれない
限り,厳密なものではない。何故なら,以前の研究にお
いて,これらの領域は修飾T−DNAの植物ゲノムへの挿
入に本質的なもののようである。望ましい挿入部位は最
も活発に転写されている領域,特にTR,および1450bTxを
含む領域にあるものである。二元目的組合せが挿入され
るT−DNAは何らかのTIPプラスミドから得られ,そして
この結合体は当業者に熟知の標準技術により挿入され
る。内在T−DNAまたはベクター遺伝子の転写,翻訳の
方向に関する挿入植物遺伝子の向きは厳密ではなく,2つ
の可能な方向のどちらも機能的である。植物での発現速
度の差は,ある遺伝子がT−DNA内の異なった位置に挿
入される場合に生ずるだろうし,それはDNAメチル化お
よびクロマチン構造などの因子によるものである。 二元目的結合体と何らかの望まれる連接したDNAをT
−DNAに挿入する簡便な方法に,背景の項で述べたよう
に,エセリシア・コリー内で複製できるプラスミドに取
り込まれたT−DNAの小片(これらの小片間に挿入が望
まれる)を有するシャトルベクターの利用がある。この
T−DNA小片は1つの制限部位,できればシャトルベク
ター内で特別な部位,を含む。二元目的結合体はT−DN
A配列の特別の部位に挿入されることができ,そしてこ
のシャトルベクターは適当なアグロバクテリウム株,で
きればそのT−DNAがシャトルベクターのT−DNA小片と
相同性を有する,の細胞へ移される。形質転換アグロバ
クテリウム株は,Tiプラスミドの既存の小片をシャトル
ベクターのT−DNA小片で置換させるような二重相同組
み換え(ホモ部分二倍体化)現象の選択を許す条件下で
できれば増殖させる。しかし,本発明は二元目的結合体
のT−DNAへの導入が二重相同組み換え機構に限定され
ないことに注意すべきである;シャトルベクター(恐ら
くT−DNAと相同性の唯一の連続した領域を有する)と
単一部位での単一相同組み換え(共同組み込み),ある
いはプロモーター領域/構造遺伝子保有細菌トランスポ
ゾンの挿入もまたこの結合体のT−DNAへの挿入に有効
な手段である。 ちょうどここで述べた方針に従い,修飾T−DNAを当
該分野の何らかの技術により植物細胞へ移すことができ
る。例えばこの転移はT−DNA内に組み込まれた外来構
造遺伝子を有する新規アグロバクテリウム株での植物の
直接感染,あるいは植物細胞とこのアグロバクテリウム
株との共存培養のどちらかにより,最も容易に達成され
る。前者の技術,直接感染,は感染部位に腫瘍体または
クラウンゴールの出現をもたらす。クラウンゴール細胞
は次いで培養で増殖させることができ,そして当業者に
既知の適切な環境下で挿入T−DNA小片を含む完全植物
体へ再生できる。共存培養の技術により,植物細胞のあ
る部分は形質転換される,すなわち転移したT−DNAを
有し,植物細胞ゲノムに挿入される。どちらの場合も,
形質転換細胞は非形質転換細胞と選別,または区別され
ねばならない。選別はT×CS/外来構造遺伝子に加えて
T−DNAに取り込まれた選択マーカーを用意することに
より最も容易に達成される。公表されたマーカーの例と
して,メトトレキセート−耐性ジハイドロフォレートリ
ダクターゼまたはノパリンシンターゼのプロモーターの
支配下で発現するネオマイシンフォスフォトランスフェ
ラーゼII(NPT II)がある。これらのマーカーはそれぞ
れメトトレキセートまたはカナマイシンあるいはそのア
ナログ含有培地での増殖により選別される。重金属イオ
ンの毒性効果はメタロチオネインの存在により軽減され
得る。事実,本発明は形質転換植物細胞の選択に適した
選択マーカー,1450bTxPR/NPT II構造遺伝子結合体,の
作成について例を示した。さらにT−DNAは,培養でTi
−誘導腫瘍のホルモン非依存増殖を制御する遺伝子,Ri
−誘導腫瘍根の異常な形態を制御する遺伝子,およびア
ミノ酸アナログのような有毒物質に対する耐性を制御す
る遺伝子,そのような耐性はオピン合成酵素(例えばoc
s)により与えられるが,のような内在マーカーを保有
する。当業者に熟知の選択法にはオピン生産の分析,特
徴的な核酸配列に対する特異的ハイブリダイゼーショ
ン,あるいはELISA(“エンザイムリンクドイムノソー
バント アッセイ”の略),ラジオイムノアッセイ,お
よび“ウエスタン”ブロットなどを含む特異蛋白質の免
疫的分析などがあるが,これに限らない。さらに発現外
来遺伝子の表現型も形質転換組織の同定に用いることが
できる(例えば抗生物質耐性またはバチルス・チューリ
ンゲンシス結晶蛋白質の殺虫能)。 シャトルベクター戦術の別法に二元目的結合体が挿入
されるT−DNAまたは修飾T−DNAを含み、アグロバクテ
リウム株で独立に複製できるプラスミドの利用がある。
背景で述べた最近の証拠は,アグロバクテリウム株はT
−DNAの植物細胞への転移を促進する機能がある,ある
トランスに作用する遺伝子を含み,そのようなプラスミ
ドをアグロバクテリウム株から植物細胞へ移し得ること
を示した。T−DNAを含み,アグロバクテリウム株の中
で独立に複製できるプラスミドを,ここで“サブ−TIP"
またはサブ−Tiプラスミドと呼ぶ。サブ−TIPプラスミ
ドはそれが含有するT−DNAの量に差があるという変動
は存在する。この変動の一方の極端はTIPプラスミドか
らのT−DNAのすべてを残しているもので,時々“ミニ
−TIP"またはミニ−Tiプラスミドと呼ばれる。もう一方
の極端は,T−DNA境界付近のDNA量以外のすべてが欠失
し,残存部分はサブ−TIPプラスミドが宿主細胞へ移
り,取り込まれるのに必要最小である,ものである。こ
のようなプラスミドを“ミクロ−TIP"またはミクロ−Ti
と呼ぶ。サブ−TIPプラスミドはそれが小さく直接操作
が比較的容易であり,相同組み換えによりシャトルベク
ターからT−DNAへ遺伝子と移す必要性がないという利
点がある。望みの構造遺伝子を挿入した後,T−DNAの転
移を促進するトランスに作用するvir遺伝子を含む植物
細胞へ容易に直接導入ができる。アグロバクテリウム株
への導入は,当業者に熟知の技術,すなわちアグロバク
テリウム株の形質転換または供与細菌細胞からの接合伝
達のいずれかにより容易に達成される。新規DNA配列の
植物ゲノムへの導入の目的のために,TIPプラスミドおよ
びサブ−TIPプラスミドは機能的に等価であると見なさ
れるべきである。実施例6は一般にTRに基づく,サブ−
TIPプラスミドを開示し,そしてさらに詳細な考察を行
う。 本発明の望ましい具体化は二元目的プロモーター領域
/外来構造遺伝子結合体を,形質転換されるべき植物の
ゲノムへの導入のためのT−DNAに基づくアグロバクテ
リウム仲介系にあるが,この結合体の転移と組み込みの
ための他の手段もまた本発明の展望に含まれる。二元目
的結合体の植物ゲノムへの安定な組み込みのための別の
手段には,さらに,ウィルスゲノム,ミニクロモゾー
ム,トランスポゾンおよび植物染色体への相同あるいは
非相同組み換えに基づくベクターの利用があるが,これ
に限らない。植物細胞へのこれらベクターの導入の別の
方式に,ベクター含有リポゾームあるいは細菌スフェロ
プラストとの融合,顕微注射,ウィルスコート蛋白質へ
の封入とそれに続く感染に似た過程,および電気パル
ス,レーザー,あるいは化学剤による原形質膜透過性の
誘導後のDNAの直接取込みがあり,またこれに限らな
い。移行取込みおよび/または発現の手段もまた本発明
の展望に含まれる。アグロバクテリウム細胞およびTIP
に基づく系は細菌から植物細胞へのDNAの転移により双
子葉植物を形質転換するのに用い得る;他のベクターに
基づく系,あるいはベクター伝達手段が単子葉および双
子葉植物を含むすべての裸子植物およびすべての被子植
物の形質転換に使用し得る。 形質転換細胞および組織の再生は既知技術により達成
される。再生段階の目的は正常に,しかし組み込まれた
T−DNAを保持して,発育,増殖する完全植物体を得る
ことである。再生の技術は当該分野の原理に従い,T−DN
Aの起源,修飾の性質および形質転換された植物種によ
りある程度変わる。Ri型T−DNAにより形質転換された
植物細胞は当業者に熟知の技術により,余分の実験なし
に容易に再生され得る。Ti型T−DNAにより形質転換さ
れた植物細胞は,ある場合には,培養のホルモン準位を
適当に操作することにより再生され得る。しかし,望ま
しくは,Ti−形質転換組織は,もしT−DNAがtmrおよびt
ms遺伝子の一方または両方に変異を受けていれば,最も
容易に再生される。これら遺伝子の不活化は形質転換組
織のホルモンバランスを正常に向け,培養での組織のホ
ルモン準位を極めて容易に操作できるようにするため,
その,より正常なホルモン生理のゆえに容易に再生する
植物となる。もしtmrおよびtmsでの変異がシャトルベク
ターを用いた二重相同組み換えによりT−DNAに導入さ
れるならば,その変異の導入は二元目的プロモーター領
域/構造遺伝子結合体の導入とは別の様式で選択されね
ばならないことに注意するのは重要である。例えば,前
者の例においてはtmrおよびtms不活化をクロラムフェニ
コール耐性により選択するが,一方プロモーター領域/
外来遺伝子選択はカナマイシン耐性で行われる。tmsお
よびtmr部位の不活化は,これら遺伝子のコード領域あ
るいはプロモーター内の1つまたはそれ以上の塩基の挿
入,欠失,または置換,すなわちプロモーターの不活性
化あるいは蛋白質の構造の破壊を計る変異,により達成
されるだろう。(適当な変異の作成はT.C.Hall et al.,
US application ser.nos.485,613 and 485,614および背
景で挙げた文献に例が述べられている。)ある例では,
腫瘍細胞は組み込まれたT−DNAを有し,ノパリンシン
ターゼのようなT−DNA遺伝子を発現する,そしてそれ
はさらに挿入された植物構造遺伝子を発現する,シュー
トを再生することができる。このシュートは根を有する
植物に継ぎ木することにより栄養細胞で維持でき,そし
て稔性花を生ずることができる。このシュートはこのよ
うにしてT−DNAを有し,そこに挿入された外来構造遺
伝子を発現する正常な子孫植物のための親植物材料を提
供する。 形質転換される植物組織の遺伝子型は,その細胞がイ
ンビトロ培養で発育再生でき,用いる選択剤に感受性で
あるように,容易にするためにしばしば選ばれる。農業
的に興味のある栽培物はこの操作には不適であり,もっ
とやりやすい変種が最初に形質転換される。再生後,新
しく導入された二元目的プロモーター領域/外来構造遺
伝子結合体および何らかの連接したおよび/または共同
転移したDNAは容易に望まれる農業栽培物へ,植物育種
および植物遺伝学の当業者に熟知の技術により,移され
る。農業栽培物と形質転換植物の有性交配により最初の
雑種ができる。これら雑種は次いで望ましい遺伝的背景
をもつ植物と戻し交配される。子孫は常に,挿入外来DN
Aの連続した存在,あるいは挿入外来DNAによりもたらさ
れる遺伝子の発現の結果としての新しい表現型につい
て,選択および/または選別を行われる。このようにし
て,多数回の戻し交配と選別の後に,農業的に望ましい
親と本質的に同じ遺伝子型を持ち,挿入外来DNA配列を
併せ持った植物がつくり出され得る。 実施例 次に述べる実施例は,TIPとアグロバクテリウムを分子
生物学および操作に習熟した当業者にとって,よく知ら
れた,そして行い易い技術の多くを利用している;これ
らの方法は,ここで詳述されていない場合は,引用され
た参考資料の1つまたはそれ以上のものに詳述されてい
る。酵素は市販品を購入し,販売者の勧める方法または
当該分野の他の変法により用いられる。試薬,緩衝液お
よび培養条件も,当業者に知られている。そのような標
準的技術を含む参考資料には,次に述べるものが含まれ
る:R.Wu,編(1979)Meth.Enzymol.68,R.Wu et al.編(1
983)Meth.Enzymol.100および101,L.GrossmanおよびK.M
oldave,編(1980)Meth.Enzymol.65,J.H.Miller(197
2)Experiments in Molecular Genetics,r.Davis et a
l.(1980)Advanced Bacterial Genetics,R.F.Schleif
およびP.C.Wensink(1982)Practical Methods in Mole
cular Biology,およびT.Maniatis et al.(1982)Molec
ular Cloning。それに加えて,R.F.Lathe et al.(198
3)Genet.Engin.:1−56,はDNA操作についての有用な
説明をしている。 単離されている制限エンドヌクレアーゼという名称に
ついての本文での使用,例えば“Bcl I",は,図表中に
おけるその酵素の作用を受けやすい配列部位,例えば制
限部位,を表す場合以外は,酵素反応におけるその酵素
の使用を表す。本文では,制限部位は“部位”という用
語,例えば“Bcl I部位”という用語の付加的な使用に
より表示される。“断片”という言葉の付加的な使用,
例えば“Bcl I断片”は,その命名酵素の作用により生
成した末端を保持する直線二本鎖DNA分子を表す(例え
ば制限断片)。“Bcl I/Sma I断片”のような語句は,2
つの異なる酵素,ここではBcl IおよびSma I,の作用に
より,制限断片が生成したことを示し,それは,2つの異
なった酵素の作用の結果生成した2つの末端を有する。
その末端は,“粘着性で”あること(すなわち,相補的
な一本鎖オリゴヌクレオチドと対合することのできる,
一本鎖の突起を持つこと)もしくは“平滑で”あること
の特徴を有すること,および粘着性末端の特異性は,そ
れを生成する酵素の特異性により決定されること,に留
意しておく。 プラスミド,および唯一プラスミドのみが,例えばpT
i15955またはpUC13のように“p"の頭文字が付けられ,
株の名称は,例えばアグロバクテリウム・チユーメファ
シエンス(pTi15955)またはエセリシア・コリーJM83
(pUC13)のように,括弧を付けてプラスミドがそれに
保持されていることを示す。 次に示す株は寄託されている: エセリシア・コリーK12 RRI(pRK290Kan−1) NRRL B−15736(本菌株は、ブダペスト条約に基づく国
際寄託である。) アグロバクテリウム・チユーメファシエンス(pTi1595
5) ATCC15955 エセリシア・コリーC600(pKS4) NRRL B−15394 エセリシア・コリーHB101(pPVL134) ATCC39181 他のプラスミドおよび株は当業者に広く利用でき,そ
して入手し易い。 実施例1 この実施例は,1450塩基転写物(1450bTx)の位置を決
定する転写マッピング実験の結果を発表,討論し,そし
てまた前記の結果を得るため用いられた方法を教示す
る。これらの実験結果は,本質的にはS.J.Karcher et a
l.(1984)Molec.Gen.Genet.,から抜粋され,そしてこ
こでは本発明を理解するのに必要な背景として含まれ
る。 1.1結果 第1図は,植物DNA(T−DNA)中に安定して組み込ま
れるTiプラスミドの領域を示すpTiA6の部分の制限エン
ドヌクレアーゼ地図を示す。BamH I断片2の副断片(第
2図の地図を参照)はプラスミドpBR325,pMK2004,もし
くはpUC13中にクローン化され,T−DNAのTR領域にコード
されていて,植物腫瘍中で転写されるRNAの局在化のた
めのハイブリダイゼーション試料として用いられた。E9
懸濁腫瘍細胞系列,すなわち当業者によく知られたアグ
ロバクテリウム・チューメファシエンス(pTiB6806)
(M.F.Thomashow et al.(1980)Cell 19:729−739)に
より刺激されたニコチアナ・タバカム系列,より分離さ
れた全細胞RNAもしくはポリA+RNAのノーザンブロット分
析により,試料b5,Cおよびd1にハイブリダイズする,約
1450塩基の大きさのRNAが発見された。このRNAは試料b4
及びb3にも低い程度にハイブリダイズしているようであ
る(第2図)。 1450bTxの境界および方向性をより正確に決定するた
めにS1ヌクレアーゼマッピング実験が行われた。S1ヌク
レアーゼ保護実験の試料として用いられた断片は,一本
鎖バクテリオファージM13由来のベクター中に両方向で
クローン化された。(実施例1.3bを参照)このようなM1
3由来の一本鎖DNAを使用することは,S1ヌクレアーゼ分
析の試料としては,二本鎖DNAを使用するよりも有効で
あった。DNAとRNAのハイブリダイゼーションは,65℃
で,水溶液中において,比較的短時間で実施可能であっ
た。それに加えて,M13でのクローニングではDNAの両鎖
は分離されるので,S1ヌクレアーゼ分解からのRNAによる
保護について,各々の鎖は別々に試験することが可能で
あった。どちらのクローン化DNA鎖が保護されているの
かということ,およびM13の多様性クローニング部位中
にクローン化した挿入物の方向性を決定することによ
り,RNAの転写の方向性を推論することが可能であった。
与えられた領域の両鎖が保護されたので,両方向での転
写が示された。 E9全細胞RNAを用いたこのような分析の結果が第2図
に示される。d1+d2をS1ヌクレアーゼ保護試料として用
いることにより,1450bTxがCおよびd1の間のHind IIIの
右側の約240bpより始まることが決定された。Cおよびb
5の両断片は,この転写物によりS1ヌクレアーゼ分解か
ら完全に保護されていた。b5がS1ヌクレアーゼ保護試料
として用いられた場合に,約280bpの断片が回収され
た。b4+b5が用いられた場合には,約20bp以上の断片が
S1ヌクレアーゼ分解から保護された。このデータから,1
450bTxは,b4とb5の間のCla I部位のちょうど左側のb4
終結することが示された。 1.2考察 ノーザンブロッティングおよびS1ヌクレアーゼ分析を
用いることにより,オクトピン型クラウンゴール腫瘍由
来のT−DNAのTR領域によりコードされた五つの転写物
が局在化された。ポリアデニル化されたRNAは宿主植物
プロモーターからではなく,T−DNA内部のプロモーター
より転写された。ノーザンブロット分析により,E9腫瘍
系列においては,1450bTxを含むTRにコードされた最も多
量の転写物は,TLによりコードされた転写物よりも相当
多かった。それゆえTRは植物遺伝子工学実験での利用に
おいて興味が持たれる。というのは,それは強力なプロ
モーターを含み,それでいて直接には腫瘍化に含まれて
いないからである。 これらのRNAの転写方向の決定,および5′および
3′末端の局在化を,ブロッティング実験よりももっと
正確に行えるように,S1ヌクレアーゼマッピング操作が
用いられた。S1ヌクレアーゼ保護データから,1450塩基R
NAをコードする遺伝子は検出可能の介在配列を一つも含
まないことが示された。ノーザンブロッティング分析に
より決定された転写の大きさは,S1ヌクレアーゼ分析に
より示された大きさよりも大きかった。大きさにおける
この違いは,転写後のポリ(A)配列の付加により容易
に説明される。 ノーザンブロットおよびS1ヌクレアーゼ保護のデータ
は,他の人たちにより推論されたこの領域のDNA配列の
データ(R.F.Barker et al.(1983)Plant Molec.Biol.
:335−350,R.F.BarkerおよびJ.D.Kemp.US Patent App
lication ser.no.553,786)とよく一致した。上記の転
写マッピング実験により予想された方向性および長さを
持つオープンリーディングフレーム(その中にORF24が
存在)が一つ存在した。それに加えて1450bTxPR中に,
真核生物の転写の促進に関係しているTATAAもしくはゴ
ールドバーグ−ホグネス ボックス(Goldberg−Hognes
s box)(J.E.Darnell(1982)Nature 297:365−371)
に類似した配列が存在した。TATTAボックスは正確なイ
ンビトロ転写に必要であることが示されている(B.Wasy
lyk et al.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:7024−7
028)が,TATAAの上流の配列はインビボでの有効な転写
に必要であることが知られている。CCAATという配列はT
ATAAボックスの上流によく見られ(C.Benoist et al.
(1980)Nucleic Acids Res.:127−142,A.Efstratiad
is et al.(1980)Cell21:653−668,T.Shenk(1981)Cu
rr.Topics Microbiol.Immunol.93:25−46),1450bTxPR
中に類似配列が存在した。転写物の3′末端付近には,
多くのmRNAの3′末端の適当な決定に必要な配列信号で
ある(N.Proudfoot(1984)Nature 307:412−413),AAT
AAAというヘキサヌクレオチドに三つの類似した配列が
存在する。 1.3 実験材料および方法 1.3a 培養条件 クラウンゴール腫瘍系列は,1.0%ファイトアガー(M.
F.Thomashow et al.(1980)Cell 19:729−739)を加え
ない(懸濁培養用)または加えた(カルス培養用)MS3
培地中で,光の連続照射下で25℃で培養された。対照と
して用いられた非腫瘍性タバコ系列であるXSRは,1.0mg/
のナフタレン酢酸および0.1mg/のベンジルアミノプ
リンを補足したMS3培地で培養した。 組み換えプラスミドを保持するエセリシア・コリー株
は0.2%のカザミノ酸を補足したL液体培地で培養され
た。用いられた抗生物質濃度は,エセリシア・コリーに
対しては:アンピシリン,50−100μg/ml;テトラサイク
リン,10μg/ml;カナマイシン,20μg/ml;およびアグロバ
クテリウム・チューメファシエンスに対しえは:カルベ
ニシリン,100μg/ml;テトラサイクリン5μg/ml;カナマ
イシン,100μg/ml;リファンピシン,10μg/ml;ゲンタマ
イシン,100μg/ml,であった。 1.3b 組み換えDNAプラスミドおよびM13の構築 BamH I断片2(第1図)は,通常の当業者に知られた
標準的操作によりアグロバクテリウム・チューメファシ
エンス プラスミドpTiB6806(A277株中で培養)からpB
R322中へクローン化された。BamH I断片2の副断片は,p
BR325,pMK2004,もしくはpUC13(各々F.Bolivar et al.
(1977)Gene :93−113,M.Kahn et al.(1979)Meth.
Enzymol.68:268−280,およびJ.Messing(1983)Meth.En
zymol.101:20−78)にクローン化された。制限エンドヌ
クレアーゼ反応のすべては,供給元(Bethesda Researc
h Laboratories(BRL),P.L.Biochemicals,もしくはNew
England Biolabs)の示唆の通りに実施された。T4 DNA
リガーゼはBRLより購入した。組み換えプラスミドは,
クリアード・ライゼート操作(D.G.Blair et al.(197
2)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2518−2522)もしくは
アルカリ溶菌操作(N.C.BirnboimおよびJ.Doly(1979)
Nucleic Acids Res.:1513−1523)を用いてエセリシ
ア・コリーから分離された。 S1ヌクレアーゼ保護反応に用いられたBamH I断片2の
領域は,当業者によく知られている技術により,複製可
能な型のDNAであるM13mp8およびM13mp9(N.Jones博士か
ら入手),もしくはM13mp10およびM13mp11(P.L.Bioche
micalsにより供給)中へ両方向においてクローン化され
た。 1.3c RNAの分離,電気泳動,ブロッティング,および
ハイブリダイゼーション 腫瘍RNAは,フェノール抽出後に1.5倍量の冷蔵した10
0%エタノールを加え,15分氷上で定温に保つことにより
多糖類を沈澱させたこと以外は,以前に記述された(S.
B.Gelvin et al.(1981)Plasmid :17−29)通りに分
離された。10,000×g,10分間の遠心分離の後,RNAを沈澱
させるために上澄みに2倍量の100%エタノールを加え
た。 変性ホルムアルデヒドゲルによるアガロースゲル電気
泳動、ニトロセルロース上でのブロッティング,および
ハイブリダイゼーションは記述された通りであり(Gelv
in et al.(1981)前出),変更された所は次の通りで
あった:ゲルは2%アガロース含有,洗浄液は1×SSC
(0.15M塩化ナトリウム,0.015Mクエン酸ナトリウム),
0.1%SDS,および10mMNa2EDTA含有であった。ニック・ト
ランスレーションは,Amershamのニック・トランスレー
ション・キットを用いて実施された。 1.3d E9腫瘍RNAのヌクレアーゼ保護分析 組み換えM13一本鎖DNAおよびE9懸濁RNAの間のハイブ
リダイゼーションは5×SSC20−30μ,20mMTris−HCl
(pH7.4)中で65℃において実施された。典型的に,500n
gの組み換えファージDNAが,E9懸濁培養液から分離され
た全RNA20μgとハイブリダイズした。5時間後に冷蔵S
1ヌクレアーゼ分解用緩衝液(280mM塩化ナトリウム,50m
M酢酸ナトリウム,4.5mM硫酸亜鉛,20μg/ml変性子牛胸腺
DNA,pH4.6)で全量を150μにし,100単位のS1ヌクレア
ーゼ(Sigma)を加えた。この試料は37℃で45分間保温
された。50μの冷蔵S1終結混合液(2.5M酢酸ナトリウ
ム,50mMNa2EDTA)を加え,保護された断片は20μgの酵
母tRNAおよび2.5倍量の100%エタノールの添加により沈
澱させた。 −20℃の保温の後,沈澱を集め,20μのアルカリ緩
衝液(30mM水酸化ナトリウム,2mMNa2 EDTA)に溶解し,
そして断片を1.2%もしくは2.0%のアルカリアガロース
ゲルの電気泳動(M.W.McDonnell et al.(1977)J.Mol.
Biol.110:119−146)にかけた。DNAのニトロセルロース
への移動,ブロットのハイブリダイゼーションおよび洗
浄は,試料の濃度は通常50ng/ml以下で,ブロットは慣
例的に0.3×SSCで5時間洗うだけであった以外は,以前
に記述された通り(M.F.Thomashow et al.(1980)前
出)であった。 実施例2 この実施例は,pTiA6およびpTi15955のようなオクトピ
ン型のプラスミドのTRへのホモ部分二倍体化に適した14
50bTxPRプロモーターの媒介物の構築を教示する。 2.1 TRのクローニング pBR322のBamH I部位中のpTiA6のT−DNAのBamH I断片
2の組み換えDNAクローンを,EcoR Iにより完全分解した
(ATCC15955より分離されたpTi15955と高い相同性のあ
るpTi6Aはアグロバクテリウム・チューメファシエンスA
6NCより分離される)。5.4キロベースペア(Kbp)のDNA
断片,EcoR I13を含む分解混合物を,EcoR Iにより直線化
されたpRK290DNA(G.Ditta et al.(1980)Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 77:7347−7357)と混合および連結し,そ
してその混合物をエセリシア・コリーK12PR1中へ形質転
換した。プラスミドDNAをテトラサイクリン耐性の形質
転換体より分離し,pRK290Eco13と名付けた,EcoR I13T−
DNA断片を含むプラスミドを保持するコロニーを制限酵
素分析により同定した。 2.2 1450bTx構造遺伝子の欠失 pRK290Eco13 DNAを,Cla Iにより完全分離し,再結合
し,そしてPRI中へ形質転換した。テトラサイクリン耐
性形失転換体から分離されたプラスミドDNAを制限分析
により特徴づけ,そしてpRK290Eco13 ΔClaと名付けら
れたプラスミドを保持するコロニーが同定され,それは
第2図のb5,Cおよびd1断片を包含するCla I断片を欠失
していた。外来構造遺伝子は,1450bTxプロモーター領域
の後方にある,pRK290Eco13 ΔClaの唯一のCla I部位に
容易に挿入することができる(第3図)。Cla I断片の
欠失により,1450bTxの3′側の最初のポリアデニル化部
位が取り除かれた;しかし,他の二つのポリアデニル化
部位の配列は,残っている唯一のCla I部位の下流に保
有されている。 2.3 Cla I部位の他の制限部位による代用 次に示すことは,pRK230Eco13 ΔClaの唯一のCla I部
位のHind III部位による代用を記述している。pRK290Ec
o13 ΔCla DNAを分離し,そしてCla Iにより完全分解す
る。その結果生じるCla Iの粘着性末端を,E.Coli DNAポ
リメラーゼIのクレノー断片を加えて保温することによ
り埋め,そして という構造を持つ二本鎖リンカーを,すでに平滑末端化
されたCla I部位中に,平滑末端間結合する。その結果
生じた混合物をHind IIIで完全分解し,再結合し,そし
てPR1中へ形質転換する。テトラサイクリン耐性形質転
換体から分離されたプラスミドDNAを,欠失した1450bTx
構造遺伝子の場所におけるCla I部位の欠如およびHind
III部位の存在による制限分析によって選択し,そのよ
うなプラスミドをpRK290Eco13 ΔClaHindと名付ける。 当業者には明らかになるだろうが,Cla I部位をHind I
II以外の制限酵素の所望の特異的配列に変えることによ
り,上記のリンカーを他のリンカーで代用することがで
きる。例えば, という配列を持つBamH Iリンカー(BRLから入手)でHin
d IIIリンカーを代用し,他は本質的に上記通りの実験
手順中に組み込まれた。ここではpRK290Eco13 ΔClaBam
と名付けられた,欠失した1450bTx構造遺伝子の場所にB
amH I部位を持つプラスミドを保持するRR1株が同定され
た。 実施例3 この実施例は,第3図に示されているように,抗生物
質であるカナマイシンおよびそのアナログ物質,例えば
ネオマイシンおよびG418に対する,植物と細菌の両方で
耐性を賦与する選択可能マーカーの構築を教示する。 3.1 kan遺伝子の調製 ネオマイシン フォスフォトランスフェラーゼIIとい
う酵素をコードする細菌のトランスポゾンT5由来のカナ
マイシン耐性(kan)遺伝子は,そのDNA配列はE.Beck e
t al.(1982)Gene 19:327−336により報告されたが,
プラスミドpKS4上に存在し,それはエセリシア・コリー
(pKS4)NRRL B−15394より分離される。pKS4DNAをBgl
IIおよびSma Iにより完全分解し,その結果生じる1キ
ロベースペアの,NPTII含有の断片を,すでにSma IとBam
H Iにより分解されたpUC13と混合および結合した。BamH
IおよびBgal IIの粘着性末端は同じ特異的配列(5′G
ATC...3′)を持ち,そして両方を容易に結合できる
が,しかしその結果生じるBamH I/Bgl IIの縫合部位,
すなわちはどちらの酵素の作用も受けない。結合混合物をエセリ
シア・コリーK12 JM83に形質転換し(J.Messing(197
9)Recomb.DNA Tech.Bull.(2):43−48,NIH Publ.N
o.79−99),そして白色を呈するコロニーを選別した。
プラスミドDNAを,選別された形質転換体から分離し,
そして制限部位マッピングによる特徴づけを行った。pU
C13KanBgl/Smaと名付けられたプラスミドを含むコロニ
ーが同定された。 pUC13KanBgl/Smaのkan遺伝子含有断片は,kan構造遺伝
子に対して,BamH I/Bgl II縫合部位のすぐ上流のpUC13
のポリリンカー(ポリリンカーとは,いくつかの制限酵
素の作用を受ける部位を含む,短い配列のことである)
中にAcc I部位を持っている。kan遺伝子は,Sma Iおよび
Acc Iによる1KbpDNA断片における分解により,pUC13KanB
gl/Smaより取り除かれる。特にこのAcc I切断部位は,
5′CG...3′という粘着性末端を持ち,これは酵素Cla I
により生成した末端と容易に結合しうる。 3.2 1450bTx PRプロモーターの後ろへのkanの挿入 pUC13KanBgl/SmaおよびpRK290Eco13 ΔClaを,各々Ac
c IおよびCla Iを用いた完全分解により直線状にし,互
いに混合,結合し,そしてE.Coli RR1へ形質転換した。
アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性(各々pUC13
およびpRK290の配列を選別する)の形質転換体から分離
されたプラスミドDNAは制限酵素分析により特徴づけが
なされた。pRK290Kan−1と名付けられた,プラスミド
を含むコロニーが同定され,そのプラスミドは,1450bTx
プロモーターの後ろに,以前そこにあった1450bTxのコ
ード配列と同じ方向性および位置に挿入されたkan遺伝
子を保持していた。pRK290Kan−1のkan遺伝子が転写さ
れる場合には,RNAポリメラーゼIIは,kan遺伝子の3′側
にある最初のT−DNAのポリアデニル化部位に到達する
前に,Tn5の全ておよびpUC13配列のすべてを転写しなけ
ればならない。しかし,kan/pUC13縫合部位の3′側に,
ポリアデニル化部位として働く他の配列が存在する。 3.3 pRK290のpRK290Kan−1からな欠失 pRK290が基礎になっているプラスミドはかなり大きく
(20Kbp以上),それゆえ組み換えDNA操作を行うとき,
扱うのが難しいことが多い。pUC13のレプリコンにより
複製される二つのプラスミドの構築がこの後に記述さ
れ,そして第3図に概略的に図解されている。 pRK290Kan−1DNAをEcoR Vで完全分解し,それ自身を
連結し,JM83中に形質転換した。アンピシリン耐性およ
びテトラサイクリン感受性形質転換体からプラスミドが
分離され,制限分析によって特徴づけられ,そしてpVic
1と名付けられたプラスミドを含むコロニーが同定さ
れ,そのプラスミドは,pUC13,kan,およびEcoR V T−DNA
断片を保持し,1450bTxプロモーター(第2図にあるよう
に断片d2の一部)および1450bTxに関連したポリアデニ
ル化部位(b4およびb3の一部)を所持する1450bTx構造
遺伝子を欠失していた。1450bTx構造遺伝子の両側のT
−DNAと相同性のあるpViclは,アグロバクテリウム・チ
ューメファシンエス細胞の直接形失転換およびカルベニ
シリン耐性による選別の後の,二重相同性組み換えによ
るオクトピン型Tiプラスミド中への組み込みに適してい
る。ホモ部分二倍体化の後,T−DNAは機能的な1450bTx遺
伝子を保持せず,そして形質転換された植物細胞に,オ
ピンであるマンノピンもしくはアグロピンを生成するこ
とはない。共存取り込み後,この構造物は細菌にカルベ
ニシリン耐性を賦与し,植物細胞中ではアグロピンおよ
びマンノピンの合成を行わせる。 pRK290Kan−1 DANをSst I,EcoR IおよびHind IIIで分
解した。pUC13 DNAをSst IおよびEcoR Iで分解した。分
解されたpRK290Kan−1およびpUC13 DNAを混合,および
互いに結合させた後,結合混合物をJM83中へ形質転換し
た。プラスミドDNAを白色の,アンピシリン耐性コロニ
ーから分離し,制限酵素分析により特徴づけを行い,そ
してpUC13Kan−1と名付けられたプラスミドを含むコロ
ニーが同定され,そのプラスミドはpUC13,kan,および14
50bTxを所持するT−DNA断片d2(第2図にあるように)
の配列を保持していた。1450bTx構造遺伝子の片側につ
いてT−DNAと相同性のあるpUC13Kan−1は,アグロバ
クテリウム・チューメファシエンス細胞の直接形質転換
およびカルベニシリン耐性による選別の後に,単一相同
性組み換えによる,オクトピン型Tiプラスミド中への組
み込みに適している。共存取り込みの後,T−DNAは断片d
2の複製物を含み,カルベニシリンの選別下で維持され
る必要があり,機能的1450bTx遺伝子を保有し,形質転
換された植物細胞に対し,オピンであるマンノピンおよ
び/もしくはアグロピンを生成させる。 3.4 起動性ベクターの構築 pUC系列のプラスミド(例えばpUC13を基礎とするプラ
スミド)はpRK2013によるエセリシア・コリーからアグ
ロバクテリウム・チューメファシエンスへの接合伝達に
対し起動性とは成り得ず,よって宿主アグロバクテリウ
ム細胞中へ直接形質転換されなければならない。しか
し,pBR322を基礎とするプラスミドはpRK2013により起動
性と成り得るが,アグロバクテリウム中では複製されな
いので,このようなプラスミドは,1450bTxPR/kan選択可
能マーカーの,オクトピン型Tiプラスミドへの伝達にお
いて有用な自殺ベクターである。 各々Hind IIIおよびEcoR Iにより分解されたpVic1お
よびpBR322DNAを,混合し,互いに結合し,PR1中へ形質
転換し,アンピシリン耐性形質転換体より分離されたプ
ラスミドDNAは,制限マッピングにより特徴づけが行わ
れ,pVic2と名付けられたプラスミドを保持するコロニー
が同定され,そのプラスミドはpVic1のpUC31配列の代用
としてpBR322のコピーを保持していた。pVic2は,共存
取り込みまたはTRへのホモ部分二倍体化が可能な起動性
自殺ベクターである。 各々Hind IIIおよびEcoR Iで分解されたpUC13 Kan−1
DNAおよびpBR322DNAを,混合し,互いに結合し,そし
てRR1中へ形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体
より分離されたプラスミドDNAは制限マッピングにより
特徴づけが行われ,pBR322Kan−1と名付けられたプラス
ミドを保持するコロニーが同定され,そのプラスミドは
pUC13kan−1のpUC13配列の代用としてpBR322のコピー
を保持している。pBR322Kan−1はTR中への共存取り込
み可能な起動性自殺ベクターである。 実施例4 この実施例は,1450bTxプロモーター領域の後に置くと
カナマイシン耐性の細菌の構造遺伝子は真核細胞,特に
植物細胞,と原核細胞,特にアグロバクテリウムとエセ
リシア・コリー細胞の両方で発現されたという予期しな
かった結果を明らかにしており,それゆえに二元目的プ
ロモーター領域と外来構造遺伝子の結合体の一部として
1450bTxPRが使えるかも知れないという,以前に明らか
にしていなかった事実を説明している。 4.1 原核生物内でのカナマイシン耐性 当該分野で以前に知られているアグロバクテリウム・
チューメファシエンスA348は,オクトピン型プラスミド
pTiA6をノパリン型株C58の熱により脱落した無毒性の誘
導体A114(NTI)のリファンピシン耐性誘導体A136に導
入することにより産み出した。pRK290Kan−1を形質転
換することによりA38に導入したが,その際にはpTiA6に
はホモ部分二倍体化しなかった。結果として生じた株で
あるA348−pRK290−Kan−1はカナマイシン100μg/mlを
含む培地に置くと成育することが観察された。液体培地
(YEP培地,30℃)でこの株の増殖曲線は一般に試したす
べてのカナマイシン濃度で同等の増殖を示したが,最高
濃度の200μg/mlでは曲線は低薬剤濃度で観察されるよ
り早く頭打ちした(第4図)。 4.2真核生物でのカナマイシン耐性 A348−pRK290−Kan−1はpTiA6にホモ部分二倍体化
し,植物細胞を形質転換するのに用いた。逆位のヒマワ
リの胚軸部の切片の上面の端(K.A.Barton et al.(198
3)Cell 32:1033−1043を参照)に接種し,2−4週間後
生じたカルスをホルモンを欠く固体MS3培地に置いた
(実施例1.3a)。アグロバクテリウム細胞は,1mg/mlの
カルベニシリンおよび200μg/mlバンコマイシンで死滅
し,カルスは直径約2.5cmになるまで成長した。カルス
の小断片をホルモンを欠く固体MS3培地に移しカルベニ
シリン,バンコマイシン,そして25μg/mlのG418カナマ
イシンのアナログを付加した。断片の多くは緑色のまま
で成長し続けるが,おそらくカルスが混入した未形質転
換細胞に由来している他の断片は死滅した。kan構造遺
伝子とどちらかの方向で代用したゼイン配列からなるす
べての対照物はG148で死滅した。このことから1450bTx
PR/kanは構造遺伝子結合物で形質転換した植物細胞はカ
ナマイシン作用に耐性であり得ることを示した。 実施例5 この実施例は,1450bTxプロモーター領域の後に置いた
真核生物の構造遺伝子は真核および原核細胞の両方で発
現するという予期しない結果を教示する。 レクチンは栄養的にも重要な種子蛋白質であり,豆科
植物とリゾビウム共生を確立する間で重要であると考え
られている。エセリシア・コリーHB101(pPLV134),ATC
C39181より得られるpPVL134は,フォゼオラス ブルガ
リスL.の種子のレクチンのcDNA構造遺伝子を含む(L.M.
Hoffman et al.(1982)Nucl.Acids Res.10:7819−782
8)。cDNAをコードしている配列はイントロンにより分
断されない遺伝子と同じく,遺伝子自身のそれと同じで
ある。 5.1発現ベクターの構築 エセルシア・コリーHB101はDNAをメチル化するので,D
NAは酵素Bcl Iでは切断されないが,エセリシア・コリ
ーGM33と当業者に知られている他の株はメチル化により
Bcl I部位は保護されない。HB101(pBVL134)より単離
したpPVL134 DNAはGM33を形質転換し,テトラサイクリ
ン耐性形質転換体が同定される。GM33(pPVL134)より
単離したpPVL134 DNAはBcl Iで完全分解により線状化
し,BAP処理を行い,BamH I分解したpRK290Eco13 ΔClaBa
mと混合し連結し,RR1へ形質転換する。テトラサイクリ
ン耐性形質転換体より単離したプラスミドDNAが特徴づ
けられ,レクチンをコードしている配列のすぐ上流に14
50bTxPRがあるような方向にpPVL134挿入体を持ち,p2RK9
0Lec−1と表されるプラスミドを持つコロニーを選別す
る。レクチン遺伝子の方向性は,挿入体の5′未満と
3′未満からそれぞれ0.09kbpと0.78kbpのCla I部位の
存在により決められる。両末端は,pRK290Eco13 ΔClaBa
mに連結後,BamH IとBcl Iで分解できない縫合部を形づ
くる。 pRK290Lec−1 DNAは形質転換あるいは接合のどちら
かによりA348(pTiA6)に転換され,次いで独立のpRK29
0レプリコンやテトラサイクリン耐性細胞の選別を除外
するためにpPH1J1を導入される。レクチン遺伝子の発現
のためにはホモ部分二倍体を単離する必要はないが,も
し必要なら,制限酵素分析によりテトラサイクリン耐性
共同組込体の子孫を選抜することにより同定できる。pR
K290Lec−1とpTiA6との共同組込体あるいはホモ部分二
倍体のどちらかにより生じるTIPプラスミドをここではp
TiA6Lec−1と表す。 5.2原核生物での発現 RR1(pRK290Lec−1)とA348(pTiA6Lec−1)を,電
気泳動とハイブリダイゼーション法により選別し,適当
な植物RNA配列を含むことが観察される。 5.3真核生物での発現 A348(pTiA6Lec−1)を逆にしたヒマワリの軸に接種
し,生じたクラウンゴール腫瘍は,レクチンmRNAと蛋白
質の配列を含んでいることを,当業者でふつうに知られ
ているハイブリダイゼーション,電気泳動,免疫的各手
法により観察した。 実施例6 この実施例はすべてのTRを含むサブ−Tiプラスミドの
構築を教示する。TRは形質転換細胞のホルモン非依存性
の増殖の表現型を示す遺伝子は一つも持たない。また,o
csがここで論じたプラスミドのいくつかにある選択可能
なマーカーとして機能し得ると,選択可能なマーカー
(例えば,kan)の発現を促進するために1450bTxPRを用
いる必要が排除されるということを注記しておく。 6.1 TRサブ−Tiプラスミドの構築 pRK290Kan−1を形質転換によりA348(pTiA6)に転移
させた。1450bTx構造遺伝子を欠失し,オピン合成欠損
表現型となるホモ部分二倍体化後,カナマイシン耐性ア
グロバクテリウム細胞より単離したTiプラスミドを制限
酵素分析で特徴づける。共同組込よりもホモ部分二倍体
化の結果であるDNA試料をBamH Iで分解し,自身で連結
させた。生じた混合物をJM83へ形質転換する。カナマイ
シンおよび/もしくはアンピシリン耐性形質転換体のプ
ラスミドDNAを制限酵素分析により特徴づけ,非伝達性
で,エセリシア・コリーに保持され,pUC13Bam2Kan−1
と表されるプラスミドを保持するコロニーを同定する。
(第5図) pUC13Bam2Kan−1とpRK290DNAをそれぞれBamH I Bgl
IIとで分解し,それぞれを混ぜ,連結する。連結した混
合液をBamH IとBgl IIで分解して非混成物分子を線条化
し,RR1を形質転換した。(もしプラスミドをBamH Iで部
分分解し線状化すると,pBR322Bam2Kan−1はpUC13Bam2K
an−1と置き換え得る。)アンピシリンおよび/もしく
はカナマイシン,およびテトラサイクリンに耐性形質転
換体より分離したプラスミドDNAは制限分析により特徴
づけられる。二つのハイブリッドBgl II/BamH I部位で
どちらかの方向で縫合された二つの親プラスミドのそれ
ぞれの単一コピーを持ち,pRK290Bam2Kan−1(第5図)
プラスミドを持つコロニーを同定する。pRK290Bam2Kan
−1をアグロバクテリウム(vir)株,エセリシア・コ
リーRR1(pRK290Bam2Kan−1)そしてエセリシア・コリ
ー(pRK2013)の三親交雑によりvir遺伝子を含むアグロ
バクテリウム株に転移させる。正常な三親交雑過程の変
形で,pPH1J1は,アグロバクテリウム(vir)株内で独立
に複製するように設計されているpRK290レプリコン,pRK
290Bam2Kan−1とは不和合性であるので,導入されな
い。 6.2 TRサブ−Tiプラスミドの変型 実施例6.1に述べられたベクターはBmaH I断片2に基
づき,したがってTLの両境界(TRLB(C)およびTRRB
(D))に加えてTL右境界(TLRB(B))を含む。オク
トピン型プラスミドpTi15955のTRを開裂せず,サブ−Ti
プラスミドの構築に有効性を示す他の酵素は,Apa IとSm
a I(ocsとtmlの一部),Mlu IとHpa I(ocsの一部)お
よびKpn I(ocs,tml,ORF9)を含む。(括弧で示されたT
L構造遺伝子あるいはオープンリーディングフレーム(O
RFs)は,前述の酵素によって生成する断片上に含まれ
る。)正常にTRDNAを切る他の酵素,例えば,Hind III
(ocs,tml,ORF9,tmr,ORF5/tmsの一部)およびBgal I(o
cs)は,第2図の断片b5,C,およびd1をおおっているCla
I断片由来のTR誘導体を切らない。当業者は,kan配列が
Bgl I部位を含むことと,pBR322とpUC1系のプラスミドに
Hind III部位があることを知るであろう。部分的Bgl I
もしくはHind IIIの制限酵素分解条件の賢明な使用法
は,当業者によく知られているように,ここで述べられ
た選択マーカー構築に基づくサブ−Tiプラスミドの構築
の際に必要とされるであろう。 Ata IIとCla Iのような他の酵素は,TLRB(B)を含ま
ないpTi15955に基づくTRサブ−Tiプラスミドの構築に対
して利用されるかも知れない。特に,適切にメチル化さ
れている宿主,例えばエセルシア・コリー8K02(W.B.Wo
od(1966)J.Mol.Biol.16:118)中での増殖の際,pRK290
Kan−1,pVic1およびpVic2のホモ部分二倍体化されたT
−DNA誘導体は,TR内にメチル化されておらず,開裂でき
るCla I部位を持たず,しかしTRLB(C)とTLRB(B)
間に開裂できるCla I部位を持つ,(第5図を参照)。K
802中で増殖したpUC13Bam2Kan−1あるいはpBR322Bam2K
an−1 DNAはBamH IおよびCla Iで制限酵素分解される。
このDNAは適当なリンカーの使用あるいはエセリシア・
コリーDNAポリメラーゼIのクレノー断片での粘着未満
の平滑末端化によって連結され,その結果としてTLRB
(B)の欠失となる。ヌクレアーゼBa131によるBamH I
で線状化されたpUC13Bam2Kan−1の制御条件下での分解
で,TLRB(B)の除去も可能になる。 6.3ミリTiプラスミド ミニTiプラスミドは酵素Eco KとMst IIとを用いて同
様に構築される。このEco KはpTi15955T−DNAを開裂し
ない。Mst IIはb5,cおよびd1断片をおおうCla I断片の
欠失によって除去される単一pTi15955T−DNA開裂部位を
持つ。Mst I粘着末端はDNAポリメラーゼIのクレノー断
片での連結の前に平滑化されなければならず,Eco K末端
はクレノー断片とT4DNAポリメラーゼの両方の反応によ
って平滑化されなければならない。 ここで論議されたサブ−Tiプラスミドの大きさを小さ
くするため,より小さいベクターがpRK290の代わりに代
用され得る。従来技術の項でアグロバクテリウムで維持
され得るシャトルベクターに言及したもの言外のプラス
ミドは,R.C.Tait et al.(1982)Gene 20:39−49,J.Lee
mans et al.(1982)Gene 19:361−364およびJ.Hille a
nd R.Schilperoort(1981)Plasmid :360−362によっ
て述べられたものを含む。しかし,これに限定されな
い。 実施例7 三親交雑は,下記の手順で行った; 当業者に既知の他の変法も可能である。 E.Coli RR1(pRK290に基づくシャトルベクターを有す
る)またはE.Coli K802(pRK290に基づくシャトルベク
ターを有する)と,E.Coli RR1(pRK2013を有する)とA3
48(Tiプラスミドを有するリファンピシン耐性のアグロ
バクテリウム・チューメファシエンスの菌株)とを交雑
させる。pRK2013は,菌株を有するシャトルベクターへ
転移し,シャトルベクターをアグロバクテリウムへ転移
させる。E.Coliの増殖できない最小培地(つまり,ABグ
ルコース)での菌の生育によって,シャトルベクター配
列を有するアグロバクテリウム細胞が選択される。この
培地は,リファンピシンとシャトルベクターが耐性であ
る薬剤との両者,しばしばカナマイシンまたはカルベニ
シリン(アンピシリンアナログ)のいずれかを含む。こ
れらの細胞のE.Coli(pRH1J1)2104菌株との交雑は,pPH
1J1のアグロバクテリウム細胞への転移を引き起こす。p
PH1J1とpRK290に基づくシャトルベクターは,同一細胞
中に長時間共存できない。ゲンタマイシンとカナマイシ
ンを含む培地での生育により,Tiプラスミドを有する細
胞が選別される。このTiプラスミドは,一重または二重
相同組み換え(それぞれ共同取り込みまたは,ホモ部分
二倍体化)をシャトルベクターとの間に起こし,そして
所望の構造を有している。選別に用いる抗生物質の濃度
は,実施例1.3aに記したとおりである。E.Coliの菌株
は,平常0.2%カザアミノ酸を補足するL−培地で,37℃
生育させ,また,アグロバクテリウム・チューメファシ
エンスは,YEP培地で30℃で生育させている。pRK290とpR
K2013は,G.Ditta et al.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 77:7347−7357に,またpPH1J1はP.R.Hirs(1978)Th
esis,Univ.E.Angliaに開示されている。 発明の要旨 オクトピン型クラウンゴール腫瘍中で1450ベースのTR
転写物の発現をっもたらすプロモーター領域はまた細菌
内で外来構造遺伝子の発現をも促進することができるこ
とを開示した。植物,細菌双方で外来構造遺伝子の1コ
ピーの発現をもたらすためのこの二元目的プロモーター
領域の利用が教示される。真核および原核機能で機能す
る選択マーカーの構築が植物を形質転換する試みに有効
なベクターとして例証される。
【図面の簡単な説明】 第1図は,オクトピン型TiプラスミドのT−DNA領域の
制限酵素地図,第2図は,TRDNAの制限酵素地図,第3図
は,実施例2.2から3.4までに用いたDNA実験操作の概略
図,第4図は,1450bTxプロモーター領域とNPT II構造遺
伝子の結合体を有している細菌細胞の増殖特性を示すグ
ラフ,第5図は,実施例6.1に記されているDNA実験操作
の概略図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:91) (C12N 1/21 C12R 1:01) (72)発明者 スタントン ビー・ゲルビン アメリカ合衆国 インデイアナ 47906 ウエスト ラフアイエツト,ムアーズ ベイ ロード 5251 (56)参考文献 特開 昭60−256383(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 15/00 - 15/90 C12N 5/00 - 5/28 C12N 1/00 - 1/38 A01H 1/00 - 5/12 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.植物形質転換ベクターを作成し、そしてそれを用い
    て植物細胞を遺伝学的に改変する方法であって、: (a)二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合
    体を含むDNA分子で原核生物細胞を形質転換した後、得
    られた原核生物株における結合体の発現を検知すること
    によって、該二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝
    子結合体をクローニングする工程;および (b)該クローン化二元目的プロモーター領域/外来構
    造遺伝子結合体を含むDNA分子で植物細胞を形質転換し
    た後、このような形質転換を検知する工程、を包含し、 該二元目的プロモーター領域が、以下の制限酵素地図に
    示されるアグロバクテリウム・チューメファシエンスAT
    CC15955に由来するT−DNA断片d1、cおよびb5を含む14
    50塩基のDNA断片に由来し、 そして該植物細胞の形質転換が該植物細胞における該二
    元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合体の発現
    の検出によって検知されることを特徴とする、方法。 2.前記構造遺伝子が該構造遺伝子を含むように形質転
    換された植物内で同定し得る表現型を与える、特許請求
    の範囲第1項に記載の方法。 3.前記同定し得る表現型がカナマイシン、ネオマイシ
    ン、G418、またはそのアナログに対する耐性である、特
    許請求の範囲第2項に記載の方法。 4.前記構造遺伝子が、Tn5由来のネオマイシンフォス
    フォトランスフェラーゼIIをコードする、特許請求の範
    囲第3項に記載の方法。 5.前記二元目的結合体がリゾビアッシー科の細菌内で
    独立に維持され得ないレプリコンに連結している、特許
    請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。 6.前記二元目的結合体がリゾビアッシー科の細菌内で
    独立に維持され得るレプリコンに連結している、特許請
    求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。 7.前記プロモーター領域/構造遺伝子結合体が、TL
    るいはTRの右あるいは左の境界の繰り返し配列、または
    1つ以上のこのような境界の繰り返し配列に連結してい
    る、特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の
    方法。 8.前記構造遺伝子が、以下の制限酵素地図に示される
    T−DNA断片d2の左端に連結されている、特許請求の範
    囲第1項に記載の方法: 9.前記構造遺伝子が、以下の制限酵素地図に示される
    T−DNA断片b4の右端に連結されている、特許請求の範
    囲第8項に記載の方法: 10.遺伝学的に改変された植物組織を産生する方法で
    あって、以下の工程を包含する方法: (i)植物形質転換ベクターを作成し、そしてそれを用
    いて植物細胞を遺伝学的に改変する方法であって: (a)二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合
    体を含むDNA分子で原核生物細胞を形質転換した後、得
    られた原核生物株における結合体の発現を検知すること
    によって、該二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝
    子結合体をクローニングする工程;および (b)該クローン化二元目的プロモーター領域/外来構
    造遺伝子結合体を含むDNA分子で植物細胞を形質転換し
    た後、このような形質転換を検知する工程、を包含し、 該二元目的プロモーター領域が、以下の制限酵素地図に
    示されるアグロバクテリウム・チューメファシエンスAT
    CC15955に由来するT−DNA断片d1、cおよびb5を含む14
    50塩基のDNA断片に由来し、 そして該植物細胞の形質転換が該植物細胞における該二
    元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合体の発現
    の検出によって検知されることを特徴とする、方法によ
    って、植物細胞を遺伝学的に改変する工程;および (ii)該遺伝学的に改変した植物細胞を増殖させて該遺
    伝学的に改変した植物組織を産生する工程。 11.植物形質転換ベクターを含む遺伝学的に改変され
    た植物細胞であって、 該植物形質転換ベクターが、二元目的プロモーター領域
    /外来構造遺伝子結合体を含む植物形質転換ベクターで
    あり、 該二元目的プロモーター領域が、以下の制限酵素地図に
    示されるアグロバクテリウム・チューメファシエンスAT
    CC15955に由来するT−DNA断片d1、cおよびb5を含む14
    50塩基のDNA断片に由来する、植物形質転換ベクターを
    含む、遺伝学的に改変された植物細胞: 12.遺伝学的に改変された双子葉植物を産生する方法
    であって、以下の工程を包含する方法: (i)植物形質転換ベクターを作成し、そしてそれを用
    いて双子葉植物細胞を遺伝学的に改変する方法であっ
    て: (a)二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子結合
    体を含むDNA分子で原核生物細胞を形質転換した後、得
    られた原核生物株における結合体の発現を検知すること
    によって、該二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝
    子結合体をクローニングする工程;および (b)該クローン化二元目的プロモーター領域/外来構
    造遺伝子結合体を含むDNA分子で双子葉植物細胞を形質
    転換した後、このような形質転換を検知する工程、を包
    含し、 該二元目的プロモーター領域が、以下の制限酵素地図に
    示されるアグロバクテリウム・チューメファシエンスAT
    CC15955に由来するT−DNA断片d1、cおよびb5を含む14
    50塩基のDNA断片に由来し、 そして該双子葉植物細胞の形質転換が該双子葉植物細胞
    における該二元目的プロモーター領域/外来構造遺伝子
    結合体の発現の検出によって検知されることを特徴とす
    る、方法によって、双子葉植物細胞を遺伝学的に改変す
    る工程;および (ii)該遺伝学的に改変した双子葉植物細胞を増殖させ
    て該遺伝学的に改変した双子葉植物を産生する工程。
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