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JP2915306B2 - N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法 - Google Patents

N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法

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JP2915306B2
JP2915306B2 JP6302228A JP30222894A JP2915306B2 JP 2915306 B2 JP2915306 B2 JP 2915306B2 JP 6302228 A JP6302228 A JP 6302228A JP 30222894 A JP30222894 A JP 30222894A JP 2915306 B2 JP2915306 B2 JP 2915306B2
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acid ester
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ester
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智徳 松永
啓文 椎木
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Tokuyama Corp
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Tokuyama Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、N−アルコキシカルボ
ニルアミノ酸エステルを工業的に容易に製造する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】N−アルコキシカルボニルアミノ酸エス
テルは、抗生物質等医薬品の合成中間体として有用な化
合物である。このN−アルコキシカルボニルアミノ酸エ
ステルの製造方法として、従来、アミノ酸エステルの酸
との塩のアミノ基に、ジアルキルジカーボネートを反応
させる方法が知られている。例えば、アミノ酸エステル
塩酸塩を、有機溶媒中で化学量論量のトリエチルアミン
や ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基の存在下
に、ジ−t−ブチルジカーボネートと反応させる方法
(ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー
(J.Med.Chem.)26巻、4号、549−5
4頁、1986年)を挙げることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法においては、有機溶媒中からN−アルコキシカルボ
ニルアミノ酸エステルを単離しようとしているため、中
和に用いた有機塩基及び中和によって副生するアンモニ
ウム塩を除去する目的で、酸性水溶液、塩基性水溶液及
び水による洗浄操作を行わなければならず、非常に煩雑
な操作が必要となる。さらにその上、アンモニウム塩を
含む多量の排水を別途処理する必要がある。
【0004】この問題を解決するため、無機塩基を用い
た方法を以前提案したが(特開平6−192207号公
報)、無機塩を分離し、溶媒を留去しただけでは、未反
応のアミノ酸エステル等の不純物が残留し、得られるN
−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの純度が今一
歩満足できるものではなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記実状
に鑑み、不純物の少ない、N−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルを簡便な操作でかつ高収率で製造する方
法をさらに鋭意検討した。その結果、アミノ酸エステル
の酸との塩を無機塩基存在下、水と相溶性のある有機溶
媒中でジアルキルジカーボネトと反応させてN−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を得、次
いで、該反応液と水とを特定のpHになるように混合す
ることにより、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エス
テルが高純度、高収率で単離し得ることを見いだし、本
発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、アミノ酸エステルの酸と
の塩とジアルキルジカーボネートとを無機塩基存在下、
水と相溶性のある有機溶媒中で反応させてN−アルコキ
シカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を得、次い
で、該反応液と水とをpHが3.0〜9.0になるよう
に混合し、この反応液と水との混合液からN−アルコキ
シカルボニルアミノ酸エステルを単離することを特徴と
するN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造
方法である。
【0007】本発明において、使用されるアミノ酸エス
テルの酸との塩は、公知のものが何等制限なく使用でき
る。該アミノ酸エステルを構成するアミノ酸としては、
分子内に少なくとも1つ以上のアミノ基またはイミノ基
と少なくとも1つ以上のカルボキシル基を有する化合物
であれば、公知の化合物を何等制限無く用いることがで
きる。1分子中に2個以上のアミノ基もしくはイミノ基
またはそれらがアルキル基等により置換された置換アミ
ノ基もしくは置換イミノ基を有するアミノ酸の場合は、
少なくとも1個のアミノ基またはイミノ基さえ有してい
れば、他のアミノ基またはイミノ基は置換されていても
よい。また、1分子中に2個以上のカルボキシル基また
は、置換カルボキシル基を有するアミノ酸の場合は、少
なくとも、1個のエステル結合可能なカルボキシル基さ
え有していれば、他のカルボキシル基は置換されていて
もよい。
【0008】本発明において好適に使用し得るアミノ酸
を具体的に示せば、例えば、グリシン、アラニン、β−
アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシ
ン、イソロイシン、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、
γ−アミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、N−メチルグリ
シン、γ−ホルミル−N−メチルノルバリン、セリン、
ホモセリン、イソセリン、スレオニン、トレオニン、シ
スチン、ホモシスティン、S−アセトアミドメチル−シ
スティン、メチオニン、ホモメチオニン、アスパラギ
ン、グルタミン等の脂肪属中性アミノ酸類、アスパラギ
ン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸等の脂肪属酸性
アミノ酸類、リジン、アルギニン、ヒドロキシリジン、
オルチニン、N−イミノエチルオルニチン等の脂肪属塩
基性アミノ酸類、フェニルアラニン、フェニルグリシ
ン、アスパラギン酸−β−ベンジルエステル、S−ベン
ジル−システィン、O−ベンジルセリン、N−ベンジル
オキシカルボニル−リジン、チロシン、チロキシン、ジ
ヨードチロシン等の芳香族中性アミノ酸類、N−トシル
アルギニン、N−ベンジルオキシカルボニル−アルギニ
ン等の芳香族塩基性アミノ酸類、β−フェニルグルタミ
ン酸等の芳香族酸性アミノ酸類、プロリン、ヒドロキシ
プロリン、トリプトファン等の複素環中性アミノ酸類、
ヒスチジン等の複素環塩基性アミノ酸類、γ−カルボキ
シプロリン等の複素環酸性アミノ酸類等を挙げることが
できる。さらには、水への溶解度の高いアミノ酸、例え
ば、セリン、スレオニン、ヒドロキシフェニルグリシ
ン、ヒドロキシプロリン等、水酸基を有するアミノ酸、
システイン等のメルカプト基を持つアミノ酸、アスパラ
ギン酸等の酸性アミノ酸、リジン等の塩基性アミノ酸等
が特に好適に用いられる。
【0009】これらのアミノ酸は、側鎖の官能基は保護
されていてもよく、光学異性体を含むラセミ混合物であ
ってもよい。また、アミノ酸が2個以上つながったペプ
チドも本発明において使用することができる。
【0010】本発明において、こうしたアミノ酸から構
成されるアミノ酸エステルは、一般式で次のように示さ
れるものが好ましい。
【0011】 H−X−R (1) (但し、Xはアミノ酸残基であり、Rは置換基を有して
もよいアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基で
ある。) 一般式(1)中のRとしては、アルキル基またはアルケ
ニル基またはアラルキル基を何等制限無く用いることが
できるが、特にアルキル基としては、メチル基、エチル
基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、
i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のもの
を、アルケニル基としては、アリル基等を、アラルキル
基としては、ベンジル基等を挙げることができる。これ
らの置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ア
ルキルチオ基、ニトロ基、ピリジル基、フタルイミド基
等を挙げることができる。これらの置換基で置換された
アルキル基、アルケニル基、アラルキル基としては、ト
リクロロエチル基、β−メチルチオエチル基、p−ニト
ロベンジル基、p−メトキシベンジル基、ピコリル基等
を挙げることができる。
【0012】本発明において、これらのアミノ酸エステ
ルと塩を構成する酸は、公知の如何なるものであっても
よい。具体的には、塩酸、硫酸等の鉱酸類、メタンスル
ホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸
等のスルホン酸類、酢酸等のカルボン酸類を挙げること
ができる。
【0013】次に、本発明において、上記のアミノ酸エ
ステルの酸との塩と反応させるジアルキルジカーボネー
トは、公知のものが特に制限されることなく使用され
る。アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t
−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が好適で
ある。具体的に例示すると、ジメチルジカーボネート、
ジエチルジカーボネート、ジイソプロピルジカーボネー
ト、ジイソブチルジカーボネート、ジ−t−ブチルジカ
ーボネート、ジ−t−アミルジカーボネート等を挙げる
ことができる。
【0014】アミノ酸エステルの酸との塩に対するジア
ルキルジカーボネートの使用量は、1当量より少なくて
は、残存したアミノ酸エステル等が生成したN−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルに混入するため、通常
は保護したいアミノ酸エステルの酸との塩のアミノ基ま
たはイミノ基1当量に対して1当量以上であるが、経済
性等を勘案して1〜1.5当量の範囲で用いるのが好適
である。
【0015】上記したアミノ酸エステルの酸との塩とジ
アルキルジカーボネートの反応は、無機塩基の存在下、
水と相溶性のある有機溶媒中で行われる。本発明におい
て好適に使用しうる無機塩基を具体的に例示すると、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸
化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアル
カリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等
の重炭酸塩等を挙げることができる。特に、中和時の加
水分解が起こりにくい、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等
の重炭酸塩等が好適に使用される。これらの無機塩基は
単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良
い。また嵩比重等塩基の性状によらず使用することがで
きる。
【0016】これらの無機塩基の使用量は、通常、アミ
ノ酸エステルの酸との塩の酸成分1当量に対して1当量
以上であるのが好ましい。アミノ酸エステルの酸との塩
中の酸成分を完全に中和するため、及び、経済性を勘案
すると、上記アミノ酸エステルの酸との塩の酸成分1当
量に対して1.0〜1.5当量の範囲が好適である。
【0017】なお、本発明の製造方法を、後述する如く
アミノ酸のエステル化反応に引き続いて実施する場合に
は、該アミノ酸のエステル化反応で得られるアミノ酸エ
ステルの酸との塩が含有される反応液には、エステル化
反応で使用した塩化水素等の強酸や或いは塩化チオニル
に起因して生じる二酸化イオウが過剰に含まれている。
こうした場合には、無機塩基は、上記アミノ酸エステル
の酸との塩の酸成分に対する量に、さらにこの反応液に
含有される遊離の酸性分を完全に中和できるだけの量を
加算して使用するのが一般的である。
【0018】また、水と相溶性のある有機溶媒として
は、特に制限されないが、好適には、メタノール、エタ
ノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキ
サン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、
アセトン等のケトン類等を用いることができ、更には、
エステル交換反応の恐れがないため、エステルのアルコ
ール残基と同種類のアルコールが、好適に用いられる。
反応時の有機溶媒の量は、特に制限されるものではない
が、攪拌の容易さ、反応速度等から、アミノ酸エステル
の酸との塩100重量部に対して、50〜500重量部
の範囲が好ましい。
【0019】本発明において、前記した無機塩基を、ア
ミノ酸エステルの酸との塩とジアルキルジカーボネート
との反応液中に存在させる方法は、何等制限されるもの
ではない。例を挙げて説明すると、無機塩基は、有機溶
媒に懸濁させて、上記反応液と混合させてもよいし、無
機塩基そのものを混合させてもよい。有機溶媒を用いる
場合は、反応溶液として用いた有機溶媒と同じ有機溶
媒、及び異なる有機溶媒を制限無く用いることができ
る。その場合、懸濁に用いる有機溶媒量は特に制限され
るものではないが、攪拌および液移送の容易さ、経済性
などを勘案すると、無機塩基100重量部の対して40
〜500重量部であることが好ましい。
【0020】また、アミノ酸エステルの酸との塩、ジア
ルキルジカーボネート及び無機塩基を混合する順序も特
に制限されるものではなく、如何なる順序で実施しても
良い。ジアルキルジカーボネートの分解を最小限に抑え
ることから、アミノ酸エステルの酸との塩の有機溶液
に、上記の方法により無機塩基を混合した後、さらにジ
アルキルジカーボネートを混合するのが好適であるが、
アミノ酸エステルの酸との塩の有機溶液に該無機塩基と
ジアルキルジカーボネートを同時に混合したり、先にジ
アルキルジカーボネートを混合してから無機塩基を混合
してもよい。また、ジアルキルジカーボネートとアミノ
酸エステルとの反応を見ながら、無機塩基を数回に分け
て混合しても一向に差し支えない。
【0021】こうしたアミノ酸エステルの酸との塩とジ
アルキルジカーボネートとの反応温度は、特に制限され
ないが、あまり温度が高いと原料のジアルキルジカーボ
ネート及び生成物が分解するため、通常、系の凝固点〜
80℃の範囲、作業性等を勘案すると、0〜60℃の範
囲であることが好適である。
【0022】また、反応圧力は、常圧、加圧、減圧のい
ずれの場合も実施可能であり、反応に要する時間は、反
応温度、原料のアミノ酸の種類によっても異なるが、通
常は、30分〜120時間の範囲である。反応は回分
式、連続式のいずれでも実施可能である。
【0023】以上のアミノ酸エステルの酸との塩とジア
ルキルジカーボネートとの反応により、N−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルを含む反応液が得られる。
しかして、本発明の最大の特徴は、該反応液からN−ア
ルコキシカルボニルアミノ酸エステルを単離するに際
し、この反応液と水とをpHが3.0〜9.0、好まし
くは4.0〜8.0になるように混合することにある。
【0024】即ち、上記N−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルを含む反応液には、該化合物の他に、アミ
ノ酸エステルの酸との塩における酸成分が中和されて生
じた塩、及び残存したアミノ酸エステル等の不純物が共
存している。そうして、この塩及びアミノ酸エステル等
の不純物は、水にはよく溶解し、一方、N−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルは、該水には溶解性が低い
ため、本発明では、上記の如くN−アルコキシカルボニ
ルアミノ酸エステルを含む反応液と水とを混合すること
により、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを
簡単に単離することが可能になる。
【0025】その際、上記N−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルを含む反応液と水との混合液は、pHが
3.0〜9.0になるようにすることが重要である。即
ち、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを含む
反応液には、前記無機塩基も共存している。この無機塩
基も、水によく溶解するものであるが、該無機塩基が存
在したまま、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステ
ルを含む反応液と水とを混合すると、該混合液は、強い
塩基性を呈し、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エス
テルのエステル部分において加水分解反応が進行するよ
うになる。そして、上記加水分解反応によって、N−ア
ルコキシカルボニルアミノ酸エステルの収率が低下する
だけでなく、加水分解生成物がN−アルコキシカルボニ
ルアミノ酸エステル中に混入するという問題が発生す
る。以上の状況にあって本発明は、上記の如くN−アル
コキシカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液と水と
の混合を、前記特定のpHとなるようにすることによ
り、この加水分解反応を抑制するものである。
【0026】ここで、N−アルコキシカルボニルアミノ
酸エステルを含む反応液と水との混合液のpHが9.0
より大きい場合、エステルの加水分解反応が進行し、一
方、該pHが3.0より小さい場合、エステルの加水分
解反応が進行すると共にアルコキシカルボニル基の脱離
反応も進行する。
【0027】なお、本発明において、N−アルコキシカ
ルボニルアミノ酸エステルを含む反応液への水の混合量
は、特に制限されるものではないが、得られるN−アル
コキシカルボニルアミノ酸エステルの純度や収率の良好
さを勘案すると、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エ
ステル100重量部に対し、50〜2000重量部の範
囲で用いるのが最も好ましい。
【0028】本発明において、N−アルコキシカルボニ
ルアミノ酸エステルを含む反応液と水との混合液のpH
を3.0〜9.0に調整する方法は、特に制限されるも
のではなく、如何なる方法により行ってもよい。
【0029】例えば、上記反応液と水とを混合した後、
混合液を酸で中和する方法、或いは、該N−アルコキシ
カルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を水と混合す
る前に反応液から無機塩基を除去しておく方法等を挙げ
ることができる。
【0030】中和の方法としては、公知の方法が一般に
使用できるが、例えば、塩化水素、硫酸等の鉱酸等を反
応液に直接加える方法、或いは予め水に希釈した溶液を
添加する方法等を挙げることができる。
【0031】予め無機塩基を除去する方法としては、特
に制限されるものではないが、具体的には、無機塩基が
有機溶媒に難溶であることを利用し、遠心沈降、デカン
テーション等の比重差分離法や、遠心濾過、加圧濾過、
常圧濾過、減圧濾過等の濾過法により除去するのが好ま
しい。この時、分離した無機塩基を、有機溶媒で抽出
し、付着するN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステ
ルを回収してもよい。こうした方法により、予め無機塩
基を除去した反応液と水とを混合した場合、混合液のp
Hは7.0〜9.0になる。
【0032】上記方法によって得られたpH3.0〜
9.0の混合液は、アミノ酸エステルの酸との塩とジア
ルキルジカーボネートの反応において反応媒体として用
いた、水と相溶性のある有機溶媒を含んでいる。本発明
においては、この有機溶媒を含んだまま、混合液からN
−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの単離を行っ
ても何等問題はないが、用いるアミノ酸の酸との塩の種
類によっては、単離収率が低下する場合があるので、分
離工程に入る前に可能なかぎり、該有機溶媒を留去する
ことが好ましい。
【0033】留去方法としては、常圧、減圧いずれかの
方法で行ってもよいが、N−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルの加水分解を極力抑えるため、減圧により
留去するのが好ましい。この有機溶媒の留去は、N−ア
ルコキシカルボニルアミノ酸エステルを含む反応液を水
と混合する前に、予め実施しても一向に差し支えない。
【0034】このようにして得られた混合液中における
N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの濃度は、
特に制限はないが、あまり水が多いと分離工程での単離
収率の低減につながり、濃度が高いと、移液等の操作上
の問題が発生するため、好ましくは5〜70重量%、さ
らに好ましくは10〜60重量%の範囲であるのが好ま
しい。
【0035】本発明において、上記混合液からのN−ア
ルコキシカルボニルアミノ酸エステルの単離は、特に制
限されるものではないが、通常、混合液から該化合物を
晶析させたり、水と非相溶性でN−アルコキシカルボニ
ルアミノ酸エステルを溶解する有機溶媒をこの混合液と
混合し、上記水と非相溶性の有機溶媒層に該化合物を抽
出することにより行うのが好適である。
【0036】晶析によりN−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルを単離する場合、その晶析温度は通常系の
凝固点〜70℃であるが、作業性等を勘案すると、0〜
40℃の範囲から採用することが好ましい。析出した結
晶の分離は、公知の方法を制限無く用いることができ
る。例えば、濾過、遠心分離等により分離してもよい。
必要であればこれらの分離操作中にさらに水洗または有
機溶媒による洗浄を行うこともできる。
【0037】一方、このN−アルコキシカルボニルアミ
ノ酸エステルの単離を、前記した水と非相溶性であり且
つN−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを溶解す
る有機溶媒による抽出操作により行う場合、該有機溶媒
は、上記性状にあるものが特に制限されることなく使用
できる。具体的には、ジクロロメタン、1、2ージクロ
ロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素
類、トルエン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン等
のハロゲン化芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステ
ル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類等を挙げ
ることができる。また、抽出により分離したN−アルコ
キシカルボニルアミノ酸エステルは、有機溶媒を留去す
る等の公知の方法により取り出せば良い。
【0038】なお、本発明のN−アルコキシカルボニル
アミノ酸エステルの製造方法は、アミノ酸のエステル化
反応に引き続いて、該エステル化反応液中で実施しても
良い。それにより、アミノ酸からN−アルコキシカルボ
ニルアミノ酸エステルを効率的に製造することができ
る。このアミノ酸のエステル化反応は、公知の方法が特
に制限なく適用できる。具体的には、アルコールと塩化
チオニルを反応させて得られたクロロスルホン酸エステ
ルとアミノ酸とをアルコール溶液中で反応させる方法、
アミノ酸と塩化チオニルを反応させて得られた酸塩化物
とアルコールとを反応させる方法、酸存在下、アミノ酸
とアルコールとを反応させる方法、或いは、酸存在下、
アミノ酸とアルキルオレフィンとを反応させる方法等を
挙げることができる。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、アミノ酸エステルの酸
との塩を、無機塩基存在下、水と相溶性のある有機溶媒
中でジアルキルジカーボネートと反応させ、pHを調節
した上記反応液と水との混合液中からN−アルコキシカ
ルボニルアミノ酸エステルを得るという工業的にも容易
な操作により、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エス
テルを高純度、高収率で得ることができる。従って、本
発明は、N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの
製造方法として、工業的に極めて有用である。
【0040】
【実施例】以下、実施例を掲げて本発明を説明するが、
本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0041】実施例1 L−プロリンメチルエステル塩酸塩82.8g(0.5
モル)の、メタノール250ml溶液を、予め4つ口フ
ラスコに入れておいた、炭酸ナトリウム64g(0.6
モル)、メタノール50mlの懸濁液中に攪拌下10℃
以下で滴下した。さらに、氷冷下ジ−t−ブチルジカー
ボネート109g(0.5モル)を滴下し、その後、室
温で12時間反応させた。次に、アルコール250gを
減圧留去した。この残留液に、水800mlを混合し、
さらに1M塩酸を加えて、pHを7.0に調節し、酢酸
エチル150mlを用いて抽出操作を行った。この酢酸
エチル層を水100mlで水洗し、酢酸エチルを減圧留
去してN−t−ブトキシカルボニル−L−プロリンメチ
ルエステル111gを得た。収率は97%であった。加
水分解生成物であるN−t−ブトキシカルボニル−L−
プロリン含率は、高速液体クロマトグラフィ(以下HP
LCと称す)で定量したところ、0.5%以下であっ
た。また、アミノ酸エステルである、L−プロリンメチ
ルエステルは、HPLCで定量したところ、0.5%以
下であった。
【0042】実施例2〜8、比較例1 実施例1において、表1に示した無機塩基を用いて反応
を行い、表1に示したpHに調整した以外は実施例1と
同様に操作した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】比較例2 実施例1において、pHを調節しないこと以外は、実施
例1と同様に行い、N−ブトキシカルボニル−L−プロ
リンメチルエステル98.6gを得た。なお、pHを調
節しないN−ブトキシカルボニル−L−プロリンメチル
エステルを含む反応液と水の混合液のpHは、10.6
であった。N−ブトキシカルボニル−L−プロリンメチ
ルエステルの収率は86%であった。加水分解生成物で
あるN−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン含率
は、HPLCで定量したところ、2.0%であった。ま
た、アミノ酸エステルであるL−プロリンメチルエステ
ルは、HPLCで定量したところ、0.5%以下であっ
た。
【0045】比較例3 4つ口フラスコに、L−プロリンメチルエステル塩酸塩
82.8g(0.5モル)、炭酸ナトリウム64g
(0.6モル)、クロロホルム250mlを入れ、さら
に、氷冷下ジ−t−ブチルジカーボネート109g
(0.5モル)を滴下し、その後、室温で24時間反応
させた。反応液を吸引濾過した後、溶媒を全て留去し
て、N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリンメチル
エステル111gを得た。収率は95%であった。ま
た、アミノ酸エステルである、L−プロリンメチルエス
テルの含有率は、HPLCで定量したところ、2.0%
であった。
【0046】比較例4 4つ口フラスコに、L−ヒドロキシプロリンメチルエス
テル塩酸塩90.8g(0.5モル)、炭酸ナトリウム
64g(0.6モル)、クロロホルム250Lを入れ、
さらに、氷冷下ジ−t−ブチルジカーボネート109g
(0.5モル)を滴下し、その後、室温で24時間反応
させた。反応液を吸引濾過した後、溶媒を留去し、ヘキ
サン200mlを加えて晶析させた。得られた結晶を吸
引濾過により分離して、N−t−ブトキシカルボニル−
L−ハイドロキシプロリンメチルエステル104.2g
を得た。収率は85%であった。また、アミノ酸エステ
ルである、L−ヒドロキシプロリンメチルエステル含有
量は、HPLCで定量したところ、1.5%であった。
【0047】実施例9 実施例1と同様にして、L−プロリンメチルエステル塩
酸塩とジ−t−ブチルジカーボネートとを反応させた。
次いで、得られた反応液を濾過し過剰の無機塩基を濾別
し、濾液からアルコール250gを減圧留去した。この
残留液に、水800mlを混合したところ、得られた混
合液のpHは、7.8であった。この混合液について酢
酸エチル150mlを用いて抽出操作を行った。酢酸エ
チル層を水100mlで水洗し、酢酸エチルを減圧留去
してN−t−ブトキシカルボニル−L−プロリンメチル
エステル111g得た。収率は97%であった。加水分
解生成物であるN−t−ブトキシカルボニル−L−プロ
リン含率は、HPLCで定量したところ、0.5%以下
であった。また、アミノ酸エステルである、L−プロリ
ンメチルエステルの含有率は、HPLCで定量したとこ
ろ、0.5%以下であった。
【0048】実施例10〜13 表2に示したアミノ酸エステルの塩を用い、表2に示し
た溶媒中で、表2に示したN−アルコキシカルボニルア
ミノ酸エステルを得たこと以外は実施例1と同様に操作
した。その結果を表3に示した。
【0049】
【表2】
【0050】実施例14〜15 ジアルキルジカーボネートとして表3に示した化合物を
用いること以外は、実施例13と同様に行い、表3に示
した各N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルを得
た。用いたジアルキルジカーボネートおよび収率を表3
に示した。
【0051】
【表3】
【0052】実施例16 攪拌器、温度計を備えた4つ口フラスコに、L−ヒドロ
キシプロリン66g(0.5モル)、メタノール250
mlを入れ、攪拌下10℃以下で、塩化チオニル125
g(1.05モル)を加え、室温で6時間反応させた。
得られた反応液を、予め4つ口フラスコに入れておいた
炭酸ナトリウム91.8g(0.85モル)、メタノー
ル100mlの懸濁液中に攪拌下10℃以下で滴下し
た。さらに、氷冷下ジ−t−ブチルジカーボネート10
9g(0.5モル)を滴下し、その後炭酸ナトリウム3
0.5g(0.3モル)を加え、室温で12時間反応さ
せた。次に析出している無機塩、過剰の無機塩基を遠心
分離により分離し、メタノール100mlで塩を洗浄
し、その洗液を最初に濾別した濾液に加えた。次に25
0gのアルコールを減圧留去した後、水300mlを混
合した。この混合液のpHは、7.8であった。さらに
500gの溶媒を減圧濃縮した。この溶液を4℃まで冷
却して晶析を行い、結晶を濾取、水100mlで洗浄、
乾燥を行い、N−t−ブトキシカルボニル−L−ヒドロ
キシプロリンメチルエステルの結晶115gを得た。収
率は94%であった。加水分解生成物であるN−t−ブ
トキシカルボニル−L−ヒドロキシプロリン含有率は、
HPLCで定量したところ、0.5%以下であった。ま
た、アミノ酸エステルである、L−ヒドロキシプロリン
メチルエステル含有率は、HPLCで定量したところ、
0.5%以下であった。
【0053】実施例17〜19 表4に示したアミノ酸を用いて、表4に示したN−アル
コキシカルボニルアミノ酸エステルを得たこと以外は実
施例16と同様に操作した。その結果を表4に示した。
【0054】
【表4】
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−181297(JP,A) 特開 平6−192207(JP,A) 特開 昭47−9597(JP,A) 特開 平2−306947(JP,A) 特開 平3−261748(JP,A) 特開 平5−213839(JP,A) 特開 平6−41031(JP,A) 特開 平6−49005(JP,A) ”第4版 実験化学講座22 有機合成 ▲IV▼ −酸・アミノ酸・ペプチド −”、丸善株式会社、平成4年11月30 日、p.234−235 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 229/12 C07C 227/18 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アミノ酸エステルの酸との塩とジアルキル
    ジカーボネトとを無機塩基存在下、水と相溶性のある有
    機溶媒中で反応させてN−アルコキシカルボニルアミノ
    酸エステルを含む反応液を得、次いで、該反応液と水と
    をpHが3.0〜9.0になるように混合し、この反応
    液と水との混合液からN−アルコキシカルボニルアミノ
    酸エステルを単離することを特徴とするN−アルコキシ
    カルボニルアミノ酸エステルの製造方法。
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"第4版 実験化学講座22 有機合成▲IV▼ −酸・アミノ酸・ペプチド−"、丸善株式会社、平成4年11月30日、p.234−235

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